説明

多層プリント配線基板

【課題】小さな曲率で曲面化しても所望の形状に成形でき、成形形状がばらつかないようにすること。
【解決手段】電気絶縁層3と導電層2からなる基板構成単位層11を複数積層した多層プリント配線基板1において、基板構成単位層11同士を接着するとともに、加熱により軟化し、かつ、外力により塑性変形する接着層13を有する。積層方向に隣り合う導電層2を電気的に接続するとともに、電気絶縁層3と接することなく電気絶縁層3ないし接着層13に形成された穴に配設された層間接続部14を有する。基板を加熱しながら曲面化させることにより、接着層13が軟化して、基板構成単位層11間が密着性を維持しつつ曲面方向に沿って滑りを伴って変形し、変形領域14c内で層間接続部14の変形が許容されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の配線層を積層した多層プリント配線基板に関し、特に、層間で電気的接続をとる複数の接続部を有する多層プリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機に代表される携帯機器において、その高機能化・高性能化とともに機器のデザイン性が重要視されつつあり、使い勝手や見栄えを向上させるために筐体形状に曲面を多用した機器が求められる。しかしながら、筐体内に実装される多層プリント配線基板は一般に平坦であるため、多くの曲面から構成される筐体内に効率よく配置することは困難であり、無駄な空間が発生し筐体サイズの大きくなる。その結果、本来求められるデザイン性を損なうこととなる。そこで、無駄な空間をなくし、効率よく筐体内に基板を配置するために筐体の曲面に沿った曲面を有する多層プリント配線基板の実用化が望まれる。
【0003】
曲面を有するプリント配線基板の製造方法として、平坦な多層プリント配線基板1を、加熱しながら板面が曲面になるように力を加えて成形する方法がある(図18参照)。単に板面が曲面になるように力を加えると、図19のように多層プリント配線基板1には曲面外周側で引張り応力19aが発生し、かつ、内周側で圧縮応力19bが発生する。基板を曲面に成形するためには発生した応力19a、19bを除去する必要がある。このような応力19a、19bを除去する方法として、熱を加えながら曲面化する方法がある。熱を加えることによって応力19a、19bが時間とともに緩和される。
【0004】
ところで、多層プリント配線基板の製造方法として、図20に示すようなビルドアップ多層プリント配線基板の製造方法が開示されている(従来例1;特許文献1参照)。このビルドアップ多層プリント配線基板の製造方法では、絶縁基材111の両面に第1配線層121a、121bを形成した回路基板101を成形し(図20(A)参照)、当該回路基板101の両面に樹脂感光層131を成形し(図20(B)参照)、パターニング処理により樹脂感光層131にビア用孔132を成形し(図20(C)参照)、ビア用孔132内を含む樹脂感光層131上の全面にめっきにより導体層141およびフィルドビア142を成形し(図20(D)参照)、導体層141をパターニング処理することによって第2配線層141a、141bを形成している(図20(E)参照)。このようにしてできたビルドアップ多層プリント配線板100を曲面化する場合は、加熱しながら板面が曲面になるように力を加えて成形することになる。
【0005】
また、コンフォーマルビア構造を有するプリント配線基板の製造方法として、図21に示すようなプリント配線板の製造方法が開示されている(従来例2;特許文献2参照)。このプリント配線板の製造方法では、絶縁層205の両面に配線層203、204を成形した後、絶縁層205の一方の面に開口して他方の面上の配線層203によって閉じられたビア207を形成し、ビア207及びその周辺に第1のめっき208(フランジ部209を含む)を施した後、第2のめっき210(フランジ部211を含む)を施して、絶縁層205の両面の配線層203、204を電気的に接続している(図21参照)。このようにしてできたプリント配線板を曲面化する場合は、加熱しながら板面が曲面になるように力を加えて成形することになる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−63720号公報([0021]〜[0027]、図1)
【特許文献2】特開2002−26515号公報([0042]〜[0061]、図1〜図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プリント配線基板を熱をかけて曲面に成形した場合、ある程度の応力を除去することができるが、小さな曲率での曲面化を求めるほど発生する応力は大きくなるので、応力の完全な除去が難しい。つまり、プリント配線基板を小さな曲率で曲面化した場合、図22のように多層プリント配線基板1に発生する応力19の大きさは多層プリント配線基板1の厚さと相関関係があり、厚さ方向の中心Cから離れるほど大きくなる。すなわち、プリント配線基板1が厚いほど曲げ難いという性質がある。発生する応力19が大きいと、プリント配線基板1は無理に伸び縮みさせられるため、ダメージを受けたり、応力が除去しきれずにスプリングバックが発生する。
【0008】
また、加熱して応力19a、19bを緩和することによる多層プリント配線基板1の伸び/縮みに関しては、多層プリント配線基板1を構成する基板構成単位層11、12における絶縁層の物性が支配的である(図19参照)。絶縁層に用いられる材料は、絶縁性に加えて耐熱性をも求められるため、加熱による十分な伸び/縮みは期待できない。
【0009】
そのため、従来の多層プリント配線基板の構成では、所望の形状に成形することができなかったり、成形形状がばらつくなどの問題が発生していた。
【0010】
