説明

地図データ更新方法、カーナビゲーションシステム、カーナビゲーション装置および地図センタ

【課題】地図データが利用可能となるまでの時間を短縮する。
【解決手段】地図センタ2において、更新優先度管理部201は、更新地図データに優先度を設定し、地図データ配信部205は、設定された優先度が高い順に更新地図データをカーナビ装置1に配信する。カーナビ装置1において、更新優先度管理部102は、地図更新データ取得制御部105が高優先度の更新地図データの取得を完了したとき、その高優先度の更新地図データにより、その更新地図データに対応する部分の車載地図データ111を更新し、低優先度の更新地図データの取得を完了したとき、その低優先度の更新地図データにより、車載地図データ111の残りの部分を更新する。このとき、地図センタ2は、高優先度の更新地図データをファイル編集更新データ生成部204で生成し、低優先度の更新地図データをファイル置換更新データ生成部203で生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション装置の地図データを更新する地図データ更新方法、ならびに、その地図データ更新方法を適用したカーナビゲーションシステム、カーナビゲーション装置および地図センタに関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置(以下、「カーナビ装置」という)は、車両の現在位置と誘導経路とを、その現在位置近傍の道路地図に重ね合わせて表示し、ドライバによる走行経路の選択を支援する。従って、カーナビ装置が有する地図データは、できる限り現実の状態を忠実に表した最新のものであるのが望ましい。ところで、現実は、新しい道路、施設、建物などが日々建設され、また、廃棄されている。従って、カーナビ装置において地図データは、適宜、更新されなければならない。
【0003】
一般に、カーナビ装置で用いられる地図データは、日本全国をカバーし、道路データだけでなく、様々な施設や建物の情報を含んでいるために、そのデータ量は数Gバイトに達する。そのため、特に、通信ネットワークを介して更新する場合には、地図データの全部を更新するのに相当の時間を要する。
【0004】
従来、地図データの更新時間を削減する方法として、差分更新法(例えば、特許文献1参照)がしばしば用いられる。差分更新法では、新地図データと旧地図データとを比較して相違するデータの差分データを更新データとすることにより、更新データ量を削減し、その結果として、更新時間を短縮する。ただし、差分データ量が多くなった場合には、更新時間が長くなる場合があるので、特許文献1では、元のデータ(新地図データ)に対する差分データ量の比が所定の値より大きくなった場合には、差分更新を用いないとしている。
【0005】
また、特許文献2には、地図データを更新する技術ではないが、地図センタから通信型カーナビ装置に地図データを配信する例が開示されている。その例によれば、地図センタは、カーナビ装置から現在位置と目的地情報の送信を受けると、その現在位置から目的地までの経路に沿った複数の分割地図データを抽出し、その複数の分割地図データに優先順位を設定し、その優先順位に従って、分割地図データをカーナビ装置へ配信する。そのとき、その優先順位は、現在位置に近いものほど高く設定されるので、カーナビ装置は、現在位置近傍の分割地図を最初に受信することができる。従って、カーナビ装置は、全部の分割地図を受信する前であっても、現在位置近傍の分割地図を表示することができるので、最初の地図表示までの時間を短縮することができる。
【特許文献1】特開2006−251768号公報
【特許文献2】特開2005−10060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1などで用いられている差分更新法は、カーナビ装置における地図データの全体の更新時間を短縮する効果は有しているが、特許文献2が有するような効果、つまり、ユーザが求める地図データを優先して取得し、その地図データを利用(表示)可能にするまでの時間を短縮するという効果を充分には有していない。すなわち、差分更新法の場合には、地図データの全体のデータ量が多い場合には、それ相応の更新時間を要し、データが利用(表示)可能になるまでの時間をユーザが求めるほどは短縮することはできない。
【0007】
また、特許文献2は、地図データを通信型カーナビ装置へ配信する技術の例であって、地図データの更新についての記載はされていない。従って、分割地図データの配信の優先順位は、地図センタにより、適宜、決定されるものであり、その優先順位について、ユーザが関与する余地はない。また、地図データ更新の方法についても、差分更新などは考慮されておらず、一般的なファイル置換の利用が前提とされている。
【0008】
以上のような従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、カーナビ装置における地図データの更新に際し、ユーザが利用しようとしている地図データが利用可能となるまでの時間を短縮することができる地図データ更新方法、ならびに、その地図データ更新方法を適用したカーナビゲーションシステム、カーナビゲーション装置および地図センタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカーナビゲーションシステムは、マスタ地図データを保管した地図センタと、車両に搭載され、前記地図センタから提供された地図データを保持し、その保持した地図データに基づき、その車両の目的地に到る誘導経路を表示装置に表示して、車両の走行経路を誘導するカーナビゲーション装置と、を含んで構成され、次の特徴を有する。
【0010】
すなわち、本発明のカーナビゲーションシステムにおいて、前記地図センタは、新地図データを前記カーナビゲーション装置に提供するときに、前記新地図データを構成する部分地図データのそれぞれに優先度を設定する優先度設定手段と、前記優先度を設定した前記部分地図データを、その優先度が高い順に前記カーナビゲーション装置に提供する地図データ提供手段と、を備える。また、前記カーナビゲーション装置は、前記地図センタから提供される前記部分地図データを、その部分地図データに設定された優先度が高い順に取得する地図データ取得手段と、前記地図データ取得手段によって特定の優先度までの部分地図データの取得を完了したとき、その時点までに取得した部分地図データにより、その取得した部分地図データに対応する旧地図データを更新する地図データ更新手段と、を備える。
【0011】
本発明のカーナビゲーションシステムにおいては、カーナビゲーション装置は、特定の優先度、例えば、最も高い優先度が設定された部分地図データの取得が完了したとき、その時点までに取得した部分地図データにより、その取得した部分地図データに対応する旧地図データを更新する。従って、ユーザは、全部の地図データが更新される前に先立ち、その更新された部分地図データ、つまり、優先度が最も高く設定された部分地図データについては、新地図データを利用することができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーナビ装置における地図データの更新に際し、ユーザが利用しようとしている地図データが利用可能となるまでの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るカーナビゲーションシステムの構成の例を示した図である。図1に示すように、本形態に係るカーナビゲーションシステム100は、道路を走行する車両に搭載され、ドライバが設定する目的地までの誘導経路を、適宜、図示しない表示装置に表示するカーナビ装置1と、マスタ地図データ211を保持し、そのマスタ地図データ211に保管している最新の地図データをカーナビ装置1に提供する地図センタ2と、によって構成される。
