多価ヘテロ二官能性ポリマーおよびその使用方法
生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための多価ヘテロ二官能性ポリマーが、本明細書中で説明される。ポリマーは、それに結合された複数の予備配置されたヘテロ二官能性リガンドを含み;かつ各ヘテロ二官能性リガンドは生物学的標的に結合可能な第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基とを含む。ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマー、生物学的標的およびエフェクター鋳型とで三元複合体を形成するようにポリマー上に予備配置される。本明細書中に記載のポリマー、方法および組成物は、新しい治療剤および種々の非治療用途において有用な作用物質の設計および生成のためのアプローチを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年3月23日に出願された米国仮特許出願第60/896,878号明細書の優先権を主張するものであり、その全てが本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、新規の多価ポリマーを有するヘテロ二官能性リガンド、それを合成するための方法、その組成物、ならびにその治療および非治療用途に関する。
【背景技術】
【0003】
異なる生物学的要素の間の特異的相互作用は多数の生物学的プロセスの中核を成し、それは限定されないが、細胞間コミュニケーション、環境に対する細胞応答、細胞分化、細胞増殖、細胞遊走、シグナル伝達、代謝プロセス、アポトーシスおよび免疫応答を含む。多くの場合、これらの重要なプロセスおよび応答は、特異的リガンドと特異的標的との相互作用を介して媒介される。これらのリガンドおよび標的は、限定はされないが、タンパク質、DNA、RNA、炭水化物、脂質、および細胞を含みうる。
【0004】
様々なリガンドとそれらの標的との間の相互作用の重要性は、これらの相互作用の機能停止またはこれらの相互作用の調節の機能停止により引き起こされる多数の障害により強調される。これらの特異的相互作用についてのより深い理解が得られると、治療および非治療用途の双方のための、それらの制御および利用が可能となると考えられる。
【0005】
最近、多数の研究において、様々な生物学的要素(biological entiies)と相互作用し、かつ感染性および非感染性疾患の治療を支援することが可能な新規クラスのリガンドの設計および合成が注目されている。この新規クラスのリガンドは、ホモおよびヘテロ二官能性リガンドを含む。これらのリガンドは、標的化された生体細胞または分子に結合して三元複合体を形成し、標的化された細胞または分子の除去が促進されるように、内因性タンパク質または抗体にも結合する。かかる二官能性リガンドは、細菌およびウイルス粒子やウイルス感染細胞だけでなく、不要な細胞、タンパク質、抗体、および種々の消耗性疾患に関与する他の生体分子を除去するための新規のアプローチを提供する。この超分子のタンパク質凝集体は、治療および非治療用途の双方のための刺激的な機会を提供する。
【0006】
これまで既知の二官能性リガンドは、典型的にはそれらの各標的に結合するための少なくとも2つの官能基を有する。ホモ二官能性リガンドでは、2つの結合用官能基は類似または同一であり、互いに直接にまたはリンカーを介して結合され、かつ同様の標的の凝集を促進する(Pepys、M.B.国際公開第03/013508号パンフレット;Bundleら、米国特許出願公開第2007/0042936号明細書)。
【0007】
ヘテロ二官能性リガンドにおいては、2つの結合用官能基は互いに異なっており、互いに直接にまたはリンカーを介して結合され、かつ異なる標的の特異的な凝集を促進する(Shokat K.M.およびSchultz P.G.、1991年 J.Am.Chem.Soc.113:1861−1862頁;Pepys M.B.、国際公開第03/013508号パンフレット;Mullis K.B.、米国特許出願第10/178,046号明細書および米国特許出願第10/696,770号明細書;Liu J.ら、2005年 J.Am.Soc.127:2044−2045頁)。Liuらは、コレラ毒素および先天性免疫系の内因性タンパク質であるヒト血清アミロイドP成分(SAP)の双方に結合するヘテロ二官能性リガンドを開示している。SAPは、肝臓を介する三元複合体の循環からの除去を誘導する。コレラ毒素の阻害は、三元複合体中ではヘテロ二官能性リガンドおよび毒素のみの二元複合体中に見られる場合よりも、3桁大きいことが見出された。Solomonらによる報告によると(2005年 Organic Letters 7:4369−4372頁)、ヘテロ二官能性リガンドがSAPとの大腸菌(E.coli)シガ様毒素の特異的凝集を媒介する場合、三元複合体の形成に起因する阻害の増大は、ヘテロ二官能性リガンド中でも見られる。
【0008】
しかしながら、現在既知のホモおよびヘテロ二官能性リガンドは、多数の重大な欠点や制限を有する。第1に、現在既知のリガンドの多数は、投与後速やかに分解される。この急速な分解は、これらのリガンドの潜在的な治療効果を著しく損なう。第2に、ホモおよびヘテロ二官能性リガンドの多くの結合は、エントロピーコストによって損なわれうる。多くの場合、現在既知の二官能性リガンドは、標的に結合していない状態において相当高レベルの柔軟性を有し、かつ標的へ結合すると、この柔軟性が大幅に低下する。柔軟性の低下はエネルギー的に好ましくなく、結合効率の大きな妨げとなりうる。第3に、ヘテロ二官能性リガンドは、結合価を利用することがない。現在、多くの試験によって、結合価が、重要な生物学的プロセスでの特異的相互作用の重要な特徴でありうることが示されている。事実、現在では多数の重要な生物学的プロセスは、複数のリガンドと標的受容体の多重結合部位との同時相互作用に起因すると考えられている。第4に、三元複合体を形成するためのヘテロ二官能性リガンドの使用は、標的の一方の濃度に応じて制限されうる。これは治療用途におけるこれらのリガンドの使用を損なう。第5に、リガンド上の結合用官能基は、標的に対して強力な結合を示す官能基のみに制限されうる。
【0009】
最近では、これらの課題の一部を解決するために、様々なリガンドが高分子鎖上に共有結合されている。2つの異なる結合用官能基が高分子鎖上の様々な位置に個別かつ独立に固定される高分子リガンドの例が公知である(図1を参照)(Krishnamurthy V.M.ら、2006年、Biomaterials 27:3663−3674頁;Krishnamurthy V.M.ら、国際公開第2007/016556号パンフレット;Whitesides、G.ら、国際公開第98/46270号パンフレット;Kiesslingら、米国特許第2003/0125262号明細書)。しかし、これらのポリマーもまた、多数の深刻な欠点や制限を有する。まず第1に、高分子リガンドの各受容体に対する結合力は、他の受容体が存在するか否かによって影響を受けない。現在既知の高分子リガンドが2つの異なる生物学的受容体を互いに引き付けうる一方、2つの異なるリガンドをポリマー上に独立に固定することにより、リガンドは確定した超分子複合体の形成に起因してエントロピーの節約を利用することができない。これは、これらのポリマーの治療的および非治療的有用性にとっての大きな妨げとなりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、効率的使用により三元複合体のインビトロおよびインビボでの形成を可能にし、一方で上記課題の一部を解決する多価ポリマーを必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広範な態様によると、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型と、に結合するための、多価ヘテロ二官能性ポリマーが提供される。ここでポリマーは、それに結合される複数の予備配置されたヘテロ二官能性リガンドを含む。ヘテロ二官能性リガンドは、生物学的標的に結合可能な第1の官能基およびエフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を含む。ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマーと生物学的標的とエフェクター鋳型とで三元複合体を形成するように、ポリマーに予備配置される。第1の官能基および第2の官能基は、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。生物学的標的は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。エフェクター鋳型は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択されうる。一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は共通の原子に結合され、ここで共通の原子は直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。他の実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は直接にまたは任意のリンカーを介して互いに結合され、かつ第1の官能基または第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。
【0012】
本発明の別の広範な態様によると、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、下記式で表される多価ヘテロ二官能性ポリマーが提供される。
【化1】
【0013】
式中、「X」は多価ポリマーの高分子骨格を示し;「MO」はヘテロ二官能性リガンドを示す。ここで「M」は、生物学的標的に結合可能な第1の官能基を示し;「O」は、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を示す。「Y」は、「MO」を、高分子骨格またはその内部に結合させる任意のリンカーを示し;「n」は、意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドを、ポリマー内に存在させるように選択される整数を示す。
【0014】
一実施形態では、「n」は、ポリマー上のヘテロ二官能性リガンドの数が、生物学的標的およびエフェクター鋳型上の受容体の数(いずれかより大きい方)と同じかまたはそれより大きいように選択される。
【0015】
ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択されうる。
【0016】
一実施形態では、「M」は、高分子骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、「M」は、高分子骨格またはその内部にリンカー「Y」を介して結合される。一実施形態では、「O」は、高分子骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、「O」は、高分子骨格またはその内部にリンカー「Y」を介して結合される。一実施形態では、「M」および「O」は、リンカーにより互いに結合される。
【0017】
本発明の別の広範な態様によると、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、下記式で表される多価ヘテロ二官能性ポリマーが提供される。
【化2】
【0018】
式中、「X」は、多価ポリマーの高分子骨格を示し;「M−N−O」は、ヘテロ二官能性リガンドを示す。「M」は、生物学的標的に結合可能な第1の官能基を示し;「O」は、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を示す。「N」は、「M」および「N」に結合するリンカーを示す。「Y」は、ヘテロ二官能性リガンドを、高分子骨格またはその内部に結合させる任意のリンカーを示し;「n」は、意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドを、ポリマー内に存在させるように選択される整数を示す。
【0019】
一実施形態では、「n」は、ポリマー上のヘテロ二官能性リガンドの数が、生物学的標的およびエフェクター鋳型上受容体の数(いずれかより大きい方)と同じであるように選択される。
【0020】
ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択されうる。
【0021】
本発明の他の広範な態様によると、生体系における生物学的標的の生物学的活性に作用するための方法が提供される。この方法は、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーを、生体系に導入するステップを含む。
【0022】
ヘテロ二官能性リガンドは、生物学的標的に結合可能な第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基とを含む。ここで、ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマーと、生物学的標的と、エフェクター鋳型とで、三元複合体を形成するようにポリマー上に予め配置される。
【0023】
第1の官能基および第2の官能基は、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0024】
生物学的標的は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0025】
エフェクター鋳型は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0026】
一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は共通の原子に結合され、ここで共通の原子は直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は直接にまたは任意のリンカーを介して互いに結合され、かつ第1の官能基または第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。
【0027】
本発明の他の広範な態様によると、生体系における生物学的標的の存在を検出するための方法が提供される。この方法は、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーを、生体系に導入するステップを含む。
【0028】
ヘテロ二官能性リガンドは、生物学的標的に結合可能な第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基とを含む。ここで、ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマーと、生物学的標的と、エフェクター鋳型とで、三元複合体を形成するようにポリマー上に予備配置される。
【0029】
第1の官能基および第2の官能基は、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ビタミン、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0030】
生物学的標的は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0031】
エフェクター鋳型は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0032】
一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は共通の原子に結合され、ここで共通の原子は直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は直接にまたは任意のリンカーを介して互いに結合され、かつ第1の官能基または第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。
【0033】
本発明の他の広範な態様によると、生体系における生物学的標的の生物学的活性に作用するための医薬組成物が提供される。この医薬組成物は、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーと;薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む。
【0034】
ヘテロ二官能性リガンドは生物学的標的に結合可能な第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基とを含む。ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマーと、生物学的標的と、エフェクター鋳型とで、三元複合体を形成するようにポリマー上に予備配置される。
【0035】
第1の官能基および第2の官能基は、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ビタミン、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0036】
生物学的標的は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0037】
エフェクター鋳型は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0038】
一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は共通の原子に結合され、ここで共通の原子は直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は直接に互いに結合され、かつ第1の官能基または第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。
【0039】
本発明の別の広範な態様によると、多価ヘテロ二官能性ポリマー上に、複数のヘテロ二官能性リガンドを、予備配置するための方法が提供される。ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマー上の異なる結合点で結合される。かつ、ヘテロ二官能性リガンドは、三元複合体を形成するように、生物学的標的に結合するための第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合するための第2の官能基を含む。
【0040】
この方法は、生物学的標的およびエフェクター鋳型の分子表現を、分子モデリングまたは画像化ソフトウェアを用いて整列させるステップと;エフェクター鋳型上の、2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離を測定するステップと;生物学的鋳型上の、2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離を測定するステップと;生物学的標的およびエフェクター鋳型に結合される場合に、第1の官能基と直近の第2の官能基とを隔てる平均距離を測定するステップと、を含む。
【0041】
ヘテロ二官能性リガンドは、第1の官能基と第2の官能基との平均間隔が、三元複合体内で生物学的標的とエフェクター鋳型とが立体的に衝突することなく最小化されるように、多価ヘテロ二官能性ポリマー上に予備配置される。
【0042】
一実施形態では、生物学的標的およびエフェクター鋳型の結合部位のトポロジーは、類似または同一である。
【0043】
一実施形態では、第1の官能基と直近の第2の官能基との間隔は、生物学的標的およびエフェクター鋳型に結合される場合、第1の官能基を第2の官能基に結合させる1つ以上のリンカーの長さを変化させることにより最適化される。
一実施形態では、第1の官能基と直近の第2の官能基との平均間隔は、生物学的標的およびエフェクター鋳型に結合される場合、第1の官能基を第2の官能基に結合させる任意のリンカーの長さに等しいかまたはそれよりも短い。
一実施形態では、第1の官能基と直近の第2の官能基との平均間隔は、生物学的標的およびエフェクター鋳型に結合される場合、第1の官能基および第2の官能基に結合されるリンカーの長さを変化させることにより最適化される。
【0044】
一実施形態では、ヘテロ二官能性リガンドは、「1つのヘテロ二官能性リガンドの結合点を近接するヘテロ二官能性リガンドの結合点から隔てる平均距離」と「ヘテロ二官能性リガンドをポリマーまたはその内部に結合させる任意のリンカーの2倍の長さ」と「第1の官能基を第2の官能基に結合させる任意のリンカーの長さ」との和が、以下の2条件の両方を満たすように多価ヘテロ二官能性ポリマー上に予備配置される。
エフェクター鋳型上の2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離、あるいは生物学的鋳型上の2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離の、いずれか長い方よりも長いこと。
第1の官能基を第2の官能基に結合させるリンカーの長さが、「1つのヘテロ二官能性リガンドの結合点を近接リガンドの結合点から隔てる平均距離」と「第1の官能基を第2の官能基に結合させるリンカーの長さ」と「ヘテロ二官能性リガンドをポリマーまたはその内部に結合させるリンカーの2倍の長さ」との和よりも短いこと。
【0045】
本発明の他の広範な態様によると、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの、治療用途への使用についての提供がなされる。治療用途とは、癌、細菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、真菌感染、自己免疫疾患、遺伝性および後天性代謝疾患、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される疾患の治療である。
【0046】
本発明の別の広範な態様によると、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの、非治療用途への使用についての提供がなされる。非治療用途とは、診断、地下水中の細菌毒素の検出、血中の抗体の検出、癌細胞の検出、および腫瘍の造影からなる群から選択される。
【0047】
本発明は、その構成および動作方法の双方に関し、以下の説明や様々な実施形態の添付の図面(同様の数字がいくつかの図面全体で用いられる)の参照により最もよく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】先行技術のポリマーの略図である。
【図2】本発明において、生物学的標的とエフェクター鋳型と多価ポリマーとで、三元複合体を形成する略図である。
【図3】本発明の多価ポリマーの一実施形態の略図であり、各ヘテロ二官能性リガンドは第1の官能基および第2の官能基を含む。この実施形態では、各官能基は共通の原子にリンカーを介して結合される。
【図4】本発明の多価ポリマーの一実施形態の略図であり、各ヘテロ二官能性リガンドは第1の官能基および第2の官能基を含む。この実施形態では、各官能基は、任意のリンカーを介し、共通の原子の使用を伴わずに他方に結合される。
【図5A】本発明の一実施形態における多価ポリマーの設計の原理の一部を図示する略図である。本発明の多価ポリマーは、利用可能な構造情報に基づく分子モデリングまたはタンパク質の相同性モデリングを用いて設計されうる。構築物の分子寸法は、生物学的標的およびエフェクター鋳型の結合部位の分子寸法に一致するように最適化される。
【図5B】本発明の一実施形態における多価ポリマーの設計の原理の一部を図示する略図である。本発明の多価ポリマーは、利用可能な構造情報に基づく分子モデリングまたはタンパク質の相同性モデリングを用いて設計されうる。構築物の分子寸法は、生物学的標的およびエフェクター鋳型の結合部位の分子寸法に一致するように最適化される。
【図6A】ヘテロ二官能性ポリマーによるStx1の阻害を測定するために用いられるELISA阻害プロトコルを、概略的に説明する。C16アグリコン(16−メルカプトヘキサデカニル配糖体)に結合された合成Pk−トリサッカライドの構造の略図である。
【図6B】ヘテロ二官能性ポリマーによるStx1の阻害を測定するために用いられるELISA阻害プロトコルを概略的に説明する。ELISA阻害アッセイについて記載する。ウェルは、C16アグリコン(16−メルカプトヘキサデカニル配糖体)に結合された合成Pk−トリサッカライドでコートされた。次いで、阻害剤が、SAP(20μg/mL)の存在下および不在下で、Stx1(4ng/mL)とともに同時インキュベートされた。プレートに結合された毒素は、ウサギ抗Stx1ポリクローナル血清、次いでヤギ抗ウサギ西洋わさびペルオキシダーゼ二次抗体を用いて検出された。次いで、テトラメチルベンジジン基質で発色させた。
【図7】先行技術のポリマーPPMおよび本発明のポリマーPPIの構造を図示する略図である。
【図8】先行技術のポリマーPPMおよび本発明のポリマーPPIによる、血清アミロイドP(20mg/mL)の存在下または不在下の、Pk−16−メルカプトヘキサデカニル配糖体ELISAプレート(10μg/mLで一晩コート)への結合の、シガ毒素1型(Stx1、4ng/mL)によるCa2+依存性の阻害を比較する。 シリーズ1:SAPの存在下でのPPM。シリーズ2:SAPの不在下でのPPM。シリーズ3:SAPの存在下でのPPI。シリーズ4:SAPの不在下でのPPI。 図示するように、PPMの活性は、SAPの存在による作用を受けない。さらに、PPIの阻害活性は、SAPの存在下ではSAPの不在下よりも6000倍高い。
【図9】本発明のポリマーHPMA−B1およびHPMA−B2による、血清アミロイドP(20μg/mL)の存在下における、Pk−16−メルカプトヘキサデカニル配糖体ELISAプレート(10μg/mLで一晩コート)への結合の、シガ毒素1型(Stx1、4ng/mL)によるCa2+依存性の阻害を比較する。 白四角(シリーズ1)は、SAPの存在下で、HPMA−B1を用いて収集されたデータに対応する。黒四角(シリーズ2)は、SAPの存在下で、HPMA−B2を用いて収集されたデータに対応する。HPMA−B2は、HPMA−B1(12.8μg/mL)よりも極めて小さいIC50値(0.065μg/mL)を有する。このことは、ポリマー上でのヘテロ二官能性リガンドの予備配置における最適化の重要性を示す。
【図10】Vero細胞毒性中和アッセイの結果を示す。(約2.91ng/mLのLD100での)Stx1を、5%CO2/95%大気の雰囲気中、ウシ胎仔血清が補充されたMedium Eagle Medium(MEM)内での連続希釈された阻害剤およびSAP(10μg/mL)との混合物中のコンフルエントな細胞培養物に添加した。 シリーズ1:本発明の多価ヘテロ二官能性リガンドEPI−156の存在下で行われたVero細胞毒性中和アッセイの結果。シリーズ2:先行技術分野において公知の、EPI−156の一価類似体であるBAIT2の存在下で行われたVero細胞毒性中和アッセイの結果。シリーズ3:先行技術分野において公知の、半径方向に対称なデンドリマーを有するホモ十量体Pk−トリサッカライドDAISY1/8の存在下で行われたVery細胞毒性中和アッセイの結果。
【図11】BAIT2、EPI−156およびEPI−153の分子構造の略図である。ここでEPI−156は、ヨード化を可能にするチロシン残基の付加を伴う修飾形態で示される。
【図12】Stx1や、先行技術および本発明の種々の阻害ポリマーの投与後に、マウスの生存を測定するマウス中毒モデルから得られたデータを示す。HuSAPマウスは、致死用量(LD50)のStx1を、尾静脈を介して静脈内に注射され、4時間ごとにシガトキセミア(shigatoxemia)の徴候について観察された。シガトキセミアの徴候を示すマウスは安楽死された。 シリーズ1は、DAISY1/8(先行技術のPkを有するデンドリマー)の投与(投与量500μg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。シリーズ2は、EPI−156(本発明のポリマー)投与(投与量50μg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。シリーズ3は、EPI−153(EPI−156の不活性なトランケート型リガンド類似体)の投与(投与量50μg/マウス)と、HuSAPの投与(投与量600μg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。シリーズ4は、EPI−156の投与(投与量50μg/マウス)、およびHuSAPの投与(投与量600μg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。シリーズ5は、BAIT2の投与(投与量2mg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。 確認され得るとおり、本発明のポリマーEP−156単独の静脈内投与は、トランスジェニックマウスにおいて発現されるStx1と、EP−156と、HuSAPとで三元複合体を形成し、マウスをStx1の毒性効果から十分保護する。
【図13A】ヒトSAPを発現するトランスジェニックマウス(HuSAPマウス)への静脈内注射の4時間後に測定された、放射性標識EPI−156(EPI−156−125I)およびシガ毒素(Stx1−125I)の器官分布を示す。 図13Aでは、HuSAPマウスは、尾静脈注射を介して、900ngのEPI−156−125I(1.14×107CPM/μg)を受けた。黒バーは、EPI−156−125IとHuSAPとの混合物の器官分布を示す。白バーは、EPI−156−125IとHuSAPとStx1との混合物の器官分布を示す。図13Aから、ヘテロ二官能性高分子リガンドが肝臓に誘導されることが認められうる。
【図13B】ヒトSAPを発現するトランスジェニックマウス(HuSAPマウス)への静脈内注射の4時間後に測定された、放射性標識EPI−156(EPI−156−125I)およびシガ毒素(Stx1−125I)の器官分布を示す。 図13Bでは、マウスは、尾静脈注射を介して、20ng/gのStx1−125I(4.81×106CPM/μg)を受けた。黒バーは、Stx1とHuSAPとの混合物の器官分布を示す。白バーは、Stx1とHuSAPと非標識EPI−156との混合物の器官分布を示す。図13Bからは、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの不在下で、腎臓および肺に誘導されることが認められるのに対して;本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの存在下で、毒素Stx1が肝臓に誘導されることが認められた。これはこれらのポリマーの保護作用を説明しうると思われる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、多価ヘテロ二官能性ポリマーの発見、それを合成するための方法、その組成物、ならびにその治療および非治療用途に関する。
【0050】
本発明の多価ポリマーの主な特徴は、それに結合された複数のヘテロ二官能性リガンドの存在である。各ヘテロ二官能性リガンドは、2つの異なる結合官能基を含む(図2を参照)。ヘテロ二官能性リガンド上の各結合官能基は、各々が異なる生物学的要素に結合しうるように予備配置される。これは、ポリマー上の異なる位置に結合された2つの独立した単官能性(unifunctional)官能基を与える先行技術の高分子リガンドとは異なる(図1を参照)。
【0051】
驚くべきことに、発明者らは、本発明の多価ポリマー上にヘテロ二官能性リガンドの2つの結合官能基を予備配置することで、ポリマー上の異なる位置に結合された2つの独立した単官能性基を有する公知のポリマーの使用によっては再現できない、安定性を有する三元複合体(図1を参照)の形成を可能にすることを見出している。理論に拘束されないが、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの使用を通じて、標的受容体と数個の一価リガンドの複製体とで複合体を形成したときに失われた結合エントロピーの一部を回復させることにより、多価結合効果(multivalency effect)および超高分子効果(supermolecula effect)の双方の効果が作用する。これらの多価ポリマーは、多価結合効果および超高分子効果が互いに補完し、かつ結合自由エネルギーにおける実質的利得を見込みうることから特に有利である。これは、ポリマーの1つの生物学的要素への結合が、別の生物学的要素への結合の強化に繋がる点で特に有利でありうる。
【0052】
図2に示されるように、本発明の多価ポリマー1は、多価ポリマー1に任意のリンカー3を介して結合された複数のヘテロ二官能性リガンド2を含む。各ヘテロ二官能性リガンド2は、三元複合体8が形成されうるように、生物学的標的5に結合可能な第1の官能基4と、エフェクター鋳型7に結合可能な第2の官能基6とを含む。理論に拘束されないが、多価ポリマー1の生物学的標的5およびエフェクター鋳型7への結合による三元複合体8の形成することで、一方の生物学的要素を他方の生物学的要素によって検出すること、阻害すること、除去すること、および/または分解することを促進する。
【0053】
図3および図4に示されるように、ヘテロ二官能性リガンドは、第1の官能基4および第2の官能基6を、種々の形態で提示しうる。以下に考察するように、形態の選択は、意図される用途および機能に依存することになる。図3に示される一実施形態では、ヘテロ二官能性リガンド2の第1の官能基4および第2の官能基6は、それぞれリンカー9Aおよび9Bを介して共通の原子9に結合される。共通の原子9は、任意のリンカー3を介して多価ポリマー1に結合されうる。当然ながら当業者に理解されるように、共通の原子9は、リンカー3を用いることなく、多価ポリマー1に直接結合されてもよい(図示せず)。
【0054】
図4に示される別の実施形態では、第1の官能基4および第2の官能基6は共通の原子9を用いずに任意のリンカー9Cを介して互いに結合され、かつ第1の官能基4または第2の官能基6のいずれかは、任意のリンカー3を介して多価ポリマー1に結合されうる。当然ながら当業者に理解されるように、得られる第1の官能基4と第2の官能基6との複合体は、リンカー3を用いることなく多価ポリマー1に直接結合されてもよい(図示せず)。
【0055】
上記考察のように、多価ポリマー1上への、ヘテロ二官能性リガンド2の第1の官能基4および第2の官能基6の予備配置は、高い結合効率を得るために重要である。ポリマー上でのヘテロ二官能性リガンドの2つの官能基の予備配置は、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7に依存することになる。
【0056】
一実施形態では、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7は、相対位置およびそれらの結合部位の配置の観点では、酷似しているかまたはトポロジー的に同一である。この類似性を利用して、本発明のポリマーに結合されるヘテロ二官能性リガンド2の第1の官能基4および第2の官能基6を予備配置することが可能である。これらの類似性を利用すると、三元複合体の形成が最大となるように本発明のポリマーを設計することができる。
【0057】
当業者は、第1の官能基4および第2の官能基6の予備配置を最適化させて、適切に三元複合体を形成するためには、上記任意のリンカーの長さを変化させるとともに、ポリマー上でのヘテロ二官能性リガンドの近接結合点を隔てる平均距離を変化させることが必要であることを理解するであろう。リンカーの長さおよびヘテロ二官能性リガンドの近接結合点を隔てる平均距離は、当該技術分野で公知の化学合成技術を用いて容易に変更可能である。当業者はまた、得られるポリマーの生物学的活性を、多種多様なアッセイを用いて測定することができ、そのアイデンティティが、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7のアイデンティティに依存することになることを理解するであろう。
【0058】
別の実施形態では、生物学的標的5および/またはエフェクター鋳型7における構造データが利用可能である場合には、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7の既知または予測される構造および/または結合部位を調べることにより、第1の官能基4および第2の官能基6を適切に予備配置することができる。前記構造は、当該技術分野で公知の多種多様な分子モデリングツールを用いて予測可能である。
【0059】
図5Aに示されるように、生物学的標的5および/またはエフェクター鋳型7における既知の構造データを考慮して本発明の多価ポリマーを設計する場合、少なくとも以下の3つの距離、すなわち「エフェクター鋳型7上の2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離10」、「生物学的標的5上の2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離11」、ならびに「第1の官能基4および直近の第2の官能基6がそれらの各結合部位に結合されるときのそれらを隔てる平均距離12」が考慮されるべきである。好ましくは、距離12が最小になるように、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7を配置する。当然ながら当業者に理解されるように、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7の配置は、当該技術分野で公知の分子モデリングまたは画像化ソフトウェアを用いて調整されうる。距離12は、得られる三元複合体で生物学的標的5とエフェクター鋳型7とが衝突しないように、最小であるべきである。当業者に理解されるように、すべての3つの距離は、当該技術分野で現在公知の様々な分子モデリングまたは画像化ソフトウェアを用いて測定されうる。
【0060】
一実施形態では、生物学的鋳型5およびエフェクター鋳型7における構造データが利用可能な場合、距離10、距離11および距離12は、ヘテロ二官能性リガンドを多価ポリマー1上に予備配置し、安定な三元複合体の形成を促進するための一般的指針として用いられうる。第1の官能基4および第2の官能基6を互いに関連させた空間的な配置手法の決定においては、「リンカー9Aおよびリンカー9Bの長さの和」または「リンカー9Cの長さ」が、距離12の長さ以上であるべきである。また、多価ポリマー1の設計には、「一方のヘテロ二官能性リガンドを、もう一方のヘテロ二官能性リガンドから隔てる距離13」および「リンカー3の長さ」が必要とされる(図5Bを参照)。好ましくは、「距離13と、リンカー3の2倍の長さと、リンカー9Aの2倍の長さとの和」は、距離10または距離11(いずれかより長い方)よりも長い必要がある。一実施形態では、「距離13とリンカー3の2倍の長さとリンカー9Cの長さとの和」は、距離10または距離11(いずれかより長い方)よりも長い必要がある。
【0061】
構造データが利用可能な場合、他の情報も用いつつ、ヘテロ二官能性リガンド内での2つの官能基の設計および予備配置を補助することが可能である。好ましくは、リンカー9Aおよびリンカー9Bの長さの和は、「距離13の長さと、リンカー9Aの2倍の長さと、リンカー3の2倍の長さとの和」よりも短い必要がある。さらに、リンカー9Aおよび9Bの長さの和は、「距離13の長さと、リンカー9Bの2倍の長さと、リンカー3の2倍の長さとの和」よりも短い必要がある。別の実施形態では、リンカー9Cの長さは、「距離13の長さと、リンカー9Cの長さと、リンカー3の2倍の長さとの和」よりも短い必要がある。
【0062】
上記の様々な平均距離を測定する場合、2つの官能基および/またはリガンドに結合する任意の断片またはリンカーが、拡張された高次構造(extended conformation)であると仮定することが好ましい。その基準点は、各官能基および/または各リガンドの質量中心である。当業者が理解するように、柔軟な分子の拡張された高次構造(extended conformation)とは、2つの基準点の距離が最大と考えられる距離となる構造である。上記考察のように、これらの距離は分子モデルの使用を通じて評価でき、そこでは適切な共有結合の長さおよび角度が考慮されうる。
【0063】
さらに、共重合反応および予備形成されるポリマーの修飾に用いられる反応は、本質的にランダムである。そのため、距離13は、ヘテロ二官能性リガンドのポリマーへの取り込みの速度を介する、統計学的意味での平均としてのみ評価されうる。例えば、「リガンド」対「繰り返し単位」の比率が1:20である場合、距離13は「20の繰り返し単位からなる高分子鎖の両末端間の長さ」に等しいと仮定される。
【0064】
ヘテロ二官能性リガンド2を予備配置するための既知の構造データを用いる場合、拡張された高次構造内に、柔軟なポリマー分子を見出す確率が一般に極めて低いことから、一般に、上記の4つの異なる制限が必要とされる。距離10、距離11および距離12での結合官能基を見出す確率を高めるためには、十分な長さ以上のリンカーが必要とされる。そのため、ヘテロ二官能性多価リガンドの構造のさらなる最適化が、安定な三元複合体の形成を促進するために必要とされることが多い。上記のように、リンカーの長さおよびヘテロ二官能性リガンドの近接結合点を隔てる距離は、安定な三元複合体を形成する確率を高めるために容易に最適化されうる。最適化は、当該技術分野で公知の多種多様な技術を用いてなされうる(例えば、限定は意図されないが、Kitov P.I.ら、2002年、J.Am.Chem.Soc.125:3284−3294頁;Mammen M.ら、1998年、J.Org.Chem.63:3168−3175頁;Gargano J.M.ら、2001年、J.Am.Chem.Soc.123:12909−12910頁)。
【0065】
上記の4つの制限において、距離13は、少なくとも0でない正の値を有する必要がある。しかし、上記考察および図4に示されるように、リンカー9A、リンカー9Bおよび/またはリンカー9Cの長さは0でありうる。発明者らは、下記に示されるように、第1の官能基4および第2の官能基6が、エントロピー効率の良い結合部分を生成しながら、リンカーを用いずに互いに結合されうることを見出している。
【0066】
一実施形態では、本発明の多価ポリマー1は以下のように示されうる。
【化3】
【0067】
特定の実施形態では、本発明の多価ポリマー1は、下記構造により表すことができる。
【化4】
【0068】
式中、「X」は多価ポリマー1の高分子骨格を示す。「M」は第1の官能基4を示す。「O」は第2の官能基6を示す。「N」は共通の原子9、任意のリンカー、または上記考察のように「M」および「O」に直接結合するように用いられうる結合のいずれかを示す。「Y」は任意のリンカー3を示す。かつ「n」は意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドがポリマー内に存在するように選択される整数を示す。好ましくは、「n」の値は標的受容体内での結合部位の数と同じであるべきである。
【0069】
第1の官能基および第2の官能基
生物学的標的5およびエフェクター鋳型7のアイデンティティ、ひいては第1の官能基4および第2の官能基6のアイデンティティは、意図される用途に応じて大きく変化しうる。一実施形態では、生物学的標的5は疾患を媒介する要素である一方、エフェクター鋳型7は生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の検出を可能にする要素である。
【0070】
「生物学的活性」という用語は、生物学的標的5により発揮される任意の有害な活性を示す。理論に拘束されないが、エフェクター鋳型7に結合可能な第2の官能基6は、得られる三元複合体8の肝臓などの特定の器官への局在化;限定はされないが、補体媒介性の細胞毒性を惹起可能な抗体でありうるエフェクター鋳型7と、生物学的標的5との会合の促進;限定はされないが、生物学的標的5を中和可能な細胞でありうるエフェクター鋳型7と、生物学的標的5との会合の促進;を含む種々の機序を介して、生物学的標的5が示す生物学的活性に作用しうる。一部の実施形態では、ヘテロ二官能性リガンド2の第1の官能基4および第2の官能基6は、同じ細胞上の複数の複製体として存在する2つの異なる膜結合タンパク質受容体である生物学的標的5およびエフェクター7を認識し、かつそれらに結合する。他の実施形態では、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7は、別々の細胞上の受容体である。
【0071】
「検出する」という用語は、特定の生物学的標的が、生物内または環境内に存在するか否かを判定するための多価ヘテロ二官能性ポリマー1の使用用途を示す。これは診断の分野で特に有利である場合がある。これらについて後にさらに考察する。
【0072】
多くの場合、入手可能な文献から、第1の官能基4および第2の官能基6の双方のアイデンティティは既知である。もしそれらのアイデンティティが意図される用途において知られていない場合、有効な第1および第2の官能基は既知の化合物のライブラリーのスクリーニングにより同定されうるか、またはそれらは受容体における任意の利用可能な構造データに基づいて合理的に設計されうる。
【0073】
第1の官能基4および第2の官能基6は、限定はされないが、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、0〜約20のモノサッカライドを有するオリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、ビタミン、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体を含みうる群から選択されうる。
