説明

多層配線基板および半導体装置

【課題】外周部に枠状金属板が固着された多層配線基板に半導体素子を半田リフローで搭載する際に半導体素子の電極バンプと多層配線基板の電極バンプの良好な接続を提供する。
【解決手段】絶縁層16が有機樹脂から成る多層配線基板10の上面の周辺部に固着した枠状金属板20を有し、前記多層配線基板10の上面に半導体集積回路素子の電極と接続するための電極バンプ11を設置した電極配置領域12を有し、前記電極配置領域12に内接する内接円内の前記電極バンプ11を第1の電極バンプ11aとし、前記内接円以上の同心円の外側の前記電極バンプ11を第2の電極バンプ11bとし前記第1の電極バンプ11aよりも体積を大きくし、前記内接円と前記同心円の間の前記電極バンプ11の体積を前記第1の電極バンプ11aの体積以上で前記第2の電極バンプ11bの体積以下にした多層配線基板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体集積回路素子を多層配線基板に実装する際の、実装性を向上させる方法に関する。詳しくは、多層配線基板および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置用の大規模集積回路(LSI)等の半導体集積回路素子(以下半導体素子と呼ぶ)には、近年、その動作速度がクロック周波数で1GHzに達するものが出現している。このような高速度の半導体素子では、トランジスターの集積度が高く、その結果入出力端子数が1000を越えることもある。このような多端子数の半導体素子をプリント配線板に実装するために、半導体素子とプリント配線板の基板との間には、インターポーザと呼ばれる多層配線基板が配置され、両者の電気的接合の橋渡しを担っている。前記多層配線基板では、高密度に配置した半導体素子の端子との接合に対応するため、非常に薄い配線層等の層構造と、微細なライン・アンド・スペースを有する配線パターンを持つ特徴がある。現在広く実用化されているインターポーザとしては、例えばBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)等が挙げられる。最近では、更なる高密度実装への対応、又は高速度の動作周波数化への要望に答えるため、ポリイミド樹脂フィルムなどの基板に銅箔等からなる配線パターンを形成した導体層を積層してインターポーザ全体の基板厚を薄くすると共に、導体層間の接続長を短くすることにより高周波数に対応させたものも開発されてきている。また、このような高周波または多ピンの半導体素子をインターポーザと接続させる場合、フリップチップ型接続が用いられている。
【0003】
特許文献1では、半導体素子、および、インターポーザ上に電極バンプ群の配列を形成し、半導体素子の電極バンプとインターポーザの電極バンプを位置合わせした後、インターポーザ上に半導体素子をフリップチップ型接続で搭載する。その電極バンプの材質は半田や金であることが多く、電極バンプが半田の場合は、半導体素子搭載後半田リフローによる加熱溶融により個々の所定箇所を接続させる。また、インターポーザとして用いられる多層配線基板は薄型化し基板自体の剛性が小さくなることから、多層配線基板の半導体素子搭載側の面の外周部に補強と放熱の役割をもつスティフナと呼ぶ枠状金属板が固着される。更に、電極バンプの半田には、鉛成分による環境汚染を避けるため、従来のSnPb成分の共晶半田に替えて、鉛成分が無いSnAg組成等の鉛フリー半田が用いられる。
