増殖性障害に対する併用療法
本発明は、DNAポリメラーゼαを特異的に阻害する第1の薬剤およびプロテインキナーゼ(例えば、Chk1)を阻害する第2の薬剤を用いる併用療法を使用して、増殖性障害を処置するための組成物および方法を提供する。第1の薬剤は、DNAポリメラーゼαに指向される結合化合物(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)を含む。第1の薬剤はまた、PolAに指向されるアンチセンス核酸またはsiRNAを含み得る。第2の薬剤は、チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)に指向される結合化合物(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)を含む。第2の薬剤はまた、チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)をコードする遺伝子に指向されるアンチセンス核酸またはsiRNAを含み得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性障害(例えば、癌)の処置のための方法および組成物に関する。具体的には、本発明は、DNA複製を妨げる第1の薬剤および複製チェックポイントを妨げる第2の薬剤を用いる併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーベイランス機構の複雑なネットワークは、「チェックポイント」といわれ、種々のゲノム傷害に直面しても、ゲノム完全性を維持する(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1、Chk2など)は、不適切なとき(例えば、DNA損傷に応答している場合)の細胞周期進行を妨げ、細胞が停止している間に細胞の代謝的バランスを維持し、チェックポイントの要求が満たされなかった場合、いくらかの場合には、アポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導し得る。チェックポイント制御は、DNA合成(「G1/Sチェックポイント」)の前のG1期において、S期(「S内(intra−S)チェックポイント」)において、および有糸分裂に入る前のG2期(「G2/Mチェックポイント」)において、起こり得る。この活動は、DNA修復プロセスが、ゲノムの複製およびその後の新たな娘細胞への遺伝物質の分離が起こる前に、それらの作業を完了することを可能にする。CHK1の不活性化は、DNA損傷(内因性DNA損傷または抗癌剤によって引き起こされる損傷)によって通常誘導されるG2停止を排除し、不適切な有糸分裂への進入および得られたチェックポイント欠損細胞の優先的な死滅を生じることが示された。例えば、非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;および非特許文献9を参照のこと。これらの効果は、Cdc25Cの活性の調節におけるChk1の役割によって媒介され、続いて、有糸分裂への進入を制御するCdc−2/サイクリンB複合体の活性を制御すると考えられている。
【0003】
Chk1(セリン/スレオニンチェックポイントキナーゼ)は、S内チェックポイントおよびG2/Mチェックポイント応答の両方に寄与する(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。複製ストレスおよびS内チェックポイントの関与後、Chk1は、ATM(毛細管拡張性失調症変異(ataxia telangiectasia, mutated))およびATR(ATMおよびRad3関連)プロテインキナーゼによって活性化される。DNA代謝拮抗性薬物に対する曝露が、S内チェックポイントを活性化することを示した(例えば、非特許文献15を参照のこと)が、Chk1がこの応答に寄与する機構は不明なままである。
【0004】
Chk1インヒビターは、化学療法剤を使用する癌治療に潜在的に有用な補助物質として提唱されてきた。例えば、非特許文献16を参照のこと。Chk1の活性の阻害は、化学療法誘導性DNA損傷を有する癌細胞におけるチェックポイント制御の障害をもたらすと推定される。チェックポイントの障害は、DNA損傷にも拘わらず、有糸分裂への細胞の進行をもたらし、有糸分裂の分かれ目(mitotic crisis)および最終的にアポトーシスをもたらす。非癌性細胞は、Chk1媒介性チェックポイント機能の喪失にあたり感受性でないと推定される。なぜなら、非癌性細胞は、一般に、それほど急激に分裂せず、これらはまた、細胞周期を介した有糸分裂への進行を妨げるために、機能的G1チェックポイント(大部分の腫瘍細胞において欠落している)を有し得るからである。癌性細胞 対 正常細胞に対するChk1インヒビターのこの差示的効果は、化学療法の効果を増強し、望ましくない副作用の所定のレベルに対してより多くの腫瘍死滅を提供すると推定される。
【0005】
チェックポイントインヒビター(例えば、カフェイン、UCN−01、Go6979、ICP−1、SB218078、PD166285およびイソグラヌラチミド)を、非特許文献17において検討されるように、DNA損傷剤または照射と組み合わせた。Chk1の阻害を、ヌクレオシドアナログ(非特許文献18)および他の化学療法剤および代謝拮抗物質(例えば、エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチン、クロラムブシル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ヒドロキシ尿素、2−クロロアデノシン、フルダラビン、アザシチジン、ゲムシタビン(特許文献1;特許文献2;および特許文献3)、シトシンアラビノシド(ara−C)およびチミジン(非特許文献19)、アフィジコリン(非特許文献20)ならびに7−ヒドロキシスタウロスポリン(UCN−01)(非特許文献21;非特許文献22)と組み合わせた。
【0006】
異常な細胞増殖と関連する疾患状態の処置もしくは予防を促進するために、正常組織とは対照的に、化学療法剤およびDNA代謝拮抗物質の毒性作用に対して腫瘍組織を優先的に感受性にするための改善された方法が必要である。好ましくは、このような方法および組成物は、腫瘍組織における有糸分裂の分かれ目もしくはアポトーシスを誘導するはずである。好ましくは、このような方法および組成物はまた、腫瘍組織に対して非常に選択的であるので、望ましくない副作用を最小にする。好ましくは、このような方法および組成物は、治療的利益を達成するために絶対に必要な分子(例えば、特異的DNAポリメラーゼ)のみを阻害すると同時に他の分子に対してあまり破壊的でないように、精密に標的化されるので、望ましくない副作用を最小にする。好ましくは、このような方法および組成物は、DNAへ組み込まれない化合物を必要とし、DNA合成の長期の停止、DNAチェックポイントの増強された活性化、および治療剤としてのチェックポイントインヒビターの増大した効果を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,067,506号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0069284号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/027907号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hartwell & Weinert(1989)Science 246:629
【非特許文献2】Weinert(1997)Science 277:1450
【非特許文献3】Kastan & Bartek(2004)Nature 432:316
【非特許文献4】Pengら(1997)Science,277:1501
【非特許文献5】Sanchezら(1997)Science 277:1497
【非特許文献6】Nurse(1997)Cell 91:865
【非特許文献7】Weinert(1997)Science 277:450
【非特許文献8】Walworthら(1993)Nature 363:368
【非特許文献9】Al−Khodairyら(1994)Molec.Biol.Cell 5:147
【非特許文献10】Liuら(2000)Genes Dev.14:1448
【非特許文献11】Sorensenら(2003)Cancer Cell 3:247
【非特許文献12】Choら(2005)Cell Cycle 4:131
【非特許文献13】Zachosら(2005)Mol.Cell Biol.25:563
【非特許文献14】Petermannら(2006)MoI.Cell.Biol.26:3319
【非特許文献15】Choら(2005)Cell Cycle 4:131
【非特許文献16】Tao & Lin(2006)Anti−Cancer Agents in Med.Chem.6:377
【非特許文献17】Prudhomme(2004)Curr.Med.Chem.−Anti−Cancer Agents 4:435
【非特許文献18】Sampathら(2003)Oncogene 22:9063
【非特許文献19】Choら(2005)Cell Cycle 4:131
【非特許文献20】Zachosら(2003)EMBO J:22:713
【非特許文献21】Feijooら(2001)J.Cell Biol.154:913
【非特許文献22】Miaoら(2003)J.Biol.Chem.278:4295
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
その多くの実施形態において、本発明は、DNAポリメラーゼαの活性を阻害する工程および少なくとも1種のチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)の活性を阻害する工程を包含する、増殖性障害の処置のための方法を提供する。別の局面において、本発明は、被験体に、DNAポリメラーゼαのインヒビターである第1の薬剤および少なくとも1種のチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1もしくはChk2)のインヒビターである第2の薬剤を投与することによって、被験体(例えば、処置の必要な被験体)における増殖性障害の処置のための方法を提供する。なお別の局面において、本発明は、DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1もしくはChk2)のインヒビターを含む、その必要性がある被験体に投与される組成物に関する。
【0010】
本発明のすべての局面のうちのいくつかの実施形態において、上記チェックポイントキナーゼはChk1である。
【0011】
種々の実施形態において、上記第1の薬剤は、第2の薬剤より前に、それと同時に、またはその後に投与される。他の実施形態において、上記第1の薬剤および/または上記第2の薬剤での処置は、いずれの順番でも、1回より多く反復される。好ましい実施形態において、上記第1の薬剤は、最初に投与され、そして上記第2の薬剤は、後のときに投与され、そのときに、上記第1の化合物の後のときの投与は、継続されてもよいし、中断されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、DNAポリメラーゼαの阻害は、別のDNAポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼε)の阻害の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍、またはそれ以上である。
【0013】
例示的な第1の薬剤としては、4−ヒドロキシ−17−メチリンシステロール(methylincisterol)、糖脂質であるガラクトシルジアシルグリセロール(GDG)、パクリタキセル誘導体であるセファロマンニン、デヒドロアルテヌシン、スルホ脂質化合物(例えば、スルホキノボシルジアシルグリセロール)、非環式ホスホメトキシアルキルヌクレオチドアナログ(phosphonmethoxyalkyl nucleotide analog)、レスベラトール(3,4,5−トリヒドロキシスチルベン)、トリテルペンジカルボン酸、mispyric acid、6−(p−n−ブチルアニリノ)ウラシルおよびN2−(p−ブチルフェニル)グアニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
一実施形態において、上記第1の薬剤は、4−ヒドロキシ−17−メチリンシステロール、ガラクトシルジアシルグリセロール、セファロマンニン、デヒドロアルテヌシン、6−(p−n−ブチルアニリノ)ウラシルおよびN2−(p−ブチルフェニル)グアニンからなる群より選択される。別の実施形態において、上記第1の薬剤はセファロマンニンである。なお別の実施形態において、上記第1の薬剤はデヒドロアルテヌシンである。
【0015】
例示的な第2の薬剤としては、ピラゾロピリミジン、イミダゾピラジン、UCN−01、インドールカルバゾール化合物、Go6976、SB−218078、スタウロスポリン、ICP−1、CEP−3891、イソグラヌラチミド、デブロモヒメニアルジシン(DBH)、ピリドピリミジン誘導体、PD0166285、シトネミン、ジアリール尿素、ベンゾイミダゾールキノロン、CHR 124、CHR 600、三環式ジアゾピノインドロン、PF−00394691、フラノピリミジン、ピロロピリミジン、インドリノン、置換されたピラジン、化合物XL844、ピリミジニルインダゾリルアミン、アミノピラゾール、2−ウレイドチオフェン、ピリミジン、ピロロピリミジン、3−ウレイドチオフェン、インデノピラゾール、トリアゾロン、ジベンゾジアゼピノン、大環状尿素、ピラゾロキノリン、およびペプチド模倣物CBP501が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、上記第2の薬剤は、ピラゾロピリミジンまたはイミダゾピラジンからなる群より選択される。別の実施形態において、上記ピラゾロピリミジンは、ピラゾロ[l,5−a]ピリミジンである。別の実施形態において、上記イミダゾピラジンは、イミダゾ[1,2−a]ピラジンである。
【0016】
いくつかの実施形態において、1種以上のさらなる薬剤は、上記第1の薬剤および上記第2の薬剤(例えば、細胞増殖抑制性薬剤、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソテール、タキソール、エトポシド、イリノテカン、カンプトスター、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン、タモキシフェン、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、テモゾロミド、シクロホスファミド、SCH 66336、Rl15777、L778,123、BMS 214662、Iressa(登録商標)、Tarceva(登録商標)、EGFRに対する抗体、Gleevec(登録商標)、イントロン、ara−C、アドリアマイシン、シトキサン、ゲムシタビン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、ロイコビリン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン、アナストラゾール、レトロゾール、カペシタビン、レロキサフィン、ドロロキサフェン、ヘキサメチルメラミン、Avastin(登録商標)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、Bexxar(登録商標)、Velcade(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Trisenox(登録商標)、Xeloda(登録商標)、ビノレルビン、ポルフィマー、Erbitux(登録商標)、リポソーム、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、レトロゾール、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスファミド、C225、Campath(登録商標)、クロファラビン、クラドリビン、アフィジコリン(aphidicolon)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、スニチニブ、ダサチニブ、テザシタビン、Smll、フルダラビン、ペントスタチン、Triapine(登録商標)、ジドックス(didox)、トリミドックス(trimidox)、アミドックス(amidox)、3−AP、およびMDL−101,731からなる群より選択される1種以上の抗癌剤)との組み合わせにおいて含められる。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記増殖性障害は、癌、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、神経学的/神経変性障害、関節炎、炎症、抗増殖性疾患、ニューロン疾患、脱毛症、心血管疾患または敗血症である。
【0018】
一実施形態において、上記増殖性障害は癌である。いくつかの実施形態において、上記癌は、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、頭頸部、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚、甲状腺、前立腺、および皮膚の癌、扁平上皮癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞白血病、外套細胞リンパ腫、骨髄腫、バーキットリンパ腫;急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、前骨髄芽球性白血病;線維肉腫、横紋筋肉腫;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫;黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、濾胞性甲状腺癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明の併用療法は、放射線療法と組み合わせられる。
【0020】
一実施形態において、本発明の併用療法は、必要に応じて、癌抑制遺伝子産物(例えば、p53遺伝子産物もしくはRb遺伝子産物)の機能の低下もしくは喪失を伴う増殖性障害を示す被験体に選択的に投与される。このような実施形態において、被験体は、被験体の罹患していない組織と比較して、癌抑制遺伝子産物の機能の低下もしくは喪失についてスクリーニングされ、そしてこのような機能の低下もしくは喪失を示す被験体のみが、本発明の併用療法を使用して処置される。一実施形態において、上記被験体の異常に増殖している組織は、上記被験体が本発明の併用療法を使用した処置に適しているか否かを決定するために、p53遺伝子産物もしくはRb遺伝子産物の存在および/または活性についてスクリーニングされる。このような実施形態において、受容可能な被験体は、p53、Rbもしくは両方の機能の低下もしくは喪失を有し得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記第1の薬剤は、DNAポリメラーゼα(Polα遺伝子によってコードされる)のIC50に対するDNAポリメラーゼε(Polε遺伝子によってコードされる)の薬剤のIC50の比(式IC50polε/IC50polαによって表される)によって測定される場合、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍以上、別のDNAポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼε)と比較してDNAポリメラーゼαに対して特異的である。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記第2の薬剤は、Chk1のIC50に対するCDK2の薬剤のIC50の比(式IC50Chk2/IC50Chk1によって表される)によって測定される場合、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍以上、別のプロテインキナーゼ(例えば、CDK2)と比較してChk1に対して特異的である。いくつかの実施形態において、上記IC50比は、5倍、10倍、または50倍である。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、DNAポリメラーゼαに指向される結合化合物(例えば、抗体(例えば、イントラボディー(intrabodies)またはその抗原結合フラグメント)を含む。第1の薬剤はまた、PolAに指向されるアンチセンス核酸またはsiRNAを含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)に指向される結合化合物(例えば、抗体(例えば、イントラボディー)またはその抗原結合フラグメント)を含む。第2の薬剤はまた、チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)をコードする遺伝子に指向されるアンチセンス核酸またはsiRNAを含み得る。
【0025】
一実施形態において、併用療法は、DNAポリメラーゼαを阻害する一定量の第1の薬剤およびChk1を阻害する一定量の第2の薬剤を含む薬学的組成物を用いてもたらされ、ここで被験体への上記組成物の投与は、治療的効果を生じる。種々の実施形態において、上記治療的効果は、異常な増殖の予防、低下または除去(例えば、腫瘍の予防、または被験体における腫瘍もしくは他の癌性組織の増殖もしくは除去の遅延)である。
【0026】
別の局面において、本発明は、増殖性障害の処置のための医薬の製造における、DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、ヒドロキシ尿素(HU)、ゲムシタビン(GEM)、Ara−C(Ara)または処置無し(「−」)での処置の後のChk1 S345リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。Chk1を、添加コントロールとして測定した。
【図2A】図2Aは、DNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)もしくはDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対する特異的siRNA二重鎖と比較した、ヒドロキシ尿素ありまたはなし(+/−HU)で、ルシフェラーゼ(Luc)に対するコントロールsiRNAでのトランスフェクション後での、Chk1 S345リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。Rad17は、添加コントロールとして含められる。
【図2B】図2Bは、細胞内染色およびFACS分析によって評価した場合、ルシフェラーゼsiRNA(HU処置ありまたはなし)で、またはDNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)もしくはDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対する特異的siRNA二重鎖でトランスフェクトした細胞についての、γ−H2A.Xリン酸化およびDNA含有量のプロットを提供する。特定の閾値より大きなDNA損傷を有する、各実験における細胞の割合(0.3%〜3.2%の範囲)を提供する。各実験について、プロットは、計数した細胞すべてのDNA含有量を提供する。データは、3回の独立した実験の平均を示す。
【図2C】図2Cは、細胞内染色およびFACS分析によって評価した場合、ルシフェラーゼsiRNA(HU処置ありまたはなし)で、またはDNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)もしくはDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対する特異的siRNA二重鎖でトランスフェクトした細胞についての、γ−H2A.Xリン酸化およびDNA含有量のプロットを提供する。特定の閾値より大きなDNA損傷を有する、各実験における細胞の割合(0.3%〜3.2%の範囲)を提供する。各実験のために、プロットは、計数した細胞すべてのDNA含有量を提供する。データは、3回の独立した実験の平均を示す。
【図2D】図2Dは、ルシフェラーゼ(Luc)に対するコントロールsiRNA二重鎖、Chk1、DNAポリメラーゼα(PolA)、DNAポリメラーゼε(PolE)、もしくはDNAポリメラーゼδ(PolD)の種々の組み合わせに対するコントロールsiRNA二重鎖でトランスフェクトした後のChk1 S345リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。
【図3】図3は、ルシフェラーゼ(Luc)に対する特異的siRNA二重鎖、またはChk1、DNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)、もしくはDNAポリメラーゼδ(Polδ)の種々の組み合わせに対する特異的siRNA二重鎖のトランスフェクション後の、Chk1 S345およびRPA32 S33リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。Rad17は、添加コントロールとして含められる。
【図4A】図4Aは、Chk1、DNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)、およびDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対するsiRNAの種々の組み合わせと比較した場合、ヒドロキシ尿素ありまたはなしで(+/− HU)、ルシフェラーゼ(Luc)に対するsiRNAのトランスフェクション後の、γ−H2AXリン酸化の%(二本鎖DNA破壊の尺度)のプロットである。
【図4B】図4Bは、以下により詳細に記載されるように、低分子Chk1インヒビター(2.5μM,2時間)ありまたはなしで、ルシフェラーゼ(Luc)もしくはDNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAでトランスフェクトした細胞のDNA含有量に対するγ−H2AXリン酸化のプロットである。未処理細胞およびDMSO処理細胞をコントロールとして供する。
【図5】図5は、ルシフェラーゼ(Luc)に対するsiRNAまたはChk1、ATR、ATMおよびDNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAの種々の組み合わせでのトランスフェクション後の、Chk1 S345リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。Rad17は、添加コントロールとして含められる。
【図6】図6は、Chk1、ATR、ATMおよびDNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAの種々の組み合わせでの処理と比較した場合、ルシフェラーゼ(Luc)に対するコントロールsiRNAでのトランスフェクション後の、H2AXリン酸化の%(二本鎖DNA破壊の尺度)のプロットである。
【図7】図7は、抗Polαモノクローナル抗体SJK−132−20(Tanakaら(1982)J.Biol.Chem.257:8386)または陰性コントロールとしてSV40 T抗原に対するモノクローナル抗体(Pab 419,Calbiochem,San Diego,Calif.)を使用する免疫沈降(IP)において、DNAポリメラーゼαでのChk1およびChk1 S345Pの免疫共沈降を示すゲルのウェスタンブロットである。結果は、ルシフェラーゼ(Luc)、Chk1もしくはATR(すべてヒドロキシ尿素ありまたはなし(+/−HU))に対するsiRNAで処理した細胞について示される。
【図8】図8は、抗Chk1モノクローナル抗体58D7を使用する免疫沈降(IP)において、Chk1でのDNAポリメラーゼα(Polα)およびChk1 S345Pの免疫共沈降を示すゲルのウェスタンブロットである。結果は、ヒドロキシ尿素(HU)、ゲムシタビン(Gem)またはゲムシタビンと、抗体58D7に対する結合についてChk1と競合する過剰のペプチド(コグネイト免疫原CNRERLLNKMCGTLPYVAPELLKRREF)(配列番号8)との組み合わせで処理した細胞、ならびに未処理(Unt)細胞について示される。
【図9】図9は、HUでの処置の長さ(時間単位)の関数として、抗Polαモノクローナル抗体SJK−132−20(Tanakaら(1982)J.Biol.Chem.257:8386)を使用する免疫沈降(IP)において、DNAポリメラーゼαでのChk1およびChk1 S345Pの免疫共沈降を示すゲルのウェスタンブロットである。
【図10】図10は、ルシフェラーゼ(Luc)、Chk1もしくはATRに対するsiRNA(すべてヒドロキシ尿素ありまたはなし(+/− HU))でのトランスフェクション後、Chk S345およびRPA32 S33リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で引用される各特許、特許出願公開または他の刊行物(データベースエントリー(例えば、タンパク質配列および核酸配列)を含む)は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0029】
(I.定義)
上記でおよび本開示全体を通じて使用される場合、以下の用語は、別段示されなければ、以下の意味を有することが理解されるものとする。
【0030】
「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「この、上記(the)」は、文脈が明らかに別のことを示すのでなければ、それらの対応する複数の言及を含む。
【0031】
別段示されなければ、「または、もしくは、あるいは(or)」は、「および、ならびに(and)」を排除しない。例えば、「要素Aまたは要素B」を記載する請求項は、Aのみによる実施形態、Bのみによる実施形態、およびAおよびBの両方による実施形態を包含する。
【0032】
「被験体」または「患者」とは、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0033】
「哺乳動物」とは、ヒトおよび他の哺乳動物を意味する。
【0034】
「組成物」とは、特定の量において特定の成分を含む生成物、および直接的にもしくは間接的に特定の量において特定の成分の組み合わせから生じる任意の生成物を包含することが意図される。
【0035】
「阻害する」または「処置する、処理する」もしくは「処置、処理」とは、増殖性障害と関連した症状の発生の遅延および/または発生することが予期されるこのような症状の重篤度の低下を包含する。従って、用語は、有益な結果が増殖性障害を有する脊椎動物被験体またはこのような障害もしくは症状を発生させる可能性を有する被験体に付与されたことを示す。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「治療上有効な量」または「有効量」とは、単独で、またはさらなる治療剤との組み合わせ(含有量に依存して)において細胞、組織もしくは被験体に投与される場合、増殖性障害を予防もしくは改善するに有効である薬剤(例えば、DNAポリメラーゼαもしくはChk1のインヒビター)の量をいう。有効量はまた、診断を可能にするかもしくは促進するに十分な量を意味する。「治療上有効な用量」とは、症状の改善(例えば、関連する医学的状態の処置、治癒、予防もしくは改善、またはこのような状態の処置、治癒、予防もしくは改善の速度の増大)を生じるに十分な、薬剤の量をいう。特定の患者もしくは脊椎動物被験体にとって有効な量は、処置される状態、患者の全般的な健康状態、投与の経路および用量ならびに副作用の重篤度のような要因に依存して変動し得る(例えば、米国特許第5,888,530号明細書(Nettiらに対して発行)を参照のこと)。有効量は、顕著な副作用もしくは毒性効果を避ける最大用量もしくは投与プロトコルであり得る。上記効果は、少なくとも5%、通常は少なくとも10%、より通常には少なくとも20%、最も通常には少なくとも30%、好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、少なくとも60%、理想的には、少なくとも70%、より理想的には、少なくとも80%、および最も理想的には少なくとも90%だけ、診断尺度またはパラメーターの改善を生じる。ここで100%は、正常の被験体によって示される診断パラメーターとして同定される(例えば、Maynardら(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照のこと)。
【0037】
本明細書で使用される場合、「治療剤」とは、単独で、もしくは別の薬剤との組み合わせのいずれかで、望ましい治療効果、改善効果、阻害効果もしくは予防効果に寄与し得る薬剤である。このような「治療剤」とは、必ずしも、単独で投与される場合、任意の治療効力を有さなくてもよい。例えば、本発明のDNAポリメラーゼαインヒビターまたは本発明のChk1インヒビターは、別個に使用される場合、必ずしも治療的有用性を有しなくてもよいが、にもかかわらず、本発明の方法において一緒に使用される場合に治療的に有効であり得る。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合、治療上有効な用量とは、その成分単独に言及する。組み合わせに適用される場合、治療上有効な用量とは、組み合わせて投与されようとそうでなかろうと、連続してまたは同時に治療的効果を生じる活性成分の組み合わせ量をいう。
【0038】
「低分子」とは、10kD未満、代表的には、2kD未満、しばしば1kD未満、好ましくは、0.7kD未満、および最も好ましくは、約0.5kD未満である分子量を有する分子として定義される。低分子としては、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射活性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物、および抗体模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。治療剤として、低分子は、細胞に対してより透過性であり、分解に対して感受性が低く、かつ大きな分子より免疫応答を誘導しにくい可能性がある。低分子(例えば、抗体およびサイトカインのペプチド模倣物、ならびに低分子毒素)が記載されている(例えば、Cassetら(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.307:198−205;Muyldermans(2001)J.Biotechnol.74:277−302;Li(2000)Nat.Biotechnol.18:1251−1256;Apostolopoulosら(2002)Curr.Med.Chem.9:411−420;Monfardiniら(2002)Curr.Pharm.Des.8:2185−2199;Dominguesら(1999)Nat.Struct.Biol.6:652−656;Sato and Sone(2003)Biochem.J.371:603−608;米国特許第6,326,482号明細書(Stewartらに対して発行)を参照のこと)。
【0039】
「投与」および「処置」とは、動物、ヒト、実験的被験体、細胞、組織、器官もしくは生物学的流体に対して適用される場合、外因性の薬学的薬剤、治療剤、診断剤もしくは組成物を、上記動物、ヒト、被験体、細胞、組織、器官、もしくは生物学的流体に接触させることをいう。「投与」および「処置」とは、例えば、治療法、薬物動態学的方法、診断法、研究法および実験法に言及し得る。細胞の処理は、上記細胞への試薬の接触、および流体(ここでこの流体は上記細胞と接触している)への試薬の接触を包含する。「投与」および「処置」とはまた、例えば、細胞のインビトロおよびエキソビボ処置、試薬、診断組成物、結合組成物によるインビトロ処置およびエキソビボ処置、または別の細胞によるインビトロ処置およびエキソビボ処置を意味する。「処置」とは、ヒト、脊椎動物、または研究被験体に適用される場合、治療的処置、予防的手段、研究適用および診断適用をいう。「処置」とは、ヒト、脊椎動物、もしく研究被験体、または細胞、組織もしくは器官に適用される場合、本発明の治療剤の組み合わせと、ヒトもしくは動物被験体、細胞、組織、生理学的区画、または生理学的流体との接触を包含する。
【0040】
別段示されなければ、薬剤によって引き起こされる「阻害」または「活性化」の程度は、タンパク質、遺伝子、細胞、細胞培養物、もしくは生物が阻害剤もしくは活性化剤で処理され、かつその結果が上記薬剤なしのコントロールサンプルと比較されるアッセイを使用して決定される。コントロールサンプル(すなわち、薬剤で処理されていない)は、100%に対する相対活性値として割り当てられる。「阻害」とは、上記コントロールに対する活性値が約90%未満、代表的には、85%未満、より代表的には、80%未満、最も代表的には、75%未満、一般には、70%未満、より一般には65%未満、最も一般には、60%未満、代表的には、55%未満、通常50%未満、より通常には45%未満、最も通常には40%未満、好ましくは、35%未満、より好ましくは、30%未満、さらにより好ましくは、25%未満、および最も好ましくは、25%である場合に、達成される。「活性化」とは、上記コントロールに対する活性値が、約110%、一般には少なくとも120%、より一般には少なくとも140%、より一般には少なくとも160%、頻繁には少なくとも180%、より頻繁には少なくとも2倍、最も頻繁には少なくとも2.5倍、通常は少なくとも5倍、より通常には少なくとも10倍、好ましくは、少なくとも20倍、より好ましくは、少なくとも40倍、および最も好ましくは、40倍より高い場合に達成される。
【0041】
活性化または阻害におけるエンドポイントは、以下のようにモニターされ得る。処置に対する活性化、阻害、および応答(例えば、細胞、生理学的流体、組織、器官および動物もしくはヒト被験体のもの)は、エンドポイントによってモニターされ得る。上記エンドポイントは、例えば、炎症、腫瘍原性、または細胞顆粒喪失もしくは分泌(例えば、サイトカイン、毒性酸素、もしくはプロテアーゼの放出)のうちの1つ以上の徴候の所定の量もしくは割合を含み得る。上記エンドポイントは、例えば、イオンフラックスもしくは輸送の所定の量;細胞移動;細胞接着;細胞増殖;転移の可能性;細胞分化;および表現型の変化(例えば、炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期、もしくは転移に関する遺伝子の発現の変化を含み得る(例えば、Knight(2000)Ann.Clin.Lab.Sci 30:145−158;Hood and Cheresh(2002)Nature Rev.Cancer 2:91−100;Timmeら(2003)Curr.Drug Targets 4:251−261;Robbins and Itzkowitz(2002)Med.Clin.North Am.86:1467−1495;Grady and Markowitz(2002)Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.3:101−128;Bauerら(2001)Glia 36:235−243;Stanimirovic and Satoh(2000)Brain Pathol.10:113−126を参照のこと)。
【0042】
阻害のエンドポイントは、一般には、コントロールの75%以下、好ましくは、コントロールの50%以下、より好ましくは、コントロールの25%以下、および最も好ましくは、コントロールの10%以下である。一般には、活性化のエンドポイントは、コントロールの少なくとも150%、好ましくは、コントロールの少なくとも2倍、より好ましくは、コントロールの少なくとも4倍、および最も好ましくは、コントロールの少なくとも10倍である。
【0043】
用語「〜から本質的になる(consists essentially of)、または「〜から本質的になる(consist essentially of)」もしくは「〜から本質的になる(consisting essentially of)」のようなバリエーションは、本明細書中および特許請求の範囲全体を通して使用される場合、任意の記載される要素または要素の群の包含、および記載される要素と類似または異なる性質の他の要素の選択肢的包含を示し、これらは、特定の投与レジメン、方法、もしくは組成物の基本的もしくは新規な特性を著しく変化させない。非限定的例として、記載されるアミノ酸配列から本質的になる結合化合物はまた、上記結合化合物の特性に著しく影響を及ぼさない1個以上のアミノ酸(1個以上のアミノ酸残基の置換を含む)を含み得る。
【0044】
(抗体関連の定義)
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、望ましい生物学的活性を示す抗体またはそのフラグメントの任意の形態をいう。従って、それは、その最も広義の意味において使用され、具体的には、それらが望ましい生物学的活性を示す限りにおいて、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、複数特異的抗体(例えば、二特異的抗体)、および抗体フラグメントを包含する。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合フラグメント」または「その結合フラグメント」とは、全長抗体の望ましい生物学的活性(例えば、DNAポリメラーゼαの阻害)をなお実質的に保持する抗体のフラグメントもしくは誘導体を包含する。従って、用語「抗体フラグメント」とは、全長抗体の一部分、一般には、その抗原結合領域もしくは可変領域をいう。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;ダイアボディー;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、sc−Fv);ならびに抗体フラグメントから形成される複数特異的抗体が挙げられる。代表的には、結合フラグメントもしくは誘導体は、その阻害活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、結合フラグメントもしくは誘導体は、その生物学的活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%(またはそれ以上)を保持するが、望ましい生物学的効果を発揮するに十分なアフィニティーを有する任意の結合フラグメントが有用である。抗体の抗原結合フラグメントは、その生物学的活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換を含み得ることもまた意図される。
【0046】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用される場合、実質的に均一の抗体(すなわち、微量に存在し得る考えられる天然に存在する変異を除いて、同一である集団を含む個々の抗体)の集団から得られる抗体をいう。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗体エピトープに対して指向される。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、代表的には、異なるエピトープに対して指向される(または特異的である)複数の抗体を含む。修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を要するとみなされるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、最初にKohlerら(1975)Nature 256:495によって記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照のこと)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら(1991)Nature 352:624およびMarksら(1991)J.MoI.Biol.222:581において記載される技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0047】
