基板処理装置及び基板処理方法
【課題】スループットの向上に貢献すると共に、大気雰囲気にパターンを露出せずに超臨界流体による処理を行うことが可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置の洗浄槽21は、基板Wを収容し、洗浄液を通流させて当該基板Wを洗浄し、処理容器22は、この洗浄槽21を収容し、前記基板Wに対して超臨界流体による処理を行う。
【解決手段】基板処理装置の洗浄槽21は、基板Wを収容し、洗浄液を通流させて当該基板Wを洗浄し、処理容器22は、この洗浄槽21を収容し、前記基板Wに対して超臨界流体による処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にパターンが形成された半導体ウエハなど基板に対して洗浄処理などの液処理を行ったあと、この基板に対して超臨界処理をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程などにおいては、ウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜などを薬液などの洗浄液により除去する洗浄工程が設けられている。
【0003】
この洗浄工程に用いられる基板処理装置の一つである枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の洗浄液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面に残った液体(洗浄液)は例えば純水などによるリンス洗浄を行った後、ウエハを回転させることによる振切乾燥などによって除去される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥すると、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、液体-気体間の界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と接触させ、ウエハ表面の液体を超臨界流体に溶解させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで特許文献1には、洗浄部にて洗浄された基板を基板搬送ロボットにより乾燥装置内に搬送し、この乾燥装置内にて基板を超臨界流体と接触させて基板表面に付着している洗浄液を除去する技術が記載されている。この特許文献1に記載の技術では、洗浄部と乾燥装置とが別々に構成されているため、これらの設備間で基板を搬送する動作が必要となり、洗浄部及び乾燥装置を備えた基板の処理システム全体のスループットを向上させる上での制約となる。また例えば基板を搬送している間に洗浄液が蒸発してしまうと、乾燥装置へ基板を搬入する前にパターン倒れが発生してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−72118号公報:0029段落〜0033段落、0042段落、図1、図6、図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、スループットの向上に貢献すると共に、大気雰囲気にパターンを露出せずに超臨界流体による処理を行うことが可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、基板を収容し、洗浄液を通流させて当該基板を洗浄するための洗浄槽と、
この洗浄槽を収容し、前記基板に対して超臨界流体による処理を行うための処理容器と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記洗浄槽内に超臨界流体を得るための液体または超臨界流体を供給する流体供給部と、前記洗浄槽内の流体を排出するための流体排出部と、を備えたこと。
(b)前記超臨界流体を得るための液体を加熱することにより当該液体を超臨界状態とし、または前記超臨界流体を加熱することにより超臨界状態を維持する加熱部を備えたこと。
(c)前記超臨界流体を得るための液体を加圧することにより当該液体を超臨界状態とし、または前記超臨界流体を加圧することにより超臨界状態を維持する加圧部を備えたこと。
【0011】
(d)前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態と処理容器の内部に位置する状態との一方を選択するために洗浄槽と処理容器とを相対的に移動させる駆動部を備えたこと。
(e)前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で基板の洗浄が行われること。
(f)前記洗浄槽が処理容器の内部に位置する状態で基板の洗浄が行われ、前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で当該洗浄槽に対して基板の受け渡しが行われること。
(g)前記洗浄槽には前記処理容器を閉じるための蓋部が取り付けられ、
前記駆動部は、洗浄槽を処理容器内に搬入して前記蓋部により処理容器を閉じ、また洗浄槽を処理容器内から引き出して処理容器を開放するように、当該洗浄槽と処理容器とを相対的に駆動するものであること。
(h)前記洗浄槽は処理容器の内部に設けられ、前記処理容器には、仕切り部材で開閉される搬入出口が形成され、この搬入出口を介して処理容器の外部と洗浄槽との間で基板の受け渡しが行われること。
(i)前記洗浄槽は、上面が開口し、基板を縦置きで収容するように構成されていること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄槽内で基板の洗浄を行い、その後この洗浄槽内に基板を収容したまま処理容器内にて基板に対する超臨界流体を用いた処理を行うので、当該処理を開始するまでの間に基板表面に気液界面が形成されることなく、パターン倒れを発生させずに超臨界流体を用いた基板の処理、例えば基板表面に付着した洗浄液を乾燥させる処理を行うことができる。そして例えば洗浄処理及び超臨界流体による処理を別々の装置にて実施する場合と比較して装置間での基板の受け渡しや基板の搬送といった動作が必要ないのでスループットの向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るウエハ処理装置を備えたウエハ処理システムの横断平面図である。
【図2】前記ウエハ処理システムの縦断側面図である。
【図3】前記ウエハ処理装置の縦断側面図である。
【図4】前記ウエハ処理装置の外観構成を示す第1の斜視図である。
【図5】前記ウエハ処理装置の外観構成を示す第2の斜視図である。
【図6】前記ウエハ処理装置内の洗浄槽の構成を示す一部破断斜視図である。
【図7】前記ウエハ処理装置の洗浄液などの供給・排出系を示す説明図である。
【図8】前記ウエハ処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図9】前記ウエハ処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図10】前記ウエハ処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図11】超臨界乾燥容器と洗浄槽とが縦方向に移動するウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図12】洗浄槽内にウエハを横置きに収容するウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図13】超臨界乾燥容器内に洗浄槽を収容した状態で洗浄処理を行うウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図14】超臨界流体を得るための液体としてHFEを用いるウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図15】洗浄槽を超臨界乾燥容器の内部に固定したウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図16】洗浄槽を超臨界乾燥容器の内部に固定したウエハ処理装置の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態として、表面にパターンが形成されたウエハの表面をアルカリ性薬液及び酸性薬液にて洗浄した後、超臨界状態の二酸化炭素(CO2)を用いて乾燥を行うウエハ処理装置について説明する。図1はこのウエハ処理装置を備えたウエハ処理システム1の横断平面図であり、図2は当該システム1の縦断側面図である。以下ウエハ処理システム1全体の説明においては、図1、図2に向かって左側を前方として説明する。ウエハ処理システム1は、FOUP6の搬入出が行われる搬入出部11と、ウエハWの洗浄処理並びに乾燥処理を実行するウエハ処理部12とを手前側からこの順に設けた構成となっている。
【0015】
搬入出部11は、例えばOHT(Overhead Hoist Transport)などの図示しない搬送ロボットにより工場内を搬送され、複数枚のウエハWを収納したFOUP6が載置される載置台111と、載置台111に載置されたFOUP6が搬送される搬送室110とを備えている。載置台111はウエハ処理システム1の外装体を形成する筐体10の前面に例えば3個設置されており、これら載置台11の上面には載置トレイ112が設けられている。載置トレイ112は搬入出部11上を前後方向にスライド可能に構成され、筐体10の前面に設けられた開口部113を介して搬送室110との間でFOUP6を搬入出することができる。図2中、114はFOUP6が搬入出される開口部113を開閉する開閉扉である。
【0016】
搬送室110内には、後段のウエハ処理部12との間でのFOUP6から取り出されたウエハWの受け渡しが行われるウエハ受け渡し部115と、搬送室110内にスライドしてきた載置トレイ112とウエハ受け渡し部115との間でFOUP6を搬送するFOUP搬送機構119とが設けられている。ウエハ受け渡し部115は、FOUP6が載置される載置トレイとして構成されており、ウエハ受け渡し部115に対向する隔壁部118には後述のウエハ処理室120に向けて開口する開口部116が設けられている。開口部116には、FOUP6に対向する位置と、その下方側の退避位置との間で昇降可能な開閉扉117が設けられており、開閉扉117は、ウエハWの取り出しや収納を行うために、FOUP6の側面に設けられた蓋体を開閉する機能を備えている。
【0017】
FOUP搬送機構119は、図2に示すようにFOUP6のトップフランジを把持してFOUP6を持ち上げ、図1に示すように前後方向及び左右方向にFOUP6を自在に搬送することができる。
【0018】
搬送室110の後段には、隔壁部118を介してウエハ処理部12が設けられており、ウエハ処理部12内にはウエハWの洗浄処理及びその後の乾燥処理が行われる例えば4台のウエハ処理装置2と、ウエハ受け渡し部115上のFOUP6と各ウエハ処理装置2との間でウエハWを搬送するウエハ搬送機構3とが配置されたウエハ処理室120が設けられている。
【0019】
図1、図2に示すようにウエハ処理室120内には、4台のウエハ処理装置2が例えば筐体10の床面上に、前後方向に1列に並べて配置されている。以下、ウエハ処理装置2及びウエハ搬送機構3の説明にあたっては、搬入出部11側から見て右側を前方、左側を後方として説明する。
【0020】
ウエハ搬送機構3はウエハ処理装置2の後部側の上段位置に架け渡された支持台36上に設けられており、支持台36上に配置された走行路37上を走行して各ウエハ処理装置2の上方位置まで移動し、ウエハWの搬入出を行うことができる。
【0021】
ウエハ搬送機構3は、例えば図3(a)に示すように垂直軸周りに回転可能に構成された基台部31を備えており、この基台部31を基端側とすると、第1のアーム部32、第2のアーム部33、第3のアーム部34及びピック35が基端側からこの順に接続されている。
【0022】
第1〜第3のアーム部32〜34は支持台36や走行路37と平行な方向に伸びる水平軸周りに回動することができる。また、先端部に設けられたピック35は、例えば図2に示すように扁平な薄板状の部材として構成されその先端部には不図示の真空チャックが設けられていてウエハWを吸着保持することができるようになっている。そしてピック35は、例えば図3(a)、図8(a)に示すように支持台36や走行路37と直行する方向に伸びる水平軸周りに回転することが可能であり、FOUP6内に水平方向に進入してウエハWを搬入出することができる。
【0023】
ウエハ処理室120内に設けられた例えば4台のウエハ処理装置2は、互いにほぼ同様の構成を備えており、ウエハW表面に気液界面を形成することなくウエハWの洗浄処理、並びに超臨界乾燥処理を一つの装置内で実行することができる。以下、ウエハ処理装置2の詳細な構成について説明すると、ウエハ処理装置2は、ウエハWをほぼ垂直な縦置きの状態で保持し、ウエハWの洗浄処理が行われる洗浄槽21と、ウエハWの洗浄処理を終え、洗浄槽21内のウエハWの乾燥処理が行われる処理容器である超臨界乾燥容器22とを備えている。
