説明

地図表示装置、地図表示システム及び地図表示方法

【課題】地図表示装置における表示する地図の方位の誤りを、大幅に抑制する。
【解決手段】電子コンパスと、GPS受信機を搭載した携帯電話機において、電子コンパスで取得した方位情報又はGPS受信モジュールで取得した位置情報のいずれかに基づき表示する地図の方位を制御する。地図表示処理の開始時には、電子コンパスによる方位情報で方位制御を行い、地図表示処理のスタートから60秒経過し、かつその時点から100m移動したことを条件に、GPSの位置情報に基づく方位制御に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSによって測位した現在位置に応じて地図の表示を行う場合に、方位情報を用いて地図の方向を制御する地図表示装置、地図表示システム、地図表示方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カーナビゲーションシステムや歩行時にハンドヘルドで持ち歩くことのできる携帯電話機、PDA等の携帯端末装置に、地図表示装置及びGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)モジュールを搭載したものが広く用いられている。
この地図表示装置は、利用者の現在位置や、目的地までの経路を、画面上に種々の態様で表示する機能を備えており、その表示機能を利用して、例えば、携帯電話機に地図、現在地および目的地またはその方向を表示部に表示して、歩行者を目的値へ誘導(ナビゲーション)することが行われている。
【0003】
ところで、地図を表示する場合、通常は北を上にして表示するのが一般的であるが、北を上にして表示した地図上に所在位置を表示しただけでは、自分が表示された地図上でどの方向に向かうのか分かり難いため、電子コンパスによる方位情報やGPSデータに基づき方位情報を算出して携帯端末装置に表示する地図の方向を進行方向に合わせて表示することが行われている。
【0004】
ところで、GPS電波を用いた測位では、捕捉した衛星の数や、近くに高い建物があるなど電波の受信環境に応じて、数メートルないし数十メートルの誤差が生じることが知られている。
そのため、携帯電話機で地図表示のためのナビゲーション(経路案内)、トレース(既に通過してきた経路の表示)を最初に作動させて、GPSデータに基づき算出したスタート地点の位置情報と、スタート地点から移動した地点でのGPSで測位した現在地点の位置情報に基づき進行方向を求めると、GPSの測位精度が低く位置情報が大きくぶれる場合、また、測定位置間の距離が短く正しい方向算出ができない場合には、ユーザが実際に向かう方向とは全くかけ離れた方向が算出され、その方向に合わせて地図の方位を制御するとユーザをミスリードする虞がある。
【0005】
そこで、特許文献1に記載された地図表示方法では、GPSモジュールを備えた可動装置(携帯装置)に電子コンパスを搭載して、(1)電子コンパスの示す方位情報を利用する方法、或いは(2)GPS電波を利用して方位情報を得る場合は、100m以上離れた2点間における位置データに基づき進行方向を算出する方法で上記問題の解決を図っている。また、同文献には、GPSヘディングが決定できない場合、つまりGPSによる方位決定ができない場合には、(3)磁気コンパスヘディングを利用して地図の方位を制御することも記載されている。
しかしながら、上記(3)の方法で、仮に、可動装置が100m移動した段階で、磁気コンパスからGPSデータによる方位計算に切り換えると仮定すると、上述のようにGPS測位による誤差が大きい場合には、やはり正しい移動方向を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−536326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の地図表示装置における問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ナビゲーション機能により設定した経路或いは既に移動してきた経路を示す地図を地図表示装置で表示する場合において、地図表示における方位制御を、電子コンパスによる制御からGPSで測位した位置データによる制御に切り換える際に、GPSデータに上記の程度の誤差があっても方向決定の精度を上げることで、表示する地図の方位の誤りを従来のものに比して大幅に抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、極の方位を検出する極方位検知手段と、位置情報を所定の時間間隔で取得する位置情報取得手段と、前記極方位検知手段により検出した方位又は前記位置情報取得手段で取得した位置情報のいずれかに基づき地図の方位を制御する制御手段を備え、地図情報に移動経路情報を重畳した地図画像を前記制御された方位で表示する地図表示装置であって、前記地図画像を表示する処理の開始からの経過時間を計時する計時手段と、前記経過時間が予め定められた所定時間に達したことを前記計時手段が計時し、かつ所定時間経過後における当該地図表示装置の移動距離が所定値に達したことを条件に、前記地図画像の方位制御を前記極方位検知手段に基づく制御から前記位置情報取得手段に基づく制御に切り換える切換制御手段と、を有することを特徴とする地図表示装置である。
