説明

増幅装置

【課題】 入力される高周波信号のレベルが小さい時はNF特性を十分に向上すると共に、高周波信号のレベルが大きい時は歪特性を十分に向上する。
【解決手段】 TR1のコレクタに接続されているコイルL2(負荷手段)とVccとの間に接続された抵抗R9と、該抵抗R9に並列接続された制御電圧Vgcに応じてオン/オフするTR3と抵抗R8との直列回路とからなるバイアスコントロール部11を備えている。入力信号のレベルが小さい時は、制御電圧VgcによりTR2,TR3がオフすることにより、TR1のバイアスが浅くなってNF特性が向上され、入力信号のレベルが大きい時は、制御電圧VgcによりTR2,TR3がオンすることにより、TR1のバイアスが深くなって歪特性が向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NF特性および歪特性が良好となるように、信号の入力レベルに応じてバイアスを制御するようにした増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アンテナの小型化が進むにつれアンテナの感度が落ちるため、アンテナの受信信号を増幅器を用いて増幅している。アンテナの受信信号は低レベルとされていることから、この増幅器にはNF(Noise Figure)が低い特性が求められている。しかし、NF特性が良い増幅器とするには一般的にバイアスを浅くすればよいが、このバイアス条件では、歪特性が悪化し強電界下で歪が大きくなってしまうようになる。これに対して、歪特性がよい増幅器とするには、一般的にバイアスを深くすればよいが、弱電界下でNF特性は劣化するようになる。このため、歪特性も考慮してNF特性が若干劣化するバイアス条件で増幅器を使用するのが一般的とされている。
【0003】
これを解決するために、従来、バイアス条件を信号の入力レベルに応じて制御することにより、NF特性および歪特性が良好となるようにした増幅装置が提案されている。この従来の増幅装置の回路構成の概要を図8に示す。
図8に示す従来の増幅装置100は、入力端子INに入力された高周波信号を増幅する増幅器101と、増幅器101から出力された信号のレベルが所定のレベルになるよう制御するゲインコントロール部(G.C)102と、G.C102から出力される信号を検波する検波回路103とを備えている。G.C102には、検波回路103から出力される入力された高周波信号のレベルに応じた制御電圧Vgcが印加されており、G.C102は制御電圧Vgcによりゲインが制御されている。増幅器101は、AMP110と、AMP110のバイアスを制御するコントロール回路から構成されている。AMP110のバイアスを制御するコントロール回路は、AMP110とアースとの間に設けられており、検波回路103から出力される入力信号レベルに応じた制御電圧Vgcでオン/オフが制御されるスイッチSW111aと、スイッチSW111aに直列に接続されている抵抗111cと、スイッチSW111aと抵抗111cとの直列回路に並列に接続されている抵抗111bとから構成されている。ここで、入力された高周波信号のレベルが小さくて制御電圧Vgcが高い時はスイッチSW111aはオフし、AMP110は抵抗111bだけを介してアースされる。これにより、AMP110とアースとの間の抵抗値が大きくなって、AMP110のバイアスが浅くなり、NF特性が向上するようになる。また、入力された高周波信号のレベルが大きくなって制御電圧Vgcが低い時はスイッチSW111aはオンし、AMP110は抵抗111bと抵抗111cとの並列回路を介してアースされる。これにより、AMP110とアースとの間の抵抗値が小さくなって、AMP110のバイアスが深くなり、歪特性が向上するようになる。
【0004】
図8に示す従来の増幅装置100における増幅器101の詳細な回路図を図9に示す。
