説明

圧電振動子及び圧電発振器

【課題】 封止が完全になされ、応力の残留を防ぐ。
【解決手段】 圧電振動素子と、平均表面粗さが1nm以下でアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる圧電振動素子搭載部材と、凹部を有し平均表面粗さが1nm以下でアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる蓋部材と、を備え、圧電振動素子を搭載した圧電振動素子搭載部材と蓋部材とが常温で直接接合されて構成されていることを特徴とする。圧電振動素子搭載部材と蓋部材とのそれぞれの接合面に接合用金属膜が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる圧電振動子及び圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器には電子部品を搭載した電子基板が用いられている。この電子基板には、金属膜からなる導通パターンが形成されており、この導通パターンに半田等でコンデンサ等のチップ部品を接合することで電子基板に電子部品を搭載している。
また、電子部品は、チップ部品の他に、凹部を有する容器に各種素子を搭載して凹部を封止した構造の圧電振動子や圧電発振器といった電子部品が含まれる。
【0003】
ここで、圧電振動子に用いられる圧電振動素子搭載部材と蓋部材について説明する。
例えば、圧電振動素子搭載部材は、平板状に形成されており、後述する蓋部材と接合する面に金属膜が設けられている。また、この金属膜よりも内側に圧電振動素子を搭載するための搭載パッドが設けられている。また、この金属膜が設けられる主面とは反対側の主面にマザーボードなどの配線基板に実装するための外部端子が設けられている。この外部端子は、内部配線パターンを介して搭載パッドと接続している。このような圧電振動素子搭載部材は、複数が連なったウェハの状態で、金属膜、搭載パッド、外部端子が設けられる。
また、蓋部材は、内部に圧電振動素子を封止することができる程度の大きさを有する凹部が設けられており、圧電振動素子搭載部材と接合する面に封止材からなる金属膜が設けられている。このような蓋部材は、複数が連なったウェハの状態で、金属膜が設けられる。
【0004】
ここで、圧電振動子は、以下の工程を経て製造される。
まず、圧電振動素子搭載部材に設けられた搭載パッドに圧電振動素子を導電性接着剤を介して搭載し、この状態で蓋部材の凹部内に圧電振動素子が入るように蓋部材を圧電振動素子搭載部材に重ねる。
圧電振動素子搭載部材と蓋部材とが重なった状態で、例えば、300℃〜350℃で加熱して、圧電振動素子搭載部材と蓋部材とを接合して1つのウェハに複数の圧電振動子が設けられた状態にする。
その後、各圧電振動子の境目で切断して個片化された圧電振動子とする(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、同様な構造の圧電振動子において、接合用の金属膜を用いずに、ウェハの状態の圧電振動素子搭載部材と蓋部材とを接合した圧電振動子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
圧電振動素子搭載部材と蓋部材との接合は、直接接合により行われている。この接合を行うときの温度は、200℃〜500℃とされている。
このように、ウェハの状態で接合を行い、各圧電振動子となっている部分で切断して、個片化された圧電振動子としている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−279872号公報
【特許文献2】特開2006−339896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、圧電振動素子搭載部材と蓋部材との接合は加熱が必要となる。これにより、加熱による熱膨張とその後の冷却による収縮で圧電振動素子搭載部材と蓋部材とに応力が残留することがある。この応力により、接合部分が剥がれる恐れがある。
また、接合されるために接合面の幅を、例えば、0.15mm程度に広く設ける必要があるが、電子部品の小型化により、接合幅が従来よりも狭くなってきている。そのため、完全な封止が行えない恐れがある。
