説明

塗布装置および塗布方法

【課題】MEMSや貫通電極を有する基板の作製などに好適な塗布装置と塗布方法を提供する。
【解決手段】ノズルに縦方向(Y軸方向)に往復動させつつX軸方向に徐々に移動する。そして縦方向の塗布が終了したら横方向(X軸方向)に往復動させつつY軸方向に徐々に移動する。このように1回の塗布でノズルが基板Wの表面を2回スキャニングしつつ塗布し、1回目のスキャニングと2回目のスキャニングの方向を90°異ならせることで塗り残しをなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に被膜を形成する場合などに用いる塗布装置および塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハなどの基板表面に被膜を形成する塗布装置として、特許文献1に開示されるように、基板を載置するステージにヒータを設け、このステージをx、y、z軸に沿って移動可能としたものがある。特にこの塗布装置では、基板の凹凸面に噴霧されるレジスト微粒子を運ぶ気流の速度を高速とし、且つワークに達する時点でのレイノルズ数Reが4300を超えるようにすることで凹凸面に均一な厚さの被膜を形成するようにしている。
【特許文献1】特開2006−055756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基板が大型化するにつれて、基板を載置するステージも大きくなる。そしてステージにホットプレートとしての機能を持たせるべく、ヒータなどを埋設すると、ステージの重量が増す。このように大型化し且つ重量が増したステージを特許文献1に記載されるように、x、y、z軸に沿って移動させるには限界がきている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明は、基板を載置するステージと、塗布液を基板表面に供給するノズルを備えた塗布装置において、前記ステージは基板を加熱するホットプレートなどの加熱処理手段からなり、前記ノズルはステージと平行な平面に沿って移動可能とした。
【0005】
前記加熱処理手段としては、例えばホットプレートなどを挙げることができる。ホットプレートの寸法は基板よりも小さくして、塗布中に塗布液がホットプレート表面に付着することを防止することが好ましい。また、前記ノズルにはノズルが移動することで風を受けてノズルから供給される塗布液が飛散しないように飛散防止用のカバーを設けることが好ましい。
【0006】
また、本発明に係る塗布方法は1回の塗布で、前記ノズルが基板の表面を2回スキャニングしつつ塗布し、1回目のスキャニングと2回目のスキャニングの方向を90°異ならせるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱処理手段からなるステージを固定したことで、装置全体がコンパクトになり、またノズルをステージと平行な平面に沿って移動可能、つまりx軸及びy軸方向に移動可能としたことで、塗布液の塗り残しが生じにくい。
【0008】
特に本発明に係る塗布装置及び塗布方法は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)のような超微細加工を要する半導体や、厚膜用の配線基板をホトリソグラフィ技術を利用して製造する際に有効である。
【0009】
即ち、MEMSをホトリソグラフィ技術を利用して製造する際に、従来からホトレジスト膜を基板表面に形成している。特に、MEMSにはマイクロメータサイズのセンサ、アクチュエータなども含まれ、半導体回路と異なり基板表面にその深さが100〜1000μm程度の凹凸部が形成されている。このような凹凸部にエッチングなどの微細加工を施す場合、特に凹部に微細加工を施したい場合には、凹部に形成されたフォトレジスト膜の膜厚が100〜1000μmと非常に厚膜であると、現像処理に要する処理時間が著しく長くなるためスループットが低下する。したがって、そのような問題が生じないように凹部に形成される膜は凸部と同程度の膜厚で形成されることが望ましい。また凹部の側壁部もエッチング処理時に保護する必要がある。以上のことから、凹凸部表面に均一な厚さのレジスト膜を形成する必要がある。
【0010】
凹凸部表面に均一な厚さのレジスト膜を形成する先行技術として、特開2003−236799号公報には、立体構造を持つサンプル上にスプレーコーティングにより成膜した後、サンプルをシンナー蒸気を多量に含む雰囲気中にある時間置いてレジスト剤の拡散移動を促し、サンプルのレジスト膜に含まれる微小な穴や膜厚の局所的な不均一を修正して膜厚の均一化を図ることが開示されている。
【0011】
しかしながらこの方法では、凹部の底に塗布されたレジストにピンホールが発生しやすい。ピンホールがあるままリソグラフィを行なうと、形成されるパターンの欠陥となるので、製品不良の原因となる。そこで、スプレーコーティングする際に、膜厚を増やしてレジストの量を多くすれば、膜中にピンホールが生じる確率は減少するが、レジスト膜の厚膜化は最適な露光・現像条件の局所的変化となりオーバー露光の条件を使わざるをえず、パターン形状が歪んだり、解像度を落とす結果となる。
【0012】
