説明

塗布膜除去方法及びその装置

【課題】塗布膜の除去精度の向上、塗布膜除去時間の短縮及び溶剤の使用量の削減が図れる塗布膜除去方法及び装置を提供すること。
【解決手段】溶剤吐出部及び不活性ガス吐出部により基板表面の端部から溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、塗布膜除去部を基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させ(除去工程:S−1)、濃度測定部により、排出路から排出される溶剤及び溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出し(濃度検出工程:S−2)、濃度測定部により検出された混合排液中の溶解物の有無を判別し(濃度判別工程:S−3)、濃度測定部による溶解物の濃度検出値に基づいて塗布膜の除去条件を変更設定する(除去条件変更工程:S−6)。溶解物の濃度判別工程において、混合排液中の上記溶解物の無が確認されるまで、塗布膜除去工程を続行し、溶解物の無が確認された後、変更設定された除去条件により、塗布膜の除去を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に塗布膜が形成された角形の基板に対して、基板の縁部の不要な塗布膜を除去する塗布膜除去方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウエハやLCD用ガラス基板等(以下にウエハ等という)の表面に例えばレジスト液を塗布し、ステッパー等の露光装置を用いて回路パターンを縮小してレジスト膜を露光し、露光後のウエハ表面に現像液を塗布して現像処理を行うフォトリソグラフィー技術が用いられている。
【0003】
上記露光処理工程においては、例えばステッパー(縮小投影露光装置)等の露光装置が用いられており、レチクル等のフォトマスクに光を照射し、フォトマスクに描画されている回路パターンの原図を縮小してウエハ上に転写している。
【0004】
ところで、このフォトマスクの製造工程においても、上記ウエハ等と同様にフォトリソグラフィー技術が用いられており、レジスト塗布工程、露光処理工程、現像処理工程という一連のプロセス工程を経ている。
【0005】
この種の製造プロセスにおいて、フォトマスクを作製する場合、角形のマスク基板にレジスト液を塗布し、フォトマスクを用いてそのレジスト膜を露光し、更に現像することによって所望のレジストパタ−ンを作製することが行われている。上記のような処理を行う場合、例えば、レジスト膜の形成方法として、角形のマスク基板(以下に基板という)を、例えばスピンチャック上に載置保持した状態で、スピンチャックを回転させ、例えばこの基板上面の中心部にレジスト液を滴下し、そのレジスト液を基板の回転力と遠心力とにより基板中心部から周縁部に向けて放射状に拡散させて塗布することが行われている。
【0006】
この塗布処理の際、塗布直後における膜厚は均一であっても、回転が停止して遠心力が働かなくなった後や時間が経つに従い、表面張力の影響で基板周縁部でレジスト液が盛り上がるように厚くなる。このように基板の周縁部に不均一な厚い膜が形成されていると、集積回路パターン等の現像時に周縁部のレジスト膜が完全には除去されずに残存することになり、その後の基板の搬送工程中にその残存したレジストが剥がれ、パーティクル発生の原因となる。
【0007】
そこで、従来では、基板表面にレジスト液等を塗布した後、基板のパターン形成領域の外側の縁部の不要な塗布膜を除去する処理が行われている。このような手法として、塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部により、角形の基板表面に形成された塗布膜の縁部に上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、この塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで複数回移動させることにより、上記基板表面の縁部の不要な塗布膜を除去する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
上記特許文献1記載の塗布膜を除去する手法においては、塗布膜の種類に応じて予め複数用意されたレシピ、例えば塗布膜の溶剤の種類、塗布膜の除去幅、塗布膜除去部の移動回数等に基づいて塗布膜の除去を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−261705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載のように、予め用意するレシピのうち塗布膜除去動作の回数を設定するためには、塗布膜除去の事前評価を行い、サンプル基板を用いて確認が必要となる。この塗布膜除去の事前評価は、塗布膜の種類や塗布膜の溶剤の種類等に応じて行う必要があり、実際の塗布膜の除去処理中における微細な条件変化の対応や除去処理後の除去状態の対応に懸念がある。
【0011】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、溶剤によって剥離された不要な塗布膜の溶解物の濃度を監視し、塗布膜の剥離状態(除去状態)を確認して、塗布膜の除去処理を行うことにより、塗布膜の除去精度の向上、塗布膜除去時間の短縮及び溶剤の使用量の削減を図れるようにした塗布膜除去方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、この発明の第1の塗布膜除去方法は、塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部により、角形の基板表面に形成された塗布膜の縁部に上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、この塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させることにより、上記基板表面の縁部の不要な塗布膜を除去する塗布膜除去方法において、 