説明

塗布組成物、親水性部材及びその製造方法

【課題】防汚性、防曇性に優れ、良好な耐摩擦性を有する親水膜を形成するのに用いられる塗布組成物を提供すること。また、該塗布組成物により形成された親水膜を備えた、防汚性、防曇性及びその持続性に優れた表面を有する親水性部材を提供すること。
【解決手段】(A)特定熱分解性ポリマー(1)又は特定熱分解性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の基材表面に防汚性、防曇性に優れ、且つ、より良好な耐摩擦性を有する親水膜を形成するのに有用な塗布組成物、及び、該塗布組成物による親水膜を備えた防汚性、防曇性表面を有する親水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。
また、近年、モバイルの普及に伴い、ディスプレイが屋外で使用されることが多くなってきたが、外光が入射されるような環境下で使用されると、この入射光はディスプレイ表面において正反射され、反射光が表示光と混合して表示画像が見にくくなるなどの問題を引き起こす。このため、ディスプレイ表面に反射防止光学部材を配置することがよく行われている。
このような反射防止光学部材としては、例えば、透明基材の表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層したもの、透明基材の表面に無機や有機フッ化化合物などの低屈折率層を単層で形成したもの、或いは、透明プラスチックフィルム基材の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させるものなどが知られている。これら反射防止光学部材表面も、前述の光学部材と同様に、人が使用することによって、指紋や皮脂などの汚れが付着しやすいが、汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れがより目立つという問題に加え、反射防止膜の表面には通常、微細な凹凸があり、汚れの除去が困難であるという問題もあった。
【0003】
固体部材の表面に汚れを着き難くしたり、付着した汚れを取りやすくした性能を持つ汚れ防止機能を表面に形成する技術が種々提案されている。特に反射防止部材と防汚性部材との組合わせとしては、例えば、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜と、有機ケイ素置換基を含む化合物で処理してなる防汚性、耐摩擦性材料(例えば、特許文献1参照。)、基材表面に末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルター(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。また、ポリフルオロアルキル基を含むシラン化合物をはじめとするシラン化合物を含有する反射防止膜(例えば、特許文献3参照。)や、二酸化ケイ素を主とする光学薄膜とパーフルオロアルキルアクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体との組合せ(例えば、特許文献4参照。)が、それぞれ提案されている。
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、フッ素やケイ素などの表面エネルギーの低い材料による表面処理は経時的な防汚性能の低下が懸念され、このため、防汚性と耐久性の優れた防汚性部材の開発が望まれている。
【0004】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基材の表面が親水化されると、付着水滴が基材表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0005】
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)が、この塗膜はある程度の親水性を有するものの、基材との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0006】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基材表面に光触媒含有層形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、良好な耐摩耗性を有する防汚性部材が求められている。
【0007】
上記課題を達成するために、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の特性に着眼し、親水性ポリマーとアルコキシドとを加水分解、縮重合することにより架橋構造を備えた親水性表面が優れた防曇性、防汚性を示し、且つ、良好な耐摩耗性を有することを見出されている(特許文献6参照)。このような架橋構造を有する親水性表面層は反応性基を末端に有する特定の親水性ポリマーと、架橋剤とを組合せることにより容易に得られる。
【特許文献1】特開昭64−86101号公報
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【特許文献5】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献6】特開2002−361800号公報
【非特許文献1】新聞“化学工業日報”1995年1月30日付け記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、各種の基材表面に防汚性、防曇性に優れ、且つ、より良好な耐摩擦性を有する親水膜を形成するのに用いられる塗布組成物を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、適切な支持体表面に該塗布組成物により形成された親水膜を備えた、防汚性、防曇性及びその持続性に優れた表面を有する親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の特性に着眼し研究を進めた結果、本発明者らは、熱分解性ポリマー、または熱分解性ポリマーを熱分解した親水性ポリマーとアルコキシドとを加水分解、縮重合することにより形成された架橋構造を備えた表面層により上記目的を達成し得ること、さらには、このような架橋構造を有する表面層が架橋可能な部分構造を末端に有する特定の熱分解性ポリマー、または架橋可能な部分構造を側鎖に有する特定の熱分解性ポリマーと、架橋剤とを組合せることにより容易に得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の請求項1に係る塗布組成物は、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、又は、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物である。
【0010】
【化1】

