説明

基板処理装置

【課題】
TMAの様に大気中に漏洩すると発火するガスで、水や炭酸ガス(CO2 )等の様に酸素を含む物質では消火できない原料を用いた基板処理装置に於いて、安全に原料を保管できると共に発火時には速やかに消火を可能とする基板処理装置を提供する。
【解決手段】
酸素と混合することで発火又は爆発する原料を、基板が収納された処理室内に供給し、基板に所望の処理を行う基板処理装置であって、前記原料を収納する原料タンク30を気密に収納する収納体31と、該収納体に接続され、該収納体に常時不活性ガスを供給するガス供給手段36と、前記収納体内での発火又は爆発を検知する検知手段46,47,48,49と、前記不活性ガスの供給量を制御する制御手段52とを備え、該制御手段は、前記検知手段が発火又は爆発を検知した際に不活性ガスの供給量を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ等の基板に薄膜の生成、不純物の拡散、エッチング等の処理を行う基板処理装置、特に原料ガスとして酸素と混合することで発火又は爆発する危険性を有するガスが用いられる基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置に於ける処理では、基板処理の為の原料として多種多様のガスや液体が原料として用いられ、原料の中には有毒なもの、発火性、爆発性を有するものもある。
【0003】
原料ガスが漏洩した場合の処理として、有毒ガスの場合は供給用のボンベ、或は供給用の配管を弁により密閉し、安全なガスにより希釈する等の処理がなされる。又、発火性を有するガスでは、水或は不燃ガス例えばCO2 により消火、或は希釈して消火し、或は発火性を抑制し、爆発性のガスでは防爆仕様のキャビネット内に封入する等の処理がなされていた。
【0004】
ところが、大気中に漏洩すると発火するガスで、水や炭酸ガス(CO2 )等の様に酸素を含む物質では消火できないもの、例えばTMA(トリメチルアルミニウム)がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は斯かる実情に鑑み、TMAの様に大気中に漏洩すると発火するガスで、水や炭酸ガス(CO2 )等の様に酸素を含む物質では消火できない原料を用いた基板処理装置に於いて、安全に原料を保管できると共に発火時には速やかに消火を可能とする基板処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、酸素と混合することで発火又は爆発する原料を、基板が収納された処理室内に供給し、基板に所望の処理を行う基板処理装置であって、前記原料を収納する原料タンクを気密に収納する収納体と、該収納体に接続され、該収納体に常時不活性ガスを供給するガス供給手段と、前記収納体内での発火又は爆発を検知する検知手段と、前記不活性ガスの供給量を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記検知手段が発火又は爆発を検知した際に不活性ガスの供給量を増大させる基板処理装置に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸素と混合することで発火又は爆発する原料を、基板が収納された処理室内に供給し、基板に所望の処理を行う基板処理装置であって、前記原料を収納する原料タンクを気密に収納する収納体と、該収納体に接続され、該収納体に常時不活性ガスを供給するガス供給手段と、前記収納体内での発火又は爆発を検知する検知手段と、前記不活性ガスの供給量を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記検知手段が発火又は爆発を検知した際に不活性ガスの供給量を増大させるので、原料タンクは収納体に気密に収納され、収納体は不活性ガス雰囲気となっているので、原料タンクからガスが漏洩した場合でも発火する虞れがなく、又漏洩して発火、爆発した場合も増量した不活性ガスにより収納体内を充満するので、効果的な消火が行える等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0009】
先ず、図1により本発明に係る基板処理装置の全体概略を説明する。
【0010】
図1に示される様に、基板処理装置は、主に基板処理装置本体1と原料ガスを貯蔵し、前記基板処理装置本体1に原料ガスを供給する原料ガス貯蔵部2を具備している。
