説明

基地局及びセルラ無線通信システム

【課題】端末からフェムトセル基地局への上り通信において、フェムトセル基地局内の端末に対して高スループット通信を実現し、かつ、マクロセル基地局の端末に対する与干渉を抑える。
【解決手段】フェムトセル基地局は、セル内端末の分布を収集し、セル内端末の中から、セルセンタおよびセルエッジを代表する端末を選択する。さらに、フェムトセル基地局は、セルセンタ、セルエッジの端末それぞれについて、マクロセル基地局が許容可能な最大送信電力を計算する。フェムトセル基地局は、前記最大送信電力を超えない範囲で、セルセンタおよびセルエッジの送信電力をそれぞれ決定し、決定した電力値に端末が制御できるように、送信電力制御のパラメータを調節して、端末に対して通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局及びセルラ無線通信システムに係り、特に、セルラ無線通信システムにおいて与干渉を考慮した上り送信電力制御設定を実施する基地局及びセルラ無線通信システムに関する。特に、直交周波数分割多重(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式を採用するセルラ無線通信システムにおいて、基地局が端末に対して行う電力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、一般的なセルラ無線システムの構成例について説明する。セルラ無線システムは、基地局(eNBと記す事がある)によってセルと呼ばれる通信エリアを構築する。そのエリアの広さや、機能によりマクロセル基地局(MeNB)、ピコセル基地局、フェムトセル基地局(HeNB)などといった呼称を持つ。セルラ無線の基地局のうち、最もカバーエリアを大きく取るものは、マクロセル基地局とも呼ばれ、数百〜数千メートル程度の範囲内の端末(UE:User Equipmentと記す事が有る)を収容する。
【0003】
無線通信システムの端末と基地局を接続する通信リンクにおいて、Downlink(下り)では隣接基地局からの干渉電力が、Uplink(上り)では、隣接基地局配下の端末からの干渉電力が通信リンクの品質に影響を及ぼす事が知られている。基地局のカバーエリアの境界であるセルエッジにおいては、隣接セルからの干渉電力と自セルからの所望信号が拮抗した値になり、チャネル品質を現す指標であるSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)が劣化し、通信速度の低下という形で顕著に現れる。よって、無線アクセスにおけるチャネル容量を、システム全体として向上させるためには、隣接セル間の干渉を低減する事は重要な役割を占める。
【0004】
一方、無線アクセスのUplink動作においては、端末の送信電力制御も干渉制御と密接な関係がある。図13を用いて説明する。端末13−Aは、サービングセル基地局11−A(端末13−Aが所属する基地局)との間で発生するパスロス(Pathloss)を克服し、所望信号(図中実線矢印)が一定の通信品質となるように高電力での送信が必要となる。しかしながら、端末13−Aが高電力で送信した電力は、隣接基地局11−Bに干渉電力(図中破線矢印)として到来し、隣接基地局11−Bに接続している端末13−Bに対して大きな干渉電力となる。逆も同様であり、端末13−Bが送信した電力は、基地局11−Aに干渉電力として到来し、基地局11−Aに接続している端末13−Aに対して干渉電力として作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−516184号公報
【特許文献2】特表2010−512680号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TS36.213、“Physical layer; procedures”、v9.1.0、Mar.2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
標準化団体である3GPPにおいては、LTE(Long Term Evolution)と呼ばれるOFDMA方式の無線通信システムの規格が標準化されている。例えば、LTEの上り共有チャネル(PUSCH:Physical Uplink Shared CHannel)の送信電力制御は、以下の数式で表されると、非特許文献1に規定されている。
【0008】
【数1】

基地局11は自セルに所属している全ての端末13に対して、PL(PathLoss)を除く、制御パラメータを端末13に対して通知する。端末13は、通知されたパラメータと、測定したPLを使用して送信電力を決定する。なお、各パラメータについては後述する(詳細は非特許文献1参照)。
【0009】
図14に、本制御式の概念図を示す。縦軸は送信電力である。横軸は、基地局11と端末13の間のPLである。PLが大きくなると通信品質が劣化してしまうため、PLを補償するために、端末13は送信電力を増大させる。式中のαは、PLを補償する予め定められた係数である。α=1.0のとき、PLを完全に補償する制御式となり、理想的には、基地局における受信電力が一定となる制御となる。αを1.0より下げていくと、PL補償が不完全となり、基地局において、端末間で等しい受信電力を保てなくなる。α=0.0にすると、パスロスを補償しないため、基準電力P0_PUSCHに大きく依存した送信電力制御が行われる。なお、本式は、フラクショナル電力制御式と呼ばれることがある。
【0010】
マクロセル基地局のように、面展開するため、広いカバーエリアを実現する事が重要な基地局は、セルエッジにおける通信品質を確保する送信電力を決定した上で、αを調節することで、セルセンタにおける端末の送信電力を決定する。
【0011】
例えば、特許文献1では、セルエッジ端末のUplink目標受信品質を、自セル内で通信可能であるように設定し、その後、セルセンタ端末のUplink目標受信品質を、上昇させていく方法が議論されている。この方法は与干渉を考慮した電力制御方法であるが、端末自身がTarget SINRを修正して送信電力を制御している。全端末がこの方法を適用しない場合には、隣接セルへの隣接セルへの与干渉量を考慮できない事が有る。基地局が報知情報として、配下の端末に一定のルールを提供する形が望ましい。
【0012】
