多心メタルケーブルの接続構造、多心メタルケーブルの接続方法、鉄道信号用多心メタルケーブル、鉄道信号用ケーブル分岐アダプタ
【課題】 工場等であらかじめコネクタ嵌合部を取り付けた多心メタルケーブルを用い、作業性に優れ、作業時間の削減および配線ミス等を防止可能な多心メタルケーブルの接続構造等を提供する。
【解決手段】 多心ケーブル5a、5bは、多心メタルケーブルであって、複数の被覆ケーブル17がシース7によって被覆される。一対の多心ケーブル5a、5bのそれぞれの端部には、コネクタ嵌合部が接続される。多心ケーブル5a、5bの端部から後方に向かって、ケーブル露出部19が形成される。ケーブル露出部19の後方には、シース7を保持するシース保持部9が設けられる。シース保持部9同士は、連結部材11によって連結される。ケーブル露出部19およびコネクタ嵌合部は、被覆樹脂13により一体で被覆される。ケーブル露出部19を形成することで、複数の被覆ケーブル17を一括して周方向にねじり、コネクタ嵌合部の嵌合部位置を合わせることができる。
【解決手段】 多心ケーブル5a、5bは、多心メタルケーブルであって、複数の被覆ケーブル17がシース7によって被覆される。一対の多心ケーブル5a、5bのそれぞれの端部には、コネクタ嵌合部が接続される。多心ケーブル5a、5bの端部から後方に向かって、ケーブル露出部19が形成される。ケーブル露出部19の後方には、シース7を保持するシース保持部9が設けられる。シース保持部9同士は、連結部材11によって連結される。ケーブル露出部19およびコネクタ嵌合部は、被覆樹脂13により一体で被覆される。ケーブル露出部19を形成することで、複数の被覆ケーブル17を一括して周方向にねじり、コネクタ嵌合部の嵌合部位置を合わせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用信号ケーブルに用いられる、多心メタルケーブルの接続方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道用信号ケーブルの接続は、防水性を確保する必要がある。このため、ケーブルの接続部を硬化型の樹脂で固める、いわゆるレジン工法が採用されてきた。
【0003】
レジン工法とは、現場で接続する絶縁線を1心ずつカシメ、シースを除去した部分全体をスリーブで覆い、エポキシ系樹脂を圧入して硬化させることで防水構造と接続部の引張り強度を確保するものである。
【0004】
このような、いわゆるレジン工法を用いた接続方法としては、例えば、壁部に穴が形成されたスリーブを用い、導線をスリーブの両側から挿入し、スリーブを変形させて圧着した後、穴から樹脂を充填する方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−104875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような従来の方法は、熟練を要する作業であり、特に鉄道用の信号線に対しては、限られた夜間作業帯での作業であるため、接続作業時間や、樹脂硬化時間の確保が困難であるという問題がある。また、同様に、分岐接続においても同様の作業があり、幹線として接続する心線、分岐と接続する心線などを現地での心線識別を行わなければならず、誤接続の要因となるという問題がある。
【0007】
また、多心メタルケーブルを用いた場合には、ケーブル全体をねじったりすることが困難であるため、嵌合位置が決められているコネクタ嵌合部により接合を行うことは困難であった。このため、接続部においては、前述のレジン工法により1心ずつ接続を行う必要がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、工場等であらかじめコネクタ嵌合部(プラグまたはレセプタクル)を取り付けた多心メタルケーブルを用い、作業性に優れ、作業時間の削減および配線ミス等を防止することが可能な多心メタルケーブルの接続構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために第1の発明は、クロージャ内に形成される多心メタルケーブルの接続構造であって、複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、を具備する一対の多心メタルケーブルのそれぞれの端部近傍において、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部がそれぞれ形成され、前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端にはそれぞれコネクタ嵌合部が設けられ、一対の前記多心メタルケーブルが前記コネクタ嵌合部で接続されており、それぞれの前記ケーブル露出部の後方に設けられ、前記シースを保持するシース保持部材が、互いに連結されており、少なくとも前記ケーブル露出部および前記コネクタ嵌合部が被覆樹脂で被覆されていることを特徴とする多心メタルケーブルの接続構造である。
【0010】
前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周に位置する絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記ケーブル露出部の長さが、2D〜4Dの長さであることが望ましい。
【0011】
