説明

基地局及びシステム情報通知方法

【課題】セルに在圏しているユーザ装置及びセルに新たに入って来るユーザ装置の通信を過不足なく規制できるようにすること。
【解決手段】基地局は、通信を規制する第1のシステム情報及び通信を規制しない第2のシステム情報を作成するシステム情報作成部と、待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期毎に起動するタイミングから、ユーザ装置を複数のグループのうちの何れかに分類し、ページング信号を通知するタイミングをグループ毎に決定するタイミング決定部と、何れかのグループに属するユーザ装置にページング信号を送信した後に第1のシステム情報を送信し、第1のシステム情報を送信する回数と第2のシステム情報を送信する回数との割合が規制の割合に対応するように、第1及び第2のシステム情報の送信を切り替え、何れかのグループに属するユーザ装置にページング信号を送信した後に第2のシステム情報を送信する送信部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局及びシステム情報通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムのセル、或いは通信ネットワーク装置が輻輳してきた場合、基地局は、例えば待ち受け状態のユーザ装置のアクセスを禁止し他のセルに移すことで、輻輳の状態を回避することができる。セル内のユーザ装置を他のセルに移すことは、基地局が送信する報知信号に含まれているシステム情報を用いて行うことができる。例えば、セルの状態を示す状態情報がシステム情報に含まれ、その状態情報により、セルが輻輳しているか否かが示されてもよい。システム情報は、一般的には、セルの中でユーザ装置が適切に動作するのに必要な情報要素を含む。ロングタームエボリューション(LTE)方式等の移動通信システムの場合、セルの状態を示す状態情報として「cellBarred IE」という情報要素を使用することができる。この情報要素は、輻輳していない場合は「notBarred」という値をとり、輻輳している場合は「Barred」という値をとる。このように、輻輳しているか否かを示す状態情報をシステム情報として報知することで、ユーザ装置は、規制が行われているか否か等を判断することができる。このような技術については、非特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TS36.304 V8.9.0(2010−09),5.2.4章,5.3章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セルの中には、ユーザトラフィックを通信しているアクティブ状態のユーザ装置に加えて、待ち受け状態のユーザ装置や、セルに新たに入って来るユーザ装置も存在する。これらの内、通常は、待ち受け状態のユーザ装置とセルに新たに入って来るユーザ装置が規制の対象となる。待ち受け状態のユーザ装置が、セルは規制されていることを示すシステム情報(報知信号)を受信すると、そのユーザ装置は当該セルへのアクセスが規制されていると判断し、必要な場合は他のセルへ移行しようとする。セルに新たに入って来ようとしているユーザ装置が、そのセルは規制されていることを示すシステム情報(報知信号)を受信した場合も、ユーザ装置は当該セルへのアクセスが規制されていると判断し、必要な場合は他のセルへ移行しようとする。他のセルへの移行は、セル再選択により行われてもよいし、リダイレクションにより行われてもよい。概して、セル再選択は、待ち受け状態を維持したままセルを変更する技術である。リダイレクションは、ネットワークよりサービングセルとのコネクションをいったん解放する制御信号を受信し、前記制御信号の指示に応じてセル選択を行いセルを変更を行う技術である。
【0005】
ところで、システム情報はセルに在圏する全てのユーザ装置により受信される。したがって、セルが規制されていることを示すシステム情報が報知された場合、それを受信した多数のユーザ装置(待ち受け状態のユーザ装置)は一斉に他のセルへ移行しようとする。例えば、電車が移動したことに伴って多数のユーザ装置がセルからセルへ移行しようとする。その結果、移行先のセルが急激に輻輳してしまうことが懸念される。特に、無線アクセス技術(RAT)が異なる他のセルへ移行する場合、輻輳が生じやすい。なぜなら、無線アクセス技術(RAT)が異なるセルへ移行する場合、ユーザ装置は、アタッチの処理や位置登録等を行う必要があるので、そのような処理が一度に多数発生すると、移行先の基地局が輻輳してしまうかもしれないからである。仮に、移行先のセルに収容可能な総ユーザ数の観点からは十分に余裕があったとしても、移行先の基地局において、一斉に発生したアタッチや位置登録等を速やかに処理する十分な能力が備わっていなかった場合、移行先のセルは輻輳状態に陥ってしまうおそれがある。移行先のセルにおいて、そのような輻輳を回避するため、基地局は、規制を行うことを示すシステム情報を報知することができるが、その場合、移行先のセルにユーザ装置が入ることは一切禁止される。すなわち、移行先のセルに収容可能な総ユーザ数の観点からは余裕があったとしても、アタッチや位置登録等の信号処理を速やかに実行できなかった場合、セルに規制がかかり、ユーザ装置は一切受け入れられなくなってしまう。このように従来のシステムの場合、輻輳を回避するための規制はユーザ装置の通信を過剰に禁止してしまうことが懸念される。
【0006】
本発明の課題は、セルに在圏している待ち受け状態のユーザ装置及びセルに新たに入って来るユーザ装置の通信を過不足なく規制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施例による基地局は、
通信を規制することを示す第1のシステム情報及び通信を規制しないことを示す第2のシステム情報を作成するシステム情報作成部と、
待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期毎に起動するタイミングから、該ユーザ装置を複数のグループのうちの何れかに分類し、ページング信号を通知するタイミングをグループ毎に決定するタイミング決定部と、
何れかのグループに属するユーザ装置にページング信号を送信した後に前記第1のシステム情報を送信し、前記第1のシステム情報を送信する回数と前記第2のシステム情報を送信する回数との割合が、セルの輻輳レベルに応じて決定された規制の割合に対応するように、前記第1のシステム情報の送信及び前記第2のシステム情報の送信を切り替え、前記何れかのグループに属するユーザ装置にページング信号を送信した後に前記第2のシステム情報を送信する送信部と
を有する基地局である。
【発明の効果】
【0008】
