説明

固体撮像素子、それを備えたカメラ、および、固体撮像素子の駆動方法

【課題】フレームレートを高めつつ、スミア段差の発生を防止する。
【解決手段】画素部は、切出領域301とそれ以外の不要領域302とに区画されている。画素部では、行毎に、第1配線104および第2配線105の両方または一方が設けられている。不要領域302では、画素毎に設けられたゲート電極103が、行毎に設けられた第1配線104に行単位で共通に接続されている。切出領域301では、画素毎に設けられたゲート電極103が、行毎に設けられた第2配線105に行単位で共通に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等に用いられる固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルカメラにはオートフォーカス機能が搭載されている。オートフォーカス機能は、レンズの位置を1ステップずつ移動させながら被写体を撮影し、撮影画像のコントラストがピークとなるレンズ位置を割り出すことにより実現される。このとき被写体が移動すると適正なレンズ位置を割り出すことができないので、オートフォーカス機能の実行中はフレームレートをできるだけ高めることが望ましい。そこで、従来の固体撮像素子では、各画素から読み出された信号電荷を行単位で垂直転送するに当たり、オートフォーカス機能に必要な行の信号電荷は通常の転送速度で転送し、それ以外の不要な行の信号電荷は高速で転送することが行われている。このように、不要な行の信号電荷を高速転送して短時間で排出することにより、フレームレートを高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−228280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の固体撮像素子では、フレームレートを高めることはできるものの、垂直転送部を通常転送と高速転送とで切り替えるため、「スミア段差」と呼ばれる画像ノイズが生じることがある。スミアとは、強い光が入射されて遮光膜の隙間から垂直転送部に光が漏れ込んだ場合に、垂直転送部内の光が漏れ込んだ箇所でノイズ電荷が発生し、その箇所を通過する信号電荷にノイズ電荷が混合されてしまう現象をいう。
【0005】
通常、スミアは、信号電荷とは別にノイズ電荷のみを垂直転送させ、外部の信号処理回路でそのノイズ電荷を検出し、これを信号電荷から差し引く演算を施すことにより解消することができる。これは、垂直転送部の転送速度が一定であれば、ノイズ発生箇所の通過時間が何れの信号電荷でも同じになるので、混合されるノイズ電荷の量が何れの信号電荷でも同じになるからである。
【0006】
ところが、フレームレートを高めるために通常転送と高速転送とを切り替えた場合には、通常転送中にノイズ発生箇所を通過する信号電荷と、高速転送中にノイズ発生箇所を通過する信号電荷とで、ノイズ発生箇所の通過時間が異なることとなり、混合されるノイズ電荷の量が異なることとなる。そのため、外部の信号処理回路でノイズ電荷を検出し、これを信号電荷から差し引いた場合に、通常転送中にノイズ発生箇所を通過した信号電荷には差し引かれる量が適量であっても、高速転送中にノイズ発生箇所を通過した信号電荷には差し引かれる量が過多となる。これは画像として見た場合、縦のラインのある部分が明るく、残りの部分が暗くなるので、「スミア段差」と呼ばれている。このような「スミア段差」が生じた場合には、オートフォーカス機能が正常に働かないことがある。
【0007】
また、オートフォーカス機能だけでなく、動画撮影機能でも同様の問題が生じる場合がある。デジタルカメラでは高画素化が進み、1000万画素を超えるものまで出現している。静止画撮影では解像度が重視されるので、画素部の全領域に含まれる画素から信号電荷を読み出し、動画撮影ではフレームレートが重視されるので、一部領域に含まれる画素から信号電荷を読み出すことが行われている。ところが、近年、解像度も重視したHD(High Definition)動画を撮影できることが商品価値を高める傾向にあり、垂直転送部において通常転送と高速転送との切り替えが必須となってきている。