圧電デバイスおよびその製造方法
【課題】圧電体の構成金属の拡散による特性低下を回避するとともに、圧電体の形成時の膜のはがれを回避し、さらに、圧電体の結晶性および平坦性を向上させる圧電デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】圧電デバイス1の基板11上には、電極層23を含む下地層13を介して、圧電体14が形成される。下地層13は、第1の層21と、第2の層22とを含んでいる。第1の層21は、金属酸化物または金属窒化物からなる。第2の層22は、第1の層21の金属酸化物の構成金属と同じ金属、または金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる。
【解決手段】圧電デバイス1の基板11上には、電極層23を含む下地層13を介して、圧電体14が形成される。下地層13は、第1の層21と、第2の層22とを含んでいる。第1の層21は、金属酸化物または金属窒化物からなる。第2の層22は、第1の層21の金属酸化物の構成金属と同じ金属、または金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に下地層を介して圧電体を形成した圧電デバイスと、その圧電デバイスの製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、駆動素子やセンサなどの電気機械変換素子として圧電体が用いられている。中でも、PZTは、圧電定数、キュリー温度、結合係数が高く、圧電体として優れており、また、残留分極、抗電界特性が良好で、メモリとしても優れている。
【0003】
一方、近年の装置の小型化、高密度化、低コスト化などの要求に応えて、Si基板を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が増加している。MEMS素子に圧電体を応用すれば、例えばインクジェットヘッドをはじめとする種々の装置を実現することができる。
【0004】
ここで、MEMS素子に圧電体を応用する場合、圧電体を薄膜化することが望ましい。これは、圧電体を薄膜化することで、(1)成膜やフォトリソグラフィーなどの半導体プロセス技術を用いた高精度な加工が可能となり、小型化、高密度化を実現することができる、(2)大面積のウェハに圧電体を一括加工できるため、コストを低減できる、などの利点が得られることによる。圧電体をメモリとして用いる場合も、上記の同様の理由で、圧電体を薄膜化することが望ましい。
【0005】
圧電体をSiなどの基板上に成膜する方法としては、CVD法などの化学的な方法、スパッタ法やイオンプレーティング法などの物理的な方法、ゾルゲル法などの液相での成長法が知られている。圧電体とSiとは、結晶の格子定数が異なるため、図9に示すように、Si基板上に成膜された圧電体は、複数の結晶が柱状に寄り集まった多結晶状態となる。
【0006】
一方、圧電体をSi基板上に形成する際には、圧電体を駆動するための電圧が印加される電極の機能を備えた下地層を形成しておく必要がある。この下地層は、圧電体の結晶成長の際の基板との界面になるため、圧電体の特性に与える影響が大きい。そこで、下地層には、以下の特性が求められる。
【0007】
第1に、下地層の電気抵抗が低いことである。これは、下地層は電極の機能を有しているため、電流を流れやすくして圧電体の駆動を良好に行うためである。第2に、下地層の格子定数が圧電体の格子定数に近いことである。これは、下地層と圧電体とで格子定数が離れすぎると、圧電体が下地層の上に結晶性よく成長しないからである。第3に、下地層の耐熱性が高いことである。これは、下地層の上に成膜される圧電体の成膜温度(例えば600℃)を考慮したことによる。つまり、圧電体の成膜時の高温に耐えられる材料で下地層を形成しておく必要がある。第4に、下地層が基板または圧電体と反応性が低いことである。これは、下地層が基板や圧電体と反応して何らかの生成物が生じることにより、圧電体の圧電特性が低下するのを回避するためである。
【0008】
以上の点を考慮すると、圧電体として例えばPZTを用いる場合、PZTの下地層の電極材料としては、例えばPtが好適である。Ptは、自己配向性が強く、絶縁膜としてのSiO2のようなアモルファスの上に成膜しても、(111)方位に結晶性よく配向し、また、PZTと格子定数も近く、上記した第1〜第4の特性を備えているからである。
【0009】
この点、例えば、特許文献1の圧電デバイスでは、図10に示すように、Siからなる基板101上に、SiO2からなる絶縁膜102、Tiからなる密着層103、Ptからなる電極層104、PZTからなる圧電体105をこの順で形成している。つまり、PZTの下地層の電極材料として、Ptを用いている。ただし、Ptは、SiO2との密着性が低いため、PtとSiO2との間にTiの金属層(密着層103)を形成することで、両者の密着性を高めている。なお、図10では、説明の理解がしやすいように、部材番号の層を構成する材料を、部材番号の後に括弧書きで示している。他の図面においても、必要に応じて同様の表記を行う。
【0010】
ところが、Ptは、配向性が強く、柱状に結晶が成長するため、その粒界に沿って元素が拡散する。この例では、図10に示すように、PZTを構成するPbが、Ptの粒界に沿ってSi基板側に拡散する。この結果、PZTの圧電特性が低下する。
【0011】
そこで、例えば特許文献2では、図11に示すように、Siからなる基板201上にSiO2層202を形成した後、このSiO2層202の上に、TiOx層203、Pt層204、PZT205をこの順で形成している。この構成では、PZT205のPbの基板201側への拡散を、基板201とPZT205との間にTiOx層203を形成することによって抑制している。
【0012】
一方、非特許文献1には、TiOx層を形成するにあたり、Tiの上にPtを成膜した後、このTi/Ptの層を酸素中で加熱することによってTiOx層を形成すると、Pt層の表面粗さが大きくなることが開示されている。その理由は、以下のように考えることができる。
【0013】
図12に示すように、Siからなる基板301上に、SiO2層302、Ti層303’、Pt層304をこの順で積層した後、この基板を酸素雰囲気中で熱処理してTiOx層303を形成すると、上記の熱処理によって、Ti層303’のTiがPt層304に拡散し、Pt層304の表面にTiOxの突起304aが形成される。この突起304aにより、Pt層304の表面粗さが大きくなるものと考えられる。
【0014】
Pt層304の表面粗さが大きくなると、Pt層304の上に圧電体として例えばPZT305を成膜する際に、Pt層304上にPZT305を結晶性よく成長することができず、PZT305の表面の平坦性も損なわれる。このように、PZT305の結晶性および平坦性が低下すると、PZT305の良好な特性を得ることができなくなる。
【0015】
そこで、非特許文献1では、Pt層の成膜前に、Tiを酸化してTiOx層を形成している。このように先にTiOx層を形成した後にPt層を形成することにより、上記したような熱処理によるTiのPt層への拡散がなくなる。これにより、Pt層の結晶性がTiによって変化するということがなく、Pt層の結晶性が向上する。また、Pt層の表面にTiの拡散による突起が形成されることもないので、Pt層の表面の平坦性も向上する。その結果、Pt層の上に成膜されるPZTの結晶性および平坦性を向上させることが可能となり、PZTの良好な特性を得ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平10−251022号公報(段落〔0016〕参照)
【特許文献2】特開平9−22829号公報(段落〔0005〕、〔0023〕、〔0035〕、〔0036〕参照)
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Soon Yong Kweon, et al, “Platinum Hillocks in Pt/Ti Film Stacks Deposited on Thermally Oxidized Si Substrate”, Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 40 (2001) pp. 5850-5855, Part 1, No. 10, October 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、特許文献2および非特許文献1のように、TiOxを形成後にPtを積層する構成では、TiOxとPtとの密着性が低いため、高温でPZTを形成するときに、TiOxとPtとの界面で膜がはがれるという問題が生ずる。例えば特許文献2の構成では、図13に示すように、TiOx層203とPt層204との界面で膜がはがれる。
【0019】
なお、このような膜のはがれの問題は、例えば金属酸化物を電極として、この金属酸化物上に圧電体を形成する場合でも同様に起こり得る。つまり、金属酸化物と圧電体との密着性が低いため、高温で圧電体を形成するときに、金属酸化物と圧電体との界面で膜がはがれる。
【0020】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、圧電体の構成金属の拡散による特性の低下を回避できるとともに、圧電体形成時の膜のはがれを回避でき、さらに、圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができる圧電デバイスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の圧電デバイスは、基板上に、電極層を含む下地層を介して、圧電体を形成した圧電デバイスであって、前記下地層は、第1の層と、第2の層とを含んでおり、前記第1の層は、金属酸化物または金属窒化物からなり、前記第2の層は、前記第1の層の前記金属酸化物の構成金属と同じ金属、または前記金属窒化物の構成金属と同じ金属からなることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、基板と圧電体(例えばPZT)との間の形成される下地層に、金属酸化物(例えばTiO2)または金属窒化物(例えばTiN)からなる第1の層が含まれているので、圧電体の構成金属(例えばPb)が基板側に拡散するのを第1の層で抑えることができる。つまり、第1の層を拡散バリア層として機能させることができ、圧電体の構成金属の拡散による特性の低下を回避することができる。
【0023】
また、下地層は、第2の層を含んでいる。この第2の層は、第1の層の金属酸化物または金属窒化物の構成金属と同じ金属(例えばTi)で形成されている。これにより、電極層と第1の層との密着性、または第1の層と圧電体との密着性を高めることができ、圧電体の高温形成時における膜のはがれを回避することができる。
【0024】
また、下地層が第1の層と第2の層とを有していることにより、例えば、第1の層、第2の層および電極層をこの順で積層した構成、あるいは、第1の層および第2の層をこの順で積層し、かつ、第1の層に電極層の機能を持たせた構成を実現することができる。
【0025】