【0011】
基板処理装置が収納される空間は、仕切壁3により外部搬送室4と装置収納室5とに仕切られ、前記外部搬送室4には図示しない外部搬送装置が設けられ、前記装置収納室5は前記外部搬送室4に比べて清浄度が高く維持されている。前記装置収納室5には前記基板処理装置本体1と前記原料ガス貯蔵部2とが収納され、前記基板処理装置本体1の前部、即ち後述するカセットステージ9が前記外部搬送室4に露出している。
【0012】
図2により、前記基板処理装置本体1の概略を説明する。
【0013】
筐体7内部の前面側には、図示しない外部搬送装置との間で基板収納容器としてのカセット8の授受を行うカセット授受手段としてのカセットステージ9が設けられ、該カセットステージ9の後側にはカセットエレベータ11が横行可能に設けられ、該カセットエレベータ11にはカセット搬送ロボット12が昇降可能に設けられている。前記カセットエレベータ11、前記カセット搬送ロボット12はカセット搬送手段を構成する。又、前記カセットエレベータ11の後側には、前記カセット8の載置手段としてのカセット棚13が設けられると共に前記カセットステージ9の上方にも予備カセット棚14が設けられている。該予備カセット棚14の上方にはクリーンユニット15が設けられ、該クリーンユニット15はクリーンエアを前記筐体7の内部に流通させる様に構成されている。
【0014】
該筐体7の後部上方には処理炉16が設けられ、該処理炉16の下方には昇降手段としてのボートエレベータ17が設けられ、該ボートエレベータ17は基板保持具としてのボート18を昇降し、前記処理炉16に装入、引出しする様になっており、前記ボート18は被処理基板としてのウェーハ19を水平姿勢で多段に保持する。
【0015】
前記ボートエレベータ17に取付けられた昇降アーム21の先端部には蓋体としてのシールキャップ22が取付けられ前記ボート18を垂直に支持している。
【0016】
前記ボートエレベータ17と前記カセット棚13との間には移載エレベータ23が設けられ、該移載エレベータ23には基板移載手段としてのウェーハ移載機24が取付けられている。又、前記ボートエレベータ17の横には、開閉機構を持ち前記処理炉16の炉口を閉塞する遮蔽部材としての炉口シャッタ25が設けられている。
【0017】
前記ウェーハ19が装填されたカセット8は、図示しない外部搬送装置から前記カセットステージ9に前記ウェーハ19が垂直姿勢の状態で搬入され、該ウェーハ19が水平姿勢となる様前記カセットステージ9で90°回転される。更に、前記カセット8は、前記カセットエレベータ11の昇降動作、横行動作及び前記カセット搬送ロボット12の進退動作、回転動作の協働により前記カセットステージ9から前記カセット棚13又は前記予備カセット棚14に搬送される。
【0018】
前記カセット棚13には前記ウェーハ移載機24の移載対象となるカセット8が収納される移載棚26があり、移載対象のカセット8は前記カセットエレベータ11、前記カセット搬送ロボット12の協働により前記移載棚26に移載される。
【0019】
前記カセット8が前記移載棚26に移載されると、前記ウェーハ移載機24の進退動作、回転動作及び前記移載エレベータ23の昇降動作の協働により前記移載棚26から降下状態の前記ボート18に前記ウェーハ19を移載する。
【0020】
前記ボート18に所定枚数のウェーハ19が移載されると前記ボートエレベータ17により前記ボート18が前記処理炉16に装入され、前記シールキャップ22により前記処理炉16が気密に閉塞される。該処理炉16内では前記ウェーハ19が加熱されると共に原料ガスが前記処理炉16内に供給され、前記ウェーハ19に処理がなされる。
【0021】
該ウェーハ19への処理が完了すると、該ウェーハ19は上記した作動の逆の手順により、前記ボート18から前記移載棚26のカセット8に移載され、該カセット8は前記カセットエレベータ11、前記カセット搬送ロボット12により前記移載棚26から前記カセットステージ9に移載され、図示しない外部搬送装置により前記筐体7の外部に搬出される。尚、前記炉口シャッタ25は、前記ボート18が降下状態の際に前記処理炉16の炉口を塞ぎ、外気が該処理炉16内に浸入するのを防止している。
【0022】
