説明

塗布装置、及びこれを用いた塗布方法

【課題】スプレー法にて成膜を行う場合、異物付着による塗膜欠陥の発生を防止し、塗膜の均一性を向上させ、良質な膜形成を行うことのできる塗布装置を提供する。
【解決手段】円筒状の基体4上に、成膜材料をスプレー法にて吹き付けて、電荷発生層、電荷輸送層、被覆層のうちの少なくともいずれか一層を形成する塗布装置100であって、基体4を収納する塗工ブース1と、塗工ブース1内で基体4を保持する基体保持手段と、スプレーガン6と、塗工ブース1内の空気の流れを均一化する整流機構10とを具備しているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー法により塗膜を形成する塗布装置、これを用いた塗布方法、更には、これらを用いた感光体、画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真に用いられる感光体は、所定の感光基体の周面に感光体材料を塗工することにより作製される。塗布方法としては、一般的に、感光体材料の塗工液を収容した容器(塗工槽)と基体とを相対移動させて、基体を塗工液中に浸漬させ、その後引上げる、いわゆるディッピング方式が採用されていた。
しかしながら、このようなディッピング方式を用いると、塗工液中に基体を浸漬しなければならないため、必然的に装置が大型化し、塗液も多量に必要となる。
また、ディッピング方式は、取り扱う感光体が小型であれば好適な方法であるが、大型で長大なものは取扱い上不適切である。
【0003】
上述したような問題に対応するべく、塗布方法としてスプレー法が提案された。
スプレー法とは、微小な孔のノズルから塗液を多数の微粒液滴(ミスト)として吹き出させ、所定の速度で回転させた基体面に吹き付けて成膜する方法である。
この方法は、使用する塗液が少量で済み、感光体の形状による制約が少ないという利点を有している。
しかしながら、スプレー法には、塗膜に異物が付着しやすいという問題を有している。異物付着が生じると、最終的に得られた感光体を複写機やプリンターの中で使用した際に黒ポチや白ポチ状の画像欠陥が発生する。
異物としては、塗工の前段階で既に基体に付着していたもの、スプレー塗工中に粗大スプレーミスト、塗工ブース内に付着したミストカス、ダスト類等が挙げられる。
塗工前段階での異物は、特に、基体の運搬・ハンドリングに伴い付着するものが主である。
一方、塗工中での異物は、塗工ブース内の吸排気による気流と、基体の回転により生ずる気流により生ずる乱気流により、基体に付着しなかったオーバーミストの再付着や、塗工ブース内に付着したミストカス、ダスト類の付着によるものである。
更に、オーバーミストの捕集用に排気側に設けられたフィルターの目詰りによるブース内風速の低下に伴い、フィルター上に捕集されたミスト、ダスト類の舞い上がりによる付着も原因として挙げられる。
【0004】
また、塗工ブース内の風速が低下すると、スプレーミストの塗液の溶媒の蒸発速度が低下し、それが原因で微粒化した塗液の粘度が低下し、塗布面上での流動性が大きくなり、最終的に不均一な塗膜が形成されてしまう。
塗膜が不均一化すると、最終的に得られる感光体の特性が劣化し、画像形成状態が悪化する。
【0005】
フィルターの目詰りによる風速低下を防ぐ方法として、排気風量を調節するという技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
しかしながら、フィルターに部分的目詰りが発生した場合、被塗布体である基体の全幅における風速にムラが発生し、膜厚ムラや感光体特性ムラの原因となってしまうため、基体全幅に亘って均一な風速となるように制御しなければならない。
【0006】
塗膜を均一化させる方法としては、従来、連続回転している円筒状の基体に、スプレーを用いて塗工液を塗布し、その後、乾燥用気体を送風するという技術が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
しかしながら、この方法によると、外部から異物が付着したり、ミストカスが再付着したりすることにより、膜質劣化が発生するという問題を有していた。
【0007】
また、スプレーガンを移動する際には、気流が発生するが、これが悪影響を及ぼす場合もあった。これを防止するため、もしくは外部からゴミや異物の付着を防止するために、スプレーガンから被塗布物の間に隔壁を設けるという方法が提案された(例えば、下記特許文献3乃至5参照。)。
しかしながら、スプレーガンから被塗布物の間に隔壁を設けるのみでは、塗布中に隔壁内で発生する乱流を防止できないので、ミストの一部が隔壁内を浮遊し、固化して異物となり、塗膜面に付着し、膜欠陥を引き起こしていた。
また、乱流により浮遊しているミストの一部は、隔壁内面に付着し、異物の蓄積が起こり、蓄積された異物は、スプレー移動時の振動や、スプレーのエアー等の外力により剥離し、塗膜面に付着し、これも膜欠陥を招来する原因となる。
【0008】
また、円筒状の基体にスプレー塗布する方法であって、スプレーガンの両端にエアーノズルを設けることでスプレー塗布中に発生するミストの再付着を防止し、異物の付着を回避するという技術が提案された(例えば、下記特許文献6参照。)。
しかしながら、この方法は、一塗工ブース内に一個の被塗布物を設置し塗布する場合に有効な手法であり、一ブース内で多数本の被塗布物を塗布しようとした場合、設備が大型化してしまうという不具合があった。
【0009】
以下、従来の塗布装置を用いて膜形成を行った場合の膜質の低下について、図を参照して説明する。
図1に従来公知の構造の塗布装置の概略構成図を示す。
この塗布装置においては、スプレーガン6と円筒状の基体4が塗工ブース1の内に収容されており、この塗工ブース1の内部を清浄に保つために、給気口2から、矢印Aに示すようにクリーンなエアーが送り込まれ、排気口3側から排気されるようになされている。
