説明

基準クロック補正回路、基準クロック補正方法およびプログラム

【課題】基準信号を切り替えても発振器を自走状態にさせることの少ない基準クロック補正回路を提供する。
【解決手段】本発明に係る基準クロック補正回路1は、複数の基準信号の各々の安定度が良好であるか否かを判断する複数のクロック安定度検出部21a〜cと、複数の基準信号の中で安定度が良好である基準信号を選択基準信号102とする基準信号設定部22と、選択基準信号と基準クロック信号101を用いて制御値105を算出する発振器制御部12と、制御値に基づいて基準クロック信号を発振する発振器13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信システムの基地局装置などに搭載される基準クロック補正回路に関し、特に基準信号の切り替え時における基準クロック補正回路の信頼性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの基地局装置のキャリア周波数の精度は、たとえば3GPP TS25.104では50ppb以下と規定されているなど、高精度が要求される。また、キャリア周波数を生成する基地局装置内の基準クロックにも、それと同じ周波数精度が要求される。そのため、基地局装置は高い安定性を持つ発振器を基準クロックの出力に使用すると同時に、発振器の経年変化に対して補正を行う補正回路を持つことが一般的である。
【0003】
図5は、従来の技術に係る基準クロック補正回路301の構成を示すブロック図である。基準信号401a〜401nは、基準クロック402を補正するためのN本の高安定な信号である。複数の基準信号を入力する理由は、仮に一つの基準信号の安定度がNGとなった場合に、別の基準信号に切り替えて基準クロック402の経年変化を補正するためである。そのため、基地局装置の外部から入力される、もしくは、内部の回路より抽出された複数の基準信号が基準クロック補正回路301の入力信号となる。
【0004】
セレクタ311は、外部からの選択信号403に基づいて基準信号401a〜401nの中から1つの信号を選択し、これを選択基準信号404として安定度検出部312および発振器制御部313へ出力する。
【0005】
安定度検出部312は、選択基準信号404と基準クロック402との間の安定度を測定し、制御ON/OFF信号405を発振器制御部313へ出力する。制御ON/OFF信号405は、安定度算出中もしくは安定度NGの場合にはOFF状態、安定度OKの場合にはON状態となる。なお、ここでいう安定度とは、安定度検出部312に入力される選択基準信号404と基準クロック402との位相差の、時間軸に対する平均値である。この平均値が閾値以下であれば安定度OK、閾値を超えれば安定度NGである。
【0006】
発振器制御部313は、選択基準信号404と基準クロック402とに基づいて制御値406の算出を行って発振器314に入力する。一定周期ごとに選択基準信号404と基準クロック402から制御値406の算出を行い、基準クロック402を補正し続けることで、基準クロック402の高い安定度を保つ。発振器制御部313では制御ON/OFF信号がOFF状態の場合には制御値の算出を停止し、ON状態だったときの最後の制御値406を出力し続ける。このとき、発振器314は制御値406の入力を受けず、他からの制御を受けない自走状態で動作する。
【0007】
発振器314は、入力された制御値406に該当する制御を行って基準クロックを生成する。基準クロック402は安定度検出部312と発振器制御部313に出力され、安定度検出と自身の制御値算出に使用される。以上の動作により選択された基準信号を使用して基準クロックの補正を行う。
【0008】
しかしながら、従来の安定度検出においては、次のような課題がある。まず、安定度検出部312はセレクタ311によって選択された選択基準信号404に対してしか安定度検出を行うことができない。しかも、切り替えを行った時点では、選択基準信号404の安定度は不明である。このため、基準信号の切り替えを行うたびに、切り替えた選択基準信号404に対して安定度検出を実施して問題が無いことを確認する必要があるので、この処理に長時間を要する。
【0009】
この選択基準信号404の切り替えを行っている間にも基準クロック402は高い安定度を保つ必要があるので、選択基準信号404の切り替え後から安定度検出が完了して安定度OKとなるまでの間、自走状態でも高い安定度を保つ、高精度の発振器が必要となる。このことが基準クロック補正回路のコストを押し上げることとなる。
【0010】