本発明の主な課題は、小さな曲率で曲面化しても所望の形状に成形でき、成形形状がばらつかないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで、図23のように多層プリント配線基板1を構成する基板構成単位層11、12間をずらしながら曲面化させることが可能であれば、発生する応力19を基板構成単位層11、12のレベルにまで小さくすることができる。すなわち、基板構成単位層11、12間がずれながら変形すると(ずれ方向19cに変形すると)、図24のように変形に必要な基板の伸び縮みによる応力19a、19bが小さくなるため、図19、図22のようにずれがないまま曲面化する場合と比べて曲げ易くなる。
【0012】
このようにずれをともなう曲面化を可能とするためには、2つの条件がある。第1の条件は、基板構成単位層11a、11b間の密着状態を保ちつつ、曲面化したときに基板構成単位層11a、11b間が基板平面方向(ずれ方向19c)にずれることである(図25参照)。第2の条件は、基板構成単位層11a、11b間にまたがり導電層2a、2b間を電気的に接続する層間接続部14(ビア16)がずれに追従して変形可能なことである(図25参照)。
【0013】
前記第1の条件は、基板構成単位層11a、11bの間に加熱により塑性変形しやすくなる軟化層13を存在させることによって、加熱中に基板構成単位層11a、11b間が微小にずれながら曲面へ変形することが可能となる(図25参照)。冷却後には軟化層13は再び硬化し、湾曲形状を保つための一役を担う。
【0014】
しかしながら、前記第2の条件に関して、従来と同様な層間接続部14(ビア16)の構造では曲面化は困難といえる。つまり、多層プリント配線基板1内に在る層間接続部14(ビア16)の周囲(ビア側面16aからビア底面16bにかけて)は基板構成単位層11a、11bと連続して接しているため、ビア16が楔となり軟化層13における滑り変形が発生し難い状態にあり、基板構成単位層11a、11b間がずれようとする挙動を阻害するように作用してしまう(図25参照)。
【0015】
また、基板構成単位層11、12間のずれが阻害され、十分なずれが起きない場合、多層プリント配線基板1は湾曲面外側で大きく伸び、内側で大きく縮むような基板自身の変形に多くを依存する湾曲変形となる(図19、図22参照)。このような湾曲変形では、無理に多層プリント配線基板1を伸び縮みさせるため、多層プリント配線基板1そのものにダメージを与えたり、曲げる際に発生する内部応力19a、19bを除去しきれず、成形後に平坦に戻ろうとして曲率が所望の値より大きくなってしまうというスプリングバックが発生する等、成形性が著しく低下する。
【0016】
そこで、以上のような問題を解決すべく、以下のように発明した。
【0017】
本発明の一視点においては、電気絶縁層と導電層からなる基板構成単位層を複数積層した多層プリント配線基板において、前記基板構成単位層間に介在して両側の前記基板構成単位層を接着するとともに、加熱により軟化し、かつ、外力により塑性変形する材料よりなる接着層を有し、前記多層プリント配線基板を加熱しながら曲面化させることにより、前記接着層が軟化して、前記基板構成単位層間が密着性を維持しつつ曲面方向に沿って滑りを伴って変形し、前記多層プリント配線基板を曲面化した状態で加熱状態から常温に戻すことにより、前記接着層が硬化して、前記多層プリント配線基板が曲面形状を維持することが可能なことを特徴とする。
【0018】
本発明の前記多層プリント配線基板において、基板厚さ方向に隣り合う前記基板構成単位層の前記導電層を電気的に接続するとともに、当該導電層間の前記電気絶縁層と接することなく当該電気絶縁層ないし前記接着層に形成された穴に配設された層間接続部を有し、前記穴内において前記層間接続部の周囲に配されるとともに、前記基板構成単位層間が曲面方向に沿って滑りを伴って変形したときに前記層間接続部の変形を許容する変形領域を有することが好ましい。
【0019】
本発明の前記多層プリント配線基板において、前記変形領域は、空所であることが好ましい。
【0020】
本発明の前記多層プリント配線基板において、前記導電層は、前記層間接続部と接する領域内に前記空所に係るガス抜き用の小穴を有することが好ましい。
【0021】
本発明の前記多層プリント配線基板において、前記小穴内に導電ペーストを有することが好ましい。
【0022】
本発明の前記多層プリント配線基板において、前記変形領域に充填されるとともに、加熱により軟化し、かつ、外力により塑性変形する材料よりなる充填材を有することが好ましい。
【0023】
本発明の前記多層プリント配線基板において、前記層間接続部は、1又は複数個の柱状体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、接着層が加熱により軟化して、かつ、層間接続部が自由に変形が可能なため、曲面方向に沿った滑り変形を起こす。その結果、基板内に発生する応力が基板構成単位層毎に分割して低減され、曲面成形性が向上し、安定した曲面基板を得ることができる。さらに、基板の曲面化は塑性変形のため、変形後も形状を保つ効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した(A)部分断面図、(B)領域Rの拡大断面図である。
【0026】
多層プリント配線基板1は、基板構成単位層11、12が接着層13を介して積層接合されたものである。基板構成単位層11は、電気絶縁層3上に所定のパターンの導電層2を有する。基板構成単位層12は、一般的にコア層と呼ばれる部分にあたり、電気絶縁層3の両面に所定のパターンの導電層2を有し、両側の導電層2がスルーホールを介して接続されている。基板構成単位層11は、基板構成単位層12を中心に上下両側に順次複数回積層されている。基板構成単位層12より上側に配された基板構成単位層11は、電気絶縁層3よりも導電層2を上側にして配されている。基板構成単位層12より下側に配された基板構成単位層11は、電気絶縁層3よりも導電層2を下側にして配されている。基板構成単位層11、12の導電層2間には、両導電層2を電気的に接続する層間接続部14を有する。層間接続部14は、図1(A)では上から導電層2の1層目−2層目間、2層目−3層目間、4層目−5層目間、5層目−6層目間に配されている。導電層2の3層目−4層目間は、スルーホールを介して接続されている。層間接続部14は、電気絶縁層3と接することなく電気絶縁層3ないし接着層13に形成された穴内に形成されている。当該穴内において層間接続部14の周囲に、基板構成単位層11、12間が曲面方向に沿って滑りを伴って変形したときに層間接続部14の変形を許容する変形領域14cを有する。変形領域14cは、空所(空間)となっている。層間接続部14は、基板構成単位層11を一層積層する都度所望の複数箇所に形成される。
