説明

多層セラミック基板及びその製造方法

【課題】生産性が高く、且つ、厚み方向への収縮が大きな場合でも、層間接続導体の突き上げを抑制して、基板内部で変形や断線等の発生を低減できる多層セラミック基板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】平面視で層間接続導体部13と同じ位置であって、且つ、層間接続導体部13の厚み方向の少なくとも一方に、層間接続導体部13と直接に又は第1内部配線層9を介して接触するように、導体と結晶化ガラスとムライトとを含み導電性を有する第2内部配線層11を備える。この結晶化ガラスは、ガラス転移点(Tg)が焼成収縮開始温度より低く、しかも、結晶化温度(Tc)が焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な接続信頼性の高い多層セラミック基板及びその製造方法に関し、例えば、無収縮焼成技術によって得られる高寸法精度の多層セラミック基板において、電子部品、ICパッケージ、ICを検査する検査用基板等に用いることができる多層セラミック基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICの電気検査として、シリコンウェハー単位で検査を行う要求が多くなっており、特に、シリコンウェハーの大型化が進む現在では、φ300mm(12inch)のウェハー対応が必要となっている。
【0003】
また、これらのシリコンウェハーを検査するに当たっては、測定治具のIC検査用基板に、ICのパッド(ICパッド)とコンタクトするような接続端子を形成する必要があり、この接続端子は繰り返し接触するために、強度が必要となる。
【0004】
これらの要求を満たすために、IC検査用基板として、多層のセラミック基板が用いられているが、従来の通常の製造方法においては、セラミック基板の焼成時の収縮バラツキにより、ICパッドへの接続に必要な寸法精度を得ることは容易ではない。
【0005】
そこで、近年では、この様な寸法精度が求められるセラミック基板の製造方法として、無収縮焼成技術が開発されている。
この無収縮焼成技術としては、セラミックを含むグリーンシートを積層したグリーンシート積層体の上下面に、グリーンシート積層体が焼成する温度では焼結しないセラミックシートからなる拘束シート(収縮抑止シート)を積層することで、焼成した際に、収縮抑制シートがグリーンシート積層体の収縮時の平面方向(XY方向)への収縮を抑制し、高い寸法精度を実現する手法が開発されている。
【0006】
また、これ以外に、グリーンシート積層体の内層に、平面方向の収縮を抑制するような収縮抑制シートを配置し、焼成時にグリーンシート中のガラス成分を収縮抑制シート中に拡散させることにより、高い寸法精度を実現する手法も開発されている。
【0007】
この様な無収縮焼成技術においては、平面方向の収縮を抑制しながら焼成するが、いずれの方法でも、焼成時にグリーンシートは収縮しないと緻密化しないため、厚み方向(Z方向)への収縮が大きくなるという特徴がある。
【0008】
ところで、グリーンシート積層体の内部には、通常、各グリーンシートの表面に内部配線導体が配置されるとともに、グリーンシートを厚み方向に貫く様に内部配線導体と接続される層間接続導体(ビア導体)が配置されるが、このビア導体は、無収縮焼成であっても、また、無収縮焼成でない通常の焼成であっても、平面方向及び厚み方向に均等に収縮する。
【0009】
それに対して、グリーンシートは、上述の様に、無収縮焼成の際には、厚み方向に大きく収縮するので、ビア導体とグリーンシートの無収縮焼成の際の挙動が大きく異なることになる。
【0010】
つまり、無収縮焼成技術でない通常の焼成の際には、グリーンシートは平面方向及び厚み方向に均等に収縮するため、焼成後のビア導体とセラミック層の間には、隙間や突上げ(焼成時のグリーンシートに対するビア導体の突出)は見られないが、無収縮焼成技術では、グリーンシートは厚み方向へ大きく収縮しようとするが、ビア導体は平面方法及び厚み方向へ均等に収縮しようとするため、焼成後のビア導体とセラミック層との間に隙間および突上げが生じてしまう。その結果、ビア導体と内部配線導体との電気的接続が損なわれることがあった。
【0011】
この対策として、従来より、ビア導体とグリーンシートとの間の収縮挙動の合わせこみをする方法について多く検討されており、厚み方向の収縮のミスマッチで発生するビア導体の突上げに対しても、構造面及び材料での検討がなされてきた(特許文献1〜3参照)。
【0012】
具体的には、特許文献1には、ビア導体の厚み方向における端面側に(焼成時に焼結しない無機材料を含む)収縮抑制用グリーン層を設けることで、ビア導体の突き上げを低減する技術が開示されている。また、特許文献2には、ビア導体の厚み方向における端面側に金属箔を配置することで、ビア導体の突き上げを低減する技術が開示されている。更に、特許文献3には、ビア導体にWないしSb23を添加して収縮タイミングを調整することで、ビア導体の突き上げを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−257473号公報