【0074】
生物学的標的5は、限定はされないが、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体を含みうる群から選択されうる。
【0075】
エフェクター鋳型7は、限定はされないが、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体を含みうる群から選択されうる。
【0076】
一実施形態では、エフェクター鋳型7が抗体である場合、第2の官能基6は、限定はされないが、高免疫原性、低分子量および/または低毒性を含みうる特性を用いて選択される任意のハプテンでありうる。
【0077】
一実施形態では、1つ以上のヘテロ二官能性リガンド2の複製体を含む多価ポリマー1が提供される。第1の官能基4は多価生物学的標的に結合する。多価生物学的標的は、多重結合部位を与え、かつ2つ以上のリガンドに同時に結合しうるものを含む。「多価生物学的標的」という用語はまた、細胞表面上の構造モチーフ、例えば一群の類似の細胞表面受容体を包含するように意図される。
【0078】
一実施形態では、エフェクター鋳型は血清アミロイドP成分である。別の実施形態では、エフェクター鋳型は自然または適応免疫系の分子または細胞成分である。
【0079】
一実施形態では、第1の官能基4は、細菌毒素である生物学的標的5に結合する。細菌毒素の例として、限定はされないが、シガ毒素またはシガ様毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素およびコレラ毒素が挙げられる。一部の態様では、シガ毒素は、O157:H7大腸菌(E.coli)血清型などの腸管出血性大腸菌により産生される。一部の態様では、第1の官能基4はトリサッカライドである。他の実施形態では、第1の官能基4は、生物学的標的であるグラム陽性細菌に結合する。
【0080】
一実施形態では、第1の官能基4は、生物学的標的であるインフルエンザウイルスなどのウイルス粒子に結合する。一部の態様では、第1の官能基4はウイルスの赤血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)に結合する。一実施形態では、第1の官能基4は、ノイラミン酸誘導体である。別の実施形態では、第1の官能基4はウイルスレクチンに結合する。
【0081】
他の生物学的標的および対応する第1の官能基として、限定はされないが、マンノース基と相互作用可能な、FimHアドヘシン表面基を有する房状の大腸菌(E.coli);グルコサミンN−アセチル(GlcNac)基に結合可能な、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)の表面基を有する肺炎球菌(S.pneumoniae);ノイラミン酸(NeuAc)およびラクト−N−ネオテトラオーゼ(neotetraose)基に結合可能な、コリン結合タンパク質A(CpbA)基;プラスミン(プラスミノーゲン)基に結合可能な、α−エノラーゼ基;およびGlcNAC、NeuAc、およびラクトースに結合可能な、線毛アドヘシン表面基を有する緑膿菌(P.aeruginosa)が挙げられる。
【0082】
一実施形態では、第1の官能基4は、癌細胞の細胞表面受容体である生物学的標的5に結合する。一部の態様では、その細胞表面受容体は正常細胞内にも存在するが、癌細胞内で発現上昇される。一部の態様では、生物学的標的5は癌細胞の葉酸塩受容体である。
【0083】
一実施形態では、第1の官能基4は、インテグリンである生物学的標的5に結合する。一実施形態では、インテグリンはインテグリンαvβ3である。
【0084】
一実施形態では、第1の官能基4は、B細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質である生物学的標的5に結合する。
【0085】
一実施形態では、第1の官能基4は、抗リン脂質抗体症候群に関連した免疫グロブリンG(IgG)を提示するB細胞に結合可能な、カルジオリピンなどのリン脂質である。
【0086】
一実施形態では、第1の官能基4は、2,6-結合シアル酸を有するオリゴ糖である。
【0087】
一実施形態では、第1の官能基4は、大部分の神経膠腫内に見出される腫瘍表面マーカーに特異的に結合可能な、巨大なイスラエルサソリ(Israeli scorpion)の毒に由来するペプチドであるクロロトキシンである(Deshane J.ら、2003年、J.Biol Chem.278(6):4135−4144頁)。
【0088】
一実施形態では、第1の官能基4は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有するペプチド(RGD)、またはその機能誘導体もしくは合成模倣体である。一態様では、RGDはシクロペプチドである。
【0089】
一実施形態では、第1の官能基4は、自己免疫疾患に関与する抗体である生物学的標的5に結合する。一態様では、抗体はギラン・バレー症候群を媒介する。
【0090】
一実施形態では、第2の官能基6は、血清アミロイドP成分(SAP)であるエフェクター鋳型7に結合する。
【0091】
別の実施形態では、エフェクター鋳型7は自然または適応免疫系の分子または細胞成分である。
【0092】
一実施形態では、エフェクター鋳型7は、T細胞、B細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一実施形態では、第2の官能基6は、抗体であるエフェクター鋳型7に結合するハプテンである。一部の態様では、抗体は、第2の官能基6を有する化合物に対して予め免疫された患者において産生される。一部の態様では、第2の官能基6はスルホンアミドである。別の実施形態では、第2の官能基6はスルファチアゾールである。
【0093】
リンカー
上記考察のように、任意のリンカー3は、ヘテロ二官能性リガンド2を多価ポリマー1に共有結合させる。任意のリンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cも存在しうる。リンカー3、リンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cの長さおよび化学組成は、意図される用途や、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7の性質に応じて異なる。リンカー3、リンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cの化学組成はまた、生物学的標的5および/またはエフェクター鋳型7の結合部位の周囲の環境に応じて大きく異なる。意図される用途に応じて、疎水性、親水性または両親媒性リンカーを用いることは有利でありうる。
【0094】
リンカー3、リンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cは、多種多様な異なる基からなってもよく、そのアイデンティティは意図される用途に依存する。これらの基は、限定はされないが、複数のメチレン基から有するアルキレン鎖を含み、ここで各メチレン基は、「二価の基」と置換されてもよい。適切な「二価の基」は、−O−、−S(O)n−、−NR−、−C(O)NR−、−C(O)O−、−CRR’−、カルバメート、尿素、およびチオ尿素部分を含む(式中、nは0、1、または2であり;RはHまたはアルキルであり;R’はH、アルキル、または非水素置換基と置換されたアルキルである)。さらに、リンカーは、エチレングリコール単位を有する基を含んでいてもよい。さらにリンカーは、場合により、1つ以上のメチレン基を1,4-フェニレン基と置換された基を含みうる。
【0095】
当然ながら、当業者は、上記していない多数の他の基を用いて、リンカー3、リンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cを、それらが安定な三元複合体の形成を補助するのに必要とされる特性を有するようにすることができることを理解するであろう。これらの基は、本発明の範囲内に含まれるものとして見なされる。
【0096】
高分子骨格
多価ヘテロ二官能性ポリマー1の高分子骨格は、意図される用途に応じて多数の異なる形態をとりうる。本発明において使用可能なポリマーは、骨格内に非環状、環状および/またはアリーレン構造を有するものを含む。ポリマー骨格またはその内部に、ヘテロ二官能性リガンドが結合される。
【0097】
適切なポリマーの更なる例として、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどの高分子炭水化物;ならびにポリカルボフィル、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)アクリル酸/ブチルアクリレート共重合体、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド](HPMA)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、およびポリ(リンゴ酸)などのアクリル酸に基づくポリマーが挙げられる。限定はされないが、デキストラン、デキストリン、アガロース、アミロース、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカンおよびキトサンを含む天然ポリマーも用いられうる。当然ながら、当業者は、複数のヘテロ二官能性リガンドに共有結合可能な任意の薬学的に許容可能なポリマーを用いて、本発明の多価ポリマーの合成が可能であることを理解するであろう。これらのポリマーは、本発明の範囲内に含まれるものとして見なされる。
【0098】
ポリマーは、ヘテロ二官能性リガンドに結合された末端二重結合などの重合可能な基を有する単量体を、重合することにより調製されうる。ヘテロ二官能性単量体と非官能化された単量体との共重合体も利用可能である。さらには、ポリマーの溶解度または安定性などの物理的または生物学的特性を、制御および/または改善する非官能化された単量体の作製および利用も、また可能である。ポリマーを調製するための方法も限定はされないが、開環メタセシス重合(ROMP)を含む。
【0099】
ポリマーにおけるヘテロ二官能性リガンドの含有率は、官能化単量体と非官能化単量体との比率や、単量体の性質および反応性に依存する。一部の態様ではポリマーは、1つのヘテロ二官能性リガンド当たり、10〜20の繰り返し単位を有する。他の態様では、ポリマーは、1つのヘテロ二官能性リガンド当たり、20以上の繰り返し単位を有する。
【0100】
「結合点」または「結合される」という用語は、ヘテロ二官能性リガンドのポリマーへの結合に適用される場合、広義に解釈される。上記考察のように、ヘテロ二官能性リガンドは、任意のリンカーを介してポリマーに結合されうるか、または直接にポリマーに結合されうる。結合様式は、ヘテロ二官能性リガンドの性質、ポリマーの性質、および意図される用途に依存する。一実施形態では、結合は共有結合である。
【0101】
投与および医薬組成物
一般に、本発明のポリマーは、類似の有用性を発揮する作用物質における認められた投与方法のいずれかにより、治療有効量で投与されうる。ポリマーの実際の投与量は、ポリマーの薬動動態、治療されるべき疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、用いられるポリマーの効力、投与の経路および形態、ならびに他の要素などの極めて多数の要素に依存する。薬剤は、1日に2回以上、好ましくは1日に1回または2回投与されうる。これらの要素のすべては主治医の能力の範囲内にある。
【0102】
一般に、本発明のポリマーは、以下の経路、すなわち全身(例えば経皮、鼻腔内または坐剤による)、非経口(例えば筋肉内、静脈内または皮下)、髄腔内、または経口投与のうちのいずれか1つにより医薬組成物として投与される。組成物は、タブレット、ピル、カプセル、半固体、粉末、持続放出製剤、溶液、懸濁液、エリキシル剤、エアロゾル、または任意の他の適切な形態の組成物となりうる。
【0103】
製剤の選択は、薬剤投与の方法および薬剤物質のバイオアベイラビリティなどの様々な要素に依存する。吸入を介する送達においては、ポリマーは、溶液、懸濁液、エアロゾル推進剤または乾燥粉末として調合され、かつ投与に適するディスペンサーに充填されうる。薬剤吸入装置には、ネブライザー吸入器、定量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器(DPI)といったいくつかのタイプがある。
【0104】
本組成物は、一般には本発明のポリマーと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤との組み合わせからなる。許容可能な賦形剤は、非毒性であり、投与を補助し、かつポリマーの治療効果に悪影響を及ぼさない。かかる賦形剤は、一般に当業者が使用可能な任意の固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合には、気体賦形剤でありうる。
【0105】
固体医薬賦形剤の例には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルクなどが含まれる。液体および半固体賦形剤は、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、ならびに石油、動物、植物または合成由来のオイルを含む様々なオイル、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などから選択されうる。特に注射可能な溶液用の好ましい液体担体は、水、生理食塩水、水性デキストロース、およびグリコールを含む。
【0106】
圧縮ガスを用いて、エアロゾル形態での本発明のポリマーの分散が可能である。この目的に適する不活性気体として、窒素、二酸化炭素などが挙げられる。他の適切な医薬賦形剤およびそれらの製剤については、E.W.Martin編、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Company、第l8版、l990年)に記載されている。
【0107】
治療および非治療用途
上記考察のように、第1の官能基4および第2の官能基6のアイデンティティは、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7のアイデンティティに応じて大きく変化しうる。本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーは、治療および非治療用途の双方に用いられうる。
【0108】
本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマー1には、多数の異なる有望な治療用途が存在する。下記に列挙されるのは、有望な治療用途のうちのほんの数例であって、限定することを意図されていない。
【0109】
一実施形態では、限定はされないが、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、シガ毒素またはシガ様毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素、およびコレラ毒素を含みうる細菌毒素を除去することが可能である。
【0110】
一実施形態では、限定はされないが、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、インフルエンザウイルスを含みうるウイルス粒子を除去することが可能である。
【0111】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、房状の大腸菌(E.coli)、肺炎球菌(S.pneumoniae)、コリン結合タンパク質A基、α−エノラーゼ基、および緑膿菌(P.aeruginosa)を除去することが可能である。
【0112】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、癌細胞を標的化することが可能である。
【0113】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、インテグリンを標的化することが可能である。一実施形態では、インテグリンはインテグリンαvβ3である。
【0114】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、B細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質を標的化することが可能である。
【0115】
一実施形態では、限定はされないが、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、抗リン脂質抗体症候群に関連したIgGを提示するB細胞に結合可能なカルジオリピンを含みうるリン脂質を標的化することが可能である。
【0116】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、神経膠腫を標的化することが可能である。
【0117】
一実施形態では、限定はされないが、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、ギラン・バレー症候群を含みうる自己免疫疾患に関与する抗体を除去することが可能である。
【0118】
一実施形態では、有効量の本発明のポリマーを投与するステップを含む、標的化免疫療法の方法が提供される。ここで、第2の官能基6がハプテンであれば、前記ポリマーの投与により既存の抗体による免疫認識が惹起する。一部の態様では、治療の開始に先立ち、第2の官能基6を提示する化合物の投与により、抗体が患者の体内で産生される。
【0119】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1は、遺伝性および後天性代謝疾患の治療に用いられうる。
【0120】
本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーはまた、様々な非治療用途にも用いられうる。これらのポリマーの使用は診断の分野で有利でありうる。一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、地下水中のStx1の存在を検出することが可能である。別の実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、血中の抗体の存在を検出することが可能である。これは、限定はされないが、癌を含みうる多数の疾患の診断において有利でありうる。一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1は、腫瘍の造影において用いられうる。当然ながら当業者に理解されるように、これらの非治療用途は、特定の三元複合体の形成が最適化されるように、ヘテロ二官能性リガンド2上で第1の官能基4および第2の官能基6を選択し、かつ予備配置することによって実現可能である。
【実施例】
【0121】
材料、方法および実施例
以下の材料および方法を以下の実施例において用いた。これらの材料および方法は、あくまでも例示目的であり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。当業者は、いくつかの変更および置換が本発明の範囲に影響を与えることなくなされうることを理解するであろう。より詳細には、これらは以下に列挙する特定の技術および反応条件における変更および置換を含む。
【0122】
一般的方法
旋光性を、周囲温度で10cmのセル内のPerkin−Elmer 241偏光計上で測定した。分析TLCを、蛍光の消光および/またはエタノール溶液中の10%H2SO4でのチャージ(charging)、その後の180℃での加熱による検出とともに、シリカゲル60−F254(Merck)上で行った。カラムクロマトグラフィーを、シリカゲル60(Merck、40〜60μm)上で行い、かつ市販品の溶媒を用いた。1H−NMRスペクトルを、CDCl3(δH7.24ppmでの残存CHCl3を基準)またはD2O(δH2.225ppmでの外部アセトンを基準)中、400、500または600MHz(Varian)で測定した。J値はHzで与えられる。すべての市販品の試薬を用いることができる。
【0123】
本発明がより十分に理解されるように、以下の実施例が示される。これらの実施例は、あくまでも例示目的であり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。さらに、これらの実施例は、本発明の等価物および変形物を除外するように意図されておらず、それは当業者にとって明らかである。
【0124】
実施例1
化合物3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 4-O-[4-O-(β−D−ガラクトピラノシル)−β−D−ガラクトピラノシル]−β−D−グルコピラノシド(1)の合成
【化5】
【0125】
既知のラクトースイミデート(lactose imidate)ドナーを、三フッ化ホウ素エーテラートの存在下で、モノアリル化ヘキサ(エチレングリコール)とカップリングさせ、ラクトシド5を71%の収率で得た。Zemplen条件下で、ラクトシド5を脱アセチル化して、ヘプタオール6を90%の収率で得た。次いで、ヘプタオール6を、α−(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼを用いて、酵素的にガラクトシル化し、標的化合物1を75%の収率で得た。
【0126】
3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(5)。
ラクトース六酢酸トリクロロアセトイミダートドナー(1.8g、2.3mモル、α:βが9:1の混合物)、モノアリルヘキサ(エチレングリコール)(0.64g、2.0mモル)、および活性化された4Åのモレキュラーシーブス(1.5g)を、乾燥ジクロロメタン(20mL)中で1時間撹拌した。次いで、混合物を0℃に冷却し、BF3Et2O(0.3mL)を滴下添加した。TLCで反応の完了を確認した後、Et3Nで中和し、セライトを通して濾過し、濃縮した。シリカゲルでの残留物のクロマトグラフィーにより、表題化合物5を得た(1.3g、71%の収率)。
1H−NMR(CDCl3):δH5.89(m,1H,アリル)、5.32(dd,1H,J1.0Hz,3.5Hz,H−4’)、5.27(m,1H,アリル)、5.23(m,1H,アリル)、5.15(m,2H,H−3およびアリル)、5.08(dd,1H,J8.0Hz,10.5Hz,H−2’)、4.93(dd,1H,J3.5Hz,10.5Hz,H−3’)、4.86(dd,1H,J8.0Hz,9.5Hz,H−2)、4.53(d,1H,J7.5Hz,H−1)、4.46(m,2H,H−1’およびH−6a)、4.07(m,2H,H−6bおよびH−6a’)、4.00(m,2H,アリル)、3.84(m,2H,H−5’)、3.77(t,1H,J9.5Hz,H−4)、3.69(m,1H,H−6b’)、3.57〜3.65(m,15H)、2.13(s,3H,OAc)、2.10(s,3H,OAc)、2.04(s,3H,OAc)、2.02(s,3H,OAc)、2.02(s,3H,OAc)、2.01(s,3H,OAc)、1.94(s,3H,OAc)。ESI−HRMS m/z 963.36814([M+Na]+、C41H64O24Na+の要求値963.36798)。
【0127】
3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(6)。
ラクトシド5(1.3g、1.4mモル)を乾燥MeOH(20mL)中に溶解し、MeONa(3mL、0.5M溶液)を添加した。混合物を一晩撹拌し、次いでAmberlite H+で中和し、濾過し、濃縮し、表題化合物6を得た(0.8g、90%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.95(m,1H,アリル)、5.33(m,1H,アリル)、5.26(m,1H,アリル)、4.50(d,1H,J7.8Hz,H−1’)、4.44(d,1H,J7.8Hz,H−1)、4.06(m,3H,アリル)、3.97(m,1H)、3.92(m,1H)、3.58〜3.84(m,31H)、3.53(m,1H,H−2)、3.33(m,1H,H−2’)。ESI−HRMS m/z 669.29389([M+Na]+、C27H50O17Na+の要求値669.29402)。
【0128】
3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノシド(1)。
ラクトシド6(0.11g、0.17mモル)を、H2O 4mL、HEPES緩衝液[1.25mL、1.6M、10mM MnCl2、ウシ血清アルブミン(BSA、0.8mg/mL)、pH8]、DTT溶液(100mM、0.32mL)およびアルカリホスファターゼ(63μl)の混合液中に溶解した。得られた混合物に、UDP−Glc(0.13g)、次いでα−(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼ(0.625mL)を添加した。反応物を37℃で一晩インキュベートし、次いでC18担体でクロマトグラフィーを行い、表題化合物1を得た(0.1g、75%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.95(m,1H,アリル)、5.34(m,1H,アリル)、5.27(m,1H,アリル)、4.94(d,1H,J3.6Hz,H−1’’)、4.51(d,1H,J8.4Hz,H−1’)、4.51(d,1H,J7.8Hz,H−1)、4.35(m,1H)、3.56〜4.07(m,42H)、3.33(t,1H,J8.4Hz,H−2’)。ESI−HRMS m/z 831.34649([M+Na]+、C33H60O22Na+の要求値831.34685)。
【0129】
実施例2
25-[(シス)-2-ヒドロキシカルボニル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-24-(R,S)-ヒドロキシ-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ−オキサ-ペンタデコサ(pentadecos)-1-エン(2)の合成
【化6】
【0130】
メタノール(4.5mL)中の25-[(シス)-2-ジメチルアミノカルボニル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-24-(R,S)-ヒドロキシ-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタデコサ-1-エン(125mg、0.214mモル)の溶液に、4M水性NaOH(268μL)を添加した。反応混合物を80℃で一晩撹拌した。翌日、さらに4MのNaOH(134μL)を添加し、混合物を80℃で一晩放置した。翌日、NMRおよびTLCにより、アミドの加水分解が完了したことを確認そた。混合物をメタノールで希釈し、Dowex H+樹脂で脱イオン化し、濾過し、濃縮した。乾燥残留物を水中に溶解し、凍結乾燥し、生成物をシロップとして得た(97mg;84%)。
1H−NMR(D2O)δ:5.99〜5.92(m,1H,HC=CH2)、5.36〜5.26(m,2H,HC=CH2)、4.18(dd,2H,J4.7Hz,J11.4Hz,H−4e,H−6e)、4.07(d,2H,J5.9Hz,CH2−CH=CH2)、3.94〜3.92(m、1H、CH)、3.74〜3.65(m,26H,H−5,OCH2)、3.70〜3.60(m,5H,H−4a,H−6a,OCH2)、1.50(s,3H,CH3)。エレクトロスプレーイオン化HRMS、計算値C24H44O13Na(M+Na):m/z 563.26741,実測値:m/z 563.26776。
【0131】
実施例3
24-(R,S)-[4-O-(4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-カルボキシル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ(pentacos)-1-エン(3)の合成
【化7】
【0132】
既知のラクトシド7(Solomonら(Organic Letters 2005年、7、4369−4372頁))を、Zemplen条件下で脱アセチル化し、配糖体8を98%の収率で得た。配糖体8を、α-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼを用いて、酵素的にガラクトシル化し、トリサッカライド9を78%の収率で得た。基本的条件下でのトリサッカライド9のアミド基の加水分解により、標的化合物10を96%の収率で得た。
【0133】
24-(R,S)-[4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-ジメチルアミノカルボニル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ-1-エン(8)。
化合物7(0.33g、0.3mモル)(Solomonら(Organic Letters 2005年、7、4369−4372頁))を、乾燥MeOH(10mL)中に溶解し、MeONa(0.5M溶液1mL)を添加した。室温で一晩撹拌後、混合物をAmberlite(H+)樹脂で中和し、濾過し、濃縮し、真空下で乾燥し、表題化合物8を得た(0.24g、98%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.94(m,1H,アリル)、5.34(m,1H,アリル)、5.27(m,1H,アリル)、4.60(m,1H,H−1’)、4.44(m,1H,H−1)、4.20(m,2H)、4.07(m,3H,アリル)、3.96(m,1H)、3.92(m,1H,H−4’)、3.61〜3.82(m,39H,OMe)、3.53(m,4H)、3.31(m,1H,H−2’)、3.26(s,3H,NMe)、3.00(s,3H,NMe)、1.52(m,3H,C−Me)。ESI−HRMS m/z 914.42097([M+Na]+、C38H69NO22Na+の要求値914.42035)。
【0134】
24-(R,S)-[4-O-(4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-ジメチルアミノカルボニル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ-1-エン(9)。
ラクトシド8(0.24g、0.27mモル)を、H2O 8mL、HEPES緩衝液[2.5mL、1.6M、10mM MnCl2、ウシ血清アルブミン(BSA、0.8mg/mL)、pH8]、DTT溶液(100mM、0.63mL)およびアルカリホスファターゼ(125μL)の混合液中に溶解した。混合物にUDP−Glc(0.25g)、次いでα−(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼ(1.25mL)を添加した。反応物を37℃で一晩インキュベートし、次いでC18担体でクロマトグラフィーを行い、表題化合物9を得た(0.22g、78%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.94(m,1H,アリル)、5.34(m,1H,アリル)、5.27(m,1H,アリル)、4.94(d,1H,J3.6Hz,H−1’’)、4.60(m,1H,H−1’)、4.50(m,1H,H−1)、4.34(t,1H,J6.0Hz,H−5’’)、4.20(m,2H)、3.49〜4.08(m,57H)、3.31(m,1H,H−2’)、3.26(s,3H,NMe)、3.00(s,3H,NMe)、1.52(m,3H,C−Me)。ESIHRMS m/z 1076.47343([M+Na]+、C44H79NO27Na+の要求値1076.47317)。
【0135】
24-(R,S)-[4-O-(4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-カルボキシル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ-1-エン(3)。
表題化合物9(0.15g、0.14mモル)およびNaOH(5当量)の溶液を、80℃で3日間撹拌し、反応の進行をNMRにより追跡し、混合物をAmberlite H+樹脂で中和し、濾過し、濃縮し、表題化合物3を得た(0.14g、96%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.95(m,1H,アリル)、5.34(m,1H,アリル)、5.27(m,1H,アリル)、4.94(m,1H,H−1’’)、4.60(d,1H,J7.8Hz,H−1’)、4.50(m,1H,H−1)、4.34(t,1H,J6.0Hz,H−5’’)、4.20(m,2H)、3.55〜4.09(m,57H)、3.31(m,1H,H−2’)、1.50(m,3H,C−Me)。ESI−HRMS m/z 1049.42593([M+Na]+、C42H74O28Na+の要求値1049.42588)。
【0136】
実施例4
4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-6-N-(4-ペンテニルカルバモイル)-1,2-O-[(S)-1-(カルボキシ)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(4)の合成
【化8】
【0137】
既知の化合物10を、触媒CSAの存在下で、ベンズアルデヒドジメチルアセタールで処理し、ベンジリデン11を72%の収率で得た。ベンジリデン11の一級ヒドロキシルを、ピリジン中の塩化トシルを用いて選択的にトシル化し、トリオール12を56%の収率で得た。その後、トシル基をアジドで置換し、化合物13を78%の収率で得た。化合物13の水素化で得られたアミンとp−ニトロフェニル4−ペンテニルカーボネートとのカップリングし、ベンジリデン保護基を80%酢酸で脱離させ、カルバメート14を得た。ジサッカライド14を、α-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP-4'-Gal-エピメラーゼを用いて、酵素的にガラクトシル化し、所望のトリサッカライド4を得た。
【0138】
4-O-(4,6-O-ベンジリデン-β-D-ガラクトピラノシル)-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(11)。
ヘキサオール10(2.19g、4.25mモル)を、乾燥アセトニトリル(24mL)およびベンズアルデヒドジメチルアセタール(1.95mL、3当量)の混合液中に溶解し、次いでカンファースルホン酸(触媒量)を添加した。TLCで反応の完了を確認した後、トリエチルアミンで中和し、溶媒を蒸発させた。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(DCM:MeOH=20:1)、表題化合物11を得た(1.59g、72%)。
1H−NMR(CDCl3):δH7.35〜7.49(m,5H,芳香族陽子)、5.79(d,1H,J1,25.4Hz,H−1)、5.47(s,1H,C6H5CH)、4.45(d,1H,J7.8Hz,H−1’)、4.23(m,1H,H−6a’)、4.15(t,1H,J2,34.8Hz,H−2)、4.07(d,1H,J3’,4’3.6Hz,H−4’)、3.93〜4.00(m,3H,H−3,H−6a,H−6b’)、3.73〜3.82(m,3H,H−5,H−6b,H−2’)、3.75(s,3H,COOMe)、3.69(t,1H,J8.4Hz,H−4)、3.62(dd,1H,J2’,3’9.6Hz,J3’,4’3.6Hz,H−3’)、3.47(bs,1H,H5’)、1.68(s,3H,CH3)。ESI−HRMS m/z 537.15750([M+Na]+、C23H30O13Na+の要求値537.15786)。
【0139】
4-O-(4,6-O-ベンジリデン-β-D-ガラクトピラノシル)-6-O-トシル-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(12)。
化合物11(1.g、1.9mモル)を、乾燥ピリジン(8mL)中に溶解した。混合物を0℃に冷却後、塩化トシル(0.3g)、次いで4-ジメチルアミノピリジン(25mg)を添加した。3時間後、さらに塩化トシル(0.25g)を添加した。冷蔵庫(+5℃)内で16時間放置した後、反応物をメタノールでクエンチした。溶媒を蒸発後、残留物に対してシリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(DCM:MeOH=20:1)、表題化合物12を得た(0.733g、56%)。
1H−NMR(CDCl3):δH7.32〜7.80(m,9H,芳香族陽子)、5.69(d,1H,J1,25.5Hz,H−1)、5.53(s,1H,C6H5CH)、4.50(dd,1H,J3.5Hz,11.0Hz,H−6a)、4.46(d,1H,J1’,2’8.0Hz,H−1’)、4.26(m,2H,H−6b,H−6a’)、4.19(d,1H,J3’,4’3.5Hz,H−4’)、4.15(t,1H,J4.5Hz,H−2)、4.05(dd,1H,J2.0Hz,12.5Hz,H−6b’)、3.97(m,2H,H−3およびH−5)、3.74(m,4H,H−2’およびCOOMe)、3.66(m,2H,H−4およびH−3’)、3.56(bs,1H,H−5’)、2.44(s,3H,MePh)、1.65(s,3H,CH3)。ESI−HRMS m/z 691.16689([M+Na]+、C30H36O15SNa+の要求値691.16671)。
【0140】
6-アジド-4-O-(4,6-O-ベンジリデン-β-D−ガラクトピラノシル)-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D−グルコピラノース(13)。
トリオール12(0.721g、1.078mモル)を、乾燥DMF(7mL)中に溶解し、ナトリウムアジド(0.218g、3.35mモル)を添加した。反応混合物を、60℃で18時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をDCMで除去し、濾過し、2回トルエンと共蒸発させた。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:アセトン=1:1)、表題化合物13を得た(0.424g、78%)。
1H−NMR(CDCl3):δH7.37〜7.49(m,5H,芳香族陽子)、5.85(d,1H,J1,25.0Hz,H−1)、5.53(s,1H,C6H5CH)、4.41(d,1H,J1’,2’8.0Hz,H−1’)、4.29(dd,1H,J1.5Hz,13.0Hz,H−6a’)、4.19(m,2H,H−2およびH−4’)、4.07(dd,1H,J2.0Hz,13.0Hz,H−6b’)、3.99(m,1H,H−5)、3.93(dd,1H,J5.0Hz,8.0Hz,H−3)、3.77(s,3H,COOMe)、3.73(dd,1H,J7.8Hz,9.7Hz,H−2’)、3.63〜3.70(m,4H,H−3’,H−4,H−6a,H−6b)、3.57(bd,1H,H−5’)、1.71(s,3H,CH3)。ESI−HRMS m/z 562.16445([M+Na]+、C23H29N3O12Na+の要求値562.16435)。
【0141】
4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-6-N-(4-ペンテニルカルバモイル)-1,2-O-[(S)-1-(カルボキシ)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(14)。
アジド13(0.284g、0.526mモル)を、MeOH(6mL)中のPd(OH)2/C(200mg)を用い、触媒作用により24時間かけて水素化した。触媒を濾過により除去し、溶媒を蒸発させ、残留物を乾燥した。次いで、得られたアミンを乾燥アセトニトリル(6mL)中に溶解し、p-ニトロフェニル4-ペンテニルカーボネート(0.16g)を添加した。反応の完了後、溶媒を蒸発させ、80%AcOH(10mL)中に溶解した。混合物を80℃で2時間撹拌し、次いで濃縮し、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(DCM:MeOH=10:1〜6:1)、表題化合物14を得た(70mg、25%)。
1H−NMR(D2O):δH5.91(m,1H,ペンテニルのHd)、5.67(d,1H,J1,25.0Hz,H−1)、5.02〜5.11(m,2H,ペンテニルのHe)、4.50(d,1H,J1’,2’7.5Hz,H−1’)、4.39(m,1H,H−3)、4.23(m,1H,H−2)、4.10(m,2H,ペンテニルのHa)、3.92(d,1H,J3.0Hz,H−4’)、3.88(m,1H,H−5)、3.74〜3.83(m,2H,H−6a’およびH−6b’)、3.70(dd,1H,J4.0Hz,8.0Hz)、3.65(m,2H,H−4およびH−5’)、3.56(m,2H,H−6aおよびH−2’)、3.34(m,1H,H−6b)、2.15(m,2H,ペンテニルのHc)、1.74(m,2H,ペンテニルのHb)、1.66(s,3H,CH3)。
【0142】
4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-6-N-(4-ペンテニルカルバモイル)-1,2-O-[(S)-1-(カルボキシ)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(4)。
カルバメート14(60.8mg、0.116mモル)を、H2O 1.34mL、HEPES緩衝液[0.396mL、1.6M、10mM MnCl2、ウシ血清アルブミン(BSA、0.8mg/mL)、pH8]、DTT溶液(100mM、0.1mL)およびアルカリホスファターゼ(10μL)の混合液中に溶解した。この混合物にUDP−Glc(0.112g、1.58当量)、次いでα-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼ(0.198mL)を添加した。反応物を37℃で21時間インキュベートし、次いで超遠心し、DOWEX(H+)で処理し、C−18 HPLC上でクロマトグラフィーを行い(水:MeOH:0.1%TFA、25〜30%MeOHで溶出)、表題化合物4を得た(63.3mg、80%)。
1H−NMR(D2O):δH5.88(m,1H,ペンテニルのHd)、5.71(d,1H,J1,25.0Hz,H−1)、5.00〜5.09(m,2H,ペンテニルのHe)、4.94(d,1H,J4.0Hz,H−1’’)、4.55(d,1H,J1’,2’8.0Hz,H−1’)、4.37(m,2H,H−3およびH−4’’)、4.30(t,1H,J4.0Hz,H−2)、4.08(m,2H,ペンテニルのHa)、4.02(m,2H,H−4’)、3.65〜3.92(m,10H,H−2’’,H−3’’,H−3’,H−6a)、3.53〜3.60(m,2H,H−5およびH−2’)、3.32(dd,1H,J7.5Hz,10.0Hz,H−6b)、2.12(m,2H,ペンテニルのHc)、1.71(m,2H,ペンテニルのHb)、1.70(s,3H,CH3)。ESI−HRMS m/z 708.23206([M+Na]+、C27H43NO19Na+の要求値708.23215)。
【0143】
実施例5
2つの独立の単官能性リガンドを有する先行技術のポリマーPPMの調製
【化9】
【0144】
上で示したスキーム5は、ラジカル重合を介する単官能性リガンド1および2の取り込みを図示する。化合物1(3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 4-O-[4-O-(α-D−ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノシド)は、シガ様毒素を標的にし、化合物2はSAPを標的にする。
【0145】
脱気水(1mL)中のアクリルアミド(17.1mg、0.25mモル)、単量体1(81mg、0.1mモル)および単量体2(54mg、0.1mモル)の混合溶液に、水(10μL)中の過硫酸ナトリウム(1mg)の溶液を添加した。溶液をアルゴンでパージし、TEMED(12μL)を添加した。混合物を16時間インキュベートし、次いで透析し、凍結乾燥し、13mgのPPMを得た。NMRデータ(図示せず)は各リガンドの取り込みが約4.9%であることを示した。
【0146】
実施例6
2つの官能基が共通の原子にリンカーを介して結合された複数のヘテロ二官能性リガンドを有する多価ポリマーPPIの調製
以下に示すスキーム6は、ラジカル重合を介したヘテロ二官能性リガンドの取り込みを図示する。化合物3(24-(R,S)-[4-O-(4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-カルボキシル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ-1-エン)はトリサッカライド部分を介してシガ毒素を標的にし、グリセロールの環状ピルビン酸塩を含む部分はSAPを標的にする。
【化10】
【0147】
脱気水(1mL)中のアクリルアミド(34.2mg、0.5mモル)および単量体3(103mg、0.1mモル)の溶液に、水(10μL)中の過硫酸ナトリウム(1mg)の溶液を添加した。溶液をアルゴンでパージし、TEMED(12μL)を添加した。混合物を16時間インキュベートし、次いで透析し、凍結乾燥し、24mgのPPIを得た。NMRデータ(図示せず)は糖単量体の取り込みが約2.6%であることを示した。
【0148】
実施例7
2つの官能基が共通の原子またはリンカーを用いずに互いに結合された複数のヘテロ二官能性リガンドを有する多価ポリマーEPI−156の調製