上記溶剤吐出部及び不活性ガス吐出部により上記基板表面の端部から上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、上記塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させる除去工程と、 上記排出路に接続される濃度測定部により、排出路から排出される上記溶剤及び溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度検出工程と、 上記濃度測定部により検出された上記混合排液中の上記溶解物の有無を判別する濃度判別工程と、 上記濃度測定部による上記溶解物の濃度検出値に基づいて上記塗布膜の除去条件を変更設定する工程と、を含み、 上記溶解物の濃度判別工程において、上記混合排液中の上記溶解物の無が確認されるまで、上記塗布膜除去工程を続行し、上記溶解物の無が確認された後、上記除去条件を変更設定する工程で変更設定された除去条件により、上記塗布膜除去工程を行う、ことを特徴とする。
【0013】
この場合、上記塗布膜の除去条件は、上記溶解物の濃度検出値に基づいて設定することができ、例えば上記溶剤の吐出量の変更又は上記塗布膜除去部の移動速度のいずれか又は双方を変更して、再度塗布膜除去工程を行うことができる。
【0014】
上記第1の塗布膜除去方法は、 塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部と、 上記溶剤供給源から上記溶剤吐出部に供給される溶剤の流量を調整する溶剤流量調整手段と、 上記塗布膜除去部を、表面に塗布膜が形成された角形の基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させる移動機構と、 上記排出管路に介設され、上記溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度測定部と、 上記濃度測定部からの検出信号に基づいて、塗布膜の除去条件を設定すると共に、上記溶剤流量調整手段及び上記移動機構を制御する制御部と、を具備し、 上記制御部は、上記濃度測定部により上記混合排液中の溶解物の無が確認されるまで、上記塗布膜除去部による塗布膜の除去動作を続行させ、上記溶解物の無が確認された後、上記塗布膜の除去条件に基づいて上記溶剤の吐出量又は上記塗布膜除去部の移動速度の少なくとも一方を変更する、ことを特徴とする塗布膜除去装置によって実施される。
【0015】
上記のように構成することにより、溶剤によって剥離された不要な塗布膜の溶解物の濃度を監視して、塗布膜の剥離状態(除去状態)を確認、すなわち塗布膜の溶解物の無を確認することができる。また、確認された溶解物の濃度検出値に基づいて、溶剤の吐出量又は塗布膜除去部の移動速度を変更して、再度塗布膜の除去処理を行うことができる。
【0016】
また、この発明の第2の塗布膜除去方法は、塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部により、角形の基板表面に形成された塗布膜の縁部に上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、この塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させることにより、上記基板表面の縁部の不要な塗布膜を除去する塗布膜除去方法において、 上記溶剤吐出部及び不活性ガス吐出部により上記基板表面の端部から上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、上記塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させる除去工程と、 上記排出路に接続される濃度測定部により、排出路から排出される上記溶剤及び溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度検出工程と、 上記濃度測定部により検出された上記混合排液中の上記溶解物の有無を判別する濃度判別工程と、 上記塗布膜除去部に搭載された撮像手段により、上記基板表面の縁部を撮像して、塗布膜の剥離状態、剥離幅及び塗布膜の残渣を画像処理する工程と、 上記濃度測定部による上記溶解物の濃度検出値、及び上記撮像手段による上記画像処理に基づいて、上記塗布膜の除去条件を変更設定する工程と、を含み、 上記溶解物の濃度判別工程において、上記混合排液中の上記溶解物の無が確認されるまで、上記塗布膜除去工程を続行し、上記溶解物の無が確認された後、上記塗布膜の除去条件を変更設定する工程で変更設定された除去条件により、上記塗布膜除去工程を行う、ことを特徴とする。
【0017】
この場合、上記塗布膜の除去条件は、上記溶解物の濃度検出値と上記画像処理に基づいて変更して設定することができ、例えば、上記溶解物の濃度検出値に基づいて、上記溶剤の吐出量及び上記塗布膜除去部の移動速度を変更、又は上記画像処理に基づいて、上記不活性ガスの吐出量、上記排出路の排気量、若しくは上記塗布膜除去部と上記基板表面との隙間のいずれかを変更して、再度塗布膜除去工程を行うことができる。
【0018】
上記第2の塗布膜除去方法は、 塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部と、 上記溶剤供給源から上記溶剤吐出部に供給される溶剤の流量を調整する溶剤流量調整手段と、 上記不活性ガス供給源から上記不活性ガス吐出部に供給される不活性ガスの流量を調整する不活性ガス流量調整手段と、 上記塗布膜除去部を、表面に塗布膜が形成された角形の基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させる移動機構と、 上記排出管路に介設され、上記溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度測定部と、 上記塗布膜除去部と上記基板表面との隙間を相対的に調整する高さ調整機構と、 上記塗布膜除去部に搭載され、上記基板表面の縁部を撮像して画像処理する撮像手段と、 上記濃度測定部からの検出信号に基づいて、塗布膜の除去条件を設定すると共に、上記溶剤流量調整手段、上記不活性ガス調整手段、上記移動機構、上記高さ調整機構及び上記撮像手段を制御する制御部と、を具備し、 上記制御部は、上記濃度測定部により上記混合排液中の溶解物の無が確認されるまで、上記塗布膜除去部による塗布膜の除去動作を続行させ、上記溶解物の無が確認された後、上記塗布膜の除去条件に基づいて上記溶剤の吐出量又は上記塗布膜除去部の移動速度の少なくとも一方を変更し、又は上記撮像手段の画像処理に基づいて上記不活性ガスの吐出量、上記排出路の排気量、若しくは上記塗布膜除去部と上記基板表面との隙間のいずれかを変更する、ことを特徴とする塗布膜除去装置によって実施される。