【0004】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開2002−343829号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、外周部に枠状金属板が固着された多層配線基板は、枠状金属板で固定していない領域が半導体素子搭載時の半田リフロー温度で変形しやすくなった。特に、鉛フリー半田は従来のSnPb成分の共晶半田よりも融点が高いため、半田リフロー温度が高くなり、枠状金属板で固定していない領域が半田リフロー温度で変形しやすくなり、特に反りが大きくなる問題があった。そのため、その多層配線基板に実装する半導体素子の端部の電極バンプが多層基板から剥がれ易くなる問題があった。実験により、多層配線基板に半導体素子を仮搭載し、次に、搬送板に搭載して半田リフローして電極バンプを半田で接合した結果、基板の下方向は搬送板によって支持されているから、下方向への変形は起こらず、上方向へ変形した。そして基板外周部が枠状金属板により押さえられているため、中央部が上に凸形状に変形した。その結果、半導体素子の設置領域の中心から離れた位置程多層配線基板の上面の高さが低くなるので、その上から設置する半導体素子の電極バンプから多層配線基板の電極バンプが下がって離れてしまい、半導体素子の電極バンプと多層配線基板の電極バンプの接続不良を発生するメカニズムがあることがわかった。本発明は、この接続不良を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、この課題を解決するために、絶縁層が有機樹脂から成る多層配線基板の上面の周辺部に固着した枠状金属板を有し、前記多層配線基板の上面に半導体集積回路素子の電極と接続するための電極バンプを設置した電極配置領域を有し、前記電極配置領域に内接する内接円内の前記電極バンプを第1の電極バンプとし、前記内接円以上の同心円の外側の前記電極バンプを第2の電極バンプとし前記第1の電極バンプよりも体積を大きくし、前記内接円と前記同心円の間の前記電極バンプの体積を前記第1の電極バンプの体積以上で前記第2の電極バンプの体積以下にしたことを特徴とする多層配線基板である。
【0007】
また、本発明は、上記第1の電極バンプおよび上記第2の電極バンプが、融点が200℃以上の鉛フリー半田から成ることを特徴とする上記の多層配線基板である。
【0008】
また、本発明は、上記多層配線基板の上記枠状金属板と上記電極バンプを除く厚さtが0.02mm以上1.0mm未満であり、上記電極配置領域の長さと前記厚さtの比が20以上150以下であることを特徴とする上記の多層配線基板である。
【0009】
また、本発明は、絶縁層が有機樹脂から成る多層配線基板の上面の周辺部に固着した枠状金属板を有し、前記多層配線基板の上面に半導体集積回路素子の電極と接続するための電極バンプを設置した電極配置領域を有し、前記電極配置領域に内接する内接円内の前記電極バンプを第1の電極バンプとし、前記内接円以上の同心円の外側の前記電極バンプを第2の電極バンプとし前記第1の電極バンプよりも体積を大きくし、前記内接円と前記同心円の間の前記電極バンプの体積を前記第1の電極バンプの体積以上で前記第2の電極バンプの体積以下にし、前記電極バンプが前記半導体集積回路素子の電極に接合されていることを特徴とする半導体装置である。
【0010】
また、本発明は、上記第1の電極バンプおよび上記第2の電極バンプが、融点が200℃以上の鉛フリー半田から成ることを特徴とする上記の半導体装置である。
【0011】
また、本発明は、上記多層配線基板の上記枠状金属板と上記電極バンプを除く厚さtが0.02mm以上1.0mm未満であり、上記電極配置領域の長さと前記厚さtの比が20以上150以下であることを特徴とする上記の半導体装置である。
【発明の効果】
【0012】
枠状金属板を固着した多層配線基板の電極配置領域の内接円の半径以上の半径を有する同心円の外側の電極配置領域の電極バンプの体積を増加させることにより、多層配線基板の電極バンプに半導体素子の電極バンプを接続する場合の電極バンプ間の接続の断線やショートなどの接続不良をなくすことができる効果がある。特に、半田のリフロー温度が高い鉛フリー半田を用いて半導体素子を実装する場合に多層配線基板の反りが大きいため半導体素子の端部の電極バンプが剥がれ易くなる問題を解決し、確実に電極バンプを接続できる効果がある。また、多層配線基板10の厚さtが1.0mm未満である場合に上記の同心円外側の電極バンプの半田接続の信頼性が高まり、本発明の効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を添付の図面を基にして詳細に説明する。図1は本発明の多層配線基板10の一実施例を断面で示す説明図であり、図2は本発明の半導体装置の一実施例を表す断面図である。 図1の多層配線基板10は、半導体素子30の搭載領域に形成された電極バ