一実施例によれば、セルに在圏しているユーザ装置及びセルに新たに入って来るユーザ装置の通信を過不足なく規制できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例において想定されている状況の一例を示す図。
【図2】実施例において使用される基地局の機能ブロック図。
【図3】起動タイミングによりユーザ装置をグループ分けする方法を説明するための図。
【図4】システム情報が送信される様子を示す図。
【図5】グループ毎にUEを規制する動作例を示すフローチャート。
【図6】動作の詳細を説明するための図。
【図7】グループ全体の動作を示す図。
【図8】在圏UEだけでなく新規UEも規制する方法を説明するための図。
【図9】図8に示す方法を実現するためのフローチャート。
【図10】グループを変更する周期と時間率による周期とが等しい場合の動作例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例によれば、セルが輻輳してきた場合に、基地局は、ユーザ装置に通知するシステム情報を更新することで、待ち受け状態のユーザ装置が他のセルへ一斉に移行すること、或いは逆に当該セルへ一斉に入ってくることを避けることができる。ユーザ装置のセル間の移行が一度に一斉に行われるのではなく、所定の割合に従って段階的に行われるようになるからである。待ち受け状態の多数のユーザ装置は、間欠受信周期(DRX周期)毎に起動するページング受信タイミングにより、複数のグループに分けられ、システム情報を受信すべきことを示すページング信号が、1つ以上のグループを単位として順番に通知される。このため、ある単位報知期間において特定の1つ以上のグループに属するユーザ装置のみがシステム情報を受信し、後続の単位報知期間において別の特定の1つ以上のグループに属するユーザ装置のみがシステム情報を受信することになる。特定の1つ以上のグループに属するユーザ装置が更新後のシステム情報に基づいた動作を開始した後に、別の特定の1つ以上のグループに属するユーザ装置が更新後のシステム情報に基づいた動作を開始する。このように、システム情報の更新通知は少なくとも2段階に分けて行われるので、全てのユーザ装置が一斉に更新後のシステム情報に基づく動作を行って基地局が輻輳してしまう問題を効果的に解決できる。
【0011】
セルへ新たに入って来るユーザ装置は、ページング信号を受信することなく報知信号を受信し、規制がかかっていることを示すシステム情報を取得する。概して、規制には、発信に対する規制、位置登録を要求する制御信号に対する規制、音声サービス(VoIP)に対する規制、CSFBに対する規制等の様々な種類の規制があるが、本実施例は任意のタイプの規制について使用されてもよい。なお、CSFB(Circuit Switched Fall Back)とは、LTEセルに在圏しているユーザに音声サービスを提供するためにLTEセルから3Gセルへ遷移させるサービス又は処理である。セルへ新たに入って来る新規のユーザ装置が、ページング信号を受信することなく報知信号を受信すると、それらは、規制を行うことを示すシステム情報を受信し、新規のユーザ装置は全て一律に規制の対象となってしまう。本実施例では、特定のグループのユーザ装置がページング信号に従って規制の対象となっている間に、規制を行うことを示す第1のシステム情報を送信する回数と規制しないことを示す第2のシステム情報を送信する回数との割合が、輻輳レベルから決定された規制の割合又は規制率に対応するように、第1及び第2のシステム情報の送信が時間的に切り替えられる。セルに新たに入って来る新規のユーザ装置は、第1のシステム情報(100%規制)又は第2のシステム情報(0%規制)の何れかを受信する。第1のシステム情報を受信したユーザ装置は規制の対象となるが、第2のシステム情報を受信したユーザ装置は規制の対象とはならない。何れを受信するかは、第1及び第2のシステム情報を送信する回数の割合に従う。この割合は、規制の割合に対応するように設定されている。このように第1及び第2のシステム情報を送信する回数の割合を規制の割合に合わせることで、ページング信号を受信せずにシステム情報を取得する新規のユーザ装置に対しても部分的に規制をかけることができる。
【0012】
以下、添付図面を参照しながら実施例を説明する。図中、同様な要素には同じ参照番号又は参照符号が付されている。次の観点から実施例を説明する。
【0013】
1.システム
2.基地局
3.グループ毎にUEを規制する動作例
4.在圏UEだけでなく新規UEも規制する動作例
【実施例1】
【0014】
<1.システム>
図1は実施例において想定されている状況の一例を示す。LTE方式の移動通信システムにおける2つのセル(LTEセル)が示され、セルの各々に対応する基地局eNBが示されている。左側のLTEセルと少なくとも一部が地理的に重複する別のセルも示されている。別のセルは、例えば第3世代の移動通信システムにおけるセル(3Gセル)であり、セルに対応する基地局NodeB(BTS又はBS)も示されている。
【0015】
一例として、左側のLTEセルの基地局eNBは、通信が規制されることを示すシステム情報を報知し、セルに在圏する待ち受け状態のユーザ装置等が他のセル(3Gセル又はLTEセル)へ移行することを促す。別の例として、3Gセル又は右側のLTEセルから左側のLTEセルへユーザ装置が移行してもよい。セル間の如何なる方向の移行についても本実施例は適用可能である。
【0016】
セルの移行は、セル再選択により行われてもよいし、あるいはリダイレクションにより行われてもよい。通常、無線アクセス技術(RAT)が同じセル同士の間の移行はセル再選択により行われ、異なるRATのセル間の移行はリダイレクションにより行われるが、本実施例はこのような形態に限定されない。無線アクセス技術(RAT)が同じセル同士の間でリダイレクションが行われてもよい。
【0017】
ユーザ装置UEは、典型的には移動局であるが固定局でもよい。ただし、異なる無線アクセス技術(RAT)のセルの間でも移行可能であるためには、ユーザ装置UEはLTE方式及び3G方式の何れの方式でも動作可能であることを要する。なお、LTE方式や3G方式等の無線アクセス技術(RAT)は単なる一例に過ぎず、これら以外の無線アクセス技術(RAT)が使用されてもよい。ユーザ装置UEは、具体的には、携帯電話、情報端末、高機能携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ等であるがこれらに限定されない。図示の簡明化のため、3Gセル1つとLTEセル2つとが示されているが、セルの数は任意である。また、LTE方式と第3世代方式とが例示されているが、他の方式の移動通信システムが使用されてもよい。
【0018】
<2.基地局>
