説明

基材を表面被覆又は表面処理するためのプラズマ被覆装置及び方法

本発明は、排気することができ、基材3を配置することができる加工室2を含み、且つプロセス・ガスを加熱することによってプラズマ・ビーム5を生成するためのプラズマ・バーナ4を含む、基材3を表面被覆又は表面処理するためのプラズマ被覆システムに関する。プラズマ・バーナ4は、プラズマ・ビーム5がプラズマ・バーナ4から出て行くことができ、加工室2の長手方向軸線Aに沿って延びるノズル41を有している。ノズル41の下流には、機械的制限装置12が、加工室2内に備えられ、長手方向軸線Aに沿って延在して、好ましくない粒子の側方浸入からプラズマ・ビーム5を保護している。本発明は、さらに、これに対応する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれのカテゴリーの独立請求項の前提部分に従って基材を表面被覆又は表面処理するためのプラズマ被覆装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ被覆装置による熱溶射の多数の異なる処理の中で、いくつかの処理は、周囲の大気圧よりも小さい処理圧力を意味する真空領域で実行される。そのような処理方法は、本来、排気可能な加工室で実行されなければならない。この点で、わずか数百ヘクトパスカル(数百ミリバール)又はさらにそれより小さい圧力が、処理に応じて加工室内で必要とされる。
【0003】
プラズマ溶射では、プロセス・ガスを加熱することによってプラズマ・ジェットを生成することが一般的であり、そのプラズマ・ジェットの中に、被覆のために必要とされる材料が、一般に、粉末形態で、さらに流体形態でも、すなわち気体又は液体のような形態で導入される。特に、気体又は液体の導入に関して、反応処理工程としてプラズマ溶射の処理を実行すること、すなわちCVD処理工程(化学気相成長)と類似の方法でこの処理を実行することも知られている。この点で、高温プラズマ・ジェットに導入された流体は、被覆のために望ましい物質が、例えば、結合を無理に開けること又は分子を分解することによりプラズマ・ジェット中にだけ現れるように変性される。基材、例えばウェハ上に酸化ケイ素層を形成するために反応物質としてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を導入するのはこのための一実例である。
【0004】
これらの真空処理で公知の問題は、排気された加工室を通って移動するプラズマ・ジェットがプラズマ・ジェットのノズルの領域で吸込み効果をもたらすことである。気体又は液体が反応処理の間にプラズマ・ジェットに導入される場合、粉末粒子又は粒子が変性により生じることがある。これにより、粒子が(特に、プラズマ・ジェットの境界において)偏向させられ、ノズルの方向に戻り、次に、吸込み効果によりプラズマ・ジェットに逆戻りして吸い込まれるという影響が生じる場合がある。溶融されない又は十分に可塑化されないそのような「再循環」粒子又は粉末粒子によって、一般に、基材上に形成される被覆に好ましくない欠陥が生じる。
【0005】
この問題は、粉末がプラズマ・ジェットに導入される処理工程でも生じる。例えば、溶融していない又は部分的にのみ溶融及び/又は可塑化された粉末粒子は、上述と同じようにノズルの方向に戻され、次に、プラズマ・ジェットに吸い込まれる。さらに、これらの粉末粒子又は粒子により基材に好ましくない汚染が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1895818号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこの問題を解決することを目的とする。したがって、本発明の目的は、プラズマ・ジェットへの粒子の好ましくない侵入が少なくとも著しく低減される、基材を表面被覆又は表面処理するためのプラズマ被覆装置及び方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
装置の観点及び処理工程の観点について、この目的を達成するために、本発明の主題は、それぞれのカテゴリーの独立請求項によって満足される。
【0009】
