説明

基板および基板の製造方法

【課題】 DC−DCコンバータにも使用可能な基板であって、空隙等の欠陥がなく、また、製造が容易でコンパクトな基板および基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 まず、回路素材をプレスにより打ち抜き、必要な曲げ加工を施して所望の形状に形成する。次に、各回路素材同士を接合し、または所定の位置に配置して、回路導体15を形成する。接合は例えば溶接により行われる。次に、回路導体15を金型19に設置する。金型19は、樹脂9の射出用金型であり、内部に所定のキャビティーが形成される。回路導体15は、例えば所定位置のピン等で金型19に固定される。この状態で、金型19内に樹脂を射出することで、樹脂が回路導体表面および層間に射出され、基板1が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等に用いられるDC−DCコンバータ等の基板および基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられるDC−DCコンバータは、電圧変換用のトランスや平滑化用のチョークコイル等の複数の部品から構成されるが、高電圧・大電流が負荷されるため、それぞれのパーツを別々に製造後、それらが接続されて用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−143215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構成は、装置の大型化を招くため、よりコンパクトなDC−DCコンバータが要求されている。一方、前述の各部品を同一の基板上に配置する方法がある。通常、このような電気回路を有する基板は、複数の回路および絶縁体が層構造で構成される。しかし、通常の基板は、回路をメッキやエッチング等により形成するため、大電流が流れるDC−DCコンバータに対しては、回路が大電流に耐えることができない。すなわち、このような大電流に耐えるためには導体層厚さを例えば0.4mm以上とすることが望ましいが、従来の方法では、導体層厚さが厚くなりすぎるため、導体層の形成が困難である。
【0005】
また、従来の方法では、導体層とガラスエポキシとを積層して基板を形成するが、同一層内で分離した別々の導体同士の間には樹脂が十分に行き渡らず、空隙などの欠陥を生じる恐れがある。空隙の形成は、基板の絶縁性能を低下させるなどの問題がある。このため、より信頼性が高く、コンパクトかつ簡易に低コストで製造が可能DC−DCコンバータが望まれている。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、DC−DCコンバータにも使用可能な基板であって、空隙等の欠陥がなく、また、製造が容易でコンパクトな基板および基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達するために第1の発明は、複数の回路素材を形成し、前記回路素材同士の所定部位を接合して、複数層構造の回路導体を形成し、前記回路導体の表面および/または前記回路導体の層間に対して樹脂を射出成型することを特徴とする基板の製造方法である。
【0008】
前記樹脂の射出前に、前記回路導体の層間の少なくとも一部には、前記樹脂の融点以下の絶縁部材が挟み込まれてもよい。
【0009】
前記樹脂の射出前に、前記回路導体表面または前記回路素材の表面にあらかじめ表面粗化処理が施されてもよい。
【0010】
前記回路導体または前記回路素材の表面には、前記樹脂により被覆される側に縮径するテーパ部を有する樹脂保持部が形成され、前記樹脂が前記樹脂保持部の内部に射出されることで前記樹脂が前記回路導体に固定されてもよい。
【0011】
前記回路素材同士の接合は、接合される前記回路素材同士の端部をそれぞれ前記回路素材の面に略垂直に屈曲して屈曲部を形成し、前記屈曲部同士を重ね合わせて溶接により行われてもよい。
【0012】
前記回路導体には、前記樹脂の射出成型時において前記樹脂の流動路となる溝があらかじめ形成されてもよい。
【0013】
前記樹脂の射出成型用の金型の一部には、外周部のみがリブ状に突出する凸部が形成されており、前記凸部が前記回路導体の表面に押し付けられた状態で前記樹脂を射出することで、基板の表面に、電子部品を搭載するための樹脂で被覆されていない領域を形成してもよい。
【0014】
第1の発明によれば、厚銅などの比較的厚い回路導体であっても簡易に複層基板を形成でき、この際、樹脂部を射出成型で形成するため、樹脂が確実に回路導体層間にも行きわたり、製造が容易な基板の製造方法を得ることができる。
【0015】
また、積層される回路導体同士の層間に射出樹脂の融点以下の絶縁材料を挟み込んでおくことで、射出樹脂を射出成型する際に、当該絶縁部材が溶融して、回路導体と一体化するため、例えばコイルなどの狭い間隔で回路導体を積層する場合においても確実に回路導体間を絶縁することができる。
