説明

塗布装置および塗布装置における複数のノズルのピッチの調整方法

【課題】塗布装置において、流動性材料を吐出する複数のノズルのピッチを高精度に調整する。
【解決手段】ノズルから基板に向けて有機EL液を連続的に吐出して塗布する塗布装置の塗布ヘッド14では、第3ノズル17cを除く第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dが、ノズル取付部141に対して副走査方向に移動可能に取り付けられる。塗布装置では、4本のノズルから吐出される有機EL液の4本の液柱がノズル位置検出部の光学系により観察され、光学系による観察結果に基づいて求められた移動量に従って、ノズル位置調整部の3つのピッチ調整機構により第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dが副走査方向に個別に移動されることによりノズルピッチを高精度に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布装置、および、当該塗布装置における複数のノズルのピッチの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機EL(Electro Luminescence)材料を利用した有機EL表示装置の開発が行われており、例えば、高分子有機EL材料を用いたアクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置の製造では、ガラス基板(以下、単に「基板」という。)に対して、TFT(Thin Film Transistor)回路の形成、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)電極の形成、隔壁の形成、正孔輸送材料を含む流動性材料(以下、「正孔輸送液」という。)の塗布、加熱処理による正孔輸送層の形成、有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)の塗布、加熱処理による有機EL層の形成、陰極の形成、および、絶縁膜の形成による封止が順次行われる。
【0003】
有機EL表示装置の製造において、正孔輸送液または有機EL液を基板に塗布する装置の1つとして、特許文献1および特許文献2に示すように、流動性材料を連続的に吐出する複数のノズルを、基板に対して主走査方向および副走査方向に相対移動することにより、基板上の塗布領域に流動性材料をストライプ状に塗布する装置が知られている。
【0004】
特許文献1および特許文献2の装置では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と互いに色が異なる3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液が3本のノズルから吐出され、基板上の塗布領域に予め形成されている隔壁間の3つの溝に塗布される。当該装置では、3本のノズルが保持部材により一体的に保持されており、基板に垂直な支持軸を中心として当該保持部材を回動して3本のノズルの副走査方向におけるピッチを小さくすることにより、有機EL液の塗布ピッチを狭くすることができる。
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【特許文献2】特開2003−10755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような装置では通常、ノズルのピッチ調整は作業員の手作業により行われており、調整結果の確認も作業員が塗布結果を直接目視することにより行われている。このため、高精度のピッチ調整が困難であり、調整に要する作業時間および労力も多大なものとなっている。また、保持部材に対するノズルの取付誤差やノズルの製造誤差等によりノズルのピッチが不均一になっている場合、ピッチが均一になるように調整する必要があるが、特許文献1および特許文献2では、ピッチを均一化するための調整機構については開示されていない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、塗布装置の複数のノズルのピッチを高精度に調整することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板に向けて流動性材料を連続的に吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全てが前記基板の主面に平行な第1の方向に関して個別に移動可能に取り付けられるノズル取付部と、前記基板の前記主面に平行であって前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記複数のノズルを前記ノズル取付部と共に前記基板に対して相対的に移動する主走査機構と、前記複数のノズルおよび前記ノズル取付部を前記基板に対して前記第1の方向に相対的に移動する副走査機構と、前記複数のノズルから吐出される前記流動性材料の複数の液柱、前記複数のノズルから吐出されて基板に塗布された前記流動性材料のパターン、または、前記複数のノズルを観察する光学系と、前記光学系による観察結果に基づいて求められた移動量に従って前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全てを前記第1の方向に個別に移動することにより前記第1の方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離を調整するピッチ調整機構とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗布装置であって、前記光学系を介して前記流動性材料の前記複数の液柱、前記流動性材料の前記パターン、または、前記複数のノズルの画像を取得する撮像部と、前記画像から前記第1の方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離を検出するピッチ検出部とをさらに備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の塗布装置であって、前記ピッチ調整機構を駆動する駆動部と、前記ピッチ検出部の検出結果に基づいて前記駆動部を制御する調整機構制御部とをさらに備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の塗布装置であって、前記主走査機構および前記副走査機構により、前記複数のノズルおよび前記ノズル取付部が前記ピッチ調整機構から独立して移動する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、前記光学系により、前記複数のノズルから吐出される前記流動性材料の前記複数の液柱が観察される。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の塗布装置であって、前記撮像部により、前記複数のノズルから吐出される前記流動性材料の前記複数の液柱の画像が取得され、前記塗布装置が、前記画像に基づいて前記複数の液柱のそれぞれの形状と予め定められている所定の液柱形状との差異を検出する液柱状態検出部をさらに備える。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、前記光学系により、基板に塗布された前記流動性材料の前記パターンが観察される。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布装置であって、前記流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料を含む。