図9に示す従来の増幅器101の入力端子INに入力された高周波信号は、第1フィルタ部(Filter)120により不要信号成分が除去され、コンデンサC100を介して増幅用のトランジスタTR100のベースに入力される。トランジスタTR100のベース−コレクタ間には、コンデンサC101とコイルL100との直列回路に抵抗R101を並列に接続し、さらに抵抗R100を直列に接続した回路が接続されている。トランジスタTR100のエミッタとアース間には、コンデンサC105と抵抗R107との直列回路に、抵抗R106が並列に接続された回路が接続されている。さらに、トランジスタTR100のコレクタは、コイルL101と抵抗R102との直列回路を介して電源Vccに接続されている。なお、コイルL101と抵抗R102との接続点とアース間にはバイパスコンデンサC102が接続され、抵抗R102と電源Vccとの接続点とアース間にはバイパスコンデンサC103が接続されている。そして、トランジスタTR100により増幅された信号は、コレクタからコンデンサC104と第2フィルタ部121を介して出力端子OUTから出力される。第2フィルタ部(Filter+Attenuator)121は、不要信号成分を除去するフィルタと出力信号レベルを所定レベルに調整するアッテネータとから構成されている。
【0005】
検波回路103からの制御電圧Vgcは、抵抗R103を介してスイッチング用のトランジスタTR101のベース印加される。トランジスタTR101のベースは抵抗R105を介してアースされ、そのコレクタは抵抗R105を介してアースされている。そして、トランジスタTR101のコレクタは、トランジスタTR100のエミッタと抵抗R106との接続点に接続されている。なお、抵抗R105の抵抗値は抵抗R106の抵抗値の数分の1の小さな値とされている。
このような増幅装置100において、入力される高周波信号のレベルが小さい時は、検波回路103からの制御電圧Vgcが高い電圧となる。増幅器101に印加される制御電圧Vgcが高い時は、トランジスタTR101のベースにエミッタより高い正電圧が印加されることから、トランジスタTR101はオフして、トランジスタTR100のエミッタは抵抗値の高い抵抗R106のみを介して直流的にアースされることになる。これにより、トランジスタTR100のコレクタ電流が減少してバイアスが浅くなり、トランジスタTR100のNF特性が向上するようになる。また、入力される高周波信号のレベルが大きい時は、検波回路103からの制御電圧Vgcは低い電圧となる。増幅器101に印加される制御電圧Vgcが低い時は、トランジスタTR101のベースにエミッタより低い正電圧が印加されることから、トランジスタTR101はオンして、トランジスタTR100のエミッタは抵抗R105と抵抗R106の低い抵抗値となる並列回路を介して直流的にアースされることになる。これにより、トランジスタTR100のコレクタ電流が増加してバイアスが深くなり、トランジスタTR100の歪特性が向上するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−34944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、従来の増幅装置100においては、入力された高周波信号を増幅して出力するトランジスタと、後段に信号レベルを一定レベルに制御するゲインコントロール回路と、ゲインコントロール回路に制御電圧を印加する検波回路とを備え、検波回路から出力されるゲインコントロール電圧に応じて、トランジスタのバイアス条件を変更してコレクタ電流を変化させるようにしている。
従来の増幅装置100は、入力される高周波信号のレベルが小さい時はNF特性が向上され、高周波信号のレベルが大きい時は歪特性が向上されるようになるが、増幅装置の使用の態様によっては向上できる電気的特性の割合が不十分になるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、入力される高周波信号のレベルが小さい時はNF特性を十分に向上することができ、高周波信号のレベルが大きい時は歪特性を十分に向上することができる増幅装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の増幅装置は、ベースとコレクタ間にベースバイアス抵抗が接続され、エミッタにエミッタバイアス抵抗が接続され、前記ベースに入力された高周波信号を増幅して前