説明

変位検出器

【課題】 外部電磁場の影響を受けることなく正確な変位検出を行うことのできる変位検出器を提供すること。
【解決手段】 2枚の平行板ばね221、222を有するエデンばね22と、一端がエデンばね22に取り付けられ他端に先端球232を有する測定子23と、エデンばね22の撓みを光学的に検出する変位検出光学系24とが設けられる。エデンばね22には、反射ミラー226が設けられる。被測定面Wに接触された先端球232が上下方向に変位されると、エデンばね22が撓められ、反射ミラー226の向きが変化され、変位検出光学系24によって検出される反射光も変化される。この反射光の変化から、先端球232の変位が検出される。変位検出は、エデンばね22の撓みという力学的現象と、反射ミラー226による光の反射という光学的現象とに基づいて行われるため、外部電磁場の影響を受けない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変位検出器としては、電気マイクロメータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
電気マイクロメータは、本体ケースと、本体ケースに移動可能に設けられたスピンドルと、スピンドルの先端に設けられる測定子とを備える。スピンドルの末端部は鉄芯とされ、この鉄芯の周囲にコイルが環装される。コイルに発生される電圧は、電圧検出器によって検出される。
被測定物の変位検出にあたっては、スピンドルを変位させ、測定子を被測定物に当接させる。これに伴って、スピンドルの末端部たる鉄芯もコイルの内部を変位され、この変位量に比例した電圧がコイルより出力される。この出力電圧は、電圧検出器によって検出されるから、この値を基に被測定物の変位が検出できる。
【0003】
【特許文献1】特開平6−74705号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電気マイクロメータは電気現象に依存した変位検出器であるため、外部電磁場の影響によって、検出される変位に誤差が生じてしまう可能性がある。例えば、外部電磁場に起因する電圧がコイルに発生してしまうと、電圧検出器において検出される電圧の中には、スピンドルの変位に起因する電圧と、外部電磁場に起因する電圧とが、混在していることになり、正確な変位検出は不可能である。
また、変位検出に際して鉄芯を有するスピンドルを変位させる必要があるが、鉄芯の質量が大きいためにスピンドルの動きの応答性が悪いという問題もある。特に、高速測定の場合には、スピンドルが速い動きに追従できないために測定誤差が生じるおそれがある。
また、変位検出感度を上げるためにコイルとして細い導線を多数回巻いたものを用いたとしても、直流抵抗が増大し雑音が多くなるため、結局、変位検出感度の向上は見込めない。
また、鉄等の強磁性体の透磁率は温度によって変化するため、スピンドルの末端部が鉄芯とされる電気マイクロメータでは、温度によって変位検出感度が変動されてしまい、変位検出の安定性・信頼性に欠けるという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、外部電磁場や温度の影響を受けることなく正確な変位検出ができるとともに、変位検出時の応答性が良好な変位検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の変位検出器は、基端部が固定部材に固定され可撓性を有する一方の可撓部材と、この一方の可撓部材に近接して略平行に設けられ、可撓性を有する他方の可撓部材と、前記一方の可撓部材の先端部と前記他方の可撓部材の先端部とを連結させる連結部材と、光源と、前記一方の可撓部材の先端側、前記他方の可撓部材の先端側、および、前記連結部材の少なくともいずれかに取り付けられ、前記光源から出射される光を反射または屈折させる光学素子と、この光学素子からの反射光または屈折光を検出する光検出手段とを備え、前記他方の可撓部材の基端部が、前記他方の可撓部材の両端を結ぶ方向に変位される際に、前記光検出手段における光検出を通じて当該変位を検出することを特徴とする。
【0007】
他方の可撓部材の基端部を所定方向、すなわち他方の可撓部材の両端を結ぶ方向に変位させると、それに伴って、一方および他方の可撓部材が各々の基端部を撓みの支持部として撓められる。すると、光学素子の向きが変化されるから、そこからの反射光または屈折光が変化される。そして、この変化は、光検出手段によって検出される。このように、本発明の変位検出器では、光学素子からの反射光または屈折光の変化の検出を通じて他方の可撓部材における基端部の変位を検出できる。また、当該変位検出を通じて、他方の可撓部材の基端部に加えられた力の大きさも検出できる。
【0008】
例えば、図1に示すように、他方の可撓部材の基端部の微小変位をX、一方および他方の可撓部材の間の距離をaとすると、一方および他方の可撓部材の先端部における撓み角θは、θ≒X/a、で表される。ここで、光学素子の向きも角度θだけ変化されているから、光学素子からの反射光の方向は2θだけ変化されている。光学素子から光検出手段までの距離をLとすれば、光検出手段上の反射光の照射位置は、S=2θL≒2XL/a、だけ変化されている。したがって、本発明の変位検出器における変位の拡大倍率mは、m=S/X≒2L/a、である。今、実際的なことを考慮して、a=200μm、L=100mmとすると、拡大倍率m≒1000となり、微小変位Xは約1000倍に拡大されて、光検出手段によって検出されることになる。このように、本発明では、Xが微小であっても、これを検出可能な大きさにまで拡大した上で検出できる。そのため、本発明によれば、微小変位の検出に好適な変位検出器を提供できる。
【0009】
また、本発明の変位検出器は、一方の可撓部材および他方の可撓部材の撓みという力学的現象と、光学素子による光の反射または屈折という光学的現象とに基づいて変位の検出を行うため、前記の電気マイクロメータのように、電磁気現象には依存していない。そのため、この発明によれば、外部電磁場の影響を受けることなく、正確な変位検出を行うことができる。
また、変位検出時には、前記の電気マイクロメータにおけるスピンドルのように質量が大きい物を変位させる必要はなく、質量が十分小さい他方の可撓部材の基端部を変位させるだけで足りる。そのため、高速測定の際にも追従可能にでき、高い応答性を実現できる。
また、前記のマイクロメータのように変位検出感度が温度によって変動されるおそれがないから、変位検出の安定性・信頼性を向上できる。
【0010】
本発明では、前記一方の可撓部材および前記他方の可撓部材の少なくとも一方は、板状または線状とされることが好ましい。