前者の構成では、第1の層、第2の層、電極層を順に形成することにより、電極層の形成後に第1の層を形成するための熱処理を不要とすることができる。このため、第1の層と電極層との間に第2の層を設ける構成であっても、第2の層の構成金属(例えばTi)が上記の熱処理によって電極層に拡散することがなく、それゆえ、電極層の表面に突起物(例えば第2の層の構成金属の酸化物)が形成されることもない。したがって、電極層の表面を平坦化して、電極層の上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体の良好な特性を実現することができる。
【0026】
また、後者の構成でも、例えば第1の層(電極層)の表面を還元する、または第1の層の上に第2の層を、厚さを制御しながら成膜することにより、第1の層の上に第2の層を結晶性よく均一な厚さで形成することができる。これにより、第2の層の上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体の良好な特性を実現することができる。
【0027】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第2の層は、前記第1の層の表面を還元することによって形成されていてもよい。
【0028】
第1の層の表面を還元することにより、薄く、均一な厚さで第2の層を形成することができる。第2の層が薄いと、第2の層の構成金属の量自体が少ないため、仮に圧電体の形成時に第2の層の構成金属が電極層に拡散したとしても、電極層の表面に突起物が現れることがない。したがって、第2の層が薄いことと、均一な厚さで形成されることとから、電極層の表面を確実に平坦化することができ、その上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を確実に向上させることができる。
【0029】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第2の層は、前記第1の層の構成金属と同じ金属からなる層を、前記第1の層の表面に成膜することによって形成されていてもよい。
【0030】
第1の層の表面に第2の層を成膜によって形成する場合でも、例えば成膜時に第2の層の厚さを制御することで、結晶性および平坦性の良好な第2の層を形成することができ、これによって、第2の層の上に、結晶性および平坦性の良好な電極層または圧電体を形成することができる。
【0031】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第1の層は、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物で構成されていてもよい。
【0032】
第1の層が、上記したいずれかの金属酸化物で構成されていれば、第1の層を拡散バリア層として確実に機能させることができるとともに、第1の層の金属酸化物の還元、または上記金属酸化物の構成金属の成膜によって、第2の層を容易に形成することができる。
【0033】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第1の層、前記第2の層および前記電極層は、前記基板上にこの順で積層されていてもよい。
【0034】
この場合、第1の層、第2の層、電極層が基板上に順に積層された構成において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0035】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第1の層は、前記電極層を兼ねていてもよい。
【0036】
この場合、第1の層が電極層を兼ねた構成において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0037】
また、本発明の圧電デバイスの製造方法は、以下のように表現することができ、これによって、上記と同様の作用効果を奏する。
【0038】
本発明の圧電デバイスの製造方法は、基板上に、電極層を含む下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層の上に圧電体を形成する圧電体形成工程とを含む圧電デバイスの製造方法であって、前記下地層形成工程は、基板上に、金属酸化物または金属窒化物からなる第1の層を形成する工程と、前記第1の層の上に、前記第1の層の前記金属酸化物の構成金属と同じ金属、または前記金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる第2の層を形成する工程とを含んでいることを特徴としている。
【0039】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記第2の層を形成する工程では、前記第1の層の表面を還元することによって、前記第2の層を形成してもよい。
【0040】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記第2の層を形成する工程では、前記第1の層の構成金属と同じ金属からなる層を、前記第1の層の表面に成膜することによって、前記第2の層を形成してもよい。
【0041】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記第1の層を形成する工程では、前記第1の層として、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物からなる層を形成してもよい。
【0042】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記下地層形成工程は、前記第2の層の上に前記電極層を形成する工程をさらに含んでおり、前記第1の層を形成する工程、前記第2の層を形成する工程、前記電極層を形成する工程は、この順で行われてもよい。
【0043】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記第1の層は、前記電極層を兼ねており、前記第1の層を形成する工程、前記第2の層を形成する工程は、この順で行われてもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、基板と圧電体との間の下地層に第1の層が含まれているので、圧電体の構成金属が電極層を介して基板側に拡散するのを第1の層で抑えることができ、上記拡散による圧電体の特性の低下を回避することができる。また、下地層の第2の層により、電極層と第1の層との密着性、または第1の層と圧電体との密着性を高めることができ、圧電体の高温形成時における膜のはがれを回避することができる。
【0045】
また、拡散バリア層としての第1の層の上に、第2の層および電極層が順に形成される構成では、電極層の形成後に拡散バリア層を形成するための熱処理が不要なので、第2の層の構成金属が上記の熱処理によって電極層に拡散するといったことがなく、これによって電極層の表面に突起物が形成されることもない。したがって、電極層の表面を平坦化して、電極層の上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体の良好な特性を実現することができる。また、第1の層が電極層を兼ねる構成では、第1の層(電極層)の上に第2の層を結晶性よく均一な厚さで形成することにより、第2の層の上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体の良好な特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の一形態に係る圧電デバイスの概略の構成を示す断面図である。
【図2】上記圧電デバイスの圧電体を構成するPZTの結晶構造を模式的に示す説明図である。
【図3】上記圧電デバイスの製造時に用いる還元装置の概略の構成を示す断面図である。
【図4】上記圧電デバイスの製造時の流れを、各製造工程での断面図とともに示すフローチャートである。
【図5】(a)〜(d)は、層が成膜によって形成される過程を模式的に示す説明図である。
【図6】上記圧電デバイスの他の構成を示す断面図である。
【図7】上記圧電デバイスの応用例の構成を示す平面図である。
【図8】図7のA−A’線矢視断面図である。
【図9】圧電体の結晶状態を示す説明図である。
【図10】従来の圧電デバイスの構成を示す断面図である。
【図11】従来の圧電デバイスの他の構成を示す断面図である。
【図12】従来の圧電デバイスのさらに他の構成を示す断面図である。
【図13】図11の圧電デバイスにおける膜のはがれを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0048】
(圧電デバイスについて)
図1は、本実施形態の圧電デバイス1の概略の構成を示す断面図である。この圧電デバイス1は、基板11上に、熱酸化膜12と、下地層13と、圧電体14と、上部電極15とをこの順で形成して構成されている。なお、以下での説明の理解がしやすいように、部材番号の後に、その部材番号の層を構成する材料の一例を括弧書きで示している。
【0049】
基板11は、例えば単結晶Si単体からなる半導体基板またはSOI(Silicon on Insulator)基板で構成されている。熱酸化膜12は、例えばSiO2からなり、基板11の保護および絶縁の目的で設けられている。
【0050】
圧電体14は、圧電材料の一種であるPZTで構成されている。ここで、図2は、PZTの結晶構造を模式的に示している。同図で示した結晶構造は、ペロブスカイト型構造と呼ばれる。ペロブスカイト型構造とは、Pb(Zrx,Ti1-x)O3の正方晶では、正方晶の各頂点にPb原子が位置し、体心にTi原子またはZr原子が位置し、各面心にO原子が位置する構造である。圧電体は、結晶構造がペロブスカイト型構造を採るときに良好な圧電効果を発現することが知られている。したがって、本実施形態の圧電デバイス1において、圧電体14をPZT、すなわち、ペロブスカイト型構造の金属酸化物で構成することにより、良好な圧電効果を得ることができる。
【0051】
なお、圧電効果とは、応力を加えることによって分極(および電圧)が生じたり、逆に電圧を印加することで応力および変形が生じる圧電体の性質を言うが、圧電体14は、このような圧電効果のほかに、焦電効果を発揮する焦電体で構成されてもよいし、メモリ性を有する強誘電体で構成されてもよい。
【0052】
なお、焦電体とは、圧電体のうち、外から電界を与えなくても自発的な分極を有しているものを言い、微小な温度変化に応じて誘電分極(およびそれによる起電力)が生じる性質を持つ。圧電体14が焦電体で構成された場合は、圧電デバイス1を赤外線センサとして利用することができる。
【0053】
上部電極15は、Ti層15aとAu層15bとを積層して構成されている。Ti層15aは、圧電体14とAu層15bとの密着性を向上させるために形成されている。
【0054】
下地層13は、第1の層21と、第2の層22と、電極層23とをこの順で積層して構成されている。電極層23は、圧電体14の下部電極として機能する層であり、例えばPtで形成されている。
