説明

型内被覆組成物及び型内被覆成形体

【課題】塗膜の硬さや耐擦り傷性の向上や表面平滑性に優れ、ソリやヒケが殆ど無く外観に優れ、成形サイクルの短縮が可能な型内被覆成形体を提供すること。
【解決手段】キャビティ内に注入した型内被覆組成物を熱で半硬化させ、更に型内被覆成形体をUV照射で完全硬化させる型内被覆成形体に用いられる該型内被覆組成物が、
(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー又は不飽和ポリエステルの少なくとも1種と
(B)(A)と共重合可能な不飽和モノマーと
(C)有機過酸化物重合開始剤、アゾ系重合開始剤の一方又は両方と
(D)光重合開始剤と
を含有し、
(A)〜(D)の質量割合が
(A)/(B)=20/80〜80/20、
(C)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100、
(D)/{(A)+(B)}=0.1/100〜10/100
である型内被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内被覆組成物及び型内被覆成形体に関する。更に詳しくは、熱硬化性プラスチック成形材料あるいは熱可塑性プラスチック成形材料を射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法あるいは反応射出成形法により、金型内で成形し、得られた成形体の表面と金型キャビティ面との間に型内被覆組成物を注入し、この型内被覆組成物を前記金型内で硬化させて、プラスチック成形体の表面に型内被覆組成物が密着した一体成形体を製造する、いわゆる金型内被覆成形法(IMC法あるいはインモールドコーティング法とも呼ばれる)により得られる、型内被覆成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電製品及び建材等に使用されるプラスチックス成形体の表面の傷つき性を向上させたり、あるいは耐候性を高めて製品の長寿命化を図ることを目的として、成形体の表面に塗装を施すことは従来から広く利用されている。このような塗装方法としてはスプレー塗装が一般的であるが、近年環境問題に強い関心が寄せられるなか、塗装工場からの有害な揮発性有機物化合物、いわゆるVOCの大気への放出が厳しく制限される傾向が強まってきていることや、従業員の健康保護を重視する観点から、スプレー塗装に代わる技術の開発が急務となっている。
【0003】
このような状況において、金型内で成形したプラスチック成形体の表面と金型のキャビティ面との間に塗料を注入した後、塗料を金型内で硬化させてプラスチック成形体表面に塗膜が密着した一体成形体を製造する金型内被覆成形方法が注目されている。
【0004】
この金型内被覆成形方法は、専らSMC(Sheet Molding Compound)、BMC(Bulk Molding Compound)といった熱硬化性樹脂成形材料による成形品の表面改質に実施されているが、熱可塑性樹脂の射出成形においては、まだ広くは利用されていない。その大きな理由の一つには、熱硬化性型内被覆剤を金型表面温度と成形品の表面温度を利用して、金型の中で被覆剤を硬化させるものであるが、被覆剤の硬化を十分に行うためには高い金型温度と長い時間が必要となり、熱可塑性樹脂成形材料の場合は一般に、金型温度は低く設定されているため、被覆剤の完全硬化にはかなり長い硬化時間が必要となり、成形サイクルが長くなり、生産性において致命的な欠点となる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
被覆剤の硬化に特徴あるものとして、被覆剤を金型内に注入後被覆された熱硬化性被覆剤を硬化させるために、高周波誘導加熱を行い被覆剤を硬化させる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
また、金型内での被覆剤の流動時の欠陥により生じる被覆剤表面のシワや色むらといった欠陥を防止する目的で、型開きをしても被覆剤が剥がれや割れ等が生じない程度に硬化した段階で被覆された成形品を取り出し、その後被覆成形品を再加熱する方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
しかし、特許文献1〜3の方法では、被覆剤の硬化を十分に行う高い金型温度下では、被覆剤は金型内での流動途中で部分的にゲル化が始まったり、被覆剤の粘度が高くなったりして被覆剤の流れが不均一になり、被覆表面にシワが発生したり、色むら、ウエルドラインと言った被覆塗膜に欠陥が生じたり、熱膨張係数の関係から成形品の冷却に従ってソリや肉ヤセといった欠陥が生じていた。従って、被覆剤が被覆したい表面を全面被覆するまではゲル化や粘度上昇をしないで十分な流動性を保持していることが必要である。しかし、このためには金型温度を低くするか、被覆剤のゲル化を遅くする、言い換えれば硬化反応を低下させることになり、硬化時間が極端に長くなり、生産性に課題が生じたり、場合によっては十分な性能を発揮するところまでの硬化反応が進まないこともあり好ましくない。
【0008】
特許文献4では、成形サイクルの間で金型を加熱したり、冷却したりするため、エネルギーのロスと、成形サイクルが長くなるといった欠点があった。
【0009】
また、特許文献5では、金型から取り出した被覆成形品をその成形温度よりも高い温度で再加熱するため、成形品の変形やそりといった不具合が発生するため好ましくない。
【0010】
特許文献6には、15〜50重量%のベンゼン骨格含量を有するウレタン(メタ)アクリレートと、ベンゼン骨格を有する(メタ)アクリレートからなり、更に熱硬化性触媒及び/又は光重合開始剤を含有してなるコーティング剤が開示されている。
【0011】
特許文献6では、35℃に温度調節し、予めクロムメッキを内面に施した金型にディスペンサーを用いて厚さ50〜150μmとなるように塗工し、メチルメタクリレート系共重合物からなる透明基板を上記塗工した樹脂の上から加圧積層する。更に、該基板上の方向からUV照射機を用いて該組成物を硬化させ、金型からの離型性に優れ、高屈折率かつ樹脂密着性に優れる成形品が得られるとされている。しかし、この方法では、金型に塗装するため周辺にスプレーダストが飛び散るために作業環境が悪く、また金型内で樹脂基板を圧着しても塗工膜が破れない程度に硬化させる必要があること、金型内にてUV照射させるため、成形サイクルが長くなるといった問題がある。また、ベンゼン骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、ベンゼン骨格を有する(メタ)アクリレートから構成されているため、太陽光等の紫外線に弱く容易に塗工膜が黄変するといった課題がある。
【0012】
特許文献7には、合成樹脂製の表皮材を金型の型面に配置し、その一表面側に樹脂基材を射出成形した後に、表皮材の他表面側と型面との間に塗料を注入し加圧して表皮材の他表面側に塗膜を形成する金型内被覆方法が開示されている。この方法によれば、表皮材の両表面をそれぞれ樹脂基材又は塗料との付着性に優れた材料から形成しておくことで、樹脂基材との付着性の良くない塗料を用いても樹脂基材の表面に付着性に優れた塗膜を形成することができる。しかし表皮材の付着性は言及しているものの、表皮材の意匠性等の機能については全く示唆されていない。
【0013】
特許文献8には多孔質の表皮材を型内に配置して該表皮材の裏面に樹脂製基材を一体成形し、該表皮材の表面と型面との間を開いて隙間を形成し、該隙間に熱硬化性塗料を注入し加圧しながら加熱し該表皮材の表面に塗膜を形成する方法が開示されている。特許文献8では金型温度が記載されていない。しかし、熱硬化性塗料を金型内で実用性能を発揮する程度にまで短時間で硬化させるためには金型温度は高温にする必要がある。このような状態で塗料を硬化させた後に成形体を金型から取り出した場合、成形体が室内温度にまで冷却されると、成形基体及び塗膜の熱収縮により多孔質の凹凸面が表面に現れ外観上好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−301251号公報
【特許文献2】特開平7−112450号公報
【特許文献3】特開2001−96573号公報
【特許文献4】特開平5−318527号公報
【特許文献5】特開2003−154545号公報
【特許文献6】特開2006−274194号公報
【特許文献7】特開2001−170964号公報