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の塗布装置であって、前記画素形成材料が、有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板に向けて流動性材料を連続的に吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全てが前記基板の主面に平行な第1の方向に関して個別に移動可能に取り付けられるノズル取付部と、前記基板の前記主面に平行であって前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記複数のノズルを前記ノズル取付部と共に前記基板に対して相対的に移動する主走査機構と、前記複数のノズルおよび前記ノズル取付部を前記基板に対して前記第1の方向に相対的に移動する副走査機構と、前記主走査機構および前記副走査機構による前記複数のノズルおよび前記ノズル取付部の移動から独立して配置され、前記複数のノズルの全てまたは1つの除く全てを前記第1の方向に個別に移動することにより前記第1の方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離を調整するピッチ調整機構とを備える。
【0017】
請求項11に記載の発明は、複数のノズルから基板に向けて流動性材料を連続的に吐出しつつ前記基板の主面に平行な主走査方向に前記複数のノズルを移動することにより前記基板に前記流動性材料を塗布する塗布装置において、前記複数のノズルの前記主走査方向に垂直な副走査方向に関するピッチの調整方法であって、a)複数のノズルから吐出される流動性材料の複数の液柱、前記複数のノズルから吐出されて基板に塗布された前記流動性材料のパターン、または、前記複数のノズルを光学系を介して観察する工程と、b)前記a)工程における観察結果に基づいて前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全ての副走査方向への移動量を求める工程と、c)前記移動量に従って前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全てを前記副走査方向に個別に移動することにより前記副走査方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離を調整する工程とを備える。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のピッチの調整方法であって、前記a)工程において、前記光学系を介して前記流動性材料の前記複数の液柱、前記流動性材料の前記パターン、または、前記複数のノズルの画像が取得され、前記b)工程において、前記画像に基づいて前記移動量が求められる。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のピッチの調整方法であって、前記複数のノズルが主走査方向に関して離れて配列され、前記a)工程において、前記複数のノズルが前記主走査方向に移動されて前記光学系による観察位置に順次位置するとともに前記流動性材料の前記複数の液柱、または、前記複数のノズルの画像が取得される。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項12または13に記載のピッチの調整方法であって、前記a)工程において、前記複数のノズルから吐出される前記流動性材料の前記複数の液柱の画像が取得され、前記画像に基づいて前記複数の液柱のそれぞれの形状と予め定められている所定の液柱形状との差異が検出される。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項11ないし14のいずれかに記載のピッチの調整方法であって、前記流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料を含む。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載のピッチの調整方法であって、前記画素形成材料が、有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、複数のノズルのピッチを高精度に調整することができる。請求項2および12の発明では、複数のノズルのピッチの検出に要する時間を短縮することができる。請求項3の発明では、複数のノズルのピッチを自動的に調整することができる。請求項4および10の発明では、主走査機構および副走査機構により移動する部位を小型化することができる。請求項6および14の発明では、装置の構成を簡素化しつつ液柱形状の確認をすることができる。請求項13の発明では、装置の構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置1の構成を示す平面図であり、図2は塗布装置1の正面図である。塗布装置1は、平面表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)9に画素形成材料を含む流動性材料を塗布する装置である。本実施の形態では、塗布装置1において、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro Luminescence)表示装置用の基板9に、有機EL材料および溶媒(例えば、メシチレン)を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)が塗布される。
【0025】
図2に示すように、塗布装置1は、基板9を保持する基板保持部11を備え、基板保持部11は内部にヒータによる加熱機構(図示省略)を備える。塗布装置1は、また、図1および図2に示すように、基板保持部11を基板9の主面に対して平行な所定の方向(すなわち、図1中のY方向であり、以下、「副走査方向」という。)に水平移動するとともに垂直方向(すなわち、Z方向)に向く軸を中心として回転する基板移動機構12、基板9上に形成されたアライメントマーク(図示省略)を撮像して検出するアライメントマーク検出部13、基板保持部11上の基板9に向けて4本のノズル17から有機EL液を連続的に吐出する吐出機構である塗布ヘッド14、塗布ヘッド14を基板9の主面に平行であって副走査方向とは垂直な方向(すなわち、図1中のX方向であり、以下、「主走査方向」という。)に水平移動するヘッド移動機構15、主走査方向に関して基板保持部11の両側に設けられるとともに塗布ヘッド14からの有機EL液を受ける2つの受液部16、塗布ヘッド14の4本のノズル17に同一種類の有機EL液を供給する流動性材料供給部18、および、これらの構成を制御する制御部2を備える。
【0026】
塗布ヘッド14では、4本のノズル17が、図1中のX方向(すなわち、主走査方向)に関して略直線状に離れて配列されるとともに図1中のY方向(すなわち、副走査方向)に僅かにずれて配置される。本実施の形態では、隣接する2本のノズル17の間の副走査方向に関する距離が、基板9の塗布領域91(図1中において破線で囲んで示す。)上に予め形成されている主走査方向に伸びる隔壁間のピッチ(以下、「隔壁ピッチ」という。)の3倍に等しくなるように調整される。ノズル17の間の距離の調整方法については後述する。
【0027】
図3および図4はそれぞれ、塗布ヘッド14を示す正面図および平面図である。図3および図4に示すように、塗布ヘッド14は、基板9に向けて有機EL液を連続的に吐出する4本のノズル(以下、4本のノズルを区別して説明する場合、(−X)側から順に「第1ノズル17a」、「第2ノズル17b」、「第3ノズル17c」、「第4ノズル17d」という。)、および、当該4本のノズルが取り付けられるノズル取付部141を備える。なお、図3では、ノズル取付部141の第1ノズル17a近傍の部位を断面にて示している。
【0028】
