回転電気機械装置
【課題】回転電気機械とその駆動回路とを一体化した回転電気機械装置に関し、駆動回路の構造の簡素化と駆動回路の着脱性の向上を図る。
【解決手段】回転電気機械1と、直流電力を高圧側直流母線3と低圧側直流母線4の間に接続したスイッチング素子51により交流電力に変換し回転電気機械1に供給する駆動回路2と、回転電気機械1が設置されている第1面と反対側の第2面に駆動回路2のスイッチング素子51が設置されている液冷式ヒートシンク8を備え、高圧側直流母線3及び低圧側直流母線4を絶縁物を介して互いに絶縁するように配置し、それらを層状に重ね合わせることにより直流母線部90を形成し、直流母線部90を液冷式ヒートシンク8の第2面に相対して設置し、直流母線部90の液冷式ヒートシンク8と相対している面の反対側の面において、直流電源からの直流母線給電線と、直流母線部90とを接続する。
【解決手段】回転電気機械1と、直流電力を高圧側直流母線3と低圧側直流母線4の間に接続したスイッチング素子51により交流電力に変換し回転電気機械1に供給する駆動回路2と、回転電気機械1が設置されている第1面と反対側の第2面に駆動回路2のスイッチング素子51が設置されている液冷式ヒートシンク8を備え、高圧側直流母線3及び低圧側直流母線4を絶縁物を介して互いに絶縁するように配置し、それらを層状に重ね合わせることにより直流母線部90を形成し、直流母線部90を液冷式ヒートシンク8の第2面に相対して設置し、直流母線部90の液冷式ヒートシンク8と相対している面の反対側の面において、直流電源からの直流母線給電線と、直流母線部90とを接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電気機械とその駆動回路とを一体化した回転電気機械装置に関し、駆動回路の構造の簡素化と駆動回路の着脱性の向上を図るものである。
【背景技術】
【0002】
近年の全世界的二酸化炭素排出量抑制の要求に対し、特に自動車分野においては、回転電気機械と内燃機関とを併用して二酸化炭素排出量を抑制するハイブリッド・カーと呼ばれる自動車や、回転電気機械のみを推進力とするEVと呼ばれる自動車が開発され、市場に投入されている。回転電気機械の駆動回路は回転電気機械に多量の電流を供給する必要があるため、回転電気機械に近接されることが望ましい。しかし、回転電気機械は発熱し高温になるため、特許文献1では回転電気機械(モータ本体)と駆動回路(コントローラ)の間に液冷式ヒートシンクを設置することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−292703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術(上記特許文献1)では、図5〜図9等に示すように、ヒートシンクに配置されたスイッチング素子上に、Y字状の腕及び軸を有する+側の給電用ブスバー、3本の腕及び平板部を有する−側の給電用ブスバー等の部品を配置して組み立てている。
そのために、特別な形状を有する給電用ブスバー等の部品を用意する必要がある。また、それらの給電用ブスバー等の部品をスイッチング素子上に配置して組み立てる作業が複雑となり作業性が問題となる。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構造の直流母線部をスイッチング素子上に設置し、直流母線部と外部からの直流給電線とを作業性良く接続することができる回転電気機械装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による回転電気機械装置は、
交流配線を介して電力が供給され回転軸が回転する回転電気機械と、
直流電源から直流母線給電線を介して供給される直流電力を、高圧側直流母線と低圧側直流母線の間に接続したスイッチング素子により交流電力に変換し、交流配線を介して回転電気機械に供給する駆動回路と、
第1面が回転電気機械の回転軸が延伸する端面と反対側の端面に設置され、第1面と反対側の第2面に駆動回路のスイッチング素子が設置されている液冷式ヒートシンクとを備え、
高圧側直流母線及び低圧側直流母線を、ヒートシンク側絶縁物、中間絶縁物及び電源側絶縁物の間に互いに絶縁するように配置し、それらを層状に重ね合わせることにより直流母線部を形成し、
直流母線部を液冷式ヒートシンクの第2面に相対して設置し、
直流母線部の液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面において、直流電源からの直流母線給電線と、高圧側直流母線及び低圧側直流母線とを接続する構成としたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の回転電気機械装置によれば、高圧側直流母線及び低圧側直流母線を絶縁物を介して層状に重ね合わせることにより直流母線部を形成しているので、高圧側直流母線及び低圧側直流母線を単純な構造に纏めることができ、取り扱いが簡便となると共に製造コストが安価となる。
また、この層状に纏めた直流母線部を液冷式ヒートシンクの第2面に相対して設置するようにしたので、直流母線部の取り付けの作業性が向上する。
さらに、直流母線部の液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面において、直流電源からの直流母線給電線と、高圧側直流母線及び低圧側直流母線とを接続する構成としたので、直流母線給電線を、駆動回路のスイッチング素子を回転電気機械の液冷式ヒートシンクに搭載した状態で、回転電気機械の回転軸が延伸する方向の反対方向から着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1による回転電気機械装置の回路構成を示す図である。
【図2】実施の形態1によるスイッチング素子の一例を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1による回転電気機械装置の構造を示す外形図である。
【図4】実施の形態1によるスイッチング素子を示す外形図である。
【図5】実施の形態1による交流出力端での接続方法を説明する部分断面図である。
【図6】実施の形態1による高圧側直流母線及び低圧側直流母線を示す平面図である。
【図7】実施の形態1による電源側絶縁シート、中間絶縁板、及びヒートシンク側絶縁シートを示す平面図である。
【図8】実施の形態1による高圧側直流母線給電端及び高圧側直流端の接続方法を説明する部分断面図である。
【図9】実施の形態1による低圧側直流母線給電端および低圧側直流端の接続方法を説明する部分断面図である。
【図10】実施の形態1による制御信号変換部の基板を示す平面図である。
【図11】実施の形態1による液冷式ヒートシンクの形状を示す平面図及び断面図である。
【図12】実施の形態1による回転電気機械と液冷式ヒートシンクとの連結方法を説明する部分断面図である。
【図13】実施の形態1による駆動回路の覆部を説明する平面図及び概略断面図である。
【図14】実施の形態2による制御信号変換部を相単位で分割した基板を示す平面図である。
【図15】実施の形態2による制御信号変換部を二重化(3相二重)の単位で分割した基板を示す平面図である。
【図16】実施の形態3によるスナバ用コンデンサの搭載を示す一部断面図である。
【図17】実施の形態3によるスナバ用コンデンサを搭載したコンデンサ電極基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態に係る回転電気機械装置の回路構成を示す図である。本実施の形態の回転電気機械装置は、回転電気機械1と駆動回路2とが一体的に連結された状態で例えば自動車に搭載される。回転電気機械1は、図示しない固定子、回転子、回転子に固定された回転軸等を備え、交流配線11を介して交流電力が供給され回転軸が回転する。回転電気機械1は、駆動回路2や他の回路や装置の故障の場合に備えて多重化される場合が普通であるが、ここでは説明の簡便のため三相一重の場合について説明する。回転電気機械1が三相一重であることから、回転電気機械1と駆動回路2との間の交流配線11は、11a、11b、11cの3本となる。交流配線11の駆動回路2との接続部を交流出力端21(21a、21b、21c)とする。また、回転電気機械1の回転角ないし角速度を検出するセンサ1aのセンサ信号が、回転電気機械1から後述する制御信号変換部7へ出力される。センサ信号出力線の駆動回路2との接続部をセンサ端22とする。
【0010】
駆動回路2には、高圧側直流母線3と低圧側直流母線4とが存在する。また、駆動回路2には、高圧側直流母線3と低圧側直流母線4との双方に接続されるスイッチング部5とスナバ用コンデンサ6とが存在する。回転電気機械1が三相一重であることから、スイッチング部5にはスイッチング素子51として、a相のスイッチング素子51a、b相のスイッチング素子51b、c相のスイッチング素子51cの3個存在する。スイッチング素子51(51a、51b、51c)は、例えば、図2に示すように、それぞれ、2個のIGBT511及びIGBT512と、1個のレベルシフト回路513から構成され、IGBT511のコレクタが高圧側直流母線3に、IGBT512のエミッタが低圧側直流母線4に接続され、IGBT511のエミッタとIGBT512のコレクタと交流出力端21とが互いに接続される。IGBT511のゲートとエミッタには、それぞれ、後述する制御信号変換部7の出力である信号GHとEHとがレベルシフト回路513でIGBT511をスイッチングするに適した電位に変換されて、入力される。IGBT512のゲートとエミッタには、後述する制御信号変換部7の出力である信号GLとELとがそれぞれ入力される。ここで、スイッチング素子51の、高圧側直流母線3との接続部を高圧側直流端53とし、低圧側直流母線4との接続部を低圧側直流端54とする。またスイッチング素子51の制御信号変換部7との接続部を制御信号入力端52とする。
【0011】
制御信号変換部7は、回転電気機械1からのセンサ信号を回転電気機械装置外の制御回路(図示せず)に適した電位に変換して制御回路へ出力する。また、制御信号変換部7は、制御回路(図示せず)から入力されるスイッチング素子511をON状態とOFF状態とに切り換える信号とスイッチング素子512をON状態とOFF状態とに切り換える信号とから、スイッチング素子511とスイッチング素子512とが同時にON状態となり高圧側直流母線3と低圧側直流母線4とが短絡しない処理を施したスイッチング素子511の差動切換信号GHとEHおよびスイッチング素子512の差動切換信号GLとELを生成して出力する。なお、制御信号変換部7の詳細については後述する。
【0012】
スイッチング素子51は、自己の放熱と回転電気機械1からの発熱の遮断のため、液冷式ヒートシンク8の上に設置される。
【0013】
また、以降の説明のために、高圧側直流母線3と回転電気機械装置外の高圧直流電源(図示せず)との接続部を高圧側直流母線給電端23、低圧側直流母線4と高圧直流電源(図示せず)との接続部を低圧側直流母線給電端24とする。更に、制御信号変換部7を動作させるための電源を回転電気機械装置外の低圧直流電源(図示せず)から供給する接続部を低圧電源給電端25とし、制御回路(図示せず)から制御信号変換部7への入力信号および制御信号変換部7から制御回路(図示せず)へのセンサ出力の制御回路(図示せず)との接続部を制御信号入出力端26とする。
【0014】