【特許文献8】特開2003−159724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上記課題を解決することであり、つまり、塗膜の硬さや耐擦り傷性の向上や光沢度が高くて表面平滑性に優れ、ソリやヒケが殆ど無く外観に優れ、成形サイクルの短縮が可能な型内被覆成形体及び該型内被覆成形体の表面を被覆している型内被覆組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下の構成により、上記課題を達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0017】
即ち、本発明に従って、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる金型を型締めする工程と、
金型キャビティ内で樹脂を成形する工程と、
キャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内被覆成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体に用いられる型内被覆組成物において、
該型内被覆組成物が、
(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステルから選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)と共重合可能な不飽和モノマーと
(C)有機過酸化物重合開始剤、アゾ系重合開始剤の一方又は両方と
(D)光重合開始剤と
を含有してなり、かつ、
前記(A)成分と前記(B)成分との質量割合が、(A)/(B)=20/80〜80/20、
前記(C)成分の質量割合が、(C)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100、
前記(D)成分の質量割合が、(D)/{(A)+(B)}=0.1/100〜10/100
であることを特徴とする型内被覆組成物が提供される。
【0018】
また、本発明に従って、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる金型を型締めする工程と、
金型キャビティ内で樹脂を成形する工程と、
キャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内被覆成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、上記型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体が提供される。
【0019】
また、本発明に従って、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる金型の一方に表皮材を配置して、該表皮材の裏面に成形樹脂基材を一体成形する工程と、
金型キャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、上記型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体が提供される。
【0020】
また、本発明に従って、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
樹脂基材を成形する第1のキャビティと、第1のキャビティよりも大きな型内被覆を施す第2のキャビティを有する金型部と、コア型部とからなる金型であって、
該第1のキャビティ面にて成形樹脂基材を成形する工程と、
成形体をコア型部に固定したままで、該第1のキャビティから該第2のキャビティ面に交換し、該第2のキャビティ面と該成形体との間隙に型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、上記型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体が提供される。
【0021】
また、本発明に従って、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
樹脂基材を成形する第1のキャビティと、第1のキャビティよりも大きな型内被覆を施す第2のキャビティを有する金型部と、コア型部とからなる金型であって、
該第1のキャビティ面に表皮材を配置して、該表皮材の裏面に成形樹脂基材を一体成形する工程と、
成形体をコア型部に固定したままで、該第1のキャビティから該第2のキャビティ面に交換し、該第2のキャビティ面と該成形体との間隙に型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、上記型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体が提供される。
【0022】
また、本発明に従って、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる成形用金型にて成形樹脂基材を成形する工程と、
成形体を金型から取り出す工程と、
該成形体よりも大きなキャビティを有する固定金型部と可動金型部からなる別の被覆用金型に該成形体を配置し、型締めする工程と、
該被覆用金型と該成形体との間のキャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、上記型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体が提供される。
【0023】
また、本発明に従って、射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる成形用金型の一方に表皮材を配置して、該表皮材の裏面に成形樹脂基材を一体成形する工程と、
成形体を金型から取り出す工程と、
該成形体よりも大きなキャビティを有する固定金型部と可動金型部からなる別の被覆用金型に該成形体を配置し、型締めする工程と、
該被覆用金型と該成形体との間のキャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、上記型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表皮材が一体化された熱硬化性成形樹脂又は熱可塑性成形樹脂の成形体の表皮側表面と金型キャビティ表面との間に被覆組成物を注入し、金型内で被覆組成物を脱型可能になるように熱により半硬化させた後、該金型から被覆成形体を取り出し、更にUV照射させることにより被覆組成物を完全硬化させ、塗膜の硬さや耐擦り傷性の向上や光沢度が高く表面平滑性に優れ、ソリやヒケが殆ど無く外観に優れ、成形サイクルの短縮が可能な型内被覆成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】熱可塑性樹脂成形材料の射出成形法の第1の態様の装置の概略図である。
【図2】熱可塑性樹脂成形材料の射出成形法の第2の態様の装置の概略図である。
【図3】型内被覆成形体のソリの大きさを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の型内被覆成形体について、具体的に説明する。
【0027】
本発明に係わる型内被覆成形体は、熱硬化性成形樹脂又は熱可塑性成形樹脂からなる成形体と、その表面に形成された型内被覆組成物の被膜からなっている。成形体は表皮材が一体成形されていることが意匠性の面から好ましい。
【0028】
前記熱硬化性成形樹脂としては、従来より公知の成形材料が使用でき、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂をマトリックスとするSMC、BMCと呼ばれる繊維強化プラスチック成形材料、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、エポキシ樹脂をマトリックスとするRTM成形材料、ジシクロペンタジエン、ウレタン等を用いたRIM成形材料等が挙げられる。
【0029】
前記熱可塑性成形樹脂としては、従来より公知の各種成形材料を使用することができ、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ABS樹脂あるいはこれらのアロイ材が挙げられる。
【0030】
このような成形材料は、用途に応じた特性を満足するように、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維や炭酸カルシウムウィスカー等の強化材、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、顔料等を含有することができる。
【0031】
次に、本発明で用いられる型内被覆組成物について説明する。
【0032】
本発明で用いられる型内被覆組成物は、
