説明

圧電デバイス用のパッケージ、圧電デバイス及びその製造方法

【課題】 圧電デバイス用のパッケージを短くしても、圧電振動片の長さを確保すると共に、圧電振動片を精度よく載置して、優れた所定の振動特性を得ることができる圧電デバイス用パッケージ、圧電デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 圧電振動片20を収容するための内部空間S1を備えた圧電デバイス用のパッケージ37であって、内部空間S1に露出した内側底面37aは、圧電振動片20の固定端20a側で低く、固定端20aと反対側で高くなる傾斜面を有しており、この傾斜面は圧電振動片20の振動領域を避けるように設けられている圧電デバイス用のパッケージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片を収容する内部空間を備えた圧電デバイス用のパッケージと、圧電デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、圧電振動子等の圧電デバイスが広く使用されている。
図13は従来の圧電デバイス1の概略断面図である(例えば、特許文献1参照)。この図において、圧電デバイス1はパッケージ2内に圧電振動片3を収容している。
【0003】
すなわち、パッケージ2は、内側に内部空間Sを有し、この内部空間Sに露出する内側底面2aに電極2bを設け、この電極2b上に導電性接着剤4が塗布されている。そして、この導電性接着剤4の上に圧電振動片3の端部を載置するようにして、圧電振動片3が水平に載置され、導電性接着剤4が乾燥硬化して、内側底面2aと圧電振動片3とが接合固定されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−135074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、上述の情報機器や移動体通信機器などの様々な電子機器については、小型化がめざましく、それらに用いられる圧電デバイス1及びこれに収容される圧電振動片3についても、その長さが短くなるように要求されている。
ところが、圧電振動片3の長さを短くしても、その長さに合わせるようにして、圧電振動片3への導電性接着剤4の塗布面積を小さくすることは困難であるため、圧電振動片3の振動領域を従来のように確保することができない。このため、圧電振動片3のクリスタルインピーダンス値(以下、「CI値」という。)が大きくなって、所定の振動特性を得ることができない。
【0006】
さらに、圧電デバイス1が小型化すると、圧電振動片3を収容する内部空間Sが小さくなって、パッケージ2の内側底面2aに設けた電極2bに、圧電振動片3の端部を精度よく載置することが困難になるという問題も生ずる。
【0007】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、圧電デバイス用のパッケージを短くしても、圧電振動片の長さを確保すると共に、圧電振動片を精度よく載置して、優れた所定の振動特性を得ることができる圧電デバイス用パッケージ、圧電デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、第1の発明にあっては、圧電振動片を収容するための内部空間を備えた圧電デバイス用のパッケージであって、前記内部空間に露出した内側底面は、前記圧電振動片の固定端側で低く、前記固定端と反対側で高くなる傾斜面を有しており、この傾斜面は前記圧電振動片の振動領域を避けるように設けられている、圧電デバイス用のパッケージにより達成される。
【0009】
第1の発明の構成によれば、圧電デバイス用のパッケージは、内部空間に露出した内側底面が傾斜面を有しているため、圧電振動片は、水平線から所定の角度をもってパッケージに載置される。したがって、圧電振動片の長さを、同じパッケージに水平に載置した場合の長さに比べて1/cosθ倍にすることができ、1/cosθ倍に長くなった分、CI値を下げることができるパッケージを形成することができる。
また、傾斜面は圧電振動片の振動領域を避けるように設けられている。したがって、圧電振動片の振動領域が傾斜面に触れてしまうことを回避して、傾斜面が圧電振動片の振動特性に及ぼす悪影響を排除している。
さらに、傾斜面は、圧電振動片の固定端側で低く、固定端と反対側で高くなっている。このため、圧電振動片は、内側底面に載置される際、固定端と反対側にずれて載置されても、傾斜面を固定端側にすべり落ちるようにして位置決めされる。
