説明

塗装方法及び塗装装置

【課題】塗装パターンを塗り重ねる際の塗装ガンの動きの自由度を確保しつつ、シェーピングエアを噴出させるための部材を大型化することなく、回転霧化頭の回転軸線近傍に生じる無塗着部位を縮小させ、均一な膜厚の塗膜を得ることができる塗装方法及び塗装装置を提供する。
【解決手段】塗装装置10のエア噴出機構26は、シェーピングエア17を噴出させる第1エア噴出口68a及び第2エア噴出口70aを有する。第1エア噴出口68aから高風速の第1エア17aを噴出させ、第2エア噴出口70aから低風速の第2エア17bを噴出させ、第1エア17a側に第2エア17bを引き寄せることにより第2エア17bの一部を回転霧化頭24の回転軸線a側に変位させるとともに、回転霧化頭24の回転軸線aを中心とする略円形の塗布パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転霧化頭から液体塗料を噴霧して静電塗装を行う塗装方法及び塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディなどを塗装する塗装装置として、回転霧化式塗装装置が知られている。この回転霧化式塗装装置は、回転霧化頭に高電圧を印加しつつ回転させ、この状態で、回転霧化頭に導電性塗料(液体塗料)を供給する。これにより、液体塗料を帯電させて霧化し、回転霧化頭の先端縁から噴霧して、静電塗装を行う。
【0003】
回転霧化式塗装装置に関連し、下記特許文献1には、ドーナッツ状の塗装パターンによる塗着効率の低下や塗膜厚さの偏りを無くすために、パターン変形用エア噴出口を上下又は左右のみに設けることで、パターン変形用エアによって塗装パターンを楕円形に変形させ、塗膜厚さを均一化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−54754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、楕円形の塗装パターンでは、上下と左右の塗布面積が異なり、上下方向に塗布した場合と、左右方向に塗布した場合とでは、塗膜厚さが同じにはならない。このため、塗装パターンを均一に塗り重ねるための塗装ガンの動き(ティーチング)に対する制約が大きい。
【0006】
また、特許文献1とは別の方法として、環状のシェーピングエアを回転軸方向への傾斜角度を通常よりも大きくして噴出させることで、ドーナッツ形状を無くすことが考えられるが、その場合は、塗装パターンの径が小さくなることによる塗装効率の悪化や、シェーピングエアを噴出させるための部材であるエアリングが大型化することによるロボット動作への制約が生じる。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、塗装パターンを塗り重ねる際の塗装ガンの動きの自由度を確保しつつ、シェーピングエアを噴出させるための部材を大型化することなく、回転霧化頭の回転軸線近傍に生じる無塗着部位を縮小させ、均一な膜厚の塗膜を得ることができる塗装方法及び塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、回転する回転霧化頭から吐出される塗料を環状のシェーピングエアによりワーク側へ指向させることで前記ワークを塗装する塗装方法であって、前記シェーピングエアにおける所定部位を第1エアとして、相対的に高風速で噴出させ、前記第1エアの噴出と並行して、前記シェーピングエアにおける他の部位を第2エアとして、前記第1エアよりも相対的に低風速で噴出させ、前記第1エア側に前記第2エアを引き寄せることにより前記第2エアの一部を前記回転霧化頭の回転軸線側に変位させるとともに、前記回転霧化頭の回転軸線を中心とする略円形の塗布パターンを形成することを特徴とする。
【0009】
上記のように構成された本発明に係る塗装方法によれば、相対的に高風速の第1エア側に、相対的に低風速の第2エアを引き寄せることにより、第2エアを回転霧化頭の回転軸線側に変位させることができる。これにより、塗装パターンの形状を略円形に維持したまま、回転霧化頭の回転軸線近傍に生じる無塗着部位を縮小させることができる。よって、塗装パターンを塗り重ねる際の塗装ガンの動きの自由度を確保しつつ、シェーピングエアを噴出させるための部材を大型化することなく、均一な膜厚の塗膜を得ることができる。
【0010】
上記の塗装方法において、前記シェーピングエアのうち、周方向の一部が前記第1エアを構成し、周方向の他の部分が前記第2エアを構成し、前記第1エアが形成される周方向範囲は、前記第2エアが形成される周方向範囲よりも小さいとよい。これにより、第2エアを第1エア側に引き寄せる際に、回転霧化頭の回転軸線側に第2エアを効果的に変位させることができる。
【0011】
上記の塗装方法において、前記第2エアは、環状に形成され、前記第1エアは、前記第2エアの内方で、前記第2エアに対して周方向の一部の範囲についてのみ形成されてもよい。このように、第1エアを第2エアの内方に形成することで、回転霧化頭の回転軸線側に一層効果的に第2エアを変位させ、塗装膜厚の均一化を図ることができる。
【0012】