【0011】
式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る親水性部材は、支持体上に、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、または、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物を塗布し、加熱することで熱分解性基を分解させ、親水性基とすることにより形成された親水性膜を有することを特徴とする。この親水性膜は、前記塗布組成物を調製し、被膜することにより形成された架橋構造を有する。
【0013】
【化2】

【0014】
式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0015】
本発明の請求項1に係る塗布組成物或いは請求項3に係る親水性部材の形成に用いられる塗布組成物には、さらに、(C)触媒を含むことが好ましく、その(C)触媒としては、前記(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物(以後、適宜〔特定アルコキシド〕とも呼ぶ)と(A)熱分解性ポリマー(1)または熱分解性ポリマー(2)との反応を促進させる化合物が挙げられる。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る製造方法は、支持体上に、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、又は、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物を塗布し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有する親水性部材を作成することを特徴とする。
【0017】
【化3】

【0018】
式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0019】
さらに、別の塗布組成物として、本発明の請求項6に係る塗布組成物は、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、又は、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)を加熱することにより、熱分解性基が親水性基に変化した(A’)親水性ポリマー(1)または親水性ポリマー(2)、及び(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物である。
【0020】
【化4】

【0021】
式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0022】
また、本発明の請求項8に係る親水性部材は、支持体上に、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、または、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)を加熱することにより、熱分解性基が親水性基に変化した(A’)親水性ポリマー(1)または親水性ポリマー(2)、及び(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物を塗布し、加熱、乾燥することにより形成された親水膜を有することを特徴とする。この親水性膜は、前記塗布組成物を調製し、被膜することにより形成された架橋構造を有する。
【0023】
【化5】

【0024】
式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0025】
本発明の請求項6に係る塗布組成物或いは請求項8に係る親水性部材の形成に用いられる塗布組成物には、さらに、(C)触媒を含むことが好ましく、その(C)触媒としては、前記(B)特定アルコキシドと(A)熱分解性ポリマー(1)または熱分解性ポリマー(2)との反応を促進させる化合物が挙げられる。
【0026】
また、本発明の請求項10に係る製造方法は、支持体上に、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、または、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)を加熱することにより、熱分解性基を親水性基に変化させた(A’)親水性ポリマー(1)または親水性ポリマー(2)、及び(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物を塗布し、加熱、乾燥することにより形成された親水膜を有する親水性部材を作成することを特徴とする。
【0027】
【化6】

【0028】
式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0029】
本発明の原理は以下のように推測される。
側鎖及びさらに所望により主鎖末端にもシランカップリング基を有するポリマーと、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有する被膜は、金属アルコキシドの加水分解、縮重合により、高密度の架橋構造を有する有機無機複合体被膜が形成されているため、高強度の被膜となる。具体的には、(A)熱分解性ポリマーを適当な溶媒に溶解させ、攪拌することで、系中で加水分解・重縮合が進行し、ゾル状の塗布組成物が得られ、それを支持体(基材)上に被膜し、乾燥することにより基材表面上に、(B)特定アルコキシドとそれと反応しうる官能基が反応して形成される架橋構造を有する有機無機複合体皮膜が形成される。さらに、(B)特定アルコキシドを含むことで、系中における加水分解・重縮合において、シランカップリング基と加水分解性化合物中の重合性の官能基によって、架橋を形成する反応サイトが増加し、より高密度で強固な架橋構造を有する有機無機複合体皮膜が形成されるため、得られる被膜はさらに高強度となり、優れた耐磨耗性が発現するものと考えられる。
【0030】
また本発明は、(A)熱分解性ポリマーを熱分解することにより親水性ポリマーとし、上記方法により支持体表面上に親水性層を備えた親水性部材を得ることができる。具体的には、熱分解性基としてスルホン酸エステル基を選択した。スルホン酸エステル基は100〜200℃程度で熱分解し、スルホン酸になることが知られており、この現象を利用することで親水性を発現する。より具体的には、親水性部材を作成する方法として2種挙げられる。まず請求項1〜5に係る方法として、(A)熱分解性ポリマー(1)または熱分解性ポリマー(2)、及び(B)特定アルコキシド、所望により(C)触媒を溶媒中で均一に混合し、加水分解を行い、ゾル状の塗布組成物を得る。この塗布組成物を基材上に塗布し、加熱処理を行うことで熱分解性基を親水性基にし、基材上に親水性層を形成し表面親水性部材を得ることができる。
次に請求項6〜10に係る方法として、(A)熱分解性ポリマー(1)または熱分解性ポリマー(2)を溶媒中で均一にし、加熱攪拌することで熱分解性基を親水性基にした(A’)親水性ポリマー(1)または親水性ポリマー(2)の溶液を得る。放冷後、その溶液に残りの(B)特定アルコキシド、所望により(C)触媒を加え、加水分解を行い、ゾル状の塗布組成物を得る。この塗布組成物を基材上に塗布し、加熱乾燥することで基材上に親水性層を形成した表面親水性部材を得ることができる。これらの方法は特にどちらが良いということはなく、自由に親水性部材の作成が可能である。以上、このようにして得られた親水性部材は高強度、且つ高親水性であると考えられる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、各種の基材表面に防汚性、防曇性に優れ、且つ、より良好な耐摩擦性を有する親水膜を形成するのに用いられる塗布組成物、及び、該親水膜を有する防汚性、防曇性を有する親水性部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の塗布組成物は、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、又は、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有することを特徴とする。
【0033】
【化7】