次に、この発明に係る回転電気機械装置の全体構造について図3を用いて説明する。例えば円柱形又は円筒形をした液冷式ヒートシンク8は、液冷式ヒートシンク8の底面の1つである第1面が回転電気機械1の回転軸12が延伸する端面とは反対側の端面覆部13に接触するように取り付けられる。駆動回路2の部品であるスイッチング素子51は、液冷式ヒートシンク8の回転電気機械1と接触していないもう1つの底面である第2面上に接触して固定され、スイッチング素子51による発熱を液冷式ヒートシンク8へ放熱するとともに、回転電気機械1からの熱を遮断する。そして、スイッチング素子51が搭載されている液冷式ヒートシンク8の第2面には、ボス、スペーサ、台又は段差面等で支持されたドーナツ状の制御信号変換部7が設置される。高圧側直流母線3と低圧側直流母線4は、それぞれ円形形状を成して、後述するように絶縁シート又は絶縁板を介して層状に重ね合わされた直流母線部90を構成し、この直流母線部90が、制御信号変換部7の中空部又は中空部の回転軸方向に、制御信号変換部7と同様に液冷式ヒートシンク8の第2面にボス等を介して設置される。
【0015】
また、液冷式ヒートシンク8の側面部分に冷却液を液冷式ヒートシンク8に出し入れするヒートシンク冷却液入出部81が設けられている。回転電気機械1の側面部分の液冷式ヒートシンク8に近い方に液冷式ヒートシンク8から排出された冷却液の吸入口である回転電気機械冷却液流入部14が、回転電気機械1の側面部分の液冷式ヒートシンク8に遠い方に回転電気機械冷却液流出部15が設けられている。ヒートシンク冷却液入出部81の冷却液排出口と回転電気機械冷却液流入部14とはホース又は管により連結される。またヒートシンク冷却液入出部81の冷却液吸入口と回転電気機械冷却液流出部15とは、それぞれ回転電気機械装置外の冷却液用ポンプ(図示せず)にホース又は管により連結される。
【0016】
次に、この発明の実施の形態に係る回転電気機械装置の各部分の詳細な構造について図を用いながら説明する。
【0017】
図4に示すように、スイッチング素子51(51a、51b、51c)は、100アンペア(A)を超える電流が流れるため、高圧側直流母線3と繋がるP端子56、低圧側直流母線4と繋がるN端子57、回転電気機械1と繋がる出力端子58はそれぞれネジで配線を固定するようになっている。また、スイッチング素子51の制御信号変換部7からの信号を入力する制御信号入力端子55は、板状又は針状の金属で形成されている。さらに、スイッチング素子51は取り付け部59においてネジで液冷式ヒートシンク8に固定される構造である。
【0018】
図5を用いて、交流出力端21における接続方法について説明する。液冷式ヒートシンク8上に搭載されたスイッチング素子51の出力端子58にL字金属板211がネジ212により固定される。制御信号変換部7の基板の回転電気機械1側の面にタップ加工済基板上金具213が半田付けされており、タップ加工済基板上金具213のタップ加工部分においてL字金属板211とネジ214で接続される。交流配線11の端部に設けられたカシメ金具111は、制御信号変換部7の基板の液冷式ヒートシンク8とは反対側の基板面上のランドにおいて、ネジ215とナット216とにより固定される。カシメ金具111が固定されるランドとタップ加工済基板上金具213とは制御信号変換部7の基板上で必要な線幅又は線厚を有して接続されることにより、スイッチング素子51の出力端子58と交流配線11とが電気的に接続される。交流出力端21はこのように接続されるため、回転電気機械1に接続されている交流配線11は、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向と反対側の端面側から着脱することが可能になる。
【0019】
次に、高圧側直流端53および低圧側直流端54の接続方法を説明する前に、高圧側直流母線3及び低圧側直流母線4の構造について説明する。
本実施の形態では、液冷式ヒートシンク8に近い方から、それぞれ円形形状のヒートシンク側絶縁シート93(図7(c))、低圧側直流母線4(図6(b))、中間絶縁板92(図7(b))、高圧側直流母線3(図6(a))、電源側絶縁シート91(図7(a))を順に層状に重ね合わせ、それぞれに開けられた穴94(図6と図7に記載)において絶縁ネジで固定することにより、直流母線部90を構成する。この直流母線部90は、液冷式ヒートシンク8から延びたボス、スペーサ、台、又は段差面等の支持手段を用いてネジにより、液冷式ヒートシンク8に固定されるが、直流母線部90と液冷式ヒートシンク8とは絶縁されている。高圧側直流母線3及び低圧側直流母線4は銅等の導体で製作され、電源側絶縁シート91と中間絶縁板92とヒートシンク側絶縁シート93は、それぞれ絶縁物で製作される。
【0020】
以下の説明の都合上、高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続するネジ、及び低圧側直流母線4にスイッチング素子51のN端子57からの導体を接続するネジを通す穴の半径の値をr1とする。また、高圧側直流母線3と低圧側直流母線4との電圧差に因る必要絶縁距離の値をdとする。dの値には電圧差100ボルト(V)に対して1ミリメートル(mm)の割合を採用することが一般的である。
【0021】
高圧側直流母線3と低圧側直流母線4との外形寸法は、電源側絶縁シート91、中間絶縁板92、及びヒートシンク側絶縁シート93の外形寸法より必要絶縁距離dだけ小さく作られる。
図6(b)に示すように、低圧側直流母線4には、低圧側直流母線4にスイッチング素子51のN端子57からの導体を接続する場合に使用する半径r1の穴42(42a、b、c)と、半径r2の穴41(41a、b、c)とが開けられている。穴41は後述する高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続する場合に使用する穴31と同心円の位置に存在する。また、低圧側直流母線4の中心部分には、高圧直流電源からの低圧側直流供給線を接続するタブ状の電極43が設けられている。なお、半径r2の値に関しては、(式1)を満たす値が採用される。
r2≧r1+d ・・・ (式1)
【0022】
図6(a)に示すように、高圧側直流母線3には、高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続する場合に使用する半径r1の穴31(31a、b、c)と、低圧側直流母線4の穴42と同心円の位置に半径r2の穴32(32a、b、c)とが開けられている。また、高圧側直流母線3の中心部分には、上記低圧側直流母線4の電極43から距離d隔たった穴33が開けられている。更に、高圧側直流母線3には高圧直流電源からの高圧側直流供給線を接続するタブ状の電極34が設けられている。
【0023】
図7(a)に示すように、電源側絶縁シート91には、高圧側直流母線3の穴31と同心円の位置に半径r3の穴911(911a、b、c)と、低圧側直流母線4の穴42と同心円の位置に半径r3の穴912(912a、b、c)とが開けられている。また、電源側絶縁シート91には高圧側直流母線3の電極34と低圧側直流母線4の電極43とを通す穴913が開けられている。更に、前述のとおり、電源側絶縁シート91には直流母線部90を構成するための接続用穴94が開けられている。半径r3には、高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続するネジ、及び低圧側直流母線4にスイッチング素子51のN端子57からの導体を接続するネジの頭の半径よりやや大きい値を採用する。
【0024】
図7(b)に示すように、中間絶縁板92には、高圧側直流母線3の穴31と同心円の位置に半径r1の穴921(921a、b、c)と、低圧側直流母線4の穴42と同心円の位置に半径r1の穴922(922a、b、c)とが開けられている。また、中間絶縁板92には、低圧側直流母線4の電極43を通す穴923が開けられている。更に、前述のとおり、中間絶縁板92には直流母線部90を構成するための接続用穴94が開けられている。
【0025】
図7(c)に示すように、ヒートシンク側絶縁シート93には、高圧側直流母線3の穴31と同心円の位置に半径r4の穴931(931a、b、c)と、低圧側直流母線4の穴42と同心円の位置に半径r4の穴932(932a、b、c)とが開けられている。また、前述のとおり、ヒートシンク側絶縁シート93には直流母線部90を構成するための接続用穴94が開けられている。半径r4には、高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続するネジ、及び低圧側直流母線4にスイッチング素子51のN端子57からの導体を接続するネジに使用するナットの半径よりやや大きい値を採用する。
【0026】
次に、高圧側直流母線3における高圧側直流母線給電端23および高圧側直流端53での接続方法について、図8を用いて説明する。
まず、高圧側直流端53での接続方法について説明する。液冷式ヒートシンク8上に搭載されたスイッチング素子51のP端子56において、P端子用金属板531の一端がネジ532によりP端子56に固定される。P端子用金属板531の他端は直流母線部90の高圧側直流母線3の穴31の下部に導かれ、電源側絶縁シート91の穴911、高圧側直流母線3の穴31、中間絶縁板92の穴921、低圧側直流母線4の穴41、ヒートシンク側絶縁シート93の穴931を貫通するように、ネジ533が通される。そして、ネジ533はP端子用金属板531と一緒にナット534で接続される。このように接続すると、P端子用金属板531は中間絶縁板92とナット534とに挟まれ、低圧側直流母線4とは接触せず、ネジ533の頭は高圧側直流母線3に接続された状態になる。高圧側直流端53においてスイッチング素子51のP端子56と直流母線部90の高圧側直流母線3はこのように接続されるため、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側で高圧側直流端53を接続することが可能になる。
【0027】
次に、高圧側直流母線給電端23での接続方法について説明する。高圧側直流母線給電線231の一方の端部に設けられたカシメ金具232は、高圧側直流母線3の電極34において、ネジ233とナット234とにより接続される。高圧側直流母線給電線231の他端が高圧直流電源の高圧側に接続されることにより、スイッチング素子51のP端子56には、低圧側直流母線4と短絡することなく、高圧側の直流電位が供給される。なお、図8においては、高圧側直流母線3の電極34が、高圧側直流母線3の中心と穴31の中心とを通る直線上に存在するように記載したが、これは図8を簡便にするためのもので、電極34の位置は低圧側直流母線4の電極43から距離dだけ離れている場所であればよい。また、電極34は、高圧側直流母線3の一部を切り曲げて形成することも可能であるし、高圧側直流母線3とは別の導体で電極を作成し、溶接や半田、リペット等で接合することも可能である。高圧側直流母線給電端23はこのように接続されるため、高圧直流電源に接続されている高圧側直流母線給電線231は、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0028】
次に、低圧側直流母線4における低圧側直流母線給電端24および低圧側直流端54での接続方法について、図9を用いて説明する。