【0024】
図3(a)、図4並びに図6に示すように、洗浄槽21は例えば1枚のウエハWをほぼ垂直な状態で収容可能な扁平な直方体形状の筐体として構成されており、その上面側はウエハ処理室120内の雰囲気に開口している。ウエハ処理装置2の手前側から見て、洗浄槽21の左右方向の厚さは例えば十数mm〜数cm程度となっており、ウエハWを吸着保持したウエハ搬送機構3のピック35が上面側の開口部を介して洗浄槽21内に進入しウエハWを搬入出することが可能となっている。
【0025】
図6に示すように洗浄槽21内の底面部には、ウエハWの形状に沿って切り欠かれた板状のウエハ保持部214が設けられている。ウエハ保持部214には、切り欠かれた面に沿って溝部が形成されており、洗浄槽21内に搬入されたウエハWの下方側周縁部をこの溝部内に嵌め込むことにより、ウエハWをほぼ垂直な状態で保持することができる。
【0026】
洗浄槽21の手前側の側壁面には、図1、図4に示すように、当該側壁の両翼方向に広がるフランジ部211が設けられている。フランジ部211は、例えばその厚さが数cm〜十数cm程度の肉厚を持った扁平な直方体形状の部材として構成されており、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に格納して超臨界乾燥処理を行う際の耐圧性能を確保する役割を果たす。言い替えると、フランジ部211は、超臨界乾燥容器22を閉じるための蓋部としての役割も果たしている。フランジ部211の後ろ側の側壁面には、後述する超臨界乾燥容器22側のフランジ部222と突合して超臨界乾燥容器22の内部を気密に維持するためのフランジ面が形成されている。
【0027】
図6に示すように洗浄槽21の底板内及びフランジ部211の中央部下方位置には、一端が洗浄槽21内の底面に開口し、他端が後述の第1の流路581に接続される内部流路212が形成されている。
【0028】
洗浄槽21は、例えば図1に示すようにその開口部の長手方向をウエハ処理装置2の前後方向と一致させ、フランジ部211が手前側となるようにウエハ処理室120内に配置されている。
【0029】
超臨界乾燥容器22は、図3(a)、図4に示すように洗浄槽21全体を格納可能な格納空間221を備えた扁平な直方体形状の容器として構成され、耐圧性確保などの観点から、例えば数cm〜十数cm程度の肉厚の部材により構成されている。超臨界乾燥容器22は幅の狭い一方側の側壁面に前記格納空間221の開口部を備えている。超臨界乾燥容器22は、左右方向に広がる平板状の支持部材23によって左右の側壁面を挟まれるように支持され、格納空間221の開口部を洗浄槽21側に向けてウエハ処理室120の床面上に固定されている。
【0030】
支持部材23によって支持された側壁面よりも手前側の超臨界乾燥容器22の最前面には、格納空間221の開口部を中心に左右方向に広がるフランジ部222が形成されている。このフランジ部222についても洗浄槽21側のフランジ部211と同様に、例えばその厚さが数cm〜十数cm程度の肉厚を持った扁平な直方体形状の部材として構成されていて、超臨界乾燥容器22の開口部側にはフランジ面が形成されている。
【0031】
また超臨界乾燥容器22の天井板には、図3(a)、図7などに示すように、当該天井板を上下方向に貫通する内部流路223が設けられている。内部流路223の下端は、超臨界乾燥容器22内に開口する一方、その上端側は後述の第2の流路521に接続されている。
【0032】
以上に説明した構成を備えた洗浄槽21及び超臨界乾燥容器22において、洗浄槽21は、図3(a)、図4に示すように洗浄槽21全体が超臨界乾燥容器22の手前側に引き出され、超臨界乾燥容器22が開放された状態となる洗浄処理位置と、図3(b)、図5に示すように洗浄槽21全体を超臨界乾燥容器22内に格納し、超臨界乾燥容器22を閉じた状態となる乾燥処理位置との間で前後へ水平方向(横方向)に移動することができるようになっている。
【0033】
洗浄槽21を水平方向にスライドさせるため洗浄槽21には、その前面に設けられたフランジ部211を前後方向に向けて1本のボールネジ252が貫通している。また、フランジ部211の正面側から見て四隅の位置には、洗浄槽21のスライド方向を案内する4本のガイド部材251が、上述のボールネジ252と同じ方向に向けて当該フランジ部211を貫通している。そしてこれらボールネジ252及びガイド部材211によって洗浄槽21及びフランジ部211の全体がウエハ処理室120の床面から浮いた状態で支持されている。例えば図3(a)に示すようにこれらのボールネジ252及びガイド部材211の一端は例えばウエハ処理室120の筐体10(ウエハ処理システム1の筐体10でもある)の側壁にて支持され、その他端は超臨界乾燥容器22側のフランジ部222に支持されている。
【0034】
筐体10の側壁に支持されたボールネジ252はこの側壁を貫通し、例えば図3(a)、図3(b)に示すように当該側壁の外壁面に設けられたモーター253に接続されている。またボールネジ252及びこのボールネジ252が貫通するフランジ部211の貫通孔には、各々図示しない雌雄のネジが切ってあり、これらボールネジ252、フランジ部211、モーター253によってボールネジ機構が形成されている。
【0035】
そして回転方向及び回転量を同期させてボールネジ252を回転させることにより、洗浄槽21を前後方向にスライドさせ、既述の洗浄処理位置と乾燥処理位置との間で洗浄槽21を移動させることができる。上述のボールネジ機構は本実施の形態に係る洗浄槽21及びフランジ部211の駆動部に相当する。但し洗浄槽21及びフランジ部211を移動させる駆動部は、上述したようにボールネジ機構により構成する場合に限定されるものではない。例えばボールネジ機構に替えてリニアモータを用いて洗浄槽21及びフランジ部211を移動させてもよいし、伸縮アームやエアシリンダーを用いて移動させてもよい。また図3(a)、図3(b)以外の図においては便宜上、モーター253の記載は省略してある。
【0036】
ここで図4、図5に示した24は、格納空間221、222を互い押さえつけて両フランジ面を密着させる押さえ部材である。これらの押さえ部材24は走行路241を左右に走行して、洗浄槽21が乾燥処理位置まで移動した後、これらの格納空間221、222を押さえつける位置と、洗浄槽21が洗浄処理位置まで移動する際に、左右に退避して2つの格納空間221、222を開放する位置との間を移動することができるようになっている。
【0037】
次に、洗浄槽21及び超臨界乾燥容器22への洗浄液及び超臨界乾燥用のCO2の供給排出系の構成について説明する。図7に示すように洗浄槽21の底板内からフランジ部211にかけて形成されている内部流路212は第1の流路581に接続されており、この第1の流路581は耐圧性を備えた開閉弁583を介して切り替え弁58に接続されている。第1の流路581の例えばウエハ処理室120内に配置されている領域は、例えば耐圧性を備えたフレキシブルホースなどによって構成されており、洗浄槽21の移動に伴って変形することが可能となっている。
【0038】
この切り替え弁58は、第1の流路581を洗浄液供給路571、排出路582の2本の流路に切り替えて接続する機能を備えている。洗浄液供給路571は切り替え弁57を介してさらに4本の流路に分岐しており、アルカリ性薬液供給部54に接続されたアルカリ性薬液供給路541は、ウエハW表面のパーティクルや有機性の汚染物質を除去するアルカリ性薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)を洗浄槽21へと供給し、酸性薬液供給部55に接続された酸性薬液供給路551はウエハW表面の自然酸化膜を除去する酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid)液という)を洗浄槽21へ供給する役割を果たす。
【0039】
またDIW供給部56に接続されたDIW供給路561は、各種薬液による処理を終えた後のウエハWのリンス洗浄を行うための脱イオン水(以下DIW(DeIonized Water)またはリンス液という)を洗浄槽21に供給する役割を果たす。そして、IPA供給部59に接続されたIPA供給路591は、リンス洗浄を終えたウエハWがIPA(IsoPropyl Alcohol)に浸漬された状態で超臨界乾燥容器22内へと搬入されるように、IPAを洗浄槽21へと供給する機能を備えている。
【0040】
ここで本実施の形態に係るウエハ処理装置2は、超臨界流体としてCO2を用いるが、リンス洗浄を終えてウエハWを浸漬させた状態のDIWに超臨界状態のCO2を供給すると、炭酸が生成されてウエハWに影響を与えるおそれがある。このため、本例に係るウエハ処理装置2では、リンス洗浄を終えた後、洗浄槽21内の液体をIPAに置換して、超臨界乾燥処理時における炭酸の発生を抑えている。
また切り替え弁58に接続されたもう一本の流路である排出路582は洗浄槽21内部の流体をウエハ処理装置2の装置外へと排出するための流路である。
【0041】
一方、超臨界乾燥容器22の天井板を貫通する内部流路223についても耐圧性を備えたフレキシブルホースを含む第2の流路521に接続されており、この第2の流路521はやはり耐圧性を備えた開閉弁523を介して切り替え弁52に接続されている。切り替え弁52は第2の流路521をパージガス供給路511、CO2供給路531の2本の流路に切り替えて接続する機能を備え、パージガス供給路511に接続されたパージガス供給部51からは洗浄槽21内の雰囲気を排気するパージガスが供給される。またCO2供給路531は昇圧ポンプ532を介してCO2供給部53に接続されており、昇圧ポンプ532は例えば10MPaまでCO2を昇圧し、超臨界の状態で洗浄槽21に向けて供給する役割を果たす。これらCO2供給部53やCO2供給路531は本実施の形態に係るウエハ洗浄装置2の流体供給部に相当する。また昇圧ポンプ532はCO2供給部53から供給されるCO2を加圧して超臨界状態とすると共に、その超臨界状態が維持されるように洗浄槽21内を加圧する加圧部の役割も果たす。
【0042】
さらにウエハ処理室120の筐体10(ウエハ処理システム1の筐体10)の床面にも排出ライン101が接続されており、当該ウエハ処理室120の床面に流下した液体を外部に排出することができる。これら各種のガスや液の供給部51、53、54、55、56や各種供給路511、531、541、551、561などは、例えばウエハ処理装置2の後方側の領域(ウエハ処理システム1の搬入出部11側から見て左手側の領域)に格納されている。
【0043】
以上の構成を備えたウエハ処理装置2を含むウエハ処理システム1には、図2、図3(a)、図3(b)、図7に示すように制御部4が接続されている。制御部4は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれらウエハ処理システム1やウエハ搬送機構3、ウエハ処理装置2の作用、即ち搬入出部11内を搬送されたFOUP6からウエハWを取り出し、各ウエハ処理装置2内に搬入して洗浄処理、超臨界乾燥処理を行ってから、ウエハWを搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。この制御部4についても例えばウエハ処理装置2の後方側の領域に設けられている。
【0044】
以上の構成を備えたウエハ処理システム1の作用について説明する。いずれかの搬入出部11上にFOUP6が載置されると、載置トレイ112がスライドしてFOUP6を搬送室110内に取り込む。搬送室110内に取り込まれたFOUP6はFOUP搬送機構119によってトップフランジを把持されて持ち上げられ、ウエハ受け渡し部115まで搬送室110内を搬送される。
【0045】
ウエハ受け渡し部115上にFOUP6が載置されると開閉扉117がFOUP6の蓋体を取り外して下方に退避する。そして図8(a)に示すようにウエハ搬送機構3はピック35がほぼ水平となってウエハWの吸着保持面が上面を向くように当該ピック35を回転させた後、基台部31を搬送室110側に移動させてピック35をFOUP6内に進入させ処理対象のウエハWの下方に位置させる。
【0046】
しかる後、ピック35を上昇させることにより、FOUP6からウエハ搬送機構3へとウエハWが受け渡され、搬送室110とは反対方向に基台部31を移動させてFOUP6内からピック35を退出させる。こうして処理対象のウエハWを取り出したら、当該ウエハWに対する洗浄処理が実行されるウエハ処理装置2まで基台部31を移動させる。
【0047】
ウエハ処理装置2側においては、図3(a)に示すように内部が空の状態の洗浄槽21を超臨界乾燥容器22から引き出した洗浄処理位置にて待機させており、当該洗浄槽21の上方位置までウエハWを搬送したら、ウエハ搬送機構3はピック35を回転させて図3(a)、図8(b)に示すようにウエハWをほぼ垂直な状態で保持すると共に、このウエハWの下端を洗浄槽21の開口部に対向する位置まで移動させる。