ンプ11、ソルダーレジスト13および14、配線層15、絶縁層16で構成される。絶縁層16は、ガラス/エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の有機樹脂の絶縁層16を用いて形成する。また、多層配線基板10の上面の半導体集積回路素子(以下半導体素子30と呼ぶ)を搭載する領域の周囲の領域には枠状金属板20を取り付ける。配線層15の材料は銅がもっとも好ましいが、その他の金属や合金、金属ペーストの焼結体なども任意に選択できる。
【0014】
多層配線基板10の製造手順は、絶縁層16と配線パターンを形成した配線層15を交互に形成し、異なる配線層15の配線パターン間をビアホールで接続することで電気接続をとり、多層の配線層15を形成する。この多層配線基板10の枠状金属板20と電極バンプ11を除く厚さtは、現行技術で製造できる厚さの0.02mm以上で1mm以下の厚さにする。厚さtが1mm以下の多層配線基板10の場合に、また、半田の融点が200℃より高い鉛フリー半田を用いて実装する場合に、半田リフロー時の変形による実装不良が生じやすいが、それを当発明により改善できる効果がある。
【0015】
さらに、多層の配線層15の最外層の両面にソルダーレジストを形成する。ここで、多層配線基板10の上面の半導体素子30の搭載領域の電極配置領域12にソルダーレジスト13の開口部を設け、多層配線基板10の下面のBGAボール搭載パッド17にソルダーレジスト14の開口部を設ける。
【0016】
多層配線基板10の上面の電極配置領域12のソルダーレジスト13の開口部に半導体集積回路素子を搭載するための電極パッド13aを配列状に設置する。電極バンプ11の材質が半田の場合、ソルダーレジストの開口部にある電極パッド13a上にメタル版を介して半田ペーストを印刷し半田リフローする方法や半田ボールをパッド上に搭載後半田リフローする方法が代表的である。半田はSn−37Pbのいわゆる共晶半田のほかに、近年ではSn−3.0Ag−0.5Cu組成の鉛フリー半田などが用いられている。
【0017】
このように電極バンプ11を形成させた多層配線基板10に半導体素子30を搭載し、搬送板に搭載して半田リフローする。その場合に、多層配線基板10の下方向は搬送板によって支持されているから、下方向への変形は起こらず、上方向へ変形しようとする。そして多層配線基板10の外周部は枠状金属板20により押さえられているため、多層配線基板10の電極配置領域12の中央部が上に凸形状に変形する。その結果、多層配線基板10の半導体素子30の搭載領域の中心から離れた位置程多層配線基板10の面の高さが低くなり、その面上に搭載する半導体素子30の電極バンプより多層配線基板10の電極バンプ11が低くなり離れてしまい、半導体素子30の電極バンプと多層配線基板10の電極バンプ11の接続不良を発生するメカニズムが存在する知見を得た。また、この凸形状の変形の高さの等高線は、電極配置領域12の中央部を中心とする同心円状になり、その高さは電極配置領域12の中央部からの距離の二乗に比例して低くなり、電極配置領域12の中央部から離れるにつれ急に低くなる知見を得た。この現象は、特に、半田のリフロー温度が高い鉛フリー半田を用いて半導体素子を実装する場合に多層配線基板の反りが大きい知見を得た。特に、鉛フリー半田は従来のSnPb成分の共晶半田の融点が183℃でリフロー温度は約220℃であるのに対して、SnAgCu系鉛フリー半田は、融点が220℃でリフロー温度は約240℃であり、SnAgInBi系鉛フリー半田は、融点が206℃でリフロー温度は約230℃であり、SnZnBi系鉛フリー半田は、融点が197℃でリフロー温度は約225℃であり、これらの鉛フリー半田で融点が200℃以上の場合は、リフロー温度は従来のSnPb成分の共晶半田の場合より10℃以上高い温度で処理するため反りが大きい問題があった。
