説明

基板実装構造

【課題】基板の両面に電子部品を実装するものにあって、一方側の電子部品が他方側の電子部品の実装位置を制限せず、しかも、良好なハンダ付けができる基板実装構造を提供する。
【解決手段】基板1の上面1a及び下面1bにハンダ付けで表面実装コネクタ10及びチップ部品20がそれぞれ実装される基板実装構造であって、基板1の上面1aには、下面1bに達しない深さのピン挿入溝2が設けられ、基板1の上面1aに実装される表面実装コネクタ10は、コネクタハウジング11とリードピン12を有し、リードピン12の先端がコネクタハウジング11の実装面11aより下方位置に位置され、リードピン12の先端がピン挿入溝2に挿入された状態でハンダ付けされた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電子部品をハンダ付けで実装する基板実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々の基板実装構造が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。基板実装構造として、基板の両面に電子部品を実装するものがあり、その一従来例が図6(a)、(b)に示されている。
【0003】
図6(a)、(b)に示すように、基板実装構造は、基板50と、この基板50の上面50aに実装された表面実装コネクタ60と、基板50の下面50bに実装されたチップ部品70とを備えている。表面実装コネクタ60は、コネクタハウジング61と、このコネクタハウジング61の後面より間隔を置いて突出された複数のリードピン62とを有している。コネクタハウジング61は、その下面61aが基板50の上面50aに面接触で配置されている。各リードピン62は、コネクタハウジング61より突出された箇所が2箇所で折曲されている。これにより、各リードピン62の先端側には、コネクタハウジング61の下面61aと同一高さで、且つ、その下面61aの延長線上に延びる先端ピン部62bが設けられている。各リードピン62の先端ピン部62bは、基板50の各ランド部(図示せず)にハンダ付けされている。
【0004】
チップ部品70は、その本体の両端に電極端子部70aを有し、各電極端子部70aが基板50の各ランド部(図示せず)にハンダ付けされている。
【0005】
この従来例では、表面実装コネクタ60は、基板50にスルーホールを設けることなくハンダ付けで実装できるため、基板50の下面50bに実装されるチップ部品70の実装位置が制限されない。つまり、表面実装コネクタ60のハンダ付け位置に対向する位置にも、チップ部品70をハンダ付けで実装できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−173242号公報
【特許文献2】、特開2007−43810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、表面実装コネクタ60の各リードピン62に製造上のバラツキがあると、良好なハンダ付けができない恐れがある。つまり、リードピン62の先端ピン部62bが、図7(a)に示すように、適正位置より全体として浮いていたり、図7(b)に示すように、先端が上方に反り返っていたりすると、良好なハンダ付けができない恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、基板の両面に電子部品を実装するものにあって、一方側の電子部品が他方側の電子部品の実装位置を制限せず、しかも、良好なハンダ付けができる基板実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板の両面にハンダ付けで電子部品がそれぞれ実装される基板実装構造であって、前記基板の一方面には、他方面に達しない深さのピン挿入溝が設けられ、前記基板の一方面に実装される一方側の前記電子部品は、部品本体とリードピンを有し、前記リードピンの先端が前記部品本体の実装面より下方位置に位置され、前記リードピンの先端が前記ピン挿入溝に挿入された状態でハンダ付けされていることを特徴とする。
【0010】
一方側の前記電子部品は、前記部品本体より間隔を置いて複数の前記リードピンが突出され、複数の前記リードピンの各先端位置は、前記部品本体からの突出距離が隣り同士で異なる位置に設定されることが好ましい。
【0011】