また、マクロセル基地局設置後に、ホットスポット構築を目的として設置されるフェムトセル基地局は、マクロセル基地局への与干渉の最小化および、フェムトセル基地局内の高スループット通信を両立する必要が有る。
端末からフェムトセル基地局への上り通信において、フェムトセル内のパスロスを補償するような、端末の送信電力制御を実施すると、フェムトセル基地局内の端末に対して高スループット通信を実現できるが、マクロセル基地局の端末に対する与干渉が増加する。
【0013】
以上の点に鑑み、本発明は、無線通信システムにおいて、周辺セルへの与干渉の低減と、自セルの上りの高品質通信を両立した端末の電力制御を行う基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
フェムトセル基地局のセル内端末の分布に応じて、上り送信電力制御のパラメータを制御する。
フェムトセル基地局は、セル内端末の分布を収集し、セル内端末の中から、セルセンタおよびセルエッジを代表する端末を選択する。さらに、フェムトセル基地局は、セルセンタ、セルエッジの端末それぞれについて、マクロセル基地局が許容可能な最大送信電力を計算する。フェムトセル基地局は、前記最大送信電力を超えない範囲で、セルセンタおよびセルエッジの送信電力をそれぞれ決定し、決定した電力値に端末が制御できるように、送信電力制御のパラメータを調節して、端末に対して通知する。
【0015】
本発明の第1の解決手段によると、
複数の基地局と、通信する前記基地局とのパスロスと所定の送信電力制御パラメータとに基づく送信電力制御を行う複数の端末とを備えるセルラ無線通信システムにおける前記基地局であって、
前記複数の端末が測定した、自基地局からの下り参照信号の受信品質情報と、自基地局に隣接する隣接基地局からの下り参照信号の受信品質情報とを、各端末から受信し、
該受信品質情報に基づき、前記複数の端末の中からセルセンタ端末とセルエッジ端末を選択し、
前記隣接基地局における予め定められた許容干渉電力量と、該隣接基地局と前記セルセンタ端末との第1のパスロスとに基づき、前記セルセンタ端末の第1の送信電力を求め、
前記隣接基地局における予め定められた許容干渉電力量と、該隣接基地局と前記セルエッジ端末との第2のパスロスとに基づき、前記セルエッジ端末の第2の送信電力を求め、
前記第1のパスロス及び前記セルセンタ端末の第1の送信電力と、前記第2のパスロス及び前記セルエッジ端末の第2の送信電力とを補間して、パスロスと送信電力の関係を表し、かつ、自基地局配下の前記端末における前記送信電力制御で用いられる送信電力制御パラメータを求め、
求められた送信電力制御パラメータを、自基地局配下の前記端末へ通知する前記基地局が提供される。
【0016】
本発明の第2の解決手段によると、
複数の端末と通信する第1基地局と、該第1基地局に隣接する第2基地局とを備え、前記端末が通信する前記基地局とのパスロスと所定の送信電力制御パラメータとに基づく送信電力制御を行うセルラ無線通信システムであって、
前記第1基地局は、
前記複数の端末が測定した、第1基地局からの下り参照信号の受信品質情報と、第2基地局からの下り参照信号の受信品質情報とを、各端末から受信し、
該受信品質情報に基づき、前記複数の端末の中からセルセンタ端末とセルエッジ端末を選択し、
前記第2基地局における予め定められた許容干渉電力量と、該第2基地局と前記セルセンタ端末との第1のパスロスとに基づき、前記セルセンタ端末の第1の送信電力を求め、
前記第2基地局における予め定められた許容干渉電力量と、該第2基地局と前記セルエッジ端末との第2のパスロスとに基づき、前記セルエッジ端末の第2の送信電力を求め、
前記第1のパスロス及び前記セルセンタ端末の第1の送信電力と、前記第2のパスロス及び前記セルエッジ端末の第2の送信電力とを補間して、パスロスと送信電力の関係を表し、かつ、自基地局配下の前記端末における前記送信電力制御で用いられる送信電力制御パラメータを求め、
求められた送信電力制御パラメータを、自基地局配下の前記端末へ通知する前記セルラ無線通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、周辺セルへの与干渉最小化と、自セルの上りの高品質通信を両立した、端末の電力制御を提供することができる。例えば、フェムトセル基地局への適用がより効果的である。
マクロセル基地局への影響最小化の観点から、フェムトセル基地局の設置容易性向上により、セルラ無線システムのホットスポット設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のセルラ無線通信システムの構成図。
【図2】本発明のシーケンス図。
【図3】フェムトセル基地局とマクロセル基地局の配置例を説明する図。
【図4】フェムトセル基地局が管理する対象セルと受信電力のテーブル。
【図5】許容最大電力の計算方法を説明する図。
【図6】許容最大電力を計算する詳細手順を説明する図。
【図7】セルセンタの送信電力計算手順を説明する図。
【図8】セルエッジの送信電力計算手順を説明する図。
【図9】セルセンタとセルエッジ以外の端末の電力計算方法を説明する図。
【図10】本発明のフェムトセル基地局の機能ブロック図を説明する図。
【図11】本発明のフェムトセル基地局のハードウェア構成を説明する図。
【図12】MCSの説明図。
【図13】上り通信の所望信号と干渉信号を説明する図。
【図14】電力制御の概念を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施する為の形態について、いくつかの実施例を挙げて説明する。これらの実施例は、個別で実施しても良いが、組合せて実施しても良い。以下の説明において、図中で同じ符号番号がついたものは、同様の動作を行うため、適宜説明を省略する。
【0020】
なお、与干渉を考慮する側の基地局は、例えばフェムトセル基地局である。よって、以下の本実施例のフェムトセル基地局は、IP回線に接続する超小型基地局、と称される一般的なフェムトセル基地局の範疇を包含する概念の基地局である。逆に、与干渉を考慮される側の基地局は例えばマクロセル基地局である。前記フェムトセル基地局と同様に、一般的なマクロセル基地局を含むが、これに限定されない基地局である。
【0021】
(実施例1)
図1は、本実施の形態のセルラ無線通信システムの構成図である。