前記多心メタルケーブルは、シース内部にコルゲート金属管を有し、前記複数の絶縁被覆ケーブルは、前記コルゲート金属管に挿通され、それぞれの前記ケーブル露出部と前記シース保持部が設けられる部位との間には、前記コルゲート管が露出するコルゲート管露出部が形成され、それぞれの前記コルゲート管露出部には、前記コルゲート管を保持するコルゲート管保持部が設けられ、それぞれの前記コルゲート管保持部が互いに導体で連結されていてもよい。
【0012】
前記コルゲート管露出部と前記ケーブル露出部との境界近傍はエポキシ樹脂で固定されてもよい。前記被覆樹脂は、ウレタン系樹脂であってもよい。
【0013】
第1の発明によれば、多心メタルケーブル同士がコネクタ嵌合部を介して接続されるため、接続作業が容易であり、接続ミスを防止することができる。また、通常、シースで被覆された多心メタルケーブルは、特にねじり方向に対して極めて強度が高く、コネクタ嵌合部同士の位置合わせをすることができないが、絶縁被覆ケーブルの露出部を形成したため、ケーブル露出部で絶縁被覆ケーブル全体を一括して周方向にねじることができる。このため、コネクタ嵌合部同士の嵌合位置合わせが可能である。
【0014】
特に、ケーブル露出部の長さLが、絶縁被覆ケーブルで形成される仮想円の心径Dに対して2D〜4Dとなれば、ケーブルをねじる際に、絶縁被覆ケーブルとコネクタ嵌合部との接続部へ過度な力がかからず、また、必要以上に長いケーブル露出部を形成する必要がないため、接続部の大きさを小型化することができる。
【0015】
また、シース保持部同士を連結することで、接続部に軸方向の応力が付与されることが防止できるため、従来のように、接続部に硬化型のエポキシ樹脂等を用いる必要がない。したがって、例えば、接続部の防水を確保するためには、接続部をウレタン系樹脂で被覆することで、作業性にも優れ、防水性も確保でき、接続部の確認や補修の際には、接続部を被覆する被覆樹脂を容易に撤去することも可能である。
【0016】
また、コルゲート金属管を用いた多心メタルケーブルは、強度及びシールド性に優れるが、より一層、周方向へのねじりが困難となる。この場合にも、ケーブル露出部を形成することで、ケーブル露出部で絶縁被覆ケーブル全体を一括して周方向にねじることができ、コネクタ嵌合部の嵌合位置合わせを行うことができる。この場合、接続されるそれぞれのコルゲート金属管同士を導体で連結することで、シールド性も維持することができる。
【0017】
また、コルゲート金属管を用いた場合に、ケーブル露出部とコルゲート金属管の露出部との界面近傍をエポキシ樹脂で固定することで、コルゲート金属管と絶縁被覆ケーブルとの相対的な移動がなく、接続部に過度な力が付与されることがない。
【0018】
第2の発明は、多心メタルケーブルの接続方法であって、複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端に設けられるコネクタ嵌合部と、を具備する一対の多心メタルケーブルのそれぞれの端部近傍において、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部をそれぞれ形成し、それぞれの前記ケーブル露出部の後方に、前記シースを保持するシース保持部材を設け、前記一対の多心メタルケーブルのそれぞれの前記コネクタ嵌合部を対向させて、前記ケーブル露出部を多心メタルケーブルの周方向に捻り、前記コネクタ嵌合部同士の嵌合位置を合わせて、前記コネクタ嵌合部同士を接続し、ウレタン系樹脂である被覆樹脂により、少なくとも前記ケーブル露出部および前記コネクタ嵌合部を被覆するとともに、前記シース保持部材同士を連結することを特徴とする多心メタルケーブルの接続方法である。
【0019】
第2の発明によれば、周方向へのねじりが困難な多心メタルケーブルに対しても、容易にコネクタ嵌合部の嵌合位置合わせが可能である。したがって、作業性に優れる。
【0020】
第3の発明は、複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端に設けられるコネクタ嵌合部と、を具備し、前記コネクタ嵌合部の後方に、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部が形成され、前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周に位置する絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記ケーブル露出部の長さが、2D〜4Dの長さであり、前記ケーブル露出部で、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して周方向に捻ることが可能であることを特徴とする鉄道信号用多心メタルケーブルである。
【0021】
第3の発明によれば、鉄道信号用として現場での接続作業性に優れる多心メタルケーブルを得ることができる。
【0022】