請求項2の発明は、請求項1に記載された地図表示装置において、前記移動経路は移動済みの経路であることを特徴とする地図表示装置である。
請求項3の発明は、請求項1に記載された地図表示装置において、前記移動経路情報は予め設定された移動経路情報であり、前記制御手段は、前記移動経路情報が変更されたとき、前記極方位検知手段に基づき前記地図画像の方位を制御し、前記計時手段が前記所定時間を計時し、かつ所定時間経過後における当該地図表示装置の移動距離が所定値に達したことを条件に、前記地図画像の方位制御を前記極方位検知手段に基づく制御から前記位置情報取得手段に基づく制御に切り換える切換制御手段を有することを特徴とする地図表示装置である。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された地図表示装置において、前記制御手段は、前記位置情報取得手段からの位置情報が中断後に再開したとき、前記極方位検知手段に基づき前記地図画像の方位を制御し、前記計時手段が前記所定時間を計時し、かつ所定時間経過後における当該地図表示装置の移動距離が所定値に達したことを条件に、前記地図画像の方位制御を前記極方位検知手段に基づく制御から前記位置情報取得手段に基づく制御に切り換える切換制御手段を有することを特徴とする地図表示装置である。
請求項5の発明は、請求項4に記載された地図表示装置において、前記制御手段は、前記位置情報取得手段が所定回数位置情報を取得できないとき、位置情報の中断と判断することを特徴とする地図表示装置である。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載された地図表示装置において、前記地図表示装置は移動型端末装置であることを特徴とする地図表示装置である。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載された地図表示装置と、該地図表示装置と互いに通信可能に接続された地図情報蓄積手段を備えた地図サーバと、経路情報を備えた経路サーバとからなることを特徴とする地図表示システムである。
請求項8の発明は、極の方位を検出する極方位検知手段と、位置情報を所定の時間間隔で取得する位置情報取得手段と、を有し、前記極方位検知手段により検出した方位又は前記位置情報取得手段で取得した位置情報のいずれかに基づき地図の方位を制御して、地図情報に移動経路情報を重畳した地図画像を前記制御した方位で表示する地図表示装置における地図表示方法であって、前記地図画像を表示する処理の開始からの経過時間を計時する計時工程と、前記計時工程により予め定めた所定時間を計時し、かつ所定時間経過後における当該地図表示装置の移動距離が所定値に達したことを条件に、前記地図画像の方位制御を前記極方位検知手段に基づく制御から前記位置情報取得手段に基づく制御に切り換える切換工程と、を有することを特徴とする地図表示方法である。
請求項9の発明は、コンピュータを、請求項8に記載された地図表示装置における地図表示方法の各工程を実行するための機能実現手段として機能させるためのプログラムである。
請求項10の発明は、請求項9に記載されたプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ナビゲーション機能により設定した経路或いは既に移動してきた経路を示す地図を地図表示装置で表示する場合において、地図表示における方位制御を、極方位検知手段により検出した方位に基づく制御から位置情報取得手段で取得した位置情報に基づく制御に切り換える際に、切り換えを実行するための条件として、従来の移動距離に経過時間を加えることで、位置情報取得手段で取得した位置情報に誤差があっても方向決定の精度を上げることができ、表示する地図の方位の誤りを従来のものに比して大幅に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る地図表示装置を含む地図表示システム全体の概略構成を示すブロック図である。
【図2】携帯電話機の主制御部が実行する経路探索処理のフロー図である。
【図3】地図表示処理の手順を示すフロー図である。
【図4】電子コンパスの方位情報に基づく地図の方位制御からGPSの測位データに基づく方位制御に切り換えるための処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施形態