本実施の形態の無線通信システムは、例えば、マクロセル基地局1201−Mとフェムトセル基地局1201−Hとを備える。端末1203は、マクロセル基地局1201−Mとフェムトセル基地局1201−Hと通信可能である。
【0022】
基地局1201は、基地局管理装置、モビリティ管理装置、Gatewayなどの上位装置により構成されるコアネットワーク1202を介して、離れた位置に存在する端末1203同士の通話や、コンテンツプロバイダと端末間のデータ通信サービスを提供する。ただし、基地局の中でも、フェムトセル基地局は、インターネット回線を介して、コアネットワーク1202に接続することがある。
【0023】
本実施の形態の動作について、図2のシーケンスを用いて説明する。
フェムトセル基地局1201−Hは、起動後の初期設定P101に従う送信電力制御パラメータの設定を実施する。初期設定P101で設定されるパラメータは、フェムトセル基地局の出荷時のプリインストールパラメータであっても良いし、OAM装置(管理装置)により設定されたパラメータであっても良い。
【0024】
フェムトセル基地局1201−Hに接続している端末1203−Hは、フェムトセル基地局1201−H及び、マクロセル基地局1201−Mが送信する下り参照信号(Reference Signal)の電力を受信し、下り信号品質(例えば受信電力)を測定する(P102)。なお、図ではマクロセル基地局はひとつ示しているが、複数のマクロセル基地局からの下り参照信号を受信し、それぞれ測定してもよい。測定のためのコンフィグは、フェムトセル基地局1201−Hから通知しても良い。端末1203−Hは、フェムトセル基地局1201−H及び、マクロセル基地局1201−Mから受信した信号により測定された下り通信品質を、サービングセルのフェムトセル基地局1201−Hに対して報告する(Measurement Report)。
【0025】
フェムトセル基地局1201−Hは、端末より収集した周辺基地局および自基地局の下り受信品質の統計情報を求める(P103)。フェムトセル基地局1201−Hは、P103で取得した管理テーブルの情報から、セルセンタ端末とセルエッジ端末を抽出する(P104)。フェムトセル基地局1201−Hは、P104で決定したセルセンタ端末及び、セルエッジ端末のそれぞれについて、「許容最大送信電力」を求める(P105)。P106において、フェムトセル基地局1201−Hは、セルセンタ端末の許容最大送信電力及び、端末に使用させる予定の変調方式を基に、送信電力を決定する。同様に、P107において、フェムトセル基地局1201−Hは、セルエッジ端末の送信電力を決定し、端末に使用させる予定の変調方式を決定する。P108において、フェムトセル基地局1201−Hは、セルセンタ端末の電力とセルエッジ端末の送信電力を用いて、セル内の全端末に対する送信電力制御のパラメータを決定する。決定されたパラメータは、セル内の全端末に通知され、端末は開ループ電力制御を実施する。以上の処理により、与干渉の考慮下における高スループット通信の実現を図る。以下、ステップP103〜P108のそれぞれについて詳細を説明する。
【0026】
まず、P103について図3を用いて説明する。フェムトセル基地局1201−Hとマクロセル基地局1201−M(#1、#2)が設置されているケースである。フェムトセル基地局に接続している端末1203−Hは、フェムトセル基地局1201−Hとマクロセル基地局1201−M(#1、#2)からの下り参照信号を測定する。端末1203−Hはそれぞれ、測定した結果をフェムトセル基地局1201−Hへ報告する。報告された測定結果を、フェムトセル基地局1201−Hは、図4のような、受信電力報告値管理テーブル4011に記憶する。図に示すとおり、受信電力報告値管理テーブル4011は、例えば端末のID(識別子)ごとに各基地局のIDと受信電力情報をセットで保持している。受信電力報告値管理テーブル4011に保存する値は瞬時値でも良いし、統計値(例えば、平均値、報告頻度など)でも良い。フェムトセル基地局1201−Hは、端末からの報告が来るたびに、受信電力報告値管理テーブル4011の情報を更新する。
【0027】
P104におけるセルセンタとセルエッジの選択方法について説明する。まず、セルセンタ端末の選択方法について考える。セルセンタ端末は、例えば、フェムトセル基地局1201−Hからの受信電力が、マクロセル基地局1201−Mからの受信電力よりも予め定められた閾値以上大きい事を条件として、その条件を満たす端末のひとつを選択しても良い。あるいは、マクロセル基地局1201−Mからの受信電力が、ある閾値以下である事を基準とし、その基準を満たす端末のひとつを選択しても良い。
【0028】
一方、セルエッジ端末の選択方法については、例えば、マクロセル基地局1201−Mからの受信電力が、フェムトセル基地局1201−Hからの受信電力よりも予め定められた閾値以上大きい事を条件とし、その条件を満たす端末のひとつを選択しても良い。また、フェムトセル基地局1201−Hからの受信電力と、マクロセル基地局1201−Mからの受信電力の差が、予め定められた閾値以下であることを条件として、該条件を満たす端末の中からセルエッジ端末をひとつ選択してもよい。ここで、セルセンタ、セルエッジとは、フェムトセルからの物理的な距離だけでなく、Pathlossの大小によって定義しても良い。なお、フェムトセル基地局1201−Hの受信電力が最大の端末をセルセンタ端末、受信電力が最小の端末をセルエッジ端末としてもよい。
【0029】
図4の数値例では、例えば、端末#3がセルセンタ端末として選択され、端末#2がセルエッジ端末として選択される。
P105の許容最大送信電力の計算方法を図5と図6を用いて説明する。
フェムトセル基地局1201−Hは、マクロセル基地局1201−Mが送信した下り送信電力501と、端末1203−Hが受信・測定したマクロセル基地局1201−Mからの下り受信電力502から、端末1203−Hとマクロセル基地局1201−Mとの間のPathloss503を計算する。マクロセル基地局からの下り送信電力は、後述するように適宜取得できる。求まったPathloss503と、マクロセル基地局1201−Mが受ける干渉電力の許容される干渉電力量504の差(各々の絶対値の和)をとると、フェムトセル基地局1201−Hが送信する許容最大送信電力505が算出できる。
【0030】