上記の塗装方法において、前記回転霧化頭の回転軸線を中心とする円周方向に互いに等間隔の複数エリアにて前記第1エアを形成するとよい。周方向に等間隔に離間した箇所で第1エアを形成することにより、第2エアを第1エア側にバランスよく変位させることができるため、塗装パターンの無塗着部位を効果的に縮小させ、塗装膜厚の一層の均一化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の塗装装置は、塗料をワークに対して吐出する回転霧化頭と、前記回転霧化頭の外周縁部に向けて環状のシェーピングエアを噴出するエア噴出機構とを備えた塗装装置であって、前記エア噴出機構は、前記シェーピングエアを噴出させる第1エア噴出口及び第2エア噴出口と、前記第1エア噴出口及び前記第2エア噴出口の上流側に設けられ、隔壁によって区画された複数のバッファ室とを有し、前記第1エア噴出口から相対的に高風速の第1エアを噴出させ、前記第2エア噴出口から前記第1エアよりも相対的に低風速の第2エアを噴出させ、前記第1エア側に前記第2エアを引き寄せることにより前記第2エアの一部を前記回転霧化頭の回転軸線側に変位させるとともに、前記回転霧化頭の回転軸線を中心とする略円形の塗布パターンを形成することを特徴とする。
【0014】
上記のように構成された本発明に係る塗装装置によれば、相対的に高風速の第1エア側に、相対的に低風速の第2エアを引き寄せることにより、第2エアを回転霧化頭の回転軸線側に変位させることができる。これにより、塗装パターンの形状を略円形に維持したまま、回転霧化頭の回転軸線近傍に生じる無塗着部位を縮小させ、均一な膜厚の塗膜を得ることができる。
【0015】
上記の塗装装置において、前記第1エア噴出口は、前記シェーピングエアのうち周方向の一部が前記第1エアを構成するように設けられ、前記第2エア噴出口は、前記シェーピングエアのうち周方向の他の部分が前記第2エアを構成するように設けられ、前記第1エア噴出口が設けられる周方向範囲は、前記第2エア噴出口が設けられる周方向範囲よりも小さいとよい。これにより、第2エアを第1エア側に引き寄せる際に、回転霧化頭の回転軸線側に第2エアを効果的に変位させることができる。
【0016】
上記の塗装装置において、前記複数のバッファ室は、前記隔壁によって周方向に区画され、前記第1エア噴出口と前記バッファ室とを連通するエア供給孔は、前記隔壁の近傍に設けられ、前記第2エア噴出口と前記バッファ室とを連通するエア供給孔は、前記第1エア噴出口よりも前記隔壁から周方向に離れた位置に設けられるとよい。このように構成した場合、コアンダ効果により隔壁に沿ってエアが流れ、当該エアが、隔壁近傍に配置されたエア供給孔へと流入し、これにより、第1エア噴出口から噴出される第1エアの風速が速くなる。また、各バッファ室へ流すエア流量は同一でよいことから、1つのエア源を設ければ足り、設備構成を簡略化することができる。
【0017】
上記の塗装装置において、前記第2エア噴出口は、前記第2エアを環状に形成するように設けられ、前記第1エア噴出口は、前記第2エアの内方で、前記第2エアに対して周方向の一部の範囲についてのみ前記第1エアを形成するように設けられてもよい。この構成の場合、第1エアを第2エアの内方から噴出させることで、回転霧化頭の回転軸線側に一層効果的に第2エアを変位させ、塗装膜厚の均一化を図ることができる。
【0018】
上記の塗装装置において、前記第1エア噴出口は、前記回転霧化頭の回転軸線を中心とする周方向に互いに等間隔の複数エリアにて前記第1エアを形成するように設けられるとよい。周方向に等間隔に離間した箇所から第1エアを噴出させることにより、第2エアを第1エア側にバランスよく変位させることができるため、塗装パターンの無塗着部位を効果的に縮小させ、塗装膜厚の一層の均一化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の塗装方法及び塗装装置によれば、塗装パターンを塗り重ねる際の塗装ガンの動きの自由度を確保しつつ、シェーピングエアを噴出させるための部材を大型化することなく、回転霧化頭の回転軸線近傍に生じる無塗着部位を縮小させ、均一な膜厚の塗膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る塗装装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した塗装装置のリング部材の背面を示す斜視図である。
【図3】図3Aは、隔壁が無い場合のバッファ室内でのエアの流れを示す模式図であり、図3Bは、隔壁が有る場合のバッファ室内でのエアの流れを示す模式図である。
【図4】第1エア側に第2エアが引き寄せられることを示す模式的説明図である。
【図5】図5Aは、シェーピングエアにおける周方向の各位置における風速が同じである場合の、塗装パターンでの半径方向に沿った膜厚変化を示すグラフであり、図5Bは、シェーピングエアにおける周方向の一部に高風速エリアを設けた場合(本発明)の、塗装パターンでの半径方向に沿った膜厚変化を示すグラフである。
【図6】図6Aは、第1変形例に係るリング部材の背面図であり、図6Bは、第2変形例に係るリング部材の背面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る塗装装置の概略構成図である。
【図8】図8Aは、図7におけるVIIIA−VIIIA線に沿った断面図であり、図8Bは、第2エアが第1エア側に引き寄せられることを示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る塗装方法及び塗装装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る塗装装置10の概略構成図である。図1に示すように、塗装装置10は、少なくとも、装置本体を構成する塗装ガン12と、塗装ガン12にシェーピングエア17用のエアを供給するエア供給系14とを備える。
【0023】