以下に示すスキーム7は、ラジカル重合を介したヘテロ二官能性リガンドの取り込みを図示する。化合物4(4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-6-N-(4-ペンテニルカルバモイル)-1,2-O-[(S)-1-(カルボキシ)エチリデン]-α-D−グルコピラノース)はトリサッカライド部分を介してシガ毒素を標的にし、グリセロールの環状ピルビン酸塩を含む部分はSAPを標的にする。
【化11】
【0149】
脱気水(1mL)中のアクリルアミド(34.2mg、0.5mモル)および単量体4(66mg、0.096mモル)の溶液に、水(10μL)中の過硫酸ナトリウム(1mg)の溶液を添加した。溶液をアルゴンでパージし、TEMED(12μL)を添加した。混合物を16時間インキュベートし、次いで透析し、凍結乾燥し、26mgのEPI−156を得た。NMRデータ(図示せず)は糖単量体の取り込みが約4%であることを示す。
【0150】
実施例8
6-O-(2,5-ジニトラ(dinitra)-7-オキサ-6-オキソ-ドデカ-11-エノイル)-1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノース(23)の合成
【化12】
【0151】
3-O-アセチル-4,6-O-ベンジリデン-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(15)。
MeCN(30mL)中の乾燥1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(4.62g、15.1mモル)の溶液に、PhCH(OMe)2(2.27mL、1当量)、次いでCSA(100mg)を添加した。30分後、Py−Ac2O(1:1 v/v、10mL)を添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。反応物をMeOHの添加によりクエンチし、濃縮し、トルエンとともに2回共蒸発させた。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:酢酸エチル(30〜40%))、表題生成物を得た(3.19g、54%)。
[α]D+23°(c1.2,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH7.5〜7.35(m,5H,芳香族)、5.84(d,1H,J1,25.1Hz,H−1)、5.53(s,1H,CHPh)、5.24(dd,1H,J2,33.4Hz,J3,48.3Hz,H−3)、4.41(dd,1H,J5,6a5.1Hz,J6a,6b10.5Hz,H−6a)、4.32(dd,1H,H−2)、3.94(dd,1H,J6b,55.2Hz,H−6b)、3.77〜3.70(m,5H,H−4,H−5,CH3)、2.126(s,3H,OAc)、1.767(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ169.79(C=O)、169.48(C=O)、136.80(C芳香族)、129.17(CH芳香族)、128.28(CH芳香族)、126.14(CH芳香族)、104.03(Cピルビン酸塩)、101.59(CHベンジリデン)、98.84(C−1)、77.68、77.15、73.07、68.84(C−6)、62.34、52.69(OCH3)、22.39(CH3)、20.98(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 419.13136([M+Na]+、C19H24O9Na+の要求値419.13125)。計算値C19H24O9:C、57.86%;H、5.62%。実測値:C、57.84%;H、5.59%。
【0152】
3-O-アセチル-6-O-ベンジル-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(16)。
乾燥THF(30mL)中のベンジリデン誘導体15(1.6g、4mモル)およびモレキュラーシーブス(4Å、1g)の懸濁液に、NaCNBH3(3.8g、60mモル)、次いでHCl−エーテル溶液(2M、約10mL)を、気体の発生が停止するまで添加した。混合物を、飽和水性NaHCO3により中和し、セライトを通して濾過し、濃縮し、次いでDCMで除去し、水で洗浄し、濃縮した。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)、表題化合物16を得た(1.16g、73%)。
[α]D+13°(c0.9,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH7.28〜7.25(m,5H,芳香族)、5.82(d,1H,J1,25.1Hz,H−1)、5.04(t,1H,J2,3〜J3,4=3.4Hz,H−3)、4.63(d,1H,Jgem12.2Hz,CH2)、4.58(d,1H,CH2)、4.39(m,1H,H−2)、3.84(m,1H,H−5)、3.79〜3.75(m,5H,H−4,H−6a,CH3)、3.72(dd,1H,J5,6b3.8Hz,J6a,6b10.4Hz,H−6b)、2.78(s,1H,OH)、2.11(s,3H,OAc)、1.75(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ170.72(C=O)、169.42(C=O)、137.74(C芳香族)、128.43(CH芳香族)、127.77(CH芳香族)、104.87(Cピルビン酸塩)、98.07(C−1)、74.82、74.51、73.67(CH2−Bn)、70.22、69.62(C−6)、69.23、52.68(OCH3)、21.69(CH3)、20.88(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 417.11580([M+Na]+、C19H22O9Na+の要求値417.11560)。計算値C19H22O9:C、57.57%;H、6.10%。実測値:C、57.42%;H、6.01%。
【0153】
3-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-6-O-ベンジル-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(17)
テトラ-O-アセチル-ガラクトピラノーストリクロロアセトイミダート(3.83g、7.77mモル)と、グリコシル受容体16(2.77g、7mモル)とを組み合わせ、乾燥し、DCM(30mL)中に溶解し、次いでモレキュラーシーブス(4Å、1g)を添加した。30分後、TMSOTf(100μL)を添加した。1時間後、混合物をPyでクエンチし、濃縮した。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)、表題化合物17を得た(2.66g、52%)。
[α]D+4°(c2.6,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH7.40〜7.30(m,5H,芳香族)、5.80(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.44(dd,1H,J2,32.2Hz,J3,42.7Hz,H−3)、5.34(dd,1H,J3’,4’3.5Hz,J4’,5’1.0Hz,H−4’)、5.12(dd,1H,J2’,3’7.9Hz,J3’,4’10.4Hz,H−2’)、4.92(dd,1H,H−3’)、4.70(d,1H,Jgem12.2Hz,Bn)、4.50(d,1H,Bn)、4.43(d,1H,H−1’)、4.32(m,1H,H−2)、4.13〜4.09(m,2H,H−6’a,H−6’b)、3.87〜3.78(m,3H,H−4,H−5,H−5’)、3.76(s,3H,CH3)、3.67(dd,1H,J5,6a2.2Hz,J6a,6b10.9Hz,H−6a)、3.59(dd,1H,J5,6b3.4Hz,H−6b)、2.16、2.08、2.03、1.97、1.92(5s,15H,OAc)、1.73(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ170.35(C=O)、170.29(C=O)、170.07(C=O)、169.42(C=O)、169.11(C=O)、169.06(C=O)、137.82(C芳香族)、128.54(CH芳香族)、127.96(CH芳香族)、105.38(C−ピルビン酸塩)、102.13(C−1’)、98.08(C−1)、76.10、74.09、73.60(CH2−Ph)、70.88、70.69、70.43、68.90、68.81、68.33(C−6’)、66.87、61.03(C−6)、52.65(OCH3)、21.26(CH3)、20.88(CH3)、20.69(CH3)、20.65(CH3)、20.62(CH3)、20.57(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 749.22665([M+Na]+、C33H42O18Na+の要求値749.22634)。解析計算値C33H42O18:C、54.54%;H、5.83%。実測値:C、54.23%;H、5.73%。
【0154】
3-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(18)。
MeOH(10mL)中の化合物17(1.6g、2.2mモル)の溶液に、1滴の水およびPd(OH)2(30mg)を添加した。H2大気下での撹拌の2時間後、混合物を、Millipore膜フィルタを通して濾過し、濃縮し、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:アセトン=1:1)、表題化合物18を得た(1.0g、71%)。
[α]D+8°(c1.2,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH5.76(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.51(dd,1H,J2,3〜J3,42.3Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J3’,4’3.5Hz,J4’,5’0.9Hz,H−4’)、5.18(dd,1H,J2’,3’8.0Hz,J3’,4’10.4Hz,H−2’)、5.01(dd,1H,H−3’)、4.64(d,1H,H−1’)、4.33(m,1H,H−2)、4.14〜4.10(m,2H,H−6’a,H−6’b)、3.93(td,1H,J4’,5’0.9Hz,J5’,6a’〜J5’,6b’6.7Hz,H−5’)、3.85〜3.82(m,2H,H−4,H−6a)、3.766(s,3H,CH3)、3.75(m,1H,H−5)、3.61(dd,1H,J5,6b3.8Hz,J6a,6b12.0Hz,H−6b)、2.16、2.09、2.06、2.03、1.98(5s,15H,OAc)、1.74(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ170.37(C=O)、170.27(C=O)、170.07(C=O)、169.32(C=O)、169.08(C=O)、105.47(C−ピルビン酸塩)、102.25(C−1’)、97.78(C−1)、76.49、74.40、70.93、70.84.70.36、69.05、68.98、66.89、61.80(C−6’)、61.05(C−6)、52.69(OCH3)、21.27(CH3)、20.86(CH3)、20.68(CH3)、20.64(CH3)、20.55(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 659.17920([M+Na]+、C26H36O18Na+の要求値659.17939)。計算値C26H36O18:C、49.06%;H、5.70%。実測値:C、49.12%;H、5.70%。
【0155】
3-O-アセチル-6-O-(4-ニトロフェニル)-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D−グルコピラノシド(19)。
乾燥DCM(10mL)中の化合物18(1g、1.57mモル)およびクロロぎ酸4−ニトロフェニル(380mg、1.2当量)の溶液に、Py(約0.2mL)を添加した。5分後に、TLC(ヘキサン:アセトン=1:1)によって、反応の完了を確認した。水(0.2mL)を添加し、混合物を濃縮し、ヘキサン:酢酸エチル=1:1においてシリカゲル上でクロマトグラフィーを行い、表題化合物19を得た(1.2g、95%)。
[α]D+0.7°(c1,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH8.31〜8.28(m,2H,芳香族)、7.42〜7.39(m,2H,芳香族)、5.80(d,1H,J1,25.1Hz,H−1)、5.55(dd,1H,J2,31.6Hz,J3,42.5Hz,H−3)、5.39(dd,1H,J3’,4’3.5Hz,J4’,5’1.1Hz,H−4’)、5.21(dd,1H,J2’,3’8.0Hz,J3’,4’10.4Hz,H−2’)、5.04(dd,1H,H−3’)、4.70(d,1H,H−1’)、4.51(dd,1H,J6a,52.3Hz,J6a,6b11.7Hz,H−6a)、4.39(m,1H,H−2)、4.51(dd,1H,J6b,55.7Hz,H−6b)、4.17(dd,1H,J6’a,56.5Hz,J6’a,6’b11.3Hz,H−6a)、4.07(m,1H,H−5)、3.93(td,1H,J4’,5’1.1Hz,J5’,6a’〜J5’,6b’6.6Hz,H−5’)、3.78(m,4H,H−4,CH3)、2.17、2.12、2.07、2.05、1.98(5s,15H,OAc)、1.78(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ170.35(C=O)、170.21(C=O)、170.05(C=O)、169.38(C=O)、169.09(C=O)、169.03(C=O)、155.33(PhのC−O)、152.28(炭酸塩のC=O)、145.53(PhのC−NO2)、125.36(PhのCH)、121.71(PhのCH)、105.67(C−ピルビン酸塩)、101.66(C−1’)、97.65(C−1)、77.26、74.22、71.00、70.82.69.71、68.89、67.76(C−6)、66.85、66.57、61.18(C−6’)、52.79(OCH3)、21.20(CH3)、20.84(CH3)、20.69(CH3)、20.67(CH3)、20.64(CH3)、20.54(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 824.18573([M+Na]+、C33H39NO22Na+の要求値824.18559)。計算値C33H39NO22:C、49.44%;H、4.90%;N、1.75%。実測値:C、49.64%;H、4.88%;N、2.07%。
【0156】
2-(ペンタ-4-エニルオキシカルバモイル(enyloxycarbamoyl))-エチルアミン(20)。
乾燥DCM(7mL)中のペンタ-4-エノール-1(0.97g、11.26mモル)およびクロロぎ酸4-ニトロフェニル(2.3g)の溶液に、Py(0.92mL)を徐々に添加した。30分後、得られた混合物をDCM(10mL)中の1,2-ジアミノエタン(2mL)の溶液に添加した。20分後、混合物を塩水で洗浄し、DCM画分を濃縮した。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(DCM−MeOH=1:1〜0:1)、生成物7を淡黄色シロップとして得た(1.11g;57%)。
1H−NMR(CDCl3):δH5.88〜5.74(m,1H,CH=CH2)、5.15〜4.90(m,3H,NH,CH=CH2)、4.06(t,2H,J6.6Hz,CH2O)、3.21(t,2H,J6.0Hz,CH2NHCO)、2.81(t,2H,CH2NH2)、2.16〜2.06(m,2H,CH2CH=CH2)、1.76〜1.60(m,2H,CH2CH2CH2)。13C−NMR(CDCl3):δ156.90(C=O)、137.59(CH=CH2)、115.12(CH=CH2)、64.29(CH2O)、42.89(CH2N)、41.34(CH2N)、29.98(CH2)、28.24(CH2)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 173.12849([M+H]+、C8H17N2O2+の要求値173.12845)。
【0157】
3-O-アセチル-6-O-(2,5-ジニトラ-7-オキサ-6-オキソ-ドデカ-11-エノイル)-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-α-D-グルコピラノース(21)。
DCM中の化合物20(250mg)の溶液に、化合物19(884mg、1.1mモル)の溶液、次いでEt3N(300μL)を添加した。沸点より低温に維持しつつ時々加熱して1時間後、TLC(ヘキサン:アセトン=1:1)で反応の完了を確認した。混合物を濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:アセトン=1:1)、表記化合物21を得た(550mg、60%)。
[α]D+0.8°(c1,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH5.84〜5.76(m,1H,−CH=CH2)、5.76(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.53(dd,1H,J2,31.4Hz,J3,42.3Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J3’,4’3.5Hz,J4’,5’0.9Hz,H−4’)、5.23(ブロード s,1H,NH)、5.18(dd,1H,J2’,3’8.2Hz,J3’,4’10.4Hz,H−2’)、5.08〜4.97(m,4H,H−3’,NH,−CH=CH2)、4.63(d,1H,H−1’)、4.35(m,1H,H−2)、4.22(dd,1H,J6a,52.0Hz,J6a,6b11.6Hz,H−6a)、4.18〜4.09(m,3H,H−6b,H−6’a,H−6’b)、4.07(m,2H,CH2)、3.95(td,1H,J4’,5’1.0Hz,J5’,6a’〜J5’,6b’=7.3Hz,H−5’)、3.90(m,1H,H−5)、3.77(s,3H,CH3)、3.64(d,1H,H−4)、3.32(ブロード s,4H,CH2N)、2.17、2.10、2.08、2.03、1.98(5s,15H,OAc)、2.14〜2.10(m,2H,CH2)、1.75(s,3H,CH3)、1.74〜1.68(m,2H,CH2)。13C−NMR(CDCl3):δ170.37(C=O)、170.28(C=O)、170.07(C=O)、169.49(C=O)、169.25(C=O)、169.01(C=O)、157.03(C=O)、156.27(C=O)、137.53(−CH=CH2)、115.20(−CH=CH2)、105.64(C−ピルビン酸塩)、102.37(C−1’)、97.71(C−1)、77.32、73.93、70.88、70.79、69.84,68.89、67.21、66.87、64.50(CH2)、64.12(CH2)、61.99(CH2)、52.69(OCH3)、41.31(CH2)、41.06(CH2)、30.00(CH2)、28.19(CH2)、21.15(CH3)、20.86(CH3)、20.70(CH3)、20.66(CH3)、20.55(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 857.27929([M+Na]+、C35H50N2O21Na+の要求値857.27983)。計算値C35H50N2O21:C、50.36%;H、6.04%、N、3.36%。実測値:C、50.37%;H、6.15%;N、3.35%。
【0158】
6-O-(2,5-ジニトラ-7-オキサ-6-オキソ-ドデカ-11-エノイル)-1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-α-D-グルコピラノース(22)。
保護誘導体21(0.53g、0.63mモル)を、乾燥MeOH(3.5mL)中に溶解し、MeOH中のNaOMe(1M、0.64mL)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、次いで濃縮し、得られた固体を水(3mL)中に溶解した。1時間後、メチルエステルの加水分解が完了した。溶液を酢酸で中和し、濃縮し、次のステップで直接用いた。少量の試料を、1%AcOHを含有する水−MeOH中、C−18担体でのHPLCクロマトグラフィーにより精製した。
[α]D+19°(c1,H2O)。1H NMR(D2O)δ:5.90(m,1H,CH=CH2)、5.62(d,1H,J1,24.9Hz,H−1)、5.10〜5.01(m,2H,CH=CH2)、4.44(d,1H,J1’,2’7.8Hz,H−1’)、4.41〜4.34(m,2H,H−3,H−6a)、4.23(dd,1H,J5,6b5.3Hz,J6a,6b12.0Hz,H−6b)、4.18(m,1H,H−2)、4.08〜4.01(m,3H,H−5,OCH2)、3.92(d,1H,J3’,4’3.4Hz,H−4’)、3.83〜3.74(m,3H,H−4,H−6’a,H−6’b)、3.69(m,1H,H−5’)、3.64(dd,1H,J2’,3’9.9Hz,H−3’)、3.55(m,1H,H−2’)、3.24(s,4H,NCH2)、2.12(m,2H,CH2)、1.72(m,2H,CH2)、1.64(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ181.28(C=O)、159.23(C=O)、158.41(C=O)、138.85(−CH=CH2)、115.26(−CH=CH2)、107.36(C−ピルビン酸塩)、105.15(C−1’)、96.74(C−1)、78.53、75.61、75.37、72.84、71.04、69.54、68.87、68.52、65.29(CH2)、64.34(CH2)、61.33(CH2)、40.56(CH2)、40.35(CH2)、29.66(CH2)、27.75(CH2)、21.76(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 609.21365([M]−)、C24H37N2O16−の要求値609.21376)。計算値C24H38N2O16:C、47.21%;H、6.27%;N、4.59%。実測値:C、46.67%;H、6.23%;N、4.57%。
【0159】
6-O-(2,5-ジニトラ-7-オキサ-6-オキソ-ドデカ-11-エノイル)-1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-α-D-グルコピラノース(23)。
脱保護されたラクトース誘導体22を、HEPES緩衝液[2mL、1.6M、10mM MnCl2、ウシ血清アルブミン(BSA、0.8mg/mL)、水(7.14mL)]中に溶解後、アルカリホスファターゼ(54μL)およびUDP−グルコース(0.58g;1.5当量)を添加した。α-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼ(0.7mL)を反応混合物に添加し、それを37℃でインキュベートした。18時間後、NMRで反応が完了したことを確認した。反応混合物を濃縮した。残留物をメタノールで処理し、固体沈殿物を濾過・除去し、メタノールですすいだ。組み合わせたメタノール溶液画分を濃縮し、それに対してシリカゲル上でクロマトグラフィーを行った(DCM−MeOH(AcOHの4%)=6:4〜4:5)。生成物を水中に溶解し、0.2μmの膜を通して濾過し、凍結乾燥し、白色粉末23を得た(394mg;80%)。
[α]D+61°(c1,H2O)。1H−NMR(D2O):δH5.90(m,1H,CH=CH2)、5.73(d,1H,J1,24.9Hz,H−1)、5.10〜5.02(m,2H,CH=CH2)、4.94(d,1H,J1’’,2’’4.1Hz,H−1’’)、4.51(d,1H,J1’,2’7.7Hz,H−1’)、4.42〜4.36(m,3H,H−3,H−6a,H−5’’)、4.31(t,1H,J2,34.0Hz,H−2)、4.24(dd,1H,J5.6b5.4Hz,J6a,6b12.0Hz,H−6b)、4.07(t,2H,J6.5Hz,OCH2)、4.04〜4.01(m,3H,H−4’,H−4’’,H−5)、3.94〜3.90(m,2H,H−5’,H−3’’)、3.86〜3.68(m,7H,H−4,H−3’,H−6a’,H−6b’,H−2’’,H−6a’’,H−6b’’)、3.58(dd,1H,J2’,3’10.3Hz,H−2’)、3.24(bs,4H,NCH2)、2.14(m,2H,CH2)、1.73(m,5H,CH2,CH3)、1.65(s,3H,CH3)。13C−NMR(D2O):δ174.53(C=O)、159.85(C=O)、159.00(C=O)、139.44(−CH=CH2)、115.84(−CH=CH2)、106.71(C−ピルビン酸塩)、106.10(C−1’’)、101.13(C−1’)、97.82(C−1)、79.44、77.89、76.38、76.10、73.01、71.62、70.06、69.87、69.60、69.30、65.90(CH2)、64.99(CH2)、61.39(CH2)、61.12(CH2)、41.15(CH2)、40.96(CH2)、30.26(CH2)、28.36(CH2)、21.85(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 795.26438([M+Na]+)、C30H48N2O21Na+の要求値795.26418。計算値C30H47N2O21:C、45.34%;H、5.96%;N、3.53%。実測値:C、45.38%;H、6.11%;N、3.80%。
【0160】
実施例9
化合物23とアクリルアミド(EPI−29)との共重合体の合成
【化13】
【0161】
トリス緩衝液(0.2M、pH9;7.32mL)中の、化合物23(471mg;0.61mモル)およびアクリルアミド(264mg;3.7mモル)の溶液を、アルゴンでパージし、次いでトリス緩衝液(74.3μL)中の過硫酸アンモニウム(7.43mg)の溶液を添加し、アルゴンでパージした。TEMED(37.15μL)を反応混合物に添加し、それを短時間ボルテックスし、次いで室温で一晩放置した。混合物をエタノール(40mL)で希釈した。沈殿物を採取し、エタノールで洗浄し、水で除去し、脱イオン水(2L)に対して4回透析した。ポリマーの透析溶液を0.2μmの膜を通して濾過し、凍結乾燥し、生成物EPI−29を白色粉末として得た(390mg)。NMRは、リガンドの取り込みが5モル%であることを示した。
【0162】
実施例10
メタクリレート単量体{2-{1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D−ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-α-D-グルコピラノース}-6-イルオキシカルボニルアミノ}-カルバミン酸5-[2-(2-メチル-アクリロイルアミノ)-エチルスルファニル]-ペンチルエステル(25)の合成
【化14】
【0163】
{2-{1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノース}-6-イルオキシカルボニルアミノ}-エチル]-カルバミン酸5-(2-アミノ-エチルスルファニル)-ペンチルエステル(24)。
化合物23(91mg、0.107mモル)を、石英チューブ内の脱気水(3mL)中に溶解し、アルゴンでパージし、次いでシステアミン塩酸塩(244mg、2.14mモル)を混合溶液に添加し、混合物をアルゴンでパージした。それに対し、UVランプを冷却するための短い中断を有する15分サイクル(5回)にわたり、アルゴン下、UV光(Ray−Pen)で照射した。反応の生成物を、0.1%TFAを有する水−メタノールを用い、逆相シリカゲルC18上で精製した。濃縮および凍結乾燥後、生成物24を白色泡として得た(94mg、100%)。
[δ]D+440(c1.12,水)。1H−NMR(D2O):δ5.74(d,1H,J1,24.95Hz,H−1)、4.96(d,1H,J1’’,2’’3.94Hz,H−1’’)、4.52(d,1H,J1’,2’7.8Hz,H−1’)、4.42〜4.37(m,3H,J6a,6b11.9Hz,H−3,H−6a,H−5’’)、4.32(dd,1H,J2,34.0Hz,H−3)、4.25(dd,1H,J5,6b5.6Hz,H−6b)、4.12〜4.00(m,5H,H−5,H−4’,H−4’’,OCH2)、3.96〜3.68(m,9H,H−4,H−3’,H−5’,H−6a’,H−6b’,H−2’’,H−3’’,H−6a’’,H−6b’’)、3.60(dd,1H,H−2’)、3.27〜3.20(m,6H,NCH2)、2.85(t,2H,J6.7Hz,SCH2)、2.61(t,2H,J7.3,SCH2)、1.55(s,3H,CH3)、1.54〜1.52(m,4H,CH2)、1.50〜1.48(m,3H,CH2)。13C−NMR(D2O):δ174.27(C=O)、159.86(C=O)、158.99(C=O)、106.54(C−ピルビン酸塩)、106.09(C−1’’)、101.13(C−1’)、97.88(C−1)、79.43、77.71、76.39、76.16、73.03、71.63、70.07、69.88、69.62、69.59、69.35、66.34(CH2)、65.00(CH2)、61.41(CH2)、61.15(CH2)、41.18(CH2)、41.17(CH2)、39.27(CH2)、31.45(CH2)、29.06(CH2)、29.01(CH2)、28.69(CH2)、25.14(CH2)、21.85(CH3)。HRMS−ES m/z 872.29460[M+Na]+、C32H55N3O21SNa+の要求値872.29410。
【0164】
{2-{1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノース}-6-イルオキシカルボニルアミノ}-カルバミン酸5-[2-(2-メチル-アクリロイルアミノ)-エチルスルファニル]-ペンチルエステル(25)。
システアミン付加体24(38mg、0.44mモル)を、水(3mL)中に溶解し、N-メタクリルオキシスクシンイミド(30mg、0.16mモル)、次いで乾燥重炭酸ナトリウムをpH8に達するまで添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで5M酢酸で酸化した。1%酢酸を有する水−メタノールを用いて逆相シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い、凍結乾燥後、純粋生成物25を白色泡として得た(28mg、69%)。
[α]D+43.7°(c1.24,水)。1H−NMR(D2O):δ5.71m(s,1H,C=CH2)、5.69(d,1H,J1,24.8Hz,H−1)、5.46(s,1H,C=CH2)、4.95(d,1H,J1’,2’’3.9Hz,H−1’’)、4.52(d,1H,J1’,2’7.7Hz,H−1’)、4.42〜4.36(m,3H,H−3,H−6a,H−5’’)、4.30〜4.21(m,2H,H−2,H−6b)、4.10〜4.00(m,3H,H−5,H−4’,H−4’’)、3.94〜3.90(m,2H,H−5,H−3’’)、3.86〜3.76(m,4H,H−6a’,H−6b’,H−2’’,H−6a’’)、3.74〜3.67(m,3H,H−4,H−3’,H−6b’’)、3.59(dd,1H,J2’3’7.9Hz,H−2’)、3.47(t,J6.0Hz,NCH2)、3.24(bs,4H,NCH2)、2.75(t,2H,J6.7Hz,SCH2)、2.61(t,2H,J7.1Hz,SCH2)、1.93(s,3H,CH3)、1.69(s,3H,CH3)、1.66〜1.58(m,4H,CH2)、1.50〜1.40(m,2H,CH2)。13C−NMR(D2O):δ174.59(C=O)、159.78(C=O)、158.91(C=O)、139.88(H2C=CCH3)、121.96(H2C=CCH3)、106.76(C−ピルビン酸塩)、106.6(C−1’’)、101.08(C−1’)、97.74(C−1)、79.42、77.84、76.32、76.05、72.97、71.57、70.01、69.82、69.58、69.54,69.22、66.33(CH2)、66.32(CH2)、64.95(CH2)、61.39(CH2)、61.34(CH2)、61.12(CH2)、61.07(CH2)、41.11(CH2)、39.82(CH2)、31.85(CH2)、31.16(CH2)、29.17(CH2)、28.62(CH2)、25.15(CH2)、21.85(CH3)、18.53、18.51(CH3)。HRMS−ES m/z 916.32261[M−H]、C36H58N3O22Sの要求値916.32382。
【0165】
実施例11
化合物25とHPMA(HPMA−B2)との共重合体の合成
【化15】
【0166】
化合物25(27mg、0.03mモル)およびHPMA単量体(72mg、0.5mモル)を、脱気した酢酸塩緩衝液(0.1M、pH4)中に溶解した。溶液に対して真空下で超音波処理し、次いでアルゴンで飽和させた。過硫酸アンモニウムの溶液(酢酸塩緩衝液20μL中2mg)を混合物に添加し、それに対して真空下で超音波処理し、アルゴンで飽和させた。最後に、システアミン溶液(酢酸塩緩衝液28μL中0.14mg)を反応混合物に添加し、数秒間ボルテックス後、それを50℃で一晩インキュベートした。21時間後、溶液をアセトン(8mL)で処理した。沈殿物を分離し、次いで水中に溶解し、脱イオン水に対して透析し、次いで0.45μmの膜を通して濾過し、凍結乾燥し、生成物を白色粉末(25mg)として得た。D2O中での1H-NMRは、リガンドのHPMA−B2ポリマーへの取り込みが5モル%であることを示した。
【0167】
実施例12
【化16】
【0168】
3-O-アセチル-6-O-ベンジル-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-4-O-[2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D−ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-α-D-グルコピラノース(26)。
酢酸塩17(0.973g;1.34mモル)を、乾燥メタノール(2.5mL)中に溶解し、0.5M NaOMe(2.8mL)を添加した。室温で1時間後、混合物をDowex H+樹脂で処理し、濾過し、濃縮し、白色泡を得た。生成物(0.764g)を、水(15mL)中に溶解し、HEPES緩衝液(4.58mL)、次いでDTT溶液(1.14mL)およびアルカリホスファターゼ(114μL)を添加した。次いで、UDP−Glc(1.23g)、次いで融合酵素(1.5mL)を混合物に添加した。反応物を37℃で一晩インキュベートした。次いで、混合物を水で希釈し、Dowex H+樹脂で酸化し、濾過し、上清を濃縮した。乾燥メタノール(25mL)中の残留物の懸濁液に塩化アセチル(0.25mL)を添加し、混合物を室温で3.5時間撹拌し、次いでピリジンで中和した。固体残留物を濾過・除去し、メタノールですすぎ、濾過物を濃縮し、アセチル化した(ピリジン10mL、無水酢酸10mL、48時間)。数摘のメタノールを混合物に添加し、過剰な試薬をクエンチし、混合物を濃縮し、トルエンと共蒸発させた。粗生成物をヘキサン−アセトン(7:3〜2:1)を用いてシリカゲルカラム上で精製し、純粋表題生成物を白色泡として得た(0.814g;60%)。
NMR(CDCl3):δ7.39〜7.29(m,5H,C6H5)、5.80(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.60(dd,1H,J3’’,4’’3.4Hz,J4’’,5’’1.3Hz,H−4’’)、5.49(t,1H,J2,3=J3,4=2.6Hz,H−3)、5.37(dd,1H,J2’’,3’’11.0Hz,J3’’,4’’3.4Hz,H−3’’)、5.19、(dd,1H,J1’’,2’’3.7Hz,H−2’’)、5.13(dd,1H,J1’,2’7.8Hz,J2’,3’11.8Hz,H−2’)、5.02(d,1H,H−1’’)、4.76(dd,1H,J3’,4’2.9Hz,H−3’)、4.69(d,1H,J12.2Hz,CH2)、4.54〜4.49(m,3H,J5’’,6a’’8.4Hz,H−1’,H−5’’,CH2)、4.37(dd,1H,J5’,6’6.5Hz,J6a’,6b’11.2Hz,H−6a)、4.32(dd,1H,H−2)、4.16(dd,1H,J6a’’,6b’’10.9Hz,H−6a’’)、4.11〜4.06(m,2H,H−6b’,H−6b’’)、4.03(d,1H,H−4’)、3.89〜3.83(m,2H,H−4,H−5’)、3.76(s,3H,OCH3)、3.73(dd,1H,H−5’)、3.69(dd,1H,H6a)、3.63(dd,1H,H−6b)、2.13(s,3H,CH3)、2.11(s,3H,CH3)、2.09(s,3H,CH3)、2.07(s,3H,CH3)、2.05(s,3H,CH3)、2.04(s,3H,CH3)、1.99(s,3H,CH3)、1.92(s,3H,CH3)、1.75(s,3H,CH3)。HRMS−ES m/z 1037.31122[M+Na]+、C45H58O26Na+の要求値1037.31085。
【0169】
3-O-アセチル-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-4-O-[2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-α-D-グルコピラノース(27)。
化合物26(0.804g;0.79mモル)を、メタノール(5mL)中に溶解し、炭素に担持された10%パラジウムの存在下で水素化した。2時間後、混合物をメタノールで希釈した。触媒を濾過・除去し、メタノールですすいだ。濾過物を濃縮し、純粋生成物を白色固体として得た(0.73g;100%)。
NMR(CDCl3):δ5.77(d,1H,J1,25.1Hz,H−1)、5.60(dd,1H,J3’’,4’’3.4Hz,J4’’,5’’1.1Hz,H−4’’)、5.49(t,1H,J2,3=J3,42.4Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J2’’,3’’11.0Hz,H−3’’)、5.22〜5.17(m,2H,J1’,2’7.9Hz,J2’,3’10.8Hz,J1’’,2’’3.8Hz,H−2’,H−2’’)、5.01(d,1H,H−1’’)、4.86(dd,1H,J3’,4’2.8Hz,H−3’)、4.67(d,1H,H−1’)、4.56(m,1H,H−5’’)、4.40(dd,1H,J5’6a’6.5Hz,J6a’,6b’11.2Hz,H−6a’)、4.35〜4.33(m,1H,H−2)、4.19〜4.05(m,4H,H−4’,H−6b’,H−6a’’,H−6b’’)、4.89〜4.78(m,4H,H−4,H−5,H−6a,H−5’)、4.77(s,3H,OCH3)、4.68〜4.62(m,1H,H−6b)、2.14(s,3H,CH3)、2.12(s,3H,CH3)、2.11(s,3H,CH3)、2.08(s,3H,CH3)、2.07(s,3H,CH3)、2.06(s,3H,CH3)、2.04(s,3H,CH3)、2.00(s,3H,CH3)、1.76(s,3H,CH3)。HRMS−ES m/z 947.26346[M+Na]+、C38H52O26Na+要求値947.26390。
【0170】
3-O-アセチル-4-O-[2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-6-O-(4-ニトロフェニルオキシカルボニル)-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(28)。
脱ベンジル化生成物27(0.714g;0.772mモル)およびクロロぎ酸p-ニトロフェニル(0.24mg;1.16mモル)を、乾燥DCM(3mL)中に溶解し、ピリジン(0.19mL;2.3mモル)を混合物に滴下添加した。1時間後、混合物をDCMで希釈し、塩水で洗浄し、濃縮し、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(ヘキサン−アセトン=2:1〜1:1)、純粋生成物28を白色泡として得た(82mg;97%)。
NMR(CDCl3):δ8.30(d,2H,J3.1Hz,C6H4)、7.40(d,2H,C6H4)、5.80(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.60(dd,1H,J3’’,4’’3.3Hz,J4’’,5’’1.2Hz,H−4’’)、5.54(t,1H,J2,3=J3,42.1Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J2’’,3’’11.0Hz,J3’’,4’’3.4Hz,H−3’’)、5.23〜5.18(m,2H,J1’,2’7.8Hz,J2’,3’10.7Hz,J1’’,2’’3.7Hz,H−2’,H−2’’)、5.04(d,1H,H−1’’)、4.86(dd,1H,J3’,4’2.8Hz,H−3’)、4.72(d,1H,H−1’)、4.56〜4.52(m,2H,J6a,6b11.3Hz,H−6a,H−5’’)、4.42〜4.34(m,3H,H−2,H−6a’,H−6a’’)、4.16(dd,1H,J5,6a8.4Hz,H−6b)、4.12〜4.06(m,4H,H−5,H−4’,H−6b’,H−6b’’)、3.84〜3.79(m,2H,H−4,H−5’)、3.78(s,3H,CH3)、2.14(s,3H,CH3)、2.13(s,3H,CH3)、2.12(s,3H,CH3)、2.08(s,3H,CH3)、2.07(s,3H,CH3)、2.06(s,3H,CH3)、2.04(s,3H,CH3)、2.00(s,3H,CH3)、1.80(s,3H,CH3)。HRMS−ES m/z 1112.27015[M+Na]+、C45H55NO30Na+の要求値1112.27011。
【0171】
3-O-アセチル-4-O-[2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-6-O-[3-(2-メタクリロイルアミノ)プロピル]カルバモイル-α-D-グルコピラノース(29)。
化合物28(0.39g;0.36mモル)およびN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミノ塩酸塩(83mg;0.47mモル)を乾燥DCM(6mL)中に溶解し、トリエチルアミン(0.2mL)を添加した。混合物を、TLCが反応の完了を示すまで室温で4時間撹拌した。混合物を濃縮し、それに対してヘキサン−アセトン=11:9を溶媒として、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い、表題化合物29を白色泡として得た(0.377g;96%)。少量の試料を水−メタノール中でHPLC C−8カラムを用いてさらに精製した(生成物を50%メタノール中に負荷し、60%メタノールでカラムから溶出した)。
NMR(CDCl3):δ6.51〜6.47(m,1H,NH)、5.76(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.73(s,1H,H2C=C)、5.60(dd,1H,J3’’,4’’3.3Hz,J4’’,5’’1.2Hz,H−4’’)、5.51(t,1H,J2,3=J3,42.1Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J2’’,3’’11.0Hz,J3’’,4’’3.3Hz,H−3’’)、5.33(s,1H,H2C=C)、5.31〜5.29(m,1H,NH)、5.22〜5.18(m,2H,J1’,2’7.8Hz,J2’,3’10.7Hz,J1’’,2’’3.7Hz,H−2’,H−2’’)、5.04(d,1H,H−1’’)、4.84(dd,1H,J3’,4’2.9Hz,H−3’)、4.65(d,1H,H−1’)、4.56〜4.53(m,1H,H−5’’)、4.40(dd,1H,J5’,6a’6.3Hz,J6a’,6b’11.2Hz,H−6a’)、4.33〜4.35(m,1H,H−2)、4.27(dd,1H,J5,6a2.3Hz,J6a,6b11.8Hz,H−6a)、4.18〜4.14(m,2H,H−6b,H−6a’’)、4.12〜4.07(m,2H,J5’,6b’6.9Hz,H−6b’,H−6b’’)、4.07(d,1H,H−4’)、3.94〜3.90(m,1H,H−5)、3.84(dd,1H,H−5’)、3.76(s,3H,OCH3)、3.72〜3.69(m,1H,H−4)、3.41〜3.32(m,2H,NCH2)、3.28〜3.20(m,2H,NCH2)、2.14(s,3H,CH3)、2.12(2s,6H,CH3)、2.08(s,3H,CH3)、2.07(s,3H,CH3)、2.06(s,3H,CH3)、2.04(s,3H,CH3)、2.00(s,3H,CH3)、1.97(bs,3H,CH3)、1.77(s,3H,CH3)、1.72〜1.65(m,2H,CH2)。HRMS−ES m/z 1115.35409[M+Na]+、C46H64N2O28Na+の要求値1115.35378。