【0008】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、封止が完全になされ、応力の残留を防ぐ圧電振動子及び圧電発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、圧電振動子であって、圧電振動素子と、平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さでアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる圧電振動素子搭載部材と、凹部を有し平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さでアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる蓋部材と、を備え、 前記圧電振動素子を搭載した圧電振動素子搭載部材と前記蓋部材とが常温で直接接合されて構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、圧電振動子であって、圧電振動素子と、凹部を有し平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さでアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる圧電振動素子搭載部材と、平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さでアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる蓋部材と、を備え、前記圧電振動素子を搭載した圧電振動素子搭載部材と前記蓋部材とが常温で直接接合されて構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記圧電振動素子搭載部材に2つの凹部が設けられていても良い。
また、本発明は、前記圧電振動素子搭載部材と前記蓋部材とのそれぞれの接合面に接合用金属膜が設けられていても良い。
【0012】
また、本発明は、圧電発振器であって、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の圧電振動子に、少なくとも発振回路を備えた集積回路素子が搭載されて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような圧電振動子によれば、接合面の平均表面粗さRaが1nm以下となるため、常温で直接接合ができ、また、接合面の幅が従来より小さくても封止状態を維持することができる。
また、圧電振動素子搭載部材に2つの凹部を設けたので、圧電振動素子のための空間として用いることができ、その他に、他の電子部品を搭載可能に構成することができる。
また、接合面に接合用金属膜を設けたので、圧電振動素子搭載部材と蓋部材との接合強度を向上させることができる。
【0014】
また、このような圧電発振器によれば、圧電振動素子を封止する部分からの気密漏れを防ぐことができるので、歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各構成要素について、状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。
【0016】
(第一の実施形態)
図1(a)は、ウェハに外部端子と搭載パッドを設けた状態の一例を示す概念図であり、(b)は圧電振動素子を搭載した状態の一例を示す概念図であり、(c)は蓋部材を接合する前の状態を示す概念図であり、(d)は、蓋部材を接合した状態を示す概念図である。図2は、本発明の第一の実施形態に係る圧電振動子の一例を示す概念図である。
本発明の第一の実施形態に係る圧電振動子101は、圧電振動素子搭載部材10A、圧電振動素子20、蓋部材30Aとから構成されている。
【0017】
図1(b)に示すように、圧電振動素子20は、例えば、圧電片である平面視矩形形状の水晶片21の両主面に励振電極22が設けられており、それぞれの主面に設けられた励振電極22からこの水晶片21の端部側に伸びる引回しパターン23が形成されて構成されている(図1参照)。
この圧電振動素子20は、励振電極22と接続している引回しパターン23と圧電振動素子搭載部材10Aに設けられた搭載パッドPに導電性接着材Dにより接合される。
これにより、圧電振動素子20は圧電振動素子搭載部材10Aに搭載される。
【0018】
圧電振動素子搭載部材10Aは、焼成されたアルミナセラミック又は焼成されたガラスセラミックが用いられ平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さで形成されている。この圧電振動素子搭載部材10Aは、後述する蓋部材30Aとの接合面においても、平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さとなっている。
接合面の平均表面粗さRaが1nm以下となることで、常温での直接接合が容易となる。しかし、接合面の平均表面粗さRaが1nmよりも大きい場合、常温での直接接合が困難と成り、加熱しながらの接合となるため、圧電振動素子搭載部材10Aが歪む恐れがある。
【0019】
また、接合面は、圧電振動素子搭載部材10Aの外周縁に沿って搭載パッドP(図1(a)参照)が設けられている主面に設けられており、その幅は、例えば、20μmとなっている。
この接合面は、後述する蓋部材30Aと重ね合わせる前に、アルゴンプラズマ又は酸素プラズマなどにより表面活性化される。