まず、低圧側直流端54での接続方法について説明する。液冷式ヒートシンク8上に搭載されたスイッチング素子51のN端子57において、N端子用金属板541の一端がネジ542によりN端子57に固定される。N端子用金属板541の他端は直流母線部90の低圧側直流母線4の穴42の下部に導かれ、電源側絶縁シート91の穴912、高圧側直流母線3の穴32、中間絶縁板92の穴922、低圧側直流母線4の穴42、ヒートシンク側絶縁シート93の穴932を貫通するように、ネジ543が通される。そして、ネジ543はN端子用金属板541と一緒にナット544で接続される。このように接続すると、N端子用金属板541は低圧側直流母線4とナット534とに挟まれネジ543の頭は高圧側直流母線3に接触することなく中間絶縁板92を押す状態になる。低圧側直流端54においてスイッチング素子51のN端子57と直流母線部90の低圧側直流母線4はこのように接続されるため、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側で低圧側直流端54を接続することが可能になる。
【0029】
次に、低圧側直流母線給電端24での接続方法について説明する。低圧側直流母線給電線241の一方の端部に設けられたカシメ金具242は、低圧側直流母線4の電極43に対して、ネジ243とナット244とにより接続される。低圧側直流母線給電線241の他端が高圧直流電源の低圧側に接続されることにより、スイッチング素子51のN端子57には、高圧側直流母線3と短絡することなく、低圧側の直流電位が供給される。なお、電極43は、低圧側直流母線4の一部を切り曲げて形成することも可能であるし、低圧側直流母線4とは別の導体で電極を作成し、溶接や半田、リペット等で接合することも可能である。低圧側直流母線給電端24はこのように接続されるため、高圧直流電源に接続されている低圧側直流母線給電線241は、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0030】
上記では、直流母線部90は、液冷式ヒートシンク8に近い方から、ヒートシンク側絶縁シート93、低圧側直流母線4、中間絶縁板92、高圧側直流母線3、電源側絶縁シート91を順に層状に重ね合わせた構造のものについて説明したが、液冷式ヒートシンク8に近い方から、ヒートシンク側絶縁シート93、高圧側直流母線3、中間絶縁板92、低圧側直流母線4、電源側絶縁シート91の順に層状に重ね合わせた構造のものであっても良い。
【0031】
次に、図4に示すスイッチング素子51の制御信号入力端子55について説明する。スイッチング素子51の制御信号は、振幅が+15Vまたは−15V程度の低圧な信号であり電流も小さい。そのため、スイッチング素子51の制御信号入力端子55のそれぞれに配線の一端を半田付けや溶接、ワイヤラッピング等により接合し、配線の他端をコネクタにして、制御信号変換部7の液冷式ヒートシンク8とは反対側の基板面に設置された受け側のコネクタ(後述するコネクタ723)に接続する。その結果、図1に示すスイッチング部5の制御信号入力端52は、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0032】
次に、本実施の形態による制御信号変換部7を図10に基づいて説明する。図10は制御信号変換部7の基板を示す平面図である。ここで、制御回路(図示せず)から入力されるスイッチング素子511(511a、b、c)をON状態とOFF状態とに切り換える信号(特許請求の範囲では制御信号と称す)をSW511(SW511a、b、c)、制御回路(図示せず)から入力されるスイッチング素子512(512a、b、c)をON状態とOFF状態とに切り換える信号(特許請求の範囲では制御信号と称す)をSW512(SW512a、b、c)とする。なお、ここで、スイッチング素子に関する添え字a、b、cは、それぞれa相、b相、c相に関連するものである。
【0033】
図10において、711(711a、b、c)は制御回路(図示せず)からの信号SW511(SW511a、b、c)の入力端、712(712a、b、c)は制御回路(図示せず)からの信号SW512(SW512a、b、c)の入力端を示す。713(713a、b、c)はスイッチング素子511(511a、b、c)とスイッチング素子512(512a、b、c)とが同時にON状態となって高圧側直流母線3と低圧側直流母線4とが短絡しない処理を行う短絡防止回路の領域を示す。721(721a、b、c)は短絡防止回路713(713a、b、c)の出力からスイッチング素子511(511a、b、c)の差動切換信号GHとEH(特許請求の範囲ではスイッチング制御信号と称す)を生成するGH/EH生成回路の領域である。722(722a、b、c)は短絡防止回路713(713a、b、c)の出力からスイッチング素子512(512a、b、c)の差動切換信号GLとEL(特許請求の範囲ではスイッチング制御信号と称す)を生成するGL/EL生成回路の領域を示す。723(723a、b、c)は差動切換信号GH、EH、GL、ELをスイッチング素子51(51a、b、c)の制御信号入力端子55へ出力するコネクタである。
【0034】
また、図10において、731(731a、b、c)は、前述した交流出力端21の接続において使用するタップ加工済基板上金具213の取り付けランドを示す。732(732a、b、c)は、交流配線11のカシメ金具111がネジ215で留められるランドを示す。そして、733(733a、b、c)はランド731(731a、b、c)とランド732(732a、b、c)との接続部分を示す。また、25は低圧電源供給端を示し、74は短絡防止回路713(713a、b、c)とGH/EH生成回路721(721a、b、c)とGL/EL生成回路722(722a、b、c)と後述するセンサ信号変換回路751とで使用する電力を生成するローカル電源回路の領域を示す。さらに、22はセンサ端、751はセンサ端22から入力されるセンサ信号を制御回路に適した電位に変換するセンサ信号変換回路の領域、752はセンサ信号変換回路751からの信号を出力するセンサ信号出力端を示す。入力端711(711a、b、c)と入力端712(712a、b、c)とセンサ信号出力端752とを併せて制御信号入出力端26が形成される。
【0035】
前述したセンサ端22や低圧電源給電端25および制御信号入出力端26に関しても、制御信号入力端52と同様にコネクタで接続することで、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0036】
図11(a)、(b)、(c)に示すように、液冷式ヒートシンク8には、前述のヒートシンク冷却液入出部81から吸入した冷却液が流れ再びヒートシンク冷却液入出部81から排出されるまでの流路部82のほかに、フランジ部83が存在する。なお、図11(b)は図11(a)のA−O−A´面での断面図であり、図11(c)は図11(a)のB−O−B´面での断面図である。フランジ部83には、交流配線11を通す穴84が開けられている。また、図11(a)と図11(c)とに示すように、液冷式ヒートシンク8には、フランジ部83の縁に回転電気機械1とボルトおよびナットにより結合するための穴を有した回転電気機械装着用タブ状突起85が存在する。回転電気機械1と駆動回路2を搭載した液冷式ヒートシンク8とを連結するには、図12(a)に示すように、一端が回転電気機械1の固定子16に接続され端面覆部13から出てくる交流配線11をフランジ部83の穴84に通し、液冷式ヒートシンク8の底面を端面覆部13に接触させる。そして、図12(b)に示すように、回転電気機械装着用タブ状突起85においてボルト851とナット852とにより連結する。回転電気機械1と液冷式ヒートシンク8とは、このように連結されているため、液冷式ヒートシンク8は回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になり、液冷式ヒートシンク8に搭載されている駆動回路2も共に着脱することが可能になる。なお、回転電気機械1の端面覆部13の交流配線11が出てくる部分には、図12(a)に示すように、埃や異物の進入阻止と防水を目的として、シール材ないし封止材17が付けられている。
【0037】
回転電気機械1は図12に示すように、端面覆部13と側面部18とにより密閉されており、埃や異物、水等の進入を阻止し、加えて電磁気雑音や騒音の放出を抑制している。これと同じ目的は、駆動回路2に対しても求められるため、液冷式ヒートシンク8には、図11(a)に示すように2種類の覆部装着用タグ状突起86及び87が設けられる。覆部装着用タグ状突起86及び87は、回転電気機械装着用タブ状突起85と同一形状であってもよいし、3種類が異なった形状であってもよい。覆部装着用タグ状突起86及び87が2種類存在するのは、液冷式ヒートシンク8の覆部を2種類の部品で構成するためである。
【0038】
図13は、液冷式ヒートシンク8に2種類の覆部27及び28を装着した状態の図である。なお、図13(b)は、図13(a)のC−O−Dの面での断面図であり、スイッチング素子51、制御信号変換部7の支持手段、及び直流母線部90の支持手段等は図面の簡便のために省略している。覆部27は、液冷式ヒートシンク8の覆部装着用タグ状突起86に重なる位置に覆部装着用タグ状突起86と同一形状のタグ状突起271を有し、覆部装着用タグ状突起86とタグ状突起271とにおいてボルト272とナット273とによって連結される。覆部28は、その上部の一部が覆部27の下部と重なる形状をしており、覆部27と同様に、覆部装着用タグ状突起87と覆部28のタグ状突起281とにおいてボルト282とナット283とによって連結される。覆部27と覆部28とでは、頂点部分に、高圧側直流母線給電線231や低圧側直流母線給電線241および制御信号変換部7に入力される制御信号、制御信号変換部7から出力されるセンサ出力が通る小さい開口部29が形成される。また、覆部27と覆部28との接触部および開口部29の周囲には、埃や異物の進入阻止と防水とを目的として、シール材又は封止材274及び284が覆部27と覆部28とにそれぞれ取り付けられている。覆部27と覆部28とは、このように液冷式ヒートシンク8に連結されているため、高圧側直流母線給電線231と低圧側直流母線給電線241とが直流母線部90に連結された状態で、かつ、制御信号とセンサ信号とが制御信号変換部7に連結された状態で、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0039】
なお、本実施の形態では、ネジとナットやネジとタップまたはボルトとナットで連結、固定、支持、位置決めする場合の説明や図面において、ワッシャや座金等の緩み防止の材料に関して言及していないが、これは説明を簡便にするための処置であり、必要な箇所には緩み防止の材料の使用や処置を施しても、本発明の目的および効果を阻害あるいは減少させるものではない。また、ナットを使用している部分は、材料の厚みを利用したタップの使用でも同じ効果を実現することが可能である。更に、本実施の形態で冷却液としている所は、効率や凍結に関して問題が無ければ、水を使用することも可能である。
【0040】
以上のように本実施の形態によれば、高圧側直流母線及び低圧側直流母線を絶縁物を介して層状に重ね合わせることにより直流母線部を形成しているので、高圧側直流母線及び低圧側直流母線を単純な構造に纏めることができ、取り扱いが簡便となると共に製造コストが安価となる。
また、この層状に纏めた直流母線部を液冷式ヒートシンクの第2面上に設置するようにしたので、直流母線部の取り付けの作業性が向上する。
さらに、直流母線部の液冷式ヒートシンクと反対側の面において、直流電源からの直流母線給電線と、高圧側直流母線及び低圧側直流母線とを接続する構成としたので、直流母線給電線を、駆動回路のスイッチング素子を回転電気機械の液冷式ヒートシンクに搭載した状態で、回転電気機械の回転軸が延伸する方向の反対方向から着脱することができる。
【0041】
実施の形態2.
