説明

塩素捕捉剤およびそれを含有する化学剤

【課題】接触或いは混合により対象物に含まれる遊離塩素と呼ばれている酸化活性の強い塩素を捕捉し、対象物から取り除く効果を有する塩素捕捉剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)


[但し、式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基、Rはメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基を表し、Rはメチル基またはエチル基を表し、nは1または2の整数を表す。]
で表される両性界面活性剤からなることを特徴とする塩素捕捉剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触或いは混合により対象物に含まれる遊離塩素と呼ばれている酸化活性の強い塩素を捕捉し、洗浄時に遊離塩素によるダメージを軽減化する機能を有する塩素捕捉剤に関するものである。
【0002】
特にプール後等の高濃度遊離塩素含有水との接触後の毛髪洗浄及び遊離塩素を含有する洗浄水中における洗髪において遊離塩素による毛髪ダメージを防止する効果のある抗塩素ダメージ用シャンプー及び化粧料、塩素漂白された物品用後処理剤に関する。
【背景技術】
【0003】
塩素は、殺菌、漂白等の効果があり、塩素系漂白剤や水道水、プール、循環型入浴施設の消毒に広く用いられている。
【0004】
上水道の塩素処理は水道水中の病原微生物による病気の伝染を防ぐ消毒が主な目的である。近代水道は元々伝染病予防の面から普及したことを考えると、消毒は欠くべからざる処理プロセスであるといえる。紫外線による殺菌などの新しい消毒方法も試みられているが、未だ上水道においては塩素処理を主たる消毒法としてブラジル、オランダ、スイスを除く各国で使用されている。
【0005】
日本においては、水道法により残留塩素の濃度の下限は「末端の蛇口」における濃度が平時で0.1ppm以上、水系病原菌汚染の存在が疑われる場合は0.2ppm以上と規定されているが、その上限規定は無い。その為、菌の繁殖しやすい時期には更に多量の残留塩素濃度の上水道中で洗浄することになる。
【0006】
また、プールなどの遊泳施設では、厚生省環境衛生局長通知により遊離残留塩素濃度 は「0.4 mg/L(0.4ppm) であること。1.0 mg/L(1.0ppm) 以下であることが望ましい。」 とされており、塩素が多すぎると刺激が強いため、上限が定められているが、実際のプールにおいて全ての場所で遊離残留塩素濃度を一定に保つことは困難で場合によっては高濃度の遊離残留塩素と接触することもある。
【0007】
遊泳後のシャワーによる遊離塩素或いは遊離塩素と窒素化合物の縮合したクロラミン等の結合塩素除去が不十分であれば、残留する遊離塩素及び結合塩素から放出される遊離塩素により身体が損傷を受ける可能性がある。
【0008】
プールでの遊泳後、髪が切れやすくなる。髪が変色するなどの症状が出ることがあるがこれは溶存塩素によるものである。毛髪は皮膚に比して塩素の影響が見えやすい部位である。
【0009】
更に洗髪作業は、温水中で頭皮を指でマッサージするように行うことが一般的であるが、この行為により40〜50度の温水中で毛髪同士、毛髪と指の間に摩擦が起こり毛髪に物理的なストレスが加わることが通常である。
【0010】
水道水の様に比較的低濃度の遊離塩素含有水であっても長時間毛髪に接触する場合、或いは、遊離塩素と毛髪が接触した状態で毛髪に熱や物理的なストレスを与えるとキューティクルの剥離等の損傷を毛髪に与えることを本発明者らは明らかにした。
【0011】
毛髪のキューティクルにダメージを受けることによりコルテックス層やメデュラ層が外部と接触しやすくなり、例えば同層へのカルシウム等の多価金属の進入によりこれらの構成タンパク質等と結びつき、毛髪を脆く切れ毛が発生しやすくなる。或いは溶存塩素等の酸化性物質が内部たんぱく質を変性させるなどの問題が発生し毛髪の質感が無くなる、変色するなどの問題が発生すると推定される。
【0012】
毛髪洗浄中から遊離塩素を除去するには、ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)等の還元剤を使用する等の手法があるが、洗髪の度にこれらの準備を行うことは困難であり、手軽な手法で遊離塩素を無害化或いは除去する方法が望まれている。
【0013】
遊離塩素の捕捉効果のある物質として、特許文献1にタウリンによるプールでの遊泳中に塩素殺菌剤によって起こる眼組織の障害に有効な眼科用液剤に関する記載がある。
【0014】
特許文献2には水道水にタウリンを配合することにより簡便でしかも経済的な方法で、飲用、洗顔用、動植物の飼育・給水用に適した水質に改善された水道水並びに水道水改質方法が開示されおり、タウリンの供給方法として「予めタウリンを石鹸やシャンプーに用いて水道水で洗顔しても同様な効果が発揮される。」との記載もあり、タウリンを含有する化粧料により、皮膚の健康を促進し美容に大きな効果があることが示されている。これらの技術はタウリンと遊離塩素が反応してクロラミン様物質を生成させ遊離塩素を結合塩素に変えることにより遊離塩素による障害を取り除くものと推定される。
【0015】
本発明者らは、これらの先行技術より、タウリンを塩素除去成分として洗浄剤に配合することにより溶存塩素を捕捉させれば、洗髪中の塩素濃度を低減化でき毛髪損傷を防げるのではないかと考え、添加塩素量、タウリンの添加量を変動させ実験を行った。
【0016】
添加塩素量に対してより多量のタウリンの添加により一定の効果は見られたが、温水下や物理的ストレスを与えた系即ち洗髪時の条件ではタウリンの塩素捕捉能力はいまだ十分な効果ではないことを見出した。さらにタウリンそのものが高価であり、経済的ではない。
【0017】
毛髪洗浄における溶存塩素の影響を除去するのに有効なレベルの塩素除去機能を有する塩素除去用剤の開発が望まれていた。
【0018】
一方、一般式(1)
【0019】
【化1】

【0020】
[但し、式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基、Rはメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基を表し、Rはメチル基またはエチル基を表し、nは1または2の整数を表す。]