記コレクタから出力するトランジスタと、該トランジスタの前記コレクタに接続されている負荷手段と電源との間に接続された第1抵抗と、該第1抵抗に並列接続された前記制御電圧に応じてオン/オフするスイッチ手段と第2抵抗との直列回路とからなるバイアスコントロール部と、前記入力された高周波信号のレベルに応じた制御電圧を生成して、前記バイアスコントロール部の前記スイッチ手段に印加して、前記トランジスタのバイアスをコントロールする制御回路とを備え、前記入力された高周波信号のレベルが小さい時は、前記制御電圧により前記スイッチ手段がオフすることにより、前記トランジスタのバイアスが浅くなってNF特性が向上され、前記入力された高周波信号のレベルが大きい時は、前記制御電圧により前記スイッチ手段がオンすることにより、前記トランジスタのバイアスが深くなって歪特性が向上されることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トランジスタのコレクタに接続されている負荷手段と電源との間に接続された第1抵抗と、該第1抵抗に並列接続された制御電圧に応じてオン/オフするスイッチ手段と第2抵抗との直列回路とからなるバイアスコントロール部により、前記入力された高周波信号のレベルに応じてトランジスタのバイアスを浅くしたり深くするようにしたので、入力される高周波信号のレベルが小さい時はNF特性を十分に向上することができると共に、高周波信号のレベルが大きい時は歪特性を十分に向上することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例とされる増幅装置の概略の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明にかかる増幅装置のバイアスコントロール部の概略の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図3】本発明にかかる増幅装置のアンテナ増幅器の詳細な回路構成を示す回路図である。
【図4】本発明にかかる増幅装置の検波回路およびAMPの詳細な回路構成を示す回路図である。
【図5】本発明にかかる増幅装置におけるアンテナ増幅器のバイアス条件を示す図表である。
【図6】本発明にかかる増幅装置におけるアンテナ増幅器のバイアス条件に応じたNF特性を示す図表である。
【図7】本発明にかかる増幅装置におけるアンテナ増幅器のバイアス条件に応じた歪特性を示す図表である。
【図8】従来の増幅装置の概略の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図9】従来の増幅装置における増幅器の詳細な回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例の増幅装置の概略の回路構成を示す回路ブロック図を図1に示す。
図1に示す本発明にかかる増幅装置1は、アンテナ2の受信信号を増幅する増幅装置1とされている。アンテナ2は、例えばFM放送を受信するFMアンテナとされ、アンテナ2からの高周波信号とされる受信信号は増幅装置1の入力端子INに入力されて、アンテナ増幅器3のAMP10に入力される。AMP10はトランジスタからなり、AMP10により増幅された受信信号は増幅装置1の出力端子OUTから出力される。また、AMP10の出力信号は検波回路4により検波されて受信信号のレベルに応じた直流の電圧信号となり、AMP5で増幅されて制御電圧Vgcが生成される。この制御電圧Vgcはバイアスコントロール部11に印加される。バイアスコントロール部11は、印加された制御電圧Vgcが高い時にはAMP10のバイアスを第1バイアス条件とし、印加された制御電圧Vgcが低い時にはAMP10のバイアスを第2バイアス条件とするようバイアスコントロールする。
【0013】