【0019】
上記のように構成することにより、溶剤によって剥離された不要な塗布膜の溶解物の濃度を監視して、塗布膜の剥離状態(除去状態)を確認することができる。また、撮像手段によって塗布膜除去後の塗布膜の剥離状態(除去状態)を確認することができる。更に、確認された溶解物の濃度検出値に基づいて、溶剤の吐出量又は塗布膜除去部の移動速度を変更し、撮像手段による画像処理に基づいて、不活性ガスの吐出量、排出路の排気量、若しくは塗布膜除去部と上記基板表面との隙間のいずれかを変更して、再度塗布膜の除去処理を行うことができる。
【0020】
この発明において、上記濃度測定部は、上記排出管路に接続する少なくとも対向する側壁に透明部を有する収容室と、この収容室の一方の透明部から他方の透明部に向かって可視光域を含んだ光を照射する発光体と、上記収容室内の上記混合排液を挟むように発光体に対して配置される受光体とを具備し、上記受光体は、上記発光体からの光のうち、上記可視光域の光を3分割して得られる、赤領域成分の光、緑領域成分の光、及び青領域成分の光のいずれか、又は上記複数の色領域の成分の光を受光する、色識別センサシステムを用いる方が好ましい。
【0021】
このように構成することにより、溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液中の溶解物の有無及び濃度を塗布膜の色成分に基づいて測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、溶剤によって剥離された不要な塗布膜の溶解物の濃度を監視して、塗布膜の剥離状態(除去状態)を確認、すなわち塗布膜の溶解物の無を確認することができ、確認された溶解物の濃度検出値に基づいて、溶剤の吐出量又は塗布膜除去部の移動速度を変更して、再度塗布膜の除去処理を行うことができるので、塗布膜の除去精度の向上が図れると共に、塗布膜除去時間の短縮及び溶剤の使用量の削減が図れる。
【0023】
また、撮像手段によって塗布膜除去後の塗布膜の剥離状態(除去状態)を確認し、撮像手段による画像処理に基づいて、不活性ガスの吐出量、排出路の排気量、若しくは塗布膜除去部と上記基板表面との隙間のいずれかを変更して、再度塗布膜の除去処理を行うことにより、除去回数及び除去幅の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明に係る塗布膜除去装置を適用した塗布膜形成システムの一例を示す概略平面図である。
【図2】上記塗布膜形成システムの概略斜視図である。
【図3】上記塗布膜除去装置の一例を示す概略断面図である。
【図4】上記塗布膜除去装置の概略平面図である。
【図5】上記塗布膜除去装置の要部を断面で示す概略構成図である。
【図6】この発明における制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】この発明における濃度測定部の測定原理を説明するための分光感度特性を示すグラフである。
【図8】この発明における塗布膜除去の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る塗布膜除去装置を塗布膜形成システムに適用する場合について説明する。
【0026】
塗布膜形成システムは、例えば5枚のマスク基板G(以下に基板Gという)が収納されたキャリアCを搬入出するためのキャリアブロックB1を備えており、このキャリアブロックB1は、キャリアCを載置するキャリア載置部1と受け渡し手段2とを備えている。
【0027】
基板Gは、例えば半導体マスクを形成するためのガラス基板であり、例えば一辺の長さが152±0.5mmの正方形であって、厚さが6.35mmの、一辺の長さが6インチサイズの角形のガラス基板が用いられる。受け渡し手段2はキャリアCから基板Gを取り出し、取り出した基板GをキャリアブロックB1の奥側に設けられている処理部B2へと受け渡すように、左右、前後に移動自在、昇降自在、鉛直軸回りに回転自在に構成されている。
【0028】
処理部B2の中央には主搬送手段3が設けられており、これを取り囲むように例えばキャリアブロックB1から奥を見て例えば右側には塗布ユニット4及び現像ユニット5、左側には洗浄ユニット6、手前側、奥側には加熱・冷却系のユニット等を多段に積み重ねた棚ユニットU1,U2が夫々配置されている。塗布ユニット4は、基板にレジスト液を塗布する処理を行うユニットであり、現像ユニット5は、露光後の基板に現像液を液盛りして所定時間そのままの状態にして現像処理を行うユニットであり、洗浄ユニット6はレジスト液を塗布する前に基板を洗浄するためのユニットである。
【0029】
上記棚ユニットU1,U2は複数のユニットが積み上げられて構成され、図2に示すように、塗布膜除去ユニット10や加熱ユニット7、冷却ユニット8のほか、基板Gの受け渡しユニット9等が上下に積層状に設けられている。上記主搬送手段3は、昇降自在、進退自在及び鉛直軸まわりに回転自在に構成され、棚ユニットU1,U2及び塗布ユニット4、現像ユニット5並びに洗浄ユニット6の間で基板Gを搬送する役割を持っている(図1参照)。なお、図2では便宜上受け渡し手段2及び主搬送手段3は図示されていない。
【0030】
上記処理部B2はインタ−フェイス部B3を介して露光装置B4と接続されている。インタ−フェイス部B3は受け渡し手段2Aを備えており、この受け渡し手段2Aは、例えば昇降自在、左右、前後に移動自在かつ鉛直軸まわりに回転自在に構成され、上記処理ブロックB2と露光装置B4との間で基板Gの受け渡しを行うようになっている。
【0031】