そうすると、強い光が入射した場合に「スミア段差」が生じてしまい、画質が低下してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、フレームレートを高めつつ、スミア段差の発生を防止することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る固体撮像素子は、光電変換部を有する画素が複数行および複数列に配置された画素部と、画素毎に当該画素から信号電荷を読み出して垂直方向に転送するためのゲート電極を有する複数の垂直転送部と、前記複数の垂直転送部から転送された信号電荷を水平方向に転送する水平転送部とを備えた固体撮像素子であって、前記画素部は、前記複数行よりも少ない行数の隣接行を含み且つ前記複数列と同数またはそれよりも少ない列数の隣接列を含む切出領域と、それ以外の不要領域とに区画され、前記画素部では、行毎に、不要領域のゲート電極に給電を行う第1の配線および切出領域のゲート電極に給電を行う第2の配線の両方または一方が設けられ、前記画素部の不要領域では、画素毎に設けられたゲート電極が、行毎に設けられた第1の配線に行単位で共通に接続され、前記画素部の切出領域では、画素毎に設けられたゲート電極が、行毎に設けられた第2の配線に行単位で共通に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、切出領域内のゲート電極と不要領域内のゲート電極とが別々の配線に接続されているので、画素部内の画素から垂直転送部に信号電荷を読み出す際に、切出領域内の画素からは信号電荷を読み出し、不要領域内の画素からは信号電荷を読み出さないようにすることができる。このように、不要な信号電荷が垂直転送部に読み出されないので、あるフレーム用に切出領域内の画素の信号電荷を垂直転送部に読み出し、それらを垂直転送することにより切出領域外に掃き出したら、すぐに、次のフレーム用に切出領域内の画素の信号電荷を垂直転送部に読み出すことができる。従って、フレームレートを高めることができる。また、不要な信号電荷が垂直転送部に読み出されないので、垂直転送部に読み出された不要な信号電荷を排出するという作業がそもそも必要ない。そのため、垂直転送部において通常転送と高速転送とを切り替える必要がなく、スミア段差の発生を防止することができる。
【0011】
また、前記画素部に含まれる何れの行にも第1および第2の配線の両方が設けられていることとしてもよい。駆動パルスを供給するという観点からは、切出領域と不要領域とが混在している行には第1および第2の配線の両方が設けられる必要があるが、それ以外の行には第1および第2の配線の両方が設けられる必要はない。しかしながら、上記構成を採用すれば、別の観点から以下のような効果を奏することができる。
(a)全ての行に両方の配線が設けられていれば、コンタクトの位置を変更するだけで切出領域とするか不要領域とするかを決定することができる。そのため、設計変更を容易にすることができる。
(b)全ての行に両方の配線が設けられていれば、何れの行においても配線容量を揃えることができる。そのため、駆動パルスの伝播遅延の行毎の相違を考慮する必要がないので、設計を容易にすることができる。
(c)全ての行に両方の配線が設けられていれば、配線層上に形成される層間絶縁膜の平坦性を高めることができる。
【0012】
また、前記画素部では垂直方向に並んだ所定数の行おきに第1の配線同士が電気的に接続されていると共に、前記所定数と同数の行おきに第2の配線同士が電気的に接続されていることとしてもよい。これにより、所定数の2倍の種類の駆動パルスにより垂直転送を行うことができる。
また、上記構成の固体撮像素子を備えたカメラは、上記効果と同様の効果を奏することができる。
【0013】
また、上記構成の固体撮像素子の駆動方法は、前記第1および第2の配線に転送パルスを供給することにより、前記垂直転送部内に形成された電位井戸を垂直方向に転送させ、所定期間毎に、前記第2の配線に供給されている転送パルスに読み出しパルスを重畳させることにより、前記切出領域に含まれる画素の信号電荷を、前記垂直転送部内を転送されている電位井戸に読み出させ、前記所定期間は、前記垂直転送部内に形成された電位井戸が前記切出領域にある電位井戸の個数にひとつ足した個数分だけ転送されるのに要する期間と同等かそれよりも長く、前記垂直転送部内にある電位井戸の個数分だけ転送されるのに要する期間よりも短い。