この発明によれば、簡素な構成の可撓部材を採用できるから、安価な変位検出器を提供できる。特に、板状とすれば、よじれが生じないので、光学素子を所定の姿勢に保持したまま変位させることができ、誤差の発生を防止することができる。
【0011】
また、本発明では、前記他方の可撓部材の基端部に取り付けられ被測定物の測定に関与する測定子が設けられることが好ましい。
ここで、測定子としては、被測定物に直接接触されて測定を行う接触プローブでもよいし、被測定物に接触されずに測定を行う非接触プローブでもよい。非接触プローブとしては、例えば、合焦点式変位検出器における対物レンズ、原子間力顕微鏡における探針が挙げられる。
この発明では、測定子が、被測定物との間で所定の相対位置関係が保持されるように変位される。測定子の変位は、光検出手段において検出される反射光または屈折光の変化を通じて検出される。
【0012】
また、本発明の変位検出器は、一端から他端に向かって長尺で、可撓性を有する一方の可撓部材と、この一方の可撓部材に近接して略平行に設けられ、一端から他端に向かって長尺で、可撓性を有する他方の可撓部材と、前記一方の可撓部材の一端部と前記他方の可撓部材の一端部とを連結させる第一連結部材と、前記一方の可撓部材の他端部と前記他方の可撓部材の他端部とを連結させる第二連結部材と、前記一方の可撓部材の略中間部に取り付けられる固定部材と、前記他方の可撓部材の略中間部に取り付けられ被測定物の測定に関与して移動可能な測定子と、前記一方の可撓部材の一端側、前記他方の可撓部材の一端側、および、前記第一連結部材の少なくともいずれかに取り付けられる第一光学素子と、前記一方の可撓部材の他端側、前記他方の可撓部材の他端側、および、前記第二連結部材の少なくともいずれかに取り付けられる第二光学素子と、前記第一光学素子および前記第二光学素子に光を照射する光照射手段と、前記第一光学素子からの反射光または屈折光、および、前記第二光学素子からの反射光または屈折光を検出する光検出手段とを備え、前記測定子による被測定物の測定時に前記他方の可撓部材の前記略中間部が、前記他方の可撓部材の両端を結ぶ方向に変位される際に、前記光検出手段における光検出を通じて当該変位を検出することを特徴とするものでもよい。
【0013】
この発明では、被測定物の測定時に測定子が変位され、それに伴って、他方の可撓部材の略中間部が、他方の可撓部材の両端を結ぶ方向に変位されると、一方および他方の可撓部材が各々の略中間部を撓みの支持部として略一体的に撓められる。このとき、第一光学素子および第二光学素子はいずれも向きが変えられるから、そこからの反射光または屈折光も変化される。この反射光または屈折光は光検出手段によって検出されるから、その変化を通じて測定子の変位を検出できる。
この発明によれば、第一光学素子および第二光学素子という二つの光学素子からの反射光または屈折光の検出に基づいて変位検出を行っており、光学素子が一つしか設けられない場合に比べて変位検出のための情報量が2倍になっているから、変位検出をより高精度にできる。
また、この発明では、互いに対向される一方および他方の可撓部材の厚みを薄くすることによって、変位検出器自体の当該厚み方向に沿った幅寸法を小さくでき、コンパクトな変位検出器とできる。
【0014】
また、本発明の変位検出器は、被測定物の測定に関与して特定方向に移動可能な測定子と、この測定子に基端が取り付けられ、当該基端から先端に向かって前記特定方向に沿って長尺で、可撓性を有する第一可撓部材と、前記測定子に基端が取り付けられ、当該基端から先端に向かって前記特定方向に沿って長尺で、可撓性を有する第二可撓部材と、前記第一可撓部材に近接して略平行に設けられ、可撓性を有する第三可撓部材と、前記第二可撓部材に近接して略平行に設けられ、可撓性を有する第四可撓部材と、前記第一可撓部材の先端部と前記第三可撓部材の先端部とを連結させる第一連結部材と、前記第二可撓部材の先端部と前記第四可撓部材の先端部とを連結させる第二連結部材と、前記第三可撓部材の基端部に取り付けられる第一固定部材と、前記第四可撓部材の基端部に取り付けられる第二固定部材と、前記第一可撓部材の先端側、前記第三可撓部材の先端側、および、前記第一連結部材の少なくともいずれかに取り付けられる第一光学素子と、前記第二可撓部材の先端側、前記第四可撓部材の先端側、および、前記第二連結部材の少なくともいずれかに取り付けられる第二光学素子と、前記第一光学素子および前記第二光学素子に光を照射する光照射手段と、前記第一光学素子からの反射光または屈折光、および、前記第二光学素子からの反射光または屈折光を検出する光検出手段とを備え、被測定物の測定時に前記測定子が前記特定方向に沿って変位される際に、前記光検出手段における光検出を通じて当該変位を検出することを特徴とするものでもよい。
【0015】
この発明では、被測定物の測定時に測定子が特定方向に変位され、それに伴って、第一可撓部材および第二可撓部材の基端部が当該特定方向に変位されると、第一可撓部材と第三可撓部材とが各々の基端部を撓みの支持部として略一体的に撓められるとともに、第二可撓部材と第四可撓部材とが各々の基端部を撓みの支持部として略一体的に撓められる。このとき、第一光学素子および第二光学素子はいずれも向きが変えられるから、そこからの反射光または屈折光も変化される。この反射光または屈折光は光検出手段によって検出されるから、その変化を通じて測定子の変位を検出できる。
この発明によれば、第一光学素子および第二光学素子という二つの光学素子からの反射光または屈折光の検出に基づいて変位検出を行っており、光学素子が一つしか設けられない場合に比べて変位検出のための情報量が2倍になっているから、変位検出をより高精度にできる。
また、この発明では、いずれも前記特定方向に沿った長尺形状である第一可撓部材、第二可撓部材、第三可撓部材および第四可撓部材の厚みを薄くすることによって、前記特定方向に垂直な方向に沿った変位検出器の幅寸法を小さくでき、コンパクトな変位検出器とできる。
【0016】
また、本発明では、前記光照射手段は、一つの光源と、この光源からの光を二分割し、一方の光を前記第一光学素子に照射し、他方の光を前記第二光学素子に照射する光分割手段とを備えることが好ましい。
この発明によれば、第一光学素子および第二光学素子に光を照射するための光源が一つで済むから、安価な変位検出器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態にかかる変位検出器を図面に基づいて説明する。