前記カセットエレベータ11、前記カセット搬送ロボット12、移載エレベータ23、ウェーハ移載機24等の搬送動作は、搬送制御手段27により制御される。
【0023】
次に、図3により前記原料ガス貯蔵部2について説明する。
【0024】
該原料ガス貯蔵部2は前記基板処理装置本体1に近接して設置される。
【0025】
前記原料ガス貯蔵部2の原料タンク収納体である筐体31は気密構造となっており、該筐体31内部には受台32が設けられ、該受台32に原料タンク30が設置される。該原料タンク30は、圧縮原料ガス或は液化した原料ガスを貯蔵し、前記受台32は盆状の凹形状をしており、該受台32の内部所要位置には漏液検知器33が設けられている。
【0026】
前記原料タンク30には原料ガス配給管34が接続され、該原料ガス配給管34は前記基板処理装置本体1のガス給排部35に接続され、前記原料ガス配給管34には開閉弁40が設けられている。
【0027】
前記筐体31の内部には消火ガス供給手段である消火ガス供給ライン36が設けられ、該消火ガス供給ライン36の消火ガス供給管37は前記筐体31内部の所要位置に開口している。又、該筐体31は排気ライン38を介して図示しない排気装置に接続され、前記排気ライン38には排気流量を調整する為の流量調整弁、例えばダンパ39が設けられている。
【0028】
前記消火ガス供給ライン36はレギュレータ(圧力調整器)41を介して前記筐体31外部の消火ガス源(図示せず)に連通している。該消火ガス源は、原料ガスと反応しないガス、例えば窒素ガス等の不活性ガスを供給する。
【0029】
前記消火ガス供給管37にはガス流量計42、主開閉弁43が設けられ、又前記ガス流量計42の上流側、前記主開閉弁43の下流側に連通するバイパス管44設けられ、該バイパス管44には副開閉弁45が設けられている。
【0030】
前記筐体31内部の適宜な位置、例えば該筐体31の天井面にガス漏洩検知器46、赤外線センサ47、煙検知器48、温度センサ49、圧力計51が設けられている。前記漏液検知器33及び前記ガス漏洩検知器46、赤外線センサ47、煙検知器48、温度センサ49、圧力計51の検知結果はそれぞれ原料ガス貯蔵制御部52に送出され、該原料ガス貯蔵制御部52は検知結果を基に前記レギュレータ41、前記ガス流量計42の制御、或は前記主開閉弁43、前記副開閉弁45の開閉を制御する。
【0031】
尚、前記消火ガス供給ライン36は前記消火ガス供給管37が前記筐体31に開口していればよく、前記ガス流量計42、前記主開閉弁43、前記バイパス管44、前記副開閉弁45等は前記筐体31の外部に設けてもよい。又、前記漏液検知器33及び前記ガス漏洩検知器46、赤外線センサ47、煙検知器48、温度センサ49等の発火、爆発検知手段としては、検知するガスの種類に応じて適宜選択され、少なくとも1つが設けられていればよい。
【0032】
定常状態では、前記主開閉弁43が開とされ、前記消火ガス供給ライン36から不活性ガスが常時供給され、供給量は前記レギュレータ41と前記ガス流量計42によって供給量が調整され、又前記ダンパ39の排気量の調整によって前記筐体31の内部の圧力が調整され、前記圧力計51によって検出される圧力がゲージ圧で1kPa以下、即ち負圧となる様に調整される。
【0033】
従って、前記筐体31の内部は原料ガスが非反応状態の減圧雰囲気とされ、原料ガスが漏洩した場合にも発火、爆発が抑制される様にし、又減圧雰囲気とすることで漏洩したガスが前記筐体31の外部に漏れない様になっている。
【0034】
原料ガスが漏出し、発火、爆発した場合は、前記ガス漏洩検知器46がガス漏れを検知し、前記赤外線センサ47が炎から発せられる赤外線を検知し、前記煙検知器48が発火時の煙を検知し、前記温度センサ49は発火による温度上昇を検知し、発火、爆発が起ったことを検知し、検知結果は前記原料ガス貯蔵制御部52に送出される。該原料ガス貯蔵制御部52は、前記ガス漏洩検知器46、前記赤外線センサ47、前記煙検知器48、前記温度センサ49の内少なくとも1つから検知信号が送出された場合、発火、爆発が起ったと判断してブザーを鳴らし、警告灯を点灯する等して発火、爆発の発生を告知すると共に前記副開閉弁45、前記ダンパ39を全開にして大量の不活性ガスを供給して消火する。
【0035】
前記筐体31は密閉構造であり、該筐体31内を大量の不活性ガスで充満することで、迅速な消火が可能であると共に該筐体31外部に延焼することが防止される。
【0036】
