説明

塗布方法および塗布装置並びに液晶ディスプレイ用部材の製造方法

【課題】スリットノズルで塗布液を繰り返しプレートに予備塗布を行っても、プレートの清浄度を一定に保つ低コストの洗浄手段を具現化することによって、常に安定した塗布品質を実現する塗布装置及び塗布方法を提供する。それによって低コストで高品質のカラーフィルターやTFTアレイ基板等の液晶ディスプレイ用部材を製造できる液晶ディスプレイ用部材の製造方法を提供する。
【解決手段】塗布液を吐出するために一方向に伸びる吐出口を有する塗布器24から平面を有するプレート204に向かって塗布液を吐出して予備塗布を行い、引き続いて被塗布部材に塗布を行う塗布方法において、前記予備塗布終了後にプレート204に2段の洗浄を行って、プレート204に予備塗布された塗布液の除去を行い、第2段の洗浄は第1段の洗浄を所定回数行うごとに実施することを特徴とする塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばカラー液晶ディスプレイ用カラーフィルタやTFT用アレイ基板等の液晶ディスプレイ用部材を製造する分野に主として使用されるものであり、詳しくはガラス基板などの被塗布部材表面に均一な塗布膜を多数枚にわたって形成するために必要な塗布器の初期化に関わる塗布方法及び塗布装置並びに液晶ディスプレイ用部材の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶用ディスプレイは、カラーフィルタ、TFT用アレイ基板などにより構成されているが、カラーフィルタ、TFT用アレイ基板ともに、低粘度の液体材料を塗布して乾燥させ、塗布膜を形成する製造工程が多く含まれている。たとえば、カラーフィルタの製造工程では、ガラス基板上に黒色のフォトレジスト材の塗布膜を形成し、フォトリソ法により塗布膜を格子状に加工した後に、格子間に赤色、青色、緑色のフォトレジスト材の塗布膜を同様の手法により順次形成していく。その他にも、フォトレジスト材を塗布して塗布膜を形成後、カラーフィルタとTFT用アレイ基板との間に注入される液晶のスペースを確保する柱を形成したり、カラーフィルタ上の表面の凹凸を平滑化するためのオーバーコート塗布膜を形成する製造工程や、TFT用アレイ基板に所定のパターンを形成するためにフォトレジスト材の塗布膜を形成する製造工程などもある。
【0003】
この塗布膜形成のための塗布装置としては、塗布液の消費量や消費電力の削減、さらに2m角以上という超大型基板に対応する装置の大型化が容易であるなどの理由により、近年に至ってスリットコータ(例えば特許文献1)の使用が増加してきている。この公知のスリットコータは塗布器としてスリットノズルを有し、このスリットノズルに設けられたスリット状の吐出口から塗布液を吐出しながら、一方向に走行するガラス基板などの被塗布部材上に塗布膜を形成するものとなっている。
【0004】
このスリットコータで多数枚の被塗布部材に続けて塗布する場合には、どの被塗布部材に対してもスリットノズルの吐出口とその周辺の状態を同じにする、すなわち初期化をしてから塗布を始めないと、塗布開始部の塗布膜の膜厚分布が再現せず、同じ品質を維持できない。そのために塗布前には一枚一枚の被塗布部材ごとに、スリットノズルの初期化が必ず行われる。このスリットノズルの初期化を非接触の状態で行うのが、所定の面積を有するプレートの平面上に予備塗布を行うものである(例えば特許文献2、3)。この予備塗布では、被塗布部材への塗布の時と同じように、スリットノズルをプレートに近接させてから塗布液を吐出して塗布を行い、一定厚さの塗布膜をプレート上に形成した後に、塗布液の吐出を終了して、スリットノズルをプレートから引き離す。この時、引き離されたスリットノズルの吐出口を含む吐出口面には一定量の塗布液が付着するが、スリットノズルの吐出口面の両隣に隣接する両隣接面には塗布液は付着していない状態になっている。この状態を初期化された状態と称している。両隣接面に塗布液が付着していると、塗布開始時に付着塗布液も塗布されるので、塗布開始部が厚くなったり、付着塗布液を起点としてすじ状の欠点が発生したりする。また吐出口面に付着している塗布液がいつも一定でないと、塗布開始部の膜厚分布が再現されない。
【0005】
スリットノズルは、常に同じ条件でプレートに予備塗布を行い、予備塗布終了時にスリットノズルをプレートから引き離せば、毎回同じ初期化された状態になる。プレートにスリットノズルで予備塗布を行う手段はスリットノズルの初期化には有効であるが、プレートを常に清浄にして同じ状態で予備塗布を行えるようにする必要がある。そうしないと、繰り返して同じように予備塗布膜を形成できず、その結果スリットノズルを一定の初期化された状態にすることができない。プレートの清浄状態を繰り返し維持するために、プレート上に予備塗布された塗布液を除去する洗浄が行われる。
【0006】
特許文献2、3では洗浄手段の1つとして、プレート上に予備塗布された塗布液に対して、プレートの長手方向の一端側から洗浄液をノズルで吐出させながら長手方向に移動させ、次いで塗布液と洗浄液の混合物を同様に走行するブレードでかき落とし、最後に残存液体をこれも走行するノズルからエアー等を噴きつけて乾燥させる、ことが行われる。
【0007】
しかしこの洗浄手段では、洗浄されたプレートの予備塗布面の清浄度は、使用する洗浄液に比例し、スリットノズルの初期化を安定して行える程度にプレートの予備塗布面の清浄度を維持するには、最低でもプレートに予備塗布された塗布液量の10倍の洗浄液が必要であり、製造コストが非常に高くなることの他、使用済み洗浄液の廃液処理にも費用がかかるという問題がある。
【0008】
特許文献2、3では別の洗浄手段として、プレート表面に線状にブレードを接触させて長手方向に摺動し、プレート表面上に予備塗布された塗布液の除去を行う手段が示されている。この手段は、上記の洗浄手段とは反対に洗浄液を全く使用しないが、プレート面から塗布液は十分に除去できず、スリットノズルの初期化に必要とされるプレートの清浄度を達成できない。ブレードの形状を工夫することにより、塗布液の除去を十分行って必要とされる清浄度がえられたとしても、何回もブレードによる洗浄を繰り返すと、わずかに残存した塗布液が乾燥して次第に蓄積され、プレート表面に必要とされる清浄度がえられなくなってしまう。したがって、生産時のように多数回にわたって予備塗布を行う場合には、清浄度を一定水準に維持できない。
【0009】
すなわち、プレートの表面に予備塗布を行ってスリットノズルの初期化を行う手段は、予備塗布されたプレート表面の塗布液を、低コストで繰り返し必要清浄度を維持できる洗浄手段がないので、カラーフィルター等の製造に実用化されていないのが実情である。
【特許文献1】特開平6-339656号公報(第5欄18行目〜第8欄1行目、第10欄9行目〜43行目、図1、図3、図4)
【特許文献2】特開2004−55607号公報(第0068欄〜第0076欄、第0126欄〜第0133欄、図11、図13、図18、図20)
