説明

回転電機

【課題】回転電機の発熱部を冷却する冷却ガスを機内循環させるファンの効率を向上させる。
【解決手段】回転子の軸流ファン5に同心円状に配置される隔板10の平板部分における外周部分から中空部分までにかけて、冷却ガス4を隔板10の外周部分から中空部分への案内羽根として機能する補強梁13が隔板10の周方向に沿った等間隔において複数設けられる。この補強梁13は、隔板10におけるベアリングブラケット9を向く平板部分から固定子鉄心2の軸方向に沿った方向に沿って延出される。ガス冷却器の排出口8aから排出された冷却ガス4は、隔板10の補強梁13により、隔板10の周方向における流量が偏ることが無いように修正された上で隔板10の中空部分から軸流ファン5に導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機内の発熱部の冷却機能を有する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機などの回転電機(回転電気機械)は、中空円筒形状の固定子と、この中空部の直径よりも幾分直径の小さい円筒形状の回転子とが同心円状に配置された状態で構成されている。これら固定子及び回転子は、各々、銅などの電気導電性のバー、いわゆるコイルを軸方向に配しており、回転子側のコイルを励磁した上で回転子を回転させると固定子側に電流が誘起される。この時、固定子や回転子には電気的な損失などに由来する大きな熱が発生するため、特別な冷却を必要とし、回転子軸にファンを設置するなどして機内に冷却ガスを送ることで強制冷却を行なっている。
【0003】
図13は、従来の回転電機の断面形状と冷却ガスの全体通風フローの一例を示す図である。図14は、従来の回転電機の回転子端部近傍の断面形状と冷却ガスの通風フローの一例を示す図である。図15は、従来の回転電機の回転子端部近傍の上面から見た断面形状と冷却ガスの通風フローの一例を示す図である。
図13や図14に示すように、回転電機は、固定子鉄心41と回転子鉄心42とが同心円状にガスギャップ43を介して配置される。このガスギャップ43は、固定子鉄心41の内周側および回転子鉄心42の外周側の間に形成され、固定子鉄心41、固定子コイル41aおよび回転子鉄心42を冷却する冷却ガス45を通すための隙間である。
【0004】
固定子鉄心41の外周側にはガス冷却器44が配置され、回転子軸42bに取り付けられる軸流ファン49の後流からガスギャップ43および固定子鉄心41を介してガス冷却器44に至るまでの冷却ガス45の流路が形成される。
【0005】
また、ガス冷却器44の排出口から回転電機のフレーム46に沿って軸流ファン49の上流側に至るまでの冷却ガス45の還流路を形成するための、中空部分を有する円板形状の隔板48が軸流ファン49に対して同心円状に配置される。また、図14に示した回転電機では回転子軸42aを支持するための、図14に示したベアリングブラケット50が設けられる。
【0006】
この回転電機では、図14に示した矢印で示される通風フローにしたがってガス冷却器44で所定の温度まで冷却された冷却ガス45が隔板48とベアリングブラケット50との間の還流路を通り、軸流ファン49により固定子鉄心41及び回転子鉄心42の内部に取り込まれて、固定子鉄心41、固定子コイル41aおよび回転子鉄心42の冷却が行われるようになっている。
【0007】
図16は、従来の回転電機の隔板の構造を示す断面図である。
図16に示すように、隔板48は、ベアリングブラケット50の平板方向に平行な防風板48aとファンノズルリング48bとで構成される。ファンノズルリング48bは軸流ファン49の近傍の開口部をなし、冷却ガス45を軸流ファン49の後流から上流に誘導する絞り形状となっている。
【0008】
しかしながら、前述したガス冷却器は回転電機の上部に配置されたり、回転電機のフレームの左右に縦置きされたりすることが多い。この場合、ガス冷却器を通過した冷却ガスは、ガス冷却器の排出口からの距離によって隔板における周方向の冷却ガス流量に差が生じ、この隔板にファンノズルリングを設けても、隔板における周方向の冷却ガス流量を均一化することは困難である。
【0009】
この周方向の冷却ガス流量分布の不均一さを軽減する手法として、例えば特許文献1に開示されるように、冷却ガス流量の少ない部分に冷却ガスを供給する迂回路を設けて、冷媒速度を減じて流れを均一にする手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−4560号公報(第2頁右欄1行目〜22行目、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述したような、迂回路を設ける方式では各経路間の圧力損失を同等とする手段や、各経路の上下流間に圧力差を設けたりしていないことから、冷却ガス流量を均一にすることは困難である。
【0012】