【0014】
このように、所定期間を切出領域にある電位井戸の個数にひとつ足した個数分だけ転送されるのに要する期間と同等かそれよりも長くすることにより、スミアによるノイズ信号のみが入った電位井戸を設けることができ、ノイズ信号を差し引く演算に利用することができる。また、垂直転送部内にある電位井戸の個数分だけ転送されるのに要する期間よりも短くすることで、フレームレートが低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の詳細構成を示す図であり、図2(a)は、図1の(a)で示す行の一部を拡大した図であり、図2(b)は、図1の(b)で示す行の一部を拡大した図であり、図2(c)は、図1のE−E’線に沿った断面を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る切出領域および不要領域を示す図である。
【図4】全画素読出モードにおいて垂直転送部に供給される駆動パルスを示しており、図4(a)は、画素から垂直転送部に信号電荷を読み出す動作が含まれる1水平期間を示し、図4(b)は、そのような読み出し動作が含まれない1水平期間を示す。
【図5】切出モードにおいて垂直転送部に供給される駆動パルスを示しており、図5(a)は、画素から垂直転送部に信号電荷を読み出す動作が含まれる1水平期間を示し、図5(b)は、そのような読み出し動作が含まれない1水平期間を示す。
【図6】従来技術の垂直転送部において時間の経過とともに信号電荷が転送されていく様子を示す図である。
【図7】本実施形態の垂直転送部において時間の経過とともに信号電荷が転送されていく様子を示す図である。
【図8】従来技術の信号出力を説明するための図であり、図8(a)は、信号出力のタイミングを示し、図8(b),(c),(d),(e)は、それぞれ図8(a)の時刻t1,t2,t3,t4における信号電荷の転送状況を示す図である。
【図9】本実施形態の信号出力を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態に係る固体撮像素子を用いたカメラの構成を示す図である。
【図11】本発明の実施形態において切出領域に関する変形例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態において配線に関する変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
<固体撮像素子の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る固体撮像素子の全体構成を示す図である。図2は、本発明の実施形態に係る固体撮像素子の詳細構成を示す図であり、図2(a)は、図1の(a)で示す行の一部を拡大した図であり、図2(b)は、図1の(b)で示す行の一部を拡大した図であり、図2(c)は、図1のE−E’線に沿った断面を示す図である。
【0017】
固体撮像素子は、光電変換部101、垂直転送路102、ゲート電極103、第1配線104、第2配線105、コンタクト106、水平転送部107、出力部108を備える。
光電変換部101は、フォトダイオードで構成され、複数行および複数列に行列状に配置されている。光電変換部101のひとつが画素のひとつに相当し、複数行および複数列に配置された画素が画素部に相当する。
【0018】
垂直転送路102は、半導体基板内に複数並設されている。ゲート電極103は、半導体基板上に垂直転送路102に沿って複数配置されている。垂直転送路102とゲート電極103とが垂直転送部に相当する。本実施形態では、ひとつの画素にひとつのゲート電極が設けられた1画素1電極の構成である。
第1配線104および第2配線105は、それぞれ電気的に絶縁され、各行に1本ずつ設けられている。本実施形態では、駆動パルスは、V1からV8までの8相駆動である。垂直方向に並んだ4行おきに第1配線104同士が電気的に接続され、垂直方向に並んだ4行おきに第2配線105同士が電気的に接続されている。以下に、nを1以上の整数としたときに各行の第1および第2配線に供給される駆動パルスの関係を示す。
【0019】
4n行目の第1配線:駆動パルスV1
4n行目の第2配線:駆動パルスV2
4n+1行目の第1配線:駆動パルスV3
