説明

塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を分散させたポリオール組成物

【課題】 保存安定性、難燃性の良好な塩化ビニル系ポリオール組成物を作製する。
【解決手段】 体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を分散状態でポリオール中に10重量%以上50重量%以下含有するポリオール組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を分散させたポリオール組成物に関する。本発明のポリオール組成物は、ポリウレタン原料として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンを難燃化する方法として、ポリ塩化ビニル粒子を含有するポリオールをその原料として用いる方法が提案されている。例えば、特許文献1では、1〜50μmのポリ塩化ビニル粒子を分散させたポリオール分散体が開示されている。また、特許文献2では、ポリ塩化ビニル粒子と安定剤としてカルボニル基含有化合物を用いる方法が開示されている。また、特許文献3ではポリオール中で塩化ビニル単量体を重合してポリ塩化ビニル粒子を分散させたポリオールの調製法が開示されている。
【0003】
しかしながら、従来知られていたポリ塩化ビニル粒子を含有するポリオールを用いる方法では、使用されるポリ塩化ビニル粒子が粗大であり、ポリ塩化ビニル濃度を上げた場合に粘度が上がりやすくなると共に、ポリ塩化ビニル粒子が沈降しやすくなるため、ポリ塩化ビニル濃度を十分に上げることができないばかりでなく、ポリ塩化ビニル粒子の安定性が不十分であり、長期間の保存は困難であるという課題を有していた。また、ポリオール中で塩化ビニル単量体を重合する方法では、ポリ塩化ビニル濃度を上げようとした場合、粘度が高くなりすぎ、ハンドリングが極めて困難となる課題を有していた。
【0004】
【特許文献1】特開平01−065160号公報
【特許文献2】特開平09−059341号公報
【特許文献3】特開平03−097715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、保存安定性及び難燃性の良好なポリオール組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を分散状態でポリオール中に10重量%以上50重量%以下含有するポリオール組成物が、分散安定性が優れた良好なポリオール組成物となることを見出し、本発明に到った。
【0007】
すなわち本発明は、以下に示すとおりのポリオール組成物、その製造方法、及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法である。
【0008】
[1]体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を分散状態でポリオール中に10重量%以上50重量%以下含有するポリオール組成物。
【0009】
[2]塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子中の不飽和ビニル単量体の含有率が、塩化ビニル単量体に対し50重量%以下であることを特徴とする上記[1]に記載のポリオール組成物。
【0010】
[3]塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)が0.05μm以上0.5μm以下であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
【0011】
[4]塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体粒子であることを特徴とする上記[1]乃至[3]に記載のポリオール組成物。
【0012】
[5]粘度が10000mPa・s以下である上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリオール組成物。
【0013】
[6]体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液をポリオールと混合し、得られた混合物を脱水することを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【0014】
[7]体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液をスプレー乾燥し、得られた乾燥物をポリオールと混合して、分散処理することを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【0015】
[8]塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体粒子であることを特徴とする上記[6]又は[7]に記載のポリオール組成物の製造方法。
【0016】
[9]塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)が0.05μm以上0.5μm以下であることを特徴とする上記[6]乃至[8]のいずれかに記載のポリオール組成物。
【0017】
[10]塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子中の不飽和ビニル単量体の含有率が、塩化ビニル単量体に対し50重量%以下であることを特徴とする上記[6]乃至[9]のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【0018】
[11]ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを触媒の存在下に反応させるポリウレタン樹脂の製造方法であって、ポリオール成分として上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリオール組成物を使用することを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【0019】
[12]ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを触媒及び発泡剤の存在下に反応させるポリウレタンフォームの製造方法であって、ポリオール成分として上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のポリオール組成物を使用することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリオール組成物は粘度が10000mPa・s以下と比較的低いため、ハンドリングが良好である特徴を持っている。
【0021】
また、本発明のポリオール組成物は保存安定性に優れており、1ヶ月の保存を行っても、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の沈降が認められない。
【0022】