【0015】
ここで、カーナビ装置1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)とメモリとを含んで構成され、そのCPUがメモリに格納された所定のプログラムを実行して所定の情報処理機能を実現する処理装置10と、ハードディスク装置やフラッシュメモリなどを含んで構成され、車載地図データ111を格納する記憶装置11と、地図センタ2との間で地図データなどの送受信を行う通信装置12と、DVD(Digital Versatile Disk)4やUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの携帯型記憶メディア(以下、「ブリッジメディア」という)に記録されている地図データなどを読み取るメディアドライブ13と、を含んで構成される。
【0016】
なお、カーナビ装置1は、これら以外にもGPS(Global Positioning System)を利用した測位装置、地図や誘導経路などを表示する表示装置、処理装置10に制御情報やデータを入力するためのリモコンなどを備えているが、ここではその図示を省略した。
【0017】
同様に、地図センタ2は、図示しないCPUとメモリとを含んで構成され、そのCPUがメモリに格納された所定のプログラムを実行して所定の情報処理機能を実現する処理装置20と、ハードディスク装置やフラッシュメモリなどを含んで構成され、マスタ地図データ211を格納する記憶装置21と、カーナビ装置1との間で地図データなどの送受信を行う通信装置22と、DVD4やUSBメモリなどのブリッジメディアに地図データなどを記録するメディアドライブ23と、を含んで構成される。
【0018】
なお、本実施形態では、カーナビ装置1の通信装置12およびメディアドライブ13は、いずれも、処理装置10が最新の地図データを入力する手段として用いられる。また、地図センタ2の通信装置22およびメディアドライブ23は、いずれも、最新の地図データを出力する手段として用いられる。従って、これらの装置を本実施形態の目的のためだけに使用する場合には、カーナビ装置1は、通信装置12およびメディアドライブ13の少なくとも一方を備えておけばよい。
【0019】
また、図1において、地図センタ2の通信装置22は、基地局3に接続され、基地局3とカーナビ装置1の通信装置12との間では無線通信によりデータの送受信が行われる。なお、その場合の無線通信方式としては、一般には、携帯電話の通信方式が用いられるが、それに限定される必要はない。その無線通信方式は、IEEE802.11規格の無線LAN(Local Area Network)、IEEE802.16規格のWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、専用狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)などに基づくものであってもよい。
【0020】
さらには、基地局3とカーナビ装置1の通信装置12との間の通信は、以上のような双方向通信でなく、地上波ディジタル放送や衛星ラジオ放送などの放送電波を利用した一方向通信(放送)であってもよい。
【0021】
なお、本実施形態の以下の説明においては、地図センタ2からカーナビ装置1への更新地図データの提供は、特に断らない限り、携帯電話などの通信方式を利用した双方通信によって行われるものとする。
【0022】
次に、カーナビ装置1の処理装置10および地図センタ2の処理装置20のそれぞれに含まれる機能ブロックの詳細な説明をする前に、本実施形態における地図データの構成および地図更新方法の要点について説明をしておく。
【0023】
本実施形態で用いられる地図データは、基本的には、道路の位置や接続関係を表した道路データと、その道路の背景となる地物(山、川、公園、建物など)の位置やその名称などを表した背景データと、公共施設、娯楽施設、商業店舗などの位置やその付属情報を表したPOI(Point of Interest)データと、を含んで構成される。そして、その場合、それらのデータは、都道府県などの行政区や、所定の大きさに区分された区画(以下、「メッシュ」という)などに分割されて記憶装置11,21に記憶される。すなわち、地図データは、そのデータの種別ごとに、さらに、行政区やメッシュごとに分割された多数のデータファイルとして記憶装置11,21に記憶される。
【0024】
この場合、マスタ地図データ211には、最新の地図データだけでなく、所定の期間内の古い地図データも含まれる。これらの新旧の地図データは、通常、バージョン番号などによって管理される。
【0025】
図2は、地図更新指示データの構成の例を示した図で、(a)はファイル置換更新指示データの構成の例、(b)はファイル編集更新指示データの構成の例である。地図更新指示データ、すなわち、(a)ファイル置換更新指示データおよび(b)ファイル編集更新指示データは、更新地図データの送信に先立って、地図センタ2からカーナビ装置1へ送信される情報であり、カーナビ装置1の処理装置10は、この地図更新指示データに基づき、車載地図データ111の更新を実行する。
【0026】
ここで、更新データ名称は、更新する地図データを識別する情報であり、例えば、行政区やメッシュを識別する名称、データの種別の名称などによって表される(例えば、品川区のPOIデータなど)。なお、更新データ名称は、単なるシリアル番号としても構わない。
【0027】
更新種別は、更新の方法を指示する情報であり、本実施形態では、更新の方法として、ファイル置換更新とファイル編集更新とを想定しており、例えば、更新種別が「0」の場合をファイル置換更新とし、「1」の場合をファイル編集更新とする。なお、ここでいうファイル置換更新とは、指定されたファイルについて、そのファイルの全データをファイルごと新データに置換して更新する方法である。また、ファイル編集更新とは、指定されたファイルの部分データを所定の編集指示に従って新データに更新する方法である。この場合、ファイル編集更新は、従来技術における差分更新を含む。なお、ファイル置換更新により、車載地図データ111の既存のファイルが不要になった場合には、そのファイルを削除してもよく、また、車載地図データ111に存在しなかった新たなファイルが必要になった場合には、そのファイルを追加してもよい。
【0028】
優先度は、更新するデータについて、その更新を実行する優先度を示すデータであり、本実施形態では、優先度は、「高」と「低」の2レベルを想定するが、3レベル以上の優先度があっても構わない。このとき、優先度が高いデータほど先に更新される。なお、後記するように、更新種別で「1」(ファイル編集更新)が指定されたときには、優先度を「高」とみなし、更新種別で「0」(ファイル置換更新)が指定されたときには、優先度を「低」とみなすとした場合には、この優先度の情報は省略してもよい。
【0029】
次に、(a)ファイル置換更新指示データにおいて、新地図データファイル名は、更新種別で「0」(ファイル置換更新)が指定されたときに、優先度のデータの後にさらに付される情報であり、車載地図データ111に含まれる地図データのうちファイル置換更新の対象となる地図データのファイル名を指定する情報である。従って、新地図データファイル名は、車載地図データ111に既に存在する、つまり、古い地図データのファイル名と同じであって差し支えないが、その名称の一部に新旧を区別するためのバージョン番号などが含まれているものとする。
