説明

圧力調整弁の洗浄方法および圧力調整弁の洗浄装置

【課題】多量の洗浄液を使用することなく、圧力調整弁のバルブ内流路を確実に洗浄することができる圧力調整弁の洗浄方法および圧力調整弁の洗浄装置を提供する。
【解決手段】機能液タンクから1次室7に導入した機能液を、2次室8の1つの面を構成するダイヤフラム13により大気圧基準で圧力調整し、2次室8から機能液滴吐出ヘッド41に供給する圧力調整弁1の、内部を洗浄する圧力調整弁1の洗浄方法であって、1次室7および2次室8を含む圧力調整弁1のバルブ内流路に洗浄液を通液して洗浄を行う前洗浄工程と、前洗浄工程の後、バルブ内流路に洗浄液を充填した状態でこれを放置する放置工程と、放置工程の後、再度バルブ内流路に洗浄液を通液して洗浄を行う後洗浄工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液を圧力調整した後、機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁の洗浄方法および圧力調整弁の洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴吐出装置における機能液供給機構に、この種の圧力調整弁のバルブ内流路を洗浄する洗浄手段を備えたものが知られている(特許文献1参照)。この圧力調整弁は、機能液タンクからバルブハウジング内の1次室に導入した機能液を、バルブハウジング内の2次室を介して機能液滴吐出ヘッドに重力供給するとともに、大気に面し2次室の1つの面を構成する円形のダイヤフラムにより、大気圧を調整基準圧力として、1次室と2次室とを連通する連通流路に設けた弁体を開閉動作させて、2次室を圧力調整するものである。圧力調整弁のバルブ内流路の洗浄は、流路切替バルブを洗浄液供給手段側に切替えて、洗浄液を圧力調整弁に供給すると同時に、洗浄液吸引手段で機能液滴吐出ヘッド側を吸引することにより、洗浄液供給手段から圧力調整弁に洗浄液を通液することによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の洗浄工程では、圧力調整弁のバルブ内流路における洗浄しにくい細部(外周部)のインクを完全に洗浄することができず、外周部にインクが残留してしまう。特に、ダイヤフラムがバルブハウジングに密接する2次室の周縁部では、毛細管現象によりインクが深く浸透しているため、洗浄液にインクが溶け込み難く、この部分のインクが洗浄しきれず残留してしまうという問題があった。残留したインクが凝集すると、改めてインクを導入したときに、機能液滴吐出ヘッドに目詰まりや飛行曲りが発生する。このため、圧力調整弁の洗浄に、多量の洗浄液を必要とする問題があった。
【0005】
本発明は、多量の洗浄液を使用することなく、圧力調整弁のバルブ内流路を確実に洗浄することができる圧力調整弁の洗浄方法および圧力調整弁の洗浄装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁の洗浄方法は、機能液タンクから1次室に導入した機能液を、2次室の1つの面を構成するダイヤフラムにより大気圧基準で圧力調整し、2次室から機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁の、内部を洗浄する圧力調整弁の洗浄方法であって、1次室および2次室を含む圧力調整弁のバルブ内流路に洗浄液を通液して洗浄を行う前洗浄工程と、前洗浄工程の後、バルブ内流路に洗浄液を充填した状態でこれを放置する放置工程と、放置工程の後、再度バルブ内流路に洗浄液を通液して洗浄を行う後洗浄工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の圧力調整弁の洗浄装置は、機能液タンクから1次室に導入した機能液を、2次室の1つの面を構成するダイヤフラムにより大気圧基準で圧力調整し、2次室から機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁の、内部を洗浄する圧力調整弁の洗浄装置であって、圧力調整弁に洗浄液を供給する洗浄液タンクと、洗浄液タンクと圧力調整弁の流入側とを接続する供給側接続流路と、圧力調整弁を介して洗浄液タンクから洗浄液を吸引して、1次室および2次室を含む圧力調整弁のバルブ内流路に洗浄液を通液させる吸引手段と、圧力調整弁の流出側と吸引手段とを接続する吸引側接続流路と、吸引手