【0018】
そこで、半導体素子30の中心から離れている、電極配置領域12の内接円を描き、その内接円と中心を共有し、その内接円以上の半径を有する同心円の外側の電極バンプ11
の体積を、他の電極配置領域12の電極バンプ11の体積より大きくすることで半田量を増加させて濡れ性を向上させることで接続不良を起こりにくくさせ、またバンプ同士が近づくことによる接続不良も起こりにくくさせる。なお、この同心円の半径は、内接円の半径と、電極配置領域12全体の外接円の半径の間の所定の半径に選ぶ。
【0019】
図3に、本発明の多層配線基板10上の電極配置領域12に形成した電極バンプ11の配列を表す。また、電極配置領域12がLmm角の正方形状の場合には、電極配置領域12に内接する内接円を描き、その内接円の内側を領域Aとし、その内接円以上の同心円の外側の電極配置領域12を領域Bとする。このとき、領域Bの第2の電極バンプ11bは、半導体素子30の搭載領域の中心から特に離れているため接続不良が置きやすい。そのため、この領域Bの電極バンプ11を第2の電極バンプ11bとして、その体積を領域Aの第1の電極バンプ11aより大きくすることで接合不良を改善する。領域Aと領域Bの間の領域では、その領域の電極バンプ11の体積を、第1の電極バンプ11aの体積以上で第2の電極バンプ11bの体積以下の体積にする。電極配置領域12が正方形で無い場合も、電極配置領域12の最遠の対向辺に内接する円を描き、同様に、内接円以上の同心円の外側の電極配置領域12を領域Bとし、内接円の内側の電極配置領域12を領域Aとする。その理由は、凸形状の変形の高さの等高線は、電極配置領域12の中央部を中心とする同心円状になるためである。
【0020】
もし、領域Aの第1の電極バンプ11aの体積を領域Bの第2の電極バンプ11bとともに増加させると、その範囲では、多層配線基板10が上側に凸形状に変形する場合、変形によって第1の電極バンプ11aが押され、隣あっている第1の電極バンプ11a同士が接続してしまいショート不良がおきてしまう。そのため、領域Aの第1の電極バンプ11aの体積は増加させないようにする必要がある。凸形状の変形の高さは電極配置領域12の中央部から離れるにつれ急に低くなるので、電極配置領域12の中央部に近い領域Aの第1の電極バンプ11aの体積は増加させなくても問題を生じない。
【0021】
電極配置領域12の長さLと、多層配線基板10の枠状金属板20と電極バンプ11を除く厚さtとの比(L/t)が130程度の場合には、第2の電極バンプ11bの体積が第1の電極バンプ11aの体積の1.3倍以上で1.6倍以下であれば、半導体素子30の電極バンプと多層配線基板10の電極バンプ11を良好に接続できる。すなわち、電極配置領域12の長さLと多層配線基板10の厚さtの比(L/t)が130程度の場合には、領域Bの第2の電極バンプ11bの体積を増やす量は多い程、領域Bでの接続不良には効果があるが、第2の電極バンプ11bの体積が領域Aの第1の電極バンプ11aの体積の1.3倍以上になると接続不良を抑制する効果が大きくなる。そのため、領域Bの第2の電極バンプ11bは、領域Aの中央の第1の電極バンプ11aの体積の1.3倍以上にする。一方、第2の電極バンプ11bの体積が、第1の電極バンプ11aの体積の2倍を超えると、逆に領域Aで接続不良が起きることが分かった。そのため、領域Bの第2の電極バンプ11bの体積は、領域Aの第1の電極バンプ11aの体積の1.6倍以下にする。また、凸形状の変形の高さは電極配置領域12の中央部から遠ざかると急に低くなるので、電極配置領域12の中央部から離れた位置の領域Bでは、第2の電極バンプ11bの体積を増加させる必要があるが、領域Aの内側の領域では、第1の電極バンプ11aは体積を増さない。また、電極配置領域12の長さLと多層配線基板10の厚さtの比(L/t)が小さくなれば、半導体素子30の電極バンプと多層配線基板10の電極バンプ11を良好に接続するために第2の電極バンプ11bの体積の第1の電極バンプ11aの体積に対する比はより小さい値で足りるようになり、その最適な体積の比は材料力学のシミュレーションにより計算できる。