また、迂回路を設けることに伴い、通風損失の増加による冷却効率降下や回転電機全体の体格増大を招く。また、回転電機内の狭いファン近傍の領域に構造物を追設するため、回転電機の組み立て時やメンテナンス時の作業性が損なわれてしまう。
【0013】
そこで、本発明の目的は、発熱部を冷却する冷却ガスを機内循環させるファンの効率を向上させる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明に係わる回転電機は、回転子と、固定子と、前記回転子の回転軸に取り付けられて、前記回転子および固定子を冷却するための冷却ガスを前記回転子および固定子の発熱部に誘導する軸流ファンと、前記回転子および固定子を冷却して温度上昇した前記冷却ガスを冷却するガス冷却手段と、前記軸流ファンに対して同心円状に設けられて、前記ガス冷却手段から前記軸流ファンまでの前記冷却ガスの流路を形成する隔板と、前記隔板における外周部分から中空部分にかけて配置され、かつ、当該隔板における前記流路内を向く平板部分から前記回転子の鉄心の軸方向に沿って延出して設けられ、前記冷却ガスを前記隔板の外周部分から中空部分までの間を介して前記軸流ファンに誘導するための案内羽根として機能する補強梁とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転電機の冷却ガス循環用のファン効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の一例を示す横断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の一例を示す正面図。
【図3】本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第1の変形例を示す正面図。
【図4】本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第2の変形例を示す正面図。
【図5】本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第3の変形例を示す横断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第3の変形例を示す正面図。
【図7】本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第4の変形例を示す正面図。
【図8】本発明の第2の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の一例を示す横断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の変形例を示す横断面図。
【図10】本発明の第3の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の一例を示す横断面図。
【図11】本発明の第3の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第1の変形例を示す横断面図。
【図12】本発明の第3の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第2の変形例を示す横断面図。
【図13】従来の回転電機の断面形状と冷却ガスの全体通風フローの一例を示す図。
【図14】従来の回転電機の回転子端部近傍の断面形状と冷却ガスの通風フローの一例を示す図。
【図15】従来の回転電機の回転子端部近傍の上面から見た断面形状と冷却ガスの通風フローの一例を示す図。
【図16】従来の回転電機の隔板の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の一例を示す横断面図である。
図1では、ラジアルフロー方式の回転電機の横断面形状を示している。この回転電機内には、回転子(ロータ)鉄心1と固定子(ステータ)鉄心2が同心円状にガスギャップ3を介して配置される。ガスギャップ3は、固定子鉄心2の内周側および回転子鉄心1の外周側の間に形成され、固定子鉄心2、固定子コイル2aおよび回転子鉄心1、回転子コイル(図示せず)を冷却する冷却ガス4を通すための隙間である。この回転電機では、回転子軸1aに取り付けた軸流ファン5により冷却ガス4を機内に流通させて固定子鉄心2、固定子コイル2aおよび回転子鉄心1、回転子コイルの冷却を行なっている。
【0018】
回転子軸1aには、冷却ガス4をガスギャップ3に導くための軸流ファン5が取り付けられる。軸流ファン5の後流からガスギャップ3に導かれた冷却ガス4は、固定子鉄心2、固定子コイル2aおよび回転子鉄心1を冷却しながら当該固定子鉄心2の隙間を通る。
【0019】
この回転電機の筐体をなすためのフレーム6沿いには、導風路7が固定子鉄心2の軸方向に沿って設けられる。固定子鉄心2の隙間を通った冷却ガス4は導風路7に導かれ、図1に示すように固定子鉄心2の軸方向中央部から外側に向かった方向の冷却ガス4の流れを形成する。
