説明

基板保持搬送用治具、基板押さえ部材、押さえ部材取り外し治具、メタルマスク版、プリント配線基板の搬送方法、電子部品付き配線基板の製造方法、基板搬送装置

【課題】基板保持搬送用治具を用いたプリント配線基板の搬送において、基板の反りの抑制及び搬送用の治具に対する位置ずれ防止を容易に実現でき、しかも、静電気の帯電も抑えることができる技術の開発。
【解決手段】プレート状基材12の複数箇所にプリント配線基板1を保持するための弱粘着剤層13と永久磁石14とが点在配置され、基板設置面11に設けられた基板1に重ね合わせるように設置された磁性体金属板である基板押さえ部材20Cと前記プレート状基材12の磁石14との間の磁気吸引力によって基板1を保持可能とされている基板保持搬送用治具10、基板押さえ部材20C、押さえ部材取り外し治具、メタルマスク版、プリント配線基板の搬送方法、電子部品付き配線基板の製造方法、基板搬送装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板へ電子部品を実装する工程に用いられ、特に薄い(板厚0.5mm以下)プリント配線基板、反りの抑制が難しいプリント配線基板、個片で供給するプリント配線基板の搬送に用いて好適な基板保持搬送用治具、基板押さえ部材、押さえ部材取り外し治具、メタルマスク版、プリント配線基板の搬送方法、電子部品付き配線基板の製造方法、基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント配線基板の実装では耐熱性のある弱粘着剤層を有するプレート(治具)を用い基板を粘着保持し、電子部品を接合する実装工程に適用する方法をとっている(例えば特許文献1〜3)。
また、特許文献4のように、磁力によって互いに吸引力を発揮する一対の部材の間に基板を挟持して搬送する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3328248号公報
【特許文献2】特許第3435157号公報
【特許文献3】特許第3585904号公報
【特許文献4】特開2002−299406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように実装工程に弱粘着剤層を有する治具を用いる技術は、主にフレキシブルプリント配線基板の実装において用いられる技術であるが、近年、電子機器の小型化や薄型化、更に記録メディアの大容量化に伴いリジットプリント配線基板の薄型化が進むにつれリジットプリント配線基板の電子部品実装にも用いられている。
板厚0.5mm以下の薄いリジットプリント配線基板は、フレキシブルプリント配線基板と比較し弾性率が高く、熱により生じる反りを弱粘着剤層の粘着力では抑えきれず板厚0.5mm以下の薄いリジットプリント配線基板が治具からの脱落、反りにより装置と干渉し破損する等の不具合を発生させている。多層フレキシブルプリント配線基板やセラミック基板も同様に電子部品実装工程での反りの抑制方法や搬送方法に課題をかかえている。
【0005】
一方、特許文献4記載の技術は、磁力によって互いに吸引力を発揮する一対の部材(以下、磁気挟持用部材とも言う)の間に基板を挟持する構成により、磁気挟持用部材を基板の反りの抑制に有効に寄与させることが可能である。しかしながら、基板を挟持する一対の部材間に作用する磁気吸引力は磁気挟持用部材の基板面方向への移動抵抗の増大には有効に機能しない。このため、例えば、一対の磁気挟持部材に基板を挟持した構成の搬送体の搬送中の振動や、前記搬送体が搬送完了位置に設置されているストッパや案内用のガイド部材に衝突したときの衝撃力によって、磁気挟持用部材の基板面方向への位置ずれや基板の位置ずれが発生しやすいといった問題がある。また、特許文献4は磁気挟持用部材としてリング状部材、馬蹄形部材、Cの字形状の部材、フォーク形状の部材(段落(0048)参照)を用いるものであるが、このような形状の磁気挟持用部材は基板に局所的に接して基板を挟持する構成を意味するものと考えられるものであり(特許文献4の図1の処理ステージ2Aに形成されている吸引孔8からの真空吸引による基板保持のために、磁気挟持用部材の基板に対する接触面積を充分に小さく抑える)、磁気挟持用部材と基板との間の移動抵抗を充分に確保することは容易でない。
【0006】
本発明者は、治具に対する基板の位置ずれを防止するために、弱粘着剤層を有する治具に基板位置決め用のピンを複数突設したもの(以下、検討例とも言う)を試作し、このピンを基板の複数箇所に形成した孔に挿入して基板の位置ずれを防止する構成を検討した。しかしながら、この検討例の構成では、治具側の全てのピンと基板側の全ての孔の位置を高精度に対応させる必要があり、高精度のピン及び基板の孔に精度が要求されるため製造が容易でない上、基板をピンに通す作業に手間が掛かる。
【0007】
本発明者は、弱粘着剤層を有する治具を用いる技術(例えば特許文献1〜3)は、搬送用の治具に対する基板の位置ずれ防止の点では有効であることを確認した。電子部品実装工程での基板の反りを抑制する点では、弱粘着剤層の粘着力を高めることが考えられるが、治具からの基板の剥離性の確保や剥離時の基板の曲げ変形の抑制に鑑みて、弱粘着剤層の粘着力を高めるには限界がある。また、従来、弱粘着剤層に一般的に用いられている弱粘着性樹脂(シリコーン樹脂等)は、その架橋度を低下させることで粘着力を高めることができるが、架橋度を低下させると、低分子量シロキサンの基板への転写(特にリフロー工程での転写)が生じやすくなるといった問題もある。
【0008】
また、弱粘着剤層を有する治具にあっては、フレキシブルプリント配線基板や薄いリジットプリント配線基板の反り抑制の点では、基板との接触面積を充分に確保するために、弱粘着剤層が、プレート状の治具本体の片面に、保持対象の基板と同等あるいはそれ以上の面積(例えば治具本体の片面全体)に設けられた構成のものを採用することが有利であり、このような構成のものが多用されている。このように弱粘着剤層と保持対象の基板との接触面積が大きいと、治具からの基板の剥離によって、治具、基板が静電気を帯電しやすい。基板の静電気の帯電量が増大すると、例えば治具から剥離させた基板が該基板を収納するためのトレイ等の異種部材に接触した際にスパークが発生してプリント配線基板を傷め、製品歩留まりの低下の原因になる可能性がある。また、静電気によって引き寄せられた粉塵等が基板に付着することがある。しかしながら、現状、静電気の帯電を抑え、しかも、フレキシブルプリント配線基板や薄いリジットプリント配線基板の反り抑制も実現できる適切な技術が存在しない。
【0009】
上述のように、プリント配線基板の反りの抑制及び搬送用の治具に対する位置ずれ防止を実現できる好適な技術がこれまでに無いのが実情であった。
本発明は、プリント配線基板の反りの抑制及び搬送用の治具に対する位置ずれ防止を容易に実現でき、しかも、静電気の帯電も抑えることができる基板保持搬送用治具、基板押さえ部材、押さえ部材取り外し治具、メタルマスク版、プリント配線基板の搬送方法、電子部品付き配線基板の製造方法、基板搬送装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、プリント配線基板が重ね合わせるようにして設置される基板設置面を有し前記プリント配線基板の搬送に用いられるプレート状の基板保持搬送用治具であって、プレート状基材の複数箇所に前記プリント配線基板を保持するための弱粘着剤層が前記基板設置面の一部を形成するようにして設けられ、さらに、前記プレート状基材の前記基板設置面に沿う複数箇所に永久磁石あるいは磁性体である磁気吸引用部材を備え、前記基板設置面に設置されたプリント配線基板の前記プレート状基材とは反対の側に設置される基板押さえ部材に該基板押さえ部材に設けられている磁性体あるいは永久磁石と前記プレート状基材の前記磁気吸引用部材との間の磁気吸引力を作用させることで、プリント配線基板を保持可能とされていることを特徴とする基板保持搬送用治具を提供する。
請求項2に係る発明は、前記磁気吸引用部材は前記弱粘着剤層の前記基板設置面とは反対の側に設けられて前記プレート状基材の複数箇所に分散配置されていることを特徴とする請求項1記載の基板保持搬送用治具を提供する。
請求項3に係る発明は、前記磁気吸引用部材が前記基板設置面の複数箇所に露出するようにして前記プレート状基材に点在配置されていることを特徴とする請求項1記載の基板保持搬送用治具を提供する。
請求項4に係る発明は、前記磁気吸引用部材である磁石は、前記基板設置面に設置される前記プリント配線基板側の面に互いに異なる磁極を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板保持搬送用治具を提供する。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の前記基板設置面に前記プリント配線基板を押さえ込むために用いられる基板押さえ部材であって、その全体あるいは複数箇所が、前記基板保持搬送用治具の磁気吸引用部材との間に磁気吸引力を発生するための永久磁石あるいは磁性体とされていることを特徴とする基板押さえ部材を提供する。
請求項6に係る発明は、前記基板保持搬送用治具の前記基板設置面に重ね合わせたプリント配線基板に積層するようにして設置される板状に形成され、しかも、プリント配線基板の電子部品実装部に対応する位置に開孔を有し、前記プリント配線基板に重ね合わせたときに前記プリント配線基板表面の前記電子部品実装部を除く部分全体を覆う部材である基板表面保護プレートとして機能することを特徴とする請求項5記載の基板押さえ部材を提供する。
