説明

基板処理装置

【課題】基板処理装置において、基板中央部から上方へと処理液雰囲気が拡散することを防止する。
【解決手段】基板処理装置のチャンバ内では、複数の開口630が形成された整流板63が、基板の上方に配置される。整流板63は、チャンバ上部の導入口から導入されたエアを整流し、チャンバ内にダウンフローを発生させる。整流板63では、基板の中央部の真上に位置する中央領域631における開口630の分布密度が、中央領域631の周囲の周辺領域632における開口630の分布密度よりも大きいため、中央領域631の開口率が周辺領域632の開口率よりも大きい。これにより、基板の中央部におけるダウンフローを、基板の中央部以外の部位におけるダウンフローよりも強くすることができる。その結果、基板の中央部から上方へと処理液雰囲気が拡散することを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板処理装置を用いて酸化膜等の絶縁膜を有する基板に対して様々な処理が施されている。例えば、基板を主面に垂直な中心軸を中心として回転しつつ、基板上に処理液を供給することにより、基板の表面に対してエッチング等の処理が行われる。このとき、回転する基板から飛散する処理液は基板の周囲を囲むカップ部により受け止められ、処理液が装置の外部にまで飛散することが防止される。
【0003】
例えば、特許文献1の基板処理装置では、基板を保持するスピンチャック、および、スピンチャックを収容する処理カップが処理室内に配置される。処理室の天井壁上面には、空気を処理室内に取り込むためのFFU(Fan Filter Units)が取り付けられ、処理カップの下方には排気ダクトが設けられる。処理室内の天井壁のすぐ下側には拡散板が取り付けられ、拡散板には、その全域に亘って複数の流通孔が等間隔に形成される。FFUから処理室内に供給された空気は、拡散板の複数の流通孔からほぼ均一な流量にて下方に向けて送出される。これにより、処理室内にダウンフローが形成され、処理カップ内にて発生した処理液のミスト等が処理カップの上部開口から処理カップ外へと拡散することが防止される。
【0004】
また、特許文献2の基板回転処理装置では、処理チャンバの上部に、複数の円形開口が格子状に配列された第1の蓋体、および、複数の円形開口が格子状に配列された第2の蓋体が積層された状態で設けられ、基板回転処理装置が配置されるクリーンルーム内のダウンフローが、これらの蓋体の開口を介して処理チャンバ内に取り込まれる。第1の蓋体の複数の円形開口と、第2の蓋体の複数の円形開口とは、平面視において互いに重なり合うことがないように配置される。
【0005】
特許文献3の基板処理装置では、ユニットカバー内に配置された基板処理部の上方に風速調整板が設けられる。基板処理部は、基板を支持する基板支持部、および、基板の側方周囲を囲むカップを備える。風速調整板は、基板処理部の上方に大きく開口した1つの大開口部、および、大開口部の周囲にて多数の小径の穴が設けられた小開口部を有する。大開口部を通過したダウンフローは、基板処理部に流入し、基板から飛散した処理液の微粒子等が基板に再付着することを防止する。また、小開口部を通過したダウンフローは、基板処理部を除くその他の領域に流入する。小開口部を通過したダウンフローの風速は、大開口部を通過したダウンフローの風速よりも小さく、粉塵等の拡散によるはい上がり防止に必要な最小限の風速に抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−192686号公報
【特許文献2】特開平11−283948号公報
【特許文献3】特開平9−148226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、基板処理装置では、SPM(Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture:硫酸過水)処理等のように高温・高濃度の処理液を基板上に付与する処理が行われた場合、処理液雰囲気が処理カップの上部開口よりも上側に拡散するおそれがある。処理チャンバの内部空間の排気は、処理カップ内の基板の周囲から行われるため、基板中央部におけるエアの流速は、周辺部におけるエアの流速よりも小さくなり、基板中央部から上方へと処理液雰囲気が拡散するおそれがある。特許文献1ないし3のように、拡散板の基板に対向する領域全体において均一なダウンフローを生成する装置では、上述のような基板中央部からの処理液雰囲気の拡散を防止することは難しい。