4n+1行目の第2配線:駆動パルスV4
4n+2行目の第1配線:駆動パルスV5
4n+2行目の第2配線:駆動パルスV6
4n+3行目の第1配線:駆動パルスV7
4n+3行目の第2配線:駆動パルスV8
また、画素部は切出領域301と不要領域302とから構成されている。静止画撮影などの全画素を読み出す場合(以下、「全画素読出モード」という)には、切出領域301および不要領域302の両方の画素から信号電荷が読み出され、オートフォーカス機能の実行中や動画撮影などの一部の画素を読み出す場合(以下、「切出モード」という)には、切出領域301の画素から信号電荷が読み出される。
【0020】
上述したように、各行には第1配線104および第2配線の両方が設けられている。ゲート電極103は、第1配線104および第2配線105の何れかにコンタクト106を介して電気的に接続されているが、どちらと接続されるかは切出領域301と不要領域302とで異なる。具体的には、切出領域301ではゲート電極103は、第2配線105にコンタクトされ、不要領域302ではゲート電極103は、第1配線104にコンタクトされている。これにより、切出領域301では、垂直転送部が偶数番号の駆動パルスV2,V4,V6,V8で駆動され、不要領域302では、垂直転送部が奇数番号の駆動パルスV1,V3,V5,V7で駆動される。そのため、奇数番号の駆動パルスを転送パルスのみとし、偶数番号の駆動パルスを転送パルスに読み出しパルスを重畳したものとすれば、切出領域301に含まれる画素のみから信号電荷を垂直転送部に読み出し、読み出された信号電荷を垂直転送することができる。
【0021】
水平転送部107は、垂直転送部から行単位で転送された信号電荷を水平方向に転送する。出力部108は、水平転送部107から転送された信号電荷を電圧信号に変換して、外部に出力する。
図3は、本発明の実施形態に係る切出領域および不要領域を示す図である。
切出領域301は、画素部に含まれる全ての行よりも少ない行数の隣接行を含み、且つ、画素部に含まれる全ての列よりも少ない列数の隣接列を含むように区画されている。不要領域302は、切出領域301以外の領域であり、領域302a,302b,302c,302dからなる。ここで、隣接行とは、垂直方向に連続して並ぶ行のことを言い、隣接列とは、水平方向に連続して並ぶ列のことを言う。
<固体撮像素子の駆動方法>
次に、固体撮像素子の駆動方法を説明する。
【0022】
図4は、全画素読出モードにおいて垂直転送部に供給される駆動パルスを示しており、図4(a)は、画素から垂直転送部に信号電荷を読み出す動作が含まれる1水平期間を示し、図4(b)は、そのような読み出し動作が含まれない1水平期間を示す。なお、図4(b)は、図4(a)のV転送(繰り返し)と表記されている期間に複数回繰り返される。
【0023】
駆動パルスは、VH(読み出し電圧:ハイレベル)、VM(蓄積電圧:ミドルレベル)、VL(バリア電圧:ローレベル)の3値の電圧を取り得る。駆動パルスは、転送パルスと読み出しパルスとに成分を分けて考えることができる。このとき、VMとVLとの繰り返しが転送パルスに相当し、VHが読み出しパルスに相当する。読み出しパルスは、所定期間毎に転送パルスに重畳される。ここでは、時刻T=t(N)と時刻T=t(N+1)とで読み出しパルスが重畳されている。
【0024】
T=t(N)では、駆動パルスV1,V2の両方に読み出しパルスが重畳されているので、4n行目の全ての画素から信号電荷が垂直転送部に読み出される。垂直転送部に読み出された信号電荷は、V転送(繰り返し)の期間に水平転送部を介して外部に出力される。これにより、4n行目の画素の画素信号をフィールド読み出しすることができる。また、T=t(N+1)では、駆動パルスV3,V4の両方に読み出しパルスが重畳されている。そのため、4n+1行目の画素の画素信号をフィールド読み出しすることができる。その後、同様に、4n+2行目の画素の画素信号および4n+3行目の画素の画素信号がそれぞれフィールド読み出しされる。これにより、最終的に全画素の画素信号が外部に出力される。
【0025】
図5は、切出モードにおいて垂直転送部に供給される駆動パルスを示しており、図5(a)は、画素から垂直転送部に信号電荷を読み出す動作が含まれる1水平期間を示し、図5(b)は、そのような読み出し動作が含まれない1水平期間を示す。なお、図5(b)は、図5(a)のV転送(繰り返し)と表記されている期間に複数回繰り返される。