本実施形態にかかる変位検出器は、いわゆるエデンばね機構、および、いわゆる光てこ機構を利用するものであり、当該両機構によって拡大された微小変位を検出するものである。ここで、エデンばね機構とは、平行板ばね式拡大機構等とも呼ばれ、互いに平行に配置された2枚の板ばね(いわゆるエデンばね)を用いて、微小変位を角度に変換する機構である。また、光てこ機構とは、平面反射鏡で反射する光の方向が、平面反射鏡が角度θだけ傾くと2θだけ偏る性質を利用して、長さや角度の変化を拡大する機構である。
まず、図1を用いて、エデンばね機構、および、光てこ機構を利用した微小変位拡大機構について説明をする。後述する第1、第2、第3実施形態にかかる変位検出器は、いずれも当該微小変位拡大機構を応用するものである。
図1において、(A)は、当該微小変位拡大機構に外力が作用しておらず、微小変位が生じていない状態の図であり、(B)は、当該機構に外力が作用し、微小変位Xが生じている状態の図である。
【0018】
これらの図において、エデンばね1は、互いに近接して配置される一方の可撓部材としての板ばね11、および、他方の可撓部材としての板ばね12と、板ばね11と板ばね12とを連結させる連結部材13とを備える。
板ばね11および板ばね12は、弾性および可撓性を備える。板ばね11および板ばね12は、互いに平行に配置されており、両者の間隔は、図1(A)に示すようにaである。板ばね11は、基端部(図1においては左端部)が固定ブロック14に固定されている。板ばね12は、基端部(図1においては左端部)121が移動可能な自由端部とされている。基端部121の移動方向は、板ばね12の両端を結ぶ方向であり、図1においては左右方向である。なお、板ばね11および板ばね12は、それぞれの基端から先端に向かって長尺の形状となっている。
【0019】
連結部材13は、板ばね11の先端部と、板ばね12の先端部とを連結させる部材である。
板ばね12の先端部における上面(図1中)には、光学素子としての反射ミラー15が設けられる。反射ミラー15は、図1においては図示しない光源から出射される光を反射するものである。光源からの光は、図1においては、下方に向かって進行する光である。この光に対する反射ミラー15の傾きに応じて、反射ミラー15からの反射光の向きが変化される。
【0020】
図1(B)において、板ばね12の基端部121に右方向(図1中)の力fを加えると、基端部121は、右方向にXだけ微小変位する。基端部121がXだけ微小変位すると、連結部材13を介して伝達される力によって板ばね11および板ばね12は、各々の基端部を撓みの支持部として下方向に略一体的に撓められる。このように両板ばね11、12が撓められた状態において、両板ばね11、12の先端部における撓み角をθとすると、反射ミラー15の法線nの方向(図1における一点鎖線)と、光源からの入射光の方向(上下方向)とのなす角度もθである。そのため、図1において下方に入射される光源からの入射光は、反射ミラー15によって、入射光の方向(上下方向)に対して角度2θをなす方向に反射される。この反射光は、反射ミラー15から所定の距離L(光てこ機構における腕の長さ)だけ離れたところに配置される図示しない光検出手段によって検出される。反射ミラー15の法線nの方向が角度θだけ傾くことによって、光検出手段上に形成される当該反射光の照射位置は、略2θLだけ移動される。このとき、Lを十分大きくしておけば、θが微小な角度であったとしても、光検出手段上における前記照射位置の移動量(略2θL)は十分検出可能な大きさにできる。ここで、エデンばね機構においては、θ=X/aという関係式が成り立つ。そのため、光検出手段上における光の照射位置の移動量SはS≒2θL=2XL/aである。今、実際的なことを考慮して、X=1μm、a=200μm、L=100mmとすると、S=1mmとなり、微小変位Xは、S/X=1000倍に拡大されて検出されることになる。
【0021】
次に、微小変位Xを角度θに変換するための機構としてエデンばね機構を利用することによる利点を、片持ち梁機構との対比において、具体的な数値を用いながら説明をする。
図2(A)は、片持ち梁機構を示す図であり、また、図2(B)は、エデンばね機構を示す図である。
図2(A)において、lは梁の長さ、fは梁を撓める力、Xは力fによる微小変位、また、θ´は先端における撓み角である。ここで、θ´=3X/2l・・・(i)という関係式が成り立つ。
図2(B)において、aはエデンばねを構成する両板ばねの間隔、lはエデンばねの基端部から先端部までの距離、fは、図2中上側に配置される板ばねの基端部を図2中右方向に変位させるための力、Xは力fによる前記基端部の微小変位、θは先端部におけるエデンばねの撓み角である。ここで、θ=X/a・・・(ii)の関係式が成り立つ。
【0022】
今、図2(A)において、fの力でX=1μmの微小変位を与えたとする。実用的なことを考慮して、l=10mmとすれば、式(i)によってθ´≒1.5×10−4radとなる。
一方、図2(B)においても、図2(A)と同様に、fの力でX=1μmの微小変位を与えたとする。実用的なことを考慮して、a=100μmとすれば、式(ii)によってθ=10−2radと計算される。
従って、以上の例においては、エデンばね機構における角度変換率は、片持ち梁に同じ微小変位X(=1μm)を与えた場合の角度変換率に比べて、約67倍(=θ/θ´)の大きさである。そのため、エデンばね機構を用いれば、片持ち梁機構に比べて大きな角度変換率を実現でき、微小変位の検出に好適である。また、本実施形態では、エデンばね機構による変位拡大後、さらに、光てこ機構による変位拡大を施しているから、より大きなの変位拡大率を実現できる。
【0023】
<第1実施形態>
図3に、図1に示されるような微小変位拡大機構を用いて構成される変位検出器(以下、エデンばね式変位計2と称する)を示す。
エデンばね式変位計2は、ハウジング21と、ハウジング21の内部に設けられるエデンばね22と、基端部(図3においては右端)がエデンばね22に取り付けられるとともに、先端部(図3においては左端部)がハウジング21の外部に設けられ、被測定面Wに対する接触測定を行う測定子23と、測定子23が被測定面Wに接触し変位されることを起因として生じるエデンばね22の撓みを光学的に検出することによって、測定子23の変位を検出する変位検出光学系24とを備える。
【0024】