【0030】
なお、新地図データファイル名は、複数の地図データファイル名により構成されていてもよい。この場合には、それらにより指定されるすべての地図データファイルは、先行する優先度の条件下でファイル置換更新の対象となる。また、新地図データファイル名は、車載地図データ111に既に存在するフォルダのフォルダ名であってもよい。その場合には、そのフォルダに含まれるすべての地図データファイルがファイル置換更新の対象となる。
【0031】
次に、(b)ファイル編集更新指示データにおいて、ファイル編集指示データは、更新種別で「1」(ファイル編集更新)が指定されたときに、優先度のデータの後にさらに付される情報である。ファイル編集指示データは、車載地図データ111に含まれる地図データのうちファイル編集更新の対象となる地図データのファイル名と、そのファイル名によって指定される更新対象の地図データファイルに対して施す処理内容を示す情報と、を含んで構成される。
【0032】
ここで、処理内容を示す情報とは、ファイル全体に対して差分更新を行ったとき、どのレコードのどのデータフィールドにはどのような演算を施して更新するかなどを定めた更新ルールの情報である。なお、その更新の演算に際して用いられる更新データ、つまり、その更新のルールにより旧地図データファイルと新地図データファイルとから生成された差分データは、ファイル編集更新データと呼ばれ、ファイル編集更新指示データには含まれないものとする。
【0033】
以上のファイル編集更新を用いると、地図データファイルの部分更新も可能となる。部分更新では、指定された地図データファイルについて、そのファイルのすべての差分データを更新するのではなく、そのファイルを構成するレコードのうち、例えば、特定のフィールドが特定の値であるレコードを抽出し、そのレコードについて所定の変更を加える。具体的には、道路データのうち、高速道路のデータを取り出し、その高速道路のデータについてのみ差分更新を行うといったことが可能となる。ただし、このような部分更新を行った地図データファイルについては、すべてのデータが更新されたことにはならないので、必要に応じて後でファイル置換更新を行う場合がある。
【0034】
図3は、本発明に係る実施形態における地図データ更新の様子を、従来の場合と比較して模式的に示した図であり、(a)は、従来の地図データ更新の例、(b)は、本発明に係る実施形態における地図データ更新の例である。
【0035】
カーナビ装置1において従来の方法により地図データ更新をする場合には、図3(a)に示すように、ファイル置換更新により車載地図データ111の地図データファイルを更新する。その場合、ファイル置換更新中は、利用可能な地図データは古いままであり、新地図データが利用可能になるのは、ファイル置換更新が完了した後になる。すなわち、ファイル置換更新を完了するのに、例えば、20分を要するとすれば、ユーザは、地図データの更新をカーナビ装置1に指示した後、20分経過しなければ、新地図データを利用できないことになる。
【0036】
なお、車載地図データ111のファイル置換更新は、ファイル単位で行われるので、置換が完了したものから、順次、利用可能にしていくこともできる。しかし、ファイル単位であっても、ファイルによっては、そのファイルサイズが大きいので、置換後のファイル、つまり、新地図データが利用可能になるまでには、例えば、数分程度の時間を要する場合がある。
【0037】
一方、本実施形態の場合には、車両の現在位置に近い地図データ、例えば、車両の現在位置が、東京都品川区であったときには、東京都、神奈川県、埼玉県および千葉県の地図データに対して高い優先度を付し、優先度の高い地図データを先に更新し、その更新した優先度の高い地図データを利用可能なものにする。その場合には、その優先度が高い地図データのデータ量は、日本全体の地図データのデータ量に比べ数分の1ないし10数分の1で済むので、その分、地図データを更新する時間が短縮される。
【0038】
すなわち、図3(b)に示すように、優先度の高い地図データは、例えば、5分で新地図データに更新され、利用することができるようになる。ただし、そのとき、その他の部分の地図データは、古い、つまり、旧地図データのままである。しかしながら、車両の現在位置が、例えば、品川駅近辺であった場合には、東京都、神奈川県、埼玉県および千葉県の地図データが新地図データに更新されていれば不都合はない。そして、その後、高い優先度が付されなかった、つまり、優先度の低い地図データの更新が開始され、例えば、その更新開始15分後に優先度の低い地図データの更新が終了し、そこで全地図データの更新が完了する。
【0039】
なお、図3(b)に示すように、本実施形態では、優先度の高い地図データを更新する場合には、地図データをファイル編集更新により更新し、優先度の低い地図データを更新する場合には、地図データをファイル置換更新により更新するとしている。そのようにした理由は、ファイル編集更新をした場合のほうが、ファイル置換更新をした場合よりも地図データの更新時間が短縮されることが多いからである。すなわち、ファイル編集更新は、ファイル置換更新に比べ処理が複雑にはなるが、ファイル全体のデータ量に比し、更新するデータ量が少ない場合には、更新時間が短縮されるからである。しかも、地図データの更新では、更新するデータ量が少ない場合のほうが多いと判断される。
【0040】
また、本実施形態では、前記したように、地図データのファイルの個別のデータについて、例えば、高速道路のデータについて高い優先度を付けることができる。その場合には、優先度の高いデータについてのみ編集処理をすればよいので、ファイル丸ごとの置換処理に比べ大幅な時間短縮となる。
【0041】
一方、当面の間、ユーザにとって実用上不都合のない優先度が高い新地図データが利用可能になった後であれば、優先度の低い地図データの更新に多少時間が掛かったとしても大きな不便は生じない。そこで、本実施形態では、優先度の低い地図データの更新をファイル置換更新により更新し、カーナビ装置1および地図センタ2の処理負荷が軽減されるようにしたのである。
【0042】
続いて、図1に戻り、カーナビ装置1の処理装置10および地図センタ2の処理装置20のそれぞれに含まれる機能ブロックの動作について説明をする。
【0043】
図1に示すように、カーナビ装置1の処理装置10は、ナビ処理部101、更新優先度管理部102、ファイル置換更新部103、ファイル編集更新部104、更新データ取得制御部105を含んで構成される。なお、これらの機能ブロックの機能は、図示しないCPUがメモリに格納された所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0044】
図1において、更新データ取得制御部105は、更新対象の地図データを指定するための更新対象指示データを設定するとともに、その更新対象指示データを地図センタ2へ送信する。この更新対象指示データには、優先して更新しようとしているエリアを指定するメッシュコードまたは都道府県の情報、更新しようとしている地図データの種類などの情報が含まれている。さらに、更新データ取得制御部105は、その更新対象指示データに応じて地図センタ2から提供される更新地図データ取得する、または、DVD4などのブリッジメディアから更新地図データを取得する。
【0045】