塗装ガン12は、ケーシング16(ハウジング)と、ケーシング16内に設けられたエアモータ18と、エアモータ18によって高速回転する中空構造の回転軸20と、回転軸20の中空部に挿通された管部材22と、回転軸20の先端に設けられたベル型の回転霧化頭24と、回転霧化頭24の先端外周に向けてシェーピングエア17を噴出するエア噴出機構26とを有する。
【0024】
エアモータ18は、図示しない圧縮空気源から圧縮エアが供給され、回転軸20を高速回転するように構成されている。この回転軸20は、高電圧を発生する図示しない高電圧発生装置に接続されている。従って、回転霧化頭24には回転軸20を介して負の高電圧が印加される。また、回転軸20は、中空円筒状に形成された部材であり、その中空部内には、管部材22が配置されている。
【0025】
管部材22内には、塗料を流すための塗料供給路28と、洗浄液を流すための洗浄液供給路30とが形成されている。管部材22の先端部は、二重管となっており、塗料を吐出する塗料供給ノズル32と、洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズル34とが同心状に形成されている。
【0026】
回転霧化頭24は、回転軸20の先端に固定されており、回転軸20がエアモータ18の作用下に回転すると、回転霧化頭24も回転軸20とともに一体的に回転する。回転霧化頭24の内部には、管部材22を介して供給された塗料を一旦貯留するための塗料溜り部36が形成されている。塗料溜り部36は、円形の空間である。この塗料溜り部36の中心部に、塗料供給ノズル32が臨んでいる。
【0027】
回転霧化頭24は、回転軸20に固定されたインナー部材38と、インナー部材38の外周部に固定されたベルカップ40とから構成されており、インナー部材38とベルカップ40との間に、塗料溜り部36が形成されている。インナー部材38には、回転軸20の先端部が嵌合する凹部38aが形成され、インナー部材38の前面中央部には、管部材22の先端部が挿通される開口部が形成されている。
【0028】
ベルカップ40は、前方に向かって半径方向外方に広がる円形のカップ状に形成されている。ベルカップ40の前面には、当該前面に供給された塗料を薄膜化する塗料吐出沿面42が形成されている。塗料吐出沿面42は、半径方向外方に向かって前方に傾斜し、正面視でドーナッツ型の面であり、ベルカップ40の回転による遠心力で、塗料溜り部36からの塗料を薄膜化する。
【0029】
ベルカップ40には、塗料吐出沿面42へ塗料を供給するための複数の塗料供給孔44が、回転霧化頭24の回転軸線aを中心とする周方向に等間隔で設けられている。各塗料供給孔44は、回転霧化頭24の前方に向かって回転霧化頭24の軸線aから遠ざかるように傾斜し、一端(内方端)が塗料溜り部36で開口し、他端(外方端)がベルカップ40の前面で開口している。
【0030】
ベルカップ40の背面側中央部は、塗料溜り部36の内方(管部材22側)に向かって突出し、供給された塗料や洗浄液を半径方向外側に分配するようになっている。
【0031】
ベルカップ40の前面外周縁部(すなわち、塗料吐出沿面42の外周縁部)には、塗料を液糸にするための複数の溝46が周方向に等間隔に形成されている。各溝46は、塗料吐出沿面42の外周縁部の全周にわたり周方向に等間隔に設けられるとともに、回転霧化頭24の半径方向に沿って延在しており、塗料吐出沿面42に沿って半径方向外方に流れてきた薄膜状の塗料を細分化する。これにより、ベルカップ40の外周端からは、細糸状となった塗料(液糸)が放出される。
【0032】
ケーシング16とエアモータ18との間には、複数(図示例では3つ)のリング状の流路形成部材50、52、54が配置されている。以下、流路形成部材50、52、54を、それぞれ、「第1流路形成部材50」、「第2流路形成部材52」、「第3流路形成部材54」とよぶ。第1流路形成部材50は、エアモータ18の外側に配置されており、その外周部には環状凹部50aが形成されている。
【0033】
第2流路形成部材52は、第1流路形成部材50とケーシング16との間に配置されており、軸線方向に貫通する流路52aが周方向に間隔をおいて複数形成されている。第1流路形成部材50と第2流路形成部材52とケーシング16とにより、環状空間51が形成されている。第3流路形成部材54は、ケーシング16と第1流路形成部材50との間で、且つ、第1流路形成部材50及び第2流路形成部材52の前方に配置されている。第3流路形成部材54には、第2流路形成部材52の流路52aと連通する流路54aが周方向に間隔をおいて複数形成されている。
【0034】
第3流路形成部材54の先端には、エア噴出機構26を構成するリング部材27が、ベルカップ40と同心状に、ベルカップ40の背面側でベルカップ40を囲むように固定されており、ベルカップ40の外周縁部の後方から、当該外周縁部に向けてシェーピングエア17を噴出するものである。
【0035】
図2は、リング部材27を背面側から見た斜視図である。図1及び図2に示すように、リング部材27の背面には、第1円弧状凹部60と第2円弧状凹部62とが形成されている。第1円弧状凹部60と第2円弧状凹部62とは、隔壁64a、64bによって仕切られ、互いに略同じ容積を有する。第1円弧状凹部60と第3流路形成部材54の前面によって、円弧状の第1バッファ室64が形成されている。第2円弧状凹部62と第3流路形成部材54の前面によって、円弧状の第2バッファ室66が形成されている。
【0036】
図1に示すように、リング部材27には、さらに、第1バッファ室64とリング部材27の前面を連通する複数のエア供給孔68と、第2バッファ室66とリング部材27の前面を連通する複数のエア供給孔70とが形成されている。エア供給孔68は、一端(後端)が第1バッファ室64で開口し、他端(先端)が前面でエア噴出口68aとして開口している。エア供給孔70は、一端(後端)が第2バッファ室66で開口し、他端(先端)がエア噴出口70aとして前面で開口している。
