説明

基準電圧回路

【課題】温度依存性が少ない低電圧(1.25V以下)の定電圧を発生する、基準電圧回路を提供すること。
【解決手段】二つのPN接合を有し、いずれかのPN接合に基づいた電圧Vkと、二つのPN接合の電圧の差に基づいた電流Ikと、を出力するバンドギャップ電圧発生回路と、電圧Vkを分圧する分圧回路と、を備え、分圧回路は入力する電流Ikにより分圧電圧を補正して、基準電圧として出力する、構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度依存性が少ない定電圧を発生する、基準電圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度依存性が少ない定電圧を発生する基準電圧回路として、シリコンのバンドギャップ値とほぼ等しい電圧を発生するバンドギャップ基準電圧回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来のバンドギャップ基準電圧回路を示す構成図である。従来のバンドギャップ基準電圧回路は、PN接合401と、PN接合402と、R1なる抵抗値をもつ抵抗403と、トランジスタ404と、トランジスタ405と、トランジスタ406と、抵抗403と同種(等しい温特)の抵抗でありR2なる抵抗値をもつ抵抗407と、PN接合408と、アンプ409を、備えている。PN接合401とPN接合402は、実効的な面積比(例えば、アノード・カソード接合面積比)が1:K1の関係となっている。
【0004】
トランジスタ404とトランジスタ405は、ゲートソース間電圧が等しいので、寸法比に基づいた電流が流れる。例えば、寸法比を1:1とすれば、トランジスタ404とトランジスタ405には凡そ等しい電流が流れる。ここで、トランジスタ404とトランジスタ405の電流が凡そ等しいことを前提とする。アンプ409は、電圧VAと電圧VBが等しくなる様に、トランジスタ404とトランジスタ405に流れる電流を制御する。このとき、トランジスタ405に流れる電流Ibは、(1)式に示す通りとなる。
Ib=VT×{ln(K1)}/R1 …(1)
ここで、VTは熱電圧であり、kT/qと表される。但し、qは単位電子電荷、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。
【0005】
トランジスタ406には、電流Ibに基づいた電流が流れる。今、トランジスタ405とトランジスタ406の寸法比が1:1で、PN接合408に生じる電圧を電圧Vpn3とすれば、基準電圧Vrefは(2)式に示す通りとなる。
Vref=Vpn3+(R2/R1)×VT×{ln(K1)} …(2)
電圧Vpn3が凡そ−2.0mV/℃の負の温度特性を持つ為、第1項は負の温度特性を示す。熱電圧VTが正の温度特性を持つ為、第2項は正の温度特性を示す。
(2)式をTに関して微分し、これがゼロとなる条件を求めると、(3)式に示す通りとなる。
(R2/R1)×(k/q)×{ln(K1)}=0.002 …(3)
従って、(3)式を満たすように(R2/R1)を設定すれば、温度依存性のない基準電圧Vrefを実現することが出来る。
以上の様にして、温度依存性が少ない電圧を発生する基準電圧回路が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−305150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のバンドギャップ基準電圧回路では、基準電圧Vrefは式(2)と(3)より凡そ1.25Vである。従って、動作電圧をこれにより制限される電圧以下にできない、という問題点があった。
本発明は、上記の様な問題点を解決するために考案されたものであり、温度依存性が少なく、より低い電圧を発生する基準電圧回路を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基準電圧回路は、二つのPN接合を有し、PN接合に基づいた電圧Vkと、二つのPN接合の電圧の差に基づいた電流Ikと、を出力するバンドギャップ電圧発生回路と、電圧Vkを分圧する分圧回路と、を備え、分圧回路は入力する電流Ikにより分圧電圧を補正して、基準電圧として出力する、構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の基準電圧回路によれば、温度依存性が少なく、低い基準電圧を発生する基準電圧回路を提供することが、出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一の実施形態の基準電圧回路を示す構成図である。
【図2】第二の実施形態の基準電圧回路を示す構成図である。
【図3】第三の実施形態の基準電圧回路を示す構成図である。
【図4】従来のバンドギャップ基準電圧回路を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から図3は、本実施形態の基準電圧回路を示す構成図である。
本実施形態の基準電圧回路は、バンドギャップ電圧発生回路100と、分圧回路101と、を備えている。バンドギャップ電圧発生回路100は、二つのPN接合(実効的な面積比、例えば、アノード・カソード接合面積比が1:K1の関係)の電圧に基づいて、電圧Vk及び電流Ikを生成し、出力する。分圧回路101は、バンドギャップ電圧発生回路100から入力される電圧Vk及び電流Ikに基づいて、基準電圧Vrefを出力する。