更新優先度管理部102は、更新対象の地図データに先立って得られる地図更新指示データに基づき、更新対象の地図データの優先度を確認するとともに、その優先度に従って、ファイル置換更新部103またはファイル編集更新部104に対し、地図データ更新処理の実行を指示する。
【0046】
ファイル置換更新部103は、更新地図データに付されたファイル置換指示データによって指示された地図データについて、ファイル置換更新を実行する。また、ファイル編集更新部104は、更新地図データに付されたファイル編集更新指示データのファイル編集指示データを解析し、その解析された編集ルールに従って、前記のファイル編集更新指示データによって指示された地図データについて、ファイル編集更新を実行する。
【0047】
ナビ処理部101は、カーナビ装置1の本来のナビ機能、すなわち、図示しない測位装置により車両の現在位置を測位し、その現在位置から、ユーザによって図示しないリモコンなどを用いて設定される目的地までの誘導経路を探索し、その探索した誘導経路を含む地図を、図示しない表示装置に表示するなどの機能を実現する。
【0048】
次に、図1において、地図センタ2の処理装置20は、更新優先度管理部201、更新データ生成形式制御部202、ファイル置換更新データ生成部203、ファイル編集更新データ生成部204、更新データ配信部205、更新メディア作成部206などを含んで構成される。なお、これらの機能ブロックの機能は、図示しないCPUがメモリに格納された所定のプログラムを実行することによって実現される。
【0049】
更新優先度管理部201は、カーナビ装置1から送信される更新対象指示データを受信して、その更新対象指示データに基づき、配信する地図データを選定するとともに、それらの地図データに優先度を設定する。また、更新データ生成形式制御部202は、配信する地図データに、前記設定された優先度に応じて、または、適宜、更新データの生成形式を決定し、その決定に応じて、ファイル置換更新データまたはファイル編集更新データの生成処理の実行を指示する。なお、優先度をどのような基準に基づき設定するかについては後記する。
【0050】
ファイル置換更新データ生成部203は、更新データ生成形式制御部202の指示に従って、ファイル置換更新データを生成するが、実質的には、ファイル置換更新指示データ(図2(a)参照)を生成すればよい。また、ファイル編集更新データ生成部204は、更新データ生成形式制御部202の指示に従って、ファイル編集更新指示データ(図2(b)参照)およびファイル編集更新データを生成する。このとき、ファイル編集更新データは、旧地図データをファイル編集指示データに従って編集して新地図データを生成するためのデータである。
【0051】
更新データ配信部205は、ファイル置換更新データ生成部203またはファイル編集更新データ生成部204により生成されたファイル置換更新データまたはファイル編集更新データ、つまり、更新地図データをカーナビ装置へ配信する。また、更新メディア作成部206は、メディアドライブ23を介して、最新地図データが書き込まれたDVD4などのブリッジメディアを作成する。
【0052】
続いて、図4〜図9を参照して、カーナビ装置1における地図データ更新の処理フローについて説明する。
【0053】
図4は、カーナビ装置1における地図データ更新の処理フローのアウトラインを示した図である。ここで、(a)は、地図更新指示データの優先度に従った地図データ更新処理の例、(b)は、ファイル編集更新を優先した地図データ更新処理の例である。
【0054】
図4(a)に示すように、処理装置10は、まず、更新データ取得制御部105の処理として、更新対象データを指定する(ステップS01)。このステップでは、優先して更新するエリアを指定するとともに、更新する地図データの種類などを指定する。なお、その詳細な処理内容については、別途、図5および図6を用いて説明する。
【0055】
次に、処理装置10は、更新優先度管理部102の処理として、更新データに先行して、地図センタから送信されてくる更新データ概要、つまり、地図更新指示データの優先度に従って、更新優先度管理処理を実行する(ステップS02)。更新優先度管理処理の詳細については、別途、図7を用いて説明する。
【0056】
次に、処理装置10は、ファイル置換更新部103またはファイル編集更新部104の処理として、地図センタ2またはDVD4などのブリッジメディアから優先度の高い更新データを取得し(ステップS03)、その取得した更新データにより、地図データの更新を実行する(ステップS04)。ユーザは、この時点で、高い優先度が付された地図データについては利用可能となる。
【0057】
次に、処理装置10は、ファイル置換更新部103またはファイル編集更新部104の処理として、地図センタ2またはDVD4などのブリッジメディアから優先度の低い更新データを取得し(ステップS05)、その取得した更新データにより、地図データの更新を実行する(ステップS06)。ユーザは、この時点で、低い優先度が付された地図データについても利用可能となる。つまり、全地図データが更新されたことになる。
【0058】
続いて、図4(b)に示したファイル編集更新を優先した地図データ更新処理について説明する。この図4(b)の処理フローは、図4(a)の処理フローの特殊なケースに相当する。すなわち、地図更新指示データ(図2参照)の更新種別を「ファイル編集更新」と指定したときには、必ずその優先度を「高」と指定し、また、更新種別を「ファイル置換更新」と指定したときには、必ずその優先度を「低」と指定した場合を考える。このような場合に図4(a)の処理フローを実行すると、その処理フローは、図4(b)の処理フローのようになる。
【0059】
従って、図4(b)において、処理装置10は、まず、更新対象データを指定し(ステップS11)、次に、更新優先度管理処理を実行する(ステップS12)。この部分の処理は、図4(a)と同じである。
【0060】
次に、処理装置10は、ファイル編集更新部104の処理として、地図センタ2またはDVD4などのブリッジメディアから、ファイル編集更新が指定された更新データを取得し(ステップS13)、その取得した更新データについてファイル編集更新を実行する(ステップS14)。ユーザは、この時点で、ファイル編集更新された地図データについては利用可能となる。
【0061】
次に、処理装置10は、ファイル編集更新部104の処理として、地図センタ2またはDVD4などのブリッジメディアから、ファイル置換更新が指定された更新データを取得し(ステップS15)、その取得した更新データについてファイル置換更新を実行する(ステップS16)。ユーザは、この時点で、ファイル置換更新された地図データについても利用可能となる。つまり、全地図データが更新されたことになる。
【0062】
図5は、通信による更新対象データ指定処理の詳細な処理フローの例を示した図である。図5に示すように、処理装置10は、まず、車両の現在位置、目的地、経路などのナビ機能に係る情報、または、ユーザが設定する情報に基づき、優先して更新するメッシュや都道府県などのエリアを指定する(ステップS21)。次に、処理装置10は、ユーザが設定する情報に基づき、データ種類を指定する(ステップS22)。
【0063】
ここで、データ種類とは、道路データ、背景データ、POIデータなどのデータ種別や、さらには、その道路データについては、高速道路や都道府県道などの道路種別、POIデータについては、駐車施設、娯楽施設、コンビニ、スーパーなどカテゴリの種別など、地図データの分類の総称である。
【0064】