T=t(N)では、駆動パルスV2には読み出しパルスが重畳されているが、駆動パルスV1には読み出しパルスが重畳されていない。そのため、切出領域に含まれる画素のうちの4n行目の画素のみから信号電荷が垂直転送部に読み出される。垂直転送部に読み出された信号電荷は、V転送(繰り返し)の期間に水平転送部を介して外部に出力される。また、T=t(N+1)では、切出領域に含まれる画素のうち4n+1行目の画素のみから信号電荷が垂直転送部に読み出される。その後、同様に、切出領域に含まれる画素のうち、4n+2行目,4n+3行目の画素からそれぞれ信号電荷が垂直転送部に読み出される。これにより、不要領域に含まれる画素の信号電荷は外部に出力することなく、切出領域に含まれる画素の信号電荷のみを外部に出力することができる。
【0026】
なお、全画素読出モードおよび切出モードの何れも所定期間毎に読み出しパルスが重畳されているが、切出モードでは全画素読出モードに比べて読み出しパルスを重畳する間隔が短い(詳細については、図7を用いて説明する)。
<従来技術と本実施形態との対比>
次に、従来技術と本実施形態との対比を行う。まずは、図6(従来技術)と図7(本実施形態)とを用いて「スミア段差」の観点で対比し、次に、図8(従来技術)と図9(本実施形態)とを用いてフレームレートの観点で対比する。
【0027】
図6は、従来技術の垂直転送部において時間の経過とともに信号電荷が転送されていく様子を示す図である。P1からP12まではそれぞれ電位井戸を表している。また、「高輝度」と表示されている箇所がノイズ発生箇所である。
T=t1では、垂直転送部に読み出しパルスが供給される。従来技術では、切出モードであっても切出領域と不要領域との両方に読み出しパルスが供給される。そのため、P3からP10までの各電位井戸には切出領域の信号電荷が読み出されると共に、電位井戸P1,P2,P11,P12には不要領域の不要な信号電荷が読み出される。
【0028】
T=t1からT=t2まで、P1,P2の不要電荷を排出するため、垂直転送部が高速転送される。高速転送中にノイズ発生箇所を通過するP7,P8にはスミアによるノイズ電荷が混合されない(厳密に言えば、ノイズ電荷は混合されるが、通常転送中に混合される量に比べて少ない)。
T=t3からT=t6まで、P3からP10までの信号電荷を出力するため、垂直転送部が通常転送される。この間にノイズ発生箇所を通過する電位井戸にはスミアによるノイズ電荷が混合される。
【0029】
T=t6からT=t7まで、P11,P12の不要電荷を排出するため、垂直転送部が高速転送される。T=t7に、T=t1で読み出された信号電荷が全て外部出力される。
T=t8では、垂直転送部に再び読み出しパルスが供給される。以降は、上述した動作を繰り返す。この例では、P3からP10までの各電位井戸に読み出された信号電荷のうち、P4からP8までの電位井戸にはノイズ電荷が混合されず、P3,P9,P10の電位井戸にはノイズ電荷が混合される。このように、従来技術では、垂直転送部において通常転送と高速転送とを切り替えるので、ノイズ電荷が混合される信号電荷とノイズ電荷が混合されない信号電荷とが混在し、「スミア段差」が生じてしまう。
【0030】
図7は、本実施形態の垂直転送部において時間の経過とともに信号電荷が転送されていく様子を示す図である。
T=t1では、垂直転送部に読み出しパルスが供給される。本実施形態では、切出モードでは切出領域のみに読み出しパルスが供給される。そのため、P3からP10までの各電位井戸には切出領域の信号電荷が読み出され、不要領域の不要な信号電荷は読み出されない。
【0031】
T=t1からT=t5まで、垂直転送部が通常転送される。この間にノイズ発生箇所を通過する電位井戸にはスミアによるノイズ電荷が混合される。
T=t6では、垂直転送部に読み出しパルスが供給される。これにより、P3からP10までの各電位井戸には切出領域の信号電荷が読み出される。このとき、P3からP6までの各電位井戸には既にノイズ電荷が入っているので、信号電荷とノイズ電荷とが混合される。このように、本実施形態では、垂直転送部において通常転送と高速転送とを切り替えないので、何れの電位井戸にも一定量のノイズ電荷が混合されることとなり、「スミア段差」が生じない。