【0048】
こうして洗浄槽21内にウエハWを搬入可能な状態となったら、各アーム32〜34を作動させてピック35及びウエハWを洗浄槽21内に進入させる。そしてウエハWの下方側周縁部がウエハ保持部214の切り欠き部の内周面に形成された溝部内に保持されたら、ピック35によるウエハWの吸着保持を解除し、図8(c)に示すようにピック35を洗浄槽21内から退避させる。
【0049】
以上の動作によりウエハ処理装置2においては、図9(a)の洗浄槽21の縦断側面図に示すように洗浄処理位置まで移動した洗浄槽21内にウエハWが縦置きで収容された状態となっている。洗浄槽21内にウエハWが搬入されたら、図9(b)に示すようにウエハ処理装置2は開閉弁583を開(図9(b)中に「O」と表示してある)としてアルカリ性薬液供給部54からアルカリ性薬液(SC1液)を供給する。なお、図9、図10の各図においては、ウエハ搬送機構3やボールネジ252、洗浄槽21内のウエハ保持部214などを適宜省略して表示してある。
【0050】
アルカリ性薬液供給部54から供給されたアルカリ性薬液は、内部流路212を通って洗浄槽21の底面からウエハWの保持されている空間内に導入され、その液位が徐々に上昇し、やがてアルカリ性薬液は洗浄槽21上面の開口部からオーバーフローする。このようにアルカリ性薬液が洗浄槽21の底面側から供給され、開口部からのオーバーフローによって排出されることにより、洗浄槽21内には下方側から上方側へ流れるアルカリ性薬液の上昇流が形成され、ウエハWの表面がこの流れと接触することによってパーティクルや有機性の汚染物質の除去が促進される。即ち、当該動作においては、洗浄槽21の開口部が当該洗浄槽21内の洗浄液を排出するための液体排出部の役割を果たしていることになる。
【0051】
洗浄槽21からオーバーフローしたアルカリ性薬液はウエハ処理室120の筐体10底面の排出ライン101より外部へ排出される。ここで図9(b)の洗浄槽21の縦断側面図に示した右上がりの斜線のハッチは、洗浄槽21にアルカリ性薬液や酸性薬液などの洗浄液が満たされている様子を模式的に示している。
【0052】
こうしてアルカリ性薬液によるウエハWの洗浄を終えたら、洗浄槽21に供給する洗浄液をDIW供給部56からのDIWに切り替えて、洗浄槽21内をDIWで置換し、ウエハW表面のリンス洗浄を行う。このリンス洗浄においても洗浄槽21内のDIWの上昇流によってウエハW表面のリンス洗浄が促進される。またこのように洗浄槽21内が液体で満たされた状態のまま洗浄液の切り替えが行われるので、ウエハW表面は気体に晒されることがなく、気液界面でのパターン倒れが発生しない。さらには、本実施の形態に係るウエハ処理装置2では、上述のように洗浄槽21内の液体を置換して洗浄液の切り替えが行われるので、洗浄槽21内の空間の容積をできるだけ小さくすることにより洗浄液の迅速な切り替えが可能となる。
【0053】
所定時間リンス洗浄を実行したら、今度は洗浄槽21へ供給される洗浄液を酸性薬液供給部55からの酸性薬液(DHF液)に切り替えてウエハW表面の自然酸化膜を除去する。酸性薬液が洗浄槽21の開口部からオーバーフローし、洗浄槽21内に上昇流が形成される点、洗浄槽21内にDIWが満たされた状態のまま酸性薬液への切り替えが行われる点はアルカリ性薬液の供給動作と同様である。
【0054】
そして所定時間酸性薬液による洗浄処理が行われたら、洗浄槽21へ供給する洗浄液を再度DIWに切り替えてウエハWのリンス洗浄を行った後DIWの供給を停止して、洗浄槽21内をIPAにて置換し一連の洗浄処理を終了する(第1の流路581の開閉弁を閉「S」)。本実施の形態に係るウエハ処理装置2においては、このようにウエハWの洗浄処理が超臨界乾燥容器22の外で行われることにより、ウエハWの最終的な処理である超臨界乾燥処理が行われる超臨界乾燥容器22内がパーティクルや汚れなどを含む各種の洗浄液で汚染されずに済む。ウエハWの洗浄処理を終えたタイミングにおいては、洗浄槽21内はIPAで満たされ、ウエハWは当該IPA内に浸漬された状態となっている。
【0055】
こうしてウエハWの洗浄処理を終えたら、図9(c)に示すように洗浄槽21をスライドさせて超臨界乾燥容器22の格納空間221内に洗浄槽21を進入させ、両フランジ部211、222のフランジ面を密着させて超臨界乾燥容器22内を閉じ、気密な状態とする。このとき例えば格納空間221の開口部の手前にエアナイフなどを設けて、オーバーフローの際に洗浄槽21の外壁面に付着した洗浄液を除去してから洗浄槽21を格納空間221内に進入させてもよい。ここで図9(c)の洗浄槽21の縦断側面図に示した右下がりの斜線のハッチは、洗浄槽21にIPAが満たされている様子を模式的に示している。
【0056】
超臨界乾燥容器22が気密な状態となったら、超臨界乾燥容器22の天井板側の内部流路223に接続された第2の流路521の開閉弁523を開「O」とし、切り替え弁52の接続先をCO2供給路531に切り替えてCO2供給部53より超臨界状態のCO2を洗浄槽21内に供給する一方、第1の流路521側の開閉弁583を再び開「O」として洗浄槽21内の液体を排出する。このとき、第1の流路581の下流の切り替え弁58は排出路582に切り替えられており、洗浄槽21の上面側から供給された超臨界状態のCO2によって、洗浄槽21内のIPAを下方側へと押し出す力が加わる。この結果、IPAは洗浄槽21の底板内に設けられた内部流路212を介して排出路582へ流出し、外部へと排出される。即ちこの操作においては第1の流路581や排出路582が洗浄槽21内のIPAを排出する液体排出部となっている。
【0057】
そしてこの操作により図10(a)に示すように洗浄槽21内には、下方側のIPAの相(右下がりのハッチで塗りつぶした領域)と、上方側の超臨界CO2の相(砂状のパターンで塗りつぶした領域)との2つの相が形成される。そして超臨界CO2の供給及びIPAの排出によってこれら2つの相の界面が次第に下方側へと移動し、ウエハWの表面がIPAから超臨界CO2に置換されることによりウエハW表面から液体が除去される。ここで例えば開閉弁583は、絞り弁としての機能も備えており、洗浄槽22内の圧力がCO2の超臨界状態を維持可能な圧力に保たれるような抜き出し量にてIPAを抜き出すように開閉弁583の開度が調節されている。
【0058】
こうして図10(b)に示すように、洗浄槽21内の超臨界CO2への置換が完了したら、第2の流路521側の開閉弁523を閉「S」として超臨界CO2の供給を停止する一方、第1の流路581からはCO2の排出を開始する。CO2を排出すると洗浄槽21内の圧力が次第に低下し、やがてCO2は気体の状態となって排出されていく。このとき図10(c)に示すように第2の流路521側の切り替え弁52をパージガス供給路511に切り替えて洗浄槽21内にパージガスを供給し、洗浄槽21内のCO2の排出を促進してもよい。この操作においては、第1の排出路583は、洗浄槽21内から超臨界流体を排出する(圧力が低下して気体の状態で排出される場合も含む)超臨界流体排出部として機能している。ここでCO2が断熱膨張することによる温度低下に伴う結露を防止するため、洗浄槽21や超臨界乾燥容器22に不図示のヒーターを設けておき、洗浄槽21内が所定の温度以上に保たれるようにCO2の排出を行ってもよい。
【0059】
このように本例に係るウエハ処理装置2では、ウエハWを液体(IPA)に浸漬された状態で収容する洗浄槽21内を超臨界流体(超臨界状態のCO2)で置換し、次いでこの超臨界流体を減圧して気体としている。このため、ウエハWの表面は、液体→超臨界流体→気体の順に置換され、気液界面が形成されずに乾燥した状態となる。
【0060】
超臨界乾燥を終えたら洗浄槽21を液処理位置までスライドさせ、ウエハ搬送機構3によりウエハWを取り出して、処理後のウエハWをFOUP6内に搬入する。こうして4台のウエハ処理装置2を利用してFOUP6内の全ウエハWについての洗浄処理、超臨界乾燥処理を終えたら、搬入時とは逆の経路でFOUP6を搬入出部11まで搬送し、一連の処理を終える。
【0061】
本実施の形態に係るウエハ処理装置2よれば以下の効果がある。洗浄槽21内でウエハWの洗浄を行い、その後この洗浄槽21内にウエハWを収容したまま超臨界状態のCO2を供給してウエハWを乾燥させるので、乾燥状態となるまでの間にウエハW表面に気液界面が形成されることなく、パターン倒れを発生させずにウエハWの洗浄処理、超臨界乾燥処理を行うことができる。そして例えば洗浄処理及び超臨界乾燥処理を別々の装置にて実施する場合と比較して装置間でのウエハの受け渡しやウエハの搬送といった動作が必要ないのでスループットの向上に貢献できる。
【0062】
ここで上述の例においては、図3(a)、図3(b)に示すように、洗浄処理位置と超臨界乾燥処理位置との間の移動については洗浄槽21を動かすことによって行っているが超臨界乾燥容器22側を移動させてもよく、またこれらの移動方向も横方向に限られない。例えば図11(a)、図11(b)に示すように洗浄槽21の底面にフランジ部211を設け、超臨界乾燥容器22の格納空間221の開口部を下方側に向けて洗浄槽21と超臨界乾燥容器22とを相対的に上下方向に移動させて洗浄処理位置と超臨界処理位置との間での移動を行ってもよい。
【0063】
また洗浄処理、超臨界乾燥処理を行う際に、ウエハWは縦置きにて保持されている場合に限定されず、図12に示すようにウエハWが横置きの状態で各種の処理が行われるようにウエハ処理装置2を構成してもよい。図12に示した例では、洗浄液などの排出を専用に行う排出路582(流体排出部)が洗浄槽21に直接接続されており、洗浄槽21の開口部から洗浄液などをオーバーフローさせる手法に替えて、この排出路582から洗浄液などを排出する構成となっている。こうした構成を採用することにより、超臨界乾燥容器22内に洗浄槽21を収容した状態にてウエハWの洗浄処理を行うことができる。
【0064】
前記のウエハ処理装置2と同様に、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に収容した状態でウエハWの洗浄処理を行う方式のウエハ処理装置2につき、図13(a)〜図13(c)を参照しながら説明しておく。これらの図に示したウエハ処理装置2は、図1〜図10に示したウエハ処理装置2とほぼ同様の構成を備えており、ウエハWを縦置きで収容して洗浄処理や超臨界乾燥処理を実行するようになっている。但し、図13(a)〜図13(c)に示したウエハ処理装置2の洗浄槽21には、フランジ部211及び洗浄槽21の側壁の上方位置を貫通するように内部流路213が設けられており、当該内部流路213には洗浄液やリンス液を供給するための第1の供給路521が接続されている点と、洗浄槽21の底板側の内部流路212には、洗浄液や超臨界CO2の排出専用の排出路582(流体排出部)が接続されている点とが既述のウエハ処理装置2とは異なっている。
【0065】
本例に係るウエハ処理装置2では、ウエハ搬送機構3からウエハWを受け取って洗浄槽21内に収容した後、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内にスライドさせる。そして図13(a)に示すように第1の流路581及び排出路582の各開閉弁583、584を開「O」として第1の流路581からSC1を供給し、ウエハWの洗浄処理を開始する。このとき洗浄槽21内がSC1液で満たされた状態となるように、第1の流路581からのSC1液の供給量を排液路582からの抜き出し量よりも多くし、且つ、例えば第2の流路521を一次的に大気側へ開放して空気抜きをするとよい。
【0066】
そして洗浄槽21内がSC1液で満たされた状態となったら、第1の流路581からの供給量と排液路582からの抜き出し量とをバランスさせ、第2の流路521の開閉弁523を閉「S」としてアルカリ性薬液洗浄を継続する。この後、DIW→DHF液→DIWの順に洗浄槽21内を各種薬液及びリンス液で置換しながら洗浄処理を実行し、最後に洗浄槽21内をIPAで置換した状態で洗浄処理を終える。
【0067】
洗浄処理を終えたら、図13(b)に示すように第1の流路581の開閉弁583を閉「S」とする一方、第2の流路521の開閉弁523を開「O」として超臨界状態のCO2を供給し、洗浄槽21内のIPAを排出路582側へ押し出してウエハWの超臨界乾燥処理を実行する。洗浄槽21内の超臨界CO2への置換が完了したら、第2の流路521側の開閉弁523を閉「S」として超臨界CO2の供給を停止する一方、排出路582から超臨界CO2を排出して超臨界乾燥処理を終える(図13(c))。本例に係るウエハ処理装置2によれば、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に収容した状態で洗浄処理を実行するので、洗浄槽21の外壁面を洗浄液やリンス液と接触させず、洗浄槽21の汚染を防止することができる。