【特許文献3】特開2007−268391号公報(第0016欄〜第0034欄、第0036欄〜第0041欄、図3、図4、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、スリットノズルで塗布液を繰り返しプレートに予備塗布を行っても、プレートの清浄度を一定に保つ低コストの洗浄手段を具現化することによって、常に安定した塗布品質を実現する塗布装置及び塗布方法を提供することにある。そしてそれによって低コストで高品質のカラーフィルターやTFTアレイ基板等の液晶ディスプレイ用部材を高い生産性で製造できる液晶ディスプレイ用部材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的は、以下に述べる手段によって達成される。
【0012】
本発明になる塗布方法は、塗布液を吐出するために一方向に伸びる吐出口を有する塗布器から平面を有するプレートに向かって塗布液を吐出して予備塗布を行い、引き続いて被塗布部材に塗布を行う塗布方法において、前記予備塗布終了後にプレートに2段の洗浄を行って、プレートに予備塗布された塗布液の除去を行い、第2段の洗浄は第1段の洗浄を所定回数行うごとに実施することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記第1段の洗浄はプレートの予備塗布される面とそれに隣接する面に同時に線接触するブレードをプレートの長手方向に摺動させて行い、第2段の洗浄はプレートの予備塗布される面に、塗布液の溶剤を含有する吸収体を接触させて行うことが好ましい。
【0014】
本発明になる塗布装置は、塗布液を吐出するために一方向に伸びる吐出口を有する塗布器と、塗布器から塗布液が平面を有するプレート上に吐出されて予備塗布がなされる予備塗布装置と、被塗布部材に塗布膜の形成がなされる本塗布装置と、を備えた塗布装置において、予備塗布終了後にプレートに予備塗布された塗布液の除去を行う2段の洗浄手段と、第1段の洗浄手段を所定回数行うごとに第2段の洗浄手段を作動させる制御装置をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
ここで、第1段の洗浄手段は前記プレートの予備塗布される面とそれに隣接する面に接触し、かつプレートの長手方向に摺動するブレードであり、第2段の洗浄手段は、前記プレートの予備塗布される面に接触し、かつプレートの長手方向に走行する塗布液の溶剤を含有する吸収体であることが好ましい。
【0016】
本発明になる液晶ディスプレイ用部材の製造方法は、請求項1または2に記載のいずれかの塗布方法を用いて液晶ディスプレイ用部材を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明になる塗布方法および塗布装置を用いれば、第1段の洗浄でプレートの予備塗布される面とそれに隣接する面に同時に線接触するブレードを長手方向に摺動させるのであるから、プレート全面にわたって予備塗布された塗布液を、所定の清浄度が得られる程度に除去することが可能となる。
【0018】
また3面に接触するブレードによる予備塗布液のプレート表面からの除去を多数回数繰り返して、塗布液が乾燥して蓄積しプレート表面の清浄度が低下しても、塗布液に含まれている溶剤がわずかにしみこんだ吸収体をプレート表面に接触させながら長手方向に移動させる第2段の洗浄を、第1段の洗浄を所定回数行うごとに実施するのであるから、プレート表面状況が回復して必要とされるプレートの清浄度がえられるだけではなく、繰り返し予備塗布をプレートに行っても確実に洗浄が行われて、プレートの予備塗布面の清浄度を常に一定に保つことが可能となる。プレートの清浄度が繰り返し予備塗布を行っても一定に保たれるのであるから、スリットノズルの初期化も安定して行われ、その結果繰り返し安定した塗布品質や膜厚分布再現性を実現することができる。または本発明による2段の洗浄はごくわずかしか溶剤を使用しないので、非常に低コストでプレートの清浄度を一定に保つことが可能となる。
【0019】
本発明になる液晶ディスプレイ用部材の製造方法によれば、上記の優れた塗布方法を用いて液晶ディスプレイ用部材製造するのであるから、低コストで、塗布膜の均一性や再現性、ならびに塗布品質に優れた高品質の液晶ディスプレイ用部材を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の好ましい一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明に係る予備塗布装置200を含むスリットコータ1の概略正面図、図2は予備塗布装置200の拡大概略正面図、図3は第1の清掃装置240の概略部分側面図、図4は第2の清掃装置300の概略部分側面図、である。
【0022】
まず図1を参照すると、本発明の予備塗布装置200を装備したスリットコータ1が示されている。このスリットコータ1は基台2を備えており、基台2上には、被塗布部材である基板Aの載置台、すなわちステージ6が配置されている。ステージ6の上面は図示しない吸着孔からなる真空吸着面となっており、基板Aを吸着保持することができる。基台2上には、さらに一対のガイドレール4が設けられており、このガイドレール4上には、門型ガントリー10が両矢印で示されるX方向に案内自在に搭載されている。門型ガントリー10には、上下昇降ユニット70を介して、塗布器であるスリットノズル20がステージ6の上方の位置にくるように取り付けられている。門型ガントリー10は図示しないリニアモータで駆動されるので、これに搭載されているスリットノズル20は、X方向に自在に往復動することができる。なおX方向は塗布方向となる。
【0023】
スリットノズル20は、X方向に直交する方向(紙面に垂直な方向)にのびているフロントリップ22、及びリアリップ24を、シム32を介してX方向に重ね合わせ、図示しない複数の連結ボルトにより一体的に結合されている。スリットノズル20内の中央部にはマニホールド26が形成されており、このマニホールド26もスリットノズル20の長手方向(X方向に直交する方向)にのびている。なおスリットノズル20の長手方向は塗布幅方向となる。マニホールド26の下方には、スリット28が連通して形成されている。このスリット28もスリットノズル20の長手方向にのびており、その下端がスリットノズル20の最下端面である吐出口面36で開口して、吐出口34を形成する。したがって吐出口34は吐出口面36に含まれることになる。なおスリット28はシム32によって形成されるので、スリット28の間隙(X方向に測定)は、シム32の厚さと等しくなる。吐出口面36の両隣には、斜め上方に切り上がっているリップ斜面38A、Bが設けられている。リップ斜面38A、Bは、吐出口面36に連なる両隣接面となる。
【0024】
このスリットノズル20を昇降させる上下昇降ユニット70は、スリットノズル20を吊り下げる形で保持する吊り下げ保持台80、吊り下げ保持台80を昇降させる昇降台78、昇降台78を上下方向に案内するガイド74、モータ72の回転運動を昇降台78の直線運動に変換するボールねじ76より構成されている。上下昇降ユニット70はスリットノズル20の長手方向の両端部を支持するよう左右1対あって、各々が独立に昇降できるので、スリットノズル20長手方向の水平に対する傾き角度を任意に設定することができる。これによってスリットノズル20の吐出口面36と基板Aを、スリットノズル20の長手方向、すなわち塗布幅方向にわたって略並行にすることができる。さらに、この上下昇降ユニット70によって、ステージ6上の基板Aとスリットノズル20の吐出口面36の間にすきま、すわなち、クリアランスを、任意の大きさに設けることができる。
