説明

基板間接続構造およびパッケージ

【課題】脆弱な構造を有する第1基板や導電層に第2基板を積層した場合でも、第1基板や導電層の変形や破損を防止することによって、基板間での電気信号の伝送特性が良好な基板間接続構造およびパッケージを提供する。
【解決手段】導電層9が形成され、導電層9の下部に空洞7を有する第1基板2と、導電層9に対応する位置に貫通穴3を有する第2基板1とを、第2基板1と導電層9との間に間隙を開けて導電層9領域以外の領域で固定し、貫通穴3に液体状の導電性材料を挿入して、導電層9に接し貫通穴3の内部に充填された金属を含む貫通導電部12を形成する基板間接続構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層された基板間を電気的に接続する基板間接続構造、およびパッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多層配線や電気素子のパッケージにおいて、導電層が形成された一方の基板上に他方の基板を積層し、導電層の電気信号を他方の基板側から取り出す基板間接続構造が用いられる。
【0003】
例えば特許文献1には、両面に導体およびスルーホールを有するフレキシブル基板と、対応する接続面を有する他の基板とを用いた基板間接続構造が示されている。フレキシブル基板の導体に導電性樹脂を塗布して他の基板の接続面に密着させ、基板間の密着の際にスルーホールに充填される導電性樹脂によって電気的に接続する。
【0004】
また特許文献2には、両面に導体回路を備えた絶縁層において、導体回路の対向面間の絶縁層に穴を形成し、その穴に半田を充填して導体回路間を電気的に接続する基板間接続構造が示されている。一方の面に導体回路を形成した絶縁層に他方の面側から導体回路が底面となるように穴を開け、その穴にメタルジェット法で半田を充填し、他方の面側に導体を貼り付けることで、一方の面の導体回路と他方の面の導体との電気的接続を行う。
【0005】
また特許文献3には、半田メッキを施した下基板と、その半田メッキに相応する位置に形成され下地金属を内側に付着させた貫通穴を備えた上基板とを結合し、半田メッキを溶融させ貫通穴の下地金属に接触させることで、下基板と上基板とを電気的に接続する基板間接続構造が示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−221345号公報
【特許文献2】特開2000−244086号公報
【特許文献3】特開2004−160654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
引用文献1および3は、いずれも第1基板上に形成した導電層上の溶融金属に、貫通穴を有する第2基板を密着させ、その際に貫通穴内側に押し込まれる溶融金属を貫通穴を充填、あるいは貫通穴の内側に施した金属膜に接触させている。このため、脆弱な表面構造を有する第1基板や導電層に対してこれらの方法を用いると、密着の際に第1基板表面や導電層に変形や破損が生じ、信号の伝送特性が劣化する問題があった。
【0008】
また、引用文献2はメタルジェットにより穴に半田を充填するが、穴の底を一方の導電層で塞いだ状態で半田を充填し、上面に他方の導電層を貼り付ける方法を用いる。このため、一方または他方の導電層が脆弱である場合は、穴に密着の際に導電層に変形や破損が生じ、信号の伝送特性が劣化する問題が生じる。
【0009】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、脆弱な構造を有する第1基板や導電層に第2基板を積層した場合でも、第1基板や導電層の変形や破損を防止することによって、基板間での電気信号の伝送特性が良好な基板間接続構造を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基板間接続構造は、導電層が形成され、導電層の下部に空洞を有する第1基板と、導電層に対応する位置に貫通穴を有する第2基板とを、第2基板と導電層との間に間隙を開けて前記導電層領域以外の領域で固定し、貫通穴の開口部から液体状の導電性材料を挿入して、導電層に接し貫通穴の内部に充填された導電性材料を有する貫通導電部を形成する基板間接続構造とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は第1基板と第2基板とを導電層領域以外の領域で間隙を開けて固定するので、間隙をあけて第2基板と対向する第1基板およびその上に形成した導電層は変形や破損を生じない。また、第2基板の貫通穴に液体状の導電性材料を挿入するので、導電性材料は貫通穴を抜けて第1基板上の導電層に接するとともに貫通穴を充填する貫通導電部となり、第2基板の第1基板と反対側の面に導電層の電気信号を取り出すことができる基板間接続構造となる。このため、基板間での信号の伝送特性が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。図において同一の構成要素は同一の符号を用いて表示し、同一の符号についての説明は繰り返さず省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1は本実施の形態1のパッケージの構造を示す断面図である。このパッケージは下側基板2と上側基板1とが積層した構造を備えている。図2は積層される前の下側基板2の構造を示す断面図、図3は積層される前の上側基板1の構造を示す断面図である。
【0014】
図2のように、下側基板2の表面には低誘電率層25が形成され、その低誘電率層25の上に導電層9が形成されている。低誘電率層25は下側基板2よりも比誘電率の低い層であり、例えば、下側基板2がシリコン(比誘電率11.9)の場合、シリコンより誘電率の低いポーラスシリカ(比誘電率2.1〜2.3)や耐熱性のシリコーン樹脂(比誘電率2.8〜3.5)などで形成されている。導電層9が低誘電率層25の上に形成されているので、導電層9を伝播する信号が、下側基板2など外部に伝播して損失が生じるなどの影響を減らすことができる。
【0015】