さらに、本発明のポリオール組成物を原料ポリオールの一部又は全部として、ポリウレタンフォームを調製したときに、フォームの難燃性が向上するばかりでなく、連通性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明のポリオール組成物は、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子をポリオール中に分散させたポリオール組成物であって、分散状態でポリオール中に含有される塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)が0.05μm以上1μm以下であること、且つその含有率が、ポリオール組成物に対して10重量%以上50重量%以下であることをその特徴とする。
【0025】
本発明において、分散状態でポリオール中に含有される塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子が存在することを確認するためには、分散処理を行うことなく粒度分布測定を行うことが必要である。そのためには塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含有したポリオールを単に水で希釈し、粒度分布測定を行う。
【0026】
本発明において、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)は、一般に知られているレーザー回折法及び動的光散乱法を原理とした粒度分布測定装置であればどのような装置を使用しても測定可能であり、特に制限はない。例えば、マイクロトラック(商品名、日機装株式会社製)等の粒度分布測定装置で測定が可能である。
【0027】
本発明において、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)は0.05μm以上あることが必須であり、より好ましくは、体積平均粒子径([MV]値)として0.1μm以上である。体積平均粒子径([MV]値)が0.05μmより小さくなると、ポリオール組成物の粘度が上昇しやすくなるばかりでなく、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子が凝集しやすくなり、安定性が低下する。
【0028】
また、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)は1μm以下であることが必須であり、より好ましくは、体積平均粒子径([MV]値)として0.5μm以下である。体積平均粒子径([MV]値)が1μmより大きくなると、長期保存した場合に粒子の沈降が生じやすくなる。
【0029】
このような塩化ビニル重合体粒子や塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子は、塩化ビニル単量体を単独で、又は塩化ビニル単量体と共重合可能な不飽和ビニル単量体と塩化ビニル単量体とを共重合することにより調製することができる。重合方法としては特に制限はなく、生成される塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)が0.05μm以上1μm以下となる条件であれば、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の製造方法として一般に知られているどのような方法でも用いることができる。例えば、塩化ビニル単量体を単独で又は塩化ビニル単量体と共重合可能な不飽和ビニル単量体と塩化ビニル単量体の混合物を、脱イオン水、界面活性剤、水溶性重合開始剤と共に緩やかな撹拌下で重合を行う乳化重合法、乳化重合法で得られた粒子をシードとして用い乳化重合を行うシード乳化重合法、塩化ビニル単量体を単独で又は塩化ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体と塩化ビニル単量体の混合物を、脱イオン水、界面活性剤、必要に応じて高級アルコール等の乳化補助剤、油溶性重合開始剤をホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな撹拌下で重合を行うミクロ懸濁重合法、ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含有するシードを用い重合を行うシードミクロ懸濁重合法等が挙げられる。本発明においては、これらのうち乳化重合法が特に好ましい。
【0030】
本発明において、塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体を形成する不飽和ビニル単量体としては、塩化ビニルと共重合体を形成するものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、酢酸ビニルモノマーや、スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、ヒドロキシスチレンモノマー、クロルスチレンモノマー等のスチレンモノマー類、アクリロニトリルモノマー、メタアクリロニトリルモノマー等のアクリロニトリルモノマー類、メチル(メタ)アクリル酸エステルモノマー、エチル(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ブチル(メタ)アクリル酸エステルモノマー等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー類、(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリルアミド、エチレンモノマー、プロピレンモノマー、塩化ビニリデンモノマー等を例示できる。本発明においては、これらの不飽和ビニル単量体を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0031】
また、塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体中の不飽和ビニル単量体の含有率としては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であればよく、特に限定するものではないが、塩化ビニル単量体に対し50重量%以下であることが好ましい。不飽和ビニル単量体の含有率を50重量%以下とすることにより、目的とする粒径の共重合体を容易に調製することができ、また、難燃性の付与効果を向上させることができる。
【0032】
本発明のポリオール組成物中の、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の含有率(濃度)は、ポリオール組成物に対して10重量%以上50重量%以下であるが、好ましくは20重量%以上45重量%以下である。塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の含有率が10重量%未満の場合には、これを原料にしてポリウレタン樹脂を製造しても、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の含有率が不足するため、難燃性の付与効果が不十分になるおそれがあり、また、ポリオールの添加効果として期待されるポリウレタンフオームの硬さの向上や連通性の向上が不十分になるおそれがある。また、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の含有率が50重量%を超えた場合には、ポリオール組成物の粘度の上昇が著しくなり、ハンドリングが困難となるおそれがある。
【0033】