【0032】
なお、本実施形態では、Nフィールドの読み出し(T=t1)とN+1フィールドの読み出し(T=t6)との間隔は、垂直転送部内に形成された電位井戸が切出領域にある電位井戸の個数(8個)にひとつ足した個数分だけ転送されるのに要する期間と同等である。そのため、P10(N)とP3(N+1)との間に、ノイズ電荷のみが入った電位井戸が存在する。これにより、外部の処理回路ではスミアによるノイズ電荷を検出することができ、信号電荷からノイズ電荷を差し引く処理を実行することができる。なお、この例では、ノイズ電荷のみが入った電位井戸の個数を1個としているが、それを複数個としてこれらの平均をとることとしてもよい。これにより、ノイズ電荷の検出精度を高めることができる。ただし、フィールド間の電位井戸の個数を多くしすぎると、それに応じてフレームレートが低下するので、垂直転送部にある電位井戸の個数(この例では12個)よりも少ないほうが望ましい。
【0033】
図8は、従来技術の信号出力を説明するための図であり、図8(a)は、信号出力のタイミングを示し、図8(b),(c),(d),(e)は、それぞれ図8(a)の時刻t1,t2,t3,t4における信号電荷の転送状況を示す図である。図中、信号電荷が読み出されていない電位井戸を「空パケット」と表記している。これに対し、図9は、本実施形態の信号出力を説明するための図である。
【0034】
従来技術では、不要領域から読み出された信号電荷を排出するのに、高速転送といえどもある程度の時間を要する。本実施形態では、不要領域からは信号電荷を読み出さないので、不要領域の信号電荷を排出するための時間を設ける必要がなく、その結果、フレームレートを高めることができる。
<カメラの構成>
図10は、本発明の実施形態に係る固体撮像素子を用いたカメラの構成を示す図である。
【0035】
カメラ401は、光学系402、メカニカルシャッタ403、固体撮像素子404、信号処理部405、モニタ406、メモリ407、ユーザ操作部408、制御部409、っ駆動パルス生成部410を備える。
固体撮像素子404には、光学系402により集光された光がメカニカルシャッタ403を通じて入射される。これにより生じた信号電荷は信号処理部405に送られ、各種信号処理が施される。そのうちのひとつに、信号電荷からスミアによるノイズ電荷を差し引く演算処理が行われる。モニタ406は、信号処理部405から受けた映像信号に基づき映像を表示する。また、メモリ407は、信号処理部405から受けた映像信号を保存する。ユーザ操作部408は、例えば、シャッタボタン等である。制御部409は、ユーザ操作部408の操作に応じた指示を駆動パルス生成部410に出力する。例えば、シャッタボタンが半押し状態であれば、オートフォーカス機能を実行する指示を駆動パルス生成部410に出力する。駆動パルス生成部410は、動画モード、静止画モード、オートフォーカス機能など、その都度必要な駆動パルスを生成する。
【0036】
この構成により、フレームレートを高めつつ、スミア段差の発生を防止することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限られず、例えば、以下のような変形例が考えられる。
(1)実施形態では、切出領域は画素部の略中央に位置しているが、オートフォーカス機能や動画撮影などに必要な領域であれば、これに限られない。また、切出領域を1箇所だけでなく、複数個所に設けることとしてもよい。また、例えば、図11のように区画することとしてもよい。
(2)実施形態では、全ての行に第1配線および第2配線が設けられているが、本発明は、これに限らない。駆動パルスを供給するという観点では、不要領域302しか存在しない行や、切出領域301しか存在しない行については、第1配線および第2配線の一方だけを設ければよい(例えば、図12参照)。ただし、全ての行に第1配線および第2配線の両方を設けると、別の観点から以下のような効果を奏することができる。
(a)全ての行に両方の配線が設けられていれば、コンタクトの位置を変更するだけで切出領域とするか不要領域とするかを決定することができる。そのため、設計変更を容易にすることができる。