バイアスコントロール部11の概略の回路構成を図2に示すが、バイアスコントロール部11は、電源VccとAMP10との間に接続されている第1抵抗11bと、この第1抵抗11bに並列に接続されているスイッチ手段SW11aと第2抵抗11cとの直列回路から構成されている。第2抵抗11cの抵抗値は、第1抵抗11bと同じ程度の抵抗値ないし数十分の1の抵抗値とすることができる。例えば、第1抵抗11bを約500Ωとした時に第2抵抗11cを約20Ωとすると、アンテナ2からの受信信号が小さい場合と大きい場合とで、以下に述べるトランジスタTR1のバイアス条件を大きく変えることができる。ここで、アンテナ2からの受信信号のレベルが低くて制御電圧Vgcが低い時には、スイッチ手段SW11aはオフし、アンテナ2からの受信信号のレベルが高く制御電圧Vgcが高い時にはオンする。スイッチ手段SW11aがオフすると、AMP10は抵抗値の高い第1抵抗11bのみを介して電源Vccに接続されるため、AMP10のコレクタ電流が減少して、そのバイアスが浅くなる。この場合は、AMP10のNF特性が向上するようになる。また、スイッチ手段SW11aがオンすると、AMP10は第1抵抗11bと第2抵抗との並列回路を介して電源Vccに接続されるため、その抵抗値は約19ΩとなってAMP10のコレクタ電流が増大して、そのバイアスが深くなる。この場合は、AMP10の歪特性が向上するようになる。
【0014】
次に、本発明にかかる増幅装置1におけるアンテナ増幅器3の詳細な回路構成を示す回路図を図3に示す。
図3に示すようにアンテナ増幅器3はAMP10とバイアスコントロール部11とからなる。AMP10において、入力端子INに入力されたアンテナ2からの受信信号は、第1フィルタ部(Filter)12により不要信号成分が除去され、カップリング用のコンデンサC1を介して増幅用のNPN型とされたトランジスタTR1のベースに入力される。トランジスタTR1のベース−コレクタ間には、コンデンサC2とコイルL1との直列共振回路にダンプ用の抵抗R2を並列に接続し、さらに抵抗R1を直列に接続した回路が接続されている。抵抗R1と抵抗R2はベースバイアス用の抵抗となる。トランジスタTR1のエミッタとアース間には、エミッタバイアス抵抗とされる抵抗R3と、この抵抗R3に並列にバイパス用のコンデンサC4と受信信号のゲインを調整する抵抗R4との直列回路が接続されている。さらに、トランジスタTR1のコレクタと電源Vccとの間には、負荷用のコイルL2にバイアスコントロール部11が直列に接続されている。なお、コイルL2とバイアスコントロール部11との接続点とアース間にはバイパスコンデンサC3が接続されている。そして、トランジスタTR1により増幅された信号は、コレクタからカップリング用のコンデンサC5と第2フィルタ部13を介して出力端子OUTから出力される。第2フィルタ部(Filter+Attenuator)13は、不要信号成分を除去するフィルタと出力信号レベルを所定レベルに調整するアッテネータとから構成されている。
【0015】
バイアスコントロール部11は、電源VccとコイルL2との間に接続された第1抵抗11bに相当する抵抗R9と、この抵抗R9に並列に接続されたスイッチ手段SW11aに相当するスイッチング用のトランジスタTR3と第2抵抗11cに相当する抵抗R8との直列回路を備えている。トランジスタTR3はPNP型とされ、そのベースは抵抗R7を介してNPN型のスイッチング用のトランジスタTR2のコレクタに接続されている。トランジスタTR2のエミッタはアースに接続されており、そのコレクタは抵抗R6を介して電源Vccに接続されている。そして、トランジスタTR2のベースに抵抗R5を介してAMP5からの制御電圧Vgcが印加されている。なお、抵抗R8の抵抗値は、抵抗R9の抵抗値の数十分の1とされており、例えば、抵抗R8は約500Ωとされ、抵抗R9は約20Ωとされている。
【0016】
