説明

固体撮像装置、固体撮像装置の製造方法、及び、電子機器

【課題】ワイヤグリッド偏光子へのダストの付着を抑制することが可能な固体撮像装置を提供する。
【解決手段】光電変換素子21と、光電変換素子21上に設けられたワイヤグリッド偏光子30と、光電変換素子21に設けられる導体層24とワイヤグリッド偏光子30とを電気的に接続する導体膜35とを備える固体撮像装置20を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ワイヤグリッド偏光子(WGP:Wire Grid Polarizer)を備える固体撮像装置、固体撮像装置の製造方法、及び、固体撮像装置を備える電子機器に係わる。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOSイメージセンサ等の固体撮像装置において、偏光子を組み合わせた光学系が用いられている。特に、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ、携帯機器等の機能として用いられる立体映像(3D)の用途において、右眼用と左眼用の光線を分けて取り扱う必要性から、偏光子の使用機会が増している。固体撮像装置における偏光子は、撮像素子とは別部品として撮像素子の外側に、偏光フィルタを接触又は非接触の形態で設けられることが一般的である。
【0003】
また、無機偏光子として、ワイヤグリッド偏光子(Wire Grid Polarizer:WGP)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ワイヤグリッド偏光子としては、一般的に、反射型のワイヤグリッド偏光子と、吸収型のワイヤグリッド偏光子とがある。反射型のワイヤグリッド偏光子は、使用帯域の光の波長よりも狭ピッチで一次元格子状に形成された帯状の反射層により構成されている。また、吸収型のワイヤグリッド偏光子は、使用帯域の光の波長よりも狭ピッチで一次元格子状に形成された帯状薄膜からなる反射層と、この反射層上に形成された誘電体層と、誘電体層上に形成された吸収層とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−328234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のワイヤグリッド偏光子は、シリコン酸化膜等の誘電体層からなる透明な平坦面上に形成されるため電気的に浮いた状態となる。このため、ワイヤグリッド偏光子への静電ダスト等の付着が問題点となる。
【0006】
本技術においては、ワイヤグリッド偏光子へのダストの付着を抑制することが可能な固体撮像装置、その製造方法、及び、固体撮像装置を備える電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の固体撮像装置は、光電変換素子と、光電変換素子上に設けられたワイヤグリッド偏光子と、光電変換素子に設けられる導体層とワイヤグリッド偏光子とを電気的に接続する導体膜とを備える。
また、本技術の固体撮像装置の製造方法は、光電変換素子を準備する工程と、光電変換素子上にワイヤグリッド偏光子を形成する工程と、ワイヤグリッド偏光子と光電変換素子に設けられた導体層とを接続する、導体膜を形成する工程とを有する。
また、本技術の電子機器は、上述の固体撮像装置と、固体撮像装置の撮像部に入射光を導く光学系と、固体撮像装置の出力信号を処理する信号処理回路とを有する。
【0008】
本技術の固体撮像装置及び固体撮像装置の製造方法により製造された固体撮像装置によれば、導体膜によりワイヤグリッド偏光子が光電変換素子の導体層と電気的に接続されている。このため、ワイヤグリッド偏光子の導体層が電気的に浮いた状態とならず、静電ダスト等の付着を抑制することができる。同様に、本技術の電子機器においても、固体撮像装置上に設けられたワイヤグリッド偏光子への静電ダスト等の付着が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、ワイヤグリッド偏光子へのダストの付着を抑制することが可能な固体撮像装置、その製造方法、及び、この固体撮像装置を備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】固体撮像装置の実施形態の構成を示す図である。
【図2】固体撮像装置の実施形態の構成を示す断面図である。
【図3】固体撮像装置に設けられるワイヤグリッド偏光子と導体膜の構成を示す平面図である。
【図4】パッケージに格納された固体撮像装置の構成を示す図である。
【図5】A〜Dは、図2に示す固体撮像装置の製造工程図である。
【図6】ワイヤグリッド偏光子の構成を示す平面図である。
【図7】Aは、実施形態の固体撮像装置の変形例の構成を示す断面図である。Bは、ワイヤグリッド偏光子と導体膜の構成を示す平面図である。