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板中央部から上方へと処理液雰囲気が拡散することを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、基板を保持する保持部と、前記基板の中心を通り、前記基板の主面に垂直な回転軸を中心として、前記基板を前記保持部と共に回転する回転機構と、前記基板および前記保持部の周囲を囲むカップ部と、前記基板の主面に向けて処理液を供給する処理液供給部と、前記保持部および前記カップ部を内部に収容するチャンバと、前記チャンバの上部に設けられた導入口から前記チャンバ内に気体を導入する導入部と、前記カップ部の内側にて前記基板の周囲から気体を吸引して前記チャンバ外へと排出する排出部と、複数の開口が分布する板状部材であり、前記チャンバ内において少なくとも前記保持部および前記カップ部の上方に配置され、前記導入口から導入された気体を整流して前記チャンバ内にダウンフローを発生させる整流板とを備え、前記整流板が、前記基板の中央部の真上に位置する前記基板よりも小さい領域であり、第1の開口率にて複数の第1開口が分布する中央領域と、前記中央領域の周囲に位置し、前記第1の開口率よりも小さい第2の開口率にて複数の第2開口が分布する周辺領域とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記第1の開口率が、20%以下であり、かつ、前記第2の開口率の1.5倍以上4倍以下である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理装置であって、前記複数の第1開口のそれぞれと前記複数の第2開口のそれぞれとが同サイズかつ同形状であり、前記中央領域における前記複数の第1開口の分布密度が、前記周辺領域における前記複数の第2開口の分布密度よりも大きい。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記処理液の温度が40℃以上である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記カップ部の周囲を囲む側壁部と、前記側壁部の上端から前記チャンバの側部に向かって延びる周辺閉塞部とをさらに備え、前記排出部が、前記カップ部と前記側壁部との間の間隙の上部開口からも気体を吸引して前記チャンバ外へと排出する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記導入口が、前記基板の真上に位置し、前記導入口の形状が矩形であり、前記導入口の短辺が、前記基板の直径よりも長く、前記カップ部の外周面の直径よりも短い。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、基板中央部から上方へと処理液雰囲気が拡散することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一の実施の形態に係る基板処理装置の部分断面図である。
【図2】基板処理装置の部分断面図である。
【図3】整流板を示す底面図である。
【図4】整流板の中央領域近傍を拡大して示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1を示す部分断面図である。図1に示すように、基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚様式の装置である。基板処理装置1では、基板9に処理液を供給して洗浄処理を行う。
【0018】
基板処理装置1は、基板9を下側から保持する基板保持部2、基板9の上方に配置されて基板9の上側の主面(以下、「上面」という。)に向けて処理液を供給する処理液供給部3、基板9および基板保持部2の周囲を囲むカップ部4、基板9を基板保持部2と共に回転する回転機構5、並びに、これらの構成を内部に収容するチャンバ8を備える。処理液供給部3は、処理液を吐出する複数のノズル32を備える。図1では、図を簡素化するために、下方のノズル32を支持する支持部の図示を省略している。回転機構5は、基板保持部2の下方にて筒状のカバー部材51により周囲を囲まれる。基板9は、回転機構5により、基板9の中心を通り、基板9の上面に垂直な回転軸90を中心として回転する。
【0019】