アンテナ増幅器3の動作を説明すると、増幅装置1に入力されるアンテナ2からの受信信号のレベルが小さい時は、検波回路4で検波されてAMP5で増幅された制御電圧Vgcはほぼ0ボルトの低い電圧となる。アンテナ増幅器3に印加される制御電圧Vgcが低い時は、トランジスタTR2のベースにはエミッタとほぼ同じ0ボルトが印加されることから、トランジスタTR2はオフして、トランジスタTR3のベースはほぼ電源Vccの電圧となることからトランジスタTR3もオフする。すると、トランジスタTR1のコレクタは抵抗値の高い抵抗R9のみを介して電源Vccに接続されることになる。これにより、トランジスタTR1のコレクタ電流が減少してバイアスが浅くなり、トランジスタTR1のNF特性が向上するようになる。また、増幅装置1に入力されるアンテナ2からの受信信号のレベルが大きい時は、検波回路4で検波されてAMP5で増幅された制御電圧Vgcは高い電圧となる。アンテナ増幅器3に印加される制御電圧Vgcが高い時は、トランジスタTR2のベースにエミッタより高い正電圧が印加されることから、トランジスタTR2はオンして、そのコレクタ電圧はほぼアース電位に等しくなる。これにより、トランジスタTR3のベース電圧がほぼアース電位となることから、トランジスタTR3もオンするようになる。すると、トランジスタTR1のコレクタは抵抗R9と抵抗R8との低い抵抗値となる並列回路を介して電源Vccに接続されることになる。これにより、トランジスタTR1のコレクタ電流が増大してバイアスが深くなり、トランジスタTR1の歪特性が向上するようになる。
【0017】
次に、本発明にかかる増幅装置1の検波回路4とAMP5の詳細な回路構成を示す回路図を図4に示す。
図4において、検波回路4の入力端子INにはAMP10からの出力信号が入力され、抵抗R10とコンデンサC10の直列回路を介して検波用の第1ダイオードD1のカソードと第2ダイオードD2のアノードに入力される。抵抗R10とコンデンサC10との接続点とアース間に抵抗R11が接続されており、第1ダイオードD1のアノードはアースされている。また、第2ダイオードD2のカソードは抵抗R13を介してOPアンプOP1の非反転入力端子(+)に接続されている。第2ダイオードD2のカソードと抵抗R13との接続点とアース間にはコンデンサC11と抵抗R12が並列に接続されている。OP1の出力端子と反転入力端子(−)との間には負帰還用の抵抗R14とコンデンサC12の並列回路が接続されている。また、OP1の非反転入力端子とアース間に抵抗R15が接続されている。コンデンサC10,C11とダイオードD1,D2により倍電圧検波回路が構成されており、この倍電圧検波回路により検波されたAMP10からの出力信号がOP1で増幅されて制御電圧Vgcが生成されている。
【0018】
次に、本発明にかかる増幅装置1のアンテナ2からの受信信号が小さい場合と大きい場合におけるアンテナ増幅器3のバイアス条件を、従来例の増幅装置100の入力される高周波信号が小さい場合と大きい場合における増幅器101のバイアス条件と対比した図表を図5に示す。なお、図5に示す図表においては受信信号が小さい場合および高周波信号が小さい場合を弱電界下として示し、受信信号が大きい場合および高周波信号が大きい場合を強電界下として示している。また、本発明にかかる増幅装置1においてはトランジスタTR2,3がオフとなる制御電圧Vgcに固定された場合が弱電界下の数値となり、トランジスタTR2,3がオンとなる制御電圧Vgcに固定された場合が強電界下の数値となっている。そして、従来の増幅装置100においてはトランジスタTR101がオフとなる制御電圧Vgcに固定された場合が弱電界下の数値となり、トランジスタTR101がオンとなる制御電圧Vgcに固定された場合が強電界下の数値となっている。
また、この図5に示すバイアス条件は、図3に示す本発明にかかるアンテナ増幅器3において、電源Vccが約8V、コンデンサC1を約1000pF、抵抗R1を約360Ω、抵抗R2を約10kΩ、コンデンサC2を約1000pF、コイルL1を約10nH、抵抗R3を約18Ω、抵抗R4を約7.5Ω、コンデンサC4を約1000pF、コイルL2を約6.8μH、コンデンサC3を約0.1μF、抵抗R5を約1MΩ、抵抗R6を約470kΩ、抵抗R7を約3kΩ、抵抗R8を約20Ω、抵抗R9を約500Ω、コンデンサC6を約0.1μFとした時のバイアス条件とされている。さらに、図5に示すバイアス条件は、図9に示す従来例の増幅器101において、電源Vccが約8V、コンデンサC100を約1000pF、抵抗R100を約360Ω、抵抗R101を約10kΩ、コンデンサC101を約1000pF、コイルL100を約10nH、抵抗R103を約1kΩ、抵抗R104を約500kΩ、抵抗R105を約36Ω、抵抗R106を約513Ω、抵抗R107を約7.5Ω、コンデンサC105を約1000pF、コイルL101を約6.8μH、コンデンサC102を約0.1μF、抵抗R102を約5Ω、コンデンサC103を約0.1μFとした時のバイアス条件とされている。