【0027】
導電層2及び層間接続部14には、導電体が用いられ、例えば、銅、金、銀、ニッケル、アルミ等の金属を用いることができる。電気絶縁層3には、電気的絶縁性を有する材料が用いられ、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド、液晶ポリマー等の絶縁樹脂を用いることができる。接着層13は、基板構成単位層11、12間に介在して両側の基板構成単位層11、12を接着する。接着層13には、硬化後に加熱により軟化する絶縁性の接着剤が用いられ、例えば、エポキシ系などの接着剤を用いることができる。接着層13は、加熱状態から常温に戻すことにより硬化する。
【0028】
次に、本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の製造方法について図面を用いて説明する。図2〜図4は、本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した工程断面図である。図5は、本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板を曲面化した状態の構成を模式的に示した断面図である。なお、図2〜図4は、図1(B)に対応する部分の製造方法であり、基板構成単位層11a上に基板構成単位層11bを積層する場合の製造方法である。また、図2は下側の基板構成単位層11aの製造方法であり、図3は上側の基板構成単位層11bの製造方法であり、図4は基板構成単位層11aと基板構成単位層11bの組合せの製造方法である。また、図2(D)と図3(C)では平面図を合わせて示している。また、図5では多層プリント配線基板の構成を簡略化している。
【0029】
まず、電気絶縁層3a上に導電層2aが成形されている基板構成単位層11aを用意する(図2(A)参照)。ここでは、電気絶縁層3aには、厚さ0.025mmのポリイミド系の材料を用いている。導電層2aの形成では、電気絶縁層3a上に銅箔を接着後、銅箔のエッチングで所望の配線パタ−ンの導電層2aを形成している。導電層2aの厚さは、0.0095mm程度としている。
【0030】
次に、導電層2aを含む電気絶縁層3a上の全面をフォトレジスト18で覆い、層間接続部(図2(C)の14)を形成しようとする箇所に露光現像を行うことで、フォトレジスト18に開口部18aを形成する(図2(B)参照)。
【0031】
次に、無電解めっきを施すことで、開口部18aに層間接続部14を形成する(図2(C)参照)。
【0032】
その後、フォトレジスト(図2(C)の18)を除去することで、層間接続部14を有する基板構成単位層11aを得る(図2(D)参照)。ここでは、層間接続部14を円柱状としており、直径0.058mm、高さ0.044mmで形成している。
【0033】
図2(D)の基板構成単位層11aの作製と別に、基板構成単位層11a上に積層される基板構成単位層11bとして、まず、電気絶縁層3b上に所望の配線パターンの導電層2bが形成された基板構成単位層11bを用意する(図3(A)参照)。ここで、導電層2bには、層間接続部(図2(D)の14)と積層時に対面する位置に層間接続部(図2(D)の14)の断面より小さな断面の小穴14bが設けられている。小穴14bの直径はφ0.03mmとしている。小穴14bは、基板構成単位層(図2(D)の11a)を積層したときに層間接続部(図2(D)の14)の断面領域内に位置するように設ける。
【0034】
次に、層間接続部14と接合する位置に電気絶縁層3b側からレーザ加工により穴14aを形成する(図3(B)参照)。ここで、穴14aは導電層2bを貫通しておらず、導電層2bは電気絶縁層3b側の表面が露出した状態である。穴14aは、基板構成単位層(図2(D)の11a)と積層した際に、側壁が層間接続部(図2(D)の14)と接することがないような大きさと位置で設けられる。ここでは、穴14aは、直径をφ0.1mmとし、基板構成単位層(図2(D)の11a)を積層したときの層間接続部(図2(D)の14)の中心と合致するように設けられている。
【0035】
その後、基板構成単位層11bにおける基板構成単位層(図2(D)の11a)との接合面に接着層13を印刷塗布する(図3(C)参照)。ここでは、接着層13はエポキシ系接着剤を用いている。接合時の接着層13のはみ出し(図4(B)の接着層はみ出し部13b)を考慮して、穴14aから0.08mm程度の周囲には印刷しないようにする。なお、接合後の接着層13の厚みは最薄部で0.01mm程度であるが、層厚及びはみ出し量は接着層13の粘度、塗布量、塗布範囲および加圧加熱条件で制御が可能である。
【0036】
図2(D)のような基板構成単位層11aが作製され、かつ、図3(C)のような基板構成単位層11bが作製されると、基板構成単位層11a上の層間接続部14が基板構成単位層11bの穴(図3(C)の14a)に挿入されるようにして、基板構成単位層11a上に基板構成単位層11bを積層し、この状態で加圧加熱治具20にセットし、治具20によって加圧加熱する(図4(A)参照)。これにより、基板構成単位層11bは、接着層13を介して基板構成単位層11aに接合される。このとき、加熱によって接着層13からガスが発生するが、加圧加熱治具20には、小穴14bよりガス抜きができるように、ガス抜き穴20aが設けられている。この段階で、小穴14b周辺で導電層2bと層間接続部14との密着が得られない状態となる場合は、加圧加熱治具21にセットし、加熱工程後に再度加圧して密着させればよい(図4(C)参照)。
【0037】
