説明

地図表示制御装置

【課題】 広範囲にわたって、簡易に建築物の外観を含む景観を視覚的に確認可能な地図表示を実現する。
【解決手段】 地図表示制御装置は、地図データベースに格納された描画DB224、画像DB226を用いて地図表示を制御する。画像DB226には、地図中の各建築物の外観を多方向から撮影した複数の写真が格納されている。各写真は、建築物周辺の通路Ra等と関連づけられている。ユーザが、通路Raを指定すると、地図表示制御装置は、通路Raに対応づけられた画像データIma1を読み込み、建築物BULaの位置に、この画像データを表示させる。こうすることで、2次元地図でありながら、建築物の外観を容易に確認することができ。通路の指定を変えることで、多方向から外観を確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通行可能な通路と該通路に面した建築物を地図表示する地図表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通行可能な通路と該通路に面した建築物を地図表示する地図表示装置が提案されている。特許文献1記載の地図表示装置(以下、「第一の地図表示装置」という)は、通路と該通路に面した建築物を表すアイコンから成る二次元地図データと、建築物を撮影した写真データとを、建築物の位置に基づいて関連づけて記憶し、表示した前記二次元地図上で建築物のアイコンが指定されると、その指定された建築物の写真データを読み出し、建築物の写真を表示する。
【0003】
この第一の地図表示装置によれば、二次元地図によって建築物の概略位置を視覚的、直感的に把握した上で、建築物を指定することができる。また、この指定に応じて表示される外観写真によって、建築物に対する施工例を知ることができる。さらに、好みの施工例が見つかり、見学に行こうとする場合にも、二次元地図により、現地までの経路を即座に知ることができる。
【0004】
また、特許文献2記載の地図表示装置(以下、「第二の地図表示装置」という)は、通路と該通路に面した建築物の三次元地図データを記憶し、任意の空間点が指定されると、前記三次元地図データを読み出し、三次元地図を表示する。
【0005】
この第二の地図表示装置によれば、任意の空間点から眺めた建築物の外観や隣近所、街の様子(以下、「景観」という)を知ることができ、さらに、視点を通路に沿って移動させることにより、街を実際に散策したかのように、景観を知ることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−056373号公報
【特許文献2】特開平11−232484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、建築物の外観を含む景観から取得することのできる情報(以下、「景観関連情報」という)は多く、かつ、この景観関連情報を活用することで、商品やサービスの営業効率を高めることができる。
【0008】
たとえば、建築物の敷地内における車庫の広さ、その車庫に駐車している車の車種や年式、台数などは、景観関連情報に該当する。車両の営業員は、この景観関連情報に基づき、新車の買替需要の強さや買い替える場合の新車の車種などを判断することができ、新車の販売確率を高めることができる。
【0009】
その他の例として、建築物の敷地内における庭の広さ、その庭の植木・盆栽などの景観関連情報に基づき、植木・盆栽などの購入や手入れ作業需要の強さを判断することができる。同様に、建築物の老朽化状態などの景観関連情報に基づき、家屋工事需要の強さを判断することができる。
【0010】
従来、これらの景観関連情報は、営業員が現地に赴くことで取得されてきたが、情報収集効率の更なる改善が望まれていた。このような更なる効率化の観点から、近年、地図表示装置への期待が高まっている。地図表示装置により、景観を知ることができれば、現地に赴くことなく景観関連情報を取得することができるからである。
【0011】
しかし、先に説明した第一の地図表示装置では、目的に応じた十分な景観関連情報を取得することはできない。すなわち、第一の地図表示装置で表示される写真としては、通常、建築物そのものを商品あるいはサービスの対象としてとらえ、その価値を最大に表す箇所を最良の角度で写せる場所から撮影されたものが用いられる。たとえば、建築物が一戸建てであり、広い庭とその庭に面したリビングがセールスポイントである場合は、庭とリビングを庭の隅から撮影した写真が用いられる。営業等の種々の目的に十分活用可能な景観関連情報としては、このような画一的なものでは十分とは言えない。現地で実際に建築物を見るように、種々の方向から建築物の外観を確認できることが好ましい。
【0012】
一方、第二の地図表示装置では、街を実際に散策したかのように、景観を知ることができる反面、二次元地図のように広範囲を一度に見渡すという効果に乏しい。すなわち、第二の地図表示装置にて指定した空間点から見渡すことのできる範囲はその空間点の近傍だけであって、一度に取得できる景観関連情報は僅かである。また、景観を広範囲に知ろうと思えば、その範囲内の全ての通路について視点を移動することとなるが、一度に見渡せる範囲が狭いため道に迷ってしまい、うまく景観関連情報が取得できないか、できたとしても多くの時間を要する。さらに、商品やサービスの販売先が特定され、訪問しようとする場合、現地までの経路を即座に知ることもできず、不便である。
【0013】
しかも、三次元地図データを製造するには膨大な時間と費用とが必要であり、しかもデータ容量が膨大となるため、大型の記憶装置とこれを高速に処理する大型のコンピュータが必要となる。第2の地図表示装置では、比較的制限されたコンピュータの処理能力で三次元地図表示を実現できるように建築物の三次元地図データ容量を削減するため、建築物の形状、および外観は、簡素化する必要がある。かかる三次元地図データが用いられた場合には、必ずしも営業等の種々の目的に十分活用可能な景観関連情報を得ることはできない。
【0014】
本発明の目的は、広範囲にわたって建築物の位置関係を把握したり、目的の建築物までの経路を把握したりすることが可能であるという二次元地図の長所と、各建築物について、より現地で見た状態に近い外観を知ることができるという長所とを併せ持つ地図表示を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題の少なくとも一部を解決するためになされた本発明の地図表示制御装置は、通行可能な通路と該通路に面した建築物を地図表示するための地図表示制御装置であって、
前記通路を表現する通路データと、前記建築物の画像データとを含み、該通路データと画像データとが関連づけられている地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
少なくとも一つの前記通路データを指定する通路データ指定手段と、