【0172】
4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-6-O-[3-(2-メタクリロイルアミノ)プロピル]カルバモイル-α-D-グルコピラノース(30)。
オクタ酢酸塩29(90mg;0.083mモル)を、乾燥メタノール(3mL)中に溶解し、1Mナトリウムメトキシド(165μL;2当量)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を濃縮し、残留物をD2O中に溶解した。溶液をCO2で中和し、凍結乾燥し、生成物30を白色泡として得た(60mg、98%)。
NMR(D2O):δ5.64(s,1H,H2C=C)、5.62(d,1H,J1,24.9Hz,H−1)、5.44(s,1H,H2C=C)、4.95(d,1H,J1’’,2’’3.9Hz,H−1’’)、4.51(d,1H,J1’,2’7.7Hz,H−1’)、4.41〜4.35(m,3H,H−3,H−6a,H−5’’)、4.25〜4.21(dd,1H,H−6b)、4.18〜4.16(m,1H,H−2)、4.05〜4.01(m,3H,H−5,H−4’,H−4’’)、3.95〜3.90(m,2H,H−5’,H−3’’)、3.85〜3.68(m,7H,J2’,3’10.2Hz,H−4,H−3’,H−6a,H−6b,H−2’’,H−6a’’,H−6b’’)、3.59(dd,H−2’)、3.28(t,2H,J6.9Hz,NCH2)、3.19(t,2H,J6.7Hz,NCH2)、1.93(s,3H,CH3)、1.78〜1.72(m,2H,CH2)、1.63(s,3H,CH3)。ES−HRMS m/z 787.23586([M−H+2Na]+);計算値C29H45N2O20Na2:787.23556。
【0173】
実施例13
化合物30とHPMA(HPMA−B1)との共重合体の合成
【化17】
【0174】
単量体30(39mg、0.04mモル)およびHPMA単量体(101mg;0.7mモル)を、脱気水(1mL)中に溶解し、アルゴンでパージした。過硫酸アンモニウム溶液(脱気水10μL中1mg)、次いでTEMED(1μL)を混合物に添加した。反応混合物を50℃で一晩インキュベートした。翌日、それを脱イオン水に対して透析し、水を5回交換し、次いでMilipore膜(0.45μm)を通して濾過し、凍結乾燥し、ポリマーを白色泡(85mg)として得た。
【0175】
実施例14
ヘテロ二官能性ポリマーPPM、PPIおよびEPI−156による、シガ毒素1(Stx1)の阻害
固相競合的阻害アッセイにおいて、PPM、PPIおよびEPI−156の、シガ毒素1型(Stx1)に対する阻害活性について、内因性タンパク質である血清アミロイドP成分(SAP)の存在下または不在下でアッセイした(図6および7を参照)。ポリスチレン製ELISAプレート(Maxisorp(商標)、NUNC、Rochester、NY)を、リン酸塩緩衝生理食塩水(pH7.2)中、16-メルカプトヘキサデカニル配糖体(Kitov P.I.ら、1998年 Carbohyd.Res.307(3−4):361−369頁)としての10μg/Mlの合成Pk−トリサッカライドでコートし、4℃で一晩インキュベートした。すべてのインキュベーション容量は100μL/ウェルであった。0.05%Tweenおよび2.5mM CaCl2(HBSTCa)を補充したHEPES緩衝生理食塩水(20mM HEPESおよび0.85%NaCL、pH7.2)を、各インキュベーション間での3回のプレートの洗浄に用いた。コーティングステップ後、HBSTCaに0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充し、すべてのインキュベーションで希釈剤として用いた。阻害剤を、シガ毒素1型(4ng/mL)および血清アミロイドP成分(20mg/mL、Calbiochem、San Diego、CA)またはHBSTCa+0.1%BSA(SAP陰性の形式用)と予備混合し、次いで室温で2時間のインキュベーションの間に混合物をウェルに添加した。毒素を、抗Stx1ハイブリドーマ(ATCC CRL 1794)由来のマウス腹水の1/1000の希釈物、次いでヤギ抗マウスIgG西洋わさびペルオキシダーゼ二次抗体(Kirkegaard and Perry Laboratories、Gaithersburg、MD)の1/2000の希釈物を用いて検出した。テトラメチルベンジジン(Sigma、MO)で10分間発色させ、反応を1Mリン酸で停止させ、吸光度を450nmの波長で測定した。
【0176】
阻害試験では、ポリマー足場上での2つの異なる官能基の予備配置が極めて重要であることが示された。「予備組織化された(pre−organized)」ポリマーPPIが、SAPの存在下で、Stx1に対する阻害活性において大幅な増大(6000倍)を示した。一方、「ランダム」ポリマーPPMでは、結合用官能基の取り込み度合いが実質的に高まるにもかかわらず、SAP依存性の活性がほとんど欠如している(図8および表1を参照)。この結果は、向かい合う複合体の誘導が活性の促進にとっての必要条件である一方、(例えばポリマーPPMにより)単にStx1の直近にもたらされるSAPが阻害に影響を及ぼすには不十分であることを示唆する。
【0177】
【表1】
【0178】
リガンド4が結合しているポリマーの種類により、SAP依存性の阻害力がさらに改善されることを示す。したがって、ポリマーEPI−156は、優れた阻害活性を示したが(IC50(SAPを伴う場合)=2〜4μg/L)、活性がPk−トリサッカライド単位に基づいて計算される場合、すべての予め報告されたPkを有するポリマーより優れるだけでなく、デンドリマー型Stx拮抗剤であるPk−STARFISHの阻害力よりも優れる(Kitov P.I.ら、2000年、Nature 403:669−672頁)。阻害へのSAPの関与の必要性は、SAPの不在下ではEPI−156における活性がほとんど検出されなかったという事実により強調される。
【0179】
実施例15
ヘテロ二官能性ポリマーHPMA−B1およびHPMA−B2によるシガ毒素1(Stx1)の阻害
上記実施例14と同様に、固相拮抗的阻害アッセイにおいて、HPMA−B1およびHPMA−B2のシガ毒素1型(Stx1)に対する阻害活性について、内因性タンパク質である血清アミロイドP成分(SAP)の存在下または不在下でアッセイした。これらの阻害試験によると、ポリマー足場上での2つの異なる官能基の予備配置および予備配置の最適化が極めて重要であることが再び示された。HPMA−B1およびHPMA−B2は、ヘテロ二官能性リガンドを高分子骨格に結合させるリンカーの長さが異なる。図9に示されるように、HPMA−B2はHPMA−B1(12.8μg/mL)よりも大幅に小さいIC50値(0.065μg/mL)を有し、これはポリマー上でのヘテロ二官能性リガンドの予備配置の最適化が重要であることを示す。
【0180】
実施例16
Vero細胞の細胞毒性アッセイにおけるEPI−156のインビトロでの有効性
BAIT2、EPI−156およびEPI−153をそれぞれ、二重蒸留した脱イオン水中に溶解した。精製したStx1およびStx2のストック溶液のそれぞれを、未補充MEM中で、400ng/mlおよび2mg/mlの濃度に調製した。各ポリマー溶液の未補充MEM中の連続希釈物を、96ウェルマイクロタイタープレートを用いて調製した。次いで、Stx1またはStx2ストック溶液5mLを、希釈プレート内の適切な列の各ウェル(80mLの最終容量)に添加した。希釈プレートの各ウェル内の溶液を完全に混合し、マイクロタイタープレートを37℃で1時間インキュベート後、各ウェルから20mLを、コンフルエントなVero細胞単層およびウシ胎仔血清を補充したMEM200mLを有する96ウェルマイクロタイタープレートの対応するウェルに移した。Vero細胞のマイクロタイタープレートを、5%CO2/95%大気の雰囲気下、37℃のインキュベーター内でさらに48時間インキュベートした。次いで、Armstrong G.D.ら、1991年 J.Infect.Dis.164:1160−1167頁に記載のように、Vero細胞単層をメタノールで固定し、細胞毒性を測定した。
【0181】
Vero細胞毒性アッセイの結果を図10に示す。ヘテロ二官能性BAIT2は、SAPの存在下で十価リガンドDAISY−1/8と同等の活性を示す。さらに、高分子足場上に存在する場合、BAIT2の活性が少なくとも3倍に増幅され、EPI−156にとって前例のないレベルの1ng/mLに達した。ヨウ素125での放射性標識はその活性を実質的に変化させなかった。ラクトース類似体EPI−153は、3mg/mLでVero細胞の保護を全く示さなかった(データは示さず)。
【0182】
実施例17
HuSAPトランスジェニックマウスにおける、EPI−156のインビボでの有効性
先行技術である化合物BAIT2(Kitov P.I.ら、2008年、Angew.ChemieIntl.Ed.47:672−676頁)およびそのポリマー類似体(EPI−156)について、インビボで試験した。不活性なラクトース二糖配列を有することからStx1と相互作用しないポリマーEPI−153(図11を参照)を、ネガティブコントロールとして用いた。一方、DAISY−1/8、十価 Pk−デンドリマーがシガ様毒素、Stx1およびStx2に対する保護をインビボで示すことが以前に報告されているので(Mulvey G.L.、2003年、J.Infec.Dis.187:640−649頁)、それをポジティブコントロールとして用いた。
【0183】
マウス中毒モデル(Armstrong G.D.ら、2006年、J.Infect.Dis.193:1220−1124頁)では、Stx1や先行技術および本発明の様々な阻害ポリマーの投与後にマウスの生存が測定される。HuSAPマウスに、Stx1(20ng/g)を、尾静脈を介して静脈内注射した。それらにおけるシガトキセミアの徴候について、4時間ごとに監視した。シガトキセミアの徴候を示すマウスを安楽死させた。
【0184】
図12で見られるように、シリーズ1は、0.5mg/マウスでのDAISY1/8の投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。シリーズ2は、50μg/マウスでのEPI−156の投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。シリーズ3は、0.6mg/マウスでのEPI−153および600μg/マウスでのHuSAPの投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。シリーズ4は、50μg/マウスでのEPI−156および600μg/マウスでのHuSAPの投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。シリーズ5は、4mg/マウスでのBAIT2の投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。
【0185】
すべてのHuSAPトランスジェニックマウスは、わずか50μg/マウスでのEPI−156と同時投与される場合、致死性の20ng/gのStx1の注射から救われた。すべての他の試験化合物の中でもDAISY−1/8単独はマウス数匹における徴候の発現を遅延させることによっていくらか有効であり、そこでは10倍多い量のDAISY−1/8が必要であることが示された。一価リガンドBAIT2は50倍高い濃度であっても効果を示さなかった。
【0186】
実施例18
標識EPI−156の器官局在化
これらの試験においては、EPI−156をチロシン残基の付加により修飾し、ヨード化を可能にした(図11を参照)。放射性標識EPI−156(EPI−156−125I)およびシガ毒素(Stx1−125I)の器官局在化を、ヒトSAPを発現するトランスジェニックマウス(HuSAPマウス)への静脈内注射後に測定した(Zhao X.ら、1992年、Journal of Biochemistry 111:736−738頁)。HuSAPマウスは、900ngのEPI−156−125I(1.14×107CPM/μg)を静脈内の尾静脈注射を介して受け、それらを4時間後に安楽死させた。安楽死後、異なる器官内で放射活性を計数した。
【0187】
図13Aはこのアッセイからの結果を示す。黒バーは、EPI−156−125IおよびHuSAPの混合物の器官分布を示す。一方、白バーは、EPI−156−125I、HuSAPおよびStx1の混合物の器官分布を示す。図13Aからは、ヘテロ二官能性高分子リガンドが肝臓に誘導されることが認められうる。事実、EPI−156−125Iの95%超は、特に肝臓内に局在化された。Stx1の同時注射による、4時間後に肝臓内に見出されるポリマーの増加量はごくわずかであった。
【0188】
図13Bでは、マウスは、20ng/gのStx1−125I(4.81×106CPM/μg)を、尾静脈注射を介して受けた。黒バーは、Stx1およびHuSAPの混合物の器官分布を示す。一方、白バーは、Stx1、HuSAPおよび非標識EPI−156の混合物の器官分布を示す。図13Bから、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの不在下では毒素Stx1の腎臓および肺への誘導が認められたが、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの存在下では毒素Stx1が、腎臓および肺に誘導されずに肝臓に誘導されることが認められうる。
【0189】
125I−標識Stx1がヒトHuSAPにおけるトランスジェニックマウスに注射される場合、10%の放射活性が肝臓内で見出された(図13Bを参照)。毒素の大部分が、肺および腎臓だけでなく、脳(5%)にも局在化された。ヘテロ二官能性ポリマーEPI−156の同時注射により、これらの重要器官由来の毒素のほぼ70%が肝臓に移された(図13Bを参照)。
【0190】
ヘテロ二官能性ポリマーEPI−156が注射による、毒素の器官分布を変更する能力は、マウス中毒モデルにおいてEPI−156で処理されたマウスの生存率が100%であることを説明しうる(図12を参照)。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年3月23日に出願された米国仮特許出願第60/896,878号明細書の優先権を主張するものであり、その全てが本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、新規の多価ポリマーを有するヘテロ二官能性リガンド、それを合成するための方法、その組成物、ならびにその治療および非治療用途に関する。
【背景技術】
【0003】
異なる生物学的要素の間の特異的相互作用は多数の生物学的プロセスの中核を成し、それは限定されないが、細胞間コミュニケーション、環境に対する細胞応答、細胞分化、細胞増殖、細胞遊走、シグナル伝達、代謝プロセス、アポトーシスおよび免疫応答を含む。多くの場合、これらの重要なプロセスおよび応答は、特異的リガンドと特異的標的との相互作用を介して媒介される。これらのリガンドおよび標的は、限定はされないが、タンパク質、DNA、RNA、炭水化物、脂質、および細胞を含みうる。
【0004】
様々なリガンドとそれらの標的との間の相互作用の重要性は、これらの相互作用の機能停止またはこれらの相互作用の調節の機能停止により引き起こされる多数の障害により強調される。これらの特異的相互作用についてのより深い理解が得られると、治療および非治療用途の双方のための、それらの制御および利用が可能となると考えられる。
【0005】
最近、多数の研究において、様々な生物学的要素(biological entiies)と相互作用し、かつ感染性および非感染性疾患の治療を支援することが可能な新規クラスのリガンドの設計および合成が注目されている。この新規クラスのリガンドは、ホモおよびヘテロ二官能性リガンドを含む。これらのリガンドは、標的化された生体細胞または分子に結合して三元複合体を形成し、標的化された細胞または分子の除去が促進されるように、内因性タンパク質または抗体にも結合する。かかる二官能性リガンドは、細菌およびウイルス粒子やウイルス感染細胞だけでなく、不要な細胞、タンパク質、抗体、および種々の消耗性疾患に関与する他の生体分子を除去するための新規のアプローチを提供する。この超分子のタンパク質凝集体は、治療および非治療用途の双方のための刺激的な機会を提供する。
【0006】
これまで既知の二官能性リガンドは、典型的にはそれらの各標的に結合するための少なくとも2つの官能基を有する。ホモ二官能性リガンドでは、2つの結合用官能基は類似または同一であり、互いに直接にまたはリンカーを介して結合され、かつ同様の標的の凝集を促進する(Pepys、M.B.国際公開第03/013508号パンフレット;Bundleら、米国特許出願公開第2007/0042936号明細書)。
【0007】
ヘテロ二官能性リガンドにおいては、2つの結合用官能基は互いに異なっており、互いに直接にまたはリンカーを介して結合され、かつ異なる標的の特異的な凝集を促進する(Shokat K.M.およびSchultz P.G.、1991年 J.Am.Chem.Soc.113:1861−1862頁;Pepys M.B.、国際公開第03/013508号パンフレット;Mullis K.B.、米国特許出願第10/178,046号明細書および米国特許出願第10/696,770号明細書;Liu J.ら、2005年 J.Am.Soc.127:2044−2045頁)。Liuらは、コレラ毒素および先天性免疫系の内因性タンパク質であるヒト血清アミロイドP成分(SAP)の双方に結合するヘテロ二官能性リガンドを開示している。SAPは、肝臓を介する三元複合体の循環からの除去を誘導する。コレラ毒素の阻害は、三元複合体中ではヘテロ二官能性リガンドおよび毒素のみの二元複合体中に見られる場合よりも、3桁大きいことが見出された。Solomonらによる報告によると(2005年 Organic Letters 7:4369−4372頁)、ヘテロ二官能性リガンドがSAPとの大腸菌(E.coli)シガ様毒素の特異的凝集を媒介する場合、三元複合体の形成に起因する阻害の増大は、ヘテロ二官能性リガンド中でも見られる。
【0008】
しかしながら、現在既知のホモおよびヘテロ二官能性リガンドは、多数の重大な欠点や制限を有する。第1に、現在既知のリガンドの多数は、投与後速やかに分解される。この急速な分解は、これらのリガンドの潜在的な治療効果を著しく損なう。第2に、ホモおよびヘテロ二官能性リガンドの多くの結合は、エントロピーコストによって損なわれうる。多くの場合、現在既知の二官能性リガンドは、標的に結合していない状態において相当高レベルの柔軟性を有し、かつ標的へ結合すると、この柔軟性が大幅に低下する。柔軟性の低下はエネルギー的に好ましくなく、結合効率の大きな妨げとなりうる。第3に、ヘテロ二官能性リガンドは、結合価を利用することがない。現在、多くの試験によって、結合価が、重要な生物学的プロセスでの特異的相互作用の重要な特徴でありうることが示されている。事実、現在では多数の重要な生物学的プロセスは、複数のリガンドと標的受容体の多重結合部位との同時相互作用に起因すると考えられている。第4に、三元複合体を形成するためのヘテロ二官能性リガンドの使用は、標的の一方の濃度に応じて制限されうる。これは治療用途におけるこれらのリガンドの使用を損なう。第5に、リガンド上の結合用官能基は、標的に対して強力な結合を示す官能基のみに制限されうる。
【0009】
最近では、これらの課題の一部を解決するために、様々なリガンドが高分子鎖上に共有結合されている。2つの異なる結合用官能基が高分子鎖上の様々な位置に個別かつ独立に固定される高分子リガンドの例が公知である(図1を参照)(Krishnamurthy V.M.ら、2006年、Biomaterials 27:3663−3674頁;Krishnamurthy V.M.ら、国際公開第2007/016556号パンフレット;Whitesides、G.ら、国際公開第98/46270号パンフレット;Kiesslingら、米国特許第2003/0125262号明細書)。しかし、これらのポリマーもまた、多数の深刻な欠点や制限を有する。まず第1に、高分子リガンドの各受容体に対する結合力は、他の受容体が存在するか否かによって影響を受けない。現在既知の高分子リガンドが2つの異なる生物学的受容体を互いに引き付けうる一方、2つの異なるリガンドをポリマー上に独立に固定することにより、リガンドは確定した超分子複合体の形成に起因してエントロピーの節約を利用することができない。これは、これらのポリマーの治療的および非治療的有用性にとっての大きな妨げとなりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、効率的使用により三元複合体のインビトロおよびインビボでの形成を可能にし、一方で上記課題の一部を解決する多価ポリマーを必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広範な態様によると、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型と、に結合するための、多価ヘテロ二官能性ポリマーが提供される。ここでポリマーは、それに結合される複数の予備配置されたヘテロ二官能性リガンドを含む。ヘテロ二官能性リガンドは、生物学的標的に結合可能な第1の官能基およびエフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を含む。ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマーと生物学的標的とエフェクター鋳型とで三元複合体を形成するように、ポリマーに予備配置される。第1の官能基および第2の官能基は、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。生物学的標的は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。エフェクター鋳型は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択されうる。一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は共通の原子に結合され、ここで共通の原子は直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。他の実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は直接にまたは任意のリンカーを介して互いに結合され、かつ第1の官能基または第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。
【0012】
本発明の別の広範な態様によると、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、下記式で表される多価ヘテロ二官能性ポリマーが提供される。
【化1】
【0013】
式中、「X」は多価ポリマーの高分子骨格を示し;「MO」はヘテロ二官能性リガンドを示す。ここで「M」は、生物学的標的に結合可能な第1の官能基を示し;「O」は、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を示す。「Y」は、「MO」を、高分子骨格またはその内部に結合させる任意のリンカーを示し;「n」は、意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドを、ポリマー内に存在させるように選択される整数を示す。
【0014】
一実施形態では、「n」は、ポリマー上のヘテロ二官能性リガンドの数が、生物学的標的およびエフェクター鋳型上の受容体の数(いずれかより大きい方)と同じかまたはそれより大きいように選択される。
【0015】
ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択されうる。
【0016】
一実施形態では、「M」は、高分子骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、「M」は、高分子骨格またはその内部にリンカー「Y」を介して結合される。一実施形態では、「O」は、高分子骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、「O」は、高分子骨格またはその内部にリンカー「Y」を介して結合される。一実施形態では、「M」および「O」は、リンカーにより互いに結合される。
【0017】
本発明の別の広範な態様によると、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、下記式で表される多価ヘテロ二官能性ポリマーが提供される。
【化2】
【0018】
式中、「X」は、多価ポリマーの高分子骨格を示し;「M−N−O」は、ヘテロ二官能性リガンドを示す。「M」は、生物学的標的に結合可能な第1の官能基を示し;「O」は、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を示す。「N」は、「M」および「N」に結合するリンカーを示す。「Y」は、ヘテロ二官能性リガンドを、高分子骨格またはその内部に結合させる任意のリンカーを示し;「n」は、意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドを、ポリマー内に存在させるように選択される整数を示す。
【0019】
一実施形態では、「n」は、ポリマー上のヘテロ二官能性リガンドの数が、生物学的標的およびエフェクター鋳型上受容体の数(いずれかより大きい方)と同じであるように選択される。
【0020】
ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択されうる。
【0021】
本発明の他の広範な態様によると、生体系における生物学的標的の生物学的活性に作用するための方法が提供される。この方法は、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーを、生体系に導入するステップを含む。
【0022】
ヘテロ二官能性リガンドは、生物学的標的に結合可能な第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基とを含む。ここで、ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマーと、生物学的標的と、エフェクター鋳型とで、三元複合体を形成するようにポリマー上に予め配置される。
【0023】
第1の官能基および第2の官能基は、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0024】
生物学的標的は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0025】
エフェクター鋳型は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0026】
一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は共通の原子に結合され、ここで共通の原子は直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は直接にまたは任意のリンカーを介して互いに結合され、かつ第1の官能基または第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。
【0027】
本発明の他の広範な態様によると、生体系における生物学的標的の存在を検出するための方法が提供される。この方法は、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーを、生体系に導入するステップを含む。
【0028】
ヘテロ二官能性リガンドは、生物学的標的に結合可能な第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基とを含む。ここで、ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマーと、生物学的標的と、エフェクター鋳型とで、三元複合体を形成するようにポリマー上に予備配置される。
【0029】
第1の官能基および第2の官能基は、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ビタミン、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0030】
生物学的標的は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0031】
エフェクター鋳型は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0032】
一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は共通の原子に結合され、ここで共通の原子は直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は直接にまたは任意のリンカーを介して互いに結合され、かつ第1の官能基または第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。
【0033】
本発明の他の広範な態様によると、生体系における生物学的標的の生物学的活性に作用するための医薬組成物が提供される。この医薬組成物は、生物学的活性を示す生物学的標的と、生物学的標的の生物学的活性に作用しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーと;薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む。
【0034】
ヘテロ二官能性リガンドは生物学的標的に結合可能な第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基とを含む。ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマーと、生物学的標的と、エフェクター鋳型とで、三元複合体を形成するようにポリマー上に予備配置される。
【0035】
第1の官能基および第2の官能基は、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ビタミン、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0036】
生物学的標的は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0037】
エフェクター鋳型は、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる。
【0038】
一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は共通の原子に結合され、ここで共通の原子は直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。一実施形態では、第1の官能基および第2の官能基は直接に互いに結合され、かつ第1の官能基または第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介してポリマー骨格またはその内部に結合される。
【0039】
本発明の別の広範な態様によると、多価ヘテロ二官能性ポリマー上に、複数のヘテロ二官能性リガンドを、予備配置するための方法が提供される。ヘテロ二官能性リガンドは、ポリマー上の異なる結合点で結合される。かつ、ヘテロ二官能性リガンドは、三元複合体を形成するように、生物学的標的に結合するための第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合するための第2の官能基を含む。
【0040】
この方法は、生物学的標的およびエフェクター鋳型の分子表現を、分子モデリングまたは画像化ソフトウェアを用いて整列させるステップと;エフェクター鋳型上の、2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離を測定するステップと;生物学的鋳型上の、2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離を測定するステップと;生物学的標的およびエフェクター鋳型に結合される場合に、第1の官能基と直近の第2の官能基とを隔てる平均距離を測定するステップと、を含む。
【0041】
ヘテロ二官能性リガンドは、第1の官能基と第2の官能基との平均間隔が、三元複合体内で生物学的標的とエフェクター鋳型とが立体的に衝突することなく最小化されるように、多価ヘテロ二官能性ポリマー上に予備配置される。
【0042】
一実施形態では、生物学的標的およびエフェクター鋳型の結合部位のトポロジーは、類似または同一である。
【0043】
一実施形態では、第1の官能基と直近の第2の官能基との間隔は、生物学的標的およびエフェクター鋳型に結合される場合、第1の官能基を第2の官能基に結合させる1つ以上のリンカーの長さを変化させることにより最適化される。
一実施形態では、第1の官能基と直近の第2の官能基との平均間隔は、生物学的標的およびエフェクター鋳型に結合される場合、第1の官能基を第2の官能基に結合させる任意のリンカーの長さに等しいかまたはそれよりも短い。
一実施形態では、第1の官能基と直近の第2の官能基との平均間隔は、生物学的標的およびエフェクター鋳型に結合される場合、第1の官能基および第2の官能基に結合されるリンカーの長さを変化させることにより最適化される。
【0044】
一実施形態では、ヘテロ二官能性リガンドは、「1つのヘテロ二官能性リガンドの結合点を近接するヘテロ二官能性リガンドの結合点から隔てる平均距離」と「ヘテロ二官能性リガンドをポリマーまたはその内部に結合させる任意のリンカーの2倍の長さ」と「第1の官能基を第2の官能基に結合させる任意のリンカーの長さ」との和が、以下の2条件の両方を満たすように多価ヘテロ二官能性ポリマー上に予備配置される。
エフェクター鋳型上の2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離、あるいは生物学的鋳型上の2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離の、いずれか長い方よりも長いこと。
第1の官能基を第2の官能基に結合させるリンカーの長さが、「1つのヘテロ二官能性リガンドの結合点を近接リガンドの結合点から隔てる平均距離」と「第1の官能基を第2の官能基に結合させるリンカーの長さ」と「ヘテロ二官能性リガンドをポリマーまたはその内部に結合させるリンカーの2倍の長さ」との和よりも短いこと。
【0045】
本発明の他の広範な態様によると、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの、治療用途への使用についての提供がなされる。治療用途とは、癌、細菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、真菌感染、自己免疫疾患、遺伝性および後天性代謝疾患、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される疾患の治療である。
【0046】
本発明の別の広範な態様によると、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの、非治療用途への使用についての提供がなされる。非治療用途とは、診断、地下水中の細菌毒素の検出、血中の抗体の検出、癌細胞の検出、および腫瘍の造影からなる群から選択される。
【0047】
本発明は、その構成および動作方法の双方に関し、以下の説明や様々な実施形態の添付の図面(同様の数字がいくつかの図面全体で用いられる)の参照により最もよく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】先行技術のポリマーの略図である。
【図2】本発明において、生物学的標的とエフェクター鋳型と多価ポリマーとで、三元複合体を形成する略図である。
【図3】本発明の多価ポリマーの一実施形態の略図であり、各ヘテロ二官能性リガンドは第1の官能基および第2の官能基を含む。この実施形態では、各官能基は共通の原子にリンカーを介して結合される。
【図4】本発明の多価ポリマーの一実施形態の略図であり、各ヘテロ二官能性リガンドは第1の官能基および第2の官能基を含む。この実施形態では、各官能基は、任意のリンカーを介し、共通の原子の使用を伴わずに他方に結合される。
【図5A】本発明の一実施形態における多価ポリマーの設計の原理の一部を図示する略図である。本発明の多価ポリマーは、利用可能な構造情報に基づく分子モデリングまたはタンパク質の相同性モデリングを用いて設計されうる。構築物の分子寸法は、生物学的標的およびエフェクター鋳型の結合部位の分子寸法に一致するように最適化される。
【図5B】本発明の一実施形態における多価ポリマーの設計の原理の一部を図示する略図である。本発明の多価ポリマーは、利用可能な構造情報に基づく分子モデリングまたはタンパク質の相同性モデリングを用いて設計されうる。構築物の分子寸法は、生物学的標的およびエフェクター鋳型の結合部位の分子寸法に一致するように最適化される。
【図6A】ヘテロ二官能性ポリマーによるStx1の阻害を測定するために用いられるELISA阻害プロトコルを、概略的に説明する。C16アグリコン(16−メルカプトヘキサデカニル配糖体)に結合された合成Pk−トリサッカライドの構造の略図である。
【図6B】ヘテロ二官能性ポリマーによるStx1の阻害を測定するために用いられるELISA阻害プロトコルを概略的に説明する。ELISA阻害アッセイについて記載する。ウェルは、C16アグリコン(16−メルカプトヘキサデカニル配糖体)に結合された合成Pk−トリサッカライドでコートされた。次いで、阻害剤が、SAP(20μg/mL)の存在下および不在下で、Stx1(4ng/mL)とともに同時インキュベートされた。プレートに結合された毒素は、ウサギ抗Stx1ポリクローナル血清、次いでヤギ抗ウサギ西洋わさびペルオキシダーゼ二次抗体を用いて検出された。次いで、テトラメチルベンジジン基質で発色させた。
【図7】先行技術のポリマーPPMおよび本発明のポリマーPPIの構造を図示する略図である。
【図8】先行技術のポリマーPPMおよび本発明のポリマーPPIによる、血清アミロイドP(20mg/mL)の存在下または不在下の、Pk−16−メルカプトヘキサデカニル配糖体ELISAプレート(10μg/mLで一晩コート)への結合の、シガ毒素1型(Stx1、4ng/mL)によるCa2+依存性の阻害を比較する。 シリーズ1:SAPの存在下でのPPM。シリーズ2:SAPの不在下でのPPM。シリーズ3:SAPの存在下でのPPI。シリーズ4:SAPの不在下でのPPI。 図示するように、PPMの活性は、SAPの存在による作用を受けない。さらに、PPIの阻害活性は、SAPの存在下ではSAPの不在下よりも6000倍高い。
【図9】本発明のポリマーHPMA−B1およびHPMA−B2による、血清アミロイドP(20μg/mL)の存在下における、Pk−16−メルカプトヘキサデカニル配糖体ELISAプレート(10μg/mLで一晩コート)への結合の、シガ毒素1型(Stx1、4ng/mL)によるCa2+依存性の阻害を比較する。 白四角(シリーズ1)は、SAPの存在下で、HPMA−B1を用いて収集されたデータに対応する。黒四角(シリーズ2)は、SAPの存在下で、HPMA−B2を用いて収集されたデータに対応する。HPMA−B2は、HPMA−B1(12.8μg/mL)よりも極めて小さいIC50値(0.065μg/mL)を有する。このことは、ポリマー上でのヘテロ二官能性リガンドの予備配置における最適化の重要性を示す。
【図10】Vero細胞毒性中和アッセイの結果を示す。(約2.91ng/mLのLD100での)Stx1を、5%CO2/95%大気の雰囲気中、ウシ胎仔血清が補充されたMedium Eagle Medium(MEM)内での連続希釈された阻害剤およびSAP(10μg/mL)との混合物中のコンフルエントな細胞培養物に添加した。 シリーズ1:本発明の多価ヘテロ二官能性リガンドEPI−156の存在下で行われたVero細胞毒性中和アッセイの結果。シリーズ2:先行技術分野において公知の、EPI−156の一価類似体であるBAIT2の存在下で行われたVero細胞毒性中和アッセイの結果。シリーズ3:先行技術分野において公知の、半径方向に対称なデンドリマーを有するホモ十量体Pk−トリサッカライドDAISY1/8の存在下で行われたVery細胞毒性中和アッセイの結果。
【図11】BAIT2、EPI−156およびEPI−153の分子構造の略図である。ここでEPI−156は、ヨード化を可能にするチロシン残基の付加を伴う修飾形態で示される。
【図12】Stx1や、先行技術および本発明の種々の阻害ポリマーの投与後に、マウスの生存を測定するマウス中毒モデルから得られたデータを示す。HuSAPマウスは、致死用量(LD50)のStx1を、尾静脈を介して静脈内に注射され、4時間ごとにシガトキセミア(shigatoxemia)の徴候について観察された。シガトキセミアの徴候を示すマウスは安楽死された。 シリーズ1は、DAISY1/8(先行技術のPkを有するデンドリマー)の投与(投与量500μg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。シリーズ2は、EPI−156(本発明のポリマー)投与(投与量50μg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。シリーズ3は、EPI−153(EPI−156の不活性なトランケート型リガンド類似体)の投与(投与量50μg/マウス)と、HuSAPの投与(投与量600μg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。シリーズ4は、EPI−156の投与(投与量50μg/マウス)、およびHuSAPの投与(投与量600μg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。シリーズ5は、BAIT2の投与(投与量2mg/マウス)後の、マウスのパーセント生存率を示す。 確認され得るとおり、本発明のポリマーEP−156単独の静脈内投与は、トランスジェニックマウスにおいて発現されるStx1と、EP−156と、HuSAPとで三元複合体を形成し、マウスをStx1の毒性効果から十分保護する。
【図13A】ヒトSAPを発現するトランスジェニックマウス(HuSAPマウス)への静脈内注射の4時間後に測定された、放射性標識EPI−156(EPI−156−125I)およびシガ毒素(Stx1−125I)の器官分布を示す。 図13Aでは、HuSAPマウスは、尾静脈注射を介して、900ngのEPI−156−125I(1.14×107CPM/μg)を受けた。黒バーは、EPI−156−125IとHuSAPとの混合物の器官分布を示す。白バーは、EPI−156−125IとHuSAPとStx1との混合物の器官分布を示す。図13Aから、ヘテロ二官能性高分子リガンドが肝臓に誘導されることが認められうる。
【図13B】ヒトSAPを発現するトランスジェニックマウス(HuSAPマウス)への静脈内注射の4時間後に測定された、放射性標識EPI−156(EPI−156−125I)およびシガ毒素(Stx1−125I)の器官分布を示す。 図13Bでは、マウスは、尾静脈注射を介して、20ng/gのStx1−125I(4.81×106CPM/μg)を受けた。黒バーは、Stx1とHuSAPとの混合物の器官分布を示す。白バーは、Stx1とHuSAPと非標識EPI−156との混合物の器官分布を示す。図13Bからは、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの不在下で、腎臓および肺に誘導されることが認められるのに対して;本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの存在下で、毒素Stx1が肝臓に誘導されることが認められた。これはこれらのポリマーの保護作用を説明しうると思われる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、多価ヘテロ二官能性ポリマーの発見、それを合成するための方法、その組成物、ならびにその治療および非治療用途に関する。
【0050】
本発明の多価ポリマーの主な特徴は、それに結合された複数のヘテロ二官能性リガンドの存在である。各ヘテロ二官能性リガンドは、2つの異なる結合官能基を含む(図2を参照)。ヘテロ二官能性リガンド上の各結合官能基は、各々が異なる生物学的要素に結合しうるように予備配置される。これは、ポリマー上の異なる位置に結合された2つの独立した単官能性(unifunctional)官能基を与える先行技術の高分子リガンドとは異なる(図1を参照)。
【0051】
驚くべきことに、発明者らは、本発明の多価ポリマー上にヘテロ二官能性リガンドの2つの結合官能基を予備配置することで、ポリマー上の異なる位置に結合された2つの独立した単官能性基を有する公知のポリマーの使用によっては再現できない、安定性を有する三元複合体(図1を参照)の形成を可能にすることを見出している。理論に拘束されないが、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの使用を通じて、標的受容体と数個の一価リガンドの複製体とで複合体を形成したときに失われた結合エントロピーの一部を回復させることにより、多価結合効果(multivalency effect)および超高分子効果(supermolecula effect)の双方の効果が作用する。これらの多価ポリマーは、多価結合効果および超高分子効果が互いに補完し、かつ結合自由エネルギーにおける実質的利得を見込みうることから特に有利である。これは、ポリマーの1つの生物学的要素への結合が、別の生物学的要素への結合の強化に繋がる点で特に有利でありうる。