【図8】Aは、実施形態の固体撮像装置の変形例の構成を示す断面図である。Bは、ワイヤグリッド偏光子と導体膜の構成を示す平面図である。
【図9】A,Bは、ワイヤグリッド偏光子と導体膜の構成を示す平面図である。
【図10】電子機器の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための最良の形態の例を説明するが、本技術は以下の例に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.固体撮像装置の実施形態
2.固体撮像装置の製造方法の実施形態
3.固体撮像装置の変形例
4.電子機器の実施形態
【0012】
〈1.固体撮像装置の実施形態〉
[固体撮像装置の構成例:概略構成図]
以下、本実施形態の固体撮像装置の具体的な実施の形態について説明する。
図1に、固体撮像装置の一例として、MOS(Metal Oxide Semiconductor)型の固体撮像装置の概略構成図を示す。
【0013】
図1Aに示す固体撮像装置10は、半導体基体、例えば、シリコン基板に複数の光電変換部となるフォトダイオードを含む画素12が規則的に2次元的に配列された画素部(いわゆる撮像領域)13と、周辺回路部とから構成される。画素12は、フォトダイオードと、複数の画素トランジスタ(いわゆるMOSトランジスタ)を有する。
【0014】
複数の画素トランジスタは、例えば転送トランジスタ、リセットトランジスタ、増幅トランジスタの3つのトランジスタで構成することができる。その他、選択トランジスタを追加して4つのトランジスタで構成することもできる。
【0015】
周辺回路部は、垂直駆動回路14と、カラム信号処理回路15と、水平駆動回路16と、出力回路17と、制御回路18等から構成されている。
【0016】
制御回路18は、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路14、カラム信号処理回路15及び水平駆動回路16等の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成する。制御回路18は、これらの信号を垂直駆動回路14、カラム信号処理回路15及び水平駆動回路16等に入力する。
【0017】
垂直駆動回路14は、例えばシフトレジスタによって構成される。垂直駆動回路14は、画素部13の各画素12を行単位で順次垂直方向に選択走査し、垂直信号線19を通して各画素12の光電変換素子において受光量に応じて生成した信号電荷に基づく画素信号をカラム信号処理回路15に供給する。
【0018】
カラム信号処理回路15は、画素12の例えば列ごとに配置され、1行分の画素12から出力される信号を画素列ごとに黒基準画素(有効画素領域の周囲に形成される)からの信号によってノイズ除去などの信号処理を行う。即ち、カラム信号処理回路15は、画素12固有の固定パターンノイズを除去するためのCDS(correlated double sampling)や、信号増幅等の信号処理を行う。カラム信号処理回路15の出力段には水平選択スイッチ(図示せず)が水平信号線11との間に接続されて設けられている。
【0019】
水平駆動回路16は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路15の各々を順番に選択し、カラム信号処理回路15の各々から画素信号を水平信号線11に出力する。
出力回路17は、カラム信号処理回路15の各々から水平信号線11を通して順次に供給される信号に対し、信号処理を行って出力する。
【0020】
上記の固体撮像装置10を、裏面照射型の固体撮像装置に適用する場合は、光入射面(いわゆる受光面)側の裏面上には配線層が形成されず、配線層は受光面と反対側の表面側に形成される。
【0021】
[固体撮像装置の構成例:ワイヤグリッド偏光子]
次に、ワイヤグリッド偏光子を搭載した固体撮像装置の構成について説明する。図2に、ワイヤグリッド偏光子を備える固体撮像装置の概略構成図(断面図)を示す。
図2に示す固体撮像装置20は、光電変換素子21上にワイヤグリッド偏光子30が搭載されている。光電変換素子21は、支持基板36上に、配線層22、半導体層26、及び、光学部27を備える。図2に示す光電変換素子21は、半導体層に図示しないフォトダイオードや、各種トランジスタを備え、配線層22が形成された面と逆の面に光学部27が形成されている、いわゆる裏面照射型のイメージセンサの例である。
配線層22には、層間絶縁層23中に複数の導体層24が形成され、層間絶縁層23及び導体層24が複数積層された構造の多層配線層が形成されている。また、配線層22において、光電変換素子21を外部機器とワイヤボンディング等により接続するための導体層24からなるパッド電極25を備える。