本発明のポリオール組成物において、使用されるポリオールとしては、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、更にはリン含有ポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0034】
本発明のポリオール組成物において、使用されるポリエーテルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等のアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が例示される。)を出発原料として、これとアルキレンオキサイド(エチレンオキシドやプロピレンオキシド等が例示される。)との付加反応により製造されたものが挙げられる[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42−53に記載の方法参照]。
【0035】
本発明のポリオール組成物において、使用されるポリエステルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、二塩基酸とグリコールの反応から得られるものや、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる[例えば、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987)日刊工業新聞社 p.117の記載参照。]。
【0036】
本発明のポリオール組成物において、使用されるポリマーポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等。)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが挙げられる。
【0037】
本発明のポリオール組成物において、使用される難燃ポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオールや、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られるハロゲン含有ポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリオール組成物としては、さらには、現在市販されているポリオールである、サンニックス(商品名、三洋化成工業株式会社製)、エクセノール(商品名、旭硝子株式会社製)、アクトコール(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、VORANOL(商品名、DOW社製)等を使用することができる
本発明のポリオール組成物においては、平均水酸基価が20〜1000mgKOH/gの範囲のポリオールが使用できるが、軟質ポリウレタン樹脂や半硬質ポリウレタン樹脂を製造する場合には平均水酸基価が20〜100mgKOH/gの範囲のものが、硬質ポリウレタン樹脂を製造する場合には平均水酸基価が100〜800mgKOH/gの範囲のものが、好適に使用される。
【0039】
次に本発明のポリオール組成物の製造方法について説明する。
【0040】
本発明のポリオール組成物の第一の製造方法は、体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液とポリオールとを混合し、得られた混合物を脱水することをその特徴とする。
【0041】
本発明において使用される、体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、上記した塩化ビニル重合体及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体の製造方法により得られるラテックス溶液が挙げられる。本発明においては、これらのうち、乳化重合法により得られた塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液が好適に使用される。
【0042】
本発明において、体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液とポリオールとを混合することにより、水分、ポリオール、並びに塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含む混合物が得られる。この混合物は、ポリオールの種類によって、液状、ゲル状、クリーム状の状態となる。この混合物がゲル状、クリーム状となった場合は、例えば、ラボであれば、T.K.ホモディスパ(商品名、プライミクス株式会社製)等の高速乳化・分散機を用いて均一な状態となるまで攪拌することが好ましい。均一化が不十分な場合、引き続いて行う脱水工程で、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の凝集が生じるおそれがある。
【0043】
上記混合物の脱水方法としては、特に限定するものではないが、例えば、ラボレベルであれば、減圧下で50℃前後の熱を加えながら脱気すればよい。ゲル状、クリーム状となった混合物であっても、脱水が進むにつれ液状となる。具体的な脱水方法としては、ラボレベルであればロータリーエバポレーターによる脱水を例示することができる。また、高粘度の攪拌に対応した撹拌機と減圧可能な蒸発釜を使用する方法等が例示される。
【0044】
また、混合物の脱気時の温度が高すぎる場合には、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子が凝集するおそれがあるため、脱水時の温度は70℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以下である。一方、脱水時の温度が低すぎると脱水に時間がかかるため、室温以上が好ましく、40℃以上の温度がより好ましい。
【0045】
本発明において、脱水量としては、本発明のポリオール組成物の用途に対して任意に決めることができ、特に限定するものではないが、あえて例示すると、ポリウレタン樹脂を調製するときに発泡剤として水を用いる場合には、0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%の含水量となるように脱水すればよい。
【0046】
本発明のポリオール組成物の第二の製造方法は、体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液をスプレー乾燥し、得られた乾燥物とポリオールとを混合し、得られた混合物を分散処理することをその特徴とする。
【0047】
本発明において使用される、体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液の製造方法は、本発明のポリオール組成物の第一の製造方法において説明したとおりである。
【0048】