【0016】
また、あらかじめ回路導体表面に表面粗化処理により凹凸を形成することで、アンカー効果により確実に樹脂が回路導体と一体化し、回路導体と樹脂との剥がれが防止できる。
【0017】
また、樹脂が被覆される側に縮径するテーパを有する樹脂保持部が形成されるため、樹脂が樹脂保持部内部に流入することで、アンカー効果により樹脂がより確実に回路導体と一体化される。
【0018】
また、回路素材同士の接合部は、接合部の端部を素材の面方向(回路導体の面に垂直な方向)に曲げられて、当該屈曲部が重ねられて溶接されるため、積層される回路素材の外部側で溶接を行うことができる。したがって、溶接状態を回路導体の外部から確認でき、回路導体の内部側(層間や裏面側)に溶接部を設ける必要がない。
【0019】
また、回路導体(回路素材)の表面に、樹脂の流動路となるように樹脂の流れ方向に溝を形成することで、樹脂の流れ性が向上し、樹脂の周り不良等を防止することができる。
【0020】
また、基板の回路導体部が露出する部位において、樹脂成形時の金型の一部に、外周部がリブ上の凸部を形成することで、当該凸部を回路導体に押し付けた状態で樹脂を射出しても、凸部と回路導体との面圧が高いことにより、凸部上面と回路導体との隙間に樹脂が入り込むことを防止することができる。
【0021】
第2の発明は、複数層構造の回路導体と、前記回路導体同士の層間および前記回路導体の表面に対して射出成型により形成された樹脂と、を具備し、前記回路導体の表面には、電子部品が搭載される、前記樹脂により被覆されない電子部品搭載部が形成され、前記電子部品搭載部の大きさは、接合される前記電子部品の大きさと略等しく、前記領域の外周部には、前記樹脂が被覆されないガス抜き部が形成されることを特徴とする基板である。
【0022】
第2の発明によれば、射出成型によって電子部品搭載部が形成されるため、電子部品の搭載位置を確実に一定にすることができ、また、電子部品搭載部の周囲に、樹脂で被覆されないガス抜き部(電子部品搭載部から外方に向かってはみ出すように形成された、電子部品搭載部と連続した、樹脂で被覆されない領域)が形成される。このため、電子部品を半田付する際に、半田によって生じるガスがガス抜き部から抜けるため、半田接合の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、DC−DCコンバータにも使用可能な基板であって、空隙等の欠陥がなく、また、製造が容易でコンパクトな基板および基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】基板1を示す斜視図であり、(a)は表側斜視図、(b)は裏側斜視図。
【図2】基板1を示す図であり、(a)は平面図、(b)は裏面図。
【図3】基板1を示す断面図で(a)は、図2(a)のA−A線断面図、(b)は、他の態様を示す図。
【図4】回路素材を示す分解図。
【図5】回路素材を組みたてた回路導体15を示す図。
【図6】回路素材同士の溶接部の形態を示す図。
【図7】回路導体を樹脂成型用の金型に設置した状態を示す図。
【図8】(a)は金型の外周リブ状の凸部20aの形状を示す図、(b)は凸部20bを示す図、(c)は(b)のB部拡大図。
【図9】樹脂保持部の形状を示す図。
【図10】ガス抜き部25を有する電子部品搭載部7の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1、図2は、基板1を示す斜視図であり、図1(a)は表面斜視図、図1(b)は裏面斜視図、図2(a)は平面図、図2(b)は裏面図である。基板1は、トランス3、チョークコイル5を有する例えば自動車用のDC−DCコンバータとして用いられる基板である。基板1は、電子部品搭載部7、接続部8a、8b、8cおよび、放熱部11等において内部の回路導体が外部に露出し、その他の部位が樹脂9によって被覆される。なお、回路導体については後述する。
【0026】
トランス3は電圧変換用のコイルであり、接続部8aより入力された電流を、トランス3で降圧し、降圧された電流をチョークコイル5によって平滑化し、接続部8cによって外部に出力する。電子部品搭載部7には、電子素子等を搭載する部位であり、例えば接続部8b等によって基板1と電気的に接続される。
【0027】
電子部品搭載部7の裏面側には放熱部11が形成される。放熱部11は、搭載される電子部品や基板の回路導体に通電することにより発生する熱を外部に放出する。なお、本発明にかかる基板は、図に示すような配置および形状に限られることはなく、その他の部品等を適宜搭載することや、配置および形状を適宜変更することが可能なことは言うまでもない。
【0028】
図3(a)は、図2(a)のA−A線断面図である。図3(a)に示すように、基板1は、内部に複数の回路素材13a〜13fが配置され、一部の露出部を除き、樹脂9によって被覆される。なお、回路素材13a〜13fが互いに接合され、または電気的な機能を発揮する状態に配置されたものを全体として、回路導体と称する。