前記地図データ記憶手段を参照して、少なくとも前記通路データ指定手段により指定された通路データに関連する前記画像データを用いて地図表示するための表示用データを提供する表示用データ提供手段と、
を備えている。
【0016】
本発明の地図表示制御装置によれば、表示用データの提供を通じてディスプレイへの地図の表示を制御することができ、この際、通路データの指定に応じて、建築物の画像データを地図中に表示することができる。従って、当該通路周辺の景観に関し、営業員が現地に赴くことなく景観関連情報を取得することが可能となる。通路に複数の建築物が関連づけられている場合は、各建築物を逐一指定するまでなく広範囲にわたって各建築物の画像を見ることもできる。また、建築物の外観は、画像データによって与えられるから、三次元地図データは不要であり、地図表示の処理負荷も比較的軽く抑えることができる利点がある。
【0017】
建築物の画像データと通路データとの関連づけは種々の基準で設定可能である。例えば、画像データと通路データとを、建築物と通路との位置関係に基づいて関連づけてもよい。かかる例には、画像データを、その建築物が面した通路の通路データに関連づける方法が含まれる。また、両者を建築物の視認可能性に基づいて関連づけてもよい。かかる例には、画像データを、その建築物を視認可能な通路のうち最も近接した通路の通路データに関連づける方法が含まれる。これらの関連づけにより、通路データを指定した際に、より現実に近い景観を認識可能な地図表示を行うことができる。
【0018】
地図データ記憶手段に記憶される画像データとしては、建築物の外観を表す写真、コンピュータグラフィックス画像などを用いることができる。画像データは、一の建築物に対して一である場合に限られず、複数であることも許容される。例えば、異なる通路から撮影した画像データなど描写方向の異なる複数種類の画像データ、同一の通路から撮影した日時の異なる画像データなど異時的な画像データ、建築物周辺の背景を含む撮影範囲が異なる画像データなど画角の異なる複数種類の画像データ、或いはこれらの要素を組み合わせて変化させた画像データなどが含まれる。複数種類の画像データを用意することにより、多様な景観関連情報を提供することが可能となる。
【0019】
建築物の画像の表示も種々の方法を採ることができる。表示方法としては、例えば、画像の位置を建築物の位置や入口、門などの建築物にアクセスできる場所に合わせて表示する方法、建築物の占有面積に応じたサイズで画像を表示する方法、隣接した建築物の間隔に応じた間隔で各建築物の画像を配列して表示する方法などが挙げられる。更に、画像表示は、一の建築物に対し一である場合に限られず、複数であることも許容される。かかる表示には、複数の画像を配列して同時に表示することや、複数の画像を交互に表示することなどが含まれる。
【0020】
本発明において、地図データ記憶手段は、一の建築物についての複数種類の画像データを、一又は複数の通路データに関連づけて記憶してもよい。例えば、建築物を一方向から異時的に撮影した複数種類の画像データを用いる場合には、これらの画像データを、一の通路データに関連づけて記憶させる方法を採ることができる。別の例として、複数の通路データに画像データを関連づけておく場合には、これらの複数種類の画像データとしては、複数の通路側から建築物を見た状態の画像データを用いることができる。複数の画像データと通路データとは必ずしも1対1に関連づけられている必要はなく、n対m(n,mは自然数)で良い。また、一部の画像データが、複数の通路データに重複して関連づけられていてもよい。通路データが指定されると、指定された通路データとその通路から撮影した建築物の画像データが読み出され、表示される。
【0021】
こうすることにより、複数の時点での建築物の外観を確認したり、現地における通路との位置関係に応じて建築物の外観を多方向から確認したりすることが可能となる。複数の通路は、必ずしも建築物に面している必要はなく、例えば、建築物周辺で建築物を視認可能な通路としてもよい。また、建築物が複数の通路に面しているとき、たとえば、建築物が角地に建築されているときには、建築物が面している各通路に対して画像データを関連付けるものとしてもよい。
【0022】
複数種類の画像データとして、建築物の描写方向が異なる画像データを用意し、その描写方向に応じた対応関係で通路データに関連づけるようにしてもよい。例えば、建築物が面している通路には、正面からの画像データ、建築物の背面の通路には、背面からの画像データを関連づける態様が挙げられる。このように描写方向を踏まえた対応関係とすることにより、現地で確認するのにより近い状態で景観関連情報を提供することができる。
【0023】
本発明において、
前記通路データ指定手段は、複数の前記通路データを指定可能であり、
前記表示用データ提供手段は、前記通路データ指定手段により指定された複数の前記通路データに関連する前記画像データが複数存在する場合、所定の条件に基づいて、一部の画像データを選択し、地図表示するための表示用データを提供する
ようにしてもよい。こうすることで、煩雑さを避けつつ、景観関連情報を提示することができる。
【0024】
たとえば、角地に建築されている建築物に面する二つの通路が指定された場合、両通路から撮影した建築物の画像データが複数存在することとなるが、所定の条件に基づいて、一の画像データを選択し、読み出すのである。所定の条件とは、たとえば、指定された通路の種別(国道/県道/市道他)や幅、建築物の外面(正面(玄関)/側面/裏面)に応じて予め定めた優先順位などである。また、これに限らず、ユーザの選択であってもよい。また、通路指定は、二つに限らず、全指定であってもよい。
【0025】
本発明において、通路データ指定手段は、指定可能な前記通路データの候補を地図形式で提示し、該提示した候補の中から前記通路データの指定を受け付けるものとしてもよい。この発明により、ユーザは、表示された通路データの地図に基づき、概略の位置関係を把握した上で、地図上で通路データを指定することが可能となり、通路データの指定が視覚的、直感的なものとなる。通路の候補は、この他、通路名称などを用いたリストの形式で表示するようにしてもよい。通路の指定は、上述の地図またはリストに基づいて個別に行ってもよいし、属性で通路群を指定するようにしてもよい。例えば、南北の通り、東西の通りなどの方向属性による指定、2車線以上の通りなど幅属性による指定、国道、県道など種別属性による指定等が含まれる。また、個別に指定された通路に平行な通路、または指定された通路と交差する通路などが自動的に併せて指定されるようにしてもよい。これらの指定を可能とするためには、それぞれ指定に用いられる属性情報や、通路同士の交差関係などを通路データに関連づけて記憶させておけばよい。
【0026】
