説明

基板搬送方法および基板搬送装置

【課題】 基板の大型化に伴う傾斜搬送の不安定性を低減し、高角度に傾斜させた大型基板を円滑に搬送する。
【解決手段】 基板11を水平面に対して傾斜角度を有するようにして搬送する基板搬送装置10は、搬送される基板11を搬送方向に関して曲率を有するように湾曲させる基板湾曲支持手段14を備え、基板湾曲支持手段14が、基板裏面支持手段15と、基板下端支持手段16とを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば大型のガラス、金属、合成樹脂、無機物などの矩形からなり、曲げ可能な薄板の基板を搬送する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用パネル、たとえばThin Film Transistor(略称TFT)型の液晶パネルは、TFT基板とカラーフィルタ基板との2枚の薄板ガラス基板の積層体を有するものであり、TFT基板には基板の表面にTFTのパターンが形成される。このTFTのパターンは、成膜、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト剥離等からなる工程を7〜8回繰り返すことにより形成され、またこれらの工程の間には、基板の洗浄工程が加わる。
【0003】
TFTのパターン形成工程のうち、現像、エッチング、レジスト剥離および洗浄の各工程は、基板表面に所定の処理液を供給することによるウエット処理で行うのが一般的である。また、成膜、レジスト塗布、露光、エッチングの各工程は基板表面に所定の処理をドライ状態で行うのが一般的である。また、これらの処理を連続的に行う場合、各工程では、コンベアなどの搬送手段によって基板を搬送させる間に、基板表面に処理を行うのが一般的である。また、各工程間の基板の移動についても、近年、基板が大型化するのに伴い、コンベアなどの搬送機構により水平搬送するような平流し搬送形式が増加している。
【0004】
一方、基板の大型化に伴い、搬送経路の面積が増大し、搬送装置の設置面積が肥大化するなどの問題がある。このような問題を解決する従来技術の一つに、基板を水平面に対して傾斜させて搬送する傾斜平流し搬送方式が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1のように基板を水平面に対して傾斜させて搬送することによって、搬送経路の面積増大を抑制することができる。
【0005】
また、基板を傾斜させて搬送する方法としては、平流し搬送方式で採用されてきた搬送ローラにより基板の裏面を支え、基板の端面をローラで支持する方式が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、洗浄、現像、エッチング、または剥離工程において、ウェット処理を用いる場合、たとえば、搬送方向に対して直交した面内でわずかに傾斜した基板搬送路の上を、傾斜姿勢で搬送される基板に洗浄処理をする方法が示されている(特許文献3参照)。
【0007】
特許文献3の技術によれば、大型基板に対する洗浄、エッチング、剥離工程において、水平面に対して傾斜させた状態で基板を保持して処理を行うことにより、基板表面へ供給された処理液の置換効率の増大、基板表面における滞留液の削減により、処理液使用量の削減、洗浄効果の増大効果があるとされる。
【0008】
また基板を単に傾斜させるだけでなく、搬送される基板にできるだけひずみが生じないようにするとともに、基板をクリーンに搬送する装置として、上部に平面を有する通気性多孔質材を通して基板裏面に気体を噴出させ、基板裏面と多孔質材表面との間に気体層を形成させることによって基板を浮上させる浮上装置が提案されている(特許文献4参照)。
【0009】
上記の従来技術に開示される基板搬送方法は、基板裏面を接触または非接触方式によって支持し、さらに傾斜させた基板の下端を鍔状のローラ側面部、ローラ周縁部またはローラをベルトで連結したベルトコンベア状の支持部で支持することにより、直板状の基板を傾斜搬送している。このような従来技術によれば、大型化した基板を充分に安定した状態で搬送することができないという問題がある。
【0010】
大型の基板を搬送または処理する場合、基板の自重が面積に比例して大きくなるにも関らず、基板の厚みは従来と同等またはより薄くなる傾向にあるので、基板の自重、外力および内的応力による基板のひずみが大きくなること、また製造時間の短縮に対する要求から基板の搬送速度が増加する傾向にあることなどから、大型基板の安定した搬送が難しくなっている。
【0011】
