説明

基板間接続端子およびそれを用いたインバータ、電動圧縮機

【課題】2枚の基板間の電気的な接続を容易化し、その作業性および生産性を向上することができるとともに、電気的な接続の信頼性を確保することができる基板間接続端子および用いたインバータ、電動圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】多数の金属製端子群25を備え、その両端部がそれぞれ基板側のスルーホールに挿入され、2枚の基板間を電気的に接続する基板間接続端子24であって、金属製端子群25の両端部の基板側のスルーホールに挿入される部分の根元部付近を列状態に連結して一体的に結合する樹脂製連結部材27,28が、金属製端子群25に対して所定の間隔で一対設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の基板(一対の基板)間の電気的な接続に用いられる基板間接続端子およびそれを用いたインバータ、電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の基板を有する制御装置等において、2枚の基板間を電気的に接続するため、ハーネスもしくはコネクタが用いられている。前者の場合の一例として、特許文献1に示されるように、フレキシブルな基板に互いに平行に延びる必要個数の配線導体パターンを印刷等によって設けたフレキシブルプリント基板からなるフレキシブルな配線部材を用いたものが知られている。
【0003】
また、後者の場合の一例として、例えば特許文献2に示されるように、多数の端子がそれぞれ貫通固定される端子保持部を、それよりも断面の小さい連結部を介して連結して帯状の連続構造体とし、連結部において適当な長さで切断することにより、端子保持部が連なった所定長さの台座を形成するとともに、端子保持部にプリント基板に向って突出する脚部を一体成形した構成の基板用コネクタが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−103630号公報
【特許文献2】特開2010−161042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハーネスやフレキシブルプリント基板を用いた場合には、曲げのスプリングバックによる接触不良、コネクタを用いた場合には、嵌合接続される際の接触不良等が懸念される。特に、車載用の電動圧縮機等に適用されるインバータの場合、路面振動等の影響を受けてスプリングバックが顕著に出現したり、基板がゲル材中に埋没されているものでは、コネクタの嵌合部にゲル材が浸入し、接触不良が発生し易くなったりする虞があり、複数の基板間の電気的な接続に対して、信頼性が十分に確保されていない等の課題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、2枚の基板間の電気的な接続を容易化し、その作業性および生産性を向上することができるとともに、電気的な接続の信頼性を確保することができる基板間接続端子および用いたインバータ、電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の基板間接続端子および用いたインバータ、電動圧縮機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる基板間接続端子は、多数の金属製端子群を備え、その両端部がそれぞれ基板側のスルーホールに挿入され、2枚の基板間を電気的に接続する基板間接続端子であって、前記金属製端子群の両端部の前記基板側のスルーホールに挿入される部分の根元部付近を列状態に連結して一体的に結合する樹脂製連結部材が、前記金属製端子群に対して所定の間隔で一対設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、2枚の基板間を電気的に接続する多数の金属製端子群の両端部の基板側のスルーホールに挿入される部分の根元部付近を列状態に連結して一体的に結合する樹脂製連結部材が、金属製端子群に対して所定の間隔で一対設けられているため、多数の金属製端子群の両端部分を樹脂製連結部材により列状態に揃えて基板側のスルーホールに一括して挿入し、2枚の基板間を電気的に接続することができる。従って、2枚の基板間の電気的な接続を容易化し、その作業性および生産性を向上することができる。また、ハーネスやコネクタ等を用いたものに比べ、スプリングバックや嵌合による接触不良の虞がなく、接続の信頼性を十分に確保することができる。
【0009】