【0034】
式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
以下に、本発明の塗布組成物に含まれる各成分について説明する。
【0035】
〔(A)一般式(I−a)および(I−b)で表される構造単位を有する熱分解性ポリマー〕
本発明で使用することのできる(A)熱分解性ポリマー(1)は下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する。
【0036】
【化8】

【0037】
式(I−a)、及び(I−b)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。mはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0038】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0039】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0040】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0041】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0042】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0043】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0044】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
〜Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0045】
上記のうちRとして特に好ましいものは、ハロゲン、シアノ、ニトロ等の電子吸引基で置換されたアリール基、ハロゲン、シアノ、ニトロ等の電子吸引基で置換されたアルキル基、2級もしくは3級の分岐状アルキル基、環状アルキル基、及び環状イミドである。
これらのうち、熱分解における温度条件などの観点から、S原子と結合している炭素原子は、2級炭素または3級炭素であることがより好ましく、2級炭素であることが特に好ましい。
【0046】
、及びLは単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子又はS原子とが連結基なしに直接結合していることを表し、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0047】
【化9】

【0048】
また、Lはポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、Lがポリマーまたはオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0049】
x及びyは(A)熱分解性ポリマー(1)における、一般式(I−a)で表される構造単位と一般式(I−b)で表される構造単位の重合モル比を表す。x及びyは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。重合モル比x:yは、99:1〜10:90の範囲であることが好ましく、99:1〜50:50の範囲であることがさらに好ましい。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である(I−a)及び(I−b)は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよく、その場合、一般式(I−a)に相当する構造単位と一般式(I−b)に相当する構造単位の重合モル比が上記範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明に係る(A)熱分解性ポリマー(2)は下記一般式(II−b)で表される構造単位を含むポリマー鎖の末端に、一般式(II−a)で表される架橋可能な部分構造を有する部分構造が結合してなるものである。この架橋可能な部分構造は、金属アルコキシドと加水分解・縮重合することにより架橋構造を形成する。
【0051】
【化10】

【0052】
式(II−a)および(II−b)中、R10〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは2価の有機連結基を表し、Lは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。mはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。
【0053】
前記一般式(II−b)におけるR10〜R15で表される炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
10〜R15ははさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
10〜R14は、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0054】
上記のうちR15として特に好ましいものは、ハロゲン、シアノ、ニトロ等の電子吸引基で置換されたアリール基、ハロゲン、シアノ、ニトロ等の電子吸引基で置換されたアルキル基、2級もしくは3級の分岐上アルキル基、環状アルキル基、及び環状イミドである。
これらのうち、熱分解における温度条件などの観点から、S原子と結合している炭素原子は、2級炭素または3級炭素であることがより好ましく、2級炭素であることが特に好ましい。
【0055】
また、Lは、2価の有機連結基を表し、Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子又はS原子とが連結基なしに直接結合していることを表し、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては前記L及びLの場合に導入可能な構造単位として挙げたもの同様に挙げることができる。
【0056】
(A)熱分解性ポリマーの分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0057】
以下に、本発明に好適に用い得る熱分解性ポリマーを説明するにあたり、下記一般式(I−a)で表される構造単位、及び一般式(I−b)で表される構造単位を有する(A)熱分解性ポリマー(1)の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−30)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0058】
【化11】