本明細書のモノクローナル抗体は、それらが望ましい生物学的活性を示す限りにおいて、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種から得られるかまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかもしくは相同である一方で、この鎖の残りが別の種から得られるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかもしくは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)およびこのような抗体のフラグメントを具体的には含む(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855)。
【0048】
「ドメイン抗体」とは、重鎖の可変領域もしくは軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能的な免疫グロブリンフラグメントである。いくらかの場合において、2種以上のVH領域は、二価ドメイン抗体を作製するためにペプチドリンカーで共有結合される。上記二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じ抗原を標的としてもよいし、異なる抗原を標的としてもよい。
【0049】
「二価抗体」とは、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの場合において、上記2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかし、二価抗体は、二特異的であり得る(以下を参照のこと)。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「一本鎖Fv」または「scFv」抗体とは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む抗体フラグメントであって、これらドメインが単一のポリペプチド鎖中に存在するものをいう。一般に、上記Fvポリペプチドは、上記sFvが抗体結合のための望ましい構造を形成することを可能にする、上記VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの総説については、Pluckthun(1994)THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES,vol.113,RosenburgおよびMoore編.Springer−Verlag,New York,pp.269−315を参照のこと。
【0051】
本明細書のモノクローナル抗体はまた、ラクダ化した(camelized)単一ドメイン抗体を含む。例えば、Muyldermansら(2001)Trends Biochem.Sci.26:230;Reichmannら(1999)J.Immunol.Methods 231:25;国際公開第94/04678号パンフレット;国際公開第94/25591号パンフレット;米国特許第6,005,079号明細書(これらは、それら全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと。一実施形態において、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるように、改変を有する2つのVHドメインを含む単一ドメイン抗体を提供する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「ダイアボディー」とは、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントであって、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)をさらに含むもの(VH−VLまたはVL−VH)をいう。非常に短いので同じ鎖上で2つのドメイン間の追形成を可能にするリンカーを使用することによって、上記ドメインを、別の鎖の相補性ドメインと対形成させ、かつ2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディーは、例えば、欧州特許第404097B1号明細書;国際公開第93/11161号パンフレット;およびHolligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:6444−6448においてより詳細に記載される。操作された抗体改変体の総説については、一般に、Holliger and Hudson(2005)Nat.Biotechnol.23:1126−1136を参照のこと。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」とは、非ヒト(例えば、マウス)抗体由来の配列およびヒト抗体由来の配列を含む抗体の形態をいう。このような抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含む。一般に、上記ヒト化抗体は、少なくとも1つの、および代表的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここで上記超可変ループのすべてもしくは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応しかつFR領域のすべてもしくは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。上記ヒト化抗体はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)、代表的には、ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分を含む。齧歯類抗体のヒト化形態は、一般に、親齧歯類抗体の同じCDR配列を含むが、特定のアミノ酸置換が、上記ヒト化抗体のアフィニティーを増大させるかまたは安定性を増大させるために含められ得る。
【0054】
本発明の抗体はまた、変化したエフェクター機能を提供するために、改変された(またはブロックされた)Fc領域を有する抗体を含む。例えば、米国特許第5,624,821号明細書;国際公開第2003/086310号パンフレット;国際公開第2005/120571号パンフレット;国際公開第2006/0057702号パンフレット;Presta(2006)Adv.Drug Delivery Rev.58:640−656を参照のこと。このような改変は、診断および治療において考えられる有益な効果とともに、免疫系の種々の反応を増強または抑制するために使用され得る。Fc領域の改変としては、アミノ酸変化(置換、欠失および付加)、グリコシル化もしくは脱グリコシル化、および複数Fcの付加が挙げられる。上記Fcに対する変化はまた、治療的抗体における抗体半減期を変化させ得、そしてより長い半減期は、付随する増大した簡便性および材料の使用の減少とともに、投与頻度の減少を生じる。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:734−35の731を参照のこと。
【0055】
用語「完全にヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体をいう。このような完全にヒト化抗体とは、トランスジェニックマウス、またはさらに他の動物を使用して生成され得る。例えば、Lonberg(2005)Nature Biotechnol.23:1117を参照のこと。完全にヒト抗体は、マウス、マウス細胞、またはマウス細胞由来のハイブリドーマにおいて生成される場合、マウス炭水化物鎖を含み得る。同様に、「マウス抗体」とは、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体をいう。
【0056】
「結合化合物」とは、標的に結合し得る分子、低分子、大分子、ポリペプチド、抗体またはフラグメントもしくはそのアナログ、あるいは可溶性レセプターをいう。「結合化合物」とはまた、イオン化分子、および共有的に改変されたもしくは非共有的に改変された分子(例えば、リン酸化、アシル化、架橋、環化、もしくは制限された切断によって改変される)に対する分子の複合体(例えば、非共有結合複合体)であって、標的に結合し得るものをいう。抗体に言及して使用される場合、用語「結合化合物」とは、抗体およびその結合フラグメントの両方をいう。「結合」とは、上記結合化合物は溶液中で溶解もしくは懸濁され得る場合に、上記結合化合物と標的との会合(ここでこの会合が、上記結合化合物の通常のブラウン運動の減少を生じる)をいう。「結合組成物」とは、安定化剤、賦形剤、塩、緩衝剤、溶媒、もしくは付加物と組み合わせて、標的に結合し得る分子(例えば、結合化合物)をいう。
【0057】
II.DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびChk1のインヒビターとの併用療法
本明細書で開示される発明は、DNAポリメラーゼαおよびChk1の特異的阻害によって、例えば、DNAポリメラーゼαおよびChk1の特異的阻害を使用した、増殖性障害の処置のための方法および組成物に関する。
【0058】
Chk1は、DNA損傷に応じて活性化されている細胞周期チェックポイント制御またはより高等な真核生物における複製の引き留めにおける重要なエフェクターキナーゼである。Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Sorensenら(2003)Cancer Cell 3:247;Syljuasenら(2005)Mol Cell Biol.25:3553;Choら(2005)Cell Cycle 4:131。代表的には、DNA代謝拮抗物質で処理した細胞は、S期内チェックポイントの一部としてChk1を活性化して、後期起点刺激(late origin firing)を制御しそして複製分岐の引き留めを安定化する。Feijooら(2001)J.Cell Biol.154:913;Choら(2005)Cell Cycle 4:131。HUは、dNTPプールを除去して、DNA複製を阻害するリボヌクレオチドレダクターゼインヒビターである。ゲムシタビンは、リボヌクレオチドレダクターゼを阻害するが、DNAに組み込まれた場合に、DNA複製をまた阻害する。Sampathら(2003)Oncogene 22:9063。Ara−Cは、DNAに組み込まれかつ複製に関わるDNAポリメラーゼを妨げるヌクレオシドアナログである。Townsend & Cheng(1987)Mol.Pharmacol.32:330;Mikita & Beardsley(1988)Biochemistry 27:4698。図1は、代謝拮抗物質であるゲムシタビン(Gem)、シタラビン(Ara−C,シトシンアラビノシド)、およびヒドロキシ尿素(HU)が、Chk1 S345リン酸化(これは、Chk1経路の活性化のマーカーである)を誘導することを確認する(Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Zhao & Piwnica−Worms(2001)Mol.Cell.Biol.21:4129;Capassoら(2002)J.Cell Sci.115:4555)。
【0059】
DNA代謝拮抗物質は、DNA合成の全般的抑制を介してそれらの効果を発揮するという事実に鑑みると、複製に関わるポリメラーゼの阻害は、Chk1経路の活性化を誘発し得ることが考えられた。この仮定を試験するために、特異的siRNA二重鎖を使用して、DNA複製ポリメラーゼα、εまたはδをU20S細胞において特異的に除去した。これをその後、Chk1 S345リン酸化について試験した。
【0060】
siRNAによるPolαの除去は、残基S345でのChk1リン酸化を誘導して、Chk1 S345Pを生成することによって、代謝拮抗物質曝露を表現型コピーする。Polαの特異的除去は、Chk1 S345リン酸化を、HU処理の後に検出可能なものに類似のレベルまで誘導する(図2A)。PolεおよびPolδの除去は、これら条件下でChk1 S345リン酸化を促進しなかった(図2A)。
【0061】
PolαおよびChk1の組み合わせ除去は、S期内遅延およびDNA損傷の蓄積を生じる。図3〜6を参照のこと。PolαとChk1との間のこと遺伝的相互作用と一致して、Chk1は、Polαと免疫共沈降し、このことは、物理的相互作用を示唆する。図7〜8を参照のこと。PolαおよびATR(より低い程度にはATM)の同時除去は類似の表現型を生じ、このことは、ATRおよびChk1が上位でありかつ複製ストレス後にゲノム完全性の維持のために必要とされることを示唆する。複製ストレス後、Polα会合Chk1は、ATR依存性様式において、S345で迅速にリン酸化される。顕著なことには、この文脈において効率的にChk1をリン酸化する能力は、DNA損傷の抑制と相関する。
【0062】
本発明者らは次に、γ−H2A.Xリン酸化(二本鎖DNA破壊のマーカー)を試験した(Rogakouら(1998)J.Biol.Chem.273:5858;Nazarovら(2003)Radiat.Res.160:309)。γ−H2A.Xリン酸化は、細胞内染色およびFACS分析によって評価される場合、Polα除去細胞において中程度に増強され、3N集団において優先的に発現された。このことは、S期を通り抜けている細胞内のDNA損傷を示唆する(図2Bおよび図2C)。対照的に、PolεおよびPolδ除去細胞は、γ−H2A.Xの蓄積を示さなかった(図2C)。従って、Polαの特異的除去は、Chk1 S345リン酸化および軽度のS期内欠陥を誘導した。
【0063】
図2Dは、Polα単独の除去が、PolαとPolεまたはPolαとPolδの同時除去より多くのChk1のリン酸化を誘導することを実証する。この驚くべき結果は、本発明において使用するための最も望ましいDNAポリメラーゼαインヒビターがPolαに非常に特異的であるはずであり、特に、上記インヒビターがPolεの阻害より優先的なPolαの阻害を示すはずであることを示唆する。広い範囲のDNAポリメラーゼインヒビター(例えば、アフィジコリン)は、本発明の方法および組成物において、DNAポリメラーゼα特異的薬剤としての使用に適していない。本発明の方法および組成物における使用に適したDNAポリメラーゼα特異的インヒビターは、Polεと比較してPolαの活性を、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍以上の比率で、優先的に阻害する。この比率は、PolεのIC50に対するPolαについての、問題の化合物のIC50(すなわち、半数阻害(half−maximal inhibition)を達成するために必要とされる濃度)の比率として決定される。上記IC50は、Oshigeら(2004)J.Bioorg.Med.Chem.12:2597;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1308:256;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1336:509に記載されるように、標準的なDNAポリメラーゼアッセイによって決定される。実施例8を参照のこと。
【0064】
分裂酵母における遺伝的研究は、PolαとS内チェックポイントとの間の関連を示唆した(Bhaumik & Wang(1998)Mol.Cell Biol.9:2107)。Xenopus抽出物中でも、Polαによって駆動されるDNA合成は、DNA損傷後にChk1の完全活性化に必要とされる(Byunら(2005)Genes & Dev.19:1040)。
【0065】
実施例4〜7に記載される結果は、Polαが、哺乳動物細胞において遺伝的に、生化学的にかつ機能的にChk1と相互作用することを初めて明らかにする。さらに、この複合体内のChk1活性の適切な制御は、主にATRによって、複製ストレス後のDNA損傷を抑制するために必要とされる。
【0066】
これらの観察は、選択的チェックポイントアクチベーター(すなわち、DNA Polαインヒビター)と選択的Chk1インヒビターとの組み合わせが相乗効果を生じることをさらに実証する。この予測される表現型は、複製分岐崩壊(replication fork collapse)、DNA損傷の蓄積およびアポトーシスの開始を含む。本発明は、PolαおよびChk1両方のインヒビター(例えば、治療剤)の使用を包含する、この二重の不活性化をもたらすための組成物および方法に関する。治療剤(例えば、薬剤)は、種々の疾患の処置において伝統的に使用されるが、Polαおよび/またはChk1の活性を阻害する任意の方法は、このような阻害が治療剤、薬物、物質いずれの物質の投与もなく、もたらされるとしても、本発明の方法において使用され得る。
【0067】
(Chk1依存性チェックポイント活性化におけるPolα、Polε、およびPolδの役割)
以前の研究は、Chk1が複製ストレスの間にDNA損傷を抑制し得ることを示した(Choら(2005)Cell Cycle 4:131)。Chk1が同様に、Polα除去後にDNA損傷を抑制するために必要とされ得るという仮定を試験するために、本発明者らは、Polα、Polε、もしくはPolδとChk1との同時除去後に、細胞におけるDNA損傷表現型を試験した。同様に、PolαおよびChk1の同時除去のみが、Polε/Chk1組み合わせおよびPolδ/Chk1組み合わせ、ならびにルシフェラーゼコントロールとは対照的に、RPA32リン酸化を引き起こした(図3)。同様に、FACSを使用したγ−H2A.Xリン酸化の定量的試験によって、Polα/Chk1同時除去後の細胞の強染色集団が明らかになった(図4A)。これら細胞は、約3N倍数性とともに蓄積し(PI染色によって評価される場合)、このことは、特異的S期内欠陥が、Polε/Chk1除去の後にも、Polδ/Chk1除去の後にも、コントロールsiRNA除去の後にも認められないことが示唆された(図4A)。注意すべきは、そして代謝拮抗物質を使用する以前の観察と一致して(Choら(2005)Cell Cycle 4:131)、Polα/Chk1の同時除去は、PolαもしくはChk1が単一で除去された細胞と比較して、有意に増強されたγ−H2A.Xリン酸化を生じ(図4A)、本発明の併用療法の相乗効果を示した。
【0068】
図4Bは、Chk1の低分子インヒビター(3−アミノ−6−{3−[({[4−(メチルオキシ)フェニル]メチル}アミノ)カルボニル]フェニル}−N−[(3S)−ピペリジン−3−イル]ピラジン−2−カルボキサミド)が、上記低分子Chk1インヒビターによる併用処置およびPolAのsiRNA除去が、実質的二本鎖DNA破壊を示す細胞の割合を、コントロールの1%未満から50%超まで増大させる点で、特異的siRNA二重鎖でのChk1の除去と同じ結果を生じることができることを実証する。
【0069】
従って、Polαの特異的除去(しかしPolεでもPolδでもない)はChk1 S345リン酸化を誘導し、このことは、Chk1依存性チェックポイント活性化を示唆する。同様に、PolαとChk1との同時除去は、DNA損傷マーカー(H2A.X S139およびRPA32 S33)の蓄積を増強した。これら効果は、PolεもしくはPolδが、Chk1により同時除去される場合に観察されなかった。このことは、応答プロフィールの特異性を示唆する。これらデータは、複製分岐点におけるPolα、Polε、およびPolδの異なる役割を示唆する。
【0070】
ATRは、DNA損傷もしくは複製ストレスに応じる、Chk1リン酸化の上流アクチベーターである(Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Zhao & Piwnica−Worms(2001)Mol.Cell.Biol.21:4129)。Chk1は、Ser 317および345でリン酸化され、そして複製分岐の引き留めに応じて、ATRによって活性化される(Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Hekmat−Nejadら(2000)Curr.Biol.10:1565.;Zhao & Piwnica−Worms(2001)Mol.Cell.Biol.21:4129)。従って、本発明者らは、Polα除去後のChk1、ATRとATMとの間の上位関係を試験した。
【0071】
ATRもしくはATMとPolαとの同時除去は、検出可能なChk1 S345リン酸化の蓄積を変化させなかった(すなわち、ホスホ−S345誘導は、Polαを単一で除去した細胞から調製された溶解物中で検出されたものに類似していた(図5)。このことは、ATRもしくはATMいずれかの非存在下で、Chk1の細胞性プールが活性化されることを示唆する。Polαの単一の除去は、ルシフェラーゼコントロールsiRNA、ATR siRNAもしくはATM siRNAについての0.2%、およびChk1 siRNAについての0.5%(図6)と比較して、トランスフェクトされた細胞のうちの4.8%においてγ−H2A.Xの蓄積をもたらした。しかし、Polα/Chk1、Polα/ATR、およびPolα/ATMの組み合わせsiRNAノックダウンは、それぞれ、21%、14.6%および7.3%のγ−H2A.X陽性画分を生じた(図6)。従って、Polα/ATRの組み合わせ除去は、いくらか低下した表現度を有するにも拘わらず、PolαとChk1との同時除去後に観察されたものと同様の表現型を生じた。Polα/ATMの組み合わせ除去は、Polα/ATR組み合わせに対して減少したγ−H2A.X表現型を生じた。γ−H2A.Xシグナルは、Polαの単一の除去後に認められたものと比較してわずかに上昇していた。
【0072】
全体的に、これら観察は、Chk1活性化(ATRによって主に駆動される)がPolαの除去後のDNA損傷の抑制に必須であることを示唆する。ATRもしくはATMいずれかの特異的除去は、Polαノックダウン後のChk1 S345の総細胞性蓄積に対してほとんど認識できない影響を有した(図5)のに対して、複製ストレスの間のDNA損傷の機能的抑制は、ATRおよびChk1を主に介して媒介されるようであるが、ATMからの寄与は、除外できない。
【0073】
(Chk1 S345PとPolαとの物理的相互作用)
Polαと、Chk1、ATRとの間の強い遺伝的相互作用および機能的相互作用は、PolαとS期内チェックポイント装置と、特異的にChk1との間の直接的な生化学的相互作用の可能性を高めた。Polαは、ヒドロキシ尿素で前もって処理して、複製ストレスを誘導したU20S細胞から免疫沈降した。SDS−PAGEおよびウェスタンブロット後に、Polα免疫複合体は、Chk1の容易に検出可能なレベルを含むことが分かった(図7)。PolαとChk1との間の会合は、ヒドロキシ尿素も、ATRも要しなかった。予測されるように、Chk1は、Chk1を除去した細胞から調製したPolα免疫沈降において検出できなかった。注意すべきは、ヒドロキシ尿素への曝露が、Polα免疫沈降物内で容易に検出可能なChk1 S345の蓄積をもたらしたが、ATRを除去した細胞においてはそうでなかった(図7)。
【0074】
補完的免疫沈降実験もまた行った。Chk1の免疫沈降、次にSDS−PAGEおよびウェスタンブロットは、Chk1免疫複合体内の内因性Polαの存在を実証した(図8)。繰り返すと、Chk1との相互作用は本質的であるようであったのに対して、上記Chk1免疫複合体内のホスホ−S345の蓄積は、HUもしくはGEMへの曝露によって誘導された。コントロール実験を、抗Chk1抗体に対してコグネイト免疫原ペプチド(配列番号8)を競合させて行って、上記免疫沈降の特異性を確認した(図8)。
【0075】
まとめると、これら免疫沈降の結果は、Chk1が増殖しつつある細胞においてPolαと会合し、そして上記チェックポイントエフェクターがそれらの潜在的標的のすぐ近くに存在することを示唆する、そうであるならば、この明らかに予め組み立てられた複合体は、上記複製チェックポイントの関与に対して迅速に応答するはずであることを予期し得る。Polα複合体におけるChk1 S345蓄積の過程によって、Chk1 S345応答が、試験される第1の時点(すなわち、0.5時間)で完了していることが明らかにされた(図9)。全体的に、これらデータは、Chk1がPolαと会合し、そしてATR依存性様式で、複製ストレス(ヒドロキシ尿素)後のこの状況において迅速にリン酸化され得ることを示唆する。これら観察は、Polαと、Chk1、ATRとの間の遺伝的相互作用を示唆する上記機能的データと一致している。
【0076】
全細胞抽出物の直接免疫ブロッティングは、Chk1およびATRがそれらそれぞれのsiRNAでのトランスフェクション後に除去されるのに対して、PolαレベルはChk1除去によっても、ATR除去によっても本質的に影響を受けないことを確認した(図10)。ルシフェラーゼ(コントロール)siRNAでトランスフェクトした細胞において、HUへの曝露は、これらの条件下での機能的S期内チェックポイントの存在と一致して、強いChk1 S345リン酸化および低レベルのRPA32リン酸化を誘発した。Chk1 S345のレベルはまた、上記ATR siRNAでトランスフェクトした細胞のHU処理によって上昇したが、RPA32は、Chk1 siRNAでトランスフェクトしたHU処理細胞に認められたものと同様に、高レベルでリン酸化された(図10)。従って、HUは、ATRの存在下でも非存在下でも、Chk1 S345リン酸化の類似のレベルを誘導するが、DNA損傷は、ATRが存在しない場合には増強される。全体的に、これら結果によって、HUがATRの存在下または非存在下でChk1 S345Pを誘導する(図10)が、Polαに結合したChk1がS345に対してリン酸化しない(図7)ことが明らかになる。HU誘導性DNA損傷は、ATRが存在する場合にのみ抑制され(図10)かつChk S345PはATRが存在する場合にのみPolαと免疫沈降可能な複合体を形成する(図7)ので、複製ストレス後のDNA損傷の適切な抑制が、Chk1 S345P−Polα複合体の形成に依存し、そしてこれら複合体がDNA損傷の抑制を担うことが考えられる。
【0077】
III.DNAポリメラーゼαインヒビター
DNAポリメラーゼαを阻害する任意の方法が、本発明の方法において使用され得、そしてDNAポリメラーゼαを阻害し得る任意の薬剤が、本発明の組成物において使用され得る。本発明のDNAポリメラーゼα特異的インヒビターは、例えば、PolAによってコードされる場合、他のDNAポリメラーゼとは対照的に、上記真核生物性DNAポリメラーゼαのアルファ(α)鎖の特異的インヒビターである。ヒトDNAポリメラーゼαに関する配列情報および他の関連データは、公のデータベース(例えば、GenBankのアクセッション番号NP_058633およびNM_016937、ならびにMendelian Inheritanc in Manのアクセッション番号312040、ならびにGeneID番号5422)において見いだされ得る。データベースエントリーは、NCBI Entrezウェブサイトで利用可能である。この情報は、大分子インヒビター(例えば、アンチセンス核酸、siRNAおよび抗体)の設計および生成において特に有用であり得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「特異的」とは、DNAポリメラーゼのサブタイプ(例えば、DNAポリメラーゼアルファ(α)、DNAポリメラーゼベータ(β)、DNAポリメラーゼイプシロン(ε)およびDNAポリメラーゼガンマ(γ))に関して選択的に結合することをいう。種々の実施形態において、上記DNAポリメラーゼα阻害は、DNAポリメラーゼεもしくはDNAポリメラーゼδのIC50の1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、12分の1、15分の1、20分の1、25分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1、150分の1、200分の1、300分の1、400分の1、500分の1、700分の1、1000分の1以下(すなわち、より有効)であるIC50で、DNAポリメラーゼαを阻害する特異的方法(または薬剤)を使用してもたらされる。他の実施形態において、上記DNAポリメラーゼα阻害は、DNAポリメラーゼεもしくはDNAポリメラーゼδのIC50の1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、12分の1、15分の1、20分の1、25分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1、150分の1、200分の1、300分の1、400分の1、500分の1、700分の1、1000分の1、またはそれ以下である(すなわち、より有効である)IC50で、DNAポリメラーゼαおよびわずか1種の他のDNAポリメラーゼを阻害する選択的方法(または薬剤)を使用してもたらされる。いくつかの、しかしすべてではないが実施形態において、上記DNAポリメラーゼインヒビターは、DNAポリメラーゼε以外のDNAポリメラーゼαを優先的に阻害する。
【0079】
なお別の実施形態において、他のDNAポリメラーゼと比較した場合のDNAポリメラーゼαの特異性は、IC50以外のアフィニティー測定値(例えば、ミカエリス定数(Km)、または会合(Ka)もしくは解離(Kd)平衡結合定数)の比率によって測定される。各場合において、アフィニティーの比率は、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍、またはそれ以上の範囲に及び得る。なおさらなる実施形態において、会合(ka)速度定数および解離(kd)速度定数の比率が使用され得る。一実施形態において、上記速度定数または平衡結合定数は、表面プラズモン共鳴分光法を使用して(例えば、Biacore(登録商標)機器(Biacore(登録商標) Inc.,Piscataway,New Jersey)を使用して)決定される。ここでDNAポリメラーゼα、または目的のインヒビターは、センサーチップ(例えば、センサーチップCM−5(Biacore(登録商標) Inc.))の表面に結合される。次いで、このセンサーチップは、標準的手順を用いて速度定数もしくは結合定数を決定するために、他の結合パートナーに曝される。例えば、Thurmondら(2001)Eur.J.Biochem.268:5747を参照のこと。
【0080】
DNAポリメラーゼα阻害活性および特異性を決定するための例示的方法が、本明細書に提供されており、そして他のものは、例えば、Togashiら(1998)Biochem.Pharmacol.56:583;Mizushinaら(2001)Biol.Pharm.Bull.24:982;Oshigeら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:2597;Kamisukiら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:5355;Murakami−Nakai(2004)Biochimica et Biophysica Acta 1674:193;Kamisukiら(2002)Biochem.Pharmacol.63:421;Mizushinaら(2000)J.Biol.Chem.275:33957;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1308:256;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1336:509において見いだされ得る。DNAポリメラーゼαに対する薬剤の特異性を決定するための例示的方法は、実施例8において提供されるが、当業者に公知の他の方法が使用され得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、DNAポリメラーゼαの特異的阻害は、低分子を使用してもたらされる。DNAポリメラーゼαの活性を優先的に阻害する例示的化合物としては、4−ヒドロキシ−17−メチリンシステロール(Togashiら(1998)Biochem.Pharmacol.56:583)、糖脂質であるガラクトシルジアシルグリセロール(GDG)(Mizushinaら(2001)Biol.Pharm.Bull.24:982)、パクリタキセル誘導体であるセファロマンニン(Oshigeら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:2597)、デヒドロアルテヌシン(Kamisukiら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:5355;Murakami−Nakai(2004)Biochimica et Biophysica Acta 1674:193;Kamisukiら(2002)Biochem.Pharmacol.63:421;Mizushinaら(2000)J.Biol.Chem.275:33957)、6−(p−n−ブチルアニリノ)ウラシル(CAS 21332−96−7)およびN2−(p−ブチルフェニル)グアニン(CAS 83173−14−2)(Rochowskaら(1982)Biochimica et Biophysica Acta,Gene Structure and Development 699:67)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
DNAポリメラーゼαおよびDNAポリメラーゼβの活性を優先的に阻害する例示的化合物としては、スルホ脂質化合物(例えば、スルホキノボシルジアシルグリセロール)(Mizushinaら(1998)Biochem.Pharmacol.55:537;Ohtaら(1999)Biol.Pharm.Bull.22:111)およびパクリタキセル代謝拮抗物質タキシニン(taxinine)(Oshigeら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:2597)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
DNAポリメラーゼαおよびDNAポリメラーゼεの活性を優先的に阻害する例示的化合物としては、非環式ホスホノメトキシアルキルヌクレオチドアナログ(例えば、9−(2−ホスホノメトキシエチル)グアニンジホスフェートが挙げられるが、これに限定されない。Kramataら(1996)Mol.Pharmacol.49:1005。
【0084】
DNAポリメラーゼα、DNAポリメラーゼβおよびDNAポリメラーゼλの活性を優先的に阻害する例示的化合物としては、レスベラトール(3,4,5−トリヒドロキシスチルベン)が挙げられるが、これに限定されない。Locatelliら(2005)Biochem.J.389:259。レスベラトールは、Chk1を活性化することが示された。Tyagiら(2005)Carcinogenesis 26:1978。
【0085】
他の、あまり特異的ではないDNAポリメラーゼのインヒビターとしては、トリテルペンジカルボン酸であるmispyric acidが挙げられる。Mizushinaら(2005)Biosci.Biotechnol.Biochem.69:1534。
【0086】
DNAポリメラーゼαを特異的に阻害すると以前は考えられていた特定の化合物(例えば、アフィジコリン)(例えば、Haraguchiら(1983)Nucl.Acids Res.11:1197を参照のこと)は、もともと考えられていたよりも特異的ではないことがその後示された。例えば、Kamisukiら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:5355;Oshigeら(2004)J.Bioorg.Med.Chem.12:2597;Popandaら(1995)J.Mol.Med.73:259を参照のこと。このような化合物は、本発明の方法および組成物においてDNAポリメラーゼα特異的インヒビターとして使用され得ないが、それら化合物は、本発明のDNAポリメラーゼα特異的インヒビターおよびChk1インヒビターと組み合わせて、さらなる薬剤(例えば、第3の薬剤)として使用され得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼαインヒビターは、約5000nM、2000nM、1000nM、500nM、250nM、100nM、50nM、25nM、10nM、5nM、2.5nM、1nM、0.5nMまたは0.1nM未満のIC50値を示す。
【0088】
DNAポリメラーゼαを選択的に阻害するために使用され得るさらなる化合物としては、siRNA(例えば、配列番号3)(例えば、Stevenson(2004)New.England.J.Med.351:1772を参照のこと)、アンチセンスRNA、および抗体(イントラボディー(例えば、Alvarezら(2000)Clinical Cancer Research 6:3081)を含む)が挙げられる。DNAポリメラーゼαに対する抗体は、Tanakaら(1982)J.Biol.Chem.257:8386およびMillerら(1985)J.Biol.Chem.260:134において開示される。
【0089】
いくつかの実施形態において、DNAに組み込まれ得ない選択的DNAポリメラーゼαインヒビターが使用される。このような組み込み不能なインヒビターは、DNA合成の長期の停止を引き起こし得、チェックポイントの活性化を増強し、そしてDNAポリメラーゼインヒビターと上記チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)インヒビターとの間のより大きな相乗効果を作り出し得る。この増大した相乗効果は、異常に増殖しつつある細胞において優先的に、有糸分裂の分かれ目の誘導に対して増強した特異性を生じ得、従って、他の治療的アプローチと比較した場合に毒性を減少させ得る。
【0090】
IV.Chk1インヒビター
Chk1を阻害する任意の手段は、本発明の方法において使用され得、そしてChk1を阻害し得る任意の薬剤が、本発明の組成物において使用され得る。ヒトChk1に関する配列情報および他の関連データは、公のデータベース(例えば、GenBankのアクセッション番号NM_001274、AAH04202およびNP_001265、ならびにMendelian Inheritance in Manのアクセッション番号603078、ならびにGeneID番号1111)において見いだされ得る。すべてのこれらデータベースエントリーは、NCBI Entrezウェブサイトで利用可能である。この情報は、大分子インヒビター(例えば、アンチセンス核酸、siRNAおよび抗体)の設計および生成において特に有用であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、Chk1を阻害するための方法(またはChk1を阻害するための薬剤)は、他のプロテインキナーゼと比較してChk1を特異的に阻害する。種々の実施形態において、上記Chk1は、IC50で測定した場合に、他のプロテインキナーゼより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍以上で阻害される。いくつかの(しかしすべてではない)実施形態において、上記他のプロテインキナーゼはCDK2である。いくつかの実施形態において、CDK2のIC50に対するChk1についての薬剤のIC50の比率は、式IC50CDK2/IC50Chk1によって表される。いくつかの実施形態において、上記IC50比率は、5倍、10倍または50倍である。例えば、米国特許出願公開第2007/0082900号明細書を参照のこと。
【0092】
なおさらなる実施形態において、他のプロテインキナーゼと比較した場合に、Chk1に対する特異性は、IC50以外のアフィニティー測定値(例えば、ミカエリス定数(Km)、または会合(Ka)もしくは解離(Kd)平衡結合定数)の比率によって測定される。各場合において、アフィニティーの比率は、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍、またはそれ以上の範囲に及び得る。なおさらなる実施形態において、会合(ka)速度定数および解離(kd)速度定数の比率が使用され得る。Chk1キナーゼ阻害活性および特異性を決定するための例示的方法は、本明細書に記載されており(実施例2および3)、そして他のものは、例えば、Lyneら(2004)J.Med.Chem.47:1962において見いだされ得る。Chk1インヒビターの速度定数および平衡結合定数を決定するための例示的方法は、DNAポリメラーゼαインヒビターに関して上記で議論されるように、表面プラズモン共鳴分光法を含む。
【0093】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としては、例えば、米国特許第6,919,341号明細書および米国特許出願公開第2005/0009832号明細書に開示されるようなイミダゾピラジンが挙げられる。他の化合物としては、国際公開第2005/047290号パンフレット;米国特許出願公開第2005/095616号明細書;国際公開第2005/039393号パンフレット;国際公開第2005/019220号パンフレット;国際公開第2004/072081号パンフレット;国際公開第2005/014599号パンフレット;国際公開第2005/009354号パンフレット;国際公開第2005/005429号パンフレット;国際公開第2005/085252号パンフレット;米国特許出願公開第2005/009832号明細書;米国特許出願公開第2004/220189号明細書;国際公開第2004/074289号パンフレット;国際公開第2004/026877号パンフレット;国際公開第2004/026310号パンフレット;国際公開第2004/022562号パンフレット;国際公開第2003/089434号パンフレット;国際公開第2003/084959号パンフレット;国際公開第2003/051346号パンフレット;米国特許出願公開第2003/022898号明細書;国際公開第2002/060492号パンフレット;国際公開第2002/060386号パンフレット;国際公開第2002/028860号パンフレット;JP(1986)61−057587明細書;米国特許出願公開第2006/0106023号明細書;Burkeら(2003)J.Biological Chem.278:1450;およびBondavalliら(2002)J.Med.Chem.45:4875において開示されるものが挙げられる。
【0094】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、米国特許出願公開第2007/0082900号明細書;同第2007/0083044号明細書;同第2007/0082901号明細書;同第2007/0082902号明細書;同第2006/0128725号明細書;同第2006/0041131号明細書および同第2006/0094706号明細書として公開された共有に係る米国特許出願;ならびに米国特許第7,196,092号明細書において開示されるピラゾロピリミジンが挙げられる。
【0095】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、米国特許出願公開第2007/0105864号明細書;および同第2007/0117804号明細書として公開された共有に係る米国特許出願;ならびに米国特許出願第11/758,243号明細書において開示されるイミダゾピラジンが挙げられる。
【0096】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、UCN−01(Mizunoら(1995)FEBS Lett.359:259)および構造的に関連した修飾インドールカルバゾール化合物Go6976(Kohnら(2003)Cancer Res.63:31)、SB−218078およびスタウロスポリン(Jacksonら(2000)Cancer Res.60:566;Zhaoら(2002)J.Biol.Chem.277:46609)、ICP−1(Eastmanら(2002)Mol.Cancer Ther.1:1067)およびCEP−3891(Syljuasenら(2004)Cancer Res.64:9035;Sorensenら(2003)Cancer Cell 3:247)が挙げられる。Tao & Lin(2006)Anti−Cancer Agents Med.Chem.(2006)6:377を参照のこと。