【0019】
図5を参照すると、弱電界下の場合は、本発明にかかる増幅装置1において制御電圧Vgcが約0VとなりトランジスタTR1のコレクタ電圧Vcは約1.74V、ベース電圧Vbは約1.02V、エミッタ電圧Veは約0.22V、ベース−エミッタ間の電圧Vbeは約0.80V、コレクタ−エミッタ間電圧Vceは約1.52Vとなる。この場合は、トランジスタTR1のコレクタ電流は約12.2mA(=Vbe/R3)となり、バイアスは浅くなる。これに対して、従来例の増幅器101においては、制御電圧Vgcが約8VとなりトランジスタTR100のコレクタ電圧Vcは約7.78V、ベース電圧Vbは約7.06V、エミッタ電圧Veは約6.27V、ベース−エミッタ間の電圧Vbeは約0.79V、コレクタ−エミッタ間電圧Vceは約1.51Vとなる。この場合は、トランジスタTR100のコレクタ電流は約12.2mA(=Vbe/R106)となり、バイアスは浅くなる。
【0020】
また、図5を参照すると、強電界下の場合は、本発明にかかる増幅装置1において制御電圧Vgcが約3VとなりトランジスタTR2,TR3はオンする。これにより、トランジスタTR1のコレクタ電圧Vcは約5.93V、ベース電圧Vbは約1.93V、エミッタ電圧Veは約1.06V、ベース−エミッタ間の電圧Vbeは約0.87V、コレクタ−エミッタ間電圧Vceは約4.87Vとなる。この場合は、トランジスタTR1のコレクタ電流は約59mA(=Vbe/R3)となり、バイアスは深くなる。これに対して、従来例の増幅器101においては、制御電圧Vgcが約0VとなりトランジスタTR101がオンする。これにより、トランジスタTR100のコレクタ電圧Vcは約6.95V、ベース電圧Vbは約2.96V、エミッタ電圧Veは約2.08V、ベース−エミッタ間の電圧Vbeは約0.88V、コレクタ−エミッタ間電圧Vceは約4.87Vとなる。この場合は、トランジスタTR100のコレクタ電流は約62mA(=Vbe/R106//R105)となり、バイアスは深くなる。ただし、R106//R105は抵抗R106と抵抗R105の並列抵抗値を示している。
【0021】
弱電界下と強電界下において上記した図5に示すバイアス条件とされた際の本発明にかかるアンテナ増幅器3と、従来例の増幅器101とのNF特性を図6の図表に示す。
図6を参照すると、本発明にかかるアンテナ増幅器3においては弱電界下のバイアス条件とされた際のNFは約2.5dBと良好な特性が得られており、強電界下のバイアス条件とされた際においては約3.6dBのNFが得られている。これに対して、従来例の増幅器101においては弱電界下のバイアス条件とされた際のNFは約2.8dBが得られており、強電界下のバイアス条件とされた際においては約3.8dBのNFが得られている。このように、本発明にかかる増幅装置1では従来より良好なNF特性が得られていることが分かる。
【0022】
次に、弱電界下と強電界下において上記した図5に示すバイアス条件とされた際の本発明にかかるアンテナ増幅器3と、従来例の増幅器101との歪(IM3)特性を図7の図表に示す。
図7を参照すると、本発明にかかるアンテナ増幅器3においては弱電界下のバイアス条件とされた際に入力レベルが60dBの時は約−39.8dBμV、入力レベルが70dBの時は約−9.8dBμV、入力レベルが80dBの時は約20.3dBμV、入力レベルが90dBの時は約51.7dBμVの歪(IM3)特性が得られており、強電界下のバイアス条件とされた際においては入力レベルが60dBの時は約−72.5dBμV、入力レベルが70dBの時は約−42.5dBμV、入力レベルが80dBの時は約−12.5dBμV、入力レベルが90dBの時は約17.6dBμVの良好な歪(IM3)特性が得られている。
【0023】