また、図1(a)に示すように、圧電振動素子搭載部材10Aには、接合面よりも内側に圧電振動素子20を搭載するための搭載パッドPが設けられ、その搭載パッドPが設けられる主面とは反対側の主面に外部端子Gが設けられている。
これら搭載パッドPと外部端子Gとは、予め設けられているスルーホールを介して接続されている。
【0020】
蓋部材30Aは、焼成されたアルミナセラミック又は焼成されたガラスセラミックが用いられ平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さで形成されている。この蓋部材30Aは、圧電振動素子搭載部材10Aとの接合面においても、平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さとなっている。
この接合面は、圧電振動素子搭載部材10Aと重ね合わせる前に、アルゴンプラズマ又は酸素プラズマなどにより表面活性化される。
接合面の平均表面粗さRaが1nm以下となることで、常温での直接接合が容易となる。しかし、接合面の平均表面粗さRaが1nmよりも大きい場合、常温での直接接合が困難と成り、加熱しながらの接合となるため、蓋部材30Aが歪む恐れがある。
また、図1(c)に示すように、蓋部材30Aには、凹部31が形成されている。この凹部31は、圧電振動素子搭載部材10Aに搭載されている圧電振動素子20を覆う大きさで形成されている。
接合面は、蓋部材30Aの外周縁から凹部31までの間であって、その幅は、例えば、20μmで形成されている。
【0021】
圧電振動素子20が搭載された圧電振動素子搭載部材10Aと蓋部材30Aとは、接合面を重ね合わせた状態で、常温にて真空雰囲気中で所定の圧力が加えられて直接接合される。ここで、常温とは、例えば20±15℃の範囲とする。
これにより、圧電振動素子搭載部材10Aと蓋部材30Aとが直接接合されて圧電振動子101となる。
【0022】
このように、本発明の第一の実施形態に係る圧電振動子101を構成したので、直接接合を容易に行うことができる構造とすることができる。また、接合面の平均表面粗さRaが1nmとなるため、常温で直接接合ができ、また、接合面の幅が従来より小さくても封止状態を維持することができる。
【0023】
次に、本発明の第一の実施形態に係る圧電振動子101の製造方法について説明する。
図1(a)に示すように、複数の圧電振動素子搭載部材10Aは、1枚のウェハに設けられた状態となっている。つまり、このウェハは、複数の圧電振動素子搭載部材10Aとする部分が設けられている。
このウェハを平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さとなるまで研磨する。なお、平均表面粗さRaは、1nm以下であればよい。また、接合面となる主面の平均表面粗さRaが1nm以下となればよいが、両面の平均表面粗さRaを1nm以下としても良い。
【0024】
ウェハの平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さとなったら、スルーホールを所定のレーザー、サンドブラスト、エッチングなどを用いて形成する。
次に、スルーホールをスパッタリング、電解めっき、無電解めっきのいずれかにより埋めた後、搭載パッドPと外部端子Gを形成する。
図1(b)に示すように、この状態で、導電性接着剤Dを用いて圧電振動素子20を搭載パッドPに搭載する。
導電性接着剤Dが硬化した後に圧電振動素子20の励振電極22の一部を除去又は付加して周波数を調整する。
【0025】
これら工程と同時又は後に、複数の蓋部材30Aが設けられるウェハを研磨する。
このウェハの研磨も、複数の圧電振動素子搭載部材10Aが設けられるウェハと同様に、平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さとなるまで研磨する。なお、平均表面粗さRaは、1nm以下であればよい。また、接合面となる主面の平均表面粗さRaが1nm以下となればよいが、両面の平均表面粗さRaを1nm以下としても良い。
この接合面となる主面は、凹部31が設けられる側の主面である。
ウェハの平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さとなったら、凹部31をサンドブラスト、エッチングなどを用いて形成する。
【0026】
図1(c)及び(d)に示すように、圧電振動素子20を搭載する。
その後、圧電振動素子搭載部材10Aの接合面を、蓋部材30Aと重ね合わせる前に、アルゴンプラズマ又は酸素プラズマなどにより表面活性化する。
また、蓋部材30Aの接合面を、圧電振動素子搭載部材10Aと重ね合わせる前に、アルゴンプラズマ又は酸素プラズマなどにより表面活性化する。
この状態で、複数の圧電振動素子搭載部材10Aが設けられるウェハと、凹部31が設けられ、複数の蓋部材30Aが設けられるウェハとを重ね合わせる。
このとき、複数の蓋部材30Aが設けられるウェハに設けられた凹部31内に圧電振動素子20が入るように重ね合わせる。
