説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】塗布された塗布液の膜厚の不均一性を改善し得る技術を提供する。
【解決手段】塗布装置は、塗布液を吐出するノズルと、基板に対して、ノズルを移動させるノズル移動機構と、ノズルに塗布液を供給する塗布液供給部と、塗布液をノズルに供給するためにノズルに接続され、ノズル移動機構によるノズルの移動に追従して変形する接続チューブと、塗布液供給部からノズルに向けて供給される塗布液の流量を測定する流量測定部と、塗布液供給部からノズルに通じる塗布液流路の開度を調節する開度調節部と、流量測定部の測定結果に基づいて、開度調節部を制御する開度調節制御部とを備える。開度調節制御部は、ノズルが移動して、基板の表面に塗布液を吐出する際、開度調節部を、ノズルの停止中に調節した開度を維持するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(Plasma Display Panel)用ガラス基板、有機EL表示パネル用ガラス基板、磁気或いは光ディスク用のガラス、または、セラミック基板、太陽光発電パネルなどの電池用基板など、各種被処理基板に塗布液を塗布する塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)材料を利用した有機EL表示装置の製造において、有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」と称する。)などを、表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」と称する)上に形成された複数の隔壁間の溝にストライプ状に塗布する塗布装置が用いられている。これまでにも、この種の塗布装置として特許文献1に開示のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、基板に向けて有機EL液を連続的に吐出する複数のノズルを備えた塗布ヘッドを、基板上に形成された隔壁間の溝に沿った主走査方向に移動させるとともに、塗布ヘッドの主走査方向への移動が行われる毎に基板を塗布ヘッドに対して副走査方向に移動する移動機構と、塗布ヘッドに対して副走査方向における相対位置が固定され、複数のノズルから吐出された有機EL液が流動性を有する間に、有機EL液に光を照射して有機EL液の乾燥を促進する光照射部とを有する塗布装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−123585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機EL表示装置においては、基板上に形成される有機EL層の乾燥後の膜厚を均一化することが求められている。特許文献1に記載の塗布装置では、基板に塗布された複数のラインの有機EL液の乾燥速度の均一性を向上させることによって、該複数のラインの有機EL液の乾燥後における膜厚の均一性の向上が図られている。
【0006】
ところが、特許文献1の塗布装置において、基板上に塗布された有機EL液の乾燥後における膜厚の均一性を向上させるためには、塗布された有機EL液の膜厚の均一性を向上させることが必要である。そこで、従来の塗布装置では、例えば、マスフローコントローラー(MFC:Mass Flow Controller)などを用いて、塗布液の吐出量を一定化する制御を試みられている。
【0007】
しかしながら、従来の塗布装置では、塗布ヘッドの移動にともなってスキャンチューブが屈曲することによるスキャンチューブ内の体積変動や、塗布液にかかる慣性力などが、塗布液の吐出量に影響を与える場合がある。このため、塗布された塗布液の膜厚の均一性が低下する場合があった。
【0008】
そこで、上記課題に鑑み、塗布された塗布液の膜厚の均一性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1の態様は、基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、塗布液を吐出するノズルと、基板に対して、前記ノズルを移動させるノズル移動機構と、前記ノズルに前記塗布液を供給する塗布液供給部と、前記塗布液を前記ノズルに供給するために前記ノズルに接続され、前記ノズル移動機構による前記ノズルの移動に追従して変形する接続チューブと、前記塗布液供給部から前記ノズルに向けて供給される塗布液の流量を測定する流量測定部と、前記塗布液供給部から前記ノズルに通じる塗布液流路の開度を調節する開度調節部と、前記流量測定部の測定結果に基づいて、前記開度調節部を制御する開度調節制御部とを備え、前記開度調節制御部は、前記ノズルが移動して、前記基板の表面に前記塗布液を吐出する際、前記開度調節部を、前記ノズルの停止中に調節した開度を維持するように制御する。