このような塗布膜形成システムにおける基板Gの処理の流れについて説明すると、まず外部からキャリアCがキャリア載置部1に搬入され、受け渡し手段2によりこのキャリアC内から基板Gが取り出される。基板Gは、受け渡し手段2から棚ユニットU1の受け渡しユニット9を介して主搬送手段3に受け渡され、所定のユニットに順次搬送される。例えば洗浄ユニット6にて所定の洗浄処理が行われ、熱処理ユニットの一つにて加熱乾燥が行われた後、冷却ユニット8にて所定の温度に調整され、塗布ユニット4にて塗布膜の成分が溶剤に溶解された塗布液例えばレジスト液の塗布処理が行われる。
【0032】
続いて基板Gは塗布膜除去ユニット10にて、基板Gの縁部に付着している不要なレジスト膜(塗布膜)が除去される。ここで基板Gの縁部とは、基板のパターン形成領域の外側の周縁領域及び基板端面をいう。
【0033】
不要なレジスト膜(塗布膜)が除去された後、基板Gは加熱ユニット7の一つにて、所定温度に加熱されてプリベーク処理が行われた後、冷却ユニット8の一つにて所定の温度に調整され、次いで主搬送手段3により棚ユニットU2の受け渡しユニット9を介してインターフェイス部B3の受け渡し手段2Aに受け渡され、この受け渡し手段2Aにより露光装置B4に搬送されて、所定の露光処理が行われる。この後基板Gは、インターフェイス部B3を介して処理部B2に搬送され、加熱ユニット7の一つにて所定の温度に加熱されて、ポストエクスポージャーベーク処理が行われる。次いで冷却ユニット8にて所定の温度まで冷却されて温度調整された後、現像ユニット5にて現像液が液盛りされ、所定の現像処理が行われる。こうして所定の回路パターンが形成された基板Gは主搬送手段3、キャリアブロックB1の受け渡し手段2を介して、例えば元のキャリアC内に戻される。
【0034】
次に、この発明に係る塗布膜除去装置を構成する塗布膜除去ユニット10について図3ないし図5を参照して説明する。塗布膜除去ユニット10は処理容器30を具備しており、処理容器30の側面には例えばシャッタ31aにより開閉自在に構成された基板Gの搬出入口31が形成され、この搬出入口31を介して処理容器30の内部に主搬送手段3がアクセスできるように構成されている。
【0035】
処理容器30の内部には、主搬送手段3との間で基板Gの受け渡しを行うための基板チャック32が、搬出入口31を介して主搬送手段3との間で基板Gの受け渡しを行うことができる位置に設けられている。基板チャック32は、例えば基板Gの4つ辺部を保持するための4個の保持部33を備えており、これら保持部33は保持アーム33aを介して昇降機構34及び回転機構35により、昇降自在及び略鉛直軸まわりに回転自在に構成されている。なお、基板チャック32の上面の4箇所には、基板Gを僅かな隙間例えば0.2mmをおいて支持するプロキシミティ(図示せず)が設けられている。
【0036】
また処理容器30の内部には、基板Gの側辺を保持する位置決めピン36を有する4本の載置台37が、基板チャック32と干渉しない位置に設けられている。これら載置台37は塗布膜の除去処理時に基板Gを保持するためのものであり、基板チャック32が載置台37に対して昇降することにより、基板チャック32との間で基板Gの受け渡しが行われるようになっている。これら載置台37は、基板Gを安定に支持し、かつ後述する塗布膜除去部と干渉しない状態で基板Gを保持するようになっている。
【0037】
なお、載置台37により支持された基板GのY方向の対向する両側辺部には、助走ステージ15が基板Gの対向する辺部に水平状に近接配置されている。助走ステージ15は、両端部に設けられる膨隆略矩形状の平坦助走部15aが載置台37に載置される基板Gの上面と略同一平面を有すると共に、基板Gの側端部に近接して配置され、更に、平坦助走部15aの先端面が基板Gの端部面と同一面上に位置している。なお、この場合、助走ステージ15と基板Gとの隙間は、1.0mm以下に設定されている。
【0038】
更に処理容器30の内部には、載置台37により支持された基板GのY方向の両側に、この基板GのY方向に伸びる互いに対向する一対の辺の端縁に沿って移動して、当該辺の縁部の不要な塗布膜であるレジスト膜を除去するための塗布膜除去部40A,40Bが設けられている。この例では、塗布膜除去部40A,40B(以下に符号40Aで代表する)は、図5に示すように、断面形状が略コ字型の基体41を備えており、この基体41は基板Gの縁部の上下に間隔を介して挟み込むように設けられている。
【0039】
基体41の上面部分には、基板表面の端縁の辺縁に沿って多数の溶剤吐出孔42aが配列された溶剤吐出部42が設けられると共に、基板表面の溶剤吐出部42からの溶剤(例えばシンナー)の供給領域よりも端縁から見て内側の領域に不活性ガス例えば窒素(N2)ガスを供給するためのN2ガス吐出部43が設けられている。
【0040】
上記溶剤吐出部42には溶剤供給管路45を介して溶剤供給源である溶剤タンク46が接続されており、溶剤タンク46から溶剤吐出部42に供給される溶剤の流量を調整する手段として、溶剤供給管路45には溶剤流量調整弁V1が介設されている。また、N2ガス吐出部43にはN2ガス供給管路47を介してN2ガス供給源であるガスタンク48が接続されており、ガスタンク48からN2ガス吐出部43に供給されるN2ガスの流量を調整する手段として、N2ガス供給管路47には、N2ガス流量調整弁V2が介設されている。上記溶剤流量調整弁V1とN2ガス流量調整弁V2は制御部60と電気的に接続されており、制御部60からの制御信号に基づいて制御されるように構成されている。
【0041】
また、基体41の背面部分には、溶剤と、N2ガスと、溶剤による塗布膜の溶解物とを吸引排出するための排出路である吸引排出路44が形成されている。この場合、排出路44は、基体41の垂直壁41aの下端より若干高い位置に開口しており、溶剤吐出部42から吐出された溶剤が基板Gの裏面に回り込むのを防止している。この吸引排出路44には、排出管路44aを介して吸引手段である例えば吸引ポンプ49が接続されている。
【0042】
上記排出管路44aにおける吸引ポンプ49の一次側には、溶剤及び塗布膜(レジスト膜)の溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度測定部20が配設されている。
【0043】