図2は、図1に示されるような状況において使用される基地局を示す。基地局は、LTEセルの基地局eNBでもよいし、3Gセルの基地局BSでもよいが、説明の便宜上、LTEセルにおける基地局であるとする。ただし、本発明はこの形態に限定されず、本発明は、セルに在圏している待ち受け状態のユーザ装置及び/又はセルに新たに入って来るユーザ装置からのアクセスを抑制しようとしている任意のシステムにおける基地局に適用可能である。図2には、基地局に備わる様々な機能部又は処理部のうち、実施例の説明に特に関連のあるものが示されている。基地局は、輻輳測定・検出部21、パラメータ選択部22、システム情報作成部23、ページング信号作成部24、送信タイミング決定部25及び信号送信部26を少なくとも有する。
【0019】
輻輳測定・検出部21は、セルの輻輳レベルを測定又は検出する。輻輳レベルは、適切な如何なる方法で測定又は検出されてもよい。一例として、輻輳レベルは、基地局のCPU使用率や検査信号のラウンドトリップ遅延時間(RTD)等によって測定又は検出されてもよい。例えば、基地局の中央処理装置の使用率(CPU使用率)が50%未満であった場合、セルは輻輳しておらず、CPU使用率が50%以上であった場合、セルは輻輳していると判断されてもよい。さらに、輻輳レベルは、輻輳しているか否かの2値により表現されてもよいし、2より多い種類の数又はレベルで表現されてもよい。例えば、CPU使用率のパーセンテージが輻輳レベルに対応していてもよい。輻輳測定・検出部21は、輻輳レベルの値をパラメータ選択部22に通知する。一例として、輻輳測定・検出部21は、輻輳していなかったセルの輻輳レベルが所定の閾値を超えた場合(セルが輻輳した場合)に、パラメータ選択部22にその旨及び輻輳レベルを通知する。あるいは逆に、輻輳測定・検出部21は、輻輳していたセルの輻輳レベルが所定の閾値未満になった場合に、パラメータ選択部22にその旨及び輻輳レベルを通知してもよい。
【0020】
パラメータ選択部22は、本実施例で使用される各種のパラメータの値を選択する。具体的には、パラメータ選択部22は、(a)規制をかけるか否かを示す状態情報、(b)時間率を示す情報、(c)周波数又はRATの優先度の情報、及び(d)ユーザ装置のグループ情報等を示すパラメータの値を、輻輳レベルに応じて選択する。
【0021】
(a)規制をかけるか否かを示す状態情報は、例えば、輻輳しているか否かを示す2値により表現されてもよい。LTE方式等の移動通信システムの場合、そのような状態情報として「cellBarred IE」という情報要素を使用することができる。この情報要素は、輻輳していない場合は「notBarred」という値をとり、輻輳している場合は「Barred」という値をとる。規制をかけるか否かを示す状態情報は、システム情報に含まれる。規制の有無を示すシステム情報を受信したユーザ装置は、システム情報の指示に従って動作することになる。システム情報は、規制の有無だけでなく、どの程度規制しているかを示す規制レベルの情報を含んでもよい。なお、「規制レベル」、「規制率」及び「規制の割合」は「輻輳レベル」と同義語として定義されてもよいし、異なる用語として定義されてもよい。本明細書ではそれらは同義語として使用される。例えば、規制レベルとして20%の値が示され、20%の規制がかかっていることをシステム情報が示していた場合、このシステム情報を受信したユーザ装置は、発信しようとした際に、20%の確率で送信信号の送信を控え、80%の確率で送信信号を送信する。この例では規制する確率をシステム情報で示しているが、送信可能な確率をシステム情報で示しても良い。このようにシステム情報が0%及び100%以外の規制の値を示す場合、ユーザ装置における処理が複雑化してしまうので、ユーザ装置に通知するシステム情報は、0%又は100%の規制を示すことが望ましい。しかしながらこの場合、全てのユーザ装置を一律に規制するか又は一切規制しないかの2つの状態しか実現できなくなり、通信を過不足なく規制することはできなくなってしまう。後述するように、本実施例では、0%又は100%の規制を示すシステム情報をユーザ装置に送信しつつ、0%及び100%以外の部分的な規制(例えば、20%の規制レベル)を実現することができる。
【0022】
(b)システム情報は、一般的には、セルの中でユーザ装置が適切に動作するのに必要な情報要素を含むが、本実施例では特に通信の規制に関するシステム情報に着目している。通信の規制に関するシステム情報は、通信を規制することを示す第1のシステム情報と、通信を規制しないことを示す第2のシステム情報とがある。前者は通信が100%規制されることを示し(100%規制)、後者は通信が規制されないことを示す(0%規制)。後述するように、第1のシステム情報の送信と第2のシステム情報の送信は時間的に切り替えながら行われる。この場合において、第1のシステム情報(100%規制)を送信した回数と第2のシステム情報(0%規制)を送信した回数との割合が、測定された輻輳レベル又は規制レベルに一致する又は少なくとも対応するように、第1及び第2のシステム情報を送信する回数が決定される。このように決定された第1及び第2のシステム情報を送信する回数の割合は、「時間率」と言及される。
【0023】
例えば、輻輳レベル又は規制レベルが20%であったとする。この場合、典型的には、時間率も20%に設定され、第1のシステム情報(100%規制)の送信回数と第2のシステム情報(0%)の送信回数の割合が20%になるように、それぞれの送信回数が決定される。時間率が20%の場合、第1のシステム情報(100%規制)を1回送信し第2のシステム情報(0%)を4回送信することを、反覆的に行うことが考えられる。あるいは、第1のシステム情報(100%規制)を2回送信し第2のシステム情報(0%)を8回送信することを、反復的に行うことも考えられる。一般に、第1のシステム情報(100%規制)の送信回数をp回とし、第2のシステム情報(0%)の送信回数を4×p回とすることが考えられる(p=1,2,...)。また、時間率が40%の場合、第1のシステム情報(100%規制)を2回送信し、第2のシステム情報(0%)を3回送信することを、反復的に行うことが考えられる。以下同様に、任意の時間率に応じて第1及び第2のシステム情報の送信回数を設定することができる。任意の輻輳レベルを、システム情報の送信回数の割合で表現できるようにする観点からは、システム情報を送信する回数の合計Sは、100/Yの整数倍であることが好ましい(Yは、輻輳レベルの分解能%である)。例えば、輻輳レベルが5%の精度で測定可能であった場合、第1のシステム情報を送信する回数と第2のシステム情報を送信する回数との合計Sは、20、40、60等であることが好ましい。
【0024】
なお、輻輳レベル又は規制レベルが、時間率に厳密に一致していることは必須ではない。例えば、23%の輻輳レベル又は規制レベルが、20%の時間率に対応していてもよい。より一般的には、ある数値範囲に属する輻輳レベル又は規制レベルが、特定の時間率に対応付けられている。
【0025】