したがって、本発明によれば、排気することができ、基材を配置することができる加工室を有し、且つプロセス・ガスを加熱することによってプラズマ・ジェットを生成するためのプラズマ・トーチを有する、基材を表面被覆又は表面処理するためのプラズマ被覆装置が提案される。このプラズマ・トーチは、プラズマ・ジェットがプラズマ・トーチを出て行くことができ、長手方向軸線に沿って加工室中に延在することができるノズルを有している。また、加工室内でノズルの下流に機械的制限装置が設けられており、この機械的制限装置は長手方向軸線に沿って延び、粒子の望ましくない側方(横方向)侵入からプラズマ・ジェットを保護する。
【0010】
この機械的制限装置は、低温で、静かな、すなわち、本質的に電流のない真空に対して高温高速プラズマ・ジェットを区画し、それによって、粒子が好ましくない方法で真空領域から高温プラズマ・ジェットに横方向に吸い込まれるのを妨げる。この点で、「側方(lateral)」及び/又は「側面から(from the side)」は、長手方向軸線Aに対してある角度にあること、又は長手方向軸線Aに対して垂直であることを意味する。
【0011】
長手方向軸線に対して垂直なプラズマ・ジェットの拡大は、機械的制限装置によって制限される。
【0012】
それによって、プラズマ・ジェットは機械的制限装置によって囲まれ、及び/又は密閉され、その結果、好ましくない態様で粒子が側面からプラズマ・ジェットに達することのないようにすることができる。
【0013】
機械的制限装置は、好ましくは、プラズマ・トーチのノズルの直ぐ下流に配置されるが、それは、吸込み効果がここで最も強く、したがって、粒子の侵入がここで最も起こりやすいからである。
【0014】
有利には、機械的制限装置は管として、特に金属管として構成される。
【0015】
好ましい実施例によれば、機械的制限装置は円筒管として構成され、その直径はノズルの出口開口でノズルの直径の最大でも10倍であり、特に、ノズルの直径の最大でも5倍である。
【0016】
好ましくは、反応処理を実行するために反応性流体をプラズマ・ジェットに注入する注入装置が、さらに備えられる。
【0017】
注入装置は、機械的制限装置内に配置される環状注入ノズルを含むように設計できる。
【0018】
好ましい実施例によれば、基材を保持するための基材保持器が備えられ、機械的制限装置がノズルと基材保持器との間の距離の少なくとも80%にわたって、好ましくはこの距離の少なくとも90%にわたって延びる。プラズマ・ジェットは、この対策により、プラズマ・トーチのノズルから基材までの全長にわたって汚染から本質的に保護される。
【0019】
さらに、プラズマ被覆装置によって基材を表面被覆又は表面処理する方法が本発明によって提案される。本発明では、基材は加工室の中に配置され、加工室は0.1メガパスカル(1バール)未満の圧力に排気され、プラズマ・ジェットがプラズマ・トーチによってプロセス・ガスを加熱することにより生成される。このプラズマ・ジェットはノズルを通ってプラズマ・トーチを出て行き、加工室内で長手方向軸線に沿って延びることができる。その際に、プラズマ・ジェットは、長手方向軸線に沿って延びる機械的制限装置によって、粒子の望ましくない側方侵入から保護される。
【0020】
ノズルの下流での長手方向軸線に対して垂直なプラズマ・ジェットの拡大は、加工室内で、機械的制限装置により制限される。
【0021】
好ましくは、反応性流体が、反応プロセスを実行するために注入装置によってプラズマ・ジェットに注入される。
【0022】
それは、処理工程の観点からも、プラズマ・ジェットが、ノズルと基材との間の長さの少なくとも80%にわたる、好ましくはその長さの少なくとも90%にわたる機械的制限装置によって保護される場合、好ましい対策である。
【0023】
本発明による方法は、加工室の処理圧力が被覆の際に最高でも100ヘクトパスカル(100ミリバール)、好ましくは、最高でも50ヘクトパスカル(50ミリバール)、特に、最高でも30ヘクトパスカル(30ミリバール)であるような処理に特に好適である。真空領域からプラズマ・ジェットへの粒子の望ましくない再循環及び/又は望ましくない吸込みの危険性は、さらに詳しくは、特に低い処理圧力で特に顕著となる。例えば、分子、遊離基として、又は他の非常に小さい粒子(さらにナノメートル領域の)として存在することがあるそのような粒子は、低い処理圧力では真空中の自由行程長が増加し、その結果、そのような粒子がプラズマ・ジェットに侵入する及び/又はこれに吸い込まれる確率が増加する。大気圧又はさらにより高い処理圧力では、そのような粒子は、一般に、プラズマ・ジェットから側方に出て行くや否や直ちに減速させられることになる。