また、切り替えた選択基準信号404の安定度がNGであった場合には、安定度がOKとなるまでさらに他の基準信号に切り替えることになるので、さらに切り替えに長時間を要することとなり、発振器にもさらに長い時間の安定度保証が要求されることになる。
【0011】
図6は、図5で示した基準クロック補正回路301の動作の一例を示すタイミングチャートである。ここでは、基準信号401a〜401cまでの3系統の基準信号を使用する。また、基準信号401a〜401cの優先順位は基準信号401aが最も高く、基準信号401cが最も低いこととする。図6には、基準クロック402、選択基準信号404、制御ON/OFF信号405、および基準信号401a〜401cの安定度(安定度検出部312による検出結果)について示している。
【0012】
タイミングt41は、基準クロック補正回路301を含む基地局装置に電源が投入されたタイミングである。電源投入時であるt41から、セレクタ311は最も優先順位の高い基準信号401aを選択基準信号404として出力し、安定度検出部312は基準信号401aと基準クロック402との安定度の検出処理を開始する。
【0013】
タイミングt42は、安定度検出部312が基準信号401aと基準クロック402との安定度の検出処理を完了したタイミングである。基準信号401aは安定度OKであったので、ここから発振器制御部313は基準信号401aを選択基準信号404として基準クロックの補正を行う。
【0014】
タイミングt43は、基準信号401aが異常となり、安定度NGとなったタイミングである。セレクタ311は、この時点からは二番目に優先順位の高い基準信号401bを選択基準信号404として出力する。ここから安定度検出部312は基準信号401bと基準クロック402との安定度の検出処理を開始する。この間、基準信号401bと基準クロック402との安定度は不明であるので、発振器314は自走状態である。
【0015】
タイミングt44は、安定度検出部312が基準信号401bと基準クロック402との安定度の検出処理を完了したタイミングである。ここで、初めて基準信号401bの安定度がわかるが、基準信号401bは安定度NGであった。そのため、セレクタ311は、この時点からは残る基準信号401cを選択基準信号404として出力する。ここから安定度検出部312は基準信号401cと基準クロック402との安定度の検出処理を開始する。この間、基準信号401cと基準クロック402との安定度は不明であるので、発振器314の自走状態はさらに継続する。
【0016】
タイミングt45は、安定度検出部312が基準信号401cと基準クロック402との安定度の検出処理を完了したタイミングである。ここで、初めて基準信号401bの安定度がわかり、基準信号401cは安定度NGであったので、ここから発振器制御部313は基準信号401cを選択基準信号404として基準クロックの補正を行う。発振器314の自走状態はここでようやく終了する。
【0017】
このように、安定度検出部312はセレクタ311から出力される1つの選択基準信号404に対してしか安定度検出を行うことができないので、図6の例ではタイミングt43からt45までの間、発振器314を自走状態で動作させることになる。
【0018】
なお、基準クロック補正回路に関連する技術文献として、以下のものがある。特許文献1には、複数の同期信号に対して周期監視回路を備え、それらの監視結果に基づいて正常な入力同期信号を選択して出力させる入力信号選択制御回路を備えた同期信号再生制御装置が記載されている。特許文献2には、クロック無瞬断回路の従来例が記載されている。特許文献3には、複数のクロック信号の周波数異常を検出し、異常があれば他のクロック信号に切り替えるクロック切替断回路の従来例が記載されている。特許文献4には、クロック周波数安定度判定回路の従来例が記載されている。
【0019】
とりわけ特許文献1は、複数の同期信号に対して周期監視回路を備え、それらの監視結果に基づいて正常な入力同期信号を選択して出力させることができる。図5で示した基準クロック補正回路301に特許文献1の技術を適用すれば、各々の基準信号の周期の監視結果に基づいて正常な入力同期信号を選択して発振器314を動作させることができるかのように見える。
【0020】
【特許文献1】特開平05−336582号公報
【特許文献2】特開2001−044981号公報
【特許文献3】特開2001−326627号公報
【特許文献4】特開2003−338810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、特許文献1でいう周期監視回路は入力信号の周期の異常を判定するものであるので、ここでいう安定度、つまり基準信号と基準クロックとの位相差の時間軸に対する平均値を求めるものではない。このため、周期監視回路が正常な周期であると判定する信号であっても、図5で示した基準クロック補正回路301においては安定度が低いと判断される場合がある。従って、基準クロック補正回路301に特許文献1の技術を適用できるものではない。
