説明

多孔性フィルム、電池用セパレータおよび電池

【課題】 電池用セパレータとして強度および抗張力を有し、巻き取り時に裂けにくくした多孔性フィルムを提供する。
【解決手段】 少なくともポリエチレン樹脂(A)と、溶融張力が3.0gf以上であるポリプロピレン樹脂(B)と、充填剤(C)の3成分を含む樹脂組成物からなるフィルムで、延伸により上記充填剤(C)を起点とする空孔が設けられている。上記ポリエチレン樹脂(A)の密度が0.94g/cm以上とし、該ポリエチレン樹脂(A)100質量部に対して、ポリプロピレン樹脂(B)が1〜50質量部で配合し、充填剤(C)として平均粒径0.1〜50μmの炭酸カルシウムあるいは/および硫酸バリウムを用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性フィルムに関し、包装用、衛生用、畜産用、農業用、建築用、医療用、分離膜、光拡散板、電池用セパレータとして利用でき、特に、非水電解電池用セパレータとして好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
多数の微細連通孔を有する高分子多孔性フィルムは、超純水の製造、薬液の生成、水処理などに使用する分離膜、衣類・衛生材料など使用する防水透湿性フィルム、あるいは電池などに使用する電池セパレータなど各種の分野で利用されている。
従来の小型の二次電池は、OA、FA、家電、通信機器等のポータブル電子機器用電源として幅広く使用されており、さらに機器に装備した場合に容積効率がよく、機器の小型化、軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池は、ロードレベリング、無停電電源(UPS)、電気自動車をはじめ、環境問題に関連する多くの分野に置いて研究開発が進められ、大容量、高出カ、高電圧、長期保存性に優れている点より、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の使用電圧は、通常、4.1から4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では、水溶液は電気分解を起こすので電解質として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解質として、有機溶媒を使用した所謂、非水電解質が用いられている。
非水電解質用の溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてポリプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステルが使用されている。また、溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶かして使用している。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、構成材料に多くの可燃性物質が使われているので、誤使用されても発火などの事故がおこらないように種々の対策を行っている。特にセパレータは正極と負極と直接接触させて介在させるために、内部短絡の防止の点から絶縁性が要求され、かつリチウムイオンの通路となる透気性と電解質の拡散・保持機能を付与するため、異常高温時(140〜160℃)にはセパレータが溶融して、微孔が閉鎖し電池内部のイオン伝導を遮断し、その後の電池内部の温度上昇を防止できるシャットダウン機能を具備することが要求される。
この観点から、ポリオレフィン系樹脂からなる微多孔質膜がセパレータとして使用されている。しかし、シャットダウン後も何らかの理由で電池内部で温度の上昇が続いてセパレータの耐熱温度を超えると、セパレータが溶融し、極板間の隔離性が著しく低下するため、電池内でショートが発生する恐れがある。
【0005】
上記問題に対して、ポリオレフィン系樹脂と無機粉体または無機繊維とからなる混練物からなる耐熱性に優れた無機質含有多孔膜のセパレータが、特開平10−50287号(特許文献1)で提供されている。
しかし、ポリオレフィン系樹脂と無機粉体を素材としてセパレータ用の多孔性フィルムを製造する際、上記ポリエチレン樹脂と無機粉体に可塑剤を混合し、この混合物をシート状に成形する一次加工、該シートを延伸・圧延等して空孔を設ける二次加工を行った後に、配合している可塑剤を有機溶媒で抽出除去する工程が必要となり、この抽出工程で多量の有機溶剤等を使用すると共に工程数が増加し、生産性が悪い問題がある。
【0006】
また、特開2001−164015号公報(特許文献2)には、ポリプロピレン系樹脂、充填剤及びアミド系可塑剤からなる多孔性フィルムが提供されている。
しかしながら、ポリプロピレンは融点が高く異常高温時での閉塞が困難で、シャットダウン機能を期待できない。よって、大容量の電池システム用のセパレータとしては使用可能であるが、民生用電池のセパレータとしては使用されていなのが現状である。
さらに、ポリプロピレンを使用しているため、均一な透過性を有するフィルムが形成しにくく非常に裂けやすく、巻芯を用いて正極、セパレータ、負極を渦巻き状に巻回する際に切断が困難で安定して電池を製造することができない。
【0007】
さらに、特開2003−82139(特許文献3)には、高密度ポリエチレン樹脂、炭酸カルシウム等からなる充填剤、分子量200〜500の脂肪族炭化水素または高級アルコール等の低分子量化合物の可塑剤とからなる樹脂組成物の混練物からシートを成形し、該シートを延伸して形成する多孔性フィルムが提供されている。
しかしながら、本発明者が生産機レベルで追試した結果、連続的に製造することは困難であり、また厚み精度も目的とする精度を制御して得ることができない。原因として特に二軸延伸を行う場合は高密度ポリエチレンのみでは延展性が悪いという問題点が挙げられる。延展性がわるいと、製造される多孔性フィルムからなるセパレータは、その厚み精度が低くなり均一な厚にならない。その場合、円筒形、菱形または扁平形等の巻芯を用いて正極、セパレータおよび負極を重ねて渦巻状に捲回する際、所定のサイズに収めることができず、電池缶に収容出来きず、巻き込み不良が発生し易くなる問題があった。さらに、収容できても局所的に圧力がかかり短絡が発生しやすい場合がある。