本発明は、必ずしも上述した特徴の全てを備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして構成することが可能である。また、上述した特徴に代えて、または上述した特徴と共に、次のような特徴を備えるものとしてもよい。第1に、地図に表示される画像は、地図の表示縮尺に応じて、表示サイズを拡大・縮小させてもよい。この場合、単一の画像データの解像度変換によって表示サイズを変更させてもよいし、表示サイズに応じて2以上の画像データを使い分けるようにしてもよい。後者の方法によれば、例えば、表示サイズが比較的大きい場合(すなわち大縮尺の場合)には、建築物の背景が含まれた画像データを用い、その他の場合(すなわち小縮尺の場合)には、背景を省略して建築物自体を全体に表示可能な画像データを用いるようにしてもよい。拡大・縮小に応じて、このように背景の有無を切り換えることで、図の煩雑化などを回避しながら、適切な景観関連情報を提供することが可能となる。また、画像データの表示/非表示を、車庫や敷地内の植木・盆栽の有無、建築物の老朽化状態などの建築物の属性に基づいて制御してもよい。かかる方法によれば、景観関連情報の目的、例えば、車両の買い換え需要、植木・盆栽の手入れ作業の需要、家屋工事の需要の調査などの目的に合致した建築物の画像データのみを表示することができ、営業員等による景観関連情報の収集効率を更に高めることができる。このような制御は、例えば、画像データまたは建築物のデータに上述の「属性」を関連づけて登録しておき、地図表示時に、表示対象となる「属性」の指定を受付、これに応じた画像データを抽出して表示することで、実現可能である。
【0027】
第2に、指定された通路以外の通路に対応づけられた建築物の画像データについては、種々の処理方法が適用可能である。例えば、これらの画像の表示を省略すれば、シンプルで視覚的に把握しやすい地図を提供することができる。指定された通路以外の通路データに関連づけられた画像データについても、所定の規則に基づいて表示するようにすれば、煩雑な通路指定を行うまでなく、広範囲にわたって景観関連情報を提示できる地図表示が可能となる。例えば、指定された通路と平行な通路が指定されたものとみなすという規則に基づいて、画像の表示を行うようにしてもよい。また、指定された通路と各建築物との間に、その建築物に関連づけられた通路データが存在するか否かに基づいて、画像の表示を制御するようにしてもよい。
【0028】
第3に、画像の表示については種々のモードを切り換え可能に用意してもよい。例えば、指定された通路に対して、その通路側から建築物を見た画像を表示する「正面視モード」と、その通路の裏側から建築物を見た画像を表示する「背面視モード」とを用意し、両者をユーザの指示に応じて切り換え可能としてもよい。例えば、現地で「背面視モード」を利用することにより、通路側からは現実の建築物の外観を確認しながら、容易に背面からの画像を参照することが可能となる。
【0029】
本発明の地図表示制御装置は、スタンドアロン型の装置、サーバと端末の組み合わせなど、種々の形式で構成することができる。地図表示を行うべきディスプレイと、地図表示制御装置とは、一体であってもよいし、別体であっても構わない。また、地図データ記憶手段は、必ずしも一体的に装置に内蔵されている必要はなく、例えば、ネットワークで接続されたサーバ、地図データを記憶した記憶媒体などの形で用意してもよい。
【0030】
本発明は、上述した地図表示制御装置としての態様のみならず、種々の態様で構成することができる。たとえば、地図表示制御装置による地図表示に使用される電子化された地図データとして構成してもよい。この場合、地図データは、画像データの撮影日時などの日時情報を、該画像データに関連づけしてもよい。こうすることにより、画像データの表示を、日時情報に基づいて表示することも可能となる。
【0031】
また、コンピュータを用いて、通行可能な通路と該通路に面した建築物を地図表示するための地図表示方法として構成してもよい。さらに、かかる地図表示機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム、およびかかるコンピュータプログラムを記録した記録媒体として構成してもよい。ここで、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。さらに、通行可能な通路と該通路に面した建築物の表現方法や、かかる表現方法の建築物地図として構成してもよい。この場合、建築物地図は、紙に印刷してもよいし、電子地図であってもよい。いずれの場合であっても、広範囲にわたって建築物の位置関係を把握したり、目的の建築物までの経路を把握したりすることが可能であるという二次元地図の長所と、各建築物について、より現地で見た状態に近い外観を知ることができるという長所とを併せ持つことが可能である。紙等の媒体に建築物地図を表現する場合には、地図中に表現された画像と通路との対応関係を表す表示を併せて付すことが好ましい。かかる表示としては、例えば、各画像の描写方向を示すための矢印その他の表示、各画像と通路とを結ぶ線などの表示が挙げられる。
【0032】
本発明は、更に、紙媒体としての建築物地図を製作する地図製作方法として構成してもよい。この地図製作方法としては、例えば、コンピュータが実行する工程として、先に説明した地図データの記憶、地図を製作する際の条件として、少なくとも一つの通路データの指定の受付け、指定された通路データに関連する画像データを用いた地図の印刷用データの生成の各工程を含み、こうして得られた印刷用データを用いて印刷を行うことにより、実現することができる。画像データの選択に際しては、先に地図表示制御装置で説明した種々の特徴を反映可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施例について以下の順序で説明する。
A.システム構成:
B.データ構造:
C.通路指定処理:
D.地図表示処理:
E.画像データ配置処理:
F.地図表示例:
G.変形例:
【0034】
A.システム構成:
図1は実施例としての地図表示システムの全体構成を示す説明図である。本実施例の地図表示システムは、例えば、営業員などが現地に赴く前に、地図を閲覧し、営業先となる建築物を選定する際に活用可能である。かかる作業を支援するため、地図表示システムは、各建築物の外観を表す画像を、地図と併せて表示する機能を有している。地図表示システムは、多様な用途に利用可能であるが、以下では、一例として、上述の用途を例示しながら構造、機能について説明する。
【0035】
実施例の地図表示システムは、地図表示制御装置として機能するサーバ200と、ユーザが利用する表示端末100をネットワークNETで接続することで構成される。ネットワークNETとしては、例えば、携帯電話回線などを利用することができる。表示端末100は、図示した例に限らず、サーバ200に対して複数台接続することが可能である。
【0036】
表示端末100は、車載のナビゲーション装置や携帯電話などを利用することができる。図中に表示端末100の機能ブロックを併せて示した。これらの機能ブロックは、表示端末100に搭載されたマイクロコンピュータに所定のプログラムを実行させることでソフトウェア的に構成されるが、ハードウェア的に構成することも可能である。