実施の形態1では制御信号変換部7を1個のドーナツ状の基板とした例について説明した。しかし、例えば制御信号変換部7のa相のスイッチング素子に関わる部分が故障した場合には、制御信号変換部7の基板全体を交換することが必要になる場合がある。また、回転電気機械の各相が多重化されて制御される場合がある。このような場合に備えて、制御信号変換部7を相単位あるいは多重化の単位で分割し、分割された基板は扇形、扇面形又は台形の形状にする実施の形態が考えられる。
【0042】
図14は制御信号変換部を駆動回路の各相単位に対応して分割した基板を示す平面図である。図14において、制御信号変換部7は、それぞれ扇面形の、a相対応の制御信号変換部7a、b相対応の制御信号変換部7b、及びc相対応の制御信号変換部7cに分割されている。図14において、図10と同じ符号が付されているものは同じ構成要素を示している。なお、各相の制御信号変換部7a、7b、7cのそれぞれに、低圧電源供給端25a、b、cと、ローカル電源回路74a、b、cと、センサ端22a、b、cと、センサ信号変換回路751a、b、cと、センサ信号出力端752a、b、cが設けられている。ただし、センサ信号変換回路751a、b、cは、a相、b相、c相の各基板7a、7b、7cにそれぞれ存在するが、実際に使用するのは、これらの内の1系統(図14ではc相)のみであり、他の2系統(図14ではa相とb相)は使用せず、休止状態である。
【0043】
図15は制御信号変換部を回転電気機械の多重化(3相二重)の単位で分割した基板を示す平面図である。図15において、制御信号変換部の基板は、3相二重の制御信号変換部7及び7’に分割されている。図15において、図10と同じ符号が付されているものは同じ構成要素を示している。なお、二重目の制御信号変換部7’のそれぞれの構成要素の符号には「’」を付している。ただし、センサ信号変換回路751、751’は、一重目の制御信号変換部7及び二重目の制御信号変換部7’のそれぞれに存在するが、実際に使用するのは、片方(図では制御信号変換部7の基板)のみであり、他方(図では制御信号変換部7’の基板)は使用せず、休止状態である。
【0044】
また、制御信号変換部7には、スイッチング素子51の短絡防止のための短絡防止生成回路や無制御信号時保護回路などの付加回路が要求されて回路規模が大きくなる場合には、制御信号変換部7を単層で構成するのではなく、多層に構成し各層間はコネクタで連結する実施の形態も考えられる。
【0045】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様の効果を有すると共に、制御信号変換部の基板を経済的に製作することを可能にし、また、制御信号変換部の一部が故障した場合には、故障した部分の制御信号変換部だけを交換することにより修理時の経費および資源を小さくすることをも可能にする。更に、制御信号変換部の回路規模の増大に対応することをも可能になる。
【0046】
実施の形態3.
本実施の形態では、液冷式ヒートシンク8を円筒形のような中空部分を有する筒形とした場合、液冷式ヒートシンク8の中空部分にスナバ用コンデンサ6を搭載しスナバ用コンデンサ6が直流母線部90に近接して設置できるようにする。図16はスナバ用コンデンサ6の搭載の様子を示す一部断面図、図17はスナバ用コンデンサ6を搭載したコンデンサ電極基板61の平面図である。以下、図16及び図17に基づき本実施の形態のスナバ用コンデンサ6の搭載について説明する。
【0047】
図16及び図17において、スナバ用コンデンサ6(6a、b、c)の正極端子はコンデンサ電極基板61上の正極ランド611(611a、b、c)に、スナバ用コンデンサ6(6a、b、c)の負極端子はコンデンサ電極基板61上の負極ランド612(612a、b、c)に、それぞれ半田付けされる。コンデンサ電極基板61は多層基板であり、その中層には正電位層と負電位層とが互いに絶縁されて存在する。正極ランド611は正電位層に、また、負極ランド612は負電位層に接続される。
【0048】
コンデンサ電極基板61には、タップ加工済コンデンサ正極用金具62用のランド613と、タップ加工済コンデンサ負極用金具63用のランド614とが設置されている。ランド613はコンデンサ電極基板61の正電位層と、ランド614はコンデンサ電極基板61の負電位層と、それぞれ接続される。ランド613でタップ加工済コンデンサ正極用金具62が、ランド614でタップ加工済コンデンサ負極用金具63が、それぞれ半田付けされる。そのため、スナバ用コンデンサ6の正極端子はタップ加工済コンデンサ正極用金具62と、スナバ用コンデンサ6の負極端子はタップ加工済コンデンサ負極用金具63と、それぞれ接続されることになる。
【0049】
一方、スナバ用コンデンサ6は、コンデンサ搭載用板64と、コンデンサ支持板65と、コンデンサ搭載用板64及びコンデンサ支持板65とを連結するスペーサ66とにより、液冷式ヒートシンク8に固定される。コンデンサ搭載用板64には、スナバ用コンデンサ6が通過する開口部641と、スペーサ66を接続するネジ用穴642と、液冷式ヒートシンクに固定するネジ用穴643とが開けられている。また、コンデンサ支持板65にはスペーサ66を接続するネジ用穴651が開いている。
【0050】
次に、スナバ用コンデンサ6の取付作業について説明する。まず、コンデンサ搭載用板64の開口部641にスナバ用コンデンサ6を通した後、コンデンサ搭載用板64のネジ用穴642の位置でスペーサ66の一端をネジ留めする。コンデンサ支持板65は、スナバ用コンデンサ6の頭部に置かれ、コンデンサ支持板65のネジ用穴651の位置でスペーサ66の他端とネジ留めされる。スナバ用コンデンサ6の頭部周囲とコンデンサ支持板65とが接する箇所の全部ないし一部分は、スナバ用コンデンサ6の振動を防止し、スナバ用コンデンサ6の正極端子および負極端子の切断を防ぐ目的で、接着剤652で固定される。
【0051】
以上のようにして、スナバ用コンデンサ6、コンデンサ電極基板61、タップ加工済コンデンサ正極用金具62、タップ加工済コンデンサ負極用金具63、コンデンサ搭載用板64、及びコンデンサ支持板65とは一体化され、コンデンサ搭載用板64のネジ用穴643の位置で液冷式ヒートシンク8にネジ留めされる。
【0052】
液冷式ヒートシンク8に固定されたスナバ用コンデンサ6と一体化したタップ加工済コンデンサ正極用金具62は、直流母線部90の高圧側直流母線3にネジ621により、実施の形態1(図8)で説明した高圧側直流端53と同じ態様で連結する。また、液冷式ヒートシンク8に固定されたスナバ用コンデンサ6と一体化したタップ加工済コンデンサ負極用金具63は、直流母線部90の低圧側直流母線4にネジ631により、実施の形態1(図9)で説明した低圧側直流端54と同じ態様で連結する。
【0053】
本実施の形態によれば、上記実施の形態と同様の効果を有すると共に、スナバ用コンデンサを高圧側直流母線および低圧側直流母線に近接して設置することが可能になり、サージの発生を抑制することを可能とする。
【0054】
なお、上記の記載では、コンデンサ電極基板61と直流母線部90とを連結する金具を正極側および負極側いずれもタップ加工済の金具としたが、この連結する金具をネジとナットで接続しても、本実施の形態の効果を損なうものではない。また、上記ではコンデンサ支持板65にはスペーサ66を接続する穴651しか記載していないが、スナバ用コンデンサ6の破裂対策用の小さい穴を開けたり、防爆弁用の開口部を設けることも可能であり、本実施の形態の効果を妨げるものではない。
【0055】
実施の形態4.
実施の形態1では液冷式ヒートシンク8は、ヒートシンク冷却液入出部81、流路部82、フランジ部83、回転電気機械装着用タブ状突起85、覆部装着用タグ状突起86及び87、並びにフランジ部83内の交流配線11を通す穴84を備えると説明した。しかし、フランジ部83を幅広く製作し、交流配線11を通す穴84より外側に回転電気機械1を装着するための穴と覆い27及び28とを装着する穴の全て又は一部をフランジ部83内に設定することもできる。また、幅広くしたフランジ部83は円形である必要はなく、多角形でも楕円形でもよい。
【0056】
本実施の形態によれば、上記実施の形態と同様の効果を有すると共に、液冷式ヒートシンクの突起がなくなったり減少したりすることで駆動回路の着脱時の負傷、又は他の部品や装置、設備への破損を防止することができる。
【0057】
実施の形態5.
実施の形態1では高圧側直流母線3と低圧側直流母線4との絶縁を行う部品として中間絶縁板92を使用したが、この中間絶縁板92は必ずしも板である必要はなく、シート状の薄い部品でも良い。
【0058】
本実施の形態によれば、上記実施の形態と同様の効果を有すると共に、軽量で小型の回転電気機械装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 回転電気機械、2 駆動回路、3 高圧側直流母線、4 低圧側直流母線、
5 スイッチング部、6 スナバ用コンデンサ、7 制御信号変換部、
8 液冷式ヒートシンク、11 交流配線、12 回転軸、
23 高圧側直流母線給電端、24 低圧側直流母線給電端、51 スイッチング素子、53 高圧側直流母線端、54 低圧側直流母線端、90 直流母線部、
91 電源側絶縁シート、92 中間絶縁板、93 ヒートシンク側絶縁シート。
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電気機械とその駆動回路とを一体化した回転電気機械装置に関し、駆動回路の構造の簡素化と駆動回路の着脱性の向上を図るものである。
【背景技術】
【0002】
近年の全世界的二酸化炭素排出量抑制の要求に対し、特に自動車分野においては、回転電気機械と内燃機関とを併用して二酸化炭素排出量を抑制するハイブリッド・カーと呼ばれる自動車や、回転電気機械のみを推進力とするEVと呼ばれる自動車が開発され、市場に投入されている。回転電気機械の駆動回路は回転電気機械に多量の電流を供給する必要があるため、回転電気機械に近接されることが望ましい。しかし、回転電気機械は発熱し高温になるため、特許文献1では回転電気機械(モータ本体)と駆動回路(コントローラ)の間に液冷式ヒートシンクを設置することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−292703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術(上記特許文献1)では、図5〜図9等に示すように、ヒートシンクに配置されたスイッチング素子上に、Y字状の腕及び軸を有する+側の給電用ブスバー、3本の腕及び平板部を有する−側の給電用ブスバー等の部品を配置して組み立てている。
そのために、特別な形状を有する給電用ブスバー等の部品を用意する必要がある。また、それらの給電用ブスバー等の部品をスイッチング素子上に配置して組み立てる作業が複雑となり作業性が問題となる。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構造の直流母線部をスイッチング素子上に設置し、直流母線部と外部からの直流給電線とを作業性良く接続することができる回転電気機械装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による回転電気機械装置は、
交流配線を介して電力が供給され回転軸が回転する回転電気機械と、
直流電源から直流母線給電線を介して供給される直流電力を、高圧側直流母線と低圧側直流母線の間に接続したスイッチング素子により交流電力に変換し、交流配線を介して回転電気機械に供給する駆動回路と、
第1面が回転電気機械の回転軸が延伸する端面と反対側の端面に設置され、第1面と反対側の第2面に駆動回路のスイッチング素子が設置されている液冷式ヒートシンクとを備え、
高圧側直流母線及び低圧側直流母線を、ヒートシンク側絶縁物、中間絶縁物及び電源側絶縁物の間に互いに絶縁するように配置し、それらを層状に重ね合わせることにより直流母線部を形成し、
直流母線部を液冷式ヒートシンクの第2面に相対して設置し、
直流母線部の液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面において、直流電源からの直流母線給電線と、高圧側直流母線及び低圧側直流母線とを接続する構成としたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の回転電気機械装置によれば、高圧側直流母線及び低圧側直流母線を絶縁物を介して層状に重ね合わせることにより直流母線部を形成しているので、高圧側直流母線及び低圧側直流母線を単純な構造に纏めることができ、取り扱いが簡便となると共に製造コストが安価となる。