【0059】
式(I−a)、及び(I−b)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。mはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
次に、本発明において好適に用い得る熱分解性ポリマーのうち、下記一般式(II−b)で表される構造単位を含むポリマー鎖の末端に、一般式(II−a)で表される架橋性基を有する(A)熱分解性ポリマー(2)の具体例〔例示化合物(II−1)〜(II−30)〕を、その質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
【化15】

【0065】
式(II−a)および(II−b)中、R10〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは2価の有機連結基を表し、Lは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。mはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。
【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
【化18】

【0069】
本発明の(A)熱分解性ポリマーを合成する前記各化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。(A)熱分解性ポリマー(1)の重合方法としては下記構造単位(I−a)及び(I−b)で表されるラジカル重合可能なモノマーをラジカル重合することで得られる。一方、(A)熱分解性ポリマー(2)の重合方法としては、下記構造単位(II−b)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記構造単位(II−a)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有する化合物、若しくは、ラジカル開始剤お用いてラジカル重合することで合成できる。即ち、後者においては、架橋可能な部分構造を有する化合物が連鎖移動能、若しくは、ラジカル開始能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端に架橋可能な部分構造が導入された熱分解性ポリマー(2)の如きポリマーを合成することができる。この反応様式は特に制限されるものではないが、ラジカル重合開始剤の存在下、或いは、高圧水銀灯の照射下において、バルク反応、溶液反応、懸濁反応などを行えばよい。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0070】
【化19】

【0071】
式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【0072】
また、上記熱分解性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0073】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0074】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0075】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0076】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0077】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0078】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、熱分解後の親水性膜としての機能が十分であり、(A)熱分解性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(A)熱分解性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0079】
本発明に係る(A)熱分解性ポリマーは、本発明の塗布組成物の不揮発性成分に対して、硬化性と親水性の観点から、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは15〜90質量%、最も好ましくは20〜85質量%の範囲で含有される。これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。ここで、不揮発性成分とは、揮発する溶媒を除いた成分をいう。
【0080】
〔(B)Si、Ti、Zi、Alから選択される元素のアルコキシド化合物〕
本発明で用いられる(B)特定アルコキシドであるSi、Ti、Zi、Alから選択される元素のアルコキシド化合物は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、(A)熱分解性ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な被膜を形成する。
(B)特定アルコキシドは、下記一般式(III)で表される化合物であることが好ましく、親水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記(A)熱分解性ポリマー、(B)一般式(III)で表される特定アルコキシドを混合して支持体表面に被覆し、加熱、乾燥する。
【0081】
【化20】