第4の発明は、多心メタルケーブルの分岐接続部用いられる鉄道信号用ケーブル分岐アダプタであって、第1のコネクタ嵌合部と、前記第1のコネクタ嵌合部に接続される、複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルが、複数に分岐され、分岐されたそれぞれの絶縁被覆ケーブルの端部には、第2のコネクタ嵌合部がそれぞれ接続され、前記第1のコネクタ嵌合部と前記第2のコネクタ嵌合部との間の前記絶縁被覆ケーブルは露出しており、分岐されたそれぞれの前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周の絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記絶縁被覆ケーブルが露出する長さが、4D〜8Dの長さであることを特徴とする鉄道信号用ケーブル分岐アダプタである。
【0023】
第4の発明によれば、鉄道信号用ケーブルの分岐を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、工場等であらかじめコネクタ嵌合部を取り付けた多心メタルケーブルを用い、作業性に優れ、作業時間の削減および配線ミス等を防止可能な多心メタルケーブルの接続構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】メタルケーブル接続構造1を示す図であり、(a)はクロージャ透視図、(b)は軸方向断面図。
【図2】メタルケーブル接続構造1の断面図であり、(a)は図1(b)のA−A線断面図、(b)は図1(b)のB−B線断面図。
【図3】メタルケーブル接続構造1の構築工程を示す図。
【図4】メタルケーブル接続構造1の構築工程を示す図。
【図5】被覆ケーブルのねじる状態を示す図。
【図6】被覆ケーブルのねじる状態を示す図。
【図7】メタルケーブル接続構造1の構築工程を示す図。
【図8】メタルケーブル接続構造1の構築工程を示す図。
【図9】メタルケーブル接続構造30を示す軸方向断面図。
【図10】メタルケーブル接続構造30の断面図であり、(a)は図8のF−F線断面図、(b)は図8のG−G線断面図、(c)は図8のH−H線断面図。
【図11】(a)はメタルケーブル分岐アダプタ40を示す図、(b)はメタルケーブル接続構造50を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、メタルケーブル接続構造1を示す図であり、図1(a)は正面図(クロージャ3透視図)、図1(b)は、軸方向に対する断面図である。また、図2(a)は図1(b)のA−A線断面図、図2(b)は図1(b)のB−B線断面図である。メタルケーブル接続構造1は、一対の多心ケーブル5a、5bが接続されたものである。
【0027】
メタルケーブル接続構造1は、主に、クロージャ3、多心ケーブル5a、5b、シース保持部9、連結部材11、被覆樹脂13等から構成される。クロージャ3は、接続部を覆うケース状部材であり、多心ケーブル5a、5bが側面を貫通し、内部への水の侵入が防止される。
【0028】
多心ケーブル5a、5bは、多心メタルケーブルであって、図2に示すように、複数の被覆ケーブル17がシース7によって被覆されたものである。被覆ケーブル17は、絶縁被覆ケーブルであって、シース7によって、一括して被覆される。シース7は、樹脂製である。
【0029】
図1(b)に示すように、一対の多心ケーブル5a、5bのそれぞれの端部には、コネクタ嵌合部15a、15bが接続される。すなわち、複数の被覆ケーブル17は、コネクタ嵌合部15a、15bにそれぞれ電気的に接続される。コネクタ嵌合部15a、15bは、多心用の一般的なコネクタ嵌合部(プラグまたはレセプタクル)であり、雄雌の嵌合により、互いに電気的に接続される。
【0030】
多心ケーブル5a、5bの端部(コネクタ嵌合部15a、15b)から後方(以後、コネクタ嵌合部側から他端側の長手方向に向かう方向を後方と称する)に向かって、所定範囲(図1(b)において長さLの区間)には、シース7が剥ぎ取られて、内部の被覆ケーブル17が露出する、ケーブル露出部19が形成される。
【0031】
ケーブル露出部19の後方には、シース7を保持するシース保持部9が設けられる。シース保持部9は、例えば2分割等の部材であり、図示を省略した接合部で接合されてリング状となり、シース7(多心ケーブル5a、5b)を外方から挟み込み、シース7の軸方向に対して固定される。多心ケーブル5a、5bそれぞれに設けられたシース保持部9同士は、連結部材11によって連結される。すなわち、連結部材11によって、多心ケーブル5a、5b同士がシース保持部9を介して連結される。したがって、コネクタ嵌合部近傍に対して、長手方向の応力が付与されることが防止される。
【0032】
ケーブル露出部19およびコネクタ嵌合部15a、15bは、被覆樹脂13により一体で被覆される。すなわち、被覆樹脂13によって、確実に接続部への水の侵入を防止することができる。被覆樹脂13としては、たとえばウレタン系樹脂を用いることができる。ウレタン系樹脂は強度は有さないが、防水を確保することができ、また、必要に応じて除去することも容易である。
【0033】
ここで、図2(a)に示すように、被覆ケーブル17の束の断面を円形状とし、最外周に位置する被覆ケーブル17のそれぞれの中心を結んで形成される仮想円(図中点線円)の心径をDとする。この場合に、図1(b)に示すケーブル露出部19の長さLが、2D〜4Dの長さであることが望ましい。
【0034】