以下、本発明を実施するための形態(第1の実施形態)について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る地図表示装置を含む地図表示システム10全体の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る地図表示システム10は、経路探索サーバ100と、地図サーバ150と、地図表示装置としての携帯端末装置、例えば携帯電話機200とを含んでいる。携帯電話機200は、GPS受信機201及び電子コンパス204を備えており、これを用いて表示する地図の方向を制御し、移動経路として、ナビゲーションのための案内経路や既に通過してきた経路(トレース)の表示を行う機能を備えている。携帯電話機200は、人が携帯する場合には歩行者用ナビゲーション装置として機能し、車両に搭載した場合には、カーナビゲーション装置として機能する。
【0012】
携帯電話機200は、GPS受信機201と、表示パネル202と、音声出力部203と、電子コンパス204と、無線通信回路205と、コマンド入力部206と、主制御部210と、通話制御部220とを備えている。
【0013】
主制御部210は、携帯電話機200の各部を制御するためのコントローラである。主制御部210は、CPU211と、RAM212と、ROM213とを備えている。CPU211は、ROM213に記憶された制御プログラムをRAM212にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【0014】
GPS受信機201は、GPSを構成する人工衛星から送信される電波を受信する装置である。主制御部210は、GPS受信機201が受信した電波に基づき現在位置を演算(測位)する。主制御部210は、GPS受信機201が、3つの衛星から電波を受信することができれば、2次元的な現在位置を検出することができ、4つの衛星から電波を受信することができれば、3次元的な現在位置を検出することができる。また、5つ以上の衛星から電波を受信することができれば、高精度に現在位置を検出することができる。
【0015】
表示パネル202は、液晶ディスプレイとこれを駆動する駆動回路とを備えている。主制御部210は、表示パネル202を制御することで、地図画像、推奨経路、現地点までの移動経路(トレース)、現在位置などを表示する。表示パネル202には、液晶ディスプレイに限らず、有機又は無機ELディスプレイなど、種々の表示装置を採用することができる。
【0016】
音声出力部203は、経路案内時に音声を出力するためのスピーカや、これを駆動する回路などから構成される。
電子コンパス204は、方位磁石と同じように地磁気を検知する機能を有し、その方位を表す信号を出力するものであれば、従来周知の2軸タイプのものでも3軸タイプのものでもよいが、3軸タイプのものであれば、手持ち角度に関係なく正しい方位を示すことができるので好ましい。
【0017】
無線通信回路205は、基地局BSとの間でデータ通信もしくは音声通信を行うための回路である。基地局BSには、インターネットINTを介して経路探索サーバ100や地図サーバ150が接続されている。無線通信回路205は、基地局BSを介して、経路探索サーバ100や地図サーバ150にアクセスを行うことができる。
【0018】
通話制御部220は、音声通話のための着信や呼出、音声信号と電気信号の変換などを行う回路である。
コマンド入力部206は、テンキーやカーソルキーなどのボタン群から構成される。ユーザは、これらのボタンを用いることで、経路探索に用いられる出発地や目的地などの入力を行うことができる。
【0019】
地図サーバ150は、通信部152と、制御部154と、記憶装置155とを備えている。記憶装置155には、地図データベース(DB)156が格納されている。通信部152は、インターネットINTを介して携帯電話機200と通信を行うことができる。
地図データベース156には、携帯電話機200に供給する地図データがベクトル形式、ラスター形式等で記録されている。この地図データには、地形や建物、道路等の形状を表すデータが含まれている。制御部154は、携帯電話機200から地図データの取得要求があると、指定された範囲の地図データを地図データベース156から検索し、通信部152を介して携帯電話機200に送信する。
【0020】
経路探索サーバ100は、通信部102と、制御部104と、記憶部105とを備えている。通信部102は、インターネットINTを介して携帯電話機200と通信を行うことができる。記憶部105には、道路のつながり状態が記録された経路データベース106が記憶されている。道路のつながり状態は、交差点や分岐点等を表すノードデータと、ノードデータを結ぶ線分によって道路を表すリンクデータとによって表されている。