請求項7に係る発明は、前記開孔は、前記基板保持搬送用治具の前記磁気吸引用部材に対応する部位を避けた位置に形成されていることを特徴とする請求項6記載の基板押さえ部材を提供する。
請求項8に係る発明は、前記プリント配線基板の外周部に対応する枠状に形成されていることを特徴とする請求項5記載の基板押さえ部材を提供する。
請求項9に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の前記基板設置面にプリント配線基板を押さえ込んだ請求項5〜8のいずれかに記載の基板押さえ部材の取り外しに用いる押さえ部材取り外し治具であって、前記基板押さえ部材に重ね合わせるようにして当接される当接面を有する当接部材を具備し、この当接部材の前記当接面の前記基板保持搬送用治具の前記永久磁石の磁極に対応する位置に前記永久磁石の磁極と同一の磁極を有することを特徴とする押さえ部材取り外し治具を提供する。
請求項10に係る発明は、前記基板保持搬送用治具の永久磁石の磁極に対応する磁極を形成する磁石が前記当接部材の複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項9記載の押さえ部材取り外し治具を提供する。
請求項11に係る発明は、請求項6又は7記載の基板押さえ部材を用いてプリント配線基板を請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の基板設置面に押さえ込んだ状態にて、前記電子部品実装部へのクリームはんだの印刷を行う際に、前記基板押さえ部材に重ね合わせるように設置して用いるメタルマスク版であって、前記基板押さえ部材の前記開孔以外の部分を非接触で収納する凹所パターンと、前記プリント配線基板の電子部品実装部の前記クリームはんだの印刷を行う領域に対応する孔パターンとが形成されていることを特徴とするメタルマスク版を提供する。
請求項12に係る発明は、プリント配線基板を、請求項5〜8のいずれかに記載の基板押さえ部材を用いて請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の基板設置面に押さえ込んで搬送することを特徴とする基板搬送方法を提供する。
請求項13に係る発明は、プリント配線基板を前記基板押さえ部材を用いて前記基板保持搬送用治具の基板設置面に押さえ込んだ状態で前記基板押さえ部材を取り外す押さえ解除位置まで前記基板保持搬送用治具とともに搬送し、前記押さえ解除位置にて請求項9又は10記載の押さえ部材取り外し治具を用いて前記基板押さえ部材を取り外すことを特徴とする請求項12記載の基板搬送方法を提供する。
請求項14に係る発明は、前記基板保持搬送用治具として、前記基板保持搬送用治具にその前記基板設置面に重ね合わすようにして設置されたプリント配線基板を前記基板設置面から離隔させる突き出しピンを挿入するためのピン挿入孔が貫設されているものを用い、前記基板押さえ部材の取り外しと同時あるいは基板押さえ部材の取り外し完了後に、前記ピン挿入孔に挿入した突き出しピンによってプリント配線基板を前記基板設置面から離隔させることを特徴とする請求項13記載の基板搬送方法を提供する。
請求項15に係る発明は、プリント配線基板に電子部品を実装してなる電子部品付き配線基板を製造するための電子部品付き配線基板の製造方法であって、前記電子部品付き配線基板を製造するためにプリント配線基板の電子部品実装部について行う製造工程であり、クリームはんだの印刷、電子部品のマウント、前記クリームはんだのリフローのうち、前記電子部品のマウントを含む1以上の工程を有し、この工程の1又は複数を請求項6〜8のいずれかに記載の基板押さえ部材を用いて請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の基板設置面にプリント配線基板を押さえ込んだ状態にて行うことを特徴とする電子部品付き配線基板の製造方法を提供する。
請求項16に係る発明は、前記工程として、前記プリント配線基板の電子部品実装部へのクリームはんだの印刷を含む1以上を有し、この工程のうちクリームはんだの印刷を、請求項6又は7記載の基板押さえ部材を用いてプリント配線基板を請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の基板設置面に押さえ込み、さらに、前記基板押さえ部材に請求項11記載のメタルマスク版を重ね合わせるように設置した状態にて行うことを特徴とする請求項15記載の電子部品付き配線基板の製造方法を提供する。
請求項17に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具が取り付けられる搬送アームと、この搬送アームを移動させるアーム移動装置とを具備し、プリント配線基板を前記搬送アームに取り付けられた前記基板保持搬送用治具と請求項5〜8のいずれかに記載の基板押さえ部材との間に挟み込んだ状態で搬送可能とされていることを特徴とする基板搬送装置を提供する。
請求項18に係る発明は、前記搬送アームに、前記基板保持搬送用治具を着脱可能に保持する治具保持部が設けられていることを特徴とする請求項17記載の基板搬送装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板保持搬送用治具と基板押さえ部材との間に作用する磁気吸引力によって基板保持搬送用治具と基板押さえ部材との間にプリント配線基板を挟み込むことで、弱粘着剤層の粘着力を高めなくてもプリント配線基板の反りを防止できる。しかも、基板保持搬送用治具の弱粘着剤層のサイズ(基板保持搬送用治具の基板設置面における弱粘着剤層の露出部分の面積)を小型化することができる。本発明に係る基板保持搬送用治具の弱粘着剤層は、基板保持搬送用治具の複数箇所に点在するように配置されており、前記磁気吸引力によってプリント配線基板の反りを防止できることから、基板設置面における弱粘着剤層の面積は小さくて済むため、治具からの基板の剥離による静電気の帯電を抑えることができる。弱粘着剤層の面積は小さくて済むことは、低分子量シロキサンの基板への転写(特にリフロー工程での転写)を防ぐ点でも有効である。
弱粘着剤層の粘着力によってプリント配線基板の基板保持搬送用治具の面方向への位置ずれを防止できることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施形態の基板保持搬送用治具の構造を示す図であって、(a)は正断面図、(b)は該治具の基板設置面上にプリント配線基板及び基板押さえ部材(基板表面保護プレート)を重ね合わせるようにして設置した状態を示す正断面図である。
【図2】図1の基板保持搬送用治具の弱粘着剤層及び永久磁石の付近を示す拡大断面図である。
【図3】(a)は本発明に係る基板押さえ部材(基板押さえ枠)の一例を示す斜視図、(b)は基板押さえ部材(基板押さえ枠)の別態様を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る基板押さえ部材(基板表面保護プレート)を示す斜視図である。
【図5】図1の基板保持搬送用治具の永久磁石の配置状態を示す平面透視図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明に係る基板保持搬送用治具に設けられる永久磁石の別態様を示す図である。
【図7】本発明に係るメタルマスク版を示す図であって、メタルマスク版を基板押さえ部材(基板表面保護プレート)上に重ね合わせるようにして設置した状態を示す正断面図である。
【図8】本発明に係る押さえ部材取り外し治具を説明する図であって、板状の当接部材を基板押さえ部材(基板表面保護プレート)に重ね合わせるようにして設置した状態を示す正断面図である。
【図9】図8の押さえ部材取り外し治具の構造を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は永久磁石付近を示す断面図である。
【図10】本発明に係る別態様の基板保持搬送用治具の構造を示す図であって、(a)は正断面図、(b)は該治具の基板設置面上にプリント配線基板及び基板押さえ部材(基板表面保護プレート)を重ね合わせるようにして設置した状態を示す正断面図である。
【図11】本発明に係る基板搬送装置の一例であるアーム式搬送装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)は本発明に係る基板保持搬送用治具10の一例を示す。
なお、図1(a)、(b)〜図3において、上側を上、下側を下として説明する。
また、後述の図4、図6(a)〜(c)、図7、図8、図9(b)、図10(a)、(b)、図11についても、上側を上、下側を下として説明する。
【0014】
この基板保持搬送用治具10(以下、単に治具とも言う)は、プリント配線基板1(以下、単に基板とも言う)に半導体素子、ICチップ等の電子部品を実装して電子部品付き配線基板を得る実装工程(電子部品付き配線基板の製造方法)における基板1の搬送に用いられるものであり、図1(a)、(b)に示すように、前記基板1が重ね合わせるようにして設置される基板設置面11を有するプレート状に形成されている。基板設置面11はプレート状の治具10の片面である。なお、治具10の基板設置面11とは反対側の面については、以下、底面15と称して説明する。