次に、メタルケーブル接続構造1の構築方法(多心ケーブル5a、5bの接続方法)を説明する。まず、図3に示すように、多心ケーブル5a、5bそれぞれの端部近傍のシース7を剥ぎ取り、所定長さのケーブル露出部19を形成する。また、それぞれの被覆ケーブル17をコネクタ嵌合部15a、15bに接続する。以上の工程は、あらかじめ工場において施工することができる。このため、コネクタ嵌合部と被覆ケーブルの接続作業に熟練が不要であり、接続ミスも防止することができる。
【0035】
それぞれの多心ケーブル5a、5bを現場に運搬し、互い対向させる。この際、ケーブル露出部19の後方(ケーブル露出部19近傍)に、それぞれシース保持部9を固定する。
【0036】
次に、図4に示すように、それぞれのケーブル露出部19において、被覆ケーブル17を一括して周方向にねじる(図中矢印C方向、およびD方向)。なお、以下の図において、クロージャ3を点線で示すが、クロージャ3は最後に取り付けてもよい。
【0037】
図5は、図4におけるコネクタ嵌合部15a、15b近傍の拡大図である。通常、多心のコネクタ嵌合部は、それぞれの嵌合位置を合わせる必要がある。たとえば、図5(a)に示すように、嵌合部21aと嵌合部21bとの位置を合わせなければ、コネクタ嵌合部同士の接続ができない。
【0038】
しかしながら、シース7の部位では、多心ケーブルを周方向にねじることは極めて困難である。そこで、本発明では、図5(b)に示すように、ケーブル露出部19を形成し、シース7が無い部位で複数の被覆ケーブル17を一括して周方向にねじり、嵌合部21a、21bの位置を合わせることができる。
【0039】
ここで、前述したとおり、ケーブル露出部19の長さLは仮想円の心径Dに対して、L=2D〜4Dが望ましいが、これは、以下の理由による。断面最外周の被覆ケーブル17(以下最外周ケーブルと称する)に注目すると、最外周ケーブルが周方向にねじられた状態では、コネクタ嵌合部との接続部に引張応力が付与される。
【0040】
例えば、図6に示すように、周方向に360°ねじられた最外周ケーブルがピッチP(軸方向長さ)で螺旋状に形成されると、1ピッチあたりの周方向の長さは、心径Dとすれば、外周長に対応するためDπとなる。したがって、1ピッチ当たりの最外周ケーブル全長(螺旋長)をxとすれば、x2=P2+(Dπ)2の関係が得られる。ここで、例えば、ねじった際の軸方向直線長さ(=P)と螺旋長(x)との差から、長さの変化率Kを計算すると、K=(x−P)/Pとなる。
【0041】
したがって、K={(P2+(Dπ)2)^(0.5)−P}/P={1+π2(D/P)2}^(0.5)−1となる。たとえば、コネクタ嵌合部との接続部に過度な引張応力が付与されないように、Kを7.5%以下にするとすれば、D/Pを1/8以下(P=8D以上)にすれば良い。D/Pが1/8であれば、上述のKは約7.43%となる。たとえば、心径Dを30mmとすれば、Pを240mm(8D)とすれば良い。
【0042】
ここで、コネクタ嵌合部同士の嵌合部の位置は、両方のコネクタ嵌合部を互いに反対方向にねじれば良いため、一方のコネクタ嵌合部側は、180°の可動範囲を有すれば良い。したがって、コネクタ嵌合部を正逆それぞれ90°(すなわち1/4ピッチ)ねじることができればよい。すなわち、コネクタ嵌合部との接続部に過度な引張応力を付与しないように、前述した長さ変化率を7.5%以下にするためには、ケーブルをねじる部分の軸方向直線長さを2D以上とすればよい。すなわち、ケーブル露出部19の長さLを2D以上とすればよい。
【0043】
なお、ケーブル露出部長さが長すぎると(例えば4D以上となると)、接続部の全長が長くなるため望ましくない。したがって、L=2D〜4Dであることが望ましい。
【0044】
次に、図7に示すように、互いの嵌合部があった位置で、コネクタ嵌合部15a、15bを接続する。
【0045】
次に、図8に示すように、ケーブル露出部19およびコネクタ嵌合部15a、15bを一体で被覆するように、被覆樹脂13が設けられる。被覆樹脂13は、例えばウレタン系樹脂が用いられる。被覆樹脂13の形成は、例えば対象部位を覆うようにケース部材を設置し、ケースを型枠としてケース内に樹脂を充填して形成すれば良い。被覆樹脂13により、接続部の防水が確保される。すなわち、クロージャ3および被覆樹脂13の両方で防水が確保できる。
【0046】
最後に、シース保持部9同士を連結部材11で連結することで、メタルケーブル接続構造1が形成される。
【0047】
以上説明したように、本発明にかかるメタル接続構造1によれば、確実に防水を確保することができる。また、多心メタルケーブルを用い、あらかじめ工場等でコネクタ嵌合部が接続されるため、接続作業に熟練が不要であり、接続ミスも防止することができる。
【0048】
また、本発明に用いられる多心ケーブルは、ケーブル露出部19が形成されるため、ケーブル露出部19で被覆ケーブル17の束を一括してねじることができる。このため、コネクタ嵌合部の嵌合位置を合わせることができる。なお、Lが2Dよりも大きければ、確実にコネクタ嵌合部同士の嵌合位置合わせが可能である。
【0049】
また、シース保持部9同士が連結部材で連結されるため、軸方向の応力を連結部材で受けることができ、接続部に付与される応力を防止することができる。このため、被覆樹脂として、従来のようなエポキシ樹脂等を用いる必要がなく、被覆樹脂としての強度は不要である。
【0050】
また、ケーブル露出部をねじり、コネクタ嵌合部15a、15bを接続した状態で、ケーブル露出部およびコネクタ嵌合部を一体で被覆樹脂により被覆するため、防水が確保できるとともに、被覆樹脂としてウレタン系樹脂を用いれば、接続部の確認や補修等のために、被覆樹脂を除去することも容易である。