かくして、圧電デバイス用のパッケージを短くしても、圧電振動片の長さを確保すると共に、圧電振動片を精度よく載置して、優れた所定の振動特性を得ることができる圧電デバイス用パッケージを提供することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記内部空間に露出し、長手方向に沿った内側壁面は、前記圧電振動片を配置すべき位置に向かって傾斜している、ことを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、内部空間に露出し、長手方向に沿った内側壁面は、圧電振動片を配置すべき位置に向かって傾斜している。このため、例えば圧電振動片の一部が、長手方向に沿った内側壁面上に置かれても、傾斜した壁面をすべり落ちるようにして、圧電振動片を配置すべき位置に位置決めされる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明のいずれかの構成において、前記固定端と反対側であって、前記内側底面と外部に露出した外側底面との間の内部領域には、少なくとも前記圧電振動片を発振させる回路を備えた発振回路素子を収容するための素子収容空間が形成されている、ことを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、少なくとも圧電振動片を発振させる回路を備えた発振回路素子を収容するための素子収容空間が形成されているため、この空間に発振回路素子を収容する、圧電発振器用のパッケージを形成することができる。さらに、この素子収容空間は、固定端と反対側であって、内側底面と外部に露出した外側底面との間の内部領域に形成されているが、この内部領域は、パッケージが固定端側で低く、固定端と反対側で高い傾斜面を有しているため、他の領域よりも大きな領域となっている。したがって、この大きな領域を有効に活用して、小型の圧電発振器用パッケージを形成することができる。
【0012】
また、上記目的は、第4の発明にあっては、圧電振動片と、この圧電振動片を収容するための内部空間を有するパッケージとを備えた圧電デバイスであって、前記パッケージの前記内部空間に露出した内側底面は、前記圧電振動片の固定端側で低く、前記固定端と反対側で高くなる傾斜面を有しており、この傾斜面は、前記圧電振動片の振動領域を避けるように設けられている、圧電デバイスにより達成される。
【0013】
第4の発明の構成によれば、圧電デバイスのパッケージは、内部空間に露出した内側底面が傾斜面を有しているため、第1の発明と同様に、圧電振動片の長さを、同じパッケージに水平に載置した場合の長さに比べて1/cosθ倍にして、その分CI値を下げることができる。
また、傾斜面は圧電振動片の振動領域を避けるように設けられているため、第1の発明と同様に、傾斜面が圧電振動片の振動特性に及ぼす悪影響を排除している。
さらに、傾斜面は、圧電振動片の固定端側で低く、固定端と反対側で高くなっているため、第1の発明と同様に、圧電振動片は、内側底面に載置する際、固定端と反対側にずれて載置されても、傾斜面を固定端側にすべり落ちるようにして位置決めされる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明の構成において、前記パッケージの前記内部空間に露出し、長手方向に沿った内側壁面は、前記圧電振動片を配置すべき位置に向かって傾斜している、ことを特徴とする。
第5の発明の構成によれば、パッケージの内部空間に露出し、長手方向に沿った内側壁面は、圧電振動片を配置すべき位置に向かって傾斜している。このため、例えば圧電振動片の一部が、長手方向に沿った内側壁面上に置かれても、傾斜した壁面をすべり落ちるようにして、圧電振動片を配置すべき位置に位置決めされる。
【0015】
第6の発明は、第4または第5の発明のいずれかの構成において、前記パッケージは、前記固定端と反対側であって、前記内側底面と外部に露出した外側底面との間の内部領域に、前記圧電振動片を発振させる回路を備えた発振回路素子が配置されている、ことを特徴とする。
第6の発明の構成によれば、発振回路素子が配置されているため、圧電発振器を形成することができる。さらに、発振回路素子は、固定端と反対側であって、内側底面と外部に露出した外側底面との間の内部領域に配置されているため、第3の発明と同様に、他の領域に比べて大きな領域である内部領域を有効に活用して、小型の圧電発振器を形成することができる。
【0016】
また、上記目的は、第7の発明にあっては、圧電振動片を収容するための内部空間を備えたパッケージを形成するパッケージ形成工程と、前記内部空間に露出する内側底面に前記圧電振動片を接合するマウント工程と、前記パッケージの開口部を蓋体で封止する蓋封止工程とを備え、前記パッケージ形成工程では、金型のキャビティ内に樹脂を注入することで、前記内側底面に、前記圧電振動片の固定端側で低く、前記固定端と反対側で高くなり、かつ、前記圧電振動片の振動領域を避けるようにした傾斜面を形成した、圧電デバイスの製造方法により達成される。
【0017】
第7の発明の構成によれば、圧電振動片を収容するための内部空間を備えたパッケージを形成するパッケージ形成工程では、金型のキャビティ内に樹脂を注入することで、内側底面に、圧電振動片の固定端側で低く、固定端と反対側で高くなる傾斜面を形成している。このため、圧電振動片の長さを、同じパッケージに水平に載置した場合の長さに比べて1/cosθ倍にでき、かつ、圧電振動片が固定端と反対側にずれて載置されても位置決めされる傾斜面を、樹脂で容易に形成することができる。