さらに、本発明の基板間接続端子は、上記の基板間接続端子において、前記一対の樹脂製連結部材には、前記2枚の基板側に設けられている嵌合穴に対して嵌合される位置決め突起が一体に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、一対の樹脂製連結部材に、2枚の基板側に設けられている嵌合穴に対して嵌合される位置決め突起が一体に設けられているため、樹脂製連結部材側に設けられている位置決め突起を基板側の嵌合穴に嵌合して位置決めすることにより、それをガイドに多数の金属製端子群を容易に基板側のスルーホールに挿入し、2枚の基板間を接続することができる。従って、基板間接続端子による2枚の基板間の接続作業をより一層容易化することができる。なお、位置決め突起の高さを金属製端子群の端部よりも少し高めに設定しておくことがガイド性を高める上で望ましい。
【0011】
さらに、本発明の基板間接続端子は、上記の基板間接続端子において、前記位置決め突起は、前記一対の樹脂製連結部材に対して列状態で配置されている前記金属製端子群の列の一方端側のみに設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、位置決め突起が、一対の樹脂製連結部材に対して列状態で配置されている金属製端子群の列の一方端側のみに設けられているため、位置決め突起が設けられていない側のスペースを、金属製端子群と基板側とを半田付けする際の半田ごての移動用スペースとすることができる。従って、金属製端子群の半田付け作業をし易くし、その作業性および生産性を一層向上することができる。
【0013】
さらに、本発明の基板間接続端子は、上述のいずれかの基板間接続端子において、前記一対の樹脂製連結部材の中の下方側に配置されている樹脂製連結部材には、その両端部に長手方向と直交する方向の脚部が一体に成形されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、一対の樹脂製連結部材の中の下方側に配置されている樹脂製連結部材の両端部に、長手方向と直交する方向の脚部が一体に成形されているため、基板間接続端子の一端側を一方の基板側のスルーホールに挿入した状態で、該基板間接続端子を該基板上に樹脂製連結部材の両端部に一体に成形されている脚部を介して安定的に支持することができる。従って、他方の基板と基板間接続端子との接続を容易化し、その作業性および生産性を更に向上することができる。
【0015】
さらに、本発明の基板間接続端子は、上述のいずれかの基板間接続端子において、前記一対の樹脂製連結部材の一方または双方には、前記金属製端子群の両端部を前記基板側のスルーホールに挿入した際、該基板表面との間に所定の微小隙間を設定する突起が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、一対の樹脂製連結部材の一方または双方に、金属製端子群の両端部を基板側のスルーホールに挿入した際、該基板表面との間に所定の微小隙間を設定する突起が設けられているため、金属製端子群の端部を基板のスルーホールに挿入して半田付けする際に発生するガスを、基板と樹脂製連結部材間の微小隙間を通して放出することで半田の流れを良くすることができる。従って、基板側にサーマルランドを設けなくても半田付け性を高めることができ、半田付けによる接続の信頼性を向上することができる。
【0017】
さらに、本発明の基板間接続端子は、上述のいずれかの基板間接続端子において、前記金属製端子群には、それぞれ前記一対の樹脂製連結部材間に、湾曲部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、各金属製端子群の一対の樹脂製連結部材間に、湾曲部が形成されているため、各金属製端子群に作用する振動や2枚の基板間の寸法公差等を湾曲部によって吸収することができる。従って、多数の金属製端子群からなる基板間接続端子の耐振性および組み立て性を高めることができる。
【0019】
さらに、本発明にかかるインバータは、一対のスイッチング素子を制御するパワー系回路等が実装されているパワー系基板とCPU等の低電圧系回路が実装されているコントロール基板とを備え、前記パワー系基板および前記コントロール基板が互いに電気的に接続されて2段に配置されているインバータであって、2段に配置されている前記パワー系基板と前記コントロール基板との間が、上述のいずれかの基板間接続端子を介して接続されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、一対のパワー系基板とコントロール基板とを備え、パワー系基板およびコントロール基板が互いに電気的に接続されて2段に配置されているインバータであって、2段に配置されているパワー系基板とコントロール基板との間が、上述のいずれかの基板間接続端子を介して接続されているため、インバータを構成する一対のパワー系基板とコントロール基板間の電気的な接続を容易化し、その作業性と電気的な接続の信頼性を高めることができる。従って、インバータの生産性および製品としての信頼性を向上することができる。