その後、小穴(図4(A)の14b)の位置に導電ペースト14dを塗布する(図4(D)参照)。導電ペースト14dによって導電層2bと層間接続部14との電気的接続を十分に確保することができる。
【0038】
なお、密閉された空間である変形領域14cは、次の積層工程における加熱工程を経る際に膨張するが、新たに接着層13からのガスが発生せず、発生したとしても限られた膨張量であり、電気的接続等に不具合は発生していない。
【0039】
図1の基板構成単位層11と基板構成単位層12の積層についても、以上の製造工程と同様な製造工程で行うことができる。また、基板構成単位層11上にさらに基板構成単位層11を順次積層する場合についても、以上の製造工程と同様な製造工程で行うことができる。そして、基板構成単位層11、12を組み合わせた積層体ができた後、基板構成単位層11の導電層2の表面のうちパッドとなる部分を除く基板構成単位層11の表面にソルダレジスト17を形成することで、図1(A)のような多層プリント配線基板1を得ることができる。なお、多層プリント配線基板1を構成する全基板構成単位層11、12間を貫く電気的接続(スルーホール)に関しても同構造を積み重ねることにより得ることができる。
【0040】
こうして得られた多層プリント配線基板(図1(A)の1)を、図18のように加熱をしながら所望の曲率となるように外力を加えて曲面化する。このとき、多層プリント配線基板1に曲げ力が加わっていることから、図19のように曲面外側では伸びようとする応力19aが発生し、かつ、曲面内側では縮もうとする応力19bが発生するが、加熱により図1(A)における接着層13が軟化して、多層プリント配線基板1を構成する基板構成単位層11間をずらしながら曲面化させることが可能となり、応力(図22の19)が基板構成単位層11毎に低減され(図23の19)、容易に曲面化が可能となる。よって、図5のように多層プリント配線基板1を構成する基板構成単位層11間が曲面方向に沿って滑りを伴って曲面へと変形させることができる。その後、多層プリント配線基板1を曲面化したまま加熱状態から常温に戻すことにより、接着層13が硬化して、多層プリント配線基板1が曲面形状を維持する。
【0041】
次に、本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板を曲面化したときの作用について図面を用いて説明する。図6は、本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の基板構成単位層間を平面方向にずらした状態の構成を模式的に示した断面図である。
【0042】
平坦な多層プリント配線基板1に熱を加えながら所望の曲率に曲げ、一定時間保持することによって、曲げによって基板内部に発生した応力(図19の19a、19b、図22の19)が除去(アニール)され、曲面へと形成される。基板構成単位層11、12間にある接着層(軟化層)13の軟化温度は、基板構成単位層11、12を構成する電気絶縁層(図1の3)、導電層(図1の2)の軟化温度に比べて低く設定することによって、接着層13は応力が除去されるよりも早い段階で塑性変形することが可能となる。この時点で基板構成単位層11、12間は、図23、図24のようにずれを伴う曲面化が可能となる前記第1の条件が満たされる。基板構成単位層11、12間がずれを伴わない湾曲変形(図19、図22参照)に比べ、ずれを伴う湾曲変形(図23、図24参照)は変形し易いため、ずれを伴う湾曲変形(図23、図24参照)が可能な場合、多層プリント配線基板1はずれを伴う湾曲変形をしようとする。
【0043】
また、多層プリント配線基板1を湾曲させた際に発生する応力(図22の19)は湾曲させる対象の厚さ方向の中心(図22のC)から離れるほど大きくなるため、ずれを伴わない湾曲変形の場合(図22参照)、多層プリント配線基板1の全厚さに対して応力(図22の19)が発生するのに対して、ずれを伴う湾曲変形の場合(図23参照)では基板構成単位層(図23の11、12)毎に応力(図23の19)が分散するため、発生する応力(図23の19)が小さくなる。応力が小さいということは、すなわち伸び縮みに係る応力(図24の19a、19b)が小さいということであり、曲がり易いということである。したがって、ずれを伴う湾曲変形が可能な場合、基板構成単位層(図24の11、12)間がずれを伴う変形挙動を示す。
【0044】
また、実施形態1では、ずれを伴う湾曲変形を可能とする前記第2の条件を満たすことができる。すなわち、図6のように、基板構成単位層11a、11b間を電気的に接続する層間接続部14は、電気絶縁層3bに接していないために電気絶縁層3bに拘束されることなく基板構成単位層11a、11b間の平面方向のずれに追従して容易に変形することができる。したがって、ずれを伴う湾曲変形が可能となり、曲面化による多層プリント配線基板1の伸び縮みに係る応力が抑制され、多層プリント配線基板1へのダメージが軽減されるとともに、成形性を向上させることができる。
【0045】
次に、本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板を曲面化したときの相対滑り段差量について説明する。
【0046】
図5のように多層プリント配線基板1を、例えば、基板長L70mm、絶縁層厚t0.025mmの基板をL70mmの方向で曲率半径R60mmの曲面に成形した場合、曲面成形時に滑り変形が最大で発生したものとすると、基板構成単位層11間の相対滑り段差量30は基板端(最大)で0.015mmである。変形領域14cの幅(層間接続部14と電気絶縁層3の間隔)は、曲面化前で0.021mmである。よって、曲面成形時に0.015mmの滑り変形が発生しても、層間接続部14は電気絶縁層3に接することがないため、滑りを阻害することなく基板内部に発生する応力を低減することが可能となる。その結果、曲面成形性が向上し、安定した曲面基板を得ることができる。
【0047】
