説明

圧電体振動子

【課題】広い範囲で弾性率を変動させることができる圧電体振動子を提供する。
【解決手段】圧電体振動子は、駆動交流電圧VDが印加される駆動電極17と、調整交流電圧VAが印加される調整電極21とを備える。駆動交流電圧VDの振幅と、調整交流電圧VAの振幅との振幅比が調整され、調整に基づいて、駆動交流電圧VDの印加によって生じた圧電体振動子の駆動振動による歪みは、調整交流電圧VAの印加によって生じた圧電体振動子の調整振動によって増減せしめられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体振動子に関し、特に圧電体振動子の弾性率を調整する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体振動子の共振周波数の変動を、弾性率を変化させることにより調整する装置が提案されている。特許文献1は、圧電素子の電極館のインピーダンスを変化させること(電極の開放と短絡の間の変化)により、圧電体振動子の弾性率(スチフネス)を変化させる装置を開示する。
【特許文献1】特開平07−15984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の装置は、電極の開放と短絡の間の変化に基づく弾性率の変動は可能であるが、それ以上に広い範囲の弾性率変動は出来ない。
【0004】
したがって本発明の目的は、広い範囲で弾性率を変動させることができる圧電体振動子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る圧電体振動子は、駆動交流電圧が印加される駆動電極と、調整交流電圧が印加される調整電極とを備えた圧電体振動子であって、駆動交流電圧の振幅と、調整交流電圧の振幅との振幅比が調整され、調整に基づいて、駆動交流電圧の印加によって生じた圧電体振動子の駆動振動による歪みが、調整交流電圧の印加によって生じた圧電体振動子の調整振動によって増減せしめられる。
【0006】
好ましくは、駆動振動による歪み量を検出する検出電極をさらに備え、検出電極で検出された歪み量に基づいて、振幅比の調整が行われる。
【0007】
さらに好ましくは、駆動電極は、検出電極と調整電極の間に配置される。
【0008】
また、好ましくは、屈曲モードに関する振動を駆動するための屈曲モード駆動交流電圧が印加される第1、第2屈曲モード駆動電極をさらに備え、駆動交流電圧に基づく振動は、伸縮モードに関する振動であり、第1屈曲モード駆動電極、検出電極、駆動電極、前記調整電極、第2屈曲モード駆動電極の順に並べて配置される。
【0009】
また、好ましくは、検出電極で検出された歪み量に基づく検出交流電圧と、駆動交流電圧とに基づいて、駆動交流電圧と調整交流電圧の位相差が調整される。
【0010】
さらに好ましくは、伸縮モードに関する振動を駆動するための伸縮モード駆動交流電圧が印加される伸縮モード駆動電極をさらに備え、駆動交流電圧に基づく振動は、屈曲モードに関する振動である。
【0011】
また、好ましくは、調整交流電圧の振幅は、駆動交流電圧の振幅よりも小さい。
【0012】
さらに好ましくは、調整交流電圧の振幅は、駆動交流電圧の振幅の10分の1〜20分の1である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、広い範囲で弾性率を変動させることができる圧電体振動子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態について、図を用いて説明する。第1実施形態における超音波アクチュエータ1は、交流電源11、第1増幅器13、圧電素子15、駆動電極17、検出電極19、調整電極21、検出器23、第2増幅器27を備える(図1参照)。交流電源11は、周波数fの駆動信号を発振する。駆動信号は、第1増幅器13で増幅され、駆動交流電圧VDとして、駆動電極17に印加される。
【0015】
圧電素子15、駆動電極17、検出電極19、及び調整電極21とで圧電体振動子2が構成される。駆動電極17、検出電極19、及び調整電極21は、圧電素子15に取り付けられる。駆動電極17は、検出電極19と調整電極21との間に配置される。検出電極19と調整電極21とを離れた位置関係に配置するのは、調整電極21に印加された電圧に基づく振動(後述する調整振動OA)が、圧電体振動子2の振動(駆動振動OD)に影響を及ぼす前に、検出電極19で検出される振動に影響を及ぼすのを防ぐためである。
【0016】
検出電極19は、検出器23と接続される。検出器23は、検出電極19の歪み量から電圧を検出する。検出された電圧(検出交流電圧VDE)は、第2増幅器27で増幅(振幅調整)された後、調整電極21に印加される(調整交流電圧VAの印加)。
【0017】
圧電体振動子2は、駆動電極17に印加された駆動交流電圧VDに基づいて、圧電体振動子2の全体の歪みが同位相となるような伸縮モード(縦モード)で振動せしめられる。駆動電極17に印加された駆動交流電圧VDに基づいて、圧電体振動子2が伸縮モードで振動すると(駆動振動OD)、駆動振動ODに基づいて、同位相の振動が検出電極19においても生じ、振動に基づく歪み量が検出器23で検出される。検出器23で検出された歪み量が変換された電圧(検出交流電圧VDE)が、第2増幅器27で増幅され、調整電極21に印加される(調整交流電圧VA)。調整交流電圧VAの振幅は駆動交流電圧VDの振幅の10分の1〜20分の1程度に設定されており、調整電極21に印加された調整交流電圧VAに基づいて、圧電体振動子2は、伸縮モードで振動せしめられる(調整振動OA)。駆動振動ODと、調整振動OAとは同位相(駆動交流電圧VDと調整交流電圧VAとは同位相)のため、互いに振動を打ち消しあい、圧電体振動子2の歪み量は少なくなる。そのため、調整電極21への調整交流電圧VAの印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の弾性率(スチフネス)が上がる(圧電体振動子2が伸縮しにくくなる)。
【0018】
弾性率の上がり具合は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率を調整する(駆動交流電圧VDの振幅と、調整交流電圧VAの振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。増幅率は、駆動交流電圧VDによる駆動に悪影響が生じないように、調整交流電圧VAの振幅が駆動交流電圧VDの振幅より小さく(例えば、10分の1〜20分の1程度)なるように調整することが望ましい。