【0097】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、イソグラヌラチミド(Robergeら(1998)Cancer Res.58:5701);デブロモヒメニアルジシン(DBH)(Curmanら(2001)J.Biol.Chem.276:17914);ピリドピリミジン誘導体PD0166285(Wangら(2001)Cancer Res.61:8211;Liら(2002)Radial Res.157:322);シトネミン(米国特許出願公開第2002/0022589号明細書;Stevensonら(2002)J.Pharmacol.Exper.Ther.303:858);米国特許出願公開第2004/034038号明細書ならびに国際公開2002/070494号パンフレット、国際公開第2003/101444号パンフレットおよび国際公開第2005/072733号パンフレットにおいて開示されるような種々のジアリール尿素;A−690002およびA−641397(Chenら(Dec.15,2006)Int.J.Cancer 119:2784−2794(2006年10月3日の印刷の前にインターネット上で公開);ベンゾイミダゾールキノロン(例えば、CHR 124およびCHR 600(Kesickiら(2004)228th ACS Nat’l Mtg.:MEDI−225;国際公開第2004/018419号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0256157号明細書));三環式ジアゾピノインドロン(例えば、PF−00394691(国際公開第2004/063198号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0075499号明細書));Astra−Zeneca化合物ライブラリーからの32個の種々の化合物(例えば、Lyneら(2004)J.Med.Chem.47:1962)の図5において示されるもの);フラノピリミジンおよびピロロピリミジン(Foloppeら(2005)J.Med.Chem.48:4332);インドリノン(Linら(2006)Bioorg.Med.Chem.Lett.16:421);置換されたピラジン(国際公開第2003/093297号パンフレット);化合物XL844(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00234481);ピリミジニルインダゾリルアミン(国際公開第2005/103036号パンフレット);ピラゾロピリミジン(国際公開第2004/087707号パンフレット);アミノピラゾール(国際公開第2005/009435号パンフレットおよび国際公開第2002/0006952号パンフレット);2−ウレイドチオフェン(国際公開第2003/029241号パンフレット;国際公開第2005/016909号パンフレット);ピリミジン(米国特許出願公開第2004/0186118号明細書);ピロロピリミジン(国際公開第2003/0287243号パンフレット);3−ウレイドチオフェン(国際公開第2003/028731号パンフレット);インデノピラゾール(国際公開第2004/080973号パンフレット);トリアゾロン(国際公開第2004/081008号パンフレット);ジベンゾジアゼピノン(米国特許出願公開第2004/254159号明細書);大環式尿素(国際公開第2005/047294号パンフレット);ピラゾロキノリン(国際公開第2005/028474号パンフレット);ペプチドおよびペプチド模倣物(例えば、CBP501(国際公開第2001/021771号パンフレット;国際公開第2003/059942号パンフレット)が挙げられる。Tao & Lin(2006)Anti−Cancer Agents Med.Chem.(2006)6:377を参照のこと。
【0098】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、国際公開第2005/047294号パンフレット;米国特許第6,797,825号明細書、同第6,831,175号明細書、および同第7,056,925号明細書;国際公開第2004/076424号パンフレット;国際公開第2004/080973号パンフレット;国際公開第2004/014876号パンフレット;ならびに国際公開第2003/051838号パンフレットにおいて開示されるものが挙げられる。
【0099】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、国際公開第2004/108136号パンフレットおよび国際公開第2004/087707号パンフレットにおいて開示されるものが挙げられる。
【0100】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、国際公開第2006/048745号パンフレット;米国特許出願公開第2005/250836号明細書;国際公開第2005/009997号パンフレット;国際公開第2005/009435号パンフレット;国際公開第2004/063198号パンフレット;国際公開第2003/091255号パンフレット;および国際公開第2003/037886号パンフレットにおいて開示されるものが挙げられる。
【0101】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、米国特許第7,064,215号明細書;米国特許出願公開第2005/261307号明細書、同第2005/256157号明細書;国際公開第2005/047244号パンフレット;国際公開第2004/018419号パンフレット;および国際公開第2003/004488号パンフレットに開示されるものが挙げられる。
【0102】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、米国特許第7,067,506号明細書;米国特許出願公開第2003/0069284号明細書;および国際公開第2005/027907号パンフレットにおいて開示されるものが挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明のChk1インヒビターは、約5000nM、2000nM、1000nM、500nM、250nM、100nM、50nM、25nM、10nM、5nM、2.5nM、1nM、0.5nMもしくは0.1nM未満のIC50値を示す。
【0104】
Chk1を選択的に阻害するために使用され得る核酸ベースの化合物としては、米国特許第6,211,164号明細書、同第6,677,445号明細書および同第6,846,921号;米国特許出願公開第2004/0097446号明細書および同第2005/01533925号明細書;ならびに国際公開2003/070888号パンフレットおよび国際公開第2001/057206号パンフレットにおいて開示されるような、siRNA(例えば、配列番号2)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびリボザイムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
抗体(例えば、イントラボディー(例えば、Alvarezら(2000)Clinical Cancer Research 6:3081))はまた、Chk1を選択的に阻害するために使用され得る。
【0106】
V.siRNA
siRNAを生成および使用するための方法は、例えば、米国特許第6,506,559号明細書(国際公開第99/32619号パンフレット);同第6,673,611号明細書(国際公開第99/054459号パンフレット);同第7,078,196号明細書(国際公開第01/75164号パンフレット);同第7,071,311号明細書および国際公開03/70914号パンフレット;国際公開第03/70918号パンフレット;国際公開第03/70966号パンフレット;国際公開第03/74654号パンフレット;国際公開第04/14312号パンフレット;国際公開第04/13280号パンフレット;国際公開第04/13355号パンフレット;国際公開第04/58940号パンフレット;国際公開第04/93788号パンフレット;国際公開第05/19453号パンフレット;国際公開第05/44981号パンフレット;国際公開第03/78097号パンフレット(米国特許は、関連するPCT公開とともに挙げられている)において開示される。遺伝子サイレンシングおよび治療的処置においてsiRNAを使用するための例示的方法は、国際公開国際公開第02/096927号パンフレット(VEGFおよびVEGFレセプター);国際公開第03/70742号パンフレット(テロメラーゼ);国際公開第03/70886号パンフレット(プロテインチロシンホスファターゼタイプIVA(Prl3));国際公開第03/70888号パンフレット(Chk1);国際公開第03/70895号パンフレットおよび国際公開第05/03350号パンフレット(アルツハイマー病);国際公開第03/70983号パンフレット(プロテインキナーゼCα);国際公開第03/72590号パンフレット(Mapキナーゼ);国際公開第03/72705号パンフレット(サイクリンD);国際公開第05/45034号パンフレット(パーキンソン病)において開示される。siRNAの治療的使用に関する例示的実験は、Zenderら(2003)Proc.Natl Acad.Sci.(USA)100:7797;Paddisonら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)99:1443;およびSah(2006)Life Sci.79:1773において開示された。siRNA分子はまた、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00257647)および加齢性黄斑変性(AMD)(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00363714)の臨床試験において使用される。
【0107】
用語「siRNA」は、RNA干渉経路(Fireら(1998)Nature 391:806)を介して遺伝子サイレンシングを誘導するために使用される分子をいうために使用されるが、このようなsiRNA分子は、厳密にポリリボヌクレオチドである必要はなく、代わりに、治療剤としてその特性を改善するために、核酸に対して1種以上の改変を含み得る。このような薬剤は、ときおり、短い干渉核酸の代わりに「siNA」といわれる。このような変化は、上記分子を「リボ」ヌクレオチドの定義の外に、形式的に変え得るが、にもかかわらず、このような分子は、本明細書で「siRNA」分子としていわれる。例えば、いくつかのsiRNA二重鎖は、各鎖上の3’側で突出するTT(デオキシリボヌクレオチド)を有する17〜23塩基対(例えば、19塩基対)ポリヌクレオチド二重鎖を形成するために対になる2つの19〜25nt(例えば、21nt)の鎖を含む。RNA干渉経路を介して遺伝子サイレンシングを誘導するために使用される核酸の他の改変体としては、例えば、米国特許出願公開第2006/0115453号明細書に開示されるように、ショートヘアピンRNA(「shRNA」)が挙げられる。
【0108】
いくつかの遺伝子に対する例示的siRNA分子のセンス鎖は、配列番号1〜7において提供される(例えば、DNA Polαに対するsiRNAのセンス鎖は、配列番号3において提供される)が、他の配列は、これら遺伝子をサイレントにすることにおいて使用するためのsiRNA分子を生成するために使用され得る。上記siRNA二重鎖の反対の鎖の配列は、両方の鎖が2ヌクレオチドの3’突出を有するという但し書きつきで、単に上記センス鎖の逆相補鎖である。すなわち、「n」個のヌクレオチド長のセンス鎖については、その反対の鎖は、上記3’末端において2個のさらなるヌクレオチドが付加されて突出を提供する、残基1〜(n−2)個の逆相補鎖である。siRNAセンス鎖は2個のU残基を上記3’末端に含む場合、その反対の鎖はまた、その3’末端において2個のU残基を含む。siRNAセンス鎖が2個のdT残基をその3’末端に含む場合、その反対の鎖はまた、その3’末端において2個のdT残基を含む。
【0109】
VI.抗体の生成
モノクローナル抗体を生成するための任意の適切な方法が使用され得る。例えば、レシピエトは、上記DNAポリメラーゼαもしくはChk1ポリペプチドまたはその抗原性フラグメントで免疫され得る。任意の適切な免疫方法が、使用され得る。このような方法は、アジュバント、他の免疫刺激物質、反復される追加免疫、および1種以上の免疫経路の使用を包含し得る。誘発する抗原は、単一エピトープ、複数エピトープ、またはタンパク質全体単独で、あるいは当該分野で公知の1種以上の免疫原性増強薬剤との組み合わせであり得る。
【0110】
任意の適切な方法が、DNAポリメラーゼαまたはChk1を阻害するために、望ましい生物学的特性を有する抗体を誘発するために使用され得る。種々の哺乳動物宿主(例えば、マウス、齧歯類、霊長類、ヒトなど)からモノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。このようなモノクローナル抗体を調製するための技術は、例えば、Stitesら(編)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(第4版)Lange Medical Publications,Los Altos,CA、およびそこに引用される参考文献;Harlow and Lane(1988)ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL CSH Press;Goding(1986)MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE(第2版)Academic Press,New York,NYにおいて見いだされ得る。従って、モノクローナル抗体は、当業者が精通している種々の技術によって得られ得る。代表的には、所望の抗原で免疫した動物由来の脾細胞は、通常は、骨髄腫細胞との融合によって不死化される。Kohler and Milstein(1976)Eur.J.Immunol.6:511−519を参照のこと。不死化のための代替法としては、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子、またはレトロウイルスでの形質転換、あるいは当該分野で公知の他の方法が挙げられる。例えば、Doyleら(編.1994および定期的補遺)CELL AND TISSUE CULTURE:LABORATORY PROCEDURES,John Wiley and Sons,New York,NYを参照のこと。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、所望の特異性および上記抗原に対するアフィニティーの抗体の生成についてスクリーニングされ、そしてこのような細胞によって生成されるモノクローナル抗体の収量は、種々の技術(脊椎動物宿主の腹腔への注射を含む)によって増強され得る。あるいは、例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281によって概説される一般的プロトコルに従って、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその結合フラグメントをコードするDNA配列を単離し得る。
【0111】
他の適切な技術は、ファージまたは類似のベクターにおける抗体のライブラリーの選択を包含する。例えば、Huseら(1989)Science 246:1275;およびWardら(1989)Nature 341:544を参照のこと。本発明のポリペプチドおよび抗体は、改変ありまたはなしで使用され得る(キメラ抗体またはヒト化抗体を含む)。また、組換え免疫グロブリンが生成され得るか(Cabilly 米国特許第4,816,567号明細書;およびQueenら(1989)Proc.Nat’l Acad.Sci USA 86:10029−10033を参照のこと);またはトランスジェニックマウスにおいて作製され得る(Mendezら(1997)Nature Genetics 15:146−156を参照のこと;Abgenix技術およびMedarex(登録商標)技術もまた参照のこと)。
【0112】
キメラ抗体もまた企図される。本明細書において示されるように、代表的なキメラ抗体は、特定の種から得られるかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において対応する配列と同一であるかまたは相同である重鎖および/または軽鎖の一部分を含む一方で、上記鎖の残りは、それらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて、別の種から得られるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにこのような抗体のフラグメントにおける対応する配列と同一もしくは相同である(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci USA 81:6851−6855)。
【0113】
二重特異的抗体(Bispecific antibody)はまた、本発明の方法および組成物において有用である。本明細書で使用される場合、用語「二重特異的抗体」とは、少なくとも2つの異なる抗原性エピトープ(例えば、DNAポリメラーゼαおよびChk1)に対する結合特異性を有する抗体(代表的には、モノクローナル抗体)をいう。一実施形態において、上記エピトープは、同じ抗原に由来する。別の実施形態において、上記エピトープは、2つの異なる抗原に由来する。二重特異的抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、二重特異的抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現を使用して、組換え生成され得る。例えば、Milsteinら(1983)Nature 305:537を参照のこと。あるいは、二重特異的抗体は、化学的連結を使用して調製され得る。例えば、Brennanら(1985)Science 229:81を参照のこと。二重特異的抗体は、二重特異的抗体フラグメントを含む。例えば、Hollingerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.90:6444;Gruberら(1994)J.Immunol.152:5368を参照のこと。
【0114】
VII.薬学的組成物および医薬
本発明の方法において使用するための薬学的組成物または滅菌組成物(または医薬)を調製するために、上記薬剤は、薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤と混合される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照のこと。DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびプロテインキナーゼ(例えば、Chk1キナーゼ)のインヒビターは、別個の薬学的組成物において別個の薬剤として投与され得るか、またはそれらは、単一の薬学的組成物において混合物として投与され得る。別個の薬剤として投与される場合、上記薬剤は、いずれの順でもまたは順番に投与され得る。例えば、DNAポリメラーゼαインヒビターは、Chk1のインヒビターの投与の前、投与と同時または投与の後に投与され得る。2つの薬剤の投与は、上記処置レジメンのある部分については重複するかもしれないが、上記処置レジメンの他の部分については重複しないかもしれない。一実施形態において、DNAポリメラーゼα特異的インヒビターは、Chk1インヒビターの投与の前に投与され、次いで、その投与と同時に投与される。
【0115】
治療剤またはその組み合わせの処方は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液もしくは懸濁液の形態において、生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、もしくは安定剤と混合することによって調製され得る(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw−Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY)を参照のこと)。
【0116】
本発明によって記載される化合物から薬学的組成物を調製するために、不活性の薬学的に受容可能なキャリアは、固体または液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物としては、散剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤および坐剤が挙げられる。上記散剤および錠剤は、約5〜約95%の活性成分から構成され得る。適切な固体キャリアは、当該分野で公知である(例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖もしくはラクトース)。錠剤、散剤、カシェ剤およびカプセル剤は、経口投与に適した固体投与形態として使用され得る。薬学的に受容可能なキャリアおよび種々の組成物の製造方法の例は、A.Gennaro(編),Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(1990) Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvaniaにおいて見いだされ得る。
【0117】
液体形態調製物としては、液剤、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。例としては、非経口注射のための水もしくは水−プロピレングリコール溶液、または経口液剤のための甘味剤および乳白剤の追加、懸濁剤および乳化剤が挙げられる。液体形態調製物はまた、鼻内投与のための液剤を含み得る。
【0118】
吸入に適したエアロゾル調製物は、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、不活性の圧縮ガス(例えば窒素))との組み合わせで存在し得る、液剤および粉末形態の固体を含み得る。
【0119】
経口投与もしくは非経口投与のいずれかのための液体形態調製物に使用直前に変換することが意図される固体形態調製物もまた含まれる。このような液体形態は、液剤、懸濁液およびエマルジョンを含む。
【0120】
本発明の化合物はまた、経皮的に送達可能であり得る。経皮的組成物は、クリーム剤、ローション剤、エアロゾルおよび/またはエマルジョンの形態をとり得、そしてこの目的で、当該分野で従来からあるように、マトリックスの経皮的パッチもしくはレザバタイプに含められ得る。
【0121】
好ましくは、上記薬学的調製物は、単位投与形態であり得る。このような形態において、上記調製物は、上記活性成分の適切な量(例えば、所望の目的を達成するに有効な量)を含む適切な大きさの単位用量に細分される。
【0122】
調製物の単位用量中の活性化合物の量は、特定の適用および問題の特定の活性化合物の特性(例えば、アフィニティー、毒性もしくは薬物動態プロフィール)に従って、約1mg〜約100mg、好ましくは、約1mg〜約50mg、より好ましくは、約1mg〜約25mgにまで変動または調節され得る。
【0123】
使用される実際の用量は、患者の要件および処置される状態の重篤度に依存して変動し得る。特定の状況のための適切な投与レジメンの決定は、当該分野の技術範囲内である。便宜上、合計一日用量は、必要に応じて、分割され得かつその日の間に少しずつ投与され得る。
【0124】
本発明の化合物および/またはその薬学的に受容可能な塩の投与の量および頻度は、患者の年齢、状態および大きさ、ならびに処置される症状の重篤度のような要因を考慮する主治医の判断に従って調節される。代表的な推奨される経口投与のための一日投与レジメンは、2〜4つの分割用量において、約1mg/日〜約500mg/日、好ましくは、1mg/日〜200mg/日の範囲に及び得る。
【0125】
本発明に従うキットは、DNAポリメラーゼαまたはチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)いずれか一方の少なくとも1つのインヒビター、または両方のインヒビターの組み合わせ、または上記薬剤の薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステルもしくはプロドラッグの治療上有効な量、および薬学的に受容可能なキャリア、ビヒクルもしくは希釈剤を含み得るキットを使用し得る。上記キットは、必要に応じて、少なくとも1種のさらなる抗癌剤を含み得、ここで上記薬剤の量は、所望の治療的効果を生じる。
【0126】
本発明の治療的組成物の毒性および治療的有効性は、細胞培養物もしくは実験動物において標準的な薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するために決定され得る。毒性効果と治療的効果との間の用量比は、治療指数であり、それは、LD50とED50との間の比率として表され得る。高い治療指数を示す治療的組み合わせが好ましい。これら細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための用量範囲を処方するにあたって使用され得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんど毒性がないかまたは全く毒性がないED50を含む循環濃度範囲内にある。上記投与量は、使用される投与形態および投与経路に依存してこの範囲内で変動し得る。
【0127】
本発明の治療剤の投与様式は、特に重要ではない。適切な投与経路としては、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、または腸管投与;非経口送達(筋肉内注射、皮下注射、髄内注射、ならびに鞘内注射、直接的心室内(intraventricular)注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射、または眼内注射が挙げられる)が挙げられ得る。
【0128】
治療剤のための投与レジメンの選択は、いくつかの要因に依存し、これら要因としては、上記薬剤の血清ターンオーバー速度もしくは組織ターンオーバー速度、症状のレベル、その実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞の接近しやすさが挙げられる。好ましくは、投与レジメンは、副作用の許容可能なレベルと一致して、上記患者に送達される治療剤の量を最大化する。従って、送達される上記薬剤の量は、特定の薬剤および処置される状態の重篤度に一部依存する。抗体、サイトカインおよび低分子の適切な用量を選択するにあたってのガイダンスは、入手可能である(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(編)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348:601−608;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341:1966−1973;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783−792;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342:613−619;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348:24−32;Lipskyら(2000)New Engl.J.Med.343:1594−1602を参照のこと)。
【0129】
適切な用量の決定は、例えば、処置に影響を及ぼすために、または処置に影響を及ぼすと推定される当該分野で公知または推測されるパラメーターまたは因子を使用して、医師によってなされる。一般に、上記用量は、至適用量よりいくらか少ない量で始められ、そしてそれは、所望のもしくは最適な効果が任意のネガティブな副作用に対して成し遂げられるまで、その後少量ずつ増大される。重要な診断尺度としては、例えば、腫瘍組織の増殖速度の低下、または治療的有効性と関連する生体マーカーの変化の徴候が挙げられる。
【0130】
さらなる治療剤(例えば、サイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、または放射線)による同時投与もしくは処置のための方法は、当該分野で周知である(例えば、Hardmanら(編)(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版,McGraw−Hill,New York,NY;Poole and Peterson(編)(2001)Pharmacotherapeutics for Advanced Practice:A Practical Approach,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PA;Chabner and Longo(編)(2001)Cancer Chemotherapy and Biotherapy,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PAを参照のこと)。本発明の薬学的組成物はまた、他の免疫抑制剤または免疫調節剤を含み得る。任意の適した免疫抑制剤が使用され得る。これら免疫抑制剤としては、抗炎症剤、コルチコステロイド、シクロスポリン、タクロリムス(すなわち、FK−506)、シロリムス、インターフェロン、可溶性サイトカインレセプター(例えば、sTNRFおよびsIL−1R)、サイトカイン活性を中和する薬剤(例えば、インフリキシマブ、エタナーセプト)、ミコフェノレートモフェチル、15−デオキシスペルグアリン、サリドマイド、グラチラマー、アザチオプリン、レフルノミド、シクロホスファミド、メトトレキセートなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記薬学的組成物はまた、光線療法および放射線療法のような他の治療的物理療法手段とともに使用され得る。
【0131】
VIII.治療的用途
本明細書において開示される方法および組成物は、増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、神経学的/神経変性障害、関節炎、炎症、抗増殖性疾患(例えば、眼の網膜症)、ニューロン疾患、脱毛症、心血管疾患および敗血症の治療において有用であり得る。これら疾患および障害の多くは、米国特許第6,413,974号明細書に列挙されている。
【0132】
より具体的には、本発明の方法および組成物は、種々の癌(以下が挙げられる(が、これらに限定されない):癌腫(膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺癌、非小細胞肺癌を含む)、頭頸部、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺、前立腺、および皮膚(扁平上皮癌を含む)の癌腫が挙げられる);リンパ系列の造血性腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞白血病、外套細胞リンパ腫、骨髄腫、およびバーキットリンパ腫を含む);骨髄系列の造血性腫瘍(急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群および前骨髄球性白血病を含む);間葉起源の腫瘍(線維肉腫および横紋筋肉腫を含む);中枢神経系および末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫を含む);ならびに他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、濾胞性甲状腺癌およびカポジ肉腫を含む)の処置において有用であり得る。
【0133】
本発明の方法はまた、異常な細胞増殖を特徴とする任意の疾患プロセス(例えば、良性前立腺肥大、家族性大腸腺腫症、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、糸球体腎炎、血管形成術もしくは脈管手術後の再狭窄、肥厚性瘢痕形成、炎症性腸疾患、移植拒絶反応(transplantation rejection)、エンドトキシンショック、ウイルス性疾患および真菌感染)の処置において有用であり得る。
【0134】
本発明の方法は、アポトーシスを誘導または阻害し得る。上記アポトーシス応答は、種々のヒト疾患において異所性である。本発明の方法および組成物は、癌(本明細書中上記で言及されたタイプが挙げられるが、それらに限定されない)、ウイルス感染(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタインバーウイルス、シンドビス・ウイルス、およびアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない)、HIV感染個体におけるAIDS発症の予防、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス(systemic lupus)、紅斑性狼瘡、自己免疫媒介性糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、および自己免疫糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない)、神経変性障害(アルツハイマー病、AIDS関連痴呆、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄性筋萎縮症および小脳変性症が挙げられるが、これらに限定されない)、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、心筋梗塞と関連する虚血性傷害、脳卒中および再灌流傷害、不整脈、アテローム性硬化症、毒素誘導性もしくはアルコール関連肝疾患、血液疾患(慢性貧血および再生不良性貧血が挙げられるが、これらに限定されない)、筋骨格系の変性疾患(骨粗鬆症および関節炎が挙げられるが、これらに限定されない)、アスピリン感受性副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎疾患および癌疼痛の処置において有用であり得る。
【0135】
本発明の方法および組成物はまた、癌の化学的予防において有用であり得る。化学的予防は、変異誘発性事象の開始をブロックすること、もしくは障害を既に受けた前癌細胞の進行をブロックすること、または腫瘍再発を阻害することのいずれかによって、侵襲性癌の発症を阻害することとして定義される。
【0136】
本発明の方法および組成物はまた、腫瘍脈管形成および転移を阻害することにおいて有用であり得る。
【0137】
本発明はまた、増殖性障害の処置のための医薬の製造における、DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターの使用に関する。
【0138】
(投与)
好ましい投与量は、約0.001〜500mg/kg体重/日のDNAポリメラーゼαのインヒビターもしくはチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビター、または上記インヒビターの各々の0.001〜500mg/kg体重/日である。特に好ましい投与量は、これらインヒビターのうちの一方または両方が約0.01〜25mg/kg体重/日である。上記DNAポリメラーゼαのインヒビターおよび上記チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターは、同じ投与単位において、または別個の投与単位において存在し得る。
【0139】
(さらなる治療剤での併用療法)
本発明の治療剤はまた、1種以上の抗癌処置(例えば、放射線療法)、および/または1種以上のさらなる抗癌剤との組み合わせにおいて(一緒に投与されるか、またはいずれの順でも逐次的に)使用され得る。好ましい実施形態において、上記1種以上のさらなる抗癌剤は、上記αサブユニット以外のDNAポリメラーゼのサブユニットを阻害しない。上記DNAポリメラーゼαのインヒビター、上記チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターおよび上記さらなる抗癌剤は、同じ投与単位において、または別個の投与単位において存在し得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、DNAポリメラーゼαインヒビターおよびChk1インヒビターを含む)は、同時にまたはいずれの順でも逐次的に、1種以上の薬剤(例えば、抗癌剤)と同時投与される。適切な抗癌剤の非限定的な例としては、細胞増殖抑制性薬剤、細胞傷害性薬剤(例えば、DNA相互作用性薬剤(例えば、シスプラチンもしくはドキソルビシン)が挙げられるが、これらに限定されない);タキサン(例えば、タキソテール、タキソール);トポイソメラーゼIIインヒビター(例えば、エトポシド);トポイソメラーゼIインヒビター(例えば、イリノテカン(もしくはCPT−11)、カンプトスター、またはトポテカン);チューブリン相互作用性薬剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルもしくはエポチロン);ホルモン性薬剤(例えば、タモキシフェン);チミジレートシンターゼインヒビター(例えば、5−フルオロウラシル);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート);アルキル化剤(例えば、テモゾロミド(Schering−Plough Corporation,Kenilworth,New JerseyのTemodar(登録商標))、シクロホスファミド;ファルネシルプロテイントランスフェラーゼインヒビター(例えば、Sararsar(登録商標)(4−[2−[4−[(11R)−3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11−イル−]−1−ピペリジニル]−2−オキソエチル]−1−ピペリジンカルボキサミド、またはSchering−Plough Corporation,Kenilworth,New JerseyのSCH 66336)、チピファルニブ(Janssen PharmaceuticalsのZarnestra(登録商標)もしくはR115777)、L778,123(Merck & Company,Whitehouse Station,New Jerseyのファルネシルプロテイントランスフェラーゼインヒビター)、BMS 214662(Bristol−Myers Squibb Pharmaceuticals,Princeton,New Jerseyのファルネシルプロテイントランスフェラーゼインヒビター);シグナル伝達インヒビター(例えば、Iressa(登録商標)(Astra Zeneca Pharmaceuticals,England製)、Tarceva(登録商標)(EGFRキナーゼインヒビター)、EGFRに対する抗体(例えば、C225)、Gleevec(登録商標)(Novartis Pharmaceuticals,East Hanover,New JerseyのC−ablキナーゼインヒビター);インターフェロン(例えば、イントロン(Schering−Plough Corporation製)、Peg−Intron(登録商標)(Schering−Plough Corporation製);ホルモン治療併用;アロマターゼ併用;ara−C,アドリアマイシン、シトキサン、クロファラビン(Genzyme Oncology,Cambridge,MassachusettsのClolar(登録商標))、ラドリビン(Janssen−Cilag Ltd.のLeustat(登録商標))、アフィジコリン、Rituxan(登録商標)(Genentech/Biogen Idec製)、スニチニブ(PfizerのSutent(登録商標))、ダサチニブ(またはBristol−Myers SquibbのBMS−354825)、テザシタビン(Aventis Pharma製)、Sml1、フルダラビン(Trigan Oncology Associates製)、ペントスタチン(BC Cancer Agency製)、トリアピン(Vion Pharmaceuticals製)、ジドックス(Bioseeker Group製)、トリミドックス(ALS Therapy Development Foundation製)、アミドックス、3−AP(3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン)、MDL−101,731、((E)−2’−デオキシ−2’−(フロロメチレン)シチジン)およびゲムシタビンが挙げられる。
【0141】
本発明の方法および組成物における併用療法において使用され得る他の抗癌剤(抗新生物薬としても公知)としては、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、ロイコビリン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン、アナストラゾール、レトロゾール、カペシタビン、レロキサフィン、ドロロキサフィン、ヘキサメチルメラミン、Avastin(登録商標)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、Bexxar(登録商標)、Velcade(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Trisenox(登録商標)、Xeloda(登録商標)、ビノレルビン、ポルフィマー、Erbitux(登録商標)、リポソーム、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、レトロゾール、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスファミド、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、C225、Campath(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
固定用量として処方される場合、このような組み合わせ生成物は、本明細書に記載される投与量範囲内の本発明の化合物、および他の薬学的に活性な薬剤もしくはその投与量範囲内の処置を使用する。例えば、上記CDC2インヒビターオロムシン(olomucine)を、アポトーシスを誘導するにあたって公知の細胞傷害性薬剤と相乗効果的に作用することが分かった(Ongkekoら(1995)J.Cell Sci.108:2897)。DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターはまた、例えば、組み合わせ処方が不適切である場合、公知の抗癌剤または細胞傷害性薬剤と連続して投与され得る。本発明は、投与の順に限定されない;DNAポリメラーゼαのインヒビター、チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビター、および必要に応じて、さらなる抗癌剤もしくは細胞傷害性薬剤は、任意の順で投与され得る。例えば、サイクリン依存性キナーゼインヒビターフラボピリドールという上記細胞傷害性薬剤は、抗癌剤との投与の順によって影響を受ける。Bible & Kaufmann(1997)Cancer Research 57:3375。このような技術は、当業者および主治医の技術範囲内である。
【0143】
(患者の選択)
増殖性障害を有する任意の被験体が、本発明の方法および組成物を用いる処置について考慮に入れられ得るが、本発明の方法および組成物の使用に特に適した被験体は、G1/S複製チェックポイントの活性を阻害する変異もしくは他の機能的欠陥の存在または非存在に基づいて選択され得る。このような機能的欠陥の例としては、癌抑制遺伝子p53および網膜芽腫(Rb)癌抑制遺伝子の生成物の機能の非存在、低下または喪失を含む。ヒトp53に関する配列情報および他の関連データは、公のデータベース(例えば、GenBankのアクセッション番号NP_000537、およびMendelian Inheritance in Manのアクセッション番号191170、およびGeneID No.7157において見いだされ得る。ヒトRbに関する配列情報および他の関連データは、公のデータベース(例えば、GenBankのアクセッション番号NP_000312、およびMendelian Inheritance in Manのアクセッション番号180200、およびGeneID No.5925において見いだされ得る。データベースエントリーは、NCBI Entrezウェブサイトで利用可能である。
【0144】