光学部27には、各画素に対応したカラーフィルタ28及びマイクロレンズ29等を備える。
また、光電変換素子21は、光学部27が形成された表面から、配線層22の導体層24までを開口する貫通孔37を備える。また、光学部27が形成された表面から、配線層22のパッド電極25までを開口する貫通孔39を備える。
【0022】
固体撮像装置20は、光電変換素子21の光学部27上に形成された下地層31上にワイヤグリッド偏光子30を備える。ワイヤグリッド偏光子30は、下地層31上に形成された反射層32と、反射層32上に形成された誘電体層33と、誘電体層33上に形成された吸収層34との積層体からなる。さらに、下地層31、反射層32、誘電体層33、及び、吸収層34の全面を被覆し、貫通孔37の底部の導体層24、例えば光電変換素子のグランド層まで連続して形成された導体膜35を備える。このため、導体膜35により、ワイヤグリッド偏光子30の反射層32、誘電体層33及び吸収層34が、配線層22の導体層24と電気的に接続されている。
【0023】
反射層32は、光電変換素子21の主面と平行な一方向に延びた帯状の薄い層により、可視光域の波長よりも狭ピッチで一次元格子状に形成されている。反射層32が一次元格子状に延びる方向(反射層32の延びる方向と平行な方向)は、消光させる偏光方位と一致する。また、一次元格子状の繰り返し方向(反射層32の延びる方向と直交する方向)は、透過させる偏光方位と一致する。
【0024】
即ち、反射層32は、一般的なワイヤグリッド偏光子の機能を有し、この反射層32の繰り返し単位に入射した光のうち、反射層32の延びる方向と平行な方向に電界成分を有する偏光波(TE波/S波、又は、TM波/P波のいずれか一方)を減衰させる。また、反射層32の延びる方向と直交する方向に電界成分を有する偏光波(TE波/S波、又は、TM波/P波のいずれか他方)を透過させる。
【0025】
反射層32には、通常のワイヤグリッド偏光子用の格子材料を用いることができる。例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、鉄(Fe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及び、テルル(Te)等の金属材料や半導体材料、並びに、これらを含む合金材料を用いることができる。また、例えば着色等により表面の反射率を高くした無機材料層や樹脂層から反射層32を構成することもできる。
【0026】
誘電体層33は、上述の反射層32上に形成される。誘電体層33は、可視光に透明な光学材料から形成される。例えば、SiO、Al、及びMgF等の材料を用いて形成される。
【0027】
誘電体層33は、吸収層34の下地層となる。また、誘電体層33は、吸収層34で反射された偏光光と、吸収層34を透過して反射層32で反射された偏光光との位相を調整し、干渉効果により反射率を低減するために形成される。このため、誘電体層33は、反射層32で反射された偏光光の位相が、吸収層34で反射された偏光光と、半波長分ずれるような厚さに形成されることが好ましい。なお、吸収層34が、光吸収効果を有しているため、誘電体層33の厚さが、上記干渉効果のために最適化されていなくても、消光比の向上が可能である。
【0028】
また、誘電体層33の屈折率は、1.0より大きく、2.5以下とすることが好ましい。吸収層34の光学特性は、周囲の屈折率によっても影響を受けるため、誘電体層33の屈折率を調整することにより、ワイヤグリッド偏光子30の偏光子特性を制御することが可能である。
【0029】
吸収層34は、誘電体層33上において、反射層32の一次元格子方向に離間されて、断続的に形成される。つまり、誘電体層33上での吸収層34の平面形状は、長方形の島状パターンである。そして、吸収層34の平面形状は、吸収層34の長辺が、反射層32の延びる方向と平行な方向に形成される。また、吸収層34の短辺が、反射層32の延びる方向と直交する方向に形成される。そして、吸収層34の長辺方向が偏光子の光吸収軸となり、短辺方向が偏光子の光透過軸となる。
【0030】
吸収層34は、消衰係数が零でない、即ち、光吸収作用を有する金属材料や合金材料、半導体材料から構成される。また、吸収層34は、例えば、光吸収作用を有する無機微粒子を含んで形成されている。例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、鉄(Fe)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、錫(Sn)等の金属材料や半導体材料、これらを含む合金材料を用いることができる。また、FeSi(特にβ−FeSi)、MgSi、NiSi、BaSi、CrSi、CoSi等のシリサイド系材料を用いることができる。