で示される両性界面活性剤は特許文献3、4及び5の特許請求の範囲で示される上位概念の構造式に含まれる化合物であるが、一般式(1)そのものの記載は無い。また、前記一般式(1)の両性界面活性剤は特許文献6の特許請求の範囲で示される上位概念の構造式に含まれる化合物であり、この構造式の両性界面活性剤に関して、他の界面活性剤との相溶性に優れること、他の界面活性剤を組み合わせることにより粘度構築が可能であること、特に硫黄含有アニオンとの特定の範囲の配合は希釈しても粘度が低下しない特殊なレオロジー性質を有すること。通常の洗浄力を有しているにも係わらず染色毛の色落ちが他の界面活性剤に比較して少ないこと、などが特許文献6には記載されている。しかしながら前記一般式(1)の両性界面活性剤と遊離塩素の関係に関しては特許文献6には、一切記載されていない。
【特許文献1】特公平06−041409号公報
【特許文献2】特開2002−320981公報
【特許文献3】特開昭52−087117号公報
【特許文献4】特開昭52−085987号公報
【特許文献5】特開昭52−126410号公報
【特許文献6】特開2006−022085公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明が解決しようとする課題は、接触或いは混合により対象物に含まれる遊離塩素と呼ばれている酸化活性の強い塩素を捕捉し、対象物から取り除く効果を有する塩素捕捉剤に関するものであり、また溶存塩素含有水による洗髪によっても毛髪にダメージを与えないレベル以上の効果を有する塩素除去機能を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、まず遊離塩素補足効果のある物質を検索し、それらの溶存塩素捕捉能力と毛髪へのダメージ評価を行うことにより、特定の界面活性剤が遊離塩素を捕捉し、捕捉された塩素はタウリン等の従来より知られる塩素捕捉剤が遊離塩素を再放出する化学的環境下であっても遊離塩素を放出しないことを見出した。
【0023】
即ち本件発明は
一般式(1)
【0024】
【化2】

【0025】
[但し、式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基、Rはメチル基、エチル基、またはヒドロキシエチル基を表し、R3はメチル基またはエチル基を表し、nは1または2の整数を表す。]で表される両性界面活性剤からなる塩素捕捉剤に関する。
【0026】
より好適には一般式(2)
【0027】
【化3】

【0028】
[但し、上記式(2)において、Rの定義は前記に同じ]
で示される塩素捕捉剤に関する。
【0029】
更に前記塩素捕捉剤を有する洗浄剤組成物、化粧料、塩素漂白された物品用後処理剤に関するものであり、特に上記塩素捕捉剤とヒドロキシカルボン酸を含有する抗塩素ダメージ用シャンプーに関するものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の塩素捕捉剤を塩素が溶存する溶液、塩素を含有する物質に接触或いは混合させることにより、特に酸化力の強い遊離塩素を捕捉し、その影響を除去する効果を有し、遊離塩素により変質しやすい薬剤等を安定化させる機能を持つ。
【0031】
本発明の塩素補捉剤をヒドロキシカルボン酸と共にシャンプー組成物に用いた場合、遊離塩素含有水による洗髪によっても毛髪にダメージを与えないレベル以上の塩素捕捉効果により、毛髪に蓄積される塩素の除去を行いつつ、洗浄水中に含まれる塩素を無害化し毛髪ダメージを効果的に低減化させ、遊離塩素含有水下でもツヤのあるコシの強い毛髪の洗い上がりが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
水中の塩素は、たとえばDPD(ジエチル‐p‐フェニレンジアミン)法等により遊離塩素量、結合塩素量および2者の和である総塩素量を計測することが可能である。
【0033】
ここで遊離塩素とは溶存ガス(Cl)、次亜塩素酸 (HOCl)、および次亜塩素酸イオン (OCl) として水中に存在する残留塩素の濃度として定義され、もっとも酸化力が強く毛髪損傷に大きく影響を与える塩素量である。
【0034】
結合塩素とは天然の水すなわち汚染した水に存在するアンモニアあるいは有機アミンと化学的に結合して水中に存在する残留塩素と定義され、前述のタウリンによる溶存塩素の捕捉とは、遊離塩素とタウリンが反応してクロラミン様物質を形成しこの結合塩素として捕捉されていると考えられる。すなわち本発明の目的のひとつは、対象物に存在する塩素のうち遊離塩素を結合塩素に変換する機能を有する化合物を検出することであった。
【0035】
結合塩素は遊離塩素に比較して殺菌力などは低いが周辺の化学的環境が変化することにより遊離塩素を放出することが知られている。総塩素量は遊離塩素量と結合塩素量の合計量である。
【0036】
通常のDPD法による塩素の測定は、DPDを混ぜてまず遊離塩素量を測定し、更にヨウ化カリウムを入れる等して結合塩素を分解してDPDによりトータルの総塩素量を求めて、定量された総塩素量と溶存塩素より結合塩素量を求める方法が一般的である。
【0037】
本発明者らは、種々の物質の溶存塩素捕捉機能を調査したところ、前記一般式(1)からなる両性界面活性剤が遊離塩素を捕捉し遊離塩素を減少させる効果を有し、なおかつ総塩素量の測定値が実験に使用した塩素量を回収できないことを見出した。
【0038】
これは、前記一般式(1)からなる両性界面活性剤と遊離塩素から形成される結合塩素が、タウリンなどの通常の塩素捕捉剤に比較して強く塩素を取り込んでおり、周辺の化学的環境の変化により遊離塩素を再放出しにくい性質を有することを示しており、総合塩素測定時、結合塩素を遊離塩素として再放出させるために加えるヨウ化カリウム溶液を添加する如くの化学的環境の変化においても、遊離塩素として系に放出しない為に発生するものと考えられる。
【0039】
このことは前記一般式(1)からなる両性界面活性剤が強力な遊離塩素除去剤であることを示すものである。
【0040】
本発明の前記一般式(1)で示される両性界面活性剤に関して詳細に説明する。
【0041】
一般式(1)で示される両性界面活性剤は、下記スキームに示すようにエポキシアルカンにアミンを反応させた後ハロカルボン酸によりベタイン化により得る方法並びにエポキシアルカンにアミノ酸誘導体を反応させた後アルキル化剤でベタイン化する方法によって得ることができる。
【0042】
【化4】

【0043】
[但しR〜Rは前定義に同じ]
【0044】
一般式(1)で示される両性界面活性剤の好適例としては、N−(2−ヒドロキシドデシル)−N,N−ジメチルグリシン、N−(2−ヒドロキシドデシル)−N−メチル−N−カルボキシメチルグリシン、N−(2−ヒドロキシドデシル)−N,N−ジメチル−β−アラニン、N−(2−ヒドロキシドデシル)−N−メチル−N−カルボキシメチル−β−アラニン、N−(2−ヒドロキシドデシル)−N−ヒドロキシエチル−N−メチルグリシン、N−(2−ヒドロキシドデシル)−N−ヒドロキシエチル−N−メチル−β−アラニン等を挙げることが出来る。