図4に示すように、ノズル取付部141には、(−Y)側のエッジから(+Y)方向(すなわち、副走査方向)に伸びる3つのスロット部142が形成されており、図3に示すように、スロット部142の上部にはアリ溝(すなわち、Y方向に垂直な断面が略台形状の溝)が形成されている。塗布ヘッド14では、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの板状部材172が当該アリ溝と嵌合することにより、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dがノズル取付部141に対して取り付けられる。第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dは、それぞれの板状部材172がアリ溝に沿って進退することにより、副走査方向に関して個別に移動可能とされる。
【0029】
第1ノズル17aの(−X)側には、第1ノズル17aをノズル取付部141に対して固定する第1ノズル固定部171aが設けられる。図3に示すように、第1ノズル固定部171aは、ノズル取付部141に形成されたネジ穴と螺合する固定ネジ1711、固定ネジ1711が挿入される円筒状のゴム1712、および、固定ネジ1711の頭とゴム1712との間に配置される座金1713,1714を備える。
【0030】
第1ノズル固定部171aでは、固定ネジ1711が締められることにより、ゴム1712が座金1714に押圧されて横方向に広がるように変形する。そして、ゴム1712が、第1ノズル17aの板状部材172をスロット部142のアリ溝の(+X)側の内側面に向けて押圧することにより、第1ノズル17aがノズル取付部141に対して固定される。第1ノズル17aを固定する際には、ゴム1712の変形量(すなわち、第1ノズル17aを固定する力)を一定にするため、座金1713の下面がノズル取付部141に当接するまで固定ネジ1711を締める。
【0031】
図3および図4に示すように、塗布ヘッド14では、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの(+X)側に、第2ノズル固定部171bおよび第4ノズル固定部171dが設けられる。第2ノズル固定部171bおよび第4ノズル固定部171dの構造は第1ノズル固定部171aと同様であり、固定ネジを締めることにより第2ノズル17bおよび第4ノズル17dをノズル取付部141に固定し、固定ネジを緩めることにより、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの副走査方向への移動を可能にする。
【0032】
一方、第3ノズル17cは、ノズル取付部141に固定して取り付けられており、ノズル取付部141に対して移動することはない。換言すれば、塗布ヘッド14では、4本のノズルのうち1本を除く他の全てのノズル(すなわち、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17d)が、ノズル取付部141に対して副走査方向に移動可能に取り付けられる。塗布装置1では、後述するノズル位置の調整時に、第3ノズル17cの位置を基準として他の3本のノズルの位置が調整される。
【0033】
図1に示す塗布装置1では、4本のノズル17がノズル取付部141(図4参照)に固定された状態にて、ヘッド移動機構15により塗布ヘッド14が有機EL液を連続的に吐出しつつ主走査方向に移動し、塗布ヘッド14の主走査方向への移動が1回行われる毎に、基板移動機構12により基板9が副走査方向にステップ移動する。そして、ノズル17の基板9に対する主走査方向および副走査方向への相対移動が繰り返されることにより、基板9に有機EL液がストライプ状に塗布される。塗布装置1では、ヘッド移動機構15および基板移動機構12が、4本のノズル17をノズル取付部141と共に基板9に対して主走査方向および副走査方向に相対的に移動する主走査機構および副走査機構となる。
【0034】
図1および図2に示すように、塗布装置1は、ノズル17の副走査方向に関する位置を調整するノズル位置調整部3、および、ノズル17の副走査方向に関する位置を検出するノズル位置検出部4をさらに備え、これらの構成も制御部2により制御される。塗布装置1では、ノズル位置調整部3およびノズル位置検出部4が塗布ヘッド14とは個別に設けられており、4本のノズル17およびノズル取付部141は、ヘッド移動機構15および基板移動機構12により、ノズル位置調整部3およびノズル位置検出部4から独立して移動する。換言すれば、ノズル位置調整部3およびノズル位置検出部4は、ヘッド移動機構15および基板移動機構12による基板9に対する塗布ヘッド14の相対移動から独立して配置される。
【0035】
ノズル位置調整部3は、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dにそれぞれ対応する3組のピッチ調整機構31およびステッピングモータ32を備える。図5は、第1ノズル17aに対応するピッチ調整機構31およびステッピングモータ32を、塗布ヘッド14と共に示す正面図である。図5では、ノズル取付部141の一部を、第1ノズル17aの中心軸を含む断面にて示している。
【0036】
図5に示すように、ピッチ調整機構31は、第1ノズル17aの下方に配置されるチャック部311、および、チャック部311を副走査方向に移動する機構であるマイクロメータ312を備え、マイクロメータ312は、ピッチ調整機構31を駆動する駆動部であるステッピングモータ32に接続される。チャック部311は、第1ノズル17aの下端部(すなわち、(−Z)側の端部)の(−Y)側および(+Y)側において上面(すなわち、(+Z)側の面)から突出する2つの突起部3111を備える。
【0037】
ノズル位置調整部3では、制御部2の調整機構制御部21(図1および図2参照)によりステッピングモータ32が駆動されてチャック部311が副走査方向に進退することにより、2つの突起部3111のいずれか一方が第1ノズル17aの側面に当接して第1ノズル17aを副走査方向に向けて押す。これにより、第1ノズル17aが副走査方向に移動する。なお、第1ノズル17aを移動させる際には、第1ノズル固定部171aの固定ネジ1711(図3参照)は予め緩められている。
【0038】
図4に示す第2ノズル17bおよび第4ノズル17dにおいても同様に、制御部2の調整機構制御部21により各ノズルに対応するステッピングモータ32が制御されることによりピッチ調整機構31が駆動され、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dが副走査方向に移動する。図1および図2に示す塗布装置1では、3つのピッチ調整機構31により、第3ノズル17c(図4参照)を除く他の全てのノズルが副走査方向に個別に移動されることにより、副走査方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離(以下、「ノズル間距離」という。)が調整される。
【0039】
ノズル位置検出部4は、4本のノズル17から吐出される有機EL液の4本の液柱を観察する光学系41、および、光学系41を介して有機EL液の4本の液柱を撮像して画像を取得する撮像部42(本実施の形態では、CCD(Charge Coupled Device)カメラ)を備える。光学系41および撮像部42は、ノズル17の下端よりも下方であって塗布ヘッド14の移動とは干渉しない位置に配置される。
【0040】
塗布装置1では、制御部2のピッチ検出部22により、撮像部42により取得された画像から各ノズル間距離が検出され、ピッチ検出部22の検出結果に基づいて(すなわち、光学系41による観察結果に基づいて)3つのステッピングモータ32が調整機構制御部21により制御されることによりノズル間距離が調整される。また、制御部2の液柱状態検出部23により、撮像部42により取得された画像に基づいて4本の液柱のそれぞれの形状と予め定められている所定の液柱形状との差異が検出され、液柱の形状が正常であるか否かが確認される。