エデンばね22は、互いに近接して配置される一方の可撓部材としての板ばね221と他方の可撓部材としての板ばね222と、板ばね221と板ばね222とを連結させる連結部材223とを備える。板ばね221および板ばね222は弾性および可撓性を備える。板ばね221および板ばね222は、互いに平行に配置されている。板ばね221は、基端部(図3においては下端部)が固定ブロック224Aに固定されている。固定ブロック224Aは固定爪224Bによって係止され、移動不可能である。板ばね222の基端部は、可動ブロック225を介して測定子23の基端部に取り付けられている。なお、板ばね221および板ばね222は、それぞれの基端から先端に向かって長尺の形状となっている。
【0025】
連結部材223は、板ばね221の先端部と、板ばね222の先端部とを連結させる。連結部材223の上面(図3中)には、光学素子としての反射ミラー226が設けられる。
【0026】
測定子23は、略ロッド形状であり、その略中間部において軸受231によって回動可能に支持されている。測定子23の先端には球状の先端球232が形成されている。先端球232は、被測定面Wに接触され、その表面形状の測定に関与する。
【0027】
変位検出光学系24においては、光源としての光ファイバー照明装置241から出射された光が、凸レンズ242を経由され、その後、反射ミラー243、226、244、245において順次反射され、光検出手段としての光電検出器246に照射される。なお、凸レンズ242、各反射ミラーの配置が適宜予め調整されている結果、このときの光電検出器246に照射される光は略点状となっているものとする。光電検出器246は、その受光面における光の照射位置に応じた電気信号を発信し、この電気信号は、信号ケーブル247によって種々の装置へと伝送される。
【0028】
以上のような構成のエデンばね式変位計2を用いると、測定子23における先端球232を、被測定面Wに接触させた状態で被測定面W上を移動させることによって、被測定面Wの表面形状の測定をすることができる。
【0029】
先端球232が被測定面W上を移動されると、被測定面Wの表面形状(凹凸)に応じて、先端球232は、図3中上下方向に変位される。すると、測定子23は、軸受231を回動中心として、先端球232の変位量に対応する量だけ回動される。測定子23が回動されると、その基端が上下方向に移動され、それに伴って可動ブロック225も上下方向に移動される。
【0030】
可動ブロック225が上下方向に移動されると、それに伴って、板ばね222の基端部が上下方向に移動され、板ばね221および板ばね222は、連結部材223を介して伝達される力によって、図3中左右方向に略一体的に撓められる。このとき、板ばね221、222は、それぞれの基端部を撓みの支持部として撓められる。このように、両板ばね221、222が左右方向に撓められると、それに伴って、反射ミラー226の向きが変化される。
【0031】
反射ミラー226の向きが変化されると、光ファイバー照明装置241から出射され光電検出器246の受光面に照射される光の照射位置が、変化される。光の照射位置の変化は、測定子23の先端球232の変位と一対一に関係付けられるから、使用者は、先端球232の変位を検出できる。そのため、エデンばね式変位計2を用いれば、先端球232の変位検出を通じて、被測定面Wの表面形状(凹凸)の測定ができる。なお、本実施形態においては、板ばね221および板ばね222が撓んでおらず平板形状となっている状態において、先端球232の変位がゼロであるように予め設定されているものとする。
【0032】
本実施形態によれば、以下の作用・効果がある。
(1)エデンばね式変位計2は、板ばね221と板ばね222の撓みという力学的現象と、反射ミラー226による光の反射という光学的現象とに基づいて先端球232の変位の検出を行う。そのため、本実施形態によれば、外部電磁場や温度による影響を受けることはないから、過酷な電磁気環境下や、温度変化の激しい環境下においても正確な変位検出を行うことができる。
【0033】
(2)測定のためには質量が十分小さい板ばね222の基端部を変位させるだけでよいので、低い測定力で測定できる。そのため、装置の耐久性を大きくする必要がなく、簡素かつ安価な変位検出器を提供できる。また、板ばね222は、質量が十分小さいので、先端球232の変位に対応して迅速に応答して撓むことができる。そのため、高速測定に好適な高い応答性を備える変位検出器を提供できる。
【0034】
(3)エデンばね式変位計2においては、一方の可撓部材および他方の可撓部材として簡素な構成の板ばね221および板ばね222を採用しているから、安価に製造することができる。また、板ばねを用いるとよじれが生じないので、反射ミラー226の変位方向を板ばね221、222の撓み方向と厳密に一致でき、変位検出をより精密にできる。
【0035】
(4)本実施形態においては、板ばね221および板ばね222が弾性を備えているので、これらが撓んだ状態にあっては、平板形状に回復しようとする付勢力が生じている。本実施形態においては、両板ばねが平板形状にある状態において、先端球232の変位がゼロであるように予め設定されているので、先端球232の変位検出時には、常に、ゼロ点復帰させようとする付勢力が生じていることになる。そして、この付勢力によって被測定面Wと先端球232とがしっかりと接触されるので、被測定面Wの表面形状の測定を精度よく行うことが可能である。
【0036】
<第2実施形態>
続いて、図4および図5を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態にかかる変位検出器(以下、直列エデンばね式変位計3と称する)の全体の構成を示す図である。また、図5は、直列エデンばね式変位計3における直列エデンばね機構31を示す図である。なお、「直列エデンばね」の名称は、図5において、エデンばね機構としての役割を果たす部分が左右に2箇所あり、かつ、当該部分が一直線上に配置されていることに由来する。
【0037】
図4において、直列エデンばね式変位計3は、直列エデンばね機構31と、変位検出光学系32とを備えて構成される。
直列エデンばね機構31は、直列エデンばね部311と、被測定物に接触され測定に関与する測定子312とを有する。
【0038】
直列エデンばね部311は、互いに近接して平行配置される一方の可撓部材としての板ばね3111、および、他方の可撓部材としての板ばね3112と、板ばね3111と板ばね3112とを、互いの両端部において連結させる二つの連結部材3113A(第一連結部材)および3113B(第二連結部材)とを備える。板ばね3111および3112は弾性および可撓性を備える。板ばね3111は、その中間部において固定ブロック3114に固定されている。板ばね3112は、その中間部において可動ブロック3115を介して測定子312の基端部に取り付けられている。可動ブロック3115は、図4中左右方向に移動可能に設けられており、そのため、板ばね3112の中間部も左右方向に移動可能である。なお、板ばね3111および3112は、それぞれの一端から他端に向かって長尺の形状となっている。