【0021】
さらに、本発明にかかる電動圧縮機は、ハウジング内に、圧縮機構とそれを駆動する電動モータとが内蔵され、前記電動モータが前記ハウジングの外周に一体に組み込まれているインバータを介して駆動される電動圧縮機であって、前記ハウジングには、インバータ収容部が設けられており、該インバータ収容部内に上記のインバータが収容設置され、その内部にゲル材が充填されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、ハウジングの外周に一体に組み込まれているインバータを介して駆動される電動圧縮機であって、ハウジングに、インバータ収容部が設けられており、該インバータ収容部内に上記のインバータが収容設置され、その内部にゲル材が充填されているため、インバータ収容部にゲル材を充填し、インバータの防湿および防振性並びに絶縁性の向上を図ったものにおいても、パワー系基板とコントロール基板間を、多数の金属製端子群からなる基板間接続端子を用いて半田付けし、接続することができる。従って、ゲル材が基板間の電気的接続部に対して、接触不良等の悪影響を及ぼす虞がなく、電動圧縮機の品質および生産性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の基板間接続端子によると、多数の金属製端子群の両端部分を樹脂製連結部材により列状態に揃えて基板側のスルーホールに一括して挿入し、2枚の基板間を電気的に接続することができるため、2枚の基板間の電気的な接続を容易化し、その作業性および生産性を向上することができる。また、ハーネスやコネクタ等を用いたものに比べ、スプリングバックや嵌合による接触不良等の虞がなく、接続の信頼性を十分に確保することができる。
【0024】
本発明のインバータによると、インバータを構成する一対のパワー系基板とコントロール基板間の電気的な接続を容易化し、その作業性と電気的な接続の信頼性を高めることができるため、インバータの生産性および製品としての信頼性を向上することができる。
【0025】
本発明の電動圧縮機によると、インバータ収容部にゲル材を充填し、インバータの防湿および防振性並びに絶縁性の向上を図ったものにおいても、パワー系基板とコントロール基板間を、多数の金属製端子群からなる基板間接続端子を用いて半田付けし、接続することができるため、ゲル材が基板間の電気的接続部に対して、接触不良等の悪影響を及ぼす虞がなく、電動圧縮機の品質および生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動圧縮機の側面図である。
【図2】図1に示す電動圧縮機のインバータ収容部の概略断面図である。
【図3】図2に示すインバータの2枚の基板間の接続に用いられる基板間接続端子の斜視図である。
【図4】図3に示す基板間接続端子を用いて2枚の基板間を接続した状態の長手方向の側面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】図3に示す基板間接続端子を構成する下方側の樹脂製連結部材の一端部の平面図(A)と、該部が基板上に接した状態のa−a断面相当図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図6を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る電動圧縮機の側面図が示されている。
電動圧縮機1は、外殻を構成するハウジング2を備えている。ハウジング2は、図示省略の電動モータが収容されているモータハウジング3と、図示省略の圧縮機構が収容されている圧縮機ハウジング4とがボルト5で一体に締め付け結合されることにより構成されている。モータハウジング3および圧縮機ハウジング4は、耐圧容器であり、アルミダイカスト製とされている。
【0028】
ハウジング2の内部に収容されている図示省略の電動モータおよび圧縮機構は、モータ軸を介して連結され、電動モータの回転によって圧縮機構が駆動されるように構成されている。モータハウジング3の一端側(図1の右側)には、冷媒吸入ポート6が設けられており、この冷媒吸入ポート6からモータハウジング3内に吸い込まれた低温低圧の冷媒ガスは、電動モータの周囲をモータ軸線L方向に沿って流通後、圧縮機構に吸い込まれて圧縮される。圧縮機構により圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、圧縮機ハウジング4内に吐き出された後、圧縮機ハウジング4の一端側(図1の左側)に設けられている吐出ポート7から外部へと送出されるように構成されている。
【0029】