フェムトセル基地局1201−Hは、図6に示す詳細手順で、P105を実現する。P1001では、フェムトセル基地局1201−Hは、許容される干渉電力量504の情報を収集する。許容される干渉電力504は、マクロセル基地局1201−Mの受信感度から求まる値であっても良い。受信感度以下の電力は、雑音と区別できないため、無視できる電力として扱う事が可能である。あるいは、システムの設計思想として、マクロセル基地局1201−Mが許容する干渉電力504を規定し、システムパラメータとして定めても良い。この場合は、OAM装置から、フェムトセル基地局1201−Hに対して、許容干渉電力(又は受信感度)を設定してもよいし、フェムトセル基地局1201−Hの初期設定値として与えても良い。P1002において、フェムトセル基地局1201−Hは、端末1203−Hが測定したマクロセル基地局1201−Mからの下り受信電力502を推定する。推定に際して、フェムトセル基地局1201−Hは、セルセンタ端末とセルエッジ端末の分類に使用した、受信電力報告値管理テーブル4011の値を使用しても良い。P1003では、フェムトセル基地局1201−Hは、マクロセル基地局1201−Mの下り送信電力情報501を収集する。収集方法は、様々な方法が考えられる。バックホール回線から収集する方法としては、各基地局間での下り送信電力情報を交換や、OAM装置から指定が考えられる。フェムトセル基地局1201−Hが、端末としての受信機能を具備している場合には、マクロセル基地局1201−Mの報知・制御チャネルを受信する事ができる。上記チャネルを受信する事ができれば、マクロセル基地局の送信電力が直接入手できる。あるいは、端末が周辺セルからの受信品質を報告する時に、Pathlossを報告しても良い。
【0031】
P1004では、フェムトセル基地局1201−Hは、許容最大送信電力505を計算する。P1002と、P1003で収集した情報501、502から、それらの差を取れば端末1203−Hとマクロセル基地局1201−Mの間のPathloss503を計算する事ができる。また、Pathloss503と、許容される干渉電力504から、その絶対値の和をとれば許容最大送信電力505を計算する事ができる。許容最大送信電力505は、セルセンタ端末とセルエッジ端末の両方について計算するが、与干渉電力により大きな制約条件を持つ。セルセンタ端末とセルエッジ端末を比べると、セルエッジ端末の方が、マクロセル基地局1201−Mに近く、与干渉は相対的に大きくなる。つまり、セルエッジ端末の方が、セルセンタ端末よりも許容最大送信電力505は小さい傾向にある。フェムトセル基地局1201−Hは、求められたセルセンタ端末の許容最大送信電力と、セルエッジ端末の許容最大送信電力とを適宜記憶する。
【0032】
図7を用いて、セルセンタ端末の送信電力の算出ステップ(P106)の詳細を説明する。P1011は、P105で計算したセルセンタ端末の許容最大送信電力の情報を読み出す処理である。P1012は、セルセンタ端末のTarget MCSを決定する処理である。図12に示すように、MCSは、変調方式と符号化率(CodeRate)のセットであるが、一般的にMCSが高い(MCS番号が大きい)と、変調多値数が多く、符号化率も高い。つまり、MCSが高くなると、高品質な受信環境が必要となるため、所要電力も大きくなる。図12に示した数字は、例であって本実施の形態を限定するものではない。フェムトセル基地局の高スループットを実現するため、例えばセルセンタ端末のMCSはまず高い値を選択する。
【0033】
P1013では、上記MCSに適した、電力を設定する。例えば、セルセンタ端末の送信電力決定(P1013)のため、Target MCS(Modulation and Coding Scheme)を使用した時に、通信が成功するための送信電力を設定する。セルセンタ端末とフェムトセル基地局1201−H間のPathlossと、変調方式ごとに必要となるSNR(Signal to Noise Ratio)と、フェムトセル基地局1201−Hにおける雑音電力との和から、送信電力を算出する事ができる。あるいはSINR(Signal to Noise and Interference Ratio)を使用するときは、雑音電力に加え、到来する干渉電力の指標IoT(Interference over Thermal noise)の値を測定し、送信電力の算出の際にさらに測定した分をくわえても良い。
【0034】
P1014では、P1013で計算した送信電力が、P1011で取得した許容最大送信電力以下であるかを判定する。Yesの場合、P1015に進み、Noの場合はP1016に進む。Target MCSが既に最も小さい値である時は、無条件で判定をYesにしてもよい。P1015では、P1013で求められた送信電力をセルセンタ端末の送信電力として記憶する。なお、セルセンタ端末とフェムトセル基地局1201−Hとのパスロスをさらに記憶してもよい。P1016では、Target MCSを下げてP1012に戻り、P1012〜P1014を繰り返すループを構成する。
【0035】
P107においてセルエッジ端末の送信電力の決定方法を、図8を用いて説明する。P2011は、P1011と同様、セルエッジ端末の許容最大送信電力を読み出す処理である。P2012において、フェムトセル基地局1201−Hは、セルエッジ端末の送信電力を、P2011で取得した許容最大送信電力にセットする。P2013で、フェムトセル基地局1201−Hは、許容最大送信電力でセルエッジ端末が送信を行った時の、フェムトセル基地局1201−Hでの受信品質を見積もる処理を実施する。セルエッジ端末からの上り品質は、許容最大送信電力から、フェムトセル基地局1201−Hと端末1203−H間のPathloss分を差し引くと求まる。上りと下りでPathlossは同じと考えられるため、フェムトセル基地局1201−Hは、下りのPathlossを算出する処理を実施する。下りのPathlossは、受信電力報告値管理テーブル4011(図4)に保持している、セルエッジ端末が報告したフェムトセル基地局1201−Hからの受信電力と、フェムトセル基地局1201−H自身の送信電力差をとって求めても良い。あるいは、端末1203−Hに対して設定した下り送信のMCSから求めてもよい。つまり、フェムトセル基地局1201−Hの送信電力と許容最大送信電力の差分と、下り通信で用いたMCSが必要とする所要電力を足し合わせて求めても良い。また、セルエッジ端末のTarget MCSを決定する。例えば、MCSはまず高い値を選択する。