この濃度測定部20は、図5に示すように、排出管路44aに接続する少なくとも対向する側壁に透明部22a,22bを有する収容室21と、この収容室21の一方の透明部22aから他方の透明部22bに向かって可視光域を含んだ光を照射する発光体23aと、収容室21内の上記混合排液を挟むように発光体23aに対して配置される受光体23bとを具備している。受光体23bは、発光体23aからの光のうち、可視光域(波長:400nm〜700nm)の光を3分割して得られる、赤領域成分の光(波長:700nm)、緑領域成分の光(波長:550nm)、及び青領域成分の光(波長:400nm)のいずれか、又は上記複数の色領域の成分の光を受光するように形成されている。なお、受光体23bの入光側には、上記赤領域成分の光、緑領域成分の光、及び青領域成分の光のいずれかの強度を計測するためのフィルタ24が設けられている。
【0044】
また濃度測定部20は、受光体23bが受光した光の信号を増幅する増幅器25と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器26と、変換されたデジタル信号を処理する信号処理部27と、を備えており、信号処理部27からの信号が上記制御部60に伝達されるようになっている。
【0045】
次に、濃度測定部20の濃度測定原理について説明する。発光体23aから照射される光は、全ての波長400nm〜700nmに対して等しい密度の白色光であると仮定した場合、測定対象物が例えば赤色である場合は、測定対象物に白色光を照射すると、赤の光の波長(700nm)だけを反射し、他の色の波長は吸収される。また、測定対象物が例えば青色である場合は、測定対象物に白色光を照射すると、青の光の波長(400nm)だけを反射し、他の色の波長は吸収される。また、測定対象物が例えば緑色である場合は、測定対象物に白色光を照射すると、緑の光の波長(550nm)だけを反射し、他の色の波長は吸収される。
【0046】
識別できる色は赤、緑、青の3原色であることから、上記濃度測定原理に基づいて混合排液中の溶解物すなわちレジストの色を3原色でどのような割合になっているかを調べることで、混合排液中の溶解物の有無の判断及び濃度を検出することができる。すなわち、図7に示すように、例えば、測定したいレジストの色が青色なら700nmの吸光度を測定することによって、青色のレジストの青領域成分の濃度BL,BM,BH(BL<BM<BH)を測定することができる。また、レジストの色が赤色の場合は、400nmの吸光度を測定することによって、赤色のレジストの赤領域成分の濃度RL,RM,RH(RL<RM<RH)を測定することができ、また同様に、レジストの色が緑色の場合は、550nmの吸光度を測定することによって、緑色のレジストの緑領域成分の濃度GL,GM,GH(GL<GM<GH)を測定することができる。
【0047】
上記のように構成することにより、濃度測定部20によって溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液中の溶解物の有無及び濃度を塗布膜の色成分に基づいて測定することができる。
【0048】
一方、基体41の先端側部分には、縁部検出センサ11が配設されている。この縁部検出センサ11は、基体41の上面部分に基板表面に対向して設けられる発光素子11aと、基体41の下面部分に基板裏面と対向して設けられる受光素子11bとで構成されて、基板Gの端縁上のある位置を検出するようになっている。
【0049】
更に、塗布膜除去部40A,40Bの基体41の上面部分には、基板表面の縁部を撮像し、画像処理する撮像手段である撮像カメラ例えばCCDカメラ12が搭載されている。このCCDカメラ12は制御部60に電気的に接続されており、CCDカメラ12によって撮像された、例えばレジスト膜の除去状態すなわち剥離状態及び剥離幅(カット幅)やレジスト残渣の確認等の画像データ信号は制御部60に送られ、制御部60の画像解析部63によって解析され、解析された画像情報に基づいて後述する塗布膜除去条件が変更設定される。
【0050】
塗布膜除去部40A,40Bは、例えば幅Xが3mm〜30mm、間隔Yが6mm〜8mmに設定され、例えば厚さが5mm〜7mmの基板Gに対して例えば幅1mm〜5mm程度の縁部の不要な塗布膜を除去することができる形状に形成されている。なお溶剤吐出孔42aの形状としては複数孔であってもよいし、単一孔であってもスリット状のものであってもよい。
【0051】
上記塗布膜除去ユニット10は、載置台37に保持された基板Gの両外側に、基板GのY方向の互いに対向する一対の辺と略平行に設けられたY方向に互いに対向して伸びる2本のY方向ガイドレール51,52を備えており、塗布膜除去部40A,40Bは、夫々Y方向移動機構53,54により、Y方向ガイドレール51,52に沿ってY方向に移動自在に構成されている。またこのY方向ガイドレール51,52はX方向移動機構55,56により、X方向に伸びるX方向ガイドレール57,58に沿ってX方向に移動自在に構成されており、これにより塗布膜除去部40A,40BはX軸,Y軸に沿って、X軸とY軸とを同期させた状態で移動自在に構成されることとなる。ここでY方向移動機構53,54は例えばベルト駆動機構により構成され、X方向移動機構55,56は例えばボールねじ機構により構成される。なお、図3中、符号M1,M2は夫々Y方向移動機構53,54のモータ、符号M3,M4は夫々X方向移動機構55,56のボールねじを回転させるモータである。
【0052】
また、塗布膜除去部40A,40Bは、Y方向移動機構53,54の上部に配設された高さ調整機構59A,59Bによって高さ調整すなわち塗布膜除去部40A,40Bと基板表面との隙間sが調整可能に形成されている。高さ調整機構59A,59Bは、例えばボールねじ機構により構成される。なお図3中、符号M5,M6は夫々高さ調整機構59A,59Bのモータである。
【0053】
上記シャッタ31a、基板チャック32の昇降機構34や回転機構35、Y方向駆動機構53,54の各モータM1,M2、X方向駆動機構55,56の各モータM3,M4、高さ調整機構59A,59Bの各モータM5,M6の駆動動作は制御部60により制御される。制御部60は、CPU(中央演算処理ユニット)、プログラム及びメモリ等により構成されるが、ここでは、この発明の要部である塗布膜の除去に係る各機能をブロック化し構成要素として図6に基づいて説明する。
【0054】