基板処理装置1は、また、チャンバ8の上部に設けられた導入口81からチャンバ8内に気体(本実施の形態では、エア)を導入する導入部であるFFU(Fan Filter Units)61、および、チャンバ8の下部に設けられてチャンバ8内のエアをチャンバ8外へと排出する排出部62をさらに備える。基板処理装置1は、また、チャンバ8内に配置される整流板63、側壁部64および周辺閉塞部65を備える。
【0020】
整流板63は、後述するように複数の開口が分布する板状部材であり(図3および図4参照)、チャンバ8内において少なくとも基板保持部2およびカップ部4の上方に配置される。本実施の形態では、整流板63は、チャンバ8の天蓋部近傍に、当該天蓋部から所定の距離だけ離間して配置される。整流板63は、導入口81からのエアを整流し、チャンバ8内に整流板63から下方に向かうエアの流れ(すなわち、ダウンフロー)を発生させる。
【0021】
側壁部64は、カップ部4の周囲を囲む略円筒状の部材であり、チャンバ8の底部から図1中におけるカップ部4の外周部とおよそ同じ高さまで延びる。周辺閉塞部65は、側壁部64の全周に亘って、側壁部64の上端からチャンバ8の側部に向かって延びる。周辺閉塞部65は、チャンバ8の側部から離れるに従ってチャンバ8の底部へと向かうように所定の傾斜角にて傾斜する。
【0022】
カップ部4は、微小な間隔にて離間しつつ重なるように配置される第1ガード41、第2ガード42、第3ガード43および第4ガード44を備える。第1ガード41、第2ガード42、第3ガード43および第4ガード44は、回転軸90を中心として同心円状に配置される。カップ部4は、また、カバー部材51の外周に固定される周状の第1溝部45、および、第1溝部45の周方向外側に第1溝部45から離間して配置される第2溝部46を備える。第1ガード41、第2ガード42、第3ガード43および第4ガード44はそれぞれ、回転軸90を中心とする略円環状のガード上部41a〜44aを備える。ガード上部41a〜44aは、下側から上側に向かってこの順に配列され、上下方向(すなわち、回転軸90に平行な方向)において互いに僅かに離間しつつ重なる。
【0023】
第1ガード41は、ガード上部41aの外周部から下方へと突出するガード下部41bを備える。ガード下部41bは、回転軸90を中心とする略円筒状であり、第1溝部45に挿入される。第2ガード42は、ガード上部42aの外周部から下方へと突出する第3溝部47、および、第3溝部47の内側にてガード上部42aから下方へと突出する略円筒状のガード下部42bを備え、ガード下部42bは、第2溝部46に挿入される。第3ガード43は、ガード上部43aの外周部から下方へと突出するガード下部43c、および、ガード下部43cの内側にてガード上部43aから下方へと突出する略円筒状のもう1つのガード下部43bを備え、ガード下部43bは、第3溝部47に挿入される。第4ガード44は、ガード上部44aの外周部から下方へと突出するガード下部44bを備える。第4ガード44のガード下部44bと側壁部64との間には、間隙641が形成される。
【0024】
チャンバ8の上部の導入口81は、基板保持部2に保持された基板9の真上に位置する。導入口81の平面視における形状は矩形であり、導入口81の短辺は、基板9の直径よりも長い。導入口81の短辺は、また、カップ部4の外周面(すなわち、第4ガード44の回転軸90から最も離れた面)の直径よりも短く、当然に、側壁部64の直径よりも短い。
【0025】
基板処理装置1における基板9の処理の一例について説明する。基板処理装置1では、回転機構5により基板9が回転している状態において、処理液供給部3から基板9の上面に向けてSPM(Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture:硫酸過水)が吐出され、基板9に対するSPM処理が行われる。SPM処理では、反応熱により約140℃に昇温したSPMが基板9の上面上に供給される。続いて、基板9の上面上に過酸化水素水(H)が供給された後、純水が供給されてリンス処理が行われる。リンス処理が終了すると、SC1(アンモニア・過酸化水素混合水溶液)が基板9の上面上に供給されてSC1処理が行われる。そして、純水が再度供給されてリンス処理が行われ、純水の供給が停止された後、基板9の回転が継続されて基板9の乾燥処理が行われる。
【0026】