【特許文献2】特開平10−107445号公報
【特許文献3】特開平6−69651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記特許文献1の技術の様に、グリーンシート積層体の内部に、焼結しない無機材料を局所的に配置すると、例えば圧力を印加しながら焼成する場合には、圧力の分布を生じ、(焼成された)多層セラミック基板内部において、無機材料の配置されている部分と配置されていない部分の間で、内部配線導体の断線が発生することがある。
【0015】
また、前記特許文献2の技術の様に、ビア導体の突上げを抑制するために、内部に金属箔を用いる場合には、金属箔によりビア導体の厚み方向への突上げは抑制されるが、金属箔によるパターン形成には、露光、現像等の多くの手間がかかる上に、必要の無いパターン部分の金属成分は、現像の際に取り除かれ捨てられてしまうことから、非常にコストのかかる工程となってしまう。
【0016】
更に、前記特許文献3の技術の様に、ビア導体への添加物を適宜調整することで、グリーンシートとの収縮タイミングを調整し、ビア導体の厚み方向の収縮挙動を調整する方法では、ビア導体のデザイン(接続長さ)の変動などで、突上げの量が左右される状況となり、デザインによって製造内容の見直しが必要となるので、製造に手間がかかるという問題がある。
【0017】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、生産性が高く、且つ、厚み方向への収縮が大きな場合でも、層間接続導体の突き上げを抑制して、基板内部で変形や断線等の発生を低減できる多層セラミック基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)本発明では、第1態様として、複数のセラミック層が積層されるとともに、前記セラミック層間に配置される第1内部配線層と、前記セラミック層の厚み方向に貫通して前記第1内部配線層と電気的に接続する層間接続導体部と、を備えた多層セラミック基板の製造方法において、焼成後に前記層間接続導体部となる層間接続導体形成部と、焼成後に前記第1内部配線層となる第1内部配線形成層と、を有するグリーンシートを複数積層して、グリーンシート積層体を形成する第1工程と、前記グリーンシート積層体の少なくとも一方の表面に、該グリーンシート積層体が焼結する温度では焼結しない収縮抑制シートを積層して、グリーン複合積層体を形成する第2工程と、前記グリーン複合積層体を脱脂・焼成して、セラミック積層体を形成する第3工程と、前記焼成後に、前記セラミック積層体の表面に残留する前記収縮抑制シートの未焼結層を除去する第4工程と、前記未焼結層を除去した後に、前記セラミック積層体の表面に表面導体層を形成する第5工程とを備え、前記グリーンシートを積層する前に、平面視で前記層間接続導体形成部と同じ位置であって、且つ、前記層間接続導体形成部の前記厚み方向の少なくとも一方に、前記層間接続導体形成部と直接に又は前記第1内部配線形成層を介して接触するように、導体と結晶化ガラスとムライトとを含み導電性を有する第2内部配線層となる突き上げ防止層を形成するとともに、前記結晶化ガラスとして、ガラス転移点(Tg)が焼成収縮開始温度より低く、しかも、結晶化温度(Tc)が焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低い材料を用いることを特徴とする。
【0019】
本態様では、多層セラミック基板を製造するに当たり、グリーンシートを積層する前に、平面視で層間接続導体形成部(以下単にビア形成部と記すこともある)と同じ位置であって、且つ、ビア形成部の厚み方向の少なくとも一方に、ビア形成部と直接に又は第1内部配線形成層を介して接触するように、導体と結晶化ガラスとムライトとを含み導電性を有する第2内部配線層となる突き上げ防止層を形成する。例えば、後述する図1(a)に例示する様に、第1内部配線形成層と突き上げ防止層とビア形成部とを配置する。
【0020】
それとともに、突き上げ防止層の結晶化ガラスとして、ガラス転移点(Tg)が焼成収縮開始温度より低く、しかも、結晶化温度(Tc)が焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低い材料を用いる。
【0021】
これにより、後に詳述する様に、(金属箔や製造内容の見直しが不要で)生産性が高く、且つ、焼成時において、厚み方向への収縮が大きな場合でも、ビア形成部の第1内部配線形成層への突き上げを抑制できるので、基板内部での(特に焼成後の第1内部配線層の)変形や断線等の発生を低減することができる。
【0022】
つまり、本態様では、上述した従来技術の様に、グリーンシート積層体の内部に焼結しない無機材料を局所的に配置しないので、焼成時に圧力の分布が生じにくく、よって、第1内部配線層の断線が発生しにくい。また、内部に金属箔を配置しないので、製造工程を簡易化でき、コストも低減できる。更に、ビア導体のデザイン(接続長さ)の変動などによる製造内容の見直しが不要であるので、製造工程を簡易化できる。
【0023】