【0029】
たとえば、回路素材13aは、コイルであり、板状の回路素材13bと所定の間隔をあけて配置される。回路素材13bの表面の一部には樹脂9により被覆されない露出部(電子部品搭載部7)が形成され、裏面側には同様の露出部(放熱部11)が形成される。回路素材13bは回路素材13cと電気的に接合されており、さらに、回路素材13cは、回路素材13d、13e、13fが互いに接合されて形成されるチョークコイル5と接合される。
【0030】
ここで、回路素材13a〜13fは、0.1mm〜1mm程度の厚みであり、さらに望ましくは0.4mm〜0.7mmである。回路素材の厚みが薄すぎると、大電流の使用に耐えることできず、また、厚すぎると、コスト及び重量等が増加し、コンパクトな基板を形成することができなくなるためである。このように回路素材は従来の基板の回路導体よりも厚いため、メッキ・エッチング等により形成することはできず、プレス加工により形成される。なお、回路素材は導体であり、電気抵抗および熱抵抗の小さな金属であることが望ましく、例えば銅合金が使用できる。
【0031】
回路導体を被覆するように、または各回路素材同士の間隔を保持するために、回路導体の表面、および回路導体の層間には樹脂9が形成される。樹脂9は、射出成型により設けられる。樹脂9としては、絶縁性があり、射出成型が可能であればよく、例えば、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフタルアミド等が使用できる。
【0032】
なお、回路導体としては、回路素材を複数層に形成してもよい。たとえば、図3(b)に示すように、回路素材13bと重なるような位置に回路素材13gを設け、回路素材13b、13gの層間に樹脂9を射出して直接導通しないように回路を構成することもできる。複数層に形成することで、基板1の大きさを小さくすることができる。
【0033】
次に、基板1の製造方法について詳細を説明する。まず、図4に示すように、必要な回路素材13a〜13fをプレスにより打ち抜き、必要な曲げ加工を施して所望の形状に形成する。なお、この際、プレス金型の表面に凹凸形状を設けておき、各回路素材表面に細かな凹凸形状を形成してもよい。表面の粗度を上げることでアンカー効果により樹脂との密着性を向上することができる。また、プレス金型による凹凸形成の他にも、ブラスト処理により表面処理や、銅メッキ粗化、ニッケルメッキ粗化等により回路素材表面を粗面化してもよい。
【0034】
次に、図5に示すように、各回路素材同士を接合し、または所定の位置に配置して、回路導体15を形成する。接合は例えば溶接により行われる。この際、複数の回路素材を重ね合わせて配置するような場合には、重なり合う部位の内部側は目視ができず、溶接が困難であるばかりでなく、溶接時に発生するカス等の異物が残存して絶縁不良等の恐れがある。したがって、接合は、回路素材の表面側で行うことが望ましい。
【0035】
図6は、回路素材同士の接合態様を示す図である。たとえば、図6(a)に示すように、回路素材13sおよび回路素材13tを互いに重なり合うように接合する場合、それぞれの回路素材13s、13tの端部を接合状態における同一方向に(回路素材の面に対して略垂直に)屈曲させて屈曲部を形成し、互いの屈曲部同士を重ねて接合することで、接合部を外部より視認することができ、また、溶接時に生じる異物等が、回路素材13s、13tの層間に残存することがない。
【0036】
また、図6(b)に示すように、回路素材13s、13tを同一平面上に接合する場合においても、同様に、それぞれの回路素材13s、13tの端部を接合状態における同一方向に屈曲させて屈曲部を形成し、互いの屈曲部同士を重ねて接合することで、接合部を外部より視認することができ、また、溶接時に生じる異物等が、回路素材13s、13tの裏面側に残存することがない。
【0037】
また、図6(c)に示すように、回路素材13s、13tを段違いに接合する場合においても、同様に、それぞれの回路素材13s、13tの端部を互いの接合方向に屈曲させて屈曲部を形成し、互いの屈曲部同士を重ねて接合することで、接合部を外部より視認すればよい。なお、この場合、回路素材13sの屈曲部を長くし、回路素材13tを図6(c)の上方に屈曲させることで、図6(b)と略同様の接合状態を形成することもできる。
【0038】
次に、図7(a)に示すように、回路導体15を金型19に設置する。金型19は、樹脂9の射出用金型であり、内部に所定のキャビティーが形成される。回路導体15は、例えば所定位置のピン等で金型19に固定される。この状態で、金型19内に樹脂を射出することで、基板1が形成される。なお、回路導体15(各回路素材)に樹脂9の流動路となるように、樹脂9の流れ方向にあらかじめ溝を形成しておくことで、樹脂9が確実に金型内に回り込み、樹脂9の流れ不良等の発生を抑えることができる。
【0039】