【0041】
次に、塗布装置1における複数のノズルの副走査方向に関するピッチ(以下、「ノズルピッチ」という。)の調整の流れについて説明し、その後、塗布装置1による有機EL液の塗布の流れについて説明する。図6.A、図6.Bおよび図6.Cは、ノズルピッチの調整の流れを示す図である。図6.Aないし図6.Cに示すように、塗布装置1においてノズルピッチが調整される際には、まず、塗布ヘッド14が図1および図2中に実線にて示す位置(すなわち、基板9の(+X)側の受液部16の上方であり、以下、「撮像位置」という。)に位置した状態で、制御部2により流動性材料供給部18が制御されて4本のノズルから有機EL液の吐出が開始される(ステップS11)。このとき、第1ノズル固定部171a、第2ノズル固定部171bおよび第4ノズル固定部171d(図4参照)の固定ネジは締められており、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dはノズル取付部141に固定されている。
【0042】
続いて、ヘッド移動機構15により塗布ヘッド14が撮像位置近傍において主走査方向に移動され、第1ノズル17a(図4参照)が光学系41による観察位置(すなわち、ノズル位置検出部4の撮像部42から所定距離だけ離れた位置)に位置する(ステップS12)。ノズル位置検出部4では、撮像部42によりフォーカス調整が自動的に行われた後、第1ノズル17aから吐出される有機EL液の液柱が、光学系41を介して(換言すれば、光学系41により観察されて)画像が取得される(ステップS13)。このとき、第1ノズル17aからの液柱は、有機EL液の塗布時の基板9の主面に相当する位置(本実施の形態では、第1ノズル17aの下端から約0.5mm下方の位置)にて撮像される。取得された画像は制御部2の液柱状態検出部23に送られる(ステップS14)。
【0043】
第1ノズル17aからの液柱の画像が取得されると、制御部2により全てのノズルに対する撮像が終了していないことが確認され(ステップS15)、ステップS12に戻って、ヘッド移動機構15により第2ノズル17bが観察位置へと移動され、撮像部42により第2ノズル17bからの液柱の画像が取得されて液柱状態検出部23へと送られた後、再びステップS12へと戻る(ステップS12〜S15)。塗布装置1では、4本のノズルの全てに対して、観察位置への移動、液柱の画像の取得、および、液柱状態検出部23への画像の送出が順次行われる(ステップS12〜S15)。
【0044】
液柱状態検出部23では、4つの液柱の画像に対して画像処理が行われて各液柱の形状が求められる。具体的には、画像中における液柱と周囲との明暗の差に基づいて画像を2値化し、液柱に対して垂直な方向における画素値の変化を検出することにより液柱の幅(すなわち、液柱の径)が求められる。そして、液柱に平行な方向に沿って液柱の幅を順次求めることにより、液柱の形状が求められる。万一、ノズルの目詰まり等の吐出不良により液柱が途切れている場合(すなわち、吐出量が振動して吐出液が液滴状になっている場合)、液柱が途切れている部分では液柱に垂直な方向における画素値の変化が無いため、液柱の幅はゼロとなる。
【0045】
液柱状態検出部23では、画像から求められた液柱の形状(以下、「実形状」という。)と、予め定められて液柱状態検出部23に記憶されている所定の液柱形状(以下、「設定形状」という。)とが比較され、実形状と設定形状との差異が検出される(ステップS16)。実形状と設定形状との差異が予め定められている許容範囲外である場合には(ステップS17)、制御部2により液柱形状の異常が作業者に連絡され(ステップS171)、ノズルピッチの調整作業が一旦終了される。そして、連絡を受けた作業者等により有機EL液の吐出が停止された後、異常が検出されたノズルが検査され、必要に応じてノズルの洗浄や交換等が行われる。
【0046】
一方、液柱の実形状と設定形状との差異が許容範囲内である場合(差異が全く検出されない場合も含む。)には(ステップS17)、ピッチ検出部22において4つの液柱の画像が合成され、当該合成画像に基づいて(換言すれば、光学系41による観察結果に基づいて)第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dからの液柱と第3ノズル17cからの液柱との間のそれぞれの距離が求められる(ステップS18)。そして、予め定められているノズルピッチ(上述のように、本実施の形態では隔壁ピッチの3倍に等しい距離であり、以下、「設定ノズルピッチ」という。)に基づいて、制御部2によりノズル位置の調整が必要か否かが確認される(ステップS19)。
【0047】
第1ノズル17aからの液柱と第3ノズル17cからの液柱との間の距離が設定ノズルピッチの2倍に等しく、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dからの液柱と第3ノズル17cからの液柱との間のそれぞれの距離が設定ノズルピッチに等しい場合は、ノズル位置の調整が不要と判断されノズルピッチの調整作業が終了する。
【0048】
逆に、ノズル位置の調整が必要であると判断された場合は、ステップS18にて求められたそれぞれの液柱間の距離に基づき、第3ノズル17cを基準として第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの副走査方向への移動量が求められる(ステップS20)。具体的には、第1ノズル17aの移動量は、第1ノズル17aからの液柱と第3ノズル17cからの液柱との間の距離が設定ノズルピッチの2倍に等しくなるように求められ、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの移動量は、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dからの液柱と第3ノズル17cからの液柱との間のそれぞれの距離が設定ノズルピッチに等しくなるように求められる。
【0049】
第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの移動量が求められると、制御部2により流動性材料供給部18が制御されてノズルからの有機EL液の吐出が停止される(ステップS21)。続いて、ヘッド移動機構15により塗布ヘッド14が(+X)側に移動し、ノズル位置調整部3のチャック部311の上方(図1および図2中の右側に二点鎖線にて示す位置であり、以下、「ピッチ調整位置」という。)に位置する(ステップS22)。このとき、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの下端部はそれぞれ、対応するチャック部311の2つの突起部3111の間に位置する。そして、作業者により第1ノズル固定部171a、第2ノズル固定部171bおよび第4ノズル固定部171dの固定ネジが緩められて第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dが副走査方向に移動可能とされる(ステップS23)。
【0050】
ノズル位置調整部3では、調整機構制御部21により第1ノズル17aに対応するステッピングモータ32が制御されてピッチ調整機構31が駆動され、ステップS20において求められた移動量に従って第1ノズル17aが副走査方向に移動される。続いて、調整機構制御部21により第2ノズル17bに対応するピッチ調整機構31が駆動され、第2ノズル17bが移動量に従って副走査方向に移動され、その後、第4ノズル17dが移動量に従って副走査方向に移動される(ステップS24)。このように、塗布装置1では、ピッチ検出部22により求められた移動量に従って、第3ノズル17cを除く全てのノズルが副走査方向に個別に順次移動されることによりノズルピッチの調整が行われる。本実施の形態では、ノズルピッチが120μm〜700μmの範囲で調整される。塗布ヘッド14では、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dが個別に移動可能とされているため、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dと第3ノズル17cとの間のそれぞれの距離を任意に調整することができる。