なお、相対滑り段差量30に対して変形領域14cの幅が狭い場合であっても変形領域14cの幅分の滑り変形は可能なため、従来のビア構造と比較して有利な効果を得ることができる。また、基板端に発生し得る相対滑り段差量30を予め予測し、各基板構成単位層11の長さを変えることにより曲面成形後の基板端部に発生する段差を抑制することもできる。
【0048】
実施形態1によれば、接着層13が軟化することと、層間接続部14は滑り変形方向に変形が可能であることから(図6参照)、基板構成単位層11間は曲面方向に滑り変形が可能となる(図5参照)。滑り変形が起きることによって発生する応力19が基板構成単位層11レベルまで低減される(図23参照)。よって、応力の除去が促進され、その結果、曲面への成形性を向上させることができる。
【0049】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板について図面を用いて説明する。図7は、本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した断面図である。
【0050】
実施形態2に係る多層プリント配線基板1は、実施形態1の変形領域(図1(B)の14c)に充填材15を充填したものである。その他の構成は、実施形態1と同様である。充填材15は、低軟化点の絶縁材料であり、例えば、エポキシ系の充填材料を用いることができる。
【0051】
次に、本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板の製造方法について図面を用いて説明する。図8〜図10は、本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した工程断面図である。なお、図8は下側の基板構成単位層11aの製造方法であり、図9は上側の基板構成単位層11bの一部の製造方法であり、図10は基板構成単位層11aと基板構成単位層11bの組合せの製造方法である。また、図8(D)では平面図を合わせて示している。
【0052】
まず、電気絶縁層3a上に導電層2aが成形されている基板構成単位層11aを用意し(図8(A)参照)、その後、導電層2aを含む電気絶縁層3a上の全面をフォトレジスト18で覆い、層間接続部(図8(C)の14)を形成しようとする箇所に露光現像を行うことで、フォトレジスト18に開口部18aを形成し(図8(B)参照)、その後、無電解めっきを施すことで、開口部18aに層間接続部14を形成し(図8(C)参照)、その後、フォトレジスト(図8(C)の18)を除去することで、層間接続部14を有する基板構成単位層11aを得る(図2(D)参照)。ここでの製造工程は、実施形態1(図2参照)と同様である。
【0053】
図8(D)の基板構成単位層11aの作製と別に、基板構成単位層11a上に積層される基板構成単位層11bの一部として、まず、電気絶縁層3bを用意する(図9(A)参照)。
【0054】
次に、電気絶縁層3bにおける層間接続部(図8(D)の14)と積層時に対面する位置にレーザ加工により穴14aを形成する(図9(B)参照)。ここで、穴14aは、基板構成単位層(図8(D)の11a)と積層した際に、側壁が層間接続部14と接することはないような大きさと位置で設けられる。ここでは、穴14aはφ0.1mmとしており、積層したときの層間接続部14の中心と合致する。
【0055】
その後、電気絶縁層3bの基板構成単位層(図8(D)の11a)との接合面に接着層13を塗布する(図9(C)参照)。ここでは、接着層13はエポキシ系接着剤を用いている。接合時の接着層13のはみ出し(図10(B)の接着層はみ出し部13b)を抑制する場合は穴14aから0.08mm程度の周囲には印刷しないようにする。なお、接着層13は曲面成形のための加熱温度で軟化するので、積極的に接着層はみ出し部13bを発生させて充填材15とすることも可能である。また、接合後の接着層13の厚さは最薄部で0.01mm程度であるが、層厚及びはみ出し量は接着層13の粘度、塗布量、塗布範囲および加圧加熱条件で制御が可能である。
【0056】
図8(D)のような基板構成単位層11aが作製され、かつ、図9(C)のような基板構成単位層(図10(D)の11b)の一部が作製されると、基板構成単位層11a上の層間接続部14が電気絶縁層3bの穴(図9(C)の14a)に挿入されるようにして、基板構成単位層11a上に電気絶縁層3bを積層し、この状態で加圧加熱治具20にセットし、治具20によって加圧加熱する(図10(A)参照)。これにより、電気絶縁層3bは、接着層13を介して基板構成単位層11aに接合される。このとき、加熱によって接着層13からガスが発生するが、ガス抜きができるように加圧加熱治具20にはガス抜き穴20aが設けられている。
【0057】
次に、変形領域14cに充填材15を充填する(図10(C)参照)。ここで、充填材15は、曲面化の際に加熱で軟化する材料(例えば、エポキシ系)を用いている。なお、接着層13が低軟化点材料であれば、接着層13を充填材15として使用することも可能である。充填材15は、スキージによって変形領域14cに埋め込み、硬化させて充填している。スキージにより充填すると電気絶縁層3b上には充填材15の皮膜が形成されるため、電気絶縁層3b上の充填材15の皮膜を研磨して除去する。
【0058】
次に、層間接続部14、充填材15を含む電気絶縁層3b上にフォトレジスト(図示せず)を塗布した後、所望のパターンに露光現像して、フォトレジスト(図示せず)に開口部(図示せず)を形成し、無電解めっきを施すことにより、開口部(図示せず)から露出した層間接続部14、充填材15、電気絶縁層3b上に導電層2bを形成し、その後、フォトレジスト(図示せず)を除去する(図10(D)参照)。これにより、層間接続部14の周囲の変形領域に充填材15が充填された多層プリント配線基板1が得られる。変形領域(図10(A)の14c)は充填材15で満たされているため、基板平滑度が得られ、次工程における積層精度が向上する。そして、基板構成単位層11a、11bを組み合わせた積層体ができた後、基板構成単位層11bの導電層2bの表面のうちパッドとなる部分を除く基板構成単位層11bの表面にソルダレジスト17を形成することで、図7のような多層プリント配線基板1を得ることができる。