(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステルから選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)と共重合可能な不飽和モノマーと
(C)有機過酸化物重合開始剤、アゾ系重合開始剤の一方又は両方と
(D)光重合開始剤とを含有してなり、
かつ、前記(A)成分と前記(B)成分との質量割合が、(A)/(B)=20/80〜80/20、
前記(C)成分の質量割合が、(C)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100、
前記(D)成分の質量割合が、(D)/{(A)+(B)}=0.1/100〜10/100
を必須成分として含有し、更に必要に応じてガラスフレークやパール顔料、炭酸カルシウムやタルク、クレー等の無機粒子や着色顔料、ジアリルフタレートオリゴマー、飽和ポリエステル樹脂やポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等の低収縮剤、離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、重合防止剤、硬化促進剤等の任意成分を含むものである。
【0033】
(a)(A)成分について
本発明で用いられる型内被覆組成物に使用される(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
【0034】
(a−1)(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー
(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0035】
これらのオリゴマーの質量平均分子量は、それぞれの種類により変動し得るが、一般に、約300〜30,000、好ましくは、500〜10,000とするのが適当である。上記(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を、1分子中に、少なくとも2個〜8個、好ましくは、2〜6個有することが適当である。
【0036】
(a−1−1)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、(1)有機ジイソシアネート化合物と、(2)有機ポリオール化合物と、(3)ヒドロシキアルキル(メタ)アクリレートとを、NCO/OH比が、例えば、0.8〜1.0、好ましくは、0.9〜1.0となるような存在比で混合し、通常の方法により製造することができる。水酸基が過剰に存在する場合や、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを多量に使用することにより、水酸基を多く有するオリゴマーが得られる。
【0037】
具体的には、(1)有機ジイソシアネート化合物と、(2)有機ポリオール化合物等とを例えば、ジブチル錫ラウレート等のウレタン化触媒の存在下で反応させて、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得る。次いで、ほとんど遊離イソシアネート基が反応するまで、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させることにより、上記ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを製造することが出来る。なお、(2)有機ポリオール化合物と、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの割合は、後者1モルに対し、例えば、前者0.1〜0.5モル程度が適当である。
【0038】
上記の反応に使用される(1)有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−ジイソシアナトエタン、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン等を使用することができる。これら有機ジイソシアネート化合物は、単独で用いても、また、それらの2種以上の混合物として使用することもできる。
【0039】
上記反応で使用される(2)有機ポリオール化合物は、好ましくは、有機ジオール化合物として、例えば、アルキルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等を挙げることができる。
【0040】
アルキルジオールとしては、例えば、エチレングリコールや、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチルブタン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、4,8−ジヒドロキシトリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等を代表的なものとして挙げることができる。
【0041】
有機ジオール化合物としてのポリエーテルジオールは、例えば、既知の方法により、アルデヒドや、アルキレンオキサイド、グリコール等の重合により合成することができる。例えば、ホルムアルデヒドや、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等を適当な条件下でアルキルジオールに付加重合させることによって、ポリエーテルジオールが得られる。
【0042】
有機ジオール化合物としてのポリエステルジオールとしては、例えば、飽和又は不飽和のジカルボン酸及び/又はそれらの酸無水物と、過剰のアルキルジオールとを反応させて得られるエステル化反応生成物、及びアルキルジオールにヒドロキシカルボン酸及び/又はその分子内エステルであるラクトン及び/又は分子間エステルであるラクチドを重合させて得られるエステル化反応生成物を用いることができる。これらの有機ポリオール化合物は単独で用いても、それらの2種以上を併用して使用することもできる。
【0043】
上記(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。その他、本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子中に(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物と、有機ジイソシアネート化合物とを、NCO/OHの比が、例えば、0.9〜1.0の割合で、例えば、ジブチル錫ジラウリレート等のウレタン化触媒の存在下で反応しても製造することができる。
【0044】
本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、好ましくは脂環構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーあるいは脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの少なくとも1種、特に好ましくは脂環構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが、塗膜の耐候性や反応性の面から有用である。
【0045】
(a−1−2)ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、水酸基を末端に有するポリエステルポリオールと、不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。このようなポリエステルポリオールは、代表的には飽和又は不飽和のジカルボン酸又はその酸無水物と、過剰量のアルキレンジオールとをエステル化反応することによって製造することができる。使用されるジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸や、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸等が代表的なものとして挙げられる。また、使用されるアルキレンジオールとしては、例えば、エチレングリコールや、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等が代表的なものとして挙げることができる。ここで、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸や、メタクリル酸等を代表的なものとして挙げることができる。
【0046】