【0020】
この導風路7の後流には、固定子鉄心2、固定子コイル2aおよび回転子鉄心1を冷却して温度上昇した冷却ガス4を冷却するためのガス冷却器(クーラ)8が設けられる。固定子鉄心2の軸方向中央部から外側に向かった先には回転子軸1aを支持して回転電機の筐体の一部をなすベアリングブラケット9が設けられる。また、ガス冷却器8の排出口8aは、隔板10の外周部分のうちガス冷却器8から回転子鉄心1に向かう方向に沿った、回転子鉄心1の中心部分を介して対向する2箇所の部分の近傍に設けられる。
【0021】
また、冷却ガス4を排出口8aから軸流ファン5の上流まで導くための、中空部分を有する円板形状の隔板10が、軸流ファン5に対して同心円状に、かつ、ベアリングブラケット9の平板部分に対向して設けられる。
【0022】
回転電機には、ガス冷却器8で冷却された冷却ガス4の流路がガス冷却器8から回転子鉄心1に向かう方向に沿って形成されており、また、隔板10の中空部分側の端部には、軸流ファン5における回転子軸1aからみた先端部の近傍を通過するように固定子鉄心2の軸方向中央部に向かって湾曲して絞り形状をなし、ファンノズルリング11が取り付けられる。
【0023】
つまり、導風路7に導かれた冷却ガス4は、ガス冷却器8を通ることで冷却されて排出口8aから排出されて隔板10の中空部分および軸流ファン5を介してガスギャップ3に導かれ、回転電機内の一連の流れを形成することになる。
【0024】
次に、隔板10の構成について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の一例を示す正面図である。
図2では、軸流ファン5の上流側から見た断面形状を示しており、隔板10の外周部分にはフレーム12が取り付けられる。また、隔板10の平板部分における外周部分から中空部分までにかけて直線状をなして配置されて、冷却ガス4を隔板10の外周部分から中空部分への案内羽根として機能する補強梁13が隔板10の周方向に沿った等間隔に複数設けられる。この補強梁13は、隔板10におけるベアリングブラケット9を向く、つまり流路内を向く平板部分から固定子鉄心2の軸方向に沿った方向に沿って延出される。
【0025】
つまり、ガス冷却器8の排出口8aから排出された冷却ガス4は、隔板10の補強梁13により、隔板10の周方向における流量が偏ることが無いように修正された上で隔板10の中空部分から軸流ファン5に導かれることになる。
【0026】
つまり、この実施形態では、回転電機は、ガス冷却器8の排出口8aから回転子軸1b上に設けられた軸流ファン5に至るまでの隔板10の補強梁13を隔板10から延出することで、冷却ガス4を隔板10の中空部分を介して軸流ファン5へ誘導する案内羽根機能を有する。
【0027】
以上のように、本発明の第1の実施形態における回転電機では、ガス冷却器の排出口から回転子軸上の軸流ファンに至るまでの隔板の補強梁に冷却ガスの案内羽根機能を持たせることによって、周方向に均一配置されていないガス冷却器排出口から偏って排出される冷却ガスを整流することができ、軸流ファンでの冷却ガスの流入部での通風損失の低減が期待できるので、回転電機内の冷却効率を向上させることができ、回転電機全体の効率向上を図ることができる。
【0028】
図3は、本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第1の変形例を示す正面図である。
図3に示すように、この変形例では、隔板10における補強梁13は、隔板10の外周部分から中空部分にかけて湾曲して配置され、隔板10の外周部分の端部における補強梁13の周方向の設置間隔はガス冷却器8の排出口8aにおける回転子鉄心1の中心部から最短に位置する箇所に近いほど狭くなり、当該中心部から遠いほど広くなる。また、隔板10の中空部分の端部における補強梁13の設置間隔は均一である。
【0029】
このように、回転電機内の隔板の外周部分における補強梁の設置間隔を、ガス冷却器の排出口に近くなるにつれて狭くすることによって、冷却ガスの前述した整流効果に加え、軸流ファンの回転方向に沿った冷却ガスの流量分布をより均一に近づけることができ、軸流ファンのファン効率の向上が期待できる。つまり、回転電機の既構成部品の形状を利用し、機内の冷却ガス循環用の軸流ファンの上流における冷却ガスの流動を改善して、運転時の軸流ファンのファン効率の向上を実現することができる。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第2の変形例を示す正面図である。
図4に示すように、この変形例では、隔板10における補強梁13は、隔板10の外周部分から中空部分にかけて直線状をなして配置される。また、隔板10の外周部分の端部における補強梁13の周方向の設置間隔、および隔板10の中空部分の端部における補強梁13の周方向の設置間隔は、ガス冷却器8の排出口8aにおける回転子鉄心1の中心部から最短に位置する箇所に近いほど狭くなり、ガス冷却器8の排出口8aから遠いほど広くなる。