【0018】
第8の発明は、第7の発明の構成において、前記マウント工程では、前記圧電振動片を載置した後に、前記内側底面と前記圧電振動片とを接続するための接着剤を塗布するようにした、ことを特徴とする。
第8の発明の構成によれば、マウント工程では、圧電振動片を載置した後に、内側底面と圧電振動片とを接続するための接着剤を塗布するようにしている。このため、圧電振動片が固定端と反対側にずれて載置されても、圧電振動片を所定の位置に位置決めするという傾斜面の機能が、接着剤によって阻害されることなく、有効に発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1ないし図3は、本発明の圧電デバイスの一実施形態を示しており、図1はその概略分解斜視図、図2は図1の圧電デバイスを組み合わせてA−A線の位置で切断した際の概略断面図、図3は図1の圧電デバイスを組み合わせてB−B線の位置で切断した際の概略端面図である。
これらの図において、圧電デバイス10は圧電振動子を例示しており、パッケージ37と、このパッケージ37に固定された圧電振動片20とを備えている。
【0020】
先ず圧電振動片20について説明する。
圧電振動片20は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。ここでは、水晶ウエハを定められた方向に沿って、矩形にカットした所謂ATカット振動片を用いているが、本実施形態はこれに限られるものではない。
【0021】
そして、圧電振動片20は、その表裏面の中央付近に駆動用の電極としての励振電極22a,22bが設けられている。励振電極22aは、圧電振動片20のパッケージと接合される固定端20aに引き出して形成した、引出し電極24aに接続され、裏面の励振電極22bも、同様にして固定端20aに形成された引出し電極24bに接続されている。これら引出し電極24a,24bは、図1および図2に示されるように表裏面に設けられており、圧電振動片20の固定端20a側の端面20bを通じて表裏面の電極は電気的に接続されている。
【0022】
次にパッケージ37について説明する。
パッケージ37は、絶縁材料を利用して矩形状に形成されている。具体的には、本実施形態では、後述するように、例えば金型のキャビティ内にエポキシ系等の樹脂材料を注入して形成されているが、例えば酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して形成される複数の基板を積層した後、焼結して形成されてもよい。
【0023】
また、パッケージ37は、その上部が開口されており、圧電振動片20を収容するための内部空間S1を有しており、この内部空間S1に露出した内側底面37aと、内側壁面37b,37c,37d,37eとを有している。なお、パッケージ37が樹脂材料を用いて形成されている場合において、内側底面37a、及び内側壁面37b,37c,37d,37eには、ポリイミド等のコーティングを施して、パッケージ37の気密性を向上することができる。
【0024】
内側壁面37b,37c,37d,37eには、図2および図3に示すように、その上側の開口端にロウ材36が使用されて、蓋体34を固定することで、内部空間S1が気密に封止されるようになっている。
内側底面37aは、圧電振動片20を接合固定するための底部である。すなわち、内側底面37aの図1および図2において右端部付近には、下地にCu(銅)およびNi(ニッケル)メッキ、表面にAu(金)メッキが施された電極部40,40が所定の間隔を隔てて形成されている。そして、電極部40,40と、圧電振動片20の固定端20aに形成された引出し電極24a,24bとが、それぞれ、接合力を発揮する接着剤成分としての合成樹脂剤に、銀製フィラー等の導電性の粒子を含有させたシリコーン系等の導電性接着剤46を介して接合固定されている。
【0025】
また、電極部40,40は、例えば図2に示されるように、パッケージ37内を引きまわれて、外部に露出した外側底面37fに形成されている実装端子部42,42と接続されている。このようにして、圧電振動片20は、実装端子部42,42、電極部40,40、引出し電極24a,24bを介して、駆動電圧を供給されている。
【0026】
ここで、パッケージ37の内側底面37aは、図2に示すように、圧電振動片20の固定端20a側で低く、固定端20aと反対側20cで高くなる傾斜面を有している。すなわち、内側底面37aは、パッケージ37の圧電振動片20が接合される電極部40の位置が最も低くなるようにして、水平面Hに対して所定の角度θをもって傾斜している。この角度θは、後述する圧電振動片20を傾斜面上で滑らし位置決め効果を発揮するという観点から30度以上、より望ましくは45度以上がよい。また、パッケージ37の低背化の観点から角度θは60度以下がよい。