【0082】
一般式(III)中、R16は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R17はアルキル基又はアリール基を表し、YはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R16及びR17がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0083】
以下に、(B)一般式(III)で表される特定アルコキシドの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。YがSiの場合、即ち、特定アルコキシド中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0084】
YがAlである場合、即ち、特定アルコキシド中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
YがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
YがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらの中でも、YがSiであるアルコキシドが被膜性の観点から好ましい。
【0085】
本発明に係る(B)特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
(B)特定アルコキシドは、本発明の塗布組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用される。
特定アルコキシドは市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0086】
〔(C)触媒〕
本発明の塗布組成物においては、(A)熱分解性ポリマー、さらに(B)特定アルコキシドなどの架橋成分を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い塗布性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、このような(C)触媒を含有させることが好ましい。
【0087】
本発明で用いられる(C)触媒としては、前記(B)アルコキシド化合物を加水分解、重縮合し、(A)熱分解性ポリマーと結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、あるいは塩基性化合物を水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0088】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0089】
金属錯体からなるルイス酸触媒もまた好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ_ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0090】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0091】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0092】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1−アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンが特に好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0093】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0094】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0095】
本発明に係る(C)触媒は、本発明の塗布組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。また、(C)触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0096】
本発明の塗布組成物には、前記必須成分である(A)熱分解性ポリマー及び(B)特定アルコキシド、及び、所望により併用される(C)触媒に加え、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。以下、併用しうる成分について説明する。
〔界面活性剤〕
本発明においては、前記塗布組成物の被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0097】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0098】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0099】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0100】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の塗布組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
〔無機微粒子〕
本発明の塗布組成物には、形成される親水性膜の硬化被膜強度向上及び親水性向上のために無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。上記範囲であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、親水性に優れる膜を形成することができる。上述したような無機微粒子はコロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
【0102】
本発明に係る無機微粒子は、本発明の塗布組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲で使用される。また、無機微粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0104】
〔酸化防止剤〕
本発明の親水性部材の安定性向上のため、親水性層形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0105】
〔高分子化合物〕
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0106】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基材への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0107】
〔塗布組成物の調液〕
塗布組成物の調製は、(A)熱分解性ポリマー及び(B)特定アルコキシド、更に好ましくは(C)触媒をエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0108】
前記(A)熱分解性ポリマー及び(B)特定アルコキシドを含有する塗布組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はない。
【0109】
以上述べたように、本発明の塗布組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(塗布組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において塗布組成物の調製に適用することができる。
このような本発明の塗布組成物を含む溶液を、適切な支持体上に被膜し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。即ち、本発明の親水性部材は、支持体上に、前記本発明の塗布組成物を被膜し、加熱することで熱分解性基を分解させ、親水性基とするか、若しくは塗布組成物を加熱することで、熱分解性基を分解させ、親水性基とし、得られた親水性組成物を被膜、乾燥することにより形成された親水性膜を有するものである。
熱分解性基を分解するときの温度としては、分解性基の種類にもよるが、50〜250℃の温度範囲が望ましく、ポリマーの分解、溶剤の沸点の観点から、80〜200℃がより望ましい。さらに、親水性膜の形成において、塗布組成物を含む溶液を被膜した後の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0110】
〔基材〕
本発明の親水性部材の支持体として使用可能な基材としては、例えば、防汚及び/又は防曇効果を期待する透明な基材の場合には、その材質はガラス、または無機化合物層を含有したガラス等の無機基材や、透明プラスチック、または無機化合物層を含有した透明プラスチック層など可視光を透過しうる基材が好適に利用できる。
【0111】
無機基材の詳細について述べれば、通常のガラス板、樹脂層、気体層、真空層などを含む積層ガラス板、強化成分や着色剤などを含む各種のガラス板を挙げることができる。
無機化合物層を含有したガラス板としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属性酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板を挙げることができる。
【0112】
無機化合物層は、単層あるいは多層構成とすることができる。無機化合物層はその厚みによって、光透過性を維持させることもでき、また、反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層の形成方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0113】
また、プラスチックなどの有機基材のうち、透明プラスチック基材としては、可視光透過性を有する種々のプラスチック材料からなる基材を挙げることができる。特に、光学部材として使用される基材は、透明性、屈折率、分散性などの光学特性を考慮して選択され、使用目的により、種々の物性、例えば、耐衝撃性、可撓性など強度をはじめとする物理的特性や、耐熱性、耐候性、耐久性などを考慮して選択される。これらの観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロフィン等のセルロース系樹脂などを好ましく挙げることができる。これらは、使用目的に応じて、単独で用いられてもよく、或いは、2種以上を混合物、共重合体、積層体などの形態で組み合わせて用いることもできる。
【0114】
プラスチック基材として、ガラス板の説明において記載した無機化合物層をプラスチック板上に形成したものを用いることもできる。この場合、無機化合物層は反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層をプラスチック板上に形成する場合も、前述した無機基材におけるのと同様の手法で形成することができる。