次に、処理装置10は、指定したエリアおよびデータ種類の情報を更新対象指示データとして、地図センタ2へ送信すると(ステップS23)、その応答として、地図センタから更新データ概要が送られてくるので、その更新データ概要を受信する(ステップS24)。ここで、更新データ概要は、地図更新指示データ(図2参照)に相当する。
【0065】
次に、処理装置10は、例えば、更新データ概要を表示装置などに表示して、ユーザに対し、更新対象データを確定するか否かの入力を求め、更新対象データを確定する入力がされた場合には(ステップS25でYes)、確定指示データを地図センタ2へ送信する(ステップS26)。また、更新対象データを確定する入力がされなかった場合には(ステップS25でNo)、処理装置10は、ステップS21へ戻り、ステップS21以下の処理を再度実行する。
【0066】
図6は、ブリッジメディア利用時の更新対象データ指定処理の詳細な処理フローの例を示した図である。図6に示すように、処理装置10は、まず、DVD4などブリッジメディアの収録内容を確認する(ステップS31)。すなわち、ブリッジメディアに収録されているエリアとデータ種類を確認する。
【0067】
次に、車両の現在位置、目的地、経路などのナビ機能係る情報、または、ユーザが設定する情報に基づき、優先して更新するメッシュや都道府県などのエリアを指定する(ステップS32)。そして、処理装置10は、ユーザが設定する情報に基づき、データ種類、すなわち、データの種別やカテゴリなどを指定する(ステップS33)。
【0068】
次に、処理装置10は、以上のステップで指定した情報に基づき、地図更新指示データ(図2参照)に相当するデータを生成し、そのデータを表示装置などに表示して、ユーザに対し、更新対象データを確定するか否かの入力を求める。そして、更新対象データを確定する入力がされた場合には(ステップS34でYes)、処理装置10は、その更新対象データを確定して、更新対象データ指定処理を終了する。また、更新対象データを確定する入力がされなかった場合には(ステップS34でNo)、処理装置10は、ステップS31へ戻り、ステップS31以下の処理を再度実行する。
【0069】
図7は、更新優先度管理処理の詳細な処理フローの例を示した図である。処理装置10は、まず、地図センタ2から送信されてくる更新データ概要、つまり、地図更新指示データを受信して、その地図更新指示データの優先度を確認する(ステップS41)。そして、その優先度が高優先度であったときには(ステップS42でYes)、処理装置10は、その高優先度の更新データ名称をメモリの所定の作業領域に記憶しておく(ステップS43)。また、その優先度が高優先度でなかったときには(ステップS42でNo)、処理装置10は、その低優先度の更新データ名称をメモリの所定の作業領域に記憶しておく(ステップS44)。
【0070】
次に、処理装置10は、すべての地図更新指示データの優先度を確認したか否かを判定し(ステップS45)、すべての地図更新指示データの優先度を確認していなかったときには(ステップS45でNo)、処理装置10は、ステップS41へ戻り、ステップS41以下の処理を再度実行する。
【0071】
また、すべての地図更新指示データの優先度を確認していたときには(ステップS45でYes)、処理装置10は、前記作業領域を参照して、ファイル置換更新部103またはファイル編集更新部104に対し、高優先度の更新データについて、その更新処理の実行を指示する(ステップS46)。その場合には、処理装置10は、ファイル置換更新部103またはファイル編集更新部104の処理として更新処理を実行するので、すべての高優先度の更新データの更新処理が完了するのを待つ(ステップS47でNo)。
【0072】
そして、すべての高優先度の更新データの更新処理が完了したときには(ステップS47でYes)、処理装置10は、前記作業領域を参照して、ファイル置換更新部103またはファイル編集更新部104に対し、低優先度の更新データについて、その更新処理の実行を指示する(ステップS48)。その場合には、処理装置10は、ファイル置換更新部103またはファイル編集更新部104の処理として更新処理を実行するので、すべての低優先度の更新データの更新処理が完了するのを待つ(ステップS49でNo)。
【0073】
そして、すべての低優先度の更新データの更新処理が完了したときには(ステップS49でYes)、地図データの更新が完了したことになるので、更新優先度管理処理を完了する。
【0074】
図8は、ファイル置換更新処理の詳細な処理フローの例を示した図である。図8に示すように、処理装置10は、まず、ファイル置換更新指示データ(図2(a)参照)から新地図データファイル名称を抽出する(ステップS51)。次に、処理装置10は、抽出した新地図データファイル名称に基づき、車載地図データ111の中から置換対象となる旧地図データファイルを特定する(ステップS52)。このとき、新地図データファイル名称は、旧地図データファイル名称と同じで、そのバージョン番号が異なるものとする。
【0075】
次に、処理装置10は、置換対象の旧地図データファイルと異なるファイル名で、マスタ地図データ211の新地図データをカーナビ装置1の車載地図データ111にコピーする(ステップS53)。なお、カーナビ装置1は、新地図データをコピー中であっても、ナビ処理部101によって旧地図データを利用することができるので、ナビ処理部101の処理を止める必要はない。
【0076】
次に、処理装置10は、その新地図データファイルのコピーが完了すると(ステップS54)、ファイル置換更新部103以外からの旧地図データファイルの参照を禁止する(ステップS55)。そして、処理装置10は、旧地図データファイルの名称を退避用の名称に変更し(ステップS56)、さらに、新地図データファイルの名称を旧地図データファイルの退避前の名称に変更する(ステップS57)。これで、旧地図データファイルは、新地図データファイルにより更新されたことになる。
【0077】
そこで、処理装置10は、ファイル置換更新部103以外からの参照禁止となっている新地図データファイルの参照を解禁する(ステップS58)。そして、処理装置10は、ステップS56で退避用の名称に変更した旧地図データファイルを削除し(ステップS59)、ファイル置換更新処理を終了する。
【0078】
図9は、ファイル編集更新処理の詳細な処理フローの例を示した図である。図9に示すように、処理装置10は、まず、ファイル編集更新指示データ(図2(b)参照)からファイル編集指示データを抽出する(ステップS61)。次に、処理装置10は、ファイル編集指示データに基づき、編集対象となる旧地図データファイルを特定する(ステップS62)。次に、処理装置10は、地図センタ2で生成されたファイル編集更新データを取得する(ステップS63)。
【0079】
次に、処理装置10は、ファイル編集更新部104以外からの旧地図データファイルの参照を禁止する(ステップS64)。そして、処理装置10は、ファイル編集指示データに基づき、旧地図データファイル中の編集箇所を特定し、ファイル編集更新データを用いて、旧地図データファイルを編集する(ステップS65)。ここで、旧地図データファイル中の編集箇所とは、特定のレコード、レコードの属性、レコード中の特定のフィードや特定のビットなどである。
【0080】
次に、処理装置10は、旧地図データファイルの編集が完了すると、新地図データが完成し(ステップS66)、ナビ処理部101など、ファイル編集更新部104以外からの新地図データファイルの参照を解禁する(ステップS67)。これで、旧地図データファイルは、新地図データファイルにより更新されたことになる。
【0081】