図3のように、上側基板1には基板の厚み方向に貫通する貫通穴3を有している。貫通穴3は下側基板2と上側基板1とを対向して固定した際に導電層9に対応する位置となるように形成されている。
【0016】
図1のように、低誘電率層25が形成されていない領域の下側基板2と上側基板1との間に接着層22を両面に備えた薄板23が設置され、この薄板23によって上側基板1と下側基板2とは相互に固定され、導電層9を内部に有するパッケージとなっている。
【0017】
薄板23および両面の接着層22の厚みの合計を、貫通穴3の下の低誘電率層25および導電層9の厚みの合計よりも大きくしてある。このため、上側基板1は導電層9と直接接しないように下側基板2に固定される。つまり、接着層22を両面に備えた薄板23は、下側基板2と上側基板1とを相互に固定する接着部となるだけでなく、上側基板1が導電層9に直接接しないようにするスペーサ20にもなっている。このスペーサ20は、それ自体が導電層9に接しないように導電層9の形成された領域の外側に形成されている。
【0018】
貫通穴3の内部には金属が充填された貫通導電部12が形成されている。詳細は後述するが、この貫通導電部12は溶融した金属を貫通穴に挿入する方法で形成される。金属は貫通穴3からはみ出し、導電層9の表面にも接している。この貫通導電部12によって下側基板2の導電層9の電気信号を下側基板2の反対側の上側基板1の面に取り出すことができる。例えば、貫通穴3からはみ出した貫通導電部12に直接ワイヤーで配線接続してもよい。なお、貫通導電部12は導電層9の表面全体に接するものではなく、貫通穴3の開口部が面する領域、あるいは領域とその近傍とからなる部分で導電層9の表面に接している。貫通導電部12と接さない導電層9は上側基板1との間に間隙を有している。
【0019】
なお図1には示さないが、パッケージ内の導電層9には例えば、電気素子が接続される、あるいは導電層9自体が高周波フィルタの形状となるように加工されている。このパッケージは、例えば、1つの貫通穴3の貫通導電部12から導電層9に入力した信号を、パッケージ内の素子や高周波フィルタを経て、別の貫通穴3の貫通導電部12から出力させるように用いられる。
【0020】
導電層9の表面の貫通導電部12の金属と接する部分の周辺には、接する部分よりも溶融したその金属が濡れ難い材料からなる金属広がり防止パッド10が形成されている。金属をはんだとした場合、例えば接する部分の導電層9を金として、金属広がり防止パッド10を例えば、Al、AlSi、Ti、Ta、ステンレス合金、SiO、SiN、などの濡れ難い材料を用いればよい。
【0021】
なお、導電層9に溶融した貫通導電部12の金属と濡れ難い材料を使用し、貫通部3の下部の一部の導電層9の表面に導電層9よりも溶融した金属と濡れ易い導電材料を付着させてもよい。その場合でも、溶融したその金属が接する部分よりも、その周辺が金属と濡れ難い構成となる。
【0022】
次に、本実施の形態1のパッケージの製造手順を説明する。本実施の形態1では下側基板2、上側基板1とも不純物の少なく比抵抗100Ωcm以上のシリコン基板を用いた。基板の材料としてはシリコン以外に、ガリウムヒ素等の半導体、アルミナ等のセラミック、またはホウ珪酸ガラス等のガラスを使用することも適している。
【0023】
まず下側基板2の上の一部の領域に低誘電率層25を形成する。下側基板2の上に低誘電率層25を形成後に、ドライエッチングやウェットエッチングなどでパターン加工してもよいし、感光性のシリコーン樹脂を用いる場合は写真製版により容易にパターン加工された低誘電率層25を形成できる。
【0024】
次に、その低誘電率層25の上に導電層9を形成する。導電層9は、例えば金などの金属膜を真空蒸着法、スパッタ法またはメッキで形成し、その金属膜をパターン加工したものである。パターン加工には、写真製版とエッチングとを組み合わせた方法や、また真空蒸着時ではメタルマスクを用いた方法を使用することができる。
【0025】
次に導電層9の貫通導電部12が接触する所定の部分の周辺部に金属広がり防止パッド10を形成する。成膜法やパターン加工法は導電層9と同様な技術を用いることができる。
【0026】
次に、上側基板1の下側基板2の導電層9に対応する位置に貫通穴3を形成する。レジストなどで一方の面にマスクをして、アルカリ水溶液を用いたウェットエッチング法、または反応性イオンエッチング等のドライエッチング法によって貫通穴3を形成する。特に反応性イオンエッチングを用いた場合は、上側基板1の主面にほぼ垂直の内側面を有する貫通穴3を形成することができる。また貫通穴3を形成する方法として、サンドブラスト、機械加工またはレーザ加工のような物理的加工法を用いてもよい。
【0027】
貫通穴3の形成後に熱酸化処理やCVD法によって貫通穴3の内側に酸化膜を形成してもよい。酸化膜により貫通導電部12の信号が上側基板1側に伝播することを防ぐので伝送特性が向上する。酸化膜のかわりに他の誘電体膜であっても効果がある。
【0028】
次に、スペーサ20となる、接着層22を両面に備えた薄板23を下側基板2の低誘電率層25が形成されてない領域に設置する。上側基板1の貫通穴3が下側基板2の導電層9の位置に対応する位置となるように上側基板1をアライメントしたうえで、上側基板1と下側基板2とを合わせ、接着層22を両面に備えた薄板23によって固定する。これにより、上側基板1と下側基板2とは、上側基板1と導電層9との間に間隙を開けて固定される。
【0029】
次に、貫通穴3に金属を充填して、導電層9に接して貫通穴3の内部に充填された金属を有する貫通導電部12を形成する。図4は本実施の形態1のパッケージの製造方法を示す模式図である。図4のように、メタルジェット法によりノズル31から出る溶融金属粒子28を貫通穴3の導電層9と反対側の開口部から挿入することで、貫通穴3に金属が充填される。溶融金属粒子28は貫通穴3の導電層9側の開口部から出て導電層9にも接する。図には示さないが、ノズル31は内部に金属を溶融状態で先端まで導くためヒーターで加熱された経路や、所定の量の溶融金属を先端から押し出す手段を備えている。溶融金属粒子28の大きさは貫通穴3の穴径よりも小さいサイズとすると良い。