【0008】
さらに、前記特許文献1〜3のいずれの多孔性フィルムからなるセパレータも、いずれもオレフィン樹脂の抗張力が低いため、巻回時に安定した状態で高速で電池が組み立てることができず、かつ、セパレータが伸び易く、セパレータが伸びて透気度が変化して設計通りの電池特性が得られないとともに、伸びによりセパレータが薄くなると絶縁性が低下する問題があった。
【特許文献1】特開平10−50287号公報
【特許文献2】特開2001−164015公報
【特許文献3】特開2003−82139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、特に、成形安定性が優れ、強度および抗張力を備え、セパレータとして巻回工程で裂けにくいと共に伸びにくく、連続生産性が良い多孔性フィルムを提供するものである。さらに、異常高温時におけるシャットダウン機能を備えると共に、延展性がよく厚さ精度く均一な厚さとできる電池用セパレータとして適した多孔性フィルムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、少なくともポリエチレン樹脂と溶融張力の高いポリプロピレンと充填剤からなる組成物を延伸することによって上記課題を解決する多孔性フィルムあるいは電池用セパレータを作成できることを見出し、またそれを用いた電池が良好な電池特性をもつことを見出した。
【0011】
上記知見に基づき、本発明は、ポリエチレン樹脂(A)と溶融張力が3.Ogf以上であるポリプロピレン樹脂(B)と充填剤(C)の3成分を含む樹脂組成物からなるフィルムで、延伸により上記充填剤(C)を起点とする空孔が設けられていることを特徴とする多孔性フィルムを提供している。
【0012】
上記のように樹脂成分として融点が20℃以上相違する上記ポリエチレン樹脂(A)と溶融張力が3.0gf以上であるポリプロピレン樹脂(B)を用いることで、電池用セパレータとして用いる場合、熱閉塞温度(シャットダウン温度)をあまり上げずにピンホールの発生温度を引き上げ、より安全性の高いセパレータを提供できるようにしている。
【0013】
上記樹脂をポリエチレン樹脂の中でも、高密度ポリエチレン樹脂とすると、ポリエチレン樹脂自体を高密度とすることで強度、剛性を高めて、薄いフィルムとした場合にも裂けにくくするが出来、加工時おけるハンドリング性を高めることが出来ると共に、シャットダウン機能も高めることが出来る。
【0014】
上記高密度ポリエチレン樹脂の密度を0.940g/cm以上としているのは、例えば、厚さ5〜40μ程度の薄肉としても、容易に裂けない所要の強度、剛性を付与するためである。より好ましくは0.950g/cm以上で、上限は0.970g/cmである。この高密度ポリエチレン樹脂は、メルトフローレートが1g/10分以下、好ましくは0.6g/10分以下、より好ましくは0.1g/10分以下である。メルトフローレートが1g/10分より大きいと3倍以上延伸することが難しくなり、得られる多孔牲フィルムの強度が低下する。なお、下限は0.01g/10分である。
【0015】
上記高密度ポリエチレン樹脂としては、具体的にはホモポリマーポリエチレン、或いはα−オレフインコモノマー含量が2モル%以下のコポリマーポリエチレンが好ましく、ホモポリマーポリエチレンであることが更に好ましい。α−オレフィンコモノマーの種類には特に制限はない。更に好ましくは0.95g/cm以上のものがフィルムの剛性の面から好ましい。
ポリエチレンの重合触媒には特に制限はなく、チーグラー型触媒、フィリップス型触媒、カミンスキー型触媒等いずれのものでも良い。ポリエチレンの重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレンも使用可能である。
【0016】
上記ポリプロピレン樹脂(B)は、前記したように、溶融張力が3.0gf以上であることが必要である。好ましくは5.0gf以上、より好ましくは7.0gf以上、最も好ましくは11〜16gfである。溶融張力は大きい程よく上限は限定されないが20gf程度である。
上記のように、溶融張力が3.0g以上のポリプロピレン樹脂を添加すると、特にフィルムの成形安定性が大きく向上する。逆に、添加するポリプロピレン樹脂の溶融張力が3.0gf未満である場合は、3.0gf以上の溶融張力であるポリプロピレン樹脂を添加した場合と比較すると、成形が不安定になり、これにより膜厚精度が悪くなる。溶融張力が3.0gf以上であれば、ポリプロピレン樹脂(B)として、ホモポリプロピレン、エチレンプロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンブロック共重合体等を用いることができる。好ましくは、エチレンプロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンブロック共重合体である。さらに好ましくは、融点の温度が140℃以上であるエチレンプロピレン共重合体、エチレンプロピレンブロック共重合体である。
溶融張力の測定は、東洋精機社製メルトテンションメーターを190℃に設定して測定した。本発明での溶融張力は、このメルトテンションテスターを用いて引き取り速度1.5m/分、押出速度は4.5mm/分で測定した値である。
【0017】
上記ポリエチレン樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との配合比は、これら樹脂(A)と(B)の種類および得られる多孔性フィルムの用途または物性により選択され、上記樹脂(A)100質量部に対して、樹脂(B)が1〜100質量部、好ましくは1〜50質量部としている。このように融点が20℃以上高い樹脂(B)を低融点の樹脂(A)と同量、好ましくは半分の50質量部以下としている。
【0018】