【0059】
なお、多層プリント配線基板1を構成する全基板構成単位層11間を貫く電気的接続(スルーホール)に関しても同構造を積み重ねることにより得ることができる。
【0060】
こうして得られた多層プリント配線基板1を、図18のように加熱をしながら所望の曲率となるように外力を加えて曲面化する。このとき、多層プリント配線基板1に曲げ力が加わっていることから、図19のように曲面外側では伸びようとする応力19aが発生し、かつ、曲面内側では縮もうとする応力19bが発生するが、加熱により図7における接着層13及び充填材15が軟化して、多層プリント配線基板1を構成する基板構成単位層11間をずらしながら曲面化させることが可能となり、応力(図22の19)が基板構成単位層11毎に低減され(図23の19参照)、容易に曲面化が可能となる。よって、図5のように多層プリント配線基板1を構成する基板構成単位層11間をずらしながら曲面化させることができる。
【0061】
実施形態2によれば、実施形態1と同様な効果を奏するとともに、接着層13及び充填材15が軟化することにより、層間接続部14が滑り変形方向(ずれ方向19c)に変形が可能であることから(図11参照)、基板構成単位層11a、11b間は曲面(滑り)方向に滑り変形が可能となる。滑り変形が起きることによって、発生する応力(図22の19)が基板構成単位層レベルの応力(図23の19)まで低減される。よって、応力の除去が促進され、その結果、曲面への成形性の向上を得られる。
【0062】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板について図面を用いて説明する。図12は、本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した断面図である。
【0063】
実施形態3に係る多層プリント配線基板1は、実施形態1の層間接続部14を複数本にしたものである。その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0064】
次に、本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板の製造方法について図面を用いて説明する。図13〜図15は、本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した工程断面図である。なお、図13は下側の基板構成単位層11aの製造方法であり、図14は上側の基板構成単位層11bの製造方法であり、図15は基板構成単位層11aと基板構成単位層11bの組合せの製造方法である。また、図13(D)と図14(C)では平面図を合わせて示している。
【0065】
まず、電気絶縁層3a上に導電層2aが成形されている構成単位層11aを用意し(図13(A)参照)、その後、導電層2aを含む電気絶縁層3a上の全面にフォトレジスト18で覆い、層間接続部(図13(C)の14)を形成しようとする箇所に露光現像を行うことで、フォトレジスト18に開口部18aを形成する(図13(B)参照)。ここでは、簡易的な表現として2つの開口部18aを設けている。
【0066】
次に、無電解めっきを施すことで、開口部18aに層間接続部14を形成する(図13(C)参照)。
【0067】
その後、フォトレジスト(図13(C)の18)を除去することで、複数の層間接続部14を有する基板構成単位層11aを得る(図13(D)参照)。ここでは、層間接続部14を円柱状としており、2つ設けている。層間接続部14の直径は0.02mm、高さは0.044mmで形成している。
【0068】
図13(D)の基板構成単位層11aの作製と別に、基板構成単位層11a上に積層される基板構成単位層11bとして、まず、電気絶縁層3b上に所望の配線パターンの導電層2bが形成された基板構成単位層11bを用意する(図14(A)参照)。導電層2bには、積層時に層間接続部(図13(D)の14)と対面する位置に、当該層間接続部(図13(D)の14)の断面より小さな断面の小穴14bが、層間接続部(図13(D)の14)と同数設けられている。小穴14bは、基板構成単位層(図13(D)の11a)と積層したときに複数の層間接続部(図13(D)の14)とは一対一で対面し、層間接続部(図13(D)の14)の断面領域内に位置するように設けられる。ここでは、小穴14bをφ0.01mmとし、各々の中心は、層間接続部(図13(D)の14)の各々の中心と合致するように設けられている。
【0069】
次に、層間接続部14と接合する位置に電気絶縁層3b側からレーザ加工により穴14aを形成する(図14(B)参照)。ここで、穴14aは導電層2bを貫通しておらず、導電層2bは電気絶縁層3b側の表面が露出した状態である。穴14aは、基板構成単位層(図13(D)の11a)と積層した際に、側壁が層間接続部(図13(D)の14)と接することがないような大きさと位置で設けられる。ここでは、穴14aの直径を0.1mmとしている。
【0070】
その後、基板構成単位層11bにおける基板構成単位層(図2(D)の11a)との接合面に接着層13を印刷塗布する(図14(C)参照)。ここでは、接着層13はエポキシ系接着剤を用いている。接合時の接着層13のはみ出し(図15(B)の接着層はみ出し部13b)を考慮して、穴14aから0.08mm程度の周囲には印刷しないようにする。なお、接着層13は、曲面化の際、加熱により軟化するので、接着層はみ出し部13bは許容できるものであり、実施形態2に示すように充填材(図7の15)で満たすこともできる。また、接合後の接着層13の厚みは最薄部で0.01mm程度であるが、層厚及びはみ出し量は接着層13の粘度、塗布量、塗布範囲および加圧加熱条件で制御が可能である。
【0071】