【0030】
充填時に貫通穴3内で溶融金属粒子28が直ちに固体化せずある程度流動するように、上側基板1が加熱されていてもよい。加熱により溶融金属粒子28の流動性を向上させると、貫通穴3内に空気が閉じこめられて充填が不充分となったり貫通導電部12の断線が生じたりする現象を防ぐことができる。貫通穴3内が金属の融点以上となるように加熱されていれば、さらに好ましい。
【0031】
充填の過程は、例えば、貫通穴3をカメラ34を用いて観察することができる。貫通穴3に溶融金属粒子28が順次挿入される従って貫通穴3の内部の金属の上面が上昇する。貫通穴3の上面側の開口部よりも上側に金属の上面が到達すると充填が完了したので溶融金属粒子28の挿入を終える。充填が完了することの検出は、貫通穴3と溶融金属粒子28の大きさから所定の数の溶融金属粒子28を挿入したことで判断する方法でもよいし、貫通穴3を斜め方向から照らすライト35を設置して金属が穴の面に達した際に光の反射量が変化することを利用する方法でもよい。充填された溶融金属が冷却して固体化すれば充填された金属を含んだ貫通導電部12となる。
【0032】
以上のように、本実施の形態1のパッケージは、下側基板2の導電層9に直接接しないように上側基板1が固定する部分としてスペーサ20を備え、導電層9の形成された領域以外の領域で下側基板2と上側基板1とが相互に固定され、上側基板1の導電層9に対応した位置に貫通穴3を有し、その貫通穴3の内部に金属が充填されて導電層9と接する貫通導電部12を備えた基板間接続構造を有している。導電層9の下に低誘電率層25を備えて特に高周波の信号の伝送特性が優れたパッケージとなる。導電層9の形成された領域以外の領域で下側基板2の導電層9と上側基板1とが直接接しないように固定されるので、低誘電率層25およびその上の導電層9の変形や破損を防ぐことができる。また、上側基板1の上面側と導電層9との間の電気信号の伝達は、上側基板1の厚み方向に開けられた貫通穴3に形成された貫通導電部12を通じて行われる。上記の方法で形成すると、貫通導電部12は単一の金属で形成されるので、貫通導電部12の途中では導電率が不連続とならず、インピーダンスの不整合が生じにくいので良好な伝送特性が得られる。また、貫通穴3は上側基板1の主面に垂直方向に形成されるので、上側基板1の上面側と導電層9との間の伝送が最短距離で行われるので良好な伝送特性が得られる。さらに、スペーサ20によって貫通導電部12と接さない部分の導電層9と上側基板1の間には間隙が開けられるので、導電層9を伝送する信号が基板材料によって受ける損失を低減することができる。
【0033】
また、貫通導電部12の製造方法としてメタルジェット法を用いたので、貫通導電部12の作製時には導電層9と液体状態の金属と接し、固体状態の金属によって振動や圧力を受けない。また、導電層9上に付着した溶融金属が上側基板1によって押さえられることがない。このため、導電層9の変形や破損が生じることを防ぐことができ、高品質の伝送特性を実現できる。
【0034】
また、メタルジェット法により貫通穴3の穴径よりも小さい溶融金属粒子28を貫通穴3に挿入することにより、上側基板1の上面の不必要な部分に金属が付着することを防げる。また精度のよい充填が可能となる。
【0035】
また、導電層9と貫通穴3の穴との間に間隙があるので、溶融金属粒子28とともに貫通穴3に入る空気がその間隙から抜けやすく、貫通穴3に空気が残って貫通導電部12の充填が不均一となったり、断線が生じたりする現象を低減できる。
【0036】
なお、導電層9と貫通穴3の穴との間の間隙の高さは、例えば、2μm以上で1mm以下あると良い。さらに好ましくは間隙の高さと貫通穴3の開口周辺長さの積からなる間隙の面積が貫通穴3の開口面積以上となるようにその高さを貫通穴3の穴径の1/4以上としてもよい。その間隙の面積が溶融金属粒子28の断面積以上となるようにしてもよく、例えば溶融金属粒子28の直径が貫通穴3の穴径に比べて半分以下の場合には、その高さを貫通穴3の穴径の1/16以上としても効果がある。また、溶融金属粒子28は貫通穴3の穴径より小さいので、間隙の高さを少なくとも貫通穴3の穴径より小さくすると導電層9に達した溶融金属粒子28が粒子のまま間隙からパッケージ内に侵入し、不良となる可能性を低減できる。より小さい溶融金属粒子28を用いることを考慮すれば、間隙の高さを貫通穴3の穴径1/2以下とすると、溶融金属粒子28が粒子のままの状態で間隙からパッケージ内に侵入する可能性をさらに低減できる。
【0037】
なお貫通穴3の開口形状は円形に限られず、楕円、四角、多角形、不定形でもよい。貫通穴3は上側基板1の厚み方向に沿って、すなわち上側基板1の主面に垂直に形成されることが望ましいが、垂直であることは必須でなく傾斜していてもよい。また、同様に貫通穴3の内側の面も傾斜していてもよい。
【0038】
また、低誘電率層25の上の導電層9に直接貫通導電部12を接続しているので、脆弱な低誘電率層25の部分を避けて貫通導電部を形成する構造と比べて、本実施の形態1のパッケージの基板間の接続構造はパッケージ全体の面積を小さくでき、配線の長さも短くできる。特に多数の素子をパッケージ内に備え、それぞれについて上側基板1の上面側と電気信号を伝送するような構造のパッケージにおいて面積を小さくできる効果が大きい。
【0039】
また、貫通導電部12の接触する部分の周辺に金属広がり防止パッド10を設け、貫通導電部12の接触する部分に溶融した金属に濡れやすい表面を有し、その周辺部をぬれ難い表面としたので、溶融した金属が導電層9表面に広がって伝送特性が劣化することを防げる。
【0040】
貫通穴3に充填する金属は、必ずしもはんだなどの低融点合金である必要は無く、金などの高融点金属でもメタルジェット法で噴出可能であればよい。また、ノズルにより液状の粒子を貫通穴3に挿入できれば金属以外の導電性充填剤であってもよい。
【0041】
本実施の形態1では2枚の基板で構成するパッケージとしたが、同様な基板接続構造を有していれば、例えば多層基板などの他の製造物であっても同様に高品質な伝送特性を実現できる。
【0042】
実施の形態2.