なお、経路データベース106には、携帯電話機200から送信されてくる現地点までのGPSデータに基づき移動経路を一時記憶する。他方、携帯電話機200の表示パネル202は、上記移動経路を表示する。
【0021】
経路探索サーバ100は、携帯電話機200から経路探索要求があると、経路データベース106を用いて、指定された出発地と目的地とを結ぶ推奨経路を探索する。そして、探索の結果、得られた推奨経路データを通信部102を介して携帯電話機200に送信する。
【0022】
本実施形態では、経路探索サーバ100の制御部104は、自己の記憶部105に記憶された経路データベース106を用いて経路探索を行うものとする。しかし、経路データベース106が地図サーバ150に記憶されている場合には、インターネットINT経由で地図サーバ150にアクセスして、経路データベース106を読み込んで利用してもよい。なお、経路探索サーバ100と地図サーバ150は、一体のサーバとして構成することもできる。
地図サーバ150から携帯電話機200に送信される地図データと、経路探索サーバ100から携帯電話機200に送信される推奨経路データとは、併せて、広義の「地図データ」として捉えることができる。
【0023】
図2は、携帯電話機200の主制御部210が実行する経路探索処理のフロー図である。この処理は、ユーザが、コマンド入力部206を用いて、携帯電話機200の経路案内機能を呼び出した場合に実行される処理である。
【0024】
経路探索処理が開始されると、まず、主制御部210は、コマンド入力部206を介して、ユーザから、必要に応じて、出発地、目的地、経由地、探索条件、利用する移動手段の種別等の入力を受け付ける(ステップS101)。出発地は、GPS受信機201によって検出した現在位置とすることができる。探索条件とは、VICS(Vehicle Information and Communication System)情報の使用の要否、出発時間や到着時間の指定、階段や屋根のある歩道を用いるか否か、使用する駅等の条件である。利用する移動手段は、例えば、表示パネル202に表示される「徒歩」、「自転車」、「自動車」、「電車」等の選択肢の中から、所定のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)によって選択的に入力することができる。
【0025】
主制御部210は、これらの入力を受け付けると、無線通信回路205を用いて経路探索サーバ100に、経路探索の要求信号を送信する(S102)。この要求信号には、ステップS101で入力された情報が含まれている。
【0026】
経路探索サーバ100は、携帯電話機200から経路探索の要求信号を受信すると、記憶部105に記憶された経路データベース106を参照して、要求信号に含まれる出発地と目的地とを結び(経由地が設定されていれば経由地を含む)、設定された探索条件を満たす推奨経路を算出する。推奨経路の算出は、例えば、周知のダイクストラ法を用いて行うことができる。
経路探索サーバ100は、携帯電話機200から取得した出発地、目的地の緯度および経度が、経路データベース106に記録された経路上にない場合には、周知のマップマッチング処理を行うことで、その地点に最も近い道路上の地点を、出発地あるいは目的地とする。経路探索サーバ100は、推奨経路を算出すると、その経路の形状を表すデータを、推奨経路データとしてベクトル形式、ラスター形式等で携帯電話機200に返信する。
【0027】
なお、ユーザから移動手段の種別が入力されなかった場合には、デフォルトの移動手段(例えば、車両)に適した推奨経路を求めるものとしてもよい。また、出発地と目的地との距離に応じて移動手段を自動的に選択し、その移動手段に適した推奨経路を求めるものとしてもよい。例えば、出発地と目的地との距離が500m以内であれば徒歩、500m〜2kmであれば、徒歩及び車両、それ以上であれば車両、500km以上であれば、車両、電車、航空機や船舶を含む経路を探索するものとすることができる。もちろん、ユーザは、自分で移動手段を任意に選択することができる。
【0028】
携帯電話機200の主制御部210は、経路探索サーバ100から推奨経路データを受信すると(S103)、その推奨経路データをRAM212に記憶する(S104)。RAM212に記憶された推奨経路データは、後述する地図表示処理において、表示パネル202上に表示される。なお、経路探索サーバ100から携帯電話機200に送信される推奨経路データには、経路の種別(高速道路、一般道、歩道、線路等)や、案内表示を行うべき交差点、送電線や分岐点の緯度、経度を示す位置情報、案内表示時に画面に表示すべき画像データが含まれている。