次に、本発明の対象となる原料ガス、例えばTMAを用いてAl2 O3 膜をALD(Atomic layer Deposition)法により成膜する基板処理装置について説明する。
【0037】
この様なAl2 O3 膜を成膜する基板処理装置としては、複数枚の基板を多層に保持して成膜処理する縦型バッチ式装置が提案されている。
【0038】
図4は、基板処理装置の縦型基板処理炉55の概略縦断面図であり、図5は該縦型基板処理炉55の概略縦断面図であり、図6は該縦型基板処理炉55の概略横断面図であり、図7は該縦型基板処理炉55の合流タイプのガス供給ノズルの説明図であり、図7(A)は概略図、図7(B)は図7(A)のA部の部分拡大図であり、図8は分離タイプのガス供給ノズルの説明図であり、図8(A)は概略図であり、図8(B)は図8(A)のB部の部分拡大図である。
【0039】
加熱手段であるヒータ56の内側に、被処理基板であるウェーハ19を処理する反応容器として反応管57が設けられ、該反応管57の下端には、例えばステンレス等よりなるマニホールド58が同心に、又シール部材59例えばOリングを介して気密に設けられている。前記マニホールド58の下端開口は蓋体であるシールキャップ22により例えばOリング61を介して気密に閉塞される様になっており、前記ヒータ56、前記反応管57、前記マニホールド58、前記シールキャップ22等により前記縦型基盤処理炉55が形成され、前記反応管57、前記マニホールド58、前記シールキャップ22により処理室62が画成される。前記反応管57は前記マニホールド58を介してヒータベース63に支持される。
【0040】
前記シールキャップ22には石英キャップ64を介して基板保持具であるボート18が立設され、前記石英キャップ64は前記ボート18の保持体となっている。該ボート18にはバッチ処理される複数のウェーハ19が水平姿勢で軸心方向に多段に保持される。前記ヒータ56は前記反応管57に装入されたウェーハ19を所定の温度に加熱する。
【0041】
前記反応管57へは複数種類、ここでは3種類のガスを供給する3本のガス供給管65,66,67が設けられている。該ガス供給管65,66,67は、前記マニホールド58の下部を気密に貫通して設けられており、前記ガス供給管65と前記ガス供給管66とは前記反応管57内で一本の多孔ノズル68に合流し、二本の前記ガス供給管65,66と多孔ノズル68で、後述する合流タイプガス供給ノズル69を形成している。前記ガス供給管67は独立して別の多孔ノズル71に連通し、一本の前記ガス供給管67と多孔ノズル71で、後述する分離タイプガス供給ノズル72を形成している。前記反応管57内には、前記合流タイプガス供給ノズル69と、分離タイプガス供給ノズル72の2本のガス供給ノズルが設けられている。
【0042】
前記合流タイプガス供給ノズル69は、前記反応管57内で前記ガス供給管66から供給されるTMAの分解温度以上の領域にその上部が延在している。又、前記ガス供給管66の、前記反応管57内で前記ガス供給管65と合流している部分は、TMAの分解温度未満の領域であり、前記ウェーハ19及び該ウェーハ19付近の温度よりも低い温度の領域である。
【0043】
ここでは、第1のガス供給管65からは、流量制御手段である第1のマスフローコントローラ73及び開閉弁である第1のバルブ74を介し、前記合流タイプガス供給ノズル69を通して、前記反応管57に反応ガス(O3 )が供給され、第2のガス供給管66からは、流量制御手段である第2のマスフローコントローラ75、開閉弁である第2のバルブ76、TMA容器30、及び開閉弁である第3のバルブ77、前記合流タイプガス供給ノズル69を介して前記反応管57に反応ガス(TMA)が供給される。前記TMA容器30から前記マニホールド58迄の前記ガス供給管66には、ヒータ78が設けられ、前記ガス供給管66を50〜60℃に保っている。
【0044】
第3のガス供給管67からは、流量制御手段である第3のマスフローコントローラ79、開閉弁である第5のバルブ81、TEMAH容器82、及び開閉弁である第6のバルブ91を介し、前記分離タイプガス供給ノズル72を通して、前記反応管57に反応ガス(テトラキス(N−エチル−N−メチルアミノ)ハフニウム:TEMAH)が供給される。前記TEMAH容器82から前記マニホールド58迄の前記ガス供給管67には、ヒータ83が設けられ、前記ガス供給管67を130℃に保っている。