上記充填剤(C)の平均粒経としては、例えば0.1〜25μm程度、好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm程度である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、充填剤同士の凝集により分散性が低下して延伸むらを引き起こすとともに、熱可塑性樹脂と充填割との界面の接触面積が増大して、延伸による界面剥離が難しく、多孔化が困難になりやすい。一方、平均粒径が25μmを超えると、フィルムを薄くすると共に均一な厚さとすることが困難となるのに加え、フィルムの機械的強度が著しく低下し好ましくない。
【0019】
上記充填剤としては無機系及び有機糸の何れの充填剤も使用でき、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの塩化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカなどの酸化物のほか、タルク、クレー、マイカなどのケイ酸塩等が挙げられる。これらの中でも、硫酸バリウムと炭酸カルシウムが好適に好ましい。
【0020】
また、上記無機充填剤は樹脂中の分散性向上のため、表面処理剤で無機充填剤の表面を被覆して疎水化しても構わない。この表面処理剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリル酸等の高級脂肪酸またはそれらの金属塩を挙げることができる。
【0021】
有機充填剤としては、延伸温度において充填剤が溶融しないように、高密度ポリエチレンを主とする熱可塑性樹脂の融点よりも高い樹脂粒子が好ましく、ゲル分が4〜10%程度の架橋した樹脂粒子がさらに好ましい。
有機充填剤の例としては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ペンゾグアナミンなとの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に架橋させたポリスチレンなどが好ましい。
【0022】
充填剤(C)は、前記樹脂(A)と(B)の合計100質量部に対し、50〜400重量部と比較的大量に充填しており、充填剤(C)の配合が少ない場合もしくは充填剤が配合されていない場合と比較して強度が比較的低くなるため、厚みと厚み精度を十分に制御することが重要となる。50〜400質量部で配合しているのは、50重量部未満の場合には、目的とする良好な透気性が発現されにくくなり、外観、風合いも悪くなりやすい。また、400重量部を超えると、フィルム成形の際に樹脂焼けなど工程上の不具合を起こしやすくなるだけでなく、フィルム強度も大幅に低下することに因る。
より好ましくは、樹脂成分(A)(B)の合計100質量部に対し、充填剤(C)は50〜300質量部、さらに100〜200質量部が最も好ましい。
【0023】
上記樹脂(A)と(B)、充填剤(C)はフィルムの必須成分であるが、さらに、これらの原料の混合溶融した時に樹脂成分への充填剤(C)の分散牲を向上させる目的で、必要に応じて可塑剤(D)を配合してもよい。
【0024】
上記可塑剤(D)の種類や添加量は、フィルムの成形性、延伸性、外観、風合いなどに影響を及ぽす。可塑剤は融点が25℃以上かつ140℃未満では液体もしくは固体で、140℃以上の沸点を有する可塑剤が好ましい。
融点が25℃以上でないものは、フィルムの剛性が低下するので、フィルムのコシを必要としない用途では問題ない。しかしながらフィルムのコシを必要とする多孔性フィルム、例えば電池用セパレータとして使用する場合は、電池組立て工程でのハンドリングが困難となる。ここで融点は、DSCによる測定で吸熱ピークを明確に有しているものもしくは動粘度が100000mm2/SEC以上と定義する。
一方、可塑剤の沸点を140℃以上としているのは、140℃未満の沸点とすると、延伸加工時に上記樹脂を加熱した時に、可塑剤が揮発して大きな空隙が発生し、微細孔を有する多孔性フィルムとして形成出来なくなるからである。また、電池内にセパレータとして収容した後、何かの原因で高温となった場合、可塑剤がガス化し電池が破裂するそれがあり好ましくない。
沸点が140℃以上、即ち、140℃未満では液体または固体とは、沸点が大気中で明確に140℃以上であるもの、もしくは140℃1時間加熱した後の重量が加熱前の重量に対して10%以上減少していないものと定義する。
【0025】
本発明において可塑剤として、融点が25℃以上で且つ沸点が140℃以上の条件を満たす限りにおいて、下記の可塑剤が用いられる。
エステル化合物、アミド化合物長鎖脂肪酸、長鎖アルコール、パラフィンワックス、アミン化合物、エポキシ化合物、エーテル化合物、鉱油、パラフィンワックス、長鎖脂肪酸塩長鎖アミン、液状シリコーン、フッ素オイル、液状ポリエーテル類、液状ポリブテン類、液状ポリブタジエン類、カルボン酸類、スルホン酸塩、カルボン酸化合物、フッ素系化合物、スルホン結合を有する化合物等挙げられる。
具体的には、「プラスチック配合剤」(株式会社 大成社発行,昭和62年11月30日 第2版発行)P29〜P64の可塑剤の項目に記載され、P49からP50の表4と、P52〜P54の表6に列挙されている可塑剤が使用可能である。
可塑剤は1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上をくみあわせても良い。
【0026】
上記エステル化合物としてはテトラグリセリントリステアレート、グリセリントリステアレート、ステアリルステアリレート、ジステアリルカーボネートが挙げられる。より好ましくは飽和脂肪酸からなるエステルもしくはアミドであり、更に好ましくはエチレンカーボネートを主体とする可塑剤である。
上記アミド化合物としては、エチレンビスステアリン酸アミドまたはヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジヒドロジエチルステアリルアミンまたはラウリルアミンなどが挙げられる。