本明細書で使用される場合、「非存在」および「低下」とは、癌抑制遺伝子産物またはその活性いずれかの物理的存在をいうが、活性は、上記遺伝子産物が物理的に存在しない場合において、必ず欠いている。細胞におけるこれら遺伝子のいずれか(または両方)の機能の喪失は、異常な増殖をもたらし得るが、本発明の方法および組成物に対する増強された感受性をももたらし得る。癌抑制遺伝子の機能の喪失は、転写(RNA)レベルもしくは翻訳(タンパク質)レベルでの遺伝子発現の分析によって、または結合アッセイもしくは機能アッセイによって、測定され得る。転写のレベルは、例えば、関連転写物の定量的増幅(例えば、TAQMAN(登録商標)分析)、サザンブロットもしくはノーザンブロット、マイクロアッセイ、遺伝子発現の連続分析(SAGE)または当該分野で公知の任意の他の方法によって測定され得る。タンパク質発現のレベルは、例えば、イムノブロッティング(ウェスタンブロッティングを含む)、免疫組織化学(IHC)、二次元ゲル電気泳動または当該分野で公知の任意の他の方法によって測定され得る。癌抑制遺伝子における変異は、DNA配列決定、cDNA配列決定、マイクロアレイ検出、適切な特異的試薬を用いるイムノブロッティング、結合アッセイもしくは機能アッセイまたは当該分野で公知の任意の他の方法によって決定され得る。p53の発現もしくは活性のレベルを決定するための例示的方法は、米国特許第5,552,283号明細書;同第6,071,726号明細書および同第6,110,671号明細書において見いだされる。Rbの発現もしくは活性のレベルを決定するための例示的方法は、米国特許第5,578,701号明細書;同第5,650,287号明細書;同第5,851,991号明細書;同第5,998,134号明細書および同第6,821,740号明細書に見いだされる。
【0145】
被験体における癌抑制遺伝子産物の発現もしくは活性のレベルは、完全に機能的な癌抑制遺伝子を有する細胞もしくは組織(例えば、非腫瘍組織もしくは増殖性障害なしの被験体の組織)における発現の「正常」レベルと比較される。種々の好ましい実施形態において、問題の被験体におけるレベルに対する上記発現もしくは活性の正常レベルの比は、1.2、1.5、2、3、4、5、10、12、15、20、25、30、40、50、75、100、200、500もしくは1000以上である。いくつかの実施形態において、被験体は、問題の被験体における(例えば、異常な増殖を示す組織(例えば、腫瘍もしくは他の癌性組織))発現もしくは活性のレベルに対する発現もしくは活性の正常レベルの比に基づいて、本発明の方法または組成物による処置に関して選択される。カットオフポイントとして選択される特定の比は、問題の組織が、実際に、望ましくない副作用の危険性を低下させるために、組織を、同じ被験体における他の組織より、本発明の方法もしくは組成物での処置に対して感受性にするに十分な癌抑制遺伝子産物発現もしくは活性の低下もしくは喪失を有することを確実にするように選択される。
【0146】
以下の例は、本発明の実施形態を示すために提供されるのであって、本発明を限定することを意図しない。本発明の多くの改変およびバリエーションは、当業者に明らかであるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得る。
【実施例】
【0147】
(実施例1:一般的方法)
分子生物学における標準的方法が記載される(Maniatisら(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA)。標準的な方法はまた、Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1−4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NY(これは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、糖結合体(glycoconjugate)およびタンパク質発現(Vol.3)、およびバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載する)に見られる。
【0148】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質精製法が記載されている(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学的分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5−16.22.17;Sigma−Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45−89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384−391を参照のこと)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生成、精製、およびフラグメント化が記載されている(Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Harlow and Lane,前出)。リガンド/レセプター相互作用を特徴づけるための標準的技術が利用可能である(例えば、Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照のこと)。
【0149】
フローサイトメトリーのための方法(蛍光活性化セルソーティング(FACS)を含む)が利用可能である(例えば、Owensら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,第2版;Wiley−Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照のこと)。例えば、診断用試薬として使用するために核酸(核酸プライマーおよびプローブを含む)、ポリペプチド、および抗体を改変するのに適した蛍光試薬が利用可能である(Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma−Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MO)。
【0150】
免疫系の組織学の標準的方法が記載されている(例えば、Muller−Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw−Hill,New York,NYを参照のこと)。
【0151】
例えば、抗原性フラグメント、リーダー配列、タンパク質折りたたみ、機能的ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが入手可能である(例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc.,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741−742;Menneら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741−742;Wrenら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177−181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17−21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683−4690を参照のこと)。
【0152】
細胞株、薬物、およびsiRNA処置物質および方法は、以下のとおりである。ヒトU20S骨肉腫細胞を、10%FBS(JRH BioSciences,St.Louis,MO)、200U/ml ペニシリン、200μg/ml ストレプトマイシン、および300μg/ml L−グルタミン(Cambrex)を補充したDMEM(Mediatech,Herndon,VA)中で増殖させる。HU(Sigma,St.Louis,MO)を、15時間にわたって、1mMにて使用する。
【0153】
本明細書で使用されるsiRNA分子の配列は、表1に提供される。センス配列が提供される。siRNAとして使用されるオリゴヌクレオチドを、Dharmacon RNA Technologies(Lafayette,CO)から得る。
【0154】
細胞を、Chk1に対する50nM siRNA、ルシフェラーゼ(Luc)、PolA、PolE、PolD1に対する100nM siRNA、および製造評者のプロトコルに従ってLipofectamine 2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用するATR二重鎖でトランスフェクトする。
【0155】
フローサイトメトリー分析(例えば、DNA損傷に関するγ−H2AX検出および細胞周期分析に関するBrdU組み込み)を、以前に記載されるように行い(Choら(2005)Cell Cycle 4:131)、FacsDIVAソフトウェアを使用して、BD LSR II(BD BioSciences,San Jose,CA)で分析する。
【0156】
siRNAノックダウンのウェスタンブロット分析を、以下のとおりに行う。細胞ペレットをトリプシン処理し、PBSで洗浄し、2×SDSサンプル緩衝液(Invitrogen,Carlsbad,CA)中で溶解させる。タンパク質抽出物を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびImmobilon(登録商標)−P膜(Millipore,Billarica,MA)への転写によって分離する。この研究において使用される抗体を、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Santa Cruz,CA)(Polα、Polε、Polδ、Rad17)、Cell Signaling Technology,Inc.(Danvers,MA)(pS345−Chk1、pT68−Chk2)、Stressgen Bioreagents Corp.(San Diego,CA)(Chk1)、およびBethyl Laboratories,Inc.(Montgomery,TX)(pS33−RPA 32)から得る。
【0157】
本明細書に記載される研究において使用されるさらなる抗体を、以下のように調製した。モノクローナル抗体(58D7、16H7)を、BALB/cマウスをヒトCHK1の活性化ループにまたがるペプチド(CNRERLLNKMCGTLPYVAPELLKRREF)(配列番号8)で免疫することによって惹起した。脾細胞を、SP2骨髄腫細胞株と融合した。反応性ハイブリドーマをELISAによって同定し、CHK1を免疫沈降する能力についてスクリーニングした。
【0158】
免疫沈降を以下のように行う。細胞ペレットを、LT250緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.4、250mM NaCl、5mM EDTA、0.1% NP−40、10% グリセロール、1mM DTT、ホスファターゼインヒビターセットIおよびIIの1:100希釈液、ならびにプロテアーゼインヒビターカクテルセットIII(Calbiochem,San Diego,CA)中で溶解する。タンパク質濃度を、Bio−Rad Protein Assay(Bio−Rad,Hercules,CA)を用いて決定する。免疫沈降については、タンパク質溶解物(2mg)を、ImmunoPure Protein Gビーズに架橋した抗Polα(SJK 132−20)抗体と4時間にわたって4℃でインキュベートした。SV40 T抗原に対するPab419モノクローナルAbは、代表的には、陰性コントロールとして使用される。
【0159】
さらなる方法は、Choら(2005)Cell Cycle 4:131において見いだされ得る。
【0160】
(実施例2:Chk1キナーゼアッセイ)
酵素供給源としてのバキュロウイルス発現系において発現される組換えHis−CHK1および基質としてCDC25Cに基づいたビオチン化ペプチドを使用するインビトロシンチレーション近接アッセイ(SPA)が記載されている。
【0161】
材料および試薬:
1)CDC25C Ser 216(下線を付した)C末端ビオチン化ペプチド基質(25mg)を−20℃で貯蔵し、Research Geneticsによってカスタム合成した:
RSGLYRSPSMPENLNRPR−ビオチン(配列番号9)、2595.4 MW。CDC25Cに関する全配列情報は、NP_001781、およびMendelian Inheritance in Manのアクセッション番号157680、およびGeneID No.995において見いだされ得る。これらデータベースエントリーは、NCBI Entrezウェブサイト上で利用可能である。
【0162】
2)His−CHK1、235μg/mL、−80℃で貯蔵。
【0163】
3)D−PBS(CaCl2およびMgCl2なし):GIBCO Cat.# 14190−144。
【0164】
4)SPAビーズ:Amersham(Piscataway,NJ) Cat.# SPQ0032:500mg/バイアル
10mlのD−PBSを500mgのSPAビーズに添加して、作業濃度50mg/mlを作製する。40℃で貯蔵する。水和後2週間以内に利用する。
【0165】
5)GF/Bフィルターを接着した96ウェル白色マイクロプレート:Packard Bioscience/Perkin Elmer(Wellesley,MA)Cat.# 6005177。
【0166】
6)Top seal−A 96ウェル接着フィルム:Perkin Elmer(Wellesley,MA)Cat.# 6005185。
【0167】
7)96ウェル非結合白色ポリスチレンプレート:Corning(Acton,MA)Cat.# 6005177。
【0168】
8)MgCl2:Sigma(St.Louis,MO)Cat.#M−8266。
【0169】
9)DTT:Promega(Madison,WI)Cat.# V3155。
【0170】
10)ATP(4℃で貯蔵):Sigma Cat.#A−5394。
【0171】
11)γ33P−ATP、1000〜3000Ci/mMol: Amersham Cat.#AH9968。
【0172】
12)NaCl:Fisher Scientific Cat.#BP358−212。
【0173】
13)H3PO4 85% Fisher Scientific Cat.#A242−500。
【0174】
14)Tris−HCl pH8.0:Bio−Whittaker/Cambrex(Baltimore,MD)Cat.#16−015V。
【0175】
15)スタウロスポリン、100μg:CALBIOCHEM(San Diego,CA)Cat.#569397。
【0176】
16)Hypure細胞培養等級水、500mL:HyClone(Logan,UT)Cat.#SH30529.02。
【0177】
反応混合物:
1)キナーゼ緩衝液:50mM Tris pH8.0;10mM MgCl2;1mM DTT
2)His−CHK1、MW約30kDa、−80℃で貯蔵。6nMは、約5,000CPMの陽性コントロールを得るために必要とされる。1プレート(100rxn)につき:8μLの235μg/mL(7.83μM)ストックを2mL キナーゼ緩衝液中で希釈する。これによって、31nM混合物が作製される。20μL/ウェルで添加する。これによって、6nMの最終反応濃度が作製される。
【0178】
3)CDC25Cビオチン化ペプチド。CDC25Cを1mg/mL(385μM)ストックに希釈し、−20℃で貯蔵する。1プレート(100rxn)につき:10μLの1mg/mLペプチドストックを、2ml キナーゼ緩衝液中に希釈する。このことによって、1.925μM 混合物を得る。20μL/rxnでを添加する。このことによって、385nMの最終反応濃度が作製される。
【0179】
4)ATPミックス。1プレート(100rxn)につき:10μLの1mM ATP(冷)ストックおよび2μL 新たな33P−ATP(20μCi)を、5ml キナーゼ緩衝液中に希釈する。このことによって、2μM ATP(冷)溶液が得られる;50μl/ウェルで添加して、反応を開始する。最終反応濃度が1μM ATP(冷)および0.2μCi/rxnであるように、最終容積は、100μl/rxnである。
【0180】
5)停止溶液:1プレート(100rxn)あたり、10mL 洗浄緩衝液2(2M NaCl 1% H3PO4)と1mL SPAビーズスラリー(50mg)との混合物を調製する。100μL/ウェルで添加する。
【0181】
6)洗浄緩衝液1:2M NaCl。
【0182】
7)洗浄緩衝液2:2M NaCl、1% H3PO4。
【0183】
アッセイ手順:
【0184】
【化1】
1)化合物を、水/10% DMSO中で望ましい濃度に希釈する。これによって、rxn中1%の最終DMSO濃度が得られる。10μl/rxnで適切なウェルに分与する。10μL 10% DMSOを陽性コントロールウェル(CHK1+CDC25C+ATP)および陰性コントロールウェル(CHK1+ATPのみ)に添加する。
【0185】
2)酵素を氷上で融解する−酵素をキナーゼ緩衝液中で適切な濃度に希釈し(反応混合物を参照のこと)、各ウェルに20μlを分与する。
【0186】
3)上記ビオチン化基質を氷上で融解し、キナーゼ緩衝液中で希釈する(反応混合物を参照のこと)。陰性コントロールウェルを除いて、20μL/ウェルで添加する。代わりに、20μL キナーゼ緩衝液をこれらウェルに添加する。
【0187】
4)ATP(冷)および33P−ATPを、キナーゼ緩衝液中で希釈する(反応混合物を参照のこと)。50μL/ウェルで添加して、上記反応を開始する。
【0188】
5)上記反応を室温で2時間継続させる。
【0189】
6)100μLの上記SPAビーズ/停止溶液を添加することによって反応を停止させ(反応混合物を参照のこと)、改修前に15分間インキュベートする。
【0190】
7)ブランクのPackard GF/Bフィルタープレートを、真空フィルターデバイスに配置し(Packardプレート採取器)、200mL 水を吸引して、上記系をぬらす。
【0191】
8)ブランクを除外し、上記Packard GF/Bフィルタープレート中に入れる。
【0192】
9)上記反応物を、上記フィルタープレートを介して吸引する。
【0193】
10)洗浄:各々200ml洗浄;2M NaClで1回;2M NaCl/1% H3PO4で1回。
【0194】
11)フィルタープレートを15分間乾燥させる。
【0195】
12)TopSeal−A接着剤をフィルタープレートの頂部に置く。
【0196】
13)フィルタープレートを、Top Countマイクロプレートシンチレーションカウンターで作動させる。
【0197】
設定:データモード:CPM
放射性核種:マニュアルSPA:33P
シンチレーター:Liq/plast
エネルギー範囲:低。
【0198】
IC50決定:
用量応答曲線を、阻害性化合物の8点の連続希釈から、各々二連で生成される阻害データからプロットする。化合物濃度を、キナーゼ活性%に対してプロットし、処置サンプルのCPM÷未処理サンプルのCPMによって計算する。IC50値を生成するために、次いで、上記用量応答曲線を、標準的なシグモイド曲線に適合させ、IC50値を、非線形回帰分析によって導出する。
【0199】
(実施例3:CDK2アッセイ)
組換えサイクリンEおよびCDK2を使用するインビトロシンチレーション近接アッセイ(SPA)が記載されている。米国特許第7,038,045号明細書;米国特許出願公開第2006/0030555号明細書を参照のこと。サイクリンE(GenBankアクセッション番号NP_001229)を、pVL1393(Pharmingen,La Jolla,California)へとPCRによってクローニングし、5つのヒスチジン残基をアミノ末端に付加して、ニッケル樹脂での生成を可能にする。発現されるタンパク質は、約45kDaである。CDK2(GenBankアクセッション番号CCA43807)を、pVL1393へとPCRによってクローニングし、ヘマグルチニンエピトープタグをカルボキシ末端に付加する(YDVPDYAS)(配列番号10)。発現されるタンパク質は、約34kDaの大きさである。
【0200】
サイクリンEおよびCDK2を発現する組換えバキュロウイルスを、SF9細胞に、等しい感染多重度(MOI=5)で48時間同時感染させる。細胞を、1000RPMで10分間の遠心分離によって回収し、次いで、ペレットを、50mM Tris pH8.0、150mM NaCl、1% NP40、1mM DTTおよびプロテアーゼインヒビター(Roche Diagnostics GmbH,Mannheim,Germany)を含む、上記ペレット容積の5倍の溶解緩衝液中で、30分間氷上で溶解する。溶解物を、15000RPMで10分間遠心分離し、その上清を保持する。5mlのニッケルビーズ(SF9細胞1Lにつき)を、溶解緩衝液(Qiagen GmbH,Germany)中で3回洗浄する。イミダゾールを上記バキュロウイルス上清に、最終濃度20mMにまで添加し、次いで、上記ニッケルビーズとともに4℃で45分間インキュベートする。タンパク質を、250mM イミダゾールを含む溶解緩衝液で溶出する。溶出物を、2リットルのキナーゼ緩衝液(50mM Tris pH8.0、1mM DTT、10mM MgCl2、100μM オルトバナジン酸ナトリウムおよび20% グリセロールを含む)中で一晩透析する。酵素を、−70℃でアリコートに分けて貯蔵する。
【0201】
サイクリンE/CDK2キナーゼアッセイを、低タンパク質結合96ウェルプレート(Corning Inc,Corning,New York)において行う。酵素を、キナーゼ緩衝液(50mM Tris pH8.0、10mM MgCl2、1mM DTT、および0.1mM オルトバナジン酸ナトリウムを含む)中、最終濃度50μg/mlに希釈する。これらの反応において使用される基質は、Histone H1(Amersham,UK製)から得られるビオチン化ペプチドである。上記基質を氷上で融解し、キナーゼ緩衝液中、2μMに希釈する。化合物を、10% DMSO中で望ましい濃度に希釈する。各キナーゼ反応について、20μlの50μg/ml 酵素溶液(1μgの酵素)および20μlの2μM 基質溶液を混合し、次いで、試験のために各ウェル中で10μlの希釈した混合物と合わせる。上記キナーゼ反応を、50μlの2μM ATPおよび0.1μCiの33P−ATP(Amersham,UK製)を添加することによって開始する。上記反応を、室温で1時間行わせる。上記反応を、200μlの停止緩衝液(0.1% Triton X−100、1mM ATP、5mM EDTA、および5mg/ml ストレプトアビジンおよびコーティングされたSPAビーズ(Amersham,UK製)を含む)を15分間添加することによって停止させる。次いで、上記SPAビーズを、Filtermate universal harvester(Packard/Perkin Elmer Life Sciences.)を用いて、96ウェルGF/Bフィルタープレート(Packard/Perkin Elmer Life Sciences)上に捕捉する。非特異的シグナルを、上記ビーズを2M NaClで2回、次いで、1% リン酸含有2M NaClで2回洗浄することによって除去する。次いで、上記放射活性シグナルを、TopCount(登録商標)96ウェル液体シンチレーションカウンター(Packard/Perkin Elmer Life Sciences製)を使用して測定する。
【0202】
IC50値を以下のように決定する。用量応答曲線を、阻害性化合物の8点の連続希釈から、各々二連で生成される阻害データからプロットする。化合物濃度を、キナーゼ活性%に対してプロットし、処置サンプルのCPM÷未処理サンプルのCPMによって計算する。IC50値を生成するために、次いで、上記用量応答曲線を、標準的なシグモイド曲線に適合させ、IC50値を、非線形回帰分析によって導出する。
【0203】
(実施例4:Polαの除去は、DNA損傷の非存在下でChk1 S345 リン酸化を誘導する)
図1は、代謝拮抗物質がChk1リン酸化を誘導することを実証する。U20S細胞を、処理しなかった(「−」)か、または1mM HU、5μM Gem、もしくは5μM Ara−Cで2時間処理した。細胞抽出物を調製し、ホスホ−Chk1 S345抗体でイムノブロットして、リン酸化Chk1(Chk1 S345)およびChk1(添加コントロール)を示した。3種の代謝拮抗物質はすべて、Chk1活性化の指標であるChk1の実質的リン酸化を誘導した。Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Zhao & Piwnica−Worms(2001)Mol.Cell.Biol.21:4129;Capassoら(2002)J.Cell Sci 115:4555。
【0204】
図2Aは、siRNAによるPolαの除去が、HU処置によって誘導されるのと同様に、Chk1リン酸化を誘導するが、PolεおよびPolδの除去が、Chk1リン酸化を実質的に誘導しないことを実証する。siRNAトランスフェクションの48時間後、抽出物を調製し、示された抗体でイムノブロットした。HU処理細胞を、回収前に1mM HUで7時間処理した。
【0205】
図2Bおよび図2Cは、図2Aに示されるもののようなサンプルについてのフローサイトメトリーの結果を提供する。γ−H2A.Xリン酸化レベルおよびDNA含有量を、HUありまたはなしで、ルシフェラーゼ(Luc)に対するsiRNAにより、またはDNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)、およびDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対するsiRNAにより処理した細胞に対して測定した。DNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAで処理した培養物およびHU(およびコントロールsiRNA)で処理した培養物は、コントロール培養物および他のDNAポリメラーゼに対するsiRNAで処理した培養物と比較して、約10倍多いDNA損傷を示す細胞を含んでいた。DNA含有量の関数として細胞数を示すプロットも提供し、このプロットは、DNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAで処理した培養物が、S期中期において増大した細胞割合を有し(図2Bおよび図2CにおけるDNA含有量軸で約3N、すなわち、約75)、そしてHU処理培養物が減少した割合の4N細胞を有することを実証する。これら結果は、試験される他のDNAポリメラーゼに対するsiRNAではなく、DNAポリメラーゼαに対するsiRNAのみが、HU処理によって誘導されるのと同様に、DNA損傷を誘導することを実証する。
【0206】
図2Dは、図2DがPolα、PolεおよびPolδの組み合わせの同時除去についての結果を含むことを除いて、図2Aのものと同様の実験結果を示す。図2Aの場合と同様に、Polαの除去は、Chk1リン酸化を誘導する一方で、PolεおよびPolδの除去は、Chk1リン酸化を誘導しないが、驚くべきことに、Polα/Polε(およびおそらくPolα/Polδ)の同時除去は、Polα単独の除去と同程度にまで、Chk1 S345P形成を誘導しない。具体的には、Chk1 S345Pのレベルは、Polαレーンの除去よりもPolα/Polεレーンの同時除去において遙かに低い一方で、Chk1(リン酸化されていない)のレベルは変化しない。
【0207】
(実施例5:PolαおよびChk1の同時除去は、S期内停止を誘導する)
細胞を、DNAポリメラーゼ単独、Chk1の除去との組み合わせにおける除去の関数として、Chk1およびRPA32リン酸化について試験した。時間0において、細胞をPolA、PolE、またはPolD特異的二重鎖で24時間トランスフェクトし、続いて、Chk1特異的二重鎖を24時間トランスフェクトした。48時間目に、抽出物を調製し、示された抗体でイムノブロットした。図3は、Chk1およびRPA32が、DNAポリメラーゼαに対するsiRNAで処理した細胞においてリン酸化されていること、およびRPA32リン酸化が細胞をChk1およびDNAポリメラーゼαの両方に対するsiRNA処理される場合に、顕著に増大されることを示す。示されるデータは、3回の独立した実験の平均を表す。
【0208】
図4Aは、図3におけるデータを得るために使用されるものと同様のサンプルに関するH2AXのリン酸化レベル(二本鎖DNA破壊の尺度)を測定するフローサイトメトリーの結果を示す。結果は3回の独立した実験の平均であり、エラーバーは標準偏差を示す。HUおよびPolα siRNAは、コントロールサンプルと比較してH2A.Xリン酸化を中程度に増大するが、Polαに対するsiRNAおよびChk1に対するsiRNAの組み合わせは、H2A.Xリン酸化を有意に増大させ、このことは、二本鎖DNA破壊の誘導における2つの薬剤の相乗効果を実証する。
【0209】
図4Bは、Chk1の低分子インヒビター(3−アミノ−6−{3−[({[4−(メチルオキシ)フェニル]メチル}アミノ)カルボニル]フェニル}−N−[(3S)−ピペリジン−3−イル]ピラジン−2−カルボキサミド)が、DNAポリメラーゼαに指向されるsiRNAと組み合わせて使用される場合に、siRNA Chk1ノックダウンと同じ効果を有することを実証する。図4Aと同様に、Chk1およびDNAポリメラーゼα両方の阻害の組み合わせは、顕著なDNA損傷を有する細胞の割合の実質的増加をもたらす。まとめると、図4Aおよび図4Bの結果は、本発明の併用療法のより付加的な効果を実証する。
【0210】
(実施例6:ATRおよびより低い程度には、ATMは、Polα媒介性S期内停止に必要とされる)
ATMおよびATRを、単独で、またはPolαの除去との組み合わせのいずれかで除去して、Polα媒介性細胞周期停止におけるそれらの役割を決定した。図5はその結果を示す。時間0では、2種のsiRNA(Polα/Chk1、Polα/ATRおよびPolα/ATM)でトランスフェクトした細胞に、PolAに対する特異的二重鎖を24時間トランスフェクトし、続いて、Chk1、ATR、またはATMの特異的二重鎖を24時間トランスフェクトした。他のサンプルに、示されたsiRNAを24時間トランスフェクトした。48時間で、抽出物を調製し、示された抗体でイムノブロットした。ATRもしくはATM単独の除去は、Chk1 リン酸化を誘導しなかったが、ATMとPolαおよびATRとPolαの同時除去は、Polα単独の除去と比較して、Chk1リン酸化を増大させなかった。
【0211】
図6は、図5を参照して記載されるのと同様のサンプルに対するDNA損傷(H2AXリン酸化によって測定される場合)のプロットである。図4に示されるように、PolαおよびChk1の同時除去は、H2AXリン酸化における実質的増大を生じる。PolαとATRおよびPolαとATMの同時除去はまた、H2AXリン酸化を増大させたが、Chk1との同時除去より少ない程度であった。その結果は3回〜6回の独立した実験の平均であり、エラーバーは、標準偏差を表す。
【0212】
(実施例7:PolαおよびChk1の物理的会合)
免疫沈降実験を、PolαポリペプチドおよびChk1ポリペプチドが複合体を形成するか否か、およびどのような環境下で形成するかを決定するために行った。細胞を、ルシフェラーゼ(コントロール)、Chk1もしくはATRに対するsiRNAでトランスフェクトした。24時間後、細胞を1mM HUで15時間処理したか、または処理しなかった。Polαを、ルシフェラーゼ(陽性コントロール)、Chk1(陰性コントロール)、およびプロテインGに架橋したPolα抗体(SJKl 32−20)によるATR除去細胞、およびコントロール非関連抗体(419)による細胞から免疫沈降させた。ウェスタンブロットを、抗Polα、抗Chk1、および抗Chk1 S345抗体を用いて行った(図7)。Chk1は、Polαと同時に免疫沈降し、このことは、それらが溶液中に複合体で存在することを示唆した。
【0213】
相互的な実験を行って、上記会合を確認した。ここでChk1は、未処理U20S細胞、またはHU、ゲムシタビン、もしくはゲムシタビンと抗Chk1抗体のChk1への結合をブロックするペプチドとで処理した細胞から調製した溶解物から免疫沈降した。SDS−PAGE後、ウェスタンブロットを、Polα、Chk1 S345PおよびChk1全体に対して特異的な抗血清で、連続的にプローブした(図8)。Polαは、未処理細胞および処理細胞からの溶解物中、Chk1と同時に免疫沈降した。
【0214】
Chk1リン酸化のHU誘導の過程を、行った。U20S細胞を、0.5時間、1時間、2時間および15時間にわたってHUで処理し、タンパク質抽出物を、免疫沈降のために調製した。Polαを、プロテインGに架橋したPolα抗体(SJK 132−20)と免疫沈降した。ウェスタンブロットを、抗Polα抗体、抗Chk1抗体および抗Chk1 S345抗体を用いて行った(図9)。Chk1リン酸化は、最も速い時点ですら完了しており、Chk1およびChk1 S345Pの両方が、Polαと同時に免疫沈降した。
【0215】
図10は、抗Polα抗体、抗ATR抗体、抗Chk1抗体、抗Chk1 S345P抗体、および抗RPA32 S33抗体を用いたウェスタンブロットに供した、全細胞抽出物を示す。
【0216】
(実施例8:DNAポリメラーゼα特異性)
他のDNAポリメラーゼと比較した場合、DNAポリメラーゼαの阻害の特異性は、DNAポリメラーゼαの阻害と、他のDNAポリメラーゼの阻害とを類似の条件下で比較することによって決定され得る。阻害剤の場合、上記薬剤は、DNAポリメラーゼアッセイにおいて力価測定されて、特定のレベルの阻害を達成するために必要な濃度(例えば、50%(IC50))が決定され得る。
【0217】
DNAポリメラーゼの阻害を決定するための例示的アッセイは、放射活性ヌクレオチドの組み込みの測定による。例えば、Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1308:256;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1336:509を参照のこと。DNAポリメラーαの阻害は、以下のように、DNAポリメラーゼεの阻害と比較され得る。
【0218】
哺乳動物DNAポリメラーゼαおよびεを、従来の方法によって仔牛胸腺から調製する。例えば、Podustら(1992)Chromosoma 102:S133;Focherら(1989)Nucleic Acids Res.17:1805を参照のこと。
【0219】
標準的な混合物(50mM Tris−HCl,pH7.5、1mM ジチオスレイトール、1mM MgCl2、5μM ポリ(dA)/オリゴ(dT)12〜18(=2/1)、10μM [3H]dTTP(100cpm/pmol)、15%(v/v)グリセロールおよび0.05単位のDNAポリメラーゼを含む)を、各ポリメラーゼについて調製する。ポリメラーゼ活性1単位は、1nmolのデオキシリボヌクレオシド三リン酸を、合成テンプレートプライマー(すなわち、ポリ(dA)/オリゴ(dT)12〜18、A/T(=2/1))へ、60分間、37℃で通常の反応条件下で組み込むのを触媒する量として定義される。このポリメラーゼ混合物の24μlを、8μlの(推定)ポリメラーゼインヒビター溶液(上記インヒビターを可溶化するに適した緩衝液もしくは溶媒を含む)と混合する。各インヒビターについて経験的に決定した異なる濃度のインヒビターを含む一連のサンプルを使用して、阻害されていないレベルの50%にまでポリメラーゼ活性を阻害するのに必要とされる濃度(IC50)を決定する。コントロールサンプル(上記インヒビターの代わりに、8μlの上記緩衝液もしくは溶媒を含む)を使用して、上記インヒビターおよび/もしくは溶媒が、上記反応混合物中で上記DNAポリメラーゼの活性をブロックしないことを確実にする。
【0220】
37℃で60分間のインキュベーション後、上記放射活性DNA産物を、Lindahlら(1970)Science 170:447によって記載されるように、DEAE−セルロースペーパーディスク(DE81)上に集める。上記ディスクに結合した放射活性をシンチレーションカウンターで、シンチレーション液中で測定する。そのIC50を、両方のDNAポリメラーゼに対する各推定インヒビターについて決定する。これらIC50の比は、どのインヒビターがDNAポリメラーゼαに対して特異的であるとみなされるかを決定する。
【0221】
本明細書で言及される配列番号は、表1に列挙される。
【0222】
【表1−1】
【0223】
【表1−2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性障害(例えば、癌)の処置のための方法および組成物に関する。具体的には、本発明は、DNA複製を妨げる第1の薬剤および複製チェックポイントを妨げる第2の薬剤を用いる併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーベイランス機構の複雑なネットワークは、「チェックポイント」といわれ、種々のゲノム傷害に直面しても、ゲノム完全性を維持する(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1、Chk2など)は、不適切なとき(例えば、DNA損傷に応答している場合)の細胞周期進行を妨げ、細胞が停止している間に細胞の代謝的バランスを維持し、チェックポイントの要求が満たされなかった場合、いくらかの場合には、アポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導し得る。チェックポイント制御は、DNA合成(「G1/Sチェックポイント」)の前のG1期において、S期(「S内(intra−S)チェックポイント」)において、および有糸分裂に入る前のG2期(「G2/Mチェックポイント」)において、起こり得る。この活動は、DNA修復プロセスが、ゲノムの複製およびその後の新たな娘細胞への遺伝物質の分離が起こる前に、それらの作業を完了することを可能にする。CHK1の不活性化は、DNA損傷(内因性DNA損傷または抗癌剤によって引き起こされる損傷)によって通常誘導されるG2停止を排除し、不適切な有糸分裂への進入および得られたチェックポイント欠損細胞の優先的な死滅を生じることが示された。例えば、非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;および非特許文献9を参照のこと。これらの効果は、Cdc25Cの活性の調節におけるChk1の役割によって媒介され、続いて、有糸分裂への進入を制御するCdc−2/サイクリンB複合体の活性を制御すると考えられている。
【0003】
Chk1(セリン/スレオニンチェックポイントキナーゼ)は、S内チェックポイントおよびG2/Mチェックポイント応答の両方に寄与する(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。複製ストレスおよびS内チェックポイントの関与後、Chk1は、ATM(毛細管拡張性失調症変異(ataxia telangiectasia, mutated))およびATR(ATMおよびRad3関連)プロテインキナーゼによって活性化される。DNA代謝拮抗性薬物に対する曝露が、S内チェックポイントを活性化することを示した(例えば、非特許文献15を参照のこと)が、Chk1がこの応答に寄与する機構は不明なままである。
【0004】
Chk1インヒビターは、化学療法剤を使用する癌治療に潜在的に有用な補助物質として提唱されてきた。例えば、非特許文献16を参照のこと。Chk1の活性の阻害は、化学療法誘導性DNA損傷を有する癌細胞におけるチェックポイント制御の障害をもたらすと推定される。チェックポイントの障害は、DNA損傷にも拘わらず、有糸分裂への細胞の進行をもたらし、有糸分裂の分かれ目(mitotic crisis)および最終的にアポトーシスをもたらす。非癌性細胞は、Chk1媒介性チェックポイント機能の喪失にあたり感受性でないと推定される。なぜなら、非癌性細胞は、一般に、それほど急激に分裂せず、これらはまた、細胞周期を介した有糸分裂への進行を妨げるために、機能的G1チェックポイント(大部分の腫瘍細胞において欠落している)を有し得るからである。癌性細胞 対 正常細胞に対するChk1インヒビターのこの差示的効果は、化学療法の効果を増強し、望ましくない副作用の所定のレベルに対してより多くの腫瘍死滅を提供すると推定される。
【0005】
チェックポイントインヒビター(例えば、カフェイン、UCN−01、Go6979、ICP−1、SB218078、PD166285およびイソグラヌラチミド)を、非特許文献17において検討されるように、DNA損傷剤または照射と組み合わせた。Chk1の阻害を、ヌクレオシドアナログ(非特許文献18)および他の化学療法剤および代謝拮抗物質(例えば、エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチン、クロラムブシル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ヒドロキシ尿素、2−クロロアデノシン、フルダラビン、アザシチジン、ゲムシタビン(特許文献1;特許文献2;および特許文献3)、シトシンアラビノシド(ara−C)およびチミジン(非特許文献19)、アフィジコリン(非特許文献20)ならびに7−ヒドロキシスタウロスポリン(UCN−01)(非特許文献21;非特許文献22)と組み合わせた。
【0006】
異常な細胞増殖と関連する疾患状態の処置もしくは予防を促進するために、正常組織とは対照的に、化学療法剤およびDNA代謝拮抗物質の毒性作用に対して腫瘍組織を優先的に感受性にするための改善された方法が必要である。好ましくは、このような方法および組成物は、腫瘍組織における有糸分裂の分かれ目もしくはアポトーシスを誘導するはずである。好ましくは、このような方法および組成物はまた、腫瘍組織に対して非常に選択的であるので、望ましくない副作用を最小にする。好ましくは、このような方法および組成物は、治療的利益を達成するために絶対に必要な分子(例えば、特異的DNAポリメラーゼ)のみを阻害すると同時に他の分子に対してあまり破壊的でないように、精密に標的化されるので、望ましくない副作用を最小にする。好ましくは、このような方法および組成物は、DNAへ組み込まれない化合物を必要とし、DNA合成の長期の停止、DNAチェックポイントの増強された活性化、および治療剤としてのチェックポイントインヒビターの増大した効果を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,067,506号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0069284号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/027907号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hartwell & Weinert(1989)Science 246:629
【非特許文献2】Weinert(1997)Science 277:1450
【非特許文献3】Kastan & Bartek(2004)Nature 432:316
【非特許文献4】Pengら(1997)Science,277:1501
【非特許文献5】Sanchezら(1997)Science 277:1497
【非特許文献6】Nurse(1997)Cell 91:865
【非特許文献7】Weinert(1997)Science 277:450
【非特許文献8】Walworthら(1993)Nature 363:368
【非特許文献9】Al−Khodairyら(1994)Molec.Biol.Cell 5:147
【非特許文献10】Liuら(2000)Genes Dev.14:1448
【非特許文献11】Sorensenら(2003)Cancer Cell 3:247
【非特許文献12】Choら(2005)Cell Cycle 4:131
【非特許文献13】Zachosら(2005)Mol.Cell Biol.25:563
【非特許文献14】Petermannら(2006)MoI.Cell.Biol.26:3319
【非特許文献15】Choら(2005)Cell Cycle 4:131
【非特許文献16】Tao & Lin(2006)Anti−Cancer Agents in Med.Chem.6:377
【非特許文献17】Prudhomme(2004)Curr.Med.Chem.−Anti−Cancer Agents 4:435
【非特許文献18】Sampathら(2003)Oncogene 22:9063
【非特許文献19】Choら(2005)Cell Cycle 4:131
【非特許文献20】Zachosら(2003)EMBO J:22:713
【非特許文献21】Feijooら(2001)J.Cell Biol.154:913
【非特許文献22】Miaoら(2003)J.Biol.Chem.278:4295
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
その多くの実施形態において、本発明は、DNAポリメラーゼαの活性を阻害する工程および少なくとも1種のチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)の活性を阻害する工程を包含する、増殖性障害の処置のための方法を提供する。別の局面において、本発明は、被験体に、DNAポリメラーゼαのインヒビターである第1の薬剤および少なくとも1種のチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1もしくはChk2)のインヒビターである第2の薬剤を投与することによって、被験体(例えば、処置の必要な被験体)における増殖性障害の処置のための方法を提供する。なお別の局面において、本発明は、DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1もしくはChk2)のインヒビターを含む、その必要性がある被験体に投与される組成物に関する。