図6に示すように、制御部60は、上記濃度測定部20で検出されたレジスト膜の溶解物の濃度検出データやCCDカメラ12によって撮像された画像処理データ等を収集して記憶するデータ記憶部61と、濃度検出データを解析する濃度解析部62と、画像処理データを解析する画像解析部63と、を備えている。また、制御部60は、上記濃度解析部62及び画像解析部63で解析されたデータに基づいて塗布膜(レジスト膜)の除去条件であるパラメータを変更するパラメータ変更部64と、予め設定されたパラメータと変更後のパラメータを格納するパラメータ格納部65と、パラメータ格納部65に格納されている複数のパラメータから目的のパラメータを選択するパラメータ選択部66と、を備えている。
【0055】
ここで、パラメータとは、塗布膜(レジスト膜)の除去条件の要素であって、例えば溶剤の吐出量,塗布膜除去部40A,40Bの移動速度,N2ガスの吐出量,吸引排出路44の排気量,塗布膜除去部40A,40Bと基板表面との隙間(距離)等を少なくとも含む。これらパラメータのうち、溶剤の吐出量と塗布膜除去部40A,40Bの移動速度は、上記濃度測定部20の溶解物の濃度検出値に基づいて変更設定される。また、別のパラメータのN2ガスの吐出量,吸引排出路44の排気量,塗布膜除去部40A,40Bと基板表面との隙間(距離)等は、上記CCDカメラ12が撮像した画像データに基づいて変更設定される。
【0056】
また、制御部60は、制御プログラム67と表示プログラム68を備えており、制御プログラム67に基づいて、上記Y方向移動機構53,54、X方向移動機構55,56、高さ調整機構59A,59B、溶剤流量調整弁V1、N2ガス流量調整弁V2及び吸引ポンプ49が駆動制御され、また、表示プログラム68からの信号が表示装置70に伝達されるようになっている。なお、図6中、符号BSはバスである。
【0057】
なお、制御部60は、上記以外に、レジストの種類や溶剤の種類のレシピ作成・選択部を備えており、目的に応じたレジストやレジストの溶剤が選択されるようになっている。
【0058】
上記のように構成される塗布膜除去ユニット10における不要塗布膜の除去処理の流れについて説明すると、まず、塗布ユニット2においてレジスト液が塗布された基板Gが、主搬送手段3によって塗布膜除去ユニット10にまで搬送されると、昇降機構34,回転機構35の駆動によって基板チャック32が上昇して主搬送手段3から基板Gを受け取る。その後、主搬送手段3は塗布膜除去ユニット10から後退する一方、基板チャック32は下降して、基板Gを載置台37上に載置し、基板Gと助走ステージ15とを近接した状態にする。この状態で、予め溶剤吐出部42から溶剤を吐出すると共に、N2ガス吐出部43からN2ガスを吐出して、吸引状態におかれた塗布膜除去部40A,40Bを、一方の助走ステージ15から基板Gの一端側に移動させ、更に、基板Gの一端側から他端側の助走ステージ15に渡って連続移動して、基板Gの周縁部の不要なレジスト膜を溶解して除去する。このレジスト膜除去処理は、基板Gの対向する2辺同時に行われる。この際、塗布膜除去部40A,40Bの始点側に配置された助走ステージ15により溶剤がはね散るのを防止することができる。また、助走ステージ15が基板Gの端部に近接して配置されているので、塗布膜除去部40A,40Bを基板Gの辺部及び助走ステージ15に渡って移動することにより、溶剤の吐出(供給)と吸引状態を変えることなく基板Gの辺部から角部に渡って塗布膜除去部40A,40Bから溶剤を均一に吐出(供給)すると共に、溶解物を吸引することができる。したがって、基板Gの角部におけるレジスト膜除去面の直進性が得られると共に、ミストの発生を抑制することができる。
【0059】
基板Gの対向する2辺のレジスト膜除去が終了した後、塗布膜除去部40A,40Bはホームポジションに戻る一方、昇降機構34,回転機構35が駆動して基板チャック32が上昇して載置台37の上方へ基板Gを移動し、上昇した位置で基板チャック32を水平方向に90度回転して基板Gの姿勢を変換した後、下降し、基板Gを載置台37上に載置してレジスト膜が除去された辺部を助走ステージ15と近接する位置におく。この状態で、上記と同様に塗布膜除去部40A,40Bを基板Gの一端側から他端側及び助走ステージ15に渡って移動しつつ溶剤及びN2ガスを吐出すると共に、吸引排出路44から吸引することによって、基板Gの残りの2辺の不要レジスト膜が除去される。
【0060】
次に、上記実施形態の塗布膜除去装置における不要レジスト膜の除去処理の流れについて図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0061】
塗布膜除去部40A,40Bにより、基板表面に形成されたレジスト膜の縁部に溶剤及びN2ガスを吐出しながら、この塗布膜除去部40A,40Bを基板Gの辺縁の所定の幅に沿って基板Gの一端側から他端側まで移動させて、基板Gの縁部の不要レジスト膜を溶剤によって溶解して除去(剥離)する(除去工程:S−1)。
【0062】
N2ガス、溶剤及びレジスト膜の溶解物の混合排液は吸引排出路44及び排出管路44aを流れて収容室21に収容された状態で、濃度測定部20により、溶剤及び溶解物の混合排液中の溶解物の濃度(レジスト濃度)が検出される(濃度測定工程:S−2)。このとき、レジストの種類によりレジストの色成分は予め分かっているので、レジストの色成分の光の波長によって溶解物の濃度(レジスト濃度)が測定(検出)される。
【0063】
溶解物の濃度(レジスト濃度)を測定(検出)によって得られた検出値に基づいて濃度測定部20により検出された混合排液中の溶解物の有無すなわちレジスト濃度が0(ゼロ)か否かを判別する(濃度判別工程:S−3)。この際、濃度測定部20により検出された検出データ信号は制御部60に伝達され、制御部60のデータ記憶部61に格納され、濃度解析部62により解析される。この濃度判別工程において、レジスト濃度が0(ゼロ)でないと判断された場合は、再度除去工程(S−1)を繰り返す。
【0064】
レジスト濃度が0(ゼロ)すなわち混合排液中の溶解物(レジスト)が無と判断された場合は、塗布膜除去部40A,40Bに搭載されたCCDカメラ12により、基板表面の縁部を撮像して、レジスト膜の剥離状態、剥離幅(カット幅)及び塗布膜の残渣等の確認し、画像処理する(画像処理工程:S−4)。CCDカメラ12により撮像され画像処理された画像データは、制御部60に伝達され、制御部60のデータ記憶部61に格納され、画像解析部63により解析される。
