説明

塗工装置および塗工方法

【課題】
本発明は、所定の間隔で間欠的に液体を被塗工対象へ塗工する塗工装置であって、作業者のスキルに影響されずに、長時間に亘って高品質の塗工が可能な塗工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の塗工装置10は、液体が通過する管11と、管11を通過した液体を吐出させる吐出手段12と、管11を仕切ると共に、液体を通過させるための開口14を備えた仕切体13と、吐出手段12側へ移動することにより開口14を開く弁15と、開口14を通過する時の液体の流出速度を取得し、該取得した流出速度と一致する移動速度で弁15を移動させる制御手段16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を被塗工対象に塗工する塗工装置および塗工方法に関し、特に、弁を開閉することにより、液体を被塗工対象へ所定の間隔で間欠的に塗工する塗工装置および塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の間隔で間欠的に塗工液を被塗工対象へ塗工する塗工装置が、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。特許文献1および特許文献2には、塗工液の液垂れを抑制することが可能な塗工装置が開示されている。
【0003】
特許文献2の塗工装置の構成図を図6に示す。図6の塗工装置90を用いて塗工液を所定の間隔で間欠的に被塗工対象へ塗工する場合、先ず、供給用仕切弁93を開状態に、戻り用仕切り弁94を閉状態にし、液体タンク91から流出させた塗工液をスリットダイ98から垂れ流す。この状態で、塗工液の流出時の圧力を圧力計97により計測し、計測した圧力を圧力設定器96に記憶させる。次に、供給用仕切弁93を閉状態に、戻り用仕切り弁94を開状態にし、塗工液が液体タンク91に戻るように設定する。そして、塗工液が戻る時の圧力が塗工液流出時の圧力と同じになるように、圧力調整弁95を調整する。
【0004】
圧力調整弁95の調整が済んだ後、制御装置99を始動させ、送液ポンプ92によって液体タンク91に貯蔵されている塗工液をスリットダイ98側へ流出させ、被塗工対象への塗工を開始する。
【0005】
ここで、塗工終了時に供給用仕切弁92を作動させてスリットダイ98から塗工液を引き戻すことにより、塗工終了部のエッジがシャープになる。さらに、スリットダイ98の塗出口に塗工液が溜まらないため、次の塗工の塗工開始部のエッジもシャープになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭59−142069号公報
【特許文献2】特開平10−76209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の塗工装置において、圧力調整弁95の調整は、被塗工対象に形成された塗工膜の膜厚等を見ながら作業者が行う。作業者が圧力調整弁95を調整する場合、コストがアップすると共に、作業者の技能によって塗工品質がばらつく。
【0008】
さらに、長時間の塗工においては、塗工液の粘度や密度等が変化し、圧力調整弁95の最適条件が最初の設定条件から変化する。この場合、スリットダイ98から吐出される塗工液の吐出流量に過不足が生じる。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題点を解決することにあり、作業者のスキルに影響されずに、長時間に亘って高品質の塗工が可能な塗工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る塗工装置は、液体が通過する管と、管を通過した液体を吐出させる吐出手段と、管を仕切ると共に、液体を通過させるための開口を備えた仕切体と、吐出手段側へ移動することにより開口を開く弁と、開口を通過する時の液体の流出速度を取得し、該取得した流出速度と一致する移動速度で弁を移動させる制御手段と、を備える。
【0011】