【0010】
また、第2の態様は、第1の態様に係る塗布装置において、前記流量測定部は、前記塗布液供給部から接続チューブまでの前記塗布液流路内を通過する前記塗布液の流量を測定する。
【0011】
また、第3の態様は、第1または2の態様に係る塗布装置において、前記開度調節部は、前記塗布液流路の途中に設けられるバルブ、を含み、前記バルブにより、前記塗布液流路の開度が調節される。
【0012】
また、第4の態様は、基板に対してノズルを移動させつつ、塗布液供給部からノズルの移動に応じて変形する接続チューブを介して前記ノズルに塗布液を供給して、前記ノズルから塗布液を吐出し、前記基板の表面に前記塗布液を塗布する塗布方法において、(a)前記塗布液供給部から前記ノズルにつながる塗布液流路内を通過する、前記塗布液の流量を測定する工程と、(b)前記ノズルが停止している間、前記(a)工程にて測定される流量値に基づいて、前記塗布液流路の開度を調節する工程と、(c)前記(b)工程にて調節された開度を維持しつつ、前記ノズルが移動して前記基板の表面に向けて前記塗布液を吐出する工程とを含む。
【0013】
また、第5の態様は、第4の態様に係る塗布方法において、前記(a)工程は、(a-1)前記塗布液供給部から前記接続チューブまでの塗布液流路内を通過する塗布液の流量を測定する工程、を含む。
【0014】
また、第6の態様は、第4または5の態様に係る塗布方法において、前記(b)工程は、(b-1)前記塗布液流路の途中に設けられたバルブを制御することによって、前記開度を調節する工程、を含む。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様に係る塗布装置によれば、ノズル移動中に流量制御を行わないことによって、ノズルの移動に伴う接続チューブの体積変動や、塗布液への慣性力の作用により起こる、塗布液の吐出量の意図しない変動を抑制することができる。したがって、塗布処理の均一性を向上することができる。
【0016】
第2の態様に係る塗布装置によれば、接続チューブに到達する前の位置で、塗布液の流量を測定するため、ノズルの移動に伴う接続チューブの変形による影響が比較的小さい位置で、流量測定を実施できる。
【0017】
第3の態様に係る塗布装置によれば、開度調節にバルブを採用することによって、塗布液流路の開口面積を良好に調整することができる。
【0018】
第4の態様に係る塗布方法によれば、ノズル移動中に流量制御を行わないことによって、ノズルの移動に伴う接続チューブの体積変動や、塗布液への慣性力の作用により起こる塗布液の吐出量の意図しない変動を抑制することができる。したがって、塗布処理の均一性を向上することができる。
【0019】
第5の態様に係る塗布方法によれば、接続チューブよりも塗布液流路の上流側で、流量が測定される。したがって、ノズルの移動に伴う接続チューブの変形による影響が比較的小さい位置で、流量測定を実施できる。
【0020】
第6の態様に係る塗布方法によれば、開度調節にバルブを採用することによって、塗布液流路の開口面積を良好に調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る塗布装置の概略を示した平面図である。
【図2】塗布装置の概略を示した正面図である。
【図3】ヘッド移動機構の構成要素をYZ平面で切断して示した概略断面図である。
【図4】一回の主走査移動により塗布液が塗布された基板を概念的に示した平面図である。
【図5】加圧タンクと複数のノズルとの間の接続関係を示した模式図である。
【図6】マスフローコントローラーの構成を示した模式図である。
【図7】塗布装置の塗布動作を示した流れ図である。
【図8】ノズル23から吐出される塗布液の吐出量の経時変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
<1. 第1実施形態>
<1.1.全体構成>
図1は、第1実施形態に係る塗布装置1の概略を示した平面図である。また図2は、塗布装置1の概略を示した正面図である。全図中のX方向、Y方向、及び、Z方向は、それぞれ後述する主走査方向に沿った方向、該X方向に直交する水平方向、及び、鉛直方向(上下方向)となっている。
【0024】