本発明において、体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液のスプレー乾燥条件としては、使用するスプレー乾燥装置により変動するため、一概に規定することは困難であるが、あえて規定すると、入風温度が160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。入風温度が160℃よりも高い場合には、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の強い凝集が生じるおそれがある。また、排風温度は60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。排風温度が60℃よりも高くになると、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の強い凝集が生じるおそれがある。
【0049】
このような条件でスプレー乾燥して得られた乾燥物は、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子が凝集して、粒子径が数十μm前後の粉体となっているが、凝集が比較的弱いため、ポリオールと混合し分散処理を行うと、容易に分散して1μm以下まで分散する。分散処理方法としては、特に制限はなく、従来公知の各種分散方法を用いることができる。具体的な分散方法としては、ボールミルによる分散等を例示することができる。
【0050】
次に本発明のポリオール組成物を用いたポリウレタン樹脂の製造方法について説明する。
【0051】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを触媒の存在下に反応させるポリウレタン樹脂の製造方法であって、ポリオール成分の一部として本発明の上記したポリオール組成物を使用することをその特徴とする。
【0052】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、ポリオール成分として使用されるポリオールは本発明の上記したポリオール組成物であるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、難燃ポリオール等のポリオールを使用することができる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0053】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法においては、使用されるポリオール(本発明のポリオール組成物中のポリオールを含む。)に対する塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の含有率を10重量%以上とすることが好ましく、20重量%以上とすることがさらに好ましい。塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の含有率が10重量%未満になると、これを原料にしてポリウレタン樹脂を製造しても、塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の含有率が不足するため、難燃性の付与効果が不十分になるおそれがあり、また、ポリオールの添加効果として期待されるポリウレタンフオームの硬さの向上や連通性の向上が不十分になるおそれがある。
【0054】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、イソシアネート成分として使用されるポリイソシアネートは、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイシシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、及びこれらの混合体等が挙げられる。これらのうち好ましくはTDIとその誘導体、又はMDIとその誘導体であり、これらは単独で使用しても、混合して使用しても差し支えない。
【0055】
TDIとその誘導体としては、例えば、2,4−TDIと2,6−TDIの混合物、TDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体等を挙げることができる。また、MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体、末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体等を挙げることができる。
【0056】
これらイソシアネートのうち、軟質ポリウレタン樹脂や半硬質ポリウレタン樹脂製品には、TDIとその誘導体及び/又はMDIとその誘導体が、硬質ポリウレタン樹脂にはMDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体が好適に使用される。
【0057】
これらポリイソシアネートとポリオールの混合割合としては、特に限定するものではないが、イソシアネートインデックス([イソシアネート基]/[イソシアネート基と反応しうる活性水素基])で表すと、一般に60〜400の範囲が好ましい。
【0058】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、使用される触媒としては、ポリウレタン樹脂の製造に用いられる従来公知の触媒でよく、特に限定するものではないが、例えば、有機金属触媒や第3級アミン触媒、第4級アンモニウム塩触媒が公的なものとして挙げられる。
【0059】
有機金属触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0060】
カルボン酸金属塩としては、従来公知のものでよく、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸、アジピン酸等の脂肪族モノ及びジカルボン酸類、安息香酸、フタル酸等の芳香族モノ及びジカルボン酸類等が挙げられる。また、カルボン酸塩を形成すべき金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属が好適な例として挙げられる。
【0061】
第三級アミン触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の第三級アミン化合物類が挙げられる。
【0062】
第4級アンモニウム塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0063】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、発泡剤を使用することができる。発泡剤としては、特に限定するものではないが、例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)等のフロン系化合物、HFE−254pc等のハイドロフルオロエーテル類、低沸点炭化水素、水、液化炭酸ガス、ジクロロメタン、ギ酸、アセトンから選ばれる1種以上であり混合物を使用することができる。低沸点炭化水素としては、通常、沸点が通常−30〜70℃の炭化水素が使用され、その具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
発泡剤の使用量は、所望の密度やフォーム物性に応じて決定されるが、具体的には、得られるフォーム密度が、通常5〜1000kg/m、好ましくは10〜500kg/mとなるように選択される。