たとえば、典型的な従来の基板搬送装置による傾斜搬送時の基板のひずみについて例示する。図13は、従来の基板搬送装置1による基板2の搬送状態を示す図である。図13(a)は基板搬送装置1の側面図であり、図13(b)は傾斜方向から見た基板搬送装置1の上面図であり、図13(c)は基板搬送装置1の正面図である。
【0012】
基板2は、基板2の自重にかかる重力と、基板裏面支持体である裏面搬送ローラ3からの抗力によって、矢符4方向に力を受ける。この矢符4方向に作用する力は、基板の下端を支持する下端支持体である基板支持ボート5によって支えられる。基板支持ボート5と基板2とが接触している部分では、基板2全体の力を均等な力で支える必要がある。
【0013】
しかしながら、基板搬送経路の公差、基板2自体の重力によるたわみ、内部応力によるたわみ、また、特に洗浄などの処理を行ったときに供給される処理液などから受ける外力および振動によって、基板2の基板支持ボート5に対する位置ずれが発生する。この位置ずれに起因して基板2の局所に応力が発生し、局所的な割れが発生したり、さらに位置ずれが大きくなることによって、基板支持ボート5から基板2が脱落するなどの問題が発生する。
【0014】
【特許文献1】特開平10−81414号公報
【特許文献2】特許第3384666号公報
【特許文献3】特開平9−155307号公報
【特許文献4】特開2000−136024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、基板の大型化に伴う傾斜搬送の不安定性を低減し、高角度に傾斜させた大型基板を円滑に搬送できる基板搬送方法および基板搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、基板を水平面に対して傾斜角度を有するようにして搬送する基板搬送方法において、
基板が、
搬送方向に関して曲率を有するように湾曲した状態で搬送されることを特徴とする基板搬送方法である。
【0017】
また本発明は、基板は、水平面に対して傾斜する基板の上方に臨む面側が凹状に湾曲した状態で搬送されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、基板は、水平面に対して傾斜する基板の下方に臨む面側が凹状に湾曲した状態で搬送されることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、基板の水平面に対する傾斜角度が、30度以上90度以下であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、基板を水平面に対して傾斜角度を有するようにして搬送する基板搬送装置において、
搬送される基板を搬送方向に関して曲率を有するように湾曲させる基板湾曲支持手段を含むことを特徴とする基板搬送装置である。
【0021】
また本発明は、基板湾曲支持手段は、水平面に対して傾斜する基板の下方に臨む面である裏面を支持する基板裏面支持手段を含み、
基板裏面支持手段は、
搬送される基板が、基板の搬送方向に関して曲率を有して湾曲した状態になるように構成されることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、基板裏面支持手段は、基板の傾斜方向に配置される複数の回転ローラを含むことを特徴とする。
【0023】
また本発明は、複数の回転ローラの直径が、配置される基板の傾斜方向の位置に応じてそれぞれ異なることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、直径が異なる複数の回転ローラは、回転軸が水平面に対して略垂直になるようにそれぞれ設けられることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、基板裏面支持手段は、
直径が異なる複数の回転ローラを駆動させる駆動手段と、
複数の回転ローラを、回転ローラの直径ごとに異なる回転数で回転させるように駆動手段の動作を制御する回転制御手段とを含むことを特徴とする。
【0026】
また本発明は、基板湾曲支持手段は、水平面に対して傾斜する基板の下端部を支持する基板下端支持手段を含み、
基板下端支持手段は、搬送される基板が、基板の搬送方向に関して曲率を有して湾曲した状態になるように構成されることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、基板下端支持手段は、
回転軸が基板の搬送方向にそれぞれ交わるようにして設けられる複数の回転ローラを備える回転ローラ構造であることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、基板下端支持手段は、