塗布装置1は、矩形状(正方形を含む。)である角型ガラス基板(以下、単に基板と称する。)100に対して塗布液を塗布する装置である。塗布装置1は、例えば、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置用のガラス基板を処理対象とする場合に、例えば揮発性の溶媒(例えば、芳香族の有機溶媒の一つである4−メチルアニソール)、及び、発光材料としての有機EL材料を含む塗布液を基板100に塗布する装置として機能する。ただし、塗布装置1は、その他の電子機器用の基板を処理対象とすることも可能であり、各基板の用途に応じて、使用される塗布液の種類は変更し得る。
【0025】
塗布装置1は、基板を保持する基板保持部10、基板保持部10を移動させることで、基板100を移動させる基板移動機構11、基板保持部10に保持された基板100の表面に塗布液を塗布するための塗布ヘッド20を備えている。
【0026】
基板保持部10は、その上面に基板100を略水平姿勢にて保持する載置部である。基板保持部10は、基板を載置する載置部として機能する。なお、基板保持部10は、好ましくは、その表面に吸引孔(図示せず。)が設けられている。基板保持部10は、吸引孔(図示せず。)を負圧にして基板100を吸着することにより、載置された基板100が動かないように保持する。また、基板保持部10は、好ましくは、基板100を下側から加熱するヒーターをその内部に備えており、載置された基板100を加熱できるように構成されている。
【0027】
基板移動機構11は、Y方向に沿って延びるとともに、X方向に所定間隔をあけて設けられた一対のレール12,12、一対のレール12,12に沿ってY方向に移動する基台13、基台13の上面に設けられた回転台14を備える。
【0028】
基板保持部10は、回転台14の上部に設けられることによって、基板移動機構11に支持されている。したがって、基板保持部10は、基台13がY方向に移動することにより、Y方向に移動可能となっている。このY方向は、後述する塗布ヘッド20の往復移動方向である主走査方向(X方向)と直交する水平方向である。以下、Y方向を「副走査方向」とも称する。また、回転台14が鉛直方向(Z方向)を軸にして所定範囲で回転することにより、基板保持部10が回転する。
【0029】
基板保持部10に載置される基板100の表面(上面)には、Y方向に関して所定ピッチ(例えば、100〜150マイクロメートル)で、X方向に延びる塗布対象領域が複数列設定されている。この塗布対象領域は、例えば、X方向に沿って延びる一対の隔壁(図示せず。)に挟まれて区画されたライン状の領域となっている。また、塗布対象領域の1つは、1つのノズル23による、一回の主走査方向の移動(X方向に関して、基板100の一方側端部から他方側端部への移動)によって、塗布液が塗布される領域に相当する。ただし、塗布対象領域への塗布方法はこのようなものに限られるものではない。また、上記隔壁は、必須のものではなく、隔壁がない状態で塗布が実施されてもよい。
【0030】
塗布装置1は、好ましくは、基板100の表面に形成された図示しないアライメントマークを撮像して検出する、Y方向に並列された一対の撮像部15,15を備えている。撮像部15は、例えばCCDカメラを含んで構成されている。
【0031】
塗布装置1は、塗布ヘッド20を移動させるヘッド移動機構21を備えている。ヘッド移動機構21は、X方向に沿って延びる一対のガイド部22を備えており、X方向に移動可能に構成されている。塗布ヘッド20は、ヘッド移動機構21によって、基板100の表面に平行な主走査方向(X方向)に往復移動する。
【0032】
塗布ヘッド20には、同一種類の塗布液を連続的に吐出するための複数のノズル23が設けられている。複数のノズル23は、副走査方向に関して等間隔に並べられて、塗布ヘッド20に搭載されている。本実施形態では、ノズル23を5個搭載しているが、ノズル23の搭載数はこれに限られるものではなく、少なくとも1以上搭載されていればよい。また、複数のノズル23は、必ずしも等間隔に並べられていなくてもよい。
【0033】
塗布装置1は、塗布液が貯留される加圧タンク24(塗布液貯留部)、エアの供給源であるエア供給源25、後述するエア供給管及び後述する複数の接続チューブ64で構成される供給管群26をさらに備えている。塗布ヘッド20は、供給管群26を介して、加圧タンク24、及び、エア供給源25と接続されている。
【0034】
塗布装置1は、X方向に関して、基板保持部10の外側両サイドに受液部17,18が設けられている。受液部17,18は、ノズル23の移動経路に対応する位置に、開口部を有している。受液部17,18は、該開口部を介して、ノズル23が基板100の表面外に吐出した塗布液を受け止めて、その内部に貯留する。貯留された塗布液は、適宜廃棄してもよいし、再利用するようにしてもよい。
【0035】