以下、本態様において、結晶化ガラスの構成を規定した理由を詳細に説明する。
なお、この結晶化ガラスにおいて、結晶化ガラスを焼成する場合の温度と粘度との関係、及びガラス転移点(Tg)と結晶化温度(Tc)としては、図1(b)に示す関係が挙げられる。つまり、温度が上昇すると粘度が低下し、ガラス転移点(Tg)より結晶化温度(Tc)が高い。
【0024】
まず、本態様にて多層セラミック基板を製造する場合には、セラミックの焼成収縮開始温度後(例えば750℃以降)から、セラミックが緻密化するまでの間において、セラミックの粘度が低下する領域(例えば750〜800℃)では、ビア形成部に当接する突き上げ防止層の粘度がセラミックの粘度より高くなる必要がある。この粘度の差によって、ビア形成部の収縮方向(厚み方向)に配置された粘度の高い突き上げ防止層が盾となり、セラミックの収縮時のビア形成部の厚み方向への突き上げを防止できる。
【0025】
具体的には、まず、突き上げ防止層に含まれる結晶化ガラスは、セラミックの焼成収縮開始温度より早く軟化し、突き上げ防止層の収縮を助ける必要がある。そのため、本態様では、「結晶化ガラスのガラス転移点(Tg)を、焼成収縮開始温度より低く」設定している。
【0026】
また、前記粘度差を生ずるためには、セラミックの粘度が低下する領域においては、突き上げ防止層の粘度が(前記粘度差を生ずる程度に)上昇すること、即ち粘度が上昇する程度の結晶化(結晶化ガラスの結晶化)が必要になる。
【0027】
この結晶化による効果を得るには、焼成収縮開始温度が、結晶化温度−150℃〜結晶化温度の範囲程度であると考えられるので、その点を実験により確認した。
これにより、本態様では、「結晶化ガラスの結晶化温度を、セラミックの焼成収縮開始温度より高く、且つ、セラミックの焼成収縮開始温度+150℃(例えば900℃)」とした。
【0028】
なお、結晶化温度が、収縮開始温度+150℃を超えると、セラミックの粘度が低下している温度領域において、結晶化が不十分となり、突き上げ防止層の粘度がセラミックの粘度より低くなることがあり、その場合には、上述した突き上げ防止効果が得られないことがある。
【0029】
よって、本態様では、上述した様に、突き上げ防止層の結晶化ガラスの特性を規定しており、これによる突き上げ防止の効果は、後述する実験例から明らかである。
なお、後述する実験例から明らかな様に、セラミックの粘度が低下する領域(具体的には750〜800℃)の間に、結晶化温度を有すると、配線変形量が少ないので、一層望ましい。
【0030】
なお、突き上げ防止層に含まれるムライトは、無機フィラーであり、突き上げ防止層の粘度低下を抑制する作用を奏する。
ここで、焼成収縮開始温度とは、多層セラミック層の製造時に、そのセラミック層の材料(グリーンシート等)焼成をした場合に、その材料が収縮を開始する温度である。
【0031】
(2)本発明では、第2態様として、平面視で、前記突き上げ防止層の面積は前記層間接続導体形成部の面積よりも大であることを特徴とする。
本態様では、突き上げ防止層の面積はビア形成部の面積よりも大であるので、焼成の際にビア形成部が突き上げ防止層を突き上げるような挙動を示した場合でも、突き上げ防止層は広範囲に形成されているので、突き上げによる基板内部の変形や断線が生じ難いという利点がある。
【0032】
(3)本発明では、第3態様として、前記結晶化ガラスの結晶化温度は、780℃〜900℃の範囲であることを特徴とする。
後述する実験例から明らかな様に、結晶化ガラスの結晶化温度が、780℃〜900℃の範囲である場合には、突き上げによる変形や断線が生じにくいという利点がある。
【0033】
(4)本発明では、第4態様として、前記突き上げ防止層を構成する材料中の全無機材料に対する前記結晶化ガラス及び前記ムライトの含有率は、20体積%以上であることを特徴とする。
【0034】
本態様では、突き上げ防止層の全無機材料に対する結晶化ガラス及びムライトの含有率は、20体積%以上であるので、上述した突き上げ防止の効果が大きく、基板内部の変形や断線の発生を効果的に防止できる。
【0035】
なお、結晶化ガラスは、結晶化ガラスとムライトとの体積が等量であると、上述した突き上げ防止の効果が一層大きく好適である。
また、結晶化ガラス及びムライトの含有率が、30体積%以下の場合には、導電性を十分確保でき(例えば電気抵抗率ρ<8μΩ・cm)、ペースト特性(穴埋め性、経時的粘度安定性など)も確保できるので、好適である。
【0036】
(5)本発明は、第5態様として、複数のセラミック層が積層されたセラミック積層体と、前記セラミック層間にて平面方向に配置された第1内部配線層と、前記セラミック層を厚み方向を貫通し前記第1内部配線層に電気的に接続された層間接続導体部(例えばビア)と、を備えた多層セラミック基板において、平面視で前記層間接続導体部と同じ位置であって、且つ、前記層間接続導体部の前記厚み方向の少なくとも一方に、前記層間接続導体部と直接に又は前記第1内部配線層を介して接触するように、導体と結晶化ガラスとムライトとを含み導電性を有する第2内部配線層を備えるとともに、前記結晶化ガラスは、ガラス転移点(Tg)が焼成収縮開始温度より低く、しかも、結晶化温度(Tc)が焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低いことを特徴とする。