【0015】
前記基板1は、ここでは、フレキシブルプリント配線基板、板厚0.5mm以下の薄いリジットプリント配線基板といった、シート状のプリント配線基板である。
【0016】
図1(a)、(b)において、この基板保持搬送用治具10は、プレート状基材12の複数箇所に前記基板1を保持するための弱粘着剤層13と永久磁石14とを設けた構成になっている。
【0017】
プレート状基材12の材質としては、例えばガラスエポキシ等の樹脂材料、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム合金等の金属材料等を挙げることができる。このプレート状基材12の材質としては、クリームはんだのリフロー時の加熱温度にて強度等の特性を安定に維持できる耐熱性に優れるものを採用する。
【0018】
前記弱粘着剤層13は、プレート状基材12の片面(基板設置面11を形成する面。以下、上面とも言う。符号12a)から窪むように形成された凹所12b内に、プレート状基材12の上面12aに略面一になるようにして設けられている。この治具10の基板設置面11は、プレート状基材12の上面12aと弱粘着剤層13とによって形成されている。
前記凹所12bはプレート状基材12の上面12aの複数箇所(多数箇所)に形成されており、前記粘着剤層13は、プレート状基材12の上面12a側の複数箇所(多数箇所)に点在するようにして設けられている(図3参照)。
【0019】
永久磁石14(以下、単に磁石とも言う)は、プレート状基材12の複数箇所(多数箇所)に点在配置されている各弱粘着剤層13の前記基板設置面11とは反対の側に設けられている。
この磁石14は、前記凹所12bの底部の一部に形成された窪みである磁石収納部12c内に収納されており、該磁石14上を覆うように設けられている前記弱粘着剤層13によって磁石収納部12c内に押さえ込まれ凹所12bからの抜け出しが規制されている。
【0020】
なお、弱粘着剤層13は、例えば耐熱性の両面粘着テープや接着剤等の固定手段を用いることなどによってプレート状基材12に固定しておく。
【0021】
図2は前記弱粘着剤層13の一例を示す。
図示例の弱粘着剤層13は、具体的には、ガラスエポキシ層13aの両面に、弱粘着性樹脂を膜状(弱粘着性樹脂膜13b、13c)に設けたものである。この弱粘着剤層13は、両面の弱粘着性樹脂膜13b、13cの片方(図示例では符号13bの弱粘着性樹脂膜)がプレート状基材12の上面12aに略面一になるようにして前記凹所12bに収納して設けられている。ガラスエポキシ層13aの厚さは例えば100μm程度、ガラスエポキシ層13aの両面の弱粘着性樹脂膜13b、13cの厚さは例えば50〜100μm程度である。
【0022】
弱粘着剤層13の上面13d(図2の弱粘着性樹脂膜13bにあってはそのガラスエポキシ層13aとは反対側の面)は、プレート状基材12の上面12aと一致あるいは前記上面12aよりも僅かに下側(例えばプレート状基材12の上面12aから下方へ50μmまでの範囲)に位置している。つまり、弱粘着剤層13はプレート状基材12の上面12aから突出していない。弱粘着剤層13の上面13dがプレート状基材12の上面12aから僅かに下側に位置する構成であっても、基板1の僅かな撓みなどによって、弱粘着剤層13に対する基板1の接触、弱粘着剤層13による基板1の粘着保持を実現できる。
この構成であれば、基板設置面11に設置された基板1が基板設置面11全体に密着しやすくなり、基板1の基板設置面11からの浮き上がり部分の発生を防ぐ点で有利である。
弱粘着剤層13の粘着力(上面13dでの測定値。)は0.01〜0.10N/25mm(測定法:JIS Z 0237)であることが好ましい。
なお、本発明に係る治具10は、弱粘着剤層13が、プレート状基材12の上面12aから僅かに突出した構成も含む。
【0023】
図1(a)、(b)に示すように、この治具10は、基板1を、該治具10の磁石14によって磁気吸引可能な基板押さえ部材20と該治具10との間に挟み込むようにして保持した状態で、基板1の搬送に用いられる。
図3(a)、(b)、図4に、この基板押さえ部材20の具体例を示す。
【0024】
図3(a)、(b)に示す基板押さえ部材(区別のため、図3(a)の基板押さえ部材に図中符号20A、図3(b)の基板押さえ部材に符号20Bを付記する)は、矩形板状の治具10に配列設置された各弱粘着剤層13、磁石14の配列に対応する枠状に形成されている。以下、この基板押さえ部材20A、20Bを基板押さえ枠とも言う。
【0025】
図3(a)、(b)に示すように、基板1の複数箇所には、電子部品が実装される電子部品実装部1bが設けられている。図7に示すように、前記電子部品実装部1bには、半導体素子、ICチップ等の電子部品を基板1の回路配線と電気的に接続するためのパッド1c(電極)が設けられている。治具10における弱粘着剤層13及び磁石14の設置位置は、基板設置面11上に重ね合わされる基板1における電子部品実装部1bの設置位置を避けて、基板1において電子部品実装部1bが設けられていない領域(後述の押さえ代1a及び内側非実装領域1d)に対応している。
基板押さえ枠20A、20Bの形状も基板1において電子部品実装部1bが設けられていない領域(後述の押さえ代1a及び内側非実装領域1d)に対応している。
【0026】
図3(a)、(b)に示すように、基板1の外周部には、電子部品実装部1bが存在しない領域である押さえ代1aが確保されている。
また、基板1の前記電子部品実装部1bは、電子部品が実装される面(電子部品実装部1bが存在する面。以下、実装面とも言う)の押さえ代1aの内側の多数箇所に設けられているが、図示例の基板1は、矩形板状の該基板1の外周の互いに平行な2対の辺のうちの一対の2辺の間の中間部に該2辺に平行に延在するように、電子部品実装部1bが設けられていない領域1d(本明細書において内側非実装領域とも言う)が確保されており、前記電子部品実装部1bは押さえ代1aの内側にて前記内側非実装領域1dの両側に設けられている。
【0027】
図3(a)、(b)に示すように、前記治具10において前記弱粘着剤層13は、矩形板状の治具10の外周の四辺のそれぞれに沿って該弱粘着剤層13を配列設置した4本の列131(以下、外側列とも言う)と、互いに平行な2組の外側列131の一方(ひと組)の2本の外側列131の間の中間部に該2本の外側列131に平行となるように該弱粘着剤層13を配列設置してなる列132(以下、中間列とも言う)とを構成している。
前記4本の外側列131は基板1の押さえ代1aに対応して複数の弱粘着剤層13を配列設置したものであり、中間列132は基板1の内側非実装領域1dに対応して複数の弱粘着剤層13を配列設置したものである。
この実施形態の治具10は、磁石14を各弱粘着剤層13の下側に備えている構成であるため、磁石14は、弱粘着剤層13の設置位置に対応して、弱粘着剤層13と同様に配列設置されている。
【0028】
基板押さえ枠20A、20Bは、治具10の弱粘着剤層13が構成する4本の外側列131のそれぞれに対応する細長形状の4本の外側押さえ材部25a、25bからなる四角枠状の外枠部26a、26bの内側に、該外枠部26a、26bを構成する2対の外側押さえ材部25a、25bの一方(一対)の2本の外側押さえ材部25a、25bの長手方向中央部同士を橋絡するようにして該2本の外側押さえ材部25a、25bの間に架設状態に設けられた細長形状の中間押さえ材部27a、27bを具備する構成となっている。 基板押さえ枠20A、20Bの外枠部26a、26bは、基板1の外周部の押さえ代1aに対応する枠状に形成されている。そして、この基板押さえ枠20A、20Bは、外枠部26a、26bを基板1の前記押さえ代1aに重ね合わせると、中間押さえ材部27a、27bが基板1の前記内側非実装領域1dに重ね合わされるようになっている。
【0029】
既述のように、治具10の弱粘着剤層13の4本の外側列131、中間列132は、基板1の押さえ代1a及び内側非実装領域1dに対応して設けられており、この治具10を用いて基板1を保持、搬送する際、基板1は、その前記押さえ代1a及び前記内側非実装領域1dを治具10の弱粘着剤層13の4本の外側列131、中間列132に対応させて、治具10の基板設置面11に設置する。また、基板押さえ枠20A、20Bは、外枠部26a、26bを基板1の前記押さえ代1a上に重ね合わせるとともに、中間押さえ材部27a、27bを基板1の前記内側非実装領域1d上に重ね合わせるようにして、基板1の治具10とは反対側の面に当接設置する。
これにより、基板押さえ枠20A、20Bは、外枠部26a、26bを治具10の弱粘着剤層13の4本の外側列131、中間押さえ材部27a、27bを治具10の弱粘着剤層13の中間列132にそれぞれ対応する位置に配置した状態で、治具10への基板1の押さえ込みに用いられる。
【0030】
図3(a)に例示した基板押さえ枠20Aはその全体が磁性体(例えば鉄、ステンレス(例えばSUS430)等の金属製磁性体)によって形成されており、治具10の基板設置面11に重ね合わせるようにして設置された基板1の治具10とは反対側に当接設置することで、治具10の磁石14によって磁気吸引されて基板1を治具10に押さえ込むようになっている。
【0031】