【0036】
P2014で、見積もった受信品質が、Target MCSでの通信を成功させる品質を満足するか判定する。Target MCSでの通信を成功させる品質は、Target MCS毎に予め定められ、記憶されることができる。受信品質は、例えばSNRであっても良いし、SINRであっても良い。また、Target MCSは、高スループット実現のために、取りうる範囲の高MCSの値を選択しておく。見積もった受信品質が上記条件を満足する場合、P2015に進む。満足しない場合はP2016に進む。P2015では、上記Target MCSと、送信電力の組み合わせを記憶する。なお、セルエッジ端末とフェムトセル基地局1201−Hとのパスロスをさらに記憶してもよい。P2016では、Target MCSを下げて、受信品質がTarget MCSを満足する品質となるまで調節を行う。
【0037】
P108は、セルセンタ端末の送信電力と、セルエッジ端末の送信電力から、セル内全端末に共通のパラメータを決定するステップである。図9に示すように、セルセンタ端末の送信電力511とセルエッジ端末の送信電力512を、Pathlossに対して一次補間する(514)ことで、その他の端末の送信電力513が計算できる。この一次補間された式から送信電力を求めるための、電力制御パラメータを決定する(例えば、傾き、切片に相当するパラメータ)。また、フェムトセル基地局1201−Hは、配下の全端末に対して、電力制御パラメータを通知しても良い。
【0038】
以上の処理によってもとまった電力制御パラメータを端末に対して通知する。全端末に対してパラメータを通知するときには、報知用の無線チャネルを用いて送信してよい。端末1203−Hは、通知された電力制御パラメータが、前回から変化している場合、電力制御用パラメータを更新して、コネクションをコンフィグしなおしてもよい。
【0039】
フェムトセル基地局1201−H配下の各端末1203−Hは、自端末とフェムトセル基地局1201−Hとのパスロスと、通知された電力制御パラメータに基づき送信電力を制御する。
【0040】
図10に、本実施の形態の機能ブロック図を示す。
Transmitter(送信機)411は、フェムトセル基地局1201−Hが、端末1203−Hに対して下り信号を送信するブロックである。下り信号をベースバンド信号からRF(Radio Frequency)信号へ変換する処理も含んでもよい。電波を送信するための送信アンテナも含む。Receiver(受信機)412は、フェムトセル基地局1201−Hが、端末1203−Hからの上り信号を受信するブロックである。上り信号をRF信号からベースバンド信号へ変換する処理を含んでも良い。電波を受信する受信アンテナも含む。送受信アンテナは、共用してもよい。Network I/F(ネットワークインタフェース)413は、フェムトセル基地局1201−Hが、バックホール回線を通して、コアネットワーク1202に接続するためのインタフェースである。コアネットワーク1202に接続する事により、基地局間の情報交換や、モビリティ管理、OAM装置との交信、端末1203−Hが望むデータの送受、通話などの、移動体通信の機能を提供できる。
【0041】
L1 Processing部(L1処理部)414は、フェムトセル基地局1201−Hが、物理層の信号処理を実施する部位である。送信側の主な処理内容には、適応変調、誤り訂正符号化、レイヤマッピングやPrecodingと呼ばれるMIMO(Multiple Input Multiple Output)の信号処理、またFFT(Fast Fourier Transform)がある。受信側の主な処理内容には、送信側で施した変調・符号処理を解くための復調・復号処理である。端末に対して送信するデータは、L2/L3 Processing部(L2/L3処理部)415から取得し、端末から取得したデータは、L2/L3 Processing部415へ送る。L2/L3 Processing部415は、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)の管理や、割当リソースを決定するスケジューリング処理、パケット加工、無線回線の秘匿化、端末へのシグナリング情報の生成などの機能に加え、セル間干渉制御など、無線リソース管理の機能も有するブロックである。
【0042】
統計情報取得部416は、本実施の形態の処理を実施するために必要な情報を取得するため、統計処理を実施するブロックである。本ブロックで生成された情報は、受信電力報告値管理テーブル4011(図4)に保持される。前記テーブル4011は、セル内の端末1203−Hの分布と各基地局との位置関係の把握や、各種Pathlossの計算へと適用されても良い。電力制御パラメータ決定部417は、本実施の形態のシーケンス(図2)のP104〜P108の処理を実施するブロックである。統計情報取得部416で取得した、受信電力報告値管理テーブル4011(図4)の情報を参照するため、統計情報取得部415と連携して動作する。また、Pathlossを算出するための電力情報や、許容電力情報は、Network I/F413を介してOAM装置や、基地局間の情報交換により取得しても良い。
【0043】
図11に、本実施の形態のフェムトセル基地局1201−Hのハードウェア構成を示す。
メモリ部401には、図4のような受信電力報告値管理テーブル4011を保持しておく。また、CPU/DSP部402は、例えば本実施の形態の特徴処理である、P103〜P108までの処理を実行するプログラムがあっても良い。Logic Circuit404は、CPU/DSP部402が実行するプログラムの機能をサポートする部位である。I/F部403は、無線のアンテナとのインタフェースや、バックホール回線とのインタフェースなどの総称である。
【0044】
本実施の形態に記載の方法によれば、セルエッジ端末の送信電力を許容干渉電力の範囲内に設定する事で、マクロセル基地局1201−Mへの干渉を十分に低くしつつ、フェムトセル基地局1201−Hとの通信品質も確保する事が可能となる。さらに、セルセンタ端末にも高速な通信品質を提供が可能となる。セルセンタ端末とセルエッジ端末の送信電力を定めた上で、両者の一次補間によってその他端末の送信電力を決定する。
【0045】