【0024】
さらなる有利な方策及び実施例は従属請求項から生じる。
【0025】
以下で、本発明は実施例を参照し、図面を参照して、装置の観点及びさらに処理工程の観点の両方から詳細に説明される。原寸に比例していない概略図で、以下の図は示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるプラズマ被覆装置の一実施例の図である。
【図2】図1の被覆装置の図である。
【図3】図2の断面線III−IIIに沿って被覆装置を通る断面図である。
【図4】図2の矢視方向IVからの機械的制限装置の上面図である。
【図5】図1の実施例の変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下で、本発明は、実施に特に関連する一実例を参照して、すなわち反応性プラズマ溶射工程を参照して説明される。この点で、液体又は気体様出発原料がプラズマ・ジェットに導入される。流体出発原料の分子又は成分は、プラズマ・ジェットの高エネルギーによって、例えば、結合の分裂、成分の分裂などによって変性され、それによって被覆のために望ましい成分が生じる。そのような処理工程は原理上CVD工程と同等でもあり、そのため、時には反応性熱CVD工程と呼ばれる。いわゆる低圧プラズマ溶射(LPPS)及び低圧プラズマ溶射(薄膜)法(LPPS−TF)はこの種の方法に特に好適である。
【0028】
しかし、本発明はこの反応性プラズマ溶射工程に決して限定されないことが当然理解されよう。本発明は、真空中で、すなわち周囲空気圧よりも小さい処理圧力で行われるすべてのプラズマ溶射工程に同様に好適である。冒頭で述べた粉末粒子及び粒子の再循環の問題がこれらの真空プラズマ溶射工程で生じるとき、それは本発明によって満足されるか、又は少なくとも低減されるはずである。特に、本発明は、さらに、粉末形状出発原料がプラズマ・ジェットに導入されるそのような真空プラズマ溶射工程に好適である。
【0029】
全体的に参照番号1で参照される、本発明によるプラズマ被覆装置の一実施例の概略図が図1に示される。プラズマ被覆装置1は、プロセス・ガスを加熱することによってプラズマ・ジェット5を生成するプラズマ・トーチ4を有する加工室2を含む。プラズマ・ジェット5はプラズマ・トーチ4のノズル41を通って放出され、作動状態では長手方向軸線Aに沿って広がる。加工室2の処理圧力を設定するために、加工室2に接続される制御されたポンプ装置7がさらに備えられる。基材3を保持するための基材保持器8が加工室2内に備えられ、それは、図1の双方向矢印Bによって示されるように、長手方向軸線Aに対して垂直な少なくとも一方向に移動可能に設計することができる。これにより、基材3は長手方向軸線Aに対して垂直に移動することができ、その結果、基材3の様々な領域を徐々にプラズマ・ジェット5にさらすことができる。これに加えて、又はこれの代替として、基材保持器8は、表面処理又は表面被覆をする間必要に応じて基材を回転できるように構成することができる。
【0030】
プラズマ・トーチ4は、さらに、好ましくは、図1の矢印Cによって示されるように2軸又は3軸変位保持器上に配置され、その結果、基材3に対するプラズマ・トーチ4の相対位置、それによってノズル41の相対位置を2次元又は3次元で変更することができる。特に、ノズル41から基材3までの距離を変更することができる。
【0031】
プラズマ溶射装置1の設計のさらなる詳細に関して、特に、処理パラメータ範囲及びプラズマ・ジェット5への注入に関して、現時点では同一の出願人の欧州特許出願第08154091.6号を参照されたい。
【0032】
反応性プラズマ溶射の際、プラズマ・ジェット5に注入される液体及び/又は気体状出発原料は、異なる位置でプラズマ・ジェット5に導入することができる。例えば、ノズル41内で若しくはノズル41の直前の上流で、又は軸線方向、すなわち長手方向軸線Aの方向のプロセス・ガスとともに、又は、さらに、ノズルの下流に遠く離して配置された注入装置11により、プラズマ・ジェット5に導入することができる。当然、これらの変形の組合せもあり得る。特に、プラズマ・ジェット5への流体媒体の導入に関して、同一の出願人の欧州特許出願公開第1895818(A)号、並びに同一の出願人の前に引用した欧州特許出願第08154091.6号を参照されたい。