前記基板の一方面における前記ピン挿入孔の形成領域と対向する他方面側の領域には、チップ部品が配置されているものを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピン挿入溝は基板の他方面に開口しないため、基板の他方面に実装される電子部品の実装位置を規制しない。又、リードピンの先端位置が製造上のバラツキ等によって適正位置より変位した位置であっても、リードピンの先端がピン挿入溝に入り込んだ位置にセット可能である。以上より、基板の両面に電子部品を実装するものにあって、一方側の電子部品が他方側の電子部品の実装位置を制限せず、しかも、良好なハンダ付けができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示し、基板実装構造の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、(a)は表面実装コネクタの平面図、(b)は表面実装コネクタの側面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)〜(d)は表面実装コネクタの基板実装作業の各工程を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、(a)〜(c)は表面実装コネクタのリードピンの先端ロッド部が種々変形した場合にあって、ピン挿入溝への挿入状態をそれぞれ示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、(a)は表面実装コネクタのリードピンと基板のピン挿入溝の配列状態がストレート配列である場合を示す平面図、(b)は表面実装コネクタのリードピンと基板のピン挿入溝の配列状態がジグザグ配列である場合を示す平面図である。
【図6】従来例を示し、(a)は基板実装構造の平面図、(b)は基板実装構造の断面図である。
【図7】従来例を示し、(a)、(b)は表面実装コネクタのリードピンの先端ロッド部が種々変形した場合にあって、基板の上面への配置状態をそれぞれ示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図5は本発明の一実施形態を示す。図1に示すように、基板実装構造は、基板1と、この基板1の一方面である上面1aに実装された表面実装コネクタ10(一方側の電子部品)と、基板1の他方面である下面1bに実装された複数のチップ部品20(他方側の電子部品)とを備えている。
【0016】
基板1の両面である上面1aと下面1bには、所望のプリント回路が設けられている。基板1の上面1aには、複数のピン挿入溝2が設けられている。複数のピン挿入溝2は、表面実装コネクタ10の各リードピン12の先端位置に対応する位置に設けられている。各ピン挿入溝2は、円形である。各ピン挿入溝2は、基板1の下面1bに達しない深さであり、つまり、有底の溝である。各ピン挿入溝2の直径Dと深さTは、リードピン12の先端ロッド部12bにおける製造上の許容最大バラツキ変形量を考慮し、その範囲を含む寸法になるよう設定される。
【0017】
基板1の上面1aで、且つ、各ピン挿入溝2の周囲には、プリント回路を構成するランド部3がそれぞれ配置されている。
【0018】
表面実装コネクタ10は、図1及び図2に示すように、部品本体であるコネクタハウジング11と、このコネクタハウジング11の後面より等間隔に突出された複数のリードピン12とを有している。コネクタハウジング11は、その前面側より相手コネクタ(図示せず)が装着される。コネクタハウジング11は、その下面が実装面11aである。コネクタハウジング11は、その実装面11aが基板1の上面1aに面接触状態で配置されている。
【0019】
各リードピン12は、コネクタハウジング11より水平に延びる水平ロッド部12aと、この水平ロッド部12aの先端より直角に下方に折曲された先端ロッド部12bとから構成されている。先端ロッド部12bは、基板1の上面1aに向かって下方に延びている。先端ロッド部12bの先端は、コネクタハウジング11の実装面11aよりtだけ下方位置に設定されている。各リードピン12の先端ロッド部12bは、基板1の各ピン挿入溝2内に入り込む。このようにピン挿入溝2に配置された先端ロッド部12bは、ランド部3にハンダ部4でハンダ付けされている。
【0020】
各チップ部品20は、その本体の両端に電極端子部20aを有し、各電極端子部20aが基板1の各ランド部(図示せず)にハンダ付けされている。チップ部品20は、基板1の一方面1a側のピン挿入孔2の形成領域に対向する位置にも配置されている。
【0021】
次に、表面実装コネクタ10の基板実装作業を説明する。チップ部品20の実装については、説明を省略する。
【0022】
先ず、図3(a)に示すように、基板1の上面1a側より無貫通ルータ加工を行い、複数のピン挿入溝2を作製する。そして、基板1に導電材によるプリント印刷を行う。このプリント印刷によって、各ピン挿入溝2の周囲にランド部3が設けられる。
【0023】
次に、図3(b)に示すように、基板1の各ランド部3上にクリーム状のハンダ部4を印刷によって配置する。
【0024】
次に、図3(c)に示すように、基板1の上面1aに表面実装コネクタ10をセットする。表面実装コネクタ10は、各リードピン12の先端ロッド部12bを基板1の各ピン挿入溝2に挿入した状態としてセットする。
【0025】
ここで、リードピン12の先端の位置が、製造上のバラツキ等によって適正位置より変位している場合、詳細には、リードピン12の先端の変形位置がピン挿入溝2に入り込む程度の変形である場合には、リードピン12の先端ロッド部12bの先端がピン挿入溝2に入り込んだ状態でセットされる。リードピン12の先端ロッド部12bの変形する典型パターンとしては、図4(a)に示すように、先端ロッド部12bが水平ロッド部12aに対して直角より緩い角度でしか折曲されていない場合や、図4(b)に示すように、先端ロッド部12bが水平ロッド部12aに対して直角より大きい角度で折曲されている場合や、図4(c)に示すように、先端ロッド部12bが正規寸法より寸法が短い場合が考えられる。このような場合にも、図4(a)〜(c)先端ロッド部12bの先端はピン挿入溝2内に配置される。