(c)周波数又は無線システム(RAT)の優先度の情報は、ユーザ装置が使用すべき周波数又は無線システム(RAT)の優先度を示す。このような優先度の情報もシステム情報に含まれてよい。周波数又は無線システム(RAT)の優先度を適宜変更することで、ユーザ装置がセル選択すべき周波数又は無線システム(RAT)を指定することができる。ユーザ装置の在圏セルの周波数の優先度よりも、他の周波数の優先度が高く設定されていた場合、ユーザ装置は他の周波数のセルをセル選択することになる。
【0026】
(d)ユーザ装置のグループ情報は、待ち受け状態のユーザ装置が、複数のグループのうちの何れに属しているかを示す情報(グループID)や、グループの総数MGを示す情報等を含む。待ち受け状態の場合、ユーザ装置は、間欠受信周期(DRX)毎に起動し、制御信号を受信及び復調し、常時受信状態に移行すべきか否かを判定する。移行する必要があれば速やかに移行し、その必要がなければ待ち受け状態に留まり、次の起動のタイミングまで休止する。パラメータ選択部22は、待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期(DRX周期)毎に起動するタイミングから、そのユーザ装置を何れかのグループに分類する。
【0027】
図3は、様々なユーザ装置UE#1ないしUE#6が間欠受信周期(DRX周期)毎に起動している様子を示す。これらのユーザ装置は何れも同じ長さの間欠受信周期(DRX周期)で起動するが、起動するタイミングはユーザ装置毎に異なっている。待ち受け状態のユーザ装置が起動するタイミングは時間軸上に等確率で分散しているものと考えてよい。このように分散している起動のタイミングに基づいて、間欠受信状態(すなわち、待ち受け状態)のユーザ装置を複数のグループに分類することができる。図3に示す例の場合、第1のユーザ装置UE#1が起動するタイミングを基準時点として、DRX周期の前半の期間内に起動するユーザ装置UE#1、UE#2、UE#3が、第1のグループに分類される。DRX周期の後半の期間内に起動するユーザ装置UE#4、UE#5、UE#6は、第2のグループに分類される。このようにしてユーザ装置が2つのグループに分類又は分割される。分類又は分割するグループ数は、2より多い任意の数とすることができる。その場合、DRX周期を2より多い数に分割する必要がある。図2のパラメータ選択部22は、このように待ち受け状態のユーザ装置をどのようにグループ分けするか(グループ分けの仕方)を示すグループ情報のパラメータを決定する。具体的には、グループの総数MGを示すパラメータや、待ち受け状態のユーザ装置が所属するグループを識別するパラメータ等の値が決定される。
【0028】
パラメータ選択部22は、(a)規制をかけるか否かを示す状態情報、(b)時間率を示す情報、(c)周波数又はRATの優先度の情報、(d)ユーザ装置のグループ情報等を示すパラメータの値を、輻輳レベルに応じて選択する。この場合、(a)状態情報及び(c)優先度の情報の双方のパラメータが選択されることは必須でない。何れか一方のシステム情報を更新することによって、輻輳を回避することができるからである。したがって、一般的には、パラメータ選択部22は、輻輳レベルが所定値以上であった場合、どのようにして輻輳を回避すべきかを決定し、(a)状態情報、(b)時間率及び(c)優先度の内の1つ以上の情報のパラメータを選択する。ただし、本実施例では少なくとも(a)規制をかけるか否かを示す状態情報が使用されるものとする。パラメータ選択部22により選択されたパラメータは、システム情報作成部23、ページング信号作成部24、送信タイミング決定部25に通知される。
【0029】
システム情報作成部23は、システム情報を作成又は編集する。輻輳していないセルの基地局がセルの輻輳を回避する場合、一般的には、(a)状態情報、(b)時間率及び(c)優先度の内の1つ以上の情報を変更する。例えば、規制していないことを示す状態情報(を含むシステム情報)が、規制していることを示す状態情報(を含むシステム情報)に変更される。あるいは、自セルの周波数又はRATよりも他のセルの周波数又はRATの優先度が高くなるようにシステム情報が変更される。ただし、本実施例では少なくとも(a)規制をかけるか否かを示す状態情報がシステム情報に含まれるものとする。システム情報作成部23は、このように変更されたシステム情報を準備する。説明の便宜上、セルは規制されていることを示す状態情報を含むシステム情報は「第1のシステム情報」と言及され、セルは規制されていないことを示す状態情報を含むシステム情報は「第2のシステム情報」と言及される。
【0030】
なお、輻輳していないセルが輻輳してきた場合だけでなく、逆に、輻輳していたセルが通常通りユーザ装置を収容できるようになった場合も、状態情報、時間率及び優先度等の情報を示すシステム情報が変更される。この場合、例えば、規制していることを示す状態情報が、規制していないことを示す状態情報に変更される。すなわち、第1のシステム情報が第2のシステム情報に変更される。あるいは、自セルの周波数又はRATの優先度が、他のセルの周波数又はRATよりも高くなるようにシステム情報が変更される。
【0031】
ページング信号作成部24は、間欠受信状態のユーザ装置に通知するページング信号を作成又は編集する。ページング信号は、着信があったことや、システム情報を受信すべきこと等をユーザ装置に通知するための信号である。特に、本実施例ではシステム情報を受信すべきことをユーザ装置に通知するために、ページング信号が使用される。システム情報は、一連の単位報知期間各々における所定のタイミングで基地局から送信される。
【0032】
図4は、システム情報が送信されるタイミングを模式的に示す。システム情報は、一連の単位報知期間各々における所定のタイミングで送信される。単位報知期間の長さは、ユーザ装置の間欠受信周期の整数倍(例えば、4倍)となるようにシステムで一意に決定されており、例えば2560ミリ秒であるが、この数値例に限定されない。単位報知期間は、LTE方式における「modification period」のような期間に対応してもよいが、本実施例はそのような形態に限定されない。システム情報が送信される所定のタイミングや周期は、オペレータにより適切に決定され、システム情報の一部としてユーザ装置に通知される。単位報知期間内のシステム情報は、必要に応じて変更される。上述したように規制の状態情報や周波数等の優先度の情報を示すシステム情報は、セルの輻輳レベルに応じて変更されてもよい。このように変更されたシステム情報の受信を促すために、ページング信号が使用される。ある単位報知期間Tiにおいて、待ち受け状態のユーザ装置が、間欠的に起動したタイミングでページング信号を受信した場合、そのユーザ装置は、次の単位報知期間Ti+1に至るまで間欠受信状態に留まり、次の単位報知期間Ti+1から起動してシステム情報を受信する。ある単位報知期間Tiにおいて、間欠受信状態のユーザ装置が、そのようなページング信号を受信しなかった場合、そのユーザ装置は、間欠受信状態に留まり続け、次の単位報知期間Ti+1においてシステム情報を受信しなくてもよい。