【0033】
本発明によれば、長手方向軸線Aに沿って延び、粒子の望ましくない横方向侵入からプラズマ・ジェット5を保護する機械的制限装置12が加工室2内に備えられる。さらに、長手方向軸線Aに対して垂直にプラズマ・ジェットが広がるのがこれによって制限され、高温プラズマ・ジェットはより低温の真空領域に対して区画される。本実施例では、機械的制限装置は、長手方向軸線Aの方向に延び、長手方向軸線Aに同軸状に延びる円筒管として構成される。機械的制限装置12は、好ましくは、金属材料、特に金属又は合金から製造される。
【0034】
粒子又は粉末粒子の再循環は、図1の矢印Dによって示されるように、機械的制限装置によって効率的に妨げられる。それによって、後横方向に(すなわち、長手方向軸線Aに対してある角度で又はそれに対して垂直に)移動する粒子がプラズマ・ジェット5の吸込み効果によりノズル41の方向にプラズマ・ジェットに侵入することがあることが妨げられる。基材上に製造された被覆の品質はこの対策により著しく改善され得る。
【0035】
機械的制限装置12は、好ましくは、ノズル41の直ぐ下流で始まる。機械的制限装置12は、構造タイプによってはノズル41において接することもできる。それは、機械的制限装置12がノズル41と基材3との間の距離の少なくとも80%にわたって、好ましくは少なくとも90%にわたって延びる場合にさらに好ましいが、それは、このようにしてプラズマ・ジェットがノズル41と基材3との間の全長にわたって本質的に保護されるからである。粒子は、側面からの好ましくない方法で、すなわち長手方向軸線に対してある角度で又はそれに対して垂直に真空領域からプラズマ・ジェット5にもはや侵入することができない。
【0036】
(ここで説明される実施例の場合のように)注入装置11がノズル41のさらに遠い下流に備えられる場合、プラズマ・ジェット5のこの保護は同様に特に重要である。
【0037】
機械的制限装置12のそれぞれの寸法は特定の場合の用途によって決まり、これに対して最適化することができる。機械的制限装置12は、好ましくは、横方向に(すなわち、長手方向軸線Aに対して垂直に)関してプラズマ・ジェットを完全に囲むような大きさとするべきであり、これは、機械的制限装置12の領域中では、プラズマ・ジェットが機械的制限装置12内で本質的に完全に流れるはずであることを意味する。一方、機械的制限装置12の直径は小さすぎるのは許容されず、及び/又は長手方向軸線Aに対して垂直なその内法(clear width)は小さすぎるべきでないが、それは、プラズマ・ジェット5から機械的制限装置12への熱エネルギー移送が強すぎ、後者を損傷することがあるからである。他方、機械的制限装置12の直径及び/又は長手方向軸線Aに対して垂直な内法は、機械的制限装置12がもはやプラズマ・ジェットの横方向広がり(長手方向軸線Aに対して垂直に)に事実上の制限を示さないほど、例えば、粒子の好ましくない再循環が機械的制限装置内に生じる危険性が生じるほど大きくすることはできない。
【0038】
プラズマ・ジェットの形状又は形態は、圧力状態、エネルギー状態、並びに気体流によって実質的に決定されるので、機械的制限装置はプラズマ・ジェットの整形にとって又はプラズマ・ジェットの誘導にとって必須ではない。機械的制限装置は低温の真空と高温プラズマ・ジェットとの境界となる。
【0039】
そのため、機械的制限装置の好適な直径及び/又は内法は、プラズマ・ジェットによって、特に、機械的制限装置がない場合にプラズマ・ジェットが有するはずの横方向広がりによって決まる。したがって、例えば、プラズマ・ジェットの横方向広がりが大きいほど、処理圧力は加工室内で低くなり、プラズマパワーは大きくなる。当業者は、用途の事例ごとに機械的制限装置の寸法を適合させることができる。
【0040】
実際には、少なくとも5から10cm、及び最大で50cmまでの直径が円筒管様の機械的制限装置12では特に好適である。
【0041】