【0037】
エア供給孔68及びエア供給孔70は、それぞれ、軸線aを中心とした円周方向に等間隔に設けられ、前方に向かって回転霧化頭24の軸線aに近づくように傾斜し、ベルカップ40の外周縁部に向けて開口している。また、エア供給孔68、70は、回転霧化頭24の軸線aを中心とする円周方向に、軸線a方向に対して所定角度(例えば、30度〜50度)傾斜している。
【0038】
エア供給孔68、70のうち、隔壁の近傍に配置されたものを「第1エア供給孔71a」(図2、図3B参照)と呼び、第1エア供給孔71aよりも隔壁から周方向に離れた箇所(第1バッファ室64、第2バッファ室66の各々において両端近傍の第1エア供給孔間の箇所)に設けられたものを「第2エア供給孔71b」(図2、図3B参照)と呼ぶ。また、複数のエア噴出口68a、70aのうち、第1エア供給孔71aに対応するものを「第1エア噴出口73a」(図3B参照)と呼び、第2エア供給孔71bに対応するものを「第2エア噴出口73b」(図1、図3B参照)と呼ぶ。
【0039】
図1に示す塗装ガン12では、上述した環状空間51、第2流路形成部材52の複数の流路52a、第3流路形成部材54の複数の流路54aにより、エア供給系14からリング部材27へと圧縮エアを供給するためのエア供給路72が構成されている。
【0040】
図1に示すように、エア供給系14は、エア源80と、エア源80から塗装ガン12に圧縮エアを導くエアライン82とを有する。エア源80は、例えばエアポンプであり、圧縮エアを送出する。エアライン82は、環状空間51に圧縮エアを供給する。エアライン82上には、流量計88及び電空変換機86が配設されている。エア制御ユニット90は、流量計88で検出した流量値をフィードバック値として、エア供給路72に供給されるエアの流量が所定流量となるように電空変換機86を制御する。
【0041】
エア供給系14のエアライン82により塗装ガン12に供給された圧縮エアは、環状空間51で周方向に拡散した後、流路52a、流路54aを順に通って、第1バッファ室64及び第2バッファ室66に導入される。圧縮エアは、さらに、第1バッファ室64及び第2バッファ室66の各々において、エア供給孔68、70を通って、エア噴出口68a、70aから噴出される。
【0042】
この場合、隔壁64a、64bの近傍に配置された第1エア供給孔71aの流出口である第1エア噴出口73aから噴出される第1エア17aは、シェーピングエア17のうち周方向の所定部位を構成する相対的に高風速のエアである。一方、第1エア供給孔71aよりも隔壁64a、64bから周方向に離れた位置に配置された第2エア供給孔71bの流出口である第2エア噴出口73bから噴出される第2エア17bは、シェーピングエア17のうち周方向の他の部位を構成する相対的に低風速のエアである。すなわち、第1エア17aの風速(流速)は、第2エア17bの風速(流速)よりも高い。第1エア噴出口73aから噴出される第1エア17aが、第2エア噴出口73bから噴出される第2エア17bよりも高風速となる理由については、後述する。
【0043】
本実施形態に係る塗装装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0044】
塗装を行うときは、エアモータ18により回転軸20を高速に回転させる。そして、塗料供給ノズル32から回転霧化頭24の塗料溜り部36に向けて塗料を吐出する。これにより、塗料溜り部36に流入した塗料は、塗料供給孔44に流入する。この場合、塗料供給孔44を通過した塗料は、塗料吐出沿面42に流出し、そこで薄膜化された後、溝46で細分化されてベルカップ40の外周端から液糸となって飛び出す。ベルカップ40の外周端から放出された液糸は、塗料粒子として微粒化される。
【0045】
このとき、回転霧化頭24とワーク(被塗装物)との間には高電圧が印加されているため、回転霧化頭24によって微粒化された帯電塗料粒子は、ワークに向かって飛行し、ワークに塗着する。このときの塗料の噴霧パターンは、エア噴出口から噴出されるシェーピングエア17(第1エア17a及び第2エア17b)により整形される。
【0046】
ところで、本実施形態の構成と異なり、図3Aに示すように、隔壁が無い構成(従来技術)の場合、バッファ室1に導入された圧縮エアは、略均等にエア供給孔3に流入し、エア噴出口5から噴出される。このため、エア噴出口5から噴出されるエア7の風速は略均等となる。一方、第1バッファ室64と第2バッファ室66が隔壁64a、64bで区画された本実施形態の場合、図3Bに示すように、第1バッファ室64と第2バッファ室66に導入されたの圧縮エアの一部が、コアンダ効果によって隔壁64a、64bに沿って流れ、当該圧縮エアが隔壁64a、64bの近傍に配置された第1エア供給孔71aへと流入する。これにより、第1エア噴出口73aから噴出される第1エア17aの風速が、第2エア噴出口73bから噴出される第2エア17bの風速よりも速くなる。
【0047】
この結果、図4に示すように、シェーピングエア17のうち周方向の一部に、相対的に高風速のエリア(第1エア17a)が形成される。隔壁64a、64bの近傍に配置された第1エア供給孔71aの流出口である第1エア噴出口73aから噴出されたエアだけが、相対的に高風速の第1エア17aとなるので、第1エア17aが形成される周方向範囲(角度範囲)は、第2エア17bが形成される周方向範囲よりも相当に小さい。また、隔壁64a、64bが180度間隔で2つ設けられた本実施形態では、第1エア17aが形成される箇所は、軸線aを基準に互いに反対側の箇所(180度位相がずれた箇所)である。