【0022】
また、特許文献1には基準信号の切り替えと、それに付随して発生する発振器の自走状態での動作という問題については記載されていない。従って、基準クロック補正回路301に特許文献1の技術を適用したものに、さらに特許文献2〜4の技術を組み合わせたとしても、基準信号の切り替えに付随する発振器の自走状態での動作の問題を解決できる構成は記載されていない。
【0023】
本発明の目的は、基準信号を切り替えても発振器を自走状態にさせることの少ない基準クロック補正回路、基準クロック補正方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本発明に係る基準クロック補正回路は、複数の基準信号の各々の安定度が良好であるか否かを判断する複数のクロック安定度検出部と、複数の基準信号の中で安定度が良好である基準信号を選択基準信号とする基準信号設定部と、選択基準信号と基準クロック信号を用いて制御値を算出する発振器制御部と、制御値に基づいて基準クロック信号を発振する発振器とを有することを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成するため、本発明に係る基準クロック補正方法は、基準クロック補正回路にあって、基準クロックを補正する方法であって、複数の基準信号の各々の安定度が良好であるか否かを判断するクロック安定度検出工程と、複数の基準信号の中で安定度が良好である基準信号を選択基準信号とする基準信号設定工程と、選択基準信号と基準クロック信号を用いて制御値を算出する発振器制御工程と、制御値に基づいて基準クロック信号を発振する発振工程とを有することを特徴とする。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明に係る基準クロック補正プログラムは、基準信号選択部を有する基準クロック補正回路にあって、基準信号選択部を制御するコンピュータに、複数の基準信号の各々の安定度が良好であるか否かを判断するクロック安定度検出処理と、複数の基準信号の中で安定度が良好である基準信号を選択基準信号とする基準信号設定処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、各々の基準信号に対してクロック安定度検出部を有するように構成したので、既に安定度OKであることが確認されている基準信号に切り替えることができる。これによって、基準信号を切り替えても発振器を自走状態にさせることが少ないという、従来にない優れた基準クロック補正回路、基準クロック補正方法およびプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る基準クロック補正回路1の構成を示すブロック図である。基準クロック補正回路1は、無線基地局装置のキャリア周波数を生成する基準クロックの補正を行う回路であり、基準信号選択部11、発振器制御部12、発振器13という各動作部を含む。
【0029】
基準クロック補正回路1は、基地局装置外部または基地局装置内の別の回路(いずれも図示せず)から入力される基準信号A〜Cを入力信号とする。基準信号A〜Cおよび基準クロックが基準信号選択部11に入力される。基準信号選択部11は、内部で各基準信号と基準クロック101の安定度検出を行い、それらの安定度検出の結果から、選択された基準信号(以後選択基準信号102という)を、選択基準信号として発振器制御部12へ出力する。
【0030】
また制御ON/OFF信号103も、基準信号選択部11から発振器制御部12に出力される。制御ON/OFF信号103は、基準信号が使用できない場合にOFF状態となって出力される信号である。制御ON/OFF信号103がOFF状態となるのは、基地局装置が起動した後に各基準信号の安定度検出が完了するまでの間と、全基準信号の安定度がNGとなった場合である。
【0031】
図2は、図1で示した基準信号選択部11の構成をより詳しく示すブロック図である。基準信号選択部11は、クロック安定度検出部21a〜c、基準信号設定部22、セレクタ23という各動作部を含む。クロック安定度検出部21a〜cは各々、基準信号A〜Cと基準クロック101の安定度検出を行い、算出された安定度と内部にもつ閾値の比較を行い、安定度がOKであるかNGであるかを安定度信号111a〜cとして基準信号設定部22へ出力する。
【0032】