【0051】
第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの移動が終了すると、作業者により第1ノズル固定部171a、第2ノズル固定部171bおよび第4ノズル固定部171dの固定ネジが締められて第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dがノズル取付部141に固定される(ステップS25)。ノズルが固定されると、ヘッド移動機構15により塗布ヘッド14がピッチ調整位置から撮像位置へと移動する(ステップS26)。
【0052】
塗布ヘッド14が撮像位置に位置すると、ステップS11に戻って有機EL液の吐出が再び開始され、各ノズルからの液柱が順次撮像されて液柱状態が確認された後、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dからの液柱と第3ノズル17cからの液柱との間のそれぞれの距離が求められてノズル位置の調整が必要か否かが確認される(ステップS11〜S19)。そして、ノズル位置の調整が不要と判断された場合は、ノズルピッチの調整作業が終了する。
【0053】
また、ノズル位置の再調整が必要と判断された場合は、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの移動量の算出、有機EL液の吐出停止、塗布ヘッド14のピッチ調整位置への移動、および、ノズルピッチの調整が行われた後、塗布ヘッド14が移動されて撮像位置へと再び位置する(ステップS20〜S26)。そして、ステップS11に戻って、液柱状態およびノズル位置の調整の要否が再度確認される(ステップS11〜S19)。塗布装置1では、ノズル位置の調整が不要と判断されるまでステップS20〜S26、および、ステップS11〜S19が繰り返されてノズルピッチの調整作業が終了する。
【0054】
ノズルピッチの調整作業が終了すると、基板9が基板保持部11に載置されて保持され、アライメントマーク検出部13によりアライメントマークが撮像される。そして、アライメントマーク検出部13からの出力に基づいて基板移動機構12が駆動されて基板9が図1中に実線にて示す塗布開始位置に位置する。塗布ヘッド14は上述の通り、予め基板9の(+X)側の受液部16の上方(すなわち、上述の撮像位置)に位置している。
【0055】
続いて、流動性材料供給部18が制御されてノズル17から有機EL液の吐出が開始されるとともに、ヘッド移動機構15が駆動されて塗布ヘッド14の移動が開始される。本実施の形態では、塗布ヘッド14の移動速度は約1m/secとされる。塗布装置1では、4本のノズル17から同一種類の有機EL液を基板9に向けて連続的に吐出しつつ、ノズル17を図1中の(+X)側から(−X)方向に(すなわち、主走査方向に)移動することにより、基板9の塗布領域91上に予め形成された隔壁間の4つの溝に有機EL液が塗布される。塗布装置1では、4つの溝に塗布されたストライプ状の有機EL液は、副走査方向に関して隔壁ピッチの3倍に等しいピッチにて配列される。換言すれば、有機EL液が塗布された近接する2つの溝の間には、他の種類の有機EL液が塗布される予定の(あるいは、塗布された)2つの溝が挟まれる。
【0056】
塗布ヘッド14が基板9の(−X)側の受液部16の上方(図1および図2中の左側に二点鎖線にて示す。)まで移動すると、基板移動機構12が駆動され、基板9が基板保持部11と共に図1中の(+Y)方向に隔壁ピッチの12倍の距離だけ移動する。このとき、塗布ヘッド14では、ノズル17から受液部16に向けて有機EL液が連続的に吐出されている。副走査方向における基板9の移動が終了すると、塗布ヘッド14がノズル17から有機EL液を吐出しつつ基板9の(−X)側から(+X)側へと移動する。
【0057】
塗布装置1では、基板9に対する4本のノズル17の主走査および副走査が高速に繰り返されることにより、有機EL液が基板9上にストライプ状に塗布される。そして、基板9が図1に二点鎖線にて示す塗布終了位置まで移動すると、ノズル17からの有機EL液の吐出が停止されて基板9に対する有機EL液の塗布が終了する。
【0058】
以上に説明したように、塗布装置1では、4本のノズルから吐出される有機EL液の4本の液柱がノズル位置検出部4の光学系41により観察され、光学系41による観察結果に基づいて求められた移動量に従って、ノズル位置調整部3の3つのピッチ調整機構31により第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dが副走査方向に個別に移動されることにより、複数のノズルの副走査方向に関するピッチ(すなわち、ノズルピッチ)の調整が行われる。ノズルからの有機EL液の液柱は直径は数十μmと非常に小さいため、肉眼では高精度に観察することは難しいが、塗布装置1では、光学系41による精度の高い観察結果に基づいてノズルピッチを高精度に調整することができる。
【0059】
また、塗布装置1では、ノズル位置検出部4の撮像部42によりノズルからの液柱の画像が取得され、副走査方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離が制御部2のピッチ検出部22により当該画像に基づいて検出される。これにより、ノズルピッチの調整作業において、ノズルピッチの検出に要する時間を短縮することができる。さらには、調整機構制御部21により、各ピッチ調整機構31を駆動するステッピングモータ32がピッチ検出部22の検出結果に基づいて制御されることにより、ノズルピッチを自動的に調整することができる。
【0060】
上述のように、塗布ヘッド14および基板保持部11は、ノズル位置調整部3(すなわち、ピッチ調整機構31およびステッピングモータ32)から独立して移動可能とされている。このため、有機EL液の塗布において、塗布ヘッド14の基板9に対する主走査および副走査に際して、ピッチ調整機構31を共に移動させる必要がない。このように、塗布装置1では、主走査機構および副走査機構により移動する部位(すなわち、ヘッド移動機構15および基板移動機構12により移動する塗布ヘッド14および基板保持部11)を小型化および軽量化することができ、その結果、塗布装置1の小型化を実現することができる。塗布装置1では、塗布ヘッド14の主走査が高速にて行われるため、塗布ヘッド14の小型化は特に好ましい。
【0061】
塗布装置1では、光学系41によるノズルからの液柱の観察結果に基づいてノズルピッチが調整されるため、有機EL液を基板に対して実際に塗布することなくノズルピッチの調整を行うことができる。これにより、ノズルピッチ調整用の基板の搬出入等に係る作業時間および労力を削減することができる。液柱の観察に際しては、実際の塗布時の基板9の主面に相当する位置にて液柱を観察することにより、基板上に実際に塗布される有機EL液のピッチに等しい距離に基づいてノズルピッチの調整を行うことができる。
【0062】