【0022】
領域Bの第2の電極バンプ11bの半田の体積を多くするための一つの方法として、半田ペースト印刷法では、多層配線基板10の該当部分のみメタルマスクの開口径を他の部
分より大きくすることが挙げられる。また、その他の方法としては、まず、半田ペーストを、電極配置領域12の電極パッド13a全部に半田をほぼ同一量塗工するか、あるいは、同一体積の半田ボールを搭載後半田リフローさせる。その後再度電極配置領域12の領域Bの電極パッド13aのみに開口を形成させたメタルマスクにより再度印刷を行う、あるいは、領域Bのみに半田ボールを搭載し半田リフローするという操作を行う方法でも電極配置領域12の領域Bの第2の電極バンプ11bの半田体積を多くすることが可能である。
【実施例】
【0023】
<実施例1>
まず、外形40mmの正方形、厚さtが150μmの多層配線基板10を作製した。その多層配線基板10の一方の面に電極パッド13aとソルダーレジスト13を形成し、他方の面にBGAボール搭載パッド17及びソルダーレジスト14を形成した。多層配線基板10の電極配置領域12の長さLが20mmの正方形であり、電極パッド13aの開口直径は80μm、電極パッド13a間のピッチは0.2mmとした。電極パッド13aはフルグリッドに配置させた。
電極配置領域12に配列状に配置された電極パッド13aにメタルマスクを介して半田ペーストを印刷、半田リフローし、電極バンプ11を形成させた。用いた半田はSn−3.0Ag−0.5Cuとした。
【0024】
電極配置領域12の中心から半径10mmの内接円より内側を領域Aとし、電極配置領域12で、領域Aの内接円と同じ大きさの同心円の外側を領域Bとする。領域Aにおけるメタルマスクの開口半径をrとし,領域Bにおけるメタルマスクの開口半径を1.2rとした。この場合は、領域Bのメタルマスク開口面積は、理論上1.44倍になる。しかし、実際に半田ペーストを印刷し、半田リフロー後の電極バンプ11の体積を測定したところ、領域Bの第2の電極バンプ11bの体積は領域Aの第1の電極バンプ11aの1.36倍になり開口面積の比とは若干異なった。この理由は、半田ペースト印刷では、基板、メタルマスク間でのペーストの滲みやメタルマスク開口へのペーストの残りが発生するため、必ずしも開口の面積どおりに半田ペーストが供給できないことに起因していると考えられる。ペースト印刷後に半田リフローにより電極パッド13aに半田を固着させる。この組成の半田の融点が約220℃であることからリフロー温度が240℃になるので、半田リフローとしては240℃以上の温度を1分間保持させた。フラックス洗浄後枠状金属板20を多層配線基板10に貼り合せた。枠状金属板20の外形は40×40mm、内周は30×30mmとした。
【0025】
次に、電極バンプが形成された外形20mm角、厚さ700μmの半導体素子30を、電極バンプにフラックスを転写後、多層配線基板10の電極配置領域12に載置し、半田リフローにて半導体素子30の電極バンプと多層配線基板10の電極バンプ11を半田接合した。このときの半田リフローでは、多層配線基板10と半導体素子30の温度を240℃以上にし1分以上維持した。半導体素子30の電極バンプと多層配線基板10の電極バンプ11のハンダ接合後、X線透過装置等で半田の接続がなされていない箇所を探したところ、接続不良は観察されなかった。
【0026】
電極配置領域12の凸形状の変形の高さの差は、多層配線基板10の枠状金属板20と電極バンプ11を除く厚さをtとすると、電極配置領域12の長さLとの関係で、(L/t)の数乗に比例する。この場合は、L=20mmで、t=0.15mmであるため、電極配置領域12の長さLと多層配線基板10の厚さtの比(L/t)が、20mm/0.15mm=130である。電極配置領域12の長さLと多層配線基板10の厚さtの比(L/t)が130程度の場合には、第2の電極バンプ11bの体積が第1の電極バンプ11aの体積の1.36倍程度あれば、電極配置領域12の凸形状の変形の高さの差を補い、半導体素子30の電極バンプと多層配線基板10の電極バンプ11を良好に接続できる。