図5は本実施の形態2のパッケージを示す断面図である。このパッケージは下側基板2と上側基板1とを積層した構造を備えている。
【0043】
下側基板2の表面には絶縁膜8が形成され、その絶縁膜8の上に導電層9a、9bおよび、パッド4bが形成されている。導電層9a、9bには素子5が電気的に接続される。素子5は、例えば高周波トランジスタなどの能動素子や、誘電体共振器などの受動素子である。素子5および、素子5の周辺の導電層9a、9bが形成された領域にある絶縁膜8の下部には基板材料が除去された空洞7を有している。パッド4bの下部には空洞7を有さない。空洞7は導電層9a、9bと反対側の底面に金属膜11を備えている。
【0044】
上側基板1には基板の厚み方向に貫通する貫通穴3および下側基板に対向する面にパッド4aが形成されている。パッド4aは下側基板2のパッド4bに対応した位置に形成されており、貫通穴3はパッド4aとパッド4bとを対向して合わせたときに導電層9a、9bに対応した上方の位置となるように形成されている。上側基板1は導電層9a、9bに対向する面に凹部13を有している。また、この凹部13は導電層9a、9bに対向する面の貫通穴3の周辺にも形成されている。ただしパッド4bの形成される領域には凹部13が形成されない。この凹部13は図5のように上側基板1と下側基板2とを積層した際に導電層9a、9bの上部に基板材料のない空洞を形成する。凹部13は素子5の導電層9a、9bに対向する面に接着層17によって固定された金属膜14を備え、この金属膜14は素子5に対向した位置にある。
【0045】
下側基板2のパッド4bと上側基板1のパッド4aとは、それらの隙間に挟まれた接着用はんだ6によって対向した状態で相互に固定されている。パッド4aおよびパッド4bの厚みの和は導電層9a、9bの厚みより厚い。このため、パッド4aおよびパッド4bを対向して固定させた状態で、上側基板1と導電層9a、9bの表面とは直接接しない。言い換えれば、パッド4a、パッド4bおよびその隙間の接着用はんだ6は、下側基板2と上側基板1とを相互に固定するとともに、貫通穴3の近傍の下側基板2と導電層9a、9bの表面とが直接接しないようにするためのスペーサ20となっている。
【0046】
貫通穴3の内側には導電性の金属が充填された貫通導電部12が形成されている。金属としては例えば、はんだを用いることができる。その金属は貫通穴3からはみ出し、導電層9a、9bの表面にも接している。この貫通導電部12によって下側基板2の導電層9a、9bの電気信号を下側基板2の反対側の上側基板1の上面に取り出すことができる。
【0047】
上側基板1の下側基板2と反対側の面にはコプレーナ線路19a、19bが形成されている。貫通穴3からはみ出した貫通導電部12はコプレーナ線路19a、19bに接し、導電層9a、9bとコプレーナ線路19a、19bとが電気的に接続されている。
【0048】
また、貫通穴3の内側の面には溶融した貫通導電部12の金属が上側基板1の基板材料よりもぬれ易い金属からなる金属膜16が形成されている。貫通導電部12はその金属膜16に接して貫通穴3に充填されている。
【0049】
導電層9a、9bの表面の貫通導電部12の金属と接する部分の周辺には、溶融したその金属が接する部分よりも濡れ難い材料からなる金属広がり防止パッド10が形成されている。
【0050】
図6は本実施の形態2のパッケージの上側基板1と下側基板2との斜視図である。なお、上側基板1と下側基板2とを相互に固定する前の状態を示し、貫通導電部12と接着用はんだは記載していない。
【0051】
上側基板1の下側基板2と反対側の面には、導電性の材料でコプレーナ線路19a、19b、19cが形成されている。コプレーナ線路19aは信号入力用の中心導体、コプレーナ線路19bは信号出力用の中心導体、コプレーナ線路19cは中心導体の両側に配置されたグランドである。
【0052】
下側基板2の導電層9a、9bもそれぞれ、コプレーナ線路の信号入力用の中心導体、信号出力用の中心導体となっている。なお図5には示していないが、導電層9a、9bの外側にはコプレーナ線路のグランドとなる導電層9cが形成されている。
【0053】
導電層9a、9b、9cの上の貫通導電部12と接すると素子との間には金属広がり防止パッド10が形成されている。
【0054】
導電層9a、9b、9cの下部に空洞7が形成された下側基板2の領域は中空領域18となっている。下側基板2のパッド4bは中空領域18の外側の領域に導電層9a、9b、9cを囲む形状に形成されている。上側基板1のパッド4aもパッド4bに対応するように囲む形状となっている。このため本実施の形態2のパッケージは、パッド4aとパッド4bとを対向して接着用はんだ6で固定させ、さらに貫通穴3に金属を充填するので、導電層9a、9b、9cおよび素子5が密閉されたパッケージとなる。このような密閉構造とすることにより、導電層9a、9b、9cおよび素子5を保護でき、信頼性の高いパッケージとすることができる。密閉構造の内部は、不活性ガスで置換、真空あるいは加圧としても良い。
【0055】
下側基板2の導電層9aに対応した位置に上側基板1の貫通穴3aが形成され、その内部に形成された貫通導電部12によって、導電層9aは上側基板1のコプレーナ配線19aと電気的に接続される。同様に、下側基板2の導電層9bは貫通穴3bの貫通導電部12によってコプレーナ配線19b、下側基板2の導電層9cは貫通穴3cの貫通導電部12によってコプレーナ配線19cと接続される。
【0056】
図7は図6の点線Aで上側基板1を切断した場合の断面図である。図7のように、貫通穴3a、3cのそれぞれは、コプレーナ線路19a、19cのそれぞれの一部に形成された開口穴の部分に上側基板1の厚み方向に形成されている。また、凹部13が貫通穴3の周辺に形成されているので、上側基板1は貫通穴3の導電層9a、9b側周辺に、貫通穴3を内側とする筒が導電層9a、9b側に向かって突き出た形状を有している。
【0057】
また、図8は図6の点線Bで上側基板1を切断した場合の断面図である。図8のように、貫通穴3dはコプレーナ線路19cの一部に形成された開口穴の部分に上側基板1の厚み方向に形成されている。貫通穴3dの下部の開口部は金属膜14に面している。接着層17は貫通穴3dの下部の開口部を覆わないように形成されている。貫通穴3dも、貫通穴3a、3b、3cと同様に金属が充填され、金属膜14とコプレーナ線路19cとが電気的に接続される。