特許文献1では、端末1203−Hがフェムトセル基地局1201−Hからの下り受信電力と、マクロセル基地局1203−Hからの下り受信電力を測定し、最大Target MCSを調節する。全ての端末が特許文献1の処理を実装している場合に限り、上りの干渉が制御される。
【0046】
対して、本実施の形態では、端末でなく、フェムトセル基地局1201−Hが、P105、P106のような方法で、Target MCSを調節する。フェムトセル基地局1201−Hが、配下の全ての端末に対して一律に電力制御をかけることで、洩れなく、他の基地局への上り干渉を制御する事が可能となる。
【0047】
特許文献2では、マクロセル基地局へ干渉を与える、全ての端末で、許容干渉電力の総計を分割する。マクロセル基地局に対する干渉電力が、全端末で一定値以下となるような制限を端末に対して個別に与えていく方式である。
一方、本実施の形態では、基地局が一括して、全端末が共通で使用する電力制御パラメータを設定する事により、セル内の全端末1203−Hが干渉許容電力を無意識に考慮できる方式となる。
【0048】
(実施例2)
実施例1に記載の手法を、LTEへの適用を前提に詳細な実施手段を説明する。図2のP102で端末1203−HがMeasurementを実施するための条件を、P101の初期設定で値を設定し、RRC messageを用いて通知しても良い。
【0049】
Measurementの形式として、RSRP(Reference Signal Received Power)や、RSRQ(Reference Signal Received Quality)を報告させる機能がある。RSRQを報告させると、他セルからのReference Signalの干渉電力を含むRSSI(Received Signal Strength Indication)と、自セルのReference Signalの電力比の形で報告をさせる事が可能である。報告の形態は、RSRPとRSRQのどちらかでよいが、両方を収集しても良い。ただし、Configurationのやり直しが多発する可能性が有るため、通常は一方を使用し、トレーニング期間を設けて、その時間だけ他方の指標を収集しても良い。
【0050】
P103では、受信電力報告値管理テーブル4011は、RSRP及びRSRQそれぞれ管理する。端末1203−Hが報告値を生成する際に、平均処理を実施していることから、報告を受けたフェムトセル基地局1201−Hは瞬時値のみの管理としても良い。また、フェムトセル基地局1201−Hにおいて、統計値を用いた管理を実施する場合には、報告頻度を概念に取り入れても良い。長時間にわたり、報告値の値と頻度を組み合わせで記録する事で、端末の分布に応じた制御が可能となる。例えば、宅内にフェムトセル基地局1201−Hを設置した場合、端末1203−Hの受けるフェージング環境は大きく変わる事は少ない。一方、部屋を移動すると、壁の影響などによる受信電力の分布が変わる事が予想される。端末1203−Hは、部屋に留まっている間は、一定の受信電力を、報告値としてフェムトセル基地局1201−Hに対して返す。つまり、フェムトセル基地局1201−Hは、報告値が返ってきた回数から、端末1203−Hがどの位置に留まる事が多いかを判断する事が可能となる。
【0051】
例えば、報告頻度が最も多い電力報告値は、端末1203−Hが最もよく留まっている位置という事であるから、セルセンタの目安電力としてよい。逆に、報告頻度が一定回数に達しなかった電力報告値は、端末1203−Hが殆ど滞在していない場所と判断してよい。
【0052】
以上の観点を、セルセンタ端末・セルエッジ端末選択の際に、反映するための評価関数を作成しても良い。例えば、セルセンタ・セルエッジ端末を選択する際に忘却平均による評価関数を生成し、忘却係数を小さくした上で、長期間にわたる報告値の平均値を取得し続ければよい。セルセンタ・セルエッジ端末を選択する際に、一定回数以下の報告値を除外して計算する事でも実現できる。セルセンタ・セルエッジ端末は、実際には存在しなくても、上記の忘却平均を取った結果の報告値を返す端末がいる、と仮定をおいてもよい。
【0053】
P104において、セルセンタ端末とセルエッジ端末を選択する際に、報告された電力値を単純平均した値を用いるよりも、報告頻度を考慮する事で、より精度の高い電力設定を提供する事が可能となる。上記、RSRP/RSRQ報告値以外にも、フェムトセル基地局からの下り通信品質を報告する方法としてCQI(Channel Quality Indication)Reportがある。セルセンタ端末とセルエッジ端末の選択方法は、CQIの値の大小で決定してもよい。
【0054】
P108では、セルセンタ端末とセルエッジ端末の電力を基に、他の端末も含めて1次補間の数式で表せるように電力制御パラメータを設定するとよい。例えば、LTEの共有トラフィックチャネルの電力制御式は以下のように書き表される。
【数2】

【0055】
本式の左辺がセルセンタ端末、セルエッジ端末の電力に相当する。ΔTFとf(i)は、通信中の調整成分であるため無視する。MPUSCH(i)は、OFDMAのリソース割当数と考えればよく、電力制御のときは、一定値を使用すると考えればよい。Pathlossに乗算する係数(α)と、基準電力(P0_PUSCH)を設定すれば一次補間の数式で表す事が可能となる。セルエッジ端末、セルセンタ端末それぞれについて、上記の数式を立てて、連立方程式を解くことで、αとP0_PUSCHの値を計算する事が可能である。係数αはPathlossを補償する係数であり、全端末に対して支配力のあるパラメータである。当然、共有トラフィックチャネルの電力制御以外も同様の考えに基づき制御してよい。
【0056】
本実施例に記載の手法によれば、LTEシステムにおいて、セルエッジ端末の送信電力を許容干渉電力に設定しつつ、マクロセル基地局1201−Mへの干渉を十分に低くしつつ、フェムトセル基地局1201−Hへの通信品質も確保する事が可能となる。
【0057】
(実施例3)
実施例1において、P107において、セルエッジ端末の許容最大送信電力が小さい場合を考える。許容最大送信電力が小さい場合、フェムトセル基地局1201−Hで見積もった通信品質が期待よりも悪くなる事が有る。
この場合、セルエッジ端末に対するスケジューリング方法と連動して制御を実施し、電力密度を下げる、あるいは割当リソース数を増加させることにより対応しても良い。フェムトセル基地局のような、収容人数の少ない基地局においては、リソース量を多めに使用する回避方法が取りやすい。
