説明

塗工装置

【課題】ナイフコータとロールコータの塗工の切り替えを容易に行うことができる塗工装置を提供する。
【解決手段】塗工装置10の本体12の上方に配されたナイフエッジ36と、ナイフエッジ36を上下動させるエアシリンダー38と、本体12の側方に配された基台20と、基台20上に移動自在に配されたロール塗工部26と、ロール塗工部26に設けられた塗工ロール32とリバースロール34とを有し、ナイフコータの塗工と、ロールコータの塗工とを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグに用いられる基布に塗工液を塗工する塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアバッグに用いられる基布にシリコンゴムなどの塗工液を塗工する塗工装置としては、ナイフコータが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、エアーバックの塗工には、ナイフコータが使われている。しかし、エアバッグの種類(基布の形状)によって、ナイフコータでは均一に塗工できない場合があるため、ナイフコータに代えて、ロールコータが用いられる場合がある。この場合に、ナイフコータの塗工装置とロールコータの塗工装置とを入れ換える必要があり、その上、長尺状の基布の走行路を変更する必要がある。すなわち、ナイフコータの塗工装置における走行路から、ロールコータの塗工装置の走行路に長尺状の基布を通し直す必要があり、その作業が非常に手間であるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、ナイフコータとロールコータの塗工の切り替えを容易に行うことができる塗工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エアバッグに用いられる長尺上の基布に塗工液を塗工する塗工装置において、前記塗工装置の本体上部に回転自在に設けられ、前記基布を下から上へ走行させるバックアップロールと、前記本体に回転自在に設けられ、前記基布を前記バックアップロールへ案内する複数の案内ロールと、前記本体の上方に配されたナイフエッジと、前記ナイフエッジを、前記バックアップロールの上面又は走行する前記基布の上面に前記ナイフエッジの下端を接触させる位置であるナイフコータ塗工位置と、前記ナイフコータ塗工位置より上方のナイフコータ退避位置との間を上下動させる上下動手段と、前記本体の側方に設けられた基台と、前記基台上に配されたロール塗工部と、前記ロール塗工部に回転自在に設けられた塗工ロールと、前記ロール塗工部に回転自在に、かつ、前記塗工ロールと接触した状態で設けられたリバースロールと、前記塗工ロールの側面と前記バックアップロールの側面とを接触させる位置であるロールコータ塗工位置と、前記ロールコータ塗工位置から退避させるロールコータ退避位置との間を、前記ロール塗工部が水平に前記基台上を移動するための移動手段と、を有することを特徴とする塗工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基布の走行路を変更することなく、ナイフコータで塗工する場合には、ナイフエッジをナイフコータ塗工位置に移動させ、塗工ロールを有するロール塗工部をロールコータ退避位置に移動させる。一方、ロールコータによって塗工する場合には、ナイフエッジをナイフコータ退避位置に移動させ、ロール塗工部をロールコータ塗工位置に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例に係る塗工装置の側面図であって、ナイフコータの塗工時を示す図である。
【図2】同じくロールコータの塗工時を示す図である。
【図3】ナイフエッジの変更例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例の塗工装置10について図1及び図2に基づいて説明する。この塗工装置10は、エアバッグに用いられる長尺状の基布1に塗工液を塗工する装置である。基布1としては、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46,ポリエステル繊維、ポリアミド繊維からなる合成繊維布であり、基布1の幅としては、例えば、2800mmである。また、塗工液としては、シリコンゴムである。
【0010】
(1)塗工装置10の構造
塗工装置10の構造について図1及び図2に基づいて説明する。
【0011】
塗工装置10の本体12の上部には、金属製のバックアップロール14が回転自在に配されている。バックアップロール14は、長尺状の基布1の走行速度に併せて回転し、基布1を下から上に案内する。本体12には、基布1を本体12の下部からバックアップロール14の位置まで案内する案内ロール16が、回転自在に6個設けられている。本体12の上方にも、案内ロール18が設けられている。
【0012】
本体12の側方には、基台20が設けられている。基台20の側面にも、基布1を案内する案内ロール22,24が回転自在に設けられている。
【0013】
この基台20の上方には、ロール塗工部26が配されている。ロール塗工部26は、基台20の上面にあるレール28上を車輪30によって水平方向に移動自在に設けられている。ロール塗工部26をレール28に沿って移動させる方法としては、エアシリンダーによってロール塗工部26を移動させるか、モータで車輪30を回転させるか、又は、作業者が手動で移動させる。
【0014】
ロール塗工部26の上部における本体12側には、ゴム製の塗工ロール32が回転自在に設けられている。塗工ロール32の横には、金属製のリバースロール34が回転自在に、かつ、塗工ロール32の側部と接触するように配されている。塗工ロール32及びリバースロール34共に同じ回転速度で回転する。
【0015】
ロール塗工部26を移動させ、塗工ロール32の側面がバックアップロール14の側面と接触した状態を以下では「ロールコータ塗工位置」といい、ロール塗工部26を反対に移動させて塗工ロール32とバックアップロール14とが離れた状態を「ロールコータ退避位置」と言う。
【0016】