【0037】
本態様の多層セラミック基板では、使用される結晶化ガラスが前記特性を有しているので、上述した様に、焼成時に、ビア形成部の第1内部配線形成層に対する突き上げを抑制できる。よって、焼成によって得られた多層セラミック基板においては、第1内部配線層の変形や断線が少ないという顕著な効果を奏する。
【0038】
つまり、上述した構成の多層セラミック基板においては、その製造時において、従来の様な問題点を解決して、変形や断線の少ない優れた基板を実現できる。
なお、本発明においては、第1内部配線層と第2内部配線層と層間接続導体部(以下単にビアと記すこともある)との配置としては、図1(a)に示す関係が挙げられる。
【0039】
なお、図1(a)において、Pが(第1内部配線形成層が焼成されてなる)第1内部配線層、Qが(突き上げ防止層が焼成されてなる)第2内部配線層、Rが(層間接続導体形成部が焼成されてなる)層間接続導体部である。
【0040】
(6)本発明では、第6態様として、平面視で、前記第2内部配線層の面積は前記層間接続導体部の面積よりも大であることを特徴とする。
本態様では、第2内部配線層の面積はビアの面積よりも大であるので、その製造の際には、上述した突き上げが発生しても、変形や断線が生じ難い。よって、この構成の多層セラミック基板は、一層変形や断線が少ないという利点がある。
【0041】
(7)本発明では、第7態様として、前記結晶化ガラスの結晶化温度は、780℃〜900℃の範囲であることを特徴とする。
後述する実験例から明らかな様に、結晶化ガラスの結晶化温度が、780℃〜900℃の範囲である場合には、突き上げによる変形や断線が生じにくいという利点がある。
【0042】
(8)本発明は、第8態様として、前記第2内部配線層における前記結晶化ガラス及び前記ムライトの含有率は、20体積%以上であることを特徴とする。
本態様では、第2内部配線層における結晶化ガラス及びムライトの含有率は、20体積%以上であるので、上述した突き上げ防止の効果が大きく、基板内部の変形や断線の発生を効果的に防止できる。
【0043】
なお、上述した本発明において、前記第2内部配線層(突き上げ防止層)に含まれる導体としては、Ag、Pd、Pt等が挙げられる。また、結晶化ガラスとしては、SiO2−Al23−B23−BaO−MgO系、Nd23−TiO2−SiO2系、SiO2−CaO−MgO−ZnO系等のガラスが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は本発明における第1内部配線層、第2内部配線層、層間接続導体部の配置を例示する説明図、(b)は結晶化ガラスの温度と粘度との関係を示す説明図である。
【図2】(a)は多層セラミック基板の要部を厚み方向に沿って破断した状態を示す断面図、(b)は多層セラミック基板を厚み方向(基板表面に垂直な方向)から見た場合の第1内部配線層、第2内部配線層、層間接続導体部の配置の一例を示す説明図である。
【図3】本実施形態のIC検査用基板の表面の一部を示す平面図である。
【図4】本実施形態のIC検査用基板の使用方法を示す説明図である。
【図5】本実施形態の多層セラミック基板の製造方法の一部を示す説明図である。
【図6】本実施形態の多層セラミック基板の製造方法の一部を示す説明図である。
【図7】(a)は実験例1の導電性を調べる実験方法を示す説明図、(b)は実験例2の基板変形量を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
[実施形態]
a)まず、本実施形態の多層セラミック基板を、図2〜図4に基づいて説明する。
【0046】
なお、ここでは、多層セラミック基板として、IC検査用基板に用いられる基板を例に挙げて説明する。
図2(a)にIC検査用基板1の一部を示す様に、IC検査用基板1は、セラミック層3が板厚方向(同図上下方向)に複数積層された多層セラミック基板5(例えば厚さ5mm×縦100mm×横100mmの直方体の焼結体)と、該多層セラミック基板5の表面に形成された電極7とを有する。
【0047】
前記セラミック層3は、例えばガラス成分とセラミック成分との混合物を、例えば800〜1050℃程度の低温にて焼成した低温焼成のガラスセラミックで構成されている。
詳しくは、各セラミック層3は、ムライト及びホウケイ酸系ガラスをセラミックの主成分とするガラスセラミックからなり、ホウケイ酸系ガラス中にSiO、Al23、B23含んでいる。
【0048】
また、前記電極7は、多層セラミック基板5の表裏面に形成されており、この電極7は、Ti/Cu/Ni/Au層を順に積み重ねた構造を有している。なお、電極7を構成する導体としては、Ti、Cr、Mo、Cu、Ni、Au、及びそれらを組み合わせた物を採用できる。
【0049】
更に、多層セラミック基板5の内部(詳しくは各セラミック層3の境界部分)には、後述する様に、所定の位置に(導電性を有する)第1内部配線層9と第2内部配線層11とが配置されている。
【0050】