【0025】
再びスリットノズル20を見ると、スリットノズル20のマニホールド26の上流側は、塗布液供給装置40に連なる供給ホース60に、内部通路(図示しない)を介して常時接続されており、これにより、マニホールド26へは塗布液供給装置40から塗布液を供給することができる。マニホールド26に入った塗布液は塗布幅方向に均等に拡幅されて、スリット28を経て、吐出口34から吐出される。
【0026】
なお、塗布液供給装置40は、供給ホース60の上流側に、フィルター46、供給バルブ42、シリンジポンプ50、吸引バルブ44、吸引ホース62、タンク64を備えている。タンク64には塗布液66が蓄えられており、圧空源68に連結されて任意の大きさの背圧を塗布液66に付加することができる。タンク64内の塗布液66は、吸引ホース62を通じてシリンジポンプ50に供給される。シリンジポンプ50では、シリンジ52、ピストン54が本体56に取り付けられている。ここでピストン54は図示しない駆動源によって上下方向に自在に往復動できる。シリンジポンプ50は、一定の内径を有するシリンジ52内に塗布液を充填し、それをピストン54により押し出して、スリットノズル20に基板Aを一枚塗布する容量の塗布液を供給する定容量間欠供給型のポンプである。シリンジ52内に塗布液66を充填するときは、吸引バルブ44を開、供給バルブ42を閉として、ピストン54を下方に移動させる。またシリンジ52内に充填された塗布液をスリットノズル20に向かって供給するときは、吸引バルブ44を閉、供給バルブ42を開とし、ピストン54を上方に移動させることで、ピストン54でシリンジ52内部の塗布液66を押し上げて排出する。
【0027】
さらに図1で基台2の左側端部を見ると、予備塗布装置200が基台2上に取り付けられている。スリットノズル20は破線で示すように、門型ガントリー10の移動によって、予備塗布装置200の静止した板状体202の左側端部の上方まで移動することができる。
【0028】
さて予備塗布装置200の構成をより詳細に見てみると、中央に予備塗布される1個のプレートである板状体202が、L型のブラケット216を介して本体220に締結固定されている。板状体202の下方には、トレイ230も配置されている。板状体202は、その長手方向がスリットノズル20の長手方向(紙面に垂直な方向)と一致しているので、塗布幅方向とも一致する。さて板状体202は、スリットノズル20から予備塗布される平面である予備塗布面204を、その最上部に有している。この予備塗布面204はスリットノズル20の吐出口面36と略平行に配される。予備塗布面204の左側端部は開始エッジ208、右側端部は終了エッジ210となっており、開始エッジ208から終了エッジ210に向かって予備塗布が行われる。開始エッジ208と終了エッジ210の下側には、予備塗布面204と直交する一対の垂直面206A、Bが連なっている。垂直面206A、Bは、板状体202の予備塗布される面である予備塗布面204に隣接する面となる。また予備塗布面204上に予備塗布された塗布液が除去されると、トレイ230の方に落下し、廃液222となる。廃液222は、トレイ230に接続されている排出管212、配管214を通じて図示されない回収源に回収される。
【0029】
次に予備塗布装置200の左側を見ると、板状体202の予備塗布面204を清掃、すなわち洗浄する第1の清掃装置240と第2の清掃装置300が、本体220の一端上に配置されている。
ここで、第1の清掃装置240が第1段の洗浄手段、第2の清掃装置300が第2の洗浄手段となって、両方で2段の洗浄手段を構成している。
【0030】
図2を参照して第1の清掃装置240と第2の清掃装置の構成について詳細を説明する。図2では、第1の清掃装置のブレード242を予備塗布面204の直上に移動させて、図1では第1の清掃装置240の後方にあって隠れていた第2の清掃装置300の全体が見えるようにしている。
【0031】
図2で、第1の清掃装置240は、予備塗布面204とそれに隣接する垂直面206A、Bの3面に線接触しながら塗布幅方向に摺動して、予備塗布面204上の塗布液を除去するブレード242、ブレード242を保持する保持体244、保持体244とブレード242を上下方向に昇降させるエアーシリンダー246、エアーシリンダー246を保持するアーム252、アーム252を一点鎖線で示される中心線回りに回転させる回転機254、回転機254を支持するテーブル250、テーブル250を塗布幅方向に往復自在に案内するとともに、本体220上の固定台228に固定されている1対のレール232、より構成されている。テーブル250には図示されないボールネジが係合していて、ボールネジに接続している図示されていないサーボモータの回転によって、テーブル250を自在に塗布幅方向に往復動させることができる。
【0032】
第2の清掃装置300は、清掃ユニット310と、清掃ユニット310を保持してこれを上下方向に昇降させるエアーシリンダー308、エアーシリンダー308を保持するアーム306、アーム306を一点鎖線で示される中心線回りに回転させる回転機304、回転機304を支持するテーブル302、テーブル302を塗布幅方向に往復自在に案内するとともに、本体220上の固定台228に固定されている1対のレール234より構成されている。テーブル302には図示されないボールネジが係合していて、ボールネジに接続している図示されていないサーボモータの回転によって、テーブル302を自在に塗布幅方向に往復動させることができる。清掃ユニット310は図4に示すように、ベース312に固定されている巻出ユニット314、巻取ユニット316、押さえユニット318と、布材320とより構成されている。吸収体である布材320に洗浄液を吐出して付着させる洗浄ノズル322が、板状体202の塗布幅方向の一端に設けられている。なお図4は、清掃ユニット310を予備塗布面204の直上に回転移動させた時に、テーブル302側から見た概略側面図が示されている。布材320は塗布方向に伸びて幅Lcを有しており、ゴムロールからなる押さえユニット318に巻きついて、予備塗布面204に押し付けられる。図2に示される布材320の幅Lcは予備塗布面204の塗布方向の長さである幅Lpよりも大きいことが好ましい。図4で布材320を巻出軸332上に所定長さ巻いた原反324は巻出ユニット314に回転自在に装着されており、ここから布材320が巻き出されて、押さえユニット318を経て、巻取ユニット316に回転自在に装着された巻取軸334に巻き取られる。この構成によって、清掃を行うたびに布材320の新品部分(未使用部分)を、予備塗布面204に対面させることができる。なお巻出ユニット314の巻出軸332は、柱材A326を介してベース板312に回転自在に保持されており、図示しないブレーキ機構と連結して、巻出張力を布材320に付与することができる。巻取ユニット316の巻取軸334は、柱材B328を介してベース板312に回転自在に保持されており、図示しない回転モータと連結して、任意の速度で布材320を所定長さだけ巻取ることができる。押さえユニット318は、柱材C330を介してベース板312に回転自在に保持されている。これらのユニットを保持するベース312はエアーシリンダー308に固定されているので、エアーシリンダー308によって清掃ユニット310は自在に昇降し、布材320を押さえユニット318に巻きつかせた状態で、予備塗布面204に一定圧力で押し付けることが可能となる。またアーム306は回転機304によって自在に回転可能となっているので、清掃ユニット310を予備塗布面204側にも、その反対側にも自在に位置させることができる。清掃ユニット310が予備塗布面204側にある時は、布材320は予備塗布面204の塗布方向の全幅にわたって接触するように配置されている。