案内表示時に画面に表示すべき画像データとしては、例えば、交差点や分岐点における道路の詳細な接続状態を表す画像データや、インターチェンジやランプの案内板を模した画像データなどがある。
【0029】
次に、地図表示処理について説明する。
図3は、地図表示処理の手順を示すフロー図である。
地図表示処理は、まず、主制御部210がGPS受信機201を用いて現在位置の検出を行う(S201)。現在位置を検出すると、続いて、主制御部210は、検出された緯度経度を含む所定の範囲(例えば、500m四方)の地図データを地図サーバから取得する(S202)。現在位置周辺の地図データがRAM212にバッファリングされている場合には、主制御部210は、バッファリングされているデータの中から、現在位置に対応する地図データを取得する。取得する地図データの範囲は、ユーザが設定した地図の表示スケールに合わせて調整することができる。
【0030】
地図データを取得すると、主制御部210は、RAM212から推奨経路データを入力する(S203)。この推奨経路データは、図2に示した経路探索処理において、経路探索サーバ100から受信したデータである。
【0031】
続いて、主制御部210は、ステップS202で取得したベクトル形式、ラスター形式等の地図データと、ステップS203で入力したベクトル形式、ラスター形式等の推奨経路データとを重畳させて表示パネル202に描画する。そして、更に、その上に、現在位置を示すマークを重畳させる(S204)。
【0032】
次に、移動手段(徒歩、自転車、自動車等)に応じて検知領域を設定する(S205)。この検知領域は、S201で検出した現在位置が推奨経路から外れているか否かを判断するための基準となる領域であり、移動速度の高い移動手段ほど、検知領域を広くする。
次いで、現在位置が検知領域内に存在すると判断し(S206、YES)、かつ2つ連続で推奨経路上に現在位置を検出したと判断したときに(S207、YES)、案内表示を行い(S208)、そうでないとき、即ち現在位置が検知領域内に存在しないと判断したとき(S206、NO)、又は2つ連続で推奨経路上に現在位置を検出していないと判断したときは(S207、NO)、経路設定をやり直す。
【0033】
次に、地図表示装置において表示する地図の方位制御について説明する。
本携帯電話機200では、主制御部210は、電子コンパス204の方位を表す信号或いは、GPSの測位データに基づく進行方向を表す信号に基づき表示地図の方位を制御して、電子コンパスの方位情報を利用する方式では携帯電話機200の向きに係わりなく地図の方位が一定方向となるように処理を行い、或いはGPSの測位データに基づく方式では常に地図の方位と進行方向とが一致するように地図画面を回転させる処理を行う。
【0034】
本実施形態では、地図表示における方位制御を行う場合において、GPSの測位データに基づく前記方位制御の信頼性を考慮して、前記信頼性が低い間は電子コンパス204の方位情報に基づき方位制御を行う。
図4は、電子コンパス204の方位情報に基づく地図の方位制御からGPSの測位データに基づく方位制御に切り換えるための処理フロー図である。
【0035】
既に述べたようにGPSデータには誤差があるため、離れた2地点のそれぞれのGPSデータに基づき方向を算出すると、GPS電波の受信状況によっては大きな誤差が生じる。そのため、本実施形態ではGPSデータに基づき地図の方位を制御するに先だって、まず電子コンパスで検出した方位に基づき地図の方位を制御する。
即ち、地図表示のためのナビゲーション(経路案内)、トレース(既に通過してきた経路の表示)をスタートすると、主制御部210は、当該地域が電子コンパスを使える区域か否かを判断する(S301)。この判断は、経路探索処理で探索した経路から現在地が送電線から所定距離内で地磁気を利用できない区域であるとき、または電子コンパスが使用できないとして設定されている地域内にいるとき、或いはユーザが指定したか或いは経路探索サーバ100が設定した経路情報から、電車を利用する経路で実際に位置情報が鉄道の経路上(つまり電車内)にあるか否かで判断する。
【0036】
ここで、主制御部210が、携帯電話機200について電子コンパスが利用できる区域であると判断したときは(S301、YES)、主制御部210は、電子コンパス204を起動してその電子コンパス204から得た方位情報に基づき地図の方位を制御し(S302)、同時に例えば図示しない60秒タイマーをスタートさせる。タイマーがスタートから60秒でタイムアウトした時点で(S303、YES)、主制御部210は、現在地でGPS電波による位置情報が使えるか否か、即ち、携帯電話機200がGPS電波を受信できない、例えば地下街或いはトンネル内にあるか否かを判断する(S304)。