(a−1−3)エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、エポキシ化合物と、上記のような不飽和カルボン酸とを、エポキシ基1当量当たりのカルボキシル基当量を、例えば、0.5〜1.5となるような割合で用い、通常のエポキシ基への酸の開環付加反応によって製造させたものである。ここで使用されるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ、フェノール性ノボラック型エポキシ等を好適に挙げることができる。
【0047】
(a−1−4)ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのポリエーテル(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールと、前述の不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。
【0048】
(a−2)不飽和ポリエステル樹脂
一方、本発明において、(A)成分として使用される不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、有機ポリオール化合物と、不飽和カルボン酸とを、公知の方法により反応させ、更に必要に応じて、飽和ポリカルボン酸を反応させて製造することができる。使用される有機ポリオールとしては、例えば、エチレングリコールや、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ビスフェノールA等が代表的なものとして挙げることができる。また、使用される不飽和ポリカルボン酸としては、例えば、(無水)マレイン酸や、(無水)フマル酸、(無水)イタコン酸等を代表的なものとして挙げることができる。
【0049】
これら(A)成分としては、上記(メタ)アクリロイル基含有オリゴマーと、不飽和ポリエステル樹脂とを併用しても良い。
【0050】
(b)(B)成分について
本発明で使用される(B)成分は、上記(A)成分と共重合可能な不飽和モノマーである。
【0051】
このような不飽和モノマーとしては、例えば、スチレンや、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)クリル酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)クリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等が代表的なものとして挙げられる。
【0052】
(B)成分としては、上記不飽和モノマーを単独で使用してもよく、又は、これらの混合物として使用することができる。特に、1分子内に1個のエチレン性二重結合を有するモノマーと、2個以上のエチレン性二重結合を有するモノマーとを含むことにより、形成した被膜の硬度が上がり擦り傷がつき難くなるので好ましい。また、(B)成分としては、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(1,6−HDDA)のような脂肪族(メタ)アクリレートモノマーあるいはシクロヘキシルメタアクリレートのような脂環構造を持った(メタ)アクリレートモノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT)の少なくとも1種、特には脂肪族(メタ)アクリレートモノマーあるいは脂環構造を持った(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を含むことにより、塗膜の耐候性や反応性の面から好ましい。
【0053】
上記(A)成分と上記(B)成分の質量割合は、(A)成分及び(B)成分として使用される化合物等の種類にもよるが、通常、(A)/(B)=20/80〜80/20であり、更に33/67〜67/33が好ましい。この範囲であれば、硬化特性が良く堅牢な硬化塗膜が得られる、また、被覆組成物の型内での流動性が良く、気泡の混入もなく均一な被覆が得られるので好ましい。
【0054】
(c)(C)成分について
本発明で使用される(C)成分は、フリーラジカルを発生し、前記(A)成分及び(B)成分を重合させるために使用する重合開始剤であり、詳しくは有機過酸化物重合開始剤、アゾ系重合開始剤の一方又は両方が用いられる。
【0055】
有機過酸化物重合開始剤としては、イソブチリルパーオキサイド1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物が代表的なものとして挙げられる。
【0056】
アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニレタン)等が代表的なものとして挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、併用しても良い。
【0057】
有機過酸化物重合開始剤、アゾ系重合開始剤の一方又は両方の配合量は、前記{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、より好ましくは、0.5〜3質量部であることが適当である。(C)成分の有機過酸化物重合開始剤、アゾ系重合開始剤の一方又は両方の配合量が、0.1質量部未満であると(A)、(B)成分の反応がうまく進まず、硬化不良となり金型から被覆成形体を取り出す際に塗膜が剥離し満足な成形体が得られない。また、5質量部を超えると被覆組成物のポットライフが著しく短くなり実用上好ましくない。
【0058】
(d)(D)成分について
本発明で使用される(D)成分は、UV照射により前記(A)成分及び(B)成分を重合させるために使用する光重合開始剤である。このような光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン及びその誘導体が代表的なものとして挙げられる。これらは単独で用いても良いし、併用しても良い。
【0059】
(D)成分の光重合開始剤の配合量は、前記{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、より好ましくは、1〜7質量部であることが適当である。(D)成分の重合開始剤の配合量が、0.1質量部未満であるとUV照射を行っても(A)、(B)成分の反応がうまく進まず、塗膜の硬化が不十分となる。また、10質量部を超えると硬化塗膜の黄変や透明性が損なわれる。
【0060】
(e)その他成分について
本発明で使用される型内被覆組成物は、更に必要に応じガラスフレークやパール顔料の少なくとも1種を含むことができる。また光重合開始剤の重合反応に影響を与えない範囲で炭酸カルシウムやタルク等の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下である無機粒子の少なくとも1種を含むことができる。このようなものとして、例えば、炭酸カルシウムや、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー等を好適に挙げることができる。これら無機粒子は、被膜硬化に伴う収縮応力を分散させ、成形体との付着性を向上させたり、熱膨張係数を低減する目的で配合する。また被覆表面の耐擦り傷性を向上させる目的で、平均粒子径が5nm以上100nm以下であるアルミナやシリカ等の粒子を含むこともできる。
【0061】
本発明で使用される型内被覆組成物は、更に必要に応じ光重合開始剤の重合反応に影響を与えない範囲で着色顔料の少なくとも1種を含むことができる。着色顔料としては、従来から通常プラスチックス用、塗料用として使用されている各種着色顔料を使用することができる。
【0062】
本発明では、硬化塗膜を金型からスムーズに離型させるために、任意に、離型剤を併用することができる。離型剤は、例えば、ステアリン酸や、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩、大豆油レシチン、シリコーン油、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール二塩基酸エステル類等を挙げることができる。これら離型剤の配合量は、前記{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対して、例えば、0.1〜5質量部、更には、0.2〜2質量部であることが好ましい。この範囲内においては、金型からの離型効果が好適に発揮される。
【0063】
本発明では、各種基材樹脂との付着性を向上させる目的で、改質樹脂を配合することができる。このような目的で使用される改質樹脂として、例えば、塩素化ポリオレフィン、マレイン酸変性ポリオレフィン、アクリルオリゴマー、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、アリルエステルオリゴマー等を挙げることができる。
【0064】