【0027】
そして、この傾斜面は圧電振動片20の振動領域を避けるように設けられている。具体的には、本実施形態における内側底面37aは、少なくとも、圧電振動片20の励振電極22aが設けられた領域と対向する領域を凹部50とし、これにより、圧電振動片20の振動領域である励振電極22aが、内側底面37aに接触しないようになっている。なお、凹部50は、圧電振動片20を傾斜面に沿うように角度をつけて配置できれば、励振電極22aが設けられた領域と対向する領域以外にも形成されてもよいが、本実施形態では、励振電極22aが設けられた領域と対向する部分にのみ形成して、後述するように、各傾斜面の圧電振動片20を位置決めるという作用効果を阻害しないようにしている。
【0028】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、内側壁面のうち、長手方向に沿った内側壁面37c,37dは、圧電振動片20を配置すべき位置に向かって傾斜している。すなわち、内側壁面37c,37dは、幅方向に関して、それぞれ下方に向かって、除々に内部空間S1の幅が狭くなるように形成されている。このため、例えば、図3の点線で示すように、圧電振動片20の一部が、長手方向に沿った内側壁面37d上に載置されても、傾斜した壁面をすべり落ちるようにして、圧電振動片20を配置すべき位置に位置決めされる。
【0029】
本実施形態は以上のように構成されており、次に、圧電デバイス10の製造方法について説明する。
図4は、圧電デバイス10の製造工程の一例を簡単に説明するためのフローチャートである。
図において、先ず、パッケージと、圧電振動片と、蓋体とを、別々に用意する。すなわち、パッケージ、圧電振動片、及び蓋体については、図1ないし図3で既に説明したものを、それぞれ予め形成しておく。
【0030】
この際、パッケージ37については、圧電振動片を収容するための内部空間S1を備えたパッケージを形成するパッケージ形成工程(ST1)において、以下の工程を採用する。
まず、図5に示すように、一方の金型60と他方の金型62とを合わせて、図示しないゲートから、合わせた金型のキャビティ64内に溶融樹脂を注入することによって、内側底面37aに、圧電振動片の固定端側で低く、固定端と反対側で高くなり、かつ、圧電振動片の振動領域を避けるように凹部50を有する傾斜面を形成する(図4のST1−1)。ここで、樹脂としては、例えば、エポキシ系の樹脂を用いることができる。また、成型後に、パッケージ37の内部空間S1に露出することになる内面には、ポリイミド等のコーティングを施して、パッケージ37の気密性を向上させている。
【0031】
次に、図6に示すように、ウエットエッチングによる粗化を行う(図4のST1−2)。すなわち、以降で説明する各電極を形成する領域以外の領域にマスクを施し、これを酸化剤が含有された液に浸漬して、各電極を形成しようとする領域(図6の平行斜線で示した部分)の表面のみをあらす。
次いで、粗化した表面の部分に、還元作用を利用したメッキ溶液を使った、所謂無電解メッキ法を用いて、Cu(銅)メッキ66を施し(図4のST1−3)、その後、図7に示すように、Cu(銅)メッキ66の上に、Ni(ニッケル)メッキ、表面にAu(金)メッキを施して電極部40及び実装端子部42を形成する(図4のST1−4)。このように表面を粗化し、無電解メッキ法を利用することで、樹脂パッケージに確実に電極を形成することができる。
【0032】
そして、内側底面37aに圧電振動片20を接合するマウント工程を行う(図4のST2)。ここで、マウント工程においては、圧電振動片20を載置した後に、内側底面37aと圧電振動片20とを接続するための接着剤を塗布するようにしている。
すなわち、まず、図8に示すように、圧電振動片20を内側底面37a上に載置する(図4のST2−1)。この際、内側底面37aは傾斜面を有するため、圧電振動片20は、所定の位置に配置されかなった場合であっても、図8の矢印の方向にすべり落ちて、所定の位置に載置されることになる。なお、凹部50は、本実施形態では、励振電極22aが設けられた領域と対向する部分にのみ形成して、図8に示すように、凹部50の内面50aに、圧電振動片20の固定端20a側の端面20bが引っかかることを有効に防止し、傾斜面の圧電振動片の位置決め効果を阻害しないようにしている。
【0033】
その後、図9に示すように、圧電振動片20の固定端20aの上から、例えばシリコーン系の導電性接着剤46を塗布する(図4のST2−2)。すなわち、引出し電極24a,24bの上から、各電極どうしが短絡しないようにして、導電性接着剤46を塗布する。このように、マウント工程(ST2)では、圧電振動片20を載置した後に、導電性接着剤46を塗布するようにしている。このため、圧電振動片20が固定端20aと反対側にずれて載置されても、圧電振動片20を所定の位置に位置決めするという傾斜面の機能が、接着剤によって阻害されることなく、有効に発揮できる。
【0034】