なお、ステップS64で旧地図データファイルの参照を完全に禁止するのではなく、旧地図データファイル中の編集箇所のデータをメモリやハードディスク装置などにコピーして退避した後、そのコピー元のデータについてのみ、ファイル更新編集部104以外からの参照を禁止し、コピー先のデータについては、ナビ処理部101からの参照を許容するようにしてもよい。こうすることにより、ナビ処理部101の処理を止めることなく、ファイル編集更新を行うことができる。
【0082】
続いて、図10および図11を参照して、地図センタ2における更新データ生成の処理フローについて説明する。ここで、図10は、地図センタ2における更新データ生成の処理フローの例を示した図、図11は、更新エリアの波及を説明するための模式図である。
【0083】
図10に示すように、地図センタ2の処理装置20は、カーナビ装置1から送信される更新対象指示データを受信するのを待つ(ステップS71でNo)。ここで、更新対象指示データには、カーナビ装置1が優先して更新を求めるエリアやデータ種類の情報が含まれている。そこで、処理装置20は、更新対象指示データを受信すると(ステップS71でYes)、受信した更新対象指示データに含まれるエリア情報に基づき、波及を考慮した更新対象データを抽出する(ステップS72)。
【0084】
ここで、図11を参照して、更新エリアの波及について説明しておく。地図データのうち、道路データは、通常、図11に示すメッシュと呼ばれる矩形のエリアに区分されて管理されている。なお、図11には、9メッシュに区分された道路地図が示されており、その中で実線および破線は道路を表している。ここで、破線の道路のデータを更新しようとする場合を考える。その場合、カーナビ装置1から、例えば、中央の1メッシュを更新対象のエリアとして指定され、その1メッシュの道路データを更新したとすれば、そのメッシュ境界で道路データが不連続となり、誘導経路の探索などに支障をきたすことがある。
【0085】
そこで、地図センタ2では、カーナビ装置1から更新対象のエリアとして中央の1メッシュだけが指定された場合であっても、破線の道路を含む太枠のメッシュも更新対象のエリアに含める処理を行う。これを更新エリアの波及と呼んでいる。
【0086】
次に、図10に戻って、更新データ生成処理の説明を続ける。処理装置20は、ステップS72に引き続き、更新データ概要、つまり、地図更新指示データ(ファイル更新地図データまたはファイル編集更新指示データ)を作成する(ステップS73)。そして、その更新データ概要をカーナビ装置1へ送信する(ステップS74)。
【0087】
続いて、処理装置20は、カーナビ装置1から更新データ概要の確定指示データが送信されてくるのを待ち、確定指示データを受信しなかったときには(ステップS75でNo)、ステップS71へ戻り、ステップS71以下の処理を再度実行する。また、確定指示データを受信したときには(ステップS75でYes)、更新優先度管理処理を実行する(ステップS76)。なお、更新優先度管理処理では、更新データ概要に基づく優先度に応じて更新データの選択、分類などを行う。
【0088】
次に、処理装置20は、優先度が高い更新データを生成し(ステップS77)、その生成した優先度が高いデータをカーナビ装置1へ送信する(ステップS77)。続いて、処理装置20は、優先度が低い更新データを生成し(ステップS79)、その生成した優先度が低いデータをカーナビ装置1へ送信する(ステップS80)。以上により、優先度が高い更新データについても、優先度が低い更新データについてもカーナビ装置1へ送信されたことになる。
【0089】
以上に説明した更新データ生成処理の中で、更新データ概要の作成(ステップS73)について補足する。
【0090】
更新データ概要は、本実施形態では、地図更新指示データ(ファイル置換更新指示データおよびファイル編集更新指示データ:図2参照)に相当するものとしている。このとき、ファイル置換更新指示データにおける新地図データファイル名は、そのファイル名を特定可能な情報であれば、例えば、エリアの名称、メッシュ番号、データ種別などによって指定してもよい。また、ファイル編集更新指示データにおける新地図データファイル名の指定も同様である。
【0091】
また、更新する地図データに優先度を割り振る処理は、地図センタ2の処理装置20が更新データ概要の作成処理の中で行う。すなわち、処理装置20は、カーナビ装置1から送信される更新対象指示データに基づき、適宜、地図データに優先度を割り振る。
【0092】
例えば、更新対象指示データにおいて、データ種類として道路データが指定され、エリアとして自車の現在位置が含まれるメッシュ番号が指定されていた場合には、処理装置20は、図11で説明したエリアの波及を考慮した上で、現在位置から所定の距離の範囲に含まれるメッシュを選択し、その選択したメッシュの道路データの優先度を「高」とする。なお、この場合、その更新種別は、一般には、ファイル置換更新でもファイル編集更新でもどちらでも構わないが、ファイル編集更新を優先する場合(図4(b)参照)には、その更新種別は、ファイル編集更新が設定される。
【0093】
また、例えば、更新対象指示データにおいて、データ種類として道路データが指定され、エリアとして自車の現在位置が含まれるメッシュ番号が指定され、かつ、高速道路優先などが指定されていたときには、処理装置20は、エリアの波及を考慮した上で、現在位置から所定の距離の範囲に含まれるメッシュを選択し、その選択したメッシュの道路データのファイルの優先度を「高」とし、更新種別をファイル編集更新とし、さらに、編集対象レコードとして、高速道路を指定する。
【0094】
なお、以上の場合には、データ種別として、POIデータが指定されていないので、POIデータを更新するデータを作成する必要はない。逆に、データ種別として、POIデータが指定されたときには、道路データを更新するデータを作成する必要はない。また、当然ながら、両者を同時に更新するデータを作成することもできる。
【0095】
以上によって、地図データの更新に関し、様々な優先度を設定することができる。最も標準的な優先度の割り振りの方法は、カーナビ装置1を搭載した車両の現在位置の所定の距離の範囲内に含まれる地図データに「高」優先度を付す方法である。この場合、データ種別は、「道路データ」であっても、「POIデータ」であっても、その両方であってもよい。なお、道路の「背景データ」は、「道路データ」に含まれるものとする。
【0096】
また、道路データがその道路種別として、高速道路、国道、県道、一般道および生活道路という属性情報を有していたとき、高速道路のデータに「高」優先度を付し、他の種別の道路に「低」優先度を付すようにしてもよい。この場合には、カーナビ装置1では、高速道路のデータが優先して更新される。
【0097】
また、道路データがその道路種別として、高速道路、国道、県道、一般道および生活道路という属性情報を有していたとき、高速道路、国道、県道および一般道のデータに「高」優先度を付し、生活道路のデータに「低」優先度を付すようにしてもよい。この場合には、カーナビ装置1では、生活道路以外の道路のデータが優先して更新される。
【0098】
同様に、特定のカテゴリのPOIデータに対して、「高」優先度を付すことができる。例えば、一般的によく使用されるPOIのカテゴリとして、ガソリンスタンド、駐車場、コンビニ、ファーストフード店などがあり、それらのカテゴリのPOIデータに、「高」優先度を付すようにしてもよい。この場合には、カーナビ装置1では、ガソリンスタンド、駐車場、コンビニ、ファーストフード店などのPOIデータが優先して更新される。