本発明に使用される型内被覆組成物には、更に必要に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、重合禁止剤、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤、可塑剤等の各種添加剤等を配合してもよい。
【0065】
本発明に使用される表皮材としては、一般にインサート成形で使用されるものが適宜使用可能である。このような表皮材として、例えば天然木をスライスして得られる木肌シートを、金属薄板、樹脂薄板あるいは不織布等のフィルム状の支持体に貼り合わせたもの、更には木肌シート表面にコーティング処理を施したものを挙げることができる。天然木としては、例えばサクラ、アカガシ、コクタン、シタン、マホガニー、カヤ、ツゲ、カツラ、ケヤキ、チーク及びホウを挙げることができる。天然木と支持体との接着剤は特に限定されないが、後工程で溶融状態の合成樹脂を射出成形する場合、この熱に耐えうるように、エポキシ系やウレタン系等の耐熱性の熱硬化型接着剤を用いて、加圧加熱接着するのが好ましい。天然木表面へのコーティング処理方法については特に限定されず、例えば、素地研磨、ウォッシュコート、着色染色、目止め、研磨、クリヤーコート、等の塗装工程を採用でき、塗料としては、セルロース系、アクリル系、ウレタン系、アルキド系、メラミン系、不飽和ポリエステル系等の通常の木工塗装に使用されている塗料が用いられる。
【0066】
また、印刷フィルムを使用することができる。このような印刷フィルムとしては、例えば基体フィルム上に絵画、ロゴ、模様、文字等の図柄層が通常の形成方法で形成されている。基体フィルムとしては、通常のインサート材の基体フィルムとして使用されるものであり、アクリル、スチレン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0067】
<型内被覆成形体の製造方法>
以下、本発明の型内被覆成形体の製造方法について、それを実施するための成形機の構成、成形型及び被覆組成物注入装置を、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明の範囲はこのような具体的な成形機、成形型及び被覆組成物注入装置によって何ら限定されるものではない。
【0068】
図1は熱可塑性樹脂成形材料の射出成形法の場合の第1の態様を示すものである。図1において、符号1は射出成形機の型締め装置の固定盤、2は可動盤であり、それぞれ互いに対向する成形型部材である固定金型部3及び可動金型部4を備えている。可動盤2が型締めシリンダ5によって進退動作される構成になっている。そして、固定金型部3及び可動金型部4の嵌合個所には、所要形状のキャビティ6が形成されていて、このキャビティ6中に溶融もしくは軟化状態の熱可塑性樹脂成形材料を射出、充填し固化させるのである。溶融樹脂成形材料を射出、充填する場合、上記キャビティ6にはスクリューを有する射出シリンダ7から、ノズル8及びスプルー9を介して樹脂成形材料が射出できるようになっている。
【0069】
また、図1において型内被覆組成物の注入手段としては、シャットオフピン10Aを備えたインジェクタ10、上記インジェクタ10に所定量の型内被覆組成物を供給する計量シリンダ11及び型内被覆組成物をその貯蔵部12から上記計量シリンダ11に供給するための供給ポンプ13が装備されている。なお、上記計量シリンダ11には型内被覆組成物注入用のプランジャーレギュレータ11Aが備えられている。
【0070】
成形に際しては、先ず型締めシリンダ5を動作して、固定金型部3と可動金型部4を閉じ、型締め圧を付加する。この型締め圧は、樹脂成形材料の射出圧力に対抗できる必要がある。通常この射出圧力はノズル8の部分で40〜250MPaの高圧である。この過程で供給ポンプ13が動作し、計量シリンダ11に必要な量の型内被覆組成物を供給しておく。
【0071】
次いで、溶融もしくは軟化状態の樹脂成形材料を射出シリンダ7からノズル8及びスプルー9を介してキャビティ6内に射出する。上記樹脂成形材料が金型内で、型内被覆組成物の注入圧力、流動圧力に耐える程度に固化した段階で、上記型締め圧を減圧するか、又は下記の所望の硬化被膜厚よりも大きいが、固定金型部3と可動金型部4との嵌合を離脱させることがない距離だけ、好ましくは0.2〜5mmだけ可動金型部4を後退させる。次いで、シャットオフピン10Aを動作させてインジェクタ10の注入口を開放する。次いで、計量シリンダ11の型内被覆組成物注入用のプランジャーレギュレータ11Aを動作させ、キャビティ6、すなわち固定金型部3の内壁と樹脂成形体の型内被覆する表面との間に所望の膜厚、好ましくは20〜1,000μmの硬化被膜が得られるだけの量の型内被覆組成物を注入する。
【0072】
型内被覆組成物を注入した後、再びシャットオフピン10Aで注入口を閉じ、必要に応じて型締めシリンダ5を動作させ型締め操作を行い、型内で型内被覆組成物を押し広げ成形体表面への被覆を行い、キャビティ6の成形体の表面上で型内被覆組成物を脱型可能な程度に熱により半硬化させる。次いで、型締めシリンダ5を動作させ、固定金型部3と可動金型部4を離間して、型内被覆組成物が被覆された型内被覆成形体を金型から取り出す。
【0073】
型内被覆組成物の被膜の熱による半硬化については、固定金型部及び可動金型部の表面温度、樹脂成形材料を金型内に射出してから型内被覆組成物を注入するまでの時間、型内被覆組成物の種類、型内被覆組成物注入後の金型内での保持時間等によって変動するので一概に言えないが、例えば、固定金型部及び可動金型部の表面温度75℃、樹脂成形材料を金型内に射出してから型内被覆組成物を注入するまでの時間約15秒、型内被覆組成物注入後の金型内での保持時間約15秒である。
【0074】
以下図示はしていないが、取り出した型内被覆成形体を低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク等のUV照射機により、紫外線等の活性エネルギー線を照射して型内被覆組成物を完全硬化させ型内被覆成形体を得る。紫外線の照射条件は特に制限されないが、150〜450nmの波長を含む紫外光を空気中もしくは窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で照射することが好ましい。紫外線の照射量は膜厚等などにより異なるが、通常、50〜2000mJ/cmが好ましく、特には200〜1200mJ/cmが好ましい。このUV照射する場合の雰囲気温度は、該型内被覆組成物を脱型可能になるように半硬化させる時の金型温度よりも低いことが、型内被覆成形体の表面平滑性やソリといった面からより好ましい。
【0075】
図2は、第2の態様を示すものである。樹脂基材を成形する第1のキャビティ14と、第1のキャビティより大きな型内被覆を施す第2のキャビティ15の二つの金型部と、コア型部16を備えている。第2のキャビティには図1と同様の型内被覆組成物を注入する手段としての、シャットオフピン10Aを備えたインジェクタ10が取り付けられている。
【0076】
図示はしていないが上記インジェクタ10に所定量の型内被覆組成物を供給する計量シリンダ及び型内被覆組成物をその貯蔵部から上記計量シリンダ11に供給するための供給ポンプが装備されている。なお、上記計量シリンダには型内被覆組成物注入用のプランジャーレギュレータが備えられている。
【0077】
17はコア型部をスライドさせる油圧装置、18はスライド用ベース盤である。図2においては、型締めシリンダや樹脂成形材料を溶融射出する射出シリンダ部等は不図示である。
【0078】
成形に際しては、型締めシリンダにてキャビティ型部とコア型部を閉じ、型締め圧を付加する。この型締め圧は、樹脂成形材料の射出圧力に対抗できる必要がある。通常この射出圧力はノズルの部分(不図示)で40〜250MPaの高圧である。この過程で供給ポンプが動作し、計量シリンダに必要な量の型内被覆組成物を供給しておく。
【0079】
次いで、溶融もしくは軟化状態の樹脂成形材料を射出シリンダからノズルを介して第1のキャビティ内に射出する。図2(a)の状態で、樹脂成形体が型内被覆組成物の注入圧力、流動圧力に耐える程度に固化した段階で、図2(b)の如くキャビティ型部とコア型部を離間し、図2(c)の如くコア型部をスライドさせ第1のキャビティ14から第2のキャビティ15に交換して、図2(d)の如く再度キャビティ型部とコア型部を閉じ、型締め圧を付加する。この型締め圧は、型内被覆組成物の注入圧力に対抗できる必要がある。このときの注入圧力は通常7〜30MPaである。
【0080】
次いで、シャットオフピン10Aを動作させてインジェクタ10の注入口を開放する。次いで、計量シリンダの型内被覆組成物注入用のプランジャーレギュレータを動作させ、第2のキャビティ15の内壁と樹脂成形体の型内被覆する表面との間の空間部に所望の膜厚、好ましくは20〜1,000μmの硬化被膜が得られるだけの量の型内被覆組成物を注入する。