上記アミン塩としては、ステアリルジメチルベタインまたはラウリルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
上記長鎖アルコールとしては、ステアリルアルコール、オレイルアルコールまたはドデシルフェノールなどが挙げられる。
上記エポキシ化合物としては、エポキシ大豆油などが挙げられる。
上記エーテル化合物としては、トリエチレングリコールなどが挙げられる。
前記鉱油としては、灯油またはナフテン油などが挙げられる。
上記カルボン酸塩としては、ステアリン酸カルシウムまたはオレイン酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記スルホン酸塩としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記カルボン酸化合物としては、ステアリン酸もしくはオレイン酸、またはこれらのエステル体などの誘導体(ただし塩は除く。)などが挙げられる。
上記スルホン結合を有する化合物としては、スルホランまたはジプロピルスルホン酸などが挙げられる。
【0027】
本発明で用いる可塑剤としては、飽和脂肪酸からなるエステル化合物もしくはアミド化合物がより好ましい。とくに、本発明においては、可塑剤としてエチレンカーボネートを主体とする可塑剤が好ましい。
【0028】
上記可塑剤の配合比はポリエチレン樹脂100質量部に対し1〜30質量部であることが好ましい。より好ましい配合比は、樹脂100質量部に対し1〜20質量部である。
上記範囲としているのは、可塑剤の配合比が1質量部未満であると、目的とする良好な延伸性が発現されにくくなり、外観および風合いも悪くなりやすい。一方、可塑剤の配合比が30質量部を超えるとフィルム成形の際に樹脂焼けなど工程上の不具合を起こしやすくなるためである。
【0029】
さらに、本発明の多孔性フィルムでは、一般に樹脂組成物に配合される添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤等を、多孔性フィルムの特性を損なわない程度の範囲で配合してもよい。
【0030】
本発明の多孔性フィルムは、前記したように、上記樹脂組成物の溶融混練物をフィルムとして成形加工し、成形されたフィルムを延伸することにより充填剤を起点として空孔を設ている。該多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いる場合には、平均厚みが5μm以上40μm以下で且つ厚みの最大値と最小値とが平均厚みの±25%未満、すなわち厚みの振れを±25%未満としている。
平均厚みが5μm未満であるとフィルムが破れやすくなり、40μmを越えると電池用セパレータとして所定の電池缶に捲回して収納する際、電池面積が小さくなり、ひいては電池容量が小さくなる。好ましくは30μm以下である。
また、厚みの最大値と最小値とが平均厚みの±25%以下であることが好ましく、20%以下である。厚みの振れが平均厚みの±25%を越えると、捲回した時に部分的に圧力がかかり、電池用セパレータとして用いたときに絶縁性が低下する。
【0031】
なお、上記多孔性フィルムの平均厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて面内を不特定に30箇所測定し、その平均を算出して得られる値である。また、厚みの最大値とは前記30箇所の測定値のうち最も大きい値をいい、厚みの最小値とは前記30箇所の測定値のうち最も小さい値をいう。厚みの振れとは、式;{(最大厚みまたは最小厚み−平均厚み)/平均厚み}×100(%)により算出される値である。
【0032】
多孔性フィルムの厚さは、上記ポリエチレン樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、充填剤(B)および可塑剤(D)の種類もしくは配合量、延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)によって自由に調整できる。
【0033】
本発明の多孔性フィルムは例えば下記の方法で製造している。
まず、各成分をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等の粉体混合機で混合する。このとき、ポリエチレン、熱可塑性樹脂はパウダーあるいはペレット状、充填材はパウダー、可塑剤はパウダー、延伸補助財はペレット状に予めしておくことが好ましい。
ついで、1軸あるいは2軸混練機、ニーダー等で加熱混練する。その後、ペレット化して成膜工程に移行しても良いし、ペレット化せずに直接成型機で製膜してもよい。このペレットはサイロ、ホッパーフレコン等の原料を保存する設備、容器に一時的に保存しておいても良い。
【0034】
本発明では、通常、上記ペレットの水分率が1000ppm以下、好ましくは700ppm以下にして溶融成形してフィルム化している。ペレットの水分が1000ppmより大きいとゲル、ピンボールが極度に発生して好ましくないためである。一方、溶融混合物をペレット化せずに直接成膜工程にもって行く場合も溶融混合物の水分率が1000ppm以下となるように溶融混練工程から成膜工程までの途中で真空脱気もしくは解放脱気を行うことが好ましい。
【0035】
その後、ポリエチレン及びポリプロピレンの融点以上、好ましくは融点+20℃以上で分解温度未満の温度条件下において押出成形機等を用いて溶融、成膜することによりフィルム(原反シート)を得ている。成膜方法としては、具体的にはTダイ成形、カレンダー成形、プレス成形等が挙げられる。このようにして成形されるフィルム(原反シート)の厚さは延伸性等を損なわない範囲で適時選択できるが、0.02〜2mmの範囲内が好ましい。
【0036】
上記成形された樹脂フィルム(原反シート)をロール延伸、テンター延伸、同時2軸延伸、圧延等の方法により、少なくとも1軸方向に延伸(1軸延伸)、好ましくはフィルム長手方向(縦方向)と直交する横方向の2軸方向に延伸(2軸延伸)する。かかる延伸処理は、上記樹脂の軟化点(JIS K6760による測定値)付近で行うことが好ましい。上記延伸により樹脂と充填剤との界面を剥離させることにより多数の空孔を設けることができる。なお、開孔径を安定させるために延伸後に熱処理してもよい。
