説明

多孔質体のエッチング方法及び装置

【課題】 減圧手段、脱気手段を備えたエッチング方法及び装置では、しくみが大掛かりとなり、装置が大型化し、さらにはコスト高となる。
【解決手段】 多孔質体を超音波を印加しながらエッチングする方法において、印加する超音波を減衰材料を用いて、容易かつ継続的な方法で制御することにより、多孔質体を均一にエッチングすることができる装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、集積回路、加速度センサ、圧力センサ等に適する半導体基板の加工方法に関し、特に、多孔質体のエッチング方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記多孔質体のエッチング方法としては、超音波の使用が開示されている。しかし提案されている多孔質体のエッチング方法としては、エッチング中に多孔質体の孔の表面で生成される反応生成気体の表面付着に対し、解決策としてエッチング液に接する気体を減圧状態にすることで前記反応生成気体を脱離させる方法が提案されている(特許文献1)。またエッチング液中に溶解している気体の濃度を常時飽和溶解度以下にすることで前記反応生成気体を気泡化させない方法が提案されている(特許文献2)。共に超音波の制御ではなく、エッチングを阻害する前記反応生成気体の表面付着を解決し、多孔質体のエッチングを均一化するものである。
【特許文献1】特開2000−150495号公報
【特許文献2】特開2000−133632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら前記減圧手段、脱気手段を備えたエッチング方法及び装置では、しくみが大掛かりとなり、装置が大型化し、さらにはコスト高となる。また多孔質体のエッチング速度は反応生成気体抜け(孔内液置換速度)に依存し、反応生成気体抜けを促進する超音波強度に大きく依存する。このように超音波を使用してのエッチングにおいては超音波強度の制御が重要な課題となるが、超音波振動子のばらつき、エッチング槽内構造不均一性により、エッチング槽内の超音波強度分布がばらつき、エッチングの均一性を低下させていた。また超音波照射によるエッチング槽内構造体の経時劣化、超音波振動子の経時変化もあり、エッチングの均一性維持はさらに困難なものとなっている。
【0004】
本発明の目的は、多孔質体を超音波を印加しながらエッチングする方法において、エッチング槽内の均一性を容易かつ継続的な方法で制御し、多孔質体を均一にエッチングする方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の多孔質体のエッチング方法は、多孔質体をエッチング液中で超音波を印加しながらエッチングする方法において、前記超音波強度を超音波が通過する固体材料の減衰率により調整均一化し、エッチングすることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の多孔質体のエッチング装置は、多孔質面の表出した基体を保持するための保持手段とエッチング液を入れるためのエッチング槽と該エッチング槽に印加される超音波強度を減衰調整できる着脱可能な手段を備えた超音波槽とを少なくとも有することを特徴とする。
【0007】
超音波が固体材料を通過すると、その固体材料の材質、厚みにより超音波は減衰する。よって超音波振動子とエッチング槽との間に固体材料を挿入し、挿入される固体材料による超音波の減衰率を部分的に変更することにより、超音波強度分布を制御することができ、エッチング槽内の均一化が可能となる。さらには前記固体材料を着脱可能とすることにより、超音波の経時変化に対し、固体材料の減衰率を変更することができ、常にエッチング槽内の超音波強度分布を制御可能となる。
【0008】
こうして超音波強度が制御されたエッチング装置にて、多孔質体をエッチングすることにより、多孔質体のエッチング速度がエッチング槽内で10%以内に均一化される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多孔質体のエッチングにおける超音波強度を容易かつ継続的な方法で制御することが可能となり、多孔質体を均一にエッチングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の好適な第1の実施形態に係る多孔質体のエッチング装置について説明する。図1は、本発明の好適な第1の実施形態に係る多孔質体のエッチング装置を示す構成図である。
【0012】
まず、エッチング槽101は、エッチング液102が満たされ、この中に例えば多孔質層の表出したシリコンウェハ103を入れて多孔質シリコンのエッチングを行う。ここでエッチング液は、ふっ酸と過酸化水素水との混合液、ふっ酸と過酸化水素水と界面活性剤との混合液、ふっ酸と硝酸との混合液、ふっ酸と硝酸と界面活性剤との混合液が好ましい。界面活性剤は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられる。
【0013】
また、エッチング槽101は、オーバーフロー槽104を備え、エッチング液102はそこから循環用ポンプ105により循環ライン106を通り、温度調整用冷熱器107、薬液用フィルター108を経て、再度供給される。冷熱器107によりエッチング液温は例えば±0.1℃に保たれ、エッチング均一性を向上させる。さらに薬液用フィルター108によりエッチング液内のパーティクルを除去する。
【0014】
また、エッチング槽101は、ウェハ保持具109と循環供給口110との間に整流板111を備え、この整流板111は多数のウェハ103に均等にエッチング液102が供給されるように、整流孔が設けられている。
【0015】