図13(D)のような基板構成単位層11aが作製され、かつ、図14(C)のような基板構成単位層11bが作製されると、基板構成単位層11a上の各層間接続部14が基板構成単位層11bの穴(図14(C)の14a)に挿入されるようにして、基板構成単位層11a上に基板構成単位層11bを積層し、この状態で加圧加熱治具20にセットし、治具20によって加圧加熱する(図15(A)参照)。これにより、基板構成単位層11bは、接着層13を介して基板構成単位層11aに接合される。このとき、加熱によって接着層13からガスが発生するが、加圧加熱治具20には、小穴14bよりガス抜きができるように、ガス抜き穴20aが設けられている。この段階で、小穴14b周辺で導電層2bと層間接続部14との密着が得られない状態となる場合は、加圧加熱治具21にセットし、加熱工程後に再度加圧して密着させればよい(図15(C)参照)。
【0072】
その後、小穴(図15(A)の14b)の位置に導電ペースト14dを塗布する(図15(D)参照)。導電ペースト14dによって導電層2bと層間接続部14との電気的接続を十分に確保することができる。そして、基板構成単位層11a、11bを組み合わせた積層体ができた後、基板構成単位層11bの導電層2bの表面のうちパッドとなる部分を除く基板構成単位層11bの表面にソルダレジスト17を形成することで、図12のような多層プリント配線基板1を得ることができる。
【0073】
なお、密閉された空間である変形領域14cは、次の積層工程における加熱工程を経る際に膨張するが、新たに接着層13からのガスが発生せず、発生したとしても限られた膨張量であり、電気的接続等に不具合は発生していない。
【0074】
また、多層プリント配線基板1を構成する全基板構成単位層11間を貫く電気的接続(スルーホール)に関しても同構造を積み重ねることにより得ることができる。
【0075】
こうして得られた多層プリント配線基板1を、図18のように加熱をしながら所望の曲率となるように外力を加えて曲面化する。このとき、多層プリント配線基板1に曲げ力が加わっていることから、図19のように曲面外側では伸びようとする応力19aが発生し、かつ、曲面内側では縮もうとする応力19bが発生するが、加熱により図12における接着層13が軟化して、多層プリント配線基板1を構成する基板構成単位層11間をずらしながら曲面化させることが可能となり、応力(図22の19)が基板構成単位層11毎に低減され(図23の19参照)、容易に曲面化が可能となる。よって、図5のように多層プリント配線基板1を構成する基板構成単位層11間をずらしながら曲面化させることができる。
【0076】
実施形態3によれば、実施形態1と同様な効果を奏するとともに、接着層13が軟化し、かつ、層間接続部14は滑り変形方向(ずれ方向19c)に変形が可能であることから(図16参照)、基板構成単位層11a、11b間は曲面方向に滑り変形が可能となる。また、層間接続部14を複数に分割することにより、複数の層間接続部14の断面積の総和と同じ断面積を持つ1つの層間接続部(図1(A)の14)に比べ、断面2次モーメントが小さくなることから、変形領域14cにおける変形が容易となる(図16参照)。滑り変形が起きることによって、発生する応力(図22の19)が基板構成単位層レベルの応力(図23の19)まで低減される。よって、応力の除去が促進され、その結果、曲面への成形性の向上を得られる。
【0077】
(実施形態4)
本発明の実施形態4に係る多層プリント配線基板について図面を用いて説明する。図17は、本発明の実施形態4に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した部分断面図であり、(A)元太先細型の層間接続部、(B)元細先太型の層間接続部、(C)元細中太先細型の層間接続部、(D)元太中細先太型の層間接続部である。
【0078】
実施形態4に係る多層プリント配線基板1は、実施形態1の層間接続部14の形状を変更したものである。その他の構成は、実施形態1と同様である。図17(A)では、層間接続部14は、元側の導電層2a側が太く、先側の導電層2bが細くなっている。図17(B)では、層間接続部14は、元側の導電層2a側が細く、先側の導電層2bが太くなっている。図17(C)では、層間接続部14は、元側の導電層2a側が細く、中間が太く、先側の導電層2bが細くなっている。図17(D)では、層間接続部14は、元側の導電層2a側が太く、中間が細く、先側の導電層2bが太くなっている。層間接続部14はその他の形状になることもあるが、層間接続部14の周囲に変形領域14cが設けられていれば、実施形態1の効果とほぼ同等の効果が得られる。また、変形領域14cに実施形態2のような充填材(図7の15)を充填しても、実施形態2と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した(A)部分断面図、(B)領域Rの拡大断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第1の工程断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第2の工程断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第3の工程断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板を曲面化した状態の構成を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る多層プリント配線基板の基板構成単位層間を平面方向にずらした状態の構成を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した断面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第1の工程断面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第2の工程断面図である。
【図10】本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第3の工程断面図である。