【0065】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、整泡剤として界面活性剤を用いることができる。使用される界面活性剤としては、例えば、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、有機シロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物等が例示される。それらの使用量は、ポリオール100重量部に対して通常0.1〜10重量部である。
【0066】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤を用いることができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、又はエチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等ポリアミン類を挙げることができる。
【0067】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、難燃剤を用いることができる。使用される難燃剤としては、例えば、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等の含リンポリオールの様な反応型難燃剤、トリクレジルホスフェート等の第3リン酸エステル類、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有第3リン酸エステル類、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物類、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。その量は特に限定されるものではなく、要求される難燃性に応じて異なるが、通常ポリオール100重量部に対して4〜20重量部である。
【0068】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、着色剤や、老化防止剤、その他従来公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量は、使用される添加剤の通常の使用範囲でよい。
【0069】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、例えば、上記した原料を混合した混合液を急激に混合・攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して発泡成型することにより行われる。混合・攪拌は一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すれば良い。ポリウレタン発泡機としては高圧、低圧及びスプレー式の機器が使用できる。
【0070】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法により得られるポリウレタン樹脂製品としては、発泡剤を使用しないエラストマーや発泡剤を使用するポリウレタンフォーム等が挙げられ、本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、これらのようなポリウレタンフォーム製品の製造に好適に使用される。
【0071】
ポリウレタンフォーム製品としては、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等が挙げられるが、本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、自動車内装材として用いられる軟質ポリウレタンフォームのカーシート、半硬質ポリウレタンフォームのインスツルメントパネルやハンドル及び硬質ポリウレタンフォームにて製造される断熱材の製造に特に好適に使用される。
【0072】
なお、本発明において、軟質ポリウレタンフォームとは、一般的にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームをいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.161〜233や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.150〜221の記載参照。]。軟質ウレタンフォームの物性としては、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度(ILD25%)が200〜8000kPa、伸び率が80〜500%の範囲である。
【0073】
また、半硬質ポリウレタンフォームとは、フォーム密度及び圧縮強度は軟質ポリウレタンフォームよりも高いものの、軟質ポリウレタンフォームと同様にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームをいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.223〜233や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.211〜221の記載参照。]。また、使用するポリオール、イソシアネート原料も軟質ポリウレタンフォームと同様であるため、一般に軟質ポリウレタンフォームに分類される。半硬質ウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が40〜800kg/m、圧縮強度(ILD25%)が10〜200kPa、伸び率が40〜200%の範囲である。本発明において、軟質ポリウレタンフォームは、使用する原料及びフォーム物性から半硬質ポリウレタンフォームを含む場合がある。
【0074】
さらに、硬質ポリウレタンフォームとは、高度に架橋されたクローズドセル構造を有し、可逆変形不可能なフォームをいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.234〜313や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.224〜283の記載参照。]。硬質ウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度が50〜1000kPaの範囲である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明する。
【0076】
なお、以下の実施例において、体積平均粒子径([MV]値)は、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製)を用い、HRAモード及びUPAモードで測定した。
【0077】
粘度は、JIS K−1557−5に従い、B型粘度計で測定した。
【0078】
連通性の評価は、本発明のポリオール組成物と各種原料を混合し、イソシアネートを加え6000rpmで5秒間混合した後、予め60℃に温度調節しておいた縦250mm×横250mm×高さ80mmのモールドに注入し、蓋をして5分間硬化させテスト用ポリウレタンフォームを作成し、作成したポリウレタンフォームを200φ円盤を用いて、圧縮率65%まで繰り返し圧縮し、1回目に必要とした力と2回目に必要とした力の差をもって連通性の評価とした。連通性が良好な場合、圧縮1回目に必要とする力と2回目に必要とする力の差が小さくなる。
【0079】
酸素指数は、ASTM D2863−77に従い測定した。
【0080】
実施例1.