ここでいう安定度とは、クロック安定度検出部21a〜cに入力される基準信号A〜Cと基準クロック101との位相差の、時間軸に対する平均値である。この平均値が閾値以下であれば安定度OK、閾値を超えれば安定度NGである。
【0033】
基準信号設定部22は、クロック安定度検出部21a〜cの出力する安定度信号111a〜cに基づいて、基準信号A〜Cの中から選択基準信号102となる基準信号を決定し、セレクト信号112によってセレクタ23を制御して選ばれた基準信号を選択基準信号102として発振器制御部12に出力する。また基準信号設定部22は、基地局装置起動後に各基準信号の安定度検出が完了するまでの場合、および基準信号と基準クロックの安定度検出時と全基準信号の安定度がNGとなった場合に、制御ON/OFF信号103をOFF状態として発振器制御部12に出力する。
【0034】
図1に戻って、発振器制御部12は基準信号選択部11から入力される選択基準信号102と基準クロック101を用いて、基準クロック101の補正を行うために発振器13の制御値105を算出する。新たに制御値105が算出されるまで、制御値105は発振器13へ出力され、基準クロック101の補正に使用される。また、制御ON/OFF信号103がOFF状態の時には発振器制御部12の機能は停止し、制御値105の算出は行わないため、制御値105は制御ON/OFF信号103がON状態であった時の最後の値が出力される。そのため、制御ON/OFF信号103がOFFの時には、発振器13は自走状態(他からの制御を受けずに動作する状態)で動作する。
【0035】
発振器13は、発振器制御部12から出力される制御値105に対応した制御を行い基準クロック101の補正を行う。補正された基準クロック101は基準信号選択部11と発振器制御部12へ出力される。
【0036】
図3は、図1〜2に示す基準クロック補正回路1の動作の一例を示すタイミングチャートである。図3には、基準クロック101、選択基準信号102、制御ON/OFF信号103、および安定度信号111a〜cについて示している。基準クロック101は、制御値105に基づいて周期を変化させながら発振を続けている。なお、以後の説明では、基準信号A〜Cの優先順位は基準信号Aが最も高く、基準信号Cが最も低いこととする。
【0037】
タイミングt31は、基準クロック補正回路1を含む基地局装置に電源が投入されたタイミングである。電源投入時であるt31から、クロック安定度検出部21a〜cは基準信号A〜Cと基準クロック101との安定度の検出処理を開始する。この状態では安定度信号111a〜cは出力されないので、選択基準信号102は不定であり、そのため制御ON/OFF信号103もOFF状態となる。この状態である時間は、本発明だけでなく従来の回路でも必要となる時間である。
【0038】
タイミングt32は、クロック安定度検出部21a〜cの全てで基準信号A〜Cと基準クロックとの安定度の検出処理が完了したタイミングである。安定度信号111a〜cの全てで安定度OKと出力されたので、基準信号設定部22はあらかじめ与えられた優先順位に従って基準信号Aを選択基準信号102とするよう、セレクト信号112によってセレクタ23を制御する。これによって基準信号Aが選択基準信号102として発振器制御部12に出力され、以後基準信号Aによって基準クロック101が補正される。同時に、制御ON/OFF信号103もON状態とする。
【0039】
タイミングt33は、基準信号Aが断などの理由で安定度NGとなったタイミングである。なお、基準信号Bはこの時点で安定度NGとなっており、クロック安定度検出部21bがそのことを検出して安定度信号111bをNGとしている。クロック安定度検出部21aが基準信号Aの安定度NGを検出して安定度信号111aをNGとすると、基準信号設定部22は基準信号Cを選択基準信号102とするよう、セレクト信号112によってセレクタ23を制御する。基準信号Cと基準クロック101の安定度検出は既に実施されているため、新たに安定度の検出を行わず、そのまま基準信号Cを選択基準信号102とすることができる。制御ON/OFF信号103はON状態のままである。
【0040】
タイミングt34は、クロック安定度検出部21cが基準信号Cの安定度NGを検出したタイミングである。前述のように基準信号AおよびBは既に安定度NGであるので、基準信号A〜Cの全てで安定度NGとなったことになる。クロック安定度検出部21a〜cはこのことを検出して安定度信号111a〜cの全てをNGとして出力している。そのため、基準信号制御部22は制御ON/OFF信号103をOFF状態とする。そのため図1の発振器制御部12の動作は停止し、発振器13は自走状態となる。
【0041】