【0048】
このように、環状に噴出するシェーピングエア17の一部(第1エア17a)の流速を他の部分(第2エア17b)の流速よりも速くすると、第1エア17aの圧力が第2エア17bの圧力よりも低くなるため、第1エア17a側に第2エア17bの一部が引き寄せられ、第2エア17bの一部が軸線a側に変位する。すなわち、図4において矢印で示すように、第2エア17bを構成する周方向の各部位において、第2エア17bの本来の円弧形状の内側をショートカットして、相対的に圧力の低い第1エア17a側に変位する作用が生じる。
【0049】
この結果、第2エア17bの本来の形成領域よりも軸線a側に寄った位置に、第2エア17bの内周部が引き寄せられる。そして、第2エア17bの内周部が軸線a側に引き寄せられる結果、軸線a近傍にも塗料を塗布することができる。従って、塗装パターンの形状を略円形に維持したまま、回転霧化頭24の軸線近傍に生じる無塗着部位を縮小させ、均一な膜厚の塗膜を得ることができ、効率よく塗装することができる。
【0050】
図5A及び図5Bは、以下の塗装条件において塗装を実施した場合の塗装パターンの半径方向の膜厚変化を示すグラフであり、図5Aは、シェーピングエアにおける風速が周方向の位置によらず同じである場合であり、図5Bは、シェーピングエアにおける周方向の一部に高風速エリアを設けた場合(本発明)である。図5A及び図5Bにおいて、横軸は、軸線a(「0」の位置)を中心とした半径方向位置であり、縦軸は、塗膜厚さである。なお、図5A、図5Bのいずれのケースも、塗装ガンの位置を固定(静止)させた状態で0.6秒間塗布した際の膜厚データを示している。
【0051】
(塗装条件)
回転数(rpm) :35000
塗料吐出量(cc/min) :290
塗料吐出時間(sec) :0.6
塗装距離(mm) :250
印加電圧(kV) :−60
エア風量(NL/min) :350
【0052】
図5Aに示すように、シェーピングエアにおける風速が周方向の位置によらず同じである場合、位置0(軸線a)から所定距離の位置に相当に膜厚の大きい箇所が生じた。また、この場合、最高膜厚の2分の1以上の部分を塗装パターンと定義すると、図5Aの例では、位置0を含む中心部分の膜厚がその周囲の塗装パターンの膜厚よりも小さく、軸線aの近傍にいわゆる「無塗着部位」が生じた。なお、「無塗着部位」とは、塗料が全く塗布されていない部位を意味するものではなく、最高膜厚と比較して相当に膜厚が小さい部位を意味する。
【0053】
一方、シェーピングエアにおける周方向の一部に高風速エリアを設けた本発明の場合、位置0から所定距離の位置に生じる膜厚の比較的大きい箇所の膜厚が、図5Aの同じ位置の膜厚よりも小さくなった。また、この場合、最高膜厚の2分の1以上の部分を塗装パターンと定義すると、図5Bの例では、位置0を含む中心部分が塗装パターンに含まれ、上記の意味でいう「無塗着部位」が生じなかった。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る塗装装置10及び塗装方法によれば、相対的に高風速の第1エア17a側に、相対的に低風速の第2エア17bを引き寄せることにより、第2エア17bを回転霧化頭24の軸線a側に変位させることができる。これにより、塗装パターンの形状を略円形に維持したまま、回転霧化頭24の軸線a近傍に生じる無塗着部位を縮小させることができる。よって、塗装パターンを塗り重ねる際の塗装ガン12の動きの自由度を確保しつつ、シェーピングエア17を噴出させるための部材(リング部材27)を大型化することなく、均一な膜厚の塗膜を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態の場合、シェーピングエア17のうち、周方向の一部が第1エア17aを構成し、周方向の他の部分が第2エア17bを構成し、第1エア17aは、第2エア17bの周方向範囲よりも小さい範囲で噴出されるので、第2エア17bを第1エア17a側に引き寄せる際に、回転霧化頭24の軸線a側に第2エア17bを効果的に変位させることができる。
【0056】
さらに、本実施形態の場合、回転霧化頭24の軸線aを中心とする周方向に互いに等間隔の複数エリアにて第1エア17aを形成するので、第2エア17bを第1エア17a側にバランスよく変位させることができる。よって、塗装パターンの無塗着部位を効果的に縮小させ、塗装膜厚の一層の均一化を図ることができる。
【0057】
本実施形態の場合、コアンダ効果により隔壁64a、64bに沿ってエアが流れ、当該エアが、隔壁64a、64b近傍に配置された第1エア供給孔71aへと流入し、これにより、第1エア噴出口73aから噴出される第1エア17aの風速が速くなる。また、第1バッファ室64と第2バッファ室66へ流すエア流量は同一でよいことから、1つの流量制御系(電空変換機86、流量計88、エア制御ユニット90)と1つのエア源80を設ければ足り、設備構成を簡略化することができる。
【0058】
上述したエア噴出口68a、70aは、リング部材27において周方向に間隔をおいて配設された多数の孔により構成されたが、このような構成に代えて、周方向に延在する円弧状の孔(スリット)により構成されてもよい。
【0059】
上述したリング部材27は、2つの円弧状凹部(第1円弧状凹部60及び第2円弧状凹部62)を設けた構成であるが、3つ以上の円弧状凹部を設けた構成を採用してもよい。例えば、上述した塗装装置10において、第1円弧状凹部60と第2円弧状凹部62とを有するリング部材27に代えて、3つの円弧状凹部112a〜112cを有するリング部材110(図6A参照)や4つの円弧状凹部122a〜122dを有するリング部材120(図6B参照)を採用してもよい。図6A及び図6Bの構成において、隔壁114、124は、周方向に等間隔に配置されるのがよい。