図3(b)に例示した基板押さえ枠20Bは、プラスチック等の非磁性材料によって形成された枠本体21の複数箇所に、治具10の磁石14との間に磁気吸引力を発生する永久磁石22(以下、押さえ部材磁石とも言う)を固定した構成になっている。この押さえ部材磁石22は、基板押さえ枠20Bを治具10の基板設置面11に設置した基板1上に当接設置したときに治具10の複数箇所に設けられている各磁石14に対応するように枠本体21の複数箇所に設けられている。また、この基板押さえ枠20Bにおいて、前記押さえ部材磁石22は、治具10の磁石14との間に磁気吸引力を発生するために、治具10の磁石14の磁極に対応する位置に前記磁石14とは反対の極性の磁極を有している。
【0032】
上述の基板押さえ枠20A、20Bは、基板1の押さえ代1a及び内側非実装領域1dに対応する形状に形成されているため、基板1の電子部品実装部1bとの接触を避けて、治具10への基板1の押さえ込みを実現できる。
また、基板押さえ枠20A、20Bは、外枠部26a、26b以外に、該外枠部26a、26bの内側に設けられた中間押さえ材部27a、27bを具備しており、この中間押さえ材部27a,27bによって基板1の中央部の治具10への押さえ込みも実現できる。このため、サイズが大きい基板1の治具10への押さえ込みにも好適に用いることができる。
【0033】
なお、本発明に係る基板押さえ枠としては、例えば中間押さえ材部27a,27bを具備していない構成も採用可能である。
図示例の基板押さえ枠20A、20Bは、外枠部26a、26bの内側に中間押さえ材部27a,27bを一本のみ具備する構成になっているが、基板1の内側非実装領域1dの数が複数である場合は、例えば基板1の内側非実装領域1dの数と同数の中間押さえ材部27a,27bを各内側非実装領域1dに対応する位置に具備する構成としても良い。例えば、基板1の前記押さえ代1aの内側に2本の内側非実装領域1dが互いに交差する十字状に設けられている場合は、基板押さえ枠としても2本の中間押さえ材部が互いに交差する十字状に設けられている構成(換言すれば十字状の中間押さえ材部を具備する構成)とすることが可能である。
但し、中間押さえ材部の本数は、必ずしも内側非実装領域1dの数と同数である必要はなく、内側非実装領域1dの数よりも少なくても良い。
また、中間押さえ材部27a,27bの位置は、基板1における押さえ代1aと内側非実装領域1dとの位置関係に対応して適宜変更可能であることは言うまでも無い。
【0034】
図4に例示した基板押さえ部材20は、ステンレス等の磁性体金属からなる1枚のシート状部材の複数箇所に、基板1の電子部品実装部1bに対応する開孔23(孔)を形成した構成のもの(基板押さえ部材20C)である。この基板押さえ部材20Cは、基板1の複数の電子部品実装部1bに対応する開孔パターンを有している。
【0035】
図4に例示した基板押さえ部材20Cは、治具10の基板設置面11上に設置した基板1上に重ね合わせるようにして設置することで、開孔23によって基板1の電子部品実装部1bを露出させ、基板1の電子部品実装部1b以外の部分を覆った状態とすることができる。また、治具10の磁石14が基板押さえ部材20Cを磁気吸引することで、この基板押さえ部材20Cによって基板1を治具10の基板設置面11に押さえ込んで保持した状態で、基板1の搬送を行うことができる。以下、この基板押さえ部材20Cを基板表面保護プレートとも言う。
【0036】
前記基板表面保護プレート20Cは、既述のように、開孔23によって基板1の電子部品実装部1bを露出させ、基板1の電子部品実装部1b以外の部分を覆った状態とすることができるため、例えば、電子部品実装部1b上への実装部品(電子部品)の設置(マウント)といった工程を行う際に、磁気吸引力によって治具10に基板1を押さえ込むための基板押さえ部材として使用することで、基板1の電子部品実装部1b以外の部分を保護できる。このため、例えば基板1に電子部品をマウントするマウント工程にて基板1に電子部品が衝突した時に生じるはんだの飛散やリフロー工程におけるフラックスの付着といった不都合を防止することができる。
また、この基板表面保護プレート20Cを用いて治具10に基板1を押さえ込んだ状態にて、電子部品実装部1bに印刷して設けたクリームはんだのリフローするリフロー工程を行うことで、リフロー時に弱粘着剤層13の弱粘着性樹脂から発生するアウトガス(低分子量シロキサン)が基板1に付着して電気的信頼性に影響を与えるといった不都合を抑えることができるといった利点がある。
【0037】
一方、図3(a)、(b)に例示した基板押さえ枠20A、20Bは、基板外周部の押さえ代1aを治具10に押さえ込んで基板1の位置ずれを防止できるものであり、例えば基板1にレジストパターンを形成する工程(実装工程の一部。樹脂膜の形成、露光等)等において利用することができる。
また、この基板押さえ枠20A、20Bは、例えば、治具10に基板1を押さえ込んだ基板表面保護プレート20C上に設置して、基板表面保護プレート20Cの外周部を治具10に押さえ込んで治具10に対する基板表面保護プレート20Cの位置ずれを確実に防止すること等にも利用できる。
【0038】
この治具10は、基板1の電子部品実装部1bに電子部品を実装する実装工程(電子部品付き配線基板の製造方法)において基板1の搬送(基板搬送方法)に使用できるものであり、図1(a)、(b)に示すように、該治具10上に重ね合わせるようにして設置された基板1上に基板押さえ部材20を設置し、磁気吸引力を作用させた前記基板押さえ部材20によって基板1を基板設置面11に押さえ込んで保持できるため、例えばリフロー工程等にて生じる基板1の反りを抑えることができる。
【0039】
また、基板1は、治具10の弱粘着剤層13の粘着力によっても保持されるため、治具10に対する基板設置面11に沿う方向への基板1の位置ずれを防止できる。
特に、図4に例示した基板表面保護プレート20Cを用いて治具10に基板1を押さえ込んだ状態にて基板1を搬送する場合は、この基板1の電子部品実装部1b以外の全ての面積を保持することが可能となるため、基板設置面11に沿う方向への基板1の位置ずれ防止により有効である。
【0040】
既述のように基板表面保護プレート20Cの開孔23は基板1の複数の電子部品実装部1bに対応するように基板表面保護プレート20Cの複数箇所(多数箇所)に形成されている。また、図4に示すように、この基板表面保護プレート20Cの開孔23は、治具10の磁石14(図4において弱粘着剤層13の下側に位置する磁石14)に対応する部位を避けた位置に形成されている。図5に示すように、磁石14は、治具10の基板設置面11に沿う方向における多数箇所に点在するように設けられている。治具10の基板設置面11に設置される基板1は、その電子部品実装部1bが治具10の磁石14上を避けた位置となるように位置決めして基板設置面11に設置される。
【0041】
このため、基板表面保護プレート20Cは、開孔23以外の部分が基板1を介して治具10の磁石14に対面する位置に配置されるのであり、したがって、治具10の基板設置面11に沿う方向における多数箇所に点在するように設けられている磁石14によって基板表面保護プレート20Cの多数箇所が磁気吸引される。その結果、基板表面保護プレート20Cはその片面全体が基板1にしっかりと押し付けられるようになり、これにより治具10の基板設置面11に対する基板1の浮き上がり箇所を容易に解消することができ、基板1の電子部品実装部1b以外の全ての面積を保持することが可能である。
【0042】
治具10の磁石14により発生する磁気吸引力は基板設置面11に沿う方向への基板1の位置ずれ抑制には直接的には殆ど寄与しない。しかしながら、この治具10にあっては、弱粘着剤層13の粘着力によって、治具10の基板設置面11に沿う方向への基板1の位置ずれを防止できるため、基板1の電子部品実装部1bへの電子部品の正確なマウント、接合を可能とする。
【0043】
また、図1(a)、(b)に示すように、この治具10は、磁石14が、プレート状基材12の多数箇所に点在配置されている各弱粘着剤層13の前記基板設置面11とは反対の側に設けられている構成であるため、前記基板押さえ部材20に働く磁気吸引力が基板1を弱粘着剤層13に押し付ける押し付け力として作用する。この結果、基板1を弱粘着剤層13に確実に押し付けることができるから、弱粘着剤層13の粘着力による基板設置面11に沿う方向への基板1の位置ずれをより確実に防止できるといった利点がある。
【0044】
このように、基板1を弱粘着剤層13に確実に押し付けることができる構成であれば、弱粘着剤層13の粘着力を基板設置面11に沿う方向への基板1の位置ずれ防止に有効に機能させることができため、弱粘着剤層13のサイズ(基板設置面11の面方向に露出する面の面積)を小さく抑えることができる。
その結果、弱粘着剤層13を形成するための弱粘着性樹脂の使用量を抑えることができ、リフロー時に弱粘着剤層13の弱粘着性樹脂から発生するアウトガス(低分子量シロキサン)の発生量を少なく抑えることができるといった優れた効果が得られる。
【0045】
また、治具10から基板1を離脱(剥離)させる際の静電気の発生も非常に低いレベルに抑えることができる。
本発明者の検証では、基板設置面全体が弱粘着剤層となっている治具を用意し該治具から基板1を離脱(剥離)させた際の静電気を計測したところ計測値は30kV程度であったが、弱粘着剤層を上述のように点在配置した構成の治具10では基板1を離脱(剥離)したときの静電気の計測値を10V以下にまで低下させることができた。