【0019】
弾性率を下げる場合には、第2増幅器27において、調整電極21に印加する調整交流電圧VAの位相を反転させる。この場合、調整電極21には、駆動交流電圧VDと逆位相の調整交流電圧VAの印加が行われる。調整電極21に印加された調整交流電圧VAに基づいて、圧電体振動子2は、伸縮モードで振動せしめられる(調整振動OA)。駆動振動ODと、調整振動OAとは逆位相(駆動交流電圧VDと調整交流電圧VAは逆位相)のため、互いの振動が足し合わされ、圧電体振動子2の歪み量は多くなる。そのため、調整電極21への調整交流電圧VAの印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の弾性率が下がる(圧電体振動子2が伸縮しやすくなる)。
【0020】
弾性率の下がり具合は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率を調整する(駆動交流電圧VDの振幅と、調整交流電圧VAの振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。
【0021】
圧電体振動子2の弾性率が変わると、圧電体振動子2の共振周波数が変化する。そのため、圧電体振動子2の弾性率を調整することにより、圧電体振動子2の共振周波数を調整することが可能になる。圧電体振動子2は、駆動周波数と共振周波数が一致するときに最大効率で駆動させることが可能であるが、圧電体振動子2の共振周波数は、温度変化などに基づいて変動する。第1実施形態では、共振周波数が、変動した場合であっても、弾性率を調整することにより、共振周波数を駆動周波数と一致するように調整することが可能である。
【0022】
また、弾性率の調整範囲は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率の調整に基づくので、調整電極の回路のインピーダンスの調整に基づく場合に比べて、広い範囲で調整が可能である。
【0023】
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態は、縦振動のような伸縮モードの振動で、圧電体振動子2の全体の歪みが同位相の場合の弾性率調整の形態について説明したが、第2実施形態では、屈曲モード振動のように、圧電体振動子2の歪みが全体で同位相にならない場合の弾性率調整の形態について説明する。
【0024】
第2実施形態における超音波アクチュエータ1は、交流電源11、第1増幅器13、圧電素子15、駆動電極17、検出電極19、調整電極21、検出器23、位相比較器24、移相器25、第2増幅器27を備える(図2参照)。交流電源11は、周波数fの駆動信号を発振する。駆動信号は、第1増幅器13で増幅され、駆動交流電圧VDとして、駆動電極17、位相比較器24、及び移相器25に印加される。
【0025】
圧電体振動子2の構成(圧電素子15、駆動電極17、検出電極19、及び調整電極21)は、第1実施形態と同様である。
【0026】
検出電極19は、検出器23と接続される。検出器23は、検出電極の歪み量から電圧を検出する。検出された電圧は、位相比較器24に印加される(検出交流電圧VDE)。位相比較器24は、交流電源11からの駆動交流電圧VDと、検出器23で検出された検出交流電圧VDEとの位相を比較し、駆動交流電圧VDに対する検出交流電圧VDEの位相ずれ量θを移相器25に出力する。移相器25は、駆動交流電圧VDの位相を位相ずれ量θだけずらして第2増幅器27に出力する。第2増幅器27は、駆動交流電圧VDの位相が位相ずれ量θだけずらされた電圧を増幅(振幅調整)し、調整電極21に印加する(調整交流電圧VA)。
【0027】
圧電体振動子2は、駆動電極17に印加された駆動交流電圧VDに基づいて、圧電体振動子2が振動せしめられる。振動モードは、全体の歪みが同位相になるような伸縮モードに限らず、駆動電極17における振動の位相と、検出電極19における振動の位相とが異なる振動(例えば屈曲モード)であってもよい。駆動電極17に印加された駆動交流電圧VDに基づいて、圧電体振動子2が振動すると(駆動振動OD)、駆動振動ODに基づいて、振動が検出電極19においても生じ、振動に基づく歪み量が検出器23で検出される。検出器23で検出された歪み量が変換された電圧(検出交流電圧VDE)の位相が、位相比較器24で、駆動交流電圧VDの位相と比較される(位相ずれ量θ)。位相比較器24で求められた位相ずれ量θに基づいて、移相器25で、駆動交流電圧VDがθだけ位相がずらされ、第2増幅器27で増幅され、調整電極21に印加される(調整交流電圧VA)。
【0028】
調整電極21に印加された調整交流電圧VAに基づいて、圧電体振動子2は、振動せしめられる(調整振動OA)。駆動振動ODと、調整振動OAとは、互いに振動を打ち消しあい、圧電体振動子2の歪み量は少なくなる。そのため、調整電極21への調整交流電圧VAの印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の弾性率が上がる(圧電体振動子2が変形しにくくなる)。
【0029】
具体的には、駆動交流電圧VDの位相が、検出交流電圧VDEに比べてθだけ進んでいる場合は、移相器25は、駆動交流電圧VDの位相をθだけ進める。例えば、駆動交流電圧VDが振幅A、駆動周波数fの正弦波:Asin(2πft)を駆動電極17に印加する場合を説明する。駆動交流電圧VDの位相が、検出交流電圧VDEの位相に比べて位相ずれ量θだけ進んでいる場合は、検出電極19で検出される歪み量に基づく検出交流電圧VDEがAsin(2πft+θ)となる(AはAより小さい振幅量)。位相比較器24は、駆動交流電圧VD:Asin(2πft)と、検出交流電圧VDE:Asin(2πft+θ)とを比較して位相ずれ量θを検出する。移相器25は、駆動交流電圧VD:Asin(2πft)の位相を位相ずれ量θだけ進めた信号:Asin(2πft−θ)を出力し、第2増幅器27で増幅されて、Asin(2πft−θ)の調整交流電圧VAが調整電極21に印加される(Aは、第2増幅器27で増幅された後の振幅)。
【0030】