【0060】
図6A及び図6Bのように、3つ以上の円弧状凹部を設けた構成の場合でも、隔壁114、124の近傍に配置された第1エア供給孔71aを通って外部に噴出されたエアの風速が、第1エア供給孔71aよりも隔壁114、124から周方向に離れた第2エア供給孔71bを通って外部に噴出されたエアの風速よりも早くなり、相対的に高風速のエア側に、相対的に低風速のエアが引き寄せられるため、相対的に低風速のエアの一部が軸線a側に変位する。よって、リング部材110、120を採用した場合でも、塗装パターンの形状を略円形に維持したまま、回転霧化頭24の軸線a近傍に生じる無塗着部位を縮小させ、均一な膜厚の塗膜を得ることができる。
【0061】
図7は、本発明の第2実施形態に係る塗装装置10aの概略構成図である。図8Aは、図7におけるVIIIA−VIIIA線に沿った横断面図である(ただし、回転霧化頭24については、図示を省略している)。なお、第2実施形態に係る塗装装置10aにおいて、第1実施形態に係る塗装装置10と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0062】
塗装装置10aの本体を構成する塗装ガン130において、ケーシング16とエアモータ18との間には、複数(図示例では3つ)のリング状の流路形成部材132、134、136が配置されている。以下、流路形成部材132、134、136を、それぞれ、「第1流路形成部材132」、「第2流路形成部材134」、「第3流路形成部材136」とよぶ。
【0063】
第1流路形成部材132は、エアモータ18の外側に配置されており、その外周部には環状凹部132aが形成され、軸線方向に貫通する複数の流路132bが周方向に間隔をおいて形成され、背面側には流路132bと連通した環状凹部132cが形成されている。
【0064】
第2流路形成部材134は、第1流路形成部材132とケーシング16との間に配置されており、軸線a方向に貫通する複数の流路134aが形成されている。第1流路形成部材132と第2流路形成部材134とケーシング16とにより、環状の空間131が形成されている。
【0065】
第3流路形成部材136は、ケーシング16と第1流路形成部材132との間で、且つ、第1流路形成部材132及び第2流路形成部材134の前方に配置されている。第3流路形成部材136には、第2流路形成部材134の流路134aと連通し且つ周方向に間隔をおいて配設された複数の流路136aと、第1流路形成部材132の流路132bと連通し且つ周方向に間隔をおいて配設された複数の流路136b、136cとが形成されている。
【0066】
第3流路形成部材136の先端には、エア噴出機構138を構成するリング部材140が、回転霧化頭24と同心状に、ベルカップ40の背面側でベルカップ40を囲むように固定されており、ベルカップ40の外周縁部の後方から、当該外周縁部に向けて環状のシェーピングエア17を噴出するものである。
【0067】
図8Aに示すように、リング部材140の背面には、第1円弧状凹部142と第2円弧状凹部144と環状凹部146とが形成されている。第1円弧状凹部142と第2円弧状凹部144とは、環状凹部146の半径方向内方に形成され、軸線aを中心とする円の周方向に延在する溝であり、互いに略同じ容積を有する。
【0068】
第1円弧状凹部142と第3流路形成部材136の前面によって、円弧状の第1バッファ室150が形成されている。第2円弧状凹部144と第3流路形成部材136の前面によって、円弧状の第2バッファ室152が形成されている。環状凹部146と第3流路形成部材136の前面によって、環状の第3バッファ室154が形成されている。
【0069】
リング部材140には、さらに、第1バッファ室150及び第2バッファ室152とリング部材140の前面をそれぞれ連通する複数の第1エア供給孔158、160と、第3バッファ室154とリング部材140の前面を連通する複数の第2エア供給孔156とが形成されている。
【0070】
第1エア供給孔158は、軸線aを中心とした円周方向に等間隔に設けられ、一端(後端)が第1バッファ室150で開口し、他端(先端)が前面で一方の第1エア噴出口158aとして開口している。第2エア供給孔160は、軸線aを中心とした円周方向に等間隔に設けられ、一端(後端)が第2バッファ室152で開口し、他端(先端)が前面で他方の第1エア噴出口160aとして開口している。
【0071】
第2エア供給孔156は、軸線aを中心とした円周方向に等間隔に設けられ、一端(後端)が第3バッファ室154で開口し、他端(先端)が前面で第2エア噴出口156aとして開口している。
【0072】
第1エア供給孔158、160は、第2エア供給孔156の内方で、互いに同一円周上に設けられるとともに、それぞれ、周方向に等間隔に設けられ、前方に向かって回転霧化頭24の軸線aに近づくようにわずかに傾斜し、ベルカップ40の外周縁部に向けて開口している。第2エア供給孔156は、周方向に等間隔に設けられ、前方に向かって回転霧化頭24の軸線aに近づくようにわずかに傾斜している。
【0073】
また、第1エア供給孔158、160及び第2エア供給孔156は、回転霧化頭24の軸線aを中心とする円周方向に、軸線a方向に対して所定角度(例えば、30度〜50度)傾斜している。
【0074】