【0045】
またこれらの両性界面活性剤は、ベタイン化反応の副生物として無機塩や未反応ハロカルボン酸類の加水分解物であるヒドロキシカルボン酸類あるいはアルキル化剤の加水分解物を含有することがあるが、これらはトッピング処理、電気透析処理、逆浸透膜処理により除去することがより好ましい。
【0046】
前記一般式(1)により定義される両性界面活性剤のうち、塩素捕捉剤としての機能以外の界面活性剤としての能力即ち、
(i)他の界面活性剤との相溶性に優れること、
(ii)他の界面活性剤を組み合わせることにより粘度構築が可能であること、
(iii)特に硫黄含有アニオンとの特定の範囲の配合は希釈しても粘度が低下しない特殊なレオロジー性質を有すること。
(iv)通常の洗浄力有しているにも係わらず染色毛の色落ちが他の界面活性剤に比較して少ないこと、
の能力の高さより下記一般式(2)で定義される両性界面活性剤を用いることがより効果的である。
【0047】
【化5】

【0048】
[但し、上記式(2)において、Rの定義は前記に同じ]
一般式(2)により示される両性界面活性剤は、エポキシアルカンにN−ヒドロキシエチルグリシンを反応させた後メチル化剤でベタイン化する方法、エポキシアルカンにサルコシンを反応させた後ブロムヒドリンによってベタイン化する方法、エポキシアルカンにN−メチルエタノールアミンを反応させた後モノクロル酢酸でベタイン化する方法などによって製造することが可能である。
【0049】
一般式(2)で示される両性界面活性剤の好適例としては、N−(2−ヒドロキシドデシル)−N−ヒドロキシエチル−N−メチルグリシン、N−(2−ヒドロキシデシル)−N−ヒドロキシエチル−N−メチルグリシン、N−(2−ヒドロキシウンデシル)−N−ヒドロキシエチル−N−メチルグリシンが挙げられる。
【0050】
本発明の塩素捕捉剤を配合して、洗浄剤組成物、抗塩素ダメージ用シャンプー、化粧料及び塩素漂白された物品用後処理剤(以下、化学剤と総称することがある)とすることができる。
【0051】
本発明塩素捕捉剤を含有する含有する化学剤として洗浄剤組成物に関して述べる。
【0052】
洗浄対象の遊離塩素含有量によっても異なるが、洗浄剤組成物に対して本発明塩素捕捉剤は1.0重量%以上配合されることが好ましい。
【0053】
洗浄剤の形態としては、液状、クリーム状、ムース状、固形状のいずれであっても良い。
【0054】
本発明塩素捕捉剤は、それ自体が両性界面活性剤としての性質を有するので、本発明塩素捕捉剤のみで洗浄剤組成物を構築しても良いが、洗浄性能、起泡性能、使用感を変更する目的でアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、半極性界面活性剤、一般式(1)を除く両性界面活性剤、双性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を含有してもよい。
【0055】
また、発明の効果を失わない量の一般化粧品に使用される物質を含有すことが出来る。
【0056】
本発明塩素捕捉剤を含有する化学剤として抗塩素ダメージ用シャンプーに用いる場合に関して詳細に述べる。
【0057】
先に述べたように、水道水の様な低濃度の塩素含有水は毛髪と長期間接触するとキューティクルの剥離などが観察される。この条件ではタウリン等の従来から知られている塩素捕捉剤を配合した水道水ではキューティクルの剥離はほぼ防げる。タウリンの塩素捕捉能力は水道水より高濃度の塩素含有水で合っても短期間であればキューティクルの剥離を防げるほど有力ではあるが、水道水を40〜50℃に保温した場合や洗髪操作の物理ストレスを再現するため振動状態に試験液を置くとその効果は失われキューティクルの剥離が発生するようになる。
【0058】
タウリン等の従来より知られていた溶存塩素捕捉剤を配合したのみのシャンプー組成物では、温水下での洗髪操作等の物理ストレス下の毛髪損傷は防げなかったが、一般式(1)からなる界面活性剤を溶存塩素除去剤として配合した場合、熱及びストレス下の毛髪損傷が防げる。これは一般式(1)の界面活性剤を含む溶存塩素除去剤がタウリン等に比較して強い塩素除去機能を持っているため本発明の効果が発現したと推定している。
【0059】
一般式(1)の界面活性剤を含む溶存塩素除去剤の抗塩素ダメージ用シャンプーへの配合量は、洗浄対象中の溶存塩素含有量によっても異なるが1.0重量%以上の配合が好ましく、5.0%重量%以上がより好ましい。配合量の上限は特に定めないが、30重量%を超えて配合すると、液状での安定組成物を得ることが困難になり好ましくない。
【0060】
本発明者らは、先に出願した特開2006−022085において、トリエタノールアミンにも溶存塩素捕捉機能があることを報告した。トリエタノールアミン自体は一般式(1)からなる塩素捕捉剤ほど強力な塩素除去機能は持たないが、洗浄剤組成物には比較的多量に配合することも可能である。
【0061】
例えば毛髪洗浄剤組成物は、一般に洗浄効果、起泡効果による毛髪保護等を期待してアニオン性界面活性剤を配合する場合が多い、アニオン性界面活性剤は水に溶解するとき負イオンとして振舞う活性剤本体とそのカウンターイオンである正イオン性物質に分離して作用する。この正イオン性物質としてトリエタノールアミンを使用する界面活性剤は広く流通している。トリエタノールアミンをカウンターイオンとして含有するアニオン界面活性剤の好適例は、アルキル硫酸トリエタノールアミン塩、アルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸トリエノールアミン塩、アシルタウリントリエタノールアミン塩、アシルアミノ酸トリエタノールアミン塩、エーテルカルボン酸トリエタノールアミン塩、POEアミドエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン塩である。
【0062】
前記一般式(1)からなる塩素捕捉剤に起泡性増強等の目的でアニオンを選択する場合カウンターがトリエタノールアミンである界面活性剤を選ぶことがより好ましい。
【0063】
本発明塩素捕捉剤を含有する化学剤として抗塩素ダメージ用シャンプーに用いる第二成分であるヒドロキシカルボン酸に関して詳細に述べる
本発明の抗塩素ダメージ用シャンプーにおいても、遊離塩素存在する洗浄水中で洗髪のストレス下、キューティクル層の開きなどは完全に防止することができない。この時、溶存多価金属等が毛髪内に進入し、毛髪内のタンパク間の架橋源となり,熱やメカニカルなストレスをきっかけに組織の収縮が引き起こされて空洞が発生するのではないかと考えられている。