塗布装置1では、ノズルからの液柱の観察に際して、有機EL液の塗布用の機構の一部(すなわち、ヘッド移動機構15)を利用して各ノズルの観察位置への移動(すなわち、フォーカス調整)が行われるため、装置構造を簡素化することができる。特に、ヘッド移動機構15による塗布ヘッド14の移動は、位置精度が非常に高度に制御されるため、フォーカス調整を容易かつ高精度に行うことができる。また、有機EL液を基板9に対して実際に塗布する際には、ノズルから吐出される有機EL液の液柱が所定の形状になっていることを確認する必要があるが、塗布装置1では、ノズルピッチ調整用の機構の一部(すなわち、光学系41および撮像部42)を利用して液柱形状の確認をすることができるため、装置構造をより簡素化することができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る塗布装置1aについて説明する。図7は、塗布装置1aの構成を示す正面図である。図7に示すように、塗布装置1aでは、ノズル位置検出部4が、基板保持部11の上方に配置される。その他の構成は図1および図2と同様であり、以下の説明において同符号を付す。塗布装置1aでは、ノズルピッチの調整に際して、4本のノズル17から吐出されて基板9a上に試験的に塗布された有機EL液のパターンが光学系41により観察され、撮像部42により当該有機EL液のパターンの画像が取得される。
【0064】
図8.Aおよび図8.Bは、塗布装置1aによるノズルピッチの調整の流れを示す図である。図8.Aおよび図8.Bに示すように、塗布装置1aにおいてノズルピッチの調整が行われる際には、まず、試験塗布用の基板9aが基板保持部11に保持されて移動され、塗布開始位置(図1において実線にて示す位置)に位置する(ステップS31)。基板9a上には、第1の実施の形態で言及した隔壁は形成されていない。塗布ヘッド14は、予め基板9aの(+X)側において受液部16の上方(すなわち、図7中にて実線にて示す位置であり、以下、「待機位置」という。)に位置しており、4本のノズル17から有機EL液の吐出が開始される(ステップS32)。
【0065】
続いて、ノズル17から同一種類の有機EL液を基板9aに向けて連続的に吐出しつつ、ノズル17を(+X)側から(−X)方向に(すなわち、主走査方向に)移動することにより、基板9a上に有機EL液が塗布される(ステップS33)。塗布ヘッド14が、図7中に二点鎖線にて示すように、基板9aの(−X)側の受液部16の上方まで移動すると、ノズル位置検出部4により基板9a上に塗布された有機EL液のパターン(すなわち、ストライプ状に配列された4本の有機EL液のライン)が撮像されて画像が取得され(ステップS34)、当該画像が制御部2のピッチ検出部22に送られる(ステップS35)。
【0066】
ピッチ検出部22では、有機EL液のパターンの画像に基づいて、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17d(図4参照)から吐出されて塗布された有機EL液のラインと第3ノズル17c(図4参照)からの有機EL液のラインとの間のそれぞれの距離が求められる(ステップS36)。そして、設定ノズルピッチに基づいてノズル位置の調整が必要か否かが確認され(ステップS37)、調整が不要と判断された場合はノズルピッチの調整作業が終了する。
【0067】
ノズル位置の調整が必要であると判断された場合は、ステップS36にて求められたそれぞれのライン間の距離に基づき、第3ノズル17cを基準として第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの副走査方向への移動量が求められる(ステップS38)。
【0068】
第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの移動量が求められると、第1の実施の形態と同様に、有機EL液の吐出が停止されて塗布ヘッド14がピッチ調整位置(すなわち、ノズル位置調整部3の上方であり、図7中の右側に二点鎖線にて示す位置)に移動され、各ノズル固定部の固定ネジが緩められた後、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dが、ステップS38にて求められた移動量に従って副走査方向に移動される(ステップS39〜S42)。そして、各固定ネジが締められて第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dがノズル取付部141に固定された後、塗布ヘッド14がピッチ調整位置から待機位置へと移動するとともに基板9aが(+Y)方向へとステップ移動される(ステップS43〜S45)。
【0069】
塗布ヘッド14が待機位置に位置すると、ステップS32に戻って基板9aに対する有機EL液の塗布、基板9a上の有機EL液のパターンの撮像、ノズル位置の調整の要否の確認が行われる(ステップS32〜S37)。塗布装置1aでは、ノズル位置の調整が不要と判断されるまでステップS38〜S45、および、ステップS32〜S37が繰り返されてノズルピッチの調整作業が終了する。ノズルピッチの調整が終了すると、試験塗布用の基板9aが塗布装置1aから搬出される。その後の有機EL液の製品用の基板9への塗布の流れは第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0070】
以上に説明したように、塗布装置1aでは、第1の実施の形態と同様に、光学系41による精度の高い観察結果に基づいてノズルピッチを高精度に調整することができる。また、撮像部42およびピッチ検出部22により、ノズルピッチの検出に要する時間を短縮することができるとともに、ノズル位置調整部3および調整機構制御部21により、ノズルピッチを自動的に調整することができる。
【0071】
塗布装置1aでは、特に、基板9aに実際に塗布された有機EL液のパターンを観察することにより、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dからの有機EL液のラインと第3ノズル17cからの有機EL液のラインとの間のそれぞれの距離を容易に求めることができる。その結果、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの移動量を容易に求めることができ、ノズルピッチの調整を簡素化することができる。
【0072】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る塗布装置1bについて説明する。図9は、塗布装置1bの構成を示す正面図である。図9に示すように、塗布装置1bでは、ノズル位置検出部4が、基板9の(+X)側の受液部16の上方(以下、「撮像位置」という。)に位置する塗布ヘッド14の上方に配置される。その他の構成は図1および図2と同様であり、以下の説明において同符号を付す。塗布装置1bでは、ノズルピッチの調整に際して、光学系41により4本のノズル17が順次観察されて撮像部42によりノズル17の上端部(すなわち、(+Z)側の端部)の画像が取得される。
【0073】
図10.Aおよび図10.Bは、塗布装置1bによるノズルピッチの調整の流れを示す図である。図10.Aおよび図10.Bに示すように、塗布装置1bにおいてノズルピッチの調整が行われる際には、まず、ヘッド移動機構15により撮像位置に4本のノズル17が順次移動され、ノズル17が順次撮像されて画像が取得される(ステップS51)。取得された画像はピッチ検出部22に送られる(ステップS52)。
【0074】
ピッチ検出部22では、4本のノズル17の画像に基づいて第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dと第3ノズル17c(図4参照)との間のそれぞれの距離が求められ(ステップS53)、設定ノズルピッチに基づいてノズル位置の調整が必要か否かが確認される(ステップS54)。
【0075】
