説明

基板洗浄方法と装置

【課題】
基板洗浄において、薬液、超音波、ブラッシング、高圧液などの技術や装置を用いないで、蒸気ノズルと噴霧水ノズルを組み合わせ、純水のみでクリーンで低コストの洗浄技術を提供する。
【解決手段】
本発明の洗浄方式は、水蒸気ノズル2からの水蒸気噴射直下の基板上に、噴霧水ノズル3から噴霧水31を噴射させ、噴霧粒31の瞬時蒸発による水蒸気爆発9で剥離洗浄し、剥離物を排出搬送させる洗浄水ノズル10などを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶用基板、マスク基板、シリコン基板、LCD実装基板などの表面を、水蒸気を利用して洗浄する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗浄方法は薬液、超音波、ブラッシング、高圧液などの技術や装置を組み合わせて実行されている。
【0003】
これらの技術では薬液廃液での環境負荷の増大、超音波でのダメージ、ブラッシングでの剥離物再付着や擦過傷、高圧液での液大量消費や静電負荷などの問題点がある。
【0004】
なお、本願発明に関する公知技術として次の特許文献1を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001334180
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、従来技術に係る基板表面の洗浄では廃液処理での環境負荷の増大、剥離物再付着、擦過傷、純水の大量使用などの問題があり、クリーンで低コスト化された生産が不可能である。
【0007】
本発明は、このような問題状況に対応するために、蒸気ノズルと噴霧水ノズルを組み合わせ、純水のみでクリーンで低コストの洗浄技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成する本発明の洗浄方式は、水蒸気ノズルから水蒸気を噴射させ、直下の基板上に噴霧水を噴射させ、噴霧粒の瞬時蒸発による水蒸気爆発で剥離洗浄し、剥離物を排出搬送させる洗浄水ノズルなどを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の洗浄方式では、水蒸気ノズル・噴霧水ノズル・洗浄水ノズルが最少のノズルセットになるが、汚染度によってはこれらのセットを多段にすることが洗浄効果に有効である。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、基板洗浄装置に水蒸気ノズルと噴霧水ノズルで水蒸気爆発による剥離洗浄を行い、洗浄水ノズルで剥離物を排出搬送させ、最後にエアーノズルで乾燥させることにより、純水だけでしかも簡易な機構で非接触状態のクリーン洗浄が可能となった。
【0011】
これまでの諸実験により、従来の洗浄技術では煩雑または不可能であった、シリコン系薄膜の剥離、有機系薄膜の剥離、ガラスカレットの剥離、有機系パーティクルの洗浄などに極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1〜図5は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は洗浄部の装置構成図、図2は洗浄部の粒子モデル図、図3は噴霧粒子径の蒸発時間の解析、図4は洗浄部の薄膜剥離モデル図、図5は洗浄ラインのノズル配列図である。
【0014】
図1、図2に示すように、本発明の装置1は水蒸気ノズル2からの水蒸気21を基板5上の薄膜4に噴射させると同時に、水蒸気21と薄膜4との接触部に噴霧水ノズル3からの噴霧粒31を噴射させ、基板5は矢印8の方向に搬送ローラ6の回転7によって搬送できる機構となっている。
【0015】
図3は水蒸気21と薄膜4の接触温度場に噴霧粒31が噴射された場合の噴霧粒径と蒸発時間を解析した例であり、図中のように、130℃雰囲気での粒径50μmの噴霧粒は約5msで蒸発することを表している。一般的に水蒸気の体積膨張は100℃場で1600倍、500℃場で3000倍と言われており、数10msの時間内で体積変化が1000倍以上の場合は爆発現象と想定できる。
【0016】
図4は、図1の構成による実験装置において、130℃雰囲気で膜厚さ1μmのシリコン薄膜の剥離実験したときの結果をもとに、薄膜41と噴霧粒31を粒子モデルで表現し、水蒸気爆発9による剥離洗浄現象をモデル化している。
【実施例】
【0017】
図5は水蒸気爆発による剥離洗浄を生産ラインに応用するための基板片面洗浄ラインでのノズル配列図であり、基板5の入口部より、蒸気ノズル2、噴霧水ノズル3、剥離物を水流で排出搬送する洗浄ノズル10、水切り用のエアーナイフが配列される。基板5の搬送8は図1と同様に、搬送ローラ6の回転7でコントロールされる。ノズルの幅寸法は基板の幅と同様であり、400mmの寸法を有している。
【0018】
【表1】

表1は図5の洗浄ラインで洗浄した結果の水滴接触角である。洗浄対象物はW400mm×L500mm×t1mmガラス基板であり、蒸気温度は130〜170℃、噴霧粒径50〜70μm、搬送速度1〜8m/minである。水滴接触角は値が小さい程、清浄面であるとされており、本実験での洗浄後の水滴接触角は10度以下を示している場合があり、従来法の高品位レベルに匹敵する値である。
【0019】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、基板を両面同時に洗浄する場合は、図5でのノズル配列を基板の裏面側にも設置することができる。
【0020】
また、本発明の洗浄方式では、蒸気ノズル・噴霧水ノズル・洗浄水ノズルが最少のノズルセットになるが、汚染度によってはこれらのセットを多段にすることで洗浄効果を向上することが可能である。
【0021】
さらに、実施例では矩形基板で直線搬送型の洗浄ラインについて説明しているが、直線洗浄ラインだけに限らず、回転運動による方式でも可能である。例えば、従来のスピン洗浄方式と同様に被洗浄物を回転テーブル上に設置し、ノズル穴を微小形状としたノズル列をアームに設置し、アームを回転テーブルの中心部より外縁部方向に搬送運動させる方式である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明はFPD用ガラス基板、マスク用石英基板、シリコンウェハー、FPD実装基板、
メディア用各種基板などの製造分野での洗浄工程で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る水蒸気ノズルと噴霧水ノズルの配置関係を説明した装置構成図である。
【図2】図1の蒸気、噴霧粒、薄膜各部の関連図であり、薄膜と噴霧粒を粒子モデルで表している。
【図3】ある温度場における噴霧粒の粒径と蒸発時間の解析結果例である。(本解析は温度場を130℃としている)
【図4】図2の薄膜上で噴霧粒が瞬時に蒸発膨張(水蒸気爆発)した時の薄膜剥離モデル図である。
【図5】図1の基本構成を基にし、基板片面洗浄ラインを構築した時のノズル配列図である。
【符号の説明】
【0024】
1 洗浄装置
2 蒸気ノズル
3 噴霧水ノズル
4 薄膜
5 ガラス基板
6 搬送ローラ
7 搬送ローラの回転方向
8 基板の搬送方向
9 水蒸気爆発ゾーン
21 噴射蒸気
31 噴霧水粒
41 薄膜の粒子モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面を、水蒸気を利用して洗浄する方法と装置であって、蒸気ノズルは基板表面の近傍に設置し、蒸気噴射直下の基板上に噴霧水を噴射させることを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
蒸気は過熱蒸気または飽和蒸気を使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
純水が使用されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法を実施するための装置において、蒸気を基板表面に噴射する蒸気ノズル、蒸気噴射直下の基板上に噴霧水を噴射させる噴霧ノズル、剥離物を排出搬送させる洗浄ノズルなどを備えていることを特徴とする装置。
【請求項5】
洗浄プロセスにおいて、基板がローラ搬送または回転運動していることを特徴とする請求項4に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−180117(P2007−180117A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374199(P2005−374199)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(500487837)ミクロ技研株式会社 (16)
【Fターム(参考)】