図3は、ヘッド移動機構21の構成要素をYZ平面で切断して示した概略断面図である。ヘッド移動機構21は、一対のガイド部22,22に取り付けられた、略直方体状のスライダー31を備えている。スライダー31には、X方向に貫通する貫通孔32,32が形成されており、各貫通孔32,32にガイド部22,22がそれぞれ遊挿されている。
【0036】
スライダー31には、供給管群26に含まれるエア供給管を介して、エア供給源25から所定圧力のエアが供給される。該エアは、貫通孔32の内周面に設けられた噴出孔(図示せず。)から、ガイド部22の外周面に向けて噴出される(矢印A1参照)。これにより、スライダー31は、ガイド部22に非接触状態にて係合し、主走査方向に案内される。
【0037】
図1に示したように、ヘッド移動機構21は、一対のガイド部22,22の両端部付近に、Z方向に延びる軸を中心にして回転可能に構成された一対のプーリー33,33を備えている。また、一対のプーリー33,33には、無端状の同期ベルト34が巻回されている。スライダー31は、同期ベルト34に取り付けられている。また、スライダー31の、Y方向に関して、同期ベルト34が取り付けられている側の反対側に、塗布ヘッド20が取り付けられている(図3参照)。
【0038】
塗布装置1では、図示しないモーターを駆動することで同期ベルト34を時計回り、または、反対周りに回転させることによって、塗布ヘッド20をX方向に往復運動させることができる。また、上述した、スライダー31からガイド部22に向けて噴出される気体の作用によって、スライダー31がガイド部22に対して非接触状態で支持される。このため、塗布ヘッド20を、比較的高速で移動させた場合でも、ガイド部22に沿って滑らかに往復移動させることができる。塗布装置1においては、ヘッド移動機構21が、塗布ヘッド20を主走査方向に移動させる主走査方向移動機構となる。また、基板移動機構11が、基板保持部10を副走査方向に移動させる副走査方向移動機構となる。
【0039】
なお、上述したヘッド移動機構21の構成は、一例であり、それら以外の構成が採用されていてもよい。
【0040】
図4は、一回の主走査移動により塗布液が塗布された基板100を概念的に示した平面図である。塗布装置1においては、ノズル23から連続的に塗布液を吐出しつつ、塗布ヘッド20(図示せず。)が主走査方向(X方向)へ移動(主走査移動)する毎に、塗布液が基板100の表面にストライプ状に塗布される。この一回の主走査移動が完了すると、塗布装置1は、基板100を副走査方向に移動させた後、反対方向の主走査移動を実行することによって、基板100の次の塗布対象領域に対して、塗布液を塗布する。
【0041】
基板100表面の主走査方向両側の縁部は、図示しないマスクによって覆われているため、この領域には、塗布液が塗布されないようになっている。なお、必要に応じて、副走査方向(Y方向)の縁部分をマスクで覆ってもよい。もちろん、これらのマスクは、必ずしも設けなければならないものではなく、省略することも可能である。
【0042】
なお、塗布ヘッド20が主走査移動を行う場合、ノズル23が受液部17,18上にあるときに、塗布ヘッド20が加速される。そして、ノズル23が基板100上方にあるとき、塗布ヘッド20は、例えば、一定速度(3〜5メートル/秒)で移動するように制御される。この一定速度で移動する間に、ノズル23から塗布液が吐出されて、基板100に塗布される。なお、塗布時に基板100上を移動する塗布ヘッド20の速度は、必ずしも一定とされるものに限定されず、速度変更が適宜行われてもよい。
【0043】
図5は、加圧タンク24と複数のノズル23との間の接続関係を示した模式図である。
【0044】
加圧タンク24には、塗布液を圧送して、ノズル23に塗布液を送液するための電空レギュレーター61が接続されている。電空レギュレーター61には、圧力調整用のガス(例えば、窒素ガス)が供給される。電空レギュレーター61に供給された窒素ガスは、所定圧力に調整され、加圧タンク24へと送られる。
【0045】
加圧タンク24は、図示を省略するが、塗布液が貯留された樹脂パックを有している。加圧タンク24では、電空レギュレーター61から供給された窒素ガスにより内部圧力が高められ、樹脂パックが圧縮される。これにより、樹脂パックに貯留されていた塗布液がノズル23に向けて供給される。
【0046】
加圧タンク24には、配管241aが接続されている。該配管241aは、塗布液流路の一部を形成する。配管241aは、その後、複数(ノズル23の個数に相当する数)の分岐管241bに分岐する。複数の分岐管241bのそれぞれの途中には、マスフローコントローラー(MFC:Mass Flow Controller)62、電磁開閉弁63が設けられている。
【0047】