円筒状の基体4は、基体駆動軸5によって支持されており、任意の速度で矢印B方向に回転するようになされている。
スプレーガン6は、円筒状の基体4の軸方向に沿って、スプレーガン移動軸7により移動しながらスプレー液8を基体4に吹き付けて塗工するようになされている。
【0010】
図2に、塗工ブース内の気流13、すなわちスプレー塗工時におけるミストの軌跡の状態を示す。
スプレーガン6より吐出したスプレー液8は、その大部分が円筒状の基体4表面に付着する。
基体4に付着しなかったミスト、すなわち図2中に示すオーバースプレーミスト9は、通常、排気口3方向に向かい排気される。
【0011】
しかしながら、一部のオーバースプレーミストは、排気口3から排気されずに気流の舞い上がり気流14に乗って塗工ブース1内を浮遊する。浮遊中のオーバースプレーミスト9は、固化したり、他のオーバースプレーミスト9と衝突して凝集したりする。
このように固化・凝集したオーバースプレーミスト9が基体4の表面に付着すると塗膜欠陥を引き起こすことになる。
また、オーバースプレーミスト9が塗工ブース1の内壁に付着し固化した場合、これが剥離することによりミストカスとなり、塗工ブース内気流に乗って基体4の表面に付着する場合もある。
上述のうち、オーバースプレーミスト9が乱気流の影響を受け円筒状の基体4に付着することが塗膜欠陥を生じる主原因となっていた。
【0012】
その他の塗膜欠陥の原因としては、円筒状の基体4周囲の構造物に付着・固化したオーバースプレーミスト9や、擦れ部より発生する異物、ダスト類が、上述した塗工ブース内気流に乗って円筒状の基体4に付着することが挙げられる。
オーバースプレーミスト9が塗工ブース内を浮遊したり、内壁に付着、固化したりすることは、塗工ブース内の角部、隅部分に気流のよどみ15があることに起因する。
【0013】
【特許文献1】特開平7−256166号公報
【特許文献2】特開昭62−75454号公報
【特許文献3】特開昭62−75456号公報
【特許文献4】特開平1−9357号公報
【特許文献5】特開平1−119370号公報
【特許文献6】特開2003−255571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題に鑑み、スプレー法にて成膜を行う場合、異物付着による塗膜欠陥の発生を防止し、塗膜の均一性を向上させ、良質な膜形成を行うことのできる塗布装置、及びこれを用いた塗布方法を提供することとした。
特に、特に塗工ブース内で発生する異物による塗膜欠陥の発生を効果的に回避して塗膜の均一性を向上させる塗布装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明においては、円筒状の基体上に、成膜材料をスプレー法にて吹き付けて、電荷発生層、電荷輸送層、被覆層のうちの少なくともいずれか一層を形成する塗布装置であって、前記基体を収納する塗工ブースと、前記塗工ブース内で前記基体を保持する基体保持手段と、スプレーガンと、前記塗工ブース内の空気の流れを均一化する整流機構とを具備している塗布装置を提供する。
【0016】
請求項2の発明においては、前記基体は、成膜面が前記スプレーガンの前記成膜材料吹き付け方向に対して垂直方向となるように保持されており、前記スプレーガンの背面に、給気口が設けられており、前記基体の背面側に排気口が設けられており、前記給気口と、前記排気口とは、前記基体を介して対向する位置に設けられていることとした請求項1の塗布装置を提供する。
【0017】
請求項3の発明においては、前記整流機構が、前記給気口、前記排気口の、少なくともいずれか一方に設置されていることとした請求項2に記載の塗布装置を提供する。
【0018】
請求項4の発明においては、前記基体保持手段により保持された前記基体と、前記スプレーガンとは、相対的に前記スプレーガンが前記基体を中心とした円周方向、及び前記基体の軸方向に移動可能となされており、前記整流機構は、前記スプレーガンに追従して移動するようになされていることとした請求項3の塗布装置を提供する。
【0019】
請求項5の発明においては、前記整流機構が、格子状構造であることとした請求項1乃至4のいずれか一項の塗布装置を提供する。
【0020】
請求項6の発明においては、前記基体保持手段により保持された前記基体と、前記スプレーガンとは、相対的に前記スプレーガンが前記基体を中心とした円周方向、及び前記基体の軸方向に移動可能となされており、前記排気口は、前記スプレーガンに追従して移動するようになされていることとした請求項3の塗布装置を提供する。
【0021】
請求項7の発明においては、請求項1乃至6のいずれか一項の発明に係る塗布装置を用いて、基体上に成膜を行うことを特徴とする塗布方法を提供する。
【0022】
請求項8の発明においては、請求項7の塗布方法を用いて感光体を作製する。
【0023】
請求項9の発明においては、請求項8の感光体を適用した画像形成システムを提供する。
【0024】
請求項10の発明においては、円筒状の基体上に、成膜材料をスプレー法にて吹き付けて、電荷発生層、電荷輸送層、被覆層のうちの少なくともいずれか一層を形成する塗布装置であって、前記基体を収納する塗工ブースと、前記塗工ブース内で前記基体を保持する基体保持手段と、スプレーガンとを有しており、前記給気口と前記基体との間には、給気整流機構を有し、前記排気口と前記基体との間には前記スプレーガンから前記排気口へと通じる開口部を具備する排気整流板を有している構成の塗布装置を提供する。
【0025】
請求項11の発明においては、前記排気整流板は開口部を有しており、当該開口部は、前記円筒状の基体の軸方向の長さの、端部に相当する位置に設けられていることとした請求項10の塗布装置を提供する。
【0026】
請求項12の発明においては、前記排気整流板の開口部には、前記基体方向へと伸張する壁部が設けられており、前記壁部の壁面と、前記基体端部との距離Lが、20〜150mmであることとした請求項11の塗布装置を提供する。