【0033】
図2の送信タイミング決定部25は、基地局eNBから送信される信号の送信タイミングを決定する。基地局eNBから送信される信号は、一般的には、制御信号及びユーザトラフィック信号(音声信号(VoIP)、データを含む)を含む。これらの内、本実施例では特にページング信号及びシステム情報(報知信号)を送信するタイミングに着目する。
【0034】
送信タイミング決定部25は、複数のグループのうちの何れかのグループに属するユーザ装置のみがページング信号を受信できるように、ページング信号の通知タイミング(ページングタイミング)を決定する。上述したように、パラメータ選択部22は、待ち受け状態のユーザ装置が起動するタイミングに基づいて、待ち受け状態のユーザ装置をグループ分けしている。したがって、間欠受信周期をグループ毎に分割することで、複数のグループの内の何れかに限定してページング信号を送信することができる。
【0035】
図3に示す例の場合、第1及び第2のグループが存在し、それぞれDRX周期の前半及び後半で起動する。したがって、DRX周期の前半の期間が、第1のグループに属するユーザ装置に対するタイミング(ページング信号の通知タイミング)として決定される。また、DRX周期の後半の期間が、第2のグループに属するユーザ装置に対するタイミング(ページング信号の通知タイミング)として決定される。その結果、例えば第1の単位報知期間において、基地局がDRX周期の前半だけでページング信号を送信した場合、第1のグループに属するユーザ装置のみがページング信号を受信し、それらが次の第2の単位報知期間から起動してシステム情報を受信する。システム情報には変更後のシステム情報(例えば、規制していることを示す情報)が含まれているので、第1のグループのユーザ装置は変更後のシステム情報に従った動作を試みる。しかしながら、第2のグループに属するユーザ装置は、第1の単位報知期間においてページング信号を受信していないので、第2の単位報知期間においてシステム情報を受信せず、変更後のシステム情報に従った動作をしようとしない(変更前のシステム情報に従った動作を継続することになる)。第2又はそれ以降の単位報知期間において、基地局は、DRX周期の後半だけでページング信号を送信することで、第2のグループに属するユーザ装置のみがページング信号を受信できるようにする。これにより、第2のグループに属するユーザ装置は、第3又はそれ以降の単位報知期間から起動してシステム情報を受信し、変更後のシステム情報に従った動作を試みることになる。
【0036】
送信タイミング決定部25は、ページング信号の送信タイミングだけでなく、システム情報の送信タイミングも決定する。パラメータ選択部22は輻輳レベルに応じて時間率を決定している。時間率は、規制することを示す第1のシステム情報を送信する回数と規制しないことを示す第2のシステム情報を送信する回数との割合である。送信タイミング決定部25は、どのようなタイミングで第1のシステム情報を送信し、どのようなタイミングで第2のシステム情報を送信するかを、時間率に基づいて具体的に決定する。送信タイミングの具体例については動作例において説明する。
【0037】
信号送信部26は、一般的な制御信号やデータ信号を送信することに加えて、特に、変更後のシステム情報を受信すべきことを示すページング信号、及び変更後のシステム情報をユーザ装置に送信する。
【0038】
<3.グループ毎にUEを規制する動作例>
図5は、図2に示すような基地局が行う動作例のフローチャートを示す。フローはステップS501から始まり、ステップS503に進む。
【0039】
ステップS503において、基地局は、輻輳測定・検出部21により、セルの輻輳レベルを測定する。
【0040】
ステップS505において、基地局は、輻輳レベルが所定値以上であるか否かを判定する。輻輳レベルが所定値以上であった場合、基地局の輻輳測定・検出部21は、輻輳を回避するためのシステム情報を作成すべきことを、輻輳レベルとともにパラメータ選択部22に通知する。輻輳レベルが所定値未満であった場合、基地局の輻輳測定・検出部21は、ユーザ装置を収容するためのシステム情報を作成すべきことを、輻輳レベルとともにパラメータ選択部22に通知する。
【0041】
ステップS507において、基地局は、パラメータ選択部22により、各種のパラメータの値を輻輳レベルに応じた値に設定する。輻輳していた場合、パラメータ選択部22は、どのようにして輻輳を回避するかを決定する。具体的には、(a)規制をかけるか否かを示す状態情報、(b)時間率を示す情報、(c)周波数又はRATの優先度の情報、(d)ユーザ装置のグループ情報等を示すパラメータの値が、輻輳レベルに応じて選択される。輻輳していなかった場合、これらのパラメータの値は原則として変更されないが、輻輳していた状態から通常の状態に戻ったばかりの場合、これらのパラメータの値が、通常通りユーザ装置を収容するための値に変更される。
【0042】
ステップS509において、基地局は、システム情報作成部23により、システム情報を作成する。セルの輻輳を回避する必要がある場合のシステム情報は、一般的には、(a)状態情報、(b)時間率、(c)優先度及び(d)グループ情報等であるが、本実施例では少なくともシステム情報はセルが規制されていることに関する情報(a)及び(b)を含むものとする。輻輳状態から通常状態に戻る場合のシステム情報も、一般的には、(a)状態情報、(b)時間率、(c)優先度及び(d)グループ情報等であるが、本実施例では少なくともシステム情報はセルが規制されていないことに関する情報(a)及び(b)を含むものとする。
【0043】
ステップS511において、基地局は、ページング信号作成部24により、ページング信号を作成する。この場合におけるページング信号は、それを受信した待ち受け状態のユーザ装置が、次の単位報知期間から起動してシステム情報を受信すべきことを示す。
【0044】
ステップS513において、基地局は、送信タイミング決定部25により、ページング信号をユーザ装置に通知する通知タイミング(ページングタイミング)を決定する。この通知タイミングは、グループ分けされたユーザ装置が起動するタイミングに合わせて決定される。
【0045】
なお、説明及び図示の便宜上、ステップS509、S511、S513がこの順序で行われるように示されているが、このことは必須でなく、別の順序で行われてもよいし、複数のステップの処理の全部又は一部が同時に行われてもよい。
【0046】
ステップS515において、グループの番号を指定するパラメータMが1に設定される。本実施例では2以上のグループが存在するので、グループ総数はMG>1である。一例として、MG=5とするが、グループ総数MGは任意である。