しかも、多層セラミック基板5の表面の電極7と裏面の電極7とを、第1内部配線層9を介して(場所によっては更に第2内部配線層11を介して)電気的に接続するように、基板の厚み方向に伸びる層間接続導体部(ビア)13が形成されている。なお、第1内部配線層9やビア13を構成する導体としては、ガラスセラミックの焼成の際に低温で同時焼成可能な、Ag、Ag/Pt合金、Ag/Pd合金などの導体が使用できる。
【0051】
なお、図2(a)では、表側の電極7と裏側の電極7が電気的に接続されていないように表示されているが、実際には、他の箇所にて、第1内部配線層9やビア13を介して、電気的に接続されている。
【0052】
b)次に、本実施形態の要部である第1内部配線層9、第2内部配線層11、ビア13の配置等について説明する。
図2(a)に示す様に、A部分(同図左側のビア13)では、ビア13の厚み方向(同上下方向)の一方(同図下方)に、ビア13の端面15を覆うように第2内部配線層11が形成されるとともに、第2内部配線層11の表面(同図下方)を覆うように第1内部配線層9が積層されている。
【0053】
また、B部分(同図中央のビア13)では、ビア13の厚み方向の一方(同図上方)に、ビア13の端面15を覆うように第1内部配線層9が形成されるとともに、第1内部配線層9の表面(同図上方)に第2内部配線層11が積層されている。また、ビア13の厚み方向の他方(同図下方)に、ビア13の端面15を覆うように第2内部配線層11のみが配置されている。
【0054】
更に、C部分(同図右側のビア13)では、ビア13の厚み方向の一方(同図上方)に、ビア13の端面を覆うように第1内部配線層9が形成されるとともに、第1内部配線層9の表面(同図上方)に第2内部配線層11が積層されている。
【0055】
詳しくは、図2(b)にA部分を(図2(a)の)上方側から見た平面視を示す様に(各部材の形状を透過して見た様に示している)、ビア13の端面15の全てを覆って、端面15より広い面積を有する第2内部配線層11が配置されるとともに、第2内部配線層11の全てを覆って、第2内部配線層11より広い面積を有する第1内部配線層9が配置されている。
【0056】
なお、B、C部分についても、ビア13の端面15や第2内部配線層11や第1内部配線層9の大小関係は同様である。
なお、B部分の(図2(a)の)下端においては、ビア13の端面15の全てを覆って、端面15より広い面積を有する第2内部配線層11のみが配置されている。
【0057】
特に本実施形態では、第2内部配線層11は、導体(Ag)と結晶化ガラスとムライトからなり、その結晶化ガラスは、ガラス転移点(Tg)が例えば645℃であり、(IC検査用基板1の)焼成収縮開始温度(例えば750℃)より低く、しかも、結晶化温度(Tc)が例えば790℃であり、焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低い特性を有している。
【0058】
この結晶化ガラスとしては、SiO2−Al23−B23−BaO−MgO系のガラスを用いることができる。
また、本実施形態では、第2内部配線層11における結晶化ガラス及びムライトの含有率は、20体積%以上である。
【0059】
なお、図3に示す様に、本実施形態では、多層セラミック基板5上に複数の電極7が形成されており、図4に示す様に、導電性のプローブ(接続端子)16が接続されてIC検査用治具(シリコンウェハーの電気検査用治具)17が構成される。
【0060】
このIC検査用治具17は、例えばφ300mm(12inch)のシリコン(Si)ウェハー18に対応したものであり、(各ICを切り出す前の)シリコンウェハー18におけるICの端子19にプローブ16が接触することにより、一度に多数のICの検査を行うことが可能である。
【0061】
c)次に、本実施形態の多層セラミック基板5の製造方法の具体例を、図5及び図6に基づいて詳細に説明する。
<グリーンシートの製造>
まず、セラミック層3を形成するための原料粉末として、SiO2、Al23、B23を主成分とするホウケイ酸系ガラス粉末(平均粒径:3μm、比表面積:1.0m2/g)と、ムライト粉末(平均粒径:3μm、比表面積:1.0m2/g)とを用意した。
【0062】
また、セラミックのグリーンシートを形成する際のバインダ成分(樹脂成分)としてアクリル系バインダを、成形後のグリーンシートに適度な柔軟性を与える可塑剤成分としてDOP(ジ・オチクル・フタレート)を、適当なスラリー粘度とシート強度を持たせる溶剤としてMEK(メチルエチルケトン)を用意した。
【0063】
次に、前記ホウケイ酸系ガラス粉末とムライト粉末とを、重量比で50:50、総量で1kgとなるように秤量して、アルミナ製のポットに入れた。これに、前記アクリル樹脂(バインダ)を120gと、可塑剤(DOP)及び溶剤(MEK)の適量を、前記ポットに入れ、5時間混合することにより、セラミックスラリーを得た。
【0064】
得られたセラミックスラリーを用いて、ドクターブレード法により、図5(a)に示す様に、厚み0.15mmのグリーンシート(低温焼成用のセラミックグリーンシート)21を得た。
【0065】
<収縮抑制シートの製造>