【0052】
図2に示されるように、本発明の多価ポリマー1は、多価ポリマー1に任意のリンカー3を介して結合された複数のヘテロ二官能性リガンド2を含む。各ヘテロ二官能性リガンド2は、三元複合体8が形成されうるように、生物学的標的5に結合可能な第1の官能基4と、エフェクター鋳型7に結合可能な第2の官能基6とを含む。理論に拘束されないが、多価ポリマー1の生物学的標的5およびエフェクター鋳型7への結合による三元複合体8の形成することで、一方の生物学的要素を他方の生物学的要素によって検出すること、阻害すること、除去すること、および/または分解することを促進する。
【0053】
図3および図4に示されるように、ヘテロ二官能性リガンドは、第1の官能基4および第2の官能基6を、種々の形態で提示しうる。以下に考察するように、形態の選択は、意図される用途および機能に依存することになる。図3に示される一実施形態では、ヘテロ二官能性リガンド2の第1の官能基4および第2の官能基6は、それぞれリンカー9Aおよび9Bを介して共通の原子9に結合される。共通の原子9は、任意のリンカー3を介して多価ポリマー1に結合されうる。当然ながら当業者に理解されるように、共通の原子9は、リンカー3を用いることなく、多価ポリマー1に直接結合されてもよい(図示せず)。
【0054】
図4に示される別の実施形態では、第1の官能基4および第2の官能基6は共通の原子9を用いずに任意のリンカー9Cを介して互いに結合され、かつ第1の官能基4または第2の官能基6のいずれかは、任意のリンカー3を介して多価ポリマー1に結合されうる。当然ながら当業者に理解されるように、得られる第1の官能基4と第2の官能基6との複合体は、リンカー3を用いることなく多価ポリマー1に直接結合されてもよい(図示せず)。
【0055】
上記考察のように、多価ポリマー1上への、ヘテロ二官能性リガンド2の第1の官能基4および第2の官能基6の予備配置は、高い結合効率を得るために重要である。ポリマー上でのヘテロ二官能性リガンドの2つの官能基の予備配置は、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7に依存することになる。
【0056】
一実施形態では、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7は、相対位置およびそれらの結合部位の配置の観点では、酷似しているかまたはトポロジー的に同一である。この類似性を利用して、本発明のポリマーに結合されるヘテロ二官能性リガンド2の第1の官能基4および第2の官能基6を予備配置することが可能である。これらの類似性を利用すると、三元複合体の形成が最大となるように本発明のポリマーを設計することができる。
【0057】
当業者は、第1の官能基4および第2の官能基6の予備配置を最適化させて、適切に三元複合体を形成するためには、上記任意のリンカーの長さを変化させるとともに、ポリマー上でのヘテロ二官能性リガンドの近接結合点を隔てる平均距離を変化させることが必要であることを理解するであろう。リンカーの長さおよびヘテロ二官能性リガンドの近接結合点を隔てる平均距離は、当該技術分野で公知の化学合成技術を用いて容易に変更可能である。当業者はまた、得られるポリマーの生物学的活性を、多種多様なアッセイを用いて測定することができ、そのアイデンティティが、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7のアイデンティティに依存することになることを理解するであろう。
【0058】
別の実施形態では、生物学的標的5および/またはエフェクター鋳型7における構造データが利用可能である場合には、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7の既知または予測される構造および/または結合部位を調べることにより、第1の官能基4および第2の官能基6を適切に予備配置することができる。前記構造は、当該技術分野で公知の多種多様な分子モデリングツールを用いて予測可能である。
【0059】
図5Aに示されるように、生物学的標的5および/またはエフェクター鋳型7における既知の構造データを考慮して本発明の多価ポリマーを設計する場合、少なくとも以下の3つの距離、すなわち「エフェクター鋳型7上の2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離10」、「生物学的標的5上の2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離11」、ならびに「第1の官能基4および直近の第2の官能基6がそれらの各結合部位に結合されるときのそれらを隔てる平均距離12」が考慮されるべきである。好ましくは、距離12が最小になるように、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7を配置する。当然ながら当業者に理解されるように、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7の配置は、当該技術分野で公知の分子モデリングまたは画像化ソフトウェアを用いて調整されうる。距離12は、得られる三元複合体で生物学的標的5とエフェクター鋳型7とが衝突しないように、最小であるべきである。当業者に理解されるように、すべての3つの距離は、当該技術分野で現在公知の様々な分子モデリングまたは画像化ソフトウェアを用いて測定されうる。
【0060】
一実施形態では、生物学的鋳型5およびエフェクター鋳型7における構造データが利用可能な場合、距離10、距離11および距離12は、ヘテロ二官能性リガンドを多価ポリマー1上に予備配置し、安定な三元複合体の形成を促進するための一般的指針として用いられうる。第1の官能基4および第2の官能基6を互いに関連させた空間的な配置手法の決定においては、「リンカー9Aおよびリンカー9Bの長さの和」または「リンカー9Cの長さ」が、距離12の長さ以上であるべきである。また、多価ポリマー1の設計には、「一方のヘテロ二官能性リガンドを、もう一方のヘテロ二官能性リガンドから隔てる距離13」および「リンカー3の長さ」が必要とされる(図5Bを参照)。好ましくは、「距離13と、リンカー3の2倍の長さと、リンカー9Aの2倍の長さとの和」は、距離10または距離11(いずれかより長い方)よりも長い必要がある。一実施形態では、「距離13とリンカー3の2倍の長さとリンカー9Cの長さとの和」は、距離10または距離11(いずれかより長い方)よりも長い必要がある。
【0061】
構造データが利用可能な場合、他の情報も用いつつ、ヘテロ二官能性リガンド内での2つの官能基の設計および予備配置を補助することが可能である。好ましくは、リンカー9Aおよびリンカー9Bの長さの和は、「距離13の長さと、リンカー9Aの2倍の長さと、リンカー3の2倍の長さとの和」よりも短い必要がある。さらに、リンカー9Aおよび9Bの長さの和は、「距離13の長さと、リンカー9Bの2倍の長さと、リンカー3の2倍の長さとの和」よりも短い必要がある。別の実施形態では、リンカー9Cの長さは、「距離13の長さと、リンカー9Cの長さと、リンカー3の2倍の長さとの和」よりも短い必要がある。
【0062】
上記の様々な平均距離を測定する場合、2つの官能基および/またはリガンドに結合する任意の断片またはリンカーが、拡張された高次構造(extended conformation)であると仮定することが好ましい。その基準点は、各官能基および/または各リガンドの質量中心である。当業者が理解するように、柔軟な分子の拡張された高次構造(extended conformation)とは、2つの基準点の距離が最大と考えられる距離となる構造である。上記考察のように、これらの距離は分子モデルの使用を通じて評価でき、そこでは適切な共有結合の長さおよび角度が考慮されうる。
【0063】
さらに、共重合反応および予備形成されるポリマーの修飾に用いられる反応は、本質的にランダムである。そのため、距離13は、ヘテロ二官能性リガンドのポリマーへの取り込みの速度を介する、統計学的意味での平均としてのみ評価されうる。例えば、「リガンド」対「繰り返し単位」の比率が1:20である場合、距離13は「20の繰り返し単位からなる高分子鎖の両末端間の長さ」に等しいと仮定される。
【0064】
ヘテロ二官能性リガンド2を予備配置するための既知の構造データを用いる場合、拡張された高次構造内に、柔軟なポリマー分子を見出す確率が一般に極めて低いことから、一般に、上記の4つの異なる制限が必要とされる。距離10、距離11および距離12での結合官能基を見出す確率を高めるためには、十分な長さ以上のリンカーが必要とされる。そのため、ヘテロ二官能性多価リガンドの構造のさらなる最適化が、安定な三元複合体の形成を促進するために必要とされることが多い。上記のように、リンカーの長さおよびヘテロ二官能性リガンドの近接結合点を隔てる距離は、安定な三元複合体を形成する確率を高めるために容易に最適化されうる。最適化は、当該技術分野で公知の多種多様な技術を用いてなされうる(例えば、限定は意図されないが、Kitov P.I.ら、2002年、J.Am.Chem.Soc.125:3284−3294頁;Mammen M.ら、1998年、J.Org.Chem.63:3168−3175頁;Gargano J.M.ら、2001年、J.Am.Chem.Soc.123:12909−12910頁)。
【0065】
上記の4つの制限において、距離13は、少なくとも0でない正の値を有する必要がある。しかし、上記考察および図4に示されるように、リンカー9A、リンカー9Bおよび/またはリンカー9Cの長さは0でありうる。発明者らは、下記に示されるように、第1の官能基4および第2の官能基6が、エントロピー効率の良い結合部分を生成しながら、リンカーを用いずに互いに結合されうることを見出している。
【0066】
一実施形態では、本発明の多価ポリマー1は以下のように示されうる。
【化3】
【0067】
特定の実施形態では、本発明の多価ポリマー1は、下記構造により表すことができる。
【化4】
【0068】
式中、「X」は多価ポリマー1の高分子骨格を示す。「M」は第1の官能基4を示す。「O」は第2の官能基6を示す。「N」は共通の原子9、任意のリンカー、または上記考察のように「M」および「O」に直接結合するように用いられうる結合のいずれかを示す。「Y」は任意のリンカー3を示す。かつ「n」は意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドがポリマー内に存在するように選択される整数を示す。好ましくは、「n」の値は標的受容体内での結合部位の数と同じであるべきである。
【0069】
第1の官能基および第2の官能基
生物学的標的5およびエフェクター鋳型7のアイデンティティ、ひいては第1の官能基4および第2の官能基6のアイデンティティは、意図される用途に応じて大きく変化しうる。一実施形態では、生物学的標的5は疾患を媒介する要素である一方、エフェクター鋳型7は生物学的標的の生物学的活性に作用しうるかまたは生物学的標的の検出を可能にする要素である。
【0070】
「生物学的活性」という用語は、生物学的標的5により発揮される任意の有害な活性を示す。理論に拘束されないが、エフェクター鋳型7に結合可能な第2の官能基6は、得られる三元複合体8の肝臓などの特定の器官への局在化;限定はされないが、補体媒介性の細胞毒性を惹起可能な抗体でありうるエフェクター鋳型7と、生物学的標的5との会合の促進;限定はされないが、生物学的標的5を中和可能な細胞でありうるエフェクター鋳型7と、生物学的標的5との会合の促進;を含む種々の機序を介して、生物学的標的5が示す生物学的活性に作用しうる。一部の実施形態では、ヘテロ二官能性リガンド2の第1の官能基4および第2の官能基6は、同じ細胞上の複数の複製体として存在する2つの異なる膜結合タンパク質受容体である生物学的標的5およびエフェクター7を認識し、かつそれらに結合する。他の実施形態では、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7は、別々の細胞上の受容体である。
【0071】
「検出する」という用語は、特定の生物学的標的が、生物内または環境内に存在するか否かを判定するための多価ヘテロ二官能性ポリマー1の使用用途を示す。これは診断の分野で特に有利である場合がある。これらについて後にさらに考察する。
【0072】
多くの場合、入手可能な文献から、第1の官能基4および第2の官能基6の双方のアイデンティティは既知である。もしそれらのアイデンティティが意図される用途において知られていない場合、有効な第1および第2の官能基は既知の化合物のライブラリーのスクリーニングにより同定されうるか、またはそれらは受容体における任意の利用可能な構造データに基づいて合理的に設計されうる。
【0073】
第1の官能基4および第2の官能基6は、限定はされないが、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、0〜約20のモノサッカライドを有するオリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、ビタミン、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体を含みうる群から選択されうる。
【0074】
生物学的標的5は、限定はされないが、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体を含みうる群から選択されうる。
【0075】
エフェクター鋳型7は、限定はされないが、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体を含みうる群から選択されうる。
【0076】
一実施形態では、エフェクター鋳型7が抗体である場合、第2の官能基6は、限定はされないが、高免疫原性、低分子量および/または低毒性を含みうる特性を用いて選択される任意のハプテンでありうる。
【0077】
一実施形態では、1つ以上のヘテロ二官能性リガンド2の複製体を含む多価ポリマー1が提供される。第1の官能基4は多価生物学的標的に結合する。多価生物学的標的は、多重結合部位を与え、かつ2つ以上のリガンドに同時に結合しうるものを含む。「多価生物学的標的」という用語はまた、細胞表面上の構造モチーフ、例えば一群の類似の細胞表面受容体を包含するように意図される。
【0078】
一実施形態では、エフェクター鋳型は血清アミロイドP成分である。別の実施形態では、エフェクター鋳型は自然または適応免疫系の分子または細胞成分である。
【0079】
一実施形態では、第1の官能基4は、細菌毒素である生物学的標的5に結合する。細菌毒素の例として、限定はされないが、シガ毒素またはシガ様毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素およびコレラ毒素が挙げられる。一部の態様では、シガ毒素は、O157:H7大腸菌(E.coli)血清型などの腸管出血性大腸菌により産生される。一部の態様では、第1の官能基4はトリサッカライドである。他の実施形態では、第1の官能基4は、生物学的標的であるグラム陽性細菌に結合する。
【0080】
一実施形態では、第1の官能基4は、生物学的標的であるインフルエンザウイルスなどのウイルス粒子に結合する。一部の態様では、第1の官能基4はウイルスの赤血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)に結合する。一実施形態では、第1の官能基4は、ノイラミン酸誘導体である。別の実施形態では、第1の官能基4はウイルスレクチンに結合する。
【0081】
他の生物学的標的および対応する第1の官能基として、限定はされないが、マンノース基と相互作用可能な、FimHアドヘシン表面基を有する房状の大腸菌(E.coli);グルコサミンN−アセチル(GlcNac)基に結合可能な、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)の表面基を有する肺炎球菌(S.pneumoniae);ノイラミン酸(NeuAc)およびラクト−N−ネオテトラオーゼ(neotetraose)基に結合可能な、コリン結合タンパク質A(CpbA)基;プラスミン(プラスミノーゲン)基に結合可能な、α−エノラーゼ基;およびGlcNAC、NeuAc、およびラクトースに結合可能な、線毛アドヘシン表面基を有する緑膿菌(P.aeruginosa)が挙げられる。
【0082】
一実施形態では、第1の官能基4は、癌細胞の細胞表面受容体である生物学的標的5に結合する。一部の態様では、その細胞表面受容体は正常細胞内にも存在するが、癌細胞内で発現上昇される。一部の態様では、生物学的標的5は癌細胞の葉酸塩受容体である。
【0083】
一実施形態では、第1の官能基4は、インテグリンである生物学的標的5に結合する。一実施形態では、インテグリンはインテグリンαvβ3である。
【0084】
一実施形態では、第1の官能基4は、B細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質である生物学的標的5に結合する。
【0085】
一実施形態では、第1の官能基4は、抗リン脂質抗体症候群に関連した免疫グロブリンG(IgG)を提示するB細胞に結合可能な、カルジオリピンなどのリン脂質である。
【0086】
一実施形態では、第1の官能基4は、2,6-結合シアル酸を有するオリゴ糖である。
【0087】
一実施形態では、第1の官能基4は、大部分の神経膠腫内に見出される腫瘍表面マーカーに特異的に結合可能な、巨大なイスラエルサソリ(Israeli scorpion)の毒に由来するペプチドであるクロロトキシンである(Deshane J.ら、2003年、J.Biol Chem.278(6):4135−4144頁)。
【0088】
一実施形態では、第1の官能基4は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有するペプチド(RGD)、またはその機能誘導体もしくは合成模倣体である。一態様では、RGDはシクロペプチドである。
【0089】
一実施形態では、第1の官能基4は、自己免疫疾患に関与する抗体である生物学的標的5に結合する。一態様では、抗体はギラン・バレー症候群を媒介する。
【0090】
一実施形態では、第2の官能基6は、血清アミロイドP成分(SAP)であるエフェクター鋳型7に結合する。
【0091】
別の実施形態では、エフェクター鋳型7は自然または適応免疫系の分子または細胞成分である。
【0092】
一実施形態では、エフェクター鋳型7は、T細胞、B細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一実施形態では、第2の官能基6は、抗体であるエフェクター鋳型7に結合するハプテンである。一部の態様では、抗体は、第2の官能基6を有する化合物に対して予め免疫された患者において産生される。一部の態様では、第2の官能基6はスルホンアミドである。別の実施形態では、第2の官能基6はスルファチアゾールである。
【0093】
リンカー
上記考察のように、任意のリンカー3は、ヘテロ二官能性リガンド2を多価ポリマー1に共有結合させる。任意のリンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cも存在しうる。リンカー3、リンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cの長さおよび化学組成は、意図される用途や、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7の性質に応じて異なる。リンカー3、リンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cの化学組成はまた、生物学的標的5および/またはエフェクター鋳型7の結合部位の周囲の環境に応じて大きく異なる。意図される用途に応じて、疎水性、親水性または両親媒性リンカーを用いることは有利でありうる。
【0094】
リンカー3、リンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cは、多種多様な異なる基からなってもよく、そのアイデンティティは意図される用途に依存する。これらの基は、限定はされないが、複数のメチレン基から有するアルキレン鎖を含み、ここで各メチレン基は、「二価の基」と置換されてもよい。適切な「二価の基」は、−O−、−S(O)n−、−NR−、−C(O)NR−、−C(O)O−、−CRR’−、カルバメート、尿素、およびチオ尿素部分を含む(式中、nは0、1、または2であり;RはHまたはアルキルであり;R’はH、アルキル、または非水素置換基と置換されたアルキルである)。さらに、リンカーは、エチレングリコール単位を有する基を含んでいてもよい。さらにリンカーは、場合により、1つ以上のメチレン基を1,4-フェニレン基と置換された基を含みうる。
【0095】
当然ながら、当業者は、上記していない多数の他の基を用いて、リンカー3、リンカー9A、リンカー9Bおよびリンカー9Cを、それらが安定な三元複合体の形成を補助するのに必要とされる特性を有するようにすることができることを理解するであろう。これらの基は、本発明の範囲内に含まれるものとして見なされる。
【0096】
高分子骨格
多価ヘテロ二官能性ポリマー1の高分子骨格は、意図される用途に応じて多数の異なる形態をとりうる。本発明において使用可能なポリマーは、骨格内に非環状、環状および/またはアリーレン構造を有するものを含む。ポリマー骨格またはその内部に、ヘテロ二官能性リガンドが結合される。
【0097】
適切なポリマーの更なる例として、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどの高分子炭水化物;ならびにポリカルボフィル、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)アクリル酸/ブチルアクリレート共重合体、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド](HPMA)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、およびポリ(リンゴ酸)などのアクリル酸に基づくポリマーが挙げられる。限定はされないが、デキストラン、デキストリン、アガロース、アミロース、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカンおよびキトサンを含む天然ポリマーも用いられうる。当然ながら、当業者は、複数のヘテロ二官能性リガンドに共有結合可能な任意の薬学的に許容可能なポリマーを用いて、本発明の多価ポリマーの合成が可能であることを理解するであろう。これらのポリマーは、本発明の範囲内に含まれるものとして見なされる。
【0098】
ポリマーは、ヘテロ二官能性リガンドに結合された末端二重結合などの重合可能な基を有する単量体を、重合することにより調製されうる。ヘテロ二官能性単量体と非官能化された単量体との共重合体も利用可能である。さらには、ポリマーの溶解度または安定性などの物理的または生物学的特性を、制御および/または改善する非官能化された単量体の作製および利用も、また可能である。ポリマーを調製するための方法も限定はされないが、開環メタセシス重合(ROMP)を含む。
【0099】
ポリマーにおけるヘテロ二官能性リガンドの含有率は、官能化単量体と非官能化単量体との比率や、単量体の性質および反応性に依存する。一部の態様ではポリマーは、1つのヘテロ二官能性リガンド当たり、10〜20の繰り返し単位を有する。他の態様では、ポリマーは、1つのヘテロ二官能性リガンド当たり、20以上の繰り返し単位を有する。
【0100】
「結合点」または「結合される」という用語は、ヘテロ二官能性リガンドのポリマーへの結合に適用される場合、広義に解釈される。上記考察のように、ヘテロ二官能性リガンドは、任意のリンカーを介してポリマーに結合されうるか、または直接にポリマーに結合されうる。結合様式は、ヘテロ二官能性リガンドの性質、ポリマーの性質、および意図される用途に依存する。一実施形態では、結合は共有結合である。
【0101】
投与および医薬組成物
一般に、本発明のポリマーは、類似の有用性を発揮する作用物質における認められた投与方法のいずれかにより、治療有効量で投与されうる。ポリマーの実際の投与量は、ポリマーの薬動動態、治療されるべき疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、用いられるポリマーの効力、投与の経路および形態、ならびに他の要素などの極めて多数の要素に依存する。薬剤は、1日に2回以上、好ましくは1日に1回または2回投与されうる。これらの要素のすべては主治医の能力の範囲内にある。
【0102】
一般に、本発明のポリマーは、以下の経路、すなわち全身(例えば経皮、鼻腔内または坐剤による)、非経口(例えば筋肉内、静脈内または皮下)、髄腔内、または経口投与のうちのいずれか1つにより医薬組成物として投与される。組成物は、タブレット、ピル、カプセル、半固体、粉末、持続放出製剤、溶液、懸濁液、エリキシル剤、エアロゾル、または任意の他の適切な形態の組成物となりうる。
【0103】
製剤の選択は、薬剤投与の方法および薬剤物質のバイオアベイラビリティなどの様々な要素に依存する。吸入を介する送達においては、ポリマーは、溶液、懸濁液、エアロゾル推進剤または乾燥粉末として調合され、かつ投与に適するディスペンサーに充填されうる。薬剤吸入装置には、ネブライザー吸入器、定量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器(DPI)といったいくつかのタイプがある。
【0104】
本組成物は、一般には本発明のポリマーと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤との組み合わせからなる。許容可能な賦形剤は、非毒性であり、投与を補助し、かつポリマーの治療効果に悪影響を及ぼさない。かかる賦形剤は、一般に当業者が使用可能な任意の固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合には、気体賦形剤でありうる。
【0105】
固体医薬賦形剤の例には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルクなどが含まれる。液体および半固体賦形剤は、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、ならびに石油、動物、植物または合成由来のオイルを含む様々なオイル、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などから選択されうる。特に注射可能な溶液用の好ましい液体担体は、水、生理食塩水、水性デキストロース、およびグリコールを含む。
【0106】
圧縮ガスを用いて、エアロゾル形態での本発明のポリマーの分散が可能である。この目的に適する不活性気体として、窒素、二酸化炭素などが挙げられる。他の適切な医薬賦形剤およびそれらの製剤については、E.W.Martin編、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Company、第l8版、l990年)に記載されている。
【0107】
治療および非治療用途
上記考察のように、第1の官能基4および第2の官能基6のアイデンティティは、生物学的標的5およびエフェクター鋳型7のアイデンティティに応じて大きく変化しうる。本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーは、治療および非治療用途の双方に用いられうる。
【0108】
本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマー1には、多数の異なる有望な治療用途が存在する。下記に列挙されるのは、有望な治療用途のうちのほんの数例であって、限定することを意図されていない。
【0109】
一実施形態では、限定はされないが、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、シガ毒素またはシガ様毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素、およびコレラ毒素を含みうる細菌毒素を除去することが可能である。
【0110】
一実施形態では、限定はされないが、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、インフルエンザウイルスを含みうるウイルス粒子を除去することが可能である。
【0111】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、房状の大腸菌(E.coli)、肺炎球菌(S.pneumoniae)、コリン結合タンパク質A基、α−エノラーゼ基、および緑膿菌(P.aeruginosa)を除去することが可能である。
【0112】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、癌細胞を標的化することが可能である。
【0113】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、インテグリンを標的化することが可能である。一実施形態では、インテグリンはインテグリンαvβ3である。
【0114】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、B細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質を標的化することが可能である。
【0115】
一実施形態では、限定はされないが、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、抗リン脂質抗体症候群に関連したIgGを提示するB細胞に結合可能なカルジオリピンを含みうるリン脂質を標的化することが可能である。
【0116】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、神経膠腫を標的化することが可能である。
【0117】
一実施形態では、限定はされないが、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、ギラン・バレー症候群を含みうる自己免疫疾患に関与する抗体を除去することが可能である。
【0118】
一実施形態では、有効量の本発明のポリマーを投与するステップを含む、標的化免疫療法の方法が提供される。ここで、第2の官能基6がハプテンであれば、前記ポリマーの投与により既存の抗体による免疫認識が惹起する。一部の態様では、治療の開始に先立ち、第2の官能基6を提示する化合物の投与により、抗体が患者の体内で産生される。
【0119】
一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1は、遺伝性および後天性代謝疾患の治療に用いられうる。
【0120】
本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーはまた、様々な非治療用途にも用いられうる。これらのポリマーの使用は診断の分野で有利でありうる。一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、地下水中のStx1の存在を検出することが可能である。別の実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1を用いて、血中の抗体の存在を検出することが可能である。これは、限定はされないが、癌を含みうる多数の疾患の診断において有利でありうる。一実施形態では、多価ヘテロ二官能性ポリマー1は、腫瘍の造影において用いられうる。当然ながら当業者に理解されるように、これらの非治療用途は、特定の三元複合体の形成が最適化されるように、ヘテロ二官能性リガンド2上で第1の官能基4および第2の官能基6を選択し、かつ予備配置することによって実現可能である。
【実施例】
【0121】
材料、方法および実施例
以下の材料および方法を以下の実施例において用いた。これらの材料および方法は、あくまでも例示目的であり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。当業者は、いくつかの変更および置換が本発明の範囲に影響を与えることなくなされうることを理解するであろう。より詳細には、これらは以下に列挙する特定の技術および反応条件における変更および置換を含む。
【0122】
一般的方法
旋光性を、周囲温度で10cmのセル内のPerkin−Elmer 241偏光計上で測定した。分析TLCを、蛍光の消光および/またはエタノール溶液中の10%H2SO4でのチャージ(charging)、その後の180℃での加熱による検出とともに、シリカゲル60−F254(Merck)上で行った。カラムクロマトグラフィーを、シリカゲル60(Merck、40〜60μm)上で行い、かつ市販品の溶媒を用いた。1H−NMRスペクトルを、CDCl3(δH7.24ppmでの残存CHCl3を基準)またはD2O(δH2.225ppmでの外部アセトンを基準)中、400、500または600MHz(Varian)で測定した。J値はHzで与えられる。すべての市販品の試薬を用いることができる。
【0123】
本発明がより十分に理解されるように、以下の実施例が示される。これらの実施例は、あくまでも例示目的であり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。さらに、これらの実施例は、本発明の等価物および変形物を除外するように意図されておらず、それは当業者にとって明らかである。
【0124】
実施例1
化合物3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 4-O-[4-O-(β−D−ガラクトピラノシル)−β−D−ガラクトピラノシル]−β−D−グルコピラノシド(1)の合成
【化5】
【0125】
既知のラクトースイミデート(lactose imidate)ドナーを、三フッ化ホウ素エーテラートの存在下で、モノアリル化ヘキサ(エチレングリコール)とカップリングさせ、ラクトシド5を71%の収率で得た。Zemplen条件下で、ラクトシド5を脱アセチル化して、ヘプタオール6を90%の収率で得た。次いで、ヘプタオール6を、α−(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼを用いて、酵素的にガラクトシル化し、標的化合物1を75%の収率で得た。
【0126】
3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(5)。
ラクトース六酢酸トリクロロアセトイミダートドナー(1.8g、2.3mモル、α:βが9:1の混合物)、モノアリルヘキサ(エチレングリコール)(0.64g、2.0mモル)、および活性化された4Åのモレキュラーシーブス(1.5g)を、乾燥ジクロロメタン(20mL)中で1時間撹拌した。次いで、混合物を0℃に冷却し、BF3Et2O(0.3mL)を滴下添加した。TLCで反応の完了を確認した後、Et3Nで中和し、セライトを通して濾過し、濃縮した。シリカゲルでの残留物のクロマトグラフィーにより、表題化合物5を得た(1.3g、71%の収率)。
1H−NMR(CDCl3):δH5.89(m,1H,アリル)、5.32(dd,1H,J1.0Hz,3.5Hz,H−4’)、5.27(m,1H,アリル)、5.23(m,1H,アリル)、5.15(m,2H,H−3およびアリル)、5.08(dd,1H,J8.0Hz,10.5Hz,H−2’)、4.93(dd,1H,J3.5Hz,10.5Hz,H−3’)、4.86(dd,1H,J8.0Hz,9.5Hz,H−2)、4.53(d,1H,J7.5Hz,H−1)、4.46(m,2H,H−1’およびH−6a)、4.07(m,2H,H−6bおよびH−6a’)、4.00(m,2H,アリル)、3.84(m,2H,H−5’)、3.77(t,1H,J9.5Hz,H−4)、3.69(m,1H,H−6b’)、3.57〜3.65(m,15H)、2.13(s,3H,OAc)、2.10(s,3H,OAc)、2.04(s,3H,OAc)、2.02(s,3H,OAc)、2.02(s,3H,OAc)、2.01(s,3H,OAc)、1.94(s,3H,OAc)。ESI−HRMS m/z 963.36814([M+Na]+、C41H64O24Na+の要求値963.36798)。
【0127】
3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシド(6)。
ラクトシド5(1.3g、1.4mモル)を乾燥MeOH(20mL)中に溶解し、MeONa(3mL、0.5M溶液)を添加した。混合物を一晩撹拌し、次いでAmberlite H+で中和し、濾過し、濃縮し、表題化合物6を得た(0.8g、90%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.95(m,1H,アリル)、5.33(m,1H,アリル)、5.26(m,1H,アリル)、4.50(d,1H,J7.8Hz,H−1’)、4.44(d,1H,J7.8Hz,H−1)、4.06(m,3H,アリル)、3.97(m,1H)、3.92(m,1H)、3.58〜3.84(m,31H)、3.53(m,1H,H−2)、3.33(m,1H,H−2’)。ESI−HRMS m/z 669.29389([M+Na]+、C27H50O17Na+の要求値669.29402)。
【0128】
3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノシド(1)。
ラクトシド6(0.11g、0.17mモル)を、H2O 4mL、HEPES緩衝液[1.25mL、1.6M、10mM MnCl2、ウシ血清アルブミン(BSA、0.8mg/mL)、pH8]、DTT溶液(100mM、0.32mL)およびアルカリホスファターゼ(63μl)の混合液中に溶解した。得られた混合物に、UDP−Glc(0.13g)、次いでα−(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼ(0.625mL)を添加した。反応物を37℃で一晩インキュベートし、次いでC18担体でクロマトグラフィーを行い、表題化合物1を得た(0.1g、75%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.95(m,1H,アリル)、5.34(m,1H,アリル)、5.27(m,1H,アリル)、4.94(d,1H,J3.6Hz,H−1’’)、4.51(d,1H,J8.4Hz,H−1’)、4.51(d,1H,J7.8Hz,H−1)、4.35(m,1H)、3.56〜4.07(m,42H)、3.33(t,1H,J8.4Hz,H−2’)。ESI−HRMS m/z 831.34649([M+Na]+、C33H60O22Na+の要求値831.34685)。
【0129】
実施例2
25-[(シス)-2-ヒドロキシカルボニル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-24-(R,S)-ヒドロキシ-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ−オキサ-ペンタデコサ(pentadecos)-1-エン(2)の合成
【化6】
【0130】
メタノール(4.5mL)中の25-[(シス)-2-ジメチルアミノカルボニル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-24-(R,S)-ヒドロキシ-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタデコサ-1-エン(125mg、0.214mモル)の溶液に、4M水性NaOH(268μL)を添加した。反応混合物を80℃で一晩撹拌した。翌日、さらに4MのNaOH(134μL)を添加し、混合物を80℃で一晩放置した。翌日、NMRおよびTLCにより、アミドの加水分解が完了したことを確認そた。混合物をメタノールで希釈し、Dowex H+樹脂で脱イオン化し、濾過し、濃縮した。乾燥残留物を水中に溶解し、凍結乾燥し、生成物をシロップとして得た(97mg;84%)。
1H−NMR(D2O)δ:5.99〜5.92(m,1H,HC=CH2)、5.36〜5.26(m,2H,HC=CH2)、4.18(dd,2H,J4.7Hz,J11.4Hz,H−4e,H−6e)、4.07(d,2H,J5.9Hz,CH2−CH=CH2)、3.94〜3.92(m、1H、CH)、3.74〜3.65(m,26H,H−5,OCH2)、3.70〜3.60(m,5H,H−4a,H−6a,OCH2)、1.50(s,3H,CH3)。エレクトロスプレーイオン化HRMS、計算値C24H44O13Na(M+Na):m/z 563.26741,実測値:m/z 563.26776。
【0131】
実施例3
24-(R,S)-[4-O-(4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-カルボキシル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ(pentacos)-1-エン(3)の合成
【化7】
【0132】
既知のラクトシド7(Solomonら(Organic Letters 2005年、7、4369−4372頁))を、Zemplen条件下で脱アセチル化し、配糖体8を98%の収率で得た。配糖体8を、α-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼを用いて、酵素的にガラクトシル化し、トリサッカライド9を78%の収率で得た。基本的条件下でのトリサッカライド9のアミド基の加水分解により、標的化合物10を96%の収率で得た。
【0133】
24-(R,S)-[4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-ジメチルアミノカルボニル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ-1-エン(8)。
化合物7(0.33g、0.3mモル)(Solomonら(Organic Letters 2005年、7、4369−4372頁))を、乾燥MeOH(10mL)中に溶解し、MeONa(0.5M溶液1mL)を添加した。室温で一晩撹拌後、混合物をAmberlite(H+)樹脂で中和し、濾過し、濃縮し、真空下で乾燥し、表題化合物8を得た(0.24g、98%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.94(m,1H,アリル)、5.34(m,1H,アリル)、5.27(m,1H,アリル)、4.60(m,1H,H−1’)、4.44(m,1H,H−1)、4.20(m,2H)、4.07(m,3H,アリル)、3.96(m,1H)、3.92(m,1H,H−4’)、3.61〜3.82(m,39H,OMe)、3.53(m,4H)、3.31(m,1H,H−2’)、3.26(s,3H,NMe)、3.00(s,3H,NMe)、1.52(m,3H,C−Me)。ESI−HRMS m/z 914.42097([M+Na]+、C38H69NO22Na+の要求値914.42035)。
【0134】
24-(R,S)-[4-O-(4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-ジメチルアミノカルボニル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ-1-エン(9)。
ラクトシド8(0.24g、0.27mモル)を、H2O 8mL、HEPES緩衝液[2.5mL、1.6M、10mM MnCl2、ウシ血清アルブミン(BSA、0.8mg/mL)、pH8]、DTT溶液(100mM、0.63mL)およびアルカリホスファターゼ(125μL)の混合液中に溶解した。混合物にUDP−Glc(0.25g)、次いでα−(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼ(1.25mL)を添加した。反応物を37℃で一晩インキュベートし、次いでC18担体でクロマトグラフィーを行い、表題化合物9を得た(0.22g、78%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.94(m,1H,アリル)、5.34(m,1H,アリル)、5.27(m,1H,アリル)、4.94(d,1H,J3.6Hz,H−1’’)、4.60(m,1H,H−1’)、4.50(m,1H,H−1)、4.34(t,1H,J6.0Hz,H−5’’)、4.20(m,2H)、3.49〜4.08(m,57H)、3.31(m,1H,H−2’)、3.26(s,3H,NMe)、3.00(s,3H,NMe)、1.52(m,3H,C−Me)。ESIHRMS m/z 1076.47343([M+Na]+、C44H79NO27Na+の要求値1076.47317)。
【0135】
24-(R,S)-[4-O-(4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-カルボキシル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ-1-エン(3)。
表題化合物9(0.15g、0.14mモル)およびNaOH(5当量)の溶液を、80℃で3日間撹拌し、反応の進行をNMRにより追跡し、混合物をAmberlite H+樹脂で中和し、濾過し、濃縮し、表題化合物3を得た(0.14g、96%の収率)。
1H−NMR(D2O):δH5.95(m,1H,アリル)、5.34(m,1H,アリル)、5.27(m,1H,アリル)、4.94(m,1H,H−1’’)、4.60(d,1H,J7.8Hz,H−1’)、4.50(m,1H,H−1)、4.34(t,1H,J6.0Hz,H−5’’)、4.20(m,2H)、3.55〜4.09(m,57H)、3.31(m,1H,H−2’)、1.50(m,3H,C−Me)。ESI−HRMS m/z 1049.42593([M+Na]+、C42H74O28Na+の要求値1049.42588)。