バックアップロール14の上方には、ナイフエッジ36が配され、エアシリンダー38によって上下動自在となっている。ナイフエッジ36の下端がエアシリンダー38によって下方に移動して、バックアップロール14の上面と接触した状態を、以下では「ナイフコータ塗工位置」といい、ナイフエッジ36の下端がエアシリンダー38によって上方に引き上げられた状態を「ナイフコータ退避位置」という。
【0017】
(2)ナイフコータによる塗工
次に、塗工装置10を用いて、基布1にナイフコータで塗工を行う場合について図1に基づいて説明する。
【0018】
まず、ロール塗工部26を、ロールコータ退避位置に移動させる。
【0019】
次に、ナイフエッジ36を、エアシリンダー38によってナイフコータ塗工位置に移動させる。
【0020】
次に、ナイフエッジ36の前方に、液溜め板40と両側板を取り付けて、液溜め部42を形成する。液溜め板40の下端は、バックアップロール14の上面近傍まで配し、若干の隙間を設けておく。
【0021】
次に、長尺状の基布1を、この塗工装置10の前段の他の装置50から案内ロール24、22、6個の案内ロール16によって形成された走行路を経て、バックアップロール14の下から上に案内し、案内ロール18に至るように通布する。
【0022】
次に、ナイフエッジ36と液溜め板40との間にある液溜め部42に、塗工液を溜める。
【0023】
次に、基布1の上面に塗工を開始する。基布1を一定の走行速度で走行させ、ナイフエッジ36で所定の塗工厚(例えば、30〜200μm)で塗工液を塗工する。走行速度としては、例えば25〜30m/分である。
【0024】
(3)ロールコータによる塗工
次に、塗工装置10を用いて、基布1にロールコータで塗工を行う場合について図2に基づいて説明する。
【0025】
案内ロール24、22、16を経てバックアップロール14に至る基布1の走行路については、ナイフコータの塗工時と同様であり、入れ換えたりする必要がなく作業を削減できる。
【0026】
まず、液溜め板40や両側板を取外し、エアシリンダー38によってナイフエッジ36をナイフコータ退避位置まで上昇させる。
【0027】
次に、ロール塗工部26をレール28に沿ってロールコータ塗工位置まで移動させ、塗工ロール32をバックアップロール14の側面に接触させる。
【0028】
次に、塗工ロール32とリバースロール34との間に2枚の液溜め板44,46と両側板を取り付け、液溜め部48を形成する。液溜め部48に、塗工液を溜める。
【0029】
次に、基布1の上面に塗工を開始する。基布1を上記と同様に走行させると共に、塗工ロール32とリバースロール34を回転させる。すると、液溜め部48の塗工液が塗工ロール32の下面に塗工され、さらに、バックアップロール14と塗工ロール32との間で基布1の上面に塗工される。この場合に、ロールコータにより、ナイフコータでは、均一に塗工できない基布1の塗工が可能であり、基布1の走行路(パスライン)を変更することなく効率的に塗工方式の変更ができる。その塗工厚さは例えば、10〜100μmである。
【0030】
なお、塗工装置10をナイフコータの塗工に復帰させる場合には、ロール塗工部26をロールコータ退避位置に移動させ、ナイフエッジ36を再びナイフコータ塗工位置に下げる。
【0031】
(4)効果
上記実施例によれば、基布1の走行路を変更することなく、ナイフコータの塗工方式とロールコータの塗工方式とを簡単に切り換えることができる。
【0032】
(5)変更例
本発明は上記各実施例に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0033】
上記実施例では、ナイフエッジ36をバックアップロール14の真上に設置したが、これに代えて、図3に示すように、バックアップロール14と案内ロール18との間にナイフエッジ36を設置してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 基布
10 塗工装置
12 本体
14 バックアップロール
16 案内ロール
18 案内ロール
20 基台
26 ロール塗工部
28 レール
30 車輪
32 塗工ロール
34 リバースロール
36 ナイフエッジ
38 エアシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグに用いられる長尺上の基布に塗工液を塗工する塗工装置において、
前記塗工装置の本体上部に回転自在に設けられ、前記基布を下から上へ走行させるバックアップロールと、
前記本体に回転自在に設けられ、前記基布を前記バックアップロールへ案内する複数の案内ロールと、
前記本体の上方に配されたナイフエッジと、
前記ナイフエッジを、前記バックアップロールの上面又は走行する前記基布の上面に前記ナイフエッジの下端を接触させる位置であるナイフコータ塗工位置と、前記ナイフコータ塗工位置より上方のナイフコータ退避位置との間を上下動させる上下動手段と、
前記本体の側方に設けられた基台と、
前記基台上に配されたロール塗工部と、
前記ロール塗工部に回転自在に設けられた塗工ロールと、
前記ロール塗工部に回転自在に、かつ、前記塗工ロールと接触した状態で設けられたリバースロールと、
前記塗工ロールの側面と前記バックアップロールの側面とを接触させる位置であるロールコータ塗工位置と、前記ロールコータ塗工位置から退避させるロールコータ退避位置との間を、前記ロール塗工部が水平に前記基台上を移動するための移動手段と、
を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記塗工液が、シリコンゴムである、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記基布が、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46,ポリエステル繊維、又は、ポリエステル繊維からなる合成繊維布である、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−161319(P2011−161319A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24012(P2010−24012)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】