また、各連結部材3113Aおよび3113Bには、それぞれ、第一光学素子および第二光学素子としての反射ミラー3116Aおよび3116Bが設けられる。
【0039】
測定子312は、略ロッド形状であり、図4中略上下方向を向くように配置される。測定子312は、その略中間部において軸受3121によって回動可能に支持されている。測定子312の基端(図4においては上端)は、可動ブロック3115に取り付けられている。また、測定子312の先端には、球状の先端球3122が形成されている。
【0040】
続いて、図5を用いて、直列エデンばね機構31の動作を説明する。
図5において、(A)は、測定子312の先端球3122が右方向(+方向と定義する)にδだけ変位された状態の図であり、(B)は、先端球3122が左方向(−方向と定義する)にδだけ変位された状態の図である。
図5の(A)において、先端球3122が+方向にδだけ移動されると、測定子312は、軸受3121を中心として反時計回り方向に回動される。このとき、測定子312の基端(上端)は左方向に移動され、それと共に、可動ブロック3115、および、板ばね3112の中間部も左方向、すなわち板ばね3112の両端を結ぶ方向に移動される。すると、板ばね3111および3112は、それぞれの中間部を撓みの支持部として撓められる。それに伴って、反射ミラー3116Aおよび3116Bは、図に示すように、それぞれ、時計回り方向に回転され、向きが変化される。
図5の(B)において先端球3122が−方向にδだけ移動されると、今度は(A)とは逆に、反射ミラー3116Aおよび3116Bが、それぞれ、反時計回り方向に回転される。
【0041】
図4において、変位検出光学系32では、光源321から出射された光が、凸レンズ322を経由され、光分割手段としてのビームスプリッタ323によって2つの光線に分割される。そのうちの一方の光線は、反射ミラー324A、ビームスプリッタ325A、反射ミラー3116A、ビームスプリッタ325Aを順次経由された後、光検出手段としての光電検出器326Aに照射される。また、ビームスプリッタ323によって分割された他方の光線は、反射ミラー324B、ビームスプリッタ325B、反射ミラー3116B、ビームスプリッタ325Bを順次経由された後、光検出手段としての光電検出器326Bに照射される。なお、凸レンズ322や各反射ミラー、各ビームスプリッタの配置は適宜予め調整されており、そのため、光電検出器326Aおよび326Bに照射される光が略点状になっているものとする。
なお、この図において、Lは、図1において説明した光てこ機構における腕の長さを表す。また、光源321、凸レンズ322、ビームスプリッタ323、反射ミラー324A,Bおよびビームスプリッタ325A,Bは、第一光学素子としての反射ミラー3116Aおよび第二光学素子としての反射ミラー3116Bに光を照射する本発明の光照射手段を構成している。
【0042】
光電検出器326Aおよび326Bは、その受光面における前記略点状の光の照射位置に応じた電気信号を発信する。具体的には、各光電検出器326Aおよび326Bの受光面の中心位置を原点として、原点よりも上方(図4中)に光が照射されたときは、各光電検出器は、プラス(+)符号の電気信号を発信し、原点よりも下方(図4中)に光が照射されたときは、マイナス(−)符号の電気信号を発信する。なお、これら電気信号の強さ(絶対値)は、原点と光の照射位置との間の距離に応じて決定される。
以上のように各光電検出器から発信される電気信号は、それぞれ、信号ケーブル327Aおよび327Bによって図示しない演算制御手段に伝送される。
【0043】
以上のような構成の直列エデンばね式変位計3を用いると、測定子312の先端球3122を、被測定面に接触させた状態で被測定面上を移動させることによって、被測定面の表面形状の測定をすることができる。
【0044】
先端球3122が被測定面上を移動されると、被測定面の表面形状(凹凸)に応じて、先端球3122は、図4中左右方向に変位される。すると、図5に示すように、反射ミラー3116Aおよび3116Bの向きが変化される。
【0045】
反射ミラー3116Aおよび3116Bの向きが変化されると、光電検出器326Aおよび326Bの受光面に照射される光の照射位置が変化される。各光電検出器からは、この照射位置に応じた電気信号が発信される。
以下、具体的に説明する。図5(A)のように先端球3122が+方向(右方向)にδ変位されると、反射ミラー3116Aが上方、反射ミラー3116Bが下方を向くようにそれぞれ傾けられる。すると、反射ミラー3116Aからの反射光は、光電検出器326A受光面の原点より上方に照射され、+符号の電気信号が発信される。一方、反射ミラー3116Bからの反射光は、光電検出器326Bの受光面の原点より下方に照射され、−符号の電気信号が発信される。なお、図5(A)において示されている+、−の符号は、各光電検出器326A、Bから発信される電気信号の符号に対応している。
また、図5(B)のように先端球3122が−方向にδ変位されると、光電検出器326Aから−符号の電気信号が、光電検出器326Bから+符号の電気信号が発信される。
【0046】
以上のように、図5(A)および(B)のいずれの場合も、各光電検出器326A、Bから発信される電気信号は互いに逆符号である。また、各光電検出器326A、Bから発信される電気信号は、それぞれ、先端球3122の変位の大きさδに対応している。
図示しない演算制御手段においては、これらの各電気信号から先端球3122の変位δを算出するための演算処理が行われる。すなわち、まず、各電気信号の差の絶対値がとられる。差をとるのは各電気信号が逆符号であるためであり、この絶対値をとれば、δの2倍、すなわち2δに相当する電気信号が得られることになる。続いて、これを2分の1倍する演算処理がなされ、δに相当する電気信号が得られる。
このように、本実施形態によれば変位δを検出でき、これを通じて被測定面の表面形状(凹凸)を測定できる。
【0047】
本実施形態によれば、前記第1実施形態における作用・効果に加えて、以下の作用・効果がある。
(5)本実施形態では、2枚の反射ミラー3116Aおよび3116Bからの反射光を利用して、先端球3122の変位の検出を行っているから、一枚の反射ミラーのみを利用する場合に比べて、変位検出の誤差を減らし、精度を高めることができる。
【0048】