ハウジング2には、例えば、モータハウジング3の一端側(図1の右側)の下部および圧縮機ハウジング4の一端側(図1の左側)の下部の2箇所と、圧縮機ハウジング4の上部側1箇所との計3箇所に、取り付け脚8A,8B,8Cが設けられている。インバータ一体型電動圧縮機1は、この取り付け脚8A,8B,8Cが車両のエンジンルーム内に設置されている走行用原動機の側壁等にブラケットおよびボルトを介して固定設置されることにより車両側に搭載されるようになっている。
【0030】
モータハウジング3の外周部には、その上部に所定の容積を有するインバータ収容部9が一体に成形されている。このインバータ収容部9は、上面が開放された所定高さの周囲壁により囲われたボックス形状とされており、側面には、2つの電源ケーブル取り出し口10が設けられている。また、インバータ収容部9の上面は、カバー部材11がネジ止め固定されることにより密閉されるようになっている。
【0031】
インバータ収容部9の内部には、車両に搭載されている図示省略の電源ユニットもしくはバッテリから電源ケーブルを介して供給される直流電力を三相交流電力に変換し、モータハウジング3の内部に収容されている電動モータに印加するインバータ20が収容設置されている。インバータ20は、以下に説明する2枚のパワー系基板(基板)21およびコントロール基板(基板)22の他、図示省略された三相インバータの各相の上アーム側スイッチング素子と下アーム側スイッチング素子とを構成する6個のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子、平滑コンデンサ(ヘッドキャパシタ)、インダクタコイル等の電気部品から構成されている。
【0032】
図2には、インバータ収容部9の縦断面図が示され、図3ないし図6には、その基板間接続端子の構成図が示されている。
インバータ収容部9の底面、すなわちモータハウジング3の外周面には、ヒートシンクを兼ねたアルミ合金製の板材からなる基板取付け台23がビス等を介して締め付け固定され、該基板取付け台23上にIGBT等の半導体スイッチング素子が設置されている。この半導体スイッチング素子の上方に、該半導体スイッチング素子を動作させて、直流電力を三相交流電力に変換し、電動モータに印加する高電圧系のパワー系制御回路等が実装されているパワー系基板21が、ビス等を介して基板取付け台23に固定設置されている。
【0033】
また、パワー系基板21の上方には、CPU等の低電圧で動作する制御通信回路が実装され、パワー系基板21を介して電動モータに印加する三相交流電力を制御するコントロール基板(CPU基板)22が設置されている。本実施形態では、コントロール基板22がインバータ収容部9側のボス部にビス等を介して締め付け固定されている例が示されている。この2段に配置されたパワー系基板21とコントロール基板22は、基板間接続端子24を介して電気的に接続されるようになっている。
【0034】
基板間接続端子24は、図3ないし図6に示されるように、一列に並置された多数の金属製端子群25を備えている。この金属製端子群25は、黄銅、亜リン青銅等からなるものであり、両端部がそれぞれパワー系基板21およびコントロール基板22のスルーホールに挿入されて半田付けされ、2枚のパワー系基板21とコントロール基板22との間を電気的に接続するものである。金属製端子群25のそれぞれには、中間部分に振動や寸法公差等を吸収するための湾曲部26が形成されている。
【0035】
また、金属製端子群25のパワー系基板21およびコントロール基板22のスルーホールに挿入される両端部分の根元部付近には、多数の金属製端子群25を列状態に連結して一体的に結合する一対の樹脂製連結部材27,28が設けられている。一対の樹脂製連結部材27,28は、多数の金属製端子群25の両端部分が貫通される孔が1列に所定ピッチで多数設けられている細長い棒状の角材であり、金属製端子群25の湾曲部26を挟んでその両側に所定間隔で設けられている。
【0036】
一対の樹脂製連結部材27,28の上方側に配置されている樹脂製連結部材27の一端部には、2枚の基板の一方の基板側、例えばコントロール基板22側に設けられている嵌合穴(図示省略)に嵌合される位置決め突起29が一体に成形されている。また、下方側に配置されている樹脂製連結部材28の両端部には、その長手方向と直交する方向の脚部30が一体に成形されており、該脚部30の一端側の脚部30には、2枚の基板の他方の基板側、例えばパワー系基板21側に設けられている嵌合穴(図示省略)に嵌合される位置決め突起31が一体に成形されている。なお、位置決め突起29,31の高さは、一対の樹脂製連結部材27,28から突出している金属製端子群25の突出高さよりも高くされている。
【0037】