図2は、SPM処理が行われる際の基板処理装置1の部分断面図である。SPM処理が行われる際には、カップ部4の第1ガード41、第2ガード42、第3ガード43および第4ガード44(以下、「ガード41〜44」と総称することもある。)が、図示省略の昇降機構により上昇し、図2に示す位置(以下、「SPM処理位置」という。)に配置される。SPM処理位置では、ガード41〜44のガード上部41a〜44aが、基板9よりも上方に位置し、第1ガード41の内周面が、基板9に直接対向する。そして、SPM処理中に基板9から周囲へと飛散するSPMが、第1ガード41の内周面にて受け止められて第1溝部45へと案内される。
【0027】
基板9に対する処理が行われる際には、上述のように、FFU61からチャンバ8上部の導入口81を介してチャンバ8内にエアが導入されるとともに、チャンバ8下部の排出部62によりチャンバ8内のエアが外部に排出される。これにより、チャンバ8の内部空間に、整流板63を通過したエアのダウンフローが形成され、カップ部4の上方のエアが、カップ部4の上部開口40を介してカップ部4内に流入する。カップ部4内に流入したエアは、基板9の外周縁と第1ガード41のガード上部41aの内周縁との間隙から下方に向けて流れ、排出部62によりチャンバ8外へと排出される。換言すれば、排出部62は、カップ部4の内側において基板9の周囲からエアを吸引してチャンバ8外へと排出する。
【0028】
カップ部4および周辺閉塞部65の上方の空間のエアは、カップ部4の上部および周辺閉塞部65に沿って流れ、カップ部4と側壁部64との間の間隙641の上部開口642からも排出部62により吸引されてチャンバ8外へと排出される。なお、カップ部4の上方のエアは、カップ部4のガード41〜44間の間隙を介しても吸引される。
【0029】
基板処理装置1では、上述の昇降機構により、カップ部4のガード41〜44が個別に昇降可能となっており、基板9に対して行われる処理に応じて、所定のガードを基板9の周囲に配置することにより、基板9から周囲へと飛散する処理液が、このガードにより受け止められる。
【0030】
図3は、整流板63を示す底面図である。図3では、整流板63の下方に位置する基板9を二点鎖線にて描いており、基板9の中央部の真上に位置する整流板63の中央領域631を破線にて描いている(図4においても同様)。中央領域631は、回転軸90(図1参照)を中心とする基板9よりも小さい円形の領域であり、中央領域631の直径は、好ましくは、基板9の直径の1/6以上1/2以下である。本実施の形態では、基板9の直径は300mm、中央領域631の直径は100mmである。整流板63の中央領域631の周囲には、周辺領域632が位置する。
【0031】
図4は、整流板63の中央領域631近傍を拡大して示す底面図である。整流板63には、複数の円形の開口630が形成されており、全ての開口630は同サイズかつ同形状である。図4では、開口630を実際よりも大きく描いており、また、開口630の個数を実際よりも少なく描いている(図3においても同様)。中央領域631に分布する複数の開口630をそれぞれ「第1開口」と呼び、周辺領域632に分布する複数の開口630をそれぞれ「第2開口」と呼ぶと、複数の第1開口のそれぞれと複数の第2開口のそれぞれとは同サイズかつ同形状である。中央領域631の中央には、処理液供給部3の1つのノズル32、および、ノズル32を支持する略矩形のブラケット33が設けられる。図4では、図の理解を容易にするために、ノズル32に平行斜線を付す。ブラケット33には、上述の開口630が形成されるが、ノズル32が位置する部位には開口630は設けられない。
【0032】
中央領域631では、複数の開口630(第1開口)が、ノズル32の周囲においておよそ均等に格子状に分布しており(すなわち、縦横の間隔がおよそ等しくなるように配列されており)、周辺領域632においても、複数の開口630(第2開口)がおよそ均等に格子状に分布している。中央領域631における複数の開口630の分布密度(すなわち、ノズル32が存在しない領域において単位面積当たりに分布する開口630の個数)は、周辺領域632における複数の開口630の分布密度よりも大きい。したがって、中央領域631の開口率、すなわち、中央領域631のノズル32を除く面積に対する中央領域631に分布する全ての開口630の合計面積の割合は、周辺領域632の開口率、すなわち、周辺領域632の面積に対する周辺領域632に分布する全ての開口630の合計面積の割合よりも大きい。
【0033】
中央領域631の開口率を「第1の開口率」と呼び、周辺領域632の開口率を「第2の開口率」と呼ぶと、中央領域631には、第1の開口率にて複数の第1開口が分布し、周辺領域632には、第1の開口率よりも小さい第2の開口率にて複数の第2開口が分布する。本実施の形態では、第1の開口率は10%であり、第2の開口率は5%である。また、第1開口および第2開口の直径は約3mmであり、第1開口のピッチは約8mmであり、第2開口のピッチは約12mmである。