また、分岐管241bは、接続チューブ64に接続されており、その先にノズル23が設けられている。接続チューブ64は、可撓性を有する材料で構成されており、塗布ヘッド20の往復運動に追従して変形するように構成されている。
【0048】
電空レギュレーター61の作用により、加圧タンク24に貯留された塗布液は、マスフローコントローラー62に向けて圧送される。そしてこの塗布液は、マスフローコントローラー62において流量を調整された後、電磁開閉弁63及び接続チューブ64を介して、ノズル23に供給される。
【0049】
図6は、マスフローコントローラー62の構成を示した模式図である。マスフローコントローラー62は、マスフローメーター621(流量測定部)、コントロールバルブ622(開度調節部)、及びバルブ制御部623(開度調節制御部)を備えている。
【0050】
加圧タンク24から電磁開閉弁63に向けて延びる分岐管241bの途中に、コントロールバルブ622が設けられ、その下流にマスフローメーター621が設けられている。これらの接続順序は、適宜変更が可能であり、上流にマスフローメーター621が設けられていてもよい。
【0051】
マスフローメーター621は、例えば、熱式流量センサーを備えており、塗布液流路内の上流側と下流側との温度差を検出して所定演算を行うことにより、塗布液流路内を通過する塗布液の流量を検出する。ただし、マスフローメーター621は、圧力差に基づいて測定する差圧式流量計や、羽根車を使って測定する羽根車式流量計など、その他の方式で流量を測定するように構成されていてもよい。
【0052】
マスフローメーター621は、加圧タンク24と接続チューブ64まで延びる配管(配管241aと分岐管241b)の途中に設けられている。したがって、マスフローメーター621は、塗布液供給部である加圧タンク24から、可撓性を有する接続チューブ64までの間の塗布液流路内を通過する塗布液の流量を測定する。接続チューブ64よりも塗布液流路の上流側で、塗布液の流量が測定される。したがって、ノズル23の移動に伴う接続チューブ64の変形による影響が比較的小さい位置で、流量測定を実施できる。
【0053】
コントロールバルブ622は、例えば、電動バルブで構成される流量制御バルブである。このようなバルブを設けることによって、塗布液流路の開口面積を良好に調節できる。コントロールバルブ622は、塗布液流路内の開度を調節する開度調節部を構成する。開度調節部は、必ずしもバルブに限定されるものではなく、例えば、可撓性のチューブで構成されていてもよい。この場合、該チューブを外側から押圧することで、その断面の開度を調節できるように構成される。すなわち、開度調節部は、塗布液流路内の開度を調整することができるのであれば、どのような構成であってもよい。
【0054】
バルブ制御部623は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)などのプログラム記憶媒体、RAM(Random Access Memory)などがバス接続された、一般的なコンピューターで構成されている。バルブ制御部623は、CPUがROMなどの記憶媒体に格納されたプログラムに従って動作することによって、マスフローメーター621の検出信号に基づき、コントロールバルブ622を制御する。
【0055】
バルブ制御部623がコントロールバルブ622を制御して、その開度を調節する場合、マスフローメーター621により流量値を表す検出信号がバルブ制御部623に出力される。そして、バルブ制御部623は、該検出信号に基づき、コントロールバルブ622を制御して、塗布液流路内の開度を調整する。具体的は、流量の検出信号と理想的な流量を示す基準信号とが比較される。そして、バルブ制御部623は、この比較結果に応じて、塗布液流路(分岐管241b)内の開度を大きくしたり、または、小さくしたりするように、コントロールバルブ622を制御する。このように、マスフローメーター621による流量の検出信号に基づいて、バルブ制御部623によりコントロールバルブ622が制御される状態を、以下では「サーボ状態」とも称する。
【0056】
本実施形態では、塗布ヘッド20が主走査方向に走査して、基板100の表面に塗布液を塗布する間、バルブ制御部623は、コントロールブバルブ622の制御を一旦停止する。これにより、塗布液流路内の開度が固定された状態で、塗布処理が行われる。このように、バルブ制御部623によるコントロールバルブ622の制御が停止した状態を、以下では「ホールド状態」とも称する。
【0057】