この状態で、真空度が5×10−5Pa以下となる真空雰囲気中で、常温にて所定の圧力を加えてウェハ同士を直接接合する。
【0027】
接合後、圧電振動素子搭載部材10Aの輪郭、又は/および蓋部材30Aの輪郭に沿って切断し、複数の圧電振動子101(図2参照)とする。
【0028】
したがって、接合に加熱する工程が不要となることから、直接接合が容易に行え、また、圧電振動素子搭載部材10A、蓋部材30Aの歪みもなくすことができる。
【0029】
(第二の実施形態)
次に本発明の第二の実施形態に係る圧電振動子について説明する。
図3に示すように、本発明の第二の実施形態に係る圧電振動子102は、凹部11Bが圧電振動素子搭載部材10Bに形成され、蓋部材30Bが平板状に形成されている点で第一の実施形態と異なる。
この本発明の第二の実施形態に係る圧電振動子102は、凹部11Bを有する圧電振動素子搭載部材10B、圧電振動素子20、平板状の蓋部材30Bとから主に構成されている。
【0030】
圧電振動素子搭載部材10Bは、一方の主面に凹部11Bが設けられており、その凹部11B内部に圧電振動素子20を搭載するための搭載パッドPが設けられている。また、他方の主面には、マザーボードなどの配線基板に接続するための外部端子Gが設けられている。この外部端子Gは、圧電振動素子搭載部材10Bに設けられたスルーホールを介して搭載パッドPと接続している。
この圧電振動素子搭載部材10Bの凹部11Bが設けられる側の主面は、平均表面粗さRaが1nm以下となっている。なお、圧電振動素子搭載部材10Bの両主面の表面粗さRaを1nm以下としても良い。
【0031】
蓋部材30Bは、平板状となっており、平面形状が圧電振動素子搭載部材10Bの外周縁における平面形状と同一となっている。この蓋部材30Bの圧電振動素子搭載部材10Bと接合する側の主面の平均表面粗さRaが、1nm以下となっている。なお、蓋部材30Bの両主面の平均表面粗さRaを1nm以下としても良い。
【0032】
このように構成される圧電振動素子102は、凹部11Bが設けられたウェハに、それぞれの凹部11B内に設けられた搭載パッドPに圧電振動素子20を搭載し、蓋部材30Bとなる平板状のウェハを、表面活性化した後に重ねて、真空雰囲気中にて、常温の状態で所定の圧力を加えて直接接合を行う。その後、圧電振動素子搭載部材10Bの輪郭、又は/および蓋部材30Bの輪郭に沿って切断し、複数の圧電振動子102とする。
【0033】
このように本発明の第二の実施形態に係る圧電振動子102を構成しても第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0034】
(第三の実施形態)
次に本発明の第三の実施形態に係る圧電振動子について説明する。
図4に示すように、本発明の第三の実施形態に係る圧電振動子103は、圧電振動素子搭載部材10Cに設けられた1つめの凹部11CA内に更に2つめの凹部11CBが設けられた構造となっている点で第二の実施形態と異なる。
【0035】
この圧電振動素子搭載部材10Cは、2つの凹部11CA、11CBが設けられた構造となっている。この凹部11CA、11CBは、圧電振動素子搭載部材10Cの平均表面粗さRaを1nm以下に研磨する前に形成しても良いし、研磨後に形成しても良い。
研磨する前に凹部11CA、11CBを形成する場合は、ウェハを製造する前に、例えば、アルミナセラミック又はガラスセラミックを積層させることで段差をつけて凹部11CA、11CBを形成し、焼成することで凹部11CA、11CBを有するウェハとしても良い。
【0036】
この圧電振動素子搭載部材10Cにおいて、凹部11CA内に搭載パッドPを設け、凹部11CA内に位置するように、この搭載パッドPに圧電振動素子20を搭載する。
このように本発明の第三の実施形態に係る圧電振動子103を構成したので、直接接合を容易に行うことができる構造とすることができる。また、接合面の平均表面粗さRaが1nmとなるため、常温で直接接合ができ、また、接合面の幅が従来より小さくても封止状態を維持することができる。
また、凹部11CAに圧電振動素子20を搭載する構造となるので、凹部11CBが空いた空間となるために、圧電振動素子20の自由端部側が下がっても圧電振動素子搭載部材10Cに接触することがない。これにより、圧電振動素子20の周波数が変化する要因を除去することができる。
【0037】
(第四の実施形態)
次に本発明の第四の実施形態に係る圧電振動子について説明する。
図5に示すように、本発明の第四の実施形態に係る圧電振動子104は、圧電振動素子搭載部材10Dと蓋部材30Dとのそれぞれの接合面に接合用金属膜12、32が設けられている点で第一の実施形態と異なる。
【0038】
圧電振動素子搭載部材10Dは、搭載パッドPが設けられる側の主面の平均表面粗さRaを1nm以下となるまで研磨されており、その後、搭載パッドPと同時又は別に接合用金属膜12を設ける。この接合用金属膜12は、第一の実施形態における圧電振動素子搭載部材10Aに設けられた接合面に設けられる。