【0068】
以上に説明した各例ではCO2を超臨界の状態で供給し、ウエハWを浸漬した液体(例えばIPA)と置換することにより乾燥した状態のウエハWを得ているが、超臨界乾燥処理に用いられる超臨界流体はCO2の例に限定されない。例えばハイドロフルオロエーテル(Hydrofluoroethers:以下、HFEという)を用いてもよい。
【0069】
図14(a)〜図14(c)は、超臨界流体としてHFEを用いるウエハ処理装置2の例を示している。これらの図に示したウエハ処理装置2は、図1〜図10に示したウエハ処理装置2とほぼ同様の構成を備えているが、HFEが第1の流路581から液体の状態で供給される点と、超臨界乾燥容器22側の内部流路223は排出路582(流体排出部)に接続されている点とが異なっている。この観点において第1の流路581は、超臨界流体を得るための液体であるHFEを洗浄槽21へと供給する流体供給部の役割を果たしている。また、例えば洗浄槽21の底板や側壁には、洗浄槽内のHFEを加熱するためのヒーター216が設けられている。ヒーター216は、液体のHFEを超臨界状態とし、その超臨界状態を維持するための加熱部に相当している。
【0070】
本例に係るウエハ処理装置2は、図14(a)に示すように洗浄槽21を超臨界乾燥容器22の手前に引き出した洗浄処理位置にて各種薬液やリンス液をオーバーフローさせながらアルカリ性薬液洗浄(SC1液)→リンス洗浄(DIW)→酸性薬液洗浄(DHF液)→リンス洗浄(DIW)→IPA置換が行なわれる。そしてIPAで満たされた洗浄槽21に第1の流路からHFEが液体の状態で供給され、HFEにて満たされた状態で洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に移動させる。
【0071】
図示の便宜上、図14(a)〜図14(c)には示していないが、本例における超臨界乾燥容器22の格納空間221は、洗浄槽21よりも大きく形成されている。そして洗浄槽21を格納空間221内に格納すると、洗浄槽21の上方側には、格納空間221の容積全体の例えば2割程度の大きさの隙間が形成されるようになっている。この状態でヒーター216を作動させると洗浄槽21及び格納空間221内が高温、高圧となってHFEが超臨界状態となり、ウエハWの超臨界乾燥処理が実行される(図14(b))。
【0072】
しかる後、排出路582の開閉弁584を開「O」とし超臨界状態のHFEを排出することにより、乾燥した状態のウエハWを取り出すことが可能となる(図14(c))。このとき第1の流路581からパージガスを供給してもよい。超臨界流体としてHFEを用いる本例においては、ウエハWの表面は、超臨界流体を得るための液体(液体HFE)→超臨界流体(超臨界HFE)の順に周囲の状態が変化し、気液界面が形成されずに乾燥した状態となる。
【0073】
以上に説明した各実施の形態においては、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22の外側に引き出し可能な構成としたが、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22の内部に収容した状態で固定した構造としてもよい。図15(a)〜図15(d)の例においては、ウエハWを横置きの状態で収容する洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に固定したウエハ処理装置2の例を示している。
【0074】
図15(a)に示すように本例に係るウエハ処理装置2では例えば洗浄液供給路271から洗浄液やリンス液の供給を行い、排出路272から洗浄液の排出を行うことによって超臨界乾燥容器22内に洗浄液などをオーバーフローさせずに洗浄処理を行う。
【0075】
また洗浄処理を行っている期間中は、洗浄槽21並びに超臨界乾燥容器22の上面を開放した状態とし、超臨界乾燥容器22の開口部から例えば清浄空気のダウンフローを取り込み、洗浄槽21の側壁と超臨界乾燥容器22の側壁との間の空間を通流させ、超臨界乾燥容器22の底面に設けられた排出路273より排気する。このように洗浄槽21の周囲にダウンフローが形成されていることにより、洗浄槽21に供給される薬液蒸気の周囲への拡散を防止することができる。
【0076】
こうして洗浄処理を終えたら洗浄槽21内をIPAで置換し、さらにこのIPAをHFEにて置換し、洗浄液供給路271、排出路272、273を閉「S」とすると共に、仕切り部材である開閉蓋26にて超臨界乾燥容器22を密閉する(図15(b))。次いで、例えば超臨界乾燥容器22の側壁面及び底板に設けられたヒーター224に給電部41より電力を供給して超臨界乾燥容器22及び洗浄槽21内を加熱して、HFEを超臨界状態にしてウエハWを乾燥させる(図15(c))。しかる後、各排出路272、273を開「O」としてHFEを排出して、乾燥したウエハWを取り出すことが可能となる(図15(d))。
本例では洗浄液供給路271が超臨界流体を得るための液体であるHFEを供給する流体供給部の機能を兼ね備えており、排出路272、273が流体排出部に相当する。
【0077】
一方、図16(a)〜図16(d)は、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に固定したウエハ処理装置2の例において、洗浄槽21並びに超臨界乾燥容器22内を洗浄液やリンス液で満たした状態で洗浄処理を行う場合の例を示している。本例では、洗浄槽21の底面に洗浄液供給路271が設けられており、また開閉蓋26には超臨界乾燥容器22の外部の雰囲気と連通した気体流路261が設けられ、排出路273は例えば超臨界乾燥容器22の底面のみに設けられている点が図15の各図に示したウエハ処理装置2と異なっている。
【0078】
本例に係るウエハ処理装置2では、ウエハWを洗浄槽21内に収容したら、開閉蓋26を閉じてから薬液(例えばSC1液)の供給を開始する。そして洗浄槽21から薬液をオーバーフローさせると共に、排出路273の薬液の排出量を調節して超臨界乾燥容器22内全体、言い替えると洗浄槽21内及びこの洗浄槽21の周囲の空間全体が洗浄液で満たされた状態とする。このとき気体流路261を外部雰囲気に連通させることにより、超臨界乾燥容器22内の気体を外部に排出して洗浄液で置換することができる。
【0079】
そして図16(a)に示すように、超臨界乾燥容器22内が洗浄液で満たされたら、気体流路261を閉じて洗浄液の供給量と排出量とをバランスさせ、洗浄液供給路271から供給する液体をSC1液→DIW→DHF液→DIWの順に切り替えて洗浄処理を実行する。本例では、洗浄液及びリンス液が洗浄槽21からオーバーフローし、洗浄槽21の側壁と超臨界乾燥容器22の側壁との間の空間を通流して排出路273から排出される。このため、これらの洗浄液、リンス液と接する洗浄槽21及び超臨界乾燥容器22の部材表面を洗浄して、清浄な環境下でウエハWの乾燥処理を開始することができる。
【0080】
洗浄処理を終えたら、超臨界乾燥容器22内をIPAで置換し、さらにIPAをHFEで置換する。そして気体流路261を一時的に開放して外部雰囲気を取り込んでHFEの液レベルを調節し、超臨界乾燥容器22の内部容積の8割程度がHFEで満たされた状態とする(図16(b))。しかる後、全ての流路271、273、261を閉じ、給電部41より電力を供給してヒーター224により超臨界乾燥容器22及び洗浄槽21内を加熱すると、HFEが超臨界状態となってウエハWが乾燥した状態となる(図16(c))。しかる後、各排出路273を開いてHFEを排出して、乾燥したウエハWを取り出すことが可能となる(図16(d))。
本例では洗浄液供給路271が超臨界流体を得るための液体であるHFEを供給する流体供給部の機能を兼ね備えており、排出路273が流体排出部に相当する。
【0081】
これら図15(a)〜図15(d)、図16(a)〜図16(d)に示した例によれば、超臨界乾燥容器22内に洗浄槽21が固定されているので、洗浄槽21全体を移動させる大掛かりな駆動機構を設けずに済む。また、これらの例では洗浄槽21内にウエハWを横置きに収容する例を示したが、図6に示したようにウエハWを縦置きに収容する洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に固定してもよい。
【0082】
以上に説明した各実施の形態においては、超臨界乾燥処理に用いる超臨界流体あるいは超臨界流体を得るための液体として、CO2やHFEを採用した例を示したが、当該処理に適用可能な流体はこれらの例に限定されるものではない。また上述の例では、流体を超臨界状態とするため、またはその超臨界状態を維持するために、昇圧ポンプ532(加圧部)を用いて洗浄槽21内を加圧したり、ヒーター216、224(加熱部)により洗浄槽21内を加熱したりする例を示したが、これら加圧部や加熱部を組み合わせて流体を超臨界状態とし、またその状態を維持してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
W ウエハ
1 ウエハ処理システム
120 ウエハ処理室
2 ウエハ処理装置
21 洗浄槽
214 ウエハ保持部
22 超臨界乾燥容器
3 ウエハ搬送機構
4 制御部
53 CO2供給部
531 CO2供給路
532 昇圧ポンプ
54 アルカリ性薬液供給部
55 酸性薬液供給部
56 DIW供給部
57 切り替え弁
571 洗浄液供給路
581 第1の流路
6 FOUP
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にパターンが形成された半導体ウエハなど基板に対して洗浄処理などの液処理を行ったあと、この基板に対して超臨界処理をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程などにおいては、ウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜などを薬液などの洗浄液により除去する洗浄工程が設けられている。
【0003】
この洗浄工程に用いられる基板処理装置の一つである枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の洗浄液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面に残った液体(洗浄液)は例えば純水などによるリンス洗浄を行った後、ウエハを回転させることによる振切乾燥などによって除去される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥すると、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、液体-気体間の界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と接触させ、ウエハ表面の液体を超臨界流体に溶解させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで特許文献1には、洗浄部にて洗浄された基板を基板搬送ロボットにより乾燥装置内に搬送し、この乾燥装置内にて基板を超臨界流体と接触させて基板表面に付着している洗浄液を除去する技術が記載されている。この特許文献1に記載の技術では、洗浄部と乾燥装置とが別々に構成されているため、これらの設備間で基板を搬送する動作が必要となり、洗浄部及び乾燥装置を備えた基板の処理システム全体のスループットを向上させる上での制約となる。また例えば基板を搬送している間に洗浄液が蒸発してしまうと、乾燥装置へ基板を搬入する前にパターン倒れが発生してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−72118号公報:0029段落〜0033段落、0042段落、図1、図6、図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、スループットの向上に貢献すると共に、大気雰囲気にパターンを露出せずに超臨界流体による処理を行うことが可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、基板を収容し、洗浄液を通流させて当該基板を洗浄するための洗浄槽と、
この洗浄槽を収容し、前記基板に対して超臨界流体による処理を行うための処理容器と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記洗浄槽内に超臨界流体を得るための液体または超臨界流体を供給する流体供給部と、前記洗浄槽内の流体を排出するための流体排出部と、を備えたこと。
(b)前記超臨界流体を得るための液体を加熱することにより当該液体を超臨界状態とし、または前記超臨界流体を加熱することにより超臨界状態を維持する加熱部を備えたこと。
(c)前記超臨界流体を得るための液体を加圧することにより当該液体を超臨界状態とし、または前記超臨界流体を加圧することにより超臨界状態を維持する加圧部を備えたこと。