電磁開閉弁63は、制御部8によって制御され、分岐管241bの内部を開閉する。電磁開閉弁63は、分岐管241bを開状態とすることにより塗布液を通過させ、また、閉状態とすることにより塗布液の通過を抑制する。分岐管241bのそれぞれに電磁開閉弁63を設けることで、複数のノズル23のそれぞれからの塗布液の吐出のオン・オフを制御することができる。ただし、電磁開閉弁63を設ける位置は、分岐管241b以外でもよく、例えば、配管241aの途中に設けられていてもよい。
【0058】
なお、分岐管241bの内部は、コントロールバルブ622を制御することによって、閉鎖することが可能である。したがって、電磁開閉弁63は、省略することも可能である。ただし、電磁開閉弁63を設けることによって、より確実に、流体の通過を遮断することができる。
【0059】
図1に戻って、塗布装置1は、塗布装置1の各構成要素の動作を制御する制御部8を備えている。制御部8は、図示を省略するが、CPU、ROMなどのプログラム記憶媒体、RAMなどがバス接続された、一般的なコンピューターで構成されている。制御部8は、CPUがROMなどの記憶媒体に格納されたプログラムに従って動作することによって、塗布装置1全体の制御を行う。なお、上述したバルブ制御部623の機能の全部または一部を、制御部8が備えているように構成されていてもよい。
【0060】
制御部8が基板移動機構11やヘッド移動機構21、電空レギュレーター61、マスフローコントローラー62などを制御することによって、塗布装置1による基板100の塗布処理が実施される。制御部8は、好ましくは、オペレーターからの入力操作に応じて、各構成要素の制御内容を適宜変更できるように構成される。制御部8と制御部8が制御する塗布装置1の構成要素とは、互いに有線的に接続されていてもよいし、無線的に接続されていてもよい。
【0061】
<1.2.塗布装置1の動作>
図7は、塗布装置1の塗布動作を示した流れ図である。なお、以下の説明においては、特にことわりのない限り、塗布装置1の各構成要素の動作は、制御部8によって制御されるものとする。また、塗布処理を開始する前に、塗布装置1への基板100の搬送や、基板保持部10上への基板の載置、さらには、塗布処理可能な所定位置への基板100の移動は、既に完了しているものとする。
【0062】
塗布装置1は、塗布処理を開始すると、まず、塗布ヘッド20の位置を初期化する(ステップS11)。具体的には、塗布ヘッド20が、X方向の一方端へ移動され、受液部17の上方へ移動される。なお、このとき、受液部18の上方へ移動されてもよい。塗布ヘッド20がこの位置へ移動したとき、複数のノズル23の位置は、基板100の表面上のY方向端部に設定された複数の塗布対象領域のそれぞれに対応する位置となる。すなわち、そのまま塗布ヘッド20がX方向へ移動することにより、塗布対象領域に塗布液を吐出可能となっている。
【0063】
塗布ヘッド20の位置を初期化すると、塗布装置1は、ノズル23から吐出される塗布液の流量制御を開始する(ステップS12)。詳細には、加圧タンク24からの塗布液の供給が開始され、マスフローメーター621の検出信号に基づくバルブ制御部623の制御により、コントロールバルブ622の開度が調節される(サーボ状態)。これにより、ノズル23に供給される塗布液の流量が理想値となるように調整される。
【0064】
なお、ステップS12において、ノズル23から吐出される塗布液は、受液部17(もしくは受液部18)によって回収される。すなわち、バルブ制御部623によるコントロールバルブ622の開度調節は、ノズル23が基板100の表面外にある位置に停止された状態で、塗布液を吐出するときに実施されることとなる。
【0065】
マスフローメーター621によって検出される検出値が、所定基準に基づいて、理想値に略一致したと判断された場合、塗布装置1は、流量制御を終了する(ステップS13)。具体的には、バルブ制御部623による、コントロールバルブ622の制御が停止され、コントロールバルブ622の開度が固定される(ホールド状態)。
【0066】
流量制御を終了すると、塗布装置1は、ヘッド移動機構21を駆動することによって、塗布ヘッド20の主走査移動を開始する(ステップS14)。具体的には、塗布ヘッド20が、受液部17(もしくは受液部18)上の位置から加速して、反対側の受液部18(もしくは受液部17)上の位置まで移動しながら、複数のノズル23から基板100の表面に塗布液を吐出する。
【0067】
なお、塗布装置1は、好ましくは、ノズル23が基板100の表面の塗布対象領域上を移動する間は、塗布ヘッド20が一定速度で移動するように制御する。これにより、塗布対象領域に対して比較的均一に塗布液を塗布することができる。塗布ヘッド20の主走査方向に関する往路移動により、複数のノズル23の数に相当する複数の塗布対象領域への塗布処理が完了する。
【0068】