【0045】
前記ガス供給管66には、窒素ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガスライン84が開閉バルブ85を介して前記第3のバルブ77の下流側に接続されている。又、前記ガス供給管65には、不活性ガスライン86が開閉バルブ87を介して前記第1のバルブ74の下流側に接続されている。前記ガス供給管67には、窒素ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガスライン88が開閉バルブ89を介して前記第6のバルブ91の下流側に接続されている。
【0046】
前記反応管57はガス排気管92により第4のバルブ93を介して排気手段である真空ポンプ94に接続され、真空排気される様になっている。尚、該第4のバルブ93は弁を開閉して前記反応管57内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能になっている圧力調整弁である。
【0047】
前記合流タイプガス供給ノズル69と前記分離タイプガス供給ノズル72が、前記反応管57の下部より上部に亘り前記ウェーハ19の保持方向に沿って延出している。前記合流タイプガス供給ノズル69の多孔ノズル68には複数のガスを供給する供給孔であるガス供給孔95が設けられており、前記分離タイプガス供給ノズル72の多孔ノズル71にも同じくガスを供給する供給孔であるガス供給孔96が設けられている。
【0048】
前記反応管57内の中央部には所定数枚のウェーハ19を保持するボート18が前記石英キャップ64を介してボートエレベータ17(図2参照)により支持され、該ボート18は前記ボートエレベータ17により反応管57に装入、引出しされる様になっている。又、処理の均一性を向上する為に前記ボート18を回転する為の回転手段であるボート回転機構97が前記昇降アーム21に設けられ、前記ボート回転機構97により前記ボート18が回転される様になっている。
【0049】
制御手段であるコントローラ98は、前記第1、第2、第3のマスフローコントローラ73,75,79、第1〜第6のバルブ74,76,77,93,81,91、開閉バルブ85,87,89、ヒータ56、真空ポンプ94、ボート回転機構97、ボートエレベータ17に接続されており、前記第1、第2、第3のマスフローコントローラ73,75,79の流量調整、前記第1、第2、第3のバルブ74,76,77、第5、第6のバルブ81,91、開閉バルブ85,87,89の開閉動作、前記第4のバルブ93の開閉及び圧力調整動作、前記ヒータ56の温度調節、前記真空ポンプ94の起動・停止、前記ボート回転機構97の回転速度調節、前記ボートエレベータ17の昇降動作制御が行われる。
【0050】
次に、TMA及びO3 ガスを用いてAl2 O3 膜を成膜する場合とTEMAH及びO3 ガスを用いてHfO2 膜を成膜する場合とを説明する。
【0051】
先ずAl2 O3 膜を成膜する手順を説明する。
【0052】
成膜しようとするウェーハ19を前記ボート18に装填し、前記反応管57に装入する。装入後、次の3つのステップを順次実行する。
【0053】
[ステップ1]
ステップ1では、O3 ガスを流す。先ず前記第1のバルブ74、及び前記第4のバルブ93を共に開けて、前記ガス供給管65から前記第1のマスフローコントローラ73により流量調整されたO3 ガスを前記合流タイプガス供給ノズル69のガス供給孔95から前記反応管57に供給しつつ前記ガス排気管92から排気する。O3 ガスを流す時は、前記第4のバルブ93を適正に調節して前記反応管57内圧力を10〜100Paとする。前記第1のマスフローコントローラ73で制御するO3 ガスの供給流量は1000〜10000sccmである。O3 ガスに前記ウェーハ19を晒す時間は2〜120秒間である。この時の前記ヒータ56温度は前記ウェーハ19の温度が77〜450℃になる様設定してある。
【0054】
同時に、前記ガス供給管66の途中につながっている前記不活性ガスライン84及び前記ガス供給管67の途中につながっている前記不活性ガスライン88から、前記開閉バルブ85、89を開けて不活性ガスを流すと、TMA側及びTEMAH側にO3 ガスが回込むことを防ぐことができる。
【0055】