回転軸が基板の搬送方向にそれぞれ交わるようにして設けられる複数の回転ローラに巻きまわされるベルトを備えるベルト構造であることを特徴とする。
【0029】
また本発明は、基板下端支持手段は、基板の下端に当接して支持する下端支持部を備え、
下端支持部は、搬送される基板とともに移動し、基板との当接部において基板と摺動することがないボート構造であることを特徴とする。
【0030】
また本発明は、下端支持部が、ピン状に形成されることを特徴とする。
また本発明は、基板の表面を臨んで設けられる処理ノズルから基板に対して処理液を噴射して基板を処理する基板処理装置であって、
前記いずれか1つの基板搬送装置を備えることを特徴とする基板処理装置である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、大型の基板を水平面に対して傾斜させた状態で搬送するとき、基板を湾曲させた状態で搬送することによって、基板に均一な内部応力を発生させ、重力およびその他処理における外力、また搬送系のゆれなどに対しても、高角度に傾斜させた大型基板を安定して円滑に搬送することが可能になる。
【0032】
また本発明によれば、基板湾曲支持手段が、搬送される基板を搬送方向に関して曲率を有するように湾曲させることによって、基板を湾曲させた状態で搬送することができるので、上記と同一の効果を奏することのできる基板搬送装置が提供される。
【0033】
また本発明によれば、傾斜基板を湾曲させた状態で搬送する基板搬送装置が備わるので、処理液が作用する場合でも安定した搬送が可能で処理効果が高く、かつ処理液使用量を抑制することのできる基板処理装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は本発明の実施の第1形態である基板搬送装置10の構成を示す傾斜方向から見た上面図であり、図2は図1に示す基板搬送装置10の正面図であり、図3は図2の切断面線III−IIIから見た断面図である。ここで、基板搬送装置における「搬送」の用語は、水平方向または垂直方向などの移動方向について限定されず、また、基板姿勢を保持した状態で平行移動する移動に限定されることなく、たとえば、基板を回転運動させる場合など、基板を水平から傾斜状態、あるいは傾斜状態から水平状態、あるいはある傾斜状態から他の傾斜状態へ移行させるなど、基板を移動させる全ての動作を意味するものとして用いる。
【0035】
基板搬送装置10は、基板11を水平面12に対して傾斜角度θを有するようにして矢符13方向へ搬送する。この基板搬送装置10には、搬送される基板11を矢符13で示す搬送方向に関して曲率を有するように湾曲させる基板湾曲支持手段14が設けられることを特徴とする。
【0036】
基板搬送装置10の基板湾曲支持手段14は、水平面12に対して傾斜する基板11の下方に臨む面である裏面11aを支持する基板裏面支持手段15と、基板11の下端部11bを支持する基板下端支持手段16とを含む。なお、図1および図3中、参照符号Aにて示す方向が、基板11の自重にかかる重力と、基板裏面支持手段15からの抗力とによって作用する力の方向であり、ここでは便宜上傾斜方向と呼ぶことがある。
【0037】
基板裏面支持手段15および基板下端支持手段16は、搬送される基板11が、基板の搬送方向13に関して曲率を有して湾曲した状態になるように構成される。
【0038】
基板裏面支持手段15は、回転軸が基板搬送方向13に対して垂直になるようにそれぞれ配置される複数の裏面搬送ローラ21を含み、複数の裏面搬送ローラ21は、それぞれの回転軸線を含む仮想平面22が、曲率を有し、傾斜方向に対して上方側で凹状に湾曲するように配置される。したがって、複数の裏面搬送ローラ21を含む基板裏面支持手段15に支持される基板11は、基板11の自重に作用する重力によって、水平面に対して傾斜する基板11の上方に臨む面である表面11c側が凹状に湾曲する。
【0039】
これら複数の裏面搬送ローラ21は、不図示の駆動手段によって、回転軸線まわりに矢符23方向にそれぞれ回転駆動される。裏面搬送ローラ21の回転駆動は、1つの裏面搬送ローラ21を駆動手段で回転駆動し、回転駆動される裏面搬送ローラ21と残余の裏面搬送ローラ21とをたとえばチェーンなどで連結するようにして行われても良く、また個々の裏面搬送ローラ21をそれぞれ駆動手段で回転駆動させるようにしても良い。
【0040】
基板下端支持手段16は、水平面に対して平行な同一平面上に配置される断面が略L字状の複数の下端支持部24を含み、複数の下端支持部24は、下端支持部24を連ねる仮想平面が、曲率を有し、傾斜方向に対して上方側で凹状に湾曲するように配置される。