【0012】
<第一の実施形態>
図1に、第一の実施形態の基準電圧回路の構成図を示す。
バンドギャップ電圧発生回路100は、PN接合401及び402と、抵抗403と、トランジスタ404及び405と、アンプ409と、トランジスタ11と、を備えている。分圧回路101は、アンプ12、抵抗13及び14を備えている。
【0013】
トランジスタ404とPN接合401は、電源と接地間に直列に接続される。トランジスタ405と抵抗403とPN接合402は、電源と接地間に直列に接続される。アンプ409の反転入力端子は、トランジスタ404とPN接合401の接続点と接続される。アンプ409の非反転入力端子は、トランジスタ405と抵抗403の接続点と接続される。アンプ409の出力端子は、トランジスタ404とトランジスタ405とトランジスタ11のゲート端子と接続される。
【0014】
ここで、PN接合に基づいた電圧Vkとして、PN接合401に生じる電圧VAを用いる。また、PN接合に基づいた電流Ikとして、トランジスタ404及びトランジスタ405とゲート端子が共通に接続されたトランジスタ11の流す電流を用いる。
【0015】
アンプ12は、非反転入力端子に電圧Vkが入力され、出力端子と反転入力端子が接続される。抵抗13及び14は、アンプ12の出力端子と接地間に直列に接続される。抵抗13と14の接続点は、トランジスタ11のドレイン端子と接続され、基準電圧回路の出力端子と接続される。
【0016】
以下に、本実施形態の基準電圧回路の動作について説明する。
アンプ409は、電圧VAと電圧VBが等しくなる様に、トランジスタ404とトランジスタ405に流れる電流を制御する。
【0017】
トランジスタ405に流れる電流Ibは、PN接合401に生じる電圧Vpn1とPN接合402に生じる電圧Vpn2との電圧の差を、抵抗403の抵抗値R1で除算した値となる。即ち、トランジスタ405には、二つのPN接合の電圧の差に基づいた電流Ibが流れる。
【0018】
ここで、トランジスタ11とトランジスタ405は、ゲートソース間電圧が等しいので、寸法比に基づいた電流が流れる。例えば、寸法比を1:1とすれば、トランジスタ11とトランジスタ405は凡そ等しい電流Ibが流れる。つまり、トランジスタ11には、二つのPN接合の電圧の差に基づいた電流Ibに等しい電流Ikが流れる。
【0019】
トランジスタ11に流れる電流Ikは、(4)式で示される。
Ik=VT×{ln(K1)}/R1 …(4)
ここで、VTは熱電圧であり、kT/qと表される。但し、qは単位電子電荷、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。
【0020】
電圧Vrefは、抵抗13の抵抗値をR3、抵抗14の抵抗値をR4とすれば、(5)式で示される。
Vref=Ik×(R3×R4)/(R3+R4)+Vk×R3/(R3+R4)
={R3/(R3+R4)}×{(R4/R1)×VT×{ln(K1)}+Vk} …(5)
(5)式において、(R4/R1)×VT×{ln(K1) }は、熱電圧VTが正の温度特性を持つ為、正の温度特性を示す。また、Vkは、Vpn1が凡そ−2.0mV/℃の負の温度特性を持つ為、負の温度特性を示す。従って、(R4/R1)を、適当に設定すれば、(5)式の{(R4/R1)×VT×{ln(K1)}+Vk}は、温度依存性が少ないものとして得られる。そして、{R3/(R3+R4)}を適切に設定しさえすれば、基準電圧Vrefは、(5)式の{(R4/R1)×VT×{ln(K1)}+Vk}を分圧したものとして、絶対値を自由に得られる。
【0021】
以上説明したように、第一の実施形態の基準電圧回路の基準電圧Vrefは、低電圧(1.25V以下)で温度依存性が少ない電圧として得ることが出来る。従って、基準電圧回路の動作電圧の低減も可能となる。
【0022】
なお、第一の実施形態の基準電圧回路において、電圧Vkをアンプ12でインピーダンス変換する構成としたが、電圧Vkのインピーダンスが低い場合は、電圧Vkを直接抵抗14に接続する構成としても良い。
また、第一の実施形態の基準電圧回路において、PN接合に基づいた電圧Vkとして、PN接合401に生じる電圧VAを用いたが、電圧VBであっても、他の電圧であってもよい。
【0023】
また、第一の実施形態の基準電圧回路において、電圧VBを発生する回路として、接地からPN接合402と抵抗403の順に直列に接続された回路構成としたが、逆に接続されていても同様の効果が得られる。
【0024】
<第二の実施形態>
図2に、第二の実施形態の基準電圧回路の構成図を示す。
バンドギャップ電圧発生回路100は、PN接合401及び402と、抵抗403と、トランジスタ21、22、23、24、25、27と、PN接合26と、トランジスタ11と、を備えている。
【0025】
PN接合401及び402と、抵抗403は、第一の実施形態の基準電圧回路と同様に構成される。トランジスタ21及び22と、トランジスタ23、24及び25は、カレントミラー回路を構成する。トランジスタ27及びトランジスタ27とPN接合26は、電源と接地間に直列に接続される。トランジスタ27及びトランジスタ11は、カレントミラー回路を構成する。