また、この層状に纏めた直流母線部を液冷式ヒートシンクの第2面に相対して設置するようにしたので、直流母線部の取り付けの作業性が向上する。
さらに、直流母線部の液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面において、直流電源からの直流母線給電線と、高圧側直流母線及び低圧側直流母線とを接続する構成としたので、直流母線給電線を、駆動回路のスイッチング素子を回転電気機械の液冷式ヒートシンクに搭載した状態で、回転電気機械の回転軸が延伸する方向の反対方向から着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1による回転電気機械装置の回路構成を示す図である。
【図2】実施の形態1によるスイッチング素子の一例を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1による回転電気機械装置の構造を示す外形図である。
【図4】実施の形態1によるスイッチング素子を示す外形図である。
【図5】実施の形態1による交流出力端での接続方法を説明する部分断面図である。
【図6】実施の形態1による高圧側直流母線及び低圧側直流母線を示す平面図である。
【図7】実施の形態1による電源側絶縁シート、中間絶縁板、及びヒートシンク側絶縁シートを示す平面図である。
【図8】実施の形態1による高圧側直流母線給電端及び高圧側直流端の接続方法を説明する部分断面図である。
【図9】実施の形態1による低圧側直流母線給電端および低圧側直流端の接続方法を説明する部分断面図である。
【図10】実施の形態1による制御信号変換部の基板を示す平面図である。
【図11】実施の形態1による液冷式ヒートシンクの形状を示す平面図及び断面図である。
【図12】実施の形態1による回転電気機械と液冷式ヒートシンクとの連結方法を説明する部分断面図である。
【図13】実施の形態1による駆動回路の覆部を説明する平面図及び概略断面図である。
【図14】実施の形態2による制御信号変換部を相単位で分割した基板を示す平面図である。
【図15】実施の形態2による制御信号変換部を二重化(3相二重)の単位で分割した基板を示す平面図である。
【図16】実施の形態3によるスナバ用コンデンサの搭載を示す一部断面図である。
【図17】実施の形態3によるスナバ用コンデンサを搭載したコンデンサ電極基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態に係る回転電気機械装置の回路構成を示す図である。本実施の形態の回転電気機械装置は、回転電気機械1と駆動回路2とが一体的に連結された状態で例えば自動車に搭載される。回転電気機械1は、図示しない固定子、回転子、回転子に固定された回転軸等を備え、交流配線11を介して交流電力が供給され回転軸が回転する。回転電気機械1は、駆動回路2や他の回路や装置の故障の場合に備えて多重化される場合が普通であるが、ここでは説明の簡便のため三相一重の場合について説明する。回転電気機械1が三相一重であることから、回転電気機械1と駆動回路2との間の交流配線11は、11a、11b、11cの3本となる。交流配線11の駆動回路2との接続部を交流出力端21(21a、21b、21c)とする。また、回転電気機械1の回転角ないし角速度を検出するセンサ1aのセンサ信号が、回転電気機械1から後述する制御信号変換部7へ出力される。センサ信号出力線の駆動回路2との接続部をセンサ端22とする。
【0010】
駆動回路2には、高圧側直流母線3と低圧側直流母線4とが存在する。また、駆動回路2には、高圧側直流母線3と低圧側直流母線4との双方に接続されるスイッチング部5とスナバ用コンデンサ6とが存在する。回転電気機械1が三相一重であることから、スイッチング部5にはスイッチング素子51として、a相のスイッチング素子51a、b相のスイッチング素子51b、c相のスイッチング素子51cの3個存在する。スイッチング素子51(51a、51b、51c)は、例えば、図2に示すように、それぞれ、2個のIGBT511及びIGBT512と、1個のレベルシフト回路513から構成され、IGBT511のコレクタが高圧側直流母線3に、IGBT512のエミッタが低圧側直流母線4に接続され、IGBT511のエミッタとIGBT512のコレクタと交流出力端21とが互いに接続される。IGBT511のゲートとエミッタには、それぞれ、後述する制御信号変換部7の出力である信号GHとEHとがレベルシフト回路513でIGBT511をスイッチングするに適した電位に変換されて、入力される。IGBT512のゲートとエミッタには、後述する制御信号変換部7の出力である信号GLとELとがそれぞれ入力される。ここで、スイッチング素子51の、高圧側直流母線3との接続部を高圧側直流端53とし、低圧側直流母線4との接続部を低圧側直流端54とする。またスイッチング素子51の制御信号変換部7との接続部を制御信号入力端52とする。
【0011】
制御信号変換部7は、回転電気機械1からのセンサ信号を回転電気機械装置外の制御回路(図示せず)に適した電位に変換して制御回路へ出力する。また、制御信号変換部7は、制御回路(図示せず)から入力されるスイッチング素子511をON状態とOFF状態とに切り換える信号とスイッチング素子512をON状態とOFF状態とに切り換える信号とから、スイッチング素子511とスイッチング素子512とが同時にON状態となり高圧側直流母線3と低圧側直流母線4とが短絡しない処理を施したスイッチング素子511の差動切換信号GHとEHおよびスイッチング素子512の差動切換信号GLとELを生成して出力する。なお、制御信号変換部7の詳細については後述する。
【0012】
スイッチング素子51は、自己の放熱と回転電気機械1からの発熱の遮断のため、液冷式ヒートシンク8の上に設置される。
【0013】
また、以降の説明のために、高圧側直流母線3と回転電気機械装置外の高圧直流電源(図示せず)との接続部を高圧側直流母線給電端23、低圧側直流母線4と高圧直流電源(図示せず)との接続部を低圧側直流母線給電端24とする。更に、制御信号変換部7を動作させるための電源を回転電気機械装置外の低圧直流電源(図示せず)から供給する接続部を低圧電源給電端25とし、制御回路(図示せず)から制御信号変換部7への入力信号および制御信号変換部7から制御回路(図示せず)へのセンサ出力の制御回路(図示せず)との接続部を制御信号入出力端26とする。
【0014】
次に、この発明に係る回転電気機械装置の全体構造について図3を用いて説明する。例えば円柱形又は円筒形をした液冷式ヒートシンク8は、液冷式ヒートシンク8の底面の1つである第1面が回転電気機械1の回転軸12が延伸する端面とは反対側の端面覆部13に接触するように取り付けられる。駆動回路2の部品であるスイッチング素子51は、液冷式ヒートシンク8の回転電気機械1と接触していないもう1つの底面である第2面上に接触して固定され、スイッチング素子51による発熱を液冷式ヒートシンク8へ放熱するとともに、回転電気機械1からの熱を遮断する。そして、スイッチング素子51が搭載されている液冷式ヒートシンク8の第2面には、ボス、スペーサ、台又は段差面等で支持されたドーナツ状の制御信号変換部7が設置される。高圧側直流母線3と低圧側直流母線4は、それぞれ円形形状を成して、後述するように絶縁シート又は絶縁板を介して層状に重ね合わされた直流母線部90を構成し、この直流母線部90が、制御信号変換部7の中空部又は中空部の回転軸方向に、制御信号変換部7と同様に液冷式ヒートシンク8の第2面にボス等を介して設置される。
【0015】
また、液冷式ヒートシンク8の側面部分に冷却液を液冷式ヒートシンク8に出し入れするヒートシンク冷却液入出部81が設けられている。回転電気機械1の側面部分の液冷式ヒートシンク8に近い方に液冷式ヒートシンク8から排出された冷却液の吸入口である回転電気機械冷却液流入部14が、回転電気機械1の側面部分の液冷式ヒートシンク8に遠い方に回転電気機械冷却液流出部15が設けられている。ヒートシンク冷却液入出部81の冷却液排出口と回転電気機械冷却液流入部14とはホース又は管により連結される。またヒートシンク冷却液入出部81の冷却液吸入口と回転電気機械冷却液流出部15とは、それぞれ回転電気機械装置外の冷却液用ポンプ(図示せず)にホース又は管により連結される。
【0016】
次に、この発明の実施の形態に係る回転電気機械装置の各部分の詳細な構造について図を用いながら説明する。
【0017】
図4に示すように、スイッチング素子51(51a、51b、51c)は、100アンペア(A)を超える電流が流れるため、高圧側直流母線3と繋がるP端子56、低圧側直流母線4と繋がるN端子57、回転電気機械1と繋がる出力端子58はそれぞれネジで配線を固定するようになっている。また、スイッチング素子51の制御信号変換部7からの信号を入力する制御信号入力端子55は、板状又は針状の金属で形成されている。さらに、スイッチング素子51は取り付け部59においてネジで液冷式ヒートシンク8に固定される構造である。
【0018】
図5を用いて、交流出力端21における接続方法について説明する。液冷式ヒートシンク8上に搭載されたスイッチング素子51の出力端子58にL字金属板211がネジ212により固定される。制御信号変換部7の基板の回転電気機械1側の面にタップ加工済基板上金具213が半田付けされており、タップ加工済基板上金具213のタップ加工部分においてL字金属板211とネジ214で接続される。交流配線11の端部に設けられたカシメ金具111は、制御信号変換部7の基板の液冷式ヒートシンク8とは反対側の基板面上のランドにおいて、ネジ215とナット216とにより固定される。カシメ金具111が固定されるランドとタップ加工済基板上金具213とは制御信号変換部7の基板上で必要な線幅又は線厚を有して接続されることにより、スイッチング素子51の出力端子58と交流配線11とが電気的に接続される。交流出力端21はこのように接続されるため、回転電気機械1に接続されている交流配線11は、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向と反対側の端面側から着脱することが可能になる。
【0019】
次に、高圧側直流端53および低圧側直流端54の接続方法を説明する前に、高圧側直流母線3及び低圧側直流母線4の構造について説明する。
本実施の形態では、液冷式ヒートシンク8に近い方から、それぞれ円形形状のヒートシンク側絶縁シート93(図7(c))、低圧側直流母線4(図6(b))、中間絶縁板92(図7(b))、高圧側直流母線3(図6(a))、電源側絶縁シート91(図7(a))を順に層状に重ね合わせ、それぞれに開けられた穴94(図6と図7に記載)において絶縁ネジで固定することにより、直流母線部90を構成する。この直流母線部90は、液冷式ヒートシンク8から延びたボス、スペーサ、台、又は段差面等の支持手段を用いてネジにより、液冷式ヒートシンク8に固定されるが、直流母線部90と液冷式ヒートシンク8とは絶縁されている。高圧側直流母線3及び低圧側直流母線4は銅等の導体で製作され、電源側絶縁シート91と中間絶縁板92とヒートシンク側絶縁シート93は、それぞれ絶縁物で製作される。
【0020】
以下の説明の都合上、高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続するネジ、及び低圧側直流母線4にスイッチング素子51のN端子57からの導体を接続するネジを通す穴の半径の値をr1とする。また、高圧側直流母線3と低圧側直流母線4との電圧差に因る必要絶縁距離の値をdとする。dの値には電圧差100ボルト(V)に対して1ミリメートル(mm)の割合を採用することが一般的である。
【0021】
高圧側直流母線3と低圧側直流母線4との外形寸法は、電源側絶縁シート91、中間絶縁板92、及びヒートシンク側絶縁シート93の外形寸法より必要絶縁距離dだけ小さく作られる。
図6(b)に示すように、低圧側直流母線4には、低圧側直流母線4にスイッチング素子51のN端子57からの導体を接続する場合に使用する半径r1の穴42(42a、b、c)と、半径r2の穴41(41a、b、c)とが開けられている。穴41は後述する高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続する場合に使用する穴31と同心円の位置に存在する。また、低圧側直流母線4の中心部分には、高圧直流電源からの低圧側直流供給線を接続するタブ状の電極43が設けられている。なお、半径r2の値に関しては、(式1)を満たす値が採用される。