ここで、GPSが使える、即ち現在地がGPS電波による測位データが利用できる区域であれば(S304、YES)、主制御部210は、携帯電話機200が、60秒タイマーがタイムアウトした時点で測位した位置からGPSの測位合計が100m移動したか否かを判断し(S305)、移動したと判断したときは(S305、YES)、GPSの測位データから、上記タイムアウトした時点で測位した位置からGPSの測位合計が100m移動後の位置情報とこの位置情報の直前の位置情報に基づき携帯電話機200の移動方向を算出し、その算出した移動方向に基づき携帯電話機200の表示パネル202に表示する地図の方向制御を行う(S306)。
【0037】
図4において、ステップS301において、主制御部210が電子コンパス204が使えない区域であると判断したときは(S301、NO)、GPS電波を受信できるときは、GPSの測位データに基づき例えば2点間の位置情報から方向を算出し、その方向で地図表示制御を行う。
【0038】
ステップS307において、例えば携帯電話機200がトンネル或いは地下街に入った場合など、GPS電波が利用できなくなり(S307、NO)、その後トンネル或いは地下街から出て再度GPS電波が利用できるようになったとしても(S310、YES)、直ちにGPS電波を使用せず、ステップS301に戻り、既に述べた処理を繰り返して地図の方位を制御する。
【0039】
ステップS307において、GPS電波がそのまま利用できる場合であって(S307、YES)、ナビゲーションによる設定されたルート上を移動する場合に(S308)、ルートから外れて別のルートに進んだ場合はリルートを行い経路設定をやり直す(S309、YES)。なお、リルートは自動、手動のどちらでも行うことができる。この場合はトンネルや地下街から出たときと同様に、ステップ101からの処理を繰り返す。当然のことながら、ナビゲーションによる設定されたルート上を移動し続ける場合は(S309、NO)、そのままGPSによる測位データに基づき地図の方位制御を行う。
ステップS308において、地図表示が既に通ってきた経路の表示である場合、即ちトレースの場合はそのままGPSによる測位データに基づき地図の方位制御を行う。
【0040】
なお、主制御部210は、設定された経路情報に駅及び線路上を移動する経路がある場合、GPSの測位データで同定した位置情報から、携帯電話機200の所持者が電車内にいると判断する。他方、主制御部210は地図情報から送電線の位置を判断し、GPSの測位データから送電線の近傍つまり所定距離内に近づいたと判断したときは、そのままGPSの測位データに基づき進行方向を算出し、それによって地図の方位を制御する(S310、NO、S306)。
【0041】
本実施形態では、以上のように地図表示プログラムを起動したとき、リルートしたとき、或いはトンネルや地下街から出たときは、いずれもGPSの測位データにバラツキがあることからこれを用いず、先ず電子コンパス204の方位情報に基づき表示する地図の方位を、例えば、取得した電子コンパス204の方位との偏差(角度)を求め、その偏差分だけ表示した地図を回転させる制御を行う。そして、そのまま60秒間経過したとき(S305、YES)、主制御部210(CPU211)は、60秒間経過した位置から携帯電話機200が100m移動したところの位置情報と、この位置情報の直前の位置情報から移動方位を算出する。
【0042】
本実施形態の携帯電話機200は、人が歩く場合、自転車、自動車、電車等で使用することができる。その場合、各移動体(人が歩く場合を含む)の特性に合わせて、移動計時、移動距離を最適になるように設定することができる。
【0043】
本実施形態によるときは、従来のように、携帯電話機200が単に100m移動したことのみを条件として、磁気コンパスからGPSに切り換えてその移動方向から地図の方位を制御する場合に比して、方位の誤差を格段に低減させることができる。
【0044】
以上で説明した第1の実施形態の携帯電話機200は、地図情報を表示する場合は、地図情報表示用アプリケーションの起動時、或いはGPS電波を利用して表示地図の方位制御を行っている際に、ナビゲーションで予め設定した経路を外れルートを再設定するとき、或いは移動中にトンネル或いは地下街など、GPS電波を利用できない区域に進入した後、再度GPS電波が利用できるようになった場合は、いずれも場合も、図4の表示制御処理をステップS301からやり直す。つまり、表示地図の方位制御は、まず電子コンパスの方位情報に基づき行うよう主制御装置210に設けた切換手段により切り換え、既に述べたようにその切り換えから60秒経過時におけるGPS電波による位置情報と、そこから100m移動したとき、そのときの携帯電話機200の位置情報から携帯電話機200の進行方向を算出し、電子コンパス204の方位情報からGPS電波を用いた位置情報に切り換えて、地図の方位制御を行っている。
【0045】
第2の実施形態