【0055】
第1の層21は、金属酸化物または金属窒化物からなっている。上記の金属酸化物としては、例えば、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかを考えることができる。なお、化学式中のxは、金属元素に対する酸素の組成比を示す。また、上記の金属窒化物としては、例えばTiNを考えることができる。
【0056】
第2の層22は、第1の層21の金属酸化物の構成金属と同じ金属、または第1の層21の金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる。例えば、第1の層21がTiOxやTiNで構成される場合、第2の層22は、Tiで構成されることになる。このような第2の層22は、第1の層21の表面を還元することによって形成することもできるし、第1の層21の構成金属と同じ金属からなる層を、第1の層21の表面に成膜することによっても形成することができる。
【0057】
ここで、還元とは、狭義には、酸素を失う化学反応のことを指すが、広義には、対象とする物質が電子を受け取る化学反応のことを指す。したがって、TiOxやTiNがTiとなる化学反応は、いずれもTiの陽イオンが電子を受け取ってTi原子となる化学反応であるため、還元反応となる。
【0058】
(還元装置について)
次に、第1の層21の表面を還元して第2の層22を形成する際に用いる還元装置について説明する。
【0059】
図3は、還元装置60の概略の構成を示す断面図である。還元装置60は、処理室31と、加熱室41と、隔離板51とを有している。処理室31と加熱室41とは、隔離板51によって隔離されている。処理室31には、加熱対象となる被加熱体32が収容され、加熱室41には、被加熱体32を加熱するためのヒータランプ42が設けられている。また、処理室31には、気体(例えば水素)の導入口33および排気口34が設けられており、加熱室41には、気体(例えば窒素)の導入口43および排気口44が設けられている。
【0060】
この構成において、処理室31に被加熱体32を収容し、処理室31内に導入口33から水素を導入した状態で、加熱室41のヒータランプ42をオンすると、被加熱体32は、ヒータランプ42の輻射線により、隔離板51を介して輻射加熱され、処理室31内の水素で還元される。したがって、被加熱体32を、第1の層21を形成した基板11に置き換えて処理室31内に収容し、第1の層21の表面を水素で還元することにより、第1の層21の表面に、第1の層21の金属酸化物の構成金属と同じ金属からなる第2の層22を形成することができる。
【0061】
(圧電デバイスの製造方法について)
次に、上記構成の圧電デバイス1の製造方法について説明する。図4は、圧電デバイス1の製造時の流れを、各製造工程での断面図とともに示している。なお、半導体の製造に使用される基板の厚さは、国際規格(SEMI)でサイズ(直径)ごとに定められているため、上記基板を基板11として用いる場合は、デバイスで必要となる厚さ(例えば400〜600μm程度)に予め研磨しておいてもよい。
【0062】
まず、Siからなる基板11を、加熱炉で1000〜1300℃程度に加熱し、基板11上に、例えば厚さ100nmのSiO2からなる熱酸化膜12を形成する(S1)。なお、熱酸化膜12の厚さは特に限定されず、デバイスに必要な厚さに調節されればよい。
【0063】
続いて、熱酸化膜12上に、Tiをスパッタ法で成膜し、Ti層21’を形成する(S2)。このとき、Ti層21’の成膜温度は例えば300〜600℃であり、厚さは例えば10〜50nm程度である。なお、Ti層21’の厚さが薄すぎると、その後Ti層21’を加熱して形成される第1の層21によって、圧電体14のPbの拡散を有効に防止することができず、また、厚すぎても利点はない。このことを考慮すると、Ti層21’の厚さは、20〜30nmが好ましい。なお、Ti層21’の代わりに、W、Ta、Ir、Pt、Ru、Re、Pd、Os、Cr、Alのいずれかの層を熱酸化膜12上に形成してもよい。
【0064】
次に、酸素加熱炉で400〜800℃程度にTi層21’を加熱して、基板11上にTiOxの金属酸化物からなる第1の層21を形成する(S3)。なお、S2の工程を省略して(基板11上にTi層21’を形成せずに)、TiOxをスパッタ法または蒸着法によって直接成膜することで、金属酸化物からなる第1の層21を形成してもよい。また、TiOxの代わりにTiNなどの金属窒化物を成膜し、これを第1の層21としてもよい。さらに、S2にて、Ti層21’の代わりに、上記したいずれかの金属からなる層を形成した場合は、この層を酸化することにより、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物を形成し、これを第1の層21としてもよい。
【0065】
その後、上述した還元装置60を用い、水素雰囲気下で700〜1000度程度に加熱して、第1の層21の表面を還元し、Tiからなる第2の層22を形成する(S4)。つまり、このS4では、第1の層21の上に、第1の層21の金属酸化物(例えばTiOx)の構成金属と同じ金属(例えばTi)からなる第2の層22が形成される。なお、第1の層21を金属窒化物(例えばTiN)で構成した場合は、第1の層21の表面を還元することにより、第1の層21の金属窒化物の構成金属と同じ金属(例えばTi)からなる第2の層22が形成される。
【0066】
ここで、第2の層22の膜厚が薄いと、第1の層21と後述する電極層23との密着性が不足し、膜厚が厚いと、電極層23の表面にTiOxが露出して、電極層23および圧電体14の結晶性を低下させる。以上のことを考慮すると、第2の層22の膜厚は、例えば1〜5nmであることが望ましい。
【0067】
なお、第1の層21の表面を還元するにあたって、高温の水素ガスを第1の層21の表面に吹き付けたり、低圧の反応槽内でプラズマを援用することにより、第1の層21の表面を還元するようにしてもよい。また、水素の代わりに、アンモニア(NH3)、ホスフィン(PH3)、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、5フッ化ジボラン(B2HF5)などの水素化合物を用いて、第1の層21の表面を還元してもよい。
【0068】
次に、第2の層22の上に、Ptをスパッタ法で成膜して電極層23を形成する(S5)。なお。このときの成膜温度は、例えば400〜800℃であり、膜厚は例えば100〜300nmである。なお、電極層23は、上記のPtの代わりに、W、Ta、Ir、Ru、Re、Pd、Osなどで構成されてもよい。以上のS2〜S5の工程が、下地層13を形成する工程に相当する。
【0069】
続いて、電極層23の上に、PZTをスパッタ法で成膜して圧電体14を形成する(S6;圧電体形成工程)。このとき、PZTの成膜温度が低いと、PZTの結晶性が低下し、成膜温度が高いと、Pbが揮発して組成が変動するおそれがあるため、PZTの成膜温度は600℃程度であることが望ましい。また、圧電体14の厚さは、例えば100〜5000nmであるが、デバイスに必要になる厚さに調節されればよい。
【0070】
なお、圧電体14としてのPZTは、ゾルゲル法やCVD法などの他の製造方法で作製されてもよい。また、PZTは、添加物を含んだPNZT(チタン酸ジルコン酸ニオブ鉛)、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)、PSZT(チタン酸ジルコン酸ストロンチウム鉛)などであってもよく、さらには、リラクサ材料と呼ばれるPMN−PT(マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛固溶体)などであってもよい。また、圧電体14は、Pb以外の金属を含んだBST(チタン酸バリウムストロンチウム)やSBT(タンタル酸ストロンチウムビスマス)などであってもよい。
【0071】
その後、圧電体14上に、上部電極15を形成する(S7)。より具体的には、圧電体14上に、Tiをスパッタ法で成膜してTi層15aを形成する。Ti層15aの成膜温度は、例えば300〜600℃であり、膜厚は例えば10〜50nmである。そして、このTi層15a上に、Auをスパッタ法で成膜してAu層15bを形成する。このときの
Au層15bの成膜温度は例えば600℃であり、膜厚は例えば100〜300nmである。このようにして、Ti層15aとAu層15bとからなる上部電極15が形成され、圧電デバイス1が完成する。
【0072】
なお、Au層15bの代わりに、Pt、W、Ta、Ir、Ru、Re、Pd、Osなどからなる金属層を形成して、上部電極15を形成してもよい。また、上部電極15の厚さは、デバイスに必要な厚さに調節されればよい。
【0073】
ところで、第1の層21の上に第2の層22を形成するにあたり、第2の層22を成膜によって直接形成してもよい点は、上述した通りである。このときの第2の層22の成膜方法としては、一般的な気相成長法を用いることができるが、蒸着やスパッタなどの物理的方法、CVDなどの化学的方法のいずれにおいても、以下の工程(S41〜S44)を経る。
【0074】
すなわち、図5(a)に示すように、基板71上にいくつかの原子72(例えばTi原子)が付着する(S41)。そして、図5(b)に示すように、原子72・72同士が集合して島73を形成する(S42)。続いて、図5(c)に示すように、島73が成長して初期核74を形成する(S43)。その後、図5(d)に示すように、初期核74が成長して層75(第2の層22に相当)が形成される(S44)。
【0075】
ここで、S42およびS43の状態では、基板71上に複数の島73や初期核74が存在するのみで、均一な厚さの層にはならない。また、初期核74・74同士は、配向性が異なるため、S42、S43およびS44の初期では、層75(Ti層)の結晶性が良好にはならない。しかし、これらの点については、Ti層の厚みを増大させることで解決することができる。つまり、S44にて、層75の厚さを、第1の層21の還元によって形成される第2の層22の厚さよりも増大させることで、層75を構成するTiの結晶性を良好にすることができるとともに、層75の厚さを均一にして表面を平坦化することができる。
【0076】
(効果)
以上のように、本実施形態の圧電デバイス1およびその製造方法によれば、基板11と圧電体14との間に形成される下地層13に、金属酸化物または金属窒化物からなる第1の層21が含まれている。これにより、圧電体14の構成金属(例えばPb)が基板11側に拡散するのを第1の層21で抑えることができ、上記構成金属の拡散による圧電体14の特性低下を回避することができる。
【0077】
また、下地層13は、第1の層21の金属酸化物または金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる第2の層22を含んでいる。これにより、電極層23と第1の層21との密着性を高めることができ、電極層23上に圧電体14を高温で形成する際に、電極層23と第1の層21とがはがれてしまうのを回避することができる。
【0078】