【0011】
(d)前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態と処理容器の内部に位置する状態との一方を選択するために洗浄槽と処理容器とを相対的に移動させる駆動部を備えたこと。
(e)前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で基板の洗浄が行われること。
(f)前記洗浄槽が処理容器の内部に位置する状態で基板の洗浄が行われ、前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で当該洗浄槽に対して基板の受け渡しが行われること。
(g)前記洗浄槽には前記処理容器を閉じるための蓋部が取り付けられ、
前記駆動部は、洗浄槽を処理容器内に搬入して前記蓋部により処理容器を閉じ、また洗浄槽を処理容器内から引き出して処理容器を開放するように、当該洗浄槽と処理容器とを相対的に駆動するものであること。
(h)前記洗浄槽は処理容器の内部に設けられ、前記処理容器には、仕切り部材で開閉される搬入出口が形成され、この搬入出口を介して処理容器の外部と洗浄槽との間で基板の受け渡しが行われること。
(i)前記洗浄槽は、上面が開口し、基板を縦置きで収容するように構成されていること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄槽内で基板の洗浄を行い、その後この洗浄槽内に基板を収容したまま処理容器内にて基板に対する超臨界流体を用いた処理を行うので、当該処理を開始するまでの間に基板表面に気液界面が形成されることなく、パターン倒れを発生させずに超臨界流体を用いた基板の処理、例えば基板表面に付着した洗浄液を乾燥させる処理を行うことができる。そして例えば洗浄処理及び超臨界流体による処理を別々の装置にて実施する場合と比較して装置間での基板の受け渡しや基板の搬送といった動作が必要ないのでスループットの向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るウエハ処理装置を備えたウエハ処理システムの横断平面図である。
【図2】前記ウエハ処理システムの縦断側面図である。
【図3】前記ウエハ処理装置の縦断側面図である。
【図4】前記ウエハ処理装置の外観構成を示す第1の斜視図である。
【図5】前記ウエハ処理装置の外観構成を示す第2の斜視図である。
【図6】前記ウエハ処理装置内の洗浄槽の構成を示す一部破断斜視図である。
【図7】前記ウエハ処理装置の洗浄液などの供給・排出系を示す説明図である。
【図8】前記ウエハ処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図9】前記ウエハ処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図10】前記ウエハ処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図11】超臨界乾燥容器と洗浄槽とが縦方向に移動するウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図12】洗浄槽内にウエハを横置きに収容するウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図13】超臨界乾燥容器内に洗浄槽を収容した状態で洗浄処理を行うウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図14】超臨界流体を得るための液体としてHFEを用いるウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図15】洗浄槽を超臨界乾燥容器の内部に固定したウエハ処理装置の例を示す説明図である。
【図16】洗浄槽を超臨界乾燥容器の内部に固定したウエハ処理装置の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態として、表面にパターンが形成されたウエハの表面をアルカリ性薬液及び酸性薬液にて洗浄した後、超臨界状態の二酸化炭素(CO2)を用いて乾燥を行うウエハ処理装置について説明する。図1はこのウエハ処理装置を備えたウエハ処理システム1の横断平面図であり、図2は当該システム1の縦断側面図である。以下ウエハ処理システム1全体の説明においては、図1、図2に向かって左側を前方として説明する。ウエハ処理システム1は、FOUP6の搬入出が行われる搬入出部11と、ウエハWの洗浄処理並びに乾燥処理を実行するウエハ処理部12とを手前側からこの順に設けた構成となっている。
【0015】
搬入出部11は、例えばOHT(Overhead Hoist Transport)などの図示しない搬送ロボットにより工場内を搬送され、複数枚のウエハWを収納したFOUP6が載置される載置台111と、載置台111に載置されたFOUP6が搬送される搬送室110とを備えている。載置台111はウエハ処理システム1の外装体を形成する筐体10の前面に例えば3個設置されており、これら載置台11の上面には載置トレイ112が設けられている。載置トレイ112は搬入出部11上を前後方向にスライド可能に構成され、筐体10の前面に設けられた開口部113を介して搬送室110との間でFOUP6を搬入出することができる。図2中、114はFOUP6が搬入出される開口部113を開閉する開閉扉である。
【0016】
搬送室110内には、後段のウエハ処理部12との間でのFOUP6から取り出されたウエハWの受け渡しが行われるウエハ受け渡し部115と、搬送室110内にスライドしてきた載置トレイ112とウエハ受け渡し部115との間でFOUP6を搬送するFOUP搬送機構119とが設けられている。ウエハ受け渡し部115は、FOUP6が載置される載置トレイとして構成されており、ウエハ受け渡し部115に対向する隔壁部118には後述のウエハ処理室120に向けて開口する開口部116が設けられている。開口部116には、FOUP6に対向する位置と、その下方側の退避位置との間で昇降可能な開閉扉117が設けられており、開閉扉117は、ウエハWの取り出しや収納を行うために、FOUP6の側面に設けられた蓋体を開閉する機能を備えている。
【0017】
FOUP搬送機構119は、図2に示すようにFOUP6のトップフランジを把持してFOUP6を持ち上げ、図1に示すように前後方向及び左右方向にFOUP6を自在に搬送することができる。
【0018】
搬送室110の後段には、隔壁部118を介してウエハ処理部12が設けられており、ウエハ処理部12内にはウエハWの洗浄処理及びその後の乾燥処理が行われる例えば4台のウエハ処理装置2と、ウエハ受け渡し部115上のFOUP6と各ウエハ処理装置2との間でウエハWを搬送するウエハ搬送機構3とが配置されたウエハ処理室120が設けられている。
【0019】
図1、図2に示すようにウエハ処理室120内には、4台のウエハ処理装置2が例えば筐体10の床面上に、前後方向に1列に並べて配置されている。以下、ウエハ処理装置2及びウエハ搬送機構3の説明にあたっては、搬入出部11側から見て右側を前方、左側を後方として説明する。
【0020】
ウエハ搬送機構3はウエハ処理装置2の後部側の上段位置に架け渡された支持台36上に設けられており、支持台36上に配置された走行路37上を走行して各ウエハ処理装置2の上方位置まで移動し、ウエハWの搬入出を行うことができる。
【0021】
ウエハ搬送機構3は、例えば図3(a)に示すように垂直軸周りに回転可能に構成された基台部31を備えており、この基台部31を基端側とすると、第1のアーム部32、第2のアーム部33、第3のアーム部34及びピック35が基端側からこの順に接続されている。
【0022】
第1〜第3のアーム部32〜34は支持台36や走行路37と平行な方向に伸びる水平軸周りに回動することができる。また、先端部に設けられたピック35は、例えば図2に示すように扁平な薄板状の部材として構成されその先端部には不図示の真空チャックが設けられていてウエハWを吸着保持することができるようになっている。そしてピック35は、例えば図3(a)、図8(a)に示すように支持台36や走行路37と直行する方向に伸びる水平軸周りに回転することが可能であり、FOUP6内に水平方向に進入してウエハWを搬入出することができる。
【0023】
ウエハ処理室120内に設けられた例えば4台のウエハ処理装置2は、互いにほぼ同様の構成を備えており、ウエハW表面に気液界面を形成することなくウエハWの洗浄処理、並びに超臨界乾燥処理を一つの装置内で実行することができる。以下、ウエハ処理装置2の詳細な構成について説明すると、ウエハ処理装置2は、ウエハWをほぼ垂直な縦置きの状態で保持し、ウエハWの洗浄処理が行われる洗浄槽21と、ウエハWの洗浄処理を終え、洗浄槽21内のウエハWの乾燥処理が行われる処理容器である超臨界乾燥容器22とを備えている。
【0024】
図3(a)、図4並びに図6に示すように、洗浄槽21は例えば1枚のウエハWをほぼ垂直な状態で収容可能な扁平な直方体形状の筐体として構成されており、その上面側はウエハ処理室120内の雰囲気に開口している。ウエハ処理装置2の手前側から見て、洗浄槽21の左右方向の厚さは例えば十数mm〜数cm程度となっており、ウエハWを吸着保持したウエハ搬送機構3のピック35が上面側の開口部を介して洗浄槽21内に進入しウエハWを搬入出することが可能となっている。
【0025】
図6に示すように洗浄槽21内の底面部には、ウエハWの形状に沿って切り欠かれた板状のウエハ保持部214が設けられている。ウエハ保持部214には、切り欠かれた面に沿って溝部が形成されており、洗浄槽21内に搬入されたウエハWの下方側周縁部をこの溝部内に嵌め込むことにより、ウエハWをほぼ垂直な状態で保持することができる。
【0026】
洗浄槽21の手前側の側壁面には、図1、図4に示すように、当該側壁の両翼方向に広がるフランジ部211が設けられている。フランジ部211は、例えばその厚さが数cm〜十数cm程度の肉厚を持った扁平な直方体形状の部材として構成されており、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に格納して超臨界乾燥処理を行う際の耐圧性能を確保する役割を果たす。言い替えると、フランジ部211は、超臨界乾燥容器22を閉じるための蓋部としての役割も果たしている。フランジ部211の後ろ側の側壁面には、後述する超臨界乾燥容器22側のフランジ部222と突合して超臨界乾燥容器22の内部を気密に維持するためのフランジ面が形成されている。
【0027】
図6に示すように洗浄槽21の底板内及びフランジ部211の中央部下方位置には、一端が洗浄槽21内の底面に開口し、他端が後述の第1の流路581に接続される内部流路212が形成されている。
【0028】
洗浄槽21は、例えば図1に示すようにその開口部の長手方向をウエハ処理装置2の前後方向と一致させ、フランジ部211が手前側となるようにウエハ処理室120内に配置されている。
【0029】
超臨界乾燥容器22は、図3(a)、図4に示すように洗浄槽21全体を格納可能な格納空間221を備えた扁平な直方体形状の容器として構成され、耐圧性確保などの観点から、例えば数cm〜十数cm程度の肉厚の部材により構成されている。超臨界乾燥容器22は幅の狭い一方側の側壁面に前記格納空間221の開口部を備えている。超臨界乾燥容器22は、左右方向に広がる平板状の支持部材23によって左右の側壁面を挟まれるように支持され、格納空間221の開口部を洗浄槽21側に向けてウエハ処理室120の床面上に固定されている。
【0030】
支持部材23によって支持された側壁面よりも手前側の超臨界乾燥容器22の最前面には、格納空間221の開口部を中心に左右方向に広がるフランジ部222が形成されている。このフランジ部222についても洗浄槽21側のフランジ部211と同様に、例えばその厚さが数cm〜十数cm程度の肉厚を持った扁平な直方体形状の部材として構成されていて、超臨界乾燥容器22の開口部側にはフランジ面が形成されている。
【0031】
また超臨界乾燥容器22の天井板には、図3(a)、図7などに示すように、当該天井板を上下方向に貫通する内部流路223が設けられている。内部流路223の下端は、超臨界乾燥容器22内に開口する一方、その上端側は後述の第2の流路521に接続されている。
【0032】
以上に説明した構成を備えた洗浄槽21及び超臨界乾燥容器22において、洗浄槽21は、図3(a)、図4に示すように洗浄槽21全体が超臨界乾燥容器22の手前側に引き出され、超臨界乾燥容器22が開放された状態となる洗浄処理位置と、図3(b)、図5に示すように洗浄槽21全体を超臨界乾燥容器22内に格納し、超臨界乾燥容器22を閉じた状態となる乾燥処理位置との間で前後へ水平方向(横方向)に移動することができるようになっている。
【0033】