【0041】
複数の下端支持部24は、不図示のベルトで連結され、該ベルトを駆動する駆動手段の動作によって、等しい速度で矢符13方向に移動する。このような基板11を載置した状態で下端支持部24が基板11とともに移動する構造をボート構造と呼ぶ。下端支持部24が、搬送される基板11とともに移動することによって、基板11との当接部において基板11と摺動することがなくなるので、摺動に起因するパーティクルの発生を防止することができ、清浄性を向上することができる。
【0042】
基板11は、上記のように構成される基板裏面支持手段15によって裏面11aを支持され、基板下端支持手段16によって下端11bを支持されるので、表面11c側で凹状に湾曲した状態で矢符13方向に搬送される。基板11を湾曲させることによって、基板11の全面にわたって応力が作用するので、搬送の振動および洗浄処理などによる基板11に対する偏りのある応力、また基板11自体が持つ内部応力の作用を減殺し、基板の姿勢を安定に保持することができる。また、基板11の曲率方向に対して垂直な曲げ軸方向である傾斜方向Aは、基板11に作用する力の方向と一致するので、曲げモーメントが基板に発生することが防止される。
【0043】
次に、基板11の傾斜角度θの範囲について説明する。傾斜角度θは、30度以上90度以下であることが好ましい。
【0044】
基板を水平から傾斜させることにより、基板搬送装置の設置面積増大を抑制し、また基板搬送装置を備える基板処理装置によるウェット処理における性能向上が見込まれる。その性能向上効果は、基板の傾斜角度を大きくするほど高くなる。しかしながら、基板を湾曲させることなく直板のまま傾斜角度を大きくすると、重力による影響で基板下端付近および端面の支持部分に応力が集中し、搬送状態が不安定になり、基板に割れまたは欠けなどを生じることがある。このような搬送状態の不安定、基板の割れまたは欠けなどは、基板の傾斜角度が30度以上になると発生しやすくなる。
【0045】
本発明は、傾斜状態において基板を曲面状態にして支持搬送することによって、基板に対する応力の集中を抑制するものであり、上記の直板状態では種々の問題が発生する傾斜角度30度以上において、顕著に応力集中抑制効果が発現される。本発明は、基板の傾斜角度が30度未満でもその効果を有するけれども、直板状態で搬送する場合との差異が顕著ではないので、傾斜角度30度以上で適用されることが好ましい。
【0046】
また、通常液晶素子の製造工程においては、半導体素子を製作する面を基板の表面とし、基板はその表面を上方に向けて搬送される。したがって、基板の傾斜角度が90度を超える場合、前記表面が下向きになる状態であり、本発明のように裏面を支持して搬送する場合、重力が逆向きに作用し、基板が装置から落下する恐れもあるので、傾斜角度を90度以下にしないと、本発明を適用することができない。このことから、基板11の好ましい傾斜角度θを30度以上、90度以下とした。
【0047】
また基板11の曲率については、曲率が大きいすなわち曲率半径Rが小さいほど、搬送安定化に及ぼす効果が大きいけれども、基板が完全な平面状を呈する直板でない限り、微小な曲率すなわち大きい曲率半径Rであるとしても、搬送安定化効果を得ることが可能である。したがって、基板11の曲率は、特定の値に限定されることなく、基板11の大きさに応じて決定されてよいけれども、好ましくは曲率半径Rが、基板11の搬送方向長さの5倍以下である。
【0048】
図4は、本発明の実施の第2形態である基板搬送装置30の構成を示す傾斜方向から見た上面図である。本実施形態の基板搬送装置30は、実施の第1形態の基板搬送装置10に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略するとともに、側面図および正面図を省略する。
【0049】
基板搬送装置30において注目すべきは、基板湾曲支持手段31を構成する基板裏面支持手段32および基板下端支持手段33が、水平面に対して傾斜する基板11の下方に臨む面である裏面11a側が凹状になるように湾曲、すなわち実施の第1形態の場合とは逆の方向に湾曲させるように構成されることである。基板11を実施の第1形態とは逆方向に湾曲させて支持し搬送する本実施の形態の基板搬送装置30も、実施の第1形態の基板搬送装置10と同一の効果を奏することができる。
【0050】
図5は、本発明の実施の第3形態である基板搬送装置40の構成を示す傾斜方向から見た図である。本実施形態の基板搬送装置40は、実施の第1および第2形態の基板搬送装置10,30に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0051】