【0081】
型内被覆組成物を注入した後、再びシャットオフピン10Aで注入口を閉じ、必要に応じて型締めシリンダを動作させ型締め操作を行い、型内で型内被覆組成物に圧力を加え、キャビティ15の成形体の表面上で型内被覆組成物を脱型可能になるまで熱により半硬化させる。次いで、型締めシリンダを動作させ、キャビティ金型部14及び15とコア金型部16を離間して、型内被覆組成物が被覆された型内被覆成形体を金型から取り出す。
【0082】
以下は第1の態様と同様にUV照射を行い、型内被覆組成物を完全硬化させ型内被覆成形体を得る。
【0083】
第3の態様は、型締め装置を備えた固定金型部と可動金型部からなる成形用金型を用いて成形体を成形した後に、該成形体を金型から取り出し、該成形体よりも大きなキャビティを有する固定金型部と可動金型部からなる別の被覆用金型に配置した後、可動金型部を稼動し型締めを行う。可動金型内面と成形体との間隙に被覆膜厚分の空間部(キャビティ)を形成し、そのキャビティ内に型内被覆組成物を注入するものである。
【0084】
成形において第2及び第3の態様は、成形体の形状にかかわらず、被覆膜厚を任意に設定できる利点がある。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明について更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0086】
<ウレタンオリゴマーの合成>
ウレタンオリゴマーは各種公知の方法で重合して作製することができる。合成例として、表1に示す量の(A)成分に、(A)〜(C)成分の合計量100質量部当たり0.02質量部となる量のジブチル錫ジラウレートを仕込み、40℃に保ちつつ、表1に示す量の(B)成分を滴下し、十分な時間反応させた後、表1に示す(C)成分に(A)〜(C)成分の合計量100質量部当たり0.1質量部となる量のハイドロキノンを溶解させたものを滴下して、更に十分な時間75℃で加熱攪拌を続け、ウレタンオリゴマーUAC−1〜UAC−4を得た。
【0087】
【表1】

【0088】
<実施例1〜7及び比較例1〜7>
長さ300mm、幅200mm、高さ10mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。なお、金型キャビティ表面は#8000ダイヤモンドペーストにて入念に磨いた。金型温度は固定金型を75℃に、可動金型を75℃に設定し、バレル温度を220℃に加熱し、まず耐熱ABS樹脂を射出シリンダ内で加熱溶融させ、3,500KNの型締め圧力で型締めされた金型内に約1秒かけて射出し、15秒間冷却し、得られた成形体の表面が型内被覆組成物の注入、流動圧力に耐えうる程度に固化させた。
【0089】
次いで、可動金型を約1mm離間させた後、表2に記載した各型内被覆組成物18cmを金型表面と成形体の表面との間に約0.9秒かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒間かけて200KNまで加圧し15秒間保持し、型内被覆組成物を脱型可能になるまで半硬化させた後、金型から被覆成形品を取り出した。その後、被覆成形品の塗膜表面側からUV照射機を用いて空気中、雰囲気温度25℃の条件下、1,000mJ/cmの紫外線を照射して型内被覆組成物を完全硬化させ実施例1〜7の被覆成形品を得た。
【0090】
UV照射して得られた実施例1〜7の型内被覆成形体と、比較としてUV照射していない比較例1〜7の型内被覆成形体の被覆膜の硬さ、光沢、耐擦り傷性、基材と被覆膜との付着性及びソリの程度を下記の試験方法により測定した。それらの結果を表3に示す。
【0091】
〔被覆膜の硬さ〕
JIS K 5600−5−4:引っかき硬度(鉛筆法)に従って、塗膜の鉛筆硬度を測定した。
【0092】
〔鏡面光沢度〕
JIS K 5600−4−7:鏡面光沢度に従って、鏡面光沢度計を用い、入射角度60度で測定した。
【0093】
〔耐擦り傷性〕
染色物摩擦堅牢度試験機(型式RT−200、平面形試験台付き、(株)大栄科学精器製作所製)を用い、#000番スチールウールを装着した磨耗パッドに13.7KPaの荷重をかけて11往復させ、鏡面光沢度を測定し、試験前後の変化量を求めた。
【0094】
〔基材と被覆膜との付着性〕
JIS K 5600−5−6:付着性(クロスカット法)に従って初期の塗膜付着性試験を実施した。塗膜の付着性はJIS K 5600−5−6に記載の試験結果の分類に基づき下記の0〜5の6段階で評価した。
〈6段階評価〉
0…カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
1…カットの交差点における塗膜の小さな剥がれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2…塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び又は数カ所の目が部分的又は全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
5…剥がれの程度が分類4を超える場合。
【0095】
〔成形体のソリの大きさ〕
図3に示したように、型内被覆をしていない成形体の中心部の凹深さを(a)、型内被覆した成形体の凹深さを(b)としたとき、下記(I)式により計算した値を、型内被覆成形体のソリの大きさとした。ただし、単位はmmとする。
型内被覆成形体のソリの大きさ=(b)−(a) (I)式
【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
<実施例8〜15及び比較例8〜10>
長さ300mm、幅200mm、高さ10mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。なお、金型キャビティ表面は#8000ダイヤモンドペーストにて入念に磨いた。金型温度は固定金型を75℃に、可動金型を75℃に設定し、バレル温度を220℃に加熱し、まず耐熱ABS樹脂を射出シリンダ内で加熱溶融させ、3,500KNの型締め圧力で型締めされた金型内に約1秒かけて射出し、20秒間冷却し、得られた成形体の表面が型内被覆組成物の注入、流動圧力に耐えうる程度に固化させた。
【0099】
次いで、可動金型を約1mm離間させた後、表4に記載した各型内被覆組成物18cmを金型表面と成形体の表面との間に約0.9秒かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒間かけて200KNまで加圧し20秒間保持し、型内被覆組成物を脱型可能になるまで半硬化させた後、金型から被覆成形品を取り出した。その後、被覆成形品の塗膜表面側からUV照射機を用いて空気中、雰囲気温度25℃の条件下、1,000mJ/cmの紫外線を照射して型内被覆組成物を完全硬化させた。
【0100】
得られた型内被覆成形体の被覆膜の硬さ、光沢、耐擦り傷性、基材と被覆膜との付着性及びソリの程度を前記の試験方法により測定した。それらの結果を表5に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
【表5】

【0103】
<実施例16〜17及び比較例11〜12>
長さ300mm、幅200mm、高さ10mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。なお、金型キャビティ表面及びコア側表面は#8000ダイヤモンドペーストにて入念に磨いた。金型温度は固定金型を75℃に、可動金型を75℃に設定し、バレル温度を280℃に加熱し、まずポリカーボネート樹脂を射出シリンダ内で加熱溶融させ、3,500KNの型締め圧力で型締めされた金型内に約1秒かけて射出し、15秒間冷却し、得られた成形体の表面が型内被覆組成物の注入、流動圧力に耐えうる程度に固化させた。
【0104】
次いで、可動金型を約1mm離間させた後、表6に記載した各型内被覆組成物4cmを金型表面と成形体の表面との間に約0.9秒かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒間かけて200KNまで加圧し15秒間保持し、型内被覆組成物を脱型可能になるまで半硬化させた後、金型から被覆成形品を取り出した。その後、被覆成形品の塗膜表面側からUV照射機を用いて空気中、雰囲気温度25℃の条件下、1,000mJ/cmの紫外線を照射して型内被覆組成物を完全硬化させた。
【0105】
UV照射して得られた型内被覆成形体と、比較としてUV照射していない型内被覆成形体の被覆膜の硬さ、光沢、基材と被覆膜との付着性及びソリの程度を前記の試験方法により測定した。また、耐擦り傷性については下記の方法により測定した。それらの結果を表7に示す。