【0046】
また、この治具10によれば、その基板設置面11に重ね合わせるように設置した基板1上に基板押さえ部材20を設置するだけで、治具10と基板押さえ部材20との間に作用する磁気吸引力によって治具10と基板押さえ部材20との間に基板1を挟み込むようにして保持できるため、既述の検討例の構成に比べて、基板1の搬送に要する手間は格段に軽減できる。また、検討例の位置決めピンのような精密加工部品は不要であり、基板への精密な孔加工等も必要無い。これにより、基板1の反りの抑制及び搬送用の治具10に対する位置ずれ防止を容易に実現できる。
【0047】
ここでは、基板1表面にフォトレジスト膜(樹脂膜)を形成した後、フォトレジスト膜の露光工程を基板1のフォトレジスト膜に重ね合わせたネガフィルム及び基板1を図3(a)、(b)に例示した基板押さえ枠20A、20Bを用いて治具10に押さえ込んだ状態で行い、次いで、図4に例示した基板表面保護プレート20Cを用いて治具10に基板1を押さえ込んだ状態を維持したまま、クリームはんだの印刷、電子部品のマウント(設置)、前記クリームはんだのリフローといった工程を行う製造方法を例示する。
クリームはんだの印刷、電子部品のマウント(設置)、前記クリームはんだのリフローは、図4に例示した基板表面保護プレート20Cを用いて治具10に基板1を押さえ込んだ状態を維持したまま行うので、本発明に係る基板搬送方法を実施することとなる。
なお、基板1表面にフォトレジスト膜(樹脂膜)を形成するための樹脂材料の塗布、塗布した樹脂材料の固化によるフォトレジスト膜の形成も図3(a)、(b)に例示した基板押さえ枠20A、20Bを用いて治具10に押さえ込んだ状態で行っても良いことは言うまでも無い。
【0048】
また、本発明に係る電子部品付き配線基板の製造方法は、治具10と基板押さえ部材20との間に基板1を挟み込んだ状態(基板押さえ部材20によって基板1を治具10に押さえ込んだ状態)にて基板1を搬送(工程間での基板1の搬送)する工程(基板搬送方法)を含んでいても良いことは言うまでも無い。
基板1の搬送は、ベルトコンベア等のコンベア装置(基板搬送装置)による搬送、搬送アームに保持した状態での搬送(アーム式搬送装置(基板搬送装置)のアームによる搬送)等を挙げることができる。治具10と基板押さえ部材20との間に基板1を挟み込んだ状態で搬送することで、治具10に対する基板1の位置ずれ(基板設置面11に沿った方向での位置ずれ)を防止することができる。
【0049】
搬送アームによる搬送は、例えば、図11に示すように、前記治具10を着脱可能に保持する治具保持部が設けられている搬送アーム42をアーム移動装置41によって移動する構成の基板搬送装置40を用いる。ここで搬送アーム42は、四角枠状のアーム本体42aの片面側の外周の複数箇所に治具10を位置決めするための位置決め突起42bが突設されており、これら位置決め突起42bによって取り囲まれる内側に嵌め込むように配置された治具10を搬送アーム42に保持するための板ばね42cが前記治具保持部として前記アーム本体42aに取り付けられている構成になっている。この搬送アーム42に対する治具10の着脱は作業者が手作業にて行えるようになっている。なお、搬送アーム、治具保持部の具体的構成は上述のものに限定されない。治具保持部としては、前記治具を搬送アームに着脱可能に保持できる構成のものであればよく、例えばクリップ状のもの、治具に係脱可能に係合する係合片を利用したもの等、各種構成を採用できる。
また、本発明に係る基板搬送装置は、搬送アームに治具10が固定されている構成の基板搬送装置も含む。
【0050】
基板搬送用の治具(例えば特許文献1記載のもの)や、この治具に基板1を押さえ込むために使用するプレートとしては、クリームはんだをリフローするリフロー工程における温度プロファイルの差の縮小、基板1に与えられる熱ストレスの軽減に鑑みて、熱容量が小さいものを使用することが好ましい。
この点、本発明に係る治具10、基板表面保護プレート20Cのうち、特に基板表面保護プレート20Cは熱容量を小さく抑えることに有利である。
【0051】
例えば、周知技術として、基板搬送用のプレート(以下、搬送用プレート)上に設置した基板上に重ね合わせた金属カバーの自重によって搬送用プレートに対する基板の反りを防止する技術(以下、自重式基板押さえ法とも言う)が存在するが、この技術にあっては金属カバーの重量を確保する必要から金属カバーとして板厚が大きいものを使用せざるを得ず、熱容量を小さくすることには限界がある。金属カバーとしては、例えば板厚1.0mm程度のステンレスプレートが使用されるが、リフロー工程にて金属カバーの加熱に時間が掛かるため、リフロー工程の設定温度を高くしたり、搬送用プレートの搬送速度の送り速度を遅くする等の対応を取る必要があり、基板の熱ストレスのみならず、生産性にも影響を与える。
また、この金属カバーは、基板の電子部品実装部1bに対応する開孔を有しているものの、板厚が大きいため、はんだ印刷、電子部品のマウントの妨げとなる。このため、この金属カバーの取り付けはリフロー工程の直前に行う必要があり、専属の人員を配して生産ラインから一度取り出して取り付け作業を行わざるを得ず、したがって、生産性の低下、人件費の増加を余儀なくされ生産コストの圧縮が困難であるのが実情である。
【0052】
これに対して、本発明に係る基板表面保護プレート20Cは、既述のように、治具10の基板設置面11に沿う方向における多数箇所に点在するように設けられている磁石14によってその多数箇所が磁気吸引される結果、基板1全体を治具10の基板設置面11に押し付けることができる構成であるから、金属カバーの自重を利用して搬送用プレートに基板を押さえ込む構成に比べて、その板厚を薄くすることが可能であり、したがって熱容量を小さくすることができる。
【0053】
基板表面保護プレート20Cとしては、例えば板厚0.01〜0.30mm程度、望ましくは板厚0.05mmの磁性材料(SUS430)を用いることができる。このように板厚が小さく熱容量を抑えた基板表面保護プレート20Cを用いることにより、リフロー工程における温度プロファイルの差の縮小、基板1に与えられる熱ストレスの軽減を容易に実現できる。これにより、リフロー工程における温度プロファイルの差は1〜2℃程度に抑えられ、従来のリフロー条件での半田接合が可能となり、熱ストレス及び生産性の問題を改善することができる。したがって、上述の自重式基板押さえ法に比べてリフロー工程の設定温度を高くしたり、搬送用プレートの搬送速度の送り速度を遅くする等の対応を取る必要が無く、電子部品付き配線基板の生産性を容易に高めることができる。
また、既述の金属カバーに比べて板厚を格段に薄くできるため、はんだ印刷、部品マウントの妨げにならず、基板表面保護プレートを取り付けた状態で工程に流すことができ、従来の人員での作業が可能となる。その結果、生産性の向上、人件費の圧縮を容易に実現でき、生産コストの低コスト化を図ることができる。
【0054】
図1(a)、(b)に示すように、図示例の治具10の磁石14は、基板設置面11に設置される基板1側の面に互いに異なる磁極の対(N極(図中N)とS極(図中S))を有している。
本発明に係る治具の磁石としては、図6(a)に示すように、互いに異なる一対の磁極の一方が基板側の面(上面16a)、他方が前記上面16aとは反対側の面(下面16b)に位置する構成の磁石16(永久磁石)も採用可能であるが、この磁石16に比べて図1(a)、(b)に例示した治具10の磁石14のように基板設置面11に設置される基板1側の面に互いに異なる磁極を有している構成である方が、基板1側の表面の磁力を高めることができ、基板押さえ部材20に作用させる磁気吸引力を高めることができる。
【0055】
図6(a)に例示した磁石16の場合は、磁界が上面16aから下面16bへと発生するのに対し、図1(a)、(b)に例示した治具10の磁石14の場合はその基板側の面の異極間にて磁界が生じる。このため、図6(a)に例示した磁石16に比べて図1(a)、(b)に例示した治具10の磁石14の方が、基板押さえ部材20に作用させる磁気吸引力を高めることができる。
つまり、図6(a)に例示した磁石16のように、永久磁石に設けた磁極が上下で異なる場合、その磁力は磁石上面より下面へと発生するため分散してしまうのに対し、図1(a)、(b)に例示した磁石14のようにその基板側の面の互いに離隔した位置に互いに異なる磁極を有する構成であれば、永久磁石より発せられる磁力が治具表面の異極間に発生するため磁力を分散させる事がない。その結果、治具に生じる磁力を基板押さえ部材20に効率良く作用させることができ、基板の反りの抑制をより容易に実現できる。また、磁石の小型化も容易となる。
【0056】
本発明者は、外形サイズが同じ磁石14、16を用意して、治具と基板表面保護プレート20Cとの間に発生する保持力(磁気吸引力)を計測した所、図6(a)の構成の磁石16の場合に0.6Nであった保持力を図1(a)、(b)の構成の磁石14を用いた場合に1.2Nにアップさせることができた。
【0057】
治具に設ける磁石(永久磁石)としては、図6(b)、(c)に例示する磁石17、18のように、基板1側の面17a、18a(上面)に互いに異なる磁極の対を有し、さらに、前記上面17a、18aとは反対の下面17b、18bに、上面17a、18a側の磁極とは反対の極性の複数の磁極を有する構成のものも採用可能である。