【0037】
各機能ブロックは、主制御部110の制御下で、それぞれ次に示す機能を実現する。通信部120は、ネットワークNETを介した通信を制御する。GPS140は、全地球測位システム(Global Positioning System)を利用して、表示端末100の現在位置の緯度、経度を検出する。コマンド入力部130は、スイッチ等に対するユーザ操作に基づいて、経路探索や地図表示に関するコマンドを入力する。地図表示に関するコマンドとしては、図示した通り、通路の指定、表示モード、ズームなどが挙げられる。通路の指定とは、後述する通り、地図中に表示される画像の種類を制御するための指定パラメータである。これらの指定は、サーバ200に送信される。表示制御部150は、表示端末100のディスプレイに、上述したコマンド入力用のメニュー、地図などを表示させる。
【0038】
サーバ200は、表示端末100からのコマンドに基づいて、地図表示するための表示用データを生成したり、経路探索を行ったりし、その結果を表示端末100に提供する。かかる機能を実現するための機能ブロックを図中に示した。これらの機能ブロックは、サーバ200のCPUが実行するコンピュータプログラムによって、ソフトウェア的に構成されるが、ハードウェア的に構成することも可能である。
【0039】
地図DB220は、経路探索および地図表示に使用される電子地図データベースである。本実施例では、地図DB220には、道路ネットワークDB222と、描画DB224、画像DB226が含まれる。道路ネットワークDB222は、経路探索に利用されるデータベースであり、道路の接続状態をリンクやノードで表したデータ、通行規制情報、およびリンクの評価値であるコストなどを記録している。描画DB224は、地図を表示するためのポリゴンデータである。画像DB226は、ユーザによる通路指定に応じて、地図中に併せて提供される画像データを格納するデータベースである。本実施例では、各建築物の外観を表す画像データを格納している。地図DB220への情報の書き込み、読み出しは、DB管理部208によって制御される。
【0040】
通信部202は、ネットワークNET経由での表示端末100との通信を制御する。通信される情報には、通路指定、表示モード、ズームなどの地図表示用のコマンド、および地図表示をするための表示用データが含まれる。また、出発地、目的地、経由地の指定その他の経路探索用のコマンド、経路探索結果も含まれる。
【0041】
経路探索部206は、ユーザから指定されたコマンドに基づき、経路探索を行う。経路探索には、例えば、ダイクストラ法など周知の方法を利用可能である。この機能を利用することにより、サーバ200は、例えば、地図表示に応じて、ユーザが目的地の建築物を指定すると、表示端末100のGPS140で検出された現在地点等を出発点として、建築物までの経路を探索することができる。
【0042】
先に説明した通り、地図表示システムは、各建築物の外観を表す画像を地図と併せて表示することができる。画像表示の有無および種類は、ユーザが通路を指定することで制御することができる。サーバ200は、この表示を実現するために、以下に説明する機能ブロックを備えている。
【0043】
通路指定受付部204は、ユーザによる通路指定のためのインタフェース画面の提供、および通路指定のためのコマンド入力を行う。ユーザが属性等で通路を指定した場合には、指定された属性等に該当する通路を特定する機能も奏する。
【0044】
地図表示制御部210の内部に備えられた画像データ抽出部212は、こうして指定された通路に基づき、画像DB226から、表示すべき画像データを抽出する。地図表示制御部210は、こうして抽出された画像データおよび描画DB224に格納されたポリゴンデータを用いて表示用データを生成し、通信部202を介して表示端末100に提供する。
【0045】
B.データ構造:
図2は描画DB224、画像DB226のデータ構造を示す説明図である。図の右上に示した地図PVを例にとって、データ構造を説明する。この地図PVでは、4本の通路Ra、Rb、Rc、Rdがそれぞれポリゴンで表現されている。通路Raのポリゴンは、点Pa1、Pa2、Pa3、Pa4を頂点とする。描画DB224中の通路ポリゴンデータ224aには、上述のポリゴンを表すデータが格納されている。具体的には、図示する通り、通路の名称(Ra、Rb等)が格納されるとともに、各通路のポリゴンを構成する頂点(Pa1、Pa2等)の座標が、(緯度、経度)の形式で格納されている。図示を省略したが、各通路に対しては、道路種別、車線などの属性データが併せて記憶されている。
【0046】
4本の通路で囲まれた領域には、5つの建築物が建造されている。建築物BULaは、位置Caを重心とするポリゴンで表現されている。描画DB224中の建築物ポリゴンデータ224bには、建築物の名称(BULa等)が格納されるとともに、その重心(Ca等)の座標、建築物を表現するためのポリゴンの頂点座標が格納されている。但し、図の煩雑化を回避するため、重心およびポリゴンの頂点座標は図示を省略した。また、各建築物については、住所、世帯主または所有者の名称、車庫や敷地内の植木・盆栽の有無、建築物の老朽化状態などが属性データとして管理されている。なお、本実施例において、建築物の属性データは、地図データの提供者が予め調査した結果を記憶しておく構成を採用しているが、これに限らず、事後的に営業員が書き込む若しくは書き換える構成を採用することもできる。かかる場合には、営業員の入手した最新情報に基づいて、建築物の属性を記憶することもできる。また、各建築物毎の営業履歴を書き込む構成としてもよい。
【0047】
建築物BULaには、四方向からその外観を撮影した写真が画像DB226に格納されている。通路Raに面した外観、即ち矢印Va方向に見た外観は、画像Imaである。正面画像Imaについては、画角が小さい画像Ima1と、画角が大きい画像Ima2が用意されている。矢印Vc方向に見た外観は、画像Imcである。矢印Vd方向に見た外観は、画像Imdである。矢印Vb方向に見た外観は、得られていないため、空白とされている。各画像データには、撮影日時が、属性情報として付されている。画像DB226には、写真に代えて、コンピュータグラフィックス等で生成した画像データを格納しておいてもよい。
【0048】
描画DB224には、上述した各データを関連づけるリレーショナルデータ224cが格納されている。本実施例では、図示する通り、通路、建築物、正面画像、背面画像を相互に関連づける形式を採用した。リレーショナルデータ224cは、図示した形式に限らず、通路ポリゴンデータ224a、建築物ポリゴンデータ224b、および画像DB226の相互の関連が定義可能な種々の形式を採ることが可能である。
【0049】