ノズル位置の調整が不要と判断された場合はノズルピッチの調整作業が終了し、必要であると判断された場合は、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dの副走査方向への移動量が求められる(ステップS55)。そして、塗布ヘッド14がピッチ調整位置へと移動され、各ノズル固定部の固定ネジが緩められた後、第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dが、ステップS55にて求められた移動量に従って副走査方向に移動される。さらに、各固定ネジが締められて第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dがノズル取付部141に固定された後、塗布ヘッド14がピッチ調整位置から撮像位置へと移動する(ステップS56〜S60)。
【0076】
塗布ヘッド14が撮像位置に位置すると、ステップS51に戻ってノズル17の撮像、および、ノズル位置の調整の要否の確認が行われ(ステップS51〜S54)、ノズル位置の調整が不要と判断されるまでステップS55〜S60、および、ステップS51〜S54が繰り返されてノズルピッチの調整作業が終了する。ノズルピッチの調整が終了した後の有機EL液の基板9への塗布の流れは第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0077】
塗布装置1bでも、第1の実施の形態と同様に、光学系41による精度の高い観察結果に基づいてノズルピッチを高精度に調整することができる。また、撮像部42およびピッチ検出部22により、ノズルピッチの検出に要する時間を短縮することができるとともに、ノズル位置調整部3および調整機構制御部21により、ノズルピッチを自動的に調整することができる。塗布装置1bの場合、ノズルピッチの調整に際して有機EL液の吐出が不要となる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0079】
例えば、ノズル位置調整部3では、ピッチ調整機構31およびステッピングモータ32が1組だけ設けられてもよい。この場合、当該ピッチ調整機構31が第1ノズル17a、第2ノズル17bおよび第4ノズル17dに対応する位置へと順次移動しつつノズルピッチの調整が行われる。
【0080】
塗布ヘッド14では、第3ノズル17c以外の他のノズルのうちのいずれか1本が、ノズル取付部141に固定されてノズルピッチの調整の基準とされてもよい。また、4本のノズル17の全てが副走査方向に個別に移動可能に取り付けられてもよい。この場合、任意の3本のノズル、または、4本のノズル全てを副走査方向に移動することによりノズルピッチの調整が行われる。
【0081】
第1の実施の形態に係る塗布装置1では、光学系41および撮像部42を主走査方向に移動する移動機構が設けられ、液柱の撮像時におけるフォーカス調整が光学系41および撮像部42の主走査方向における移動により行われてもよい。また、ノズル位置検出部4では、ノズルピッチが大きい場合(例えば、ノズルピッチが200μm〜700μm程度の場合)やノズルの本数が多い場合等、撮像部42の視野に全ノズルからの液柱が収まりきらない場合には、光学系41および撮像部42を副走査方向に移動する移動機構が設けられ、光学系41および撮像部42の位置を変更して全液柱の撮像が順次行われる。
【0082】
上記実施の形態に係る塗布装置では、主走査機構および副走査機構により移動する部位を小型化および軽量化するという観点のみからは、光学系41および撮像部42は必ずしも装置内に設けられる必要はなく、塗布装置の外部に設けられてもよい。この場合であっても、ノズル位置調整部3によってノズルを移動することにより、ノズルピッチを高精度に調整することができる。
【0083】
上記実施の形態に係る塗布装置では、塗布ヘッド14に設けられるノズルの本数は4本には限定されない。例えば、3本のノズルから、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と互いに色が異なる3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液が同時に吐出されて基板9に塗布されてもよい。この場合、隣接する2本のノズルの間の副走査方向に関する距離は、隔壁ピッチと等しくなるよう調整される。また、上記塗布装置では、正孔輸送材料を含む流動性材料が基板9に塗布されてもよい。ここで、「正孔輸送材料」とは、有機EL表示装置の正孔輸送層を形成する材料であり、「正孔輸送層」とは、有機EL材料により形成された有機EL層へと正孔を輸送する狭義の正孔輸送層のみを意味するのではなく、正孔の注入を行う正孔注入層も含む。
【0084】
上記塗布装置は、必ずしも有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料を画素形成材料として含む流動性材料の塗布のみに利用されるわけではなく、例えば、液晶表示装置やプラズマ表示装置等の平面表示装置用の基板に対し、着色材料や蛍光材料等の他の種類の画素形成材料を含む流動性材料を塗布する場合に利用されてもよい。また、上記塗布装置は、平面表示装置用の基板以外にも、磁気ディスクや光ディスク用のガラス基板やセラミック基板、あるいは、半導体基板等、様々な基板に対する様々な種類の流動性材料の塗布に利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1の実施の形態に係る塗布装置の平面図である。
【図2】塗布装置の正面図である。
【図3】塗布ヘッドの正面図である。
【図4】塗布ヘッドの平面図である。
【図5】ピッチ調整機構およびステッピングモータの正面図である。
【図6.A】ノズルピッチの調整の流れを示す図である。
【図6.B】ノズルピッチの調整の流れを示す図である。
【図6.C】ノズルピッチの調整の流れを示す図である。
【図7】第2の実施の形態に係る塗布装置の正面図である。
【図8.A】ノズルピッチの調整の流れを示す図である。
【図8.B】ノズルピッチの調整の流れを示す図である。
【図9】第3の実施の形態に係る塗布装置の正面図である。
【図10.A】ノズルピッチの調整の流れを示す図である。
【図10.B】ノズルピッチの調整の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1,1a,1b 塗布装置
9,9a 基板
11 基板保持部
12 基板移動機構
15 ヘッド移動機構
17 ノズル
21 調整機構制御部
22 ピッチ検出部
23 液柱状態検出部
31 ピッチ調整機構
32 ステッピングモータ
41 光学系
42 撮像部
141 ノズル取付部
S11〜S26,S31〜S45,S51〜S60,S171 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板に向けて流動性材料を連続的に吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全てが前記基板の主面に平行な第1の方向に関して個別に移動可能に取り付けられるノズル取付部と、
前記基板の前記主面に平行であって前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記複数のノズルを前記ノズル取付部と共に前記基板に対して相対的に移動する主走査機構と、
前記複数のノズルおよび前記ノズル取付部を前記基板に対して前記第1の方向に相対的に移動する副走査機構と、
前記複数のノズルから吐出される前記流動性材料の複数の液柱、前記複数のノズルから吐出されて基板に塗布された前記流動性材料のパターン、または、前記複数のノズルを観察する光学系と、
前記光学系による観察結果に基づいて求められた移動量に従って前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全てを前記第1の方向に個別に移動することにより前記第1の方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離を調整するピッチ調整機構と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置であって、