【0010】
本発明のすべての局面のうちのいくつかの実施形態において、上記チェックポイントキナーゼはChk1である。
【0011】
種々の実施形態において、上記第1の薬剤は、第2の薬剤より前に、それと同時に、またはその後に投与される。他の実施形態において、上記第1の薬剤および/または上記第2の薬剤での処置は、いずれの順番でも、1回より多く反復される。好ましい実施形態において、上記第1の薬剤は、最初に投与され、そして上記第2の薬剤は、後のときに投与され、そのときに、上記第1の化合物の後のときの投与は、継続されてもよいし、中断されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、DNAポリメラーゼαの阻害は、別のDNAポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼε)の阻害の少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍、またはそれ以上である。
【0013】
例示的な第1の薬剤としては、4−ヒドロキシ−17−メチリンシステロール(methylincisterol)、糖脂質であるガラクトシルジアシルグリセロール(GDG)、パクリタキセル誘導体であるセファロマンニン、デヒドロアルテヌシン、スルホ脂質化合物(例えば、スルホキノボシルジアシルグリセロール)、非環式ホスホメトキシアルキルヌクレオチドアナログ(phosphonmethoxyalkyl nucleotide analog)、レスベラトール(3,4,5−トリヒドロキシスチルベン)、トリテルペンジカルボン酸、mispyric acid、6−(p−n−ブチルアニリノ)ウラシルおよびN2−(p−ブチルフェニル)グアニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
一実施形態において、上記第1の薬剤は、4−ヒドロキシ−17−メチリンシステロール、ガラクトシルジアシルグリセロール、セファロマンニン、デヒドロアルテヌシン、6−(p−n−ブチルアニリノ)ウラシルおよびN2−(p−ブチルフェニル)グアニンからなる群より選択される。別の実施形態において、上記第1の薬剤はセファロマンニンである。なお別の実施形態において、上記第1の薬剤はデヒドロアルテヌシンである。
【0015】
例示的な第2の薬剤としては、ピラゾロピリミジン、イミダゾピラジン、UCN−01、インドールカルバゾール化合物、Go6976、SB−218078、スタウロスポリン、ICP−1、CEP−3891、イソグラヌラチミド、デブロモヒメニアルジシン(DBH)、ピリドピリミジン誘導体、PD0166285、シトネミン、ジアリール尿素、ベンゾイミダゾールキノロン、CHR 124、CHR 600、三環式ジアゾピノインドロン、PF−00394691、フラノピリミジン、ピロロピリミジン、インドリノン、置換されたピラジン、化合物XL844、ピリミジニルインダゾリルアミン、アミノピラゾール、2−ウレイドチオフェン、ピリミジン、ピロロピリミジン、3−ウレイドチオフェン、インデノピラゾール、トリアゾロン、ジベンゾジアゼピノン、大環状尿素、ピラゾロキノリン、およびペプチド模倣物CBP501が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、上記第2の薬剤は、ピラゾロピリミジンまたはイミダゾピラジンからなる群より選択される。別の実施形態において、上記ピラゾロピリミジンは、ピラゾロ[l,5−a]ピリミジンである。別の実施形態において、上記イミダゾピラジンは、イミダゾ[1,2−a]ピラジンである。
【0016】
いくつかの実施形態において、1種以上のさらなる薬剤は、上記第1の薬剤および上記第2の薬剤(例えば、細胞増殖抑制性薬剤、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソテール、タキソール、エトポシド、イリノテカン、カンプトスター、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン、タモキシフェン、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、テモゾロミド、シクロホスファミド、SCH 66336、Rl15777、L778,123、BMS 214662、Iressa(登録商標)、Tarceva(登録商標)、EGFRに対する抗体、Gleevec(登録商標)、イントロン、ara−C、アドリアマイシン、シトキサン、ゲムシタビン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、ロイコビリン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン、アナストラゾール、レトロゾール、カペシタビン、レロキサフィン、ドロロキサフェン、ヘキサメチルメラミン、Avastin(登録商標)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、Bexxar(登録商標)、Velcade(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Trisenox(登録商標)、Xeloda(登録商標)、ビノレルビン、ポルフィマー、Erbitux(登録商標)、リポソーム、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、レトロゾール、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスファミド、C225、Campath(登録商標)、クロファラビン、クラドリビン、アフィジコリン(aphidicolon)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、スニチニブ、ダサチニブ、テザシタビン、Smll、フルダラビン、ペントスタチン、Triapine(登録商標)、ジドックス(didox)、トリミドックス(trimidox)、アミドックス(amidox)、3−AP、およびMDL−101,731からなる群より選択される1種以上の抗癌剤)との組み合わせにおいて含められる。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記増殖性障害は、癌、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、神経学的/神経変性障害、関節炎、炎症、抗増殖性疾患、ニューロン疾患、脱毛症、心血管疾患または敗血症である。
【0018】
一実施形態において、上記増殖性障害は癌である。いくつかの実施形態において、上記癌は、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、頭頸部、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚、甲状腺、前立腺、および皮膚の癌、扁平上皮癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞白血病、外套細胞リンパ腫、骨髄腫、バーキットリンパ腫;急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、前骨髄芽球性白血病;線維肉腫、横紋筋肉腫;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫;黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、濾胞性甲状腺癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明の併用療法は、放射線療法と組み合わせられる。
【0020】
一実施形態において、本発明の併用療法は、必要に応じて、癌抑制遺伝子産物(例えば、p53遺伝子産物もしくはRb遺伝子産物)の機能の低下もしくは喪失を伴う増殖性障害を示す被験体に選択的に投与される。このような実施形態において、被験体は、被験体の罹患していない組織と比較して、癌抑制遺伝子産物の機能の低下もしくは喪失についてスクリーニングされ、そしてこのような機能の低下もしくは喪失を示す被験体のみが、本発明の併用療法を使用して処置される。一実施形態において、上記被験体の異常に増殖している組織は、上記被験体が本発明の併用療法を使用した処置に適しているか否かを決定するために、p53遺伝子産物もしくはRb遺伝子産物の存在および/または活性についてスクリーニングされる。このような実施形態において、受容可能な被験体は、p53、Rbもしくは両方の機能の低下もしくは喪失を有し得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記第1の薬剤は、DNAポリメラーゼα(Polα遺伝子によってコードされる)のIC50に対するDNAポリメラーゼε(Polε遺伝子によってコードされる)の薬剤のIC50の比(式IC50polε/IC50polαによって表される)によって測定される場合、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍以上、別のDNAポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼε)と比較してDNAポリメラーゼαに対して特異的である。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記第2の薬剤は、Chk1のIC50に対するCDK2の薬剤のIC50の比(式IC50Chk2/IC50Chk1によって表される)によって測定される場合、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍以上、別のプロテインキナーゼ(例えば、CDK2)と比較してChk1に対して特異的である。いくつかの実施形態において、上記IC50比は、5倍、10倍、または50倍である。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、DNAポリメラーゼαに指向される結合化合物(例えば、抗体(例えば、イントラボディー(intrabodies)またはその抗原結合フラグメント)を含む。第1の薬剤はまた、PolAに指向されるアンチセンス核酸またはsiRNAを含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)に指向される結合化合物(例えば、抗体(例えば、イントラボディー)またはその抗原結合フラグメント)を含む。第2の薬剤はまた、チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)をコードする遺伝子に指向されるアンチセンス核酸またはsiRNAを含み得る。
【0025】
一実施形態において、併用療法は、DNAポリメラーゼαを阻害する一定量の第1の薬剤およびChk1を阻害する一定量の第2の薬剤を含む薬学的組成物を用いてもたらされ、ここで被験体への上記組成物の投与は、治療的効果を生じる。種々の実施形態において、上記治療的効果は、異常な増殖の予防、低下または除去(例えば、腫瘍の予防、または被験体における腫瘍もしくは他の癌性組織の増殖もしくは除去の遅延)である。
【0026】
別の局面において、本発明は、増殖性障害の処置のための医薬の製造における、DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、ヒドロキシ尿素(HU)、ゲムシタビン(GEM)、Ara−C(Ara)または処置無し(「−」)での処置の後のChk1 S345リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。Chk1を、添加コントロールとして測定した。
【図2A】図2Aは、DNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)もしくはDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対する特異的siRNA二重鎖と比較した、ヒドロキシ尿素ありまたはなし(+/−HU)で、ルシフェラーゼ(Luc)に対するコントロールsiRNAでのトランスフェクション後での、Chk1 S345リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。Rad17は、添加コントロールとして含められる。
【図2B】図2Bは、細胞内染色およびFACS分析によって評価した場合、ルシフェラーゼsiRNA(HU処置ありまたはなし)で、またはDNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)もしくはDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対する特異的siRNA二重鎖でトランスフェクトした細胞についての、γ−H2A.Xリン酸化およびDNA含有量のプロットを提供する。特定の閾値より大きなDNA損傷を有する、各実験における細胞の割合(0.3%〜3.2%の範囲)を提供する。各実験について、プロットは、計数した細胞すべてのDNA含有量を提供する。データは、3回の独立した実験の平均を示す。
【図2C】図2Cは、細胞内染色およびFACS分析によって評価した場合、ルシフェラーゼsiRNA(HU処置ありまたはなし)で、またはDNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)もしくはDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対する特異的siRNA二重鎖でトランスフェクトした細胞についての、γ−H2A.Xリン酸化およびDNA含有量のプロットを提供する。特定の閾値より大きなDNA損傷を有する、各実験における細胞の割合(0.3%〜3.2%の範囲)を提供する。各実験のために、プロットは、計数した細胞すべてのDNA含有量を提供する。データは、3回の独立した実験の平均を示す。
【図2D】図2Dは、ルシフェラーゼ(Luc)に対するコントロールsiRNA二重鎖、Chk1、DNAポリメラーゼα(PolA)、DNAポリメラーゼε(PolE)、もしくはDNAポリメラーゼδ(PolD)の種々の組み合わせに対するコントロールsiRNA二重鎖でトランスフェクトした後のChk1 S345リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。
【図3】図3は、ルシフェラーゼ(Luc)に対する特異的siRNA二重鎖、またはChk1、DNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)、もしくはDNAポリメラーゼδ(Polδ)の種々の組み合わせに対する特異的siRNA二重鎖のトランスフェクション後の、Chk1 S345およびRPA32 S33リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。Rad17は、添加コントロールとして含められる。
【図4A】図4Aは、Chk1、DNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)、およびDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対するsiRNAの種々の組み合わせと比較した場合、ヒドロキシ尿素ありまたはなしで(+/− HU)、ルシフェラーゼ(Luc)に対するsiRNAのトランスフェクション後の、γ−H2AXリン酸化の%(二本鎖DNA破壊の尺度)のプロットである。
【図4B】図4Bは、以下により詳細に記載されるように、低分子Chk1インヒビター(2.5μM,2時間)ありまたはなしで、ルシフェラーゼ(Luc)もしくはDNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAでトランスフェクトした細胞のDNA含有量に対するγ−H2AXリン酸化のプロットである。未処理細胞およびDMSO処理細胞をコントロールとして供する。
【図5】図5は、ルシフェラーゼ(Luc)に対するsiRNAまたはChk1、ATR、ATMおよびDNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAの種々の組み合わせでのトランスフェクション後の、Chk1 S345リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。Rad17は、添加コントロールとして含められる。
【図6】図6は、Chk1、ATR、ATMおよびDNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAの種々の組み合わせでの処理と比較した場合、ルシフェラーゼ(Luc)に対するコントロールsiRNAでのトランスフェクション後の、H2AXリン酸化の%(二本鎖DNA破壊の尺度)のプロットである。
【図7】図7は、抗Polαモノクローナル抗体SJK−132−20(Tanakaら(1982)J.Biol.Chem.257:8386)または陰性コントロールとしてSV40 T抗原に対するモノクローナル抗体(Pab 419,Calbiochem,San Diego,Calif.)を使用する免疫沈降(IP)において、DNAポリメラーゼαでのChk1およびChk1 S345Pの免疫共沈降を示すゲルのウェスタンブロットである。結果は、ルシフェラーゼ(Luc)、Chk1もしくはATR(すべてヒドロキシ尿素ありまたはなし(+/−HU))に対するsiRNAで処理した細胞について示される。
【図8】図8は、抗Chk1モノクローナル抗体58D7を使用する免疫沈降(IP)において、Chk1でのDNAポリメラーゼα(Polα)およびChk1 S345Pの免疫共沈降を示すゲルのウェスタンブロットである。結果は、ヒドロキシ尿素(HU)、ゲムシタビン(Gem)またはゲムシタビンと、抗体58D7に対する結合についてChk1と競合する過剰のペプチド(コグネイト免疫原CNRERLLNKMCGTLPYVAPELLKRREF)(配列番号8)との組み合わせで処理した細胞、ならびに未処理(Unt)細胞について示される。
【図9】図9は、HUでの処置の長さ(時間単位)の関数として、抗Polαモノクローナル抗体SJK−132−20(Tanakaら(1982)J.Biol.Chem.257:8386)を使用する免疫沈降(IP)において、DNAポリメラーゼαでのChk1およびChk1 S345Pの免疫共沈降を示すゲルのウェスタンブロットである。
【図10】図10は、ルシフェラーゼ(Luc)、Chk1もしくはATRに対するsiRNA(すべてヒドロキシ尿素ありまたはなし(+/− HU))でのトランスフェクション後、Chk S345およびRPA32 S33リン酸化を示すゲルのウェスタンブロットである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で引用される各特許、特許出願公開または他の刊行物(データベースエントリー(例えば、タンパク質配列および核酸配列)を含む)は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0029】
(I.定義)
上記でおよび本開示全体を通じて使用される場合、以下の用語は、別段示されなければ、以下の意味を有することが理解されるものとする。
【0030】
「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「この、上記(the)」は、文脈が明らかに別のことを示すのでなければ、それらの対応する複数の言及を含む。
【0031】
別段示されなければ、「または、もしくは、あるいは(or)」は、「および、ならびに(and)」を排除しない。例えば、「要素Aまたは要素B」を記載する請求項は、Aのみによる実施形態、Bのみによる実施形態、およびAおよびBの両方による実施形態を包含する。
【0032】
「被験体」または「患者」とは、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0033】
「哺乳動物」とは、ヒトおよび他の哺乳動物を意味する。
【0034】
「組成物」とは、特定の量において特定の成分を含む生成物、および直接的にもしくは間接的に特定の量において特定の成分の組み合わせから生じる任意の生成物を包含することが意図される。
【0035】
「阻害する」または「処置する、処理する」もしくは「処置、処理」とは、増殖性障害と関連した症状の発生の遅延および/または発生することが予期されるこのような症状の重篤度の低下を包含する。従って、用語は、有益な結果が増殖性障害を有する脊椎動物被験体またはこのような障害もしくは症状を発生させる可能性を有する被験体に付与されたことを示す。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「治療上有効な量」または「有効量」とは、単独で、またはさらなる治療剤との組み合わせ(含有量に依存して)において細胞、組織もしくは被験体に投与される場合、増殖性障害を予防もしくは改善するに有効である薬剤(例えば、DNAポリメラーゼαもしくはChk1のインヒビター)の量をいう。有効量はまた、診断を可能にするかもしくは促進するに十分な量を意味する。「治療上有効な用量」とは、症状の改善(例えば、関連する医学的状態の処置、治癒、予防もしくは改善、またはこのような状態の処置、治癒、予防もしくは改善の速度の増大)を生じるに十分な、薬剤の量をいう。特定の患者もしくは脊椎動物被験体にとって有効な量は、処置される状態、患者の全般的な健康状態、投与の経路および用量ならびに副作用の重篤度のような要因に依存して変動し得る(例えば、米国特許第5,888,530号明細書(Nettiらに対して発行)を参照のこと)。有効量は、顕著な副作用もしくは毒性効果を避ける最大用量もしくは投与プロトコルであり得る。上記効果は、少なくとも5%、通常は少なくとも10%、より通常には少なくとも20%、最も通常には少なくとも30%、好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、少なくとも60%、理想的には、少なくとも70%、より理想的には、少なくとも80%、および最も理想的には少なくとも90%だけ、診断尺度またはパラメーターの改善を生じる。ここで100%は、正常の被験体によって示される診断パラメーターとして同定される(例えば、Maynardら(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照のこと)。
【0037】
本明細書で使用される場合、「治療剤」とは、単独で、もしくは別の薬剤との組み合わせのいずれかで、望ましい治療効果、改善効果、阻害効果もしくは予防効果に寄与し得る薬剤である。このような「治療剤」とは、必ずしも、単独で投与される場合、任意の治療効力を有さなくてもよい。例えば、本発明のDNAポリメラーゼαインヒビターまたは本発明のChk1インヒビターは、別個に使用される場合、必ずしも治療的有用性を有しなくてもよいが、にもかかわらず、本発明の方法において一緒に使用される場合に治療的に有効であり得る。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合、治療上有効な用量とは、その成分単独に言及する。組み合わせに適用される場合、治療上有効な用量とは、組み合わせて投与されようとそうでなかろうと、連続してまたは同時に治療的効果を生じる活性成分の組み合わせ量をいう。
【0038】
「低分子」とは、10kD未満、代表的には、2kD未満、しばしば1kD未満、好ましくは、0.7kD未満、および最も好ましくは、約0.5kD未満である分子量を有する分子として定義される。低分子としては、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射活性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物、および抗体模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。治療剤として、低分子は、細胞に対してより透過性であり、分解に対して感受性が低く、かつ大きな分子より免疫応答を誘導しにくい可能性がある。低分子(例えば、抗体およびサイトカインのペプチド模倣物、ならびに低分子毒素)が記載されている(例えば、Cassetら(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.307:198−205;Muyldermans(2001)J.Biotechnol.74:277−302;Li(2000)Nat.Biotechnol.18:1251−1256;Apostolopoulosら(2002)Curr.Med.Chem.9:411−420;Monfardiniら(2002)Curr.Pharm.Des.8:2185−2199;Dominguesら(1999)Nat.Struct.Biol.6:652−656;Sato and Sone(2003)Biochem.J.371:603−608;米国特許第6,326,482号明細書(Stewartらに対して発行)を参照のこと)。
【0039】
「投与」および「処置」とは、動物、ヒト、実験的被験体、細胞、組織、器官もしくは生物学的流体に対して適用される場合、外因性の薬学的薬剤、治療剤、診断剤もしくは組成物を、上記動物、ヒト、被験体、細胞、組織、器官、もしくは生物学的流体に接触させることをいう。「投与」および「処置」とは、例えば、治療法、薬物動態学的方法、診断法、研究法および実験法に言及し得る。細胞の処理は、上記細胞への試薬の接触、および流体(ここでこの流体は上記細胞と接触している)への試薬の接触を包含する。「投与」および「処置」とはまた、例えば、細胞のインビトロおよびエキソビボ処置、試薬、診断組成物、結合組成物によるインビトロ処置およびエキソビボ処置、または別の細胞によるインビトロ処置およびエキソビボ処置を意味する。「処置」とは、ヒト、脊椎動物、または研究被験体に適用される場合、治療的処置、予防的手段、研究適用および診断適用をいう。「処置」とは、ヒト、脊椎動物、もしく研究被験体、または細胞、組織もしくは器官に適用される場合、本発明の治療剤の組み合わせと、ヒトもしくは動物被験体、細胞、組織、生理学的区画、または生理学的流体との接触を包含する。
【0040】
別段示されなければ、薬剤によって引き起こされる「阻害」または「活性化」の程度は、タンパク質、遺伝子、細胞、細胞培養物、もしくは生物が阻害剤もしくは活性化剤で処理され、かつその結果が上記薬剤なしのコントロールサンプルと比較されるアッセイを使用して決定される。コントロールサンプル(すなわち、薬剤で処理されていない)は、100%に対する相対活性値として割り当てられる。「阻害」とは、上記コントロールに対する活性値が約90%未満、代表的には、85%未満、より代表的には、80%未満、最も代表的には、75%未満、一般には、70%未満、より一般には65%未満、最も一般には、60%未満、代表的には、55%未満、通常50%未満、より通常には45%未満、最も通常には40%未満、好ましくは、35%未満、より好ましくは、30%未満、さらにより好ましくは、25%未満、および最も好ましくは、25%である場合に、達成される。「活性化」とは、上記コントロールに対する活性値が、約110%、一般には少なくとも120%、より一般には少なくとも140%、より一般には少なくとも160%、頻繁には少なくとも180%、より頻繁には少なくとも2倍、最も頻繁には少なくとも2.5倍、通常は少なくとも5倍、より通常には少なくとも10倍、好ましくは、少なくとも20倍、より好ましくは、少なくとも40倍、および最も好ましくは、40倍より高い場合に達成される。
【0041】
活性化または阻害におけるエンドポイントは、以下のようにモニターされ得る。処置に対する活性化、阻害、および応答(例えば、細胞、生理学的流体、組織、器官および動物もしくはヒト被験体のもの)は、エンドポイントによってモニターされ得る。上記エンドポイントは、例えば、炎症、腫瘍原性、または細胞顆粒喪失もしくは分泌(例えば、サイトカイン、毒性酸素、もしくはプロテアーゼの放出)のうちの1つ以上の徴候の所定の量もしくは割合を含み得る。上記エンドポイントは、例えば、イオンフラックスもしくは輸送の所定の量;細胞移動;細胞接着;細胞増殖;転移の可能性;細胞分化;および表現型の変化(例えば、炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期、もしくは転移に関する遺伝子の発現の変化を含み得る(例えば、Knight(2000)Ann.Clin.Lab.Sci 30:145−158;Hood and Cheresh(2002)Nature Rev.Cancer 2:91−100;Timmeら(2003)Curr.Drug Targets 4:251−261;Robbins and Itzkowitz(2002)Med.Clin.North Am.86:1467−1495;Grady and Markowitz(2002)Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.3:101−128;Bauerら(2001)Glia 36:235−243;Stanimirovic and Satoh(2000)Brain Pathol.10:113−126を参照のこと)。
【0042】
阻害のエンドポイントは、一般には、コントロールの75%以下、好ましくは、コントロールの50%以下、より好ましくは、コントロールの25%以下、および最も好ましくは、コントロールの10%以下である。一般には、活性化のエンドポイントは、コントロールの少なくとも150%、好ましくは、コントロールの少なくとも2倍、より好ましくは、コントロールの少なくとも4倍、および最も好ましくは、コントロールの少なくとも10倍である。
【0043】
用語「〜から本質的になる(consists essentially of)、または「〜から本質的になる(consist essentially of)」もしくは「〜から本質的になる(consisting essentially of)」のようなバリエーションは、本明細書中および特許請求の範囲全体を通して使用される場合、任意の記載される要素または要素の群の包含、および記載される要素と類似または異なる性質の他の要素の選択肢的包含を示し、これらは、特定の投与レジメン、方法、もしくは組成物の基本的もしくは新規な特性を著しく変化させない。非限定的例として、記載されるアミノ酸配列から本質的になる結合化合物はまた、上記結合化合物の特性に著しく影響を及ぼさない1個以上のアミノ酸(1個以上のアミノ酸残基の置換を含む)を含み得る。
【0044】
(抗体関連の定義)
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、望ましい生物学的活性を示す抗体またはそのフラグメントの任意の形態をいう。従って、それは、その最も広義の意味において使用され、具体的には、それらが望ましい生物学的活性を示す限りにおいて、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、複数特異的抗体(例えば、二特異的抗体)、および抗体フラグメントを包含する。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合フラグメント」または「その結合フラグメント」とは、全長抗体の望ましい生物学的活性(例えば、DNAポリメラーゼαの阻害)をなお実質的に保持する抗体のフラグメントもしくは誘導体を包含する。従って、用語「抗体フラグメント」とは、全長抗体の一部分、一般には、その抗原結合領域もしくは可変領域をいう。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;ダイアボディー;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、sc−Fv);ならびに抗体フラグメントから形成される複数特異的抗体が挙げられる。代表的には、結合フラグメントもしくは誘導体は、その阻害活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、結合フラグメントもしくは誘導体は、その生物学的活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%もしくは100%(またはそれ以上)を保持するが、望ましい生物学的効果を発揮するに十分なアフィニティーを有する任意の結合フラグメントが有用である。抗体の抗原結合フラグメントは、その生物学的活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換を含み得ることもまた意図される。
【0046】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用される場合、実質的に均一の抗体(すなわち、微量に存在し得る考えられる天然に存在する変異を除いて、同一である集団を含む個々の抗体)の集団から得られる抗体をいう。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗体エピトープに対して指向される。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、代表的には、異なるエピトープに対して指向される(または特異的である)複数の抗体を含む。修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を要するとみなされるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、最初にKohlerら(1975)Nature 256:495によって記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照のこと)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら(1991)Nature 352:624およびMarksら(1991)J.MoI.Biol.222:581において記載される技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0047】
本明細書のモノクローナル抗体は、それらが望ましい生物学的活性を示す限りにおいて、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種から得られるかまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかもしくは相同である一方で、この鎖の残りが別の種から得られるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかもしくは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)およびこのような抗体のフラグメントを具体的には含む(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855)。
【0048】
「ドメイン抗体」とは、重鎖の可変領域もしくは軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能的な免疫グロブリンフラグメントである。いくらかの場合において、2種以上のVH領域は、二価ドメイン抗体を作製するためにペプチドリンカーで共有結合される。上記二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じ抗原を標的としてもよいし、異なる抗原を標的としてもよい。
【0049】
「二価抗体」とは、2つの抗原結合部位を含む。いくつかの場合において、上記2つの結合部位は、同じ抗原特異性を有する。しかし、二価抗体は、二特異的であり得る(以下を参照のこと)。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「一本鎖Fv」または「scFv」抗体とは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む抗体フラグメントであって、これらドメインが単一のポリペプチド鎖中に存在するものをいう。一般に、上記Fvポリペプチドは、上記sFvが抗体結合のための望ましい構造を形成することを可能にする、上記VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの総説については、Pluckthun(1994)THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES,vol.113,RosenburgおよびMoore編.Springer−Verlag,New York,pp.269−315を参照のこと。
【0051】
本明細書のモノクローナル抗体はまた、ラクダ化した(camelized)単一ドメイン抗体を含む。例えば、Muyldermansら(2001)Trends Biochem.Sci.26:230;Reichmannら(1999)J.Immunol.Methods 231:25;国際公開第94/04678号パンフレット;国際公開第94/25591号パンフレット;米国特許第6,005,079号明細書(これらは、それら全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと。一実施形態において、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるように、改変を有する2つのVHドメインを含む単一ドメイン抗体を提供する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「ダイアボディー」とは、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントであって、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)をさらに含むもの(VH−VLまたはVL−VH)をいう。非常に短いので同じ鎖上で2つのドメイン間の追形成を可能にするリンカーを使用することによって、上記ドメインを、別の鎖の相補性ドメインと対形成させ、かつ2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディーは、例えば、欧州特許第404097B1号明細書;国際公開第93/11161号パンフレット;およびHolligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:6444−6448においてより詳細に記載される。操作された抗体改変体の総説については、一般に、Holliger and Hudson(2005)Nat.Biotechnol.23:1126−1136を参照のこと。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」とは、非ヒト(例えば、マウス)抗体由来の配列およびヒト抗体由来の配列を含む抗体の形態をいう。このような抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含む。一般に、上記ヒト化抗体は、少なくとも1つの、および代表的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここで上記超可変ループのすべてもしくは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応しかつFR領域のすべてもしくは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。上記ヒト化抗体はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)、代表的には、ヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分を含む。齧歯類抗体のヒト化形態は、一般に、親齧歯類抗体の同じCDR配列を含むが、特定のアミノ酸置換が、上記ヒト化抗体のアフィニティーを増大させるかまたは安定性を増大させるために含められ得る。
【0054】
本発明の抗体はまた、変化したエフェクター機能を提供するために、改変された(またはブロックされた)Fc領域を有する抗体を含む。例えば、米国特許第5,624,821号明細書;国際公開第2003/086310号パンフレット;国際公開第2005/120571号パンフレット;国際公開第2006/0057702号パンフレット;Presta(2006)Adv.Drug Delivery Rev.58:640−656を参照のこと。このような改変は、診断および治療において考えられる有益な効果とともに、免疫系の種々の反応を増強または抑制するために使用され得る。Fc領域の改変としては、アミノ酸変化(置換、欠失および付加)、グリコシル化もしくは脱グリコシル化、および複数Fcの付加が挙げられる。上記Fcに対する変化はまた、治療的抗体における抗体半減期を変化させ得、そしてより長い半減期は、付随する増大した簡便性および材料の使用の減少とともに、投与頻度の減少を生じる。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:734−35の731を参照のこと。
【0055】
用語「完全にヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体をいう。このような完全にヒト化抗体とは、トランスジェニックマウス、またはさらに他の動物を使用して生成され得る。例えば、Lonberg(2005)Nature Biotechnol.23:1117を参照のこと。完全にヒト抗体は、マウス、マウス細胞、またはマウス細胞由来のハイブリドーマにおいて生成される場合、マウス炭水化物鎖を含み得る。同様に、「マウス抗体」とは、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体をいう。
【0056】
「結合化合物」とは、標的に結合し得る分子、低分子、大分子、ポリペプチド、抗体またはフラグメントもしくはそのアナログ、あるいは可溶性レセプターをいう。「結合化合物」とはまた、イオン化分子、および共有的に改変されたもしくは非共有的に改変された分子(例えば、リン酸化、アシル化、架橋、環化、もしくは制限された切断によって改変される)に対する分子の複合体(例えば、非共有結合複合体)であって、標的に結合し得るものをいう。抗体に言及して使用される場合、用語「結合化合物」とは、抗体およびその結合フラグメントの両方をいう。「結合」とは、上記結合化合物は溶液中で溶解もしくは懸濁され得る場合に、上記結合化合物と標的との会合(ここでこの会合が、上記結合化合物の通常のブラウン運動の減少を生じる)をいう。「結合組成物」とは、安定化剤、賦形剤、塩、緩衝剤、溶媒、もしくは付加物と組み合わせて、標的に結合し得る分子(例えば、結合化合物)をいう。
【0057】
II.DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびChk1のインヒビターとの併用療法
本明細書で開示される発明は、DNAポリメラーゼαおよびChk1の特異的阻害によって、例えば、DNAポリメラーゼαおよびChk1の特異的阻害を使用した、増殖性障害の処置のための方法および組成物に関する。
【0058】
Chk1は、DNA損傷に応じて活性化されている細胞周期チェックポイント制御またはより高等な真核生物における複製の引き留めにおける重要なエフェクターキナーゼである。Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Sorensenら(2003)Cancer Cell 3:247;Syljuasenら(2005)Mol Cell Biol.25:3553;Choら(2005)Cell Cycle 4:131。代表的には、DNA代謝拮抗物質で処理した細胞は、S期内チェックポイントの一部としてChk1を活性化して、後期起点刺激(late origin firing)を制御しそして複製分岐の引き留めを安定化する。Feijooら(2001)J.Cell Biol.154:913;Choら(2005)Cell Cycle 4:131。HUは、dNTPプールを除去して、DNA複製を阻害するリボヌクレオチドレダクターゼインヒビターである。ゲムシタビンは、リボヌクレオチドレダクターゼを阻害するが、DNAに組み込まれた場合に、DNA複製をまた阻害する。Sampathら(2003)Oncogene 22:9063。Ara−Cは、DNAに組み込まれかつ複製に関わるDNAポリメラーゼを妨げるヌクレオシドアナログである。Townsend & Cheng(1987)Mol.Pharmacol.32:330;Mikita & Beardsley(1988)Biochemistry 27:4698。図1は、代謝拮抗物質であるゲムシタビン(Gem)、シタラビン(Ara−C,シトシンアラビノシド)、およびヒドロキシ尿素(HU)が、Chk1 S345リン酸化(これは、Chk1経路の活性化のマーカーである)を誘導することを確認する(Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Zhao & Piwnica−Worms(2001)Mol.Cell.Biol.21:4129;Capassoら(2002)J.Cell Sci.115:4555)。