上記延伸工程における延伸倍率は、延伸時のフィルムの破れ、得られるフィルムの透気度またはフィルムの硬さ等に対応させて適宜選択すればよい。具体的には、1軸延伸または2軸延伸において、縦横方向の少なくとも一方向が1.5倍以上、好ましくは2倍以上で延伸している。
【0037】
上記多孔性フィルムの延伸により形成される空孔は、三次元網状としフィルムの両面開口に連通させ、電池用セパレータとする場合には、気体または水蒸気は透過可能とし、液滴は透過不可としている。詳細には空孔径は0.3μm以下とし、100〜3000μmの水滴は透過させず0.0004μm程度の水蒸気は透過可能としている。
より具体的には、本発明の多孔性フィルムは、その透気度が50〜500(sec/100cc)であることが好ましく、100〜500(sec/100cc)であることがより好ましく、100〜300(sec/100cc)であることがさらに好ましい。
透気度を50〜500(sec/100cc)としているのは、50(sec/100cc)未満とすると、電解質の含浸性・保持性が低下して二次電池の容量が低くなったり、サイクル性が低下したりする恐れがある。一方、透気度が500(sec/100cc)を超えると、イオン伝導性が低くなり非水電解質電池用セパレータとして用いた場合に十分な電池特性を得ることができない。
なお、上記透気度(ガーレ値)はJIS P8117に準拠して通気度(sec/100cc)を測定している。
【0038】
本発明の多孔性フォルムを電池用セパレータとして用いる場合、通常、本発明の多孔性フォルムを正極と負極との間に介在させ渦巻状に捲回して電池缶内に収納する。
本発明においては、このときの巻き込み不良率が5%以下とし、電池組立て工程においてハンドリング性が良好で不良品の発生率も少なくし、工業的な生産により適したものとしている。なお、巻き込み不良率は後述する実施例に記載の方法で測定する。
さらに、本発明のフィルムは初期の特定長さに対して10mm以上長くならない、即ち、伸びを抑制でき、その結果、電極間でショートを発生させない所要の厚みに保持でき、巻き込み特性に優れたものとなる。
【0039】
さらに、本発明の多孔性フィルムからなるセパレータを収容している非水電解質電池は、安全性の観点から高温(140〜160℃)状態になるとセパレータに開孔された微細な孔を閉塞し、その結果電池内部のイオン伝導を遮断し、その後の電池内部の温度上昇を防止できるシャットダウン機能が要求される。この機能の指標として、本発明の非水電解質電池は昇温後の絶縁不良率を5%未満としている。なお、昇温後の絶縁不良率は後述する実施例に記載の方法で測定する。
【発明の効果】
【0040】
上述した如く、本発明の多孔性フィルムは、ポリエチレン樹脂を含むことから非水電解質電池セパレータに用いられた際に高温状態において優れたシャットダウン機能を発揮することができる。さらに、本発明の多孔性フィルムは、高溶融張力を有するポリプロピレンを配合しているため、延展性が良く、延伸時において厚み精度が高まり、均一な厚さのフィルムを得ることができる。
よって、電池用セパレータとして正極板と負極板の間に介在させて渦巻き状に巻回して電池缶内に収容したとき、セパレータに局部的に負荷がかかることを抑制でき、その結果セパレータの破損等が防止でき絶縁性を確実に保持することができる。かつ、セパレータの厚さを40μm以下と薄くしているため電池缶内への正極板および負極板の充填量を増加でき、電池容量を高めることができる。
【0041】
さらにまた、本発明の多孔性フィルムは所要の強度、剛性を備え、伸びが少ないため、セパレータとして巻回する際、裂けにくく巻き込み加工が容易で生産性を高めることができると共に、巻き込み後においても電極の間の所要の厚さで介在し、絶縁性を高めることができる。
かつ、適性な透気性を保持する微細孔構造を持たせるために延伸法を採用しており、製造コストを低廉化できる。
そのうえ、本発明の多孔質フィルムの物性は、樹脂、充填剤および可塑剤の配合量や種類、延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)によって自由に調整できる。そのため、該条件等を種々変化させることにより、用途に応じた所望の物性の多孔性フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
図1は多孔性フィルムの断面模式図であり、多孔性フィルム1は三次元網状の空孔1aを備え、該空孔1aは多孔性フィルムの両面1b、1cに連通し、多孔性フィルムの透気度は50〜500[sec/100cc]の範囲内としている。
多孔性フィルム1aの厚さは5〜40μm、かつ、厚みの振れを平均厚さの±25%未満以下としている。
【0043】
上記多孔性フィルムは、樹脂成分として、密度0.95g/cm以上で且つメルトフローレートが1.5g/10分以下である高密度ポリエチレンと、溶融張力が3.0gf以上のポリプロピレンを用い、充填剤として粒径0.1〜25μmの硫酸バリウムを用い、可塑剤として融点が25℃以上且つ沸点が140℃以上で、25℃での動粘度が100000mm/S未満であるプロピレンカーボネート、プチレンカーボネート、γ一プチロラクトン、γ一バレロラクトン、あるいはジメチルスルフホキシドを用いている。
【0044】
上記樹脂の配合比は高密度ポリエチレン100質量部に対してポリプロピレンは1〜50質量としている。充填剤は高密度ポリエチレンとポリプロピレン合計100質量部に対して50〜400質量部、可塑剤は1〜30質量部としている。
【0045】
上記原料を混合、混練して充填剤を樹脂中に分散させている。この混練物を所要温度で加熱して溶融した後、Tダイで成形してフィルムを成形している。得られたフィルムの厚さは0.02〜2mmとしている。