(b)全ての行に両方の配線が設けられていれば、何れの行においても配線容量を揃えることができる。そのため、駆動パルスの伝播遅延の行毎の相違を考慮する必要がないので、設計を容易にすることができる。
(c)全ての行に両方の配線が設けられていれば、配線層上に形成される層間絶縁膜の平坦性を高めることができる。
【0037】
従って、全ての行に第1配線および第2配線の両方を設けるのが好ましい。
(3)実施形態では、1画素1電極タイプであるが、1画素2電極タイプでも適用可能である。
(4)実施形態では8相駆動で説明しているが、これに限らない。少なくとも4相あればよい。
(5)実施形態では、1フレームの画素信号を複数のフィールドに分けて読み出しているが、本発明は、これに限らず、1フレームの画素信号を1回で読み出すこととしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、デジタルカメラ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
101 光電変換部
102 垂直転送路
103 ゲート電極
104 第1配線
105 第2配線
106 コンタクト
107 水平転送部
108 出力部
301 切出領域
302 不要領域
401 カメラ
402 光学系
403 メカニカルシャッタ
404 固体撮像素子
405 信号処理部
406 モニタ
407 メモリ
408 ユーザ操作部
409 制御部
410 駆動パルス生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部を有する画素が複数行および複数列に配置された画素部と、画素毎に当該画素から信号電荷を読み出して垂直方向に転送するためのゲート電極を有する複数の垂直転送部と、前記複数の垂直転送部から転送された信号電荷を水平方向に転送する水平転送部とを備えた固体撮像素子であって、
前記画素部は、前記複数行よりも少ない行数の隣接行を含み且つ前記複数列と同数またはそれよりも少ない列数の隣接列を含む切出領域と、それ以外の不要領域とに区画され、
前記画素部では、行毎に、不要領域のゲート電極に給電を行う第1の配線および切出領域のゲート電極に給電を行う第2の配線の両方または一方が設けられ、
前記画素部の不要領域では、画素毎に設けられたゲート電極が、行毎に設けられた第1の配線に行単位で共通に接続され、
前記画素部の切出領域では、画素毎に設けられたゲート電極が、行毎に設けられた第2の配線に行単位で共通に接続されていることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記画素部に含まれる何れの行にも第1および第2の配線の両方が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記画素部では垂直方向に並んだ所定数の行おきに第1の配線同士が電気的に接続されていると共に、前記所定数と同数の行おきに第2の配線同士が電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
請求項1に記載の固体撮像素子を備えたカメラ。
【請求項5】
請求項1に記載の固体撮像素子の駆動方法であって、
前記第1および第2の配線に転送パルスを供給することにより、前記垂直転送部内に形成された電位井戸を垂直方向に転送させ、
所定期間毎に、前記第2の配線に供給されている転送パルスに読み出しパルスを重畳させることにより、前記切出領域に含まれる画素の信号電荷を、前記垂直転送部内を転送されている電位井戸に読み出させ、
前記所定期間は、前記垂直転送部内に形成された電位井戸が前記切出領域にある電位井戸の個数にひとつ足した個数分だけ転送されるのに要する期間と同等かそれよりも長く、前記垂直転送部内にある電位井戸の個数分だけ転送されるのに要する期間よりも短いことを特徴とする固体撮像素子の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−55201(P2011−55201A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201576(P2009−201576)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】