本実施例では、建築物BULaは、通路Raに面しているため、通路Raと関連づけられる。また、通路Raから見た正面画像Ima、および通路Raから見た場合の背面画像Imcも併せて関連づけられる。建築物BULaは、同様にして、他の通路Rb、Rc、Rdとも関連づけられている。正面画像、背面画像は、各通路から見た方向を基準として関連づけられる。例えば、通路Rc側から見た場合、即ち右上図の矢印Vc方向から見た場合には、正面画像はImcとなり、背面画像はImaとなる。各画像と通路の関連づけは任意に設定可能である。例えば、各画像を建築物が面している通路に関連づけるようにしてもよいし、画像の撮影方向に合わせて建築物を視認できる通路に関連づけるようにしてもよい。また、必ずしも建築物に最も近い通路に関連づける必要はなく、数本離れた通路に関連づけるようにしてもよい。
【0050】
ここでは、建築物BULaについてのみ関連づけを示したが、他の建築物についても関連づけが行われる。リレーショナルデータ224cにおいては、一の建築物、または画像が複数の通路と関連づけられていてもよいし、一の通路が複数の建築物、または画像と関連づけられていてもよい。また、図2の例では、建築物BULaは、その周囲の4本の全通路と関連づけられている場合を例示したが、一部の通路との関連づけを省略しても差し支えない。
【0051】
C.通路指定処理:
図3は通路指定処理のフローチャートである。ユーザが表示端末100を操作して送信したコマンドに応じて、サーバ200が実行する処理である。この処理が開始されると、サーバ200は、通路指定用のモード指定を入力し(ステップS10)、モードに応じて通路の指定を受け付ける(ステップS11)。本実施例では、属性指定、リスト指定、マップ指定の3つのモードを用意した。本実施例では、これらのモードを使い分け可能としているが、いずれか1種類のモードに固定しても良い。
【0052】
リスト指定モードが選択されている場合、サーバ200は、表示端末100に、通路リストを表示し(ステップS14)、指定を受け付ける(ステップS15)。図中に、表示リストの例を示した。この例では、通路名称がリスト表示される。ユーザが通路を指定すると、その通路には、チェックマークが付される。リストは、通路名称のみならず、「北から○本目の東西の通り」という表示で行っても良い。
【0053】
マップ指定モードが選択されている場合、サーバ200は、ユーザが指定した領域の地図を表示し(ステップS16)、指定を受け付ける(ステップS17)。図中に地図の表示例を示した。この例は、マウス等のポインティングデバイスP0でクリックすることにより、通路Rが指定された状態を示している。
【0054】
マップ指定モードにおいて、通路が指定されると、サーバ200は、オプション指定を受け付ける(ステップS518)。ステップS16の図中に示す通り、本実施例では、「平行」、「交差」の2つのオプションを用意した。「平行」とは、ユーザが指定した通路に平行な通路を一括指定する機能である。「交差」とは、ユーザが指定した通路に交差する通路を一括指定する機能である。ユーザが、地図表示画面で、これらのボタンをクリックすると、それぞれのオプションを指定することができる。オプション指定は、省略しても差し支えない。
【0055】
属性指定モードでは、通路の属性によって、通路指定を行う。サーバ200は、まず、表示端末100に、属性入力画面を表示させ(ステップS12)、属性入力を受け付ける(ステップS13)。図中に画面例を示した。この例では、道路種別、車線数、ヘディングに基づいて属性を指定する。道路種別は、国道、県道などからいずれかの種別を選択する。車線は、「4車線」(車線幅が4車線超であることを意味する)、「2車線」等からいずれかを選択する。「ヘディング」の指定については後述する。これらの属性は、必ずしも全てを指定する必要はなく、一部のみを指定しても構わない。図の例では、「国道」、「2車線」が選択されており、ヘディングは指定が省略されていることになる。指定に用いられる属性は、ここに例示したものに限られない。例えば、「東西」、「南北」など通路の方向を属性として用いても良い。
【0056】
サーバ200は、以上の処理によって通路が指定された結果を保存し(ステップS19)、通路指定処理を終了する。
【0057】
図4はヘディング指定について示す説明図である。図示する通り、上方を「北」とする地図を例にとって説明する。この地域には、建築物B1、B2が存在する。建築物B1は、通路St1〜St4と関連づけられている。建築物B2は、通路St5〜St8と関連付けられている。
【0058】
例えば、先に図3のステップS12で示した「ヘディング」属性における「北」の指定は、北側を見た状態(矢印Vs方向)の景観に相当する画像を用いて、北を上にした地図表示を行うことを意味する。かかる表示を実現するため、この指定に対しては、東西に走る通路St2、St4、St6、St8が一括して指定される。この時、建築物B1は、通路St2、St4に関連づけられているため、矢印Vs方向に見た画像と、矢印Vn方向に見た画像の双方が表示される可能性がある。建築物B2も通路St6、St8に関連づけられているため、やはり矢印Vs方向に見た画像と、矢印Vn方向に見た画像の双方が表示される可能性がある。ただし、後述する通り、表示時の制御によって、ヘディングの指示方向、この例では矢印Vs方向の画像が優先的に表示される。
【0059】
同様にして、ヘディング「南」が指定された場合は、東西の通路が一括指定される。ヘディング「東」、「西」が指定された場合には、南北の通路が一括指定される。建築物が2本以上の通路に関連づけられる結果となる時は、後述する表示制御によって、ヘディング「南」、「東」、「西」のそれぞれに対し、矢印Vn、Ve、Vw方向の画像が優先的に表示される。
【0060】
上述の指定方法は、ヘディング指定における一例に過ぎない。例えば、ヘディング「北」が指定された場合には、南北に走る通路を一括指定するような設定としてもよい。
【0061】
D.地図表示処理:
図5は地図表示処理のフローチャートである。通路指定処理(図3)の結果を受けて、サーバ200が実行する処理である。この処理が開始されると、サーバ200は、表示を制御するための表示パラメータを入力する(ステップS30)。表示パラメータには、例えば、地図表示範囲、表示モード、表示スケールの指定が含まれる。
【0062】
次にサーバ200は、図3の処理結果、即ち通路指定結果を読み込む(ステップS31)。そして、この結果に応じて、指定された通路と関連づけられた画像データを抽出する(ステップS32)。画像データの抽出は、先に図2に示したリレーショナルデータ224cを参照して行われる。
【0063】
図中に画像データの抽出方法を示した。表示モードとして背面モードが指定されている場合には、リレーショナルデータ224cを参照して、指定された通路に関連づけられている背面画像データを抽出する。通路Raが指定されている場合には、先に図2で示した建築物BULaについて、背面の画像Imcが抽出されることになる。背面モードは、例えば、営業員などが現地に赴いた場合に有用である。背面モードでの表示を行わせることにより、営業員は、建築物の正面の外観は現地で直接確認しつつ、その背面の様子を容易に比較観察することが可能となる。