当然、機械的制限装置12は円筒管として構成される必要はなく、矩形、多角形、若しくは楕円形、又は他の曲率などの他の形状の断面も可能である。それは、機械的制限装置12が長手方向軸線Aの方向に断面積を変化させる場合に有利となることもある。
【0042】
図2から図4は制限装置12をより詳細に示す。図2は、図1の制限装置12の側面図を示す。制限装置12は、長手方向軸線Aの方向に延びる金属円筒管12として構成され、直径Eを有する。動作中のプラズマ・ジェットのモニタリングを可能にし、さらに、例えば、センサの収容のために役立つことができるスロット(細溝)121を、管は横方向に備える。固定のために保持部材122が配置される。
【0043】
スロット121は、さらに、反応性流体をプラズマ・ジェットに導入できるようにする注入装置11の一部である環状注入ノズル111の収容にも役立つ。この環状ノズル111に関しては、さらに再度、同一の出願人の既に引用した欧州特許出願第08154091.6号を参照されたい。
【0044】
図3は、図2の断面線III−IIIに沿って機械的制限装置を通る断面を示す。特に、環状注入ノズル111をここでも見ることができる。
【0045】
図4は、図2の矢視方向IVからの機械的制限装置12の上面図を示し、機械的制限装置12の入口開口123を示す。
【0046】
流体がプラズマ・ジェット5に導入されないような真空処理工程では、例えば、注入装置11及び/又は環状注入ノズル111なしで粉末を導入できることが理解されよう。
【0047】
最後に、図5は、さらに、図1に類似した図で、プラズマ被覆装置1の実施例の変形例を示す。図1とは対照的に、この変形では、リング形状注入ノズルが機械的制限装置12を囲むように機械的制限装置12の外側に備えられている。流体をプラズマ・ジェットに導入できる少なくとも間隙又はノズル形状接続開口が備えられなければならないことが理解されよう。
【0048】
本発明による方法の一実施例では、反応性熱低圧プラズマによる薄いSiO層の製造及び用途が詳細に説明される。熱プラズマス溶射用の電力を有する市販のプラズマ・トーチを製造のために使用することができ、例えば、プラズマ・トーチは水冷を備えた3つのカソードと縦続接続アノード(cascaded anode)とを有する。これのために特に好適なプラズマ・トーチはTriplexProという名称で出願人によって販売されている。アルゴン、アルゴンと水素との混合物、又はアルゴンとヘリウムとの混合物をプラズマ・ガスとして使用することができ、プラズマ・ジェットに注入される反応性成分は、例えば、気体状ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と酸素との混合物から構成することができる。HMDSO/O混合物の酸素比率は、一般に、気体流に関連して約2%から3%である。より高い気体活用を達成するために、反応性成分は環状注入ノズル111によってプラズマ・ジェット5に注入される。基材3と注入ノズル111との間の距離は約77cmである。基材からプラズマ・トーチ4のノズル41までの距離は約1mであり、加工室の処理圧力は0.2ヘクトパスカル(0.2ミリバール)から最大で1ヘクトパスカル(1ミリバール)まで、特に、約0.5ヘクトパスカル(0.5ミリバール)であり、プラズマ・トーチに供給される電力は8kWから最大で16kWまでである。酸素流は毎分約3.4リットルである。
【0049】
このようにして、例えば、2μmの厚さの、さらに10から20μm以下の厚さの高品質SiO層を付けることができる。30cm×30cmの大きい基材上の堆積速度は一般に10nm/s以上であり、供給されたHMDSOガスに関して気体活用の向上を達成することができる。SiO層は高純度であるという特徴がある。特に、機械的制限装置11なしではしばしば見られる基材3上の被覆の乳白色の外観はもはや見ることができず、且つ/又は著しく低減される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気できるとともに内部に基材(3)を配置できる加工室(2)と、プロセス・ガスを加熱することによってプラズマ・ジェット(5)を生成するためのプラズマ・トーチ(4)とを備え、