上述の第1の実施形態では、トンネルや地下街に入った場合に、一旦GPS電波を利用できない事態が発生すると、再度GPS電波が利用できるようになったときは、地図の方位制御は、電子コンパスが使えない場合を除き、直ちに電子コンパスの方位情報を利用する制御に切り換える方法を採用している。
しかし、GPS電波を利用できない状態から利用できるようになるまでのGPS電波着信不可状態の期間が短い場合には、方位制御を切り換えるまでもない。
【0046】
そこで、所定時間間隔で行われるGPS電波の受信チェック回数に閾値を設け、受信チェックにおいて、GPS電波着信不可状態が所定回数連続して検出された後にGPS電波を利用できるようになったときに限り、ステップS301からの処理を繰り返すように設定することもできる。
このようにすることで、例えば、ごく短いトンネル通過する場合や一旦降りた地下街から直ぐに地上に出る等の場合は、GPS電波に基づく地図の方位制御をそのまま継続して行うようにすることができる。また、トンネルや地下街等については、GPSを用いなくても地図情報を用いることにより位置を特定できるので、上記処理の対応をすることができる。
この場合は、携帯電話機200側における処理負担を軽減し、したがって、電池の消費電力量を削減することができる。
【0047】
第3の実施形態
上述の第1の実施形態では、電子コンパス204の方位情報に基づく制御の開始から60秒経過し、さらに100m移動するまでは電子コンパス204の方位情報に基づく制御を維持している。
しかし、電子コンパス204の方位情報に基づく制御の開始から例えば10秒経過した時点でGPSデータに基づく制御ができる場合は、その時点でGPSデータに基づく制御に切り換えれば、電子コンパス204の方位情報に基づく制御は不要になるから、50秒+100m移動するまでの時間の電子コンパス204の動作が無駄になる。
【0048】
そこで、電子コンパス204の方位情報に基づく制御を開始した後、60秒経過する前にGPSデータに基づく制御ができるか否かを判断し、できると判断したときは、その時点でGPSデータに基づく制御に切り換える。また、60秒経過するまでにGPSデータに基づく制御ができなかったときは、100m移動する前にGPSデータに基づく制御ができるか否かを判断し、できると判断したときは、その時点でGPSデータに基づく制御に切り換える。
【0049】
つまり、図4の処理フロー(第1の実施形態)において、S303、NOの期間にGPSデータに基づく制御ができるか否かを判断し、できると判断したときにS306に進むステップ、及びS305、NOの期間にGPSデータに基づく制御ができるか否かを判断し、できると判断したときにS306に進むステップを追加したものである。
GPSデータに基づく制御ができるか否かの判断は、例えば精度の高いGPSデータが所定回数連続して取得できたか否かに基づいて行うことができる。
本実施形態によれば、GPSデータに基づく制御に早く切り換えることで、ユーザに対してより正しい方位情報をより早く提供することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、図4に示すフロー図で説明した地図表示における方位制御は、携帯電話機200の主制御部のCPU211、RAM212、ROM213からなるコンピュータでプログラムを実行させることにより実施することができる。このプログラムはCD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読取可能な周知の任意の記録媒体に記録することができる。
【0051】
上述の実施形態では、地図表示装置として、携帯電話機200を適用した例を説明した。しかし、地図表示装置としては、携帯電話機200に限らず、周知のカーナビゲーションシステムやPDA、携帯可能なパーソナルコンピュータ等を適用することができる。
【0052】
上述の実施形態では、経路の探索は、経路探索サーバ100が行うこととした。これに対して、経路データの記録されたフラッシュメモリ等の記憶装置を携帯電話機200に実装し、この記憶装置内の経路データを用いることで、携帯電話機200自体が経路探索を行うこととしてもよい。また、この記憶装置内に地図データも含まれていれば、その地図データを用いて、地図を描画することとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10・・・地図表示システム、100・・・経路探索サーバ、102・・・通信部、104・・・制御部、105・・・記憶部、106・・・経路データベース、150・・・地図サーバ、152・・・通信部、154・・・制御部、155・・・記憶手段、156・・・地図データベース、200・・・携帯電話機200、201・・・GPS受信機、202・・・表示パネル、204・・・電子コンパス、211・・・CPU、212・・・RAM、213・・・ROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極の方位を検出する極方位検知手段と、