また、本実施形態では、電極層23の形成後に、拡散バリア層としての第1の層21を形成するための熱処理は一切行っていない。このため、第1の層21と電極層23との間に第2の層22を設ける構成であっても、その第2の層22の構成金属(例えばTi)が上記の熱処理によって電極層23に拡散するということがなく、それゆえ、電極層23の表面に突起物(例えば第2の層22の構成金属の酸化物)が形成されることもない。したがって、結晶性の良好な第2の層22を形成して、その上に形成される電極層23の結晶性および平坦性を良好にすることができる。これにより、電極層23の上に形成される圧電体14の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体14の良好な特性を実現することができる。
【0079】
ちなみに、本実施形態の圧電デバイス1において、第2の層22を構成するTiの結晶性を、X線回折装置を用いて調べたところ、ロッキングカーブの半値幅で5度以下を実現できていることがわかった。なお、ロッキングカーブとは、回折条件の変化に対する強度分布を示す曲線のことであり、一般に、結晶が完全であるほど、曲線の半値幅は狭くなる。
【0080】
つまり、本実施形態の圧電デバイス1では、PZTの下地層13として、上述した第1〜第4の特性のほかに、さらに以下の第5〜第7の特性を持たせた下地層13を実現することができる。すなわち、下地層13において、圧電体14を構成する金属の基板11側への拡散を抑える拡散バリア性が高い特性(第5の特性)、下地層13の結晶性および平坦性が高い特性(第6の特性)、下地層13を構成する層同士の密着性が高い特性(第7の特性)を備えた下地層13を実現することができる。
【0081】
また、第1の層21の表面を還元して第2の層22を形成することにより、薄くて均一な厚さで第2の層22を形成することができる。第2の層22が薄いと、第2の層22の構成金属(例えばTi)の量自体が少ないため、仮に圧電体14の形成時に第2の層22のTiが電極層23に拡散したとしても、電極層23の表面に突起物(例えばTiOx)が現れることがない。したがって、第2の層22が薄いことと、均一な厚さで形成されることとから、電極層23の表面を確実に平坦化することができ、その上に形成される圧電体14の結晶性および平坦性を確実に向上させることができる。
【0082】
また、第1の層21の表面に第2の層22を成膜によって形成する場合でも、成膜時に第2の層22の厚さを制御することで、結晶性および平坦性の良好な第2の層22を形成することができる。したがって、第2の層22の上に形成される電極層23および圧電体14の結晶性および平坦性も向上させることができる。
【0083】
また、第1の層21は、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物で構成されているので、第1の層21を拡散バリア層として確実に機能させることができる。また、第1の層21の表面の還元、または第1の層21上への成膜により、第1の層21の構成金属と同じ金属からなる第2の層22を容易に形成することができる。
【0084】
また、第1の層21、第2の層22および電極層23は、基板11上にこの順で積層されているので、このような積層構造の圧電デバイス1において、上述した効果を得ることができる。
【0085】
(圧電デバイスの他の構成例)
図6は、本実施形態の圧電デバイス1の他の構成を示す断面図である。図6に示した圧電デバイス1は、図1の圧電デバイス1において、下地層13を下地層80に置き換えたものである。下地層80は、金属層81と、第1の層82と、第2の層83とで構成されている。金属層81、第1の層82および第2の層83は、この順で形成される。
【0086】
第1の層82は、例えばIrO2のような導電性の金属酸化物で構成された層であり、拡散バリア層としての機能のみならず、下部電極(電極層)としての機能も有している。金属層81は、例えばTiで構成されており、第1の層82と熱酸化膜12との密着性を向上させるための密着層として機能している。第2の層83は、第1の層82の構成金属と同じ金属(例えばIr)で構成された層であり、第1の層82と圧電体14との密着性を向上させるための密着層として機能している。第2の層83は、第1の層82の表面を還元することによって形成されてもよいし、第1の層82の上に成膜によって形成されてもよい。
【0087】
このように、第1の層82を電極層として用いる構成であっても、第1の層82の構成金属と同じ金属からなる第2の層83をその上に形成することにより、第1の層82および第2の層83を、上述した第1の層21および第2の層22と同じように機能させることができる。これにより、以下の効果を得ることができる。
【0088】
すなわち、Pbの拡散による圧電体14の特性低下を回避することができるとともに、第1の層82と圧電体14との界面での膜のはがれを回避することができる。また、第1の層82の表面を還元することによって第2の層83を薄く均一に形成する、または、第1の層82の上に、第2の層83を厚さを制御しながら成膜することで、第1の層82の上に第2の層83を結晶性よく均一な厚さで形成することができる。これにより、第2の層83の上に形成される圧電体14の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体14の良好な特性を実現することができる。
【0089】
(圧電デバイスの応用例について)
図7は、本実施形態で作製した圧電デバイス1をダイヤフラム(振動板)に応用したときの構成を示す平面図であり、図8は、図7のA−A’線矢視断面図である。圧電体14は、基板11の必要な領域に、2次元の千鳥状に配置されている。基板11において圧電体14の形成領域に対応する領域は、厚さ方向の一部が断面円形で除去された凹部11aとなっており、基板11における凹部11aの上部(凹部11aの底部側)には、薄い板状の領域11bが残っている。電極層(例えば電極層23)を含む下地層13、および上部電極15は、図示しない配線により、外部の制御回路と接続されている。
【0090】
制御回路から、所定の圧電体14を挟む下地層13(電極層)および上部電極15に電気信号を印加することにより、所定の圧電体14のみを駆動することができる。つまり、圧電体14の上下の電極に所定の電界を加えると、圧電体14が左右方向に伸縮し、バイメタルの効果によって圧電体14および基板11の領域11bが上下に湾曲する。したがって、基板11の凹部11aに気体や液体を充填すると、圧電デバイス1をポンプとして用いることができ、例えばインクジェットヘッドに好適となる。
【0091】
また、所定の圧電体14の電荷量を下地層13(電極層)および上部電極15を介して検出することにより、圧電体14の変形量を検出することもできる。つまり、音波や超音波により、圧電体14が振動すると、上記と反対の効果によって上下の電極間に電界が発生するため、このときの電界の大きさや検出信号の周波数を検出することにより、圧電デバイス1をセンサ(超音波センサ)として用いることもできる。さらに、圧電体14が焦電効果を発揮するものであれば、圧電デバイス1を焦電センサ(赤外線センサ)として利用することもできる。
【0092】
その他、圧電体14の圧電効果を利用することで、圧電デバイス1を周波数フィルタ(表面弾性波フィルタ)として利用することもでき、圧電体14を強誘電体で構成すれば、圧電デバイス1を不揮発性メモリとして利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えばインクジェットヘッド、超音波センサ、赤外線センサ、周波数フィルタ、不揮発性メモリなどの種々のデバイスに利用可能であり、特に、小型化、薄型化が要求されるデバイスに利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 圧電デバイス
11 基板
13 下地層
14 圧電体
21 第1の層
22 第2の層
23 電極層
80 下地層
82 第1の層
83 第2の層
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に下地層を介して圧電体を形成した圧電デバイスと、その圧電デバイスの製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、駆動素子やセンサなどの電気機械変換素子として圧電体が用いられている。中でも、PZTは、圧電定数、キュリー温度、結合係数が高く、圧電体として優れており、また、残留分極、抗電界特性が良好で、メモリとしても優れている。
【0003】
一方、近年の装置の小型化、高密度化、低コスト化などの要求に応えて、Si基板を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が増加している。MEMS素子に圧電体を応用すれば、例えばインクジェットヘッドをはじめとする種々の装置を実現することができる。
【0004】
ここで、MEMS素子に圧電体を応用する場合、圧電体を薄膜化することが望ましい。これは、圧電体を薄膜化することで、(1)成膜やフォトリソグラフィーなどの半導体プロセス技術を用いた高精度な加工が可能となり、小型化、高密度化を実現することができる、(2)大面積のウェハに圧電体を一括加工できるため、コストを低減できる、などの利点が得られることによる。圧電体をメモリとして用いる場合も、上記の同様の理由で、圧電体を薄膜化することが望ましい。
【0005】
圧電体をSiなどの基板上に成膜する方法としては、CVD法などの化学的な方法、スパッタ法やイオンプレーティング法などの物理的な方法、ゾルゲル法などの液相での成長法が知られている。圧電体とSiとは、結晶の格子定数が異なるため、図9に示すように、Si基板上に成膜された圧電体は、複数の結晶が柱状に寄り集まった多結晶状態となる。
【0006】
一方、圧電体をSi基板上に形成する際には、圧電体を駆動するための電圧が印加される電極の機能を備えた下地層を形成しておく必要がある。この下地層は、圧電体の結晶成長の際の基板との界面になるため、圧電体の特性に与える影響が大きい。そこで、下地層には、以下の特性が求められる。
【0007】
第1に、下地層の電気抵抗が低いことである。これは、下地層は電極の機能を有しているため、電流を流れやすくして圧電体の駆動を良好に行うためである。第2に、下地層の格子定数が圧電体の格子定数に近いことである。これは、下地層と圧電体とで格子定数が離れすぎると、圧電体が下地層の上に結晶性よく成長しないからである。第3に、下地層の耐熱性が高いことである。これは、下地層の上に成膜される圧電体の成膜温度(例えば600℃)を考慮したことによる。つまり、圧電体の成膜時の高温に耐えられる材料で下地層を形成しておく必要がある。第4に、下地層が基板または圧電体と反応性が低いことである。これは、下地層が基板や圧電体と反応して何らかの生成物が生じることにより、圧電体の圧電特性が低下するのを回避するためである。
【0008】
以上の点を考慮すると、圧電体として例えばPZTを用いる場合、PZTの下地層の電極材料としては、例えばPtが好適である。Ptは、自己配向性が強く、絶縁膜としてのSiO2のようなアモルファスの上に成膜しても、(111)方位に結晶性よく配向し、また、PZTと格子定数も近く、上記した第1〜第4の特性を備えているからである。