【0047】
ステップS517において、基地局は、M番目のグループに属するユーザ装置が起動するタイミングに合わせてページング信号を送信する。このページング信号は、待ち受け状態のユーザ装置の内、M番目のグループに属するユーザ装置のみにより受信され、他のグループに属するユーザ装置によっては受信されない。
【0048】
ステップS519において、基地局は、一連の単位報知期間のうちの所定のタイミングにおいて、変更後のシステム情報を含む報知信号を送信する。
【0049】
ステップS521において、グループを指定するパラメータMがインクリメントされる。ただし、Mがグループの総数MGを超える場合は、MGを超えない値に変更される。その後、フローはステップS517に戻り、説明済みの処理が反覆される。
【0050】
図6は、図5におけるステップS517及びS519に関する動作を詳細に説明するための図である。説明の便宜上、ユーザ装置UE-A及びUE-Bが第1のグループに属し、ユーザ装置UE-C及びUE-Dが第2のグループに属し、ユーザ装置UE-E及びUE-Fが第3のグループに属しているものとする。グループの総数MGが5の場合、実際には、第4及び第5のグループも存在するが、図示の簡明化のため図6には示されていない。システム情報は、一連の単位報知期間の各々における所定のタイミングで送信される。単位報知期間は、間欠受信周期(DRX周期)の2つ分に等しく設定されており、DRX周期をグループ総数に応じた数に分割することで、ページング信号のタイミングがグループ毎に規定される。ただし、このような数値は一例に過ぎず、適切な如何なる数値が使用されてもよい。後述の具体例に合わせて、3つの単位報知期間T5N-1、T0、T1が示されている。Nはグループを変更する周期が、単位報知期間N個分であることを示す。目下の例の場合、グループは5つあり(MG=5)、第1のグループG1から第5のグループG5までの処理が完了すると、再び第1のグループG1に対する処理が行われる。このため、第1ないし第5のグループに対する処理は、5N個の単位報知期間T0-T5N-1の間に行われ、その処理が反覆される。
【0051】
説明の便宜上、先ず、単位報知期間T5N-1において、基地局は、第1のグループG1に対してページング信号を送信するものとする。このページング信号は、第2ないし第5のグループのユーザ装置には受信されない。第1のグループG1に属するユーザ装置UE-A及びUE-Bは、単位報知期間T5N-1においてページング信号を受信し、次の単位報知期間T0に至るまで間欠受信状態に留まり、単位報知期間T0の開始とともに起動し、システム情報を受信する。システム情報には、例えば、当該セルにおける規制情報や、周波数やRATの優先度を示す情報等が含まれているので、単位報知期間T0において、ユーザ装置UE-A及びUE-Bは、システム情報に基づいた動作を試みる。目下の動作例では、規制は行われないことを示す第2のシステム情報が、単位報知期間T0において送信される。第2のシステム情報は、第1のグループG1のユーザ装置により受信され、これらのユーザ装置に対する規制は解除される。
【0052】
単位報知期間T0において、基地局は、第2のシステム情報を送信することに加えて、第2のグループG2に属するユーザ装置UE-C及びUE-Dにページング信号を送信する。このページング信号は、第1、第3ないし第5のグループのユーザ装置には受信されない。第2のグループG2に属するユーザ装置UE-C及びUE-Dは、単位報知期間T0においてページング信号を受信し、次の単位報知期間T1に至るまで間欠受信状態に留まり、単位報知期間T1の開始とともに起動し、システム情報を受信する。システム情報には、例えば、当該セルにおける規制情報や、周波数やRATの優先度を示す情報等が含まれているので、単位報知期間T1において、ユーザ装置UE-C及びUE-Dは、システム情報に基づいた動作を試みる。目下の動作例では、規制が行われることを示す第1のシステム情報が、単位報知期間T1において送信される。第1のシステム情報は、第2のグループG2のユーザ装置により受信され、これらのユーザ装置の通信は規制される。
【0053】
図7は、図5及び図6に示すような動作例において、5つのグループG1-G5のユーザ装置が、N個の単位報知期間毎に順番に規制の対象となっている様子を示す。何れか1つのグループが規制の対象となっている間、他のグループは規制の対象となっていない。これにより、セル全体では、1/5×100=20%の規制率が実現されていることになる。これらの数値は単なる一例に過ぎず、適切な如何なる数値が使用されてもよい。例えば、40%の規制率を実現する場合、5グループの内2つのグループのユーザ装置がページング信号を受信し、その後にシステム情報を受信するようにすればよい。より一般的には、輻輳レベルの何らかの数値範囲が、特定のグループ数に対応付けられていればよい。好ましくは、輻輳レベル又は規制率の分解能Y%に応じてグループの総数MG(MG=100/Y)が決定されている。例えば、輻輳レベルが5%の精度で測定可能であった場合、グループの総数は20個以上であることが好ましい。
【0054】
このように本実施例では、システム情報を受信するタイミングを1つ以上のグループを単位として変更し、多数のユーザ装置に対するシステム情報の通知は、2段階以上に分けて行われる。これにより、待ち受け状態で動作している全てのユーザ装置全体が一斉にシステム情報に基づいた動作を試みた結果、移行先のセルが輻輳してしまうという問題を効果的に解決できる。例えば、5グループ全てが規制された場合、5グループ全てが一斉にセルを変更しようとし、移行先のセルで輻輳が生じるおそれがある。これに対して、本実施例において、基地局により測定された輻輳レベルが20%であり、セル内の20%のユーザ装置が他のセルに移行されれば、基地局は輻輳せずに済むことが判明したとする。この場合、5つのグループの内の1つに属するユーザ装置に対してのみ規制をかけることで、基地局は、20%のユーザ装置を他のセルに移すことを実現できる。これにより、基地局は過剰に規制することを回避できるだけでなく、移行先のセルにおいても20%程度のユーザ装置ならば輻輳することなく受け入れ可能であることが期待できる。このように本動作例によれば、セルに在圏する待ち受けユーザを、過不足なく規制することができる。
【0055】
<4.在圏UEだけでなく新規UEも規制する動作例>
図5、6、7に関する動作例の場合、セルに在圏している待ち受け状態のユーザ装置は複数のグループに分割され、一度に規制するグループ数が輻輳レベルに応じて決定され、そのグループ数のユーザ装置にのみページング信号が送信される。そして、ページング信号を受信したグループのユーザ装置のみが変更後のシステム情報を受信する。これにより、待ち受け状態のユーザ装置全てが一斉に、変更後のシステム情報に従って動作することを防止し、例えば、適切な割合のユーザ装置に対してのみ規制をかける又は規制を解除することができる。