【0027】
請求項13の発明においては、前記壁部は、前記円筒状の基体の軸断面方向において覆うように配置されている請求項12の塗布装置を提供する。
【0028】
請求項14の発明においては、前記排気整流板の開口部は、前記塗工ブース断面積の2〜50%であることを特徴とする請求項13の塗布装置を提供する。
【0029】
請求項15の発明においては、請求項10乃至14のいずれか一項に記載の塗布装置を用いて、基体上に成膜を行うこととする塗布方法を提供する。
【0030】
請求項16の発明においては、請求項15の塗布装置を用いて作製された感光体を提供する。
【0031】
請求項17の発明においては、請求項16の感光体を用いることを特徴とする画像形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、塗工ブース内の空気の流れを均一化する整流機構を設けたことにより、スプレーにて成膜材料の微粒子を噴霧する際に、微粒子周辺に乱流が発生せず、異物付着の回避を確実に図れ、良質な塗膜を得ることができる。
【0033】
請求項4及び請求項6の発明に係る塗布装置では、整流機構および排気口がスプレーガンと同期して移動可能としたので、乱流発生防止域を局部的に制御することが加納となり、コンパクトな設備で、スプレー法を適用して微粒子を噴霧し成膜を行う際にも、微粒子周辺における乱流の発生を防止でき、異物付着を確実に回避し、良質な塗膜を形成できる。
【0034】
請求項5の発明に係る塗布装置によれば、上記整流機構を格子状構造に特定したので、容易に乱流防止の送風が可能となり、異物付着の発生を確実に回避でき、良質な塗膜が形成できる。
【0035】
請求項10の塗布装置においては、排気整流板を具備する構成としたので、スプレーにて被塗布物に対して微粒子を噴霧して成膜する工程においても、微粒子周辺における気流の舞い上がりの発生を防止でき、基体面に対する異物付着が回避でき、良質な塗膜が得られる。
【0036】
請求項11の塗布装置においては、排気整流板の開口部が、基体の軸方向長さにおける端部に相当する位置に設けたこととしたことにより、気流が効果的に整えられ、ミスト飛散防止が図られ、コンパクトな設備でスプレー法での被塗布物に対する微粒子の噴霧、成膜が可能となり、微粒子周辺における気流の舞い上がりや異物付着を防止でき、良質な塗膜が得られた。
【0037】
請求項12乃至14の塗布においては、排気整流板の構造を特定することで、容易に気流の舞い上がり防止を図り、良好な排気状態が確保でき、異物付着が回避でき、良質な塗膜が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は主に電子写真用感光体を製造するための塗布装置、及びこれを用いた塗布方法に関する。以下、本発明について図面を参照して説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0039】
〔第一の実施形態〕
図3に、本発明の塗布装置の概略構成図を示す。
塗布装置100は、円筒状の基体4上に、所定の成膜材料をスプレー法によって吹き付けて成膜を行うものであり、特に電子写真形成用の感光体の電荷発生層、電荷輸送層、被覆層を形成するものである。
この塗布装置100は、基体4を収納する塗工ブース1と、塗工ブース1内で基体4を保持し、基体4を図中矢印B方向に回転させる機能を有している基体保持手段(図示せず)と、スプレーガン6と、塗工ブース1内の気流(矢印A方向)を均一化する整流機構(この例においては整流板10)を具備しているものとする。整流板10は、矢印C方向に移動して位置を調節することができるようになされている。
【0040】
この塗布装置100においては、給気口2側と排気口3側とのそれぞれに整流板10が設けられている。この整流板10は、断面形状が格子状構造となっている。これにより、気流の流れを均一化し、塗工ブース1内の乱流を抑制する。
【0041】
図4に、本発明の塗布装置100における塗工時のスプレーミストの軌跡の状態を破線で示す。
給気口2側と排気口3側に、整流機構として格子状構造の整流板10を設けたことにより、塗工ブース1内の気流の乱流が抑制され、図2に示したようなオーバースプレーミスト9が塗工ブース1内で浮遊しなくなることが確かめられた。オーバースプレーミスト9は、円筒状の基体4に付着することなく、排気口3から排出される。
すなわち、本発明の塗布装置100によれば、乱気流の発生を確実に防止でき、塗膜欠陥の無い、良好な塗膜を形成できる。
【0042】
図3において、円筒状の基体4の成膜面は、スプレーガ6からの成膜材料吹き付け方向に対して垂直方向となるように保持されていることが好ましい。
また、スプレーガン6の背面に給気口2が設けられており、基体4の背面側に、排気口3が設けられており、給気口2と排気口3とは、基体4を介して対向する位置に設けられていることが好ましい。
【0043】
また、整流機構(整流板10)は、給気口2側、排気口3側の、少なくともいずれか一方に設置されているものとする。両方の位置に設置されていることがより好ましい。
【0044】
また、基体4と、スプレーガン6とは、相対的にスプレーガン6が基体4を中心とした円周方向、及び基体4の軸方向に移動可能となされており、整流機構(整流板10)は、スプレーガン6に追従して移動するようになされていることが好ましい。
更には、排気口3が、スプレーガン6に追従して移動するようになされていることが好ましい。
【0045】
次に、塗布装置100を用いた成膜方法について説明する。
円筒状の基体4を基体保持手段に設置し、軸中心に所定の回転速度で回転させる。給気口2から清浄なエアーを送り込み、基体4を介在して反対側にある排気口3から排出されるようにする。
給気口2と基体4との間、及び基体4と排気口3との間には、断面の形状が格子状の整流機構(整流板10)を設置し、エアーがこの格子内を通過するようにする。