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、吸引手段を駆動しバルブ内流路に洗浄液を通液して洗浄を行う前洗浄動作と、前洗浄動作の後、吸引手段の駆動を停止し、バルブ内流路に洗浄液が充填された状態を所定時間維持する放置動作と、放置動作の後、再度吸引手段を駆動しバルブ内流路に洗浄液を通液して洗浄を行う後洗浄動作と、を実施することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、前洗浄工程(前洗浄動作)において洗浄しきれなかった、圧力調整弁の細部(特に、ダイヤフラムがバルブハウジングに密接する2次室の周縁部)に毛細管現象によって深く浸透した機能液(残留機能液)が、放置工程(放置動作)において徐々に洗浄液に溶け出すため、後洗浄工程(後洗浄動作)によって残留機能液を完全に除去することができる。これによって、機能液を導入したときに、圧力調整弁において残留した機能液が凝集することに起因する機能液滴吐出ヘッドの目詰まりや飛行曲りが発生することを防ぐことができる。
【0009】
この場合、前洗浄工程では、洗浄液として、機能液の溶媒で構成した第1洗浄液と界面活性剤を含む機能液の溶媒で構成した第2洗浄液とを用い、バルブ内流路に対し、第1洗浄液の通液と、第2洗浄液の通液と、第1洗浄液の通液と、を順に実施することが好ましい。
【0010】
同様に、後洗浄工程では、洗浄液として、機能液の溶媒で構成した第1洗浄液と界面活性剤を含む機能液の溶媒で構成した第2洗浄液とを用い、バルブ内流路に対し、第1洗浄液の通液と、第2洗浄液の通液と、第1洗浄液の通液と、を順に実施することが好ましい。
【0011】
これらの構成によれば、第1洗浄液により、吐出試験等に用いた機能液をバルブ内流路から円滑に洗い流すことができると共に、第2洗浄液により、圧力調整弁の細部に浸透した機能液を溶け込ませ易くすることができる。したがって、洗浄効率を向上させることができる。なお、界面活性剤は、ブチルジグリコールアセテートであることが好ましい。
【0012】
この場合、第2洗浄液の通液では、第2洗浄液に気泡を混入させることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、バルブ内流路を流れる洗浄液が脈動するため、洗浄効率をさらに向上させることができる。
【0014】
この場合、放置工程では、充填のための洗浄液を、バルブ内流路を含む循環流路内で循環させることが好ましい。
【0015】
また、上記洗浄装置において、供給側接続流路と吸引側接続流路とを流路分岐させて直接接続するバイパス流路と、バイパス流路に介設した送液手段と、供給側接続流路をバイパス流路に、且つ吸引側接続流路をバイパス流路に切り替える流路切替え手段と、を更に備え、制御手段は、送液手段および流路切替え手段を、更に制御し、放置動作において、充填のための洗浄液を、バイパス流路を介してバルブ内流路に循環させることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、圧力調整弁の細部(特に、2次室の周縁部)に毛細管現象によって深く浸透した機能液が、流れる洗浄液に接することになるため、機能液が洗浄液に溶け出し易くなる。なお、洗浄液の循環は、低い流速で行うようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】圧力調整弁の外観平面図である。
【図2】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係る洗浄装置の系統図である。
【図4】第2実施形態に係る洗浄装置におけるバイパス流路廻りの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る圧力調整弁の洗浄装置およびその洗浄方法について説明する。この洗浄装置は、例えば、カラーフィルタなどを製造する液滴吐出装置に搭載される機能液滴吐出ヘッドおよび圧力調整弁の製造直後に実施される圧力調整弁の動作チェックの後の、圧力調整弁の洗浄に使用されるものである。なお、この圧力調整弁は、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給するチューブに介設されており、機能液滴吐出ヘッドに機能液を大気圧基準(一定圧)で減圧供給するものである。そこで、先ず、圧力調整弁について説明する。
【0019】