洗浄槽21を水平方向にスライドさせるため洗浄槽21には、その前面に設けられたフランジ部211を前後方向に向けて1本のボールネジ252が貫通している。また、フランジ部211の正面側から見て四隅の位置には、洗浄槽21のスライド方向を案内する4本のガイド部材251が、上述のボールネジ252と同じ方向に向けて当該フランジ部211を貫通している。そしてこれらボールネジ252及びガイド部材211によって洗浄槽21及びフランジ部211の全体がウエハ処理室120の床面から浮いた状態で支持されている。例えば図3(a)に示すようにこれらのボールネジ252及びガイド部材211の一端は例えばウエハ処理室120の筐体10(ウエハ処理システム1の筐体10でもある)の側壁にて支持され、その他端は超臨界乾燥容器22側のフランジ部222に支持されている。
【0034】
筐体10の側壁に支持されたボールネジ252はこの側壁を貫通し、例えば図3(a)、図3(b)に示すように当該側壁の外壁面に設けられたモーター253に接続されている。またボールネジ252及びこのボールネジ252が貫通するフランジ部211の貫通孔には、各々図示しない雌雄のネジが切ってあり、これらボールネジ252、フランジ部211、モーター253によってボールネジ機構が形成されている。
【0035】
そして回転方向及び回転量を同期させてボールネジ252を回転させることにより、洗浄槽21を前後方向にスライドさせ、既述の洗浄処理位置と乾燥処理位置との間で洗浄槽21を移動させることができる。上述のボールネジ機構は本実施の形態に係る洗浄槽21及びフランジ部211の駆動部に相当する。但し洗浄槽21及びフランジ部211を移動させる駆動部は、上述したようにボールネジ機構により構成する場合に限定されるものではない。例えばボールネジ機構に替えてリニアモータを用いて洗浄槽21及びフランジ部211を移動させてもよいし、伸縮アームやエアシリンダーを用いて移動させてもよい。また図3(a)、図3(b)以外の図においては便宜上、モーター253の記載は省略してある。
【0036】
ここで図4、図5に示した24は、格納空間221、222を互い押さえつけて両フランジ面を密着させる押さえ部材である。これらの押さえ部材24は走行路241を左右に走行して、洗浄槽21が乾燥処理位置まで移動した後、これらの格納空間221、222を押さえつける位置と、洗浄槽21が洗浄処理位置まで移動する際に、左右に退避して2つの格納空間221、222を開放する位置との間を移動することができるようになっている。
【0037】
次に、洗浄槽21及び超臨界乾燥容器22への洗浄液及び超臨界乾燥用のCO2の供給排出系の構成について説明する。図7に示すように洗浄槽21の底板内からフランジ部211にかけて形成されている内部流路212は第1の流路581に接続されており、この第1の流路581は耐圧性を備えた開閉弁583を介して切り替え弁58に接続されている。第1の流路581の例えばウエハ処理室120内に配置されている領域は、例えば耐圧性を備えたフレキシブルホースなどによって構成されており、洗浄槽21の移動に伴って変形することが可能となっている。
【0038】
この切り替え弁58は、第1の流路581を洗浄液供給路571、排出路582の2本の流路に切り替えて接続する機能を備えている。洗浄液供給路571は切り替え弁57を介してさらに4本の流路に分岐しており、アルカリ性薬液供給部54に接続されたアルカリ性薬液供給路541は、ウエハW表面のパーティクルや有機性の汚染物質を除去するアルカリ性薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)を洗浄槽21へと供給し、酸性薬液供給部55に接続された酸性薬液供給路551はウエハW表面の自然酸化膜を除去する酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid)液という)を洗浄槽21へ供給する役割を果たす。
【0039】
またDIW供給部56に接続されたDIW供給路561は、各種薬液による処理を終えた後のウエハWのリンス洗浄を行うための脱イオン水(以下DIW(DeIonized Water)またはリンス液という)を洗浄槽21に供給する役割を果たす。そして、IPA供給部59に接続されたIPA供給路591は、リンス洗浄を終えたウエハWがIPA(IsoPropyl Alcohol)に浸漬された状態で超臨界乾燥容器22内へと搬入されるように、IPAを洗浄槽21へと供給する機能を備えている。
【0040】
ここで本実施の形態に係るウエハ処理装置2は、超臨界流体としてCO2を用いるが、リンス洗浄を終えてウエハWを浸漬させた状態のDIWに超臨界状態のCO2を供給すると、炭酸が生成されてウエハWに影響を与えるおそれがある。このため、本例に係るウエハ処理装置2では、リンス洗浄を終えた後、洗浄槽21内の液体をIPAに置換して、超臨界乾燥処理時における炭酸の発生を抑えている。
また切り替え弁58に接続されたもう一本の流路である排出路582は洗浄槽21内部の流体をウエハ処理装置2の装置外へと排出するための流路である。
【0041】
一方、超臨界乾燥容器22の天井板を貫通する内部流路223についても耐圧性を備えたフレキシブルホースを含む第2の流路521に接続されており、この第2の流路521はやはり耐圧性を備えた開閉弁523を介して切り替え弁52に接続されている。切り替え弁52は第2の流路521をパージガス供給路511、CO2供給路531の2本の流路に切り替えて接続する機能を備え、パージガス供給路511に接続されたパージガス供給部51からは洗浄槽21内の雰囲気を排気するパージガスが供給される。またCO2供給路531は昇圧ポンプ532を介してCO2供給部53に接続されており、昇圧ポンプ532は例えば10MPaまでCO2を昇圧し、超臨界の状態で洗浄槽21に向けて供給する役割を果たす。これらCO2供給部53やCO2供給路531は本実施の形態に係るウエハ洗浄装置2の流体供給部に相当する。また昇圧ポンプ532はCO2供給部53から供給されるCO2を加圧して超臨界状態とすると共に、その超臨界状態が維持されるように洗浄槽21内を加圧する加圧部の役割も果たす。
【0042】
さらにウエハ処理室120の筐体10(ウエハ処理システム1の筐体10)の床面にも排出ライン101が接続されており、当該ウエハ処理室120の床面に流下した液体を外部に排出することができる。これら各種のガスや液の供給部51、53、54、55、56や各種供給路511、531、541、551、561などは、例えばウエハ処理装置2の後方側の領域(ウエハ処理システム1の搬入出部11側から見て左手側の領域)に格納されている。
【0043】
以上の構成を備えたウエハ処理装置2を含むウエハ処理システム1には、図2、図3(a)、図3(b)、図7に示すように制御部4が接続されている。制御部4は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれらウエハ処理システム1やウエハ搬送機構3、ウエハ処理装置2の作用、即ち搬入出部11内を搬送されたFOUP6からウエハWを取り出し、各ウエハ処理装置2内に搬入して洗浄処理、超臨界乾燥処理を行ってから、ウエハWを搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。この制御部4についても例えばウエハ処理装置2の後方側の領域に設けられている。
【0044】
以上の構成を備えたウエハ処理システム1の作用について説明する。いずれかの搬入出部11上にFOUP6が載置されると、載置トレイ112がスライドしてFOUP6を搬送室110内に取り込む。搬送室110内に取り込まれたFOUP6はFOUP搬送機構119によってトップフランジを把持されて持ち上げられ、ウエハ受け渡し部115まで搬送室110内を搬送される。
【0045】
ウエハ受け渡し部115上にFOUP6が載置されると開閉扉117がFOUP6の蓋体を取り外して下方に退避する。そして図8(a)に示すようにウエハ搬送機構3はピック35がほぼ水平となってウエハWの吸着保持面が上面を向くように当該ピック35を回転させた後、基台部31を搬送室110側に移動させてピック35をFOUP6内に進入させ処理対象のウエハWの下方に位置させる。
【0046】
しかる後、ピック35を上昇させることにより、FOUP6からウエハ搬送機構3へとウエハWが受け渡され、搬送室110とは反対方向に基台部31を移動させてFOUP6内からピック35を退出させる。こうして処理対象のウエハWを取り出したら、当該ウエハWに対する洗浄処理が実行されるウエハ処理装置2まで基台部31を移動させる。
【0047】
ウエハ処理装置2側においては、図3(a)に示すように内部が空の状態の洗浄槽21を超臨界乾燥容器22から引き出した洗浄処理位置にて待機させており、当該洗浄槽21の上方位置までウエハWを搬送したら、ウエハ搬送機構3はピック35を回転させて図3(a)、図8(b)に示すようにウエハWをほぼ垂直な状態で保持すると共に、このウエハWの下端を洗浄槽21の開口部に対向する位置まで移動させる。
【0048】
こうして洗浄槽21内にウエハWを搬入可能な状態となったら、各アーム32〜34を作動させてピック35及びウエハWを洗浄槽21内に進入させる。そしてウエハWの下方側周縁部がウエハ保持部214の切り欠き部の内周面に形成された溝部内に保持されたら、ピック35によるウエハWの吸着保持を解除し、図8(c)に示すようにピック35を洗浄槽21内から退避させる。
【0049】
以上の動作によりウエハ処理装置2においては、図9(a)の洗浄槽21の縦断側面図に示すように洗浄処理位置まで移動した洗浄槽21内にウエハWが縦置きで収容された状態となっている。洗浄槽21内にウエハWが搬入されたら、図9(b)に示すようにウエハ処理装置2は開閉弁583を開(図9(b)中に「O」と表示してある)としてアルカリ性薬液供給部54からアルカリ性薬液(SC1液)を供給する。なお、図9、図10の各図においては、ウエハ搬送機構3やボールネジ252、洗浄槽21内のウエハ保持部214などを適宜省略して表示してある。
【0050】
アルカリ性薬液供給部54から供給されたアルカリ性薬液は、内部流路212を通って洗浄槽21の底面からウエハWの保持されている空間内に導入され、その液位が徐々に上昇し、やがてアルカリ性薬液は洗浄槽21上面の開口部からオーバーフローする。このようにアルカリ性薬液が洗浄槽21の底面側から供給され、開口部からのオーバーフローによって排出されることにより、洗浄槽21内には下方側から上方側へ流れるアルカリ性薬液の上昇流が形成され、ウエハWの表面がこの流れと接触することによってパーティクルや有機性の汚染物質の除去が促進される。即ち、当該動作においては、洗浄槽21の開口部が当該洗浄槽21内の洗浄液を排出するための液体排出部の役割を果たしていることになる。
【0051】
洗浄槽21からオーバーフローしたアルカリ性薬液はウエハ処理室120の筐体10底面の排出ライン101より外部へ排出される。ここで図9(b)の洗浄槽21の縦断側面図に示した右上がりの斜線のハッチは、洗浄槽21にアルカリ性薬液や酸性薬液などの洗浄液が満たされている様子を模式的に示している。
【0052】
こうしてアルカリ性薬液によるウエハWの洗浄を終えたら、洗浄槽21に供給する洗浄液をDIW供給部56からのDIWに切り替えて、洗浄槽21内をDIWで置換し、ウエハW表面のリンス洗浄を行う。このリンス洗浄においても洗浄槽21内のDIWの上昇流によってウエハW表面のリンス洗浄が促進される。またこのように洗浄槽21内が液体で満たされた状態のまま洗浄液の切り替えが行われるので、ウエハW表面は気体に晒されることがなく、気液界面でのパターン倒れが発生しない。さらには、本実施の形態に係るウエハ処理装置2では、上述のように洗浄槽21内の液体を置換して洗浄液の切り替えが行われるので、洗浄槽21内の空間の容積をできるだけ小さくすることにより洗浄液の迅速な切り替えが可能となる。
【0053】
所定時間リンス洗浄を実行したら、今度は洗浄槽21へ供給される洗浄液を酸性薬液供給部55からの酸性薬液(DHF液)に切り替えてウエハW表面の自然酸化膜を除去する。酸性薬液が洗浄槽21の開口部からオーバーフローし、洗浄槽21内に上昇流が形成される点、洗浄槽21内にDIWが満たされた状態のまま酸性薬液への切り替えが行われる点はアルカリ性薬液の供給動作と同様である。
【0054】
そして所定時間酸性薬液による洗浄処理が行われたら、洗浄槽21へ供給する洗浄液を再度DIWに切り替えてウエハWのリンス洗浄を行った後DIWの供給を停止して、洗浄槽21内をIPAにて置換し一連の洗浄処理を終了する(第1の流路581の開閉弁を閉「S」)。本実施の形態に係るウエハ処理装置2においては、このようにウエハWの洗浄処理が超臨界乾燥容器22の外で行われることにより、ウエハWの最終的な処理である超臨界乾燥処理が行われる超臨界乾燥容器22内がパーティクルや汚れなどを含む各種の洗浄液で汚染されずに済む。ウエハWの洗浄処理を終えたタイミングにおいては、洗浄槽21内はIPAで満たされ、ウエハWは当該IPA内に浸漬された状態となっている。
【0055】