また、エッチング槽101は、超音波槽112内に配置され、超音波は、超音波振動子113から超音波槽内伝達液体114、例えば水を通じてエッチング槽101へ、さらにエッチング液102からウェハ103へと伝達される。ここで超音波振動子113とエッチング槽101の間に、エッチング槽101内の超音波強度分布が均一になるように部分的に減衰率を変更した超音波減衰板115を設置する。この超音波減衰板115は、装置を分解することなく、超音波槽112に設けられた開閉式の差込口より着脱可能であり、所望の減衰率を得るために、板厚または材質を部分的に変更し、差し替え可能となる。
【0016】
この時のエッチング槽101内の超音波強度分布は最大で40%以内、より好ましくは20%以内することが好ましい。またエッチング槽101の底板、整流板111は、超音波の減衰率を小さくするために、できるだけ薄くする必要がある。
【0017】
(第2の実施形態)
以下、本発明の好適な第2の実施形態に係る多孔質体のエッチング装置について説明する。図2は、本発明の好適な第2の実施形態に係る多孔質体のエッチング装置を示す構成図である。
【0018】
図2のエッチング装置の図1のエッチング装置と異なる点は、超音波振動子113とエッチング槽101の間に設置される超音波減衰板215を、1枚ではなく複数枚に分割し、分割された各超音波減衰板の減衰率を、板厚または材質の変更により調整できるようにした点である。これにより、エッチング槽101の超音波強度分布に合わせ部分的に変更した1枚の超音波減衰板115を作製し、設置することなく、超音波減衰率既知の複数種の超音波減衰板215を用意し、組み合わせることで、容易に超音波強度分布を調整、維持できるようになる。ここで超音波減衰板215としては、板厚が5〜10mmの範囲で超音波減衰率が50%程度となるフッ素系樹脂が好ましい。
【0019】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0020】
図1に示すエッチング装置を用いて多孔質体のエッチングを行う方法を説明する。
【0021】
まず、P型(100)の比抵抗0.01ΩcmSi基板に陽極化成を行い、多孔質シリコンを作成した。陽極化成は49%フッ化水素酸溶液とアルコール溶液と水を19:3:1の割合で混合した溶液中で150秒間、電流密度16mA/cm2で行った。多孔質シリコン層の厚みは6μmであった。
【0022】
次に、このSi基板の多孔質シリコン層を図1のエッチング装置でエッチングした。エッチングは、49%フッ化水素酸溶液と過酸化水素水とイソプロパノールと水を1:90:30:350の割合で混合した溶液で、5時間行った。
【0023】
多孔質シリコンのエッチングは、超音波減衰板により強度分布が20%に均一化された超音波の照射により、エッチング槽内均等に反応生成泡抜けが進み、均一にエッチングされた。超音波減衰板がない場合に、多孔質シリコン層がエッチングされる時間のSi基板間の差は最大で80分間であったが、超音波減衰板での強度分布調整により、Si基板間の差は10分間となった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のエッチング装置の第1の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のエッチング装置の第2の実施形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
101 エッチング槽
102 エッチング液
103 多孔質層の表出したウェハ
104 オーバーフロー槽
105 循環用ポンプ
106 循環ライン
107 冷熱器
108 薬液フィルター
109 ウェハ保持具(キャリア)
110 循環供給口
111 整流板
112 超音波槽
113 超音波振動子
114 超音波伝達媒体
115、215 超音波減衰板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質面の表出した基体を保持するための保持手段とエッチング液を入れるためのエッチング槽と該エッチング槽に印加される超音波強度を減衰調整できる着脱可能な手段を備えた超音波槽とを少なくとも有することを特徴とする多孔質体のエッチング装置。
【請求項2】
前記超音波の減衰調整手段により、エンチング槽内の超音波強度を均一化することを特徴とする請求項1に記載の多孔質体のエッチング装置。
【請求項3】
前記エッチング液の温度の揺らぎを±0.5℃以内に制御する手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の多孔質体のエッチング装置。
【請求項4】
更に、エッチング液を循環させるための循環ラインを備えていることを特徴とする請求項1に記載の多孔質体のエッチング装置。
【請求項5】
多孔質体をエッチング液中で超音波を印加しながらエッチングする方法において、前記超音波強度を超音波が通過する固体材料の減衰率により調整均一化し、エッチングすることを特徴とする多孔質体のエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチング液の温度の揺らぎを±0.5℃以内に制御することを特徴とする請求項5に記載の多孔質体のエッチング方法。
【請求項7】
前記エッチング液はふっ酸と過酸化水素水との混合液であることを特徴とする請求項5に記載の多孔質体のエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−194348(P2007−194348A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10019(P2006−10019)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】