【0056】
ところで、セルに既に在圏している待ち受け状態のユーザ装置だけでなく、セル再選択やリダイレクションによりセルに入って来たユーザ装置又は電源投入直後のユーザ装置も、規制を受ける対象となる。説明の便宜上、セル再選択やリダイレクションによりセルに入って来たユーザ装置と電源投入直後のユーザ装置とを含めて、「新規ユーザ装置」と言及することにする。待ち受け状態のユーザ装置及び新規ユーザ装置の内、待ち受け状態のユーザ装置については、上記の動作例により、ユーザ装置の一部を規制の対象にする又は規制解除することができる。しかしながら、新規ユーザ装置は、ページング信号を受信することなく、報知信号を受信し、システム情報を取得するので、新規ユーザ装置は全て規制の対象になる又は規制されずに通信を開始することになる。この場合、待ち受け状態のユーザ装置をグループ分けしなかった際に懸念された問題と同様に、多数の新規ユーザ装置が一斉に規制される又は一斉に通信を開始することに伴う問題が懸念される。
【0057】
図7を参照しながらその問題点を説明する。概して、T0-TN-1のN個の単位報知期間と同様な動作が5回反復されることで、待ち受け状態のユーザ゛装置の内の20%のユーザ装置に対して規制が行われている。単位報知期間T0において、第1のグループG1の規制を解除するために、規制は行われないことを示す第2のシステム情報(0%規制)が送信される。次の単位報知期間T1において、第2のグループG2を規制するために、規制を行うことを示す第1のシステム情報(100%規制)が送信される。以後、単位報知期間TN-1に至るまで、規制を行うことを示す第1のシステム情報(100%規制)が送信される。この場合、N-1個の単位報知期間T1-TN-1において、規制を行うことを示す第1のシステム情報(100%規制)が送信されることになる。従って、新規ユーザ装置は、1/Nの確率で第2のシステム情報(0%規制)を受信し、(N-1)/Nの確率で第1のシステム情報(100%規制)を受信することになるので、新規ユーザ装置はほとんどの場合第1のシステム情報(100%規制)を受信する。すなわち、ほとんどの新規ユーザ装置は規制の対象となり、新規ユーザ装置が多かった場合、多数の新規ユーザ装置が例えば他のセルに移行しようとし、他のセルが輻輳してしまうことが懸念される。
【0058】
ところで、規制を開始するための単位報知期間T0 におけるページング信号(開始ページング信号)から、規制を終了するための単位報知期間TN-1におけるページング信号(終了ページング信号)までの間において、第1のシステム情報(100%規制)が送信されることは必須でない。更に、開始ページング信号と終了ページング信号との間でページング信号は一切送信されないので、どのグループのユーザ装置も(待ち受け状態のどのユーザ装置も)システム情報を受信しない。従って、開始ページング信号と終了ページング信号との間において、どのようなシステム情報が送信されたとしても、待ち受け状態のユーザ装置の動作に影響は生じない。このような観点から、本動作例では、開始ページング信号と終了ページング信号との間において、第1のシステム情報(100%規制)の送信と第2のシステム情報(0%規制)の送信とが、輻輳レベルが示す割合に従って切り替えられるようにする。
【0059】
図8は、本動作例を説明するための図を示し、図7のN個の単位報知期間T0-TN-1におけるシステム情報の送信方法を示す。上記の例と同様に、輻輳レベルは20%であるとする。更に、説明の便宜上、N=20としている。図示されているように、T0-T19の20個の単位報知期間の内、T1以降の19個の単位報知期間T1-T19において、第1のシステム情報(100%規制)を送信する代わりに、第1のシステム情報が1/5の確率(20%)で送信されている。すなわち、4つの単位報知期間T1, T6, T11, T16において第1のシステム情報(100%規制)が送信され、他の単位報知期間において第2のシステム情報(0%規制)が送信される。従って、N=20個の単位報知期間において、新規ユーザ装置は、1/5の確率(20%)で第1のシステム情報(100%規制)を受信し、4/5の確率(80%)で第2のシステム情報(0%規制)を受信することになるので、新規ユーザ装置に対して20%の規制を実現することができる。T20以降の単位報知期間についても同様な動作を反覆することで、新規ユーザ装置に対して20%の規制を実現することができる。このように、第1のシステム情報(100%規制)の送信と第2のシステム情報(0%規制)の送信とを、輻輳レベルの割合に合わせて切り替えることで、在圏している待ち受けユーザ装置だけでなく、新規ユーザ装置についても部分的な規制をかけることができる。図8に示す例において、第1のシステム情報(100%規制)を1回送信し第2のシステム情報(0%規制)を4回送信することを反覆しているが、このことは本動作例に必須ではない。第1のシステム情報(100%規制)を2回送信し第2のシステム情報(0%規制)を10回送信することを反覆してもよい。
【0060】
図9は、図8に示すようなシステム情報の送信方法を行うためのフローチャートを示す。概して、ステップS501からS515までは図5に示すフローチャートと同様であるので、重複的な説明は省略される。
【0061】
ステップS901において、時間パラメータnが0に初期設定される。時間パラメータnは、個々の単位報知期間に対応し、n=0はT0に対応する。
【0062】
ステップS903において(単位報知期間T0において)、基地局は、規制は行われないことを示す第2のシステム情報を送信し、かつM番目のグループに属するユーザ装置が起動するタイミングに合わせてページング信号(開始ページング信号)を送信する。このページング信号は、待ち受け状態のユーザ装置の内、M番目のグループに属するユーザ装置のみにより受信され、他のグループに属するユーザ装置によっては受信されない。
【0063】
ステップS905において、時間率に関するパラメータKが1に初期設定される。上述したように、時間率は、典型的には輻輳レベル又は規制レベルに対応し、一例として時間率=輻輳レベル=20%である。また、時間パラメータnがインクリメントされる。
【0064】
ステップS907において(単位報知期間T1において)、基地局は、規制を行うことを示す第1のシステム情報を送信する。
【0065】
ステップS909において、時間パラメータnがインクリメントされる。
【0066】
ステップS911において、基地局は、規制は行われないことを示す第2のシステム情報を送信する。
【0067】
ステップS913において、時間率に関するパラメータKがインクリメントされる。
【0068】