前記光学系を介して前記流動性材料の前記複数の液柱、前記流動性材料の前記パターン、または、前記複数のノズルの画像を取得する撮像部と、
前記画像から前記第1の方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離を検出するピッチ検出部と、
をさらに備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布装置であって、
前記ピッチ調整機構を駆動する駆動部と、
前記ピッチ検出部の検出結果に基づいて前記駆動部を制御する調整機構制御部と、
をさらに備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記主走査機構および前記副走査機構により、前記複数のノズルおよび前記ノズル取付部が前記ピッチ調整機構から独立して移動することを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記光学系により、前記複数のノズルから吐出される前記流動性材料の前記複数の液柱が観察されることを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
請求項2に記載の塗布装置であって、
前記撮像部により、前記複数のノズルから吐出される前記流動性材料の前記複数の液柱の画像が取得され、
前記塗布装置が、前記画像に基づいて前記複数の液柱のそれぞれの形状と予め定められている所定の液柱形状との差異を検出する液柱状態検出部をさらに備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記光学系により、基板に塗布された前記流動性材料の前記パターンが観察されることを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料を含むことを特徴とする塗布装置。
【請求項9】
請求項8に記載の塗布装置であって、
前記画素形成材料が、有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料であることを特徴とする塗布装置。
【請求項10】
基板に流動性材料を塗布する塗布装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板に向けて流動性材料を連続的に吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全てが前記基板の主面に平行な第1の方向に関して個別に移動可能に取り付けられるノズル取付部と、
前記基板の前記主面に平行であって前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記複数のノズルを前記ノズル取付部と共に前記基板に対して相対的に移動する主走査機構と、
前記複数のノズルおよび前記ノズル取付部を前記基板に対して前記第1の方向に相対的に移動する副走査機構と、
前記主走査機構および前記副走査機構による前記複数のノズルおよび前記ノズル取付部の移動から独立して配置され、前記複数のノズルの全てまたは1つの除く全てを前記第1の方向に個別に移動することにより前記第1の方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離を調整するピッチ調整機構と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項11】
複数のノズルから基板に向けて流動性材料を連続的に吐出しつつ前記基板の主面に平行な主走査方向に前記複数のノズルを移動することにより前記基板に前記流動性材料を塗布する塗布装置において、前記複数のノズルの前記主走査方向に垂直な副走査方向に関するピッチの調整方法であって、
a)複数のノズルから吐出される流動性材料の複数の液柱、前記複数のノズルから吐出されて基板に塗布された前記流動性材料のパターン、または、前記複数のノズルを光学系を介して観察する工程と、
b)前記a)工程における観察結果に基づいて前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全ての副走査方向への移動量を求める工程と、
c)前記移動量に従って前記複数のノズルの全てまたは1つを除く他の全てを前記副走査方向に個別に移動することにより前記副走査方向に関して互いに隣接する2つのノズル間の各距離を調整する工程と、
を備えることを特徴とするピッチの調整方法。
【請求項12】
請求項11に記載のピッチの調整方法であって、
前記a)工程において、前記光学系を介して前記流動性材料の前記複数の液柱、前記流動性材料の前記パターン、または、前記複数のノズルの画像が取得され、
前記b)工程において、前記画像に基づいて前記移動量が求められることを特徴とするピッチの調整方法。
【請求項13】
請求項12に記載のピッチの調整方法であって、
前記複数のノズルが主走査方向に関して離れて配列され、
前記a)工程において、前記複数のノズルが前記主走査方向に移動されて前記光学系による観察位置に順次位置するとともに前記流動性材料の前記複数の液柱、または、前記複数のノズルの画像が取得されることを特徴とするピッチの調整方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載のピッチの調整方法であって、
前記a)工程において、前記複数のノズルから吐出される前記流動性材料の前記複数の液柱の画像が取得され、前記画像に基づいて前記複数の液柱のそれぞれの形状と予め定められている所定の液柱形状との差異が検出されることを特徴とするピッチの調整方法。
【請求項15】
請求項11ないし14のいずれかに記載のピッチの調整方法であって、
前記流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料を含むことを特徴とするピッチの調整方法。
【請求項16】
請求項15に記載のピッチの調整方法であって、
前記画素形成材料が、有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料であることを特徴とするピッチの調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6.A】
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【図6.B】
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【図6.C】
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【図7】
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【図8.A】
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【図8.B】
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【図9】
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【図10.A】
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【図10.B】
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【公開番号】特開2007−152164(P2007−152164A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347448(P2005−347448)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】