図7に示す塗装ガン130では、上述した第1流路形成部材132の環状凹部132c及び流路132bと、第3流路形成部材136の流路136b、136cとにより、第1バッファ室150及び第2バッファ室152に圧縮エアを供給する第1エア供給路166が構成されている。上述した空間131、第2流路形成部材134の流路134a、第3流路形成部材136の流路136aにより、第3バッファ室154に圧縮エアを供給する第2エア供給路162が構成されている。
【0075】
エア供給系170は、エア源80と、エア源80から第1エア供給路166に圧縮エアを導く第1エアライン172と、エア源80から第2エア供給路162に圧縮エアを導く第2エアライン174とを有する。エア源80は、図1に示したエア源80と同じである。
【0076】
第1エアライン172上には、流量計176及び電空変換機178が配設されている。エア制御ユニット180は、流量計176で検出した流量値をフィードバック値として、第1エア供給路166に供給されるエアの流量が所定流量となるように電空変換機178を制御する。
【0077】
第2エアライン174上には、流量計182及び電空変換機184が配設されている。エア制御ユニット186は、流量計182で検出した流量値をフィードバック値として、第2エア供給路162に供給されるエアの流量が所定流量となるように電空変換機184を制御する。
【0078】
第1エアライン172により塗装ガン130に供給された圧縮エアは、第1エア供給路166を通って、第1エア噴出口158a、160aから第1エア17aとして噴出される。第2エアライン174により塗装ガン130に供給された圧縮エアは、第2エア供給路162を通って、第2エア噴出口156aから第2エア17bとして噴出される。
【0079】
塗装装置10aにおいて、第1エア噴出口158a、160aから噴出される第1エア17aは、シェーピングエア17における所定部位を構成する部分であって、相対的に高風速である。第2エア噴出口156aから噴出される第2エア17bは、シェーピングエア17におけるその他の部位を構成する部分であって、相対的に低風速である。すなわち、第1エア17aの風速(流速)は、第2エア17bの風速(流速)よりも高い。
【0080】
第1エア供給孔158、160の総数は、第2エア供給孔156の総数よりも少ないため、第1エア供給孔158、160の流路断面積の総和は、第2エア供給孔156の流路断面積の総和よりも小さい。このため、第1エアライン172に流す圧縮エアの流量と第2エアライン174に流す圧縮エアの流量とを同程度に設定した場合でも、第1エア17aの風速は、第2エア17bの風速よりも高くなる。なお、第1エア17aと第2エア17bの流速比が所望の値となるように、第1エアライン172に流す圧縮エアの流量と第2エアライン174に流す圧縮エアの流量とを異ならせてもよい。
【0081】
後述するように、塗装装置10aでは、第1エア17aにより第2エア17bの一部を引き寄せ、その結果として、塗装パターンの形状を略円形に維持したまま、回転霧化頭24の回転軸線a近傍に生じる無塗着部位を縮小させる。このため、第1エア17aが形成される周方向範囲は、第2エア17bが形成される周方向範囲よりも相当に小さく設定されるのがよい。従って、第1エア17aが形成される周方向範囲(角度範囲)は、例えば、5〜45度程度とするのがよい。
【0082】
上記のように構成された塗装装置10aにより塗装を行うときは、エアモータ18により回転軸20を高速に回転させるとともに、塗料供給ノズル32から回転霧化頭24の塗料溜り部36に向けて塗料を吐出する。すると、塗料は、塗料吐出沿面42で薄膜化された後、溝46で細分化されてベルカップ40の外周端から液糸となって飛び出し、塗料粒子として微粒化される。このとき、第1エア噴出口158a、160a及び第2エア噴出口156aからベルカップ40の外周縁部に向けてシェーピングエア17を噴出しているので、当該シェーピングエア17により塗料の微粒化が促進される。そして、微粒化された帯電塗料粒子は、ワークに向かって飛行し、ワークに塗着する。このときの塗料の噴霧パターンは、シェーピングエア17(第1エア17a及び第2エア17b)とにより整形される。
【0083】
この場合、本実施形態に係る塗装装置10aでは、環状の第2エア17bの内方で、第2エア17bに対して周方向の一部の範囲についてのみ第1エア17aを形成し、この第1エア17aの風速を第2エア17bの風速よりも高速にしている。このため、第1エア17aの圧力が第2エア17bの圧力よりも低くなり、第1エア17a側に第2エア17bの一部が引き寄せられ、第2エア17bの一部が軸線側に変位する。すなわち、図8Bにおいて矢印で示すように、第2エア17bを構成する周方向の各部位において、第2エア17bの本来のリング形状の内側をショートカットして、相対的に圧力の低い第1エア17a側に変位する作用が生じる。
【0084】
この結果、第2エア17bの本来の形成領域よりも軸線a側に寄った位置に、第2エア17bの内周部が引き寄せられる。そして、第2エア17bの内周部が軸線a側に引き寄せられる結果、軸線a近傍にも塗料を塗布することができる。従って、塗装パターンの形状を略円形に維持したまま、回転霧化頭24の軸線a近傍に生じる無塗着部位を縮小させ、均一な膜厚の塗膜を得ることができ、効率よく塗装することができる。
【0085】
図示例の第1エア噴出口158a、160aは、リング部材140において周方向に間隔をおいて配設された多数の孔により構成されたが、このような構成に代えて、周方向に延在する円弧状の孔(スリット)により構成されてもよい。図示例の第2エア噴出口156aは、リング部材140において周方向に間隔をおいて配設された多数の孔により構成されたが、このような構成に代えて、周方向に延在するリング状の孔(スリット)により構成されてもよい。