図6(b)に例示した磁石17は、具体的には、上下方向(図6(b)において上下)両端が互いに反対の極性の磁極となっている磁石171、172を横並びに複数(図示例では2つ)連接して構成したもの(磁石ユニット)である。
また、本発明は、図6(c)に例示した磁石のように、基板1側の面(上面18a)に一対の磁極(極性が互いに異なる磁極)を有し、かつ、前記上面18aとは反対側の面(下面18b)の上面18a側の一対の磁極に対応する位置に、それぞれ前記上面18a側の一対の磁極とは逆の極性の磁極を有する構成の磁石18も採用可能である。下面18b側の一対の磁極は、この磁石18の上面18aの中央部を介して両側に互いに離隔させて設けられている一対の磁極に対応して、下面18bの中央部を介して両側に互いに離隔させて設けられている。
【0058】
但し、図6(c)に例示した磁石18に比べて、図6(b)に例示した磁石17の方が、基板1側の面(上面)の異極間の中間部位における磁力の確保に有利であるため、その分、基板側の面(上面)における磁力を高める点で有利である。
図6(c)に例示した磁石18は、上面18a側の一対の磁極間に極性を持たないエリアが存在するのに対して、図6(b)に例示した磁石17(磁石ユニット)はその上面17a側の一対の磁極間に極性を持たないエリアが存在しない。このため、図6(b)に例示した磁石17(磁石ユニット)は、図6(c)の磁石18に比べて基板側の面(上面)における磁力を高める点で有利である。
なお、図6(c)に例示した磁石18は、上下方向(図6(c)において上下)のみならず、基板設置面に沿った方向にも互いに異なる極性の磁極の対が存在する構成であり、この構成により図6(a)に例示した磁石16に比べて治具厚み方向における磁界が働く距離が長く得られ、磁力の増強に有利である。
【0059】
(メタルマスク版)
図7は、基板1の電子部品実装部1bにクリームはんだを印刷する工程(クリームはんだ印刷工程)にて使用するメタルマスク版30を説明する断面図である。
図7は、治具10の基板設置面11上に載置した基板1上に重ね合わせるように設置した基板表面保護プレート20C上にメタルマスク版30を重ね合わせた状態を示す。図7において、基板表面保護プレート20Cは基板1上に重ね合わせるようにして設置され、メタルマスク版30は前記基板表面保護プレート20C上に重ね合わせるようにして設置されている。
【0060】
前記メタルマスク版30は、例えばSUS304等の非磁性材料(非磁性金属)によって形成された板状部材であり、このメタルマスク版30には、前記基板表面保護プレート20Cの開孔23以外の部分を収納する凹所パターン31と、前記基板1の電子部品実装部1bにおけるクリームはんだ印刷領域(クリームはんだを印刷する領域。処理対象領域)に対応する複数の孔32からなる孔パターンとが形成されている。
基板1の電子部品実装部1bにおけるクリームはんだ印刷領域は電子部品実装部1bの一部である。図7において、クリームはんだ印刷領域は具体的には基板1の前記電子部品実装部1b上に設けられたパッド1c上の領域である。図7では、パッド1cをひとつのみ図示しているが、ひとつの電子部品実装部1bにはパッド1c(換言すればクリームはんだ印刷領域)が複数存在する。メタルマスク版30の孔32は電子部品実装部1bのパッド1cに対応して、このパッド1cの上面(基板1とは反対側の面)に対応する大きさに形成されている。
基板表面保護プレート20Cの開孔23は電子部品実装部1b全体を露出させることができる大きさであり、メタルマスク版30の孔32は基板表面保護プレート20Cの開孔23に比べて小さいサイズ(平面視のサイズ)に形成されている。
なお、本発明に係る基板の電子部品実装部1bとしてはひとつの電子部品実装部1bにパッド1cがひとつのみ存在する構成も含む。
【0061】
このメタルマスク版30は、基板1の電子部品実装部1b以外の部位を覆ってクリームはんだ印刷領域のみを露出させることができるため、このメタルマスク版30を治具10上の基板1及び該基板1上の基板表面保護プレート20Cに重ね合わせるように設置した状態にてクリームはんだ印刷工程を行うことで、基板1の回路配線へのクリームはんだの付着を防ぐことができるといった利点がある。メタルマスク版30は、クリームはんだ印刷工程の完了後、治具10上から撤去する。
【0062】
なお、このメタルマスク版30を用いたクリームはんだ印刷工程は治具10上の基板1上に基板表面保護プレート20Cを設置することなくメタルマスク版30のみを設置した状態で行うことも可能であるが、このメタルマスク版30は、基板1上の基板表面保護プレート20Cに重ね合わせるように設置することで、クリームはんだ印刷工程の完了後にメタルマスク版30を撤去するだけで、基板表面保護プレート20Cによって基板1を治具10に押さえ込んだ状態のまま次工程(例えばマウント工程)に移行できるため、治具10に対する基板1の位置ずれ防止の点で好ましい。
【0063】
前記メタルマスク版30の凹所パターン31は、このメタルマスク版30を形成する金属板材をハーフエッチングして形成したハーフエッチングパターンであり、図7に示すように基板表面保護プレート20Cの開孔23以外の部分を非接触で収納するべく、基板表面保護プレート20Cの開孔23以外の部分に比べて若干大きいサイズに形成されている。
メタルマスク版30の凹所パターン31は、図1(b)に示すように、治具10の基板設置面11上に載置した基板1上に重ね合わせるように設置した基板表面保護プレート20Cに基板1に対する微小な浮き上がり部分が生じた場合でも、基板表面保護プレート20Cの開孔23以外の部分を非接触で収納できる大きさに形成される。これにより、基板表面保護プレート20Cの部分的な浮き上がりや撓み、形成精度等に関係なく、基板1の複数のクリームはんだ印刷領域に対するメタルマスク版30の各孔32の位置決め精度を容易に確保することができる。この結果、クリームはんだ印刷領域に対するクリームはんだの印刷精度も容易に確保できる。
【0064】
なお、メタルマスク版30は、磁性金属板からなるものであっても良いが、基板表面保護プレート20Cに対する着脱作業を容易にする点、着脱作業における基板表面保護プレート20Cの位置ずれ防止の点で、既述のように、例えばSUS304等の非磁性材料(非磁性金属)によって形成された板状部材であることが好ましい。
また、メタルマスク版としては、孔パターンや凹所パターン31の形成精度を確保できるものであれば非磁性金属板からなるものに限定されず、例えばプラスチック製のもの等も採用可能である。
【0065】
前記基板表面保護プレート20Cは、フォトレジスト膜の形成後、クリームはんだ印刷工程の前に、治具10上の基板1に重ね合わせるようにして設置する。そして、既述のように、この基板表面保護プレート20C上にメタルマスク版30を設置してクリームはんだ印刷工程を行った後、メタルマスク版30を取り外し、基板表面保護プレート20Cによって基板1を治具10に押さえ込んだ状態(図1(a)、(b)に示す状態)を維持したまま、電子部品をマウントするマウント工程、次いでリフロー工程を行い、基板表面保護プレート20Cと治具10との間に基板1を挟み込んだユニット(基板保持ユニット)を基板搬送装置によって基板表面保護プレート20Cを取り外す押さえ解除位置まで搬送する。
なお、リフロー工程を行うリフロー炉から押さえ解除位置に至るまでに、実装部品(電子部品)の外観検査等を行うことが可能である。
【0066】
図1(a)、(b)に示すように、リフロー工程では、基板表面保護プレート20Cによって基板1を治具10に押さえ込んでいるため、加熱による基板1の反りを防止することができる。また、基板1を治具10に押さえ込む基板表面保護プレート20Cによって基板1の電子部品実装部1b以外の部位が覆われた状態にあるため、リフロー炉内面に付着あるいはリフロー炉内の雰囲気中に飛散しているフラックスやはんだが基板1の電子部品実装部1b以外の部位に付着することを防止することができる。
また、既述のように弱粘着剤層から放出される低分子量シロキサンの基板1(電子部品実装部1b以外の部位)への転写を基板表面保護プレート20Cによって防ぐことができ、低分子量シロキサンの付着による影響(特に電気的信頼性に与える影響)を非常に小さく抑えることができる。
【0067】
また、既述の治具10を使用した基板保持ユニットにあっては、治具10の磁石14によって基板1が弱粘着剤層13に押し付けられることから、治具10に点在配置された弱粘着剤層13のサイズを小型化できるため、弱粘着剤層からの低分子量シロキサンの放出量を抑制できることも、基板1への低分子量シロキサンの付着による影響を抑えることに有効に寄与する。低分子量シロキサンの放出量を抑制できることは、リフロー炉内の換気や排気処理を簡易なものにすることができ、炉内の温度プロファイルの安定維持、電子部品付き配線基板の生産コストの低減の点でも有効である。
【0068】
(押さえ部材取り外し治具)
図8、図9(a)、(b)は、基板表面保護プレート20Cの取り外し作業に使用する押さえ部材取り外し治具50(以下、単に、取り外し治具とも言う)の一例を示す。
図8、図9(a)、(b)に示すように、この取り外し治具50は、基板表面保護プレート20Cに重ね合わせるようにして当接される当接面51aを有する当接部材51の前記治具10の磁石14に対応する複数箇所に永久磁石52(以下、取り外し用磁石とも言う)が固定されているものである。