基板搬送装置40は、実施の第1形態の基板搬送装置10と実施の第2形態の基板搬送装置30とを組合せたものである。すなわち、基板搬送装置40において、第1形態の基板搬送装置10に該当する部分では、基板11は、表面11c側が凹状になるように湾曲した状態で搬送され、第2形態の基板搬送装置30に該当する部分では、基板11は、裏面11a側が凹状(表面11c側が凸状)になるように湾曲した状態で搬送される。このような基板搬送装置40では、実施の第1形態の基板搬送装置10と同一の効果を奏することができるとともに、基板11を搬送し始める際の基板の方向と、基板11を搬送し終わって次工程の装置などへ渡す際の基板の方向とが略平行になるので、工程の搬送装置を配置しやすいという効果を奏することができる。
【0052】
図6は本発明の実施の第4形態である基板搬送装置45の構成を示す正面図であり、図7は図6に示す切断面線VII−VIIから見た図である。本実施形態の基板搬送装置45は、実施の第1形態の基板搬送装置10に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態の基板搬送装置45において注目すべきは、基板湾曲支持手段46の基板裏面支持手段47が裏面支持浮上ユニットで構成され、基板下端支持手段48が、回転軸52が基板11の搬送方向13にそれぞれ交わるようにして設けられる複数の回転ローラである端面支持ローラ49を含む回転ローラ構造を有することである。
【0054】
基板裏面支持手段47である裏面支持浮上ユニットは、基板11の裏面11aを臨む側に、たとえば焼結金属フィルタなどの多孔質部材が装着され、基板11の裏面11aを臨む側で凹状に湾曲した薄型の箱状部材である。この裏面支持浮上ユニット47は、加圧された空気を供給する空気供給源に配管によって接続され、箱状の内部空間に供給された加圧空気が多孔質部材を介して搬送される基板11の裏面11aに向けて噴射される。したがって、基板裏面11aに臨み多孔質部材が装着されている面を便宜上噴射面50と呼ぶ。噴射面50が凹状に形成されているので、基板11が、噴射面50から噴射される空気圧と自重に作用する重力とによって噴射面50の形状に沿って凹状に浮上支持される。
【0055】
裏面支持浮上ユニット47のみでは、基板11を搬送推進する力が無いので、基板下端支持手段48を構成する端面支持ローラ49を矢符51方向に回転駆動させることによって、基板11の下部端面11bを支持しつつ基板11を矢符13方向へ搬送する。
【0056】
このような基板搬送装置45によれば、基板11が基板裏面支持手段47と接触することがないので、パーティクルの発生および裏面11aへの付着の問題が低減される。したがって、基板浮上ユニットを用いるような構成は、主にパーティクルの発生および付着が影響するような、超清浄プロセスに適用され、たとえば液晶のTFTアレイプロセスなどが、その対象となる。基板を浮上させる方法としては、上記の空気を高圧で基板の裏面に吹付ける方法に限定されることなく、裏面支持浮上ユニットで静電気を発生させ、該静電気によって基板を浮上させる方法などが用いられても良い。
【0057】
なお、本実施の形態では、基板下端支持手段は、回転軸が基板の搬送方向にそれぞれ交わるようにして設けられる複数の端面支持ローラを有する回転ローラ構造であるけれども、これに限定されることなく、回転ローラである端面支持ローラにさらに巻きまわされるベルトを備えるベルト構造であっても良い。
【0058】
図8は本発明の実施の第5形態である基板搬送装置55の構成を簡略化して示す側面図であり、図9は図8に示す基板搬送装置55の基板裏面支持手段57の構成を簡略化して示す斜視図である。
【0059】
本実施形態の基板搬送装置55は、基板湾曲支持手段56の基板裏面支持手段57に特徴を有する。
【0060】
基板裏面支持手段57は、基板11の傾斜方向に配置される複数の回転ローラ58a,58b,58c,58dと、複数の回転ローラ58a〜58dを駆動させる駆動手段59a,59b,59c,59dと、駆動手段59a〜59dの動作を制御する回転制御手段60とを含む。
【0061】
基板11の傾斜方向に配置される複数の回転ローラ58a〜58dは、回転軸61(本実施形態では回転軸61が共通)が水平面に対して略垂直、すなわち鉛直方向になるようにそれぞれ設けられ、鉛直方向に上から下に向って配置される位置に応じてそれぞれ直径が異なる。本実施の形態においては、鉛直方向に上から下に向って配置される回転ローラ58a〜58dの直径が順次大きくなるように構成される。すなわち、参照符号で回転ローラ58a〜58dの直径を表すとすれば、その大小関係は、58a<58b<58c<58dとなる。