次に、塗布装置1は、塗布ヘッド20が、予め設定された所定回数の主走査移動を行ったかどうかを判断する(ステップS15)。塗布ヘッド20の主走査移動の回数は、ノズル23の数と塗布すべき塗布対象領域の数とに応じて適宜決定される。所定回数の主走査移動を行っていない場合は(ステップS15においてNo)、塗布装置1は、基板移動機構11により、基板100を所定ピッチだけ副走査方向に移動させ、再度ステップS14の動作を実行する。一方、所定回数の移動を行ったと判断される場合には(ステップS15においてYes)、塗布装置1は、塗布動作を終了する。
【0069】
塗布動作を終了すると、塗布装置1は、基板移動機構11を駆動することにより、基板100を搬出位置に移動させる。そして、塗布処理された基板100が外部へ搬出される。このとき、塗布ヘッド20は、必要に応じて、受液部17または受液部18の上方へ移動し、ノズル23の初期化が行われる。具体的には、ノズル23から塗布液が吐出されながら、マスフローコントローラー62による流量制御が行われる(サーボ状態)。
【0070】
以上が、塗布装置1の動作の説明である。次に、本実施形態の効果について説明する。
【0071】
<1.3.効果>
図8は、ノズル23から吐出される塗布液の吐出量の経時変化を示した図である。なお、同図に示したグラフの横軸は、基板100全体に塗布処理が行われたときの時間を示している。また縦軸は、ノズル23から吐出される塗布液の単位時間当たりの吐出量(以下、単に「吐出量」とも称する。)を示している。
【0072】
また、図8中、実線で示した線91は、本実施形態に係る吐出量の経時変化を示している。すなわち、塗布処理中(塗布ヘッド20の複数回の往復移動中)に、マスフローコントローラー62による流量制御が行われない場合の吐出量の経時変化を示している。これに対して、二点鎖線で示した線92は、塗布処理中、マスフローコントローラー62による流量制御が行われた場合の吐出量の経時変化を示している。
【0073】
上述したように、塗布装置1では、マスフローコントローラー62によって、ノズル23から吐出される塗布液の吐出量の一定化が図られている。しかしながら、塗布処理中は、塗布ヘッド20が周期的に主走査方向へ移動するため、これに追従する接続チューブ64が屈曲変形され、また、塗布ヘッド20や接続チューブ64内の塗布液が主走査方向に加減速される。このため、塗布液流路内が周期的に体積変動したり、塗布ヘッド20接続チューブ64内の塗布液に周期的に慣性力が作用したりする。この体積変動や慣性力の作用の影響は、例えば図8に示したように、ノズル23からの塗布液の吐出量の変動として現れる。
【0074】
具体的には、線92に示したように、塗布処理中、マスフローコントローラー62により流量制御が行われているものの、ノズル23からの塗布液の吐出量が次第に減少してしまっている。これは、例えば、上記の体積変動や慣性力の影響によって、ノズル23から吐出される塗布液の吐出量と、マスフローメーター621の検出信号が示す流量とが異なっていることにより生じる制御誤差が原因の一つと推測される。
【0075】
そこで、本実施形態では、塗布処理前(塗布ヘッド20が停止している間)にマスフローコントローラー62による流量調整を行い(サーボ状態)、塗布処理中は、マスフローコントローラー62による制御を停止させ、塗布液流路内の開度を一定にとしている(ホールド状態)。これにより、線91で示したように、塗布処理中における吐出量の変動(減少)が、線92と比べて、顕著に改善される。
【0076】
このことから、本実施形態のように、塗布処理中にマスフローコントローラー62をホールド状態とすることによって、塗布処理中にノズル23から吐出される塗布液の量の均一性を向上させることができる。したがって、本実施形態の塗布装置1によれば、基板100に形成される塗布液の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0077】
<2.変形例>
以上、実施形態の詳細について説明したが様々な変形が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、バルブ制御部623及び制御部8の制御機能を、ソフトウエア的に実現するようにしているが、その機能の一部または全部を専用の回路に置き換えてハードウェア的に実現するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、塗布液を供給する塗布液供給部として、電空レギュレーター61と加圧タンク24とで構成している。しかしながら、塗布液供給の構成は、このようなものに限られるものではなく、例えば、塗布液を貯留したタンクから、回転する渦巻き羽根などによって塗布液に圧力を与えて、ノズル23に向けて送液するようにしてもよい。