【0115】
透明プラスチック基材に無機化合物層を形成する場合、両層の間には、ハードコート層を形成してもよい。ハードコート層を設けることにより、基材表面の硬度が向上すると共に、基材表面が平滑になるので、透明プラスチック基材と無機化合物層との密着性が向上し、耐引っ掻き強度の向上と、基材の屈曲に起因する無機化合物層へのクラックの発生を抑制することができる。このような基材を用いることで親水性部材の機械的強度を改善できる。ハードコート層の材質は、透明性、適度な強度、及び機械的強度を有するものであれば、特に限定されない。例えば、電離放射線や紫外線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂が使用でき、特に紫外線照射硬化型アクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、熱硬化性ポリシロキサン樹脂が好ましい。これらの樹脂の屈折率は、透明プラスチック基材の屈折率と同等、もしくはこれに近似していることがより好ましい。
【0116】
このようなハードコート層の被膜方法は、特に限定されず、均一に塗布されるのであれば任意の方法を採用することができる。また、ハードコート層の膜厚は3μm以上であれば十分な強度となるが、透明性、塗工精度、取り扱いの点から5〜7μmの範囲が好ましい。さらにハードコート層に平均粒子径0.01〜3μmの無機あるいは有機物粒子を混合分散させることによって、一般的にアンチグレアと呼ばれる光拡散性処理を施すことができる。これらの粒子は透明であれば特に限定されないが、低屈折率材料が好ましく、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが安定性、耐熱性等の点で特に好ましい。光拡散性処理は、ハードコート層の表面に凹凸を設けることによっても達成できる。
【0117】
このように、ガラス板やプラスチック板に無機化合物層を有するものを基材として用い、親水性表面を形成することにより、本発明の親水性部材を得ることができる。親水性部材は表面に親水性と耐久性に優れた親水性膜を有することより、支持体(基材)表面に優れた防汚性、特に油脂汚れに対する防汚性、防曇性のいずれか或いは双方を付与することができる。
本発明の親水性部材表面に適用可能な反射防止層は、前述の無機化合物層に限定されず、例えば、反射率、屈折率の異なる複数の薄層を積層することにより、反射防止効果を得る公知の反射防止層なども適宜用いることができ、その材料も無機化合物、有機化合物のいずれも使用することができる。特に、表面に反射防止膜としての無機化合物層が形成された基材は、反射防止膜が形成された側の表面に本発明に係る親水性ポリマー鎖を適用することにより、表面の防汚性及び/又は防曇性機能、さらに反射防止性に優れた本発明の防汚性及び/又は防曇性部材とすることができる。また、目的に応じて、前記構成を有する部材に、偏光板などの機能性光学部材などを、ラミネートに代表される貼り合わせ技術で貼り合わせることにより、本発明の親水性部材を用いて種々の機能や特性を有する反射防止・光学機能性部材を得ることもできる。
【0118】
これらの反射防止部材や反射防止・光学機能性部材を、粘着剤、接着剤などを用いて各種ディスプレイ(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなど)の表示装置の前画板のガラス板、プラスチック板、偏光板などに貼付することにより、この反射防止部材の表示装置への適用が可能となる。
【0119】
また、本発明の親水性部材は、前記した表示装置以外にも、防汚及び/又は防曇効果を要求される種々の用途への適用が可能である。なお、防汚及び/又は防曇性部材に透明性を必要としない基材に適用しようとする場合には、上記の透明基材に加えて、例えば、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体が、支持体基材としていずれも好適に利用できる。
【実施例】
【0120】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(熱分解性ポリマー(I−1)の合成)
500ml三口フラスコにスルホン酸エステルモノマー23.9g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル1.2g、及び1−メトキシ−2−プロパノール101.7gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル0.33gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。溶媒を留去後、得られた固体をヘキサンにて洗浄後、前記例示化合物(I−1)である熱分解性ポリマー(I−1)を得た。乾燥後の質量は21.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量8,500のポリマーであった。
(熱分解性ポリマー(II−1)の合成)
500ml三口フラスコにスルホン酸エステルモノマー20.6g、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン0.35g、及び1−メトキシ−2−プロパノール84.0gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル0.05gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。溶媒を留去後、得られた固体をヘキサンにて洗浄後、前記例示化合物(II−1)である熱分解性ポリマー(II−1)を得た。乾燥後の質量は19.9gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量9,000のポリマーであった。
以後、実施例にて使用した熱分解性ポリマーは上記のどちらかの手法により合成し、評価に使用した。
【0121】
〔塗布組成物(ゾルゲル液)の調液〕
<塗布組成物1>
・(A)熱分解性ポリマー(表1に記載の化合物) 25質量部
・(B)アルコキシド化合物(表1に記載の化合物) 75質量部
・蒸留水 68質量部
・エタノール 68質量部
・ジメチルスルホキシド 1008質量部
【0122】
<塗布組成物2>
・(A)熱分解性ポリマー(表1に記載の化合物) 22質量部
・(B)アルコキシド化合物(表1に記載の化合物) 67質量部
・(C)触媒(表1に記載の化合物) 11質量部
・蒸留水 68質量部
・エタノール 68質量部
・ジメチルスルホキシド 1008質量部
【0123】
〔表面親水性部材の作製〕
(作製方法1)
上記塗布組成物1に記載の成分を均一に混合し、20℃、2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の塗布組成物を得た。この塗布組成物を基材であるガラス板(遠藤科学製)に、乾燥後の塗布量が0.1g/mとなるように塗布し、150℃、30分加熱し、熱分解性基を親水性基にすることで、基材上に親水性層を形成し表面親水性部材を得た。
(作製方法2)
上記塗布組成物2に記載の成分のうち、(A)熱分解性ポリマー及びジメチルスルホキシドを均一に混合し、150℃、1時間撹拌して熱分解性基を親水性基にした組成物を得た。放冷後、その組成物に残りの成分を加え、20℃、2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状の塗布組成物を得た。この塗布組成物を基材であるガラス板(遠藤科学製)に、乾燥後の塗布量が0.1g/mとなるように塗布し、150℃、30分加熱することで基材上に親水性層を形成した表面親水性部材を得た。
実施例の詳細は評価結果ともに表1に示す。
【0124】
(比較例1)
前記実施例5において、本発明の熱分解性ポリマー(I−1)に代えて、下記構造を有する本発明の範囲外の比較親水性ポリマー(i)〔表1中に、「比較親水性ポリマー(i)」と記載〕を用いた他は、同様にして比較例1の表面親水性部材を得た。
(比較例2)
前記実施例5において、本発明の熱分解性ポリマー(I−1)に代えて、下記構造を有する本発明の範囲外の比較親水性ポリマー(ii)〔表1中に、「比較親水性ポリマー(ii)」と記載〕を用いた他は、同様にして比較例2の表面親水性部材を得た。
【0125】
(比較例3)
前記実施例で用いた支持体表面に、本発明に係る親水性膜に代えて、光触媒フィルム〔東洋陶器(株)製、ハイドロテクト〕を貼付して親水性表面を形成し、比較例3の表面親水性部材を得た。
【0126】
〔親水性部材の評価〕
〔表面自由エネルギー〕
親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角(協和界面科学(株)製、DropMaster500)で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
【0127】
〔透明性〕
本発明の親水性被膜を塗設した親水性部材は、窓ガラス等に使用する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。本発明の親水性被膜は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。
透明性は、分光光度計(日立分光光度計U3000)で可視光領域(400nm−800nm)の光透過率を測定し評価する。
【0128】
〔耐摩擦性の評価〕
得られた親水性部材表面を不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で200gの負荷をかけ250往復擦り、その前後の見た目の変化を目視により観察する。
○:擦り前後の表面に傷なし
△:1本程度傷あり
×:傷が多数存在
【0129】
〔引掻き強度〕
0.1mm径サファイア針に5gから始めて5gきざみに加重をかけて親水層表面を走査し、傷つきが発生した加重を評価した(新東科学株式会社製引っかき強度試験機Type18Sで測定)。加重が大きくても傷つきがないほうが耐久性良好といえる。
【0130】
〔防曇性の評価〕
上記で得られた親水性部材に、昼間、室内の蛍光灯下で、1分間水蒸気を当て、水蒸気から離した後、25℃、RH10%の環境下に配置し、前記と同様の照射条件の蛍光灯下において曇り具合及びその変化を下記基準により三段階で官能評価した。
○:曇りが観察されない
△:曇っているが、10秒以内に回復し、曇りが見られなくなる
×:曇っており、曇りが10秒経過しても回復しない
【0131】
〔防汚性の評価〕
上記で得られた親水性部材表面に油性インク(三菱鉛筆株式会社製油性マーカー)で線を書き、水を掛け続け、流れ落ちるかを三段階で官能評価した。
○:インクが1分以内に取れる
△:1分を経過した後インクが取れる
×:2分を超え10分間にわたり実施してもインクがとれない
各評価結果は下記表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
なお、前記表1に記載の比較親水性ポリマー(i)、(ii)及び(B)アルコキシ化合物の構造は以下に示すとおりである。
【0134】
【化21】