【0062】
この直径がそれぞれ異なる4つの回転ローラ58a〜58dを1組として回転ローラ群58と呼ぶ。基板搬送装置55では、この回転ローラ群58がさらに複数組備えられ、複数組の回転ローラ群58が、それぞれの回転軸61を連ねる円弧が仮想円62の一部を成すように配置される。このことによって、基板裏面支持手段57に支持される基板11が、水平面に対して傾斜角度を有するように、かつ基板11の表面11c側が凹状に湾曲するようにして支持される。なお、図9では、図の煩雑化を避けるために回転ローラ58d、駆動手段59a〜59d、回転制御手段60および基板下端支持手段48の図示を省略する。
【0063】
駆動手段59a〜59dは、たとえば電動機である。電動機は、個々の回転ローラにそれぞれ設けられてもよいけれども、装置コスト上、各回転ローラ群58に含まれるたとえば回転ローラ58aをチェーンなどで連結し、1基の電動機ですべての回転ローラ58aを回転させることが好ましい。これは回転ローラ58b,58c,58dについても同様である。
【0064】
各回転ローラ58a,58b,58c,58dをそれぞれ回転駆動させる各駆動手段59a〜59dは、回転制御手段60に接続される。回転制御手段60は、電源と大規模集積回路(LSI)などから成る処理回路とを備え、LSI部分には記憶部も備えられる。回転制御手段60は、記憶部に予めストアされる動作プログラムに従い、回転ローラ58a〜58dを、直径ごとに異なる回転数で回転させるように駆動手段59a〜59dの動作を制御する。本実施形態の基板搬送装置55では、各回転ローラ58a〜58dの回転数が、その直径に反比例する比で回転されるように制御される。たとえば、各回転ローラ58a,58b,58c,58dの直径の比が、1:2:3:4の場合、各回転ローラ58a,58b,58c,58dが、4:3:2:1の回転数で回転するように制御される。
【0065】
また本実施形態の基板搬送装置55の基板下端支持手段48は、実施の第4形態の基板搬送装置45に備わる基板下端支持手段と同一に構成され、複数の端面支持ローラ49を含む回転ローラ構造を有する。基板11の下端11bを支持した状態で、端面支持ローラ49を矢符63方向へ回転させることによって基板11を搬送する。
【0066】
このような基板湾曲支持手段は、基板11の表面側が凹状、基板11の表面側が凸状、または凹状と凸状との組合わせによるいずれの構成に対しても適用が可能である。このような構成の基板湾曲支持手段とすることによって、簡単な装置構成で、搬送レベルを一定の高さに保ちながら基板11を搬送することが可能になる。
【0067】
図10は本発明のもう一つの実施形態である基板処理装置70の構成を簡略化して示す傾斜方向から見た図であり、図11は図10に示す基板処理装置70の側面図および正面図である。本実施形態の基板処理装置70に備わる基板搬送装置71は、上記各実施形態の基板搬送装置の部分に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0068】
基板処理装置70は、基板搬送装置71で矢符13方向に搬送される基板11の表面を臨んで設けられる処理ノズル72から基板11に対して処理液73を噴射して基板11を処理することに用いられる。基板処理装置70に備わる基板搬送装置71は、実施の第2形態と同様の基板裏面支持手段32と、実施の第4形態と同様の基板下端支持手段48とを備え、基板裏面支持手段32と基板下端支持手段48とで基板湾曲支持手段74を構成する。
【0069】
処理ノズル72は、ノズル口75が、被処理材である搬送基板11の表面11cを臨み、基板11の搬送方向13に対して角度αを有し、また基板11の搬送方向13の下流側から上流側に向って処理液73を噴射することができるように、鉛直線76に対して傾斜角度βを有するようにして設けられる。この処理ノズル72には不図示の処理液供給手段が接続され、処理液供給手段から供給されるたとえばレジスト剥離液または洗浄液である純水などのウェット処理液を、基板11の処理面である表面11cに対してノズル口75から噴射させ、枚様にて基板11のウェット処理を行う。
【0070】
このウェット処理時、基板11は、基板搬送装置71によって、水平面12から角度θだけ傾斜し、かつ表面11c側に凸状(裏面11a側に凹状)に湾曲した状態で搬送される。基板11が水平面12から傾斜した状態でウェット処理が行われるので、処理液73の基板11上における滞留を防いで置換効率を向上させ、処理槽間の処理液の持出し量を削減することができる。したがって、洗浄またはレジスト剥離等のウェット処理工程において、洗浄または剥離力の増加にともなう処理時間の削減、洗浄効果の向上、また処理液使用量の削減等の効果が得られる。