【0058】
例えば、LTEの様な無線通信システムは、リソースは時間軸方向と周波数軸方向に分けて考えられる。OFDMA/SC−FDMAはリソースごとに端末を割当てる多重方式である。
周波数方向に割当リソースを増加させる場合は、リソースごとの電力密度を下げて、割当リソース数を増やす事により、干渉が分散される効果が期待できる。
【0059】
一方、時間方向に割当リソースを増加させる方法も有る。連続のフレーム時間にわたって、同一データを送信し、レピテション利得をえる方法が有る。この方法は、時間方向に干渉を分散させる事と等しい。例えば、LTEにおいては、TTI Bundlingと呼ばれる手段が用意されている。TTI Bundlingは、1 Subframeで送信するデータを4 Subframeにわたって送信する事で、レピテションゲインを得る事が可能となっている。本発明を実施する場合には、セルエッジ端末に対して、TTI Bundlingを積極的に活用して、電力密度を下げることを考えても良い。
本実施例によれば、無線リソースあたりの干渉電力密度を下げる事により、干渉が分散される効果が発揮される。干渉が分散された結果、マクロセル基地局では、端末あたりへの干渉の影響を低減する事ができる。
【0060】
(実施例4)
本実施例においては、セルセンタ端末とセルエッジ端末の選択方法が電力制御の大きな性能変化をもたらす。フェムトセル基地局の適用ケースでは、屋内設置が多いため、建物の1階と2階の天井、壁によるPenetration Lossの考慮は重要な課題である。
【0061】
フェムトセル基地局1201−Hと端末1203−Hの間のPathlossには、Penetration Lossにより、10〜30dB程度の差が発生しうる。一方で、マクロセル基地局1201−Mと、フェムトセル基地局1201−Hに接続している各端末間のPathlossには差がない場合が有る。つまり、フェムトセル基地局1201−Hに接続している端末が、セルセンタ・セルエッジにかかわらず、マクロセル基地局1201−Mとの間のPathlossの絶対値だけに着目すればよい。Pathlossの値が一定値以上(減衰が大きい)であれば、フェムトセル基地局1201−Hと端末1203−Hとの間のPathlossだけを補償すればよい。Pathlossの値が一定値以下であれば、実施例1のような制御を実施すればよい。
【0062】
上記のケースでは、フェムトセル基地局1201−Hと端末1203−H間のPathloss分布を調べて、Pathlossの分布(例えば、ばらつきを表す指標、偏差など)が一定値以上の場合は、マクロセル基地局1201−Mへの与干渉電力を考慮し、許容最大送信電力の範囲内で使えるMCSに決定する。逆に、Pathlossの分布が一定以内であれば、マクロセル基地局1201−Mに与える干渉電力は計算せずに、セルセンタの端末の電力をそのままセルエッジ端末が使用してよい。
【0063】
本実施例によれば、フェムトセル基地局1201−H内の端末のPathloss分布をとり、一定のPathloss分布に収まるかを判定する事で、セルセンタ端末とセルエッジ端末の選択処理をスキップする事が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の代表的な適用先には、例えばフェムトセル基地局が考えられる。与干渉を最小化する上り電力制御は、既存のマクロセル基地局のセル設計への影響を最小限にとどめる事が可能である。例えばマクロセル基地局の面展開後、ホットスポット、不感地対策として設置される小型基地局に適する。
【符号の説明】
【0065】
401 ハードウェア構成:メモリ部
402 ハードウェア構成:プログラム実行ユニットCPU/DSP
403 ハードウェア構成:インタフェース部
404 ハードウェア構成:特定の機能を実行するための論理回路
411 送信機
412 受信機
413 ネットワークインタフェース
414 Layer1機能
415 Layer2、3機能
416 統計情報取得部
417 電力制御パラメータ決定処理部
501 マクロセル基地局の送信電力
502 フェムトセル基地局配下の端末におけるマクロセル基地局の受信電力
503 フェムトセル基地局配下の端末とマクロセル基地局間のPathloss
504 マクロセル基地局で許容できる干渉電力
505 フェムトセル基地局配下の端末の「許容最大送信電力」
511 フェムトセル基地局配下のセルセンタ端末の送信電力
512 フェムトセル基地局配下のセルエッジ端末の送信電力
513 フェムトセル基地局配下の端末の送信電力
514 フェムトセル基地局配下の端末の電力を計算する1次補間を意味する線
1201 無線通信システムの基地局
1201−H フェムトセル基地局
1201−M マクロセル基地局
1202 無線通信システムのコアネットワーク
1203 無線通信システムの端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局と、通信する前記基地局とのパスロスと所定の送信電力制御パラメータとに基づく送信電力制御を行う複数の端末とを備えるセルラ無線通信システムにおける前記基地局であって、
前記複数の端末が測定した、自基地局からの下り参照信号の受信品質情報と、自基地局に隣接する隣接基地局からの下り参照信号の受信品質情報とを、各端末から受信し、
該受信品質情報に基づき、前記複数の端末の中からセルセンタ端末とセルエッジ端末を選択し、
前記隣接基地局における予め定められた許容干渉電力量と、該隣接基地局と前記セルセンタ端末との第1のパスロスとに基づき、前記セルセンタ端末の第1の送信電力を求め、
前記隣接基地局における予め定められた許容干渉電力量と、該隣接基地局と前記セルエッジ端末との第2のパスロスとに基づき、前記セルエッジ端末の第2の送信電力を求め、
前記第1のパスロス及び前記セルセンタ端末の第1の送信電力と、前記第2のパスロス及び前記セルエッジ端末の第2の送信電力とを補間して、パスロスと送信電力の関係を表し、かつ、自基地局配下の前記端末における前記送信電力制御で用いられる送信電力制御パラメータを求め、
求められた送信電力制御パラメータを、自基地局配下の前記端末へ通知する前記基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局であって、