この接合用金属膜12は、後述する蓋部材30Dと重ね合わせる前に、アルゴンプラズマ又は酸素プラズマなどにより表面活性化される。
このように、圧電振動素子搭載部材10Dの平均表面粗さRaが1nm以下となる状態で接合用金属膜12を設けると、圧電振動素子搭載部材10Dと接合用金属膜12との密着性が良く、圧電振動素子搭載部材10Dと接合用金属膜12との境目からの気密漏れを防ぐことができる。
【0039】
蓋部材30Dは、凹部31が設けられる側の主面の平均表面粗さRaが1nm以下とるまで研磨されており、その後、凹部31が形成された後に、接合用金属膜32が設けられる。
この接合用金属膜32は、第一の実施形態における蓋部材30Aに設けられた接合面に設けられる。つまり、蓋部材30Dの外周縁と凹部31の縁との間が接合面となり、この接合面に接合用金属膜32が設けられる。
この接合用金属膜32は、圧電振動素子搭載部材10Dと重ね合わせる前に、アルゴンプラズマ又は酸素プラズマなどにより表面活性化される。
このように、蓋部材30Dの平均表面粗さRaが1nm以下となる状態で接合用金属膜32を設けると、蓋部材30Dと接合用金属膜32との密着性が良く、蓋部材30Dと接合用金属膜32との境目からの気密漏れを防ぐことができる。
【0040】
このように構成された圧電振動素子搭載部材10Dに圧電振動素子20を搭載する。その後、圧電振動素子搭載部材10Dの接合用金属膜12を、後述する蓋部材30Dと重ね合わせる前に、アルゴンプラズマ又は酸素プラズマなどにより表面活性化する。
また、蓋部材30Dの接合用金属膜32を、圧電振動素子搭載部材10Dと重ね合わせる前に、アルゴンプラズマ又は酸素プラズマなどにより表面活性化する。
この状態で、圧電振動素子搭載部材10Dと蓋部材30Dとを重ね合わせ、真空雰囲気中にて、常温において所定の圧力を加えて直接接合を行う。
これにより、圧電振動素子搭載部材10Dと蓋部材30Dとは接合された状態となる。
具体的には、圧電振動素子搭載部材10Dが複数設けられたウェハに圧電振動素子20をそれぞれ搭載し、複数の蓋部材30Dが設けられたウェハを重ね合わせる。このとき、蓋部材30Dの凹部31内に入らない圧電振動素子搭載部材10Dとなる部分に接合用金属膜12が設けられ、また、蓋部材30Dの凹部31が設けられる主面にも接合用金属膜32が設けられている。
【0041】
なお、接合用金属膜12、32は、同一材料で構成される。なお、搭載パッドと同一材料で構成しても良い。
【0042】
したがって、圧電振動素子搭載部材10Dの接合用金属膜12と蓋部材30Dの接合用金属膜32とが重なった状態となる。この状態で真空雰囲気中で、常温にて所定の圧力を加えて直接接合が行われ、圧電振動素子搭載部材10Dと蓋部材30Dとが接合される。
その後、圧電振動素子搭載部材10Dと蓋部材30Dとの輪郭で切断を行い、複数の圧電振動子104とする。
このように第四の実施形態に係る圧電振動子104を構成したので、圧電振動素子搭載部材10Dの接合用金属膜12と蓋部材30Dの接合用金属膜32とが直接接合により接合されるため、常温においても所定の圧力を加えることにより直接接合で接合することができる。
【0043】
これにより、第四の実施形態に係る圧電振動子104は、第一の実施形態よりも気密性を向上させることができる。
【0044】
(第五の実施形態)
次に本発明の第五の実施形態に係る圧電発振器について説明する。
図6に示すように、本発明の第五の実施形態に係る圧電発振器105は、第一の実施形態〜第四の実施形態のいずれかに係る圧電振動子101〜104に、すくなくとも発振回路を備えた集積回路素子40を搭載した構造となっている。
【0045】
この集積回路素子40は、フリップチップ型となっており、単結晶シリコン等から成る本体の下面に、例えば、周囲の温度状態を検知する感温素子(サーミスタ)、圧電振動素子20の温度特性を補償する温度補償データを格納するとともに該温度補償データに基づいて水晶振動素子30の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、該温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等の電子回路が設けられている。このような発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えば、クロック信号等の基準信号として利用されることとなる。
【0046】
この集積回路素子40をセラミック容器Yに搭載して、第一の実施形態〜第四の実施形態のいずれかに係る圧電振動子に接続される。以下、第一の実施形態に係る圧電振動子101を用いた場合について説明する。