【0099】
なお、どのような項目を優先するかについては、カーナビ装置1の対象データ指定処理(図5参照)において、適宜、ユーザに設定させるようにしてもよい。あるいは、地図センタ2またはカーナビ装置1が、車両の走行状況を判断して、その走行状況に応じて、優先項目を設定するようにしてもよい。例えば、車両が高速道路を走行中であったり、その目的地が現在位置から遠く離れていたりした場合には、高速道路のデータを優先して更新するようにする。また、車両が一般道を走行中で、目的地が現在位置から近い場合には、生活道路以外の道路データを優先して更新するようにする。
【0100】
以上、本発明によれば、自車位置近隣の地図データなどに高い優先度を付し、あるいは、ユーザが特に指定する種類の地図データに高い優先度を付す。そして、その高い優先度を付した地図データを優先して更新し、その更新が完了した時点で、その更新した分の地図データを利用可能にする。従って、ユーザが当面必要とする地図データについては、その更新時間が短縮されるので、ユーザにとってみれば、利用したい新地図データが短時間で利用可能になるという恩恵を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係るカーナビゲーションシステムの構成の例を示した図。
【図2】地図更新指示データの構成の例を示した図。
【図3】本発明に係る実施形態における地図データ更新の様子を、従来の場合と比較して模式的に示した図。
【図4】カーナビ装置における地図データ更新の処理フローのアウトラインを示した図。
【図5】通信による更新対象データ指定処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図6】ブリッジメディア利用時の更新対象データ指定処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図7】更新優先度管理処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図8】ファイル置換更新処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図9】ファイル編集更新処理の詳細な処理フローの例を示した図。
【図10】地図センタ2における更新データ生成の処理フローの例を示した図。
【図11】更新エリアの波及を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0102】
1 カーナビ装置
2 地図センタ
3 基地局
4 DVD
10,20 処理装置
11,21 記憶装置
12,22 通信装置
13,23 メディアドライブ
100 カーナビゲーションシステム
101 ナビ処理部
102 更新優先度管理部
103 ファイル置換更新部
104 ファイル編集更新部
105 更新データ取得制御部
111 車載地図データ
201 更新優先度管理部
202 更新データ生成形式制御部
203 ファイル置換更新データ生成部
204 ファイル編集更新データ生成部
205 更新データ配信部
206 更新メディア作成部
211 マスタ地図データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ地図データを保管した地図センタと、
車両に搭載され、前記地図センタから提供された地図データに基づき、その車両の目的地に到る誘導経路を表示装置に表示して、車両の走行経路を誘導するカーナビゲーション装置と、
を含んで構成されたカーナビゲーションシステムにおける地図データ更新方法であって、
前記地図センタは、
新地図データを前記カーナビゲーション装置に提供するときに、前記新地図データを構成する部分地図データのそれぞれに優先度を設定する優先度設定ステップと、
前記優先度を設定した前記部分地図データを、その優先度が高い順に前記カーナビゲーション装置に提供する地図データ提供ステップと、
を実行し、
前記カーナビゲーション装置は、
前記地図センタから提供される前記部分地図データを、その部分地図データに設定された優先度が高い順に取得する地図データ取得ステップと、
前記地図データ取得ステップにおいて特定の優先度までの部分地図データの取得を完了したとき、その時点までに取得した部分地図データにより、その取得した部分地図データに対応する旧地図データを更新する地図データ更新ステップと、
を実行すること
を特徴とする地図データ更新方法。
【請求項2】
前記地図センタは、さらに、
前記優先度設定ステップで少なくとも最も高い優先度が設定された前記部分地図データについて、その部分地図データに対応する旧地図データを部分的に編集してその部分地図データを生成するための編集更新データを生成する編集更新データ生成ステップ
を実行し、
前記カーナビゲーション装置は、
前記地図データ更新ステップにおいて、前記取得した部分地図データが前記編集更新データであったときには、その編集更新データを用いて、前記旧地図データを更新すること
を特徴とする請求項1に記載の地図データ更新方法。
【請求項3】
前記カーナビゲーション装置は、
ユーザが設定する前記部分地図データについてのユーザ設定優先度を取得し、その取得したユーザ設定優先度を前記地図センタへ提供し、
前記地図センタは、
前記優先度設定ステップにおいては、前記カーナビゲーション装置から提供される前記ユーザ入力優先度に基づき、前記部分地図データの優先度を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の地図データ更新方法。
【請求項4】
前記カーナビゲーション装置は、
前記車両が走行中の道路種別および前記車両の現在位置の少なくとも一方に基づき、前記部分地図データについての走行状況優先度を設定し、その設定した走行状況優先度を前記地図センタへ提供し、
前記地図センタは、
前記優先度設定ステップにおいては、前記カーナビゲーション装置から提供される前記走行状況優先度に基づき、前記部分地図データの優先度を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の地図データ更新方法。
【請求項5】
マスタ地図データを保管した地図センタと、
車両に搭載され、前記地図センタから提供された地図データに基づき、その車両の目的地に到る誘導経路を表示装置に表示して、車両の走行経路を誘導するカーナビゲーション装置と、
を含んで構成されたカーナビゲーションシステムであって、
前記地図センタは、
新地図データを前記カーナビゲーション装置に提供するときに、前記新地図データを構成する部分地図データのそれぞれに優先度を設定する優先度設定手段と、
前記優先度を設定した前記部分地図データを、その優先度が高い順に前記カーナビゲーション装置に提供する地図データ提供手段と、
を備え、
前記カーナビゲーション装置は、
前記地図センタから提供される前記部分地図データを、その部分地図データに設定された優先度が高い順に取得する地図データ取得手段と、
前記地図データ取得手段によって特定の優先度までの部分地図データの取得を完了したとき、その時点までに取得した部分地図データにより、その取得した部分地図データに対応する旧地図データを更新する地図データ更新手段と、
を備えたこと
を特徴とするカーナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記地図センタは、さらに、
前記優先度設定手段により少なくとも最も高い優先度が設定された前記部分地図データについて、その部分地図データに対応する旧地図データを部分的に編集してその部分地図データを生成するための編集更新データを生成する編集更新データ生成手段