弾性率の上がり具合は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率を調整する(駆動交流電圧VDの振幅と、調整交流電圧VAの振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。増幅率は、駆動交流電圧VDによる駆動に悪影響が生じないように、調整交流電圧VAの振幅が駆動交流電圧VDの振幅の10分の1〜20分の1程度となるように調整することが望ましい。
【0031】
弾性率を下げる場合には、第2増幅器27において、調整電極21に印加する調整交流電圧VDの位相を反転させる。この場合、調整電極21には、交流電源11からの駆動交流電圧VDと位相ずれ量θだけ位相がずれ、且つ位相が反転された調整交流電圧VAの印加が行われる。調整電極21に印加された調整交流電圧VAに基づいて、圧電体振動子2は、振動せしめられる(調整振動OA)。駆動振動ODと、調整OA振動とは、互いの振動が足し合わされ、圧電体振動子2の歪み量は多くなる。そのため、調整電極21への調整交流電圧VA印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の弾性率が下がる(圧電体振動子2が変形しやすくなる)。
【0032】
弾性率の下がり具合は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率を調整する(駆動交流電圧VDの振幅と、調整交流電圧VAの振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。
【0033】
具体的には、駆動交流電圧VDの位相が、検出交流電圧VDEに比べてθだけ進んでいる場合は、移相器25は、駆動交流電圧VDの位相をθだけ進める。例えば、駆動交流電圧VDが振幅A、駆動周波数fの正弦波:Asin(2πft)を駆動電極17に印加する場合を説明する。駆動交流電圧VDの位相が、検出交流電圧VDEの位相に比べて位相ずれ量θだけ進んでいる場合は、検出電極19で検出される歪み量に基づく検出交流電圧VDEがAsin(2πft+θ)となる(AはAより小さい振幅量)。位相比較器24は、駆動交流電圧VD:Asin(2πft)と、検出交流電圧VDE:Asin(2πft+θ)とを比較して位相ずれ量θを検出する。移相器25は、駆動交流電圧VD:Asin(2πft)の位相を位相ずれ量θだけ進めた信号:Asin(2πft−θ)を出力し、第2増幅器27で増幅及び位相反転されて、−Asin(2πft−θ)の調整交流電圧VAが調整電極21に印加される(Aは、第2増幅器27で増幅された後の振幅)。
【0034】
第2実施形態では、圧電体振動子2全体で同位相とならない振動をさせた場合にも、弾性率調整が可能である。
【0035】
次に、第3実施形態について説明する。第2実施形態は、検出電極19により歪み量を検出し、これに基づいて調整電極21に印加する調整交流電圧VAを調整する形態を説明したが、第3実施形態では、検出電極19による歪み量検出は行われない形態について説明する。
【0036】
第3実施形態における超音波アクチュエータ1は、交流電源11、第1増幅器13、圧電素子15、駆動電極17、調整電極21、移相器25、第2増幅器27を備える(図3参照)。交流電源11は、周波数fの駆動信号を発振する。駆動信号は、第1増幅器13で増幅され、駆動交流電圧VDとして、駆動電極17に印加される。また、移相器25に印加される。
【0037】
圧電素子15、駆動電極17、及び調整電極21とで圧電体振動子2が構成される。駆動電極17、及び調整電極21は、圧電素子15に取り付けられる。
【0038】
移相器25は、交流電源11で発振された駆動信号の位相を位相ずれ量θだけずらして第2増幅器27に出力する。第2増幅器27は、駆動信号の位相が位相ずれ量θだけずらされた信号を増幅(振幅調整)し、調整交流電圧VAとして調整電極21に印加する。調整交流電圧VAと、駆動交流電圧VDとは、位相ずれ量θだけ位相がずれた関係にある。第3実施形態における位相ずれ量θは、予め測定または計算により求められた駆動交流電圧VDによる振動(駆動振動OD)の圧電体振動子2における伝達特性に基づいて算出された、駆動電極17における振動と、調整電極21における振動の位相ずれである。
【0039】
圧電体振動子2は、駆動電極17に印加された駆動交流電圧VDに基づいて、圧電体振動子2が振動せしめられる。振動モードは、全体の歪みが同位相になるような伸縮モードに限らず、駆動電極17における振動の位相と、検出電極19における振動の位相とが異なる振動であってもよい。駆動電極17に印加された駆動交流電圧に基づいて、圧電体振動子2が振動せしめられる(駆動振動OD)。
【0040】
移相器25で、交流電源11で発振された駆動信号がθだけ位相がずらされ、第2増幅器27で増幅され、調整電極21に印加される(調整交流電圧VA)。調整電極21に印加された調整交流電圧VAに基づいて、圧電体振動子2は、振動せしめられる(調整振動OA)。
【0041】
駆動振動ODと、調整振動OAとは、互いに振動を打ち消しあい、圧電体振動子2の歪み量は少なくなる。そのため、調整電極21への調整交流電圧OAの印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の弾性率が上がる(圧電体振動子2が伸縮しにくくなる)。
【0042】
弾性率の上がり具合は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率を調整する(駆動交流電圧VDの振幅と、調整交流電圧VAの振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。
【0043】
弾性率を下げる場合には、第2増幅器27において、調整電極21に印加する調整交流電圧VAの位相を反転させる。この場合、調整電極21には、交流電源11からの駆動交流電圧VDと位相ずれ量θだけ位相がずれ、且つ位相が反転された調整交流電圧VAの印加が行われる。調整電極21に印加された調整交流電圧VAに基づいて、圧電体振動子2は、振動せしめられる(調整振動OA)。駆動振動ODと、調整振動OAとは、互いの振動が足し合わされ、圧電体振動子2の歪み量は多くなる。そのため、調整電極21への調整交流電圧VAの印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の弾性率が下がる(圧電体振動子2が伸縮しやすくなる)。