【0064】
正面モードが指定されている場合には、正面画像データを抽出する。通路Raが指定されている場合には、先に図2で示した建築物BULaについて、正面の画像Imaが抽出されることになる。この例では、2種類の画像データが用意されているため、ステップS30で指定された表示スケールが小さい場合には、建築物を画像全体に表示可能なデータIma1を選択し、表示スケールが大きい場合には、周辺も表示可能なデータIma2を選択する。両者を使い分ける閾値となるべき表示スケールについては、画像の内容などに応じて任意に選択可能である。また、3種類以上の画像データを使い分けるようにしても構わない。
【0065】
サーバ200は、画像データの抽出が完了すると、描画DB224に格納されたポリゴンデータを用いて地図描画を行い(ステップS33)、これに重ねて画像データを配置する(ステップS40)。画像データの配置方法については後述する。そして、サーバ200は、得られた地図表示データを表示端末100に出力して(ステップS50)、地図表示処理を終了する。
【0066】
E.画像データ配置処理:
図6は画像データ配置処理のフローチャートである。地図表示処理(図5)のステップS40に対応する処理である。
【0067】
サーバ200は、まず、配置すべき画像データおよび建築物データを入力する(ステップS41)。建築物データとしては、建築物の位置、および敷地の占有面積を用いるものとした。
【0068】
次に、サーバ200は、入力された画像データに、重複画像、即ち同一建築物の画像データが含まれているか否かを判断する(ステップS42)。重複画像が存在する場合には、地図表示に用いるべき画像データ(「表示画像データ」と称する)を選択する(ステップS43)。本実施例では、この選択は、「ヘディング」→「車線」→「種別」の優先順位で選択するものとした。
【0069】
例えば、先に説明した図4において、ヘディング「北」が指定されている場合を考える。この時、建築物B1については、通路St2、St4にそれぞれ関連づけられた2枚の画像が重複画像として抽出されることになる。サーバ200は、ヘディング「北」の指定を考慮し、矢印Vs方向に見た画像、即ち、建築物の南側に位置する通路に関連づけられた画像を表示画像データとして選択する。この結果、建築物B1に対しては、通路St2に関連づけられた画像が選択されることになる。同様にして、建築物B2に対しては、通路St6に関連づけられた画像が選択されることになる。
【0070】
ヘディングを考慮しても表示画像データが選択できない場合には、車線、種別を順次考慮する。「車線」については、広い通路を優先する。「種別」については、国道、県道、その他の順に優先する。もっとも、これらの選択基準は、図6の例に限らず、任意に設定可能である。重複画像がない場合には(ステップS42)、上述の選択処理(ステップS43)はスキップされる。
【0071】
こうして各建築物につき、1つの表示画像データが決まると、サーバ200は、表示モードに応じた配置処理を実行する(ステップS44)。本実施例では、画像を可能な限り大きく表示する「画像大表示」モードと、建築物の敷地に適合したサイズで画像を表示する「敷地フィット表示」モードとを用意した。
【0072】
画像大表示モードが指定されている場合には、サーバ200は、建築物の敷地に拘束されることなく、可能な限り大きく表示されるように、各画像の表示サイズを設定する。但し、この設定は、通路および他の画像に重ならないという条件下で行うものとした。更に、複数の建築物に対応した画像が存在する場合、各画像の面積比を、各建築物の敷地面積比に一致させるという拘束条件を付しても良い。図中には、この付加的な拘束条件も考慮した場合の画像サイズの設定例を示した。ハッチングを付した矩形が画像PIC1、PIC2を表しており、その内部の太い実線の矩形が建築物の敷地を表している。画像大表示モードでは、このように敷地をはみ出して、画像を表示することができるため、建築物の外観を確認しやすいという利点がある。
【0073】
敷地フィット表示モードが指定されている場合には、サーバ200は、建築物の敷地にフィットするよう画像の表示サイズを決定する(ステップS46)。図中に、画像PIC1、PIC2を例示した。各画像は、それぞれ太い実線で示した建築物の敷地と一致したサイズで表示される。なお、画像と敷地の縦横比が異なる場合には、敷地をはみ出さない範囲で、画像の縦または横の一方を敷地に合わせるよう画像サイズを設定すればよい。
【0074】
サーバ200は、これらの処理が終わると、建築物位置に画像の代表点を合わせて画像を配置する(ステップS47)。代表点は、例えば、画像の重心位置、画像の頂点などを用いることができる。かかる配置で、画像同士が重なる場合には、重なりを回避するよう、位置の微修正を併せて行ってもよい。
【0075】
画像の配置は、図6の例に関わらず、種々の方法を採ることができる。例えば、表示モードの使い分けをせず、いずれか一つの表示モードを固定的に使用するようにしてもよい。また、ステップS42、S43の処理を省略し、重複画像が存在する場合には、全画像を表示するようにしてもよい。この方法としては、重複画像の表示サイズを縮小して配列する方法、重複画像を所定の時間間隔で交互に表示する方法、ユーザの指示に応じて交互に表示する方法などを採ることができる。
【0076】
F.地図表示例:
図7は実施例における地図表示例を示す説明図である。ヘディングを東西南北の4方向に変えた場合の状態をそれぞれ表示した。最上段の図HEがヘディング「東」の状態を示し、反時計回りに配列された図HN、HW、HSが、それぞれヘディング「北」、「西」、「南」の状態を示している。
【0077】
図示する通り、ヘディングに応じて、建築物B1の表示画像が変化する。ここでは、建築物B1に対して、図2に示した画像DB226の各画像が、矢印Va方向を「北」とする位置関係で関連づけられているものとして説明する。
【0078】
ヘディング「北」(図HN)の時には、図6のステップS43で示した表示画像データの選択処理の結果、建築物B1の南に位置する通路St2に関連づけられた画像Imaが表示される。ヘディング「西」(図HW)に切り換えると、表示画像データが変更され、建築物B1の位置には、通路St3に関連づけられた画像Imb、即ち空白が表示される。同様にして、ヘディング「南」(図HS)では通路St4に関連づけられた画像Imcが表示され、ヘディング「東」(図HE)では通路St1に関連づけられた画像Imdが表示される。図示を省略したが、同様にして、建築物B2についても、ヘディングの方向に応じて、通路St5〜St8にそれぞれ関連づけられた画像が表示される。このように、本実施例によれば、各建築物について、ヘディングに応じた外観を確認することができる。なお、上述する場合において、空白を表示する代わりに、建築物の所有者の名称、建築物の名称、住所、建築物の種類(一般家屋、ビル、工場など)などの書誌的情報や、予め登録された家枠を表示するよう構成することも可能である。