また、上記目的を達成するために本発明に係る塗工方法は、管内を液体を通過させ、液体が管を仕切る仕切体に形成された開口を通過する時の流出速度を取得し、開口を閉塞している弁を、取得した流出速度と一致する移動速度で液体の流れ方向に移動させ、前記液体を吐出させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、開口を通過する時の液体の流出速度を取得し、取得した流出速度と同じ速度で弁を吐出手段側へ移動させることにより、液体の吐出開始時に発生する、正圧の過不足が抑制される。従って、作業者の調整工程が不要で、作業者のスキルに影響されることがない、長時間に亘って高品質の塗工が可能な塗工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗工装置10の概略構成図の一例である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る塗工装置100の構成図の一例である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る塗工装置100の仕切弁130の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施形態において、開口からの塗工液の流速V0と、弁体131の移動速度Vsと、金属箔に形成される膜厚と、の関係の一例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態において、仕切弁130の開閉状態と膜厚との関係の一例を示す図である。
【図6】関連技術の塗工装置90の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る塗工装置の概略構成図の一例を図1に示す。図1において、塗工装置10は、管11と、吐出手段12と、仕切体13と、弁15と、制御手段16と、を備える。
【0015】
管11内を液体が吐出手段12に向かって流れている。吐出手段12は、管11を通過してきた液体を被塗工対象へ吐出させる。仕切体13は、管11内を仕切って液体の通過を遮断する。また、仕切体13には、液体を通過させるための開口14が形成されている。
【0016】
弁15は、仕切体13の開口14を開閉する。仕切体13の開口14が弁15によって閉塞されている時、液体の吐出手段12側への通過が遮断される。また、弁15は、開口14の閉塞位置から吐出手段12側に移動することにより、仕切体13の開口14を開状態にする。開口14が開状態の時、管11内の液体が吐出手段12側へ流出し、液体が被塗工対象へ吐出される。
【0017】
制御手段16は、液体が仕切体13の開口14を通過する時の液体の流出速度を取得する。さらに、制御手段16は、取得した流出速度と一致する移動速度で弁15が開口14の閉塞位置から吐出手段12側に移動するように、弁15を制御する。
【0018】
弁15が、液体が仕切体13の開口14を通過する時の液体の流出速度と一致する移動速度で吐出手段12側へ移動することにより、吐出手段12における液体の正圧の過不足が抑制され、被塗工対象の始端領域に最適な量の液体が吐出される。
【0019】
以上のように、本実施形態に係る塗工装置10において、制御手段16により、液体が仕切体13の開口14を通過する時の液体の流出速度が、弁15の移動速度として設定される。従って、作業者による調整工数を削減することができると共に、作業者のスキルに影響されずに、高品質な液体の吐出を行うことができる。さらに、長時間の吐出において液体の性質が変化した場合でも、最適量の液体の吐出を継続することができる。
【0020】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る塗工装置の構成図の一例を図2に示す。図2において、本実施形態に係る塗工装置100は、液体タンク110、ポンプ120、仕切弁130、スリットダイ140、輸送手段150、流量計160および開閉制御手段170を備える。
【0021】
液体タンク110に、塗工液が貯蔵されている。
【0022】
ポンプ120は、液体タンク110に貯蔵されている塗工液を、流量計160および仕切弁130を通過させてスリットダイ140へ送出させる。
【0023】
仕切弁130は、液体タンク110からスリットダイ140への塗工液の流れを、開放または遮断する。仕切弁130が塗工液の流れの開放および遮断を繰り返すことによって、所定の間隔で間欠的に塗工液が金属箔に塗工され、金属箔に所望長さの複数の塗工膜が形成される。仕切弁130については後述する。
【0024】
スリットダイ140は、所定の幅に開口された塗工ヘッド141を備える。スリットダイ140は、液体タンク110から送出された塗工液を、塗工ヘッド141から金属箔へ吐出させる。
【0025】
輸送手段150は、塗工液が塗工される金属箔を一定の速度で矢印151の方向へ輸送する。
【0026】
流量計160は、液体タンク110と仕切弁130との間に設置され、仕切弁130に流入する塗工液の流量を測定する。さらに、流量計160は、測定した流量値を開閉制御手段170へ出力する。
【0027】