図1に示すように、圧力調整弁1は、主要部を成す調整弁本体2と、調整弁本体2の流入側に差込み接合した流入コネクタ3と、調整弁本体2の流出側に差込み接合した流出コネクタ4と、を備えている。そして、流入コネクタ3には、押えナット6を介して、図外の機能液タンクに連なるチューブ5が接続され、同様に流出コネクタ4には、押えナット6を介して、図外の機能液滴吐出ヘッド41に連なるチューブ5が接続される。
【0020】
図2に示すように、調整弁本体2は、略円板状で、かつ前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブハウジング11と、バルブハウジング11と共に1次室7を画成する蓋体12と、バルブハウジング11にダイヤフラム13を固定することでバルブハウジング11と共に2次室8を画成する押えリング14と、で構成されており、バルブハウジング11、蓋体12および押えリング14は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、バルブハウジング11の中心部には、1次室7および2次室8を連通する連通流路9が形成されている。なお、請求項におけるバルブ内流路とは、流入コネクタ3から1次室7、連通流路9を介して、2次室8、流出コネクタ4に至るまでの一連の流路を言う。
【0021】
押えリング14および蓋体12は、バルブハウジング11に対し、前後方向から挟み込むようにねじ止めして組み込まれており(図示省略)、いずれも円形のダイヤフラム13の中心を通る軸線と同心円となる円形の外形を有している。バルブハウジング11および押えリング14は、ダイヤフラム13の周縁部およびシールリング15を挟み込んで相互に液密に突合せ接合されている。
【0022】
1次室7はバルブハウジング11の後面と、バルブハウジング11の開放端を閉蓋する蓋体12とにより、ダイヤフラム13と同心となる略円柱形状に形成されている。また、1次室7の上部には、1次室7から径方向斜めに延びる流入ポート16が形成され、中心部には、連通流路9に連なる1次室側開口部18が開口している。そして、この1次室側開口部18には、1次室7側から連通流路9を開閉する弁体19が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部18の周縁部により、弁体19が離接する弁座が構成されている。また、弁体19は、これと蓋体12との間に介設した弁体付勢ばね21によって、閉弁方向(2次室8側)に弱い力で付勢されている。
【0023】
2次室8は、バルブハウジング11の前面と、バルブハウジング11の開放端を閉蓋するダイヤフラム13と、で形成されており、ダイヤフラム13は、押えリング14によりバルブハウジング11に取り付けられている。また、2次室8の下部には、2次室8から真下に延びる流出ポート17が形成され、中心部には、連通流路9に連なる2次室側開口部22が開口している。そして、この2次室側開口部22の周縁部と後述するダイヤフラム13との間には、ダイヤフラム13を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね23が介設されている。
【0024】
バルブハウジング11の前面周縁部であるリング状端面24には、断面矩形の環状溝25が形成され、環状溝25には、リング状端面24とダイヤフラム13との間をシールする上記のシールリング15が装着されている。
【0025】
ダイヤフラム13は、樹脂フィルムで構成した膜体本体26と、膜体本体26の中央部に接着した樹脂製の受圧板27とで構成されている。弁体19は、弾性材で構成され、弁の機能を奏するリング状の弁体本体28と、弁体本体28を保持する弁ホルダ29と、を備えている。弁体本体28は、弁座となる1次室側開口部18の周縁部に離接することで連通流路9を開閉する。
【0026】
このように構成された圧力調整弁1では、例えば機能液滴吐出ヘッド41の液滴吐出により2次室8の圧力が下がってゆくと、大気圧によりダイヤフラム13が凹変形してゆき、受圧板27が弁体19を押す。これにより、弁体19が開弁し、連通流路9を介して1次室7から2次室8に機能液が流入する。機能液の流入がすすむと、やがて2次室8の圧力が高まってゆき、ダイヤフラム13が外部に向かって凸変形してゆく。これにより、受圧板27が弁体19から離れるように前進し、同時に弁体19が前進して閉弁する。
【0027】