こうしてウエハWの洗浄処理を終えたら、図9(c)に示すように洗浄槽21をスライドさせて超臨界乾燥容器22の格納空間221内に洗浄槽21を進入させ、両フランジ部211、222のフランジ面を密着させて超臨界乾燥容器22内を閉じ、気密な状態とする。このとき例えば格納空間221の開口部の手前にエアナイフなどを設けて、オーバーフローの際に洗浄槽21の外壁面に付着した洗浄液を除去してから洗浄槽21を格納空間221内に進入させてもよい。ここで図9(c)の洗浄槽21の縦断側面図に示した右下がりの斜線のハッチは、洗浄槽21にIPAが満たされている様子を模式的に示している。
【0056】
超臨界乾燥容器22が気密な状態となったら、超臨界乾燥容器22の天井板側の内部流路223に接続された第2の流路521の開閉弁523を開「O」とし、切り替え弁52の接続先をCO2供給路531に切り替えてCO2供給部53より超臨界状態のCO2を洗浄槽21内に供給する一方、第1の流路521側の開閉弁583を再び開「O」として洗浄槽21内の液体を排出する。このとき、第1の流路581の下流の切り替え弁58は排出路582に切り替えられており、洗浄槽21の上面側から供給された超臨界状態のCO2によって、洗浄槽21内のIPAを下方側へと押し出す力が加わる。この結果、IPAは洗浄槽21の底板内に設けられた内部流路212を介して排出路582へ流出し、外部へと排出される。即ちこの操作においては第1の流路581や排出路582が洗浄槽21内のIPAを排出する液体排出部となっている。
【0057】
そしてこの操作により図10(a)に示すように洗浄槽21内には、下方側のIPAの相(右下がりのハッチで塗りつぶした領域)と、上方側の超臨界CO2の相(砂状のパターンで塗りつぶした領域)との2つの相が形成される。そして超臨界CO2の供給及びIPAの排出によってこれら2つの相の界面が次第に下方側へと移動し、ウエハWの表面がIPAから超臨界CO2に置換されることによりウエハW表面から液体が除去される。ここで例えば開閉弁583は、絞り弁としての機能も備えており、洗浄槽22内の圧力がCO2の超臨界状態を維持可能な圧力に保たれるような抜き出し量にてIPAを抜き出すように開閉弁583の開度が調節されている。
【0058】
こうして図10(b)に示すように、洗浄槽21内の超臨界CO2への置換が完了したら、第2の流路521側の開閉弁523を閉「S」として超臨界CO2の供給を停止する一方、第1の流路581からはCO2の排出を開始する。CO2を排出すると洗浄槽21内の圧力が次第に低下し、やがてCO2は気体の状態となって排出されていく。このとき図10(c)に示すように第2の流路521側の切り替え弁52をパージガス供給路511に切り替えて洗浄槽21内にパージガスを供給し、洗浄槽21内のCO2の排出を促進してもよい。この操作においては、第1の排出路583は、洗浄槽21内から超臨界流体を排出する(圧力が低下して気体の状態で排出される場合も含む)超臨界流体排出部として機能している。ここでCO2が断熱膨張することによる温度低下に伴う結露を防止するため、洗浄槽21や超臨界乾燥容器22に不図示のヒーターを設けておき、洗浄槽21内が所定の温度以上に保たれるようにCO2の排出を行ってもよい。
【0059】
このように本例に係るウエハ処理装置2では、ウエハWを液体(IPA)に浸漬された状態で収容する洗浄槽21内を超臨界流体(超臨界状態のCO2)で置換し、次いでこの超臨界流体を減圧して気体としている。このため、ウエハWの表面は、液体→超臨界流体→気体の順に置換され、気液界面が形成されずに乾燥した状態となる。
【0060】
超臨界乾燥を終えたら洗浄槽21を液処理位置までスライドさせ、ウエハ搬送機構3によりウエハWを取り出して、処理後のウエハWをFOUP6内に搬入する。こうして4台のウエハ処理装置2を利用してFOUP6内の全ウエハWについての洗浄処理、超臨界乾燥処理を終えたら、搬入時とは逆の経路でFOUP6を搬入出部11まで搬送し、一連の処理を終える。
【0061】
本実施の形態に係るウエハ処理装置2よれば以下の効果がある。洗浄槽21内でウエハWの洗浄を行い、その後この洗浄槽21内にウエハWを収容したまま超臨界状態のCO2を供給してウエハWを乾燥させるので、乾燥状態となるまでの間にウエハW表面に気液界面が形成されることなく、パターン倒れを発生させずにウエハWの洗浄処理、超臨界乾燥処理を行うことができる。そして例えば洗浄処理及び超臨界乾燥処理を別々の装置にて実施する場合と比較して装置間でのウエハの受け渡しやウエハの搬送といった動作が必要ないのでスループットの向上に貢献できる。
【0062】
ここで上述の例においては、図3(a)、図3(b)に示すように、洗浄処理位置と超臨界乾燥処理位置との間の移動については洗浄槽21を動かすことによって行っているが超臨界乾燥容器22側を移動させてもよく、またこれらの移動方向も横方向に限られない。例えば図11(a)、図11(b)に示すように洗浄槽21の底面にフランジ部211を設け、超臨界乾燥容器22の格納空間221の開口部を下方側に向けて洗浄槽21と超臨界乾燥容器22とを相対的に上下方向に移動させて洗浄処理位置と超臨界処理位置との間での移動を行ってもよい。
【0063】
また洗浄処理、超臨界乾燥処理を行う際に、ウエハWは縦置きにて保持されている場合に限定されず、図12に示すようにウエハWが横置きの状態で各種の処理が行われるようにウエハ処理装置2を構成してもよい。図12に示した例では、洗浄液などの排出を専用に行う排出路582(流体排出部)が洗浄槽21に直接接続されており、洗浄槽21の開口部から洗浄液などをオーバーフローさせる手法に替えて、この排出路582から洗浄液などを排出する構成となっている。こうした構成を採用することにより、超臨界乾燥容器22内に洗浄槽21を収容した状態にてウエハWの洗浄処理を行うことができる。
【0064】
前記のウエハ処理装置2と同様に、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に収容した状態でウエハWの洗浄処理を行う方式のウエハ処理装置2につき、図13(a)〜図13(c)を参照しながら説明しておく。これらの図に示したウエハ処理装置2は、図1〜図10に示したウエハ処理装置2とほぼ同様の構成を備えており、ウエハWを縦置きで収容して洗浄処理や超臨界乾燥処理を実行するようになっている。但し、図13(a)〜図13(c)に示したウエハ処理装置2の洗浄槽21には、フランジ部211及び洗浄槽21の側壁の上方位置を貫通するように内部流路213が設けられており、当該内部流路213には洗浄液やリンス液を供給するための第1の供給路521が接続されている点と、洗浄槽21の底板側の内部流路212には、洗浄液や超臨界CO2の排出専用の排出路582(流体排出部)が接続されている点とが既述のウエハ処理装置2とは異なっている。
【0065】
本例に係るウエハ処理装置2では、ウエハ搬送機構3からウエハWを受け取って洗浄槽21内に収容した後、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内にスライドさせる。そして図13(a)に示すように第1の流路581及び排出路582の各開閉弁583、584を開「O」として第1の流路581からSC1を供給し、ウエハWの洗浄処理を開始する。このとき洗浄槽21内がSC1液で満たされた状態となるように、第1の流路581からのSC1液の供給量を排液路582からの抜き出し量よりも多くし、且つ、例えば第2の流路521を一次的に大気側へ開放して空気抜きをするとよい。
【0066】
そして洗浄槽21内がSC1液で満たされた状態となったら、第1の流路581からの供給量と排液路582からの抜き出し量とをバランスさせ、第2の流路521の開閉弁523を閉「S」としてアルカリ性薬液洗浄を継続する。この後、DIW→DHF液→DIWの順に洗浄槽21内を各種薬液及びリンス液で置換しながら洗浄処理を実行し、最後に洗浄槽21内をIPAで置換した状態で洗浄処理を終える。
【0067】
洗浄処理を終えたら、図13(b)に示すように第1の流路581の開閉弁583を閉「S」とする一方、第2の流路521の開閉弁523を開「O」として超臨界状態のCO2を供給し、洗浄槽21内のIPAを排出路582側へ押し出してウエハWの超臨界乾燥処理を実行する。洗浄槽21内の超臨界CO2への置換が完了したら、第2の流路521側の開閉弁523を閉「S」として超臨界CO2の供給を停止する一方、排出路582から超臨界CO2を排出して超臨界乾燥処理を終える(図13(c))。本例に係るウエハ処理装置2によれば、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に収容した状態で洗浄処理を実行するので、洗浄槽21の外壁面を洗浄液やリンス液と接触させず、洗浄槽21の汚染を防止することができる。
【0068】
以上に説明した各例ではCO2を超臨界の状態で供給し、ウエハWを浸漬した液体(例えばIPA)と置換することにより乾燥した状態のウエハWを得ているが、超臨界乾燥処理に用いられる超臨界流体はCO2の例に限定されない。例えばハイドロフルオロエーテル(Hydrofluoroethers:以下、HFEという)を用いてもよい。
【0069】
図14(a)〜図14(c)は、超臨界流体としてHFEを用いるウエハ処理装置2の例を示している。これらの図に示したウエハ処理装置2は、図1〜図10に示したウエハ処理装置2とほぼ同様の構成を備えているが、HFEが第1の流路581から液体の状態で供給される点と、超臨界乾燥容器22側の内部流路223は排出路582(流体排出部)に接続されている点とが異なっている。この観点において第1の流路581は、超臨界流体を得るための液体であるHFEを洗浄槽21へと供給する流体供給部の役割を果たしている。また、例えば洗浄槽21の底板や側壁には、洗浄槽内のHFEを加熱するためのヒーター216が設けられている。ヒーター216は、液体のHFEを超臨界状態とし、その超臨界状態を維持するための加熱部に相当している。
【0070】
本例に係るウエハ処理装置2は、図14(a)に示すように洗浄槽21を超臨界乾燥容器22の手前に引き出した洗浄処理位置にて各種薬液やリンス液をオーバーフローさせながらアルカリ性薬液洗浄(SC1液)→リンス洗浄(DIW)→酸性薬液洗浄(DHF液)→リンス洗浄(DIW)→IPA置換が行なわれる。そしてIPAで満たされた洗浄槽21に第1の流路からHFEが液体の状態で供給され、HFEにて満たされた状態で洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に移動させる。
【0071】
図示の便宜上、図14(a)〜図14(c)には示していないが、本例における超臨界乾燥容器22の格納空間221は、洗浄槽21よりも大きく形成されている。そして洗浄槽21を格納空間221内に格納すると、洗浄槽21の上方側には、格納空間221の容積全体の例えば2割程度の大きさの隙間が形成されるようになっている。この状態でヒーター216を作動させると洗浄槽21及び格納空間221内が高温、高圧となってHFEが超臨界状態となり、ウエハWの超臨界乾燥処理が実行される(図14(b))。
【0072】
しかる後、排出路582の開閉弁584を開「O」とし超臨界状態のHFEを排出することにより、乾燥した状態のウエハWを取り出すことが可能となる(図14(c))。このとき第1の流路581からパージガスを供給してもよい。超臨界流体としてHFEを用いる本例においては、ウエハWの表面は、超臨界流体を得るための液体(液体HFE)→超臨界流体(超臨界HFE)の順に周囲の状態が変化し、気液界面が形成されずに乾燥した状態となる。
【0073】
以上に説明した各実施の形態においては、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22の外側に引き出し可能な構成としたが、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22の内部に収容した状態で固定した構造としてもよい。図15(a)〜図15(d)の例においては、ウエハWを横置きの状態で収容する洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に固定したウエハ処理装置2の例を示している。
【0074】
図15(a)に示すように本例に係るウエハ処理装置2では例えば洗浄液供給路271から洗浄液やリンス液の供給を行い、排出路272から洗浄液の排出を行うことによって超臨界乾燥容器22内に洗浄液などをオーバーフローさせずに洗浄処理を行う。
【0075】
また洗浄処理を行っている期間中は、洗浄槽21並びに超臨界乾燥容器22の上面を開放した状態とし、超臨界乾燥容器22の開口部から例えば清浄空気のダウンフローを取り込み、洗浄槽21の側壁と超臨界乾燥容器22の側壁との間の空間を通流させ、超臨界乾燥容器22の底面に設けられた排出路273より排気する。このように洗浄槽21の周囲にダウンフローが形成されていることにより、洗浄槽21に供給される薬液蒸気の周囲への拡散を防止することができる。