(6)本実施形態では、互いに対向される一方および他方の可撓部材として、薄板状の板ばね3111、3112を用いているから、この厚み方向に沿った幅寸法が小さいコンパクトな変位検出器を提供できる。そのため、例えば、図5における上下方向に設置スペースが大きく取れないような場合であっても、本実施形態の直列エデンばね式変位計3であれば容易に設置できる。
【0049】
<第3実施形態>
続いて、図6および図7を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態にかかる変位検出器(以下、並列エデンばね式変位計4と称する)の全体の構成を示す図である。また、図7は、並列エデンばね式変位計4における並列エデンばね機構41を示す図である。なお、「並列エデンばね」の名称は、図7において、エデンばね機構としての役割を果たす部分が左右に2箇所、並んで配置されていることに由来する。
【0050】
図6において、並列エデンばね式変位計4は、並列エデンばね機構41と、変位検出光学系42とを備える。
並列エデンばね機構41は、並列エデンばね部411と、被測定物に接触され測定に関与する測定子412とを有する。測定子412は、図6における上下方向に沿って移動可能に設けられており、特定方向に移動可能な構成となっている。
【0051】
並列エデンばね部411は、2つのエデンばね部411Lおよび411Rを有する(Lは、図6、7における左方を、Rは右方を意味するものとする。以下同様)。各エデンばね部411L(R)は、互いに近接して平行配置される第一可撓部材(第二可撓部材)としての板ばね4111L(R)、および、第三可撓部材(第四可撓部材)としての板ばね4112L(R)と、板ばね4111L(R)と板ばね4112L(R)とをそれぞれの先端部において連結させる第一連結部材(第二連結部材)としての連結部材4113L(R)とを備える。板ばね4111L(R)および4112L(R)は弾性および可撓性を備える。板ばね4112L(R)は、その基端部において第一固定部材(第二固定部材)としての固定ブロック4114L(R)に固定されている。板ばね4111L(R)は、その基端部において、可動ブロック4115を介して測定子412の基端に取り付けられている。なお、板ばね4111L(R)および4112L(R)は、それぞれの基端から先端に向かって、測定子412の可動方向(上下方向)に沿って長尺の形状となっている。
また、連結部材4113L(R)には、第一光学素子(第二光学素子)としての反射ミラー4116L(R)が設けられる。
また、可動ブロック4115が上方(図6中)に移動されすぎるのを防止し、安全性を確保するためのストッパー4117が設けられる。
【0052】
測定子412は、先端に向かって先細のテーパ形状である。測定子412の基端は、可動ブロック4115に取り付けられている。また、測定子412の先端には、球状の先端球4121が形成されている。
【0053】
続いて、図7を用いて、並列エデンばね機構41の動作を説明する。
図7において、(A)は、測定子412の先端球4121が上方向(+方向と定義する)にδだけ変位された状態の図であり、(B)は、先端球4121が下方向(−方向と定義する)にδだけ変位された状態の図である。
図7の(A)において、先端球4121が+方向にδだけ移動されると、板ばね4111L(R)および4112L(R)は、それぞれの基端部を撓みの支持部として撓められる。それに伴って、反射ミラー4116Lは、反時計回り方向に回転され、反射ミラー4116Rは、時計回り方向に回転される。
図7の(B)において先端球4121が−方向にδだけ移動されると、今度は(A)とは逆に、反射ミラー4116Lが時計回り方向に回転され、反射ミラー4116Rが反時計回り方向に回転される。
【0054】
図6において、変位検出光学系42では、光源421から出射された光が、凸レンズ422を経由され、光分割手段としてのビームスプリッタ423によって2つの光線に分割される。そのうちの一方の光線は、反射ミラー424L、ビームスプリッタ425L、直角プリズム426、反射ミラー4116L、直角プリズム426、ビームスプリッタ425Lを順次経由された後、光検出手段としての光電検出器427Lに照射される。また、ビームスプリッタ423によって分割された他方の光線は、反射ミラー424R、ビームスプリッタ425R、直角プリズム426、反射ミラー4116R、直角プリズム426、ビームスプリッタ425Rを順次経由された後、光検出手段としての光電検出器427Rに照射される。なお、凸レンズ422や各反射ミラー、各ビームスプリッタ、直角プリズム426の配置は適宜予め調整されており、そのため、光電検出器427L(R)に照射される光が略点状になっているものとする。なお、光源421、凸レンズ422、ビームスプリッタ423、反射ミラー424L,R、ビームスプリッタ425L,R、および、直角プリズム426は、第一光学素子としての反射ミラー4116Lおよび第二光学素子としての反射ミラー4116Rに光を照射する本発明の光照射手段を構成している。
【0055】
光電検出器427L(R)は、その受光面における前記略点状の光の照射位置に応じた電気信号を発信する。具体的には、各光電検出器の受光面の中心位置を原点として、光電検出器427Lでは、原点よりも上方(図6中)に光が照射されたときには、プラス(+)符号の電気信号が発信され、原点よりも下方に光が照射されたときには、マイナス(−)符号の電気信号が発信される。また、光電検出器427Rでは、原点よりも上方に光が照射されたときには、マイナス(−)符号の電気信号が発信され、原点よりも下方に光が照射されたときには、プラス(+)符号の電気信号が発信される。なお、これら電気信号の強さ(絶対値)は、原点と光の照射位置との間の距離に応じて決定される。
以上のように各光電検出器427L、Rから発信される電気信号は、それぞれ、信号ケーブル428Lおよび428Rによって図示しない演算制御手段に伝送される。
【0056】
以上のような構成の並列エデンばね式変位計4を用いると、測定子412における球状の先端球4121を、被測定面に接触させた状態で被測定面上を移動させることによって、被測定面の表面形状の測定をすることができる。
【0057】
先端球4121が被測定面上を移動されると、被測定面の表面形状(凹凸)に応じて、先端球4121は、図6中上下方向に変位される。すると、前記のように、反射ミラー4116L(R)の向きが変化される。
【0058】