【0031】
このように、ガス冷却器の排出口に近い部分については隔板の補強梁の周方向の設置間隔を密にし、排出口から遠い部分については疎にすることで、圧力損失を利用して冷却ガスの周方向の流量分布をより均一に近づけることができるので、製造コストを大幅に向上させること無く、軸流ファンのファン効率のさらなる向上を図ることができる。
【0032】
図5は、本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第3の変形例を示す横断面図である。図6は、本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第3の変形例を示す正面図である。
図5に示すように、この変形例では、隔板10の中空部分側における補強梁13の端部は、ファンノズルリング11における隔板10の中空部分側に連なり、かつ、軸流ファン5における回転子軸1aからみた先端部であるファンチップ部の近傍まで回転子鉄心1の軸方向中心部に向けて湾曲するように延出される。また、軸流ファン5における回転子軸1aからみた先端部には、当該先端部とファンノズルリング11との間の空隙を埋めるためのブラシシール14が取り付けられる。
【0033】
このように、回転電機内の隔板の補強梁を延長し、かつ、軸流ファンのファンチップ部に隔板との空隙を埋めるためのシール機構を設けることにより、前述した整流効果に加えて、冷却ガスのファンチップ部での2次流れや逆流現象による通風損失を低減することができるので、軸流ファンのファン効率のさらなる向上が期待できる。
【0034】
図7は、本発明の第1の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第4の変形例を示す正面図である。
この変形例では、補強梁13の形状を軸流ファン5に対して予旋回を与える形状としており、隔板10における補強梁13は、隔板10の中空部分から外周部分に向かうまでに湾曲している。この湾曲方向は、ロータ鉄心の回転方向15に沿った方向である。また、隔板10の中空部分の端部における補強梁13の設置間隔は均一である。
【0035】
このように、回転電機内の隔板の補強梁の形状を軸流ファンに対して予旋回を与える形状とすることで、前述した整流効果に加えて、冷却ガスのファン流入角を調整して冷却ガスに軸流ファンの設計に近い流入角を与えることが可能となり、軸流ファンのファン効率のさらなる向上が期待できる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態における構成のうち第1の実施形態で示したものと同一部分の説明は省略する。
図8は、本発明の第2の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の一例を示す横断面図である。
図8では、ラジアルフロー方式の回転電機の横断面形状を示しており、この実施形態では、隔板10の中空部分側における補強梁13の端部は、ファンノズルリング11における隔板10の中空部分側に連なり、かつ、軸流ファン5における回転子軸1aからみた先端部であるファンチップ部の近傍まで回転子鉄心1の軸方向中心部に向けて湾曲するように延長される。また、この延長部分のうち前記回転子鉄心に近い端部におけるベアリングブラケット9側からみて軸流ファン5の直前の位置には、軸流ファン5に対向する静翼21が取り付けられる。
【0037】
以上のように、本発明の第2の実施形態における回転電機では、ガス冷却器の排出口から回転子軸上の軸流ファンに至るまでの隔板の補強梁を設けて案内羽根機能を持たせ、この補強梁を軸流ファン直前まで延長し、軸流ファンに対する静翼構造を付帯させるようにしたので、周方向に均一配置されていないガス冷却器排出口から排出される冷却ガスの整流効果に加えて、冷却ガスのファン流入角を調整することが可能となり、軸流ファンのファン効率のさらなる向上が期待できる。
【0038】
図9は、本発明の第2の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の変形例を示す横断面図である。
この変形例では、補強梁13に対して静翼21を着脱可能にして交換が行なえるように、隔板10の中空部分側における補強梁13の端部は、ファンノズルリング11における隔板10の中空部分側に連なり、かつ、軸流ファン5における回転子軸1aからみた先端部であるファンチップ部の近傍まで回転子鉄心1の軸方向中心部に向けて湾曲するように延長され、この延長部分のうち前記回転子鉄心に近い端部におけるベアリングブラケット9からみて軸流ファン5の直前の位置には取付座22が取り付けられ、この取付座22に対して静翼21が取り付けられる。