このフィルムを2軸延伸機で、縦横長さ方向のいずれか一方に1.5倍以上で延伸している。詳細には、フィルムの長手方向(縦方向)に延伸倍率4〜4.5倍で延伸し、ついで、長手方向と直交方向(横方向)に延伸倍率4〜4.5倍で延伸している。
上記縦・横方向の2軸延伸で、図2に示すように、高密度ポリエチレンとポリプロピレンとからなる樹脂11中に充填剤12が分散されているフィルム10は、樹脂11と充填剤12との界面で剥離が生じ、この剥離した部分を空孔1aとして、多孔性フィルム1を得ている。其の際、多孔性フィルム1の厚さは前記したように5〜40μmで、厚さの振れが±25%未満となっている。
上記多孔性フィルム1は、連続材からなるフィルム10を連続的に2軸延伸することで、連続材として得られ、コイル状に巻き取っている。
【0046】
得られた多孔性フィルム1を、本実施形態では、所要長さに切断して非水電解質電池用のセパレータ1’としている。
セパレータ1’は図3に示す円筒型のリチウム二次電池20の内部に、正極板21と負極板22との間に介在させて渦巻き状に巻回して収容している。
【0047】
本発明の多孔性フィルムをセパレータとして収容するリチウム二次電池について詳細に説明する。
電解質としては、例えば、リチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解質が用いられる。有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、たとえば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、プチレンカーボネート、γ−プチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチル、酢酸プチルなどのエステル頼、アセトニトリル等のニトリル頼、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2一メチルテトラヒドロフラン、4−メチルー1,3一ジオキソランなどのエーテル類、さらにはスルフオランなどの単独、もしくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。
【0048】
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス銅製網などの集電材料と一体化したものが用いられる。その際、アルカリ金属として、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
上記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズ、マグネシウムなどの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物、硫化物との化合物などが挙げられる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としては、リチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
【0049】
正極としては、例えばリチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化物、などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属窒化物などが活物質として用いられる。これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス銅製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
【0050】
後述する本発明の多孔フィルムからなるセパレータの絶縁不良率等の測定に用いる電池では、電解質はエチレンカーボネートが1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部の混合溶媒中にL1PF6を1.4モル/リットルの割合で溶解した電解質を調整している。
負極板22は、平均粒径10μmの炭素材料を、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液と混合してスラリーにした。この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた後、厚さ18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形し切断し、帯状の負極板としている。
正極板21は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)に導電助剤としてリン状黒鉛を重量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにした。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた後、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
【0051】
上記正極板21、負極板22の両極をセパレータ1’を介して互いに重なるようにして、渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、セパレータ1’は厚さが5〜30μmである。
【0052】
上記正極板21、セパレータ1’および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に充填し、正極及び負極のリード体24、25と溶接している。上記巻回した正極板21、セパレータ1’および負極板21を電池ケース内に収容し、ついで、上記電解質を電池缶内に注入し、セパレータ1’などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の二次リチウム電池を作製している。
【0053】