反射ミラー4116L(R)の向きが変化されると、光電検出器427L(R)の受光面に照射される光の照射位置が変化される。すると、各光電検出器427L、Rからは、この照射位置に応じた電気信号が発信される。具体的には、図7(A)のように先端球4121が+方向(上方向)に変位されると、光電検出器427Lからは+符号の電気信号が、光電検出器427Rからは−符号の電気信号が発信され、図7(B)のように先端球4121が−方向(下方向)に変位されると、光電検出器427Lからは−符号の電気信号が、光電検出器427Rからは+符号の電気信号が発信される。なお、ここで、図7(A)、(B)において示されている+、−の符号は、各光電検出器427L、Rから発信される電気信号の符号に対応している。
以上のように、光電検出器427Lと光電検出器427Rとから発信される電気信号は互いに逆符号である。図示しない演算制御手段においては、当該各電気信号(互いに逆符号)の差の絶対値を2分の1倍する演算処理がなされ、先端球4121の変位δが算出される。本実施形態の並列エデンばね式変位計4によれば、検出されたδを通じて被測定面の表面形状(凹凸)を測定できる。
【0059】
本実施形態によれば、前記第1実施形態における作用・効果に加えて、以下の作用・効果がある。
(7)本実施形態では、2枚の反射ミラー4116Lおよび4116Rからの反射光を利用して、先端球4121の変位の検出を行っているから、一枚の反射ミラーのみを利用する場合に比べて、変位検出の誤差を減らし、精度を高めることができる。
【0060】
(8)本実施形態では、第一、第二、第三、第四可撓部材として、薄板状の板ばね4111L、4111R、4112L、4112Rを用いているから、この厚み方向に沿った幅寸法が小さいコンパクトな変位検出器を提供できる。そのため、例えば、図7における左右方向に設置スペースが大きく取れないような場合であっても、本実施形態の並列エデンばね式変位計4であれば容易に設置できる。
【0061】
なお、本発明は前記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、エデンばね機構を構成させるために、2枚の板ばねと、これらを連結させる連結部材とが設けられ、これらは、それぞれ別部品とされていた。しかし、本発明では、これらをまとめて1部品として製造し、エデンばね機構を構成させてもよい。例えば、一枚の板ばねを略コの字状に曲げることによって、エデンばね機構を構成させてもよい。
【0062】
また、前記各実施形態では、光源は一つだけ設けられていたが、本発明では、光源は複数設けられるのであってもよい。
また、光電検出器の数も自由に選択することができ、一個でも、複数個でもよい。特に、複数の光学素子からの反射光を一つの光電検出器で検出するような構成とすれば、部品点数が減り、製造コストを低減でき、安価な変位検出器を提供できる。
【0063】
また、前記各実施形態では、エデンばね機構に取り付けられる本発明の光学素子として平面状の反射ミラーを用いていたが、本発明では、光学素子として、例えば、光を透過させるレンズを用いてもよい。このような構成においては、光源からの光は当該レンズで屈折され、その屈折光が光電検出器において検出される。変位検出にあたってエデンばね機構が撓められることによって、光電検出器の受光面上における屈折光の照射位置が変化されるから、屈折光の検出を通じて、変位の検出を行うことが可能である。また、本発明では、反射面が曲面状の反射ミラーを用いてもよい。また、本発明では、一つの光学素子から出射される反射光および屈折光の双方を利用して変位の検出を行うのであってもよい。なお、エデンばね機構に取り付けられる本発明の光学素子(反射ミラー、レンズ等)の数および配置は、本発明においては、自由に決定することができる。また、当該光学素子は、連結部材に取り付けられる必要は無く、各板ばねの端側(先端側)に取り付けられるものであってもよい。
【0064】
また、前記各実施形態においては、可撓部材として板ばねを利用することとしていたが、本発明では、板ばねの代わりに、針金等の線状の可撓部材を用いるのであってもよい。このとき、線状の可撓部材は弾性を備えていることが好ましい。
【0065】
また、前記各実施形態においては、被測定面の表面形状の測定を、測定子における先端球を当該被測定面に直接接触させることにより行っていたが、本発明は、被測定面に直接接触されないプローブを用いた非接触測定にも応用することができる。そのためには、当該プローブが、被測定面の表面形状に応じて変位される構成となっていればよい。プローブの変位に基づいて本発明のエデンばねが撓められ、その撓み量に基づいて、プローブの変位が光学的に検出される。なお、非接触測定の方式としては、電磁気現象を利用するもの、光学現象を利用するもの、原子間力を利用するもの等が考えられる。
【0066】
また、前記各実施形態においては、被測定面の表面形状を測定する場合における本発明の応用例について説明していたが、本発明の変位検出器は、被測定面の表面形状の測定に限らず、一般的な変位検出に利用することができる。例えば、長さ、内・外径等の寸法測定にも利用することができる。
【0067】
また、前記各実施形態では、1又は2のエデンばね機構を備える変位検出器について説明したが、本発明の変位検出器では、さらに多くのエデンばね機構が設けられる構成であってもよい。このとき、各エデンばね機構は、共通の可動部材、例えば、測定プローブの変位に連動して撓められるように設けられるのが好ましい。エデンばね機構の数が多ければ、変位検出に利用することのできる情報量が多くなるので、変位検出の精度を高めることができる。
【0068】
また、前記第3実施形態における固定ブロック4114L、4114Rは互いに別部材とされていたが、一部材として構成してもよい。
【0069】
また、前記各実施形態においては、変位検出を行う場合に限って説明していたが、本発明では、検出された当該変位に基づいて所定の演算処理を行って、板ばね(本発明における他方の可撓部材)の基端部あるいは測定子に加えられた力の大きさを算出する演算手段を備える測定装置を構成してもよい。この測定装置によれば力の大きさの測定を行うことができる。
また、モード切替手段を設けることによって、変位測定モードと力測定モードとを切替えることができる測定装置を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、変位の検出に利用することができ、寸法測定、段差測定、隙間測定、被測定物表面形状の測定に応用することができる。本発明の変位検出器は、例えば、測長スケール、測定顕微鏡、原子間力顕微鏡、三次元測定機等にも利用することができる。また、変位検出を通じて、当該変位を生じさせる力の大きさも検出することができ、重量計、圧力検出器等にも応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態において用いられる、エデンばね機構および光てこ機構を利用した微小変位拡大機構を示す図。