【0026】
最後に、図3(d)に示すように、基板1等にリフローハンダ付け作業を行い、基板1のランド部3と表面実装コネクタ10のリードピン12をハンダ部4でハンダ付けする。
【0027】
以上説明したように、基板1の上面1aには、下面1bに達しない深さのピン挿入溝2が設けられ、基板1の上面1aに実装される表面実装コネクタ10は、コネクタハウジング11とリードピン12を有し、リードピン12の先端がコネクタハウジング11の実装面11aより下方位置に位置され、リードピン12の先端がピン挿入溝2に挿入された状態でハンダ付けされている。従って、ピン挿入溝2は基板1の下面1bに開口しないため、基板1の下面1bに実装されるチップ部品20の実装位置を規制しない。又、リードピン12の先端の位置が製造上のバラツキ等によって適正位置より変位した位置であっても、リードピン12の先端をピン挿入溝2に入り込んだ状態でセットできる。詳細には、リードピン12の先端ロッド部12bの変形がピン挿入溝2に入り込む程度の変形である場合(例えば図4(a)〜(c)参照)には、良好なハンダ付けができる。
【0028】
以上より、基板1の両面に表面実装コネクタ10とチップ部品20をそれぞれ実装するものにあって、表面実装コネクタ10がチップ部品20の実装位置を制限せず、しかも、良好なハンダ付けができる。つまり、この実施形態のように、チップ部品20は、基板1の一方面1aにおけるピン挿入孔2の形成領域と対向する他方面側の領域に配置することができる。
【0029】
また、リードピン12の折り曲げは、従来例の2回に比べて1回で良いため、加工費の軽減になる。リードピン12の長さ寸法は、従来例に比べて短くて済むため、端子材料のコスト削減になる。
【0030】
次に、表面実装コネクタ10のリードピン12と基板1のピン挿入溝2の配列パターンを説明する。表面実装コネクタ10のリードピン12と基板1のピン挿入溝2の配列としては、図5(a)に示すように、コネクタハウジング11からの突出距離が全て等距離の配列パターンがある。つまり、ストレート配列である。このストレート配列では、リードピン12のピッチ間隔以下に、ピン挿入溝2の周囲のランド部3の寸法を設定できない。
【0031】
また、表面実装コネクタ10のリードピン12と基板1のピン挿入溝2の配列パターンとしては、図5(b)に示すように、コネクタハウジング11からの突出距離が隣り同士で交互に異なる位置(近い位置と遠い位置)で交互に配列する配列パターンがある。つまり、ジグザグ配列である。このジグザグ配列では、リードピン12のピッチ間隔以上に、ピン挿入溝2の周囲のランド部3の寸法を設定できる。これにより、複数のリードピン12のピッチ間隔が狭くても所望のランド径を確保できるため、確実に良好なハンダ付けができる。
【0032】
前記実施形態では、上面側の電子部品は、表面実装コネクタ10であるが、部品本体より突出するリードピン12を有するものであれば良い。下面側の電子部品は、チップ部品20であるが、表面実装できる部品であれば良い。
【符号の説明】
【0033】
1 基板
1a 上面
1b 下面
2 ピン挿入溝
10 表面実装コネクタ(一方側の電子部品)
11 コネクタハウジング(部品本体)
12 リードピン
20 チップ部品(他方側の電子部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の両面にハンダ付けで電子部品がそれぞれ実装される基板実装構造であって、
前記基板の一方面には、他方面に達しない深さのピン挿入溝が設けられ、
前記基板の一方面に実装される一方側の前記電子部品は、部品本体とリードピンを有し、前記リードピンの先端が前記部品本体の実装面より下方位置に位置され、
前記リードピンの先端が前記ピン挿入溝に挿入された状態でハンダ付けされていることを特徴とする基板実装構造。
【請求項2】
請求項1記載の基板実装構造であって、
一方側の前記電子部品は、前記部品本体より間隔を置いて複数の前記リードピンが突出され、複数の前記リードピンの各先端位置は、前記部品本体からの突出距離が隣り同士で異なる位置に設定されたことを特徴とする基板実装構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の基板実装構造であって、
前記基板の一方面における前記ピン挿入孔の形成領域と対向する他方面側の領域には、チップ部品が配置されていることを特徴とする基板実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−4788(P2013−4788A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135186(P2011−135186)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】