また、前記グリーンシート21を作製する工程とは別に、図5(b)に示す収縮抑制シート23を作製するために、セラミック原料粉末として、平均粒径:3μm、比表面積:1m2/gのアルミナ粉末を用意した。
【0066】
更に、シート形成時のバインダ成分としてアクリル系バインダ、可塑剤成分としてDOP、溶剤としてMEKを用意した。
そして、前記グリーンシート21と同様に、アルミナ製のポットに、アルミナ粉末を投入した後、アクリル樹脂と可塑剤(DOP)とを投入し、更に、溶剤(MEK)を投入し、スラリーを得た。
【0067】
このスラリーを用いて、ドクターブレード法により、厚み0.30mmの収縮抑制シート23を作製した。
<多層セラミック基板の製造>
・次に、図5(c)に示す様に、前記グリーンシート21に、パンチングにより貫通孔(スルーホール)25を形成した。
【0068】
・次に、図5(d)に示す様に、前記スルーホール25に、導電ペーストを充填して(焼成後に層間接続導体部(ビア)13となる)層間接続導体形成部(ビア形成部)27を形成した。
【0069】
このビア13用の導電ペーストは、平均粒径3.5μmの銀粉末を100体積部に対して、軟化点が760℃のホウケイ酸系ガラス粉末を20体積部添加した粉末原料に、樹脂としてエチルセルロース樹脂を加えるとともに、溶剤としてターピネオールを加え、3本ロールミルにて混練して作製したものである。
【0070】
・次に、図5(e)に示す様に、グリーンシート21の表面に、導電ペーストを用いて、ビア形成部27などの表面を覆う様に、印刷によって(後に第1内部配線層9となる)導体パターンである第1内部配線形成層29を形成した。
【0071】
この第1内部配線形成層29用の導電ペーストは、平均粒径2.0μmの銀粉末100体積部に対して、軟化点が700℃のホウケイ酸系ガラス粉末を5体積部添加した粉末原料に、樹脂としてエチルセルロース樹脂を加えるとともに、溶剤としてターピネオールを加え、3本ロールミルにて混練して作製したものである。
【0072】
・次に、図5(f)に示す様に、第1内部配線形成層29の表面に、導電ペーストを用いて、ビア形成部27の厚み方向における投影領域を覆う様に、印刷によって(後に第2内部配線層11となる)導体パターンである突き上げ防止層31を形成した。
【0073】
この突き上げ防止層31用の導電ペーストは、平均粒径2μmの銀粉末100体積部に対して、軟化点が790℃のホウケイ酸系ガラス粉末を10体積部と、無機フィラーとしてムライトを10体積部とを添加した粉末原料に、樹脂としてエチルセルロース樹脂を加えるとともに、溶剤としてターピネオールを加え、3本ロールミルにて混練して作製したものである。
【0074】
なお、この結晶化ガラスであるホウケイ酸系ガラスは、上述した様に、SiO2−Al23−B23−BaO−MgO系のガラスである。また、このホウケイ酸系ガラスのガラス転移点(Tg)は645℃であり、後述する焼成収縮開始温度(例えば750℃)より低い。しかも、その結晶化温度(Tc)は790℃であり、焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低い材料である。
【0075】
これらの結晶化ガラスの結晶化温度としては、例えば780℃〜900℃の範囲のものを用いる。
また、本実施形態では、突き上げ防止層31中の無機成分における結晶化ガラス及びムライトの含有率は、20体積%以上である。なお、結晶化ガラスとムライトとの割合としては、等量が好適である。
【0076】
・次に、図5(g)に示す様に、各グリーンシート21を積層して、グリーンシート積層体33を形成した。なお、各グリーンシート21には、それぞれ、焼成後の多層セラミック層5に対応した必要な箇所に、ビア13に対応したビア形成部27、第1内部配線層9に対応した第1内部配線形成層29、第2内部配線層11に対応した突き上げ防止層31を構成する部材が形成してあるので、それらを積層することにより、図5(g)に示す構成となる、
・次に、図6(a)に示す様に、グリーンシート積層体33の両側に収縮抑制シート23を積層して、グリーン複合積層体35を形成した。
【0077】
・次に、プレス機(図示せず)にて、グリーン複合積層体35の積層方向の両側から0.2MPaの押圧力を加えながら、脱脂後に850℃にて30分間焼成し、図6(b)に示す様な、(セラミック積層体37の表面に未焼結の収縮抑制シート23が残っている)複合積層焼結体39を得た。
【0078】
・次に、図6(c)に示す様に、複合積層焼結体39の両主面に残っている(未焼結の)収縮抑制シート23を、水を媒体として超音波洗浄機により除去し、セラミック積層体37を得た。
【0079】
その後、セラミック積層体37の両外側表面を、アルミナ質砥粒を用いたラップ研磨により研磨した。
・次に、図6(d)に示す様に、研磨したセラミック積層体37(即ち多層セラミック基板5)の表面のビア13に対応する位置に、例えばTi薄膜をスパッタ法により形成した後に、順次、Cuメッキ、Niメッキ、Auメッキを施して、電極7を形成し、多層セラミック基板5を完成した。
【0080】