【0051】
次に、第2の実施形態について説明する。図9はメタルケーブル接続構造30を示す図、図10(a)は図9のF−F線断面図、図10(b)は図9のG−G線断面図、図10(c)は図9のH−H線断面図である。なお、以下の実施形態において、メタルケーブル接続構造1と同様の機能を奏する構成は、図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。メタルケーブル接続構造30は、メタルケーブル接続構造1と略同様の構成であるが、コルゲート管33を有する点で異なる。
【0052】
多心ケーブル31a、31bは、コルゲート管33の内部に被覆ケーブル17が挿通され、コルゲート管33の外周にシース7が形成される。コルゲート管33は、例えばアルミニウム合金製の波付き管である。コルゲート管33は、被覆ケーブル17の保護と、ノイズに対するシールド層として機能する。
【0053】
コルゲート管33を有するため、多心ケーブル31a、31bを周方向にねじることは極めて困難であるが、本発明では、前述の通り、ケーブル露出部19を形成するため、被覆ケーブル17の束を一括してねじることができる。なお、この場合のケーブル露出部19とは、コルゲート管33端部から、コネクタ嵌合部15a、15bまでの間を指す。
【0054】
なお、メタルケーブル接続構造30では、シース7による被覆部とケーブル露出部19との間(ケーブル露出部19の後方)にコルゲート管33が露出するコルゲート管露出部が形成される。
【0055】
図9、図10(b)に示すように、コルゲート管露出部には、それぞれコルゲート管保持部35が設けられる。コルゲート管保持部35は、シース保持部9と同様に、例えば半割り状の部材であり、コルゲート管33に対して軸方向に対して固定される。なお、コルゲート管保持部35はアルミニウム合金製等の導体である。
【0056】
コルゲート管保持部35同士は、接続部をまたいで導体である連結部材37により連結される。連結部材37は、シース保持部9を連結する連結部材11と異なり、接続部の軸方向強度を確保するものではない。したがって、強度は不要である。たとえば、金属線であれば良い。連結部材37によって、シールド層であるコルゲート管33同士が接続され、ケーブル全体のシールド特性を確保することができる。
【0057】
コルゲート管33端部(コルゲート管露出部とケーブル露出部19との境界部近傍)には、固定樹脂39が設けられる。固定樹脂39は例えばエポキシ樹脂である。固定樹脂39によって、コルゲート管33に対して、内部の被覆ケーブル17が移動することが防止される。
【0058】
また、図9、図10(c)に示すように、固定樹脂39、ケーブル露出部19およびコネクタ嵌合部15a、15bを一体で被覆するように、被覆樹脂13が設けられる。
【0059】
なお、メタルケーブル接続構造30の接続方法は、メタルケーブル接続構造1と略同様であるが、ケーブル露出部と同様に、あらかじめコルゲート管露出部を形成すればよい。また、シース保持部9と同様に、コルゲート管保持部35を設ければよい。また、被覆樹脂13を設ける前(被覆ケーブル17をねじる前)に、固定樹脂39を設け、さらに、被覆樹脂13を設けた後、連結部材11を設ければよい。以上により、メタルケーブル接続構造30が構築される。
【0060】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、コルゲート管を有する多心ケーブル31a、31bの接続部においても、あらかじめコネクタ嵌合部を接続でき、現場で容易にコネクタ嵌合部の嵌合部の位置合わせを行うことができる。
【0061】
また、コルゲート管33同士が導通するため、シールド性を確保することができる。また、コルゲート管33と被覆ケーブル17が固定樹脂39で固定され、さらに被覆樹脂13で被覆されるため、被覆ケーブル17とコルゲート管33とが確実に固定されるとともに、接続部は、容易に除去可能な例えばウレタン系樹脂を用いることができる。
【0062】
次に、第3の実施形態について説明する。図11(a)は、メタルケーブル分岐アダプタ40を示す図である。メタルケーブル分岐アダプタ40は、主に被覆ケーブル43およびコネクタ嵌合部41a、41b、41cから構成される。
【0063】
メタルケーブル分岐アダプタ40は、一方の側のコネクタ嵌合部41a(第1のコネクタ嵌合部)に接続された複数の被覆ケーブル17が、2つに分岐され、それぞれの被覆ケーブル17の他端がコネクタ嵌合部41b、41c(第2のコネクタ嵌合部)と接続される。コネクタ嵌合部41aと、コネクタ嵌合部41b、41cとの間は、被覆ケーブル43が露出し、ケーブル露出部が形成される。コネクタ嵌合部41aと、コネクタ嵌合部41b、41cとの間が、前述したケーブル露出部19に対応する。
【0064】
なお、メタルケーブル分岐アダプタ40としては、2つに分岐する例を示したが、3つ以上に分岐させてもよい。
【0065】
図11(b)は、メタルケーブル分岐アダプタ40を用いたメタルケーブル接続構造50を示す図である。メタルケーブル接続構造50は、主に多心ケーブル51a、51b、51cがメタルケーブル分岐アダプタ40により接続されたものである。
【0066】