そして、図10に示すように、例えば真空チャンバー内(図示せず)にて、上側の開口端のロウ材36を利用して蓋体34を固定し(ST3)、内部空間S1を気密に封止し、圧電デバイス10を完成させる。
【0035】
本発明の第1の実施形態は以上のように構成され、パッケージ37は、内部空間S1に露出した内側底面37aが傾斜面を有しているため、圧電振動片20は、水平線から所定の角度をもってパッケージ37に載置される。したがって、圧電振動片20の長さを、同じパッケージに水平に載置した場合の長さに比べて1/cosθ倍にすることができ、1/cosθ倍に長くなった分、CI値を下げることができる。
また、この内側底面37aに形成された傾斜面は、圧電振動片20の振動領域を避けるように設けられているため、圧電振動片20の振動領域が内側底面37aに触れてしまうことを回避して、傾斜面が圧電振動片20の振動特性に及ぼす悪影響を排除している。
さらに、傾斜面は、圧電振動片20の固定端20a側で低く、固定端20aと反対側で高くなっている。このため、圧電振動片20は、内側底面37aに載置される際、固定端20aと反対側にずれて載置されても、傾斜面を固定端20a側にすべり落ちるようにして位置決めされる。
【0036】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイス12の概略断面図である。
図11において、図1ないし図10の圧電デバイス10と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。なお、図11は、理解の便宜上、励振電極および引出し電極を省略して作図している。
本第2の実施形態に係る圧電デバイス12が第1の実施形態と主に異なるのは、発振回路素子を搭載することで、圧電発振器とされている点である。
【0037】
すなわち、パッケージ37は、少なくとも圧電振動片20を発振させる回路を備えた発振回路素子(以下、「IC」という。)52を収容するための素子収容空間S2が形成されている。この素子収容空間S2は、圧電振動片20の固定端20aと反対側であって、内側底面37aと外部に露出した外側底面37gとの間の内部領域に形成されている。すなわち、この内部領域は、内側底面37aを傾斜させたために、他の箇所よりも大きな領域を有している。
【0038】
具体的には、パッケージ37は、上側のパッケージ37−1と下側のパッケージ37−2とを、それぞれ樹脂から形成し、その後、パッケージ37−1とパッケージ37−2とを接合することで形成されている。
上側のパッケージ37−1は、圧電振動片20を接合固定したパッケージであり、圧電振動片20の固定端20aと反対側であって、内側底面37aと外部に露出した外側底面37gとの間に、下側に開口した凹部54を有している。この凹部54が素子収容空間S2の一部を形成するようになっている。
【0039】
下側のパッケージ37−2は、IC52を搭載するためのパッケージであって、図11、及び上側のパッケージ37−1と接合する前の下側パッケージ37−2の平面図である図12に示すように、複数の段部56a,56bが形成された段付き凹部56を有している。
一方の段部56aには、ボンディングワイヤと接続された電極パターン58,58が形成されており、この電極パターン58,58は、パッケージ37内を引き回されて、圧電振動片20と電気的に接続された外部端子部42a(第1の実施形態に係る圧電振動子では実装端子42であった部分)と接続されて、圧電振動片20との接続用の端子となっている。
また、他方の段部56bには、ボンディングワイヤと接続された電極パターン59,59が形成されており、これら電極パターン59,59は実装端子部42,42と電気的に接続されている。なお、一方の段部56aに形成された電極57,57は制御用の端子となる。
【0040】
本発明の第2の実施形態は以上のように構成されており、第1の実施形態と同様の作用効果を発揮する。さらに、パッケージ37−1は内側底面37aが傾斜面を有しているため、固定端20aと反対側であって、内側底面37aと外部に露出した外側底面37gとの間の内部領域は、他の領域よりも大きな領域となっている。そして、この大きな内部領域を、IC52を収容する素子収容空間S2とすることで有効に活用し、小型の圧電発振器を形成することができる。
また、パッケージ37は、圧電振動片20を接合固定したパッケージ37−1と、IC52を搭載したパッケージ37−2とを別々に形成してから、接合するようにしている。このため、パッケージ37−1とパッケージ37−2とを接合固定する前に、パッケージ37−1側の検査と、パッケージ37−2側の検査とを、それぞれ個別に行うことができる。したがって、圧電振動片20等あるいはIC52等のいずれか一方のみが不良品であった場合における圧電発振器全体の廃棄が不要となり、製造コストを安価にすることできる。
【0041】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