【0009】
この点、例えば、特許文献1の圧電デバイスでは、図10に示すように、Siからなる基板101上に、SiO2からなる絶縁膜102、Tiからなる密着層103、Ptからなる電極層104、PZTからなる圧電体105をこの順で形成している。つまり、PZTの下地層の電極材料として、Ptを用いている。ただし、Ptは、SiO2との密着性が低いため、PtとSiO2との間にTiの金属層(密着層103)を形成することで、両者の密着性を高めている。なお、図10では、説明の理解がしやすいように、部材番号の層を構成する材料を、部材番号の後に括弧書きで示している。他の図面においても、必要に応じて同様の表記を行う。
【0010】
ところが、Ptは、配向性が強く、柱状に結晶が成長するため、その粒界に沿って元素が拡散する。この例では、図10に示すように、PZTを構成するPbが、Ptの粒界に沿ってSi基板側に拡散する。この結果、PZTの圧電特性が低下する。
【0011】
そこで、例えば特許文献2では、図11に示すように、Siからなる基板201上にSiO2層202を形成した後、このSiO2層202の上に、TiOx層203、Pt層204、PZT205をこの順で形成している。この構成では、PZT205のPbの基板201側への拡散を、基板201とPZT205との間にTiOx層203を形成することによって抑制している。
【0012】
一方、非特許文献1には、TiOx層を形成するにあたり、Tiの上にPtを成膜した後、このTi/Ptの層を酸素中で加熱することによってTiOx層を形成すると、Pt層の表面粗さが大きくなることが開示されている。その理由は、以下のように考えることができる。
【0013】
図12に示すように、Siからなる基板301上に、SiO2層302、Ti層303’、Pt層304をこの順で積層した後、この基板を酸素雰囲気中で熱処理してTiOx層303を形成すると、上記の熱処理によって、Ti層303’のTiがPt層304に拡散し、Pt層304の表面にTiOxの突起304aが形成される。この突起304aにより、Pt層304の表面粗さが大きくなるものと考えられる。
【0014】
Pt層304の表面粗さが大きくなると、Pt層304の上に圧電体として例えばPZT305を成膜する際に、Pt層304上にPZT305を結晶性よく成長することができず、PZT305の表面の平坦性も損なわれる。このように、PZT305の結晶性および平坦性が低下すると、PZT305の良好な特性を得ることができなくなる。
【0015】
そこで、非特許文献1では、Pt層の成膜前に、Tiを酸化してTiOx層を形成している。このように先にTiOx層を形成した後にPt層を形成することにより、上記したような熱処理によるTiのPt層への拡散がなくなる。これにより、Pt層の結晶性がTiによって変化するということがなく、Pt層の結晶性が向上する。また、Pt層の表面にTiの拡散による突起が形成されることもないので、Pt層の表面の平坦性も向上する。その結果、Pt層の上に成膜されるPZTの結晶性および平坦性を向上させることが可能となり、PZTの良好な特性を得ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平10−251022号公報(段落〔0016〕参照)
【特許文献2】特開平9−22829号公報(段落〔0005〕、〔0023〕、〔0035〕、〔0036〕参照)
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Soon Yong Kweon, et al, “Platinum Hillocks in Pt/Ti Film Stacks Deposited on Thermally Oxidized Si Substrate”, Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 40 (2001) pp. 5850-5855, Part 1, No. 10, October 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、特許文献2および非特許文献1のように、TiOxを形成後にPtを積層する構成では、TiOxとPtとの密着性が低いため、高温でPZTを形成するときに、TiOxとPtとの界面で膜がはがれるという問題が生ずる。例えば特許文献2の構成では、図13に示すように、TiOx層203とPt層204との界面で膜がはがれる。
【0019】
なお、このような膜のはがれの問題は、例えば金属酸化物を電極として、この金属酸化物上に圧電体を形成する場合でも同様に起こり得る。つまり、金属酸化物と圧電体との密着性が低いため、高温で圧電体を形成するときに、金属酸化物と圧電体との界面で膜がはがれる。
【0020】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、圧電体の構成金属の拡散による特性の低下を回避できるとともに、圧電体形成時の膜のはがれを回避でき、さらに、圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができる圧電デバイスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の圧電デバイスは、基板上に、電極層を含む下地層を介して、圧電体を形成した圧電デバイスであって、前記下地層は、第1の層と、第2の層とを含んでおり、前記第1の層は、金属酸化物または金属窒化物からなり、前記第2の層は、前記第1の層の前記金属酸化物の構成金属と同じ金属、または前記金属窒化物の構成金属と同じ金属からなることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、基板と圧電体(例えばPZT)との間の形成される下地層に、金属酸化物(例えばTiO2)または金属窒化物(例えばTiN)からなる第1の層が含まれているので、圧電体の構成金属(例えばPb)が基板側に拡散するのを第1の層で抑えることができる。つまり、第1の層を拡散バリア層として機能させることができ、圧電体の構成金属の拡散による特性の低下を回避することができる。
【0023】
また、下地層は、第2の層を含んでいる。この第2の層は、第1の層の金属酸化物または金属窒化物の構成金属と同じ金属(例えばTi)で形成されている。これにより、電極層と第1の層との密着性、または第1の層と圧電体との密着性を高めることができ、圧電体の高温形成時における膜のはがれを回避することができる。
【0024】
また、下地層が第1の層と第2の層とを有していることにより、例えば、第1の層、第2の層および電極層をこの順で積層した構成、あるいは、第1の層および第2の層をこの順で積層し、かつ、第1の層に電極層の機能を持たせた構成を実現することができる。
【0025】
前者の構成では、第1の層、第2の層、電極層を順に形成することにより、電極層の形成後に第1の層を形成するための熱処理を不要とすることができる。このため、第1の層と電極層との間に第2の層を設ける構成であっても、第2の層の構成金属(例えばTi)が上記の熱処理によって電極層に拡散することがなく、それゆえ、電極層の表面に突起物(例えば第2の層の構成金属の酸化物)が形成されることもない。したがって、電極層の表面を平坦化して、電極層の上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体の良好な特性を実現することができる。
【0026】
また、後者の構成でも、例えば第1の層(電極層)の表面を還元する、または第1の層の上に第2の層を、厚さを制御しながら成膜することにより、第1の層の上に第2の層を結晶性よく均一な厚さで形成することができる。これにより、第2の層の上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体の良好な特性を実現することができる。
【0027】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第2の層は、前記第1の層の表面を還元することによって形成されていてもよい。
【0028】
第1の層の表面を還元することにより、薄く、均一な厚さで第2の層を形成することができる。第2の層が薄いと、第2の層の構成金属の量自体が少ないため、仮に圧電体の形成時に第2の層の構成金属が電極層に拡散したとしても、電極層の表面に突起物が現れることがない。したがって、第2の層が薄いことと、均一な厚さで形成されることとから、電極層の表面を確実に平坦化することができ、その上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を確実に向上させることができる。
【0029】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第2の層は、前記第1の層の構成金属と同じ金属からなる層を、前記第1の層の表面に成膜することによって形成されていてもよい。
【0030】
第1の層の表面に第2の層を成膜によって形成する場合でも、例えば成膜時に第2の層の厚さを制御することで、結晶性および平坦性の良好な第2の層を形成することができ、これによって、第2の層の上に、結晶性および平坦性の良好な電極層または圧電体を形成することができる。
【0031】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第1の層は、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物で構成されていてもよい。
【0032】
第1の層が、上記したいずれかの金属酸化物で構成されていれば、第1の層を拡散バリア層として確実に機能させることができるとともに、第1の層の金属酸化物の還元、または上記金属酸化物の構成金属の成膜によって、第2の層を容易に形成することができる。
【0033】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第1の層、前記第2の層および前記電極層は、前記基板上にこの順で積層されていてもよい。
【0034】
この場合、第1の層、第2の層、電極層が基板上に順に積層された構成において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0035】
本発明の圧電デバイスにおいて、前記第1の層は、前記電極層を兼ねていてもよい。
【0036】
この場合、第1の層が電極層を兼ねた構成において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0037】
また、本発明の圧電デバイスの製造方法は、以下のように表現することができ、これによって、上記と同様の作用効果を奏する。
【0038】
本発明の圧電デバイスの製造方法は、基板上に、電極層を含む下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層の上に圧電体を形成する圧電体形成工程とを含む圧電デバイスの製造方法であって、前記下地層形成工程は、基板上に、金属酸化物または金属窒化物からなる第1の層を形成する工程と、前記第1の層の上に、前記第1の層の前記金属酸化物の構成金属と同じ金属、または前記金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる第2の層を形成する工程とを含んでいることを特徴としている。