【0033】
なお一対のレール232とレール234は平行して塗布幅方向に伸びており、第1の清掃装置240のテーブル250と第2の清掃装置300のテーブル302は平行して自在に塗布幅方向に移動可能となっている。また、図2に示すように、第1の清掃装置240ブレード242と第2の清掃装置300の清掃ユニット310が、レール232、234を間に挟んでお互い反対側にある場合は、第1の清掃装置240のブレード242と第2の清掃装置300の清掃ユニット310は、お互いに干渉しないで、塗布幅方向に自在に移動することができる。
【0034】
以上詳細を説明した予備塗布装置200の他、制御信号にて動作するリニアモータ、モータ72、塗布液供給装置40等はすべて、図1に示されている制御装置100に電気的に接続されている。そして、制御装置100に組み込まれた自動運転プログラムにしたがって制御指令信号が各機器に送信されて、あらかじめ定められた動作を行う。なお条件変更時は操作盤102に適宜変更パラメータを入力すれば、それが制御装置100に伝達されて、運転動作の変更が実現でき、制御装置100からの指令により、任意の動作をさせることができる。
【0035】
なお以上説明したスリットコータ1で、予備塗布装置200以外の部分は、基板Aに塗布液を塗布する本塗布装置としての機能を備えている。
【0036】
次にスリットノズル20の初期化を行うための、第1の清掃装置240と第2の清掃装置300を含む予備塗布装置200を使用した予備塗布方法について詳細に説明する。
【0037】
まず準備動作として、塗布液66をタンク64〜スリットノズル20まで充填して空気抜きも済ませておくとともに、板状体202の予備塗布面204、垂直面206A、Bを、溶剤をしみこませた布(クリーンワイパー)で清掃し、予備塗布面204、垂直面206A、Bに付着物がない状態にする。またこの時、スリットノズル20は図1でX方向にはステージ6の右隣りの位置、上下方向には最上位置にある。また第1の清掃装置240、第2の清掃装置300ともに初期位置にある。すなわち第1の清掃装置240のブレード242は、矢印で示されるX方向には、図1に示されるように回転機254の中心線(一点鎖線)から見て、板状体202とは180度逆側にある。ブレード242は、塗布幅方向には図3に示される板状体202の塗布幅方向の一端にある摺動開始位置P1にあり、上下方向にはエアーシリンダー246が上限位置にあるので、ブレード242も上限位置にある。一方、第2の清掃装置300の清掃ユニット310は、矢印で示されるX方向には、図1に示されるように回転機304の中心線(一点鎖線)から見て、板状体202とは180度逆側にある。清掃ユニット310は塗布幅方向には図4に示されるように、塗布幅方向の摺動開始位置P1よりも矢印で示される清掃ユニット310の走行方向とは逆側に離れた位置にある待機位置P0で停止させている。これによって第1の清掃装置240のブレード242と、第2の清掃装置300の清掃ユニット310は干渉しない。上下方向にはエアーシリンダー308が上限位置にあるので、清掃ユニット310も上限位置にある。
【0038】
以上の準備動作が完了したら、門型ガントリー10をX方向に予備塗布装置200に向かって移動させる。そして予備塗布を行うために、スリットノズル20の吐出口34を、板状体202の開始エッジ208を含む予備塗布開始部の真上の位置に来るようにして、門型ガントリー10を停止させる。つづいて上下昇降ユニット70を駆動してスリットノズル20を下降させ、スリットノズル20の吐出口面36と予備塗布面204との間のすきまが第1クリアランスC1になる位置で停止させる。この第1クリアランスC1の大きさは好ましくは40〜200μm、より好ましくは50〜100μmとする。このすきまが小さすぎるとスリットノズル20と板状体202が衝突するおそれがあり、すきまが大きすぎると後述する予備塗布ビードBp、すなわち塗布液の溜りが形成されないので、予備塗布を行うことができない。
【0039】
さてスリットノズル20の吐出口面36と予備塗布面204との間のすきまが第1クリアランスC1になったら、シリンジポンプ50を駆動して初期出し量Q1だけ塗布液をスリットノズル20から吐出し、吐出完了後から同じ姿勢のまま待機時間T1だけ待機する。これによってスリットノズル20の吐出口面36と予備塗布面204の間に予備塗布ビードBpを形成する。塗布液を初期出し量Q1だけ吐出してから待機時間T1だけ待機するのは、予備塗布ビードBpが吐出口面36と予備塗布面204間のすきまに、長手方向全体にわたって確実に形成されるのを待つためであるが、待機時間T1はゼロであってもよい。なお初期出し量Q1はスリットノズル20の塗布幅方向1mあたりで好ましくは20〜500μl、より好ましくは50〜200μlである。この範囲より小さいと予備塗布ビードBpが形成されず、この範囲より大きいと、吐出口面36〜予備塗布面204間のすきまから塗布液があふれだしてしまう。さてスリットノズル20から初期出し量Q1で塗布液を吐出完了後T1秒たったら、上下昇降ユニット70を駆動してスリットノズル20を上昇させ、スリットノズル20の吐出口面36と予備塗布面204の間のすきまが第2クリアランスC2になる位置で、スリットノズル20を停止させる。第2クリアランスC2は通常の塗布を行うのに最適な大きさにし、好ましくは50〜300μm、より好ましくは80〜200μmであり、第1クリアランスC1よりも大きくする。このとき、再びシリンジポンプ50を駆動してスリットノズル20から塗布液を塗布厚さに対応した吐出速度で吐出開始する。シリンジポンプ50の再駆動開始から待機時間T2後に門型ガントリー10を終了エッジ210の方に向かって速度V1で駆動し、予備塗布面204に塗布液を予備塗布開始する。ここで待機時間T2は、予備塗布開始部の膜厚を制御するパラメータであって、大きいほど予備塗布開始部の膜厚が大きくなるが、ゼロであってもよい。さて門型ガントリー10に搭載されたスリットノズル20は、予備塗布膜を予備塗布面204上に形成しながら塗布方向であるX方向に終了エッジ210に向かって移動し、終了エッジ210から長さS1だけ手前にある地点がスリットノズル20の吐出口34の直下に達したら、シリンジポンプ50を減速開始して停止させる。一方門型ガントリー10は同じ速度V1のまま移動を続け、終了エッジ210が吐出口34の近傍に来た時に、スリットノズル20を上昇させて、スリットノズル20の吐出口面36と予備塗布面204間に形成された予備塗布ビードBpを断ち切り、予備塗布を終了する。予備塗布が終了してスリットノズル20の初期化は完了するが、門型ガントリー10は速度V1でステージ6の方向に向かって移動しつづけ、ステージ6上の基板Aに塗布を行うために、スリットノズル20の吐出口34の直下に基板Aの塗布開始部が来た時に、ガントリー10を停止させる。