特に、吸収層34を構成する材料として、アルミニウム若しくはその合金、又は、β−FeSiや、ゲルマニウム、テルルを含む半導体材料を用いることで、可視光域で高コントラスト(高消光比)を得ることができる。なお、可視光以外の波長帯域、例えば赤外域に偏光特性を持たせるためには、光吸収層を構成する材料として、共鳴波長が赤外域近辺にある銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等を用いることが好ましい。
【0031】
導体膜35は、タングステン(W)、ITO(Indium Tin Oxide)、TiO、及び、カーボン等の薄膜により形成されている。画素部への入射光の障害とならない厚さ、例えば10nm以下の範囲で形成される。
この導体膜35が形成されたワイヤグリッド偏光子30の平面図を図3に示す。図3に示すように、導体膜35は、ワイヤグリッド偏光子30の反射層32が形成されている領域のほぼ全域を被覆して形成されている。これにより、ワイヤグリッド偏光子30を構成する反射層32、誘電体層33及び吸収層34がすべて、導体膜35を接触する構成となる。
【0032】
下地層31は、ワイヤグリッド偏光子30を形成するための平坦化するための層であり、例えばSiO、SiN、LTO(Lowtemperature Oxidation)等のケイ素化合物を用いる。下地層31は、例えば、スパッタ法やゾルゲル法(スピンコート法により溶液を塗布し、熱処理によりゲル化させる方法)により形成する。
【0033】
次に、図4に、パッケージに格納された上述の固体撮像装置20の構成を示す。
ワイヤグリッド偏光子30を備える固体撮像装置20が、セラミックパッケージ41の凹部内に搭載される。そして、光電変換素子21上のワイヤボンド用のパッド電極を、金線等を用いたワイヤボンド43により、図示しない外部機器の電極と接続する。そして、固体撮像装置20が、セラミックパッケージ41の凹部を覆う透明蓋部材42により封止される。
【0034】
従来の一般的なワイヤグリッド偏光子を備える固体撮像装置では、垂直方向に誘電体層と導体層とが積層された構造のワイヤグリッド偏光子を備える場合、ワイヤグリッド偏光子は電気的に浮いた状態(フローティング)となっている。このため、このワイヤグリッド偏光子の表面や、帯状の反射層の間等の微小ギャップに、静電ダスト等が付着し易い状態にある。この静電ダスト等の付着は、固体撮像装置にワイヤグリッドを形成した後、パッケージング工程において透明性蓋部材で固体撮像装置を封止する迄の間に起こりやすい。透明性蓋部材で封止した後は、ダストは恒久的に部品内部に閉じ込められ、画質の劣化や、偏光効果の劣化が起こり得る。また、ダストと半導体チップやボンディングワイヤなどの構成材料との化学的に反応することによる材料腐食の懸念がある。
【0035】
これに対し、上述の本実施形態の固体撮像装置20は、ワイヤグリッド偏光子30の表面が導体膜35で覆われている。さらに導体膜35は、光電変換素子21の光学部27から半導体層26を貫通し、配線層22までを開口する貫通孔37内において、導体層24に接続されている。このため、ワイヤグリッド偏光子30が、導体膜35を介して、配線層22の導体層24と電気的に接続されている。従って、固体撮像装置20のワイヤグリッド偏光子30は、電気的に浮いた状態(フローティング)ではない。このため、ワイヤグリッド偏光子30への静電ダストの付着を抑制することができる。
この結果、ワイヤグリッド偏光子への静電ダスト等の付着による画質の劣化や、偏光効果の劣化を抑制することができ、固体撮像装置の初期不良等の発生を抑制することができる。また、静電ダストと半導体素子やボンディングワイヤ等の構成材料との化学的な反応を抑制することができる。このため、長期使用における固体撮像装置の信頼性の向上が可能である。
【0036】
なお、上述の実施形態では、ワイヤグリッド偏光子30を被覆する導体膜35は、貫通孔37を介して配線層22の導体層24と電気的に接続されているが、ワイヤグリッド偏光子30が他の導体層と電気的に接続されていれば、上述の効果を得ることができる。このため、導体膜が接続する配線は、光電変換素子21に形成されるその他の導体層であればどこでもよい。例えば、ワイヤボンド用のパッド電極と導体膜とを接続する構成としてもよい。
【0037】
また、上述のワイヤグリッド偏光子30は、反射層32のみから構成される反射型の単層偏光子とすることもできる。単層偏光子とした場合にも、上述の吸収型のワイヤグリッド偏光子30とは異なる作用であるが、通常のワイヤグリッド偏光子として機能する。
ワイヤグリッド偏光子30を備える固体撮像装置に適用される光電変換素子は、上述のCMOS型イメージセンサ以外も適用可能である。例えば、CCDイメージセンサ、CIS(Contact Image Sensor)、CMD(Charge Modulation Device)型の信号増幅型イメージセンサ等に適用可能である。また、光電変換素子として、表面照射型の光電変換素子又は裏面照射型の光電変換素子にも適用可能である。