【0059】
DNA代謝拮抗物質は、DNA合成の全般的抑制を介してそれらの効果を発揮するという事実に鑑みると、複製に関わるポリメラーゼの阻害は、Chk1経路の活性化を誘発し得ることが考えられた。この仮定を試験するために、特異的siRNA二重鎖を使用して、DNA複製ポリメラーゼα、εまたはδをU20S細胞において特異的に除去した。これをその後、Chk1 S345リン酸化について試験した。
【0060】
siRNAによるPolαの除去は、残基S345でのChk1リン酸化を誘導して、Chk1 S345Pを生成することによって、代謝拮抗物質曝露を表現型コピーする。Polαの特異的除去は、Chk1 S345リン酸化を、HU処理の後に検出可能なものに類似のレベルまで誘導する(図2A)。PolεおよびPolδの除去は、これら条件下でChk1 S345リン酸化を促進しなかった(図2A)。
【0061】
PolαおよびChk1の組み合わせ除去は、S期内遅延およびDNA損傷の蓄積を生じる。図3〜6を参照のこと。PolαとChk1との間のこと遺伝的相互作用と一致して、Chk1は、Polαと免疫共沈降し、このことは、物理的相互作用を示唆する。図7〜8を参照のこと。PolαおよびATR(より低い程度にはATM)の同時除去は類似の表現型を生じ、このことは、ATRおよびChk1が上位でありかつ複製ストレス後にゲノム完全性の維持のために必要とされることを示唆する。複製ストレス後、Polα会合Chk1は、ATR依存性様式において、S345で迅速にリン酸化される。顕著なことには、この文脈において効率的にChk1をリン酸化する能力は、DNA損傷の抑制と相関する。
【0062】
本発明者らは次に、γ−H2A.Xリン酸化(二本鎖DNA破壊のマーカー)を試験した(Rogakouら(1998)J.Biol.Chem.273:5858;Nazarovら(2003)Radiat.Res.160:309)。γ−H2A.Xリン酸化は、細胞内染色およびFACS分析によって評価される場合、Polα除去細胞において中程度に増強され、3N集団において優先的に発現された。このことは、S期を通り抜けている細胞内のDNA損傷を示唆する(図2Bおよび図2C)。対照的に、PolεおよびPolδ除去細胞は、γ−H2A.Xの蓄積を示さなかった(図2C)。従って、Polαの特異的除去は、Chk1 S345リン酸化および軽度のS期内欠陥を誘導した。
【0063】
図2Dは、Polα単独の除去が、PolαとPolεまたはPolαとPolδの同時除去より多くのChk1のリン酸化を誘導することを実証する。この驚くべき結果は、本発明において使用するための最も望ましいDNAポリメラーゼαインヒビターがPolαに非常に特異的であるはずであり、特に、上記インヒビターがPolεの阻害より優先的なPolαの阻害を示すはずであることを示唆する。広い範囲のDNAポリメラーゼインヒビター(例えば、アフィジコリン)は、本発明の方法および組成物において、DNAポリメラーゼα特異的薬剤としての使用に適していない。本発明の方法および組成物における使用に適したDNAポリメラーゼα特異的インヒビターは、Polεと比較してPolαの活性を、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍以上の比率で、優先的に阻害する。この比率は、PolεのIC50に対するPolαについての、問題の化合物のIC50(すなわち、半数阻害(half−maximal inhibition)を達成するために必要とされる濃度)の比率として決定される。上記IC50は、Oshigeら(2004)J.Bioorg.Med.Chem.12:2597;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1308:256;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1336:509に記載されるように、標準的なDNAポリメラーゼアッセイによって決定される。実施例8を参照のこと。
【0064】
分裂酵母における遺伝的研究は、PolαとS内チェックポイントとの間の関連を示唆した(Bhaumik & Wang(1998)Mol.Cell Biol.9:2107)。Xenopus抽出物中でも、Polαによって駆動されるDNA合成は、DNA損傷後にChk1の完全活性化に必要とされる(Byunら(2005)Genes & Dev.19:1040)。
【0065】
実施例4〜7に記載される結果は、Polαが、哺乳動物細胞において遺伝的に、生化学的にかつ機能的にChk1と相互作用することを初めて明らかにする。さらに、この複合体内のChk1活性の適切な制御は、主にATRによって、複製ストレス後のDNA損傷を抑制するために必要とされる。
【0066】
これらの観察は、選択的チェックポイントアクチベーター(すなわち、DNA Polαインヒビター)と選択的Chk1インヒビターとの組み合わせが相乗効果を生じることをさらに実証する。この予測される表現型は、複製分岐崩壊(replication fork collapse)、DNA損傷の蓄積およびアポトーシスの開始を含む。本発明は、PolαおよびChk1両方のインヒビター(例えば、治療剤)の使用を包含する、この二重の不活性化をもたらすための組成物および方法に関する。治療剤(例えば、薬剤)は、種々の疾患の処置において伝統的に使用されるが、Polαおよび/またはChk1の活性を阻害する任意の方法は、このような阻害が治療剤、薬物、物質いずれの物質の投与もなく、もたらされるとしても、本発明の方法において使用され得る。
【0067】
(Chk1依存性チェックポイント活性化におけるPolα、Polε、およびPolδの役割)
以前の研究は、Chk1が複製ストレスの間にDNA損傷を抑制し得ることを示した(Choら(2005)Cell Cycle 4:131)。Chk1が同様に、Polα除去後にDNA損傷を抑制するために必要とされ得るという仮定を試験するために、本発明者らは、Polα、Polε、もしくはPolδとChk1との同時除去後に、細胞におけるDNA損傷表現型を試験した。同様に、PolαおよびChk1の同時除去のみが、Polε/Chk1組み合わせおよびPolδ/Chk1組み合わせ、ならびにルシフェラーゼコントロールとは対照的に、RPA32リン酸化を引き起こした(図3)。同様に、FACSを使用したγ−H2A.Xリン酸化の定量的試験によって、Polα/Chk1同時除去後の細胞の強染色集団が明らかになった(図4A)。これら細胞は、約3N倍数性とともに蓄積し(PI染色によって評価される場合)、このことは、特異的S期内欠陥が、Polε/Chk1除去の後にも、Polδ/Chk1除去の後にも、コントロールsiRNA除去の後にも認められないことが示唆された(図4A)。注意すべきは、そして代謝拮抗物質を使用する以前の観察と一致して(Choら(2005)Cell Cycle 4:131)、Polα/Chk1の同時除去は、PolαもしくはChk1が単一で除去された細胞と比較して、有意に増強されたγ−H2A.Xリン酸化を生じ(図4A)、本発明の併用療法の相乗効果を示した。
【0068】
図4Bは、Chk1の低分子インヒビター(3−アミノ−6−{3−[({[4−(メチルオキシ)フェニル]メチル}アミノ)カルボニル]フェニル}−N−[(3S)−ピペリジン−3−イル]ピラジン−2−カルボキサミド)が、上記低分子Chk1インヒビターによる併用処置およびPolAのsiRNA除去が、実質的二本鎖DNA破壊を示す細胞の割合を、コントロールの1%未満から50%超まで増大させる点で、特異的siRNA二重鎖でのChk1の除去と同じ結果を生じることができることを実証する。
【0069】
従って、Polαの特異的除去(しかしPolεでもPolδでもない)はChk1 S345リン酸化を誘導し、このことは、Chk1依存性チェックポイント活性化を示唆する。同様に、PolαとChk1との同時除去は、DNA損傷マーカー(H2A.X S139およびRPA32 S33)の蓄積を増強した。これら効果は、PolεもしくはPolδが、Chk1により同時除去される場合に観察されなかった。このことは、応答プロフィールの特異性を示唆する。これらデータは、複製分岐点におけるPolα、Polε、およびPolδの異なる役割を示唆する。
【0070】
ATRは、DNA損傷もしくは複製ストレスに応じる、Chk1リン酸化の上流アクチベーターである(Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Zhao & Piwnica−Worms(2001)Mol.Cell.Biol.21:4129)。Chk1は、Ser 317および345でリン酸化され、そして複製分岐の引き留めに応じて、ATRによって活性化される(Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Hekmat−Nejadら(2000)Curr.Biol.10:1565.;Zhao & Piwnica−Worms(2001)Mol.Cell.Biol.21:4129)。従って、本発明者らは、Polα除去後のChk1、ATRとATMとの間の上位関係を試験した。
【0071】
ATRもしくはATMとPolαとの同時除去は、検出可能なChk1 S345リン酸化の蓄積を変化させなかった(すなわち、ホスホ−S345誘導は、Polαを単一で除去した細胞から調製された溶解物中で検出されたものに類似していた(図5)。このことは、ATRもしくはATMいずれかの非存在下で、Chk1の細胞性プールが活性化されることを示唆する。Polαの単一の除去は、ルシフェラーゼコントロールsiRNA、ATR siRNAもしくはATM siRNAについての0.2%、およびChk1 siRNAについての0.5%(図6)と比較して、トランスフェクトされた細胞のうちの4.8%においてγ−H2A.Xの蓄積をもたらした。しかし、Polα/Chk1、Polα/ATR、およびPolα/ATMの組み合わせsiRNAノックダウンは、それぞれ、21%、14.6%および7.3%のγ−H2A.X陽性画分を生じた(図6)。従って、Polα/ATRの組み合わせ除去は、いくらか低下した表現度を有するにも拘わらず、PolαとChk1との同時除去後に観察されたものと同様の表現型を生じた。Polα/ATMの組み合わせ除去は、Polα/ATR組み合わせに対して減少したγ−H2A.X表現型を生じた。γ−H2A.Xシグナルは、Polαの単一の除去後に認められたものと比較してわずかに上昇していた。
【0072】
全体的に、これら観察は、Chk1活性化(ATRによって主に駆動される)がPolαの除去後のDNA損傷の抑制に必須であることを示唆する。ATRもしくはATMいずれかの特異的除去は、Polαノックダウン後のChk1 S345の総細胞性蓄積に対してほとんど認識できない影響を有した(図5)のに対して、複製ストレスの間のDNA損傷の機能的抑制は、ATRおよびChk1を主に介して媒介されるようであるが、ATMからの寄与は、除外できない。
【0073】
(Chk1 S345PとPolαとの物理的相互作用)
Polαと、Chk1、ATRとの間の強い遺伝的相互作用および機能的相互作用は、PolαとS期内チェックポイント装置と、特異的にChk1との間の直接的な生化学的相互作用の可能性を高めた。Polαは、ヒドロキシ尿素で前もって処理して、複製ストレスを誘導したU20S細胞から免疫沈降した。SDS−PAGEおよびウェスタンブロット後に、Polα免疫複合体は、Chk1の容易に検出可能なレベルを含むことが分かった(図7)。PolαとChk1との間の会合は、ヒドロキシ尿素も、ATRも要しなかった。予測されるように、Chk1は、Chk1を除去した細胞から調製したPolα免疫沈降において検出できなかった。注意すべきは、ヒドロキシ尿素への曝露が、Polα免疫沈降物内で容易に検出可能なChk1 S345の蓄積をもたらしたが、ATRを除去した細胞においてはそうでなかった(図7)。
【0074】
補完的免疫沈降実験もまた行った。Chk1の免疫沈降、次にSDS−PAGEおよびウェスタンブロットは、Chk1免疫複合体内の内因性Polαの存在を実証した(図8)。繰り返すと、Chk1との相互作用は本質的であるようであったのに対して、上記Chk1免疫複合体内のホスホ−S345の蓄積は、HUもしくはGEMへの曝露によって誘導された。コントロール実験を、抗Chk1抗体に対してコグネイト免疫原ペプチド(配列番号8)を競合させて行って、上記免疫沈降の特異性を確認した(図8)。
【0075】
まとめると、これら免疫沈降の結果は、Chk1が増殖しつつある細胞においてPolαと会合し、そして上記チェックポイントエフェクターがそれらの潜在的標的のすぐ近くに存在することを示唆する、そうであるならば、この明らかに予め組み立てられた複合体は、上記複製チェックポイントの関与に対して迅速に応答するはずであることを予期し得る。Polα複合体におけるChk1 S345蓄積の過程によって、Chk1 S345応答が、試験される第1の時点(すなわち、0.5時間)で完了していることが明らかにされた(図9)。全体的に、これらデータは、Chk1がPolαと会合し、そしてATR依存性様式で、複製ストレス(ヒドロキシ尿素)後のこの状況において迅速にリン酸化され得ることを示唆する。これら観察は、Polαと、Chk1、ATRとの間の遺伝的相互作用を示唆する上記機能的データと一致している。
【0076】
全細胞抽出物の直接免疫ブロッティングは、Chk1およびATRがそれらそれぞれのsiRNAでのトランスフェクション後に除去されるのに対して、PolαレベルはChk1除去によっても、ATR除去によっても本質的に影響を受けないことを確認した(図10)。ルシフェラーゼ(コントロール)siRNAでトランスフェクトした細胞において、HUへの曝露は、これらの条件下での機能的S期内チェックポイントの存在と一致して、強いChk1 S345リン酸化および低レベルのRPA32リン酸化を誘発した。Chk1 S345のレベルはまた、上記ATR siRNAでトランスフェクトした細胞のHU処理によって上昇したが、RPA32は、Chk1 siRNAでトランスフェクトしたHU処理細胞に認められたものと同様に、高レベルでリン酸化された(図10)。従って、HUは、ATRの存在下でも非存在下でも、Chk1 S345リン酸化の類似のレベルを誘導するが、DNA損傷は、ATRが存在しない場合には増強される。全体的に、これら結果によって、HUがATRの存在下または非存在下でChk1 S345Pを誘導する(図10)が、Polαに結合したChk1がS345に対してリン酸化しない(図7)ことが明らかになる。HU誘導性DNA損傷は、ATRが存在する場合にのみ抑制され(図10)かつChk S345PはATRが存在する場合にのみPolαと免疫沈降可能な複合体を形成する(図7)ので、複製ストレス後のDNA損傷の適切な抑制が、Chk1 S345P−Polα複合体の形成に依存し、そしてこれら複合体がDNA損傷の抑制を担うことが考えられる。
【0077】
III.DNAポリメラーゼαインヒビター
DNAポリメラーゼαを阻害する任意の方法が、本発明の方法において使用され得、そしてDNAポリメラーゼαを阻害し得る任意の薬剤が、本発明の組成物において使用され得る。本発明のDNAポリメラーゼα特異的インヒビターは、例えば、PolAによってコードされる場合、他のDNAポリメラーゼとは対照的に、上記真核生物性DNAポリメラーゼαのアルファ(α)鎖の特異的インヒビターである。ヒトDNAポリメラーゼαに関する配列情報および他の関連データは、公のデータベース(例えば、GenBankのアクセッション番号NP_058633およびNM_016937、ならびにMendelian Inheritanc in Manのアクセッション番号312040、ならびにGeneID番号5422)において見いだされ得る。データベースエントリーは、NCBI Entrezウェブサイトで利用可能である。この情報は、大分子インヒビター(例えば、アンチセンス核酸、siRNAおよび抗体)の設計および生成において特に有用であり得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「特異的」とは、DNAポリメラーゼのサブタイプ(例えば、DNAポリメラーゼアルファ(α)、DNAポリメラーゼベータ(β)、DNAポリメラーゼイプシロン(ε)およびDNAポリメラーゼガンマ(γ))に関して選択的に結合することをいう。種々の実施形態において、上記DNAポリメラーゼα阻害は、DNAポリメラーゼεもしくはDNAポリメラーゼδのIC50の1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、12分の1、15分の1、20分の1、25分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1、150分の1、200分の1、300分の1、400分の1、500分の1、700分の1、1000分の1以下(すなわち、より有効)であるIC50で、DNAポリメラーゼαを阻害する特異的方法(または薬剤)を使用してもたらされる。他の実施形態において、上記DNAポリメラーゼα阻害は、DNAポリメラーゼεもしくはDNAポリメラーゼδのIC50の1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、12分の1、15分の1、20分の1、25分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1、150分の1、200分の1、300分の1、400分の1、500分の1、700分の1、1000分の1、またはそれ以下である(すなわち、より有効である)IC50で、DNAポリメラーゼαおよびわずか1種の他のDNAポリメラーゼを阻害する選択的方法(または薬剤)を使用してもたらされる。いくつかの、しかしすべてではないが実施形態において、上記DNAポリメラーゼインヒビターは、DNAポリメラーゼε以外のDNAポリメラーゼαを優先的に阻害する。
【0079】
なお別の実施形態において、他のDNAポリメラーゼと比較した場合のDNAポリメラーゼαの特異性は、IC50以外のアフィニティー測定値(例えば、ミカエリス定数(Km)、または会合(Ka)もしくは解離(Kd)平衡結合定数)の比率によって測定される。各場合において、アフィニティーの比率は、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍、またはそれ以上の範囲に及び得る。なおさらなる実施形態において、会合(ka)速度定数および解離(kd)速度定数の比率が使用され得る。一実施形態において、上記速度定数または平衡結合定数は、表面プラズモン共鳴分光法を使用して(例えば、Biacore(登録商標)機器(Biacore(登録商標) Inc.,Piscataway,New Jersey)を使用して)決定される。ここでDNAポリメラーゼα、または目的のインヒビターは、センサーチップ(例えば、センサーチップCM−5(Biacore(登録商標) Inc.))の表面に結合される。次いで、このセンサーチップは、標準的手順を用いて速度定数もしくは結合定数を決定するために、他の結合パートナーに曝される。例えば、Thurmondら(2001)Eur.J.Biochem.268:5747を参照のこと。
【0080】
DNAポリメラーゼα阻害活性および特異性を決定するための例示的方法が、本明細書に提供されており、そして他のものは、例えば、Togashiら(1998)Biochem.Pharmacol.56:583;Mizushinaら(2001)Biol.Pharm.Bull.24:982;Oshigeら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:2597;Kamisukiら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:5355;Murakami−Nakai(2004)Biochimica et Biophysica Acta 1674:193;Kamisukiら(2002)Biochem.Pharmacol.63:421;Mizushinaら(2000)J.Biol.Chem.275:33957;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1308:256;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1336:509において見いだされ得る。DNAポリメラーゼαに対する薬剤の特異性を決定するための例示的方法は、実施例8において提供されるが、当業者に公知の他の方法が使用され得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、DNAポリメラーゼαの特異的阻害は、低分子を使用してもたらされる。DNAポリメラーゼαの活性を優先的に阻害する例示的化合物としては、4−ヒドロキシ−17−メチリンシステロール(Togashiら(1998)Biochem.Pharmacol.56:583)、糖脂質であるガラクトシルジアシルグリセロール(GDG)(Mizushinaら(2001)Biol.Pharm.Bull.24:982)、パクリタキセル誘導体であるセファロマンニン(Oshigeら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:2597)、デヒドロアルテヌシン(Kamisukiら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:5355;Murakami−Nakai(2004)Biochimica et Biophysica Acta 1674:193;Kamisukiら(2002)Biochem.Pharmacol.63:421;Mizushinaら(2000)J.Biol.Chem.275:33957)、6−(p−n−ブチルアニリノ)ウラシル(CAS 21332−96−7)およびN2−(p−ブチルフェニル)グアニン(CAS 83173−14−2)(Rochowskaら(1982)Biochimica et Biophysica Acta,Gene Structure and Development 699:67)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
DNAポリメラーゼαおよびDNAポリメラーゼβの活性を優先的に阻害する例示的化合物としては、スルホ脂質化合物(例えば、スルホキノボシルジアシルグリセロール)(Mizushinaら(1998)Biochem.Pharmacol.55:537;Ohtaら(1999)Biol.Pharm.Bull.22:111)およびパクリタキセル代謝拮抗物質タキシニン(taxinine)(Oshigeら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:2597)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
DNAポリメラーゼαおよびDNAポリメラーゼεの活性を優先的に阻害する例示的化合物としては、非環式ホスホノメトキシアルキルヌクレオチドアナログ(例えば、9−(2−ホスホノメトキシエチル)グアニンジホスフェートが挙げられるが、これに限定されない。Kramataら(1996)Mol.Pharmacol.49:1005。
【0084】
DNAポリメラーゼα、DNAポリメラーゼβおよびDNAポリメラーゼλの活性を優先的に阻害する例示的化合物としては、レスベラトール(3,4,5−トリヒドロキシスチルベン)が挙げられるが、これに限定されない。Locatelliら(2005)Biochem.J.389:259。レスベラトールは、Chk1を活性化することが示された。Tyagiら(2005)Carcinogenesis 26:1978。
【0085】
他の、あまり特異的ではないDNAポリメラーゼのインヒビターとしては、トリテルペンジカルボン酸であるmispyric acidが挙げられる。Mizushinaら(2005)Biosci.Biotechnol.Biochem.69:1534。
【0086】
DNAポリメラーゼαを特異的に阻害すると以前は考えられていた特定の化合物(例えば、アフィジコリン)(例えば、Haraguchiら(1983)Nucl.Acids Res.11:1197を参照のこと)は、もともと考えられていたよりも特異的ではないことがその後示された。例えば、Kamisukiら(2004)Bioorganic & Med.Chem.12:5355;Oshigeら(2004)J.Bioorg.Med.Chem.12:2597;Popandaら(1995)J.Mol.Med.73:259を参照のこと。このような化合物は、本発明の方法および組成物においてDNAポリメラーゼα特異的インヒビターとして使用され得ないが、それら化合物は、本発明のDNAポリメラーゼα特異的インヒビターおよびChk1インヒビターと組み合わせて、さらなる薬剤(例えば、第3の薬剤)として使用され得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明のDNAポリメラーゼαインヒビターは、約5000nM、2000nM、1000nM、500nM、250nM、100nM、50nM、25nM、10nM、5nM、2.5nM、1nM、0.5nMまたは0.1nM未満のIC50値を示す。
【0088】
DNAポリメラーゼαを選択的に阻害するために使用され得るさらなる化合物としては、siRNA(例えば、配列番号3)(例えば、Stevenson(2004)New.England.J.Med.351:1772を参照のこと)、アンチセンスRNA、および抗体(イントラボディー(例えば、Alvarezら(2000)Clinical Cancer Research 6:3081)を含む)が挙げられる。DNAポリメラーゼαに対する抗体は、Tanakaら(1982)J.Biol.Chem.257:8386およびMillerら(1985)J.Biol.Chem.260:134において開示される。
【0089】
いくつかの実施形態において、DNAに組み込まれ得ない選択的DNAポリメラーゼαインヒビターが使用される。このような組み込み不能なインヒビターは、DNA合成の長期の停止を引き起こし得、チェックポイントの活性化を増強し、そしてDNAポリメラーゼインヒビターと上記チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)インヒビターとの間のより大きな相乗効果を作り出し得る。この増大した相乗効果は、異常に増殖しつつある細胞において優先的に、有糸分裂の分かれ目の誘導に対して増強した特異性を生じ得、従って、他の治療的アプローチと比較した場合に毒性を減少させ得る。
【0090】
IV.Chk1インヒビター
Chk1を阻害する任意の手段は、本発明の方法において使用され得、そしてChk1を阻害し得る任意の薬剤が、本発明の組成物において使用され得る。ヒトChk1に関する配列情報および他の関連データは、公のデータベース(例えば、GenBankのアクセッション番号NM_001274、AAH04202およびNP_001265、ならびにMendelian Inheritance in Manのアクセッション番号603078、ならびにGeneID番号1111)において見いだされ得る。すべてのこれらデータベースエントリーは、NCBI Entrezウェブサイトで利用可能である。この情報は、大分子インヒビター(例えば、アンチセンス核酸、siRNAおよび抗体)の設計および生成において特に有用であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、Chk1を阻害するための方法(またはChk1を阻害するための薬剤)は、他のプロテインキナーゼと比較してChk1を特異的に阻害する。種々の実施形態において、上記Chk1は、IC50で測定した場合に、他のプロテインキナーゼより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍以上で阻害される。いくつかの(しかしすべてではない)実施形態において、上記他のプロテインキナーゼはCDK2である。いくつかの実施形態において、CDK2のIC50に対するChk1についての薬剤のIC50の比率は、式IC50CDK2/IC50Chk1によって表される。いくつかの実施形態において、上記IC50比率は、5倍、10倍または50倍である。例えば、米国特許出願公開第2007/0082900号明細書を参照のこと。
【0092】
なおさらなる実施形態において、他のプロテインキナーゼと比較した場合に、Chk1に対する特異性は、IC50以外のアフィニティー測定値(例えば、ミカエリス定数(Km)、または会合(Ka)もしくは解離(Kd)平衡結合定数)の比率によって測定される。各場合において、アフィニティーの比率は、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、500倍、700倍、1000倍、またはそれ以上の範囲に及び得る。なおさらなる実施形態において、会合(ka)速度定数および解離(kd)速度定数の比率が使用され得る。Chk1キナーゼ阻害活性および特異性を決定するための例示的方法は、本明細書に記載されており(実施例2および3)、そして他のものは、例えば、Lyneら(2004)J.Med.Chem.47:1962において見いだされ得る。Chk1インヒビターの速度定数および平衡結合定数を決定するための例示的方法は、DNAポリメラーゼαインヒビターに関して上記で議論されるように、表面プラズモン共鳴分光法を含む。
【0093】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としては、例えば、米国特許第6,919,341号明細書および米国特許出願公開第2005/0009832号明細書に開示されるようなイミダゾピラジンが挙げられる。他の化合物としては、国際公開第2005/047290号パンフレット;米国特許出願公開第2005/095616号明細書;国際公開第2005/039393号パンフレット;国際公開第2005/019220号パンフレット;国際公開第2004/072081号パンフレット;国際公開第2005/014599号パンフレット;国際公開第2005/009354号パンフレット;国際公開第2005/005429号パンフレット;国際公開第2005/085252号パンフレット;米国特許出願公開第2005/009832号明細書;米国特許出願公開第2004/220189号明細書;国際公開第2004/074289号パンフレット;国際公開第2004/026877号パンフレット;国際公開第2004/026310号パンフレット;国際公開第2004/022562号パンフレット;国際公開第2003/089434号パンフレット;国際公開第2003/084959号パンフレット;国際公開第2003/051346号パンフレット;米国特許出願公開第2003/022898号明細書;国際公開第2002/060492号パンフレット;国際公開第2002/060386号パンフレット;国際公開第2002/028860号パンフレット;JP(1986)61−057587明細書;米国特許出願公開第2006/0106023号明細書;Burkeら(2003)J.Biological Chem.278:1450;およびBondavalliら(2002)J.Med.Chem.45:4875において開示されるものが挙げられる。
【0094】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、米国特許出願公開第2007/0082900号明細書;同第2007/0083044号明細書;同第2007/0082901号明細書;同第2007/0082902号明細書;同第2006/0128725号明細書;同第2006/0041131号明細書および同第2006/0094706号明細書として公開された共有に係る米国特許出願;ならびに米国特許第7,196,092号明細書において開示されるピラゾロピリミジンが挙げられる。
【0095】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、米国特許出願公開第2007/0105864号明細書;および同第2007/0117804号明細書として公開された共有に係る米国特許出願;ならびに米国特許出願第11/758,243号明細書において開示されるイミダゾピラジンが挙げられる。
【0096】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、UCN−01(Mizunoら(1995)FEBS Lett.359:259)および構造的に関連した修飾インドールカルバゾール化合物Go6976(Kohnら(2003)Cancer Res.63:31)、SB−218078およびスタウロスポリン(Jacksonら(2000)Cancer Res.60:566;Zhaoら(2002)J.Biol.Chem.277:46609)、ICP−1(Eastmanら(2002)Mol.Cancer Ther.1:1067)およびCEP−3891(Syljuasenら(2004)Cancer Res.64:9035;Sorensenら(2003)Cancer Cell 3:247)が挙げられる。Tao & Lin(2006)Anti−Cancer Agents Med.Chem.(2006)6:377を参照のこと。
【0097】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、イソグラヌラチミド(Robergeら(1998)Cancer Res.58:5701);デブロモヒメニアルジシン(DBH)(Curmanら(2001)J.Biol.Chem.276:17914);ピリドピリミジン誘導体PD0166285(Wangら(2001)Cancer Res.61:8211;Liら(2002)Radial Res.157:322);シトネミン(米国特許出願公開第2002/0022589号明細書;Stevensonら(2002)J.Pharmacol.Exper.Ther.303:858);米国特許出願公開第2004/034038号明細書ならびに国際公開2002/070494号パンフレット、国際公開第2003/101444号パンフレットおよび国際公開第2005/072733号パンフレットにおいて開示されるような種々のジアリール尿素;A−690002およびA−641397(Chenら(Dec.15,2006)Int.J.Cancer 119:2784−2794(2006年10月3日の印刷の前にインターネット上で公開);ベンゾイミダゾールキノロン(例えば、CHR 124およびCHR 600(Kesickiら(2004)228th ACS Nat’l Mtg.:MEDI−225;国際公開第2004/018419号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0256157号明細書));三環式ジアゾピノインドロン(例えば、PF−00394691(国際公開第2004/063198号パンフレット;米国特許出願公開第2005/0075499号明細書));Astra−Zeneca化合物ライブラリーからの32個の種々の化合物(例えば、Lyneら(2004)J.Med.Chem.47:1962)の図5において示されるもの);フラノピリミジンおよびピロロピリミジン(Foloppeら(2005)J.Med.Chem.48:4332);インドリノン(Linら(2006)Bioorg.Med.Chem.Lett.16:421);置換されたピラジン(国際公開第2003/093297号パンフレット);化合物XL844(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00234481);ピリミジニルインダゾリルアミン(国際公開第2005/103036号パンフレット);ピラゾロピリミジン(国際公開第2004/087707号パンフレット);アミノピラゾール(国際公開第2005/009435号パンフレットおよび国際公開第2002/0006952号パンフレット);2−ウレイドチオフェン(国際公開第2003/029241号パンフレット;国際公開第2005/016909号パンフレット);ピリミジン(米国特許出願公開第2004/0186118号明細書);ピロロピリミジン(国際公開第2003/0287243号パンフレット);3−ウレイドチオフェン(国際公開第2003/028731号パンフレット);インデノピラゾール(国際公開第2004/080973号パンフレット);トリアゾロン(国際公開第2004/081008号パンフレット);ジベンゾジアゼピノン(米国特許出願公開第2004/254159号明細書);大環式尿素(国際公開第2005/047294号パンフレット);ピラゾロキノリン(国際公開第2005/028474号パンフレット);ペプチドおよびペプチド模倣物(例えば、CBP501(国際公開第2001/021771号パンフレット;国際公開第2003/059942号パンフレット)が挙げられる。Tao & Lin(2006)Anti−Cancer Agents Med.Chem.(2006)6:377を参照のこと。
【0098】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、国際公開第2005/047294号パンフレット;米国特許第6,797,825号明細書、同第6,831,175号明細書、および同第7,056,925号明細書;国際公開第2004/076424号パンフレット;国際公開第2004/080973号パンフレット;国際公開第2004/014876号パンフレット;ならびに国際公開第2003/051838号パンフレットにおいて開示されるものが挙げられる。
【0099】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、国際公開第2004/108136号パンフレットおよび国際公開第2004/087707号パンフレットにおいて開示されるものが挙げられる。
【0100】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、国際公開第2006/048745号パンフレット;米国特許出願公開第2005/250836号明細書;国際公開第2005/009997号パンフレット;国際公開第2005/009435号パンフレット;国際公開第2004/063198号パンフレット;国際公開第2003/091255号パンフレット;および国際公開第2003/037886号パンフレットにおいて開示されるものが挙げられる。
【0101】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、米国特許第7,064,215号明細書;米国特許出願公開第2005/261307号明細書、同第2005/256157号明細書;国際公開第2005/047244号パンフレット;国際公開第2004/018419号パンフレット;および国際公開第2003/004488号パンフレットに開示されるものが挙げられる。
【0102】
本発明の方法および組成物においてChk1インヒビターとして有用であり得る化合物としてはまた、米国特許第7,067,506号明細書;米国特許出願公開第2003/0069284号明細書;および国際公開第2005/027907号パンフレットにおいて開示されるものが挙げられる。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明のChk1インヒビターは、約5000nM、2000nM、1000nM、500nM、250nM、100nM、50nM、25nM、10nM、5nM、2.5nM、1nM、0.5nMもしくは0.1nM未満のIC50値を示す。
【0104】
Chk1を選択的に阻害するために使用され得る核酸ベースの化合物としては、米国特許第6,211,164号明細書、同第6,677,445号明細書および同第6,846,921号;米国特許出願公開第2004/0097446号明細書および同第2005/01533925号明細書;ならびに国際公開2003/070888号パンフレットおよび国際公開第2001/057206号パンフレットにおいて開示されるような、siRNA(例えば、配列番号2)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびリボザイムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
抗体(例えば、イントラボディー(例えば、Alvarezら(2000)Clinical Cancer Research 6:3081))はまた、Chk1を選択的に阻害するために使用され得る。
【0106】
V.siRNA
siRNAを生成および使用するための方法は、例えば、米国特許第6,506,559号明細書(国際公開第99/32619号パンフレット);同第6,673,611号明細書(国際公開第99/054459号パンフレット);同第7,078,196号明細書(国際公開第01/75164号パンフレット);同第7,071,311号明細書および国際公開03/70914号パンフレット;国際公開第03/70918号パンフレット;国際公開第03/70966号パンフレット;国際公開第03/74654号パンフレット;国際公開第04/14312号パンフレット;国際公開第04/13280号パンフレット;国際公開第04/13355号パンフレット;国際公開第04/58940号パンフレット;国際公開第04/93788号パンフレット;国際公開第05/19453号パンフレット;国際公開第05/44981号パンフレット;国際公開第03/78097号パンフレット(米国特許は、関連するPCT公開とともに挙げられている)において開示される。遺伝子サイレンシングおよび治療的処置においてsiRNAを使用するための例示的方法は、国際公開国際公開第02/096927号パンフレット(VEGFおよびVEGFレセプター);国際公開第03/70742号パンフレット(テロメラーゼ);国際公開第03/70886号パンフレット(プロテインチロシンホスファターゼタイプIVA(Prl3));国際公開第03/70888号パンフレット(Chk1);国際公開第03/70895号パンフレットおよび国際公開第05/03350号パンフレット(アルツハイマー病);国際公開第03/70983号パンフレット(プロテインキナーゼCα);国際公開第03/72590号パンフレット(Mapキナーゼ);国際公開第03/72705号パンフレット(サイクリンD);国際公開第05/45034号パンフレット(パーキンソン病)において開示される。siRNAの治療的使用に関する例示的実験は、Zenderら(2003)Proc.Natl Acad.Sci.(USA)100:7797;Paddisonら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)99:1443;およびSah(2006)Life Sci.79:1773において開示された。siRNA分子はまた、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00257647)および加齢性黄斑変性(AMD)(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00363714)の臨床試験において使用される。
【0107】
用語「siRNA」は、RNA干渉経路(Fireら(1998)Nature 391:806)を介して遺伝子サイレンシングを誘導するために使用される分子をいうために使用されるが、このようなsiRNA分子は、厳密にポリリボヌクレオチドである必要はなく、代わりに、治療剤としてその特性を改善するために、核酸に対して1種以上の改変を含み得る。このような薬剤は、ときおり、短い干渉核酸の代わりに「siNA」といわれる。このような変化は、上記分子を「リボ」ヌクレオチドの定義の外に、形式的に変え得るが、にもかかわらず、このような分子は、本明細書で「siRNA」分子としていわれる。例えば、いくつかのsiRNA二重鎖は、各鎖上の3’側で突出するTT(デオキシリボヌクレオチド)を有する17〜23塩基対(例えば、19塩基対)ポリヌクレオチド二重鎖を形成するために対になる2つの19〜25nt(例えば、21nt)の鎖を含む。RNA干渉経路を介して遺伝子サイレンシングを誘導するために使用される核酸の他の改変体としては、例えば、米国特許出願公開第2006/0115453号明細書に開示されるように、ショートヘアピンRNA(「shRNA」)が挙げられる。