【0040】
予備塗布が終了してから予備塗布面204に予備塗布された塗布液の除去、洗浄を、第1の清掃装置240と第2の清掃装置300とを用いて以下の清掃方法で引き続いて実施する。まずスリットノズル20が清掃装置240のブレード242とは干渉しない基板Aの塗布開始位置に移動、停止したことを確認してから、第1の清掃装置240の回転機254を駆動してアーム252を180度回転させ、図3に示すように摺動開始位置P1でブレード242が予備塗布面204の直上の位置に来るようにする。それからエアーシリンダー246を下降するように動作させて、ブレード242を予備塗布面204と垂直面206に一定圧力で接触させた後に、テーブル250を駆動してブレード242を、図3に示すように摺動開始位置P1から摺動終了位置P2に向かって塗布幅方向の矢印方向に移動させる。この移動の間、ブレード242は予備塗布面204と垂直面206A、Bに摺動し、予備塗布面204に残存している塗布液を除去する。ブレード242と垂直面206A、Bとの接触は、予備塗布面204から除去された塗布液が垂直面206A、Bの上部を伝わって、清掃後の予備塗布面204に抜けて行き再付着するのを防止するのに役立つ。予備塗布面204から除去された塗布液は、廃液222としてトレイ230に落下し、排出管212から配管214を介して、図示されていない廃液回収装置に回収される。
【0041】
さてブレード242が摺動終了位置P2まで移動して来たら、エアーシリンダー246を上限位置まで上昇させてブレード242を予備塗布面204から引き離す。そしてブレード242が移動終了位置P3に来たときにテーブル250の駆動を停止し、ブレード242の移動も終了する。なお摺動終了位置P2は、図3で板状体202の塗布幅方向に待機位置P0とは逆側にある端部より走行方向側、すなわち矢印方向側に設けることが好ましい。塗布液が予備塗布面204より完全に押しのけられるからである。
【0042】
続いて、待機位置P0で待機している清掃ユニット310に対して、第2の清掃装置300の回転機304を駆動してアーム306を180度回転させ、清掃ユニット310の押さえユニット318に巻きついている布材320の全幅が予備塗布面204の直上の位置に来るようにする。そして図4に示すように、洗浄ノズル322から所定量の洗浄液を吐出して、巻出ユニット314と押さえユニット318の間にある布材320の部分Dに洗浄液を全幅にわたって付着させる。布材320の部分Dは図4では破線で位置が示されており、塗布方向に伸びて布材320の全幅を占める。布材320の部分Dで付着した洗浄液は布材320に吸収されて内部までしみ込む。それから巻取ユニット316を駆動して、洗浄液を付着させた布材320の部分Dが、押さえユニット318に巻きつくところにくるように布材320を移動させる。これによって、洗浄液を付着させた布材320の部分Dは予備塗布面204の直上にくることになる。次に、摺動開始位置P1直上まで、押さえユニット318が来るようにテーブル302を駆動して清掃ユニット310を塗布幅方向に移動させ、停止させる。そしてエアーシリンダー308を駆動して下降させ、摺動開始位置P1にて所定圧力で押さえユニット318とそれに巻きついている布材320を予備塗布面204に接触させる。ここで実際に接触しているのは布材320の洗浄液を付着させた部分Dと予備塗布面204である。この状態でテーブル302を駆動して、押さえユニット318を摺動開始位置P1から摺動終了位置P2まで、所定速度で移動させる。これによって、これより前にブレード242で除去できない塗布液が乾燥して膜として残存しているものが、布材320で拭き取って除去される。そして押さえユニット318が摺動終了位置P2まで移動して来たら、エアーシリンダー308を上限位置まで上昇させて、押さえユニット318と布材320を予備塗布面204から引き離す。そしてすでに停止しているブレード242と清掃ユニット310が干渉しないように、移動終了位置P3の手前に設けた位置で清掃ユニット310が停止するように、テーブル302の移動を制御する。これによって清掃ユニット310を構成する押さえユニット318と布材320の移動も終了する。この時にテーブル302を逆方向に駆動して待機位置P0まで復動させ、上記の第2の清掃装置300の清掃ユニット310による清掃を複数回繰り返してもよい。
【0043】
第1の清掃装置240と第2の清掃装置300による清掃が終了したら、まず第2の清掃装置300の回転機304を駆動してアーム306を180°回転させ、予備塗布面204の直上とは逆側に清掃ユニット310を回転移動させる。ついでテーブル302を逆方向に駆動して、清掃ユニット310を待機位置P0まで移動させる。つづいて第1の清掃装置240の回転機254を駆動してアーム252を180°回転させ、予備塗布面204の直上とは逆側にブレード242を回転移動させる。ついでテーブル250も逆方向に駆動して、ブレード242を摺動開始位置P1まで移動させる。以上の予備塗布面204の塗布液の除去、洗浄が終了したら、次の予備塗布を行うために待機する。そしてスリットノズル20の吐出口34が、予備塗布開始部となる予備塗布面204の開始エッジ208の真上に来て停止したら、同じように予備塗布のサイクルを繰り返す。
【0044】
なお第1の清掃装置240による予備塗布面204の清掃は、予備塗布を予備塗布面204に行うごとに必ず実施するが、第2の清掃装置300による予備塗布面の清掃は、予備塗布を行うごとに行ってもよいが、予備塗布と第1の清掃装置240による清掃を所定回数定期的に行うごとに実施することが好ましい。また、第2の清掃装置300による清掃は、第1の清掃装置240によって、予備塗布面204から塗布液が除去された状態で行うことが好ましい。第2の清掃装置300は、塗布液の除去よりも、第1の清掃装置240では除去できない塗布液が乾燥して膜になったものを効率よく、しかも完全に拭き取って除去できる機能を有するからである。したがって第2の清掃装置300による清掃によって、予備塗布面204に必要とされる清浄度を維持することが可能となる。清浄度を維持するために、実際に予備塗布面204を清掃する布材320は、必ず新品状態の部分を使用する。そのために巻取ユニット316、巻出ユニット314を使用して、布材320の新品部分を清掃前に押さえユニット318に巻き付くようにする。
【0045】