【0058】
次に、本実施の形態2のパッケージの製造手順について、まず下側基板2の製造、次に上側基板1の製造、最後に下側基板2と上側基板1とを積層しパッケージを製造の順に説明する。下側基板2、上側基板1は実施の形態1と同様な基板材料を用いることができる。
【0059】
まず、下側基板2の製造手順を述べる。下側基板2の上側基板1に対向する面に空洞7を形成する。下側基板2の一方の面に写真製版などでマスクを形成して、アルカリ水溶液を用いたウェットエッチング法、または反応性イオンエッチング等のドライエッチング法によって空洞7を形成する。空洞7を形成する際には、サンドブラスト、機械加工またはレーザ加工のような物理的加工法を用いてもよい。
【0060】
次に、空洞7の底面の基板表面に金属膜11を成膜する。この金属膜11は、例えば、下側基板2の空洞7と反対側の面にグランドの配線(図示なし)を形成して、そのグランドの配線と金属膜11とを下側基板2に開けた貫通穴(図示なし)中の導電部を介して接続されてもよい。金属膜11の主材料として、Au、Ag、Al、Cu、Pt等の導電率が高い材料が用いられることが好ましい。金属膜11の厚さは、望ましくは、0.3μm〜50μmであり、さらに望ましくは、1μm〜10μmである。これらの金属膜と下側基板1との間にCrまたはTi等からなる密着力強化層が挿入されてもよい。その場合、密着力強化層の厚さは0.005μm〜0.2μmであることが好ましい。
【0061】
次に、空洞7に樹脂を塗布して埋め、その樹脂の表面が下側基板2の空洞7が形成されていない表面部分と同じ高さになるようにCMP法で表面を平坦化する。その上にシリコン窒化膜等の絶縁膜8を成膜する。
【0062】
次に、シリコン窒化膜等の絶縁膜8上に、導電層9a、9b、9cおよび接続用のパッド4bを形成する。さらに、導電層9a、9b、9cの貫通導電部12が接触する所定の部分の周辺部に金属広がり防止パッド10を形成する。さらに、導電層9a、9b、9cの上に素子5を接続する。
【0063】
次に、樹脂で埋められた空洞7上の導電層9a、9b、9cが形成されていない部分の絶縁膜8の一部をドライエッチングで開口し(図示なし)、その開口部を介して樹脂をドライエッチングまたはウェットエッチングによって除去する。これにより導電層9a、9b、9cの形成された領域には絶縁膜8の下が基板や樹脂などの固体の無い空洞7からなる中空領域18となる。
【0064】
なお、上記では接続用のパッド4bは導電層9a、9b、9cと同じ膜で形成するとしたが、別々に形成してもよい。その際、接続用のパッド4bの厚みを導電層9a、9b、9cの厚みより厚くすると、上側基板1の4aと下側基板2の4bとを重ね合わせたときに、上側基板1と導電層9a、9b、9cとの間に間隙ができ、上側基板1が導電層9a、9b、9cに接触して表面を傷つけたり、中空領域18を破損したりして伝送特性を劣化させる可能性が減少するので好ましい。
【0065】
次に、上側基板1の製造手順を述べる。まず、上側基板1の下側基板2に対向する面に凹部13を形成する。下側基板2に対抗する面に写真製版などでマスクを形成して、アルカリ水溶液を用いたウェットエッチング法、または反応性イオンエッチング等のドライエッチング法によって凹部13を形成する。
【0066】
次に、上側基板1の所定の箇所に貫通穴3を形成する。凹部3を形成した側と反対側の面にマスクをして、凹部3と同様にアルカリ水溶液を用いたウェットエッチング法、または反応性イオンエッチング等のドライエッチング法によって貫通穴3を形成する。
【0067】
上側基板1としてシリコンなどの半導体を用いる場合は、貫通穴3形成後CVD法などの方法により、貫通穴3の内側に酸化膜を付着するようにしてもよい。酸化膜により貫通導電部12の信号が上側基板1側に伝播することを防ぐので伝送特性が向上する。酸化膜のかわりに他の誘電体膜であっても効果がある。
【0068】
次に、貫通穴3の内側に上側基板1の材料よりも溶融した貫通導電部12の金属に濡れやすい膜を形成する。例えば、貫通導電部12の金属をはんだ、上側基板1をシリコンとした場合に、厚さ0.05μmのCr膜、厚さ2μmのNi膜、および厚さ0.1μmのAu膜がこの順番で重ねられた3層膜を金属膜をスパッタ法などで成膜するとよい。Au膜の厚みは0.01〜1μmとするとよい。貫通穴3の内側表面を、上側基板1の材料よりも溶融した貫通導電部12の金属に濡れやすくしたことにより、貫通穴3内部に金属が充填されやすくなり、貫通導電部12に気泡などが入って断線が起こる可能性が減少する。
【0069】
次に、下側基板2に対向し、かつ凹部13が形成されてないパッケージ周辺部にパッド4aを形成する。金属膜の形成方法としては、めっきまたはスパッタ法が用いられる。例えば、金属としてNiを用いて、その厚みを5μm以上にしてもよい。さらに上側基板1の凹部3と反対側の面に、金メッキなどの方法でコプレーナ線路19a、19b、19cを形成する。また、凹部3の素子5に対向する面に、まず接着層17を形成して、その上に金属膜14を接着する。金属膜14は金属箔で形成されていてもよい。
【0070】
最後に、上側基板1と下側基板2とからパッケージを製造する手順を述べる。まず、接続用のパッド4b上に接着用はんだ6を付着させる。接着用はんだ6の付着させる方法としては、蒸着法、めっき法、溶融はんだをインクジェット法でパッドに向かって噴射する方法、または、型抜きによって作成された、はんだの塊をパッド4b上に載置する方法等の種々の方法を用いてもよい。はんだの材質としては、Sn−Pb、Sn−Ag、Sn−Cu、または、Sn−Ag−Cu等が用いられることが好ましいが、この他の種々のはんだ材料が用いられてもよい。
【0071】