【0086】
上述したリング部材140は、2つの円弧状凹部(第1円弧状凹部142及び第2円弧状凹部144)を設けた構成であるが、周方向に等間隔に3つ以上の円弧状凹部を設け、第2エア17bの内方に、周方向に等間隔に第1エア17aを形成してもよい。
【0087】
なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する各構成部分については、第1実施形態における当該共通の各構成部分がもたらす作用及び効果と同一又は同様の作用及び効果が得られることは勿論である。
【0088】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0089】
10、10a…塗装装置 17…シェーピングエア
17a…第1エア 17b…第2エア
24…回転霧化頭 26…エア噴出機構
73a、158a、160a…第1エア噴出口
73b、156a…第2エア噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する回転霧化頭から吐出される塗料を環状のシェーピングエアによりワーク側へ指向させることで前記ワークを塗装する塗装方法であって、
前記シェーピングエアにおける所定部位を第1エアとして、相対的に高風速で噴出させ、
前記第1エアの噴出と並行して、前記シェーピングエアにおける他の部位を第2エアとして、前記第1エアよりも相対的に低風速で噴出させ、
前記第1エア側に前記第2エアを引き寄せることにより前記第2エアの一部を前記回転霧化頭の回転軸線側に変位させるとともに、前記回転霧化頭の回転軸線を中心とする略円形の塗布パターンを形成する、
ことを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
請求項1記載の塗装方法において、
前記シェーピングエアのうち、周方向の一部が前記第1エアを構成し、周方向の他の部分が前記第2エアを構成し、
前記第1エアが形成される周方向範囲は、前記第2エアが形成される周方向範囲よりも小さい、
ことを特徴とする塗装方法。
【請求項3】
請求項1記載の塗装方法において、
前記第2エアは、環状に形成され、
前記第1エアは、前記第2エアの内方で、前記第2エアに対して周方向の一部の範囲についてのみ形成される、
ことを特徴とする塗装方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装方法において、
前記回転霧化頭の回転軸線を中心とする円周方向に互いに等間隔の複数エリアにて前記第1エアを形成する、
ことを特徴とする塗装方法。
【請求項5】
塗料をワークに対して吐出する回転霧化頭と、
前記回転霧化頭の外周縁部に向けて環状のシェーピングエアを噴出するエア噴出機構とを備えた塗装装置であって、
前記エア噴出機構は、
前記シェーピングエアを噴出させる第1エア噴出口及び第2エア噴出口と、
前記第1エア噴出口及び前記第2エア噴出口の上流側に設けられ、隔壁によって区画された複数のバッファ室とを有し、
前記第1エア噴出口から相対的に高風速の第1エアを噴出させ、
前記第2エア噴出口から前記第1エアよりも相対的に低風速の第2エアを噴出させ、
前記第1エア側に前記第2エアを引き寄せることにより前記第2エアの一部を前記回転霧化頭の回転軸線側に変位させるとともに、前記回転霧化頭の回転軸線を中心とする略円形の塗布パターンを形成する、
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項6】
請求項5記載の塗装装置において、
前記第1エア噴出口は、前記シェーピングエアのうち周方向の一部が前記第1エアを構成するように設けられ、
前記第2エア噴出口は、前記シェーピングエアのうち周方向の他の部分が前記第2エアを構成するように設けられ、
前記第1エア噴出口が設けられる周方向範囲は、前記第2エア噴出口が設けられる周方向範囲よりも小さい、
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項7】
請求項5記載の塗装装置において、
前記複数のバッファ室は、前記隔壁によって周方向に区画され、
前記第1エア噴出口と前記バッファ室とを連通するエア供給孔は、前記隔壁の近傍に設けられ、
前記第2エア噴出口と前記バッファ室とを連通するエア供給孔は、前記第1エア噴出口よりも前記隔壁から周方向に離れた位置に設けられる、
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項8】
請求項5記載の塗装装置において、
前記第2エア噴出口は、前記第2エアを環状に形成するように設けられ、
前記第1エア噴出口は、前記第2エアの内方で、前記第2エアに対して周方向の一部の範囲についてのみ前記第1エアを形成するように設けられる、
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の塗装装置において、
前記第1エア噴出口は、前記回転霧化頭の回転軸線を中心とする周方向に互いに等間隔の複数エリアにて前記第1エアを形成するように設けられる、
ことを特徴とする塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39506(P2013−39506A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176603(P2011−176603)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】