前記端末から受信する受信品質情報の統計情報を管理する統計情報取得部
を具備し、前記セルセンタ端末及び前記セルエッジ端末が、受信品質情報の瞬時値あるいは統計値を基に選択されることを特徴とする基地局。
【請求項3】
請求項1に記載の基地局であって、
前記セルセンタ端末の第1の送信電力は、
前記基地局が、隣接基地局が許容する予め定められた前記許容干渉電力量と、該隣接基地局と前記セルセンタ端末との第1のパスロスとに基づき、前記セルセンタ端末の許容最大送信電力を求め、
前記基地局が、所定のTarget MCSが示す変調方式と符号化率での通信を成功させる送信電力が、求められた前記セルセンタ端末からの許容最大送信電力以下であるような、前記Target MCSを選択し、
選択されたTarget MCSが示す変調方式と符号化率での通信を成功させる前記送信電力と、許容最大送信電力との範囲内で求められる基地局。
【請求項4】
請求項1に記載の基地局であって、
隣接基地局が許容する予め定められた前記許容干渉電力量と、該隣接基地局と前記セルエッジ端末との第2のパスロスとに基づき、前記セルエッジ端末の許容最大送信電力を求め、該セルエッジ端末の許容最大送信電力を、前記セルエッジ端末の第2の送信電力とする基地局。
【請求項5】
請求項1に記載の基地局であって、
求められた前記セルエッジ端末の許容最大送信電力から、自基地局での受信品質を求め、
求められた自基地局での受信品質が、所定のTarget MCSが示す変調方式と符号化率での通信を成功させる受信品質を満たすような、前記Target MCSを選択し、
選択されたTarget MCSと、第2の送信電力とを記憶する基地局。
【請求項6】
請求項2に記載の基地局であって、
前記セルセンタ端末及び前記セルエッジ端末の選択時に、受信された受信品質情報の履歴を利用し、受信頻度による重みを持たせる事を特徴とする基地局。
【請求項7】
請求項1に記載の基地局であって、
前記端末からの受信品質情報に含まれる自基地局からの受信電力と隣接基地局からの受信電力との差が、予め定められた閾値値以上であることを条件として、該条件を満たす前記端末の中からセルセンタ端末が選択されることを特徴とする基地局。
【請求項8】
請求項1に記載の基地局であって、
前記端末からの受信品質情報に含まれる自基地局からの受信電力と隣接基地局からの受信電力との差が、予め定められた閾値以下であることを条件として、該条件を満たす前記端末の中からセルエッジ端末が選択されることを特徴とする基地局。
【請求項9】
請求項1に記載の基地局であって、
前記第1のパスロス及び前記セルセンタ端末の第1の送信電力と、前記第2のパスロス及び前記セルエッジ端末の第2の送信電力とを一次補間することを特徴とする基地局。
【請求項10】
請求項9に記載の基地局であって、一次補間で求められる前記送信電力制御パラメータが、LTE標準で規定されている電力制御数式の、パスロスに乗ずる係数α及び基準電力P0_PUSCHであることを特徴とする基地局。
【請求項11】
請求項1に記載の基地局であって、前記セルエッジ端末が許容最大送信電力での通信時、スケジューリングによる割当リソース数を増やし、電力密度を低下させることを特徴とする基地局。
【請求項12】
請求項11に記載の基地局であって、割当を増加するリソースが周波数方向リソースであることを特徴とする基地局。
【請求項13】
請求項11に記載の基地局であって、割当を増加するリソースが時間方向リソースであることを特徴とする基地局。
【請求項14】
請求項1に記載の基地局であって、前記基地局の通信エリアであるセルは、前記隣接基地局の通信エリアであるセルよりも小さいことを特徴とする基地局。
【請求項15】
請求項1に記載の基地局であって、前記受信品質情報は、下り参照信号の受信電力を表すことを特徴とする基地局。
【請求項16】
請求項1に記載の基地局であって、
前記第1のパスロスは、前記基地局が、隣接基地局が送信する予め定められた送信電力を取得し、該送信電力と、前記セルセンタ端末から受信した、隣接基地局からの下り参照信号の受信品質情報との差をとることで求められ、
前記第2のパスロスは、前記基地局が、隣接基地局が送信する予め定められた送信電力を取得し、該送信電力と、前記セルエッジ端末から受信した、隣接基地局からの下り参照信号の受信品質情報との差をとることで求められることを特徴とする基地局。
【請求項17】
複数の端末と通信する第1基地局と、該第1基地局に隣接する第2基地局とを備え、前記端末が通信する前記基地局とのパスロスと所定の送信電力制御パラメータとに基づく送信電力制御を行うセルラ無線通信システムであって、
前記第1基地局は、
前記複数の端末が測定した、第1基地局からの下り参照信号の受信品質情報と、第2基地局からの下り参照信号の受信品質情報とを、各端末から受信し、
該受信品質情報に基づき、前記複数の端末の中からセルセンタ端末とセルエッジ端末を選択し、
前記第2基地局における予め定められた許容干渉電力量と、該第2基地局と前記セルセンタ端末との第1のパスロスとに基づき、前記セルセンタ端末の第1の送信電力を求め、
前記第2基地局における予め定められた許容干渉電力量と、該第2基地局と前記セルエッジ端末との第2のパスロスとに基づき、前記セルエッジ端末の第2の送信電力を求め、
前記第1のパスロス及び前記セルセンタ端末の第1の送信電力と、前記第2のパスロス及び前記セルエッジ端末の第2の送信電力とを補間して、パスロスと送信電力の関係を表し、かつ、自基地局配下の前記端末における前記送信電力制御で用いられる送信電力制御パラメータを求め、
求められた送信電力制御パラメータを、自基地局配下の前記端末へ通知する前記セルラ無線通信システム。
【請求項18】
請求項17に記載のセルラ無線通信システムであって、
前記第1基地局は、フェムトセル基地局であり、
前記第2基地局は、マクロセル基地局であるセルラ無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−34074(P2012−34074A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170242(P2010−170242)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】