【図11】本発明の実施形態2に係る多層プリント配線基板の基板構成単位層間を平面方向にずらした状態の構成を模式的に示した断面図である。
【図12】本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した断面図である。
【図13】本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第1の工程断面図である。
【図14】本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第2の工程断面図である。
【図15】本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板の製造方法の一例を模式的に示した第3の工程断面図である。
【図16】本発明の実施形態3に係る多層プリント配線基板の基板構成単位層間を平面方向にずらした状態の構成を模式的に示した断面図である。
【図17】本発明の実施形態4に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した部分断面図であり、(A)元太先細型の層間接続部、(B)元細先太型の層間接続部、(C)元細中太先細型の層間接続部、(D)元太中細先太型の層間接続部である。
【図18】平坦な多層プリント配線基板を曲面化する方法の概念図である。
【図19】多層プリント配線基板を曲面化したときに発生する応力を説明するための模式図である。
【図20】従来例1に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した断面図である。
【図21】従来例2に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した断面図である。
【図22】多層プリント配線基板に発生する応力の大きさと厚さの相関関係を説明するための模式図である。
【図23】多層プリント配線基板を構成する基板構成単位層間をずらしながら曲面化させたときの発生する応力の大きさと厚さの相関関係を説明するための模式図である。
【図24】多層プリント配線基板を構成する基板構成単位層間をずらしながら曲面化させたときの発生する応力の大きさとずれ方向を説明するための模式図である。
【図25】比較例に係る多層プリント配線基板の構成を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 多層プリント配線基板
2、2a、2b 導電層
3、3a、3b 電気絶縁層
11、11a、11b、12 基板構成単位層
13 接着層(軟化層)
13b 接着層はみ出し部
14 層間接続部
14a 穴
14b 小穴
14c 変形領域
14d 導電ペースト
15 充填材
16 ビア
16a ビア側面
16b ビア底面
17 ソルダレジスト
18 フォトレジスト
18a 開口部
19 応力
19a 引張り応力
19b 圧縮応力
19c ずれ方向(滑り方向)
20 加圧加熱治具
20a ガス抜き穴
21 加圧加熱治具
30 相対滑り段差量
100 ビルドアップ多層プリント配線板
101 回路基板
111 絶縁基材
121a、121b 第1配線層
131 樹脂感光層
132 ビア用孔
141 導体層
141a、141b 第2配線層
142 フィルドビア
201 プリント配線板
202 ベース
202a 表面
202b 裏面
203、204 配線層
205 絶縁層
207 ビア
207a 開口部
208 第1のめっき層
209 フランジ部
210 第2のめっき層
211 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁層と導電層からなる基板構成単位層を複数積層した多層プリント配線基板において、
前記基板構成単位層間に介在して両側の前記基板構成単位層を接着するとともに、加熱により軟化し、かつ、外力により塑性変形する材料よりなる接着層を有し、
前記多層プリント配線基板を加熱しながら曲面化させることにより、前記接着層が軟化して、前記基板構成単位層間が密着性を維持しつつ曲面方向に沿って滑りを伴って変形し、
前記多層プリント配線基板を曲面化した状態で加熱状態から常温に戻すことにより、前記接着層が硬化して、前記多層プリント配線基板が曲面形状を維持することが可能なことを特徴とする多層プリント配線基板。
【請求項2】
基板厚さ方向に隣り合う前記基板構成単位層の前記導電層を電気的に接続するとともに、当該導電層間の前記電気絶縁層と接することなく当該電気絶縁層ないし前記接着層に形成された穴に配設された層間接続部を有し、
前記穴内において前記層間接続部の周囲に配されるとともに、前記基板構成単位層間が曲面方向に沿って滑りを伴って変形したときに前記層間接続部の変形を許容する変形領域を有することを特徴とする請求項1記載の多層プリント配線基板。
【請求項3】
前記変形領域は、空所であることを特徴とする請求項2記載の多層プリント配線基板。
【請求項4】
前記導電層は、前記層間接続部と接する領域内に前記空所に係るガス抜き用の小穴を有することを特徴とする請求項3記載の多層プリント配線基板。
【請求項5】
前記小穴内に導電ペーストを有することを特徴とする請求項4記載の多層プリント配線基板。
【請求項6】
前記変形領域に充填されるとともに、加熱により軟化し、かつ、外力により塑性変形する材料よりなる充填材を有することを特徴とする請求項2記載の多層プリント配線基板。
【請求項7】
前記層間接続部は、1又は複数個の柱状体であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一に記載の多層プリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−198938(P2008−198938A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35122(P2007−35122)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】