多心ケーブル51a、51b、51cは、前述した多心ケーブル5a等と同様の構成である。多心ケーブル51aの先端(被覆ケーブル17)にはコネクタ嵌合部55aが接続される。なお、多心ケーブル51aには、ケーブル露出部19を設ける必要はない。同様に、多心ケーブル51b、51cの先端(被覆ケーブル17)にはそれぞれコネクタ嵌合部55b、55cがそれぞれ接続される。多心ケーブル51b、51cは、多心ケーブル51aに対向して配置される。
【0067】
多心ケーブル51aの外周にはシース保持部9が固定される。多心ケーブル51b、51cの外周にはシース保持部53が固定される。シース保持部53は、多心ケーブル51b、51cの外周それぞれにシース保持部9と同様の構成で固定してもよく、または、一体で、多心ケーブル51b、51cを固定してもよい。この場合にも、シース保持部53を2分割とし、多心ケーブル51b、51cを一括して挟みこめばよい。
【0068】
シース保持部53とシース保持部9とは連結部11で連結される。なお、シース保持部53が多心ケーブル51b、51cそれぞれに固定される場合には、シース保持部9は、それぞれのシース保持部53と連結される。
【0069】
多心ケーブル51aと多心ケーブル51b、51cとは、メタルケーブル分岐アダプタ40により接続される。すなわち、コネクタ嵌合部55aとコネクタ嵌合部41aとが接続され、コネクタ嵌合部55b、55cが、コネクタ嵌合部41b、41cとそれぞれ接続される。この際、それぞれのコネクタ嵌合部同士の嵌合位置を合わせる必要があるが、メタルケーブル分岐アダプタ40の分岐された被覆ケーブル43露出部分をそれぞれ一括して周方向にねじることで、コネクタ嵌合部の位置を合わせることができる。
【0070】
なお、多心ケーブル51aと多心ケーブル51b、51cに、ケーブル露出部が形成されていない場合には、メタルケーブル分岐アダプタ40側において、コネクタ嵌合部の嵌合位置を合わせる必要がある。このため、メタルケーブル分岐アダプタ40のケーブルの露出部長さL2は、前述したように、360°(正逆180°)のねじりに対応する必要がある。したがって、前述したケーブル露出部19の2倍であるL2=4D〜8D程度の長さが必要となる。
【0071】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、分岐部においても、多心ケーブル同士をコネクタ嵌合部で接続することができる。
【0072】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
例えば、メタルケーブル接続構造50においてコルゲート管を有する多心ケーブルを接続してもよい。この場合、各多心ケーブルにおいて、コルゲート管露出部を形成し、コルゲート管保持部を設け、互いのコルゲート管保持部同士を挿通させればよい。また、コルゲート管露出部を形成する場合には、コルゲート管露出部(コルゲート管)とそれぞれ対応するコネクタ嵌合部55a、55b、55cとを固定樹脂で固定すれば良い。
【符号の説明】
【0074】
1、30、50………メタルケーブル接続構造
3………クロージャ
5a、5b………多心ケーブル
7………シース
9………シース保持部
11………連結部材
13………被覆樹脂
15a、15b………コネクタ嵌合部
17………被覆ケーブル
19………ケーブル露出部
21a、21b………嵌合部
31a、31b………多心ケーブル
33………コルゲート管
35………コルゲート管保持部
37………連結部材
39………固定樹脂
40………メタルケーブル分岐アダプタ
41a、41b、41c………コネクタ嵌合部
43………被覆ケーブル
51a、51b、51c………多心ケーブル
53………シース保持部
55a、55b、55c………コネクタ嵌合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用信号ケーブルに用いられる、多心メタルケーブルの接続方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道用信号ケーブルの接続は、防水性を確保する必要がある。このため、ケーブルの接続部を硬化型の樹脂で固める、いわゆるレジン工法が採用されてきた。
【0003】
レジン工法とは、現場で接続する絶縁線を1心ずつカシメ、シースを除去した部分全体をスリーブで覆い、エポキシ系樹脂を圧入して硬化させることで防水構造と接続部の引張り強度を確保するものである。
【0004】
このような、いわゆるレジン工法を用いた接続方法としては、例えば、壁部に穴が形成されたスリーブを用い、導線をスリーブの両側から挿入し、スリーブを変形させて圧着した後、穴から樹脂を充填する方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−104875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような従来の方法は、熟練を要する作業であり、特に鉄道用の信号線に対しては、限られた夜間作業帯での作業であるため、接続作業時間や、樹脂硬化時間の確保が困難であるという問題がある。また、同様に、分岐接続においても同様の作業があり、幹線として接続する心線、分岐と接続する心線などを現地での心線識別を行わなければならず、誤接続の要因となるという問題がある。
【0007】