すなわち、塗布液供給部は、塗布液貯留部から塗布液を送液できるのであれば、自由に構成することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、ノズル23の初期化(ステップS11)が、基板100が基板保持部10に載置されてから行われているが、基板保持部10に載置される前に行われるようにしてもよい。また、ノズル23の初期化は、1枚の基板100の塗布処理が完了する毎に実施されなければならないものではなく、例えば、複数枚の基板100の塗布処理が完了する毎に実施されるようにしてもよい。また、1枚の基板100の塗布処理が実行されている最中に、ノズル23の初期化が行われるようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態及び変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜組み合わせたり省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 塗布装置
10 基板保持部
100 基板
11 基板移動機構
17,18 受液部
20 塗布ヘッド
21 ヘッド移動機構
22 ガイド部
23 ノズル
24 加圧タンク
241a 配管
241b 分岐管
26 供給管群
61 電空レギュレーター
62 マスフローコントローラー
621 マスフローメーター
622 コントロールバルブ
623 バルブ制御部
64 接続チューブ
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、
塗布液を吐出するノズルと、
基板に対して、前記ノズルを移動させるノズル移動機構と、
前記ノズルに前記塗布液を供給する塗布液供給部と、
前記塗布液を前記ノズルに供給するために前記ノズルに接続され、前記ノズル移動機構による前記ノズルの移動に追従して変形する接続チューブと、
前記塗布液供給部から前記ノズルに向けて供給される塗布液の流量を測定する流量測定部と、
前記塗布液供給部から前記ノズルに通じる塗布液流路の開度を調節する開度調節部と、
前記流量測定部の測定結果に基づいて、前記開度調節部を制御する開度調節制御部と、
を備え、
前記開度調節制御部は、
前記ノズルが移動して、前記基板の表面に前記塗布液を吐出する際、前記開度調節部を、前記ノズルの停止中に調節した開度を維持するように制御する塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記流量測定部は、前記塗布液供給部から接続チューブまでの前記塗布液流路内を通過する前記塗布液の流量を測定する塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塗布装置において、
前記開度調節部は、
前記塗布液流路の途中に設けられるバルブ、を含み、
前記バルブにより、前記塗布液流路の開度が調節される塗布装置。
【請求項4】
基板に対してノズルを移動させつつ、塗布液供給部からノズルの移動に応じて変形する接続チューブを介して前記ノズルに塗布液を供給して、前記ノズルから塗布液を吐出し、前記基板の表面に前記塗布液を塗布する塗布方法において、
(a) 前記塗布液供給部から前記ノズルにつながる塗布液流路内を通過する、前記塗布液の流量を測定する工程と、
(b) 前記ノズルが停止している間、前記(a)工程にて測定される流量値に基づいて、前記塗布液流路の開度を調節する工程と、
(c) 前記(b)工程にて調節された開度を維持しつつ、前記ノズルが移動して前記基板の表面に向けて前記塗布液を吐出する工程と、
を含む塗布方法。
【請求項5】
請求項4に記載の塗布方法において、
前記(a)工程は、
(a-1) 前記塗布液供給部から前記接続チューブまでの塗布液流路内を通過する塗布液の流量を測定する工程、
を含む塗布方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の塗布方法において、
前記(b)工程は、
(b-1) 前記塗布液流路の途中に設けられたバルブを制御することによって、前記開度を調節する工程、
を含む塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−71270(P2012−71270A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219020(P2010−219020)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】