【0026】
カレントミラー回路は、PN接合401と402及び抵抗403に等しい電流を流すので、電圧VAと電圧VBが等しくなる。
【0027】
ここで、PN接合に基づいた電圧Vkとして、PN接合401に生じる電圧VAを用いる。また、PN接合に基づいた電流Ikとして、PN接合素子26とトランジスタ23及びトランジスタ24とゲート端子が共通に接続されたトランジスタ25の流す電流を用いる。
【0028】
以上説明した図2に示すような構成をした第二の実施形態の基準電圧回路によっても、第一の実施形態の基準電圧回路と同様の効果を得ることが出来る。
【0029】
なお、第二の実施形態の基準電圧回路において、電圧Vkをアンプ12でインピーダンス変換する構成としたが、電圧Vkのインピーダンスが低い場合は、電圧Vkを直接抵抗14に接続する構成としても良い。
また、第二の実施形態の基準電圧回路において、PN接合に基づいた電圧Vkとして、PN接合401に生じる電圧VAを用いたが、電圧VBであっても、他の電圧であってもよい。
【0030】
また、第二の実施形態の基準電圧回路において、電圧VBを発生する回路として、接地からPN接合402と抵抗403の順に直列に接続された回路構成としたが、逆に接続されていても同様の効果が得られる。
【0031】
<第三の実施形態>
図3に、第三の実施形態の基準電圧回路の構成図を示す。
バンドギャップ電圧発生回路100は、電流源31a及び31bと、PN接合401及び402と、トランジスタ33a及び33bと、抵抗34a及び34bと、アンプ39a及び39bと、トランジスタ35及び11と、を備えている。
【0032】
電流源31aとPN接合401は、電源と接地間に直列に接続され、その接続点はアンプ39aの非反転入力端子に接続される。アンプ39aは、出力端子がトランジスタ33aのゲート端子に接続され、反転入力端子がトランジスタ33aのソース端子に接続される。トランジスタ35、33a、抵抗34aは、電源と接地間に直列に接続される。トランジスタ35と11は、カレントミラー接続される。
【0033】
電流源31bとPN接合402は、電源と接地間に直列に接続され、その接続点はアンプ39bの非反転入力端子に接続される。アンプ39bは、出力端子がトランジスタ33bのゲート端子に接続され、反転入力端子がトランジスタ33bのソース端子に接続される。トランジスタ11、33b、抵抗34bは、電源と接地間に直列に接続される。
【0034】
トランジスタ33aと抵抗34aは、PN接合401に生じる電圧Vpn1に基づく電流Iaを流す。トランジスタ33bと抵抗34bは、PN接合402に生じる電圧Vpn2に基づく電流Ibを流す。
【0035】
ここで、PN接合に基づいた電圧Vkとして、PN接合401に生じる電圧VAを用いる。また、二つのPN接合の電圧の差に基づいた電流Ikとして、電流Iaから電流Ibを引いた電流を用いる。上述のことから、電流Iaから電流Ibを引いた電流Ikは、二つのPN接合の電圧の差に基づいた電流になっている。
【0036】
以上説明した図3に示すような構成をした第三の実施形態の基準電圧回路によっても、第一の実施形態の基準電圧回路と同様の効果を得ることが出来る。
【0037】
なお、第三の実施形態の基準電圧回路において、電圧Vkをアンプ12でインピーダンス変換する構成としたが、電圧Vkのインピーダンスが低い場合は、電圧Vkを直接抵抗14に接続する構成としても良い。
また、第三の実施形態の基準電圧回路において、PN接合に基づいた電圧Vkとして、PN接合401に生じる電圧VAを用いたが、電圧VBであっても、他の電圧であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
100 バンドギャップ電圧発生回路
101 分圧回路
12、31a、32b、409 アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのPN接合の電圧の差に基づいた定電圧を出力する基準電圧回路であって、
前記PN接合のいずれかに基づいた電圧Vkと、前記二つのPN接合の電圧の差に基づいた電流Ikと、を出力するバンドギャップ電圧発生回路と、
前記電圧Vkを分圧する分圧回路と、を備え、
前記分圧回路は、入力する前記電流Ikにより分圧電圧を補正して、基準電圧として出力する、
ことを特徴とする、基準電圧回路。
【請求項2】
前記分圧回路は、
電圧Vkと接地間に接続された複数の抵抗を備え、
前記複数の抵抗の接続点に前記電流Ikが入力される、ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項3】
前記分圧回路は、
電圧Vkが一方の入力端子に入力され、出力端子が他方の入力端子に接続されたアンプと、
前記アンプの出力端子と接地間に接続された複数の抵抗と、を備え、
前記複数の抵抗の接続点に前記電流Ikが入力される、ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58155(P2013−58155A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197357(P2011−197357)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】