【0027】
<比較例1>
比較例1では、多層配線基板10、半田組成、メタルマスク厚、半導体素子30、枠状金属板20、および半田リフロー条件は実施例1と同様にとした。比較例1では多層配線基板10の半導体素子30の搭載領域の電極配置領域12の電極バンプ11の体積は実施例1の領域Aの第1の電極バンプ11aとほぼ同一にするべく、メタルマスクの開口の半径は、電極配置領域12の全ての電極パッド13a位置で実施例1の領域Aでの半径と同じくrとした。洗浄後、実施例1と同様に半導体素子30を載置、半田接合させ、X線により、不良箇所を調べた。その結果、電極配置領域12の領域Bで半田断線不良が五箇所発見された。
【0028】
<比較例2>
比較例2では多層配線基板10、半田組成、メタルマスク厚、半導体素子30、枠状金属板20および半田リフロー条件は実施例1、比較例1と同様にした。比較例2では多層配線基板10の半導体素子30の搭載領域の電極配置領域12の電極バンプ11の体積は、実施例1の領域Bの第2の電極バンプ11bとほぼ同一にするべく、メタルマスクの開口は電極配置領域12の全ての電極パッド13a位置で実施例1の領域Bでの半径と同じく1.2rとした。比較例2では洗浄後、実施例1、比較例1と同様に半導体素子30を載置し、半田接合させ、X線により、不良箇所を調べた。その結果、電極配置領域12の領域Aの中心部で、隣り合っている半田同士がつながってしまうショート不良が10箇所発見された。この結果、領域Aの第1の電極バンプ11aの体積は増加させない方が良いという知見を得た。
【0029】
<比較例3>
比較例3では多層配線基板10、半田組成、メタルマスク厚、半導体素子30、枠状金属板20および半田リフロー条件は実施例1、比較例1と同様にした。比較例3では多層配線基板10の半導体素子30の搭載領域の電極配置領域12の電極バンプ11の体積はほぼ同一にするべく、メタルマスクの開口は電極配置領域12の全ての電極パッド13a位置で実施例1の領域Aでの半径と同じくrとして半田ペーストを印刷した。半田リフロー後、再度領域Bのみに半径1.5rの開口を設けたメタルマスクで半田ペーストを印刷し、半田リフローを行った。これにより、領域Bの第2の電極バンプ11bの半田の体積は領域Aの第1の電極バンプ11aの半田の体積の2倍になった。この多層配線基板10に半導体素子30を載置し半田接合させ、X線により不良箇所を調べたところ、多層配線基板10の領域Aのほぼ全ての第1の電極バンプ11aが半導体素子30の電極バンプから離れて断線してしまった。この結果、領域Bの第2の電極バンプ11bの体積を第1の電極バンプ11aの2倍以上にすることは過剰であることが分かった。これが過剰になるのは、電極配置領域12の長さLと多層配線基板10の厚さtの比(L/t)が130程度であるからと考える。L/tが130より大きい場合は、第2の電極バンプ11bの体積と第1の電極バンプ11aの体積の比はより大きくする必要があると考える。しかし、第2の電極バンプ11bの体積と第1の電極バンプ11aの体積の比を極端に大きくすることは現実的では無いと考えるため、L/tが150以下の範囲で、第2の電極バンプ11bの体積を実用的な範囲内で、第1の電極バンプ11aの体積より増加させることができると考える。
【0030】
<比較例4>
比較例4では多層配線基板10の枠状金属板20と電極バンプ11を除く厚さtを1.0mmとした。その他の条件は比較例1と同様にした。その結果、比較例1と異なり、接続不良が生じなかった。比較例4では、L=20mmで、t=1mmであるため、電極配置領域12の長さLと多層配線基板の厚さtの比(L/t)が20mm/1mm=20である。この場合は、L/tが20程度で小さいので電極配置領域12の凸形状の変形の高さの差が小さく、最適な第2の電極バンプ11bの体積と第1の電極バンプ11aの体積の比は小さくなり、同じ体積でも問題を生じないことがわかった。そのため、先の比較例3の結果から得た知見と合わせると、多層配線基板10の厚さtが0.02mm以上で1mm以下の場合に、L/tが20から150までの範囲では、第2の電極バンプ11bの体積を第1の電極バンプ11aの体積より適度に大きくすることで、半導体素子30の電極バンプと多層配線基板10の電極バンプ11を良好に接続できることが分かった。