【0039】
このように、回転電機の隔板の補強梁に静翼構造を直接付帯させるのではなく、隔板の補強梁の先端に静翼構造を取り付けることが可能な座を設けることによって、軸流ファンのファン効率の向上の効果に加え、隔板の組み立て性の向上や隔板を同一設計とする量産効果を得ることができる。
【0040】
なお、本実施形態で説明した隔板10や補強梁13の構成は、第1の実施形態で説明した各種の変形例で説明した構成としてもよい。
【0041】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の一例を示す横断面図である。
図10では、ラジアルフロー方式の発電機の横断面形状を示しており、第1,第2の実施形態のように隔板10上に補強梁13を設ける代わりに、回転電機内のベアリングブラケット9に対しガス誘導梁31を設ける。
【0042】
ガス誘導梁31は、ベアリングブラケット9の平板部分における外周部分から中心部分までにかけて直線状をなして配置されて、かつ、ベアリングブラケット9の平板部分から隔板10に向かって延出され、隔板10の周方向に沿って等間隔に複数設けられる。
【0043】
つまり、ガス冷却器8の排出口8aから排出された冷却ガスは、ガス誘導梁31により、ベアリングブラケット9の周方向における流量が均一に修正された上で隔板10の中空部分から軸流ファン5に導かれることになる。
【0044】
つまり、この実施形態では、ガス冷却器の排出口から回転子軸上の軸流ファンに至るまでの空間において、ベアリングブラケットに隔板の補強梁と同様の構造を付帯させ、軸流ファンの上流へ誘導する案内羽根機能を持たせている。
【0045】
以上のように、本発明の第3の実施形態における回転電機では、ガス冷却器排出口から回転子軸上の軸流ファンに至るまでの空間において、ベアリングブラケットに隔板の補強梁と同様の構造を付帯させることでファン上流へ誘導する案内羽根機能を持たせるようにしたので、周方向に均一配置されていないガス冷却器排出口から偏って排出される冷却ガスを整流することができ、軸流ファンの流入部での通風損失の低減が期待できる。
【0046】
図11は、本発明の第3の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第1の変形例を示す横断面図である。
この変形例では、軸流ファン上流へ誘導する案内羽根機能を隔板およびベアリングブラケット側の両方に設けている。詳しくは、図10に示した構成に加え、第1の実施形態で説明したように、隔板10の平板部分における外周部分から中空部分の間には、補強梁13が隔板10の周方向に沿って等間隔に複数設けられ、隔板10の平板部分からベアリングブラケット9に向かって延出される。
【0047】
つまり、ガス冷却器8の排出口8aから排出された冷却ガス4は、補強梁13およびガス誘導梁31により、隔板10の周方向における流量が偏ることが無いように修正された上で隔板10の中空部分から軸流ファン5に導かれることになる。
【0048】
このように、回転電機内の冷却ガスの案内羽根機能を隔板およびベアリングブラケット側の両方に設けることによって、上記整流効果に加え、それぞれの梁の張り出し高さを低くすることができるので、隔板の強度を維持した状態で、回転電機の製造性や組み立て性を向上させることができる。
【0049】
図12は、本発明の第3の実施形態における回転電機の軸流ファン近傍の通風構造の第2の変形例を示す横断面図である。
この変形例では、ガス誘導梁31の流路内を向く延出部分の先端部分は隔板10における流路内を向く先端部分に近接し、これらの先端部分の間に封止部材をさらに設けた構成としている。具体的には、図11に示した構成に加え、ブラシシール32が補強梁13(本図では図示せず)とガス誘導梁31の間の隙間を埋めるように設けられる。
【0050】
つまり、この変形例では、冷却ガスを軸流ファン上流へ誘導する案内羽根機能を隔板およびベアリングブラケット側の両方に設け、さらに、その両者の案内羽根機構の先端をブラシシールによりシールしている。
【0051】
このように、補強梁とガス誘導梁との間にブラシシールを設けることにより、補強梁とガス誘導梁との間の冷却ガスの流通が減少し、軸流ファンへの流路幅を固定することが可能となるので、軸流ファンのファン効率のさらなる向上が期待できる。
【0052】
なお、本実施形態で説明した隔板10や補強梁13の構成は、第1の実施形態で説明した各種の変形例で説明した構成としてもよい。
【0053】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…回転子(ロータ)鉄心、1a…回転子軸、2…固定子(ステータ)鉄心、2a…固定子コイル、3…ガスギャップ、4…冷却ガス、5…軸流ファン、6…フレーム、7…導風路、8…ガス冷却器、9…ベアリングブラケット、10…隔板、11…ファンノズルリング、12…隔板のフレーム、13…補強梁、14,32…ブラシシール、15…ロータ回転方向、21…静翼、22…取付座、31…ガス誘導梁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、