なお、一度安定度NGとなった基準信号が再び安定度OKとなった場合、クロック安定度検出部21a〜cはそのことを即座に検出するので、基準信号設定部22は安定度OKとなった基準信号を選択基準信号102とするよう、セレクト信号112によってセレクタ23を制御することができる。従って、発振器13を自走状態で動作させる時間を短く抑えることができる。
【0042】
図4は、図2で示した基準信号選択部11の動作を示すフローチャートである。基準クロック補正回路1を含む基地局装置に電源が投入されると、基準信号選択部11は動作を開始する。クロック安定度検出部21a〜cによる安定度の検出処理が完了して安定度信号111a〜cが出力されると(ステップS201)、基準信号設定部22は安定度OKである(各々の基準信号に対応する安定度信号が安定度OKを示す)基準信号が1つ以上存在するか否かを判断する(ステップS202)。なお、制御ON/OFF信号103はステップS201〜202ではOFF状態である。
【0043】
ステップS202で、安定度OKである基準信号が1つ以上存在すれば、安定度OKである中で最も優先度の高い基準信号を選択基準信号102として出力し(ステップS203)、制御ON/OFF信号103をON状態とする(ステップS204)。以後この状態で選択基準信号102の出力を継続する。選択基準信号102として出力されている基準信号の安定度(に該当する安定度信号)が変化したか否かを判断し(ステップS205)、変化があればステップS202の判断に戻る。
【0044】
ステップS202で、安定度OKである基準信号が1つも存在しなければ、選択基準信号102の出力を停止し(ステップS206)、制御ON/OFF信号103をOFF状態とする(ステップS207)。この状態では発振器13は自走状態である。基準信号A〜Cのうちいずれかの安定度(安定度信号111a〜cのうちいずれか)に変化があったか否かを判断し(ステップS208)、変化があればステップS202の判断に戻る。
【0045】
なお、図4で示した各々のステップは、基準信号選択部11をコンピュータによって制御されるものとして、該コンピュータで実行されるプログラムとして実現することも可能である。
【0046】
以上で説明したように、本実施の形態に係る基準クロック補正回路は、基準信号A〜Cの全てについて、クロック安定度検出部21a〜cによって安定度の検出を常時行っているので、基準信号切り替え時に各信号の安定度は既知である。そのため、基準信号を切り替える際に安定度検出を行う必要がなく、安定度がOKである基準信号に高速に切り替えることが可能である。起動直後のタイミングt31〜32、および基準信号の全てが安定度NGであるタイミングt34以降を除いて発振器13を自走状態にすることはなく、また安定度がNGである基準信号に切り替えてしまうことはない。
【0047】
また、基準信号の切り替え時に発振器13を自走状態で動作させる時間を必要としないので、発振器13の保証する自走時間が短いものでもよく、そのため発振器13に低価格のものを使用することができる。従って、基準クロック補正回路にかかるコストを抑制することが可能である。
【0048】
なお、基準信号は3本に限られるものではなく、上記で説明した方法はそのまま任意の本数に拡張することが可能である。この場合の構成は、基準信号の本数と同数のクロック安定度検出部を用意する点を除けば、図1〜2で説明した構成と同一である。
【0049】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることは言うまでもないことである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、移動通信システムの基地局装置などに限定されず、高精度を要求される基準クロック補正回路を含む電子装置において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る基準クロック補正回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1で示した基準信号選択部の構成をより詳しく示すブロック図である。
【図3】図1〜2に示す基準クロック補正回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図4】図2で示した基準信号選択部の動作を示すフローチャートである。
【図5】従来の技術に係る基準クロック補正回路の構成を示すブロック図である。
【図6】図5で示した基準クロック補正回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 基準クロック補正回路
11 基準信号選択部
12 発振器制御部
13 発振器
21a、21b、21c クロック安定度検出部