2.5L重合缶内に脱イオン水800g、塩化ビニル単量体600g、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液60g及び過硫酸カリウム0.16gを仕込み、温度を56℃に上げ重合を開始した。重合開始150分後より5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を1時間あたり17mlの速度で添加し、480分後にその添加を停止した。重合缶内の圧力が0.5MPaまで低下したところで、未反応の塩化ビニル単量体を回収し塩化ビニル重合体粒子含有ラテックス溶液を得た。得られた塩化ビニル重合体粒子の粒径を測定した結果、体積平均粒子径([MV]値)は0.15μmであり、塩化ビニル重合体粒子の濃度は32.6重量%であった。
【0081】
得られたラテックス溶液613.5gと市販ポリオール[(商品名)サンニックスFA−703、三洋化成工業(株)製、グリセリン系ポリエーテルポリオール、OH価:32.9KOH/g]300gを高速乳化・分散機[(商品名)T.K.ホモディスパ、プライミクス株式会社製]を用いて混合した。混合物はクリーム状であった。得られた混合物を2Lのナス型フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いて脱水した。脱水が進むにつれ、混合物は流動性を示すようになり、脱水終了時には粘性のある流体となり、塩化ビニル重合体粒子濃度(含有率)40重量%のポリオール組成物を得た。
【0082】
脱水終了後のポリオール組成物をT.K.ホモディスパで均一に攪拌した後、塩化ビニル重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)を測定した結果、0.26μmであった。また、粘度を測定した結果、4400mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、粒子の沈降は見られず、均一な状態であった。
【0083】
次に、得られた塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を用いて軟質ポリウレタンフォームを調製した。
【0084】
軟質ポリウレタンフォームの調製は、塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物83.34g、市販ポリオール(サンニックスFA−703)83.34g、市販ポリオール[(商品名)Voranol CP1421、Dow Chemical Company製、ポリマーポリオール、OH価:34.6KOH/g]3.42g、整泡剤[(商品名)TEGOSTAB B4113LF、Goldschmidt社製]1.8g、ジエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製)1.17g、水1.8g、触媒[(商品名)TEDA−L33、東ソー株式会社製、トリエチレンジアミン]1.44gを混合後、市販イソシアネート[(商品名)コロネート1106、日本ポリウレタン工業株式会社製、ポリメリックMDI系イソシアネート、NCO%=31.7%)をイソシアネートインデックスが98となるように加え、6500rpmで5秒間攪拌した後、モールドに注入し実施した。得られたポリウレタンフォームの連通性を評価した結果、73.5Nであった。
【0085】
実施例2.
実施例1と同様の方法で調製した塩化ビニル重合体粒子を含むラテックス溶液を、ラボスプレードライヤー[(形式名)L−8型スプレードライヤー、大川原化工機株式会社製]を用い、入風温度110℃、排風温度50℃でスプレー乾燥した。
【0086】
得られた塩化ビニル重合体の乾燥粉末200gと市販ポリオール(サンニックスFA−703)300gを混合した後、7日間ボールミルを用いて分散処理を行い、塩化ビニル重合体粒子濃度40重量%のポリオール組成物を得た。
【0087】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は0.26μmであった。また、その粘度は4600mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、粒子の沈降は見られず、均一な状態であった。
【0088】
次に、得られた塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で軟質ポリウレタンフォームを調製し、その連通性を評価した結果、83.3Nであった。
【0089】
実施例3.