すなわち、圧力調整弁1は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド41に連なる2次室8との内部圧力のバランスによりダイヤフラム13が変形することで連通流路9を開閉する。その際、弁体付勢ばね21および膜体付勢ばね23に力が分散して作用し、且つ弁体本体28の弾性力により、弁体19は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体19の開閉による圧力変動が抑制され、機能液滴吐出ヘッド41の吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、1次室7側で発生する脈動等も、弁体19で縁切りされるため、これを吸収(ダンパー機能)することができる。
【0028】
このように構成された圧力調整弁1は、実機に搭載する前に、機能液滴吐出ヘッド41と接続した状態で、機能液(インク)を導入して機能液滴吐出ヘッド41と共に検査を行う。検査において良品とされた圧力調整弁1は、実機に搭載するまでの保管や運搬に際し、これを洗浄し送品液を充填する。この場合、圧力調整弁1の内部を確実に洗浄しないと、機能液成分が固形化し実機に搭載したときに、圧力調整弁1自体の不良や機能液滴吐出ヘッド41の吐出不良を招くことになる。特に、本実施形態の圧力調整弁1では、ダイヤフラム13とこれを受ける上記のリング状端面24との境目や上記の環状溝25に入り込んだ機能液は、洗浄され難いため、以降に説明する洗浄装置10により特別な洗浄方法を実施する。
【0029】
次に、図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る圧力調整弁1の洗浄装置10の構成について説明する。この洗浄装置10は、ヘッド側チューブ42を介して圧力調整弁1が機能液滴吐出ヘッド41に接続した状態でセットされ、圧力調整弁1が機能液滴吐出ヘッド41と共に洗浄されるようになっている。
洗浄装置10は、セットされた圧力調整弁1から上流側に位置するタンクユニット30と、セットされた機能液滴吐出ヘッド41から下流側に位置する吸引ユニット(吸引手段)50と、タンクユニット30および吸引ユニット50の各部の構成装置を制御する制御装置(制御手段)40と、から構成されている。タンクユニット30から吸引ユニット50に至る流路を連通しておいて、吸引ユニット50を駆動することにより、圧力調整弁1(のバルブ内流路)および機能液滴吐出ヘッド41(のヘッド内流路)に機能液が通液され、これらが洗浄される。
【0030】
タンクユニット30は、第1洗浄液としての機能液の溶媒を貯留する溶媒タンク31と、第2洗浄液としての界面活性剤を含む溶液を貯留する溶液タンク32と、溶媒タンク31および溶液タンク32に連なる2本の個別供給チューブ33,33と、2本の個別供給チューブ33,33の下流端に設けられ、溶媒タンク31側と溶液タンク32側との間で流路を切り替える流路切替えバルブ34と、流路切替えバルブ34と圧力調整弁1(ヘッド側チューブ42)とを接続する主供給チューブ35と、主供給チューブ35の下流端に設けられ、圧力調整弁1に着脱自在に接続されるワンタッチジョイント36と、を備えている。
【0031】
また、主供給チューブ35には、図外のエアー供給機構に連なる特殊継手37が介設されている。この特殊継手37には、エアー供給機構に連通するエアーチューブ38が接続され、エアーチューブ38にはエアー開閉バルブ39が介設されている。そして、このエアー開閉バルブ39および上記の流路切替えバルブ34は、制御装置40に接続されており、制御装置40は、流路切替えバルブ34を制御して、第1洗浄液の供給と第2洗浄液の供給とを適宜切り替えると共に、詳細は後述するが、エアー開閉バルブ39を制御して、第2洗浄液にエアーを吹き込む。なお、請求項における供給側接続流路とは、個別供給チューブ33,33と、主供給チューブ35と、ヘッド側チューブ42の一部(ワンタッチジョイント36から圧力調整弁1の流入側まで)と、を言う。
【0032】
吸引ユニット50は、機能液滴吐出ヘッド41のノズル面に離接自在に密接する封止キャップ51と、封止キャップ51を昇降させるキャップ昇降機構(図示省略)と、封止キャップ51に接続した状態で機能液滴吐出ヘッド41を吸引するエジェクタや吸引ポンプ等で構成される吸引機構52と、吸引機構52で吸引した廃液(洗浄液)を回収する廃液タンク53と、これらを接続する吸引チューブ54と、を有している。キャップ昇降機構および吸引機構52は、制御装置40に接続されており、制御装置40は、キャップ昇降機構を駆動して、機能液滴吐出ヘッド41に封止キャップ51を密接し、吸引待機状態および後述する放置動作状態とする。また、制御装置40は、上記の流路切替えバルブ34と合わせて吸引機構52を駆動し、圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41に洗浄液を通液すべく、第1洗浄液または第2洗浄液を吸引する。なお、請求項における吸引側接続流路とは、ヘッド側チューブ42の一部(圧力調整弁1の流出側から機能液滴吐出ヘッド41まで)および吸引チューブ54を言う。