【0064】
本発明の抗塩素ダメージ用シャンプーには、多価金属捕捉剤を併用することがより好ましい。多価金属捕捉剤の好適例としてはヒドロキシカルボン酸類が最も好ましく、好適例を示せば、リンゴ酸、グリコール酸、クエン酸等が挙げられる。
【0065】
多価金属捕捉剤の配合量は0.1〜5%程度が好ましい。同時にシャンプー組成物のpHを4〜5.5に調整することがより好ましい。
【0066】
本発明塩素捕捉剤を含有する抗塩素ダメージ用シャンプーには塩素捕捉を含有する洗浄剤組成物と同様の物質を発明の効果を妨げない限りを任意に含有できる。
【0067】
また、近年漂白剤が配合された衣類洗浄剤或いは衣類の洗浄に漂白剤を用いることが多いが、漂白処理後に本発明塩素捕捉剤を加えすすぐことにより、漂白剤の残留を防ぐことができる。以下このものを塩素漂白された物品用後処理剤と呼ぶ。
【0068】
本発明塩素捕捉機能を有する化学剤(洗浄剤、化粧料)に配合される成分に関して述べる。
【0069】
本発明化学剤には、動物、植物、魚貝類、微生物由来の抽出物、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、被膜剤、紫外線吸収剤、消炎剤、金属封鎖剤、低級アルコール、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、合成樹脂エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、及び海洋深層水を必要に応じて1種乃至は2種以上用いてもよい。
【0070】
本発明の化学剤には、動物、植物、魚貝類、微生物由来の抽出物たとえば、茶エキス、アロエエキス、イチョウエキス、センブリエキス、ヨモギエキス、ニンニクエキス、オウゴンエキス、ローズマリーエキス、ヘチマエキス、胎盤抽出物、乳酸菌培養抽出物、海草エキス等の抽出物を併用することができる。
【0071】
本発明の化学剤に、使用し得る粉末成分としては、無機粉末、例えばタルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーキュムライト、炭酸マグネシウム、珪酸ジルコニウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸カルシウム、珪酸亜鉛、珪酸マグネシウム、珪酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、燐酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、活性炭、薬用炭、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、窒化ホウ素等があげられ、有機粉末としては例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末が挙げられる。
【0072】
本発明の化学剤に用いられる液体油脂としては、アボガド油、ツバキ油、グレープシード油、タートル油、マカディミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ヒマワリ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリンが挙げられる。
【0073】
本発明の化学剤に用いられる固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核脂、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられ、またロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水添ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0074】
本発明の化学剤に用いられる炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸、パーム核脂肪酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等が挙げられる。
【0075】
本発明の化学剤に用いられる合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸−2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸−2−ヘキシルデシル、パルミチン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸−2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0076】
本発明の化学剤に用いられるシリコーン類としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、高重合度メチルポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサンテトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0077】
本発明の化学剤に用いられるアニオン活性剤としては、
脂肪酸セッケン、たとえばセッケン用素地、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヤシカリセッケン、
高級アルキル硫酸エステル塩、たとえばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、
アルキルエーテル硫酸エステル塩、たとえば、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム、
N−アシルアミノ酸塩、たとえば、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル−β−アラニンナトリウム、ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム、N−パルミトイルアスパラギン酸ジエタノールアミン、ヤシ脂肪酸シルクアミノ酸カリウム、ラウロイルアラニンナトリウム塩、
高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、たとえばN−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、