【0038】
〈2.固体撮像装置の製造方法の実施形態〉
次に、ワイヤグリッド偏光子を搭載する固体撮像装置の製造方法の実施形態について説明する。以下の説明では、固体撮像装置の製造方法の一例として、上述の固体撮像装置20上にワイヤグリッド偏光子30を形成する方法について説明する。
【0039】
まず、図5Aに示すように、支持基板36上に配線層22、半導体層26、及び、光学部27を備える光電変換素子21を準備する。図5Aでは、半導体層26にフォトダイオード等が形成され、配線層22が形成された面とは逆の面に光学部27が形成されている、いわゆる裏面照射型の光電変換素子21を示している。
【0040】
次に、図5Bに示すように、光電変換素子21の表面(光の入射側)に、ワイヤグリッド偏光子30を形成する。
まず、光電変換素子21の光学部27上に、使用波長帯域内で透明な材料、例えばSiO、Al等を用いて下地層31を形成する。下地層31は、例えば、気相成膜法、スパッタ法、蒸着法等の一般的な真空成膜法や、上記材料を液体中に分散させた状態のゾルを用いたスピンコート法、ディッピング法等の方法により形成する。そして、形成した層の表面を平坦化して下地層31とする。下地層31は、ワイヤグリッド偏光子30を搭載する領域のみに形成してもよく、また、ワイヤグリッド偏光子30の領域外にも形成してもよい。
【0041】
下地層31を形成した後、下地層31上に反射層32を形成するための反射層形成層、誘電体層33を形成するための誘電体層形成層、及び、吸収層34を形成するための吸収層形成層を積層して形成する。具体的には、例えば反射層形成層として、アルミニウム(Al)等から成る反射層形成層を真空蒸着法によって形成する。そして、例えばSiO等から成る誘電体層形成層をCVD法によって形成する。更に、スパッタリング法によって、例えばタングステン(W)等から成る光吸収層形成層を形成する。
【0042】
次に、光吸収層形成層上に所望の島状パターンのエッチングレジスト層を形成し、このエッチングレジスト層をマスクとして光吸収層形成層及び誘電体層形成層をエッチングする。具体的には、公知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術に基づき、光吸収層形成層及び誘電体層形成層をパターニングする。これにより、反射層形成層上に島状の誘電体層33及び吸収層34を形成する。
【0043】
誘電体層33及び吸収層34の形成後、反射層形成層、誘電体層33及び吸収層34を含む素子の全面を覆って、図面に対して垂直方向に延びる帯状パターンのエッチングレジスト層を形成する。この帯状エッチングレジスト層をマスクとして反射層形成層をエッチングする。これにより、帯状の反射層32を形成する。
以上の工程により、図5Bに示すように、下地層31上に反射層32を形成し、反射層32上に誘電体層33及び吸収層34を形成する。また、この状態のワイヤグリッド偏光子30の平面図を図6に示す。図6に示すように、帯状の反射層32上に、島状の誘電体層33及び吸収層34を形成する。
【0044】
次に、図5Cに示すように、光電変換素子21の表面から光学部27と半導体層26を貫通し、配線層22の導体層24までを開口する貫通孔37及び貫通孔39を形成する。貫通孔37は、例えば、半導体素子のグランド層となる導体層24上に形成する。また、貫通孔39は、ワイヤボンディング用のパッド電極25となる導体層24上に形成する。この工程では、従来公知の方法により貫通孔39を形成してワイヤボンディング用のパッド電極35を開口する工程において、貫通孔37を同時に形成することができる。
【0045】
次に、図5Dに示すように、ワイヤグリッド偏光子30上及び貫通孔37内に導体膜35を形成する。
まず、貫通孔37の内壁に、必要に応じて図示しない絶縁層やバリアメタル層を形成する。そして、光電変換素子21の表面及び貫通孔37内に、導体膜35を公知のスパッタリング法、蒸着法、及び、めっき法等を用いて形成する。導体膜35を形成した後、ワイヤグリッド偏光子30の形成領域と、ワイヤグリッド偏光子30から貫通孔37までを被覆するエッチングレジスト層を、公知のリソグラフィ技術を用いてパターン形成する。そして、このエッチングレジスト層から露出する導体膜を、公知のドライエッチング方法等を用いてエッチングする。この工程により、図5Dに示すように、貫通孔37内からワイヤグリッド偏光子30上まで連続する導体膜35を形成する。
【0046】