また第1の清掃装置240による清掃で塗布液の除去を繰り返し、塗布液が乾燥して蓄積して予備塗布面204の清浄度が低下しても、第2の清掃装置300で清掃を行えば、布材320にしみ込んだ少量の洗浄液によって乾燥蓄積物を溶解し、布材320によって溶解したものを拭き取って除去するのであるから、予備塗布面の清浄度を回復して、必要な清浄度がえられる。
【0046】
以上の第1の清掃装置240と第2の清掃装置300による清掃によって、予備塗布面204の清浄度が常に一定に保たれるのであるから、予備塗布がいつも同じように繰り返し行えることとなって、その結果スリットノズル20の初期化も同じように繰り返し行えることになる。それによって、毎回安定した基板への塗布が行えることになり、安定した塗布品質、塗布方向の膜厚分布再現性が高いレベルで実現できる。
【0047】
なお第2の清掃装置300に用いる洗浄液については、塗布液に含まれる溶剤を適用することが好ましいが、塗布液が乾燥したものを溶解させる液体であるのなら、アルカリ液等いかなるものを使用してもよい。布材320については、洗浄液を吸収できるものなら織物、編物、スポンジ等のいかなる形態のものでもよいが、洗浄液の吸収性の高さから編物を使用することが好ましい。布材320の材質については、洗浄液に対する耐性を有するものであるならばいかなるものでもよく、PET、ナイロン、PP等が好ましく用いられる。洗浄液の布材320への付着量については、好ましくは0.01〜1cc/mm、より好ましくは0.02〜0.5cc/mmとする。この範囲より少ないと予備塗布面204上で塗布液が乾燥した膜を十分溶解して除去することができず、この範囲より多いと洗浄液が清掃後の予備塗布面204に付着して残留してしまう。本発明では洗浄液を布材320に付着させるため、予備塗布面204に直接洗浄液を付着させるよりも非常に少ない量の洗浄液で、予備塗布面204を清掃して高い清浄度をえることができる。
【0048】
なお第1の清掃装置240と第2の清掃装置300の清掃時の塗布幅方向の摺動速度、すなわち移動速度は、好ましくは10〜800mm/s、より好ましくは50〜500mm/sにする。この範囲より小さいとタクトタイムが長くなり、逆に大きいと清掃品質が低下し、目標とする予備塗布面の清浄度がえられない。
【0049】
第1の清掃装置240に用いられるブレード242としては、厚さの小さな高分子樹脂の他、合成ゴムを使用することが好ましい。合成ゴムの場合は、その直線状の1辺をエッジとして予備塗布面204と垂直面206に均等に線接触させることが比較的容易に行えるので、より好ましい。ブレード242の板状体202への押し付け力は好ましくは0.1〜2N/mm、より好ましくは0.2〜1N/mmとする。この範囲より小さいと塗布液を十分除去できず、逆に大きいとブレード242の摩耗が促進されて耐久性が減じる。
【0050】
また清掃時における第2の清掃装置300の押さえユニット318の予備塗布面204に対する押し付け力は、好ましくは0.1〜2N/mm、より好ましくは0.2〜1N/mmにする。この範囲より小さいと塗布液が乾燥した膜を拭取り除去できず、この範囲より大きいと布材320が摩耗して摩耗粉が予備塗布面204に付着するという不都合がある。押さえユニットは布材320を全幅にわたって均等に予備塗布面204に押し付けられるように、ゴムロールのほか、スポンジやゲル材をロール化したものであってもよい。ゴムロールである場合は、厚さ1〜10mm、ゴム硬度10〜70°であることが好ましく、ゴム材質としては洗浄液に対して耐性を有するシリコンゴム、エチレンプロピレンゴム、パーフルオロゴム、ブチルゴム等が好ましく用いられる。
【0051】
次に本発明の予備塗布装置200を備えたスリットコータ1での塗布方法について図1を見ながら詳述する。
【0052】
まず準備作業として、タンク64〜スリットノズル20まで塗布液66はすでに充満されており、タンク64以降のスリットノズル20までの残留空気を排出する作業も既に終了している。この時の塗布液供給装置40の状態は、シリンジ52に塗布液66が充填、吸引バルブ44は閉、供給バルブ42は開、そしてピストン54は最下端の位置にあり、いつでも塗布液66をスリットノズル20に供給できるようになっている。さらに板状体202の予備塗布面204の清掃も、同じく準備作業としてすでに完了している。
【0053】
つづいてスリットコータ1の動作開始信号が操作盤102から制御装置100に伝えられると、門型ガントリー10は予備塗布装置200の板状体202の方に移動し、予備塗布面204の開始エッジ208上部にあるスタンバイ位置(図1の破線で示す位置)にスリットノズル20を配置させて停止する。つづいてスリットノズル20を下降させ、スリットノズル20の吐出口面36と予備塗布面204との間のすきまが第1クリアランスC1になる位置で停止させる。
【0054】
次に、ステージ6の表面に図示しないリフトピンが上昇し、図示しないローダから基板Aがリフトピン上部に載置される。そしてリフトピンを下降させて基板Aをステージ6上に載置し、同時に吸着保持する。基板Aがステージ6に吸着保持完了した段階で、図示しない厚さセンサーによって基板Aの厚さが測定される。
【0055】
これと並行して、上記に詳細を述べた予備塗布方法によって、スリットノズル20から予備塗布面204に塗布液を予備塗布する。予備塗布面204での予備塗布が終了したら、門型ガントリー10をX方向にステージ6の方に向かって移動させ、スリットノズル20を基板Aの塗布開始位置の真上で停止させる。スリットノズル20が基板Aの塗布開始位置に達してから、上記の予備塗布方法に記載した第1の清掃装置240と第2の清掃装置300を用いた清掃方法で、予備塗布面204に予備塗布された塗布液の除去、洗浄を行う。
【0056】
一方基板Aの塗布開始位置の直上にあるスリットノズル20については、測定した基板Aの厚さデータを用い、上下昇降ユニット70を駆動してスリットノズル20を下降させ、スリットノズル20の吐出口面36を基板Aからあらかじめ与えたクリアランス分離れた位置まで近接させる。続いて、シリンジポンプ50のピストン54を所定速度で上昇させ、スリットノズル20から塗布液66を吐出して吐出口面36と基板Aとの間に液だまりである塗布ビードBcを形成するとともに、門型ガントリー10を所定速度でX方向に移動開始し、塗布液66の基板Aへの塗布を始めて、塗布膜Cを形成する。基板Aの塗布終了部がスリットノズル20の吐出口34の位置にきたらシリンジポンプ50のピストン54を停止させて塗布液66の供給を停止し、つづいて上下昇降ユニット70を駆動して、スリットノズル20を上昇させる。これによって基板Aとスリットノズル20の間に形成された塗布ビードBcが断ち切られ、塗布が終了する。塗布終了後も門型ガントリー10は動きつづけ、終点位置にきたら一旦停止し、今度は原点位置に向かって逆方向に門型ガントリー10を移動させる。そしてスリットノズル20の吐出口34が、板状体202の予備塗布面204の開始エッジ208の上方に来たら停止させる。続いて基板Aの吸着を解除し、リフトピンを上昇させて基板Aを持ち上げる。この時図示されないアンローダによって基板Aの下面が保持され、次の工程に基板Aを搬送する。
【0057】