【図2】エデンばね機構と、片持ち梁機構との対比図。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるエデンばね式変位計の構成を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる直列エデンばね式変位計の構成を示す全体図。
【図5】前記第2実施形態における直列エデンばね機構の構成を示す図。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる並列エデンばね式変位計の構成を示す全体図。
【図7】前記第3実施形態における並列エデンばね機構の構成を示す図。
【符号の説明】
【0072】
1…エデンばね
11、12…板ばね
13…連結部材
15…反射ミラー
2…エデンばね式変位計
22…エデンばね
23…測定子
24…変位検出光学系
221、222…板ばね
223…連結部材
226…反射ミラー
3…直列エデンばね式変位計
31…直列エデンばね機構
32…変位検出光学系
311…直列エデンばね部
312…測定子
323…ビームスプリッタ
3114…固定ブロック
3116A、B…反射ミラー
4…並列エデンばね式変位計
41…並列エデンばね機構
42…変位検出光学系
411…並列エデンばね部
412…測定子
423…ビームスプリッタ
4114L、R…固定ブロック
4116L、R…反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部が固定部材に固定され可撓性を有する一方の可撓部材と、
この一方の可撓部材に近接して略平行に設けられ、可撓性を有する他方の可撓部材と、
前記一方の可撓部材の先端部と前記他方の可撓部材の先端部とを連結させる連結部材と、
光源と、
前記一方の可撓部材の先端側、前記他方の可撓部材の先端側、および、前記連結部材の少なくともいずれかに取り付けられ、前記光源から出射される光を反射または屈折させる光学素子と、
この光学素子からの反射光または屈折光を検出する光検出手段とを備え、
前記他方の可撓部材の基端部が、前記他方の可撓部材の両端を結ぶ方向に変位される際に、前記光検出手段における光検出を通じて当該変位を検出することを特徴とする変位検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の変位検出器において、
前記一方の可撓部材および前記他方の可撓部材の少なくとも一方は、板状または線状とされることを特徴とする変位検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の変位検出器において、
前記他方の可撓部材の基端部に取り付けられ被測定物の測定に関与する測定子が設けられることを特徴とする変位検出器。
【請求項4】
一端から他端に向かって長尺で、可撓性を有する一方の可撓部材と、
この一方の可撓部材に近接して略平行に設けられ、一端から他端に向かって長尺で、可撓性を有する他方の可撓部材と、
前記一方の可撓部材の一端部と前記他方の可撓部材の一端部とを連結させる第一連結部材と、
前記一方の可撓部材の他端部と前記他方の可撓部材の他端部とを連結させる第二連結部材と、
前記一方の可撓部材の略中間部に取り付けられる固定部材と、
前記他方の可撓部材の略中間部に取り付けられ被測定物の測定に関与して移動可能な測定子と、
前記一方の可撓部材の一端側、前記他方の可撓部材の一端側、および、前記第一連結部材の少なくともいずれかに取り付けられる第一光学素子と、
前記一方の可撓部材の他端側、前記他方の可撓部材の他端側、および、前記第二連結部材の少なくともいずれかに取り付けられる第二光学素子と、
前記第一光学素子および前記第二光学素子に光を照射する光照射手段と、
前記第一光学素子からの反射光または屈折光、および、前記第二光学素子からの反射光または屈折光を検出する光検出手段とを備え、
前記測定子による被測定物の測定時に前記他方の可撓部材の前記略中間部が、前記他方の可撓部材の両端を結ぶ方向に変位される際に、前記光検出手段における光検出を通じて当該変位を検出することを特徴とする変位検出器。
【請求項5】
被測定物の測定に関与して特定方向に移動可能な測定子と、
この測定子に基端が取り付けられ、当該基端から先端に向かって前記特定方向に沿って長尺で、可撓性を有する第一可撓部材と、
前記測定子に基端が取り付けられ、当該基端から先端に向かって前記特定方向に沿って長尺で、可撓性を有する第二可撓部材と、
前記第一可撓部材に近接して略平行に設けられ、可撓性を有する第三可撓部材と、
前記第二可撓部材に近接して略平行に設けられ、可撓性を有する第四可撓部材と、
前記第一可撓部材の先端部と前記第三可撓部材の先端部とを連結させる第一連結部材と、
前記第二可撓部材の先端部と前記第四可撓部材の先端部とを連結させる第二連結部材と、
前記第三可撓部材の基端部に取り付けられる第一固定部材と、
前記第四可撓部材の基端部に取り付けられる第二固定部材と、
前記第一可撓部材の先端側、前記第三可撓部材の先端側、および、前記第一連結部材の少なくともいずれかに取り付けられる第一光学素子と、
前記第二可撓部材の先端側、前記第四可撓部材の先端側、および、前記第二連結部材の少なくともいずれかに取り付けられる第二光学素子と、
前記第一光学素子および前記第二光学素子に光を照射する光照射手段と、
前記第一光学素子からの反射光または屈折光、および、前記第二光学素子からの反射光または屈折光を検出する光検出手段とを備え、
被測定物の測定時に前記測定子が前記特定方向に沿って変位される際に、前記光検出手段における光検出を通じて当該変位を検出することを特徴とする変位検出器。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の変位検出器において、
前記光照射手段は、一つの光源と、この光源からの光を二分割し、一方の光を前記第一光学素子に照射し、他方の光を前記第二光学素子に照射する光分割手段とを備えることを特徴とする変位検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−10343(P2006−10343A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184061(P2004−184061)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】