【0076】
こうして洗浄処理を終えたら洗浄槽21内をIPAで置換し、さらにこのIPAをHFEにて置換し、洗浄液供給路271、排出路272、273を閉「S」とすると共に、仕切り部材である開閉蓋26にて超臨界乾燥容器22を密閉する(図15(b))。次いで、例えば超臨界乾燥容器22の側壁面及び底板に設けられたヒーター224に給電部41より電力を供給して超臨界乾燥容器22及び洗浄槽21内を加熱して、HFEを超臨界状態にしてウエハWを乾燥させる(図15(c))。しかる後、各排出路272、273を開「O」としてHFEを排出して、乾燥したウエハWを取り出すことが可能となる(図15(d))。
本例では洗浄液供給路271が超臨界流体を得るための液体であるHFEを供給する流体供給部の機能を兼ね備えており、排出路272、273が流体排出部に相当する。
【0077】
一方、図16(a)〜図16(d)は、洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に固定したウエハ処理装置2の例において、洗浄槽21並びに超臨界乾燥容器22内を洗浄液やリンス液で満たした状態で洗浄処理を行う場合の例を示している。本例では、洗浄槽21の底面に洗浄液供給路271が設けられており、また開閉蓋26には超臨界乾燥容器22の外部の雰囲気と連通した気体流路261が設けられ、排出路273は例えば超臨界乾燥容器22の底面のみに設けられている点が図15の各図に示したウエハ処理装置2と異なっている。
【0078】
本例に係るウエハ処理装置2では、ウエハWを洗浄槽21内に収容したら、開閉蓋26を閉じてから薬液(例えばSC1液)の供給を開始する。そして洗浄槽21から薬液をオーバーフローさせると共に、排出路273の薬液の排出量を調節して超臨界乾燥容器22内全体、言い替えると洗浄槽21内及びこの洗浄槽21の周囲の空間全体が洗浄液で満たされた状態とする。このとき気体流路261を外部雰囲気に連通させることにより、超臨界乾燥容器22内の気体を外部に排出して洗浄液で置換することができる。
【0079】
そして図16(a)に示すように、超臨界乾燥容器22内が洗浄液で満たされたら、気体流路261を閉じて洗浄液の供給量と排出量とをバランスさせ、洗浄液供給路271から供給する液体をSC1液→DIW→DHF液→DIWの順に切り替えて洗浄処理を実行する。本例では、洗浄液及びリンス液が洗浄槽21からオーバーフローし、洗浄槽21の側壁と超臨界乾燥容器22の側壁との間の空間を通流して排出路273から排出される。このため、これらの洗浄液、リンス液と接する洗浄槽21及び超臨界乾燥容器22の部材表面を洗浄して、清浄な環境下でウエハWの乾燥処理を開始することができる。
【0080】
洗浄処理を終えたら、超臨界乾燥容器22内をIPAで置換し、さらにIPAをHFEで置換する。そして気体流路261を一時的に開放して外部雰囲気を取り込んでHFEの液レベルを調節し、超臨界乾燥容器22の内部容積の8割程度がHFEで満たされた状態とする(図16(b))。しかる後、全ての流路271、273、261を閉じ、給電部41より電力を供給してヒーター224により超臨界乾燥容器22及び洗浄槽21内を加熱すると、HFEが超臨界状態となってウエハWが乾燥した状態となる(図16(c))。しかる後、各排出路273を開いてHFEを排出して、乾燥したウエハWを取り出すことが可能となる(図16(d))。
本例では洗浄液供給路271が超臨界流体を得るための液体であるHFEを供給する流体供給部の機能を兼ね備えており、排出路273が流体排出部に相当する。
【0081】
これら図15(a)〜図15(d)、図16(a)〜図16(d)に示した例によれば、超臨界乾燥容器22内に洗浄槽21が固定されているので、洗浄槽21全体を移動させる大掛かりな駆動機構を設けずに済む。また、これらの例では洗浄槽21内にウエハWを横置きに収容する例を示したが、図6に示したようにウエハWを縦置きに収容する洗浄槽21を超臨界乾燥容器22内に固定してもよい。
【0082】
以上に説明した各実施の形態においては、超臨界乾燥処理に用いる超臨界流体あるいは超臨界流体を得るための液体として、CO2やHFEを採用した例を示したが、当該処理に適用可能な流体はこれらの例に限定されるものではない。また上述の例では、流体を超臨界状態とするため、またはその超臨界状態を維持するために、昇圧ポンプ532(加圧部)を用いて洗浄槽21内を加圧したり、ヒーター216、224(加熱部)により洗浄槽21内を加熱したりする例を示したが、これら加圧部や加熱部を組み合わせて流体を超臨界状態とし、またその状態を維持してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
W ウエハ
1 ウエハ処理システム
120 ウエハ処理室
2 ウエハ処理装置
21 洗浄槽
214 ウエハ保持部
22 超臨界乾燥容器
3 ウエハ搬送機構
4 制御部
53 CO2供給部
531 CO2供給路
532 昇圧ポンプ
54 アルカリ性薬液供給部
55 酸性薬液供給部
56 DIW供給部
57 切り替え弁
571 洗浄液供給路
581 第1の流路
6 FOUP
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容し、洗浄液を通流させて当該基板を洗浄するための洗浄槽と、
この洗浄槽を収容し、前記基板に対して超臨界流体による処理を行うための処理容器と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記洗浄槽内に超臨界流体を得るための液体または超臨界流体を供給する流体供給部と、
前記洗浄槽内の流体を排出するための流体排出部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記超臨界流体を得るための液体を加熱することにより当該液体を超臨界状態とし、または前記超臨界流体を加熱することにより超臨界状態を維持する加熱部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記超臨界流体を得るための液体を加圧することにより当該液体を超臨界状態とし、または前記超臨界流体を加圧することにより超臨界状態を維持する加圧部を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態と処理容器の内部に位置する状態との一方を選択するために洗浄槽と処理容器とを相対的に移動させる駆動部を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で基板の洗浄が行われることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記洗浄槽が処理容器の内部に位置する状態で基板の洗浄が行われ、前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で当該洗浄槽に対して基板の受け渡しが行われることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記洗浄槽には前記処理容器を閉じるための蓋部が取り付けられ、
前記駆動部は、洗浄槽を処理容器内に搬入して前記蓋部により処理容器を閉じ、また洗浄槽を処理容器内から引き出して処理容器を開放するように、当該洗浄槽と処理容器とを相対的に駆動するものであることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記洗浄槽は処理容器の内部に設けられ、
前記処理容器には、仕切り部材で開閉される搬入出口が形成され、この搬入出口を介して処理容器の外部と洗浄槽との間で基板の受け渡しが行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記洗浄槽は、上面が開口し、基板を縦置きで収容するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板を収容した洗浄槽に洗浄液を通流させて当該基板を洗浄する工程と、
前記洗浄槽を処理容器内に収容した状態で、前記基板に対して超臨界流体による処理を行う工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
前記基板を洗浄する工程は、前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で行われ、当該基板を洗浄する工程の次に、これら洗浄槽と処理容器とを相対的に移動させて、当該洗浄槽を処理容器の内部に位置させる工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記基板を洗浄する工程は、前記洗浄槽が処理容器の内部に位置する状態で行なわれることを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項1】
基板を収容し、洗浄液を通流させて当該基板を洗浄するための洗浄槽と、
この洗浄槽を収容し、前記基板に対して超臨界流体による処理を行うための処理容器と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記洗浄槽内に超臨界流体を得るための液体または超臨界流体を供給する流体供給部と、
前記洗浄槽内の流体を排出するための流体排出部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記超臨界流体を得るための液体を加熱することにより当該液体を超臨界状態とし、または前記超臨界流体を加熱することにより超臨界状態を維持する加熱部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記超臨界流体を得るための液体を加圧することにより当該液体を超臨界状態とし、または前記超臨界流体を加圧することにより超臨界状態を維持する加圧部を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態と処理容器の内部に位置する状態との一方を選択するために洗浄槽と処理容器とを相対的に移動させる駆動部を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で基板の洗浄が行われることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記洗浄槽が処理容器の内部に位置する状態で基板の洗浄が行われ、前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で当該洗浄槽に対して基板の受け渡しが行われることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記洗浄槽には前記処理容器を閉じるための蓋部が取り付けられ、
前記駆動部は、洗浄槽を処理容器内に搬入して前記蓋部により処理容器を閉じ、また洗浄槽を処理容器内から引き出して処理容器を開放するように、当該洗浄槽と処理容器とを相対的に駆動するものであることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記洗浄槽は処理容器の内部に設けられ、
前記処理容器には、仕切り部材で開閉される搬入出口が形成され、この搬入出口を介して処理容器の外部と洗浄槽との間で基板の受け渡しが行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記洗浄槽は、上面が開口し、基板を縦置きで収容するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板を収容した洗浄槽に洗浄液を通流させて当該基板を洗浄する工程と、
前記洗浄槽を処理容器内に収容した状態で、前記基板に対して超臨界流体による処理を行う工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
前記基板を洗浄する工程は、前記洗浄槽が処理容器の外部に位置する状態で行われ、当該基板を洗浄する工程の次に、これら洗浄槽と処理容器とを相対的に移動させて、当該洗浄槽を処理容器の内部に位置させる工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記基板を洗浄する工程は、前記洗浄槽が処理容器の内部に位置する状態で行なわれることを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−14706(P2011−14706A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157255(P2009−157255)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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