また、一対の樹脂製連結部材27,28のいずれか一方または双方には、図6に示されるように、金属製端子群25の両端部をパワー系基板21およびコントロール基板22のスルーホールに挿入した際、基板表面との間に所定の微小隙間S、例えば0.5mm程度の隙間Sが設定されるようにするための突起32が設けられている。なお、本実施形態では、樹脂製連結部材28側に突起32を設けた例が示されているが、樹脂製連結部材27とコントロール基板22の表面との間にも同様の微小隙間Sが形成されるように、樹脂製連結部材27に同様の突起を設けるか、もしくはコントロール基板22をボス部に設置するようにすればよい。
【0038】
さらに、インバータ収容部9内には、インバータ20を収容設置した後、パワー系基板21およびコントロール基板22が埋没される位置まで、シリコンゲル等の樹脂製ゲル材が充填され、カバー部材11で密閉されるようになっている。これによって、インバータ20の防湿および防振性並びに絶縁性が確保可能な構成とされている。
【0039】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
電源ユニットから電源ケーブルを介してインバータ収容部9内に設置されているインバータ20に給電された直流電力は、インバータ20の複数の半導体スイッチング素子等からなるスイッチング回路の動作により指令周波数の三相交流電力に変換され、モータハウジング3内の電動モータに印加される。指令周波数の三相交流電力への変換は、上位制御装置からコントロール基板22に入力される制御指令値に基づき、コントロール基板22を介してパワー系基板21上のパワー系制御回路を制御することによって変換される。
【0040】
これによって、電動モータが制御指令周波数で回転駆動され、圧縮機構が作動されることになる。圧縮機構の作動により、冷媒吸入ポート6から低温低圧の冷媒ガスがモータハウジング3内に吸い込まれる。この冷媒は、電動モータの周囲をモータ軸線方向に圧縮機ハウジング4側へと流動されて圧縮機構に吸い込まれ、圧縮機構を介して高温高圧状態に圧縮された冷媒は、圧縮機ハウジング4内に吐き出された後、吐出ポート7を経て電動圧縮機1の外部へと送出されるようになっている。
【0041】
インバータ20を構成するパワー系基板21とコントロール基板22は、基板間接続端子24を介して電気的に接続されている。基板間接続端子24は、先ずパワー系基板21側の嵌合穴に樹脂製連結部材28の位置決め突起31を嵌合し、これをガイドとして多数の金属製端子群25の一端をパワー系基板21側のスルーホールに挿入する。樹脂製連結部材28に設けられている突起32が、パワー系基板21の表面に接する位置まで挿入されると、図4に示されるように、金属製端子群25の一端がパワー系基板21のスルーホールを貫通し、反対側面に突出した状態とされるとともに、樹脂製連結部材28とパワー系基板21の表面との間には、微小隙間Sが設定された状態とされる。
【0042】
この金属製端子群25の先端部を、半田ごてを樹脂製連結部材28の位置決め突起31が設けられている端部側から他端側へと移動させながらスルーホールに半田付けすることによって、金属製端子群25をパワー系基板21に接続することができる。半田付けの際に発生したガスは、微小隙間Sを介して放出される。こうして、基板間接続端子24が接続されたパワー系基板21をインバータ収容部9内の基板取付け台23上に固定設置することができ、基板間接続端子24は、樹脂製連結部材28の両端に設けられている脚部30を介してパワー系基板21上に安定的に支持される。
【0043】
次に、パワー系基板21上に支持されている基板間接続端子24に対して、上方からコントロール基板22を設置する。コントロール基板22の設置は、樹脂製連結部材27の一端に設けられている位置決め突起29に、コントロール基板22側に設けられている嵌合穴を嵌合し、これをガイドとして多数の金属製端子群25をコントロール基板22のスルーホールに挿入する。これによって、基板間接続端子24に対して、コントロール基板22がパワー系基板21と略同様の状態に設置され、金属製端子群25の先端部を、半田ごてを樹脂製連結部材27の位置決め突起29が設けられている端部側から他端側へと移動させながらスルーホールに半田付けすることにより、金属製端子群25をコントロール基板22に接続することができる。
【0044】
このようにして、インバータ20をインバータ収容部9内に収容設置した後、インバータ収容部9内にシリコンゲル等の樹脂製ゲル材を充填することにより、インバータ20を防湿、防振および絶縁し、この状態でカバー部材11を取り付け、インバータ収容部9を密閉することによって、インバータ20をハウジング2に一体的に組み込んでいる。
【0045】