以上の工程により、光電変換素子21上にワイヤグリッド偏光子30が搭載された固体撮像装置20を形成することができる。上述の製造方法によれば、ワイヤグリッド偏光子30を被覆し、貫通孔37内に形成された導体膜35を介して、ワイヤグリッド偏光子30が配線層22の導体層24と電気的に接続される。このため、ワイヤグリッド偏光子30が電気的に浮いた状態とならず、静電ダストの付着を抑制することができる。
また、貫通孔37の形成は、従来のワイヤボンディング用のパッド電極を開口する工程において同時に行うことができる。このため、貫通孔37を形成するための工程を追加することなく、本実施形態の固体撮像装置20を製造することができる。
【0047】
〈3.固体撮像装置の変形例〉
次に、上述の実施形態の固体撮像装置の変形例について説明する。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成には同じ符号を付して説明を省略する。
[変形例1:導体膜]
図7に変形例1の固体撮像装置40の構成を示す。図7Aは、ワイヤグリッド偏光子30を搭載した固体撮像装置40の断面図であり、図7Bは、固体撮像装置40上に搭載されているワイヤグリッド偏光子30と導体膜38を示す平面図である。
図7に示す固体撮像装置40は、上述の図2及び図3に示す実施形態の固体撮像装置20と、導体膜38の形成位置が異なる。
【0048】
図7Bに示すように、固体撮像装置40の導体膜38は、ワイヤグリッド偏光子30の周囲において、帯状の反射層32と接続する位置に形成されている。また、導体膜38は、ワイヤグリッド偏光子30の誘電体層33及び吸収層34が形成されている領域には形成されていない。つまり、導体膜38は、ワイヤグリッド偏光子30の周囲を囲むように形成され、少なくともワイヤグリッド偏光子30の全ての帯状の反射層32と接続する位置に形成されている。これにより、光電変換素子21のフォトダイオードが形成されている領域上を除く位置に、導体膜38が形成される。
【0049】
また、導体膜38は、図7Aに示すように、光電変換素子21の表面から貫通孔37を経由して、配線層22の導体層24まで連続して形成されている。この構成により、ワイヤグリッド偏光子30の反射層32と、配線層22の導体層24とが電気的に接続される。
【0050】
図7に示す変形例1の固体撮像装置40は、上述の実施形態の固体撮像装置20の製造工程において、図5Dに示す導体膜35を形成する工程で使用するエッチングレジスト層のパターンを変更することで製造することができる。
【0051】
ワイヤグリッド偏光子30は、光電変換素子21の画素部においてフォトダイオードを中心として形成されている。このため、ワイヤグリッド偏光子30の中央部に導体膜を形成した場合には、フォトダイオードへ入射する光の障害となり、光量の減少や、感度の低下を招く。これに対し、変形例1の固体撮像装置40では、ワイヤグリッド偏光子30の周囲にのみ導体膜38が形成され、フォトダイオード上となるワイヤグリッド偏光子30の中央部分に導体膜38が形成されていない。ワイヤグリッド偏光子30の中央に導体膜38が形成されないことにより、光電変換素子21のフォトダイオードに届く光量を確保することができ、上述の実施形態の固体撮像装置に比べ、感度の低下を防ぐことができる。
【0052】
また、変形例1の固体撮像装置40では、導体膜38を介して、反射層32と配線層22の導体層24とが電気的に接続されているため、反射層32が電気的に浮いた状態とならない。このため、反射層32への静電ダストの付着、特に帯状の反射層32の微小ギャップ間への静電ダストの付着を抑制することができる。また、上述の構成の導体膜38の構成では、ワイヤグリッド偏光子が反射層のみから形成される場合に、ワイヤグリッド偏光子全体が電気的に浮いた状態とならないため、静電ダストの付着抑制と、感度特性の低下防止に効果的である。
【0053】
[変形例2:反射層]
次に、図8に変形例2の固体撮像装置50の構成を示す。図8Aは、ワイヤグリッド偏光子30を搭載した固体撮像装置50の断面図であり、図8Bは、固体撮像装置50上に搭載されているワイヤグリッド偏光子52の平面図である。なお、図8Aに示すワイヤグリッド偏光子30は、図8Bに示すワイヤグリッド偏光子30のA−A’線における断面を示している。
図8に示す固体撮像装置50は、上述の図2及び図3に示す実施形態の固体撮像装置20と、反射層32の構成、及び、導体膜38の形成位置が異なる。
【0054】
ワイヤグリッド偏光子52は、一次元格子状に形成された帯状の反射層32と、この一次元格子状に延びる反射層32と直交し、各反射層32間を電気的に接続する導体層53とを備える。そして、帯状の反射層32上に、島状の誘電体層33及び吸収層34が形成されている。
【0055】
導体層53は、例えば、反射層32と同じ材料により構成することができる。また、導体層53は、ワイヤグリッド偏光子52に形成されている全ての帯状の反射層32が電気的に接続されるように形成されている。このため、ワイヤグリッド偏光子52において、反射層32と導体層53とが、全て連続した導体パターンにより形成されている。