【0033】
次に、上記の洗浄装置10を用いた圧力調整弁1の一連の洗浄方法について、図3を参照して説明する。圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41の着脱時等において、ワンタッチジョイント36から上流側の主供給チューブ35および各個別供給チューブ33には、洗浄液が既に充填されている状態である。この洗浄方法では、ワンタッチジョイント36以降のヘッド側チューブ42、圧力調整弁1(のバルブ内流路)、機能液滴吐出ヘッド41(のヘッド内流路)に洗浄液を通液する前洗浄工程(前洗浄動作)および後洗浄工程(後洗浄動作)と、両洗浄工程(洗浄動作)の間において洗浄液を圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41に充填した状態で放置する放置工程(放置動作)とが行われる。
【0034】
先ず、圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41から機能液を液抜き(吸引ユニット50を用いる)した後、洗浄液を通液する前洗浄工程を実施する。この前洗浄工程は、圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41に対し、第1洗浄液を通液する第1溶媒通液工程と、第2洗浄液を通液する溶液通液工程と、再度第1洗浄液を通液する第2溶媒通液工程と、を有している。
【0035】
第1溶媒通液工程では、まず、流路切替えバルブ34を溶媒タンク31側に切り替えて、溶媒タンク31と圧力調整弁1と機能液滴吐出ヘッド41とを連通させた後、吸引機構52を駆動する。これにより、溶媒タンク31に貯留している溶媒(第1洗浄液)は、圧力調整弁1のバルブ内流路および機能液滴吐出ヘッド41のヘッド内流路を流れ、圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41を洗浄する。
【0036】
同様に、溶液通液工程では、まず、流路切替えバルブ34を溶液タンク32側に切り替えて、溶液タンク32と圧力調整弁1と機能液滴吐出ヘッド41とを連通させ、更にエアー開閉バルブ39を開放した後、吸引機構52を駆動する。これにより、溶液タンク32に貯留している溶液(第2洗浄液)は、気泡を混入した状態で、圧力調整弁1のバルブ内流路および機能液滴吐出ヘッド41のヘッド内流路を流れ、圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41を洗浄する。
【0037】
第2溶媒通液工程では、再度、流路切替えバルブ34を溶媒タンク31側に切り替えて、溶媒タンク31と圧力調整弁1と機能液滴吐出ヘッド41とを連通させた後、吸引機構52を駆動する。これにより、溶媒タンク31に貯留している溶媒(第1洗浄液)は、圧力調整弁1のバルブ内流路および機能液滴吐出ヘッド41のヘッド内流路を流れ、圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41を洗浄する。
【0038】
以上の前洗浄工程が完了すると続いて放置工程に移行する。放置工程では、上述した前洗浄工程(第2溶媒通液工程)において通液を所定時間行った後、吸引機構52を停止し、圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41に洗浄液が充填された状態でこれを長時間放置する。一定時間放置することによって、前洗浄工程では完全に洗浄することができなかった機能液を、洗浄液中に徐々に溶出させることができる。圧力調整弁1の細部に溜まった機能液は、前洗浄工程のみで完全に洗い流すことは難しく、特に、圧力調整弁1のダイヤフラム13がバルブハウジング11に密接する2次室8の周縁部(環状溝25)では、毛細管現象により機能液が深く浸透している。このため、機能液と親和性の高い洗浄液を充填した状態で数時間放置することは、洗浄液中に残留機能液を溶出させるのに非常に効果的である。