斯くして、本実施形態によると、多数の金属製端子群25の両端部分を樹脂製連結部材27,28により列状態に揃えてパワー系基板21およびコントロール基板22側のスルーホールに一括して挿入し、それぞれの端部をパワー系基板21およびコントロール基板22側と半田付けすることにより、これら2枚の基板21,22間を電気的に接続することができる。従って、2枚のパワー系基板21およびコントロール基板22間の電気的な接続を容易化し、その作業性および生産性を向上することができる。また、ハーネスやコネクタ等を用いたものに比べ、スプリングバックや嵌合による接触不良の虞がなく、接続の信頼性を十分に確保することができる。
【0046】
また、一対の樹脂製連結部材27,28側に設けられている位置決め突起29,31をパワー系基板21およびコントロール基板22側の嵌合穴に嵌合して位置決めすることにより、それをガイドに多数の金属製端子群25を容易にパワー系基板21およびコントロール基板22側のスルーホールに挿入し、これら2枚の基板21,22間を接続することができる。従って、基板間接続端子24による2枚のパワー系基板21およびコントロール基板22間の接続作業をより一層容易化することができる。なお、2つの位置決め突起29,31の高さを金属製端子群25の端部よりも少し高めに設定しているため、スルーホールに金属製端子群25を挿入する際のガイド性を高めることができる。
【0047】
さらに、位置決め突起29,31が、一対の樹脂製連結部材27,28に対して列状態で配置されている金属製端子群25の列の一方端側のみに設けられているため、位置決め突起29,31が設けられていない側のスペースを、金属製端子群25とパワー系基板21およびコントロール基板22側とを半田付けする際の半田ごての移動用スペースとすることができ、従って、金属製端子群25の半田付け作業をし易くし、その作業性および生産性を一層向上することができる。
【0048】
また、下方側に配置されている樹脂製連結部材28の両端部に、長手方向と直交する方向の脚部30が一体に成形されている。このため、基板間接続端子24の一端側を一方の基板、すなわちパワー系基板21側のスルーホールに挿入した状態で、該基板間接続端子24を該パワー系基板21上に樹脂製連結部材28の両端部に一体に成形されている脚部30を介して安定的に支持することができる。これによって、他方の基板、すなわちコントロール基板22と基板間接続端子24との接続を容易化し、その作業性および生産性を更に向上することができる。
【0049】
また、一対の樹脂製連結部材27,28の一方または双方に、金属製端子群25の両端部をパワー系基板21およびコントロール基板22側のスルーホールに挿入した際、該基板表面との間に微小隙間Sを設定する突起32が設けられている。このため、金属製端子群25の端部を各基板21,22のスルーホールに挿入して半田付けする際に発生するガスを、各基板21,22と樹脂製連結部材27,28間の微小隙間Sを通して放出することで半田の流れを良くすることができる。従って、各基板21,22側にサーマルランドを設けなくても半田付け性を高めることができ、半田付けによる接続の信頼性を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、基板間接続端子24の各金属製端子群25における一対の樹脂製連結部材27,28間に、湾曲部26を形成した構成としている。このため、各金属製端子群25に作用する振動や2枚のパワー系基板21およびコントロール基板22間の寸法公差等を湾曲部26によって吸収することができ。これによって、多数の金属製端子群25からなる基板間接続端子24の耐振性および組み立て性を高めることができる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、インバータ20を構成する2段に配置されているパワー系基板21とコントロール基板22との間を、上記構成とされた基板間接続端子24を介して接続しているため、インバータ20を構成する一対のパワー系基板21とコントロール基板22間の電気的な接続を容易化し、その作業性と電気的な接続の信頼性を高めることができる。従って、インバータ20の生産性および製品としての信頼性を向上することができる。
【0052】
同様に、ハウジング2の外周に一体に組み込まれているインバータ20を介して駆動される電動圧縮機1が、ハウジング2に、インバータ収容部9が設けられており、該インバータ収容部9内に上記のインバータ20が収容設置され、その内部にゲル材が充填された構成とされているため、インバータ収容部9にゲル材を充填し、インバータ20の防湿および防振性並びに絶縁性の向上を図った電動圧縮機1においても、パワー系基板21とコントロール基板22間を、多数の金属製端子群25からなる基板間接続端子24を用いて半田付けし、接続することができる。従って、ゲル材が基板21,22間の電気的接続部に対して、接触不良等の悪影響を及ぼす虞がなく、電動圧縮機1の品質および生産性の向上を図ることができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、パワー系基板21およびコントロール基板22が、別々にインバータ収容部9内に収容設置されるように構成されている例について説明したが、モジュール化して一体で設置される構成としてもよいことはもちろんである。また、IGBT等の半導体スイッチング素子をパワー系基板21上に設置し、基板取付け台23とパワー系基板21とを一体化した構成としてもよい。