成膜材料をスプレー法にて基体4に吹き付けて、所定の材料の成膜を行う。
【0046】
被膜形成体である基体4は、従来公知の材料のものを適用でき、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属よりなるドラム状のもの、あるいはシート、紙、プラスチック又はガラス上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの、酸化インジウム、酸化錫等の導電性金属酸化物を蒸着したものや、金属箔をラミネートしたもの、カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し塗布したもの、所定の導電処理を施したドラム状、シート状、プレート状のもの等、各種公知の材料が挙げられる。
【0047】
更に、必要に応じ、基体4の表面には、最終的に感光体としたときに画質形成に影響のない範囲で各種の処理を行うことができる。
例えば、表面の酸化処理、薬品処理、着色処理等が挙げられる。
電子写真形成用の感光体を作製する場合、基体4として所定の導電性支持体を設置し、この導電性支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層、被覆層を形成するが、導電性支持体と電荷発生層との間に所定の下引き層を形成してもよい。
下引き層は、帯電時において積層構造からなる感光層における導電性支持体から感光層への電荷の注入を阻止するとともに、感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用、あるいは導電性支持体からの反射光の防止作用等を示す。
下引き層は、樹脂を用いて形成することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、水溶性ポリエステル、ニトロセルロース又はカゼイン、ゼラチン等、公知の樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
下引き層の膜厚は0.01〜10μmが好ましく、更には0.3〜7μmが望ましい。
【0048】
電荷発生層(キャリア発生層)は、所定の電荷発生物質を分散させた樹脂を塗布することにより形成できる。例えば、モノアゾ色素、ジスアゾ色素、トリスアゾ色素などのアゾ系色素、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミド等のペリレン系色素、インジゴ、チオインジゴ等のインジゴ系色素、アンスラキノン、ピレンキノン、及びフラパンスロン類等の多環キノン類、キナグリドン系色素、ビスベンゾイミダゾール系色素、インダスロン系色素、スクエアリリウム系色素、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ピリリウム塩色素、チアピリリウム塩色素とポリカーボネートから形成される共晶錯体等、公知各種の電荷発生物質(キャリア発生物質)を適当なバインダー樹脂、及び必要により電荷輸送物質(キャリア輸送物質)と共に溶媒中に溶解あるいは分散した塗工液が用いられる。
上記各種電荷発生物質を樹脂中に分散させる方法としては、例えばボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等が適用できる。この際、電荷発生物質は、体積平均粒径で5μm以下、好ましくは2μm以下、最適には0.5μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
電荷発生層の膜厚は、一般的には0.1〜5μm、更には0.2〜2μmとすることが好ましい。
【0049】
感光体を構成する電荷輸送層は、電荷輸送物質を適当なバインダー中に含有させて、これを塗布することにより形成できる。
電荷輸送物質としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサゾアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−〔ピリジル−(2)〕−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、スチリルトリフェニルアミン、ジベンジルアニリン等の芳香族、第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアル」デヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キンゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N、N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、“Journalof Imaging Science”29:7〜10(1985)に記載されているエナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のポリ−N−ビニルカルバゾール、及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタナート、及びその誘導体、更にはピレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリ−9−ビフェニルアントラセン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂等の公知の電荷輸送物質を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、上記電荷輸送物質は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