導体層53は、光電変換素子21のフォトダイオード上を除く、ワイヤグリッド偏光子52の周囲に形成することが好ましい。これにより、光電変換素子21において、フォトダイオードが形成されている領域上を除く位置に導体層53が形成され、フォトダイオードへの入射光の障害とならない。
【0056】
また、固体撮像装置50に形成される導体膜38のパターンは、図9Aに示すように上述の変形例1と同じパターンとすることができる。また、図9Bに示すように導体膜54のパターンとすることもできる。導体膜54は、ワイヤグリッド偏光子52の反射層32の少なくとも一部に接続されている。また、導体膜38は、図8Aに示すように、光電変換素子21の表面から貫通孔37を経由して、配線層22の導体層24まで連続して形成されている。
導体層53を設けることにより、反射層32が全て連続した導体として形成されている。このため、反射層32の一部に導体膜54が接続することで、ワイヤグリッド偏光子の反射層全体と配線層22の導体層24とを、導体膜54を介して電気的に接続することができる。
【0057】
図8に示す変形例2の固体撮像装置50は、上述の実施形態の固体撮像装置20の製造工程において、図5Bに示すワイヤグリッド偏光子30の反射層32を形成する工程において、反射層32のエッチングパターンを変更することで製造することができる。例えば、反射層32をエッチング形成する際のエッチングレジスト層のパターンを、一次元格子状に延びる帯状の反射層32と、この帯状の反射層32と直交する導体層53のパターンにエッチングレジスト層を形成する。そして、このエッチングレジスト層をマスクにして、反射層形成層をエッチングすることにより、反射層32と導体層53とを形成することができる。
また、図9Bに示す導体膜54は、上述の実施形態の固体撮像装置20の製造工程において、図5Dに示す導体膜35を形成する工程で使用するエッチングレジスト層のパターンを変更することで製造することができる。
【0058】
上述の変形例2の固体撮像装置50の構成によれば、変形例1の固体撮像装置40と同様に、フォトダイオード上となるワイヤグリッド偏光子30の中央部分にワイヤグリッド偏光子以外の構成が形成されていない。このため、導体膜等による入射光への障害を除去し、固体撮像装置の感度低下を防ぐことができる。
【0059】
〈4.電子機器の実施の形態〉
次に、上述の固体撮像装置を備える電子機器の実施形態について説明する。
上述の固体撮像装置は、固体撮像装置を備えたカメラ、カメラ付き携帯機器、固体撮像装置を備えたその他の機器等の電子機器に適用することができる。
図10に、電子機器の一例として、固体撮像装置を静止画撮影が可能なデジタルスチルカメラに適用した場合の概略構成を示す。
【0060】
本実施形態に係るカメラ60は、光学系(光学レンズ)61と、固体撮像装置62と、信号処理回路63、駆動回路64とを備える。
【0061】
固体撮像装置62は、上述の固体撮像装置が適用される。光学レンズ61は、被写体からの像光(入射光)を固体撮像装置62の撮像面上に結像させる。これにより、固体撮像装置62の光電変換素子において一定期間信号電荷が蓄積される。駆動回路64は、固体撮像装置62の転送動作信号を供給する。駆動回路64から供給される駆動信号(タイミング信号)により、固体撮像装置62の信号転送が行われる。信号処理回路63は、固体撮像装置62の出力信号に対して種々の信号処理を行う。信号処理が行われた映像信号は、メモリなどの記憶媒体に記憶され、又はモニタ等に出力される。本実施の形態のカメラ60は、光学レンズ61、固体撮像装置62、信号処理回路63、及び、駆動回路64がモジュール化したカメラモジュールの形態を含む。
【0062】
上述の固体撮像装置は、図10のカメラ、あるいはカメラモジュールを備えた例えば携帯電話に代表されるカメラ付き携帯機器などを構成することができる。
さらに、図10の構成は、光学レンズ61、固体撮像装置62、信号処理回路63、及び、駆動回路64がモジュール化した撮像機能を有するモジュール、いわゆる撮像機能モジュ−ルとして構成することができる。さらに、このような撮像機能モジュールを備えた電子機器を構成することができる。
【0063】
なお、上述の本実施の形態では、固体撮像装置の例としてCMOSイメージセンサについて説明したが、CMOSイメージセンサ以外の固体撮像装置にも適用することができる。例えば、固体撮像装置の種類は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMD(Charge Modulation Device)イメージセンサなど種類、方式を問わない。