この時、前記反応管57内に流しているガスは、O3 とN2 、Ar等の不活性ガスのみであり、TMA及びTEMAHは存在しない。従って、O3 は気相反応を起こすことはなく、前記ウェーハ19上の下地膜と表面反応する。
【0056】
[ステップ2]
ステップ2では、前記第1のバルブ74を閉めて、O3 ガスの供給を止める。又、前記第4のバルブ93は開いたままにし前記真空ポンプ94により、前記反応管57を20Pa以下に排気し、残留O3 ガスを該反応管57から排除する。又、この時には、N2 等の不活性ガスを前記ガス供給管65及び前記ガス供給管66、前記ガス供給管67からそれぞれ前記反応管57に供給すると、残留O3 ガスを排除する効果が更に高まる。
【0057】
[ステップ3]
ステップ3では、TMAガスを流す。TMAは常温で液体であり、前記反応管57に供給するには、加熱して気化させてから供給する方法、キャリアガスと呼ばれる窒素や希ガスなどの不活性ガスを前記TMA容器30の中に通し、気化している分をそのキャリアガスと共に前記反応管57へと供給する方法等があるが、例として後者のケースで説明する。
【0058】
前記第2のバルブ76、前記第3のバルブ77、及び前記第4のバルブ93を共に開けて、前記ガス供給管66から第2のマスフローコントローラ75により流量調節されたキャリアガスが前記TMA容器30の中を通り、TMAとキャリアガスの混合ガスとして、前記合流タイプガス供給ノズル69のガス供給孔95から前記反応管57に供給しつつ前記ガス排気管92から排気する。
【0059】
TMAガスを流す時は、前記第4のバルブ93を適正に調整して前記反応管57内圧力を10〜900Paとする。前記第2のマスフローコントローラ75で制御するキャリアガスの供給流量は10000sccm以下である。TMAガスを供給する為の時間は1〜4秒に設定する。その後更に前記ウェーハ19に吸着させる為上昇した圧力雰囲気中に晒す時間を0〜4秒に設定しても良い。この時の前記ウェーハ19温度はO3 ガスの供給時と同じく、77〜450℃である。TMAガスの供給により、下地膜上のO3 とTMAとが表面反応して、前記ウェーハ19上にAl2 O3 膜が成膜される。
【0060】
同時に、前記不活性ガスライン86、及び前記不活性ガスライン88から、前記開閉バルブ87,89を開けて不活性ガスを流すと、O3 側及びTEMAH側にTMAガスが回込むことを防ぐことができる。
【0061】
成膜後、前記第3のバルブ77を閉じ、前記第4のバルブ93を開けて前記反応管57を真空排気し、残留するTMAの成膜に寄与した後の残留ガスを排気する。又、この時にはN2 等の不活性ガスを、前記不活性ガスライン86,84,88から前記ガス供給管65及び前記ガス供給管66及び、前記ガス供給管67を介してそれぞれ前記反応管57に供給すると、更にTMAの成膜に寄与した後の残留ガスの排除効果が高まる。
【0062】
上記ステップ1〜3を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰返すことにより前記ウェーハ19上に所定膜厚のAl2 O3 膜を成膜する。
【0063】
[ステップ2]で前記反応管57内を排気してO3 ガスを除去してからTMAガスを流すので、両者は前記ウェーハ19に向かう途中で反応しない。供給されたTMAガスは、該ウェーハ19に吸着しているO3 とのみ有効に反応させることができる。
【0064】
次にHfO2 膜を成膜する手順を説明する。
【0065】
[ステップ4]
ステップ4では、Al2 O3 膜の成膜と同じくO3 ガスを流す。先ず前記第1のバルブ74、前記第4のバルブ93を共に開けて、前記ガス供給管65から第1のマスフローコントローラ73により流量調整されたO3 ガスを前記合流タイプガス供給ノズル69のガス供給孔95から前記反応管57に供給しつつ前記ガス排気管92から排気する。
【0066】
O3 ガスを流す時は、前記第4のバルブ93を適正に調節して前記反応管57内圧力を10〜100Paとする。前記第1のマスフローコントローラ73で制御するO3 ガスの供給流量は1000〜10000sccmである。O3 ガスに前記ウェーハ19を晒す時間は2〜120秒間である。この時のヒータ56温度は前記ウェーハ19の温度が77〜450℃になる様設定してある。
【0067】
同時に、前記不活性ガスライン88及び、前記不活性ガスライン84から、前記開閉バルブ89,85を開けて不活性ガスを流すと、TEMAH側及びTMA側にO3 ガスが回込むことを防ぐことができる。