【0039】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記第2の層を形成する工程では、前記第1の層の表面を還元することによって、前記第2の層を形成してもよい。
【0040】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記第2の層を形成する工程では、前記第1の層の構成金属と同じ金属からなる層を、前記第1の層の表面に成膜することによって、前記第2の層を形成してもよい。
【0041】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記第1の層を形成する工程では、前記第1の層として、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物からなる層を形成してもよい。
【0042】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記下地層形成工程は、前記第2の層の上に前記電極層を形成する工程をさらに含んでおり、前記第1の層を形成する工程、前記第2の層を形成する工程、前記電極層を形成する工程は、この順で行われてもよい。
【0043】
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記第1の層は、前記電極層を兼ねており、前記第1の層を形成する工程、前記第2の層を形成する工程は、この順で行われてもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、基板と圧電体との間の下地層に第1の層が含まれているので、圧電体の構成金属が電極層を介して基板側に拡散するのを第1の層で抑えることができ、上記拡散による圧電体の特性の低下を回避することができる。また、下地層の第2の層により、電極層と第1の層との密着性、または第1の層と圧電体との密着性を高めることができ、圧電体の高温形成時における膜のはがれを回避することができる。
【0045】
また、拡散バリア層としての第1の層の上に、第2の層および電極層が順に形成される構成では、電極層の形成後に拡散バリア層を形成するための熱処理が不要なので、第2の層の構成金属が上記の熱処理によって電極層に拡散するといったことがなく、これによって電極層の表面に突起物が形成されることもない。したがって、電極層の表面を平坦化して、電極層の上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体の良好な特性を実現することができる。また、第1の層が電極層を兼ねる構成では、第1の層(電極層)の上に第2の層を結晶性よく均一な厚さで形成することにより、第2の層の上に形成される圧電体の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体の良好な特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の一形態に係る圧電デバイスの概略の構成を示す断面図である。
【図2】上記圧電デバイスの圧電体を構成するPZTの結晶構造を模式的に示す説明図である。
【図3】上記圧電デバイスの製造時に用いる還元装置の概略の構成を示す断面図である。
【図4】上記圧電デバイスの製造時の流れを、各製造工程での断面図とともに示すフローチャートである。
【図5】(a)〜(d)は、層が成膜によって形成される過程を模式的に示す説明図である。
【図6】上記圧電デバイスの他の構成を示す断面図である。
【図7】上記圧電デバイスの応用例の構成を示す平面図である。
【図8】図7のA−A’線矢視断面図である。
【図9】圧電体の結晶状態を示す説明図である。
【図10】従来の圧電デバイスの構成を示す断面図である。
【図11】従来の圧電デバイスの他の構成を示す断面図である。
【図12】従来の圧電デバイスのさらに他の構成を示す断面図である。
【図13】図11の圧電デバイスにおける膜のはがれを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0048】
(圧電デバイスについて)
図1は、本実施形態の圧電デバイス1の概略の構成を示す断面図である。この圧電デバイス1は、基板11上に、熱酸化膜12と、下地層13と、圧電体14と、上部電極15とをこの順で形成して構成されている。なお、以下での説明の理解がしやすいように、部材番号の後に、その部材番号の層を構成する材料の一例を括弧書きで示している。
【0049】
基板11は、例えば単結晶Si単体からなる半導体基板またはSOI(Silicon on Insulator)基板で構成されている。熱酸化膜12は、例えばSiO2からなり、基板11の保護および絶縁の目的で設けられている。
【0050】
圧電体14は、圧電材料の一種であるPZTで構成されている。ここで、図2は、PZTの結晶構造を模式的に示している。同図で示した結晶構造は、ペロブスカイト型構造と呼ばれる。ペロブスカイト型構造とは、Pb(Zrx,Ti1-x)O3の正方晶では、正方晶の各頂点にPb原子が位置し、体心にTi原子またはZr原子が位置し、各面心にO原子が位置する構造である。圧電体は、結晶構造がペロブスカイト型構造を採るときに良好な圧電効果を発現することが知られている。したがって、本実施形態の圧電デバイス1において、圧電体14をPZT、すなわち、ペロブスカイト型構造の金属酸化物で構成することにより、良好な圧電効果を得ることができる。
【0051】
なお、圧電効果とは、応力を加えることによって分極(および電圧)が生じたり、逆に電圧を印加することで応力および変形が生じる圧電体の性質を言うが、圧電体14は、このような圧電効果のほかに、焦電効果を発揮する焦電体で構成されてもよいし、メモリ性を有する強誘電体で構成されてもよい。
【0052】
なお、焦電体とは、圧電体のうち、外から電界を与えなくても自発的な分極を有しているものを言い、微小な温度変化に応じて誘電分極(およびそれによる起電力)が生じる性質を持つ。圧電体14が焦電体で構成された場合は、圧電デバイス1を赤外線センサとして利用することができる。
【0053】
上部電極15は、Ti層15aとAu層15bとを積層して構成されている。Ti層15aは、圧電体14とAu層15bとの密着性を向上させるために形成されている。
【0054】
下地層13は、第1の層21と、第2の層22と、電極層23とをこの順で積層して構成されている。電極層23は、圧電体14の下部電極として機能する層であり、例えばPtで形成されている。
【0055】
第1の層21は、金属酸化物または金属窒化物からなっている。上記の金属酸化物としては、例えば、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかを考えることができる。なお、化学式中のxは、金属元素に対する酸素の組成比を示す。また、上記の金属窒化物としては、例えばTiNを考えることができる。
【0056】
第2の層22は、第1の層21の金属酸化物の構成金属と同じ金属、または第1の層21の金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる。例えば、第1の層21がTiOxやTiNで構成される場合、第2の層22は、Tiで構成されることになる。このような第2の層22は、第1の層21の表面を還元することによって形成することもできるし、第1の層21の構成金属と同じ金属からなる層を、第1の層21の表面に成膜することによっても形成することができる。
【0057】
ここで、還元とは、狭義には、酸素を失う化学反応のことを指すが、広義には、対象とする物質が電子を受け取る化学反応のことを指す。したがって、TiOxやTiNがTiとなる化学反応は、いずれもTiの陽イオンが電子を受け取ってTi原子となる化学反応であるため、還元反応となる。
【0058】
(還元装置について)
次に、第1の層21の表面を還元して第2の層22を形成する際に用いる還元装置について説明する。
【0059】
図3は、還元装置60の概略の構成を示す断面図である。還元装置60は、処理室31と、加熱室41と、隔離板51とを有している。処理室31と加熱室41とは、隔離板51によって隔離されている。処理室31には、加熱対象となる被加熱体32が収容され、加熱室41には、被加熱体32を加熱するためのヒータランプ42が設けられている。また、処理室31には、気体(例えば水素)の導入口33および排気口34が設けられており、加熱室41には、気体(例えば窒素)の導入口43および排気口44が設けられている。
【0060】
この構成において、処理室31に被加熱体32を収容し、処理室31内に導入口33から水素を導入した状態で、加熱室41のヒータランプ42をオンすると、被加熱体32は、ヒータランプ42の輻射線により、隔離板51を介して輻射加熱され、処理室31内の水素で還元される。したがって、被加熱体32を、第1の層21を形成した基板11に置き換えて処理室31内に収容し、第1の層21の表面を水素で還元することにより、第1の層21の表面に、第1の層21の金属酸化物の構成金属と同じ金属からなる第2の層22を形成することができる。
【0061】
(圧電デバイスの製造方法について)
次に、上記構成の圧電デバイス1の製造方法について説明する。図4は、圧電デバイス1の製造時の流れを、各製造工程での断面図とともに示している。なお、半導体の製造に使用される基板の厚さは、国際規格(SEMI)でサイズ(直径)ごとに定められているため、上記基板を基板11として用いる場合は、デバイスで必要となる厚さ(例えば400〜600μm程度)に予め研磨しておいてもよい。
【0062】
まず、Siからなる基板11を、加熱炉で1000〜1300℃程度に加熱し、基板11上に、例えば厚さ100nmのSiO2からなる熱酸化膜12を形成する(S1)。なお、熱酸化膜12の厚さは特に限定されず、デバイスに必要な厚さに調節されればよい。
【0063】
続いて、熱酸化膜12上に、Tiをスパッタ法で成膜し、Ti層21’を形成する(S2)。このとき、Ti層21’の成膜温度は例えば300〜600℃であり、厚さは例えば10〜50nm程度である。なお、Ti層21’の厚さが薄すぎると、その後Ti層21’を加熱して形成される第1の層21によって、圧電体14のPbの拡散を有効に防止することができず、また、厚すぎても利点はない。このことを考慮すると、Ti層21’の厚さは、20〜30nmが好ましい。なお、Ti層21’の代わりに、W、Ta、Ir、Pt、Ru、Re、Pd、Os、Cr、Alのいずれかの層を熱酸化膜12上に形成してもよい。
【0064】