【0106】
〔耐擦り傷性〕
染色物摩擦堅牢度試験機(型式RT−200、平面形試験台付き、(株)大栄科学精器製作所製)を用い、#000番スチールウールを装着した磨耗パッドに13.7KPaの荷重をかけて11往復させ、曇価(Haze)を測定し、試験前後の変化量を求めた。
【0107】
【表6】

【0108】
【表7】

【0109】
<実施例18〜20及び比較例13〜15>
長さ300mm、幅200mm、高さ10mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。実施例18〜20は、型内被覆組成物の注入量を30cmとした以外は実施例1〜7と同一条件にて実施例18〜20の型内被覆成形体を得た。
【0110】
一方、比較例13〜15については、金型温度は固定金型を100℃に、可動金型を100℃に設定し、バレル温度を220℃に加熱し、まず耐熱ABS樹脂を射出シリンダ内で加熱溶融させ、3,500KNの型締め圧力で型締めされた金型内に約1秒かけて射出し、20秒間冷却し、得られた成形体の表面が型内被覆組成物の注入、流動圧力に耐えうる程度に固化させた。
【0111】
次いで、可動金型を約1mm離間させた後、表8に記載した各型内被覆組成物30cmを金型表面と成形体の表面との間に約1秒かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を0.5秒間かけて200KNまで加圧し20秒間保持し、型内被覆組成物を硬化させた後、金型から被覆成形品を取り出し比較例13〜15の型内被覆成形体を得た。
【0112】
得られた型内被覆成形体の被覆膜の硬さ、光沢、耐擦り傷性、基材と被覆膜との付着性及びソリの程度を前記の試験方法により測定した。それらの結果を表9に示す。
【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
<実施例21〜22及び比較例16〜17>
長さ200mm、幅150mm、高さ10mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。金型温度は固定金型を75℃に、可動金型を75℃に設定し、厚さ0.3mmにスライスしたチーク材の単板を可動型の型面に配置した。単板は意匠表面となる表面が可動型の型面に対向するように配置した。単板の裏面にはウレタン系接着剤を介して不織布が積層され接着層が形成されている。次いで2,000KNの型締め圧力で型締めし、バレル温度を220℃に加熱した射出シリンダ内で耐熱ABS樹脂を加熱溶融させ、金型内に約1秒かけて射出し、20秒間冷却し、得られた成形体を固化させた。
【0116】
次いで、可動金型を約1mm離間させた後、表10に記載した各型内被覆組成物18cmを金型表面と成形体の表面との間に約1.5秒かけて注入した。注入完了後、型締め圧力を1秒間かけて200KNまで加圧し20秒間保持し、型内被覆組成物を脱型可能になるまで半硬化させた後、金型から被覆成形品を取り出した。その後、被覆成形品の塗膜表面側からUV照射機を用いて空気中、雰囲気温度25℃の条件下、1,000mJ/cmの紫外線を照射して型内被覆組成物を完全硬化させ、実施例21〜22の被覆成形品を得た。
【0117】
UV照射して得られた実施例21〜22の型内被覆成形体と、比較としてUV照射していない比較例16〜17の型内被覆成形体の被覆膜の硬さ、光沢、耐擦り傷性及び基材と被覆膜との付着性及びソリの程度を前記の試験方法により測定した。それらの結果を表11に示す。
【0118】
【表10】

【0119】
【表11】

【0120】
<実施例23〜24及び比較例18〜19>
長さ200mm、幅150mm、高さ10mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るための第1のキャビティ及び設定膜厚50μmの型内被覆を施すことのできる第2のキャビティを有する金型を用い、図2に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。なお、金型キャビティ表面及びコア側表面は#8000ダイヤモンドペーストにて入念に磨いた。金型温度は第1及び第2のキャビティ型部を75℃に、コア型部を75℃に設定し、バレル温度を280℃に加熱し、まずポリカーボネート樹脂を射出シリンダ内で加熱溶融させ、3,500KNの型締め圧力で型締めされた金型内に約1秒かけて射出し、30秒間冷却し、得られた成形体の表面が型内被覆組成物の注入、流動圧力に耐えうる程度に固化させた。
【0121】
次いで、キャビティ型部とコア型部を離間し、コア型部をスライドさせ第1のキャビティから第2のキャビティに交換して、再度キャビティ型部とコア型部を閉じ、1,000KNの型締め圧力で型締めした。その後、表6に記載の実施例16〜17及び比較例11〜12の型内被覆組成物1.9cmを金型表面と成形体の表面との間に約0.5秒かけて注入し、20秒間保持した。このときの注入圧力は、7MPaであった。型内被覆組成物が脱型可能になるまで半硬化させた後、金型から被覆成形品を取り出した。その後、実施例23〜24は被覆成形品の塗膜表面側からUV照射機を用いて空気中、雰囲気温度25℃の条件下、1,000mJ/cmの紫外線を照射して型内被覆組成物を完全硬化させ被覆成形品を得た。比較例18〜19はUV照射を行わなかった。
【0122】
UV照射して得られた実施例23〜24の型内被覆成形体と、比較としてUV照射していない比較例18〜19の型内被覆成形体の被覆膜の硬さ、光沢、耐擦り傷性及び基材と被覆膜との付着性及びソリの程度を前記の試験方法により測定した。それらの結果を表12に示す。
【0123】
【表12】

【0124】
<実施例25〜26及び比較例20〜21>
長さ200mm、幅150mm、高さ10mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るための第1のキャビティ及び設定膜厚500μmの型内被覆を施すことのできる第2のキャビティを有する金型を用い、図2に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。金型温度は第1及び第2のキャビティ型部を75℃に、コア型部を75℃に設定し、厚さ0.3mmにスライスしたチーク材の単板を第1のキャビティの型面に配置した。単板は意匠表面となる表面が第1のキャビティの型面に対向するように配置した。単板の裏面にはウレタン系接着剤を介して不織布が積層され接着層が形成されている。次いで3,000KNの型締め圧力で型締めし、バレル温度を220℃に加熱した射出シリンダ内で耐熱ABS樹脂を加熱溶融させ、金型内に約1秒かけて射出し、30秒間冷却し、得られた成形体を固化させた。
【0125】
次いで、キャビティ型部とコア型部を離間し、コア型部をスライドさせ第1のキャビティから第2のキャビティに交換して、再度キャビティ型部とコア型部を閉じ、1,000KNの型締め圧力で型締めした。その後、表10に記載の実施例21〜22及び比較例16〜17の型内被覆組成物18.5cmを金型表面と成形体の表面との間に約1.5秒かけて注入し、20秒間保持した。このときの注入圧力は、12MPaであった。型内被覆組成物が脱型可能になるまで半硬化させた後、金型から被覆成形品を取り出した。その後、実施例25〜26は被覆成形品の塗膜表面側からUV照射機を用いて空気中、雰囲気温度25℃の条件下、1,000mJ/cmの紫外線を照射して型内被覆組成物を完全硬化させ被覆成形品を得た。比較例20〜21はUV照射を行わなかった。
【0126】
UV照射して得られた実施例25〜26の型内被覆成形体と、比較としてUV照射していない比較例20〜21の型内被覆成形体の被覆膜の硬さ、光沢、耐擦り傷性及び基材と被覆膜との付着性及びソリの程度を前記の試験方法により測定した。それらの結果を表13に示す。
【0127】
【表13】

【0128】
<実施例27〜28及び比較例22〜23>
長さ200mm、幅150mm、高さ10mm、板厚2.5mmの箱形状の樹脂成形体を得るためのキャビティを有する固定金型部と可動金型部からなる第1の金型及び該成形体よりも大きく設定膜厚500μmの型内被覆を施すことのできるキャビティを有する固定金型部と可動金型部からなる第2の被覆用金型を用い、第3に示す態様に従って成形体に対する型内被覆を実施した。第1の金型温度を固定金型部を75℃に、可動金型部を75℃に設定し、厚さ0.3mmにスライスしたチーク材の単板を可動型の型面に配置した。単板は意匠表面となる表面が可動型の型面に対向するように配置した。単板の裏面にはウレタン系接着剤を介して不織布が積層され接着層が形成されている。次いで2,000KNの型締め圧力で型締めし、バレル温度を220℃に加熱した射出シリンダ内で耐熱ABS樹脂を加熱溶融させ、金型内に約1秒かけて射出し、30秒間冷却し、得られた成形体を固化させた。