【0068】
この時、前記反応管57内に流しているガスは、O3 とN2 、Ar等の不活性ガスのみであり、TEMAH及びTMAは存在しない。従って、O3 は気相反応を起こすことはなく、前記ウェーハ19上の下地膜と表面反応する。
【0069】
[ステップ5]
ステップ5では、前記第1のバルブ74を閉めて、O3 ガスの供給を止める。又、前記第4のバルブ93は開いたままにし前記真空ポンプ94により、前記反応管57を20Pa以下に排気し、残留O3 ガスを前記反応管57から排除する。又、この時には、N2 等の不活性ガスを、不活性ガスライン86,84,88から前記ガス供給管65及び前記ガス供給管66、前記ガス供給管67を介してそれぞれ前記反応管57に供給すると、残留O3 ガスを排除する効果が更に高まる。
【0070】
[ステップ6]
ステップ6では、TEMAHガスを流す。TEMAHはTMAと同じく常温で液体である為、前記反応管57に供給するには加熱して気化させてから供給する方法や、キャリアガスと共に前記反応管57へと供給する方法がある。
【0071】
図9ではTMAと同じくキャリアガスと呼ばれる窒素や希ガス等の不活性ガスを前記TEMAH容器82の中に通し、気化している分をそのキャリアガスと共に前記反応管57へと供給する構成が示されているが、図9に示される気化器ユニット100を用いてTEMAHの供給方法を説明する。例として該気化器ユニット100を用い、TEMAHを加熱して気化させ、キャリアガスと共に前記反応管57へと供給する方法で説明する。
【0072】
先ず、キャリアガス供給管101に設けられたバルブ102、バルブ103を開け、マスフローコントローラ104により流量調整をする。
【0073】
次に、TEMAH供給管105に設けられたバルブ106、バルブ107、バルブ108を開け、液体流量計109と前記気化器ユニット100内にあるコントロールバルブ111により流量を調整する。次に前記反応管57へ導入する時にバルブ112を閉め、前記バルブ103を開けて、TEMAHガスとキャリアガスの混合ガスを前記分離タイプガス供給ノズル72より供給する。
【0074】
TEMAHガスを流す時は、前記マスフローコントローラ104を適正に調整し、更に前記液体流量計109と前記気化器ユニット100内にあるコントロールバルブ111により流量を調整し、前記反応管57内圧を10〜100Paとする。前記マスフローコントローラ104、液体流量計109の供給量はそれぞれ、100〜1000sccm、0.01〜0.2g/minである。TEMAHガスを供給する為の時間は、1〜600秒に設定しても良い。この時の前記ウェーハ19温度はO3 ガスの供給時と同じく、150〜78℃である。TEMAHガスの供給により、下地膜上のO3 とTEMAHとが表面反応して、前記ウェーハ19上にHfO2 膜が成膜される。
【0075】
同時に、前記不活性ガスライン86及び、前記不活性ガスライン84から、前記開閉バルブ87,85を開けて不活性ガスを流すと、O3 側及びTMA側にTEMAHガスが回込むことを防ぐことができる。
【0076】
成膜後、前記バルブ91を閉じ、前記第4のバルブ93を開けて前記反応管57を真空排気し、残留するTEMAHの成膜に寄与した後の残留ガスを排気する。又、N2 等の不活性ガスを、不活性ガスライン86,84,88から前記ガス供給管65及び前記ガス供給管66、前記ガス供給管67からそれぞれ前記反応管57に供給すると、更にTEMAHの成膜に寄与した後の残留ガスを前記反応管57から排除する効果が高まる。
【0077】
上記ステップ4〜6を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより前記ウェーハ19上に所定膜厚のHfO2 膜が成膜される。
【0078】
[ステップ5]で前記反応管57内を排気してO3 ガスを除去してからTEMAHガスを流すので、両者は前記ウェーハ19に向かう途中で反応しない。供給されたTEMAHは、該ウェーハ19に吸着しているO3 とのみ有効に反応させることができる。
【0079】