を備え、
前記カーナビゲーション装置は、
前記地図データ更新ステップにおいて、前記取得した部分地図データが前記編集更新データであったときには、その編集更新データを用いて、前記旧地図データを更新すること
を特徴とする請求項5に記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項7】
前記カーナビゲーション装置は、さらに、
ユーザが設定する前記部分地図データについてのユーザ設定優先度を取得し、その取得したユーザ設定優先度を前記地図センタへ提供する手段を備え、
前記地図センタは、
前記優先度設定手段により前記部分地図データの優先度を設定するときには、前記カーナビゲーション装置から提供される前記ユーザ入力優先度に基づき、その部分地図データの優先度を設定すること
を特徴とする請求項5に記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項8】
前記カーナビゲーション装置は、さらに、
前記車両が走行中の道路種別および前記車両の現在位置の少なくとも一方に基づき、前記部分地図データについての走行状況優先度を設定し、その設定した走行状況優先度を前記地図センタへ提供する手段を備え、
前記地図センタは、
前記優先度設定手段により前記部分地図データの優先度を設定するときには、前記カーナビゲーション装置から提供される前記走行状況優先度に基づき、その部分地図データの優先度を設定すること
を特徴とする請求項5に記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項9】
マスタ地図データを保管した地図センタと、
車両に搭載され、前記地図センタから提供された地図データに基づき、その車両の目的地に到る誘導経路を表示装置に表示して、車両の走行経路を誘導するカーナビゲーション装置と、
を含んで構成されたカーナビゲーションシステムに用いられる地図センタであって、
新地図データを前記カーナビゲーション装置に提供するときに、前記新地図データを構成する部分地図データのそれぞれに優先度を設定する優先度設定手段と、
前記優先度を設定した前記部分地図データを、その優先度が高い順に前記カーナビゲーション装置に提供する地図データ提供手段と、
を備えたこと
を特徴とする地図センタ。
【請求項10】
前記優先度設定手段により少なくとも最も高い優先度が設定された前記部分地図データについて、その部分地図データに対応する旧地図データを部分的に編集してその部分地図データを生成するための編集更新データを生成する編集更新データ生成手段
を、さらに、備えたこと
を特徴とする請求項9に記載の地図センタ。
【請求項11】
前記優先度設定手段は、前記カーナビゲーション装置で設定され、前記カーナビゲーション装置から提供される前記部分地図データについての優先度に基づき、前記部分地図データの優先度を設定すること
を特徴とする請求項9に記載の地図センタ。
【請求項12】
前記優先度設定手段は、前記車両の現在位置から所定の距離の範囲内に含まれる前記部分地図データに最も高い優先度を設定すること
を特徴とする請求項9に記載の地図センタ。
【請求項13】
前記優先度設定手段は、前記地図データにおいて高速道路の属性を有する道路データに最も高い優先度を設定すること
を特徴とする請求項9に記載の地図センタ。
【請求項14】
前記優先度設定手段は、前記地図データにおいてPOI(Point of Interest)データのカテゴリがガソリンスタンド、駐車場、コンビニおよびファーストフード店の少なくとも1つを含むカテゴリに最も高い優先度を設定すること
を特徴とする請求項9に記載の地図センタ。
【請求項15】
マスタ地図データを保管した地図センタと、
車両に搭載され、前記地図センタから提供された地図データに基づき、その車両の目的地に到る誘導経路を表示装置に表示して、車両の走行経路を誘導するカーナビゲーション装置と、
を含んで構成されたカーナビゲーションシステムに用いられるカーナビゲーション装置であって、
前記地図センタにおいて前記新地図データを構成する部分地図データのそれぞれに設定された優先度が高い順に、前記地図センタから提供される前記部分地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記地図データ取得手段によって特定の優先度までの部分地図データの取得を完了したとき、その時点までに取得した部分地図データにより、その取得した部分地図データに対応する旧地図データを更新する地図データ更新手段と、
を備えたこと
を特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項16】
前記地図データ更新手段は、前記取得した部分地図データがその部分地図データに対応する旧地図データを部分的に編集して部分地図データを生成するための編集更新データであったときには、その編集更新データを用いて、前記旧地図データを更新すること
を特徴とする請求項15に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項17】
前記カーナビゲーション装置は、さらに、
ユーザが設定する前記部分地図データについてのユーザ設定優先度を取得し、その取得したユーザ設定優先度を前記地図センタへ提供する手段
を備えたこと
を特徴とする請求項15に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項18】
前記カーナビゲーション装置は、さらに、
前記車両が走行中の道路種別および前記車両の現在位置の少なくとも一方に基づき、前記部分地図データについての走行状況優先度を設定し、その設定した走行状況優先度を前記地図センタへ提供する手段
を備えたこと
を特徴とする請求項15に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項19】
マスタ地図データを保管した地図センタと、
車両に搭載され、前記地図センタから提供された地図データに基づき、その車両の目的地に到る誘導経路を表示装置に表示して、車両の走行経路を誘導するカーナビゲーション装置と、
を含んで構成されたカーナビゲーションシステムに用いられるカーナビゲーション装置であって、
前記地図センタから携帯型記憶メディアに記録されて提供された新地図データを構成する部分地図データに対し、前記車両の現在位置およびユーザが設定する地図データの種類の少なくとも一方に基づき、優先度を設定する優先度設定手段と、
前記新地図データを記録した携帯型記憶メディアから、前記設定した優先度が高い順に前記部分地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記地図データ取得手段によって特定の優先度までの部分地図データの取得を完了したとき、その時点までに取得した部分地図データにより、その取得した部分地図データに対応する旧地図データを更新する地図データ更新手段と、
を備えたこと
を特徴とするカーナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−309677(P2008−309677A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158438(P2007−158438)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】