リン酸エステル塩、たとえばPOEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸、POEラウリルアミドエーテルリン酸ナトリウム、
スルホコハク酸塩、たとえばジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム、
アルキルベンゼンスルホン酸塩、たとえばリニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸、
高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、たとえば硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム;
ロート油などの硫酸化油、
α−オレフィンスルホン酸塩、
高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、
二級アルコール硫酸エステル塩、
高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、
ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、及びカゼインナトリウム等が挙げられる。
【0078】
本発明の化学剤に用いられるカチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、たとえば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム;ジアルキルジメチルアンモニウム塩、たとえは塩化ジステアリルジメチルアンモニウム塩;アルキルピリジウム塩、たとえば塩化セチルピリジウム;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ベンザルコニウム等があげられる。
【0079】
本発明の化学剤に用いられる双性界面活性剤としては、
アミドスルホベタイン型両性界面活性剤、たとえばラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン;
アルキルスルホベタイン型両性界面活性剤等があげられる。
【0080】
本発明の化学剤に用いられる両性界面活性剤としては、
アミドアミン系両性界面活性剤、たとえば2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−ラウロイル−N′−カルボキシメチル−N′−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−ヤシ脂肪酸アシル−N′−カルボキシエチル−N′−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム;
アミド酢酸ベタイン型両性界面活性剤、たとえばヤシ脂肪酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン;
アルキルアミノ酸型両性界面活性剤、例えばN-ラウリル-β-アラニン、POEN-ラウリル-β-アラニン、N-ラウリル-イミノジ酢酸
アルキル酢酸ベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる
本発明の化学剤に用いられる半極性界面活性剤としては、
アミンオキサイド型半極性界面活性剤、たとえばラウリルトリメチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシドが挙げられる。
【0081】
本発明の化学剤に用いられる非イオン界面活性剤としては
グリセリン脂肪酸エステル類、たとえばモノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル;
ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、たとえばモノステアリン酸、POEグリセリルモノオレイン酸POEグリセリル;
ポリグリセリン脂肪酸エステル類、たとえばモノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル;
ソルビタン脂肪酸エステル類、たとえばモノラウリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン;
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、たとえばモノヤシ脂肪酸POEソルビタン、トリステアリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン;
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、たとえばモノラウリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビット;
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、たとえば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、たとえばPOEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル;
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、たとえばPOE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテル;
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、例えばPOEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POE分鎖オクチルフェニルエーテル;
ポリオキシエチレンアルキルアミン類、たとえばPOEステアリルアミン、POEオレイルアミン;
脂肪酸アルカノールアミド類、たとえばヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド;
ポリオキシエチレンアルカノールアミド類、たとえばPOEラウリン酸モノエタノールアミド、POEヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、POE牛脂脂肪酸モノエタノールアミド、POPラウリン酸モノイソプロパノールアミド POEPOP分枝脂肪酸モノエタノールアミド;