r2≧r1+d ・・・ (式1)
【0022】
図6(a)に示すように、高圧側直流母線3には、高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続する場合に使用する半径r1の穴31(31a、b、c)と、低圧側直流母線4の穴42と同心円の位置に半径r2の穴32(32a、b、c)とが開けられている。また、高圧側直流母線3の中心部分には、上記低圧側直流母線4の電極43から距離d隔たった穴33が開けられている。更に、高圧側直流母線3には高圧直流電源からの高圧側直流供給線を接続するタブ状の電極34が設けられている。
【0023】
図7(a)に示すように、電源側絶縁シート91には、高圧側直流母線3の穴31と同心円の位置に半径r3の穴911(911a、b、c)と、低圧側直流母線4の穴42と同心円の位置に半径r3の穴912(912a、b、c)とが開けられている。また、電源側絶縁シート91には高圧側直流母線3の電極34と低圧側直流母線4の電極43とを通す穴913が開けられている。更に、前述のとおり、電源側絶縁シート91には直流母線部90を構成するための接続用穴94が開けられている。半径r3には、高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続するネジ、及び低圧側直流母線4にスイッチング素子51のN端子57からの導体を接続するネジの頭の半径よりやや大きい値を採用する。
【0024】
図7(b)に示すように、中間絶縁板92には、高圧側直流母線3の穴31と同心円の位置に半径r1の穴921(921a、b、c)と、低圧側直流母線4の穴42と同心円の位置に半径r1の穴922(922a、b、c)とが開けられている。また、中間絶縁板92には、低圧側直流母線4の電極43を通す穴923が開けられている。更に、前述のとおり、中間絶縁板92には直流母線部90を構成するための接続用穴94が開けられている。
【0025】
図7(c)に示すように、ヒートシンク側絶縁シート93には、高圧側直流母線3の穴31と同心円の位置に半径r4の穴931(931a、b、c)と、低圧側直流母線4の穴42と同心円の位置に半径r4の穴932(932a、b、c)とが開けられている。また、前述のとおり、ヒートシンク側絶縁シート93には直流母線部90を構成するための接続用穴94が開けられている。半径r4には、高圧側直流母線3にスイッチング素子51のP端子56からの導体を接続するネジ、及び低圧側直流母線4にスイッチング素子51のN端子57からの導体を接続するネジに使用するナットの半径よりやや大きい値を採用する。
【0026】
次に、高圧側直流母線3における高圧側直流母線給電端23および高圧側直流端53での接続方法について、図8を用いて説明する。
まず、高圧側直流端53での接続方法について説明する。液冷式ヒートシンク8上に搭載されたスイッチング素子51のP端子56において、P端子用金属板531の一端がネジ532によりP端子56に固定される。P端子用金属板531の他端は直流母線部90の高圧側直流母線3の穴31の下部に導かれ、電源側絶縁シート91の穴911、高圧側直流母線3の穴31、中間絶縁板92の穴921、低圧側直流母線4の穴41、ヒートシンク側絶縁シート93の穴931を貫通するように、ネジ533が通される。そして、ネジ533はP端子用金属板531と一緒にナット534で接続される。このように接続すると、P端子用金属板531は中間絶縁板92とナット534とに挟まれ、低圧側直流母線4とは接触せず、ネジ533の頭は高圧側直流母線3に接続された状態になる。高圧側直流端53においてスイッチング素子51のP端子56と直流母線部90の高圧側直流母線3はこのように接続されるため、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側で高圧側直流端53を接続することが可能になる。
【0027】
次に、高圧側直流母線給電端23での接続方法について説明する。高圧側直流母線給電線231の一方の端部に設けられたカシメ金具232は、高圧側直流母線3の電極34において、ネジ233とナット234とにより接続される。高圧側直流母線給電線231の他端が高圧直流電源の高圧側に接続されることにより、スイッチング素子51のP端子56には、低圧側直流母線4と短絡することなく、高圧側の直流電位が供給される。なお、図8においては、高圧側直流母線3の電極34が、高圧側直流母線3の中心と穴31の中心とを通る直線上に存在するように記載したが、これは図8を簡便にするためのもので、電極34の位置は低圧側直流母線4の電極43から距離dだけ離れている場所であればよい。また、電極34は、高圧側直流母線3の一部を切り曲げて形成することも可能であるし、高圧側直流母線3とは別の導体で電極を作成し、溶接や半田、リペット等で接合することも可能である。高圧側直流母線給電端23はこのように接続されるため、高圧直流電源に接続されている高圧側直流母線給電線231は、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0028】
次に、低圧側直流母線4における低圧側直流母線給電端24および低圧側直流端54での接続方法について、図9を用いて説明する。
まず、低圧側直流端54での接続方法について説明する。液冷式ヒートシンク8上に搭載されたスイッチング素子51のN端子57において、N端子用金属板541の一端がネジ542によりN端子57に固定される。N端子用金属板541の他端は直流母線部90の低圧側直流母線4の穴42の下部に導かれ、電源側絶縁シート91の穴912、高圧側直流母線3の穴32、中間絶縁板92の穴922、低圧側直流母線4の穴42、ヒートシンク側絶縁シート93の穴932を貫通するように、ネジ543が通される。そして、ネジ543はN端子用金属板541と一緒にナット544で接続される。このように接続すると、N端子用金属板541は低圧側直流母線4とナット534とに挟まれネジ543の頭は高圧側直流母線3に接触することなく中間絶縁板92を押す状態になる。低圧側直流端54においてスイッチング素子51のN端子57と直流母線部90の低圧側直流母線4はこのように接続されるため、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側で低圧側直流端54を接続することが可能になる。
【0029】
次に、低圧側直流母線給電端24での接続方法について説明する。低圧側直流母線給電線241の一方の端部に設けられたカシメ金具242は、低圧側直流母線4の電極43に対して、ネジ243とナット244とにより接続される。低圧側直流母線給電線241の他端が高圧直流電源の低圧側に接続されることにより、スイッチング素子51のN端子57には、高圧側直流母線3と短絡することなく、低圧側の直流電位が供給される。なお、電極43は、低圧側直流母線4の一部を切り曲げて形成することも可能であるし、低圧側直流母線4とは別の導体で電極を作成し、溶接や半田、リペット等で接合することも可能である。低圧側直流母線給電端24はこのように接続されるため、高圧直流電源に接続されている低圧側直流母線給電線241は、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0030】
上記では、直流母線部90は、液冷式ヒートシンク8に近い方から、ヒートシンク側絶縁シート93、低圧側直流母線4、中間絶縁板92、高圧側直流母線3、電源側絶縁シート91を順に層状に重ね合わせた構造のものについて説明したが、液冷式ヒートシンク8に近い方から、ヒートシンク側絶縁シート93、高圧側直流母線3、中間絶縁板92、低圧側直流母線4、電源側絶縁シート91の順に層状に重ね合わせた構造のものであっても良い。
【0031】
次に、図4に示すスイッチング素子51の制御信号入力端子55について説明する。スイッチング素子51の制御信号は、振幅が+15Vまたは−15V程度の低圧な信号であり電流も小さい。そのため、スイッチング素子51の制御信号入力端子55のそれぞれに配線の一端を半田付けや溶接、ワイヤラッピング等により接合し、配線の他端をコネクタにして、制御信号変換部7の液冷式ヒートシンク8とは反対側の基板面に設置された受け側のコネクタ(後述するコネクタ723)に接続する。その結果、図1に示すスイッチング部5の制御信号入力端52は、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0032】
次に、本実施の形態による制御信号変換部7を図10に基づいて説明する。図10は制御信号変換部7の基板を示す平面図である。ここで、制御回路(図示せず)から入力されるスイッチング素子511(511a、b、c)をON状態とOFF状態とに切り換える信号(特許請求の範囲では制御信号と称す)をSW511(SW511a、b、c)、制御回路(図示せず)から入力されるスイッチング素子512(512a、b、c)をON状態とOFF状態とに切り換える信号(特許請求の範囲では制御信号と称す)をSW512(SW512a、b、c)とする。なお、ここで、スイッチング素子に関する添え字a、b、cは、それぞれa相、b相、c相に関連するものである。
【0033】
図10において、711(711a、b、c)は制御回路(図示せず)からの信号SW511(SW511a、b、c)の入力端、712(712a、b、c)は制御回路(図示せず)からの信号SW512(SW512a、b、c)の入力端を示す。713(713a、b、c)はスイッチング素子511(511a、b、c)とスイッチング素子512(512a、b、c)とが同時にON状態となって高圧側直流母線3と低圧側直流母線4とが短絡しない処理を行う短絡防止回路の領域を示す。721(721a、b、c)は短絡防止回路713(713a、b、c)の出力からスイッチング素子511(511a、b、c)の差動切換信号GHとEH(特許請求の範囲ではスイッチング制御信号と称す)を生成するGH/EH生成回路の領域である。722(722a、b、c)は短絡防止回路713(713a、b、c)の出力からスイッチング素子512(512a、b、c)の差動切換信号GLとEL(特許請求の範囲ではスイッチング制御信号と称す)を生成するGL/EL生成回路の領域を示す。723(723a、b、c)は差動切換信号GH、EH、GL、ELをスイッチング素子51(51a、b、c)の制御信号入力端子55へ出力するコネクタである。
【0034】
また、図10において、731(731a、b、c)は、前述した交流出力端21の接続において使用するタップ加工済基板上金具213の取り付けランドを示す。732(732a、b、c)は、交流配線11のカシメ金具111がネジ215で留められるランドを示す。そして、733(733a、b、c)はランド731(731a、b、c)とランド732(732a、b、c)との接続部分を示す。また、25は低圧電源供給端を示し、74は短絡防止回路713(713a、b、c)とGH/EH生成回路721(721a、b、c)とGL/EL生成回路722(722a、b、c)と後述するセンサ信号変換回路751とで使用する電力を生成するローカル電源回路の領域を示す。さらに、22はセンサ端、751はセンサ端22から入力されるセンサ信号を制御回路に適した電位に変換するセンサ信号変換回路の領域、752はセンサ信号変換回路751からの信号を出力するセンサ信号出力端を示す。入力端711(711a、b、c)と入力端712(712a、b、c)とセンサ信号出力端752とを併せて制御信号入出力端26が形成される。
【0035】
前述したセンサ端22や低圧電源給電端25および制御信号入出力端26に関しても、制御信号入力端52と同様にコネクタで接続することで、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0036】