【0044】
弾性率の下がり具合は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率を調整する(駆動交流電圧VDの振幅と、調整交流電圧VAの振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。
【0045】
第3実施形態では、歪み量の検出にかかる部位(検出電極、位相比較器)を省略することが出来るので、これらを有する構成に比べて超音波アクチュエータ1の構成を簡素化することが可能になる。第3実施形態における超音波アクチュエータ1は、位相ずれ量が予め算出可能な超音波アクチュエータで有効な形態である。
【0046】
次に、第4実施形態について説明する。第1実施形態は、1つの振動モード(伸縮モード)で振動させる形態について説明したが、第4実施形態は、2つの振動モード(例えば伸縮モード、屈曲モード)で振動するリニアモータで、伸縮モードの共振周波数を調整する形態について説明する。
【0047】
第4実施形態における超音波アクチュエータ1は、交流電源11、第1増幅器13、圧電素子15、伸縮モード駆動電極17S、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18b、検出電極19、調整電極21、検出器23、第2増幅器27を備える(図4参照)。交流電源11は、周波数fの駆動信号を発振する。駆動信号は、第1増幅器13で増幅され、伸縮モード駆動交流電圧VSDとして、伸縮モード駆動電極17Sに印加される。第4実施形態における第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18bへの第1、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD1、VBD2の印加に関連する回路構成は省略する。
【0048】
圧電素子15、伸縮モード駆動電極17S、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18b、検出電極19、及び調整電極21とで圧電体振動子2が構成される。伸縮モード駆動電極17S、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18b、検出電極19、及び調整電極21は、圧電素子15に取り付けられる。伸縮モード駆動電極17Sは、検出電極19と調整電極21との間に配置される。検出電極19、伸縮モード駆動電極17S、及び調整電極21は、第1屈曲モード駆動電極18aと第2屈曲モード駆動電極18bとの間に配置される。すなわち、第1屈曲モード駆動電極18a、検出電極19、伸縮モード駆動電極17S、調整電極21、第2屈曲モード駆動電極18bの順に並べられる。伸縮モード駆動電極17Sを、検出電極19と調整電極21とを離れた位置関係に配置するのは、調整電極21に印加された伸縮モード調整電圧VSAに基づく振動(後述する伸縮モード調整振動OSA)が、圧電体振動子2の振動(伸縮モード駆動振動OSD)に影響を及ぼす前に、検出電極19で検出される振動に影響を及ぼすのを防ぐためである。
【0049】
検出電極19は、検出器23と接続される。検出器23は、検出電極の歪み量から電圧を検出する。検出された電圧(検出交流電圧VDE)は、第2増幅器27で増幅(振幅調整)された後、調整電極21に印加される(伸縮モード調整交流電圧VSAの印加)。
【0050】
圧電体振動子2は、伸縮モード駆動電極17Sに印加された伸縮モード駆動交流電圧VSDに基づいて、圧電体振動子2の全体の歪みが同位相となるような伸縮モードで振動せしめられる。また、圧電体振動子2は、第1屈曲モード駆動電極18a、第2屈曲モード駆動電極18bに印加された交流電圧に基づいて、屈曲モードで振動せしめられる。伸縮モード駆動電極17Sに印加される伸縮モード駆動交流電圧VSDの駆動周波数周波数fと、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18bに印加される第1、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD1、VBD2の駆動周波数とは同じ値に設定される。
【0051】
伸縮モード駆動電極17Sに印加された伸縮モード駆動交流電圧VSDに基づいて、圧電体振動子2が伸縮モードで振動すると(伸縮モード駆動振動OSD)、伸縮モード駆動振動OSDに基づいて、同位相の振動が検出電極19においても生じ、振動に基づく歪み量が検出器23で検出される。検出器23で検出された歪み量が変換された電圧が、第2増幅器27で増幅され、調整電極21に印加される(伸縮モード調整交流電圧VSA)。調整電極21に印加された伸縮モード調整交流電圧VSAに基づいて、圧電体振動子2は、伸縮モードで振動せしめられる(伸縮モード調整振動OSA)。伸縮モード駆動振動OSDと、伸縮モード調整振動OSAとは同位相(伸縮モード駆動交流電圧VSDと伸縮モード調整交流電圧VSAとは同位相)のため、互いに振動を打ち消しあい、圧電体振動子2の歪み量は少なくなる。そのため、調整電極21への伸縮モード調整交流電圧VSAの印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の伸縮モードに関する弾性率(スチフネス)が上がる(圧電体振動子2が伸縮しにくくなる)。
【0052】
伸縮モードに関する弾性率の上がり具合は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率を調整する(伸縮モード駆動交流電圧VSDの振幅と、伸縮モード調整交流電圧VSAの振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。
【0053】
伸縮モードに関する弾性率を下げる場合には、第2増幅器27において、調整電極21に印加する伸縮モード調整交流電圧VSAの位相を反転させる。この場合、調整電極21には、伸縮モード駆動交流電圧VSDと逆位相の伸縮モード調整交流電圧VSA印加が行われる。調整電極21に印加された伸縮モード調整交流電圧VSAに基づいて、圧電体振動子2は、伸縮モードで振動せしめられる(伸縮モード調整振動OSA)。伸縮モード駆動振動OSDと、伸縮モード調整振動OSAとは逆位相(伸縮モード駆動交流電圧VSDと伸縮モード調整交流電圧VSAとは逆位相)のため、互いの振動が足し合わされ、圧電体振動子2の歪み量は多くなる。そのため、調整電極21への伸縮モード調整交流電圧VSAの印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の伸縮モードに関する弾性率が下がる(圧電体振動子2が伸縮しやすくなる)。