上記多孔性フィルム1からなるセパレータは、絶縁性を有するため、両面に直接接触する正極板21と負極板22との短絡を防止し、リチウムイオンは空孔1aを透過する一方、液は透過させないため、電解質の拡散・保液を図ることができる。
【0054】
本発明の多孔性フィルムからなる実施例と、比較例の下記の表1に原料および配合比としてフィルムを作製し、該フィルムを延伸して多孔性フィルムを作製して、透気度、シャットダウン温度、破膜温度、巻込不良率(裂け易さ)、昇温後の絶縁不良率を測定した。
【0055】
【表1】

【0056】
「実施例1」
高密度ポリエチレン[三井住友ポリオレフィン株式会社製 7000FP、密度0.954g/cm,メルトフローレート0.04g/10min]100質量部、ポリプロプレン[ダウケミカル社製 インスパイア114 密度0.90g/cm,メルトフローレート0.4g/10min、溶融張力11.1gf]8質量部、充填剤として硫酸バリウム[堺化学社製 B−55、]176重量部、可塑剤として[ハイカスターワックス 豊国精油社製HCOP、融点86℃、140℃で1時間加熱後の重量減少率が2.4%]9重量部としてブレンドしてコンパウンドを行い、次に温度200℃でTダイ成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均80μmであった。
次に、得られた原反シートを60℃でシートの長手方向(MD)に4.5倍延伸を行い厚み平均22μm、厚み精度±12%、透気度410sec/100ccの多孔性フィルムを作製した。
【0057】
「実施例2」
実施例1と同じ組成物をブレンドしてコンパウンドを行い、次に温度200℃でTダイ成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均150μmであった。
次に、得られた原反シートを60℃でシートの長手方向(MD)に4.0倍延伸を行いつづいて直交するTD方向に3.5倍延伸し、延伸後の厚み平均18μm、厚み精度±10%、透気度150sec/100ccの多孔性フィルムを作製した。
【0058】
「実施例3」
高密度ポリエチレン[三井住友ポリオレフィン株式会社製 7000FP、密度0.954g/cm,メルトフローレート0.04g/10min]100質量部、ポリプロプレン[チッソ社製 NEWSTREN SH9000 密度0.90g/cm,メルトフローレート0.3g/10min、溶融張力15.2gf]10質量部、充填剤として硫酸バリウム[堺化学社製 B−55、]115重量部、可塑剤として[ハイカスターワックス 豊国精油社製HCOP、融点86℃、140℃で1時間加熱後の重量減少率が2.4%]5重量部としてブレンドしてコンパウンドを行い、次に温度200℃でTダイ成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均130μmであった。
次に、得られた原反シートを60℃でシートの長手方向(MD)に3.5倍、続いてTD方向に2.8倍延伸を行い、厚み平均22μm、厚み精度±7%、透気度260sec/100ccの多孔性フィルムを作製した。
【0059】
「比較例1」
高密度ポリエチレン[日本ポリケム株式会社製 HY430P、密度:0.955g/cm、メルトフローレート:0.8g/10min]100質量部に、硫酸バリウム[堺化学社製 B−55、]150重量部、可塑剤としてグリセリントリスチアレート[和光純薬工業社製、試薬 融点72℃、140℃で1時間加熱後の重量減少率が1.1%]5重量部としてブレンドしてコンパウンドを行い、次に温度200℃でTダイ成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均100μmであった。
次に、得られた原反シートを80℃でシートの長手方向(MD)に5.0倍延伸を行い厚み平均16μm、厚み精度±10%、透気度190sec/100ccの多孔性フィルムを作製した。
【0060】
「比較例2」
高密度ポリエチレン[三井住友ポリオレフィン株式会社製 7000FP、密度0.954g/cm,メルトフローレート0.04g/10min]100質量部、ポリプロプレン[日本ポリケム社製 EG7F 密度0.90g/cm,メルトフローレート1.3g/10min、溶融張力2.65gf]10質量部、充填剤として硫酸バリウム[堺化学社製 B−55、]176重量部、可塑剤として[ハイカスターワックス 豊国精油社製HCOP、融点86℃、140℃で1時間加熱後の重量減少率が2.4%]9重量部としてブレンドしてコンパウンドを行い、次に温度200℃でTダイ成形を行い原反シートを得た。原反シートの厚みは平均120μmであった。
次に、得られた原反シートを60℃でシートの長手方向(MD)に4.5倍、続いてTD方向に3.5倍延伸を行い、厚み平均18μm、厚み精度±21%、透気度260sec/100ccの多孔性フィルムを作製した。
【0061】
上記多孔性フィルムの厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて面内の厚みを不特定に30箇所測定し、その平均値を算出した。
また厚み精度(厚み振れ)は上記測定方法で測定した30箇所の測定値のうち最も大きい値(最大厚み)、最も小さい値(最小厚み)および算出された平均値から次式に基づき厚み振れを算出した。なお、次式で算出される値のうち大きい方を記載した。
(最大厚み−平均厚み)/平均厚み×100(%)
(最小厚み−平均厚み)/平均厚み×100(%)
透気度はJIS P 8117に準拠して、通気度(秒/100cc)を測定した。
【0062】
実施例1〜3および比較例1、2の多孔性フィルムを電池用セパレータとして用い、電池に装着する時の巻き込み不良率、昇温後の絶縁絶縁率、シャットダウン温度、破膜温度を測定した。
【0063】
(巻き込み不良率の測定)