一般式(3)及び(4)で示される化合物、
【0082】
【化6】

【0083】
[但し、上式(3)及び(4)において、Rは炭素数6〜20のアルキル基を表し、R、R及びR、Rはそれぞれ互いに独立に、水素原子又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、pは0〜3の整数を表す。]
アセチレングリコール、
POEアセチレングリコール、
POEラノリン、
POEラノリンアルコール、
POEヒマシ油、
POE硬化ヒマシ油、
POEフィトステロール、
POEコレスタノール、及び、
POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。
【0084】
本発明の化学剤に用いられる保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸及びその塩、などが挙げられ、また、水溶性高分子としては、グァーガム、クイーンシード、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及び塩、アルギン塩、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ベントナイト、キチン・キトサン誘導体、ヒアルロン酸及び塩、コラーゲン及びその誘導体などが挙げられる。
【0085】
本発明の化学剤に用いられる増粘剤としては、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアマド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアマド、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドなどが挙げられる。また、本発明の化粧料に用いられる被膜剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カチオン化セルロース、カチオン化セルロース、シリコーンなどが挙げられる。
【0086】
本発明の化学剤に用いられる紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸及び塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチルなどのパラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸エチル、パラメトキシ桂皮酸イソプロピル、パラメトキシ桂皮酸オクチル、メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニルなどのサリチル酸誘導体、ウロカニン酸及び誘導体、4−tert−ブチル−4′−メトキシジベンゾイルメタン、2−(ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、アントラニル酸メチルなどが挙げられる。
【0087】
本発明の化学剤に用いられる消炎剤としては、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アラントイン、酢酸ヒドロコーチゾン、アズレンなどが挙げられる。また本発明の化粧料に用いられる金属封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸及びナトリウム塩、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0088】
本発明の化学剤に用いられる低級アルコールとしては、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。糖類としては、ブドウ糖、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルデンプン、シクロデキストリンなどが挙げられる。
【0089】
本発明の化学剤に用いられるアミノ酸類としては、アスパラギン酸及び塩、アラニン、アルギニン、リジン及び塩、グリシン、シスチン、スレオニン、セリン、メチオニン、タウリンなどが挙げられる。有機アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
【0090】
本発明の化学剤に用いられる合成樹脂エマルジョンとしては、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられ、pH調整剤としては、クエン酸、塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、アンモニア、などが挙げられ、皮膚栄養剤としては、ビタミンA,B1,B2,B6,E及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビオチンなどが挙げられる。
【0091】
本発明の化学剤に用いられる酸化防止剤としては、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類などが挙げられる。酸化防止助剤としては、アスコルビン酸、フィチン酸、ケファリン、マレイン酸などが挙げられるが配合成分はこれらに限定されるものではない。
【0092】
(実施例)
以下の方法で製造した一般式(1)乃至は一般式(2)の物質に関して性能評価を行った。
【0093】
製造例1
N−(2−ヒドロキシドデシル)−N,N−ジメチルグリシンの合成
3000mL4ツ口フラスコにサルコシンナトリウム水溶液630.1g(純分37.6%、236.9g、2.13モル)、2−プロパノール1200gを仕込み70℃に加熱した。ここに、1,2−エポキシドデカン(商標:α−オレフィンオキサイドC12、旭電化社製)374.4g(2.03モル)を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後82℃に昇温後4時間攪拌した。その後、減圧下で脱ソルを行ない、室温に冷却し水を添加して濃度調整した後、塩酸でpH7に調整した(有効成分濃度20%)。ガスクロマトグラフィー分析より、この界面活性剤溶液は界面活性剤19.2%、ジオール体0.7%、エーテル体0.2%を含有していた。
【0094】
この反応生成物を減圧下で脱溶媒後氷冷し、ジメチル硫酸260g(2.06モル)を4時間かけて滴下した。100℃に昇温して2時間還流して未反応のジメチル硫酸を分解した後、室温に冷却し水を添加して濃度調整した後、塩酸でpH7に調整した(有効成分濃度25%)。液体クロマトグラフィー分析から、このベタイン型化合物の収率は95%であった。