【0054】
伸縮モードに関する弾性率の下がり具合は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率を調整する(伸縮モード駆動交流電圧VSDの振幅と、伸縮モード調整交流電圧VSAの振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。
【0055】
なお、検出電極19には、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18bに印加された第1、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD1、VBD2に基づく屈曲モードの振動が生じるが、検出電極19における伸縮モードの振動検出(歪み量検出)への影響は殆どない。
【0056】
圧電体振動子2の弾性率が変わると、圧電体振動子2の共振周波数が変化する。そのため、圧電体振動子2の伸縮モードに関する弾性率を調整することにより、圧電体振動子2の伸縮モード関する共振周波数を調整することが可能になる。圧電体振動子2は、駆動周波数と共振周波数が一致するときに最大効率で駆動させることが可能であるが、圧電体振動子2の共振周波数は、温度変化などに基づいて変動する。第4実施形態では、伸縮モードに関する共振周波数が、変動した場合であっても、伸縮モードに関する弾性率を調整することにより、伸縮モードに関する共振周波数を駆動周波数と一致するように調整することが可能である。
【0057】
また、第4実施形態では、屈曲モードに関する振動も圧電体振動子2に与えられている。上記伸縮モードに関する共振周波数が、弾性率調整によって変動せしめられることにより、伸縮モードに関する共振周波数と屈曲モードに関する共振周波数の差異を調整することも可能になる。
【0058】
また、伸縮モードに関する弾性率の調整範囲は、第1増幅器13、及び第2増幅器27の増幅率の調整に基づくので、調整電極の回路のインピーダンスの調整に基づく場合に比べて、広い範囲で調整が可能である。
【0059】
また、第4実施形態にかかる圧電体振動子2の電極配置では、電極が配置された方向(図4上の横方向)の伸縮モードに関する弾性率のバランスはアンバランスになる。そのため、元々伸縮モードに関する弾性率のバランスがとれていない(アンバランスな)圧電体振動子に対して、アンバランスを打ち消すように第4実施形態にかかる圧電体振動子2のような電極配置を行うと、伸縮モードに関する弾性率についてバランスのとれた圧電体振動子を構成することが可能になる。
【0060】
次に、第5実施形態について説明する。第2実施形態は、1つの振動モード(屈曲モード)で振動させる形態について説明したが、第5実施形態は、2つの振動モード(例えば伸縮モード、屈曲モード)で振動するリニアモータで、屈曲モードの共振周波数を調整する形態について説明する。
【0061】
第5実施形態における超音波アクチュエータ1は、第1、第2交流電源11a、11b、第1、第3増幅器13a、13b、圧電素子15、伸縮モード駆動電極17S、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18b、第1、第2検出電極19a、19b、第1、第2調整電極21a、21b、第1、第2検出器23a、23b、第1、第2位相比較器24a、24b、第1、第2移相器25a、25b、第2、第4増幅器27a、27bを備える(図5参照)。
【0062】
第1交流電源11aは、第1増幅器13aを介して、周波数fの第1駆動信号を発振する。第1駆動信号は、第1増幅器13aで増幅され、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1として、第1屈曲モード駆動電極18a、第1位相比較器24a、及び第1移相器25aに印加される。第2交流電源11bは、第3増幅器13bを介して、周波数fの第2駆動信号を発振する。第2駆動信号は、第3増幅器13bで増幅され、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2として、第2屈曲モード駆動電極18b、第2位相比較器24b、及び第2移相器25bに印加される。第5実施形態における伸縮モード駆動電極17Sへの伸縮モード駆動交流電圧VSDの印加に関連する回路構成は省略する。
【0063】
圧電素子15、伸縮モード駆動電極17S、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18b、第1、第2検出電極19a、19b、及び第1、第2調整電極21a、21bとで圧電体振動子2が構成される。伸縮モード駆動電極17S、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18b、第1、第2検出電極19a、19b、及び第1、第2調整電極21a、21bは、圧電素子15に取り付けられる。
【0064】
伸縮モード駆動電極17Sは、第1、第2調整電極21a、21bの間に配置される。第1調整電極21a、伸縮モード駆動電極17S、及び第2調整電極21bは、第1屈曲モード駆動電極18aと第2屈曲モード駆動電極18bとの間に配置され、その外側の両端に、第1、第2検出電極19a、19bが配置される。すなわち、第1検出電極19a、第1屈曲モード駆動電極18a、第1調整電極21a、伸縮モード駆動電極17S、第2調整電極21b、第2屈曲モード駆動電極18b、第2検出電極19bの順に並べられる。
【0065】
第1屈曲モード駆動電極18aを、第1検出電極19aと第1調整電極21aとを離れた位置関係に配置するのは、第1調整電極21aに印加された第1屈曲モード調整交流電圧VBA1に基づく振動(後述する第1屈曲モード調整振動OBA1)が、第1屈曲モード駆動電極18aからの圧電体振動子2の振動(第1屈曲モード駆動振動OBD1)に影響を及ぼす前に、第1検出電極19aで検出される振動に影響を及ぼすのを防ぐためである。