c)次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態では、多層セラミック基板5を製造するに当たり、各グリーンシート21を積層する前に、平面視でビア形成部27と同じ位置であって、且つ、ビア形成部27の厚み方向の少なくとも一方に、ビア形成部27と直接に又は第1内部配線形成層29を介して接触するように、導体と結晶化ガラスとムライトとを含み導電性を有する突き上げ防止層31を形成する。それとともに、突き上げ防止層31の結晶化ガラスとして、ガラス転移点(Tg)が焼成収縮開始温度より低く、しかも、結晶化温度(Tc)が焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低い材料を用いる。
【0081】
これにより、従来より生産性を高くできる。しかも、焼成時において、厚み方向への収縮が大きな場合でも、ビア形成部27の突き上げを抑制できるので、基板内部での変形や断線等の発生を低減することができる。
【0082】
また、本実施形態では、突き上げ防止層31の面積はビア形成部27の面積よりも大であるので、焼成の際にビア形成部27が突き上げ防止層31を突き上げるような挙動を示した場合でも、突き上げによる変形や断線が生じ難い。
【0083】
更に、本実施形態では、結晶化ガラスの結晶化温度は、780℃〜900℃の範囲であるので、この点からも、突き上げによる変形や断線が生じ難い。
しかも、本実施形態では、突き上げ防止層27の全無機材料に対する結晶化ガラス及びムライトの含有率は、20体積%以上であるので、一層突き上げによる変形や断線が生じ難いという利点がある。
<実験例>
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0084】
(1)実験例1
本実験例1は、多層セラミック基板内の導通を調べたものである。
まず、前記実施形態と同様の製造方法にて、実験に使用する複数の多層セラミック基板を作製した。
【0085】
具体的には、下記表1に(無機成分)示す様に、使用する結晶化ガラスや無機フィラーを変更し、突き上げ防止層31用の導体ペーストを作製した。なお、他の条件(例えば導体ペーストの導体や樹脂や溶剤、他の導体ペーストの組成、グリーンシートの組成など)は、前記実施形態と同様である。
【0086】
そして、これらの材料を用いて、前記実施形態と同様な手順で、本発明の範囲の試料(実施例1〜4)と、本発明の範囲外の試料(比較例1〜4)とを作製した。
詳しくは、実施例1、4の結晶化ガラスはSiO2−Al23−B23−BaO−MgO系(日本電気硝子(株)製 GA60)であり、実施例2の結晶化ガラスはNd23−TiO2−SiO2系(日本電気硝子(株)製 GA55)であり、実施例3の結晶化ガラスはSiO2−CaO−MgO−ZnO系(日本電気硝子(株)製 GA63)である。また、比較例2、4の結晶化ガラスはSiO2−Al23−B23−BaO−MgO系(日本電気硝子(株)製 GA60)であり、比較例3の結晶化ガラスはSiO2−B23−ZnO系(旭硝子(株)製 ASF1891)である。なお、比較例1は、結晶化ガラスを使用していない。
【0087】
そして、各試料の多層セラミック基板に対して、図7(a)に示す様に、2箇所のビア(X)が内部配線層(Y)(第1内部配線層の所定箇所に第2内部配線層が積層された層)にて接続された導通路間の導通を確認した。
【0088】
具体的には、そのような導通路30箇所に対して、ビア間の導通を確認し、その導通不良(非導通)の発生率(%)を求めた。その結果を下記表1に記す。
(2)実験例2
本実験例2は、実験例1で用いた各試料の多層セラミック基板をビアに沿って厚み方向に破断し、図7(b)に示す様に、内部配線層の厚み方向における変形量(即ち内部配線層のビア部分における突出量:配線変形量Δh)を測定した。
【0089】
詳しくは、各試料に対して40箇所の変形量を、測長機能のついた光学顕微鏡にて200倍にて測定し、その平均値を求めた。その結果を下記表1に記す。
【0090】
【表1】

【0091】
この表1から明らかな様に、本発明の範囲の実施例1〜4では、請求項1、5の条件を満たしているので、配線変形量が少なく、よって、導通不良の発生率が少なく好適であることが分かる。
【0092】
なお、実施例4は、結晶化ガラスとムライトの合計量が20体積%以下であるので、突き上げ防止層の粘度がやや低く、よって、他の実施例より性能が劣ると考えられる。
それに対して、比較例1では、結晶化ガラスを用いないので、セラミックの収縮開始温度以上における突き上げ防止層に、十分な粘度が得られず、よって、配線変形量及び導通不良発生率が大きく好ましくない。
【0093】
また、比較例2では、ムライトを用いないので、突き上げ防止層に十分な粘度が得られず、よって、配線変形量及び導通不良発生率が大きく好ましくない。
更に、比較例3では、結晶化温度がセラミック収縮開始温度より低く、突き上げ防止層が脆くなり、よって、配線変形量及び導通不良発生率が大きく好ましくない。
【0094】
また、比較例4では、アルミナを用いているので、配線変形量及び導通不良発生率が大きく好ましくない。