【0136】
実施例4
4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-6-N-(4-ペンテニルカルバモイル)-1,2-O-[(S)-1-(カルボキシ)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(4)の合成
【化8】
【0137】
既知の化合物10を、触媒CSAの存在下で、ベンズアルデヒドジメチルアセタールで処理し、ベンジリデン11を72%の収率で得た。ベンジリデン11の一級ヒドロキシルを、ピリジン中の塩化トシルを用いて選択的にトシル化し、トリオール12を56%の収率で得た。その後、トシル基をアジドで置換し、化合物13を78%の収率で得た。化合物13の水素化で得られたアミンとp−ニトロフェニル4−ペンテニルカーボネートとのカップリングし、ベンジリデン保護基を80%酢酸で脱離させ、カルバメート14を得た。ジサッカライド14を、α-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP-4'-Gal-エピメラーゼを用いて、酵素的にガラクトシル化し、所望のトリサッカライド4を得た。
【0138】
4-O-(4,6-O-ベンジリデン-β-D-ガラクトピラノシル)-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(11)。
ヘキサオール10(2.19g、4.25mモル)を、乾燥アセトニトリル(24mL)およびベンズアルデヒドジメチルアセタール(1.95mL、3当量)の混合液中に溶解し、次いでカンファースルホン酸(触媒量)を添加した。TLCで反応の完了を確認した後、トリエチルアミンで中和し、溶媒を蒸発させた。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(DCM:MeOH=20:1)、表題化合物11を得た(1.59g、72%)。
1H−NMR(CDCl3):δH7.35〜7.49(m,5H,芳香族陽子)、5.79(d,1H,J1,25.4Hz,H−1)、5.47(s,1H,C6H5CH)、4.45(d,1H,J7.8Hz,H−1’)、4.23(m,1H,H−6a’)、4.15(t,1H,J2,34.8Hz,H−2)、4.07(d,1H,J3’,4’3.6Hz,H−4’)、3.93〜4.00(m,3H,H−3,H−6a,H−6b’)、3.73〜3.82(m,3H,H−5,H−6b,H−2’)、3.75(s,3H,COOMe)、3.69(t,1H,J8.4Hz,H−4)、3.62(dd,1H,J2’,3’9.6Hz,J3’,4’3.6Hz,H−3’)、3.47(bs,1H,H5’)、1.68(s,3H,CH3)。ESI−HRMS m/z 537.15750([M+Na]+、C23H30O13Na+の要求値537.15786)。
【0139】
4-O-(4,6-O-ベンジリデン-β-D-ガラクトピラノシル)-6-O-トシル-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(12)。
化合物11(1.g、1.9mモル)を、乾燥ピリジン(8mL)中に溶解した。混合物を0℃に冷却後、塩化トシル(0.3g)、次いで4-ジメチルアミノピリジン(25mg)を添加した。3時間後、さらに塩化トシル(0.25g)を添加した。冷蔵庫(+5℃)内で16時間放置した後、反応物をメタノールでクエンチした。溶媒を蒸発後、残留物に対してシリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(DCM:MeOH=20:1)、表題化合物12を得た(0.733g、56%)。
1H−NMR(CDCl3):δH7.32〜7.80(m,9H,芳香族陽子)、5.69(d,1H,J1,25.5Hz,H−1)、5.53(s,1H,C6H5CH)、4.50(dd,1H,J3.5Hz,11.0Hz,H−6a)、4.46(d,1H,J1’,2’8.0Hz,H−1’)、4.26(m,2H,H−6b,H−6a’)、4.19(d,1H,J3’,4’3.5Hz,H−4’)、4.15(t,1H,J4.5Hz,H−2)、4.05(dd,1H,J2.0Hz,12.5Hz,H−6b’)、3.97(m,2H,H−3およびH−5)、3.74(m,4H,H−2’およびCOOMe)、3.66(m,2H,H−4およびH−3’)、3.56(bs,1H,H−5’)、2.44(s,3H,MePh)、1.65(s,3H,CH3)。ESI−HRMS m/z 691.16689([M+Na]+、C30H36O15SNa+の要求値691.16671)。
【0140】
6-アジド-4-O-(4,6-O-ベンジリデン-β-D−ガラクトピラノシル)-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D−グルコピラノース(13)。
トリオール12(0.721g、1.078mモル)を、乾燥DMF(7mL)中に溶解し、ナトリウムアジド(0.218g、3.35mモル)を添加した。反応混合物を、60℃で18時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をDCMで除去し、濾過し、2回トルエンと共蒸発させた。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:アセトン=1:1)、表題化合物13を得た(0.424g、78%)。
1H−NMR(CDCl3):δH7.37〜7.49(m,5H,芳香族陽子)、5.85(d,1H,J1,25.0Hz,H−1)、5.53(s,1H,C6H5CH)、4.41(d,1H,J1’,2’8.0Hz,H−1’)、4.29(dd,1H,J1.5Hz,13.0Hz,H−6a’)、4.19(m,2H,H−2およびH−4’)、4.07(dd,1H,J2.0Hz,13.0Hz,H−6b’)、3.99(m,1H,H−5)、3.93(dd,1H,J5.0Hz,8.0Hz,H−3)、3.77(s,3H,COOMe)、3.73(dd,1H,J7.8Hz,9.7Hz,H−2’)、3.63〜3.70(m,4H,H−3’,H−4,H−6a,H−6b)、3.57(bd,1H,H−5’)、1.71(s,3H,CH3)。ESI−HRMS m/z 562.16445([M+Na]+、C23H29N3O12Na+の要求値562.16435)。
【0141】
4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-6-N-(4-ペンテニルカルバモイル)-1,2-O-[(S)-1-(カルボキシ)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(14)。
アジド13(0.284g、0.526mモル)を、MeOH(6mL)中のPd(OH)2/C(200mg)を用い、触媒作用により24時間かけて水素化した。触媒を濾過により除去し、溶媒を蒸発させ、残留物を乾燥した。次いで、得られたアミンを乾燥アセトニトリル(6mL)中に溶解し、p-ニトロフェニル4-ペンテニルカーボネート(0.16g)を添加した。反応の完了後、溶媒を蒸発させ、80%AcOH(10mL)中に溶解した。混合物を80℃で2時間撹拌し、次いで濃縮し、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(DCM:MeOH=10:1〜6:1)、表題化合物14を得た(70mg、25%)。
1H−NMR(D2O):δH5.91(m,1H,ペンテニルのHd)、5.67(d,1H,J1,25.0Hz,H−1)、5.02〜5.11(m,2H,ペンテニルのHe)、4.50(d,1H,J1’,2’7.5Hz,H−1’)、4.39(m,1H,H−3)、4.23(m,1H,H−2)、4.10(m,2H,ペンテニルのHa)、3.92(d,1H,J3.0Hz,H−4’)、3.88(m,1H,H−5)、3.74〜3.83(m,2H,H−6a’およびH−6b’)、3.70(dd,1H,J4.0Hz,8.0Hz)、3.65(m,2H,H−4およびH−5’)、3.56(m,2H,H−6aおよびH−2’)、3.34(m,1H,H−6b)、2.15(m,2H,ペンテニルのHc)、1.74(m,2H,ペンテニルのHb)、1.66(s,3H,CH3)。
【0142】
4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-6-N-(4-ペンテニルカルバモイル)-1,2-O-[(S)-1-(カルボキシ)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(4)。
カルバメート14(60.8mg、0.116mモル)を、H2O 1.34mL、HEPES緩衝液[0.396mL、1.6M、10mM MnCl2、ウシ血清アルブミン(BSA、0.8mg/mL)、pH8]、DTT溶液(100mM、0.1mL)およびアルカリホスファターゼ(10μL)の混合液中に溶解した。この混合物にUDP−Glc(0.112g、1.58当量)、次いでα-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼ(0.198mL)を添加した。反応物を37℃で21時間インキュベートし、次いで超遠心し、DOWEX(H+)で処理し、C−18 HPLC上でクロマトグラフィーを行い(水:MeOH:0.1%TFA、25〜30%MeOHで溶出)、表題化合物4を得た(63.3mg、80%)。
1H−NMR(D2O):δH5.88(m,1H,ペンテニルのHd)、5.71(d,1H,J1,25.0Hz,H−1)、5.00〜5.09(m,2H,ペンテニルのHe)、4.94(d,1H,J4.0Hz,H−1’’)、4.55(d,1H,J1’,2’8.0Hz,H−1’)、4.37(m,2H,H−3およびH−4’’)、4.30(t,1H,J4.0Hz,H−2)、4.08(m,2H,ペンテニルのHa)、4.02(m,2H,H−4’)、3.65〜3.92(m,10H,H−2’’,H−3’’,H−3’,H−6a)、3.53〜3.60(m,2H,H−5およびH−2’)、3.32(dd,1H,J7.5Hz,10.0Hz,H−6b)、2.12(m,2H,ペンテニルのHc)、1.71(m,2H,ペンテニルのHb)、1.70(s,3H,CH3)。ESI−HRMS m/z 708.23206([M+Na]+、C27H43NO19Na+の要求値708.23215)。
【0143】
実施例5
2つの独立の単官能性リガンドを有する先行技術のポリマーPPMの調製
【化9】
【0144】
上で示したスキーム5は、ラジカル重合を介する単官能性リガンド1および2の取り込みを図示する。化合物1(3,6,9,12,15,18-ヘキサ-オキサ-ヘンイコサ-20-エニル 4-O-[4-O-(α-D−ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノシド)は、シガ様毒素を標的にし、化合物2はSAPを標的にする。
【0145】
脱気水(1mL)中のアクリルアミド(17.1mg、0.25mモル)、単量体1(81mg、0.1mモル)および単量体2(54mg、0.1mモル)の混合溶液に、水(10μL)中の過硫酸ナトリウム(1mg)の溶液を添加した。溶液をアルゴンでパージし、TEMED(12μL)を添加した。混合物を16時間インキュベートし、次いで透析し、凍結乾燥し、13mgのPPMを得た。NMRデータ(図示せず)は各リガンドの取り込みが約4.9%であることを示した。
【0146】
実施例6
2つの官能基が共通の原子にリンカーを介して結合された複数のヘテロ二官能性リガンドを有する多価ポリマーPPIの調製
以下に示すスキーム6は、ラジカル重合を介したヘテロ二官能性リガンドの取り込みを図示する。化合物3(24-(R,S)-[4-O-(4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシルオキシ]-25-[(シス)-2-カルボキシル-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イルオキシ]-4,7,10,13,16,19,22-ヘプタ-オキサ-ペンタコサ-1-エン)はトリサッカライド部分を介してシガ毒素を標的にし、グリセロールの環状ピルビン酸塩を含む部分はSAPを標的にする。
【化10】
【0147】
脱気水(1mL)中のアクリルアミド(34.2mg、0.5mモル)および単量体3(103mg、0.1mモル)の溶液に、水(10μL)中の過硫酸ナトリウム(1mg)の溶液を添加した。溶液をアルゴンでパージし、TEMED(12μL)を添加した。混合物を16時間インキュベートし、次いで透析し、凍結乾燥し、24mgのPPIを得た。NMRデータ(図示せず)は糖単量体の取り込みが約2.6%であることを示した。
【0148】
実施例7
2つの官能基が共通の原子またはリンカーを用いずに互いに結合された複数のヘテロ二官能性リガンドを有する多価ポリマーEPI−156の調製
以下に示すスキーム7は、ラジカル重合を介したヘテロ二官能性リガンドの取り込みを図示する。化合物4(4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-6-N-(4-ペンテニルカルバモイル)-1,2-O-[(S)-1-(カルボキシ)エチリデン]-α-D−グルコピラノース)はトリサッカライド部分を介してシガ毒素を標的にし、グリセロールの環状ピルビン酸塩を含む部分はSAPを標的にする。
【化11】
【0149】
脱気水(1mL)中のアクリルアミド(34.2mg、0.5mモル)および単量体4(66mg、0.096mモル)の溶液に、水(10μL)中の過硫酸ナトリウム(1mg)の溶液を添加した。溶液をアルゴンでパージし、TEMED(12μL)を添加した。混合物を16時間インキュベートし、次いで透析し、凍結乾燥し、26mgのEPI−156を得た。NMRデータ(図示せず)は糖単量体の取り込みが約4%であることを示す。
【0150】
実施例8
6-O-(2,5-ジニトラ(dinitra)-7-オキサ-6-オキソ-ドデカ-11-エノイル)-1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノース(23)の合成
【化12】
【0151】
3-O-アセチル-4,6-O-ベンジリデン-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(15)。
MeCN(30mL)中の乾燥1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(4.62g、15.1mモル)の溶液に、PhCH(OMe)2(2.27mL、1当量)、次いでCSA(100mg)を添加した。30分後、Py−Ac2O(1:1 v/v、10mL)を添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。反応物をMeOHの添加によりクエンチし、濃縮し、トルエンとともに2回共蒸発させた。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:酢酸エチル(30〜40%))、表題生成物を得た(3.19g、54%)。
[α]D+23°(c1.2,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH7.5〜7.35(m,5H,芳香族)、5.84(d,1H,J1,25.1Hz,H−1)、5.53(s,1H,CHPh)、5.24(dd,1H,J2,33.4Hz,J3,48.3Hz,H−3)、4.41(dd,1H,J5,6a5.1Hz,J6a,6b10.5Hz,H−6a)、4.32(dd,1H,H−2)、3.94(dd,1H,J6b,55.2Hz,H−6b)、3.77〜3.70(m,5H,H−4,H−5,CH3)、2.126(s,3H,OAc)、1.767(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ169.79(C=O)、169.48(C=O)、136.80(C芳香族)、129.17(CH芳香族)、128.28(CH芳香族)、126.14(CH芳香族)、104.03(Cピルビン酸塩)、101.59(CHベンジリデン)、98.84(C−1)、77.68、77.15、73.07、68.84(C−6)、62.34、52.69(OCH3)、22.39(CH3)、20.98(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 419.13136([M+Na]+、C19H24O9Na+の要求値419.13125)。計算値C19H24O9:C、57.86%;H、5.62%。実測値:C、57.84%;H、5.59%。
【0152】
3-O-アセチル-6-O-ベンジル-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(16)。
乾燥THF(30mL)中のベンジリデン誘導体15(1.6g、4mモル)およびモレキュラーシーブス(4Å、1g)の懸濁液に、NaCNBH3(3.8g、60mモル)、次いでHCl−エーテル溶液(2M、約10mL)を、気体の発生が停止するまで添加した。混合物を、飽和水性NaHCO3により中和し、セライトを通して濾過し、濃縮し、次いでDCMで除去し、水で洗浄し、濃縮した。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)、表題化合物16を得た(1.16g、73%)。
[α]D+13°(c0.9,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH7.28〜7.25(m,5H,芳香族)、5.82(d,1H,J1,25.1Hz,H−1)、5.04(t,1H,J2,3〜J3,4=3.4Hz,H−3)、4.63(d,1H,Jgem12.2Hz,CH2)、4.58(d,1H,CH2)、4.39(m,1H,H−2)、3.84(m,1H,H−5)、3.79〜3.75(m,5H,H−4,H−6a,CH3)、3.72(dd,1H,J5,6b3.8Hz,J6a,6b10.4Hz,H−6b)、2.78(s,1H,OH)、2.11(s,3H,OAc)、1.75(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ170.72(C=O)、169.42(C=O)、137.74(C芳香族)、128.43(CH芳香族)、127.77(CH芳香族)、104.87(Cピルビン酸塩)、98.07(C−1)、74.82、74.51、73.67(CH2−Bn)、70.22、69.62(C−6)、69.23、52.68(OCH3)、21.69(CH3)、20.88(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 417.11580([M+Na]+、C19H22O9Na+の要求値417.11560)。計算値C19H22O9:C、57.57%;H、6.10%。実測値:C、57.42%;H、6.01%。
【0153】
3-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-6-O-ベンジル-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(17)
テトラ-O-アセチル-ガラクトピラノーストリクロロアセトイミダート(3.83g、7.77mモル)と、グリコシル受容体16(2.77g、7mモル)とを組み合わせ、乾燥し、DCM(30mL)中に溶解し、次いでモレキュラーシーブス(4Å、1g)を添加した。30分後、TMSOTf(100μL)を添加した。1時間後、混合物をPyでクエンチし、濃縮した。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)、表題化合物17を得た(2.66g、52%)。
[α]D+4°(c2.6,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH7.40〜7.30(m,5H,芳香族)、5.80(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.44(dd,1H,J2,32.2Hz,J3,42.7Hz,H−3)、5.34(dd,1H,J3’,4’3.5Hz,J4’,5’1.0Hz,H−4’)、5.12(dd,1H,J2’,3’7.9Hz,J3’,4’10.4Hz,H−2’)、4.92(dd,1H,H−3’)、4.70(d,1H,Jgem12.2Hz,Bn)、4.50(d,1H,Bn)、4.43(d,1H,H−1’)、4.32(m,1H,H−2)、4.13〜4.09(m,2H,H−6’a,H−6’b)、3.87〜3.78(m,3H,H−4,H−5,H−5’)、3.76(s,3H,CH3)、3.67(dd,1H,J5,6a2.2Hz,J6a,6b10.9Hz,H−6a)、3.59(dd,1H,J5,6b3.4Hz,H−6b)、2.16、2.08、2.03、1.97、1.92(5s,15H,OAc)、1.73(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ170.35(C=O)、170.29(C=O)、170.07(C=O)、169.42(C=O)、169.11(C=O)、169.06(C=O)、137.82(C芳香族)、128.54(CH芳香族)、127.96(CH芳香族)、105.38(C−ピルビン酸塩)、102.13(C−1’)、98.08(C−1)、76.10、74.09、73.60(CH2−Ph)、70.88、70.69、70.43、68.90、68.81、68.33(C−6’)、66.87、61.03(C−6)、52.65(OCH3)、21.26(CH3)、20.88(CH3)、20.69(CH3)、20.65(CH3)、20.62(CH3)、20.57(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 749.22665([M+Na]+、C33H42O18Na+の要求値749.22634)。解析計算値C33H42O18:C、54.54%;H、5.83%。実測値:C、54.23%;H、5.73%。
【0154】
3-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノシド(18)。
MeOH(10mL)中の化合物17(1.6g、2.2mモル)の溶液に、1滴の水およびPd(OH)2(30mg)を添加した。H2大気下での撹拌の2時間後、混合物を、Millipore膜フィルタを通して濾過し、濃縮し、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:アセトン=1:1)、表題化合物18を得た(1.0g、71%)。
[α]D+8°(c1.2,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH5.76(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.51(dd,1H,J2,3〜J3,42.3Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J3’,4’3.5Hz,J4’,5’0.9Hz,H−4’)、5.18(dd,1H,J2’,3’8.0Hz,J3’,4’10.4Hz,H−2’)、5.01(dd,1H,H−3’)、4.64(d,1H,H−1’)、4.33(m,1H,H−2)、4.14〜4.10(m,2H,H−6’a,H−6’b)、3.93(td,1H,J4’,5’0.9Hz,J5’,6a’〜J5’,6b’6.7Hz,H−5’)、3.85〜3.82(m,2H,H−4,H−6a)、3.766(s,3H,CH3)、3.75(m,1H,H−5)、3.61(dd,1H,J5,6b3.8Hz,J6a,6b12.0Hz,H−6b)、2.16、2.09、2.06、2.03、1.98(5s,15H,OAc)、1.74(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ170.37(C=O)、170.27(C=O)、170.07(C=O)、169.32(C=O)、169.08(C=O)、105.47(C−ピルビン酸塩)、102.25(C−1’)、97.78(C−1)、76.49、74.40、70.93、70.84.70.36、69.05、68.98、66.89、61.80(C−6’)、61.05(C−6)、52.69(OCH3)、21.27(CH3)、20.86(CH3)、20.68(CH3)、20.64(CH3)、20.55(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 659.17920([M+Na]+、C26H36O18Na+の要求値659.17939)。計算値C26H36O18:C、49.06%;H、5.70%。実測値:C、49.12%;H、5.70%。
【0155】
3-O-アセチル-6-O-(4-ニトロフェニル)-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-1,2-O-[(S)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D−グルコピラノシド(19)。
乾燥DCM(10mL)中の化合物18(1g、1.57mモル)およびクロロぎ酸4−ニトロフェニル(380mg、1.2当量)の溶液に、Py(約0.2mL)を添加した。5分後に、TLC(ヘキサン:アセトン=1:1)によって、反応の完了を確認した。水(0.2mL)を添加し、混合物を濃縮し、ヘキサン:酢酸エチル=1:1においてシリカゲル上でクロマトグラフィーを行い、表題化合物19を得た(1.2g、95%)。
[α]D+0.7°(c1,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH8.31〜8.28(m,2H,芳香族)、7.42〜7.39(m,2H,芳香族)、5.80(d,1H,J1,25.1Hz,H−1)、5.55(dd,1H,J2,31.6Hz,J3,42.5Hz,H−3)、5.39(dd,1H,J3’,4’3.5Hz,J4’,5’1.1Hz,H−4’)、5.21(dd,1H,J2’,3’8.0Hz,J3’,4’10.4Hz,H−2’)、5.04(dd,1H,H−3’)、4.70(d,1H,H−1’)、4.51(dd,1H,J6a,52.3Hz,J6a,6b11.7Hz,H−6a)、4.39(m,1H,H−2)、4.51(dd,1H,J6b,55.7Hz,H−6b)、4.17(dd,1H,J6’a,56.5Hz,J6’a,6’b11.3Hz,H−6a)、4.07(m,1H,H−5)、3.93(td,1H,J4’,5’1.1Hz,J5’,6a’〜J5’,6b’6.6Hz,H−5’)、3.78(m,4H,H−4,CH3)、2.17、2.12、2.07、2.05、1.98(5s,15H,OAc)、1.78(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ170.35(C=O)、170.21(C=O)、170.05(C=O)、169.38(C=O)、169.09(C=O)、169.03(C=O)、155.33(PhのC−O)、152.28(炭酸塩のC=O)、145.53(PhのC−NO2)、125.36(PhのCH)、121.71(PhのCH)、105.67(C−ピルビン酸塩)、101.66(C−1’)、97.65(C−1)、77.26、74.22、71.00、70.82.69.71、68.89、67.76(C−6)、66.85、66.57、61.18(C−6’)、52.79(OCH3)、21.20(CH3)、20.84(CH3)、20.69(CH3)、20.67(CH3)、20.64(CH3)、20.54(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 824.18573([M+Na]+、C33H39NO22Na+の要求値824.18559)。計算値C33H39NO22:C、49.44%;H、4.90%;N、1.75%。実測値:C、49.64%;H、4.88%;N、2.07%。
【0156】
2-(ペンタ-4-エニルオキシカルバモイル(enyloxycarbamoyl))-エチルアミン(20)。
乾燥DCM(7mL)中のペンタ-4-エノール-1(0.97g、11.26mモル)およびクロロぎ酸4-ニトロフェニル(2.3g)の溶液に、Py(0.92mL)を徐々に添加した。30分後、得られた混合物をDCM(10mL)中の1,2-ジアミノエタン(2mL)の溶液に添加した。20分後、混合物を塩水で洗浄し、DCM画分を濃縮した。シリカゲル上で残留物のクロマトグラフィーを行い(DCM−MeOH=1:1〜0:1)、生成物7を淡黄色シロップとして得た(1.11g;57%)。
1H−NMR(CDCl3):δH5.88〜5.74(m,1H,CH=CH2)、5.15〜4.90(m,3H,NH,CH=CH2)、4.06(t,2H,J6.6Hz,CH2O)、3.21(t,2H,J6.0Hz,CH2NHCO)、2.81(t,2H,CH2NH2)、2.16〜2.06(m,2H,CH2CH=CH2)、1.76〜1.60(m,2H,CH2CH2CH2)。13C−NMR(CDCl3):δ156.90(C=O)、137.59(CH=CH2)、115.12(CH=CH2)、64.29(CH2O)、42.89(CH2N)、41.34(CH2N)、29.98(CH2)、28.24(CH2)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 173.12849([M+H]+、C8H17N2O2+の要求値173.12845)。
【0157】
3-O-アセチル-6-O-(2,5-ジニトラ-7-オキサ-6-オキソ-ドデカ-11-エノイル)-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-α-D-グルコピラノース(21)。
DCM中の化合物20(250mg)の溶液に、化合物19(884mg、1.1mモル)の溶液、次いでEt3N(300μL)を添加した。沸点より低温に維持しつつ時々加熱して1時間後、TLC(ヘキサン:アセトン=1:1)で反応の完了を確認した。混合物を濃縮し、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(ヘキサン:アセトン=1:1)、表記化合物21を得た(550mg、60%)。
[α]D+0.8°(c1,CHCl3)。1H−NMR(CDCl3):δH5.84〜5.76(m,1H,−CH=CH2)、5.76(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.53(dd,1H,J2,31.4Hz,J3,42.3Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J3’,4’3.5Hz,J4’,5’0.9Hz,H−4’)、5.23(ブロード s,1H,NH)、5.18(dd,1H,J2’,3’8.2Hz,J3’,4’10.4Hz,H−2’)、5.08〜4.97(m,4H,H−3’,NH,−CH=CH2)、4.63(d,1H,H−1’)、4.35(m,1H,H−2)、4.22(dd,1H,J6a,52.0Hz,J6a,6b11.6Hz,H−6a)、4.18〜4.09(m,3H,H−6b,H−6’a,H−6’b)、4.07(m,2H,CH2)、3.95(td,1H,J4’,5’1.0Hz,J5’,6a’〜J5’,6b’=7.3Hz,H−5’)、3.90(m,1H,H−5)、3.77(s,3H,CH3)、3.64(d,1H,H−4)、3.32(ブロード s,4H,CH2N)、2.17、2.10、2.08、2.03、1.98(5s,15H,OAc)、2.14〜2.10(m,2H,CH2)、1.75(s,3H,CH3)、1.74〜1.68(m,2H,CH2)。13C−NMR(CDCl3):δ170.37(C=O)、170.28(C=O)、170.07(C=O)、169.49(C=O)、169.25(C=O)、169.01(C=O)、157.03(C=O)、156.27(C=O)、137.53(−CH=CH2)、115.20(−CH=CH2)、105.64(C−ピルビン酸塩)、102.37(C−1’)、97.71(C−1)、77.32、73.93、70.88、70.79、69.84,68.89、67.21、66.87、64.50(CH2)、64.12(CH2)、61.99(CH2)、52.69(OCH3)、41.31(CH2)、41.06(CH2)、30.00(CH2)、28.19(CH2)、21.15(CH3)、20.86(CH3)、20.70(CH3)、20.66(CH3)、20.55(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 857.27929([M+Na]+、C35H50N2O21Na+の要求値857.27983)。計算値C35H50N2O21:C、50.36%;H、6.04%、N、3.36%。実測値:C、50.37%;H、6.15%;N、3.35%。
【0158】
6-O-(2,5-ジニトラ-7-オキサ-6-オキソ-ドデカ-11-エノイル)-1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-α-D-グルコピラノース(22)。
保護誘導体21(0.53g、0.63mモル)を、乾燥MeOH(3.5mL)中に溶解し、MeOH中のNaOMe(1M、0.64mL)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、次いで濃縮し、得られた固体を水(3mL)中に溶解した。1時間後、メチルエステルの加水分解が完了した。溶液を酢酸で中和し、濃縮し、次のステップで直接用いた。少量の試料を、1%AcOHを含有する水−MeOH中、C−18担体でのHPLCクロマトグラフィーにより精製した。
[α]D+19°(c1,H2O)。1H NMR(D2O)δ:5.90(m,1H,CH=CH2)、5.62(d,1H,J1,24.9Hz,H−1)、5.10〜5.01(m,2H,CH=CH2)、4.44(d,1H,J1’,2’7.8Hz,H−1’)、4.41〜4.34(m,2H,H−3,H−6a)、4.23(dd,1H,J5,6b5.3Hz,J6a,6b12.0Hz,H−6b)、4.18(m,1H,H−2)、4.08〜4.01(m,3H,H−5,OCH2)、3.92(d,1H,J3’,4’3.4Hz,H−4’)、3.83〜3.74(m,3H,H−4,H−6’a,H−6’b)、3.69(m,1H,H−5’)、3.64(dd,1H,J2’,3’9.9Hz,H−3’)、3.55(m,1H,H−2’)、3.24(s,4H,NCH2)、2.12(m,2H,CH2)、1.72(m,2H,CH2)、1.64(s,3H,CH3)。13C−NMR(CDCl3):δ181.28(C=O)、159.23(C=O)、158.41(C=O)、138.85(−CH=CH2)、115.26(−CH=CH2)、107.36(C−ピルビン酸塩)、105.15(C−1’)、96.74(C−1)、78.53、75.61、75.37、72.84、71.04、69.54、68.87、68.52、65.29(CH2)、64.34(CH2)、61.33(CH2)、40.56(CH2)、40.35(CH2)、29.66(CH2)、27.75(CH2)、21.76(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 609.21365([M]−)、C24H37N2O16−の要求値609.21376)。計算値C24H38N2O16:C、47.21%;H、6.27%;N、4.59%。実測値:C、46.67%;H、6.23%;N、4.57%。
【0159】
6-O-(2,5-ジニトラ-7-オキサ-6-オキソ-ドデカ-11-エノイル)-1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-α-D-グルコピラノース(23)。
脱保護されたラクトース誘導体22を、HEPES緩衝液[2mL、1.6M、10mM MnCl2、ウシ血清アルブミン(BSA、0.8mg/mL)、水(7.14mL)]中に溶解後、アルカリホスファターゼ(54μL)およびUDP−グルコース(0.58g;1.5当量)を添加した。α-(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ/UDP−4’−Gal−エピメラーゼ(0.7mL)を反応混合物に添加し、それを37℃でインキュベートした。18時間後、NMRで反応が完了したことを確認した。反応混合物を濃縮した。残留物をメタノールで処理し、固体沈殿物を濾過・除去し、メタノールですすいだ。組み合わせたメタノール溶液画分を濃縮し、それに対してシリカゲル上でクロマトグラフィーを行った(DCM−MeOH(AcOHの4%)=6:4〜4:5)。生成物を水中に溶解し、0.2μmの膜を通して濾過し、凍結乾燥し、白色粉末23を得た(394mg;80%)。
[α]D+61°(c1,H2O)。1H−NMR(D2O):δH5.90(m,1H,CH=CH2)、5.73(d,1H,J1,24.9Hz,H−1)、5.10〜5.02(m,2H,CH=CH2)、4.94(d,1H,J1’’,2’’4.1Hz,H−1’’)、4.51(d,1H,J1’,2’7.7Hz,H−1’)、4.42〜4.36(m,3H,H−3,H−6a,H−5’’)、4.31(t,1H,J2,34.0Hz,H−2)、4.24(dd,1H,J5.6b5.4Hz,J6a,6b12.0Hz,H−6b)、4.07(t,2H,J6.5Hz,OCH2)、4.04〜4.01(m,3H,H−4’,H−4’’,H−5)、3.94〜3.90(m,2H,H−5’,H−3’’)、3.86〜3.68(m,7H,H−4,H−3’,H−6a’,H−6b’,H−2’’,H−6a’’,H−6b’’)、3.58(dd,1H,J2’,3’10.3Hz,H−2’)、3.24(bs,4H,NCH2)、2.14(m,2H,CH2)、1.73(m,5H,CH2,CH3)、1.65(s,3H,CH3)。13C−NMR(D2O):δ174.53(C=O)、159.85(C=O)、159.00(C=O)、139.44(−CH=CH2)、115.84(−CH=CH2)、106.71(C−ピルビン酸塩)、106.10(C−1’’)、101.13(C−1’)、97.82(C−1)、79.44、77.89、76.38、76.10、73.01、71.62、70.06、69.87、69.60、69.30、65.90(CH2)、64.99(CH2)、61.39(CH2)、61.12(CH2)、41.15(CH2)、40.96(CH2)、30.26(CH2)、28.36(CH2)、21.85(CH3)。エレクトロスプレーイオン化MS m/z 795.26438([M+Na]+)、C30H48N2O21Na+の要求値795.26418。計算値C30H47N2O21:C、45.34%;H、5.96%;N、3.53%。実測値:C、45.38%;H、6.11%;N、3.80%。
【0160】
実施例9
化合物23とアクリルアミド(EPI−29)との共重合体の合成
【化13】
【0161】
トリス緩衝液(0.2M、pH9;7.32mL)中の、化合物23(471mg;0.61mモル)およびアクリルアミド(264mg;3.7mモル)の溶液を、アルゴンでパージし、次いでトリス緩衝液(74.3μL)中の過硫酸アンモニウム(7.43mg)の溶液を添加し、アルゴンでパージした。TEMED(37.15μL)を反応混合物に添加し、それを短時間ボルテックスし、次いで室温で一晩放置した。混合物をエタノール(40mL)で希釈した。沈殿物を採取し、エタノールで洗浄し、水で除去し、脱イオン水(2L)に対して4回透析した。ポリマーの透析溶液を0.2μmの膜を通して濾過し、凍結乾燥し、生成物EPI−29を白色粉末として得た(390mg)。NMRは、リガンドの取り込みが5モル%であることを示した。
【0162】
実施例10
メタクリレート単量体{2-{1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D−ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-α-D-グルコピラノース}-6-イルオキシカルボニルアミノ}-カルバミン酸5-[2-(2-メチル-アクリロイルアミノ)-エチルスルファニル]-ペンチルエステル(25)の合成
【化14】
【0163】
{2-{1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノース}-6-イルオキシカルボニルアミノ}-エチル]-カルバミン酸5-(2-アミノ-エチルスルファニル)-ペンチルエステル(24)。
化合物23(91mg、0.107mモル)を、石英チューブ内の脱気水(3mL)中に溶解し、アルゴンでパージし、次いでシステアミン塩酸塩(244mg、2.14mモル)を混合溶液に添加し、混合物をアルゴンでパージした。それに対し、UVランプを冷却するための短い中断を有する15分サイクル(5回)にわたり、アルゴン下、UV光(Ray−Pen)で照射した。反応の生成物を、0.1%TFAを有する水−メタノールを用い、逆相シリカゲルC18上で精製した。濃縮および凍結乾燥後、生成物24を白色泡として得た(94mg、100%)。
[δ]D+440(c1.12,水)。1H−NMR(D2O):δ5.74(d,1H,J1,24.95Hz,H−1)、4.96(d,1H,J1’’,2’’3.94Hz,H−1’’)、4.52(d,1H,J1’,2’7.8Hz,H−1’)、4.42〜4.37(m,3H,J6a,6b11.9Hz,H−3,H−6a,H−5’’)、4.32(dd,1H,J2,34.0Hz,H−3)、4.25(dd,1H,J5,6b5.6Hz,H−6b)、4.12〜4.00(m,5H,H−5,H−4’,H−4’’,OCH2)、3.96〜3.68(m,9H,H−4,H−3’,H−5’,H−6a’,H−6b’,H−2’’,H−3’’,H−6a’’,H−6b’’)、3.60(dd,1H,H−2’)、3.27〜3.20(m,6H,NCH2)、2.85(t,2H,J6.7Hz,SCH2)、2.61(t,2H,J7.3,SCH2)、1.55(s,3H,CH3)、1.54〜1.52(m,4H,CH2)、1.50〜1.48(m,3H,CH2)。13C−NMR(D2O):δ174.27(C=O)、159.86(C=O)、158.99(C=O)、106.54(C−ピルビン酸塩)、106.09(C−1’’)、101.13(C−1’)、97.88(C−1)、79.43、77.71、76.39、76.16、73.03、71.63、70.07、69.88、69.62、69.59、69.35、66.34(CH2)、65.00(CH2)、61.41(CH2)、61.15(CH2)、41.18(CH2)、41.17(CH2)、39.27(CH2)、31.45(CH2)、29.06(CH2)、29.01(CH2)、28.69(CH2)、25.14(CH2)、21.85(CH3)。HRMS−ES m/z 872.29460[M+Na]+、C32H55N3O21SNa+の要求値872.29410。
【0164】
{2-{1,2-O-[(R)-1-(カルボキシ)エチリデン]-4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-β-D-グルコピラノース}-6-イルオキシカルボニルアミノ}-カルバミン酸5-[2-(2-メチル-アクリロイルアミノ)-エチルスルファニル]-ペンチルエステル(25)。
システアミン付加体24(38mg、0.44mモル)を、水(3mL)中に溶解し、N-メタクリルオキシスクシンイミド(30mg、0.16mモル)、次いで乾燥重炭酸ナトリウムをpH8に達するまで添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで5M酢酸で酸化した。1%酢酸を有する水−メタノールを用いて逆相シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い、凍結乾燥後、純粋生成物25を白色泡として得た(28mg、69%)。
[α]D+43.7°(c1.24,水)。1H−NMR(D2O):δ5.71m(s,1H,C=CH2)、5.69(d,1H,J1,24.8Hz,H−1)、5.46(s,1H,C=CH2)、4.95(d,1H,J1’,2’’3.9Hz,H−1’’)、4.52(d,1H,J1’,2’7.7Hz,H−1’)、4.42〜4.36(m,3H,H−3,H−6a,H−5’’)、4.30〜4.21(m,2H,H−2,H−6b)、4.10〜4.00(m,3H,H−5,H−4’,H−4’’)、3.94〜3.90(m,2H,H−5,H−3’’)、3.86〜3.76(m,4H,H−6a’,H−6b’,H−2’’,H−6a’’)、3.74〜3.67(m,3H,H−4,H−3’,H−6b’’)、3.59(dd,1H,J2’3’7.9Hz,H−2’)、3.47(t,J6.0Hz,NCH2)、3.24(bs,4H,NCH2)、2.75(t,2H,J6.7Hz,SCH2)、2.61(t,2H,J7.1Hz,SCH2)、1.93(s,3H,CH3)、1.69(s,3H,CH3)、1.66〜1.58(m,4H,CH2)、1.50〜1.40(m,2H,CH2)。13C−NMR(D2O):δ174.59(C=O)、159.78(C=O)、158.91(C=O)、139.88(H2C=CCH3)、121.96(H2C=CCH3)、106.76(C−ピルビン酸塩)、106.6(C−1’’)、101.08(C−1’)、97.74(C−1)、79.42、77.84、76.32、76.05、72.97、71.57、70.01、69.82、69.58、69.54,69.22、66.33(CH2)、66.32(CH2)、64.95(CH2)、61.39(CH2)、61.34(CH2)、61.12(CH2)、61.07(CH2)、41.11(CH2)、39.82(CH2)、31.85(CH2)、31.16(CH2)、29.17(CH2)、28.62(CH2)、25.15(CH2)、21.85(CH3)、18.53、18.51(CH3)。HRMS−ES m/z 916.32261[M−H]、C36H58N3O22Sの要求値916.32382。