【0069】
当接部材51としては、例えばガラスエポキシ材等の樹脂製部材、非磁性金属製部材等が用いられる。図示例では当接部材51は板状のものを採用しているが、当接部材51としては当接面51aを有するものであれば良く、板状のものに限定されない。
前記取り外し用磁石52は当接部材51に固定して前記当接面51aに露出、あるいは当接部材51からの脱落を防止するために当接面51a側に設けられた耐熱片面粘着テープ(図示略)に覆われた状態で当接部材51に取り付けられている。また、この取り外し用磁石52は、前記治具10の磁石14の磁極に対応する位置に該磁極と同一の磁極を有している。これにより、この取り外し治具50は、その当接面51aの、治具10の磁石14の磁極に対応する位置に該磁極と同一の磁極を有する構成となっている。
【0070】
この取り外し治具50は、その当接面51aを基板表面保護プレート20Cに重ね合わせるようにして当接(あるいは接近配置)すると、基板表面保護プレート20Cを治具10の磁石14に対して反発させることができ、これにより基板表面保護プレート20Cの取り外し作業を楽に行えるようにするものである。
図8に示すように、例えば、仮に、取り外し用磁石52としてサイズ、磁力が治具10の磁石14と同一のものを使用した場合、取り外し治具50の当接面51aを基板表面保護プレート20Cに重ね合わせるようにして当接させると、取り外し用磁石52は基板表面保護プレート20Cに直接当接あるいは耐熱片面粘着テープを介して近接配置されるのに対し、治具10側の磁石14と基板表面保護プレート20Cとの間には治具10の弱粘着剤層13及び基板1が介在しているため、取り外し用磁石52と基板表面保護プレート20Cとの間の距離に比べて治具10側の磁石14と基板表面保護プレート20Cとの間の距離の方が格段に大きい。磁石の磁力は距離の二乗に反比例する(距離の二乗に比例して弱くなる)ため、取り外し用磁石52が基板表面保護プレート20Cに及ぼす磁力が治具10の磁石14の磁力に勝り、基板表面保護プレート20Cを治具10の磁石14に対して反発させることができる。基板表面保護プレート20Cを治具10の磁石14に対して反発した状態で、取り外し治具50を上昇させると、基板表面保護プレート20Cが取り外し治具50の取り外し用磁石52に磁気吸着された状態で取り外し治具50一体的に上昇して基板1から離隔して取り外されることとなる。基板1は、治具10の弱粘着剤層13の粘着力によって治具10側に保持された状態が維持されるため、基板表面保護プレート20Cのみが取り外されることとなる。
【0071】
この取り外し治具50を用いれば、基板表面保護プレート20Cを基板1上から垂直上方へ上昇させるようにして取り外すことができる。このため、基板表面保護プレート20Cを基板1の電子部品実装部1bに実装されている実装部品(電子部品)に接触させることなくしかも楽に取り外すことができ、取り外しの作業性の向上に寄与する。
図9(a)に示すように、この取り外し治具50は当接部材51の両側に突設された取っ手53を具備しているため、作業者の手作業による取り外し治具50の操作性が良好であり、基板表面保護プレート20Cを基板1の電子部品実装部1bに実装されている実装部品(電子部品)に接触させることなく取り外す作業を効率良く行える。
【0072】
なお、この取り外し治具50を用いた基板表面保護プレート20Cの取り外し作業は、基板表面保護プレート20Cを治具10の磁石14に対して反発させることで実現されるものであるため、必ずしも、取り外し治具50を基板表面保護プレート20Cに重ね合わせる必要は無い。但し、上述のように、基板表面保護プレート20Cを基板1の電子部品実装部1bに実装されている実装部品(電子部品)に接触させることなく基板表面保護プレート20Cの取り外し作業を行うには、取り外し治具50を基板表面保護プレート20Cに重ね合わせて取り外し作業を行うことが有利である。
また、取り外し作業を確実に行う点では、取り外し用磁石52としてその磁力が治具10の磁石14の磁力よりも強いものを用いることが望ましい。
また、この取り外し作業は、取り外し治具を昇降させる装置を用いて自動化することも可能である。
【0073】
押さえ解除位置に搬送した基板保持ユニットは、上述の取り外し治具50を用いて基板表面保護プレート20Cを取り外す。
また、図8に示すように、治具10のプレート状基材12の厚み方向に貫設されたピン挿入孔12dに治具10の基板設置面11とは反対側の底面15側から突き出しピン19を挿入することで、基板1を基板設置面11から楽に離隔(剥離)させることができる(図8以外では図示略)。基板1を基板設置面11から離隔(剥離)させる作業は、取り外し治具50を用いた基板表面保護プレート20Cの取り外し作業の完了後であっても良いが、この基板表面保護プレート20Cの取り外し作業と同時に行うことも可能である。
例えば、基板保持ユニットを図8に示す状態から上下反転させ、治具10が基板1の上側となる向きにした状態で、基板1を突き出しピン19を用いて治具10の基板設置面11から離隔(剥離)させる作業と、基板表面保護プレート20Cに当接させた取り外し治具50の下降とを同時に行うことで、治具10の基板設置面11から離隔(剥離)させた基板1を取り外し治具50と一体的に下降する基板表面保護プレート20C上に支持することができ、治具10から離隔(剥離)させた基板1の回収を楽に行うことができ、作業時間の短縮も容易に実現できる。
【0074】
(基板保持搬送用治具の別態様)
本発明に係る治具としては、図10(a)、(b)に例示する構成のものも採用可能である。図10(a)、(b)に例示した治具10Aは、磁石14を、プレート状基材12の複数箇所(多数箇所)に点在配置されている各弱粘着剤層13の前記基板設置面11とは反対の側ではなく、プレート状基材12の上面12aと略面一になるようにしてプレート状基材12に取り付けた点が、既述の図1(a)、(b)に例示した治具10と異なる。磁石14の配置以外の構成は既述の治具10と同様である。この治具10Aの基板設置面11Aは、プレート状基材12の上面12aと磁石14の上面14a(あるいは、磁石14の上面14aを覆うように設けられた耐熱片面粘着テープ(後述))によって形成される。
【0075】
治具10Aにおける前記磁石14の設置位置は、基板設置面11Aに重ね合わせるようにして設置される基板1の押さえ代1a及び内側非実装領域1dに対応する範囲に設定される。
したがって、基板1の保持、搬送にこの治具10Aを使用する場合、基板押さえ部材としては、磁石14が各弱粘着剤層13の前記基板設置面11とは反対の側に設けられている構成の既述の治具10にて使用可能なものを採用できる。
【0076】
磁石14は、例えば該磁石14の上面14aと該磁石14の周囲に位置するプレート状基材12の上面12aとにわたって貼付した耐熱片面粘着テープ等を用いてプレート状基材12から脱落しないように取り付けられる。また、磁石14は、その上面14aがプレート状基材12の上面12aと面一あるいは前記上面12aから僅か(例えば数μm)に下側に位置するように設けられる。
【0077】
この治具10Aによれば、弱粘着剤層13のみならず、磁石14も、プレート状基材12の上面12a付近に設けた構成であるため、図1(a)、(b)に例示した治具10に比べてプレート状基材12の板厚を薄くすることが容易である。プレート状基材12の板厚を薄くすることで熱容量を小さく抑えることができる。その結果、リフロー工程における温度プロファイルの差の縮小、基板1に与えられる熱ストレスの軽減を容易に実現でき、低コストで、電子部品付き配線基板の生産性を容易に高めることができる。
【0078】
但し、治具に点在配置された弱粘着剤層13のサイズの小型化の点では、磁石14を弱粘着剤層13の前記基板設置面11とは反対の側に配置している構成の治具10の方が有利である。
治具10、10Aは、いずれも、基板設置面11、11Aに沿った方向における磁石14の設置位置(治具10については弱粘着剤層13の設置位置に磁石14の位置が従う)を適宜変更できることは言うまでも無い。これにより、磁性を持つ電子部品への影響(例えば磁気吸引力が電子部品の実装位置精度に影響を与えること)を抑制できる。また、実装ラインを構成する装置へ磁石の磁力によって吸着されるといった不都合を容易に抑制でき、実装ライン上での搬送不具合を防止できる。
但し、磁石14を弱粘着剤層13の前記基板設置面11とは反対の側に配置している構成の治具10の方が、図10(a)、(b)に例示した治具10Aに比べて、基板設置面11における弱粘着剤層13の配置位置の自由度を高く確保できる点で有利である。
【0079】
この治具10Aにあっても、プレート状基材12に、基板1を突き出しピン19を用いて治具10の基板設置面11から離隔(剥離)させるためのピン挿入孔を貫設した構成を採用できることは言うまでも無い。
【0080】
なお、上述の実施形態では、永久磁石を設けた治具を用い、この治具の永久磁石と、基板押さえ部材の磁性体との間に作用する磁気吸引力によって治具と基板押さえ部材との間に基板を挟み込んで保持する構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、永久磁石を具備せず、磁性体が設けられた構成の治具を採用することも可能である。この場合は、基板押さえ部材として永久磁石を設けた構成のものを採用して、治具と基板押さえ部材との間での基板の挟み込みによる保持が実現されるようにする。