ステップS915において、1/Kが、ステップS507で決定した時間率以下であるか否かが判定される。時間率が20%=0.2である場合、1/Kが0.2以下であるか否かが判定される。1/Kが、ステップS507で決定した時間率以下でなかった場合、フローはステップS909に戻り、説明済みの処理が行われる。ステップS909、S911、S913、S915が反覆されることは、図8において第2のシステム情報(0%規制)が反復的に送信されることに対応する。
【0069】
ステップS915において、1/Kが、ステップS507で決定した時間率以下であった場合、フローはステップS917に進む。
【0070】
ステップS917において、時間パラメータnが、N-1以上であるか否かが判定される。図8に示す例の場合、グループを変更する周期に対応するNは、20(N=20)である。時間パラメータnが、N-1以上でなかった場合(nがN-1未満であった場合)、フローはS905に戻り、説明済みの処理が行われる。時間パラメータnが、N-1以上になった場合、フローはステップS919に進む。
【0071】
ステップS919において(単位報知期間TN-1において)、基地局は、M番目のグループに属するユーザ装置が起動するタイミングに合わせてページング信号(終了ページング信号)を送信する。このページング信号は、待ち受け状態のユーザ装置の内、M番目のグループに属するユーザ装置のみにより受信され、他のグループに属するユーザ装置によっては受信されない。
【0072】
ステップS921において、グループを指定するパラメータMがインクリメントされる。ただし、Mがグループの総数MGを超える場合は、MGを超えない値に変更される。その後、フローはステップS901に戻り、説明済みの処理が反覆される。
【0073】
説明の便宜上、図8に示す例では、規制対象のグループを変更する周期が単位報知期間20個分であり、時間率を実現するために第1のシステム情報(100%規制)を送信する周期が単位報知期間5つ分であったが、これらの数値例は任意である。例えば、図10に示すように、第1のシステム情報(100%)を送信する周期が、規制対象のグループを変更する周期に一致していてもよい(N=5)。
【0074】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、ユーザ装置の一部を規制しようとする適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。例えば本発明は、W−CDMA方式のシステム、HSDPA/HSUPA方式のW−CDMAシステム、LTE方式のシステム、LTE−Advanced方式のシステム、IMT−Advanced方式のシステム、WiMAX、Wi−Fi方式のシステム等に適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数式を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数式は単なる一例に過ぎず適切な如何なる数式が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の実施例又は項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。機能ブロック図における機能部又は処理部の境界は必ずしも物理的な部品の境界に対応するとは限らない。複数の機能部の動作が物理的には1つの部品で行われてもよいし、あるいは1つの機能部の動作が物理的には複数の部品により行われてもよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に用意されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0075】
21 輻輳測定・検出部
22 パラメータ選択部
23 システム情報作成部
24 ページング信号作成部
25 送信タイミング決定部
26 信号送信部
eNB LTE基地局
NodeB 3G基地局
UE ユーザ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信を規制することを示す第1のシステム情報及び通信を規制しないことを示す第2のシステム情報を作成するシステム情報作成部と、
待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期毎に起動するタイミングから、該ユーザ装置を複数のグループのうちの何れかに分類し、ページング信号を通知するタイミングをグループ毎に決定するタイミング決定部と、
何れかのグループに属するユーザ装置にページング信号を送信した後に前記第1のシステム情報を送信し、前記第1のシステム情報を送信する回数と前記第2のシステム情報を送信する回数との割合が、セルの輻輳レベルに応じて決定された規制の割合に対応するように、前記第1のシステム情報の送信及び前記第2のシステム情報の送信を切り替え、前記何れかのグループに属するユーザ装置にページング信号を送信した後に前記第2のシステム情報を送信する送信部と
を有する基地局。
【請求項2】
前記第1のシステム情報を送信する回数と前記第2のシステム情報を送信する回数との割合が、セルの輻輳レベルに応じて決定された前記規制の割合に等しい、請求項1記載の基地局。
【請求項3】
前記何れかのグループの数と前記複数のグループの総数との割合が、前記規制の割合に対応するように、前記何れかのグループの数が決定されている、請求項1又は2に記載の基地局。
【請求項4】
前記何れかのグループは、所定の期間毎に変更される、請求項1ないし3の何れか1項に記載の基地局。
【請求項5】
待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期毎に起動するタイミングから、該ユーザ装置を複数のグループのうちの何れかに分類し、ページング信号を通知するタイミングをグループ毎に決定し、
何れかのグループに属するユーザ装置にページング信号を送信した後に前記第1のシステム情報を送信し、
通信を規制することを示す第1のシステム情報を送信する回数と通信を規制しないことを示す第2のシステム情報を送信する回数との割合が、セルの輻輳レベルに応じて決定された規制の割合に対応するように、前記第1のシステム情報の送信及び前記第2のシステム情報の送信を切り替え、
前記何れかのグループに属するユーザ装置にページング信号を送信した後に前記第2のシステム情報を送信するステップ
を有する、基地局におけるシステム情報通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−42233(P2013−42233A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176241(P2011−176241)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】