【0135】
表1に明らかなように、本発明の塗布組成物を用いて形成した親水性膜は、防汚性、防曇性、耐摩擦性ともに優れていた。比較親水性ポリマー(i)用いた親水膜(比較例1)は親水性が不足しているため防汚性、防曇性が見られなかった。比較例2は比較親水性ポリマー(ii)がシランカップリング基を有していないため、親水性だけでなく、耐摩擦性、引掻き強度ともに不十分であった。実施例1〜4と実施例5〜19との対比において、親水性膜の形成時に、触媒を添加することで耐摩擦性に一層の改良が見られることがわかる。また、作成方法による性能の違いは見られず、どちらの方法によっても親水性の高い部材を得ることができた。さらに、シランカップリング基が側鎖に付いている熱分解性ポリマーよりもシランカップリング基が末端に付いている熱分解性ポリマーを用いたほうが、より高親水性であることも明らかとなった。これは膜最表面でポリマー鎖が自由に動き回ることが可能であるためと推測される。他方、光触媒フイルムをガラス基材に貼った親水性部材(比較例3)は耐摩擦性、引掻き強度が低く、実用上問題のあるレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の親水性部材の応用可能な分野の一例を挙げれば、可視光を透過しうる基材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられる。
その他の適用可能な用途としては、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルム、家庭用電気製品のハウジングや部品や外装及び塗装、OA機器製品のハウジングや部品や外装及び塗装、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムなどが挙げられ、その応用範囲は広い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、又は、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物。
【化1】