次に、酸素加熱炉で400〜800℃程度にTi層21’を加熱して、基板11上にTiOxの金属酸化物からなる第1の層21を形成する(S3)。なお、S2の工程を省略して(基板11上にTi層21’を形成せずに)、TiOxをスパッタ法または蒸着法によって直接成膜することで、金属酸化物からなる第1の層21を形成してもよい。また、TiOxの代わりにTiNなどの金属窒化物を成膜し、これを第1の層21としてもよい。さらに、S2にて、Ti層21’の代わりに、上記したいずれかの金属からなる層を形成した場合は、この層を酸化することにより、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物を形成し、これを第1の層21としてもよい。
【0065】
その後、上述した還元装置60を用い、水素雰囲気下で700〜1000度程度に加熱して、第1の層21の表面を還元し、Tiからなる第2の層22を形成する(S4)。つまり、このS4では、第1の層21の上に、第1の層21の金属酸化物(例えばTiOx)の構成金属と同じ金属(例えばTi)からなる第2の層22が形成される。なお、第1の層21を金属窒化物(例えばTiN)で構成した場合は、第1の層21の表面を還元することにより、第1の層21の金属窒化物の構成金属と同じ金属(例えばTi)からなる第2の層22が形成される。
【0066】
ここで、第2の層22の膜厚が薄いと、第1の層21と後述する電極層23との密着性が不足し、膜厚が厚いと、電極層23の表面にTiOxが露出して、電極層23および圧電体14の結晶性を低下させる。以上のことを考慮すると、第2の層22の膜厚は、例えば1〜5nmであることが望ましい。
【0067】
なお、第1の層21の表面を還元するにあたって、高温の水素ガスを第1の層21の表面に吹き付けたり、低圧の反応槽内でプラズマを援用することにより、第1の層21の表面を還元するようにしてもよい。また、水素の代わりに、アンモニア(NH3)、ホスフィン(PH3)、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、5フッ化ジボラン(B2HF5)などの水素化合物を用いて、第1の層21の表面を還元してもよい。
【0068】
次に、第2の層22の上に、Ptをスパッタ法で成膜して電極層23を形成する(S5)。なお。このときの成膜温度は、例えば400〜800℃であり、膜厚は例えば100〜300nmである。なお、電極層23は、上記のPtの代わりに、W、Ta、Ir、Ru、Re、Pd、Osなどで構成されてもよい。以上のS2〜S5の工程が、下地層13を形成する工程に相当する。
【0069】
続いて、電極層23の上に、PZTをスパッタ法で成膜して圧電体14を形成する(S6;圧電体形成工程)。このとき、PZTの成膜温度が低いと、PZTの結晶性が低下し、成膜温度が高いと、Pbが揮発して組成が変動するおそれがあるため、PZTの成膜温度は600℃程度であることが望ましい。また、圧電体14の厚さは、例えば100〜5000nmであるが、デバイスに必要になる厚さに調節されればよい。
【0070】
なお、圧電体14としてのPZTは、ゾルゲル法やCVD法などの他の製造方法で作製されてもよい。また、PZTは、添加物を含んだPNZT(チタン酸ジルコン酸ニオブ鉛)、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)、PSZT(チタン酸ジルコン酸ストロンチウム鉛)などであってもよく、さらには、リラクサ材料と呼ばれるPMN−PT(マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛固溶体)などであってもよい。また、圧電体14は、Pb以外の金属を含んだBST(チタン酸バリウムストロンチウム)やSBT(タンタル酸ストロンチウムビスマス)などであってもよい。
【0071】
その後、圧電体14上に、上部電極15を形成する(S7)。より具体的には、圧電体14上に、Tiをスパッタ法で成膜してTi層15aを形成する。Ti層15aの成膜温度は、例えば300〜600℃であり、膜厚は例えば10〜50nmである。そして、このTi層15a上に、Auをスパッタ法で成膜してAu層15bを形成する。このときの
Au層15bの成膜温度は例えば600℃であり、膜厚は例えば100〜300nmである。このようにして、Ti層15aとAu層15bとからなる上部電極15が形成され、圧電デバイス1が完成する。
【0072】
なお、Au層15bの代わりに、Pt、W、Ta、Ir、Ru、Re、Pd、Osなどからなる金属層を形成して、上部電極15を形成してもよい。また、上部電極15の厚さは、デバイスに必要な厚さに調節されればよい。
【0073】
ところで、第1の層21の上に第2の層22を形成するにあたり、第2の層22を成膜によって直接形成してもよい点は、上述した通りである。このときの第2の層22の成膜方法としては、一般的な気相成長法を用いることができるが、蒸着やスパッタなどの物理的方法、CVDなどの化学的方法のいずれにおいても、以下の工程(S41〜S44)を経る。
【0074】
すなわち、図5(a)に示すように、基板71上にいくつかの原子72(例えばTi原子)が付着する(S41)。そして、図5(b)に示すように、原子72・72同士が集合して島73を形成する(S42)。続いて、図5(c)に示すように、島73が成長して初期核74を形成する(S43)。その後、図5(d)に示すように、初期核74が成長して層75(第2の層22に相当)が形成される(S44)。
【0075】
ここで、S42およびS43の状態では、基板71上に複数の島73や初期核74が存在するのみで、均一な厚さの層にはならない。また、初期核74・74同士は、配向性が異なるため、S42、S43およびS44の初期では、層75(Ti層)の結晶性が良好にはならない。しかし、これらの点については、Ti層の厚みを増大させることで解決することができる。つまり、S44にて、層75の厚さを、第1の層21の還元によって形成される第2の層22の厚さよりも増大させることで、層75を構成するTiの結晶性を良好にすることができるとともに、層75の厚さを均一にして表面を平坦化することができる。
【0076】
(効果)
以上のように、本実施形態の圧電デバイス1およびその製造方法によれば、基板11と圧電体14との間に形成される下地層13に、金属酸化物または金属窒化物からなる第1の層21が含まれている。これにより、圧電体14の構成金属(例えばPb)が基板11側に拡散するのを第1の層21で抑えることができ、上記構成金属の拡散による圧電体14の特性低下を回避することができる。
【0077】
また、下地層13は、第1の層21の金属酸化物または金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる第2の層22を含んでいる。これにより、電極層23と第1の層21との密着性を高めることができ、電極層23上に圧電体14を高温で形成する際に、電極層23と第1の層21とがはがれてしまうのを回避することができる。
【0078】
また、本実施形態では、電極層23の形成後に、拡散バリア層としての第1の層21を形成するための熱処理は一切行っていない。このため、第1の層21と電極層23との間に第2の層22を設ける構成であっても、その第2の層22の構成金属(例えばTi)が上記の熱処理によって電極層23に拡散するということがなく、それゆえ、電極層23の表面に突起物(例えば第2の層22の構成金属の酸化物)が形成されることもない。したがって、結晶性の良好な第2の層22を形成して、その上に形成される電極層23の結晶性および平坦性を良好にすることができる。これにより、電極層23の上に形成される圧電体14の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体14の良好な特性を実現することができる。
【0079】
ちなみに、本実施形態の圧電デバイス1において、第2の層22を構成するTiの結晶性を、X線回折装置を用いて調べたところ、ロッキングカーブの半値幅で5度以下を実現できていることがわかった。なお、ロッキングカーブとは、回折条件の変化に対する強度分布を示す曲線のことであり、一般に、結晶が完全であるほど、曲線の半値幅は狭くなる。
【0080】
つまり、本実施形態の圧電デバイス1では、PZTの下地層13として、上述した第1〜第4の特性のほかに、さらに以下の第5〜第7の特性を持たせた下地層13を実現することができる。すなわち、下地層13において、圧電体14を構成する金属の基板11側への拡散を抑える拡散バリア性が高い特性(第5の特性)、下地層13の結晶性および平坦性が高い特性(第6の特性)、下地層13を構成する層同士の密着性が高い特性(第7の特性)を備えた下地層13を実現することができる。
【0081】
また、第1の層21の表面を還元して第2の層22を形成することにより、薄くて均一な厚さで第2の層22を形成することができる。第2の層22が薄いと、第2の層22の構成金属(例えばTi)の量自体が少ないため、仮に圧電体14の形成時に第2の層22のTiが電極層23に拡散したとしても、電極層23の表面に突起物(例えばTiOx)が現れることがない。したがって、第2の層22が薄いことと、均一な厚さで形成されることとから、電極層23の表面を確実に平坦化することができ、その上に形成される圧電体14の結晶性および平坦性を確実に向上させることができる。
【0082】
また、第1の層21の表面に第2の層22を成膜によって形成する場合でも、成膜時に第2の層22の厚さを制御することで、結晶性および平坦性の良好な第2の層22を形成することができる。したがって、第2の層22の上に形成される電極層23および圧電体14の結晶性および平坦性も向上させることができる。
【0083】
また、第1の層21は、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物で構成されているので、第1の層21を拡散バリア層として確実に機能させることができる。また、第1の層21の表面の還元、または第1の層21上への成膜により、第1の層21の構成金属と同じ金属からなる第2の層22を容易に形成することができる。
【0084】
また、第1の層21、第2の層22および電極層23は、基板11上にこの順で積層されているので、このような積層構造の圧電デバイス1において、上述した効果を得ることができる。
【0085】
(圧電デバイスの他の構成例)
図6は、本実施形態の圧電デバイス1の他の構成を示す断面図である。図6に示した圧電デバイス1は、図1の圧電デバイス1において、下地層13を下地層80に置き換えたものである。下地層80は、金属層81と、第1の層82と、第2の層83とで構成されている。金属層81、第1の層82および第2の層83は、この順で形成される。
【0086】
第1の層82は、例えばIrO2のような導電性の金属酸化物で構成された層であり、拡散バリア層としての機能のみならず、下部電極(電極層)としての機能も有している。金属層81は、例えばTiで構成されており、第1の層82と熱酸化膜12との密着性を向上させるための密着層として機能している。第2の層83は、第1の層82の構成金属と同じ金属(例えばIr)で構成された層であり、第1の層82と圧電体14との密着性を向上させるための密着層として機能している。第2の層83は、第1の層82の表面を還元することによって形成されてもよいし、第1の層82の上に成膜によって形成されてもよい。
【0087】