なお、図7(b)に示すように、回路素材同士が重なり合う部位(特に、コイルやトランス等の回路素材同士が離間して距離を一定に保つ必要がある部位)において、互いが接触せずに離間された状態で基板を形成する場合には、当該回路素材同士の隙間に、あらかじめ絶縁材21を挟み込んでもよい。絶縁材21は、樹脂9よりも融点の低い材料が用いられる。したがって、樹脂9の射出成型時に、当該絶縁材21が溶融して確実に回路素材と一体化される。また、絶縁材21は樹脂9の射出時に回路素材が変形して導通することを防ぎ、確実に回路素材同士の距離を一定に保つことができる。
【0040】
ここで、金型19には部分的に凸部20aが形成され、凸部20aが回路導体15の一部に押し当てられる。凸部20aが回路導体15に押し当てられる部位には、樹脂9が被覆されず、回路導体の露出部(例えば電子部品搭載部7など)となる。
【0041】
図8(a)は、凸部20aの断面図を示す図である。図8(a)に示すように、凸部20aは、外周部のみがリブ状に突出した形状であり、リブで囲まれる凸部29aの内部は空間(凹み)が形成される。すなわち、回路導体15を金型19にセットした状態で、凸部20aのリブ部(外周部)のみが回路導体(回路素材)と接触して、回路素材表面に押し付けられる。したがって、凸部20aが回路素材表面に押し付けられる面圧を大きくすることができる。
【0042】
たとえば、図8(b)に示すように、内部がすべて埋まった従来の凸部20bを用いると、凸部20bの全面が回路素材13表面に接触する。このため、凸部20bが回路素材13に押し付けられる面圧が小さくなる。
【0043】
図8(c)は図8(b)のB部拡大図である。図8(c)に示すように、凸部20bの面圧が小さくなることで、樹脂9を射出した際に、凸部20bの端部がわずかに浮き上がり、凸部20bと回路素材13との隙間に樹脂9が入り込む恐れがある。この場合、回路導体が外部に確実に露出せず、導通不良等を起こす恐れがある。したがって、凸部の外周のみをリブ状に突出させる凸部20aを用いることが望ましい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の基板1によれば、回路素材をプレスで形成するため、厚銅基板を形成することができ、さらに樹脂9を射出成型により形成するため、製造性に優れ、大電流にも耐えうる基板1を得ることができる。
【0045】
また、回路素材同士を別々で成形して、互いに接合等を行うため、設計自由度が高く、製造性にも優れる。また、回路素材同士を重ねるように設置することも可能であるため、コイル等をプレスで成形することも可能であり、基板1の小型化も可能である。この際、回路素材同士の間に樹脂9よりも低融点の絶縁材21を設けることで、回路素材同士の距離を一定に保ち、絶縁不良等を防止することができる。
【0046】
また、回路素材同士の接合部は、端部を屈曲させて重ねることで、溶接部を外部より視認することができ、溶接時に発生する異物等が回路導体に残存することを防止することができる。
【0047】
また、基板における回路導体の露出部を形成する凸部20aが外周のみリブ状に突出する形状であるため、凸部20aの回路素材表面に対する面圧を高めることができ、凸部20aと回路素材表面との隙間に樹脂9が入り込むことがない。また、回路素材の表面粗度を大きくすることで、樹脂9と回路素材13とを確実に一体化することができる。
【0048】
なお、樹脂9と回路素材とをより確実に一体化するためには、図9に示すような樹脂保持部を形成してもよい。たとえば、図9(a)に示すように、回路素材13の一部に、樹脂9により被覆される側に縮径するテーパ部を有する孔(樹脂保持部23a)を設けておくことで、射出成型時に樹脂保持部23a内部に樹脂9が入り込み、樹脂9が樹脂保持部23aで確実に保持される。したがって、樹脂9が回路素材からはがれたり隙間が生じたりすることがない。
【0049】
なお、この場合、図9(b)に示すように、樹脂9が両面に形成される場合には、いずれか一方の樹脂9が被覆される側に縮径するテーパ部を有する孔を形成すれば良い。
【0050】
また、内面全体がテーパ部ではなく、図9(c)に示すように、深さ方向の一部に樹脂9の被覆側に縮径するテーパ部を形成する樹脂保持部23bを形成してもよい。
【0051】
また、孔内壁部にテーパ部を形成しなくても、図9(d)に示すように、回路素材13の一部を折曲げて突出させてもよい。樹脂保持部23cは、回路素材13の一部に孔を設け、回路素材13の樹脂9が被覆される側に当該孔の外周部が突出する様に曲げられた部位である。樹脂保持部23cにおいても、回路素材13の裏面側において、樹脂9の被覆側に縮径するテーパ部が形成されるため、同様の効果を奏することができる。
【0052】
また、図9(d)に示すように、孔ではなく凹部よりなる樹脂保持部23dとしてもよい。樹脂保持部23dは、樹脂9により被覆される側に縮径するテーパ部を有する。たとえば、回路素材13の側面等に溝状に樹脂保持部23dを設けることで、同様の効果を奏することができる。