次に、接着用はんだ6が付着した接続用のパッド4bの上に上側基板1のパッド4aを重ね合わせて上側基板1と下側基板2とをはんだ接合で固定する。本実施の形態2ではパッド4aとパッド4bとを合わせた厚みが貫通穴3の下の導電層9a、9bの厚さよりも厚くしたため、接着用はんだ6の厚みが薄い場合でも、上側基板1と下側基板2とを重ね合わせた際に導電層9a、9bが上側基板1に接触しない。また、上側基板1と下側基板2とをパッド4aとパッド4bおよびその間には挟まれる接着用はんだ6で相互に固定したので、固定時にはんだの表面張力によりパッド4aとパッド4bとが最も重なるように力が加わり、基板の面方向に位置精度の良い接続が容易となる。
【0072】
上側基板1と下側基板2とをはんだ接合で固定の手順は、例えば、まずパッド4aとパッド4bとを対向させ、貫通穴3の下に下側基板2の導電層9a、9bが位置するように下側基板1と上側基板2との相互の位置を調整し、次いで接着用はんだ6の融点以上の温度の加熱炉中で保持し、接着用はんだ6が溶融した状態で下側基板1と上側基板2とが密着し、加熱炉中から取り出し室温まで放冷し接着用はんだ6を固化する。はんだの材質としてSn−Ag−Cuを用いた場合は、Sn−Ag−Cuの融点が220℃であるため、加熱炉では、例えば、上側基板1および下側基板2は220℃よりも高い270℃で加熱するとよい。
【0073】
このようにパッド4a、パッド4bおよび接着用はんだ6を合わせた部分は、上側基板1と下側基板2とを重ね合わせた際に導電層9a、9bが上側基板1に接触しないスペーサ20となる。なお、接着用はんだ6の替わりに樹脂等の接着剤を用いて上側基板1と下側基板2とを固定してもよい。また、接着用はんだ6の替わりに両面粘着テープのように厚みのある接着層を挿入して、その厚みをスペーサ20の厚みとして利用してもよい。
【0074】
次に、メタルジェットのノズルを貫通穴3の上方に設置し、貫通穴3の直径より小さいサイズの溶融した金属粒子をノズルから貫通穴3に向かって挿入し、貫通穴3を金属で充填して貫通導電部12を形成する。充填の際に貫通穴3の下側基板2の穴からはみ出た貫通導電部12は下側基板2の導電層9a、9bと接し、電気的に接続する。貫通穴3に充填する金属は、必ずしもはんだなどの低融点合金である必要は無く、金などの高融点金属でもメタルジェット法で噴出可能であればよい。また、充填されて貫通穴3からはみ出た金属は上側基板1のコプレーナ線路19a、19bとも接する。コプレーナ線路19a、19bは貫通穴3の開口部近傍までパターンを有するようにしておけば貫通部3からはみ出す金属の量が少なくても貫通導電部12の金属と接することが容易となる。
【0075】
以上の方法により、上側基板1と導電層9a、9bとの間に間隙を開けて固定し、直接接触することなしに電気的な接続ができるので、下側基板2の脆弱な構造を破壊する可能性が極めて低くなる。また、その電気接続が連続した同一の材料からなるので、導電率が一様でインピーダンスの不連続が生じにくく、良好な伝送特性を実現できる。
【0076】
また、メタルジェット法で溶融した金属粒子を貫通穴3に挿入する際に穴の一方が導電層9a、9bに密着しない構造となっているので、溶融した金属粒子とともに貫通穴3に入る空気が貫通穴3の底と導電層9a、9bとの間の間隙から抜けやすく、貫通導電部12中に空気が閉じこめられ、貫通導電部12が不均一となる現象や断線の発生を低減できる。
【0077】
また、上側基板1の貫通穴3dも上記と同様に溶融した金属を充填することによって、凹部13に形成した金属膜14と上側基板1の表面に形成されたコプレーナ線路のグランド19cとを電気的に接続することができる。
【0078】
さらに本実施の形態2では導電層9a、9bの貫通導電部12と接する周辺部に金属広がり防止パッド10が形成されているので、貫通穴3から突き出て導電層9a、9bの表面に接した溶融金属が導電層9a、9b表面全体に伝わり広がって伝送特性が劣化する現象を防ぐことができる。
【0079】
パッケージを不活性ガスで封止するには、メタルジェット法で溶融した金属を貫通穴3に挿入する前に、貫通穴3を通じて内部を不活性ガスで置換しておき、不活性ガス雰囲気下で溶融した金属を貫通穴3に充填してもよいし、貫通穴3とは別にガス置換用の穴を設けておいて、不活性ガスで置換後にその穴を封じるなどの方法を用いてもよい。
【0080】
パッケージを密閉する必要がなければ、パッド4a、4bは必ずしも導電層9a、9b、9cを囲うように閉じた形状でなくても良い。また、下側基板2と上側基板1とをパッド4aと4bとの間に挟まれる接着用はんだ6で固定したが、下側基板2と上側基板1とを固定する部分と、導電層9と上側基板1とが直接接しないようにするためのスペーサ20は別の部分で構成されていてもよい。
【0081】
導電層9a、9bやコプレーナ線路19a、19bは別の構造の伝送線路、例えば、マイクロストリップ線路で置き換えた構成としてもよい。また、中空領域18は絶縁膜8に支持されず、導電層9のみで構成された構造としても絶縁膜8に基づく損失がなくなるのでよい。また、パッケージ内に素子5がなく、導電層9の伝送線路のみで構成されていてもよい。
【0082】
以上のように、本実施の形態2ではパッケージの内部の導電層9a、9b、9cとパッケージの内外に電気信号を入出力するための配線を高周波の信号を伝送するのに適したコプレーナ線路としたので、素子5に入出力する高周波の信号を損失や歪が小さくなる。また、上側基板1の下側基板2と反対側の面に貫通導電部12が直接接続された信号線が形成された構成としたので、パッケージからの信号を容易に取り出すことができる。
【0083】
また、下側基板2の中空領域18では、導電層9a、9b、9cの下部に空洞7が形成されているため、導電層9a、9b、9cを伝送する信号が基板などの周囲の部分に影響を受けて損失を生じる量が減少し、空洞7に基板材料が充填されている場合に比べて高品質の信号の伝播を実現できる。
【0084】
また、上側基板1の素子5およびその近傍の導電層9a、9b、9cの上部に位置する部分に凹部13が形成されているので、凹部13が形成されていない場合に比べて導電層9a、9b、9cを伝播する信号が誘電損失の影響が小さくなり、高品質の信号の伝播を実現できる。
【0085】