【0066】
第2屈曲モード駆動電極18bを、第2検出電極19bと第2調整電極21bとを離れた位置関係に配置するのは、第2調整電極21bに印加された第2屈曲モード調整交流電圧VBA2に基づく振動(後述する第2屈曲モード調整振動OBA2)が、第2屈曲モード駆動電極18bからの圧電体振動子2の振動(第2屈曲モード駆動振動OBD2)に影響を及ぼす前に、第2検出電極19bで検出される振動に影響を及ぼすのを防ぐためである。
【0067】
第1検出電極19aは、第1検出器23aと接続される。第1検出器23aは、第1検出電極19aの歪み量から電圧を検出する。検出された電圧は、第1位相比較器24aに印加される(第1検出交流電圧VDE1)。第1位相比較器24aは、第1交流電源11aからの第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1と、第1検出器23aで検出された第1検出交流電圧VDE1との位相を比較し、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1に対する第1検出交流電圧VDE1の第1位相ずれ量θ1を第1移相器25aに出力する。第1移相器25aは、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相を第1位相ずれ量θ1だけずらして第2増幅器27aに出力する。第2増幅器27aは、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相が第1位相ずれ量θ1だけずらされた電圧を増幅(振幅調整)し、第1屈曲モード調整交流電圧VBA1を第1調整電極21aに印加する。
【0068】
第2検出電極19bは、第2検出器23bと接続される。第2検出器23bは、第2検出電極19bの歪み量から電圧を検出する。検出された電圧は、第2位相比較器24bに印加される(第2検出交流電圧VDE2)。第2位相比較器24bは、第2交流電源11bからの第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2と、第2検出器23bで検出された第2検出交流電圧VDE2との位相を比較し、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2に対する第2検出交流電圧VDE2の第2位相ずれ量θ2を第2移相器25bに出力する。第2移相器25bは、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2の位相を第2位相ずれ量θ2だけずらして第4増幅器27bに出力する。第4増幅器27bは、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2の位相が第2位相ずれ量θ2だけずらされた電圧を増幅(振幅調整)し、第2屈曲モード調整交流電圧VBA2を第2調整電極21bに印加する。
【0069】
圧電体振動子2は、伸縮モード駆動電極17Sに印加された伸縮モード駆動交流電圧VSDに基づいて、圧電体振動子2の全体の歪みが同位相となるような伸縮モードで振動せしめられる。また、圧電体振動子2は、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18bに印加された第1、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD1、VBD2に基づいて、圧電体振動子2が屈曲モードで振動せしめられる。伸縮モード駆動電極17Sに印加される伸縮モード駆動交流電圧VSDの駆動周波数周波数と、第1、第2屈曲モード駆動電極18a、18bに印加される第1、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD1、VBD2の駆動周波数fとは同じ値に設定される。
【0070】
第1屈曲モード駆動電極18aに印加された第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1に基づいて、圧電体振動子2が振動すると(第1屈曲モード駆動振動OBD1)、第1屈曲モード駆動振動OBD1に基づいて、振動が第1検出電極19aにおいても生じ、振動に基づく歪み量が第1検出器23aで検出される。第1検出器23aで検出された歪み量が変換された電圧(第1検出交流電圧VDE1)の位相が、第1位相比較器24aで、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相と比較される(第1位相ずれ量θ1)。第1位相比較器24aで求められた第1位相ずれ量θ1に基づいて、第1移相器25aで、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1がθ1だけ位相がずらされ、第2増幅器27aで増幅され、第1調整電極21aに印加される(第1屈曲モード調整交流電圧VBA1)。
【0071】
第2屈曲モード駆動電極18aに印加された第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2に基づいて、圧電体振動子2が振動すると(第2屈曲モード駆動振動OBD2)、第2屈曲モード駆動振動OBD2に基づいて、振動が第2検出電極19bにおいても生じ、振動に基づく歪み量が第2検出器23bで検出される。第2検出器23bで検出された歪み量が変換された電圧(第2検出交流電圧VDE2)の位相が、第2位相比較器24bで、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2の位相と比較される(第2位相ずれ量θ2)。第2位相比較器24bで求められた第2位相ずれ量θ2に基づいて、第2移相器25bで、第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2がθ2だけ位相がずらされ、第4増幅器27bで増幅され、第2調整電極21bに印加される(第2屈曲モード調整交流電圧VBA2)。
【0072】