塩化ビニル重合体粒子含有ラテックス溶液の量を162.4gとした以外は実施例1と同様の操作を行い、塩化ビニル重合体粒子濃度15重量%のポリオール組成物を得た。
【0090】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は0.25μmであった。また、その粘度は2500mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、粒子の沈降は見られず、均一な状態であった。
【0091】
次に、得られた塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を用い、ポリオール組成物量を166.68g、市販ポリオール量を0gとした以外は、実施例1と同様の方法で軟質ポリウレタンフォームを調製し、そのポリウレタンフォームの連通性を評価したところ、250Nであった。
【0092】
実施例4.
塩化ビニル単量体600gの代わりに、塩化ビニル単量体588gと酢酸ビニル単量体12gを用い、実施例1と同様の操作を行い、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体粒子含有ラテックス溶液を調製した。塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)は0.30μmであった。
【0093】
このラテックス溶液を用い、実施例1と同様の操作を行って、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体粒子濃度40重量%のポリオール組成物を得た。
【0094】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は0.36μmであった。また、その粘度は4200mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、粒子の沈降は見られず、均一な状態であった。
【0095】
次に、得られた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体含有ポリオール組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で軟質ポリウレタンフォームを調製し、その連通性を評価した結果、88.2Nであった。
【0096】
比較例1.
体積平均粒子径([MV]値)1.5μmの塩化ビニル重合体ラテックス溶液を原料にする以外は、実施例1と同様の操作を行い、塩化ビニル重合体粒子濃度40重量%のポリオール組成物を得た。
【0097】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は1.7μmであった。また、その粘度は4500mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、上部に透明層が、底部に粒子の沈降が確認された。
【0098】
次に、得られた塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で軟質ポリウレタンフォームを調製し、その連通性を評価した結果、451Nであった。
【0099】
比較例2.
市販の塩化ビニル重合体粉末[(商品名)リューロンペースト730、東ソー株式会社製]200gと市販ポリオール(サンニックスFA−703)300gを混合した後、T.K.ホモディスパを用いて15分間分散処理を行い、塩化ビニル重合体粒子濃度40重量%のポリオール組成物を得た。
【0100】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は3.8μmであった。また、その粘度は4900mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、上部に透明層が、底部に粒子の沈降が確認された。
【0101】
次に、得られた塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で軟質ポリウレタンフォームを調製し、その連通性を評価した結果、451Nであった。
【0102】
比較例3.
ラテックス溶液の量を1124.8gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、塩化ビニル重合体粒子濃度55重量%のポリオール組成物を得た。
【0103】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は0.43μmであった。また、その粘度は32000mPa・sであり、ハンドリングが困難であった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、粒子の沈降は見られず、均一な状態であった。
【0104】
次に、得られた塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を用い、当該ポリオール組成物量を60.61g、市販ポリオール量を106.07gとした以外は、実施例1と同様に軟質ポリウレタンフォームの調製を行い、その連通性を評価したところ、78.4Nであった。
【0105】
比較例4.
ラテックス溶液の量を48.5gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、塩化ビニル重合体粒子濃度5重量%のポリオール組成物を得た。
【0106】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は0.25μmであった。また、その粘度は1200mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、粒子の沈降は見られず、均一な状態であった。
【0107】
次に、得られた塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を用い、当該ポリオール組成物量を166.68g、市販ポリオール量を0gとした以外は、実施例1と同様に軟質ポリウレタンフォームの調製を行い、その連通性を評価したところ、657Nであった。
【0108】
比較例5.
本発明のポリオール組成物を使用せず、市販ポリオール量を166.68gとした以外は、実施例1と同様の軟質ポリウレタンフォームの調製を行い、その連通性を評価したところ、1200Nであった。
【0109】
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例5の結果を表1にあわせて示す。
【0110】
【表1】

表1から明らかなように、本発明のポリオール組成物は保存安定性が優れており、これを用いてポリウレタンフォームを調製した場合、フォームの連通性が向上している。
【0111】
参考例1.