位置情報を所定の時間間隔で取得する位置情報取得手段と、
前記極方位検知手段により検出した方位又は前記位置情報取得手段で取得した位置情報のいずれかに基づき地図の方位を制御する制御手段を備え、
地図情報に移動経路情報を重畳した地図画像を前記制御された方位で表示する地図表示装置であって、
前記地図画像を表示する処理の開始からの経過時間を計時する計時手段と、
前記経過時間が予め定められた所定時間に達したことを前記計時手段が計時し、かつ所定時間経過後における当該地図表示装置の移動距離が所定値に達したことを条件に、前記地図画像の方位制御を前記極方位検知手段に基づく制御から前記位置情報取得手段に基づく制御に切り換える切換制御手段と、
を有することを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された地図表示装置において、
前記移動経路は移動済みの経路であることを特徴とする地図表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載された地図表示装置において、
前記移動経路情報は予め設定された移動経路情報であり、
前記制御手段は、前記移動経路情報が変更されたとき、前記極方位検知手段に基づき前記地図画像の方位を制御し、前記計時手段が前記所定時間を計時し、かつ所定時間経過後における当該地図表示装置の移動距離が所定値に達したことを条件に、前記地図画像の方位制御を前記極方位検知手段に基づく制御から前記位置情報取得手段に基づく制御に切り換える切換制御手段を有することを特徴とする地図表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された地図表示装置において、
前記制御手段は、前記位置情報取得手段からの位置情報が中断後に再開したとき、前記極方位検知手段に基づき前記地図画像の方位を制御し、前記計時手段が前記所定時間を計時し、かつ所定時間経過後における当該地図表示装置の移動距離が所定値に達したことを条件に、前記地図画像の方位制御を前記極方位検知手段に基づく制御から前記位置情報取得手段に基づく制御に切り換える切換制御手段を有することを特徴とする地図表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載された地図表示装置において、
前記制御手段は、前記位置情報取得手段が所定回数位置情報を取得できないとき、位置情報の中断と判断することを特徴とする地図表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された地図表示装置において、
前記地図表示装置は移動型端末装置であることを特徴とする地図表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された地図表示装置と、該地図表示装置と互いに通信可能に接続された地図情報蓄積手段を備えた地図サーバと、経路情報を備えた経路サーバとからなることを特徴とする地図表示システム。
【請求項8】
極の方位を検出する極方位検知手段と、位置情報を所定の時間間隔で取得する位置情報取得手段と、を有し、前記極方位検知手段により検出した方位又は前記位置情報取得手段で取得した位置情報のいずれかに基づき地図の方位を制御して、地図情報に移動経路情報を重畳した地図画像を前記制御した方位で表示する地図表示装置における地図表示方法であって、
前記地図画像を表示する処理の開始からの経過時間を計時する計時工程と、
前記計時工程により予め定めた所定時間を計時し、かつ所定時間経過後における当該地図表示装置の移動距離が所定値に達したことを条件に、前記地図画像の方位制御を前記極方位検知手段に基づく制御から前記位置情報取得手段に基づく制御に切り換える切換工程と、
を有することを特徴とする地図表示方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項8に記載された地図表示装置における地図表示方法の各工程を実行するための機能実現手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載されたプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−2447(P2011−2447A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116700(P2010−116700)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】