また、この凹部13は導電層9a、9bに対向する面の貫通穴3の周辺にも形成されるので、貫通導電部12の周囲にある上側基板1が減少し、基板による誘電損失を低減することができる。貫通穴3の周辺の凹部13は貫通穴3の周辺全周に形成されて、貫通穴3の導電層9a、9b側の開口部周辺に貫通穴3を内側とする筒が貫通穴3に向かって突き出た形状を有していれば最も効果が大きいが、必ずしも凹部13が貫通穴3の周辺全周に形成されず、一部に形成されていても効果がある。また、凹部13の側面は傾斜していてもよく、貫通穴3を中心とする筒が導電層9a、9b側に向かってテーパー状の突起となっていても良い。
【0086】
また、凹部13の上側基板1の表面に形成された金属膜14は、導電層9a、9b、9cを伝播する信号にパッケージの外部から侵入する電磁波の影響を防ぐことができる。また、同様に、空洞7の底面の下側基板2の表面に形成された金属膜11も基板や外部から侵入する電磁波の影響を防ぐ効果がある。
【0087】
また、本実施の形態2では下側基板2の導電層9a、9b、9cをすべて中空領域18で対応する貫通穴3の貫通導電部12によってそれぞれ上側基板1のコプレーナ線路19a、19b、19cと接続したが、それらの一部が中空領域18で接続されなくてもよい。中空領域18の外側の領域は脆弱な構造でないので、上側基板1と接していてもよい。例えば、グランドの導電層9cはグランドのコプレーナ線路19cと下側に空洞7のない領域で接続するようにしてもよく、導電層9cを上下基板の固定領域、つまり図5においてパッド4bのある領域まで延在するように形成して、パッド4bに対応する位置の上側基板に貫通穴3を設け、その貫通穴3を通じて上側基板1のコプレーナ線路19cと接続するようにしてもよい。つまり、脆弱な構造である中空領域18にある導電層9a、9bが上側基板1に直接接しないようにすれば、脆弱な構造上にない領域で導電層9cが上側基板1と接していてもよい。
【0088】
また、本実施の形態2では下側基板2の導電層9a、9bとコプレーナ線路19a、19bとの接続に対して両側のグランドの導電層9cとグランドのコプレーナ線路19cとを接続したが、グランドの導電層9cとグランドのコプレーナ線路19cとの接続箇所はは中心線に沿って複数形成されていてもよい。中心線の導電層9a、9bに沿った両脇の導電層9cの複数個所でコプレーナ線路19cと接続されると中心線の導電層9a、9bを伝送する信号に影響する不要な放射を減少することができ、伝送特性が良好となる。
【0089】
本実施の形態2の凹部13、金属膜14、空洞7、金属膜11のいずれかを省いた構成としてもよい。図9〜図13はいずれも本実施の形態2と類似の構造を有するパッケージの構造を示す断面図である。なお図9〜図13はパッケージの断面図のおよそ右半分を示している。また、図9〜図13では貫通穴3内面の金属膜16と上側基板1上のコプレーナ配線19は省略している。
【0090】
図9に示すパッケージは、本実施の形態2の図5の構成から上側基板1の凹部13の面上の金属膜14および空洞7の底面の金属膜11を省いた構成である。図10に示すパッケージは、本実施の形態2の図5の構成から上側基板1の貫通孔3部分の周辺の凹部13およびその凹部13上の金属膜14を省いた構成である。図11に示すパッケージは、図10に示すパッケージからさらに下側基板2の空洞7の底面の金属膜11を省いた構成である。図12に示すパッケージは、本実施の形態2の図5の構成から下側基板2の空洞7およびその底面の金属膜11を省いた構成である。図13に示すパッケージは図12に示すパッケージから上側基板1の凹部13の面上の金属膜14を省いた構成である。
【0091】
以上の図9〜図13に示したパッケージ構成では、本実施の形態2の図5の構成と比較して、空洞7、空洞7の底面の金属膜11、凹部13および凹部13の面に形成された金属膜14のいずれかを欠くので、欠けた部分の効果は得られないが、その分構成が簡単になり製造が容易となる。
【0092】
以上の実施の形態2のパッケージは実施の形態1のパッケージと同様に、導電層9a、9bが形成された下側基板2と、導電層9a、9bの対応する位置に貫通穴3を備え導電層9a、9bと直接接しないように固定された上側基板1と、導電層9a、9bに接し貫通穴3の内部に充填された貫通導電部12とを備えた基板間接続構造を有している。このため、実施の形態1と同様に、導電層9a、9bは変形や破損が生じず、基板間での信号の伝送特性が良好なパッケージが得られる。
【0093】
実施の形態3.
図14は本実施の形態3のパッケージの構造を示す断面図である。図5に示した実施の形態2からスペーサ20の構成と凹部13の形状を変えて、空洞7の底面の金属膜11と凹部13の面上の金属膜14とを省いた構成である。
【0094】
本実施の形態3のスペーサ20は上側基板1の一部であり、下側基板2に対向する貫通穴3の開口部よりも下側基板2側に張り出した部分である。このスペーサ20の高さが貫通穴3の開口部の下の下側基板2上の導電層9a、9bの厚みよりも大きいので、上側基板1と下側基板2とを相互に張り合わせた場合に、導電層9a、9bは貫通穴3の開口部が形成された上側基板1と直接接しない。
【0095】
上側基板1をシリコンで作製し、下側基板2上の絶縁膜8をガラス膜とした場合、上側基板1と下側基板2とを陽極接合で固定することができる。絶縁膜8をシリコン、上側基板1をガラスとしてもよい。陽極接合で固定するとはんだや接着剤で固定した場合に比べ接着部の厚みのばらつきの影響がなくなり、導電層9a、9bと貫通穴3の開口部との間隙のサイズを精確にすることができるので、製造時の歩留まりが向上する。
【0096】
上側基板1の凹部13は導電層9a、9bに対向する上側基板1の面に凹部13が形成されているが、貫通穴3よりスペーサ20側には形成されていない。ただし、貫通穴3内からみると、一方には凹部13が形成されているので貫通導電部12の信号の損失を防ぐ効果がある。
【0097】
スペーサ20と凹部13とは上側基板1を多段にエッチング加工することで容易に形成することができる。上側基板1の下側基板2に対向する面のスペーサ20以外の部分をまず、所定の深さとなるようにエッチングする。その深さがスペーサ20の高さとなる。次いで、凹部13を形成する部分のみをさらに深くエッチングする。このようにスペーサ20を上側基板1の一部に形成したことにより、パッケージの製造が簡単になる。
【0098】
実施の形態4.