【0039】
一定時間放置させた後、圧力調整弁1の後洗浄工程を行う。後洗浄工程とは、上述した第1溶媒通液工程、溶液通液工程、および第2溶媒通液工程から成る一連の洗浄工程を再び実施するものである。放置工程において洗浄液中に残留機能液が溶出するため、後洗浄工程において再度圧力調整弁1(のバルブ内流路)に通液することによって、残留機能液を完全に洗い流すことができる。
【0040】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る圧力調整弁1の洗浄装置10の構成について説明する。なお、ここでは、第1実施形態と異なる構成について主に説明する。この実施形態の洗浄装置10は、第1実施形態の洗浄装置10に加え、上記の特殊継手37とワンタッチジョイント36との間の主供給チューブ35に介設した上流側分流バルブ61と、上記の封止キャップ51と吸引機構52との間の吸引チューブ54に介設した下流側分流バルブ62と、上流側分流バルブ61と下流側分流バルブ62とを接続するバイパスチューブ(バイパス流路)63と、バイパスチューブ63に介設した循環ポンプ64と、を備えている。
【0041】
上流側分流バルブ61および下流側分流バルブ62は、三方弁や2つの開閉弁で構成されており、洗浄液の流路を切り替えて、バイパスチューブ63およびヘッド側チューブ42を主体とする循環流路を構成する。循環ポンプ64は、閉流路となる循環流路の圧力損失を僅かに越える揚程を有する小型ポンプで構成され、循環流路内において洗浄液を低速で循環させる。そして、上流側分流バルブ61、下流側分流バルブ62および上記の循環ポンプ64は、制御装置40に接続されている。
【0042】
次に、第2実施形態に係る洗浄装置10を用いた圧力調整弁1の一連の洗浄方法について、図4を参照して説明する。この洗浄方法と第1実施形態の洗浄方法とは、放置工程のみ異なっている。したがって、放置工程についてのみ説明する。
【0043】
第2実施形態の洗浄方法における放置工程は、前洗浄工程が終了したところで、上流側分流バルブ61および下流側分流バルブ62をバイパスチューブ63側に切り替えた後、循環ポンプ64を駆動する。これにより、充填のための洗浄液(第1洗浄液)は、バイパスチューブ63およびヘッド側チューブ42を主体とする循環流路を低速で循環する。すなわち、洗浄液が緩やかな送液速度で圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41に通液される。
【0044】
これにより、前洗浄工程では完全に洗浄することができなかった圧力調整弁1の細部(特に、圧力調整弁1のダイヤフラム13がバルブハウジング11に密接する2次室8の周縁部(環状溝25))に毛細管現象により深く浸透した機能液を徐々に洗浄液に溶出させることができる。すなわち、第1実施形態における放置工程と同様に、洗浄し切れなかった残留機能液が凝集するのを抑制することができる。さらに、洗浄液の循環によって、洗浄液が残留機能液を押出して洗浄液への溶出を促進するため、第1実施形態における放置工程よりも、残留機能液を溶出させる時間を短縮することができる。このようにした放置工程が完了すると、後洗浄工程に移行する。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、洗浄動作を行った後、洗浄液を圧力調整弁1に充填させた状態で放置または循環流路を循環させることで、圧力調整弁1の細部に残留した機能液に対する親和性を高めた後、再度洗浄液を通液することで、洗浄液に溶け出した機能液を除去することができる。これにより、圧力調整弁1内に残留した機能液が凝集して、改めて機能液を導入したときに、機能液滴吐出ヘッド41に目詰まりや飛行曲りが発生することを防ぐことができる。
【0046】
なお、洗浄動作は、機能液の溶媒あるいは溶液を通液するだけでもよく、洗浄の順序および洗浄の回数が限定されるものではない。また、第2実施形態では、圧力調整弁1および機能液滴吐出ヘッド41を介するバイパスチューブ63に洗浄液を循環させているが、圧力調整弁1のみを介して洗浄液を循環させる流路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…圧力調整弁 7…1次室 8…2次室 9…連通流路 10…洗浄装置 13…ダイヤフラム 19…弁体 31…溶媒タンク 32…溶液タンク 33…個別供給チューブ 35…主供給チューブ 40…制御装置 41…機能液滴吐出ヘッド 42…ヘッド側チューブ 54…吸引チューブ 63…バイパスチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液タンクから1次室に導入した機能液を、2次室の1つの面を構成するダイヤフラムにより大気圧基準で圧力調整し、前記2次室から機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁の、内部を洗浄する圧力調整弁の洗浄方法であって、