第1調整電極21aに印加された第1屈曲モード調整交流電圧VBA1に基づいて、圧電体振動子2は、振動せしめられる(第1屈曲モード調整振動OBA1)。第2調整電極21bに印加された第2屈曲モード調整交流電圧VBA2に基づいて、圧電体振動子2は、振動せしめられる(第2屈曲モード調整振動OBA2)。第1屈曲モード駆動振動OBD1と、第1屈曲モード調整振動OBA1とは、互いに振動を打ち消しあい、第2屈曲モード駆動振動OBD2と、第2屈曲モード調整振動OBA2とは、互いに振動を打ち消しあい、圧電体振動子2の歪み量(曲げ量)は少なくなる。そのため、第1、第2調整電極21a、21bへの第1、第2屈曲モード調整交流電圧VBA1、VBA2の印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の屈曲モードに関する弾性率が上がる(圧電体振動子2が曲がりにくくなる)。
【0073】
具体的には、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相が、第1検出交流電圧VDE1に比べてθ1だけ進んでいる場合は、第1移相器25aは、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相をθ1だけ進める。例えば、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1が振幅A、駆動周波数fの正弦波:Asin(2πft)を第1屈曲モード駆動電極18aに印加する場合を説明する。第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相が、第1検出交流電圧VDE1の位相に比べて第1位相ずれ量θ1だけ進んでいる場合は、第1検出電極19aで検出される歪み量に基づく第1検出交流電圧VDE1がAsin(2πft+θ1)となる(AはAより小さい振幅量)。第1位相比較器24aは、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1:Asin(2πft)と、第1検出交流電圧VDE1:Asin(2πft+θ1)とを比較して第1位相ずれ量θ1を検出する。第1移相器25aは、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1:Asin(2πft)の位相を第1位相ずれ量θ1だけ進めた信号:Asin(2πft−θ1)を出力し、第2増幅器27で増幅されて、Asin(2πft−θ1)の第1屈曲モード調整交流電圧VBA1が第1調整電極21aに印加される(Aは、第2増幅器27aで増幅された後の振幅)。第2屈曲モード調整交流電圧VBA2の印加についても同様である。
【0074】
屈曲モードに関する弾性率の上がり具合は、第1増幅器13a、第2増幅器27a、第3増幅器13b、及び第4増幅器27bの増幅率を調整する(第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の振幅と、第1屈曲モード調整交流電圧VBA1の振幅との比を調整する、及び第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2の振幅と、第2屈曲モード調整交流電圧VBA2の振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。
【0075】
屈曲モードに関する弾性率を下げる場合には、第2増幅器27aにおいて、第1調整電極21aに印加する第1屈曲モード調整交流電圧VBA1の位相を反転させる。この場合、第1調整電極21aには、第1交流電源11aからの第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1と第1位相ずれ量θ1だけ位相がずれ、且つ位相が反転された第1屈曲モード調整交流電圧VBA1の印加が行われる。第1調整電極21aに印加された第1屈曲モード調整交流電圧VBA1に基づいて、圧電体振動子2は、振動せしめられる(第1屈曲モード調整振動OBA1)。また、第4増幅器27bにおいて、第2調整電極21bに印加する第2屈曲モード調整交流電圧VBA2の位相を反転させる。この場合、第2調整電極21bには、第2交流電源11bからの第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2と第2位相ずれ量θ2だけ位相がずれ、且つ位相が反転された第2屈曲モード調整交流電圧VBA2の印加が行われる。第2調整電極21bに印加された第2屈曲モード調整交流電圧VBA2に基づいて、圧電体振動子2は、振動せしめられる(第2屈曲モード調整振動OBA2)。第1屈曲モード駆動振動OBD1と、第1屈曲モード調整振動OBA1とは、互いの振動が足し合わされ、第2屈曲モード駆動振動OBD2と、第2屈曲モード調整振動OBA2とは、互いの振動が足し合わされ、圧電体振動子2の歪み量(曲げ量)は多くなる。そのため、そのため、第1、第2調整電極21a、21bへの第1、第2屈曲モード調整交流電圧VBA1、VBA2の印加が無い場合に比べて、圧電体振動子2の屈曲モードに関する弾性率が下がる(圧電体振動子2が曲がりやすくなる)。
【0076】
屈曲モードに関する弾性率の下がり具合は、第1増幅器13a、第2増幅器27a、第3増幅器13b、及び第4増幅器27bの増幅率を調整する(第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の振幅と、第1屈曲モード調整交流電圧VBA1の振幅との比を調整する、及び第2屈曲モード駆動交流電圧VBD2の振幅と、第2屈曲モード調整交流電圧VBA2の振幅との比を調整する)ことにより調整可能である。
【0077】
具体的には、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相が、第1検出交流電圧VDE1に比べてθ1だけ進んでいる場合は、第1移相器25aは、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相をθ1だけ進める。例えば、第1屈曲モード駆動交流電圧VBA1が振幅A、駆動周波数fの正弦波:Asin(2πft)を第1屈曲モード駆動電極18aに印加する場合を説明する。第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1の位相が、第1検出交流電圧VDE1の位相に比べて第1位相ずれ量θ1だけ進んでいる場合は、第1検出電極19aで検出される歪み量に基づく第1検出交流電圧VDE1がAsin(2πft+θ1)となる(AはAより小さい振幅量)。第1位相比較器24aは、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1:Asin(2πft)と、第1検出交流電圧VDE1:Asin(2πft+θ1)とを比較して第1位相ずれ量θ1を検出する。第1移相器25aは、第1屈曲モード駆動交流電圧VBD1:Asin(2πft)の位相を第1位相ずれ量θ1だけ進めた信号:Asin(2πft−θ1)を出力し、第2増幅器27aで増幅及び位相反転されて、−Asin(2πft−θ1)の第1屈曲モード調整交流電圧VBA1が第1調整電極21aに印加される(Aは、第2増幅器27aで増幅された後の振幅)。第2屈曲モード調整交流電圧VBA2の印加についても同様である。