図11(a)、(b)、(c)に示すように、液冷式ヒートシンク8には、前述のヒートシンク冷却液入出部81から吸入した冷却液が流れ再びヒートシンク冷却液入出部81から排出されるまでの流路部82のほかに、フランジ部83が存在する。なお、図11(b)は図11(a)のA−O−A´面での断面図であり、図11(c)は図11(a)のB−O−B´面での断面図である。フランジ部83には、交流配線11を通す穴84が開けられている。また、図11(a)と図11(c)とに示すように、液冷式ヒートシンク8には、フランジ部83の縁に回転電気機械1とボルトおよびナットにより結合するための穴を有した回転電気機械装着用タブ状突起85が存在する。回転電気機械1と駆動回路2を搭載した液冷式ヒートシンク8とを連結するには、図12(a)に示すように、一端が回転電気機械1の固定子16に接続され端面覆部13から出てくる交流配線11をフランジ部83の穴84に通し、液冷式ヒートシンク8の底面を端面覆部13に接触させる。そして、図12(b)に示すように、回転電気機械装着用タブ状突起85においてボルト851とナット852とにより連結する。回転電気機械1と液冷式ヒートシンク8とは、このように連結されているため、液冷式ヒートシンク8は回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になり、液冷式ヒートシンク8に搭載されている駆動回路2も共に着脱することが可能になる。なお、回転電気機械1の端面覆部13の交流配線11が出てくる部分には、図12(a)に示すように、埃や異物の進入阻止と防水を目的として、シール材ないし封止材17が付けられている。
【0037】
回転電気機械1は図12に示すように、端面覆部13と側面部18とにより密閉されており、埃や異物、水等の進入を阻止し、加えて電磁気雑音や騒音の放出を抑制している。これと同じ目的は、駆動回路2に対しても求められるため、液冷式ヒートシンク8には、図11(a)に示すように2種類の覆部装着用タグ状突起86及び87が設けられる。覆部装着用タグ状突起86及び87は、回転電気機械装着用タブ状突起85と同一形状であってもよいし、3種類が異なった形状であってもよい。覆部装着用タグ状突起86及び87が2種類存在するのは、液冷式ヒートシンク8の覆部を2種類の部品で構成するためである。
【0038】
図13は、液冷式ヒートシンク8に2種類の覆部27及び28を装着した状態の図である。なお、図13(b)は、図13(a)のC−O−Dの面での断面図であり、スイッチング素子51、制御信号変換部7の支持手段、及び直流母線部90の支持手段等は図面の簡便のために省略している。覆部27は、液冷式ヒートシンク8の覆部装着用タグ状突起86に重なる位置に覆部装着用タグ状突起86と同一形状のタグ状突起271を有し、覆部装着用タグ状突起86とタグ状突起271とにおいてボルト272とナット273とによって連結される。覆部28は、その上部の一部が覆部27の下部と重なる形状をしており、覆部27と同様に、覆部装着用タグ状突起87と覆部28のタグ状突起281とにおいてボルト282とナット283とによって連結される。覆部27と覆部28とでは、頂点部分に、高圧側直流母線給電線231や低圧側直流母線給電線241および制御信号変換部7に入力される制御信号、制御信号変換部7から出力されるセンサ出力が通る小さい開口部29が形成される。また、覆部27と覆部28との接触部および開口部29の周囲には、埃や異物の進入阻止と防水とを目的として、シール材又は封止材274及び284が覆部27と覆部28とにそれぞれ取り付けられている。覆部27と覆部28とは、このように液冷式ヒートシンク8に連結されているため、高圧側直流母線給電線231と低圧側直流母線給電線241とが直流母線部90に連結された状態で、かつ、制御信号とセンサ信号とが制御信号変換部7に連結された状態で、回転電気機械1の回転軸12が延伸する方向の反対方向の端面側から着脱することが可能になる。
【0039】
なお、本実施の形態では、ネジとナットやネジとタップまたはボルトとナットで連結、固定、支持、位置決めする場合の説明や図面において、ワッシャや座金等の緩み防止の材料に関して言及していないが、これは説明を簡便にするための処置であり、必要な箇所には緩み防止の材料の使用や処置を施しても、本発明の目的および効果を阻害あるいは減少させるものではない。また、ナットを使用している部分は、材料の厚みを利用したタップの使用でも同じ効果を実現することが可能である。更に、本実施の形態で冷却液としている所は、効率や凍結に関して問題が無ければ、水を使用することも可能である。
【0040】
以上のように本実施の形態によれば、高圧側直流母線及び低圧側直流母線を絶縁物を介して層状に重ね合わせることにより直流母線部を形成しているので、高圧側直流母線及び低圧側直流母線を単純な構造に纏めることができ、取り扱いが簡便となると共に製造コストが安価となる。
また、この層状に纏めた直流母線部を液冷式ヒートシンクの第2面上に設置するようにしたので、直流母線部の取り付けの作業性が向上する。
さらに、直流母線部の液冷式ヒートシンクと反対側の面において、直流電源からの直流母線給電線と、高圧側直流母線及び低圧側直流母線とを接続する構成としたので、直流母線給電線を、駆動回路のスイッチング素子を回転電気機械の液冷式ヒートシンクに搭載した状態で、回転電気機械の回転軸が延伸する方向の反対方向から着脱することができる。
【0041】
実施の形態2.
実施の形態1では制御信号変換部7を1個のドーナツ状の基板とした例について説明した。しかし、例えば制御信号変換部7のa相のスイッチング素子に関わる部分が故障した場合には、制御信号変換部7の基板全体を交換することが必要になる場合がある。また、回転電気機械の各相が多重化されて制御される場合がある。このような場合に備えて、制御信号変換部7を相単位あるいは多重化の単位で分割し、分割された基板は扇形、扇面形又は台形の形状にする実施の形態が考えられる。
【0042】
図14は制御信号変換部を駆動回路の各相単位に対応して分割した基板を示す平面図である。図14において、制御信号変換部7は、それぞれ扇面形の、a相対応の制御信号変換部7a、b相対応の制御信号変換部7b、及びc相対応の制御信号変換部7cに分割されている。図14において、図10と同じ符号が付されているものは同じ構成要素を示している。なお、各相の制御信号変換部7a、7b、7cのそれぞれに、低圧電源供給端25a、b、cと、ローカル電源回路74a、b、cと、センサ端22a、b、cと、センサ信号変換回路751a、b、cと、センサ信号出力端752a、b、cが設けられている。ただし、センサ信号変換回路751a、b、cは、a相、b相、c相の各基板7a、7b、7cにそれぞれ存在するが、実際に使用するのは、これらの内の1系統(図14ではc相)のみであり、他の2系統(図14ではa相とb相)は使用せず、休止状態である。
【0043】
図15は制御信号変換部を回転電気機械の多重化(3相二重)の単位で分割した基板を示す平面図である。図15において、制御信号変換部の基板は、3相二重の制御信号変換部7及び7’に分割されている。図15において、図10と同じ符号が付されているものは同じ構成要素を示している。なお、二重目の制御信号変換部7’のそれぞれの構成要素の符号には「’」を付している。ただし、センサ信号変換回路751、751’は、一重目の制御信号変換部7及び二重目の制御信号変換部7’のそれぞれに存在するが、実際に使用するのは、片方(図では制御信号変換部7の基板)のみであり、他方(図では制御信号変換部7’の基板)は使用せず、休止状態である。
【0044】
また、制御信号変換部7には、スイッチング素子51の短絡防止のための短絡防止生成回路や無制御信号時保護回路などの付加回路が要求されて回路規模が大きくなる場合には、制御信号変換部7を単層で構成するのではなく、多層に構成し各層間はコネクタで連結する実施の形態も考えられる。
【0045】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様の効果を有すると共に、制御信号変換部の基板を経済的に製作することを可能にし、また、制御信号変換部の一部が故障した場合には、故障した部分の制御信号変換部だけを交換することにより修理時の経費および資源を小さくすることをも可能にする。更に、制御信号変換部の回路規模の増大に対応することをも可能になる。
【0046】
実施の形態3.
本実施の形態では、液冷式ヒートシンク8を円筒形のような中空部分を有する筒形とした場合、液冷式ヒートシンク8の中空部分にスナバ用コンデンサ6を搭載しスナバ用コンデンサ6が直流母線部90に近接して設置できるようにする。図16はスナバ用コンデンサ6の搭載の様子を示す一部断面図、図17はスナバ用コンデンサ6を搭載したコンデンサ電極基板61の平面図である。以下、図16及び図17に基づき本実施の形態のスナバ用コンデンサ6の搭載について説明する。
【0047】
図16及び図17において、スナバ用コンデンサ6(6a、b、c)の正極端子はコンデンサ電極基板61上の正極ランド611(611a、b、c)に、スナバ用コンデンサ6(6a、b、c)の負極端子はコンデンサ電極基板61上の負極ランド612(612a、b、c)に、それぞれ半田付けされる。コンデンサ電極基板61は多層基板であり、その中層には正電位層と負電位層とが互いに絶縁されて存在する。正極ランド611は正電位層に、また、負極ランド612は負電位層に接続される。
【0048】
コンデンサ電極基板61には、タップ加工済コンデンサ正極用金具62用のランド613と、タップ加工済コンデンサ負極用金具63用のランド614とが設置されている。ランド613はコンデンサ電極基板61の正電位層と、ランド614はコンデンサ電極基板61の負電位層と、それぞれ接続される。ランド613でタップ加工済コンデンサ正極用金具62が、ランド614でタップ加工済コンデンサ負極用金具63が、それぞれ半田付けされる。そのため、スナバ用コンデンサ6の正極端子はタップ加工済コンデンサ正極用金具62と、スナバ用コンデンサ6の負極端子はタップ加工済コンデンサ負極用金具63と、それぞれ接続されることになる。
【0049】
一方、スナバ用コンデンサ6は、コンデンサ搭載用板64と、コンデンサ支持板65と、コンデンサ搭載用板64及びコンデンサ支持板65とを連結するスペーサ66とにより、液冷式ヒートシンク8に固定される。コンデンサ搭載用板64には、スナバ用コンデンサ6が通過する開口部641と、スペーサ66を接続するネジ用穴642と、液冷式ヒートシンクに固定するネジ用穴643とが開けられている。また、コンデンサ支持板65にはスペーサ66を接続するネジ用穴651が開いている。
【0050】
次に、スナバ用コンデンサ6の取付作業について説明する。まず、コンデンサ搭載用板64の開口部641にスナバ用コンデンサ6を通した後、コンデンサ搭載用板64のネジ用穴642の位置でスペーサ66の一端をネジ留めする。コンデンサ支持板65は、スナバ用コンデンサ6の頭部に置かれ、コンデンサ支持板65のネジ用穴651の位置でスペーサ66の他端とネジ留めされる。スナバ用コンデンサ6の頭部周囲とコンデンサ支持板65とが接する箇所の全部ないし一部分は、スナバ用コンデンサ6の振動を防止し、スナバ用コンデンサ6の正極端子および負極端子の切断を防ぐ目的で、接着剤652で固定される。
【0051】
以上のようにして、スナバ用コンデンサ6、コンデンサ電極基板61、タップ加工済コンデンサ正極用金具62、タップ加工済コンデンサ負極用金具63、コンデンサ搭載用板64、及びコンデンサ支持板65とは一体化され、コンデンサ搭載用板64のネジ用穴643の位置で液冷式ヒートシンク8にネジ留めされる。
【0052】
液冷式ヒートシンク8に固定されたスナバ用コンデンサ6と一体化したタップ加工済コンデンサ正極用金具62は、直流母線部90の高圧側直流母線3にネジ621により、実施の形態1(図8)で説明した高圧側直流端53と同じ態様で連結する。また、液冷式ヒートシンク8に固定されたスナバ用コンデンサ6と一体化したタップ加工済コンデンサ負極用金具63は、直流母線部90の低圧側直流母線4にネジ631により、実施の形態1(図9)で説明した低圧側直流端54と同じ態様で連結する。
【0053】
本実施の形態によれば、上記実施の形態と同様の効果を有すると共に、スナバ用コンデンサを高圧側直流母線および低圧側直流母線に近接して設置することが可能になり、サージの発生を抑制することを可能とする。
【0054】
なお、上記の記載では、コンデンサ電極基板61と直流母線部90とを連結する金具を正極側および負極側いずれもタップ加工済の金具としたが、この連結する金具をネジとナットで接続しても、本実施の形態の効果を損なうものではない。また、上記ではコンデンサ支持板65にはスペーサ66を接続する穴651しか記載していないが、スナバ用コンデンサ6の破裂対策用の小さい穴を開けたり、防爆弁用の開口部を設けることも可能であり、本実施の形態の効果を妨げるものではない。
【0055】
実施の形態4.