【0071】
一般的に傾斜角度θを増加させることによって上記処理時間の削減、洗浄効果の向上、また処理液使用量の削減等の効果を顕著に奏することができるけれども、基板11の内部応力によるたわみが増大し、また自重が基板11の下端11bに与える負荷も増大する。さらに、基板11に対して処理液73を供給する際に、処理液73によって加えられる外部負荷および振動が大きくなるので、それに起因して端面支持ローラ49から基板11が脱落したり、たわみによる局所応力で割れが発生するなど、安定に搬送することが難しいという状況が生じる。しかしながら、本発明の基板処理装置70では、基板搬送装置71によって基板11が表面11c側で凸状に湾曲するようにして搬送されるので、処理液73によって加えられる外部負荷および振動を著しく軽減し、安定して傾斜搬送を行うことが可能になり、ウェット処理の効果を安定して得ることができる。
【0072】
図12は、本発明のさらにもう一つの実施形態である基板処理装置80の構成を簡略化して示す側面図および正面図である。本実施形態の基板処理装置80は、前述の実施形態の基板処理装置70および基板搬送装置の部分に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0073】
基板処理装置80に備わる基板搬送装置81は、実施の第4形態と同様の基板裏面支持手段47と、下端支持部82がピン状に形成される基板下端支持手段83とを備え、基板裏面支持手段47と基板下端支持手段83とで基板湾曲支持手段84を構成する。
【0074】
基板下端支持手段83は、ピン状に形成される複数の下端支持部82が、たとえば無端ベルトなどの外周上に設けられ、該無端ベルトがプーリーなどの駆動手段で駆動されることによって、下端支持部82が連動して矢符85方向へ移動して基板11を搬送する。このとき、ピン状の下端支持部82と基板11の下端11bとは摺動することがないので、基板下端支持手段83はボート構造を有する。また基板裏面支持手段47が裏面支持浮上ユニットであるので、基板11の搬送に伴うパーティクルの発生が防止され、極めて清浄性に優れる基板処理装置80が実現される。
【0075】
本実施形態の基板処理装置80では、処理ノズル72が水平面12と平行に延び、かつ鉛直線76に対して傾斜角度βを有し、基板裏面支持手段47の傾斜方向(A方向)に平行に上から下に向って走査可能に設けられる。なお、処理ノズル72を走査する走査手段については図示を省略する。
【0076】
基板11は、水平面12から傾斜角度θだけ傾斜した状態で、裏面支持手段47である裏面支持浮上ユニットと基板下端支持手段83とによって支持され保持される。この傾斜状態の基板11の表面11cに、たとえばレジストの剥離液または純水などのウェット処理液73を処理ノズル72から供給するとともに、処理ノズル72を上から下へ向って走査して傾斜した基板11の全面に処理液73を供給し、枚葉にて基板11のウェット処理を行う。このような基板処理装置80は、前述の基板処理装置70と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の第1形態である基板搬送装置10の構成を示す傾斜方向から見た上面図である。
【図2】図1に示す基板搬送装置10の正面図である。
【図3】図2の切断面線III−IIIから見た断面図である。
【図4】本発明の実施の第2形態である基板搬送装置30の構成を示す傾斜方向から見た上面図である。
【図5】本発明の実施の第3形態である基板搬送装置40の構成を示す傾斜方向から見た図である。
【図6】本発明の実施の第4形態である基板搬送装置45の構成を示す正面図である。
【図7】図6に示す切断面線VII−VIIから見た図である。
【図8】本発明の実施の第5形態である基板搬送装置55の構成を簡略化して示す側面図である。
【図9】図8に示す基板搬送装置55の基板裏面支持手段57の構成を簡略化して示す斜視図である。
【図10】本発明のもう一つの実施形態である基板洗浄装置70の構成を簡略化して示す傾斜方向から見た図である。
【図11】図10に示す基板洗浄装置70の側面図および正面図である。
【図12】本発明のさらにもう一つの実施形態である基板処理装置80の構成を簡略化して示す側面図および正面図である。
【図13】従来の基板搬送装置1による基板2の搬送状態を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
10,30,40,45,55,71,81 基板搬送装置