【0078】
なお、第1、第2検出電極19a、19bには、伸縮モード駆動電極17Sに印加された伸縮モード駆動交流電圧VSDに基づく伸縮モードの振動が生じるが、第1、第2検出電極19a、19bにおける屈曲モードの振動検出(歪み量検出)への影響は殆どない。
【0079】
圧電体振動子2の弾性率が変わると、圧電体振動子2の共振周波数が変化する。そのため、圧電体振動子2の屈曲モードに関する弾性率を調整することにより、圧電体振動子2の屈曲モード関する共振周波数を調整することが可能になる。圧電体振動子2は、駆動周波数と共振周波数が一致するときに最大効率で駆動させることが可能であるが、圧電体振動子2の共振周波数は、温度変化などに基づいて変動する。第5実施形態では、屈曲モードに関する共振周波数が、変動した場合であっても、屈曲モードに関する弾性率を調整することにより、屈曲モードに関する共振周波数を駆動周波数と一致するように調整することが可能である。
【0080】
また、第4実施形態では、屈曲モードに関する振動も圧電体振動子2に与えられている。上記伸縮モードに関する共振周波数が、弾性率調整によって変動せしめられることにより、伸縮モードに関する共振周波数と屈曲モードに関する共振周波数の差異を調整することも可能になる。
【0081】
また、屈曲モードに関する弾性率の調整範囲は、第1増幅器13a、第2増幅器27a、第3増幅器13b、及び第4増幅器27bの増幅率の調整に基づくので、調整電極の回路のインピーダンスの調整に基づく場合に比べて、広い範囲で調整が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1実施形態における超音波アクチュエータの構成図である。
【図2】第2実施形態における超音波アクチュエータの構成図である。
【図3】第3実施形態における超音波アクチュエータの構成図である。
【図4】第4実施形態における超音波アクチュエータの構成図である。
【図5】第5実施形態における超音波アクチュエータの構成図である。
【符号の説明】
【0083】
1 超音波アクチュエータ
11 交流電源
11a、11b 第1、第2交流電源
13、13a 第1増幅器
13b 第3増幅器
15 圧電素子
17 駆動電極
17S 伸縮モード駆動電極
18a、18b 第1、第2屈曲モード駆動電極
19 検出電極
19a、19b 第1、第2検出電極
21 調整電極
21a、21b 第1、第2調整電極
23 検出器
23a、23b 第1、第2検出器
24 位相比較器
24a、24b 第1、第2位相比較器
25 移相器
25a、25b 第1、第2移相器
27、27a 第2増幅器
27b 第4増幅器
VA 調整交流電圧
VBA1、VBA2 第1、第2屈曲モード調整交流電圧
VBD1、VBD2 第1、第2屈曲モード駆動交流電圧
VD 駆動交流電圧
VDE 検出交流電圧
VDE1、VDE2 第1、第2検出交流電圧
VSA 伸縮モード調整交流電圧
VSD 伸縮モード駆動交流電圧
θ 位相ずれ量
θ1、θ2 第1、第2位相ずれ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動交流電圧が印加される駆動電極と、
調整交流電圧が印加される調整電極とを備えた圧電体振動子であって、
前記駆動交流電圧の振幅と、前記調整交流電圧の振幅との振幅比が調整され、前記調整に基づいて、前記駆動交流電圧の印加によって生じた前記圧電体振動子の駆動振動による歪みが、前記調整交流電圧の印加によって生じた前記圧電体振動子の調整振動によって増減せしめられることを特徴とする圧電体振動子。
【請求項2】
前記駆動振動による歪み量を検出する検出電極をさらに備え、
前記検出電極で検出された歪み量に基づいて、前記振幅比の調整が行われることを特徴とする請求項1に記載の圧電体振動子。
【請求項3】
前記駆動電極は、前記検出電極と前記調整電極の間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の圧電体振動子。
【請求項4】
屈曲モードに関する振動を駆動するための屈曲モード駆動交流電圧が印加される第1、第2屈曲モード駆動電極をさらに備え、
前記駆動交流電圧に基づく振動は、伸縮モードに関する振動であり、
前記第1屈曲モード駆動電極、前記検出電極、前記駆動電極、前記調整電極、前記第2屈曲モード駆動電極の順に並べて配置されることを特徴とする請求項2に記載の圧電体振動子。
【請求項5】
前記検出電極で検出された歪み量に基づく検出交流電圧と、前記駆動交流電圧とに基づいて、前記駆動交流電圧と前記調整交流電圧の位相差が調整されることを特徴とする請求項2に記載の圧電体振動子。
【請求項6】
伸縮モードに関する振動を駆動するための伸縮モード駆動交流電圧が印加される伸縮モード駆動電極をさらに備え、
前記駆動交流電圧に基づく振動は、屈曲モードに関する振動であることを特徴とする請求項5に記載の圧電体振動子。
【請求項7】
前記調整交流電圧の振幅は、前記駆動交流電圧の振幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の圧電体振動子。
【請求項8】
前記調整交流電圧の振幅は、前記駆動交流電圧の振幅の10分の1〜20分の1であることを特徴とする請求項7に記載の圧電体振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−148435(P2008−148435A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332248(P2006−332248)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】