実施の形態1では液冷式ヒートシンク8は、ヒートシンク冷却液入出部81、流路部82、フランジ部83、回転電気機械装着用タブ状突起85、覆部装着用タグ状突起86及び87、並びにフランジ部83内の交流配線11を通す穴84を備えると説明した。しかし、フランジ部83を幅広く製作し、交流配線11を通す穴84より外側に回転電気機械1を装着するための穴と覆い27及び28とを装着する穴の全て又は一部をフランジ部83内に設定することもできる。また、幅広くしたフランジ部83は円形である必要はなく、多角形でも楕円形でもよい。
【0056】
本実施の形態によれば、上記実施の形態と同様の効果を有すると共に、液冷式ヒートシンクの突起がなくなったり減少したりすることで駆動回路の着脱時の負傷、又は他の部品や装置、設備への破損を防止することができる。
【0057】
実施の形態5.
実施の形態1では高圧側直流母線3と低圧側直流母線4との絶縁を行う部品として中間絶縁板92を使用したが、この中間絶縁板92は必ずしも板である必要はなく、シート状の薄い部品でも良い。
【0058】
本実施の形態によれば、上記実施の形態と同様の効果を有すると共に、軽量で小型の回転電気機械装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 回転電気機械、2 駆動回路、3 高圧側直流母線、4 低圧側直流母線、
5 スイッチング部、6 スナバ用コンデンサ、7 制御信号変換部、
8 液冷式ヒートシンク、11 交流配線、12 回転軸、
23 高圧側直流母線給電端、24 低圧側直流母線給電端、51 スイッチング素子、53 高圧側直流母線端、54 低圧側直流母線端、90 直流母線部、
91 電源側絶縁シート、92 中間絶縁板、93 ヒートシンク側絶縁シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流配線を介して電力が供給され回転軸が回転する回転電気機械と、
直流電源から直流母線給電線を介して供給される直流電力を、高圧側直流母線と低圧側直流母線の間に接続したスイッチング素子により交流電力に変換し、上記交流配線を介して上記回転電気機械に供給する駆動回路と、
第1面が上記回転電気機械の回転軸が延伸する端面と反対側の端面に設置され、第1面と反対側の第2面に上記駆動回路のスイッチング素子が設置されている液冷式ヒートシンクとを備えた回転電気機械装置であって、
上記高圧側直流母線及び上記低圧側直流母線を、ヒートシンク側絶縁物、中間絶縁物及び電源側絶縁物の間に互いに絶縁するように配置し、それらを層状に重ね合わせることにより直流母線部を形成し、
上記直流母線部を上記液冷式ヒートシンクの第2面に相対して設置し、
上記直流母線部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面において、上記直流電源からの直流母線給電線と、上記高圧側直流母線及び上記低圧側直流母線とを接続する構成とした回転電気機械装置。
【請求項2】
制御回路から供給される制御信号を上記駆動回路のスイッチング素子を制御するスイッチング制御信号に変換する制御信号変換部を、上記液冷式ヒートシンクの第2面に相対して設置するとともに、上記制御信号変換部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面に、上記制御回路からの制御信号を入力する入力端を設けた請求項1に記載の回転電気機械装置。
【請求項3】
上記制御信号変換部は、上記制御回路から供給される制御信号から、上記高圧側直流母線と上記低圧側直流母線とが短絡しないような上記スイッチング素子を制御するスイッチング制御信号を生成する短絡防止回路を有している請求項2に記載の回転電気機械装置。
【請求項4】
上記駆動回路のスイッチング素子の出力が上記制御信号変換部を経由して、上記制御信号変換部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面で接続される上記交流配線に供給されるように構成した請求項2又は請求項3に記載の回転電気機械装置。
【請求項5】
上記制御信号変換部は、上記回転電気機械の回転を検出するセンサ信号を入力して上記制御回路に適した電位に変換して出力するセンサ信号変換回路を備えると共に、
上記センサ信号を入力するセンサ端及び上記変換した信号を出力するセンサ信号出力端を上記制御信号変換部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面に設けた請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項6】
上記制御信号変換部は、上記制御信号変換部で使用する電力を生成するローカル電源回路を備えると共に、
上記ローカル電源回路に電力を供給する低圧電源供給端を上記制御信号変換部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面に設けた請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項7】
上記制御信号変換部はドーナツ形状を成し、上記直流母線部は上記制御信号変換部の中空部又は中空部の上記回転軸方向に設置された円形形状を成している請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項8】
上記制御信号変換部は、上記駆動回路の各相単位に対応して分割されている請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項9】
上記制御信号変換部は、上記回転電気機械の多重化の単位に対応して分割されている請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項10】
上記液冷式ヒートシンクは中空部分を備え、上記中空部分に上記直流母線部の上記高圧側直流母線と上記低圧側直流母線の間に接続したスナバ用コンデンサを配置した請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項11】
正電位層及び負電位層が絶縁層で絶縁された多層構造のコンデンサ電極基板を備え、上記スナバ用コンデンサの正極端子及び負極端子が上記コンデンサ電極基板の正電位層及び負電位層に接続され、上記直流母線部の上記液冷式ヒートシンク相対している面の反対側の面から、上記高圧側直流母線及び上記低圧側直流母線と、上記コンデンサ電極基板の正電位層及び負電位層とを接続できる構成とした請求項10に記載の回転電気機械装置。
【請求項12】
上記液冷式ヒートシンクが上記交流配線を通す縁を有する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項13】
上記駆動回路の覆いを上記液冷式ヒートシンクに取り付ける請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項1】
交流配線を介して電力が供給され回転軸が回転する回転電気機械と、
直流電源から直流母線給電線を介して供給される直流電力を、高圧側直流母線と低圧側直流母線の間に接続したスイッチング素子により交流電力に変換し、上記交流配線を介して上記回転電気機械に供給する駆動回路と、
第1面が上記回転電気機械の回転軸が延伸する端面と反対側の端面に設置され、第1面と反対側の第2面に上記駆動回路のスイッチング素子が設置されている液冷式ヒートシンクとを備えた回転電気機械装置であって、
上記高圧側直流母線及び上記低圧側直流母線を、ヒートシンク側絶縁物、中間絶縁物及び電源側絶縁物の間に互いに絶縁するように配置し、それらを層状に重ね合わせることにより直流母線部を形成し、
上記直流母線部を上記液冷式ヒートシンクの第2面に相対して設置し、
上記直流母線部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面において、上記直流電源からの直流母線給電線と、上記高圧側直流母線及び上記低圧側直流母線とを接続する構成とした回転電気機械装置。
【請求項2】
制御回路から供給される制御信号を上記駆動回路のスイッチング素子を制御するスイッチング制御信号に変換する制御信号変換部を、上記液冷式ヒートシンクの第2面に相対して設置するとともに、上記制御信号変換部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面に、上記制御回路からの制御信号を入力する入力端を設けた請求項1に記載の回転電気機械装置。
【請求項3】
上記制御信号変換部は、上記制御回路から供給される制御信号から、上記高圧側直流母線と上記低圧側直流母線とが短絡しないような上記スイッチング素子を制御するスイッチング制御信号を生成する短絡防止回路を有している請求項2に記載の回転電気機械装置。
【請求項4】
上記駆動回路のスイッチング素子の出力が上記制御信号変換部を経由して、上記制御信号変換部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面で接続される上記交流配線に供給されるように構成した請求項2又は請求項3に記載の回転電気機械装置。
【請求項5】
上記制御信号変換部は、上記回転電気機械の回転を検出するセンサ信号を入力して上記制御回路に適した電位に変換して出力するセンサ信号変換回路を備えると共に、
上記センサ信号を入力するセンサ端及び上記変換した信号を出力するセンサ信号出力端を上記制御信号変換部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面に設けた請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項6】
上記制御信号変換部は、上記制御信号変換部で使用する電力を生成するローカル電源回路を備えると共に、
上記ローカル電源回路に電力を供給する低圧電源供給端を上記制御信号変換部の上記液冷式ヒートシンクと相対している面の反対側の面に設けた請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項7】
上記制御信号変換部はドーナツ形状を成し、上記直流母線部は上記制御信号変換部の中空部又は中空部の上記回転軸方向に設置された円形形状を成している請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項8】
上記制御信号変換部は、上記駆動回路の各相単位に対応して分割されている請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項9】
上記制御信号変換部は、上記回転電気機械の多重化の単位に対応して分割されている請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項10】
上記液冷式ヒートシンクは中空部分を備え、上記中空部分に上記直流母線部の上記高圧側直流母線と上記低圧側直流母線の間に接続したスナバ用コンデンサを配置した請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項11】
正電位層及び負電位層が絶縁層で絶縁された多層構造のコンデンサ電極基板を備え、上記スナバ用コンデンサの正極端子及び負極端子が上記コンデンサ電極基板の正電位層及び負電位層に接続され、上記直流母線部の上記液冷式ヒートシンク相対している面の反対側の面から、上記高圧側直流母線及び上記低圧側直流母線と、上記コンデンサ電極基板の正電位層及び負電位層とを接続できる構成とした請求項10に記載の回転電気機械装置。
【請求項12】
上記液冷式ヒートシンクが上記交流配線を通す縁を有する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【請求項13】
上記駆動回路の覆いを上記液冷式ヒートシンクに取り付ける請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の回転電気機械装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−257356(P2012−257356A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127908(P2011−127908)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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