また、多心メタルケーブルを用いた場合には、ケーブル全体をねじったりすることが困難であるため、嵌合位置が決められているコネクタ嵌合部により接合を行うことは困難であった。このため、接続部においては、前述のレジン工法により1心ずつ接続を行う必要がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、工場等であらかじめコネクタ嵌合部(プラグまたはレセプタクル)を取り付けた多心メタルケーブルを用い、作業性に優れ、作業時間の削減および配線ミス等を防止することが可能な多心メタルケーブルの接続構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために第1の発明は、クロージャ内に形成される多心メタルケーブルの接続構造であって、複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、を具備する一対の多心メタルケーブルのそれぞれの端部近傍において、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部がそれぞれ形成され、前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端にはそれぞれコネクタ嵌合部が設けられ、一対の前記多心メタルケーブルが前記コネクタ嵌合部で接続されており、それぞれの前記ケーブル露出部の後方に設けられ、前記シースを保持するシース保持部材が、互いに連結されており、少なくとも前記ケーブル露出部および前記コネクタ嵌合部が被覆樹脂で被覆されていることを特徴とする多心メタルケーブルの接続構造である。
【0010】
前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周に位置する絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記ケーブル露出部の長さが、2D〜4Dの長さであることが望ましい。
【0011】
前記多心メタルケーブルは、シース内部にコルゲート金属管を有し、前記複数の絶縁被覆ケーブルは、前記コルゲート金属管に挿通され、それぞれの前記ケーブル露出部と前記シース保持部が設けられる部位との間には、前記コルゲート管が露出するコルゲート管露出部が形成され、それぞれの前記コルゲート管露出部には、前記コルゲート管を保持するコルゲート管保持部が設けられ、それぞれの前記コルゲート管保持部が互いに導体で連結されていてもよい。
【0012】
前記コルゲート管露出部と前記ケーブル露出部との境界近傍はエポキシ樹脂で固定されてもよい。前記被覆樹脂は、ウレタン系樹脂であってもよい。
【0013】
第1の発明によれば、多心メタルケーブル同士がコネクタ嵌合部を介して接続されるため、接続作業が容易であり、接続ミスを防止することができる。また、通常、シースで被覆された多心メタルケーブルは、特にねじり方向に対して極めて強度が高く、コネクタ嵌合部同士の位置合わせをすることができないが、絶縁被覆ケーブルの露出部を形成したため、ケーブル露出部で絶縁被覆ケーブル全体を一括して周方向にねじることができる。このため、コネクタ嵌合部同士の嵌合位置合わせが可能である。
【0014】
特に、ケーブル露出部の長さLが、絶縁被覆ケーブルで形成される仮想円の心径Dに対して2D〜4Dとなれば、ケーブルをねじる際に、絶縁被覆ケーブルとコネクタ嵌合部との接続部へ過度な力がかからず、また、必要以上に長いケーブル露出部を形成する必要がないため、接続部の大きさを小型化することができる。
【0015】
また、シース保持部同士を連結することで、接続部に軸方向の応力が付与されることが防止できるため、従来のように、接続部に硬化型のエポキシ樹脂等を用いる必要がない。したがって、例えば、接続部の防水を確保するためには、接続部をウレタン系樹脂で被覆することで、作業性にも優れ、防水性も確保でき、接続部の確認や補修の際には、接続部を被覆する被覆樹脂を容易に撤去することも可能である。
【0016】
また、コルゲート金属管を用いた多心メタルケーブルは、強度及びシールド性に優れるが、より一層、周方向へのねじりが困難となる。この場合にも、ケーブル露出部を形成することで、ケーブル露出部で絶縁被覆ケーブル全体を一括して周方向にねじることができ、コネクタ嵌合部の嵌合位置合わせを行うことができる。この場合、接続されるそれぞれのコルゲート金属管同士を導体で連結することで、シールド性も維持することができる。
【0017】
また、コルゲート金属管を用いた場合に、ケーブル露出部とコルゲート金属管の露出部との界面近傍をエポキシ樹脂で固定することで、コルゲート金属管と絶縁被覆ケーブルとの相対的な移動がなく、接続部に過度な力が付与されることがない。
【0018】
第2の発明は、多心メタルケーブルの接続方法であって、複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端に設けられるコネクタ嵌合部と、を具備する一対の多心メタルケーブルのそれぞれの端部近傍において、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部をそれぞれ形成し、それぞれの前記ケーブル露出部の後方に、前記シースを保持するシース保持部材を設け、前記一対の多心メタルケーブルのそれぞれの前記コネクタ嵌合部を対向させて、前記ケーブル露出部を多心メタルケーブルの周方向に捻り、前記コネクタ嵌合部同士の嵌合位置を合わせて、前記コネクタ嵌合部同士を接続し、ウレタン系樹脂である被覆樹脂により、少なくとも前記ケーブル露出部および前記コネクタ嵌合部を被覆するとともに、前記シース保持部材同士を連結することを特徴とする多心メタルケーブルの接続方法である。