図15は本実施の形態4の多層基板の構造を示す断面図である。下側基板2と中間基板41と上側基板1とを積層した構成である。
【0099】
下側基板2の表面には低誘電率層25が形成され、その低誘電率層25の上に導電層9が形成されている。中間基板41の貫通導電部12が接する部分の周辺の導電層9の表面には金属広がり防止パッド10が形成されている。
【0100】
中間基板41は下側基板2の導電層9に対応する位置に貫通穴3を有している。また、下側基板2に対向する中間基板41の面には、貫通穴3の下側基板2に対向する側の開口部が下側基板2状の導電層9と直接接しないように、基板の一部からなるスペーサ20を有している。また下側基板2の低誘電率層25の形成された領域に対向する面に凹部13が形成されている。図15のように、凹部13の側面をスペーサ20の側面と一致させると、下側基板2に対向する中間基板41の面を同じエッチングパターンで加工することができて製造が容易である。なお、貫通穴3の周囲が導電層9側に対して突起状に伸びた形状とするため、凹部13は多段のエッチング加工で形成される。
【0101】
中間基板41の上側基板1に対向する面には、低誘電率層25が形成され、その低誘電率層25の上に導電層9が形成されている。上側基板1の貫通導電部12が接する部分の周辺の導電層9の表面には金属広がり防止パッド10が形成されている。貫通穴3が形成された部分の低誘電率層25、およびその上の導電層9は、貫通穴3の位置に貫通穴3とほぼ同サイズの開口穴を有している。中間基板41の貫通穴3と低誘電率層25の開口穴と導電層9の開口穴とには金属が充填され、貫通導電部12が形成されている。この貫通導電部12は両端の開口部から突出して、下側基板2の導電層9と中間基板41の導電層9とに接している。
【0102】
上側基板1は中間基板41の導電層9に対応する位置に貫通穴3を有している。この貫通穴3は、図15のように、中間基板41の貫通穴3とずれた位置に形成されている。中間基板41に対向する上側基板1の面には、下側基板2に対向する中間基板41の面と同様にスペーサ20と凹部13とが形成されている。凹部13は中間基板41の導電層9だけでなく、中間基板41の導電層9の開口部から突出した貫通導電部12に接しない高さを有している。
【0103】
上側基板1の貫通穴3には金属が充填され、貫通導電部12が形成されている。この貫通導電部12は開口部から突出して、中間基板31の導電層9に接している。以上により、下側基板2の導電層9は上側基板1の貫通導電部12と電気的に接続され、下側基板2の導電層9に上側基板の上部から電気信号を入出力できる多層基板構造となる。なお、中間基板41のスペーサ20と下側基板2、および上側基板のスペーサ20と中間基板41とはそれぞれ接着層22により相互に固定される。
【0104】
従って、実施の形態4の多層基板は、下側基板1と中間基板41との間、および中間基板41と上側基板1との間に導電層9が形成された第1基板と、導電層9の対応する位置に貫通穴3を備え導電層9と直接接しないように固定された第2基板と、導電層9に接し貫通穴3の内部に充填された貫通導電部12とを備えた基板間接続構造を有している。このため、導電層9に変形や破損が生じず、基板間での信号の伝送特性が良好な多層基板が得られる。
【0105】
また、上記のように、基板を貫通する貫通導電部12で直接に低誘電率層25の上の導電層9と接続するので、配線が短くなり損失が低減し、またコンパクトな多層基板構造が得られる。なお、本実施の形態4では3枚の基板の多層基板としたが、中間基板41の枚数を増やして4枚以上の多層基板としてもよいし、上側基板1と下側基板2との2枚のみでもよい。
【0106】
以上の実施の形態1から4のいずれかで述べた基板間接続構造の一部の構造を他の実施の形態の基板間接続構造とを組み合わせた構成としてもよい。また、基板間接続構造を有する製造物がパッケージでも、多層基板でもよく、あるいは他の製造物であってもよい。
【0107】
実施の形態1から4での貫通導電部12は、貫通穴3にメタルジェット法のノズルから噴出される溶融した金属粒子を挿入して形成されたが、液体状の導電性材料が挿入されて形成されるのであれば、他の材料や方法で形成されても下側基板の表面や導電層の変形、破損を防止する効果がある。たとえば、溶融した金属を細管で注入してもよいし、また、適度に粘性を有する有機液体に導電性の金属微粒子を分散させた金属ペーストであってよい。金属ペーストを用いる場合は、例えば、金属ペーストを貫通穴3にインクジェット法などで挿入後に、有機液体を加熱除去して固化する方法で貫通導電部12が形成される。
【0108】
また、金属広がり防止パッド10の部分は、例えば有機バインダーが濡れ難いフッ素樹脂で形成してもよい。導電層9の貫通導電部12と接する部分の周辺にフッ素樹脂を付着させるには、塗布型のフッ素樹脂材料を用いて、ポッティングや筆塗りなどの方法を用いればよい。
【0109】
また、スペーサ20は貫通穴3が形成された基板と導電層9とが直接接しないようにするためのものであり、導電層9の領域の外側に形成されていれば他の構造であっても良く、上側基板1と下側基板2とを積層した場合に導電層9の表面を変形や破損することを防ぐことができる。例えば、下側基板2の表面に凸部を形成したものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態1のパッケージの構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1のパッケージの構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1のパッケージの構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1のパッケージの製造方法を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2のパッケージの構造を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2のパッケージの構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2のパッケージの構造を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2のパッケージの構造を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2のパッケージと類似の構造を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2のパッケージと類似の構造を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2のパッケージと類似の構造を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2のパッケージと類似の構造を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2のパッケージと類似の構造を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3のパッケージの構造を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態4の多層基板の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1:上側基板、2:下側基板、3、3a、3b、3c、3d:貫通穴、4a、4b:パッド、5:素子、6:接着用はんだ、7:空洞、8:絶縁膜、9、9a、9b、9c:導電層、10:金属広がり防止パッド、11:金属膜、12:貫通導電部、13:凹部、14、16:金属膜、16:金属膜、17、22:接着層、18:中空領域、19a、19b、19c:コプレーナ線路、20:スペーサ、23:薄板、25:低誘電率膜、28:溶融金属粒子、31:ノズル、34:カメラ、35:ライト、41:中間基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を有し前記導電層の下部に空洞を有する第1基板と、
前記導電層と直接接しないように前記導電層領域以外の領域で前記第1基板に固定され、前記導電層に対応する位置に貫通穴を有する第2基板と、
前記導電層に接し前記貫通穴の内部に充填された導電性材料を有する貫通導電部と、
を備えた基板間接続構造。
【請求項2】
空洞が導電層と反対側の底面に金属膜を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板間接続構造。
【請求項3】
第2基板が導電層に対向する表面に凹部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板間接続構造。
【請求項4】
凹部が導電層に対向する面に金属膜を備えたことを特徴とする請求項3に記載の基板間接続構造。
【請求項5】
第2基板は貫通穴を内側とする筒が導電層側に向かって突き出た形状を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基板間接続構造。
【請求項6】
導電層の貫通導電部と接する部分の周辺に、前記部分よりも液体状の導電性材料が濡れ難い材料を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の基板間接続構造。
【請求項7】
第2基板の第1基板と反対側の面に貫通導電部と接続する信号線が形成されたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の基板間接続構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の基板間接続構造を備えたパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−69954(P2012−69954A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221075(P2011−221075)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【分割の表示】特願2006−310424(P2006−310424)の分割
【原出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】