凹凸部表面に均一な厚さのレジスト膜を形成する別の先行技術として、特開2005−334754号公報がある。この公報には、塗布膜形成装置の構成として、塗布液を粒子状に噴霧する噴霧ノズルと、該噴霧ノズルから噴霧される塗布液の粒子の状態を検出する粒子状態検出部と、上記塗布対象物表面から噴霧ノズルまでの高さを調整するノズル高さ調整手段とを有し、上記噴霧ノズルは、塗布液の噴霧用気体の圧力を調整する噴霧圧調整手段と、塗布液の噴霧量を調整する噴霧量調整手段とを備え、塗布対象物を載置するワークステージは上記塗布対象物を加熱する温度調整手段と、上記塗布対象物表面に形成された塗布膜の状態を検出する膜状態検出部と、上記塗布対象物の温度を検出する対象物温度検出部とを備え、上記粒子状態検出部と膜状態検出部及び対象物温度検出部から検出された情報に基づき、上記ノズル高さ調整手段、噴霧圧調整手段、噴霧量調整手段及び温度調整手段の内の一つ、又はこれらを組み合わせて制御することで均一な厚さの被膜を形成することが記載されている。
【0013】
しかしながら、噴霧圧調整手段、噴霧量調整手段、温度調整手段、膜状態検出部、対象物温度検出部など多くの制御ファクターが存在するため制御が複雑になるとともに、これらのファクターだけでは凹凸表面に均一な厚さの被膜を形成することができない。
【0014】
本発明によれば、微細な凹凸を有する基板の表面に均一な厚さ、即ち凹部の底面、凹部の側壁および凸部の上面に連続した均一な厚さの被膜(レジスト膜)を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明に係る塗布装置を添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る塗布装置を組み込んだ被膜形成装置の概略構成を示す図、図2は本発明に係る塗布装置の平面図、図3(a)は塗布ノズルの断面図、(b)は塗布ノズルを下から見た図、図4はノズル洗浄部の断面図である。
【0016】
被膜形成装置は中央にロボット1の周囲にローダー2、標準カップ3、塗布装置4、加熱・冷却装置5及び減圧脱泡装置6を配置している。
【0017】
塗布装置4は中央にホットプレート10を配置し、このホットプレート10にリフトピンの挿通孔11を形成し、ホットプレート10が基板Wの載置ステージを兼ねる構成になっている。尚、ホットプレート10の外径寸法は基板Wの外径寸法よりも小さくし、塗布液がホットプレート10の表面にかからないようにし、メンテナンス性を高めている。
【0018】
またホットプレート10の側方にX軸方向にガイドレール12を設け、このガイドレール12にY軸方向のガイドレール13を摺動可能に係合し、Y軸方向のガイドレール13に塗布液を噴霧するノズル14を取付け、ガイドレール13に沿ってノズル14を移動可能としている。尚、ガイドレール13はガイドレール12に沿ってX軸方向に移動可能であるため、ノズル14はXY方向、つまりホットプレート10(ステージ)の上面と平行な面に沿って移動可能である。
【0019】
ノズル14は1対設けられ、各ノズル14にはレジスト(塗布液)供給管15、窒素ガス供給管16が接続され、また1対のノズル14は飛散防止のためにコーン状カバー17内に収納されている。
【0020】
また、ノズル14の待機位置にはカップ状をなす洗浄装置18が配置されている。この洗浄装置18の底部にはドライエアの供給管19とドレイン排出管20が接続されている。
【0021】
ノズル14を洗浄するには前記窒素ガス供給管16に洗浄液供給管21を接続し、窒素ガスによって洗浄液をノズル14に送り込み、ノズル14から洗浄液を噴出してカバー17内側面を洗浄し、同時にドライエア供給管19からのエアでカバー17内側面を乾かす。
【0022】
また、前記ホットプレート10の外側には排気口22が開口している。この排気口22はその下側に設けられた排気チャンバー23につながっている。この排気チャンバー23の底面は傾斜面とされ、最も低くなった位置にドレイン排出管24が接続され、排気チャンバー23の上面には排気管25が接続されている。
【0023】
以上において、表面に微細な凹凸がある基板に均一な厚さで被膜を形成する方法を図6〜8に基づいて説明する。図6(a)および(b)は被膜形成方法の第1の塗布工程を説明した図、図7(a)および(b)は被膜形成方法の第2の塗布工程を説明した図、図8(a)および(b)はスプレー塗布の一例を示す図である。
【0024】
塗布前の基板Wの表面には凹部31と凸部32が連続して形成されている。第1の塗布工程では、図6(a)に示すように、基板Wをホットプレート10上にセットし、次いで前記塗布装置4のスプレーノズル14でもよいが、図6(b)に示すように、スピンコータのノズル34から基板Wの表面に向けて塗布液35を供給する。塗布液35はホトレジスト塗布液であり、ポジ型又はネガ型のいずれでも良い。ここで凹凸部は非常に高アスペクト比であることから供給された塗布液は凹部31の底部まで届きにくく、図6(b)に示ように、塗布液の大半は、凸部32の少なくとも中央の深さから上面に至るまでの領域に被膜36が形成される。なお、第1の塗布工程は、スピンコート法やスプレーコート法にこだわらず、スリットコート法等、基板に塗布膜が形成されるのであれば、いかなる塗布方法でも利用することができる。
【0025】
上記の如くして第1の塗布工程で被膜が形成されたら、ホットプレート10によって被膜36を加熱してリフローする。加熱温度は20〜100℃とし、加熱時間は1〜5minとする。この加熱処理によって、図6(c)に示すように、被膜36は下方に下がり凹部31の底部から壁部の中間深さ位置に至るまで被膜37を形成する。この被膜37によって、凹部31の少なくとも底部から壁部中間深さ位置に至るまでほぼ均一な厚さの被膜が形成される。