固定子と、
前記回転子の回転軸に取り付けられて、前記回転子および固定子を冷却するための冷却ガスを前記回転子および固定子の発熱部に誘導する軸流ファンと、
前記回転子および固定子を冷却して温度上昇した前記冷却ガスを冷却するガス冷却手段と、
前記軸流ファンに対して同心円状に設けられて、前記ガス冷却手段から前記軸流ファンまでの前記冷却ガスの流路を形成する隔板と、
前記隔板における外周部分から中空部分にかけて配置され、かつ、当該隔板における前記流路内を向く平板部分から前記回転子の鉄心の軸方向に沿って延出して設けられ、前記冷却ガスを前記隔板の外周部分から中空部分までの間を介して前記軸流ファンに誘導するための案内羽根として機能する補強梁と
を備えたことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記補強梁は、
前記隔板の外周部分における周方向に沿った設置間隔が前記ガス冷却手段からの前記冷却ガスの排出口に近くなるにつれて狭くなるように当該隔板の外周部分から中空部分にかけて湾曲させて配置した
ことを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記補強梁は、
前記隔板の外周部分および中空部分における周方向に沿った設置間隔が前記冷却手段からの前記冷却ガスの排出口に近くなるにつれて狭くなるように当該隔板の外周部分から中空部分にかけて直線状に配置した
ことを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項4】
前記補強梁における前記隔板の中空部分側の端部を前記軸流ファンの近傍に延長し、
前記隔板と前記軸流ファンにおける先端部分との間隙にブラシシールを設けた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の回転電機。
【請求項5】
前記補強梁を、前記軸流ファンの回転方向に対して予旋回を与える形状とした
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回転電機。
【請求項6】
前記補強梁における前記隔板の中空部分側の端部を前記軸流ファンの近傍に延長し、
当該延長部分における前記回転子の鉄心に近い端部に前記軸流ファンに対向する静翼を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項7】
前記静翼は、
前記補強梁の延長部分における前記回転子の鉄心に近い端部に対して、着脱可能な部材を介して取り付けられる
ことを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
回転子と、
固定子と、
前記回転子の回転軸を軸支するベアリングブラケットと、
前記回転子の回転軸に取り付けられて、前記回転子および固定子を冷却するための冷却ガスを機内に誘導する軸流ファンと、
前記回転子および固定子を冷却して温度上昇した前記冷却ガスを冷却するガス冷却手段と、
前記軸流ファンに対して同心円状に設けられて前記ベアリングブラケットに対向することで、前記ガス冷却手段から前記軸流ファンまでの前記冷却ガスの流路を形成する隔板と、
前記ベアリングブラケットにおける外周部分から中心部分にかけて配置され、かつ、前記流路内を向く平板部分から前記回転子の鉄心の軸方向に沿って延出して設けられ、前記隔板の外周部分から中空部分までの間を介して前記軸流ファンに誘導するための案内羽根として機能するガス誘導梁と
を備えたことを特徴とする回転電機。
【請求項9】
前記隔板における外周部分から中空部分にかけて配置され、かつ、当該隔板における前記流路内を向く平板部分から前記回転子の鉄心の軸方向に沿って延出して設けられ、前記冷却ガスを前記隔板の外周部分から中空部分までの間を介して前記軸流ファンに誘導するための案内羽根として機能する補強梁をさらに備えた
ことを特徴とする請求項8に記載の回転電機。
【請求項10】
前記ガス誘導梁の前記流路内を向く延出部分の先端部分は前記隔板における前記流路内を向く先端部分に近接し、これらの先端部分の間に封止部材をさらに設けた
ことを特徴とする請求項9に記載の回転電機。
【請求項11】
前記回転電機が発電機であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−78234(P2011−78234A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228130(P2009−228130)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】