これに対して、従来例の増幅器101においては弱電界下のバイアス条件とされた際に入力レベルが60dBの時は約−23.8dBμV、入力レベルが70dBの時は約14.1dBμV、入力レベルが80dBの時は約47.1dBμV、入力レベルが90dBの時は約87.6dBμVの劣化した歪(IM3)特性が得られており、強電界下のバイアス条件とされた際においては入力レベルが60dBの時は約−54.6dBμV、入力レベルが70dBの時は約−16.8dBμV、入力レベルが80dBの時は約15.3dBμV、入力レベルが90dBの時は約46.6dBμVと改善されてはいるものの本発明にかかるアンテナ増幅器3には及ばない歪(IM3)特性が得られていることがわかる。
上記したように、本発明にかかる増幅装置1においては、弱電界下および強電界下において従来の増幅装置100より良好なNF特性および歪特性が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
上記説明した本発明にかかる増幅装置は、FMアンテナの受信信号を増幅する増幅装置としたが、これに限ることはなく地上デジタル放送受信アンテナからの受信信号や、種々の放送受信用アンテナの受信信号を増幅する増幅装置とすることができる。
以上の説明では、本発明にかかる増幅装置はアンテナの受信信号を増幅する増幅装置としたが、これに限ることはなく高周波信号一般を増幅する増幅装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 増幅装置、2 アンテナ、3 アンテナ増幅器、4 検波回路、10 AMP、11 バイアスコントロール部、11a スイッチ手段、11b 第1抵抗、11c 第2抵抗、12 第1フィルタ部、13 第2フィルタ部、100 増幅装置、101 増幅器、102 ゲインコントロール部、103 検波回路、111a スイッチ、111b 第1抵抗、111c 第2抵抗、120 第1フィルタ部、121 第2フィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとコレクタ間にベースバイアス抵抗が接続され、エミッタにエミッタバイアス抵抗が接続され、前記ベースに入力された高周波信号を増幅して前記コレクタから出力するトランジスタと、
該トランジスタの前記コレクタに接続されている負荷手段と電源との間に接続された第1抵抗と、該第1抵抗に並列接続された前記制御電圧に応じてオン/オフするスイッチ手段と第2抵抗との直列回路とからなるバイアスコントロール部と、
前記入力された高周波信号のレベルに応じた制御電圧を生成して、前記バイアスコントロール部の前記スイッチ手段に印加して、前記トランジスタのバイアスをコントロールする制御回路とを備え、
前記入力された高周波信号のレベルが小さい時は、前記制御電圧により前記スイッチ手段がオフすることにより、前記トランジスタのバイアスが浅くなってNF特性が向上され、前記入力された高周波信号のレベルが大きい時は、前記制御電圧により前記スイッチ手段がオンすることにより、前記トランジスタのバイアスが深くなって歪特性が向上されることを特徴とする増幅装置。
【請求項2】
前記第2抵抗の抵抗値が、前記第1抵抗の抵抗値の数十分の1の値とされていることを特徴とする請求項1記載の増幅装置。
【請求項3】
前記入力された高周波信号のレベルが小さい時は前記制御電圧が約0ボルトとされ、前記入力された高周波信号のレベルが大きい時は前記制御電圧が数ボルトとされ、約0ボルトの前記制御電圧によりオフすると共に、数ボルトの前記制御電圧によりオンする第2スイッチ手段により、前記スイッチ手段のオン/オフが制御されることを特徴とする請求項1または2記載の増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−34054(P2013−34054A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168205(P2011−168205)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000165848)原田工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】