【0034】
ところで、整流板の中央領域の開口率と周辺領域の開口率とが等しい基板処理装置(以下、「比較例の基板処理装置」という。)では、基板の上面上の全領域において、整流板からのダウンフローの強さがおよそ均一になる。比較例の基板処理装置では、上述の基板処理装置1と同様に、基板近傍のエアの吸引は基板の周囲(すなわち、側方)から行われるため、基板の中央部では、基板のエッジに近い部位に比べてエアの吸引が弱くなる。したがって、比較例の基板処理装置にて基板の処理が行われる際に、基板の中央部において、処理液雰囲気の一部が吸引されずにカップ部の上部開口よりも上側に拡散するおそれがある。
【0035】
これに対し、本実施の形態に係る基板処理装置1では、整流板63において、上述のように、中央領域631の開口率を周辺領域632の開口率よりも大きくすることにより、整流板63から下側へと向かうダウンフローのうち、基板9の中央部におけるダウンフローを、基板9の中央部以外の部位(すなわち、中央部の周囲の周辺部)におけるダウンフローよりも強くすることができる。これにより、基板9の周辺部から上方への処理液雰囲気の拡散のみならず、基板9の中央部から上部開口40を介してカップ部4よりも上方へと処理液雰囲気が拡散することを防止することができる。
【0036】
このような基板処理装置1の構造は、SPM処理等のように高温・高濃度の処理液を基板上に付与するために基板9から上方への処理液雰囲気の拡散が生じやすい処理を行う装置に特に適している。具体的には、基板9に付与される処理液の温度が40℃以上である基板処理装置に特に適している。また、基板処理装置1では、整流板63を上述の構造とすることにより、チャンバ8内に導入されるエアの流量を増大させることなく処理液雰囲気の拡散を防止することができるため、基板処理装置1の構造は、チャンバ8の導入口81が比較的小さく、小型のFFU61が設けられる装置に特に適している。具体的には、矩形の導入口81の短辺が基板9の直径よりも長く、側壁部64の外周面の直径よりも短い装置に特に適している。
【0037】
上述のように、中央領域631の開口率は10%であり、周辺領域632の開口率の2倍であるが、中央領域631の開口率、および、当該開口率の周辺領域632の開口率に対する割合は、適宜変更されてよい。周辺領域632の開口率を5%とし、中央領域631の開口率を7.5%、10%、15%等に変更して実験を行った結果、好ましくは、中央領域631の開口率は5%以上20%以下であり、かつ、周辺領域632の開口率の1.5倍以上4倍以下である。
【0038】
中央領域631の開口率が5%以上であることにより、基板9の中央部におけるダウンフローを十分に強くして基板9の中央部から上方への処理液雰囲気の拡散を十分に防止することができる。また、中央領域631の開口率が20%以下であることにより、整流板63の中央領域631を通過するエアの流量が過大とならず、チャンバ8の導入口81と整流板63との間の空間において、周辺領域632のうち中央領域631から離れた領域にもエアを十分に拡散させることができる。
【0039】
一方、中央領域631の開口率が周辺領域632の開口率の1.5倍以上であることにより、基板9の中央部におけるダウンフローを十分に強くして基板9の中央部から上方への処理液雰囲気の拡散を十分に防止することができる。また、中央領域631の開口率が周辺領域632の開口率の4倍以下であることにより、整流板63の中央領域631を通過するエアの流量が過大とならず、チャンバ8の導入口81と整流板63との間の空間において、周辺領域632のうち中央領域631から離れた領域にもエアを十分に拡散させることができる。
【0040】
基板処理装置1では、中央領域631の直径が、基板9の直径の1/6以上であることにより、基板9の中央部におけるダウンフローの風量を十分なものとし、中央領域631の直径が、基板9の直径の1/2以下であることにより、基板9の中央部におけるダウンフローを周辺部に比べて十分に強くすることができる。その結果、基板9の中央部から上方への処理液雰囲気の拡散を十分に防止することができる。
【0041】