【0095】
製造例1の生成物のH−NMR 重水中測定
0.9ppm 3H
1.3〜1.5ppm 18H
3.4ppm 6H
3.5〜4.3ppm 5H
【0096】
製造例2
N−(2−ヒドロキシアルキル)−N−ヒドロキシエチル−N−メチルグリシン
2リットル4ツ口フラスコにN−Me−モノエタノールアミン504.0g(エポキシの1.05当量)を入れて80℃に昇温して、C12,14エポキシ(ダイセル製、AOEX24 DG−009)1256.8g(6.39mol)を3時間かけて滴下して、80℃で終夜攪拌した。ガスクロでエポキシ残がN.D.であることを確認して、80℃のまま真空ポンプで過剰のアミンを留去してN−2−ヒドロキシラウリル−N−2−ヒドロキシエチル−N−メチルアミン1735gを得た。
【0097】
5リットル4ツ口フラスコにN−2−ヒドロキシラウリル−N−2−ヒドロキシエチル−N−メチルアミン810.1g(2.98mol)と水1961gを加えて70℃まで昇温した。モノクロル酢酸ナトリウムの80%水溶液(493.0g、アミンの1.4当量)と48% NaOH 400g(モノクロル酢酸の1.2当量)をpH=7〜8の範囲で2時間かけて滴下した。97℃に昇温してpH=7〜8の範囲で48% NaOH 40g(モノクロル酢酸の0.1当量)を適宜添加しながら17時間熟成した。室温に冷却後、水を加えて総重量3775gとしてN−2−ヒドロキシラウリル−N−2−ヒドロキシエチル−N−メチルグリシン水溶液を取り上げた。乾残=35.4%、NaCl=6.3%、有効成分(乾残−NaCl)=29.1%、グリコール酸=2.8%、HPLC(UV)からベタイン化収率=92%。
【0098】
製造例2の生成物のH−NMR 重水中測定
0.9ppm 3H
1.3〜1.5ppm 20H
3.4ppm 3H
3.5〜4.3ppm 9H
【0099】
1.塩素捕捉機能に関して
製造例1及び2の物質と構造が似ている界面活性剤としてアミド酢酸ベタイン及び従来技術の塩素捕捉剤であるタウリンに関して塩素捕捉機能の実験を行った。
【0100】
試験方法
蒸留水1Lに遊離塩素濃度が5mg/L(5ppm)になるように次亜塩素酸ナトリウム溶液(試薬1級 関東化学 Assay(as active chlorine min.5.0%)にて濃度調整し,この溶液に界面活性剤を純分で1.00gを添加させ,(但し比較例1のタウリンは0.10gを添加)経過時間毎30分,60分,90分毎に全残留塩素濃度及び遊離塩素濃度を測定した。
【0101】
DPD(ジエチル‐p‐フェニレンジアミン法)法による測定は以下を使用した。
柴田科学株式会社 残留塩素測定用と遊離残留塩素測定用簡易水質キットにより呈色させ,標準カラーチャートの色を比較した。
【0102】
【表1】

【0103】
注1〜5の名称は川研ファインケミカル株式会社製の界面活性剤の商品名
注1 ソフタゾリンLAO ラウリン酸アミドプロピルアミンオキサイド
注2 ソフタゾリンLPB ラウリン酸アミドプロビル酢酸ベタイン
注3 ソフタゾリンLSB ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン
注4 ソイポンSLE ラウリン酸アシルサルコシン ナトリウム塩
注5 ソイポンSLTA ラウリン酸アシルサルコシン トリエタノールアミン塩
【0104】
一般式(1)及び(2)の物質である実施例1〜2の化合物は、時間の経過とともに遊離塩素量のみならず総塩素量が減少している。これは先に述べたよう全残留塩素が減ったわけではなく、一般式(1)及び(2)の構造を有する化合物が捕捉した塩素が分離されないために見掛け上全残留塩素量が減った様に計測されているものと推定される。
【0105】
このことは一般式(1)及び(2)の構造を有する化合物が一度捕捉した塩素を放出しにくい性質があることを意味し、塩素捕捉剤として優れていることを示す。ラウリン酸アシルサルコシンナトリウム塩は遊離塩素に対して不活性である。他の界面活性剤及びタウリンは遊離塩素は減らすが総塩素濃度に変化が無い。これは、遊離塩素を捕獲しているがその捕獲強度が弱いことを示していると思われる。
【0106】
毛髪の構造に対する影響
蒸留水及び蒸留水に遊離塩素濃度が5mg/L(5ppm)に亜塩素酸ナトリウム溶液(試薬1級 関東化学 Assay(as active chlorine min.5.0%)で濃度調整し,この溶液に各種添加成分を100mg/L (100ppm)に毛髪10gを浸漬後、毛髪を1Lイオン交換蒸留水にて3回濯ぎ,自然乾燥させた毛髪をSEMにて観察した。
【0107】
尚表中、物理付加があるものは測定サンプルを50rpmの振動台に載せて測定した
。SEM所見に関しては以下の水準で行った
【0108】
× キューティクル層が剥落している。
△ キューティクル層が所々剥落していることが認められる。
○ 損傷を認めない
【0109】
【表2】

【0110】
表2より明らかなように、比較例7,8,10を比較すると塩素捕捉能力のあるタウリンを配合することにより遊離塩素によるキューティクル剥離は防げるが、外部から物理的ストレスを与えると(比較例10)その効果は急速に降下する。それに対して実施例3から明らかなように、本発明塩素捕捉剤は物理ストレスが加わってもキューティクル層を保護することがわかる。蒸留水のみの比較例7と比較しても毛髪の見かけ上の損傷は見られない。
【0111】
なお、図1にキューティクルをSEMで撮影した写真を示す。
【0112】
以下の処方で、各種化学剤を配合した。シャンプー組成物に関しては実施例3に準じる方法でキューティクルの状態を確認したところ、キューティクルの損傷は見られなかった。
各処方の配合比率は全て固形純分重量%で示してある
【0113】
実施例4 透明タイプ抗塩素ダメージ用シャンプー
製造例2の物質 10.00
ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩 7.00
ビスコセーフLPE (注6) 2.00
トリイソステアリン酸PEG−160ソルビタン 0.80
POE(50)硬化ひまし油モノイソステアレート 1.00
グルコシルトレハロース 2.00
カチオン化セルロース 0.20
オクトピロックス 0.75
サリチル酸 0.20
タウリン 0.20
キトアクア(注7) 0.50
クエン酸 0.50
リンゴ酸 0.30
香料 0.50
精製水 to 100%
【0114】
注6 ラウリルグリコールヒドロキシプロピルエーテル 川研ファインケミカル(株)製