【0064】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)光電変換素子と、前記光電変換素子上に設けられたワイヤグリッド偏光子と、前記光電変換素子に設けられる導体層と前記ワイヤグリッド偏光子とを電気的に接続する導体膜と、を備える固体撮像装置。
(2)前記光電変換素子が前記光電変換素子の表面から配線層までを開口する孔を有し、前記孔内を通じて配線層の前記導体層と前記導体膜とが接続されている(1)に記載の固体撮像装置。
(3)前記ワイヤグリッド偏光子が、導体層と誘電体層との積層体からなり、前記導体膜により前記積層体の全面が被覆されている(1)又は(2)に記載の固体撮像装置。
(4)前記導体膜が、前記ワイヤグリッド偏光子の周囲で、前記ワイヤグリッド偏光子を構成する導体層と接続する(1)又は(2)に記載の固体撮像装置。
(5)前記ワイヤグリッド偏光子が、帯状の導体層と、複数の前記帯状の導体層を電気的に接続する導体層とから構成されている(1)から(4)のいずれかに記載の固体撮像装置。
(6)光電変換素子を準備する工程と、前記光電変換素子上にワイヤグリッド偏光子を形成する工程と、前記ワイヤグリッド偏光子と前記光電変換素子に設けられた導体層とを接続する、導体膜を形成する工程と、を有する固体撮像装置の製造方法。
(7)光電変換素子、前記光電変換素子上に設けられたワイヤグリッド偏光子、及び、前記光電変換素子に設けられる導体層と前記ワイヤグリッド偏光子とを電気的に接続する導体膜を備える固体撮像装置と、前記固体撮像装置の撮像部に入射光を導く光学系と、前記固体撮像装置の出力信号を処理する信号処理回路と、を有する電子機器。
【符号の説明】
【0065】
10,20,40,50,62 固体撮像装置、11 水平信号線、12 画素、13 画素部、14 垂直駆動回路、15 カラム信号処理回路、16 水平駆動回路、17 出力回路、18 制御回路、19 垂直信号線、21 光電変換素子、22 配線層、23 層間絶縁層、24,53 導体層、25 パッド電極、26 半導体層、27 光学部、28 カラーフィルタ、29 マイクロレンズ、30,52 ワイヤグリッド偏光子、31 下地層、32 反射層、33 誘電体層、34 吸収層、35,38,54 導体膜、36 支持基板、37,39 貫通孔、41 セラミックパッケージ、42 透明蓋部材、43 ワイヤボンド、60 カメラ、61 光学系(光学レンズ)、63 信号処理回路、64 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子上に設けられたワイヤグリッド偏光子と、
前記光電変換素子に設けられる導体層と前記ワイヤグリッド偏光子とを電気的に接続する導体膜と、を備える
固体撮像装置。
【請求項2】
前記光電変換素子が前記光電変換素子の表面から配線層までを開口する孔を有し、前記孔内を通じて前記配線層の前記導体層と前記導体膜とが接続されている請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記ワイヤグリッド偏光子が、導体層と誘電体層との積層体からなり、前記導体膜により前記積層体の全面が被覆されている請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記導体膜が、前記ワイヤグリッド偏光子の周囲で、前記ワイヤグリッド偏光子を構成する導体層と接続する請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記ワイヤグリッド偏光子が、帯状の導体層と、複数の前記帯状の導体層を電気的に接続する導体層とから構成されている請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
光電変換素子を準備する工程と、
前記光電変換素子上にワイヤグリッド偏光子を形成する工程と、
前記ワイヤグリッド偏光子と前記光電変換素子に設けられた導体層とを接続する、導体膜を形成する工程と、を有する
固体撮像装置の製造方法。
【請求項7】
光電変換素子、前記光電変換素子上に設けられたワイヤグリッド偏光子、及び、前記光電変換素子に設けられる導体層と前記ワイヤグリッド偏光子とを電気的に接続する導体膜を備える固体撮像装置と、
前記固体撮像装置の撮像部に入射光を導く光学系と、
前記固体撮像装置の出力信号を処理する信号処理回路と、を有する
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−238632(P2012−238632A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104897(P2011−104897)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】