前記1次室および前記2次室を含む前記圧力調整弁のバルブ内流路に洗浄液を通液して洗浄を行う前洗浄工程と、
前記前洗浄工程の後、前記バルブ内流路に前記洗浄液を充填した状態でこれを放置する放置工程と、
前記放置工程の後、再度前記バルブ内流路に前記洗浄液を通液して洗浄を行う後洗浄工程と、を備えたことを特徴とする圧力調整弁の洗浄方法。
【請求項2】
前記前洗浄工程では、前記洗浄液として、前記機能液の溶媒で構成した第1洗浄液と界面活性剤を含む前記機能液の溶媒で構成した第2洗浄液とを用い、
前記バルブ内流路に対し、前記第1洗浄液の通液と、前記第2洗浄液の通液と、前記第1洗浄液の通液と、を順に実施することを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の洗浄方法。
【請求項3】
前記後洗浄工程では、前記洗浄液として、前記機能液の溶媒で構成した第1洗浄液と界面活性剤を含む前記機能液の溶媒で構成した第2洗浄液とを用い、
前記バルブ内流路に対し、前記第1洗浄液の通液と、前記第2洗浄液の通液と、前記第1洗浄液の通液と、を順に実施することを特徴とする請求項1または2に記載の圧力調整弁の洗浄方法。
【請求項4】
前記第2洗浄液の通液では、前記第2洗浄液に気泡を混入させることを特徴とする請求項2または3に記載の圧力調整弁の洗浄方法。
【請求項5】
前記放置工程では、充填のための前記洗浄液を、前記バルブ内流路を含む循環流路内で循環させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の圧力調整弁の洗浄方法。
【請求項6】
機能液タンクから1次室に導入した機能液を、2次室の1つの面を構成するダイヤフラムにより大気圧基準で圧力調整し、前記2次室から機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁の、内部を洗浄する圧力調整弁の洗浄装置であって、
前記圧力調整弁に洗浄液を供給する洗浄液タンクと、
前記洗浄液タンクと前記圧力調整弁の流入側とを接続する供給側接続流路と、
前記圧力調整弁を介して前記洗浄液タンクから前記洗浄液を吸引して、前記1次室および前記2次室を含む前記圧力調整弁のバルブ内流路に前記洗浄液を通液させる吸引手段と、
前記圧力調整弁の流出側と前記吸引手段とを接続する吸引側接続流路と、
前記吸引手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記吸引手段を駆動し前記バルブ内流路に前記洗浄液を通液して洗浄を行う前洗浄動作と、
前記前洗浄動作の後、前記吸引手段の駆動を停止し、前記バルブ内流路に前記洗浄液が充填された状態を所定時間維持する放置動作と、
前記放置動作の後、再度前記吸引手段を駆動し前記バルブ内流路に前記洗浄液を通液して洗浄を行う後洗浄動作と、を実施することを特徴とする圧力調整弁の洗浄装置。
【請求項7】
前記供給側接続流路と前記吸引側接続流路とを流路分岐させて直接接続するバイパス流路と、
前記バイパス流路に介設した送液手段と、
前記供給側接続流路を前記バイパス流路に、且つ前記吸引側接続流路を前記バイパス流路に切り替える流路切替え手段と、を更に備え、
前記制御手段は、前記送液手段および前記流路切替え手段を、更に制御し、
前記放置動作において、充填のための前記洗浄液を、前記バイパス流路を介して前記バルブ内流路に循環させることを特徴とする請求項6に記載の圧力調整弁の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−172818(P2010−172818A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17639(P2009−17639)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】