このように、第1の層82を電極層として用いる構成であっても、第1の層82の構成金属と同じ金属からなる第2の層83をその上に形成することにより、第1の層82および第2の層83を、上述した第1の層21および第2の層22と同じように機能させることができる。これにより、以下の効果を得ることができる。
【0088】
すなわち、Pbの拡散による圧電体14の特性低下を回避することができるとともに、第1の層82と圧電体14との界面での膜のはがれを回避することができる。また、第1の層82の表面を還元することによって第2の層83を薄く均一に形成する、または、第1の層82の上に、第2の層83を厚さを制御しながら成膜することで、第1の層82の上に第2の層83を結晶性よく均一な厚さで形成することができる。これにより、第2の層83の上に形成される圧電体14の結晶性および平坦性を向上させることができ、圧電体14の良好な特性を実現することができる。
【0089】
(圧電デバイスの応用例について)
図7は、本実施形態で作製した圧電デバイス1をダイヤフラム(振動板)に応用したときの構成を示す平面図であり、図8は、図7のA−A’線矢視断面図である。圧電体14は、基板11の必要な領域に、2次元の千鳥状に配置されている。基板11において圧電体14の形成領域に対応する領域は、厚さ方向の一部が断面円形で除去された凹部11aとなっており、基板11における凹部11aの上部(凹部11aの底部側)には、薄い板状の領域11bが残っている。電極層(例えば電極層23)を含む下地層13、および上部電極15は、図示しない配線により、外部の制御回路と接続されている。
【0090】
制御回路から、所定の圧電体14を挟む下地層13(電極層)および上部電極15に電気信号を印加することにより、所定の圧電体14のみを駆動することができる。つまり、圧電体14の上下の電極に所定の電界を加えると、圧電体14が左右方向に伸縮し、バイメタルの効果によって圧電体14および基板11の領域11bが上下に湾曲する。したがって、基板11の凹部11aに気体や液体を充填すると、圧電デバイス1をポンプとして用いることができ、例えばインクジェットヘッドに好適となる。
【0091】
また、所定の圧電体14の電荷量を下地層13(電極層)および上部電極15を介して検出することにより、圧電体14の変形量を検出することもできる。つまり、音波や超音波により、圧電体14が振動すると、上記と反対の効果によって上下の電極間に電界が発生するため、このときの電界の大きさや検出信号の周波数を検出することにより、圧電デバイス1をセンサ(超音波センサ)として用いることもできる。さらに、圧電体14が焦電効果を発揮するものであれば、圧電デバイス1を焦電センサ(赤外線センサ)として利用することもできる。
【0092】
その他、圧電体14の圧電効果を利用することで、圧電デバイス1を周波数フィルタ(表面弾性波フィルタ)として利用することもでき、圧電体14を強誘電体で構成すれば、圧電デバイス1を不揮発性メモリとして利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えばインクジェットヘッド、超音波センサ、赤外線センサ、周波数フィルタ、不揮発性メモリなどの種々のデバイスに利用可能であり、特に、小型化、薄型化が要求されるデバイスに利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 圧電デバイス
11 基板
13 下地層
14 圧電体
21 第1の層
22 第2の層
23 電極層
80 下地層
82 第1の層
83 第2の層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、電極層を含む下地層を介して、圧電体を形成した圧電デバイスであって、
前記下地層は、第1の層と、第2の層とを含んでおり、
前記第1の層は、金属酸化物または金属窒化物からなり、
前記第2の層は、前記第1の層の前記金属酸化物の構成金属と同じ金属、または前記金属窒化物の構成金属と同じ金属からなることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記第2の層は、前記第1の層の表面を還元することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記第2の層は、前記第1の層の構成金属と同じ金属からなる層を、前記第1の層の表面に成膜することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記第1の層は、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記第1の層、前記第2の層および前記電極層は、前記基板上にこの順で積層されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記第1の層は、前記電極層を兼ねていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項7】
基板上に、電極層を含む下地層を形成する下地層形成工程と、
前記下地層の上に圧電体を形成する圧電体形成工程とを含む圧電デバイスの製造方法であって、
前記下地層形成工程は、
基板上に、金属酸化物または金属窒化物からなる第1の層を形成する工程と、
前記第1の層の上に、前記第1の層の前記金属酸化物の構成金属と同じ金属、または前記金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる第2の層を形成する工程とを含んでいることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第2の層を形成する工程では、前記第1の層の表面を還元することによって、前記第2の層を形成することを特徴とする請求項7に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記第2の層を形成する工程では、前記第1の層の構成金属と同じ金属からなる層を、前記第1の層の表面に成膜することによって、前記第2の層を形成することを特徴とする請求項7に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第1の層を形成する工程では、前記第1の層として、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物からなる層を形成することを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記下地層形成工程は、前記第2の層の上に前記電極層を形成する工程をさらに含んでおり、
前記第1の層を形成する工程、前記第2の層を形成する工程、前記電極層を形成する工程は、この順で行われることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項12】
前記第1の層は、前記電極層を兼ねており、
前記第1の層を形成する工程、前記第2の層を形成する工程は、この順で行われることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項1】
基板上に、電極層を含む下地層を介して、圧電体を形成した圧電デバイスであって、
前記下地層は、第1の層と、第2の層とを含んでおり、
前記第1の層は、金属酸化物または金属窒化物からなり、
前記第2の層は、前記第1の層の前記金属酸化物の構成金属と同じ金属、または前記金属窒化物の構成金属と同じ金属からなることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記第2の層は、前記第1の層の表面を還元することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記第2の層は、前記第1の層の構成金属と同じ金属からなる層を、前記第1の層の表面に成膜することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記第1の層は、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記第1の層、前記第2の層および前記電極層は、前記基板上にこの順で積層されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記第1の層は、前記電極層を兼ねていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項7】
基板上に、電極層を含む下地層を形成する下地層形成工程と、
前記下地層の上に圧電体を形成する圧電体形成工程とを含む圧電デバイスの製造方法であって、
前記下地層形成工程は、
基板上に、金属酸化物または金属窒化物からなる第1の層を形成する工程と、
前記第1の層の上に、前記第1の層の前記金属酸化物の構成金属と同じ金属、または前記金属窒化物の構成金属と同じ金属からなる第2の層を形成する工程とを含んでいることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第2の層を形成する工程では、前記第1の層の表面を還元することによって、前記第2の層を形成することを特徴とする請求項7に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記第2の層を形成する工程では、前記第1の層の構成金属と同じ金属からなる層を、前記第1の層の表面に成膜することによって、前記第2の層を形成することを特徴とする請求項7に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第1の層を形成する工程では、前記第1の層として、WOx、TiOx、TaOx、IrO2、PtO2、RuOx、ReOx、PdOx、OsOx、CrOx、AlOxのいずれかの金属酸化物からなる層を形成することを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記下地層形成工程は、前記第2の層の上に前記電極層を形成する工程をさらに含んでおり、
前記第1の層を形成する工程、前記第2の層を形成する工程、前記電極層を形成する工程は、この順で行われることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項12】
前記第1の層は、前記電極層を兼ねており、
前記第1の層を形成する工程、前記第2の層を形成する工程は、この順で行われることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の圧電デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−227415(P2012−227415A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94893(P2011−94893)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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