【0108】
いくつかの遺伝子に対する例示的siRNA分子のセンス鎖は、配列番号1〜7において提供される(例えば、DNA Polαに対するsiRNAのセンス鎖は、配列番号3において提供される)が、他の配列は、これら遺伝子をサイレントにすることにおいて使用するためのsiRNA分子を生成するために使用され得る。上記siRNA二重鎖の反対の鎖の配列は、両方の鎖が2ヌクレオチドの3’突出を有するという但し書きつきで、単に上記センス鎖の逆相補鎖である。すなわち、「n」個のヌクレオチド長のセンス鎖については、その反対の鎖は、上記3’末端において2個のさらなるヌクレオチドが付加されて突出を提供する、残基1〜(n−2)個の逆相補鎖である。siRNAセンス鎖は2個のU残基を上記3’末端に含む場合、その反対の鎖はまた、その3’末端において2個のU残基を含む。siRNAセンス鎖が2個のdT残基をその3’末端に含む場合、その反対の鎖はまた、その3’末端において2個のdT残基を含む。
【0109】
VI.抗体の生成
モノクローナル抗体を生成するための任意の適切な方法が使用され得る。例えば、レシピエトは、上記DNAポリメラーゼαもしくはChk1ポリペプチドまたはその抗原性フラグメントで免疫され得る。任意の適切な免疫方法が、使用され得る。このような方法は、アジュバント、他の免疫刺激物質、反復される追加免疫、および1種以上の免疫経路の使用を包含し得る。誘発する抗原は、単一エピトープ、複数エピトープ、またはタンパク質全体単独で、あるいは当該分野で公知の1種以上の免疫原性増強薬剤との組み合わせであり得る。
【0110】
任意の適切な方法が、DNAポリメラーゼαまたはChk1を阻害するために、望ましい生物学的特性を有する抗体を誘発するために使用され得る。種々の哺乳動物宿主(例えば、マウス、齧歯類、霊長類、ヒトなど)からモノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。このようなモノクローナル抗体を調製するための技術は、例えば、Stitesら(編)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(第4版)Lange Medical Publications,Los Altos,CA、およびそこに引用される参考文献;Harlow and Lane(1988)ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL CSH Press;Goding(1986)MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE(第2版)Academic Press,New York,NYにおいて見いだされ得る。従って、モノクローナル抗体は、当業者が精通している種々の技術によって得られ得る。代表的には、所望の抗原で免疫した動物由来の脾細胞は、通常は、骨髄腫細胞との融合によって不死化される。Kohler and Milstein(1976)Eur.J.Immunol.6:511−519を参照のこと。不死化のための代替法としては、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子、またはレトロウイルスでの形質転換、あるいは当該分野で公知の他の方法が挙げられる。例えば、Doyleら(編.1994および定期的補遺)CELL AND TISSUE CULTURE:LABORATORY PROCEDURES,John Wiley and Sons,New York,NYを参照のこと。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、所望の特異性および上記抗原に対するアフィニティーの抗体の生成についてスクリーニングされ、そしてこのような細胞によって生成されるモノクローナル抗体の収量は、種々の技術(脊椎動物宿主の腹腔への注射を含む)によって増強され得る。あるいは、例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281によって概説される一般的プロトコルに従って、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその結合フラグメントをコードするDNA配列を単離し得る。
【0111】
他の適切な技術は、ファージまたは類似のベクターにおける抗体のライブラリーの選択を包含する。例えば、Huseら(1989)Science 246:1275;およびWardら(1989)Nature 341:544を参照のこと。本発明のポリペプチドおよび抗体は、改変ありまたはなしで使用され得る(キメラ抗体またはヒト化抗体を含む)。また、組換え免疫グロブリンが生成され得るか(Cabilly 米国特許第4,816,567号明細書;およびQueenら(1989)Proc.Nat’l Acad.Sci USA 86:10029−10033を参照のこと);またはトランスジェニックマウスにおいて作製され得る(Mendezら(1997)Nature Genetics 15:146−156を参照のこと;Abgenix技術およびMedarex(登録商標)技術もまた参照のこと)。
【0112】
キメラ抗体もまた企図される。本明細書において示されるように、代表的なキメラ抗体は、特定の種から得られるかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体において対応する配列と同一であるかまたは相同である重鎖および/または軽鎖の一部分を含む一方で、上記鎖の残りは、それらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて、別の種から得られるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにこのような抗体のフラグメントにおける対応する配列と同一もしくは相同である(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci USA 81:6851−6855)。
【0113】
二重特異的抗体(Bispecific antibody)はまた、本発明の方法および組成物において有用である。本明細書で使用される場合、用語「二重特異的抗体」とは、少なくとも2つの異なる抗原性エピトープ(例えば、DNAポリメラーゼαおよびChk1)に対する結合特異性を有する抗体(代表的には、モノクローナル抗体)をいう。一実施形態において、上記エピトープは、同じ抗原に由来する。別の実施形態において、上記エピトープは、2つの異なる抗原に由来する。二重特異的抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、二重特異的抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現を使用して、組換え生成され得る。例えば、Milsteinら(1983)Nature 305:537を参照のこと。あるいは、二重特異的抗体は、化学的連結を使用して調製され得る。例えば、Brennanら(1985)Science 229:81を参照のこと。二重特異的抗体は、二重特異的抗体フラグメントを含む。例えば、Hollingerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.90:6444;Gruberら(1994)J.Immunol.152:5368を参照のこと。
【0114】
VII.薬学的組成物および医薬
本発明の方法において使用するための薬学的組成物または滅菌組成物(または医薬)を調製するために、上記薬剤は、薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤と混合される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照のこと。DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびプロテインキナーゼ(例えば、Chk1キナーゼ)のインヒビターは、別個の薬学的組成物において別個の薬剤として投与され得るか、またはそれらは、単一の薬学的組成物において混合物として投与され得る。別個の薬剤として投与される場合、上記薬剤は、いずれの順でもまたは順番に投与され得る。例えば、DNAポリメラーゼαインヒビターは、Chk1のインヒビターの投与の前、投与と同時または投与の後に投与され得る。2つの薬剤の投与は、上記処置レジメンのある部分については重複するかもしれないが、上記処置レジメンの他の部分については重複しないかもしれない。一実施形態において、DNAポリメラーゼα特異的インヒビターは、Chk1インヒビターの投与の前に投与され、次いで、その投与と同時に投与される。
【0115】
治療剤またはその組み合わせの処方は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液もしくは懸濁液の形態において、生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、もしくは安定剤と混合することによって調製され得る(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw−Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY)を参照のこと)。
【0116】
本発明によって記載される化合物から薬学的組成物を調製するために、不活性の薬学的に受容可能なキャリアは、固体または液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物としては、散剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤および坐剤が挙げられる。上記散剤および錠剤は、約5〜約95%の活性成分から構成され得る。適切な固体キャリアは、当該分野で公知である(例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖もしくはラクトース)。錠剤、散剤、カシェ剤およびカプセル剤は、経口投与に適した固体投与形態として使用され得る。薬学的に受容可能なキャリアおよび種々の組成物の製造方法の例は、A.Gennaro(編),Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(1990) Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvaniaにおいて見いだされ得る。
【0117】
液体形態調製物としては、液剤、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。例としては、非経口注射のための水もしくは水−プロピレングリコール溶液、または経口液剤のための甘味剤および乳白剤の追加、懸濁剤および乳化剤が挙げられる。液体形態調製物はまた、鼻内投与のための液剤を含み得る。
【0118】
吸入に適したエアロゾル調製物は、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、不活性の圧縮ガス(例えば窒素))との組み合わせで存在し得る、液剤および粉末形態の固体を含み得る。
【0119】
経口投与もしくは非経口投与のいずれかのための液体形態調製物に使用直前に変換することが意図される固体形態調製物もまた含まれる。このような液体形態は、液剤、懸濁液およびエマルジョンを含む。
【0120】
本発明の化合物はまた、経皮的に送達可能であり得る。経皮的組成物は、クリーム剤、ローション剤、エアロゾルおよび/またはエマルジョンの形態をとり得、そしてこの目的で、当該分野で従来からあるように、マトリックスの経皮的パッチもしくはレザバタイプに含められ得る。
【0121】
好ましくは、上記薬学的調製物は、単位投与形態であり得る。このような形態において、上記調製物は、上記活性成分の適切な量(例えば、所望の目的を達成するに有効な量)を含む適切な大きさの単位用量に細分される。
【0122】
調製物の単位用量中の活性化合物の量は、特定の適用および問題の特定の活性化合物の特性(例えば、アフィニティー、毒性もしくは薬物動態プロフィール)に従って、約1mg〜約100mg、好ましくは、約1mg〜約50mg、より好ましくは、約1mg〜約25mgにまで変動または調節され得る。
【0123】
使用される実際の用量は、患者の要件および処置される状態の重篤度に依存して変動し得る。特定の状況のための適切な投与レジメンの決定は、当該分野の技術範囲内である。便宜上、合計一日用量は、必要に応じて、分割され得かつその日の間に少しずつ投与され得る。
【0124】
本発明の化合物および/またはその薬学的に受容可能な塩の投与の量および頻度は、患者の年齢、状態および大きさ、ならびに処置される症状の重篤度のような要因を考慮する主治医の判断に従って調節される。代表的な推奨される経口投与のための一日投与レジメンは、2〜4つの分割用量において、約1mg/日〜約500mg/日、好ましくは、1mg/日〜200mg/日の範囲に及び得る。
【0125】
本発明に従うキットは、DNAポリメラーゼαまたはチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)いずれか一方の少なくとも1つのインヒビター、または両方のインヒビターの組み合わせ、または上記薬剤の薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステルもしくはプロドラッグの治療上有効な量、および薬学的に受容可能なキャリア、ビヒクルもしくは希釈剤を含み得るキットを使用し得る。上記キットは、必要に応じて、少なくとも1種のさらなる抗癌剤を含み得、ここで上記薬剤の量は、所望の治療的効果を生じる。
【0126】
本発明の治療的組成物の毒性および治療的有効性は、細胞培養物もしくは実験動物において標準的な薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するために決定され得る。毒性効果と治療的効果との間の用量比は、治療指数であり、それは、LD50とED50との間の比率として表され得る。高い治療指数を示す治療的組み合わせが好ましい。これら細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための用量範囲を処方するにあたって使用され得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんど毒性がないかまたは全く毒性がないED50を含む循環濃度範囲内にある。上記投与量は、使用される投与形態および投与経路に依存してこの範囲内で変動し得る。
【0127】
本発明の治療剤の投与様式は、特に重要ではない。適切な投与経路としては、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、または腸管投与;非経口送達(筋肉内注射、皮下注射、髄内注射、ならびに鞘内注射、直接的心室内(intraventricular)注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射、または眼内注射が挙げられる)が挙げられ得る。
【0128】
治療剤のための投与レジメンの選択は、いくつかの要因に依存し、これら要因としては、上記薬剤の血清ターンオーバー速度もしくは組織ターンオーバー速度、症状のレベル、その実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞の接近しやすさが挙げられる。好ましくは、投与レジメンは、副作用の許容可能なレベルと一致して、上記患者に送達される治療剤の量を最大化する。従って、送達される上記薬剤の量は、特定の薬剤および処置される状態の重篤度に一部依存する。抗体、サイトカインおよび低分子の適切な用量を選択するにあたってのガイダンスは、入手可能である(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(編)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348:601−608;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341:1966−1973;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783−792;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342:613−619;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348:24−32;Lipskyら(2000)New Engl.J.Med.343:1594−1602を参照のこと)。
【0129】
適切な用量の決定は、例えば、処置に影響を及ぼすために、または処置に影響を及ぼすと推定される当該分野で公知または推測されるパラメーターまたは因子を使用して、医師によってなされる。一般に、上記用量は、至適用量よりいくらか少ない量で始められ、そしてそれは、所望のもしくは最適な効果が任意のネガティブな副作用に対して成し遂げられるまで、その後少量ずつ増大される。重要な診断尺度としては、例えば、腫瘍組織の増殖速度の低下、または治療的有効性と関連する生体マーカーの変化の徴候が挙げられる。
【0130】
さらなる治療剤(例えば、サイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、または放射線)による同時投与もしくは処置のための方法は、当該分野で周知である(例えば、Hardmanら(編)(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版,McGraw−Hill,New York,NY;Poole and Peterson(編)(2001)Pharmacotherapeutics for Advanced Practice:A Practical Approach,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PA;Chabner and Longo(編)(2001)Cancer Chemotherapy and Biotherapy,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PAを参照のこと)。本発明の薬学的組成物はまた、他の免疫抑制剤または免疫調節剤を含み得る。任意の適した免疫抑制剤が使用され得る。これら免疫抑制剤としては、抗炎症剤、コルチコステロイド、シクロスポリン、タクロリムス(すなわち、FK−506)、シロリムス、インターフェロン、可溶性サイトカインレセプター(例えば、sTNRFおよびsIL−1R)、サイトカイン活性を中和する薬剤(例えば、インフリキシマブ、エタナーセプト)、ミコフェノレートモフェチル、15−デオキシスペルグアリン、サリドマイド、グラチラマー、アザチオプリン、レフルノミド、シクロホスファミド、メトトレキセートなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記薬学的組成物はまた、光線療法および放射線療法のような他の治療的物理療法手段とともに使用され得る。
【0131】
VIII.治療的用途
本明細書において開示される方法および組成物は、増殖性疾患(例えば、癌)、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、神経学的/神経変性障害、関節炎、炎症、抗増殖性疾患(例えば、眼の網膜症)、ニューロン疾患、脱毛症、心血管疾患および敗血症の治療において有用であり得る。これら疾患および障害の多くは、米国特許第6,413,974号明細書に列挙されている。
【0132】
より具体的には、本発明の方法および組成物は、種々の癌(以下が挙げられる(が、これらに限定されない):癌腫(膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺癌、非小細胞肺癌を含む)、頭頸部、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺、前立腺、および皮膚(扁平上皮癌を含む)の癌腫が挙げられる);リンパ系列の造血性腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞白血病、外套細胞リンパ腫、骨髄腫、およびバーキットリンパ腫を含む);骨髄系列の造血性腫瘍(急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群および前骨髄球性白血病を含む);間葉起源の腫瘍(線維肉腫および横紋筋肉腫を含む);中枢神経系および末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫を含む);ならびに他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、濾胞性甲状腺癌およびカポジ肉腫を含む)の処置において有用であり得る。
【0133】
本発明の方法はまた、異常な細胞増殖を特徴とする任意の疾患プロセス(例えば、良性前立腺肥大、家族性大腸腺腫症、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、糸球体腎炎、血管形成術もしくは脈管手術後の再狭窄、肥厚性瘢痕形成、炎症性腸疾患、移植拒絶反応(transplantation rejection)、エンドトキシンショック、ウイルス性疾患および真菌感染)の処置において有用であり得る。
【0134】
本発明の方法は、アポトーシスを誘導または阻害し得る。上記アポトーシス応答は、種々のヒト疾患において異所性である。本発明の方法および組成物は、癌(本明細書中上記で言及されたタイプが挙げられるが、それらに限定されない)、ウイルス感染(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタインバーウイルス、シンドビス・ウイルス、およびアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない)、HIV感染個体におけるAIDS発症の予防、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス(systemic lupus)、紅斑性狼瘡、自己免疫媒介性糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、および自己免疫糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない)、神経変性障害(アルツハイマー病、AIDS関連痴呆、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄性筋萎縮症および小脳変性症が挙げられるが、これらに限定されない)、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、心筋梗塞と関連する虚血性傷害、脳卒中および再灌流傷害、不整脈、アテローム性硬化症、毒素誘導性もしくはアルコール関連肝疾患、血液疾患(慢性貧血および再生不良性貧血が挙げられるが、これらに限定されない)、筋骨格系の変性疾患(骨粗鬆症および関節炎が挙げられるが、これらに限定されない)、アスピリン感受性副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎疾患および癌疼痛の処置において有用であり得る。
【0135】
本発明の方法および組成物はまた、癌の化学的予防において有用であり得る。化学的予防は、変異誘発性事象の開始をブロックすること、もしくは障害を既に受けた前癌細胞の進行をブロックすること、または腫瘍再発を阻害することのいずれかによって、侵襲性癌の発症を阻害することとして定義される。
【0136】
本発明の方法および組成物はまた、腫瘍脈管形成および転移を阻害することにおいて有用であり得る。
【0137】
本発明はまた、増殖性障害の処置のための医薬の製造における、DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターの使用に関する。
【0138】
(投与)
好ましい投与量は、約0.001〜500mg/kg体重/日のDNAポリメラーゼαのインヒビターもしくはチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビター、または上記インヒビターの各々の0.001〜500mg/kg体重/日である。特に好ましい投与量は、これらインヒビターのうちの一方または両方が約0.01〜25mg/kg体重/日である。上記DNAポリメラーゼαのインヒビターおよび上記チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターは、同じ投与単位において、または別個の投与単位において存在し得る。
【0139】
(さらなる治療剤での併用療法)
本発明の治療剤はまた、1種以上の抗癌処置(例えば、放射線療法)、および/または1種以上のさらなる抗癌剤との組み合わせにおいて(一緒に投与されるか、またはいずれの順でも逐次的に)使用され得る。好ましい実施形態において、上記1種以上のさらなる抗癌剤は、上記αサブユニット以外のDNAポリメラーゼのサブユニットを阻害しない。上記DNAポリメラーゼαのインヒビター、上記チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターおよび上記さらなる抗癌剤は、同じ投与単位において、または別個の投与単位において存在し得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物(例えば、DNAポリメラーゼαインヒビターおよびChk1インヒビターを含む)は、同時にまたはいずれの順でも逐次的に、1種以上の薬剤(例えば、抗癌剤)と同時投与される。適切な抗癌剤の非限定的な例としては、細胞増殖抑制性薬剤、細胞傷害性薬剤(例えば、DNA相互作用性薬剤(例えば、シスプラチンもしくはドキソルビシン)が挙げられるが、これらに限定されない);タキサン(例えば、タキソテール、タキソール);トポイソメラーゼIIインヒビター(例えば、エトポシド);トポイソメラーゼIインヒビター(例えば、イリノテカン(もしくはCPT−11)、カンプトスター、またはトポテカン);チューブリン相互作用性薬剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルもしくはエポチロン);ホルモン性薬剤(例えば、タモキシフェン);チミジレートシンターゼインヒビター(例えば、5−フルオロウラシル);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート);アルキル化剤(例えば、テモゾロミド(Schering−Plough Corporation,Kenilworth,New JerseyのTemodar(登録商標))、シクロホスファミド;ファルネシルプロテイントランスフェラーゼインヒビター(例えば、Sararsar(登録商標)(4−[2−[4−[(11R)−3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11−イル−]−1−ピペリジニル]−2−オキソエチル]−1−ピペリジンカルボキサミド、またはSchering−Plough Corporation,Kenilworth,New JerseyのSCH 66336)、チピファルニブ(Janssen PharmaceuticalsのZarnestra(登録商標)もしくはR115777)、L778,123(Merck & Company,Whitehouse Station,New Jerseyのファルネシルプロテイントランスフェラーゼインヒビター)、BMS 214662(Bristol−Myers Squibb Pharmaceuticals,Princeton,New Jerseyのファルネシルプロテイントランスフェラーゼインヒビター);シグナル伝達インヒビター(例えば、Iressa(登録商標)(Astra Zeneca Pharmaceuticals,England製)、Tarceva(登録商標)(EGFRキナーゼインヒビター)、EGFRに対する抗体(例えば、C225)、Gleevec(登録商標)(Novartis Pharmaceuticals,East Hanover,New JerseyのC−ablキナーゼインヒビター);インターフェロン(例えば、イントロン(Schering−Plough Corporation製)、Peg−Intron(登録商標)(Schering−Plough Corporation製);ホルモン治療併用;アロマターゼ併用;ara−C,アドリアマイシン、シトキサン、クロファラビン(Genzyme Oncology,Cambridge,MassachusettsのClolar(登録商標))、ラドリビン(Janssen−Cilag Ltd.のLeustat(登録商標))、アフィジコリン、Rituxan(登録商標)(Genentech/Biogen Idec製)、スニチニブ(PfizerのSutent(登録商標))、ダサチニブ(またはBristol−Myers SquibbのBMS−354825)、テザシタビン(Aventis Pharma製)、Sml1、フルダラビン(Trigan Oncology Associates製)、ペントスタチン(BC Cancer Agency製)、トリアピン(Vion Pharmaceuticals製)、ジドックス(Bioseeker Group製)、トリミドックス(ALS Therapy Development Foundation製)、アミドックス、3−AP(3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン)、MDL−101,731、((E)−2’−デオキシ−2’−(フロロメチレン)シチジン)およびゲムシタビンが挙げられる。
【0141】
本発明の方法および組成物における併用療法において使用され得る他の抗癌剤(抗新生物薬としても公知)としては、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、ロイコビリン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン、アナストラゾール、レトロゾール、カペシタビン、レロキサフィン、ドロロキサフィン、ヘキサメチルメラミン、Avastin(登録商標)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、Bexxar(登録商標)、Velcade(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Trisenox(登録商標)、Xeloda(登録商標)、ビノレルビン、ポルフィマー、Erbitux(登録商標)、リポソーム、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、レトロゾール、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスファミド、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、C225、Campath(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
固定用量として処方される場合、このような組み合わせ生成物は、本明細書に記載される投与量範囲内の本発明の化合物、および他の薬学的に活性な薬剤もしくはその投与量範囲内の処置を使用する。例えば、上記CDC2インヒビターオロムシン(olomucine)を、アポトーシスを誘導するにあたって公知の細胞傷害性薬剤と相乗効果的に作用することが分かった(Ongkekoら(1995)J.Cell Sci.108:2897)。DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびチェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビターはまた、例えば、組み合わせ処方が不適切である場合、公知の抗癌剤または細胞傷害性薬剤と連続して投与され得る。本発明は、投与の順に限定されない;DNAポリメラーゼαのインヒビター、チェックポイントキナーゼ(例えば、Chk1)のインヒビター、および必要に応じて、さらなる抗癌剤もしくは細胞傷害性薬剤は、任意の順で投与され得る。例えば、サイクリン依存性キナーゼインヒビターフラボピリドールという上記細胞傷害性薬剤は、抗癌剤との投与の順によって影響を受ける。Bible & Kaufmann(1997)Cancer Research 57:3375。このような技術は、当業者および主治医の技術範囲内である。
【0143】
(患者の選択)
増殖性障害を有する任意の被験体が、本発明の方法および組成物を用いる処置について考慮に入れられ得るが、本発明の方法および組成物の使用に特に適した被験体は、G1/S複製チェックポイントの活性を阻害する変異もしくは他の機能的欠陥の存在または非存在に基づいて選択され得る。このような機能的欠陥の例としては、癌抑制遺伝子p53および網膜芽腫(Rb)癌抑制遺伝子の生成物の機能の非存在、低下または喪失を含む。ヒトp53に関する配列情報および他の関連データは、公のデータベース(例えば、GenBankのアクセッション番号NP_000537、およびMendelian Inheritance in Manのアクセッション番号191170、およびGeneID No.7157において見いだされ得る。ヒトRbに関する配列情報および他の関連データは、公のデータベース(例えば、GenBankのアクセッション番号NP_000312、およびMendelian Inheritance in Manのアクセッション番号180200、およびGeneID No.5925において見いだされ得る。データベースエントリーは、NCBI Entrezウェブサイトで利用可能である。
【0144】
本明細書で使用される場合、「非存在」および「低下」とは、癌抑制遺伝子産物またはその活性いずれかの物理的存在をいうが、活性は、上記遺伝子産物が物理的に存在しない場合において、必ず欠いている。細胞におけるこれら遺伝子のいずれか(または両方)の機能の喪失は、異常な増殖をもたらし得るが、本発明の方法および組成物に対する増強された感受性をももたらし得る。癌抑制遺伝子の機能の喪失は、転写(RNA)レベルもしくは翻訳(タンパク質)レベルでの遺伝子発現の分析によって、または結合アッセイもしくは機能アッセイによって、測定され得る。転写のレベルは、例えば、関連転写物の定量的増幅(例えば、TAQMAN(登録商標)分析)、サザンブロットもしくはノーザンブロット、マイクロアッセイ、遺伝子発現の連続分析(SAGE)または当該分野で公知の任意の他の方法によって測定され得る。タンパク質発現のレベルは、例えば、イムノブロッティング(ウェスタンブロッティングを含む)、免疫組織化学(IHC)、二次元ゲル電気泳動または当該分野で公知の任意の他の方法によって測定され得る。癌抑制遺伝子における変異は、DNA配列決定、cDNA配列決定、マイクロアレイ検出、適切な特異的試薬を用いるイムノブロッティング、結合アッセイもしくは機能アッセイまたは当該分野で公知の任意の他の方法によって決定され得る。p53の発現もしくは活性のレベルを決定するための例示的方法は、米国特許第5,552,283号明細書;同第6,071,726号明細書および同第6,110,671号明細書において見いだされる。Rbの発現もしくは活性のレベルを決定するための例示的方法は、米国特許第5,578,701号明細書;同第5,650,287号明細書;同第5,851,991号明細書;同第5,998,134号明細書および同第6,821,740号明細書に見いだされる。
【0145】
被験体における癌抑制遺伝子産物の発現もしくは活性のレベルは、完全に機能的な癌抑制遺伝子を有する細胞もしくは組織(例えば、非腫瘍組織もしくは増殖性障害なしの被験体の組織)における発現の「正常」レベルと比較される。種々の好ましい実施形態において、問題の被験体におけるレベルに対する上記発現もしくは活性の正常レベルの比は、1.2、1.5、2、3、4、5、10、12、15、20、25、30、40、50、75、100、200、500もしくは1000以上である。いくつかの実施形態において、被験体は、問題の被験体における(例えば、異常な増殖を示す組織(例えば、腫瘍もしくは他の癌性組織))発現もしくは活性のレベルに対する発現もしくは活性の正常レベルの比に基づいて、本発明の方法または組成物による処置に関して選択される。カットオフポイントとして選択される特定の比は、問題の組織が、実際に、望ましくない副作用の危険性を低下させるために、組織を、同じ被験体における他の組織より、本発明の方法もしくは組成物での処置に対して感受性にするに十分な癌抑制遺伝子産物発現もしくは活性の低下もしくは喪失を有することを確実にするように選択される。
【0146】
以下の例は、本発明の実施形態を示すために提供されるのであって、本発明を限定することを意図しない。本発明の多くの改変およびバリエーションは、当業者に明らかであるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得る。
【実施例】
【0147】
(実施例1:一般的方法)
分子生物学における標準的方法が記載される(Maniatisら(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA)。標準的な方法はまた、Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1−4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NY(これは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、糖結合体(glycoconjugate)およびタンパク質発現(Vol.3)、およびバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載する)に見られる。
【0148】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質精製法が記載されている(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学的分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5−16.22.17;Sigma−Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45−89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384−391を参照のこと)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生成、精製、およびフラグメント化が記載されている(Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Harlow and Lane,前出)。リガンド/レセプター相互作用を特徴づけるための標準的技術が利用可能である(例えば、Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照のこと)。
【0149】
フローサイトメトリーのための方法(蛍光活性化セルソーティング(FACS)を含む)が利用可能である(例えば、Owensら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,第2版;Wiley−Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照のこと)。例えば、診断用試薬として使用するために核酸(核酸プライマーおよびプローブを含む)、ポリペプチド、および抗体を改変するのに適した蛍光試薬が利用可能である(Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma−Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MO)。
【0150】
免疫系の組織学の標準的方法が記載されている(例えば、Muller−Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw−Hill,New York,NYを参照のこと)。
【0151】
例えば、抗原性フラグメント、リーダー配列、タンパク質折りたたみ、機能的ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが入手可能である(例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc.,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741−742;Menneら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741−742;Wrenら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177−181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17−21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683−4690を参照のこと)。
【0152】
細胞株、薬物、およびsiRNA処置物質および方法は、以下のとおりである。ヒトU20S骨肉腫細胞を、10%FBS(JRH BioSciences,St.Louis,MO)、200U/ml ペニシリン、200μg/ml ストレプトマイシン、および300μg/ml L−グルタミン(Cambrex)を補充したDMEM(Mediatech,Herndon,VA)中で増殖させる。HU(Sigma,St.Louis,MO)を、15時間にわたって、1mMにて使用する。
【0153】
本明細書で使用されるsiRNA分子の配列は、表1に提供される。センス配列が提供される。siRNAとして使用されるオリゴヌクレオチドを、Dharmacon RNA Technologies(Lafayette,CO)から得る。
【0154】
細胞を、Chk1に対する50nM siRNA、ルシフェラーゼ(Luc)、PolA、PolE、PolD1に対する100nM siRNA、および製造評者のプロトコルに従ってLipofectamine 2000(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用するATR二重鎖でトランスフェクトする。
【0155】
フローサイトメトリー分析(例えば、DNA損傷に関するγ−H2AX検出および細胞周期分析に関するBrdU組み込み)を、以前に記載されるように行い(Choら(2005)Cell Cycle 4:131)、FacsDIVAソフトウェアを使用して、BD LSR II(BD BioSciences,San Jose,CA)で分析する。
【0156】
siRNAノックダウンのウェスタンブロット分析を、以下のとおりに行う。細胞ペレットをトリプシン処理し、PBSで洗浄し、2×SDSサンプル緩衝液(Invitrogen,Carlsbad,CA)中で溶解させる。タンパク質抽出物を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびImmobilon(登録商標)−P膜(Millipore,Billarica,MA)への転写によって分離する。この研究において使用される抗体を、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Santa Cruz,CA)(Polα、Polε、Polδ、Rad17)、Cell Signaling Technology,Inc.(Danvers,MA)(pS345−Chk1、pT68−Chk2)、Stressgen Bioreagents Corp.(San Diego,CA)(Chk1)、およびBethyl Laboratories,Inc.(Montgomery,TX)(pS33−RPA 32)から得る。
【0157】
本明細書に記載される研究において使用されるさらなる抗体を、以下のように調製した。モノクローナル抗体(58D7、16H7)を、BALB/cマウスをヒトCHK1の活性化ループにまたがるペプチド(CNRERLLNKMCGTLPYVAPELLKRREF)(配列番号8)で免疫することによって惹起した。脾細胞を、SP2骨髄腫細胞株と融合した。反応性ハイブリドーマをELISAによって同定し、CHK1を免疫沈降する能力についてスクリーニングした。
【0158】