これと並行して、供給バルブ42を閉、吸引バルブ44は開としてから、ピストン54を一定速度で下降させ、タンク64の塗布液66をシリンジ52に充填する。充填完了後、ピストン54を停止させ、吸引バルブ44を閉、供給バルブ42を開として、次の基板Aが来るのを待ち、同じ動作をくりかえす。
【0058】
以上の本発明が適用できる塗布液としては、粘度が1〜100mPaS、より望ましくは1〜50mPaSであり、ニュートニアンであることが塗布性から好ましいが、チキソ性を有する塗布液にも適用できる。とりわけ溶剤に揮発性の高いもの、たとえばPGMEA、酢酸ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン等を使用している塗布液を塗布するときに有効である。具体的に適用できる塗布液の例としては、上記にあげたカラーフィルター用のブラックマトリックス、RGB色画素形成用塗布液の他、レジスト液、オーバーコート材、柱形成材料、TFTアレイ基板用のポジレジスト等がある。基板である被塗布部材としてはガラスの他にアルミ等の金属板、セラミック板、シリコンウェハー等を用いてもよい。さらに塗布速度は好ましくは2〜400mm/s、より好ましくは50〜200mm/s、スリットノズル20のスリット間隙は50〜200μm、より好ましくは80〜120μm、塗布厚さはウェット状態で好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜20μmである。
なお本実施態様例では、定容量間欠供給型ポンプの例としてシリンジポンプを示したが、これに限定されない。間欠的に定容量供給が可能なポンプであれば、ベロフラムポンプ、ダイヤフラムポンプ、チュービングポンプ、ギアポンプ等、いかなるものであってもよい。
【実施例】
【0059】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。
1100×1300mmで厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板を洗浄装置に投入した。ウェット洗浄によって基板上のパーティクルを除去後、図1のスリットコータ1でブラックマトリックス材を10μm基板全面に塗布した。ブラックマトリックス材には、遮光材にカーボンブラック、バインダーにアクリル樹脂、溶剤にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を使用し、さらに感光剤を添加して、固形分濃度15%、粘度4mPasに調整したペーストを用いた。この時のスリットノズル20は吐出口の間隙が90μmで、長さが1100mm、吐出口面36の塗布方向の長さ=0.5mm、吐出口面36と斜面38A、Bのなす角度が45度のものを使用し、スリットノズル20と基板間のすきまであるクリアランスは150μm、塗布速度は100mm/sで、塗布のタクトタイムは60秒であった。塗布前には毎回必ず予備塗布装置200でスリットノズル20による予備塗布を行って、スリットノズル20の初期化を行った。予備塗布装置200で、板状体202はステンレス製で長手方向長さが1200mm、長手方向に直交する予備塗布方向の長さは50mm、厚さ30mmであった。予備塗布面204、垂直面206A、Bには表面処理は行わず、表面粗度を最大高さRzで0.1μmの鏡面にした。また予備塗布による初期化を行う時は、板状体202の予備塗布面204とスリットノズル20の吐出口面36とのすきまは、第1クリアランスC1を80μm、第2クリアランスC2を150μmとし、初期出し量Q1=100μl、待機時間T1=0.5秒、待機時間T2=0.05秒、予備塗布速度は100mm/S、予備塗布厚さはウェットで12μm、予備塗布長さは50mmにした。また、予備塗布終了時に行うシリンジポンプ50の減速は終了エッジ210からS1=5mm手前の地点から開始した。予備塗布後の塗布液の除去、洗浄を行う第1の清掃装置240のブレード242にはエチレンプロピレンゴム製の厚さ5mmで予備塗布方向(ブレード242の長手方向)の長さ50mm、垂直面206A、Bに沿う方向の長さを25mmのものを用いた。ブレード242の予備塗布面204、垂直面206A、Bとの接触部分は、線接触するようにエッジを形成した。このブレード242が予備塗布面204と10Nの線圧で接触するようにし、100mm/sで塗布幅方向に摺動することで、予備塗布面204の清掃を行った。
【0060】
また第2の清掃装置300については、布材320には幅Lc=60mmで、PET糸の編物を使用した。また洗浄液には塗布液の主溶剤であるPGMEAを用いた。洗浄液を布材320に付着させる量は1ccにした。さらに押さえユニット318は外径が50mm、長さが70mmの円筒形で、ゴム厚さ3mm、ゴム硬度50°のエチレンプロピレンゴム製のゴムロールとした。押さえユニット318を予備塗布面204に押し付ける時の力は、全幅(50mm)で20Nにし、清掃時の移動速度は100mm/sにした。
【0061】
そして第1の清掃装置240による清掃は、予備塗布面204に予備塗布を行うごとに行い、第2の清掃装置300による清掃は、予備塗布30回実施ごとに1回だけ第1の清掃装置240の清掃後に行った。
【0062】
以上のブラックマトリックス塗布工程で塗布された基板を、30秒で65Paに到達する真空乾燥を60秒行ってから、100℃のホットプレートで10分間さらに乾燥した。ついで露光・現像・剥離を行った後、260℃のホットプレートで30分加熱して、キュアを行い、基板の幅方向にピッチが254μm、基板の長手方向にピッチが85μm、線幅が20μm、RGB画素数が1600(基板長手方向)×1200(基板幅方向)、対角の長さが20インチ(基板長手方向に406mm、基板幅方向に305mm)となる格子形状で、厚さが1μmとなるブラックマトリックス膜を、基板内の9箇所(9面取)に作成した。
【0063】
次にウェット洗浄後、R色用塗布液を厚さ20μm、スリットノズル20と基板との間のクリアランス150μm、門型ガントリー移動速度100mm/sにて塗布した。R色用塗布液はアクリル樹脂をバインダー、PGMEAを溶媒、ピグメントレッド177を顔料にして固形分濃度12%で混合し、さらに粘度を5mPaSに調整した感光性のものであった。塗布した基板は、30秒で65Paに到達する真空乾燥を60秒行ってから、90℃のホットプレートで10分間さらに乾燥した。ついで露光・現像・剥離を行って、R画素部にのみ厚さ2μmのR色塗膜を残し、260℃のホットプレートで30分加熱して、キュアを行なった。つづいてブラックマトリックス、R色の塗膜を形成した基板に、G色用塗布液を厚さ20μm、スリットノズル20と基板との間のクリアランス140μm、門型ガントリー移動速度100mm/sにて塗布後、30秒で65Paに到達する真空乾燥を60秒行ってから、100℃のホットプレートで10分間さらに乾燥した。ついで露光・現像・剥離を行って、G色画素部にのみ厚さ2μmのG色塗膜を残し、260度のホットプレートで30分加熱して、キュアを行なった。
【0064】