【0065】
次に、上記濃度測定工程(S−2)及び画像処理工程(S−4)で得られた濃度検出データ及び画像データに基づいて、レジスト膜の除去条件の要素であるパラメータの変更が必要か否かを判別する(S−5)。パラメータの変更が必要な場合は、制御部60のパラメータ選択部66の中から必要パラメータを変更する。この場合、パラメータには、例えば溶剤の吐出量,塗布膜除去部40A,40Bの移動速度,N2ガスの吐出量,吸引排出路44の排気量,塗布膜除去部40A,40Bと基板表面との隙間(距離)s等が含まれており、必要なパラメータが選択されて変更設定される。これらパラメータのうち、溶剤の吐出量と塗布膜除去部40A,40Bの移動速度は、濃度測定部20の溶解物の濃度検出値に基づいて変更設定される。また、別のパラメータのN2ガスの吐出量,吸引排出路44の排気量,塗布膜除去部40A,40Bと基板表面との隙間(距離)s等は、上記CCDカメラ12が撮像した画像データに基づいて変更設定される。
【0066】
パラメータが変更設定されたら、変更後のパラメータに基づいて再度除去工程(S−1)、濃度測定工程(S−2)、濃度判別工程(S−3)を繰り返す。パラメータの変更が必要でない場合は、処理を終了する。
【0067】
なお、上記実施形態では、塗布膜除去A,40BにCCDカメラ12を搭載して、レジスト濃度が0(ゼロ)すなわち混合排液中の溶解物(レジスト)が無と判断された場合に、Dカメラ12による画像処理を行う実施形態を説明したが、CCDカメラ12を搭載しない場合においても、少なくとも溶剤の吐出量,塗布膜除去部40A,40Bの移動速度のパラメータを変更して不要レジスト膜の除去処理を行うことができる。
【0068】
また、上記実施形態では、溶剤流量調整手段が溶剤供給管路45に介設される溶剤流量調整弁V1にて形成される場合について説明したが、溶剤流量調整手段を別の構造としてもよい。例えば、上記溶剤流量調整弁V1に代えて溶剤供給管路45に切換弁を介設し、溶剤タンク46に供給される圧送用気体の加圧力を調整して、溶剤流量を調整してもよい。また、上記実施形態では、N2ガス流量調整手段がN2ガス供給管路47に介設されるN2ガス流量調整弁V2である場合について説明したが、N2ガス流量調整弁V2に代えてN2ガスの加圧力を調整して、N2ガス流量を調整してもよい。
【0069】
なお、上記実施形態は、この発明の一例を示すものであり、この発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。例えば、この発明は、LCD、FPD(フラットパネルディスプレイ)等の角形の基板にも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
G 基板(マスク基板)
10 塗布膜除去ユニット
11 縁部検出センサ
12 CCDカメラ(撮像手段)
20 濃度測定部
21 収容室
22a,22b 透明部
23a 発光体
23b 受光体
32 基板チャック
40A,40B 塗布膜除去部
42 溶剤吐出部
43 N2ガス溶剤吐出部(不活性ガス吐出部)
44 吸引排出路
44a 排出管路
45 溶剤供給管路
46 溶剤タンク(溶剤供給源)
47 N2ガス供給管路(不活性ガス供給管路)
48 ガスタンク(不活性ガス供給源)
49 吸引ポンプ(吸引手段)
53,54 Y方向移動機構
55,56 X方向移動機構
59A,59B 高さ調整機構
60 制御部
V1 溶剤流量調整弁(溶剤流量調整手段)
V2 N2ガス流量調整弁(不活性ガス流量調整手段)
s 塗布膜除去部と基板との隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部により、角形の基板表面に形成された塗布膜の縁部に上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、この塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させることにより、上記基板表面の縁部の不要な塗布膜を除去する塗布膜除去方法において、
上記溶剤吐出部及び不活性ガス吐出部により上記基板表面の端部から上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、上記塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させる除去工程と、
上記排出路に接続される濃度測定部により、排出路から排出される上記溶剤及び溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度検出工程と、
上記濃度測定部により検出された上記混合排液中の上記溶解物の有無を判別する濃度判別工程と、
上記濃度測定部による上記溶解物の濃度検出値に基づいて上記塗布膜の除去条件を変更設定する工程と、を含み、
上記溶解物の濃度判別工程において、上記混合排液中の上記溶解物の無が確認されるまで、上記塗布膜除去工程を続行し、上記溶解物の無が確認された後、上記除去条件を変更設定する工程で変更設定された除去条件により、上記塗布膜除去工程を行う、ことを特徴とする塗布膜除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布膜除去方法において、
上記塗布膜の除去条件の変更は、上記溶解物の濃度検出値に基づく上記溶剤の吐出量又は上記塗布膜除去部の移動速度の少なくとも一方の変更である、ことを特徴とする塗布膜除去方法。
【請求項3】
塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部により、角形の基板表面に形成された塗布膜の縁部に上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、この塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させることにより、上記基板表面の縁部の不要な塗布膜を除去する塗布膜除去方法において、