前記プラズマ・トーチ(4)はノズル(41)を有し、前記ノズル(41)を通じて、前記プラズマ・ジェットが、前記プラズマ・トーチを出て、長手方向軸線(A)に沿って前記加工室(2)の中に延びている、前記基材(3)を表面被覆又は表面処理するためのプラズマ被覆装置であって
前記加工室(2)の中で前記ノズル(41)の下流に機械的制限装置(12)が設けられ、前記機械的制限装置は、前記長手方向軸線(A)に沿って延在し、粒子の望ましくない側方侵入から前記プラズマ・ジェット(5)を保護するようになっているプラズマ被覆装置。
【請求項2】
前記機械的制限装置(12)が、前記プラズマ・トーチ(4)の前記ノズル(41)の直ぐ下流に配置される、請求項1に記載のプラズマ被覆装置。
【請求項3】
前記機械的制限装置(12)が管として、特に金属管として構成される、請求項1又は請求項2に記載のプラズマ被覆装置。
【請求項4】
前記機械的制限装置(12)が円筒管として構成され、前記円筒管の直径(E)が、前記ノズル(41)の出口開口において、前記ノズル(41)の直径の最大で10倍である、特に、前記ノズルの前記直径の最大で5倍である、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のプラズマ被覆装置。
【請求項5】
前記プラズマ・ジェット(5)に反応性流体を注入する注入装置(11)をさらに備える、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のプラズマ被覆装置。
【請求項6】
前記注入装置(11)が、前記機械的制限装置(12)内に配置される環状注入ノズル(111)を含む、請求項5に記載のプラズマ被覆装置。
【請求項7】
基材(3)を保持するための基材保持器(8)を有し、前記機械的制限装置(12)が前記ノズル(41)と前記基材保持器(8)との間の距離の少なくとも80%にわたって、好ましくは、前記距離の少なくとも90%にわたって延びる、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のプラズマ被覆装置。
【請求項8】
基材(3)を加工室(2)の中に配置し、前記加工室を0.1メガパスカル(1バール)未満の圧力に排気し、プラズマ・トーチ(4)によってプロセス・ガスを加熱することによりプラズマ・ジェット(5)を生成し、前記プラズマ・ジェットをノズル(41)を通って前記プラズマ・トーチ(4)から出射し、前記加工室(2)内で長手方向軸線(A)に沿って延びることができるプラズマ被覆装置によって前記基材(3)を表面被覆又は表面処理する方法であって、
前記プラズマ・ジェット(5)を、前記長手方向軸線(A)に沿って延びる機械的制限装置(12)によって、粒子の望ましくない側方侵入から保護する方法。
【請求項9】
注入装置(11)によって前記プラズマ・ジェットに反応性流体が注入される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ・ジェット(5)が、前記ノズル(41)と前記基材(3)との間の長さの少なくとも80%にわたる、好ましくはその長さの90%にわたる前記機械的制限装置(12)によって保護される、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記加工室(2)内の処理圧力が、被覆の際に最高でも100ヘクトパスカル(100ミリバール)、好ましくは、最高でも50ヘクトパスカル(50ミリバール)、特に、最高でも30ヘクトパスカル(30ミリバール)である、請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−516945(P2012−516945A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548631(P2011−548631)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050459
【国際公開番号】WO2010/089175
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(500063790)ズルツァー・メットコ・アクチェンゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】Sulzer Metco AG
【Fターム(参考)】