【0079】
図8は実施例における地図の拡大表示例を示す説明図である。図SCL1は、図7のヘディング「北」の状態を示している。この状態で、図中の破線枠内を表示するように、ユーザが表示スケールの拡大を指示すると、図SCL2の地図が表示される。表示スケールの拡大に応じて、建築物の敷地の表示部分も拡大されるため、図6に示した処理の結果、建築物の画像サイズも拡大される。
【0080】
ユーザが、図SCL2中の破線枠を表示するように、更に拡大を指定すると、図SCL3が表示される。この表示スケールでは、地図表示処理(図5)のステップS32の処理によって、用いる画像データが切り換えられる。本実施例によれば、このように表示スケールに応じて画像データを使い分けることができる。従って、表示スケールが小さい時には建築物自体の外観を十分に確認でき、表示スケールが大きい場には建築物周辺の景観も含めて確認可能な表示を実現することができる。本実施例では、かかる表示を画像データの切り換えによって実現しているが、広い画角で撮影した写真(図2のIma2)のみを用意し、表示スケールが小さい時には、この一部のみをトリミングして使用するようにしてもよい。
【0081】
以上で説明した実施例の地図表示システムによれば、図7、8に例示したように、通路の指定に応じて、建築物の外観を表す画像を地図中に表示させることができる。従って、例えば、営業員は現地に赴く前に、現地の景観を視覚的に把握することができる。また、この表示は、二次元の地図上に画像を貼り付けることで行われるため、3次元地図と異なり、地図表示のための処理負荷が軽いという利点、比較的広範囲の景観を把握しやすいという利点などがある。
【0082】
本実施例では、例えば、地図表示中に、画像と通路との対応関係を表す表示を併せて付してもよい。かかる表示としては、例えば、図4中に示した矢印Vn、Ve、Vs、Vwのように各画像の描写方向を示すための矢印や、各画像と通路とを結ぶ線などの表示が挙げられる。これらの表示を行うことにより、表示された地図から、通路と画像との関係を容易に把握することができる。
【0083】
G.変形例:
図9は変形例としての画像データ抽出処理のフローチャートである。実施例の地図表示処理(図5)のステップS32に代わってサーバ200が実行する処理である。実施例では、指定された通路に関連づけられた画像データのみを抽出する例を示したが、変形例では、指定された通路以外の通路に関連づけられた画像データも抽出可能な処理を例示する。
【0084】
変形例の処理では、サーバ200は、画像抽出モードを入力する(ステップS321)。本実施例では、指定通路指向モード、平行通路指定モード、指定通路限定モードの3種類を用意した。画像抽出モードは、地図表示処理(図5)のステップS30において、ユーザが表示端末100の操作によって指定可能とすればよい。かかる指定を行わず、上述したいずれかの画像抽出モードを固定的に使用するものとしてもよい。
【0085】
指定通路限定モードは、実施例に対応する処理である。即ち、このモードが指定されている場合には(ステップS321)、サーバ200は、ユーザによる通路の指定に基づいて、画像データの抽出を行う(ステップS323)。画像データの抽出処理の内容は、実施例中の地図表示処理(図5)のステップS32と同様である。このモードでは、指定された通路以外の通路に関連づけられている画像データは、抽出されない。
【0086】
平行通路指定モードが指定されている場合には(ステップS321)、サーバ200は、ユーザによって指定された指定通路と平行な通路を、指定通路に追加し(ステップS322)、画像データの抽出を行う(ステップS323)。例えば、図中における通路Rpがユーザによって指定されているとすると、これに平行な通路Rq、Rrも同時に指定されたものとみなして、画像データの抽出を行う。これは、実施例の通路指定処理(図3)の「平行」オプションを自動的に実行することに相当する。ここでは、「平行」な通路を追加するものとしたが、指定通路と「交差」する通路を、指定通路に追加するものとしてもよい。
【0087】
指定通路指向モードが指定されている場合には(ステップS321)、全建築物について(ステップS324)、以下に示す処理を実行して、画像データを抽出する。サーバ200は、処理対象となる建築物と指定通路との間で、この建築物に関連づけられている通路を検索する。
【0088】
例えば、図中で通路Rqが指定されている場合を考える。通路Rqに面している建築物H1、H2は、通路Rqに関連づけられた画像データが存在するが、通路Rqに面していない建築物H3には通路Rqに関連づけられた画像データは存在しないとする。この場合、サーバ200は、この建築物H3から指定通路Rqへの法線NLを引き、この法線NLと交差する通路の中から、建築物H3が関連づけられているものを検索する。図の例では、建築物H3が面している通路Rqが検索されることになる。
【0089】
サーバ200は、こうして通路が検索された場合には、その通路に関連付けられた画像データを、表示画像データとして抽出する(ステップS326)。指定通路指向モードでは、以上の処理(ステップS325,S326)を、全建築物について実行する(ステップS327)。
【0090】
ここで、平行通路指定モードと指定通路指向モードの相違について説明する。各モードの出力例をステップS322、S325中に例示した。通路Rq,Rpの2本に関連づけられた建築物H2が存在する場合、平行通路指定モードでは、実施例の画像データ配置処理(図6)によって、ヘディング優先で画像が選択される。従って、建築物H2については、通路Rqではなく、通路Rpに関連づけられた画像が地図表示に用いられることになる。一方、指定通路指向モードでは、指定通路と建築物との間で通路を検索する(ステップS325)ため、建築物H2に対して通路Rpは指定通路として認識されない。従って、指定通路指向モードでは、建築物H2について、通路Rqに関連づけられた画像が地図表示に用いられることになる。このように、両モードでは、建築物と通路の位置関係に応じて使用される画像が異なることになる。概して言えば、平行通路指定モードでは、ヘディング方向を見た場合の景観を示すように画像データが抽出されるのに対し、指定通路指向モードでは、指定通路上に立って、それぞれ指定通路の両側端を見た場合の景観を示すように画像データが抽出されるという相違がある。
【0091】
以上で説明した各モードでの処理によって表示画像データを抽出した後、実施例の地図表示処理(図5)のステップS33以降を実行することにより、指定通路以外の通路についても建築物の外観を表す画像を表示することができる。このように、変形例の処理によれば、一部の通路を指定するだけで、簡易に、広範囲にわたる景観を確認することができ、利便性が向上するという利点がある。