【0165】
実施例11
化合物25とHPMA(HPMA−B2)との共重合体の合成
【化15】
【0166】
化合物25(27mg、0.03mモル)およびHPMA単量体(72mg、0.5mモル)を、脱気した酢酸塩緩衝液(0.1M、pH4)中に溶解した。溶液に対して真空下で超音波処理し、次いでアルゴンで飽和させた。過硫酸アンモニウムの溶液(酢酸塩緩衝液20μL中2mg)を混合物に添加し、それに対して真空下で超音波処理し、アルゴンで飽和させた。最後に、システアミン溶液(酢酸塩緩衝液28μL中0.14mg)を反応混合物に添加し、数秒間ボルテックス後、それを50℃で一晩インキュベートした。21時間後、溶液をアセトン(8mL)で処理した。沈殿物を分離し、次いで水中に溶解し、脱イオン水に対して透析し、次いで0.45μmの膜を通して濾過し、凍結乾燥し、生成物を白色粉末(25mg)として得た。D2O中での1H-NMRは、リガンドのHPMA−B2ポリマーへの取り込みが5モル%であることを示した。
【0167】
実施例12
【化16】
【0168】
3-O-アセチル-6-O-ベンジル-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-4-O-[2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D−ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-α-D-グルコピラノース(26)。
酢酸塩17(0.973g;1.34mモル)を、乾燥メタノール(2.5mL)中に溶解し、0.5M NaOMe(2.8mL)を添加した。室温で1時間後、混合物をDowex H+樹脂で処理し、濾過し、濃縮し、白色泡を得た。生成物(0.764g)を、水(15mL)中に溶解し、HEPES緩衝液(4.58mL)、次いでDTT溶液(1.14mL)およびアルカリホスファターゼ(114μL)を添加した。次いで、UDP−Glc(1.23g)、次いで融合酵素(1.5mL)を混合物に添加した。反応物を37℃で一晩インキュベートした。次いで、混合物を水で希釈し、Dowex H+樹脂で酸化し、濾過し、上清を濃縮した。乾燥メタノール(25mL)中の残留物の懸濁液に塩化アセチル(0.25mL)を添加し、混合物を室温で3.5時間撹拌し、次いでピリジンで中和した。固体残留物を濾過・除去し、メタノールですすぎ、濾過物を濃縮し、アセチル化した(ピリジン10mL、無水酢酸10mL、48時間)。数摘のメタノールを混合物に添加し、過剰な試薬をクエンチし、混合物を濃縮し、トルエンと共蒸発させた。粗生成物をヘキサン−アセトン(7:3〜2:1)を用いてシリカゲルカラム上で精製し、純粋表題生成物を白色泡として得た(0.814g;60%)。
NMR(CDCl3):δ7.39〜7.29(m,5H,C6H5)、5.80(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.60(dd,1H,J3’’,4’’3.4Hz,J4’’,5’’1.3Hz,H−4’’)、5.49(t,1H,J2,3=J3,4=2.6Hz,H−3)、5.37(dd,1H,J2’’,3’’11.0Hz,J3’’,4’’3.4Hz,H−3’’)、5.19、(dd,1H,J1’’,2’’3.7Hz,H−2’’)、5.13(dd,1H,J1’,2’7.8Hz,J2’,3’11.8Hz,H−2’)、5.02(d,1H,H−1’’)、4.76(dd,1H,J3’,4’2.9Hz,H−3’)、4.69(d,1H,J12.2Hz,CH2)、4.54〜4.49(m,3H,J5’’,6a’’8.4Hz,H−1’,H−5’’,CH2)、4.37(dd,1H,J5’,6’6.5Hz,J6a’,6b’11.2Hz,H−6a)、4.32(dd,1H,H−2)、4.16(dd,1H,J6a’’,6b’’10.9Hz,H−6a’’)、4.11〜4.06(m,2H,H−6b’,H−6b’’)、4.03(d,1H,H−4’)、3.89〜3.83(m,2H,H−4,H−5’)、3.76(s,3H,OCH3)、3.73(dd,1H,H−5’)、3.69(dd,1H,H6a)、3.63(dd,1H,H−6b)、2.13(s,3H,CH3)、2.11(s,3H,CH3)、2.09(s,3H,CH3)、2.07(s,3H,CH3)、2.05(s,3H,CH3)、2.04(s,3H,CH3)、1.99(s,3H,CH3)、1.92(s,3H,CH3)、1.75(s,3H,CH3)。HRMS−ES m/z 1037.31122[M+Na]+、C45H58O26Na+の要求値1037.31085。
【0169】
3-O-アセチル-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-4-O-[2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-α-D-グルコピラノース(27)。
化合物26(0.804g;0.79mモル)を、メタノール(5mL)中に溶解し、炭素に担持された10%パラジウムの存在下で水素化した。2時間後、混合物をメタノールで希釈した。触媒を濾過・除去し、メタノールですすいだ。濾過物を濃縮し、純粋生成物を白色固体として得た(0.73g;100%)。
NMR(CDCl3):δ5.77(d,1H,J1,25.1Hz,H−1)、5.60(dd,1H,J3’’,4’’3.4Hz,J4’’,5’’1.1Hz,H−4’’)、5.49(t,1H,J2,3=J3,42.4Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J2’’,3’’11.0Hz,H−3’’)、5.22〜5.17(m,2H,J1’,2’7.9Hz,J2’,3’10.8Hz,J1’’,2’’3.8Hz,H−2’,H−2’’)、5.01(d,1H,H−1’’)、4.86(dd,1H,J3’,4’2.8Hz,H−3’)、4.67(d,1H,H−1’)、4.56(m,1H,H−5’’)、4.40(dd,1H,J5’6a’6.5Hz,J6a’,6b’11.2Hz,H−6a’)、4.35〜4.33(m,1H,H−2)、4.19〜4.05(m,4H,H−4’,H−6b’,H−6a’’,H−6b’’)、4.89〜4.78(m,4H,H−4,H−5,H−6a,H−5’)、4.77(s,3H,OCH3)、4.68〜4.62(m,1H,H−6b)、2.14(s,3H,CH3)、2.12(s,3H,CH3)、2.11(s,3H,CH3)、2.08(s,3H,CH3)、2.07(s,3H,CH3)、2.06(s,3H,CH3)、2.04(s,3H,CH3)、2.00(s,3H,CH3)、1.76(s,3H,CH3)。HRMS−ES m/z 947.26346[M+Na]+、C38H52O26Na+要求値947.26390。
【0170】
3-O-アセチル-4-O-[2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-6-O-(4-ニトロフェニルオキシカルボニル)-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-α-D-グルコピラノース(28)。
脱ベンジル化生成物27(0.714g;0.772mモル)およびクロロぎ酸p-ニトロフェニル(0.24mg;1.16mモル)を、乾燥DCM(3mL)中に溶解し、ピリジン(0.19mL;2.3mモル)を混合物に滴下添加した。1時間後、混合物をDCMで希釈し、塩水で洗浄し、濃縮し、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い(ヘキサン−アセトン=2:1〜1:1)、純粋生成物28を白色泡として得た(82mg;97%)。
NMR(CDCl3):δ8.30(d,2H,J3.1Hz,C6H4)、7.40(d,2H,C6H4)、5.80(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.60(dd,1H,J3’’,4’’3.3Hz,J4’’,5’’1.2Hz,H−4’’)、5.54(t,1H,J2,3=J3,42.1Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J2’’,3’’11.0Hz,J3’’,4’’3.4Hz,H−3’’)、5.23〜5.18(m,2H,J1’,2’7.8Hz,J2’,3’10.7Hz,J1’’,2’’3.7Hz,H−2’,H−2’’)、5.04(d,1H,H−1’’)、4.86(dd,1H,J3’,4’2.8Hz,H−3’)、4.72(d,1H,H−1’)、4.56〜4.52(m,2H,J6a,6b11.3Hz,H−6a,H−5’’)、4.42〜4.34(m,3H,H−2,H−6a’,H−6a’’)、4.16(dd,1H,J5,6a8.4Hz,H−6b)、4.12〜4.06(m,4H,H−5,H−4’,H−6b’,H−6b’’)、3.84〜3.79(m,2H,H−4,H−5’)、3.78(s,3H,CH3)、2.14(s,3H,CH3)、2.13(s,3H,CH3)、2.12(s,3H,CH3)、2.08(s,3H,CH3)、2.07(s,3H,CH3)、2.06(s,3H,CH3)、2.04(s,3H,CH3)、2.00(s,3H,CH3)、1.80(s,3H,CH3)。HRMS−ES m/z 1112.27015[M+Na]+、C45H55NO30Na+の要求値1112.27011。
【0171】
3-O-アセチル-4-O-[2,3,6-トリ-O-アセチル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-6-O-[3-(2-メタクリロイルアミノ)プロピル]カルバモイル-α-D-グルコピラノース(29)。
化合物28(0.39g;0.36mモル)およびN-(3-アミノプロピル)メタクリルアミノ塩酸塩(83mg;0.47mモル)を乾燥DCM(6mL)中に溶解し、トリエチルアミン(0.2mL)を添加した。混合物を、TLCが反応の完了を示すまで室温で4時間撹拌した。混合物を濃縮し、それに対してヘキサン−アセトン=11:9を溶媒として、シリカゲル上でクロマトグラフィーを行い、表題化合物29を白色泡として得た(0.377g;96%)。少量の試料を水−メタノール中でHPLC C−8カラムを用いてさらに精製した(生成物を50%メタノール中に負荷し、60%メタノールでカラムから溶出した)。
NMR(CDCl3):δ6.51〜6.47(m,1H,NH)、5.76(d,1H,J1,25.2Hz,H−1)、5.73(s,1H,H2C=C)、5.60(dd,1H,J3’’,4’’3.3Hz,J4’’,5’’1.2Hz,H−4’’)、5.51(t,1H,J2,3=J3,42.1Hz,H−3)、5.38(dd,1H,J2’’,3’’11.0Hz,J3’’,4’’3.3Hz,H−3’’)、5.33(s,1H,H2C=C)、5.31〜5.29(m,1H,NH)、5.22〜5.18(m,2H,J1’,2’7.8Hz,J2’,3’10.7Hz,J1’’,2’’3.7Hz,H−2’,H−2’’)、5.04(d,1H,H−1’’)、4.84(dd,1H,J3’,4’2.9Hz,H−3’)、4.65(d,1H,H−1’)、4.56〜4.53(m,1H,H−5’’)、4.40(dd,1H,J5’,6a’6.3Hz,J6a’,6b’11.2Hz,H−6a’)、4.33〜4.35(m,1H,H−2)、4.27(dd,1H,J5,6a2.3Hz,J6a,6b11.8Hz,H−6a)、4.18〜4.14(m,2H,H−6b,H−6a’’)、4.12〜4.07(m,2H,J5’,6b’6.9Hz,H−6b’,H−6b’’)、4.07(d,1H,H−4’)、3.94〜3.90(m,1H,H−5)、3.84(dd,1H,H−5’)、3.76(s,3H,OCH3)、3.72〜3.69(m,1H,H−4)、3.41〜3.32(m,2H,NCH2)、3.28〜3.20(m,2H,NCH2)、2.14(s,3H,CH3)、2.12(2s,6H,CH3)、2.08(s,3H,CH3)、2.07(s,3H,CH3)、2.06(s,3H,CH3)、2.04(s,3H,CH3)、2.00(s,3H,CH3)、1.97(bs,3H,CH3)、1.77(s,3H,CH3)、1.72〜1.65(m,2H,CH2)。HRMS−ES m/z 1115.35409[M+Na]+、C46H64N2O28Na+の要求値1115.35378。
【0172】
4-O-[4-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-β-D-ガラクトピラノシル]-1,2-O-[(R)-1-(メトキシカルボニル)エチリデン]-6-O-[3-(2-メタクリロイルアミノ)プロピル]カルバモイル-α-D-グルコピラノース(30)。
オクタ酢酸塩29(90mg;0.083mモル)を、乾燥メタノール(3mL)中に溶解し、1Mナトリウムメトキシド(165μL;2当量)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を濃縮し、残留物をD2O中に溶解した。溶液をCO2で中和し、凍結乾燥し、生成物30を白色泡として得た(60mg、98%)。
NMR(D2O):δ5.64(s,1H,H2C=C)、5.62(d,1H,J1,24.9Hz,H−1)、5.44(s,1H,H2C=C)、4.95(d,1H,J1’’,2’’3.9Hz,H−1’’)、4.51(d,1H,J1’,2’7.7Hz,H−1’)、4.41〜4.35(m,3H,H−3,H−6a,H−5’’)、4.25〜4.21(dd,1H,H−6b)、4.18〜4.16(m,1H,H−2)、4.05〜4.01(m,3H,H−5,H−4’,H−4’’)、3.95〜3.90(m,2H,H−5’,H−3’’)、3.85〜3.68(m,7H,J2’,3’10.2Hz,H−4,H−3’,H−6a,H−6b,H−2’’,H−6a’’,H−6b’’)、3.59(dd,H−2’)、3.28(t,2H,J6.9Hz,NCH2)、3.19(t,2H,J6.7Hz,NCH2)、1.93(s,3H,CH3)、1.78〜1.72(m,2H,CH2)、1.63(s,3H,CH3)。ES−HRMS m/z 787.23586([M−H+2Na]+);計算値C29H45N2O20Na2:787.23556。
【0173】
実施例13
化合物30とHPMA(HPMA−B1)との共重合体の合成
【化17】
【0174】
単量体30(39mg、0.04mモル)およびHPMA単量体(101mg;0.7mモル)を、脱気水(1mL)中に溶解し、アルゴンでパージした。過硫酸アンモニウム溶液(脱気水10μL中1mg)、次いでTEMED(1μL)を混合物に添加した。反応混合物を50℃で一晩インキュベートした。翌日、それを脱イオン水に対して透析し、水を5回交換し、次いでMilipore膜(0.45μm)を通して濾過し、凍結乾燥し、ポリマーを白色泡(85mg)として得た。
【0175】
実施例14
ヘテロ二官能性ポリマーPPM、PPIおよびEPI−156による、シガ毒素1(Stx1)の阻害
固相競合的阻害アッセイにおいて、PPM、PPIおよびEPI−156の、シガ毒素1型(Stx1)に対する阻害活性について、内因性タンパク質である血清アミロイドP成分(SAP)の存在下または不在下でアッセイした(図6および7を参照)。ポリスチレン製ELISAプレート(Maxisorp(商標)、NUNC、Rochester、NY)を、リン酸塩緩衝生理食塩水(pH7.2)中、16-メルカプトヘキサデカニル配糖体(Kitov P.I.ら、1998年 Carbohyd.Res.307(3−4):361−369頁)としての10μg/Mlの合成Pk−トリサッカライドでコートし、4℃で一晩インキュベートした。すべてのインキュベーション容量は100μL/ウェルであった。0.05%Tweenおよび2.5mM CaCl2(HBSTCa)を補充したHEPES緩衝生理食塩水(20mM HEPESおよび0.85%NaCL、pH7.2)を、各インキュベーション間での3回のプレートの洗浄に用いた。コーティングステップ後、HBSTCaに0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充し、すべてのインキュベーションで希釈剤として用いた。阻害剤を、シガ毒素1型(4ng/mL)および血清アミロイドP成分(20mg/mL、Calbiochem、San Diego、CA)またはHBSTCa+0.1%BSA(SAP陰性の形式用)と予備混合し、次いで室温で2時間のインキュベーションの間に混合物をウェルに添加した。毒素を、抗Stx1ハイブリドーマ(ATCC CRL 1794)由来のマウス腹水の1/1000の希釈物、次いでヤギ抗マウスIgG西洋わさびペルオキシダーゼ二次抗体(Kirkegaard and Perry Laboratories、Gaithersburg、MD)の1/2000の希釈物を用いて検出した。テトラメチルベンジジン(Sigma、MO)で10分間発色させ、反応を1Mリン酸で停止させ、吸光度を450nmの波長で測定した。
【0176】
阻害試験では、ポリマー足場上での2つの異なる官能基の予備配置が極めて重要であることが示された。「予備組織化された(pre−organized)」ポリマーPPIが、SAPの存在下で、Stx1に対する阻害活性において大幅な増大(6000倍)を示した。一方、「ランダム」ポリマーPPMでは、結合用官能基の取り込み度合いが実質的に高まるにもかかわらず、SAP依存性の活性がほとんど欠如している(図8および表1を参照)。この結果は、向かい合う複合体の誘導が活性の促進にとっての必要条件である一方、(例えばポリマーPPMにより)単にStx1の直近にもたらされるSAPが阻害に影響を及ぼすには不十分であることを示唆する。
【0177】
【表1】
【0178】
リガンド4が結合しているポリマーの種類により、SAP依存性の阻害力がさらに改善されることを示す。したがって、ポリマーEPI−156は、優れた阻害活性を示したが(IC50(SAPを伴う場合)=2〜4μg/L)、活性がPk−トリサッカライド単位に基づいて計算される場合、すべての予め報告されたPkを有するポリマーより優れるだけでなく、デンドリマー型Stx拮抗剤であるPk−STARFISHの阻害力よりも優れる(Kitov P.I.ら、2000年、Nature 403:669−672頁)。阻害へのSAPの関与の必要性は、SAPの不在下ではEPI−156における活性がほとんど検出されなかったという事実により強調される。
【0179】
実施例15
ヘテロ二官能性ポリマーHPMA−B1およびHPMA−B2によるシガ毒素1(Stx1)の阻害
上記実施例14と同様に、固相拮抗的阻害アッセイにおいて、HPMA−B1およびHPMA−B2のシガ毒素1型(Stx1)に対する阻害活性について、内因性タンパク質である血清アミロイドP成分(SAP)の存在下または不在下でアッセイした。これらの阻害試験によると、ポリマー足場上での2つの異なる官能基の予備配置および予備配置の最適化が極めて重要であることが再び示された。HPMA−B1およびHPMA−B2は、ヘテロ二官能性リガンドを高分子骨格に結合させるリンカーの長さが異なる。図9に示されるように、HPMA−B2はHPMA−B1(12.8μg/mL)よりも大幅に小さいIC50値(0.065μg/mL)を有し、これはポリマー上でのヘテロ二官能性リガンドの予備配置の最適化が重要であることを示す。
【0180】
実施例16
Vero細胞の細胞毒性アッセイにおけるEPI−156のインビトロでの有効性
BAIT2、EPI−156およびEPI−153をそれぞれ、二重蒸留した脱イオン水中に溶解した。精製したStx1およびStx2のストック溶液のそれぞれを、未補充MEM中で、400ng/mlおよび2mg/mlの濃度に調製した。各ポリマー溶液の未補充MEM中の連続希釈物を、96ウェルマイクロタイタープレートを用いて調製した。次いで、Stx1またはStx2ストック溶液5mLを、希釈プレート内の適切な列の各ウェル(80mLの最終容量)に添加した。希釈プレートの各ウェル内の溶液を完全に混合し、マイクロタイタープレートを37℃で1時間インキュベート後、各ウェルから20mLを、コンフルエントなVero細胞単層およびウシ胎仔血清を補充したMEM200mLを有する96ウェルマイクロタイタープレートの対応するウェルに移した。Vero細胞のマイクロタイタープレートを、5%CO2/95%大気の雰囲気下、37℃のインキュベーター内でさらに48時間インキュベートした。次いで、Armstrong G.D.ら、1991年 J.Infect.Dis.164:1160−1167頁に記載のように、Vero細胞単層をメタノールで固定し、細胞毒性を測定した。
【0181】
Vero細胞毒性アッセイの結果を図10に示す。ヘテロ二官能性BAIT2は、SAPの存在下で十価リガンドDAISY−1/8と同等の活性を示す。さらに、高分子足場上に存在する場合、BAIT2の活性が少なくとも3倍に増幅され、EPI−156にとって前例のないレベルの1ng/mLに達した。ヨウ素125での放射性標識はその活性を実質的に変化させなかった。ラクトース類似体EPI−153は、3mg/mLでVero細胞の保護を全く示さなかった(データは示さず)。
【0182】
実施例17
HuSAPトランスジェニックマウスにおける、EPI−156のインビボでの有効性
先行技術である化合物BAIT2(Kitov P.I.ら、2008年、Angew.ChemieIntl.Ed.47:672−676頁)およびそのポリマー類似体(EPI−156)について、インビボで試験した。不活性なラクトース二糖配列を有することからStx1と相互作用しないポリマーEPI−153(図11を参照)を、ネガティブコントロールとして用いた。一方、DAISY−1/8、十価 Pk−デンドリマーがシガ様毒素、Stx1およびStx2に対する保護をインビボで示すことが以前に報告されているので(Mulvey G.L.、2003年、J.Infec.Dis.187:640−649頁)、それをポジティブコントロールとして用いた。
【0183】
マウス中毒モデル(Armstrong G.D.ら、2006年、J.Infect.Dis.193:1220−1124頁)では、Stx1や先行技術および本発明の様々な阻害ポリマーの投与後にマウスの生存が測定される。HuSAPマウスに、Stx1(20ng/g)を、尾静脈を介して静脈内注射した。それらにおけるシガトキセミアの徴候について、4時間ごとに監視した。シガトキセミアの徴候を示すマウスを安楽死させた。
【0184】
図12で見られるように、シリーズ1は、0.5mg/マウスでのDAISY1/8の投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。シリーズ2は、50μg/マウスでのEPI−156の投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。シリーズ3は、0.6mg/マウスでのEPI−153および600μg/マウスでのHuSAPの投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。シリーズ4は、50μg/マウスでのEPI−156および600μg/マウスでのHuSAPの投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。シリーズ5は、4mg/マウスでのBAIT2の投与後でのマウスのパーセント生存率を示す。
【0185】
すべてのHuSAPトランスジェニックマウスは、わずか50μg/マウスでのEPI−156と同時投与される場合、致死性の20ng/gのStx1の注射から救われた。すべての他の試験化合物の中でもDAISY−1/8単独はマウス数匹における徴候の発現を遅延させることによっていくらか有効であり、そこでは10倍多い量のDAISY−1/8が必要であることが示された。一価リガンドBAIT2は50倍高い濃度であっても効果を示さなかった。
【0186】
実施例18
標識EPI−156の器官局在化
これらの試験においては、EPI−156をチロシン残基の付加により修飾し、ヨード化を可能にした(図11を参照)。放射性標識EPI−156(EPI−156−125I)およびシガ毒素(Stx1−125I)の器官局在化を、ヒトSAPを発現するトランスジェニックマウス(HuSAPマウス)への静脈内注射後に測定した(Zhao X.ら、1992年、Journal of Biochemistry 111:736−738頁)。HuSAPマウスは、900ngのEPI−156−125I(1.14×107CPM/μg)を静脈内の尾静脈注射を介して受け、それらを4時間後に安楽死させた。安楽死後、異なる器官内で放射活性を計数した。
【0187】
図13Aはこのアッセイからの結果を示す。黒バーは、EPI−156−125IおよびHuSAPの混合物の器官分布を示す。一方、白バーは、EPI−156−125I、HuSAPおよびStx1の混合物の器官分布を示す。図13Aからは、ヘテロ二官能性高分子リガンドが肝臓に誘導されることが認められうる。事実、EPI−156−125Iの95%超は、特に肝臓内に局在化された。Stx1の同時注射による、4時間後に肝臓内に見出されるポリマーの増加量はごくわずかであった。
【0188】
図13Bでは、マウスは、20ng/gのStx1−125I(4.81×106CPM/μg)を、尾静脈注射を介して受けた。黒バーは、Stx1およびHuSAPの混合物の器官分布を示す。一方、白バーは、Stx1、HuSAPおよび非標識EPI−156の混合物の器官分布を示す。図13Bから、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの不在下では毒素Stx1の腎臓および肺への誘導が認められたが、本発明の多価ヘテロ二官能性ポリマーの存在下では毒素Stx1が、腎臓および肺に誘導されずに肝臓に誘導されることが認められうる。
【0189】
125I−標識Stx1がヒトHuSAPにおけるトランスジェニックマウスに注射される場合、10%の放射活性が肝臓内で見出された(図13Bを参照)。毒素の大部分が、肺および腎臓だけでなく、脳(5%)にも局在化された。ヘテロ二官能性ポリマーEPI−156の同時注射により、これらの重要器官由来の毒素のほぼ70%が肝臓に移された(図13Bを参照)。
【0190】
ヘテロ二官能性ポリマーEPI−156が注射による、毒素の器官分布を変更する能力は、マウス中毒モデルにおいてEPI−156で処理されたマウスの生存率が100%であることを説明しうる(図12を参照)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的活性を示す生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるかまたは前記生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型と、に結合するための多価ヘテロ二官能性ポリマーであって、
前記ポリマーに結合されており、(a)前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基、および(b)前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を有する、複数のヘテロ二官能性リガンドを含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記ポリマーと、生物学的標的と、エフェクター鋳型とで三元複合体を形成するように、前記ポリマー上に予備配置(pre-arranged)される、多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項2】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項3】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項4】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項5】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が共通の原子に結合され、かつ
前記共通の原子は直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項6】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が、直接にまたは任意のリンカーを介して互いに結合され、かつ
前記第1の官能基または前記第2の官能基のいずれかは、直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項7】
前記第1の官能基が多価生物学的標的に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項8】
前記第1の官能基が細菌毒素に結合する、請求項7に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項9】
前記毒素が、シガ毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素、およびコレラ毒素からなる群から選択される、請求項8に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項10】
前記第1の官能基がトリサッカライドである、請求項9に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項11】
前記トリサッカライドがPk−トリサッカライドである、請求項10に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項12】
前記第1の官能基がウイルス粒子に結合する、請求項7に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項13】
前記第1の官能基が血球凝集素およびノイラミニダーゼからなる群から選択される受容体に結合する、請求項12に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項14】
前記第1の官能基がノイラミン酸誘導体である、請求項13に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項15】
前記第1の官能基がウイルスレクチンに結合する、請求項12に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項16】
前記第1の官能基が癌細胞の細胞表面受容体に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項17】
前記第1の官能基がインテグリンに結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項18】
前記第1の官能基がB細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項19】
前記第1の官能基が、2,6-結合シアル酸を有するオリゴ糖である、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項20】
前記第1の官能基が、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有するペプチドまたはその機能誘導体もしくは合成模倣体である、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項21】
アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有する前記ペプチドがシクロペプチドである、請求項20に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項22】
前記第1の官能基が自己免疫疾患に関与する抗体に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項23】
前記第2の官能基がSAPに結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項24】
前記第2の官能基が環状ピルビン酸ケタールである、請求項23に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項25】
前記第2の官能基が抗体に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項26】
前記第2の官能基がスルホンアミドである、請求項25に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項27】
前記第2の官能基がスルファチアゾールである、請求項25に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項28】
前記ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項29】
生物学的活性を示す生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるかまたは前記生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、式:
【化1】
で表される多価ヘテロ二官能性ポリマーであって、式中、
「X」は前記多価ポリマーの高分子骨格を示し;
「MO」はヘテロ二官能性リガンドを示し、ここで「M」は前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基を示し、かつ「O」は前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を示し;
「Y」は「MO」を高分子骨格またはその内部に結合する任意のリンカーを示し;かつ
「n」は意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドが前記ポリマー内に存在するように選択される整数を示す、多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項30】
前記ポリマー上のヘテロ二官能性リガンドの数が、前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型上の受容体の数と同じかまたはそれより大きくなるように、「n」が選択される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項31】
前記第1の官能基が多価生物学的標的に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項32】
前記第1の官能基が細菌毒素に結合する、請求項31に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項33】
前記毒素が、シガ毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素およびコレラ毒素からなる群から選択される、請求項32に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項34】
前記第1の官能基がトリサッカライドである、請求項33に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項35】
前記トリサッカライドがPk−トリサッカライドである、請求項34に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項36】
前記第1の官能基がウイルス粒子に結合する、請求項31に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項37】
前記第1の官能基が血球凝集素およびノイラミニダーゼからなる群から選択される受容体に結合する、請求項36に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項38】
前記第1の官能基がノイラミン酸誘導体である、請求項37に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項39】
前記第1の官能基がウイルスレクチンに結合する、請求項36に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項40】
前記第1の官能基が癌細胞の細胞表面受容体に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項41】
前記第1の官能基がインテグリンに結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項42】
前記第1の官能基がB細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項43】
前記第1の官能基が2,6-結合シアル酸を有するオリゴ糖である、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項44】
前記第1の官能基が、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有するペプチドまたはその機能誘導体もしくは合成模倣体である、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項45】
アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有する前記ペプチドがシクロペプチドである、請求項44に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項46】
前記第1の官能基が自己免疫疾患に関与する抗体に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項47】
前記第2の官能基がSAPに結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項48】
前記第2の官能基が環状ピルビン酸ケタールである、請求項47に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項49】
前記第2の官能基が抗体に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項50】
前記第2の官能基がスルホンアミドである、請求項49に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項51】
前記第2の官能基がスルファチアゾールである、請求項49に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項52】
前記ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項53】
「M」が、前記高分子骨格またはその内部に結合される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項54】
「M」が、前記高分子骨格またはその内部にリンカー「Y」を介して結合される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項55】
「O」が、前記高分子骨格またはその内部に結合される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項56】
「O」が、前記高分子骨格またはその内部にリンカー「Y」を介して結合される、請求項55に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項57】
「M」および「O」が互いにリンカーにより結合される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項58】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項59】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項60】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項61】
生物学的活性を示す生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるかまたは前記生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型と、に結合するための、式:
【化2】
で表される多価ヘテロ二官能性ポリマーであって、式中、
「X」は、前記多価ポリマーの高分子骨格を示し;
「M−N−O」は、ヘテロ二官能性リガンドを示し、ここで「M」は前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基を示し、かつ「O」は前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を示し、かつ「N」は「M」および「N」に結合するリンカーを示し;
「Y」は、前記ヘテロ二官能性リガンドを高分子骨格またはその内部に結合する任意のリンカーを示し;かつ
「n」は、意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドが前記ポリマー内に存在するように選択される整数を示す、多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項62】
前記ポリマー上のヘテロ二官能性リガンドの数が、前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型上の受容体の数と同じであるように、「n」が選択される、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項63】
前記第1の官能基が多価生物学的標的に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項64】
前記第1の官能基が細菌毒素に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項65】
前記毒素が、シガ毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素、およびコレラ毒素からなる群から選択される、請求項64に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項66】
前記第1の官能基がトリサッカライドである、請求項65に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項67】
前記トリサッカライドがPk−トリサッカライドである、請求項66に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項68】
前記第1の官能基がウイルス粒子に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項69】
前記第1の官能基が血球凝集素およびノイラミニダーゼからなる群から選択される受容体に結合する、請求項68に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項70】
前記第1の官能基がノイラミン酸誘導体である、請求項68に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項71】
前記第1の官能基がウイルスレクチンに結合する、請求項68に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項72】
前記第1の官能基が癌細胞の細胞表面受容体に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項73】
前記第1の官能基がインテグリンに結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項74】
前記第1の官能基がB細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項75】
前記第1の官能基が2,6-結合シアル酸を有するオリゴ糖である、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項76】
前記第1の官能基が、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有するペプチドまたはその機能誘導体もしくは合成模倣体である、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項77】
アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有する前記ペプチドがシクロペプチドである、請求項76に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項78】