長さ50cm、幅59mm正極板と負極板を用い、上記実施例および比較例の多孔性フィルムからなるセパレータを2枚用い、該セパレータ2枚と上記正極板と負極板とを交互に重ね、正極板に3.92N/cm、負極板に3.92N/cm、セパレータに0.29N/cmの力をかけ、直径4mmでセパレータを2枚分挟めるようなスリットを入れてある金属製の巻芯を用いて、この巻芯に巻き付けるように捲回した。終了後金属製巻芯を引きぬいた。
上記巻き込み電極群を100個作り、セパレータが裂けているものの数を確認した。セパレータが裂けているものの数をxとし、捲回不良率をx%とした。
【0064】
(昇温後の絶縁性)
上記巻き込み電極群100個を速度10℃/minで昇温させ、60℃のオーブンに1時間入れ、正負電極間の絶縁抵抗を測定し、1MΩ以下となった数を数え、%で表示した。この比率が大きいと、電池としての初期不良率が増大する。
【0065】
(シャットダウン温度)
多孔性フィルムを100mmφの穴をあけたアルミ板に挟み、オーブン中に2分間放置後、透気度を測定した。3000秒/100cc以上となるオーブン温度をシャットダウン温度とした。この温度が140℃より高いと、電池に組み込んだ場合、充放電時に異常に温度が上がっても多孔性フィルムの透過性が落ちないため、発煙、発火の恐れがある。
【0066】
(破膜温度)
多孔性フィルムを80mm角で切り出す。中央に40mmφの穴が空いている80mm角のアルミ板2枚で、切り出した上記80mm角のフィルムを挟み、アルミ板をクリップにより固定する。200℃に設定したオーブンを開き、100℃まで温度を下げた後、アルミ板似挟まれたフィルムをオーブンに入れて扉を閉じる。フィルムを観察し、ピンホールが発生した時の表示温度を破膜温度とした。
【0067】
上記表1に示すように、実施例1〜3の多孔性フィルムは、昇温後の絶縁不良率が1%以下で非常に絶縁率が低いが、ポリプロビレンを配合していない比較例1では5%、ポリプロビレンを配合しているが溶融張力が2.65gfと低い比較例2では3%となっていた。また、巻き回い不良率も実施例1〜3では2〜5%と不良率を低く押さえることができたが、比較例1では15%と高く、比較例2でも8%となり、電池への装着時のハンドリング性が悪くなっていた。破膜温度も比較例1は145℃と低く、異常加熱時にセパレータが破れ易くなっていた。これに対して実施例1〜3は177〜181℃と耐熱性を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る多孔性フィルムは、包装用、衛生用、畜産用、農業用、建築用、医療用、分離膜、光拡散板用、電池用セパレータ等の多岐の用途に利用できるが、非水電解質電池セパレータとして好適に使用でき、良好な非水電解質電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】上記多孔性フィルムの断面模式図である。
【図2】延伸による孔が形成される方法を示す説明図である。
【図3】電池内でのセパレータを示す一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1 多孔性フィルム
1a 空孔
1’セパレータ
10 フィルム
11 樹脂
12 充填剤
20 電池
21 正極板
22 負極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエチレン樹脂(A)と、溶融張力が3.0gf以上であるポリプロピレン樹脂(B)と、充填剤(C)の3成分を含む樹脂組成物からなるフィルムで、延伸により上記充填剤(C)を起点とする空孔が設けられていることを特徴とする多孔性フィルム。
【請求項2】
上記ポリエチレン樹脂(A)の密度が0.94g/cm以上である請求項1記載の多孔性フィルム。
【請求項3】
上記ポリエチレン樹脂(A)100質量部に対して、ポリプロピレン樹脂(B)が1〜50質量部である請求項1または請求項2に記載の多孔性フィルム。
【請求項4】
上記充填剤(C)が無機フィラーである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の多孔性フィルム。
【請求項5】
上記充填剤(C)が平均粒径0.1〜50μmの炭酸カルシウムあるいは/および硫酸バリウムであり、上記樹脂(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対して充填剤(C)を50〜400質量部配合している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の多孔性フィルム。
【請求項6】
可塑剤(D)が添加されている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の多孔性フィルム。
【請求項7】
上記可塑剤(D)は0℃で液体もしくは固体で、かつ、上記ポリエチレン樹脂(A)と上記ポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して上記可塑剤(D)を1質量部以上30質量部以下で添加している請求項6に記載の多孔性フィルム。
【請求項8】
前記延伸は1軸延伸あるいは2軸延伸とし、少なくとも1方向に1.5倍以上延伸されている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の多孔性フィルム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに1項に記載の多孔性フィルムからなり、かつ、平均厚みが5〜40μmで、厚みの最大値と最小値の厚みが平均厚みの25%以下である多孔性フィルムを構成要素とする電池用セパレータ。
【請求項10】
請求項9に記載の電池用セパレータを用いている電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−16550(P2006−16550A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197349(P2004−197349)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】