さらにブラックマトリックス、R色、G色の塗膜を形成した基板に、B色用塗布液を厚さ20μm、スリットノズル20と基板との間のクリアランス120μm、門型ガントリー移動速度100mm/sにて塗布し、30秒で65Paに到達する真空乾燥を60秒行ってから、100℃のホットプレートで10分間さらに乾燥した。ついで露光・現像・剥離を行って、B色画素部にのみ厚さ2μmのB色塗膜を残し、260℃のホットプレートで30分加熱して、キュアを行なった。なお、G色用塗布液はR色用塗布液で顔料をピグメントグリーン36にして固形分濃度13%で粘度を4mPaSに調整したもの、B色用塗布液にはR色用塗布液で顔料をピグメントブルー15にして固形分濃度14%で粘度を4mPaSに調整したものであった。R、G、B色塗布液の塗布はいずれも、ブラックマトリックス塗布工程と同じ形状のスリットノズル20と予備塗布装置200を用い、特に予備塗布装置200については同じ条件で予備塗布を行って、スリットノズル20の初期化を行った。さらに、R、G、B色塗布工程とも、ブラックマトリックス塗布工程と同じく、第1の清掃装置240と第2の清掃装置300を用いて同じ条件にて予備塗布面204の清掃を行った。R、G、B色塗布工程でも本発明の手段を用いてスリットノズル20の初期化を塗布前に各基板ごとに行ったので、塗布膜厚の再現性、特に塗布開始部の再現性が高く、膜厚精度が端部10mmを除いて±3%以下の均一厚さの塗布膜を安定して形成できた。また、塗布開始部でのパーティクルの付着や、パーティクル起因のすじ欠点は皆無であった。
【0065】
以上ブラックマトリックスにRGB色を着色したものに、柱材とオーバーコート材を塗布後、最後にITOをスパッタリングで付着させた。この製造方法にて、1000枚のカラーフィルターを作成した。得られたカラーフィルターは、塗布むらがなく、色度も基板全面にわたって均一で、品質的に申し分ないものであった。
【0066】
さらに、このカラーフィルターをTFTアレイを形成した基板と重ね合わせ、オーブン中で加圧しながら160℃で90分間加熱して、シール剤を硬化させた。このセルに液晶注入を行った後、紫外線硬化樹脂により液晶注入口を封口した。次に、偏光板をセルの2枚のガラス基板の外側に貼り付け、さらに、得られたセルをモジュール化して、液晶表示装置を完成させた。以上のようにして1000枚の液晶表示装置を作成したが、得られた液晶表示装置はいずれも混色やすじ状の欠点がなく、色度も基板全面に渡って、均一で品質的に申し分ないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る予備塗布装置200を含むスリットコータ1の概略正面図である。
【図2】予備塗布装置200のの拡大概略正面図である。
【図3】第1の清掃装置240の概略部分側面図である。
【図4】第2の清掃装置300の概略部分側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 スリットコータ
2 基台
4 ガイドレール
6 ステージ
10 門型ガントリー
20 スリットノズル(塗布器)
22 フロントリップ
24 リアリップ
26 マニホールド
28 スリット
32 シム
34 吐出口
36 吐出口面
38A、B リップ斜面
40 塗布液供給装置
42 供給バルブ
44 吸引バルブ
46 フィルター
50 シリンジポンプ
52 シリンジ
54 ピストン
56 本体
60 供給ホース
62 吸引ホース
64 タンク
66 塗布液
68 圧空源
70 上下昇降ユニット
72 モータ
74 ガイド
76 ボールネジ
78 昇降台
80 吊り下げ保持台
100 制御装置
102 操作盤
200 予備塗布装置
202 板状体
204 予備塗布面
206A、B 垂直面
208 開始エッジ
210 終了エッジ
212 排出管
214 配管
216 ブラケット
220 本体
222 廃液
228 固定台
230 トレイ
232 レール
234 レール
236 予備塗布膜
240 第1の清掃装置
242 ブレード
244 保持体
246 エアーシリンダー
250 テーブル
252 アーム
254 回転機
300 第2の清掃装置
302 テーブル
304 回転機
306 アーム
308 エアーシリンダー
310 清掃ユニット
312 ベース
314 巻出ユニット
316 巻取ユニット
318 押さえユニット
320 布材
322 洗浄ノズル
324 原反
326 柱材A
328 柱材B
330 柱材C
332 巻出軸
334 巻取軸
A 基板(被塗布部材)
Bc 塗布ビード
C 塗布膜
D 部分(布材320の洗浄液が付着する部分)
Lc 布材320の幅
Lp 予備塗布面204の幅
P0 待機位置
P1 摺動開始位置
P2 摺動終了位置
P3 移動終了位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を吐出するために一方向に伸びる吐出口を有する塗布器から平面を有するプレートに向かって塗布液を吐出して予備塗布を行い、引き続いて被塗布部材に塗布を行う塗布方法において、前記予備塗布終了後にプレートに2段の洗浄を行って、プレートに予備塗布された塗布液の除去を行い、第2段の洗浄は第1段の洗浄を所定回数行うごとに実施することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記第1段の洗浄はプレートの予備塗布される面とそれに隣接する面に同時に線接触するブレードをプレートの長手方向に摺動させて行い、第2段の洗浄はプレートの予備塗布される面に、塗布液の溶剤を含有する吸収体を接触させて行うことを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
塗布液を吐出するために一方向に伸びる吐出口を有する塗布器と、塗布器から塗布液が平面を有するプレート上に吐出されて予備塗布がなされる予備塗布装置と、被塗布部材に塗布膜の形成がなされる本塗布装置と、を備えた塗布装置において、予備塗布終了後にプレートに予備塗布された塗布液の除去を行う2段の洗浄手段と、第1段の洗浄手段を所定回数行うごとに第2段の洗浄手段を作動させる制御装置をさらに備えることを特徴とする塗布装置
【請求項4】
第1段の洗浄手段は前記プレートの予備塗布される面とそれに隣接する面に接触し、かつプレートの長手方向に摺動するブレードであり、第2段の洗浄手段は、前記プレートの予備塗布される面に接触し、かつプレートの長手方向に走行する塗布液の溶剤を含有する吸収体であることを特長とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のいずれかの塗布方法を用いて液晶ディスプレイ用部材を製造することを特徴とする液晶ディスプレイ用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−75807(P2010−75807A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245425(P2008−245425)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】