【0092】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。本実施例では、サーバ200内に地図DB220を用意したが、地図DB220は別のサーバや記憶媒体などによって提供してもよい。本実施例では、サーバ200と表示端末100からなる地図表示システムを例示したが、両者を一体にすることにより、スタンドアロン型の装置として構成してもよい。本実施例は、地図を電子的に表示するシステムとして構成する他、表示用データをプリンタに適合した印刷用データとして出力することにより、紙に地図を出力する地図製作システムとして構成することも可能である。本実施例は、更に、各建築物の画像を紙等の媒体に表現された建築物地図として構成してもよい。かかる建築物地図には、第1実施例で説明したように、地図中に表現された画像と通路との対応関係を表す表示を併せて付してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施例としての地図表示システムの全体構成を示す説明図である。
【図2】描画DB224、画像DB226のデータ構造を示す説明図である。
【図3】通路指定処理のフローチャートである。
【図4】ヘディング指定について示す説明図である。
【図5】地図表示処理のフローチャートである。
【図6】画像データ配置処理のフローチャートである。
【図7】実施例における地図表示例を示す説明図である。
【図8】実施例における地図の拡大表示例を示す説明図である。
【図9】変形例としての画像データ抽出処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
100…表示端末
110…主制御部
120…通信部
130…コマンド入力部
140…GPS
150…表示制御部
200…サーバ
202…通信部
204…通路指定受付部
206…経路探索部
210…地図表示制御部
212…画像データ抽出部
220…地図DB
222…道路ネットワークDB
224…描画DB
224a…通路ポリゴンデータ
224b…建築物ポリゴンデータ
224c…リレーショナルデータ
226…画像DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通行可能な通路と該通路に面した建築物を地図表示するための地図表示制御装置であって、
前記通路を表現する通路データと、前記建築物の画像データとを含み、該通路データと画像データとが関連づけられている地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
少なくとも一つの前記通路データを指定する通路データ指定手段と、
前記地図データ記憶手段を参照して、少なくとも前記通路データ指定手段により指定された通路データに関連する前記画像データを用いて地図表示するための表示用データを提供する表示用データ提供手段と、
を備える地図表示制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図表示制御装置であって、
前記地図データ記憶手段は、前記一の建築物についての複数種類の画像データを、一又は複数の前記通路データに関連づけて記憶したことを特徴とする地図表示制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の地図表示制御装置であって、
前記複数種類の画像データには、前記建築物の描写方向が異なる画像データが含まれており、前記描写方向に応じた対応関係で前記通路データに関連づけられている地図表示制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の地図表示制御装置であって、
前記通路データ指定手段は、複数の前記通路データを指定可能であり、
前記表示用データ提供手段は、前記通路データ指定手段により指定された複数の前記通路データに関連する前記画像データが複数存在する場合、所定の条件に基づいて、一部の画像データを選択し、地図表示するための表示用データを提供する
ことを特徴とする地図表示制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の地図表示制御装置であって、
前記通路データ指定手段は、指定可能な前記通路データの候補を地図形式で提示し、該提示した候補の中から前記通路データの指定を受け付けることを特徴とする地図表示制御装置。
【請求項6】
通行可能な通路と該通路に面した建築物を地図表示させるための地図表示制御方法であって、
コンピュータが実行する工程として、
前記通路を表現する通路データと、前記建築物の画像データとを含み、該通路データと画像データとが関連づけられている地図データを参照可能な状態に管理する工程と、
少なくとも一つの前記通路データの指定を受け付ける工程と、
前記地図データを参照して、少なくとも前記通路データ指定手段により指定された通路データに関連する前記画像データを用いて地図表示するための表示用データを提供する工程と、
を備える地図表示制御方法。
【請求項7】
通行可能な通路と該通路に面した建築物を地図表示させるためのコンピュータプログラムであって、
前記通路を表現する通路データと、前記建築物の画像データとを含み、該通路データと画像データとが関連づけられている地図データを参照可能な状態に管理するためのプログラムコードと、
少なくとも一つの前記通路データの指定を受け付けるためのプログラムコードと、
前記地図データを参照して、少なくとも前記通路データ指定手段により指定された通路データに関連する前記画像データを用いて地図表示するための表示用データを提供するためのプログラムコードと、
を備えるコンピュータプログラム。
【請求項8】
地図表示制御装置による地図表示に使用される電子化された地図データであって、
通行可能な通路を表現する通路データと、
建築物の画像データとを含み、
前記通路データと、前記建築物の画像データとは、前記通路データが指定された時に、該指定に応じて、前記画像データを選択可能に関連づけられている地図データ。
【請求項9】
請求項8に記載の地図データであって、
一の前記建築物についての複数種類の画像データが、一又は複数の前記通路データに関連づけられている地図データ。
【請求項10】
請求項8または9に記載の地図データであって、
所定の日時情報を、該画像データの選択に応じて提供可能に関連づけした地図データ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−72068(P2006−72068A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256637(P2004−256637)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】