前記第1の官能基が自己免疫疾患に関与する抗体に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項79】
前記第2の官能基がSAPに結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項80】
前記第2の官能基が環状ピルビン酸ケタールである、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項81】
前記第2の官能基が抗体に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項82】
前記第2の官能基がスルホンアミドである、請求項81に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項83】
前記第2の官能基がスルファチアゾールである、請求項81に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項84】
前記ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択される、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項85】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項86】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項87】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項88】
生体系における生物学的標的の生物学的活性に作用するための方法であって、
生物学的活性を示す前記生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーを、前記生体系に導入するステップを含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、(a)前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基、および(b)前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記ポリマー、前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型の間で三元複合体を形成するように前記ポリマー上に予備配置される、方法。
【請求項89】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が共通の原子に結合され、かつ
前記共通の原子は直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が互いに直接に結合され、かつ
前記第1の官能基または前記第2の官能基のいずれかは、直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
生体系における生物学的標的の存在を検出するための方法であって、
生物学的活性を示す前記生物学的標的と、前記生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーを、前記生体系に導入するステップを含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、(a)前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基、および(b)前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記ポリマーと、前記生物学的標的と、前記エフェクター鋳型とで三元複合体を形成するように、前記ポリマー上に予備配置される、方法。
【請求項95】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ビタミン、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が共通の原子に結合され、かつ
前記共通の原子は直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が互いに直接に結合され、かつ
前記第1の官能基または前記第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
生体系における生物学的標的の生物学的活性に作用するための医薬組成物であって、
(a)生物学的活性を示す前記生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるエフェクター鋳型とに結合するための、複数の予備配置されたヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーであって、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基および前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記ポリマーと、前記生物学的標的と、前記エフェクター鋳型とで三元複合体を形成するように、前記ポリマー上に予備配置される、多価ヘテロ二官能性ポリマー、ならびに
(b)薬学的に許容可能な賦形剤
を含有する、医薬組成物。
【請求項101】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ビタミン、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項102】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項103】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項104】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が共通の原子に結合され、かつ
前記共通の原子は直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項105】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が互いに直接に結合され、かつ
前記第1の官能基または前記第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項106】
多価ヘテロ二官能性ポリマー上に複数のヘテロ二官能性リガンドを予備配置するための方法であって、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、三元複合体を形成するための、生物学的標的に結合するための第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合するための第2の官能基とを含み、
前記方法は、(a)前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型の分子表現を、分子モデリングおよび画像化ソフトウェアを用いて整列するステップと、(b)前記エフェクター鋳型上での2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離を測定するステップと、(c)前記生物学的鋳型上での2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離を測定するステップと、(d)前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型に結合されたときの、前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる平均距離を測定するステップと、を含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記三元複合体の形成を媒介するように設計された前記ポリマー内での前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる前記距離が、前記三元複合体内での前記生物学的標的と前記エフェクター鋳型の間に立体的衝突を導入することなく分子モデリングツールを用いて最小化されるように、前記多価ヘテロ二官能性ポリマー上に予備配置される、方法。
【請求項107】
前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型の前記結合部位のトポロジーが、類似または同一である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型に結合される場合、
前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる前記平均距離が、前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる1つ以上のリンカーの長さを変化させることにより最適化される、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型に結合される場合、
前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる前記平均距離が、前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる任意のリンカーの長さに等しいかまたはそれより短い、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型に結合される場合、
前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる前記距離が、前記第1の官能基および前記第2の官能基に結合するリンカーの長さを変化させることにより変化する、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
ヘテロ二官能性リガンドが、
(a)前記ヘテロ二官能性リガンドの1つの結合点を近接するヘテロ二官能性リガンドの結合点から隔てる平均距離と、前記ヘテロ二官能性リガンドを前記ポリマーまたはその内部に結合させる任意のリンカーの2倍の長さと、前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる任意のリンカーの長さとの和が、前記エフェクター鋳型上での2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離あるいは前記生物学的鋳型上での2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離の長い方よりも長く、かつ
(b)前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる前記リンカーの長さが、1つのヘテロ二官能性リガンドの結合点を近接するヘテロ二官能性リガンドの結合点から隔てる平均距離と、前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる前記リンカーの長さと、前記ヘテロ二官能性リガンドを前記ポリマーまたはその内部に結合させる前記リンカーの2倍の長さとの和よりも短いように、
前記多価ヘテロ二官能性ポリマー上に予備配置される、請求項106に記載の方法。
【請求項112】
治療用途が、癌、細菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、真菌感染、自己免疫疾患、遺伝性および後天性代謝疾患、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される疾患の治療である、前記治療用途における請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマーの使用。
【請求項113】
非治療用途が、診断、地下水中での細菌毒素の検出、血中の抗体の検出、癌細胞の検出、および腫瘍の造影からなる群から選択される、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマーの使用。
【請求項1】
生物学的活性を示す生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるかまたは前記生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型と、に結合するための多価ヘテロ二官能性ポリマーであって、
前記ポリマーに結合されており、(a)前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基、および(b)前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を有する、複数のヘテロ二官能性リガンドを含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記ポリマーと、生物学的標的と、エフェクター鋳型とで三元複合体を形成するように、前記ポリマー上に予備配置(pre-arranged)される、多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項2】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項3】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項4】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項5】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が共通の原子に結合され、かつ
前記共通の原子は直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項6】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が、直接にまたは任意のリンカーを介して互いに結合され、かつ
前記第1の官能基または前記第2の官能基のいずれかは、直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項7】
前記第1の官能基が多価生物学的標的に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項8】
前記第1の官能基が細菌毒素に結合する、請求項7に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項9】
前記毒素が、シガ毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素、およびコレラ毒素からなる群から選択される、請求項8に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項10】
前記第1の官能基がトリサッカライドである、請求項9に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項11】
前記トリサッカライドがPk−トリサッカライドである、請求項10に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項12】
前記第1の官能基がウイルス粒子に結合する、請求項7に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項13】
前記第1の官能基が血球凝集素およびノイラミニダーゼからなる群から選択される受容体に結合する、請求項12に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項14】
前記第1の官能基がノイラミン酸誘導体である、請求項13に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項15】
前記第1の官能基がウイルスレクチンに結合する、請求項12に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項16】
前記第1の官能基が癌細胞の細胞表面受容体に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項17】
前記第1の官能基がインテグリンに結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項18】
前記第1の官能基がB細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項19】
前記第1の官能基が、2,6-結合シアル酸を有するオリゴ糖である、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項20】
前記第1の官能基が、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有するペプチドまたはその機能誘導体もしくは合成模倣体である、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項21】
アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有する前記ペプチドがシクロペプチドである、請求項20に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項22】
前記第1の官能基が自己免疫疾患に関与する抗体に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項23】
前記第2の官能基がSAPに結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項24】
前記第2の官能基が環状ピルビン酸ケタールである、請求項23に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項25】
前記第2の官能基が抗体に結合する、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項26】
前記第2の官能基がスルホンアミドである、請求項25に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項27】
前記第2の官能基がスルファチアゾールである、請求項25に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項28】
前記ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項29】
生物学的活性を示す生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるかまたは前記生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、式:
【化1】
で表される多価ヘテロ二官能性ポリマーであって、式中、
「X」は前記多価ポリマーの高分子骨格を示し;
「MO」はヘテロ二官能性リガンドを示し、ここで「M」は前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基を示し、かつ「O」は前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を示し;
「Y」は「MO」を高分子骨格またはその内部に結合する任意のリンカーを示し;かつ
「n」は意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドが前記ポリマー内に存在するように選択される整数を示す、多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項30】
前記ポリマー上のヘテロ二官能性リガンドの数が、前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型上の受容体の数と同じかまたはそれより大きくなるように、「n」が選択される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項31】
前記第1の官能基が多価生物学的標的に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項32】
前記第1の官能基が細菌毒素に結合する、請求項31に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項33】
前記毒素が、シガ毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素およびコレラ毒素からなる群から選択される、請求項32に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項34】
前記第1の官能基がトリサッカライドである、請求項33に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項35】
前記トリサッカライドがPk−トリサッカライドである、請求項34に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項36】
前記第1の官能基がウイルス粒子に結合する、請求項31に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項37】
前記第1の官能基が血球凝集素およびノイラミニダーゼからなる群から選択される受容体に結合する、請求項36に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項38】
前記第1の官能基がノイラミン酸誘導体である、請求項37に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項39】
前記第1の官能基がウイルスレクチンに結合する、請求項36に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項40】
前記第1の官能基が癌細胞の細胞表面受容体に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項41】
前記第1の官能基がインテグリンに結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項42】
前記第1の官能基がB細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項43】
前記第1の官能基が2,6-結合シアル酸を有するオリゴ糖である、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項44】
前記第1の官能基が、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有するペプチドまたはその機能誘導体もしくは合成模倣体である、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項45】
アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有する前記ペプチドがシクロペプチドである、請求項44に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項46】
前記第1の官能基が自己免疫疾患に関与する抗体に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項47】
前記第2の官能基がSAPに結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項48】
前記第2の官能基が環状ピルビン酸ケタールである、請求項47に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項49】
前記第2の官能基が抗体に結合する、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項50】
前記第2の官能基がスルホンアミドである、請求項49に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項51】
前記第2の官能基がスルファチアゾールである、請求項49に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項52】
前記ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項53】
「M」が、前記高分子骨格またはその内部に結合される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項54】
「M」が、前記高分子骨格またはその内部にリンカー「Y」を介して結合される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項55】
「O」が、前記高分子骨格またはその内部に結合される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項56】
「O」が、前記高分子骨格またはその内部にリンカー「Y」を介して結合される、請求項55に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項57】
「M」および「O」が互いにリンカーにより結合される、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項58】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項59】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項60】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項29に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項61】
生物学的活性を示す生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるかまたは前記生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型と、に結合するための、式:
【化2】
で表される多価ヘテロ二官能性ポリマーであって、式中、
「X」は、前記多価ポリマーの高分子骨格を示し;
「M−N−O」は、ヘテロ二官能性リガンドを示し、ここで「M」は前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基を示し、かつ「O」は前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を示し、かつ「N」は「M」および「N」に結合するリンカーを示し;
「Y」は、前記ヘテロ二官能性リガンドを高分子骨格またはその内部に結合する任意のリンカーを示し;かつ
「n」は、意図される用途に十分な数のヘテロ二官能性リガンドが前記ポリマー内に存在するように選択される整数を示す、多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項62】
前記ポリマー上のヘテロ二官能性リガンドの数が、前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型上の受容体の数と同じであるように、「n」が選択される、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項63】
前記第1の官能基が多価生物学的標的に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項64】
前記第1の官能基が細菌毒素に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項65】
前記毒素が、シガ毒素、易熱性エンテロトキシン、スブチラーゼ細胞毒素、およびコレラ毒素からなる群から選択される、請求項64に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項66】
前記第1の官能基がトリサッカライドである、請求項65に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項67】
前記トリサッカライドがPk−トリサッカライドである、請求項66に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項68】
前記第1の官能基がウイルス粒子に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項69】
前記第1の官能基が血球凝集素およびノイラミニダーゼからなる群から選択される受容体に結合する、請求項68に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項70】
前記第1の官能基がノイラミン酸誘導体である、請求項68に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項71】
前記第1の官能基がウイルスレクチンに結合する、請求項68に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項72】
前記第1の官能基が癌細胞の細胞表面受容体に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項73】
前記第1の官能基がインテグリンに結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項74】
前記第1の官能基がB細胞リンパ腫に関連したシアロ糖タンパク質に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項75】
前記第1の官能基が2,6-結合シアル酸を有するオリゴ糖である、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項76】
前記第1の官能基が、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有するペプチドまたはその機能誘導体もしくは合成模倣体である、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項77】
アルギニン−グリシン−アスパラギン酸を有する前記ペプチドがシクロペプチドである、請求項76に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項78】
前記第1の官能基が自己免疫疾患に関与する抗体に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項79】
前記第2の官能基がSAPに結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項80】
前記第2の官能基が環状ピルビン酸ケタールである、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項81】
前記第2の官能基が抗体に結合する、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項82】
前記第2の官能基がスルホンアミドである、請求項81に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項83】
前記第2の官能基がスルファチアゾールである、請求項81に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項84】
前記ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、ポリサッカライド、デキストラン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、これらの組み合わせ、および他の薬学的に許容可能なポリマーからなる群から選択される、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項85】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項86】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項87】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項61に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマー。
【請求項88】
生体系における生物学的標的の生物学的活性に作用するための方法であって、
生物学的活性を示す前記生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーを、前記生体系に導入するステップを含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、(a)前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基、および(b)前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記ポリマー、前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型の間で三元複合体を形成するように前記ポリマー上に予備配置される、方法。
【請求項89】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ビタミン、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、単細胞寄生虫、古細菌、真菌、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が共通の原子に結合され、かつ
前記共通の原子は直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が互いに直接に結合され、かつ
前記第1の官能基または前記第2の官能基のいずれかは、直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
生体系における生物学的標的の存在を検出するための方法であって、
生物学的活性を示す前記生物学的標的と、前記生物学的標的の存在を検出しうるエフェクター鋳型とに結合するための、予備配置された複数のヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーを、前記生体系に導入するステップを含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、(a)前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基、および(b)前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記ポリマーと、前記生物学的標的と、前記エフェクター鋳型とで三元複合体を形成するように、前記ポリマー上に予備配置される、方法。
【請求項95】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ビタミン、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が共通の原子に結合され、かつ
前記共通の原子は直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が互いに直接に結合され、かつ
前記第1の官能基または前記第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
生体系における生物学的標的の生物学的活性に作用するための医薬組成物であって、
(a)生物学的活性を示す前記生物学的標的と、前記生物学的標的の前記生物学的活性に作用しうるエフェクター鋳型とに結合するための、複数の予備配置されたヘテロ二官能性リガンドを含む多価ヘテロ二官能性ポリマーであって、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記生物学的標的に結合可能な第1の官能基および前記エフェクター鋳型に結合可能な第2の官能基を含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記ポリマーと、前記生物学的標的と、前記エフェクター鋳型とで三元複合体を形成するように、前記ポリマー上に予備配置される、多価ヘテロ二官能性ポリマー、ならびに
(b)薬学的に許容可能な賦形剤
を含有する、医薬組成物。
【請求項101】
前記第1の官能基および前記第2の官能基がそれぞれ、アミノ酸、ペプチド、誘導体化ペプチド、モノサッカライド、オリゴ糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ビタミン、細胞栄養素、抗原決定基、小分子薬剤様化合物、ハプテン、抗体または抗体断片、細胞表面受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項102】
前記生物学的標的が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、細菌、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、単細胞寄生虫、真菌、ウイルス粒子、細菌毒素、ウイルスレクチン、癌細胞、B細胞、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項103】
前記エフェクター鋳型が、多価受容体、多価タンパク質、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド、抗体、膜結合受容体、ならびにこれらの組み合わせおよび類似体からなる群から選択されうる、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項104】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が共通の原子に結合され、かつ
前記共通の原子は直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項105】
前記第1の官能基および前記第2の官能基が互いに直接に結合され、かつ
前記第1の官能基または前記第2の官能基のいずれかは直接にまたはリンカーを介して前記ポリマー骨格またはその内部に結合される、請求項100に記載の医薬組成物。
【請求項106】
多価ヘテロ二官能性ポリマー上に複数のヘテロ二官能性リガンドを予備配置するための方法であって、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、三元複合体を形成するための、生物学的標的に結合するための第1の官能基と、エフェクター鋳型に結合するための第2の官能基とを含み、
前記方法は、(a)前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型の分子表現を、分子モデリングおよび画像化ソフトウェアを用いて整列するステップと、(b)前記エフェクター鋳型上での2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離を測定するステップと、(c)前記生物学的鋳型上での2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離を測定するステップと、(d)前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型に結合されたときの、前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる平均距離を測定するステップと、を含み、
前記ヘテロ二官能性リガンドは、前記三元複合体の形成を媒介するように設計された前記ポリマー内での前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる前記距離が、前記三元複合体内での前記生物学的標的と前記エフェクター鋳型の間に立体的衝突を導入することなく分子モデリングツールを用いて最小化されるように、前記多価ヘテロ二官能性ポリマー上に予備配置される、方法。
【請求項107】
前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型の前記結合部位のトポロジーが、類似または同一である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型に結合される場合、
前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる前記平均距離が、前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる1つ以上のリンカーの長さを変化させることにより最適化される、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型に結合される場合、
前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる前記平均距離が、前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる任意のリンカーの長さに等しいかまたはそれより短い、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記生物学的標的および前記エフェクター鋳型に結合される場合、
前記第1の官能基と前記直近の第2の官能基とを隔てる前記距離が、前記第1の官能基および前記第2の官能基に結合するリンカーの長さを変化させることにより変化する、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
ヘテロ二官能性リガンドが、
(a)前記ヘテロ二官能性リガンドの1つの結合点を近接するヘテロ二官能性リガンドの結合点から隔てる平均距離と、前記ヘテロ二官能性リガンドを前記ポリマーまたはその内部に結合させる任意のリンカーの2倍の長さと、前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる任意のリンカーの長さとの和が、前記エフェクター鋳型上での2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離あるいは前記生物学的鋳型上での2つの類似または同一の近接結合部位を隔てる平均距離の長い方よりも長く、かつ
(b)前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる前記リンカーの長さが、1つのヘテロ二官能性リガンドの結合点を近接するヘテロ二官能性リガンドの結合点から隔てる平均距離と、前記第1の官能基を前記第2の官能基に結合させる前記リンカーの長さと、前記ヘテロ二官能性リガンドを前記ポリマーまたはその内部に結合させる前記リンカーの2倍の長さとの和よりも短いように、
前記多価ヘテロ二官能性ポリマー上に予備配置される、請求項106に記載の方法。
【請求項112】
治療用途が、癌、細菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、真菌感染、自己免疫疾患、遺伝性および後天性代謝疾患、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される疾患の治療である、前記治療用途における請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマーの使用。
【請求項113】
非治療用途が、診断、地下水中での細菌毒素の検出、血中の抗体の検出、癌細胞の検出、および腫瘍の造影からなる群から選択される、請求項1に記載の多価ヘテロ二官能性ポリマーの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【公表番号】特表2010−521526(P2010−521526A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500032(P2010−500032)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000531
【国際公開番号】WO2008/116293
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(507388960)ザ・ガバナーズ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アルバータ (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000531
【国際公開番号】WO2008/116293
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(507388960)ザ・ガバナーズ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アルバータ (9)
【Fターム(参考)】
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