【0053】
また、電子部品搭載部7は、搭載される電子部品と略同形状(搭載される電子部品よりもわずかに大きく)、搭載部品が確実に設置位置に搭載可能とすることが望ましいが、この際、電子部品搭載部7の外周部の一部(例えば四隅)にガス抜き部25を形成してもよい。
【0054】
図10は、ガス抜き部25が形成された電子部品搭載部7を示す図である。前述の通り、電子部品27(点線部)は電子部品搭載部7(樹脂が被覆されない領域)よりもわずかに小さく、電子部品27は電子部品搭載部7に確実に設置される。この際、たとえば電子部品27を電子部品搭載部7に半田付けする場合には、電子部品27と電子部品搭載部7との側部の隙間が小さいため、電子部品27の下面で半田のフラックスより生じるガス等が外部に抜けず、半田部に欠陥が生じる恐れがある。これは、射出成型により成形する樹脂の厚みが従来の基板よりも厚いことで特に問題となる。
【0055】
これに対し、ガス抜き部25は電子部品搭載部7と同様に樹脂が被覆されない部位であり、電子部品搭載部7と連続した樹脂非被覆領域を形成する。したがって、電子部品27を電子部品搭載部7に半田付けした際に、電子部品27下面で生じるガスが、ガス抜き部25より外部に抜けるため、ガスによる半田の欠陥の発生を防止することができる。
【0056】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0057】
1………基板
3………トランス
5………チョークコイル
7………電子部品搭載部
8a、8b、8c………接続部
9………樹脂
11………放熱部
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g………回路素材
15………回路導体
17………溶接部
19………金型
20a、20b………凸部
21………絶縁材
23a、23b、23c、23d………樹脂保持部
25………ガス抜き部
27………電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路素材を形成し、
前記回路素材同士の所定部位を接合して、複数層構造の回路導体を形成し、
前記回路導体の表面および/または前記回路導体の層間に対して樹脂を射出成型することを特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂の射出前に、前記回路導体の層間の少なくとも一部には、前記樹脂の融点以下の絶縁部材が挟み込まれることを特徴とする請求項1記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂の射出前に、前記回路導体表面または前記回路素材の表面にあらかじめ表面粗化処理が施されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記回路導体または前記回路素材の表面には、前記樹脂により被覆される側に縮径するテーパ部を有する樹脂保持部が形成され、前記樹脂が前記樹脂保持部の内部に射出されることで前記樹脂が前記回路導体に固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記回路素材同士の接合は、
接合される前記回路素材同士の端部をそれぞれ前記回路素材の面に略垂直に屈曲して屈曲部を形成し、前記屈曲部同士を重ね合わせて溶接により行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記回路導体には、前記樹脂の射出成型時において前記樹脂の流動路となる溝があらかじめ形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂の射出成型用の金型の一部には、外周部のみがリブ状に突出する凸部が形成されており、前記凸部が前記回路導体の表面に押し付けられた状態で前記樹脂を射出することで、基板の表面に、電子部品を搭載するための樹脂で被覆されていない領域を形成することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項8】
複数層構造の回路導体と、
前記回路導体同士の層間および前記回路導体の表面に対して射出成型により形成された樹脂と、
を具備し、前記回路導体の表面には、電子部品が搭載される、前記樹脂により被覆されない電子部品搭載部が形成され、
前記電子部品搭載部の大きさは、接合される前記電子部品の大きさと略等しく、前記領域の外周部には、前記樹脂が被覆されないガス抜き部が形成されることを特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−146459(P2011−146459A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4799(P2010−4799)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】