22 基準信号設定部
23 セレクタ
101 基準クロック
102 選択基準信号
103 制御ON/OFF信号
105 制御値
111a、111b、111c 安定度信号
112 セレクト信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基準信号の各々の安定度が良好であるか否かを判断する複数のクロック安定度検出部と、
前記複数の基準信号の中で前記安定度が良好である基準信号を選択基準信号とする基準信号設定部と、
前記選択基準信号と基準クロック信号を用いて制御値を算出する発振器制御部と、
前記制御値に基づいて前記基準クロック信号を発振する発振器と
を有することを特徴とする基準クロック補正回路。
【請求項2】
各々の前記クロック安定度検出部が、前記基準信号と前記基準クロック信号との間の位相差の時間軸に対する平均値があらかじめ定められた閾値以下であれば前記安定度が良好であると判断することを特徴とする、請求項1に記載の基準クロック補正回路。
【請求項3】
前記基準信号設定部が、前記安定度が良好である基準信号の中であらかじめ定められた優先順位の最も高い基準信号を前記選択基準信号として選択することを特徴とする、請求項2に記載の基準クロック補正回路。
【請求項4】
前記基準信号設定部が、前記複数の基準信号の中に前記安定度が良好である基準信号が存在しない場合には前記発振器制御部の制御値算出の動作を停止させることを特徴とする、請求項2に記載の基準クロック補正回路。
【請求項5】
前記基準信号設定部が、前記複数のクロック安定度検出部が前記安定度が良好であるか否かの検出を完了していない場合には前記発振器制御部の制御値算出の動作を停止させることを特徴とする、請求項2に記載の基準クロック補正回路。
【請求項6】
前記発振器制御部の制御値算出の動作が停止している間、前記発振器は他からの制御を受けない自走状態で動作することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の基準クロック補正回路。
【請求項7】
基準クロック補正回路にあって、前記基準クロックを補正する方法であって、
複数の基準信号の各々の安定度が良好であるか否かを判断するクロック安定度検出工程と、
前記複数の基準信号の中で前記安定度が良好である基準信号を選択基準信号とする基準信号設定工程と、
前記選択基準信号と基準クロック信号を用いて制御値を算出する発振器制御工程と、
前記制御値に基づいて前記基準クロック信号を発振する発振工程と
を有することを特徴とする基準クロック補正方法。
【請求項8】
前記クロック安定度検出工程が、各々の前記基準信号と前記基準クロック信号との間の位相差の時間軸に対する平均値があらかじめ定められた閾値以下であれば前記安定度が良好であると判断することを特徴とする、請求項7に記載の基準クロック補正方法。
【請求項9】
前記基準信号設定工程が、前記安定度が良好である基準信号の中であらかじめ定められた優先順位の最も高い基準信号を前記選択基準信号として選択することを特徴とする、請求項8に記載の基準クロック補正方法。
【請求項10】
前記基準信号設定工程が、前記複数の基準信号の中に前記安定度が良好である基準信号が存在しない場合には前記発振器制御工程を停止させることを特徴とする、請求項8に記載の基準クロック補正方法。
【請求項11】
前記基準信号設定工程が、前記複数のクロック安定度検出部が前記安定度が良好であるか否かの検出を完了していない場合には前記発振器制御工程を停止させることを特徴とする、請求項8に記載の基準クロック補正方法。
【請求項12】
基準信号選択部を有する基準クロック補正回路にあって、前記基準信号選択部を制御するコンピュータに、
複数の基準信号の各々の安定度が良好であるか否かを判断するクロック安定度検出処理と、
前記複数の基準信号の中で前記安定度が良好である基準信号を選択基準信号とする基準信号設定処理と
を実行させることを特徴とする基準クロック補正プログラム。
【請求項13】
前記クロック安定度検出処理が、各々の前記基準信号と前記基準クロック信号との間の位相差の時間軸に対する平均値があらかじめ定められた閾値以下であれば前記安定度が良好であると判断することを特徴とする、請求項12に記載の基準クロック補正プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−253415(P2009−253415A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95917(P2008−95917)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】