式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【請求項2】
さらに、前記(A)熱分解性ポリマー(1)、または熱分解性ポリマー(2)と(B)アルコキシド化合物との反応を促進する(C)触媒を含有する請求項1に記載の塗布組成物。
【請求項3】
支持体上に、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、または、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物を塗布し、加熱することで熱分解性基を分解させ、親水性基とすることにより形成された親水性膜を有する親水性部材。
【化2】


式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【請求項4】
さらに、前記(A)熱分解性ポリマー(1)、または熱分解性ポリマー(2)と(B)アルコキシド化合物との反応を促進する(C)触媒を含有する請求項3に記載の親水性部材。
【請求項5】
支持体上に、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、または、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物を塗布し、加熱することで熱分解性基を分解させ、親水性基とすることにより形成された親水性膜を有する親水性部材の製造方法。
【化3】


式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【請求項6】
(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、又は、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)を加熱することにより、熱分解性基が親水性基に変化した(A’)親水性ポリマー(1)または親水性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物。
【化4】


式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【請求項7】
さらに、前記(A)熱分解性ポリマー(1)、または熱分解性ポリマー(2)を熱分解させた(A’)親水性ポリマー(1)、または親水性ポリマー(2)と(B)アルコキシド化合物との反応を促進する(C)触媒を含有する請求項6に記載の塗布組成物。
【請求項8】
支持体上に、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、または、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)を加熱することにより、熱分解性基が親水性基に変化した(A’)親水性ポリマー(1)または親水性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物を塗布し、加熱、乾燥することにより形成された親水膜を有することを特徴とする親水性部材。
【化5】


式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。
【請求項9】
さらに、前記(A)熱分解性ポリマー(1)、または熱分解性ポリマー(2)を熱分解させた(A’)親水性ポリマー(1)、または親水性ポリマー(2)と(B)アルコキシド化合物との反応を促進する(C)触媒を含有する請求項8に記載の親水性部材。
【請求項10】
支持体上に、(A)下記一般式(I−a)で表される構造単位と、一般式(I−b)で表される構造単位とを有する熱分解性ポリマー(1)、または、下記一般式(II−b)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−a)で表される官能基を有する熱分解性ポリマー(2)を加熱することにより、熱分解性基が親水性基に変化した(A’)親水性ポリマー(1)または親水性ポリマー(2)、及び、(B)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する塗布組成物を塗布し、加熱、乾燥することにより形成された親水膜を有することを特徴とする親水性部材の製造方法。
【化6】


式(I−a)、(I−b)、(II−a)および(II−b)中、R〜R15はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、Lは2価の有機連結基を表す。m及びmはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。x、yは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。

【公開番号】特開2008−74972(P2008−74972A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256211(P2006−256211)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】