ラテックス溶液の乾燥温度を入風温度180℃、排風温度80℃とした以外は、実施例2と同様の操作を行い、塩化ビニル重合体粒子濃度40重量%のポリオール組成物を得た。
【0112】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は9.7μmであった。また、その粘度は4800mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、底部に粒子の沈降が確認された。
【0113】
次に、得られた塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で軟質ポリウレタンフォームを調製し、連通性を評価した結果、529Nであった。
【0114】
本参考例から明らかなとおり、スプレー乾燥時の入風温度や排風温度が高すぎると、得られるポリオール組成物の保存安定性が低下したり、これを用いてポリウレタンフォームを調製しても連通性の向上効果が低下する場合がある。
【0115】
実施例5.
実施例1と同様の方法で調製した塩化ビニル重合体粒子を含むラテックス溶液を入風温度110℃、排風温度50℃でスプレー乾燥した。
【0116】
得られた塩化ビニル重合体の乾燥粉末150gと市販ポリオール[(商品名)サンニックスHS−211、三洋化成株式会社製、OH価380]350gを混合した後、7日間ボールミルを用いて分散処理を行い、塩化ビニル重合体粒子濃度30重量%のポリオール組成物を得た。
【0117】
得られたポリオール組成物の体積平均粒子径([MV]値)は0.28μmであった。また、その粘度は7500mPa・sであった。そして、1ヶ月の保存試験を行った結果、粒子の沈降は見られず、均一な状態であった。
【0118】
次に、得られたポリオール組成物を用いて、硬質ポリウレタンフォームの調製を行った。すなわち、塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物50g、整泡剤[(商品名)L5420、日本ユニカー株式会社製]1g、水2.5g、触媒[(商品名)TOYOCAT−MR、東ソー株式会社製、テトラメチルヘキサンジアミン]1.2gを混合後、イソシアネート[(商品名)ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製、クルードMDI、NCO%=30.8%]を、イソシアネートインデックスが110となるように加え、6000rpmで6秒間攪拌した後、2Lポリエチレンカップに注入し、反応を実施した。得られた硬質ポリウレタンフォームの酸素指数を評価した結果、20.1%であった。
【0119】
比較例6.
塩化ビニル重合体粒子含有ポリオール組成物を使用せず、市販ポリオール(サンニックスHS−211)50gを用いた以外は、実施例5と同様に硬質ポリウレタンフォームを調製し、その酸素指数を評価した結果、18.8%であった。
【0120】
実施例5及び比較例6の結果を表2にあわせて示す。
【0121】
【表2】

表2から明らかなように、本発明のポリオール組成物は保存安定性が優れており、これを用いて硬質ポリウレタンフォームを作製した場合、難燃性が向上している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を分散状態でポリオール中に10重量%以上50重量%以下含有するポリオール組成物。
【請求項2】
塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子中の不飽和ビニル単量体の含有率が、塩化ビニル単量体に対し50重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)が0.05μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項5】
粘度が10000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項6】
体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液をポリオールと混合し、得られた混合物を脱水することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項7】
体積平均粒子径([MV]値)0.05μm以上1μm以下の塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子を含むラテックス溶液をスプレー乾燥し、得られた乾燥物をポリオールと混合して、得られた混合物を分散処理することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項8】
塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子中の不飽和ビニル単量体の含有率が、塩化ビニル単量体に対し50重量%以下であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項9】
塩化ビニル重合体粒子及び/又は塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子の体積平均粒子径([MV]値)が0.05μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項10】
塩化ビニル−不飽和ビニル共重合体粒子が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体粒子であることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載のポリオール組成物の製造方法。
【請求項11】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを触媒の存在下に反応させるポリウレタン樹脂の製造方法であって、ポリオール成分として請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリオール組成物を使用することを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項12】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを触媒及び発泡剤の存在下に反応させるポリウレタンフォームの製造方法であって、ポリオール成分として請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリオール組成物を使用することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2010−31169(P2010−31169A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196182(P2008−196182)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】