基板処理装置1では、中央領域631および周辺領域632の開口630を同サイズかつ同形状とし、中央領域631における開口630の分布密度を周辺領域632における開口630の分布密度よりも大きくすることにより、中央領域631の開口率を周辺領域632の開口率よりも大きくしている。これにより、中央領域631と周辺領域632とで開口の大きさを変更する場合等に比べて、整流板63の製造を簡素化し、整流板63の製造コストを低減することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0043】
例えば、整流板63の開口630の形状は、楕円形や矩形等、円形以外の形状であってもよい。整流板63では、中央領域631と周辺領域632とで開口630の分布密度を等しくし、中央領域631の開口630を周辺領域632の開口630よりも大きくすることにより、中央領域631の開口率が周辺領域632の開口率よりも大きくされてもよい。また、中央領域631において開口630を大きくするとともに開口630の分布密度を大きくしてもよい。
【0044】
基板処理装置では、基板9に対し、洗浄処理以外の様々な処理(例えば、エッチング処理等)が行われてよい。
【0045】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0046】
1 基板処理装置
2 基板保持部
3 処理液供給部
4 カップ部
5 回転機構
8 チャンバ
9 基板
61 FFU
62 排出部
63 整流板
64 側壁部
65 周辺閉塞部
81 導入口
90 回転軸
630 開口
631 中央領域
632 周辺領域
641 間隙
642 上部開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板を保持する保持部と、
前記基板の中心を通り、前記基板の主面に垂直な回転軸を中心として、前記基板を前記保持部と共に回転する回転機構と、
前記基板および前記保持部の周囲を囲むカップ部と、
前記基板の主面に向けて処理液を供給する処理液供給部と、
前記保持部および前記カップ部を内部に収容するチャンバと、
前記チャンバの上部に設けられた導入口から前記チャンバ内に気体を導入する導入部と、
前記カップ部の内側にて前記基板の周囲から気体を吸引して前記チャンバ外へと排出する排出部と、
複数の開口が分布する板状部材であり、前記チャンバ内において少なくとも前記保持部および前記カップ部の上方に配置され、前記導入口から導入された気体を整流して前記チャンバ内にダウンフローを発生させる整流板と、
を備え、
前記整流板が、
前記基板の中央部の真上に位置する前記基板よりも小さい領域であり、第1の開口率にて複数の第1開口が分布する中央領域と、
前記中央領域の周囲に位置し、前記第1の開口率よりも小さい第2の開口率にて複数の第2開口が分布する周辺領域と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記第1の開口率が、20%以下であり、かつ、前記第2の開口率の1.5倍以上4倍以下であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記複数の第1開口のそれぞれと前記複数の第2開口のそれぞれとが同サイズかつ同形状であり、
前記中央領域における前記複数の第1開口の分布密度が、前記周辺領域における前記複数の第2開口の分布密度よりも大きいことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記処理液の温度が40℃以上であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記カップ部の周囲を囲む側壁部と、
前記側壁部の上端から前記チャンバの側部に向かって延びる周辺閉塞部と、
をさらに備え、
前記排出部が、前記カップ部と前記側壁部との間の間隙の上部開口からも気体を吸引して前記チャンバ外へと排出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記導入口が、前記基板の真上に位置し、
前記導入口の形状が矩形であり、前記導入口の短辺が、前記基板の直径よりも長く、前記カップ部の外周面の直径よりも短いことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−204719(P2012−204719A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69379(P2011−69379)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】