例えば、蓋体について、その裏面側に開口部を有するように凹状を形成し、この蓋体の開口端面を板状のものに接合することで内部空間を形成するようにしたパッケージを用い、前記板状の内部空間に露出した面を傾斜面とするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の圧電デバイスの一実施形態を示す概略分解斜視図。
【図2】図1の圧電デバイスを組み合わせてA−A線の位置で切断した際の概略断面図。
【図3】図1の圧電デバイスを組み合わせてB−B線の位置で切断した際の概略端面図。
【図4】圧電デバイスの製造工程の一例を簡単に説明するためのフローチャート。
【図5】図4のST1−1を説明するための概略断面図。
【図6】図4のST1−2、及びST1−3を説明するための概略断面図。
【図7】図4のST1−4を説明するための概略断面図。
【図8】図4のST2−1を説明するための概略断面図。
【図9】図4のST2−2を説明するための概略断面図。
【図10】図4のST3を説明するための概略断面図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの概略断面図。
【図12】上側のパッケージと接合する前の下側パッケージの平面図。
【図13】従来の圧電デバイスの概略断面図。
【符号の説明】
【0043】
10,12・・・圧電デバイス、20・・・圧電振動片、20a・・・固定端、37・・・パッケージ、37a・・・内側底面、37b,37c,37d,37e・・・内側壁面、S1・・・内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片を収容するための内部空間を備えた圧電デバイス用のパッケージであって、
前記内部空間に露出した内側底面は、前記圧電振動片の固定端側で低く、前記固定端と反対側で高くなる傾斜面を有しており、この傾斜面は前記圧電振動片の振動領域を避けるように設けられている
ことを特徴とする圧電デバイス用のパッケージ。
【請求項2】
前記内部空間に露出し、長手方向に沿った内側壁面は、前記圧電振動片を配置すべき位置に向かって傾斜している
ことを特徴とする、請求項1に記載の圧電デバイス用のパッケージ。
【請求項3】
前記固定端と反対側であって、前記内側底面と外部に露出した外側底面との間の内部領域には、少なくとも前記圧電振動片を発振させる回路を備えた発振回路素子を収容するための素子収容空間が形成されている
ことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の圧電デバイス用のパッケージ。
【請求項4】
圧電振動片と、この圧電振動片を収容するための内部空間を有するパッケージとを備えた圧電デバイスであって、
前記パッケージの前記内部空間に露出した内側底面は、前記圧電振動片の固定端側で低く、前記固定端と反対側で高くなる傾斜面を有しており、この傾斜面は、前記圧電振動片の振動領域を避けるように設けられている
ことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項5】
前記パッケージの前記内部空間に露出し、長手方向に沿った内側壁面は、前記圧電振動片を配置すべき位置に向かって傾斜している
ことを特徴とする、請求項4に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記パッケージは、前記固定端と反対側であって、前記内側底面と外部に露出した外側底面との間の内部領域に、前記圧電振動片を発振させる回路を備えた発振回路素子が配置されている
ことを特徴とする、請求項4または5のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項7】
圧電振動片を収容するための内部空間を備えたパッケージを形成するパッケージ形成工程と、
前記内部空間に露出する内側底面に前記圧電振動片を接合するマウント工程と、
前記パッケージの開口部を蓋体で封止する蓋封止工程と
を備え、
前記パッケージ形成工程では、金型のキャビティ内に樹脂を注入することで、前記内側底面に、前記圧電振動片の固定端側で低く、前記固定端と反対側で高くなり、かつ、前記圧電振動片の振動領域を避けるようにした傾斜面を形成した
ことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記マウント工程では、前記圧電振動片を載置した後に、前記内側底面と前記圧電振動片とを接続するための接着剤を塗布するようにした
ことを特徴とする請求項7に記載の圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−14038(P2006−14038A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189868(P2004−189868)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】