【0054】
さらに、本発明に係る基板間接続端子24は、インバータ20を構成する2枚のパワー系基板21およびコントロール基板22間の接続に限らず、各種制御装置に用いられている基板間の電気的接続に広範に適用できることは云うまでもない。また、多数の金属製端子群25と一対の樹脂製連結部材27,28は、インサート成形等、公知の方法で一体に成形することができる。また、各基板21,22と基板間接続端子24との電気的な接続は、各端子を基板21,22のスルーホールに圧入して接続する無半田接続方式としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 電動圧縮機
2 ハウジング
9 インバータ収容部
20 インバータ
21 パワー系基板(基板)
22 コントロール基板(基板)
24 基板間接続端子
25 金属製端子群
26 湾曲部
27,28 樹脂製連結部材
29,31 位置決め突起
30 脚部
32 突起
S 微小隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の金属製端子群を備え、その両端部がそれぞれ基板側のスルーホールに挿入され、2枚の基板間を電気的に接続する基板間接続端子であって、
前記金属製端子群の両端部の前記基板側のスルーホールに挿入される部分の根元部付近を列状態に連結して一体的に結合する樹脂製連結部材が、前記金属製端子群に対して所定の間隔で一対設けられていることを特徴とする基板間接続端子。
【請求項2】
前記一対の樹脂製連結部材には、前記2枚の基板側に設けられている嵌合穴に対して嵌合される位置決め突起が一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板間接続端子。
【請求項3】
前記位置決め突起は、前記一対の樹脂製連結部材に対して列状態で配置されている前記金属製端子群の列の一方端側のみに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の基板間接続端子。
【請求項4】
前記一対の樹脂製連結部材の中の下方側に配置されている樹脂製連結部材には、その両端部に長手方向と直交する方向の脚部が一体に成形されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の基板間接続端子。
【請求項5】
前記一対の樹脂製連結部材の一方または双方には、前記金属製端子群の両端部を前記基板側のスルーホールに挿入した際、該基板表面との間に所定の微小隙間を設定する突起が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の基板間接続端子。
【請求項6】
前記金属製端子群には、それぞれ前記一対の樹脂製連結部材間に、湾曲部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の基板間接続端子。
【請求項7】
一対のスイッチング素子を制御するパワー系回路等が実装されているパワー系基板とCPU等の低電圧系回路が実装されているコントロール基板とを備え、前記パワー系基板および前記コントロール基板が互いに電気的に接続されて2段に配置されているインバータであって、
2段に配置されている前記パワー系基板と前記コントロール基板との間が、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板間接続端子を介して接続されていることを特徴とするインバータ。
【請求項8】
ハウジング内に、圧縮機構とそれを駆動する電動モータとが内蔵され、前記電動モータが前記ハウジングの外周に一体に組み込まれているインバータを介して駆動される電動圧縮機であって、
前記ハウジングには、インバータ収容部が設けられており、該インバータ収容部内に請求項7に記載のインバータが収容設置され、その内部にゲル材が充填されていることを特徴とする電動圧縮機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−155850(P2012−155850A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11101(P2011−11101)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】