電荷輸送層形成用の結着樹脂としては、従来公知の材料を適用できる。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ブチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−Nビニルカルバゾール等が挙げられる。
これらの結着樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。
電荷輸送層の膜厚は一般的には5〜50μmとし、10〜30μmが好適である。
【0051】
感光体は、電荷輸送層上に所定の保護層として、電荷輸送物質と顔料とを適当なバインダー中に含有させた塗料を塗布した膜を形成してもよい。
顔料としては、アルミナ、酸化チタン等の無機顔料の他、有機顔料が使用できる。全固形分中の顔料の重量配合率は5〜30%が好ましい。膜厚は一般的には2〜10μmとし、4〜8μmが好適である。
なお、保護層は、最終的に得られる感光体が使用される複写機、プリンターに応じて設けたり、省略したりもできる。
【0052】
〔第二の実施形態〕
図5に、第二の実施形態に係る塗布装置200の概略構成図を示す。
この塗布装置200は、塗工ブース1内に、基体4とスプレーガン6が配置されており、給気口2とスプレーガン6との間に、給気整流機構としての給気HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)18が設けられており、排気口3と基体4との間に、排気整流板11が設けられている。
排気整流板11は開口部11hを有しており、この開口部11hは、円筒状の基体4の軸方向の長さにおける両端部に相当する位置に設けられている。
このような構造の排気整流板11を設けたことにより、塗工ブース1内の気流が整えられ、浮遊しているオーバースプレーミストを基体4の周辺から強制的に排気されるようになされ、ミスト飛散の抑制が図られる。
なお、排気整流板11の開口部hの面積が、塗工ブース1の断面積の2〜50%を占めるように設定することにより、好適な排気状態が形成できることが確かめられた。
【0053】
図6は、塗布装置200の基体4の気流の流れを示した状態図である。
図6中の破線13は、塗工ブース1内の気流、すなわちスプレー塗工時におけるミストの軌跡の状態を示している。
図6に示す構成を有する塗布装置200においては、給気口2側に、給気整流機構としてのHEPAフィルター18を設け、排気口3側に排気整流板11を設けたことにより、塗工ブース1内の気流が乱れなく排気口3に向かって流れるようになった。
【0054】
図7は、塗布装置200を、基体4の断面方向から見た状態図を示す。
図7においては幅広の塗工ブース1を有する塗布装置を示している。
図中の破線は、排気整流板11を配置したときの塗工ブース1内における気流、すなわちスプレー塗工時におけるミストの軌跡の状態を示す。
円筒状の基体4の周辺の気流13は乱れなく排気口3方向に向かって良好な状態となることが確かめられた。
しかし、塗工ブース1がきわめて幅広の場合、塗工ブース1の両端壁側に気流の淀み15が発生する傾向があることが確かめられた。
【0055】
〔第三の実施形態〕
図8に示す塗布装置300は、円筒状基体4の断面方向から見た概略構成図である。
この塗布装置300においては、図7に示した構成の塗布装置において、排気整流板11の開口部11hに、基体4方向に向かって垂直に伸張する壁部12が設けられている。
壁部12の壁面と、基体4の端部との距離Lは、20〜150mmとすることが好適である。
左右の開口部11hにそれぞれ設けられた壁部12は、円筒状の基体4の位置よりも図面方向で高い位置まで設けけるようにし、基体4を覆うように配置することが好ましい。
【0056】
図9においては、図8に示した構造の塗布装置300における塗工ブース1内の気流13、すなわちスプレー塗工時におけるミストの軌跡の状態を示す。
これによると、排気整流板に壁部12を設けたことにより、上記第二の実施形態において示した図7の気流の淀み15の発生が回避でき、気流の舞い上がり14が防止できた。
また、図10は、給気口2側から見た塗布装置の概略上面図を示す。
このように、排気整流板11に開口部11hを二箇所設けたことにより、浮遊しているオーバースプレーミストが効率よく強制的に排気されるようになった。
【0057】
〔第四の実施形態〕
図11に、図8、9に示した構成の塗布装置の応用として、円筒状基体4を複数本、塗工ブース1内に配置した例における塗布装置400の、基体4断面方向における概略構成図を示す。
基体4a〜4cの両側には、それぞれ、図8、9で示した排気整流板12が設けられている。
このような構成によると、塗工ブース1内における気流の淀みの発生を効果的に回避しながら、気流の舞い上がりの発生を防止でき、塗膜欠陥の無い良好な塗膜を、効率よく形成できた。
【実施例】
【0058】
〔実施例1〕
先ず、下記に示すように電子写真形成用の感光体作製用塗工液を調製する。
(a)下引き層の塗工液
メラミン樹脂 5重量部
酸化チタン 20重量部
シクロヘキサノン 35重量部
メチルエチルケトン 35重量部
【0059】
(b)電荷発生層の塗工液
【0060】
【化1】

【0061】
上記式(1)に示す電荷発生剤A 1重量部
ポリビニルブチラール 0.5重量部
シクロヘキサノン 40重量部
メチルエチルケトン 60重量部
ボールミル分散後、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンを加えて電荷発生層塗工液とした。
【0062】
(c)電荷輸送層の塗工液
【0063】
【化2】

【0064】
上記式(2)に示す電荷輸送剤B 4重量部
ポリカーボネート 6重量部
シクロヘキサノン 45重量部
テトラヒドロフラン 45重量部
シリコンオイル 0.001重量部
を溶解して、電荷輸送層塗工液を調合した。
【0065】
(d)保護層塗工液
【0066】