免疫沈降を以下のように行う。細胞ペレットを、LT250緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.4、250mM NaCl、5mM EDTA、0.1% NP−40、10% グリセロール、1mM DTT、ホスファターゼインヒビターセットIおよびIIの1:100希釈液、ならびにプロテアーゼインヒビターカクテルセットIII(Calbiochem,San Diego,CA)中で溶解する。タンパク質濃度を、Bio−Rad Protein Assay(Bio−Rad,Hercules,CA)を用いて決定する。免疫沈降については、タンパク質溶解物(2mg)を、ImmunoPure Protein Gビーズに架橋した抗Polα(SJK 132−20)抗体と4時間にわたって4℃でインキュベートした。SV40 T抗原に対するPab419モノクローナルAbは、代表的には、陰性コントロールとして使用される。
【0159】
さらなる方法は、Choら(2005)Cell Cycle 4:131において見いだされ得る。
【0160】
(実施例2:Chk1キナーゼアッセイ)
酵素供給源としてのバキュロウイルス発現系において発現される組換えHis−CHK1および基質としてCDC25Cに基づいたビオチン化ペプチドを使用するインビトロシンチレーション近接アッセイ(SPA)が記載されている。
【0161】
材料および試薬:
1)CDC25C Ser 216(下線を付した)C末端ビオチン化ペプチド基質(25mg)を−20℃で貯蔵し、Research Geneticsによってカスタム合成した:
RSGLYRSPSMPENLNRPR−ビオチン(配列番号9)、2595.4 MW。CDC25Cに関する全配列情報は、NP_001781、およびMendelian Inheritance in Manのアクセッション番号157680、およびGeneID No.995において見いだされ得る。これらデータベースエントリーは、NCBI Entrezウェブサイト上で利用可能である。
【0162】
2)His−CHK1、235μg/mL、−80℃で貯蔵。
【0163】
3)D−PBS(CaCl2およびMgCl2なし):GIBCO Cat.# 14190−144。
【0164】
4)SPAビーズ:Amersham(Piscataway,NJ) Cat.# SPQ0032:500mg/バイアル
10mlのD−PBSを500mgのSPAビーズに添加して、作業濃度50mg/mlを作製する。40℃で貯蔵する。水和後2週間以内に利用する。
【0165】
5)GF/Bフィルターを接着した96ウェル白色マイクロプレート:Packard Bioscience/Perkin Elmer(Wellesley,MA)Cat.# 6005177。
【0166】
6)Top seal−A 96ウェル接着フィルム:Perkin Elmer(Wellesley,MA)Cat.# 6005185。
【0167】
7)96ウェル非結合白色ポリスチレンプレート:Corning(Acton,MA)Cat.# 6005177。
【0168】
8)MgCl2:Sigma(St.Louis,MO)Cat.#M−8266。
【0169】
9)DTT:Promega(Madison,WI)Cat.# V3155。
【0170】
10)ATP(4℃で貯蔵):Sigma Cat.#A−5394。
【0171】
11)γ33P−ATP、1000〜3000Ci/mMol: Amersham Cat.#AH9968。
【0172】
12)NaCl:Fisher Scientific Cat.#BP358−212。
【0173】
13)H3PO4 85% Fisher Scientific Cat.#A242−500。
【0174】
14)Tris−HCl pH8.0:Bio−Whittaker/Cambrex(Baltimore,MD)Cat.#16−015V。
【0175】
15)スタウロスポリン、100μg:CALBIOCHEM(San Diego,CA)Cat.#569397。
【0176】
16)Hypure細胞培養等級水、500mL:HyClone(Logan,UT)Cat.#SH30529.02。
【0177】
反応混合物:
1)キナーゼ緩衝液:50mM Tris pH8.0;10mM MgCl2;1mM DTT
2)His−CHK1、MW約30kDa、−80℃で貯蔵。6nMは、約5,000CPMの陽性コントロールを得るために必要とされる。1プレート(100rxn)につき:8μLの235μg/mL(7.83μM)ストックを2mL キナーゼ緩衝液中で希釈する。これによって、31nM混合物が作製される。20μL/ウェルで添加する。これによって、6nMの最終反応濃度が作製される。
【0178】
3)CDC25Cビオチン化ペプチド。CDC25Cを1mg/mL(385μM)ストックに希釈し、−20℃で貯蔵する。1プレート(100rxn)につき:10μLの1mg/mLペプチドストックを、2ml キナーゼ緩衝液中に希釈する。このことによって、1.925μM 混合物を得る。20μL/rxnでを添加する。このことによって、385nMの最終反応濃度が作製される。
【0179】
4)ATPミックス。1プレート(100rxn)につき:10μLの1mM ATP(冷)ストックおよび2μL 新たな33P−ATP(20μCi)を、5ml キナーゼ緩衝液中に希釈する。このことによって、2μM ATP(冷)溶液が得られる;50μl/ウェルで添加して、反応を開始する。最終反応濃度が1μM ATP(冷)および0.2μCi/rxnであるように、最終容積は、100μl/rxnである。
【0180】
5)停止溶液:1プレート(100rxn)あたり、10mL 洗浄緩衝液2(2M NaCl 1% H3PO4)と1mL SPAビーズスラリー(50mg)との混合物を調製する。100μL/ウェルで添加する。
【0181】
6)洗浄緩衝液1:2M NaCl。
【0182】
7)洗浄緩衝液2:2M NaCl、1% H3PO4。
【0183】
アッセイ手順:
【0184】
【化1】
1)化合物を、水/10% DMSO中で望ましい濃度に希釈する。これによって、rxn中1%の最終DMSO濃度が得られる。10μl/rxnで適切なウェルに分与する。10μL 10% DMSOを陽性コントロールウェル(CHK1+CDC25C+ATP)および陰性コントロールウェル(CHK1+ATPのみ)に添加する。
【0185】
2)酵素を氷上で融解する−酵素をキナーゼ緩衝液中で適切な濃度に希釈し(反応混合物を参照のこと)、各ウェルに20μlを分与する。
【0186】
3)上記ビオチン化基質を氷上で融解し、キナーゼ緩衝液中で希釈する(反応混合物を参照のこと)。陰性コントロールウェルを除いて、20μL/ウェルで添加する。代わりに、20μL キナーゼ緩衝液をこれらウェルに添加する。
【0187】
4)ATP(冷)および33P−ATPを、キナーゼ緩衝液中で希釈する(反応混合物を参照のこと)。50μL/ウェルで添加して、上記反応を開始する。
【0188】
5)上記反応を室温で2時間継続させる。
【0189】
6)100μLの上記SPAビーズ/停止溶液を添加することによって反応を停止させ(反応混合物を参照のこと)、改修前に15分間インキュベートする。
【0190】
7)ブランクのPackard GF/Bフィルタープレートを、真空フィルターデバイスに配置し(Packardプレート採取器)、200mL 水を吸引して、上記系をぬらす。
【0191】
8)ブランクを除外し、上記Packard GF/Bフィルタープレート中に入れる。
【0192】
9)上記反応物を、上記フィルタープレートを介して吸引する。
【0193】
10)洗浄:各々200ml洗浄;2M NaClで1回;2M NaCl/1% H3PO4で1回。
【0194】
11)フィルタープレートを15分間乾燥させる。
【0195】
12)TopSeal−A接着剤をフィルタープレートの頂部に置く。
【0196】
13)フィルタープレートを、Top Countマイクロプレートシンチレーションカウンターで作動させる。
【0197】
設定:データモード:CPM
放射性核種:マニュアルSPA:33P
シンチレーター:Liq/plast
エネルギー範囲:低。
【0198】
IC50決定:
用量応答曲線を、阻害性化合物の8点の連続希釈から、各々二連で生成される阻害データからプロットする。化合物濃度を、キナーゼ活性%に対してプロットし、処置サンプルのCPM÷未処理サンプルのCPMによって計算する。IC50値を生成するために、次いで、上記用量応答曲線を、標準的なシグモイド曲線に適合させ、IC50値を、非線形回帰分析によって導出する。
【0199】
(実施例3:CDK2アッセイ)
組換えサイクリンEおよびCDK2を使用するインビトロシンチレーション近接アッセイ(SPA)が記載されている。米国特許第7,038,045号明細書;米国特許出願公開第2006/0030555号明細書を参照のこと。サイクリンE(GenBankアクセッション番号NP_001229)を、pVL1393(Pharmingen,La Jolla,California)へとPCRによってクローニングし、5つのヒスチジン残基をアミノ末端に付加して、ニッケル樹脂での生成を可能にする。発現されるタンパク質は、約45kDaである。CDK2(GenBankアクセッション番号CCA43807)を、pVL1393へとPCRによってクローニングし、ヘマグルチニンエピトープタグをカルボキシ末端に付加する(YDVPDYAS)(配列番号10)。発現されるタンパク質は、約34kDaの大きさである。
【0200】
サイクリンEおよびCDK2を発現する組換えバキュロウイルスを、SF9細胞に、等しい感染多重度(MOI=5)で48時間同時感染させる。細胞を、1000RPMで10分間の遠心分離によって回収し、次いで、ペレットを、50mM Tris pH8.0、150mM NaCl、1% NP40、1mM DTTおよびプロテアーゼインヒビター(Roche Diagnostics GmbH,Mannheim,Germany)を含む、上記ペレット容積の5倍の溶解緩衝液中で、30分間氷上で溶解する。溶解物を、15000RPMで10分間遠心分離し、その上清を保持する。5mlのニッケルビーズ(SF9細胞1Lにつき)を、溶解緩衝液(Qiagen GmbH,Germany)中で3回洗浄する。イミダゾールを上記バキュロウイルス上清に、最終濃度20mMにまで添加し、次いで、上記ニッケルビーズとともに4℃で45分間インキュベートする。タンパク質を、250mM イミダゾールを含む溶解緩衝液で溶出する。溶出物を、2リットルのキナーゼ緩衝液(50mM Tris pH8.0、1mM DTT、10mM MgCl2、100μM オルトバナジン酸ナトリウムおよび20% グリセロールを含む)中で一晩透析する。酵素を、−70℃でアリコートに分けて貯蔵する。
【0201】
サイクリンE/CDK2キナーゼアッセイを、低タンパク質結合96ウェルプレート(Corning Inc,Corning,New York)において行う。酵素を、キナーゼ緩衝液(50mM Tris pH8.0、10mM MgCl2、1mM DTT、および0.1mM オルトバナジン酸ナトリウムを含む)中、最終濃度50μg/mlに希釈する。これらの反応において使用される基質は、Histone H1(Amersham,UK製)から得られるビオチン化ペプチドである。上記基質を氷上で融解し、キナーゼ緩衝液中、2μMに希釈する。化合物を、10% DMSO中で望ましい濃度に希釈する。各キナーゼ反応について、20μlの50μg/ml 酵素溶液(1μgの酵素)および20μlの2μM 基質溶液を混合し、次いで、試験のために各ウェル中で10μlの希釈した混合物と合わせる。上記キナーゼ反応を、50μlの2μM ATPおよび0.1μCiの33P−ATP(Amersham,UK製)を添加することによって開始する。上記反応を、室温で1時間行わせる。上記反応を、200μlの停止緩衝液(0.1% Triton X−100、1mM ATP、5mM EDTA、および5mg/ml ストレプトアビジンおよびコーティングされたSPAビーズ(Amersham,UK製)を含む)を15分間添加することによって停止させる。次いで、上記SPAビーズを、Filtermate universal harvester(Packard/Perkin Elmer Life Sciences.)を用いて、96ウェルGF/Bフィルタープレート(Packard/Perkin Elmer Life Sciences)上に捕捉する。非特異的シグナルを、上記ビーズを2M NaClで2回、次いで、1% リン酸含有2M NaClで2回洗浄することによって除去する。次いで、上記放射活性シグナルを、TopCount(登録商標)96ウェル液体シンチレーションカウンター(Packard/Perkin Elmer Life Sciences製)を使用して測定する。
【0202】
IC50値を以下のように決定する。用量応答曲線を、阻害性化合物の8点の連続希釈から、各々二連で生成される阻害データからプロットする。化合物濃度を、キナーゼ活性%に対してプロットし、処置サンプルのCPM÷未処理サンプルのCPMによって計算する。IC50値を生成するために、次いで、上記用量応答曲線を、標準的なシグモイド曲線に適合させ、IC50値を、非線形回帰分析によって導出する。
【0203】
(実施例4:Polαの除去は、DNA損傷の非存在下でChk1 S345 リン酸化を誘導する)
図1は、代謝拮抗物質がChk1リン酸化を誘導することを実証する。U20S細胞を、処理しなかった(「−」)か、または1mM HU、5μM Gem、もしくは5μM Ara−Cで2時間処理した。細胞抽出物を調製し、ホスホ−Chk1 S345抗体でイムノブロットして、リン酸化Chk1(Chk1 S345)およびChk1(添加コントロール)を示した。3種の代謝拮抗物質はすべて、Chk1活性化の指標であるChk1の実質的リン酸化を誘導した。Liuら(2000)Genes Dev.14:1448;Zhao & Piwnica−Worms(2001)Mol.Cell.Biol.21:4129;Capassoら(2002)J.Cell Sci 115:4555。
【0204】
図2Aは、siRNAによるPolαの除去が、HU処置によって誘導されるのと同様に、Chk1リン酸化を誘導するが、PolεおよびPolδの除去が、Chk1リン酸化を実質的に誘導しないことを実証する。siRNAトランスフェクションの48時間後、抽出物を調製し、示された抗体でイムノブロットした。HU処理細胞を、回収前に1mM HUで7時間処理した。
【0205】
図2Bおよび図2Cは、図2Aに示されるもののようなサンプルについてのフローサイトメトリーの結果を提供する。γ−H2A.Xリン酸化レベルおよびDNA含有量を、HUありまたはなしで、ルシフェラーゼ(Luc)に対するsiRNAにより、またはDNAポリメラーゼα(Polα)、DNAポリメラーゼε(Polε)、およびDNAポリメラーゼδ(Polδ)に対するsiRNAにより処理した細胞に対して測定した。DNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAで処理した培養物およびHU(およびコントロールsiRNA)で処理した培養物は、コントロール培養物および他のDNAポリメラーゼに対するsiRNAで処理した培養物と比較して、約10倍多いDNA損傷を示す細胞を含んでいた。DNA含有量の関数として細胞数を示すプロットも提供し、このプロットは、DNAポリメラーゼα(Polα)に対するsiRNAで処理した培養物が、S期中期において増大した細胞割合を有し(図2Bおよび図2CにおけるDNA含有量軸で約3N、すなわち、約75)、そしてHU処理培養物が減少した割合の4N細胞を有することを実証する。これら結果は、試験される他のDNAポリメラーゼに対するsiRNAではなく、DNAポリメラーゼαに対するsiRNAのみが、HU処理によって誘導されるのと同様に、DNA損傷を誘導することを実証する。
【0206】
図2Dは、図2DがPolα、PolεおよびPolδの組み合わせの同時除去についての結果を含むことを除いて、図2Aのものと同様の実験結果を示す。図2Aの場合と同様に、Polαの除去は、Chk1リン酸化を誘導する一方で、PolεおよびPolδの除去は、Chk1リン酸化を誘導しないが、驚くべきことに、Polα/Polε(およびおそらくPolα/Polδ)の同時除去は、Polα単独の除去と同程度にまで、Chk1 S345P形成を誘導しない。具体的には、Chk1 S345Pのレベルは、Polαレーンの除去よりもPolα/Polεレーンの同時除去において遙かに低い一方で、Chk1(リン酸化されていない)のレベルは変化しない。
【0207】
(実施例5:PolαおよびChk1の同時除去は、S期内停止を誘導する)
細胞を、DNAポリメラーゼ単独、Chk1の除去との組み合わせにおける除去の関数として、Chk1およびRPA32リン酸化について試験した。時間0において、細胞をPolA、PolE、またはPolD特異的二重鎖で24時間トランスフェクトし、続いて、Chk1特異的二重鎖を24時間トランスフェクトした。48時間目に、抽出物を調製し、示された抗体でイムノブロットした。図3は、Chk1およびRPA32が、DNAポリメラーゼαに対するsiRNAで処理した細胞においてリン酸化されていること、およびRPA32リン酸化が細胞をChk1およびDNAポリメラーゼαの両方に対するsiRNA処理される場合に、顕著に増大されることを示す。示されるデータは、3回の独立した実験の平均を表す。
【0208】
図4Aは、図3におけるデータを得るために使用されるものと同様のサンプルに関するH2AXのリン酸化レベル(二本鎖DNA破壊の尺度)を測定するフローサイトメトリーの結果を示す。結果は3回の独立した実験の平均であり、エラーバーは標準偏差を示す。HUおよびPolα siRNAは、コントロールサンプルと比較してH2A.Xリン酸化を中程度に増大するが、Polαに対するsiRNAおよびChk1に対するsiRNAの組み合わせは、H2A.Xリン酸化を有意に増大させ、このことは、二本鎖DNA破壊の誘導における2つの薬剤の相乗効果を実証する。
【0209】
図4Bは、Chk1の低分子インヒビター(3−アミノ−6−{3−[({[4−(メチルオキシ)フェニル]メチル}アミノ)カルボニル]フェニル}−N−[(3S)−ピペリジン−3−イル]ピラジン−2−カルボキサミド)が、DNAポリメラーゼαに指向されるsiRNAと組み合わせて使用される場合に、siRNA Chk1ノックダウンと同じ効果を有することを実証する。図4Aと同様に、Chk1およびDNAポリメラーゼα両方の阻害の組み合わせは、顕著なDNA損傷を有する細胞の割合の実質的増加をもたらす。まとめると、図4Aおよび図4Bの結果は、本発明の併用療法のより付加的な効果を実証する。
【0210】
(実施例6:ATRおよびより低い程度には、ATMは、Polα媒介性S期内停止に必要とされる)
ATMおよびATRを、単独で、またはPolαの除去との組み合わせのいずれかで除去して、Polα媒介性細胞周期停止におけるそれらの役割を決定した。図5はその結果を示す。時間0では、2種のsiRNA(Polα/Chk1、Polα/ATRおよびPolα/ATM)でトランスフェクトした細胞に、PolAに対する特異的二重鎖を24時間トランスフェクトし、続いて、Chk1、ATR、またはATMの特異的二重鎖を24時間トランスフェクトした。他のサンプルに、示されたsiRNAを24時間トランスフェクトした。48時間で、抽出物を調製し、示された抗体でイムノブロットした。ATRもしくはATM単独の除去は、Chk1 リン酸化を誘導しなかったが、ATMとPolαおよびATRとPolαの同時除去は、Polα単独の除去と比較して、Chk1リン酸化を増大させなかった。
【0211】
図6は、図5を参照して記載されるのと同様のサンプルに対するDNA損傷(H2AXリン酸化によって測定される場合)のプロットである。図4に示されるように、PolαおよびChk1の同時除去は、H2AXリン酸化における実質的増大を生じる。PolαとATRおよびPolαとATMの同時除去はまた、H2AXリン酸化を増大させたが、Chk1との同時除去より少ない程度であった。その結果は3回〜6回の独立した実験の平均であり、エラーバーは、標準偏差を表す。
【0212】
(実施例7:PolαおよびChk1の物理的会合)
免疫沈降実験を、PolαポリペプチドおよびChk1ポリペプチドが複合体を形成するか否か、およびどのような環境下で形成するかを決定するために行った。細胞を、ルシフェラーゼ(コントロール)、Chk1もしくはATRに対するsiRNAでトランスフェクトした。24時間後、細胞を1mM HUで15時間処理したか、または処理しなかった。Polαを、ルシフェラーゼ(陽性コントロール)、Chk1(陰性コントロール)、およびプロテインGに架橋したPolα抗体(SJKl 32−20)によるATR除去細胞、およびコントロール非関連抗体(419)による細胞から免疫沈降させた。ウェスタンブロットを、抗Polα、抗Chk1、および抗Chk1 S345抗体を用いて行った(図7)。Chk1は、Polαと同時に免疫沈降し、このことは、それらが溶液中に複合体で存在することを示唆した。
【0213】
相互的な実験を行って、上記会合を確認した。ここでChk1は、未処理U20S細胞、またはHU、ゲムシタビン、もしくはゲムシタビンと抗Chk1抗体のChk1への結合をブロックするペプチドとで処理した細胞から調製した溶解物から免疫沈降した。SDS−PAGE後、ウェスタンブロットを、Polα、Chk1 S345PおよびChk1全体に対して特異的な抗血清で、連続的にプローブした(図8)。Polαは、未処理細胞および処理細胞からの溶解物中、Chk1と同時に免疫沈降した。
【0214】
Chk1リン酸化のHU誘導の過程を、行った。U20S細胞を、0.5時間、1時間、2時間および15時間にわたってHUで処理し、タンパク質抽出物を、免疫沈降のために調製した。Polαを、プロテインGに架橋したPolα抗体(SJK 132−20)と免疫沈降した。ウェスタンブロットを、抗Polα抗体、抗Chk1抗体および抗Chk1 S345抗体を用いて行った(図9)。Chk1リン酸化は、最も速い時点ですら完了しており、Chk1およびChk1 S345Pの両方が、Polαと同時に免疫沈降した。
【0215】
図10は、抗Polα抗体、抗ATR抗体、抗Chk1抗体、抗Chk1 S345P抗体、および抗RPA32 S33抗体を用いたウェスタンブロットに供した、全細胞抽出物を示す。
【0216】
(実施例8:DNAポリメラーゼα特異性)
他のDNAポリメラーゼと比較した場合、DNAポリメラーゼαの阻害の特異性は、DNAポリメラーゼαの阻害と、他のDNAポリメラーゼの阻害とを類似の条件下で比較することによって決定され得る。阻害剤の場合、上記薬剤は、DNAポリメラーゼアッセイにおいて力価測定されて、特定のレベルの阻害を達成するために必要な濃度(例えば、50%(IC50))が決定され得る。
【0217】
DNAポリメラーゼの阻害を決定するための例示的アッセイは、放射活性ヌクレオチドの組み込みの測定による。例えば、Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1308:256;Mizushinaら(1997)Biochim.Biophys.Acta 1336:509を参照のこと。DNAポリメラーαの阻害は、以下のように、DNAポリメラーゼεの阻害と比較され得る。
【0218】
哺乳動物DNAポリメラーゼαおよびεを、従来の方法によって仔牛胸腺から調製する。例えば、Podustら(1992)Chromosoma 102:S133;Focherら(1989)Nucleic Acids Res.17:1805を参照のこと。
【0219】
標準的な混合物(50mM Tris−HCl,pH7.5、1mM ジチオスレイトール、1mM MgCl2、5μM ポリ(dA)/オリゴ(dT)12〜18(=2/1)、10μM [3H]dTTP(100cpm/pmol)、15%(v/v)グリセロールおよび0.05単位のDNAポリメラーゼを含む)を、各ポリメラーゼについて調製する。ポリメラーゼ活性1単位は、1nmolのデオキシリボヌクレオシド三リン酸を、合成テンプレートプライマー(すなわち、ポリ(dA)/オリゴ(dT)12〜18、A/T(=2/1))へ、60分間、37℃で通常の反応条件下で組み込むのを触媒する量として定義される。このポリメラーゼ混合物の24μlを、8μlの(推定)ポリメラーゼインヒビター溶液(上記インヒビターを可溶化するに適した緩衝液もしくは溶媒を含む)と混合する。各インヒビターについて経験的に決定した異なる濃度のインヒビターを含む一連のサンプルを使用して、阻害されていないレベルの50%にまでポリメラーゼ活性を阻害するのに必要とされる濃度(IC50)を決定する。コントロールサンプル(上記インヒビターの代わりに、8μlの上記緩衝液もしくは溶媒を含む)を使用して、上記インヒビターおよび/もしくは溶媒が、上記反応混合物中で上記DNAポリメラーゼの活性をブロックしないことを確実にする。
【0220】
37℃で60分間のインキュベーション後、上記放射活性DNA産物を、Lindahlら(1970)Science 170:447によって記載されるように、DEAE−セルロースペーパーディスク(DE81)上に集める。上記ディスクに結合した放射活性をシンチレーションカウンターで、シンチレーション液中で測定する。そのIC50を、両方のDNAポリメラーゼに対する各推定インヒビターについて決定する。これらIC50の比は、どのインヒビターがDNAポリメラーゼαに対して特異的であるとみなされるかを決定する。
【0221】
本明細書で言及される配列番号は、表1に列挙される。
【0222】
【表1−1】
【0223】
【表1−2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖性障害を処置するための方法であって、該方法は、
DNAポリメラーゼαの活性を阻害する工程;および
少なくとも1種のチェックポイントキナーゼの活性を阻害する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記チェックポイントキナーゼはChk1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体における増殖性障害を処置するための方法であって、該方法は、
該被験体に、DNAポリメラーゼαのインヒビターを投与する工程;および
該被験体に、少なくとも1種のチェックポイントキナーゼのインヒビターを投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項4】
前記チェックポイントキナーゼはChk1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DNAポリメラーゼαの阻害は、DNAポリメラーゼεの阻害より少なくとも10倍高い、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記DNAポリメラーゼαインヒビターは、4−ヒドロキシ−17−メチリンシステロール(methylincisterol)、ガラクトシルジアシルグリセロール、セファロマンニン(cephalomannine)、デヒドロアルテヌシン(dehydroaltenusin)、6−(p−n−ブチルアニリノ)ウラシルおよびN2−(p−ブチルフェニル)グアニンからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記DNAポリメラーゼαインヒビターは、セファロマンニンおよびデヒドロアルテヌシンからなる群より選択される.請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記Chk1インヒビターは、ピラゾロピリミジン、イミダゾピラジン、UCN−01、インドールカルバゾール化合物、Go6976、SB−218078、スタウロスポリン、ICP−1、CEP−3891、イソグラヌラチミド(isogranulatimide)、デブロモヒメニアルジシン(debromohymenialdisine)(DBH)、ピリドピリミジン誘導体、PD0166285、シトネミン(scytonemin)、ジアリール尿素、ベンゾイミダゾールキノロン、CHR 124、CHR 600、三環式ジアゾピノインドロン、PF−00394691、フラノピリミジン、ピロロピリミジン、インドリノン、置換されたピラジン、化合物XL844、ピリミジニルインダゾリルアミン(pyrimidinylindazolyamine)、アミノピラゾール、2−ウレイドチオフェン、ピリミジン、ピロロピリミジン、3−ウレイドチオフェン、インデノピラゾール、トリアゾロン(triazlone)、ジベンゾジアゼピノン、大環状尿素、ピラゾロキノリン(pyrazoloquinoloine)、およびペプチド模倣物CBP501からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記Chk1インヒビターは、ピラゾロピリミジンまたはイミダゾピラジンからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ロイコビリン(leucovirin)、オキサリプラチン(Sanofi−Synthelabo Pharmaceuticals,FranceのEloxatin(登録商標))、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン、アナストラゾール、レトロゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(reloxafine)、ドロロキサフィン(droloxafine)、ヘキサメチルメラミン、Avastin(登録商標)(トラスツズマブ)、Herceptin(登録商標)、Bexxar(登録商標)、Velcade(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Trisenox(登録商標)、Xeloda(登録商標)、ビノレルビン、プロフィマー(profimer)、Erbitux(登録商標)、リポソーム(liposomal)、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、レトロゾール(lerozole)、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスファミド、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、C225およびCampath(登録商標)からなる群より選択される抗癌剤を前記被験体に投与する工程をさらに包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記増殖性障害は、癌、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、神経学的/神経変性障害、関節炎、炎症、抗増殖性疾患、ニューロン疾患、脱毛症、心血管疾患または敗血症である、請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患は癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記癌は、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、頭頸部、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚、甲状腺、前立腺、および皮膚の癌、扁平上皮癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞白血病、外套細胞リンパ腫、骨髄腫、バーキットリンパ腫;急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、前骨髄球性白血病;線維肉腫、横紋筋肉腫; 星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫;黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、濾胞性甲状腺癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
放射線療法をさらに含む、請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
DNAポリメラーゼαインヒビター;および
Chk1インヒビター
を含む、増殖性障害の処置のための組成物。
【請求項16】
前記被験体における前記増殖性障害が、p53遺伝子産物もしくはRb遺伝子産物の機能の低下または喪失を伴うか否かを決定する工程;および
前記インヒビターを、処置されるべき前記増殖性障害が前記p53遺伝子産物もしくはRb遺伝子産物のうちの少なくとも一方の機能の低下または喪失を伴う被験体にのみ投与する工程
を包含する、請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記機能の低下または喪失は、前記p53遺伝子産物に関する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記機能の低下または喪失は、Rb遺伝子産物に関する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記DNAポリメラーゼαの活性のインヒビターは、DNAポリメラーゼεのIC50の少なくとも5分の1より低い、DNAポリメラーゼαのIC50を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
前記Chk1の活性のインヒビターは、前記CDK2のIC50の少なくとも5分の1より低いChk1のIC50を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項21】
前記DNAポリメラーゼαの活性のインヒビターは、siRNAである、請求項4に記載の方法。
【請求項22】
前記DNAポリメラーゼαの活性のインヒビターは、アンチセンス核酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
前記DNAポリメラーゼαの活性のインヒビターは、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項4に記載の方法。
【請求項24】
前記Chk1の活性のインヒビターは、siRNAである、請求項4に記載の方法。
【請求項25】
前記Chk1の活性のインヒビターは、アンチセンス核酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項26】
前記Chk1の活性のインヒビターは、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項4に記載の方法。
【請求項27】
増殖性障害の処置のための医薬の製造における、DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびChk1のインヒビターの使用。
【請求項1】
増殖性障害を処置するための方法であって、該方法は、
DNAポリメラーゼαの活性を阻害する工程;および
少なくとも1種のチェックポイントキナーゼの活性を阻害する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記チェックポイントキナーゼはChk1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体における増殖性障害を処置するための方法であって、該方法は、
該被験体に、DNAポリメラーゼαのインヒビターを投与する工程;および
該被験体に、少なくとも1種のチェックポイントキナーゼのインヒビターを投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項4】
前記チェックポイントキナーゼはChk1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DNAポリメラーゼαの阻害は、DNAポリメラーゼεの阻害より少なくとも10倍高い、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記DNAポリメラーゼαインヒビターは、4−ヒドロキシ−17−メチリンシステロール(methylincisterol)、ガラクトシルジアシルグリセロール、セファロマンニン(cephalomannine)、デヒドロアルテヌシン(dehydroaltenusin)、6−(p−n−ブチルアニリノ)ウラシルおよびN2−(p−ブチルフェニル)グアニンからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記DNAポリメラーゼαインヒビターは、セファロマンニンおよびデヒドロアルテヌシンからなる群より選択される.請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記Chk1インヒビターは、ピラゾロピリミジン、イミダゾピラジン、UCN−01、インドールカルバゾール化合物、Go6976、SB−218078、スタウロスポリン、ICP−1、CEP−3891、イソグラヌラチミド(isogranulatimide)、デブロモヒメニアルジシン(debromohymenialdisine)(DBH)、ピリドピリミジン誘導体、PD0166285、シトネミン(scytonemin)、ジアリール尿素、ベンゾイミダゾールキノロン、CHR 124、CHR 600、三環式ジアゾピノインドロン、PF−00394691、フラノピリミジン、ピロロピリミジン、インドリノン、置換されたピラジン、化合物XL844、ピリミジニルインダゾリルアミン(pyrimidinylindazolyamine)、アミノピラゾール、2−ウレイドチオフェン、ピリミジン、ピロロピリミジン、3−ウレイドチオフェン、インデノピラゾール、トリアゾロン(triazlone)、ジベンゾジアゼピノン、大環状尿素、ピラゾロキノリン(pyrazoloquinoloine)、およびペプチド模倣物CBP501からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記Chk1インヒビターは、ピラゾロピリミジンまたはイミダゾピラジンからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ロイコビリン(leucovirin)、オキサリプラチン(Sanofi−Synthelabo Pharmaceuticals,FranceのEloxatin(登録商標))、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン、アナストラゾール、レトロゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(reloxafine)、ドロロキサフィン(droloxafine)、ヘキサメチルメラミン、Avastin(登録商標)(トラスツズマブ)、Herceptin(登録商標)、Bexxar(登録商標)、Velcade(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Trisenox(登録商標)、Xeloda(登録商標)、ビノレルビン、プロフィマー(profimer)、Erbitux(登録商標)、リポソーム(liposomal)、チオテパ、アルトレタミン、メルファラン、レトロゾール(lerozole)、フルベストラント、エキセメスタン、フルベストラント、イホスファミド、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、C225およびCampath(登録商標)からなる群より選択される抗癌剤を前記被験体に投与する工程をさらに包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記増殖性障害は、癌、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、神経学的/神経変性障害、関節炎、炎症、抗増殖性疾患、ニューロン疾患、脱毛症、心血管疾患または敗血症である、請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患は癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記癌は、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、頭頸部、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚、甲状腺、前立腺、および皮膚の癌、扁平上皮癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞白血病、外套細胞リンパ腫、骨髄腫、バーキットリンパ腫;急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、前骨髄球性白血病;線維肉腫、横紋筋肉腫; 星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫および神経鞘腫;黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、濾胞性甲状腺癌およびカポジ肉腫からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
放射線療法をさらに含む、請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
DNAポリメラーゼαインヒビター;および
Chk1インヒビター
を含む、増殖性障害の処置のための組成物。
【請求項16】
前記被験体における前記増殖性障害が、p53遺伝子産物もしくはRb遺伝子産物の機能の低下または喪失を伴うか否かを決定する工程;および
前記インヒビターを、処置されるべき前記増殖性障害が前記p53遺伝子産物もしくはRb遺伝子産物のうちの少なくとも一方の機能の低下または喪失を伴う被験体にのみ投与する工程
を包含する、請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記機能の低下または喪失は、前記p53遺伝子産物に関する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記機能の低下または喪失は、Rb遺伝子産物に関する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記DNAポリメラーゼαの活性のインヒビターは、DNAポリメラーゼεのIC50の少なくとも5分の1より低い、DNAポリメラーゼαのIC50を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
前記Chk1の活性のインヒビターは、前記CDK2のIC50の少なくとも5分の1より低いChk1のIC50を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項21】
前記DNAポリメラーゼαの活性のインヒビターは、siRNAである、請求項4に記載の方法。
【請求項22】
前記DNAポリメラーゼαの活性のインヒビターは、アンチセンス核酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
前記DNAポリメラーゼαの活性のインヒビターは、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項4に記載の方法。
【請求項24】
前記Chk1の活性のインヒビターは、siRNAである、請求項4に記載の方法。
【請求項25】
前記Chk1の活性のインヒビターは、アンチセンス核酸である、請求項4に記載の方法。
【請求項26】
前記Chk1の活性のインヒビターは、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項4に記載の方法。
【請求項27】
増殖性障害の処置のための医薬の製造における、DNAポリメラーゼαのインヒビターおよびChk1のインヒビターの使用。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−510222(P2010−510222A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537222(P2009−537222)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/024064
【国際公開番号】WO2008/063558
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/024064
【国際公開番号】WO2008/063558
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】
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