【0129】
次いで、固定型と可動型を離間し、成形体を金型から取り出した。次いで固定金型部を75℃に、可動金型部を75℃に設定した第2の被覆用金型の固定型に該成形体を設置した後、可動型を閉じ、500KNの型締め圧力で型締めした。その後、表10に記載の実施例21〜22及び比較例16〜17の型内被覆組成物18.5cmを金型表面と成形体の表面との間に約1.5秒かけて注入し、25秒間保持した。このときの注入圧力は、12MPaであった。型内被覆組成物が脱型可能になるまで半硬化させた後、金型から被覆成形品を取り出した。その後、実施例27〜28は被覆成形品の塗膜表面側からUV照射機を用いて空気中、雰囲気温度25℃の条件下、1,000mJ/cmの紫外線を照射して型内被覆組成物を完全硬化させ被覆成形品を得た。比較例22〜23はUV照射を行わなかった。
【0130】
UV照射して得られた実施例27〜28の型内被覆成形体と、比較としてUV照射していない比較例22〜23の型内被覆成形体の被覆膜の硬さ、光沢、耐擦り傷性及び基材と被覆膜との付着性及びソリの程度を前記の試験方法により測定した。それらの結果を表14に示す。
【0131】
【表14】

【符号の説明】
【0132】
1 固定盤
2 可動盤
3 固定金型部
4 可動金型部
5 型締めシリンダ
6 キャビティ
7 射出シリンダ
8 ノズル
9 スプルー
10 インジェクタ
10A シャットオフピン
11 計量シリンダ
11A プランジャーレギュレータ
12 貯蔵部
13 供給ポンプ
14 第1のキャビティ
15 第2のキャビティ
16 コア型部
17 油圧装置
18 スライド用ベース盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる金型を型締めする工程と、
金型キャビティ内で樹脂を成形する工程と、
キャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内被覆成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体に用いられる型内被覆組成物において、
該型内被覆組成物が、
(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステルから選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)と共重合可能な不飽和モノマーと
(C)有機過酸化物重合開始剤、アゾ系重合開始剤の一方又は両方と
(D)光重合開始剤と
を含有してなり、かつ、
前記(A)成分と前記(B)成分との質量割合が、(A)/(B)=20/80〜80/20、
前記(C)成分の質量割合が、(C)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100、
前記(D)成分の質量割合が、(D)/{(A)+(B)}=0.1/100〜10/100
であることを特徴とする型内被覆組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマーが、脂環構造を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである請求項1に記載の型内被覆組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の前記(A)成分と共重合可能な不飽和モノマーが、脂肪族(メタ)アクリレートモノマーあるいは脂環構造を持った(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種である請求項1又は2に記載の型内被覆組成物。
【請求項4】
射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる金型を型締めする工程と、
金型キャビティ内で樹脂を成形する工程と、
キャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内被覆成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、請求項1〜3のいずれかに記載の型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体。
【請求項5】
射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる金型の一方に表皮材を配置して、該表皮材の裏面に成形樹脂基材を一体成形する工程と、
金型キャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、請求項1〜3のいずれかに記載の型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体。
【請求項6】
射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
樹脂基材を成形する第1のキャビティと、第1のキャビティよりも大きな型内被覆を施す第2のキャビティを有する金型部と、コア型部とからなる金型であって、
該第1のキャビティ面にて成形樹脂基材を成形する工程と、
成形体をコア型部に固定したままで、該第1のキャビティから該第2のキャビティ面に交換し、該第2のキャビティ面と該成形体との間隙に型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、請求項1〜3のいずれかに記載の型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体。
【請求項7】
射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
樹脂基材を成形する第1のキャビティと、第1のキャビティよりも大きな型内被覆を施す第2のキャビティを有する金型部と、コア型部とからなる金型であって、
該第1のキャビティ面に表皮材を配置して、該表皮材の裏面に成形樹脂基材を一体成形する工程と、
成形体をコア型部に固定したままで、該第1のキャビティから該第2のキャビティ面に交換し、該第2のキャビティ面と該成形体との間隙に型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、請求項1〜3のいずれかに記載の型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体。
【請求項8】
射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる成形用金型にて成形樹脂基材を成形する工程と、
成形体を金型から取り出す工程と、
該成形体よりも大きなキャビティを有する固定金型部と可動金型部からなる別の被覆用金型に該成形体を配置し、型締めする工程と、
該被覆用金型と該成形体との間のキャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、請求項1〜3のいずれかに記載の型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体。
【請求項9】
射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法又は反応射出成形法のいずれかを用いて、
固定金型部と可動金型部からなる成形用金型の一方に表皮材を配置して、該表皮材の裏面に成形樹脂基材を一体成形する工程と、
成形体を金型から取り出す工程と、
該成形体よりも大きなキャビティを有する固定金型部と可動金型部からなる別の被覆用金型に該成形体を配置し、型締めする工程と、
該被覆用金型と該成形体との間のキャビティ内へ型内被覆組成物を注入する工程と、
注入した該型内被覆組成物が脱型可能になるように熱により半硬化させる工程と、
該型内被覆組成物が被覆された型内成形体を金型から取り出す工程と、及び
金型から取り出した該型内被覆成形体をUV照射により完全硬化させる工程
により製造される型内被覆成形体において、
該型内被覆組成物が、請求項1〜3のいずれかに記載の型内被覆組成物であることを特徴とする型内被覆成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−167662(P2010−167662A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11924(P2009−11924)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】