【化3】

【0067】
上記式(2)に示す電荷輸送剤B 2重量部
アルミナ 2重量部
ポリカーボネート 2重量部
シクロヘキサノン 20重量部
テトラヒドロフラン 65重量部
これらをボールミルで分散後、シクロヘキサノンとテトラヒドロフランを加えて保護層塗工液とした。
【0068】
(塗工条件)
外径60mm、長さ352mmのアルミニウム製の円筒状の基体を用意する。
上記において示した処方により調合した下引き層(UL)塗工液をスプレー法を用いて基体上に塗工し、110℃で15分間乾燥して、厚さ3.5μmの下引き層を形成した。
次に、下引き層上に、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)、保護層を、順次スプレー法を用いて塗工し、乾燥処理を施し、積層感光体試料を作製した。
なお、電荷発生層は、乾燥膜厚0.2μm、電荷輸送層は23μm、保護層は3μmに成膜した。
また、スプレ−ガンとしては、ノズル口径0.8mmのガン(明治機械製)を用い、エアー流量は20〜30L/minの範囲であるものとした。
塗工液の送液にはシリンジポンプを用い、定量でノズルに送りこむ機構とした。
【0069】
図3の塗布装置100の示すように、外壁20に囲まれた塗工ブース1内の、給気口2側と排気口3側に、整流機構として図12に示す升目構造10aを具備する格子状の整流板10を配置した。
なお、塗膜形成直前に、予め基体の表面をエアーガンを用いて高圧エアーを吹付け除塵しておいた。
上述した条件で、感光体サンプルを連続で1000本作製した。
作製した感光体を、コピー・プリンター・FAXの複合機(株式会社リコー製 IMAGIO NEO c600)に搭載して、白ベタ・ハーフトーン画像を各5枚ずつ印字し、目視観察により異常画像の有無を評価した。
【0070】
〔実施例2〕
整流機構として、給気口2側と排気口3側に、図13に示すように断面がハニカム構造の格子構造を有する整流板10を適用した。
その他の条件は、上記実施例1と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0071】
〔実施例3〕
図14の塗布装置の概略斜視図に示すように、スプレーガン6の背面側に、断面が150mm×150mmの整流板10を設置し、かつ、スプレーガン6がスプレーガン移動軸7に沿って矢印D方向に移動する際に、整流板10も追従して矢印E方向に移動するようになされている。
その他の条件は、上記実施例1と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0072】
〔実施例4〕
図15の塗布装置の概略斜視図に示すように、スプレーガン6の背面に、整流機構として断面が150mm×150mmの整流板10を設置し、スプレーガン6がスプレーガン移動軸7に沿って矢印D方向に移動する際に、整流板10も追従して矢印E方向に移動するようになされている。
更に、円筒状の基体4の背面側にも、断面が150mm×150mmの整流板10を設置し、スプレーガン6がスプレーガン移動軸7に沿って矢印D方向に移動する際に、整流板10も追従して矢印F方向に移動するようになされている。
その他の条件は、上記実施例1と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0073】
〔比較例1〕
給気口2側、及び排気口3側のいずれにも、整流機構を設置しなかった。
その他の条件は、上記実施例1と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0074】
〔比較例2〕
図16の概略断面図に示すように、整流機構として、スプレーガン6の背面側から円筒状の基体4の表面まで覆うスプレーカバー31を設置した。この例において、スプレーカバーは、スプレーガン6の位置を中心として、両方向に径が広がる両円錐形状をしているものとする。
また、円筒状の基体4の背面側にも、排気口3方向に向かって径が狭まる円錐状のスプレーカバー21を設置した。
これらスプレーカバー31、21は、スプレーガン6の移動の際にこれに追従して移動するようにした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0075】
画像評価結果を下記表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示すように、塗工ブース内の空気の流れを均一化する整流機構を設けた構成の塗布装置を用いて感光体の作製を行った実施例1〜4においては、整流機構を設けなかった比較例1に比べ、ムラ画像評価及びポチ画像評価のいずれにおいても著しく改善効果が認められた。すなわち感光体の膜質が極めて良好であり、優れた画像形成が継続的に行われたことが確かめられた。
比較例2と実施例1〜4の評価結果を比較することにより、整流機構は、断面を格子状構造に特定することにより、乱流防止効果が確実に得られ、異物付着を回避でき、良質な塗膜が形成できることが確かめられた。
【0078】
〔実施例5〕
先ず、下記に示すように電子写真形成用の感光体作製用塗工液を調製する。
(a)下引き層の塗工液
メラミン樹脂 5重量部
酸化チタン 20重量部
シクロヘキサノン 35重量部
メチルエチルケトン 35重量部
【0079】
(b)電荷発生層の塗工液
【0080】
【化4】

【0081】
上記式(1)に示す電荷発生剤A 1重量部
ポリビニルブチラール 0.5重量部
シクロヘキサノン 40重量部
メチルエチルケトン 60重量部
ボールミル分散後、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンを加えて電荷発生層塗工液とした。
【0082】
(c)電荷輸送層の塗工液
【0083】
【化5】

【0084】
上記式(2)に示す電荷輸送剤B 4重量部
ポリカーボネート 6重量部
シクロヘキサノン 45重量部