開閉制御手段170は、仕切弁130を制御する。本実施形態において、開閉制御手段170は、流量計160から出力された流量値に基づいて、仕切弁130を開閉移動させる時の速度を決定し、決定した速度で仕切弁130を開閉移動させる。本実施形態において、開閉制御手段170は、モータを用いて仕切弁130を上下動させる。開閉制御手段170については後述する。
【0028】
上記のように構成された塗工装置100において、液体タンク110に貯蔵されている塗工液は、ポンプ120によりスリッドダイ140へ送出され、スリッドダイ140の塗工ヘッド141から輸送手段150によって輸送されている金属箔の上に吐出される。仕切弁130による塗工液の流れの開放および遮断が繰り返されることによって、所定の間隔で間欠的に塗工液が金属箔上に吐出され、金属箔に所望長さの複数の塗工膜が形成される。
【0029】
仕切弁130および開閉制御手段170について図3を用いて説明する。図3において、開閉制御手段170は、流量計160から出力された流量値に基づいて、仕切弁130の弁体131を上下動させる速度Vsを決定する。
【0030】
本実施形態において、開閉制御手段170は、流量計160から出力された流量値を記憶しておき、所定時間前に塗工した塗工膜の一定膜厚領域塗工時の流量値Q0を、弁座132の開口面積A0で割ることにより、弁座132の開口内での塗工液の流速V0を算出する。そして、開閉制御手段170は、弁体131の移動速度Vsとして、算出した流速V0を設定する。
【0031】
一方、図3に示すように、本実施形態に係る仕切弁130は、弁体131、弁座132、軸133およびハウジング134を備える。
【0032】
ハウジング134は、液体タンク110から流入した塗工液を一時的に収納する容器である。弁座132は、ハウジング134内の塗工液が収納される空間を、液体タンク110側とスリッドダイ140側とに仕切る平板体であり、中央に開口を備える。弁体131は、軸133を介して開閉制御手段170と連結されている。開閉制御手段170により、弁体131は上述の移動速度Vsで上下動する。
【0033】
弁体131が下限位置に位置している時、弁座132の開口は弁体131により閉塞される。一方、弁体131が下限位置よりも上方に位置している時、弁座132の開口が開かれ、該開口から塗工液がスリッドダイ140に向かって流出する。
【0034】
次に、弁座132の開口内での塗工液の流速V0と、弁体131の上方への移動速度Vsと、金属箔に形成される膜厚と、の関係について、図4を用いて説明する。図4において、開口内での塗工液の流速V0よりも弁体131の移動速度Vsが大きい場合(I)、スリッドダイ140の塗工ヘッド141において塗工液を金属箔側へ押し出す圧力(以下、正圧と記載する。)が大きくなり、金属箔の始端領域に形成される塗工膜の膜厚が厚くなる。一方、塗工液の流速V0よりも弁体141の移動速度Vsが小さい場合(III)、正圧が小さくなり、始端領域での塗工膜の膜厚が薄くなる。そして、塗工液の流速V0と弁体131の移動速度Vsとがほぼ同じ場合(II)、正圧が最適値となり、金属箔の始端領域に形成される塗工膜の膜厚が最適になる。
【0035】
すなわち、開閉制御手段170が、弁座132の開口内での塗工液の流速V0と一致する移動速度Vsで弁体131を上昇させることにより、塗工液の吐出開始時に発生する正圧の過不足が抑制され、金属箔の始端領域に最適な膜厚の塗工膜が形成される。
【0036】
次に、本実施形態に係る塗工装置100により金属箔上に塗工膜が形成される過程について説明する。仕切弁130の開閉状態と金属箔上に形成される塗工膜の膜厚との関係の一例を図5に示す。図5において、状態(a)の時、弁体131が下限位置に位置し、弁座132の開口が弁体131によって閉塞されている。状態(a)において、弁体131によって塗工液の流路が閉じられ、塗工液の金属箔への吐出が停止される。
【0037】
そして、塗工を開始する時(状態(b))、開閉制御手段170は、流量計160から出力された流量値に基づいて算出した流速V0を弁体131の移動速度Vsとして設定し、弁体131を移動速度Vsで上方に移動する。弁体131が上方に移動することにより、弁座132の開口が開かれ、塗工液が金属箔へ吐出される。また、弁体131が流速V0と同じ移動速度Vsで上方に移動させることにより、塗工液の正圧が最適値となり、金属箔の始端領域に最適な膜圧の塗工膜が形成される。
【0038】
そして、弁体131が上限位置まで速度Vsで移動した後、上限位置で所定時間保持される(状態(c))。弁体131が上限位置に位置する時、弁座132の開口から流出する塗工液の量が最も多くなる。そして、弁体131が上限位置で所定時間保持されることにより、金属箔の一定膜圧領域に、一定厚さの塗工膜が所望長に亘って形成される。
【0039】