注7 サクシニル化カルボキシメチルキトサン液 川研ファインケミカル(株)製
【0115】
実施例5 パール状抗塩素ダメージ用シャンプー
製造例1の物質 5.00
製造例2の物質 5.00
POE(2)ラウリルエーテルサルフェートNa塩 6.50
ラウリン酸ナトリウム塩 1.50
アミゼット1PC (注8) 2.50
グリセリン 2.00
エチレングリコールジステアレート 1.00
タウリン 0.10
グリコール酸 0.20
センブリエキス 0.01
ニンジンエキス 0.01
香料 0.30
精製水 to 100%
【0116】
注8 POE(1)ヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド 川研ファインケミカル(株)製
【0117】
実施例6 透明タイプ抗塩素ダメージ用シャンプー
製造例2の物質 12.00
ソイポンSCTA (注9) 4.00
マイドール10 (注10) 8.00
ビスコセーフLMPE (注11) 1.70
トリイソステアリン酸PEG−160ソルビタン 0.50
グルコシルトレハロース 2.00
カチオン化セルロース 0.20
カチオン化グァー 0.20
タウリン 0.20
サリチル酸 0.20
オクトピロックス 0.75
クエン酸 0.50
香料 0.50
精製水 to 100%
【0118】
注9 ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン 川研ファインケミカル(株)製
注10 アルキルグルコシドを主成分とする界面活性剤 花王株式会社製
注11 (ラウリル/ミリスチル)グリコールヒドロキシプロピルエーテル 川研ファインケミカル(株)製
【0119】
実施例7 抗塩素ダメージ用固形洗剤
ポリクォタニウム-10 0.35
ココイルグルタミン酸 0.50
POE(2)ラウリルエーテルサルフェートNa塩 7.00
製造例2の物質 6.00
ラウリルジメチル酢酸ベタイン 3.00
アミゼット1PC (注8) 3.00
ポリクォタニウム-7 0.75
トルナーレ (注12) 1.00
アミテルLGOD-5(H) (注13) 0.50
エチレングリコールジステアレート 2.00
メチルパラベン 0.20
プロピルパラベン 0.10
EDTA-2Na 0.20
香料 0.30
精製水 to 100%
【0120】
注12 グリコシルトレハロースを含有する化粧品基剤 (株)林原生物化学研究所製
注13 ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス−5 味の素株式会社製
【0121】
実施例8 抗塩素ダメージ用ボディソープ
ラウリン酸 3.00
ミリスチン酸 6.80
パルミチン酸 1.30
水酸化カリウム 2.95
製造例2の物質 5.60
カワシルクS (注14) 4.00
ビスコセーフLMPE (注11) 2.00
グリセリン 5.00
ピロテルCPI-40 (注15) 0.50
エチレングリコールジステアレート 2.00
EDTA-2Na 0.20
メチルパラベン 0.20
プロピルパラベン 0.10
香料 0.20
精製水 to 100%
【0122】
注14 ラウロイル加水分解シルクアミノ酸K塩 川研ファインケミカル(株)製
注15 PCAイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油 味の素株式会社製
【0123】
実施例9 抗塩素ダメージ用洗顔ジェル
ヤシ脂肪酸カリウム塩 10.00
製造例2の物質 15.00
ラウリルジメチル酢酸ベタイン 2.00
ビスコセーフLPE (注6) 0.15
グリセリン 1.00
ラフィノース 1.00
トリメチルグリシン 0.50
EDTA−4Na 0.20
メチルパラベン 0.20
プロピルパラベン 0.10
香料 0.10
水酸化カリウム 0.25
精製水 to 100%
【0124】
実施例10 抗塩素ダメージ用固形洗剤
アミソフトGS−11 (注16) 78.90
セタノール 5.00
ベヘニルアルコール 2.00
イソステアリルアルコール 1.00
製造例2の物質 3.00
酸化チタン 0.10
精製水 10.00
【0125】
注16 混合脂肪酸アシルグルタミン酸Na塩粉末タイプ 味の素株式会社製
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の塩素捕捉剤は、優れた塩素捕捉作用を有しており、洗浄剤組成物、抗塩素ダメージ用シャンプー、化粧料及び塩素漂白された物品用後処理剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】キューティクルをSEMで撮影した写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[但し、式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基、Rはメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基を表し、Rはメチル基またはエチル基を表し、nは1または2の整数を表す。]
で表される両性界面活性剤からなることを特徴とする塩素捕捉剤。
【請求項2】
前記一般式(1)が、一般式(2)
【化2】

[但し、上記式(2)において、Rの定義は前記に同じ]
で示される両性界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の塩素捕捉剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塩素捕捉剤を含有することを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄剤組成物にヒドロキシカルボン酸を含んでなることを特徴とする抗塩素ダメージ用シャンプー。
【請求項5】
請求項1または2に記載の塩素捕捉剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項6】
請求項1または2に記載の塩素捕捉剤を含むことを特徴とする塩素漂白された物品用後処理剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−302736(P2007−302736A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130301(P2006−130301)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】