テトラヒドロフラン 45重量部
シリコンオイル 0.001重量部
を溶解して、電荷輸送層塗工液を調合した。
【0085】
(d)保護層塗工液
【0086】
【化6】

【0087】
上記式(2)に示す電荷輸送剤B 2重量部
アルミナ 2重量部
ポリカーボネート 2重量部
シクロヘキサノン 20重量部
テトラヒドロフラン 65重量部
これらをボールミルで分散後、シクロヘキサノンとテトラヒドロフランを加えて保護層塗工液とした。
【0088】
(塗工条件)
外径60mm、長さ352mmのアルミニウム製の円筒状の基体を用意する。
上記において示した処方により調合した下引き層(UL)塗工液をスプレー法を用いて基体上に塗工し、110℃で15分間乾燥して、厚さ3.5μmの下引き層を形成した。
次に、下引き層上に、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)、保護層を、順次スプレー法を用いて塗工し、乾燥処理を施し、積層感光体試料を作製した。
なお、電荷発生層は、乾燥膜厚0.2μm、電荷輸送層は23μm、保護層は3μmに成膜した。
この例においては、図8に示す塗布装置300を適用した。
スプレーガンとしては、ノズル口径0.8mmのガン(明治機械製)を用い、エアー流量は20〜30L/minの範囲であるものとした。
塗工液の送液にはシリンジポンプを用い、定量でノズルに送りこむ機構とした。
【0089】
また、給気口2側には、給気整流機構(HEPAフィルター)18を配置し、排気口3側には、その開口部に壁部12を具備する排気整流板11を設けた。
具体的な寸法としては、HEPAフィルター18は縦×横が600mm×600mm、奥行き200mmである。排気整流板11の開口部の寸法は縦×横が300mm×60mmである。また、図中Lは120mmであるものとした。
なお、成膜する前工程として、基体4の表面をエアーガンを用いて高圧エアーを噴き付けて除塵処理を施した。
【0090】
上述した条件により、感光体サンプルを500本作製した。
作製した感光体サンプルを、コピー・プリンター・FAXの複合機(株式会社リコー製、商品名 IMAGIO NEOc600)を搭載して、白ベタ・ハーフトーン画像を各5枚ずつ印刷し、目視観察により異常画像の有無を評価した。
【0091】
〔実施例6〕
図8の塗布装置300には、排気整流板11と、その開口部に壁部12が設けられているが、この例においては、壁部12の図8中における高さが基体4の軸の位置と等しくなるようにした。
すなわち壁部12の図中の上方端部が基体4の軸と同じ高さになるようにした。
その他の条件は、実施例5と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0092】
〔実施例7〕
この例においては、図11に示す構成の塗布装置400を適用した。
すなわち塗工ブース1内に三本の円筒状の基体4a〜4cを並べて配置し、同時にスプレー塗工を行なった。
その他の条件は、実施例5と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0093】
〔比較例3〕
図8に示した構成の塗布装置300において、給気口2側、排気口3側のいずれにも整流機構を設けなかったものを適用した。
その他の条件は、実施例5と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0094】
〔比較例4〕
図7に示した構成の塗布装置200において、外壁に囲まれた塗工ブース1内の給気口2側に、給気整流機構として、市販のHEPAフィルター18を配置し、排気口3側に排気整流板11を配置した。
なお、図8のような壁部12は設けないこととした。
上記のように壁部12が無いので、気流の状態としては、図7に示すように、壁側に気流の淀み15が発生しており、さらには気流の舞い上がり14が確認された。
その他の条件は、実施例5と同様として感光体サンプルを作製し、同様の評価を行った。
【0095】
実施例5〜7、比較例3、4の画像評価結果を下記表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
表2に示すように、塗工ブース1内の空気の流れを均一化する整流機構として、給気口2側に給気整流機構としてHEPAフィルター18を配置し、かつ排気口3側に、開口部に壁部12が設けられている排気整流板11を配置した塗布装置を用いた実施例5〜7においては、整流機構を設けなかった比較例3に比べ、ムラ画像評価及びポチ画像評価のいずれにおいても著しく改善効果が認められた。すなわち感光体の膜質が極めて良好であり、優れた画像形成が継続的に行われたことが確かめられた。
比較例4と実施例5〜7の評価結果を比較することにより、排気整流板11の開口部に壁部12を設けることにより、気流の淀み15の発生が効果的に回避でき、良質の感光体成膜が可能となり、ムラ画像評価及びポチ画像評価のいずれにおいても著しい改善効果が認められた。
また、実施例5〜7のムラ画像評価及びポチ画像評価のいずれもが極めて良好であったことから、壁部12と基体4との距離Lは、20〜150mmとすることが好ましいと判断される。また、排気整流板11の開口部は、塗工ブース断面積の2〜50%とすることが好ましいと判断される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】従来の塗布装置の概略構成図を示す。
【図2】従来の塗布装置を適用したときの気流の軌跡の状態図を示す。
【図3】本発明の塗布装置の一例の概略構成図を示す。
【図4】本発明の塗布装置を適用したときの気流の軌跡の状態図を示す。
【図5】本発明の塗布装置の他の一例の概略構成図を示す。
【図6】図5に示す構成の塗布装置を適用したときの気流の軌跡の状態図を示す。
【図7】本発明の塗布装置の他の一例の概略構成と、これを適用したときのスプレーミストの軌跡の状態図を示す。