上記溶剤吐出部及び不活性ガス吐出部により上記基板表面の端部から上記溶剤及び不活性ガスを吐出しながら、上記塗布膜除去部を上記基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させる除去工程と、
上記排出路に接続される濃度測定部により、排出路から排出される上記溶剤及び溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度検出工程と、
上記濃度測定部により検出された上記混合排液中の上記溶解物の有無を判別する濃度判別工程と、
上記塗布膜除去部に搭載された撮像手段により、上記基板表面の縁部を撮像して、塗布膜の剥離状態、剥離幅及び塗布膜の残渣を画像処理する工程と、
上記濃度測定部による上記溶解物の濃度検出値、及び上記撮像手段による上記画像処理に基づいて、上記塗布膜の除去条件を変更設定する工程と、を含み、
上記溶解物の濃度判別工程において、上記混合排液中の上記溶解物の無が確認されるまで、上記塗布膜除去工程を続行し、上記溶解物の無が確認された後、上記塗布膜の除去条件を変更設定する工程で変更設定された除去条件により、上記塗布膜除去工程を行う、ことを特徴とする塗布膜除去方法。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布膜除去方法において、
上記塗布膜の除去条件の変更は、上記溶解物の濃度検出値に基づく上記溶剤の吐出量及び上記塗布膜除去部の移動速度の変更、又は上記画像処理に基づく上記不活性ガスの吐出量、上記排出路の排気量、若しくは上記塗布膜除去部と上記基板表面との隙間のいずれかの変更である、ことを特徴とする塗布膜除去方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布膜除去方法において、
上記濃度測定部による上記溶解物の濃度検出は、発光体から照射される可視光域を含んだ光を受光体が受光し、上記受光体は、上記発光体からの光のうち、上記可視光域の光を3分割して得られる、赤領域成分の光、緑領域成分の光、及び青領域成分の光のいずれか、又は上記複数の色領域の成分の光を受光して濃度を検出する、ことを特徴とする塗布膜除去方法。
【請求項6】
塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部と、
上記溶剤供給源から上記溶剤吐出部に供給される溶剤の流量を調整する溶剤流量調整手段と、
上記塗布膜除去部を、表面に塗布膜が形成された角形の基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させる移動機構と、
上記排出管路に介設され、上記溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度測定部と、
上記濃度測定部からの検出信号に基づいて、塗布膜の除去条件を設定すると共に、上記溶剤流量調整手段及び上記移動機構を制御する制御部と、を具備し、
上記制御部は、上記濃度測定部により上記混合排液中の溶解物の無が確認されるまで、上記塗布膜除去部による塗布膜の除去動作を続行させ、上記溶解物の無が確認された後、上記塗布膜の除去条件に基づいて上記溶剤の吐出量又は上記塗布膜除去部の移動速度の少なくとも一方を変更する、ことを特徴とする塗布膜除去装置。
【請求項7】
塗布膜の溶剤を吐出する溶剤吐出部と、不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出部と、上記溶剤吐出部から吐出した溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液を排出するための排出路と、この排出路に排出管路を介して接続された吸引手段と、を備えた塗布膜除去部と、
上記溶剤供給源から上記溶剤吐出部に供給される溶剤の流量を調整する溶剤流量調整手段と、
上記不活性ガス供給源から上記不活性ガス吐出部に供給される不活性ガスの流量を調整する不活性ガス流量調整手段と、
上記塗布膜除去部を、表面に塗布膜が形成された角形の基板の辺縁の所定の幅に沿って基板の一端側から他端側まで移動させる移動機構と、
上記排出管路に介設され、上記溶剤及び塗布膜の溶解物の混合排液中の溶解物の濃度を検出する濃度測定部と、
上記塗布膜除去部と上記基板表面との隙間を相対的に調整する高さ調整機構と、
上記塗布膜除去部に搭載され、上記基板表面の縁部を撮像して画像処理する撮像手段と、
上記濃度測定部からの検出信号に基づいて、塗布膜の除去条件を設定すると共に、上記溶剤流量調整手段、上記不活性ガス調整手段、上記移動機構、上記高さ調整機構及び上記撮像手段を制御する制御部と、を具備し、
上記制御部は、上記濃度測定部により上記混合排液中の溶解物の無が確認されるまで、上記塗布膜除去部による塗布膜の除去動作を続行させ、上記溶解物の無が確認された後、上記塗布膜の除去条件に基づいて上記溶剤の吐出量又は上記塗布膜除去部の移動速度の少なくとも一方を変更し、又は上記撮像手段の画像処理に基づいて上記不活性ガスの吐出量、上記排出路の排気量、若しくは上記塗布膜除去部と上記基板表面との隙間のいずれかを変更する、ことを特徴とする塗布膜除去装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の塗布膜除去装置において、
上記濃度測定部は、上記排出管路に接続する少なくとも対向する側壁に透明部を有する収容室と、この収容室の一方の透明部から他方の透明部に向かって可視光域を含んだ光を照射する発光体と、上記収容室内の上記混合排液を挟むように発光体に対して配置される受光体とを具備し、上記受光体は、上記発光体からの光のうち、上記可視光域の光を3分割して得られる、赤領域成分の光、緑領域成分の光、及び青領域成分の光のいずれか、又は上記複数の色領域の成分の光を受光する、ことを特徴とする塗布膜除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−143704(P2012−143704A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3746(P2011−3746)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】