11 基板
12 水平面
14,31,46,56,74,84 基板湾曲支持手段
15,32,47,57 基板裏面支持手段
16,33,48,83 基板下端支持手段
49 端面支持ローラ
58 回転ローラ群
59 駆動手段
60 回転制御手段
61 回転軸
62 仮想円
70,80 基板処理装置
72 処理ノズル
73 処理液
75 ノズル口
82 下端支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平面に対して傾斜角度を有するようにして搬送する基板搬送方法において、
基板が、
搬送方向に関して曲率を有するように湾曲した状態で搬送されることを特徴とする基板搬送方法。
【請求項2】
基板は、
水平面に対して傾斜する基板の上方に臨む面側が凹状に湾曲した状態で搬送されることを特徴とする請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項3】
基板は、
水平面に対して傾斜する基板の下方に臨む面側が凹状に湾曲した状態で搬送されることを特徴とする請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項4】
基板の水平面に対する傾斜角度が、
30度以上90度以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の基板搬送方法。
【請求項5】
基板を水平面に対して傾斜角度を有するようにして搬送する基板搬送装置において、
搬送される基板を搬送方向に関して曲率を有するように湾曲させる基板湾曲支持手段を含むことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項6】
基板湾曲支持手段は、水平面に対して傾斜する基板の下方に臨む面である裏面を支持する基板裏面支持手段を含み、
基板裏面支持手段は、
搬送される基板が、基板の搬送方向に関して曲率を有して湾曲した状態になるように構成されることを特徴とする請求項5記載の基板搬送装置。
【請求項7】
基板裏面支持手段は、
基板の傾斜方向に配置される複数の回転ローラを含むことを特徴とする請求項6記載の基板搬送装置。
【請求項8】
複数の回転ローラの直径が、
配置される基板の傾斜方向の位置に応じてそれぞれ異なることを特徴とする請求項7記載の基板搬送装置。
【請求項9】
直径が異なる複数の回転ローラは、
回転軸が水平面に対して略垂直になるようにそれぞれ設けられることを特徴とする請求項8記載の基板搬送装置。
【請求項10】
基板裏面支持手段は、
直径が異なる複数の回転ローラを駆動させる駆動手段と、
複数の回転ローラを、回転ローラの直径ごとに異なる回転数で回転させるように駆動手段の動作を制御する回転制御手段とを含むことを特徴とする請求項8または9記載の基板搬送装置。
【請求項11】
基板湾曲支持手段は、水平面に対して傾斜する基板の下端部を支持する基板下端支持手段を含み、
基板下端支持手段は、
搬送される基板が、基板の搬送方向に関して曲率を有して湾曲した状態になるように構成されることを特徴とする請求項5記載の基板搬送装置。
【請求項12】
基板下端支持手段は、
回転軸が基板の搬送方向にそれぞれ交わるようにして設けられる複数の回転ローラを備える回転ローラ構造であることを特徴とする請求項11記載の基板搬送装置。
【請求項13】
基板下端支持手段は、
回転軸が基板の搬送方向にそれぞれ交わるようにして設けられる複数の回転ローラに巻きまわされるベルトを備えるベルト構造であることを特徴とする請求項11記載の基板搬送装置。
【請求項14】
基板下端支持手段は、基板の下端に当接して支持する下端支持部を備え、
下端支持部は、
搬送される基板とともに移動し、基板との当接部において基板と摺動することがないボート構造であることを特徴とする請求項11記載の基板搬送装置。
【請求項15】
下端支持部が、
ピン状に形成されることを特徴とする請求項14記載の基板搬送装置。
【請求項16】
基板の表面を臨んで設けられる処理ノズルから基板に対して処理液を噴射して基板を処理する基板処理装置であって、
前記請求項5〜15のいずれか1つに記載の基板搬送装置を備えることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−193267(P2006−193267A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5625(P2005−5625)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】