【0031】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の多層配線基板の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の多層配線基板の一実施例を示す平面図である。
【図4】本発明の多層配線基板の電極配置領域における領域Aと領域Bの位置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
10・・・多層配線基板
11・・・電極バンプ
11a・・・第1の電極バンプ
11b・・・第2の電極バンプ
12・・・電極配置領域
13・・・ソルダーレジスト
13a・・・電極パッド
14・・・ソルダーレジスト
15・・・配線層
16・・・絶縁層
17・・・BGAボール搭載パッド
20・・・枠状金属板
30・・・半導体素子
40・・・半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層が有機樹脂から成る多層配線基板の上面の周辺部に固着した枠状金属板を有し、前記多層配線基板の上面に半導体集積回路素子の電極と接続するための電極バンプを設置した電極配置領域を有し、前記電極配置領域に内接する内接円内の前記電極バンプを第1の電極バンプとし、前記内接円以上の同心円の外側の前記電極バンプを第2の電極バンプとし前記第1の電極バンプよりも体積を大きくし、前記内接円と前記同心円の間の前記電極バンプの体積を前記第1の電極バンプの体積以上で前記第2の電極バンプの体積以下にしたことを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記第1の電極バンプおよび前記第2の電極バンプが、融点が200℃以上の鉛フリー半田から成ることを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記多層配線基板の前記枠状金属板と前記電極バンプを除く厚さtが0.02mm以上1.0mm未満であり、前記電極配置領域の長さと前記厚さtの比が20以上150以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
絶縁層が有機樹脂から成る多層配線基板の上面の周辺部に固着した枠状金属板を有し、前記多層配線基板の上面に半導体集積回路素子の電極と接続するための電極バンプを設置した電極配置領域を有し、前記電極配置領域に内接する内接円内の前記電極バンプを第1の電極バンプとし、前記内接円以上の同心円の外側の前記電極バンプを第2の電極バンプとし前記第1の電極バンプよりも体積を大きくし、前記内接円と前記同心円の間の前記電極バンプの体積を前記第1の電極バンプの体積以上で前記第2の電極バンプの体積以下にし、前記電極バンプが前記半導体集積回路素子の電極に接合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第1の電極バンプおよび前記第2の電極バンプが、融点が200℃以上の鉛フリー半田から成ることを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記多層配線基板の前記枠状金属板と前記電極バンプを除く厚さtが0.02mm以上1.0mm未満であり、前記電極配置領域の長さと前記厚さtの比が20以上150以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−140868(P2008−140868A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323878(P2006−323878)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】