【0026】
次いで第2の塗布工程を施す。第2の塗布工程では、前記塗布装置4のスプレーノズル14を用いて塗布液38を基板Wの表面に向けて噴霧する。
【0027】
なお、噴霧の仕方は任意であるが、例えば図8(a)に示すようにノズル14に縦方向(Y軸方向)に往復動させつつX軸方向に徐々に移動する。そして縦方向の塗布が終了したら横方向(X軸方向)に往復動させつつY軸方向に徐々に移動する。このように1回の塗布でノズル14が基板Wの表面を2回スキャニングしつつ塗布し、1回目のスキャニングと2回目のスキャニングの方向を90°異ならせることで塗り残しをなくすことができる。
【0028】
スプレーノズル14から噴霧された塗布液38は、凹部31の底部までは届きにくく、図7(a)に示すように、凹部31の中間深さ位置から凸部32の上面に至るまでの領域に被膜39が形成される。
【0029】
上記の如くして第2の塗布工程で被膜39が形成されたら、前記ホットプレート10によって被膜39を加熱する。加熱処理の条件は、例えば70〜150℃で1〜3minとする。この被膜39と前記被膜37によって、図7(b)に示すように、凹部31及び凸部32の全面に均一な厚さの被膜40が形成される。
【0030】
なお、被膜39は凸部に形成されるため、特に凸部に微細加工を施す必要が無い場合には、塗布液38は感光性の材料(いわゆるホトレジスト塗布液)でなくても良く、スプレー塗布に適し、かつアルカリ現像液に対して不溶性あるいは難溶性の材料であれば良い。
【0031】
このようにしてほぼ均一な厚さの被膜を形成した後、例えば基板Wの凹部31に貫通電極用のホールを形成したい場合には、凹部31に形成された被膜の一部を選択的に露光し、塗布液がポジ型レジスト液であった場合には、続くアルカリ水溶液(例えば2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)による現像工程で光が当たったところの被膜が除去されるので、それをマスクとして公知のエッチング処理を施し、次いで残りの被膜を剥離液やアッシング処理などにより除去することで、凹部31の底部にホールが形成された基板Wを得ることができる。
【0032】
このように凹部に形成されるレジスト膜厚を薄く形成できるので、現像処理にかかる時間を大幅に短縮することができる。尚、実施例では、先に第1の塗布工程を行ったが、第2の塗布工程を先に行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る被膜形成方法は、ホトリソグラフィー技術を利用したMEMSや貫通電極を有する基板の作製などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る塗布装置を組み込んだ被膜形成装置の概略構成を示す図
【図2】本発明に係る塗布装置の平面図
【図3】(a)は塗布ノズルの断面図、(b)は塗布ノズルを下から見た図
【図4】ノズル洗浄部の断面図
【図5】排気部の断面図
【図6】(a)〜(c)は本発明に係る塗布装置を用いた被膜形成方法の第1の塗布工程を説明した図
【図7】(a)及び(b)は本発明に係る塗布装置を用いた被膜形成方法の第2の塗布工程を説明した図
【図8】(a)及び(b)はスプレー塗布方法の一例を示す図
【符号の説明】
【0035】
1…ロボット、2…ローダー、3…標準カップ、4…塗布装置、5…加熱・冷却装置、6…減圧脱泡装置、10…ホットプレート、11…リフトピンの挿通孔、12…X軸方向のガイドレール、13…Y軸方向のガイドレール、14…ノズル、15…レジスト(塗布液)供給管、16…窒素ガス供給管、17…カバー、18…ノズル洗浄装置、19…ドライエア供給管、20…ドレイン排出管、21…洗浄液供給管、22…排気口、23…排気チャンバー、24…ドレイン排出管、25…排気管、31…凹部、32…凸部、34…スピンコータのノズル、35,38…塗布液、36,37,39,40…被膜、W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、塗布液を基板表面に供給するノズルを備えた塗布装置において、前記ステージは基板を加熱する加熱処理手段からなり、前記ノズルはステージと平行な平面に沿って移動可能とされていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、前記加熱処理手段の寸法は基板よりも小さく、また前記ノズルには飛散防止用のカバーが設けられていることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塗布装置を用いた塗布方法であって、1回の塗布で前記ノズルが基板の表面を2回スキャニングしつつ塗布し、1回目のスキャニングと2回目のスキャニングの方向を90°異ならせることを特徴とする塗布方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−253165(P2009−253165A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101800(P2008−101800)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】