例えば、このセラミック容器Yは、一方の主面に凹部41が形成され、その一方の主面に、圧電振動子101に設けられた外部端子Gの位置に対応した接続端子Sが設けられており、他方の主面にマザーボードなどの配線基板に接続するためのIC側外部端子ICGが設けられている。また、凹部41内には、集積回路素子40に設けられている実装パッドに対応した位置にIC搭載パッドP2が複数、設けられており、このIC搭載パッドP2の所定の2つが、接続端子Sに接続されており、残りのIC搭載パッドP2のうち、所定のものがIC側外部端子IGと接続している。
ここで、圧電振動子101に設けられた外部端子Gとセラミック容器Yの接続端子Sとは、例えば、導電性接着剤D2で接続される。
このように、本発明の第五の実施形態に係る圧電発振器105を構成したので、圧電振動素子20を封止する部分からの気密漏れを防ぐことができ、また、歩留まりを向上させることができる。
【0047】
なお、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、蓋部材に凹部が形成され、圧電振動素子搭載部材に凹部が形成された構造であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は、ウェハに外部端子と搭載パッドを設けた状態の一例を示す概念図であり、(b)は圧電振動素子を搭載した状態の一例を示す概念図であり、(c)は蓋部材を接合する前の状態を示す概念図であり、(d)は、蓋部材を接合した状態を示す概念図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る圧電振動子の一例を示す概念図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る圧電振動子の一例を示す概念図である。
【図4】本発明の第三の実施形態に係る圧電振動子の一例を示す概念図である。
【図5】本発明の第四の実施形態に係る圧電振動子の一例を示す概念図であり、(a)は、蓋部材を接合する前の状態を示す概念図であり、(b)は蓋部材を接合した状態を示す概念図であり、(c)は個片化した状態を示す概念図である。
【図6】本発明の第五の実施形態に係る圧電発振器の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0049】
10A、10B、10C、10D 圧電振動素子搭載部材
11B、11CA、11CB、31 凹部
12、32 接合用金属膜
20 圧電振動素子
30A、30B、30D 蓋部材
40 集積回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、
平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さでアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる圧電振動素子搭載部材と、
凹部を有し平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さでアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる蓋部材と、
を備え、
前記圧電振動素子を搭載した圧電振動素子搭載部材と前記蓋部材とが常温で直接接合されて構成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
圧電振動素子と、
凹部を有し平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さでアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる圧電振動素子搭載部材と、
平均表面粗さRaが1nm以下となる表面粗さでアルミナセラミック又はガラスセラミックからなる蓋部材と、
を備え、
前記圧電振動素子を搭載した圧電振動素子搭載部材と前記蓋部材とが常温で直接接合されて構成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項3】
前記圧電振動素子搭載部材に2つの凹部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記圧電振動素子搭載部材と前記蓋部材とのそれぞれの接合面に接合用金属膜が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の圧電振動子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の圧電振動子に、
少なくとも発振回路を備えた集積回路素子が搭載されて構成されていることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−88064(P2010−88064A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257860(P2008−257860)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】