また、本発明は、治具及び基板押さえ部材の両方に永久磁石を設けた構成のものを採用することも含む。基板押さえ部材としては、その全体が磁性体(磁化されていない磁性体)からなる構成のものの他、全体が永久磁石となっているもの、治具の磁石に対応する位置に磁性体あるいは永久磁石が点在配置されたもの等も採用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…プリント配線基板、1a…外周部(押さえ代)、1b…電子部品実装部、1c…パッド、
10、10A…基板保持搬送用治具、11、11A…基板設置面、12…プレート状基材、12a…上面、12b…凹所、12c…磁石収納部、12d…ピン挿入孔、13…弱粘着剤層、14…永久磁石、15…(治具の)底面、16、17、18…永久磁石、19…突き出しピン、
20…基板押さえ部材、20A、20B…基板押さえ部材(基板押さえ枠)、20C…基板押さえ部材(基板表面保護プレート)、21…フレーム、22…押さえ部材磁石、23…開孔、
30…メタルマスク版、31…凹所パターン、32…孔、
40…基板搬送装置(アーム式搬送装置)、41…アーム移動装置、42…搬送アーム、42a…アーム本体、42b…位置決め突起、42c…治具保持部(板ばね)、
50…押さえ部材取り外し治具、51…当接部材、51a…当接面、52…取り外し用磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板が重ね合わせるようにして設置される基板設置面を有し前記プリント配線基板の搬送に用いられるプレート状の基板保持搬送用治具であって、
プレート状基材の複数箇所に前記プリント配線基板を保持するための弱粘着剤層が前記基板設置面の一部を形成するようにして設けられ、さらに、前記プレート状基材の前記基板設置面に沿う複数箇所に永久磁石あるいは磁性体である磁気吸引用部材を備え、
前記基板設置面に設置されたプリント配線基板の前記プレート状基材とは反対の側に設置される基板押さえ部材に該基板押さえ部材に設けられている磁性体あるいは永久磁石と前記プレート状基材の前記磁気吸引用部材との間の磁気吸引力を作用させることで、プリント配線基板を保持可能とされていることを特徴とする基板保持搬送用治具。
【請求項2】
前記磁気吸引用部材は前記弱粘着剤層の前記基板設置面とは反対の側に設けられて前記プレート状基材の複数箇所に分散配置されていることを特徴とする請求項1記載の基板保持搬送用治具。
【請求項3】
前記磁気吸引用部材が前記基板設置面の複数箇所に露出するようにして前記プレート状基材に点在配置されていることを特徴とする請求項1記載の基板保持搬送用治具。
【請求項4】
前記磁気吸引用部材である磁石は、前記基板設置面に設置される前記プリント配線基板側の面に互いに異なる磁極を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板保持搬送用治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の前記基板設置面に前記プリント配線基板を押さえ込むために用いられる基板押さえ部材であって、その全体あるいは複数箇所が、前記基板保持搬送用治具の磁気吸引用部材との間に磁気吸引力を発生するための永久磁石あるいは磁性体とされていることを特徴とする基板押さえ部材。
【請求項6】
前記基板保持搬送用治具の前記基板設置面に重ね合わせたプリント配線基板に積層するようにして設置される板状に形成され、しかも、プリント配線基板の電子部品実装部に対応する位置に開孔を有し、前記プリント配線基板に重ね合わせたときに前記プリント配線基板表面の前記電子部品実装部を除く部分全体を覆う部材である基板表面保護プレートとして機能することを特徴とする請求項5記載の基板押さえ部材。
【請求項7】
前記開孔は、前記基板保持搬送用治具の前記磁気吸引用部材に対応する部位を避けた位置に形成されていることを特徴とする請求項6記載の基板押さえ部材。
【請求項8】
前記プリント配線基板の外周部に対応する枠状に形成されていることを特徴とする請求項5記載の基板押さえ部材。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の前記基板設置面にプリント配線基板を押さえ込んだ請求項5〜8のいずれかに記載の基板押さえ部材の取り外しに用いる押さえ部材取り外し治具であって、
前記基板押さえ部材に重ね合わせるようにして当接される当接面を有する当接部材を具備し、この当接部材の前記当接面の前記基板保持搬送用治具の前記永久磁石の磁極に対応する位置に前記永久磁石の磁極と同一の磁極を有することを特徴とする押さえ部材取り外し治具。
【請求項10】
前記基板保持搬送用治具の永久磁石の磁極に対応する磁極を形成する磁石が前記当接部材の複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項9記載の押さえ部材取り外し治具。
【請求項11】
請求項6又は7記載の基板押さえ部材を用いてプリント配線基板を請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の基板設置面に押さえ込んだ状態にて、前記電子部品実装部へのクリームはんだの印刷を行う際に、前記基板押さえ部材に重ね合わせるように設置して用いるメタルマスク版であって、
前記基板押さえ部材の前記開孔以外の部分を非接触で収納する凹所パターンと、前記プリント配線基板の電子部品実装部の前記クリームはんだの印刷を行う領域に対応する孔パターンとが形成されていることを特徴とするメタルマスク版。
【請求項12】
プリント配線基板を、請求項5〜8のいずれかに記載の基板押さえ部材を用いて請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の基板設置面に押さえ込んで搬送することを特徴とする基板搬送方法。
【請求項13】
プリント配線基板を前記基板押さえ部材を用いて前記基板保持搬送用治具の基板設置面に押さえ込んだ状態で前記基板押さえ部材を取り外す押さえ解除位置まで前記基板保持搬送用治具とともに搬送し、前記押さえ解除位置にて請求項9又は10記載の押さえ部材取り外し治具を用いて前記基板押さえ部材を取り外すことを特徴とする請求項12記載の基板搬送方法。
【請求項14】
前記基板保持搬送用治具として、前記基板保持搬送用治具にその前記基板設置面に重ね合わすようにして設置されたプリント配線基板を前記基板設置面から離隔させる突き出しピンを挿入するためのピン挿入孔が貫設されているものを用い、前記基板押さえ部材の取り外しと同時あるいは基板押さえ部材の取り外し完了後に、前記ピン挿入孔に挿入した突き出しピンによってプリント配線基板を前記基板設置面から離隔させることを特徴とする請求項13記載の基板搬送方法。
【請求項15】
プリント配線基板に電子部品を実装してなる電子部品付き配線基板を製造するための電子部品付き配線基板の製造方法であって、
前記電子部品付き配線基板を製造するためにプリント配線基板の電子部品実装部について行う製造工程であり、クリームはんだの印刷、電子部品のマウント、前記クリームはんだのリフローのうち、前記電子部品のマウントを含む1以上の工程を有し、この工程の1又は複数を請求項6〜8のいずれかに記載の基板押さえ部材を用いて請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の基板設置面にプリント配線基板を押さえ込んだ状態にて行うことを特徴とする電子部品付き配線基板の製造方法。
【請求項16】
前記工程として、前記プリント配線基板の電子部品実装部へのクリームはんだの印刷を含む1以上を有し、この工程のうちクリームはんだの印刷を、請求項6又は7記載の基板押さえ部材を用いてプリント配線基板を請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具の基板設置面に押さえ込み、さらに、前記基板押さえ部材に請求項11記載のメタルマスク版を重ね合わせるように設置した状態にて行うことを特徴とする請求項15記載の電子部品付き配線基板の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれかに記載の基板保持搬送用治具が取り付けられる搬送アームと、この搬送アームを移動させるアーム移動装置とを具備し、プリント配線基板を前記搬送アームに取り付けられた前記基板保持搬送用治具と請求項5〜8のいずれかに記載の基板押さえ部材との間に挟み込んだ状態で搬送可能とされていることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項18】
前記搬送アームに、前記基板保持搬送用治具を着脱可能に保持する治具保持部が設けられていることを特徴とする請求項17記載の基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−272650(P2010−272650A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122471(P2009−122471)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(597079681)株式会社 大昌電子 (42)
【Fターム(参考)】