上述の様に、Al2 O3 膜の成膜の時は、前記ガス供給管65及び前記ガス供給管66を前記反応管57内で合流させることにより、TMAとO3 を前記合流タイプガス供給ノズル69内でも交互に吸着、反応させて堆積膜をAl2 O3 とすることができ、TMAとO3 を別々のノズルで供給する場合にTMAノズル内で異物発生源になる可能性があるAl膜が生成するという問題をなくすことができる。Al2 O3 膜は、Al膜よりも密着性が良く、剥がれ難いので、異物発生源になり難い。
【0080】
又、HfO2 膜の成膜の時は、前記ガス供給管65及びガス供給管66が前記反応管57内で合流し一本の前記多孔ノズル68に連通した形である合流タイプガス供給ノズル69からO3 ガスを供給し、前記ガス供給管67が単独で一本の前記多孔ノズル71に連通している分離タイプガス供給ノズル72からTEMAHガスを供給することにより、TEMAHガスの供給時に合流タイプガス供給ノズルを使用した場合に必要となる逆流や入込みを防ぐ為の不活性ガスパージが回避でき、TEMAHガスの供給で合流タイプガスノズルを用いた場合問題となる、パージによるノズル内の圧力上昇を無くすことができる。又その圧力上昇に伴うTEMAHの再液化によるパーティクル発生も防止可能となった。
【0081】
尚、本実施の形態では、Al2 O3 膜とHfO2 膜を同一処理室内で成膜する場合であったが、HfO2 膜のみを成膜することを目的にした処理室では、TEMAHガスを供給する分離タイプガス供給ノズルとO3 ガスを供給する分離タイプガス供給ノズルの2本による構成で成膜することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態を示す全体説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基板処理装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の要部を示す概略説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の縦型基板処理炉の概略縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の縦型基板処理炉の概略縦断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の縦型基板処理炉の概略横断面図である。
【図7】該縦型基板処理炉の合流タイプのガス供給ノズルの説明図であり、図7(A)は概略図、図7(B)は図7(A)のA部の部分拡大図である。
【図8】前記縦型基板処理炉の分離タイプのガス供給ノズルの説明図であり、図8(A)は概略図であり、図8(B)は図8(A)のB部の部分拡大図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る縦型基板処理炉へのTEMAHガスの供給方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1 基板処理装置本体
2 原料ガス貯蔵部
30 原料タンク
31 筐体
32 受台
33 漏液検知器
36 消火ガス供給ライン
37 消火ガス供給管
39 ダンパ
42 ガス流量計
43 主開閉弁
45 副開閉弁
46 ガス漏洩検知器
47 赤外線センサ
48 煙検知器
49 温度センサ
51 圧力計
52 原料ガス貯蔵制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素と混合することで発火又は爆発する原料を、基板が収納された処理室内に供給し、基板に所望の処理を行う基板処理装置であって、前記原料を収納する原料タンクを気密に収納する収納体と、該収納体に接続され、該収納体に常時不活性ガスを供給するガス供給手段と、前記収納体内での発火又は爆発を検知する検知手段と、前記不活性ガスの供給量を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記検知手段が発火又は爆発を検知した際に不活性ガスの供給量を増大させることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−156650(P2006−156650A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344133(P2004−344133)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】