尚、本発明は前記実施形態や実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0095】
(1)例えば、グリーン積層体の一方の側のみに、収縮抑制シートを配置してもよい。
(2)また、焼成の際に、加圧を行わなくてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…IC検査用基板
3…セラミック層
5…多層セラミック基板
7…電極
9…第1内部配線層
11…第2内部配線層
13…層間接続導体部(ビア)
21…グリーンシート
23…収縮抑制シート
27…層間導体形成部(ビア形成部)
29…第1内部配線形成層
31…突き上げ防止層
33…グリーンシート積層体
35…グリーン複合積層体
37…セラミック積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック層が積層されるとともに、前記セラミック層間に配置される第1内部配線層と、前記セラミック層の厚み方向に貫通して前記第1内部配線層と電気的に接続する層間接続導体部と、を備えた多層セラミック基板の製造方法において、
焼成後に前記層間接続導体部となる層間接続導体形成部と、焼成後に前記第1内部配線層となる第1内部配線形成層と、を有するグリーンシートを複数積層して、グリーンシート積層体を形成する第1工程と、
前記グリーンシート積層体の少なくとも一方の表面に、該グリーンシート積層体が焼結する温度では焼結しない収縮抑制シートを積層して、グリーン複合積層体を形成する第2工程と、
前記グリーン複合積層体を脱脂・焼成して、セラミック積層体を形成する第3工程と、
前記焼成後に、前記セラミック積層体の表面に残留する前記収縮抑制シートの未焼結層を除去する第4工程と、
前記未焼結層を除去した後に、前記セラミック積層体の表面に表面導体層を形成する第5工程と
を備え、
前記グリーンシートを積層する前に、平面視で前記層間接続導体形成部と同じ位置であって、且つ、前記層間接続導体形成部の前記厚み方向の少なくとも一方に、前記層間接続導体形成部と直接に又は前記第1内部配線形成層を介して接触するように、導体と結晶化ガラスとムライトとを含み導電性を有する第2内部配線層となる突き上げ防止層を形成するとともに、
前記結晶化ガラスとして、ガラス転移点(Tg)が焼成収縮開始温度より低く、しかも、結晶化温度(Tc)が焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低い材料を用いることを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。
【請求項2】
平面視で、前記第1内部配線形成層の面積は前記層間接続導体形成部の面積よりも大であることを特徴とする請求項1に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項3】
前記結晶化ガラスの結晶化温度は、780℃〜900℃の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項4】
前記突き上げ防止層を構成する材料中の全無機材料に対する前記結晶化ガラス及び前記ムライトの含有率は、20体積%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項5】
複数のセラミック層が積層されたセラミック積層体と、前記セラミック層間にて平面方向に配置された第1内部配線層と、前記セラミック層を厚み方向を貫通し前記第1内部配線層に電気的に接続された層間接続導体部と、を備えた多層セラミック基板において、
平面視で前記層間接続導体部と同じ位置であって、且つ、前記層間接続導体部の前記厚み方向の少なくとも一方に、前記層間接続導体部と直接に又は前記第1内部配線層を介して接触するように、導体と結晶化ガラスとムライトとを含み導電性を有する第2内部配線層を備えるとともに、
前記結晶化ガラスは、
ガラス転移点(Tg)が焼成収縮開始温度より低く、しかも、結晶化温度(Tc)が焼成収縮開始温度より高く且つ焼成収縮開始温度+150℃より低いことを特徴とする多層セラミック基板。
【請求項6】
平面視で、前記第2内部配線層の面積は前記層間接続導体部の面積よりも大であることを特徴とする請求項5に記載の多層セラミック基板。
【請求項7】
前記結晶化ガラスの結晶化温度は、780℃〜900℃の範囲であることを特徴とする請求項5又は6に記載の多層セラミック基板。
【請求項8】
前記第2内部配線層における前記結晶化ガラス及び前記ムライトの含有率は、20体積%以上であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の多層セラミック基板。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98421(P2013−98421A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241385(P2011−241385)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】