一定厚さの所望長さの塗工膜が金属箔に形成された後、開閉制御手段170は、上昇時と同じ移動速度Vsで弁体131を下方に移動させる(状態(d))。弁体131が下方に移動することにより、スリットダイ140の塗工ヘッド141から塗工液が引き戻さる。塗工ヘッド141から塗工液が引き戻されることにより、塗工ヘッド141に塗工液が溜まることが抑制され、金属箔の終端領域に形成される塗工膜のエッジがシャープになる。
【0040】
そして、弁体131が下限位置に位置することにより(状態(e))、弁座132の開口が弁体131によって再び閉塞され、塗工液の金属箔への吐出が停止される。以上の動作により、金属箔上に所望長さの最適厚さの塗工膜が形成される。また、状態(a)〜状態(e)が繰り返されることにより、金属箔上に所定の間隔で間欠的に塗工液が吐出され、金属箔上に所定長さの最適厚さの塗工膜が複数形成される。
【0041】
なお、状態(d)の時に塗工ヘッド141から塗工液が引き戻されることにより、塗工ヘッド141に塗工液が溜まることが抑制され、次の塗工において始端領域に塗工液が大量に塗工されることも抑制される。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る塗工装置100は、弁体131が上下動して弁座132の開口を開閉し、所定の間隔で間欠的に塗工液を金属箔に塗工する工程において、塗工液の流速V0を取得し、この流速V0と同程度の移動速度Vsで弁体131を上下動させる。
【0043】
速度Vsを自動的に設定することにより、作業者による調整工数を削減することができ、作業者のスキルに影響されずに、高品質な塗工膜を形成することが出来る。
【0044】
また、自動的に塗工液の流速V0を取得して、弁体131の移動速度Vsとして設定されることにより、長時間の塗工において塗工液の性質(粘度や密度等)が変化した場合でも、最適な移動速度Vsが設定され、高品質の塗工膜を間欠的に形成することが出来る。
【符号の説明】
【0045】
10 塗工装置
11 管
12 吐出手段
13 仕切体
14 開口
15 弁
16 制御手段
100 塗工装置
110 液体タンク
120 ポンプ
130 仕切弁
131 弁体
132 弁座
133 軸
134 ハウジング
140 スリットダイ
150 輸送手段
160 流量計
170 開閉制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が通過する管と、
前記管を通過した液体を吐出させる吐出手段と、
前記管を仕切ると共に、前記液体を通過させるための開口を備えた仕切体と、
前記吐出手段側へ移動することにより前記開口を開く弁と、
前記開口を通過する時の前記液体の流出速度を取得し、該取得した流出速度と一致する移動速度で前記弁を移動させる制御手段と、
を備える塗工装置。
【請求項2】
前記弁は、前記仕切体と当接する位置まで移動することにより前記開口を閉塞する、請求項1記載の塗工装置。
【請求項3】
前記弁は、前記開口を開いた状態を所定時間維持した後、前記仕切体側へ移動する、請求項2記載の塗工装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記管を通過する液体の所定時間当たりの液体の流量を計測し、計測した流量を前記開口の面積で割ることにより、前記流出速度を取得する、1乃至3のいずれか1項記載の塗工装置。
【請求項5】
前記液体を貯蔵する液体タンクをさらに備え、
前記管は、前記液体タンクと前記吐出手段とを連結する、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工装置。
【請求項6】
前記液体を前記液体タンクから前記吐出手段へ流出させるポンプをさらに備える、請求項1乃至5のいずれか1項記載の塗工装置。
【請求項7】
前記吐出手段は前記液体を吐出させる吐出口を備え、
前記液体が塗工される被塗工対象を前記吐出口の対向位置へ輸送する輸送手段をさらに備える、
請求項1乃至6のいずれか1項記載の塗工装置。
【請求項8】
管内を液体を通過させ、前記液体が前記管を仕切る仕切体に形成された開口を通過する時の流出速度を取得し、
前記開口を閉塞している弁を、前記取得した流出速度と一致する移動速度で前記液体の流れ方向に移動させ、前記液体を吐出させる、
塗工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−61445(P2012−61445A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209343(P2010−209343)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】