【図8】本発明の塗布装置の他の一例の概略構成図を示す。
【図9】図8に示す構成の塗布装置を適用したときの気流の軌跡の状態図を示す。
【図10】本発明の塗布装置を給気口2側から見たときの概略上面図を示す。
【図11】本発明の塗布装置の他の一例の概略構成図を示す。
【図12】図3の塗布装置が具備している整流板10の一例の概略平面図を示す。
【図13】図3の塗布装置が具備している整流板10の他の一例の概略平面図を示す。
【図14】実施例3において適用した塗布装置の概略斜視図を示す。
【図15】実施例4において適用した塗布装置の概略斜視図を示す。
【図16】比較例2において適用した塗布装置の構成、及び塗工工程の説明図を示す。
【符号の説明】
【0099】
1 塗工ブース
2 給気口
3 排気口
4 基体
4a〜4c 基体
5 基体駆動軸
6 スプレーガン
7 スプレーガン移動軸
8 スプレー液
9 オーバースプレーミスト
10 整流板
10a 升目構造
10b ハニカム構造
11 排気整流板
11h 開口部
12 壁部
13 気流
14 舞い上がり気流
15 気流の淀み
18 給気整流機構(給気HEPAフィルター)
20 外壁
21 スプレーカバー
31 スプレーカバー
100 塗布装置
200 塗布装置
300 塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の基体上に、成膜材料をスプレー法にて吹き付けて、電荷発生層、電荷輸送層、被覆層のうちの少なくともいずれか一層を形成する塗布装置であって、
前記基体を収納する塗工ブースと、前記塗工ブース内で前記基体を保持する基体保持手段と、スプレーガンと、整流機構とを具備しており、
前記整流機構により前記塗工ブース内の空気の流れが均一化するようになされていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記円筒状の基体の成膜面は、前記スプレーガンの前記成膜材料吹き付け方向に対して垂直方向となるように保持されており、
前記スプレーガンの背面に給気口が設けられており、
前記基体の背面側に排気口が設けられており、
前記給気口と、前記排気口とは、前記基体を介して対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記整流機構が、前記給気口、前記排気口の、少なくともいずれか一方に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記基体保持手段により保持された前記基体と、前記スプレーガンとは、相対的に前記スプレーガンが前記基体を中心とした円周方向、及び前記基体の軸方向に移動可能となされており、
前記整流機構は、前記スプレーガンに追従して移動するようになされていることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記整流機構が、格子状構造であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記基体保持手段により保持された前記基体と、前記スプレーガンとは、相対的に前記スプレーガンが前記基体を中心とした円周方向、及び前記基体の軸方向に移動可能となされており、
前記排気口は、前記スプレーガンに追従して移動するようになされていることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の塗布装置を用いて、基体上に成膜を行うことを特徴とする塗布方法。
【請求項8】
請求項7の塗布方法を用いて作製されたことを特徴とする感光体。
【請求項9】
請求項8の感光体を適用していることを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
円筒状の基体上に、成膜材料をスプレー法にて吹き付けて、電荷発生層、電荷輸送層、被覆層のうちの少なくともいずれか一層を形成する塗布装置であって、
前記基体を収納し、給気口と排気口とを具備する塗工ブースと、
前記塗工ブース内に、前記基体を保持する基体保持手段と、スプレーガンとが設けられており、
前記給気口と前記基体との間には、給気整流機構を有し、
前記排気口と前記基体との間には前記スプレーガンから前記排気口へと通じる開口部を具備する排気整流板を有していることを特徴とする塗布装置。
【請求項11】
前記開口部は、前記円筒状の基体の軸方向長さにおける端部に相当する位置に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の塗布装置。
【請求項12】
前記排気整流板の開口部には、前記基体方向に伸張する壁部が設けられており、
前記壁部の壁面と、前記基体端部との距離Lが、20〜150mmであることを特徴とする請求項11に記載の塗布装置。
【請求項13】
前記壁部は、前記基体を、当該基体の軸断面方向において覆って配置されていることを特徴とする請求項12に記載の塗布装置。
【請求項14】
前記排気整流板の開口部は、前記塗工ブース断面積の2〜50%であることを特徴とする請求項13に記載の塗布装置。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか一項に記載の塗布装置を用いて、基体上に成膜を行うことを特徴とする塗布方法。
【請求項16】
請求項15に記載の塗布装置を用いて作製されたことを特徴とする感光体。
【請求項17】
請求項16に記載の感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−275865(P2007−275865A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218311(P2006−218311)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】