【0019】
第2の発明によれば、周方向へのねじりが困難な多心メタルケーブルに対しても、容易にコネクタ嵌合部の嵌合位置合わせが可能である。したがって、作業性に優れる。
【0020】
第3の発明は、複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端に設けられるコネクタ嵌合部と、を具備し、前記コネクタ嵌合部の後方に、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部が形成され、前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周に位置する絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記ケーブル露出部の長さが、2D〜4Dの長さであり、前記ケーブル露出部で、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して周方向に捻ることが可能であることを特徴とする鉄道信号用多心メタルケーブルである。
【0021】
第3の発明によれば、鉄道信号用として現場での接続作業性に優れる多心メタルケーブルを得ることができる。
【0022】
第4の発明は、多心メタルケーブルの分岐接続部用いられる鉄道信号用ケーブル分岐アダプタであって、第1のコネクタ嵌合部と、前記第1のコネクタ嵌合部に接続される、複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルが、複数に分岐され、分岐されたそれぞれの絶縁被覆ケーブルの端部には、第2のコネクタ嵌合部がそれぞれ接続され、前記第1のコネクタ嵌合部と前記第2のコネクタ嵌合部との間の前記絶縁被覆ケーブルは露出しており、分岐されたそれぞれの前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周の絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記絶縁被覆ケーブルが露出する長さが、4D〜8Dの長さであることを特徴とする鉄道信号用ケーブル分岐アダプタである。
【0023】
第4の発明によれば、鉄道信号用ケーブルの分岐を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、工場等であらかじめコネクタ嵌合部を取り付けた多心メタルケーブルを用い、作業性に優れ、作業時間の削減および配線ミス等を防止可能な多心メタルケーブルの接続構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】メタルケーブル接続構造1を示す図であり、(a)はクロージャ透視図、(b)は軸方向断面図。
【図2】メタルケーブル接続構造1の断面図であり、(a)は図1(b)のA−A線断面図、(b)は図1(b)のB−B線断面図。
【図3】メタルケーブル接続構造1の構築工程を示す図。
【図4】メタルケーブル接続構造1の構築工程を示す図。
【図5】被覆ケーブルのねじる状態を示す図。
【図6】被覆ケーブルのねじる状態を示す図。
【図7】メタルケーブル接続構造1の構築工程を示す図。
【図8】メタルケーブル接続構造1の構築工程を示す図。
【図9】メタルケーブル接続構造30を示す軸方向断面図。
【図10】メタルケーブル接続構造30の断面図であり、(a)は図8のF−F線断面図、(b)は図8のG−G線断面図、(c)は図8のH−H線断面図。
【図11】(a)はメタルケーブル分岐アダプタ40を示す図、(b)はメタルケーブル接続構造50を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、メタルケーブル接続構造1を示す図であり、図1(a)は正面図(クロージャ3透視図)、図1(b)は、軸方向に対する断面図である。また、図2(a)は図1(b)のA−A線断面図、図2(b)は図1(b)のB−B線断面図である。メタルケーブル接続構造1は、一対の多心ケーブル5a、5bが接続されたものである。
【0027】
メタルケーブル接続構造1は、主に、クロージャ3、多心ケーブル5a、5b、シース保持部9、連結部材11、被覆樹脂13等から構成される。クロージャ3は、接続部を覆うケース状部材であり、多心ケーブル5a、5bが側面を貫通し、内部への水の侵入が防止される。
【0028】
多心ケーブル5a、5bは、多心メタルケーブルであって、図2に示すように、複数の被覆ケーブル17がシース7によって被覆されたものである。被覆ケーブル17は、絶縁被覆ケーブルであって、シース7によって、一括して被覆される。シース7は、樹脂製である。
【0029】
図1(b)に示すように、一対の多心ケーブル5a、5bのそれぞれの端部には、コネクタ嵌合部15a、15bが接続される。すなわち、複数の被覆ケーブル17は、コネクタ嵌合部15a、15bにそれぞれ電気的に接続される。コネクタ嵌合部15a、15bは、多心用の一般的なコネクタ嵌合部(プラグまたはレセプタクル)であり、雄雌の嵌合により、互いに電気的に接続される。
【0030】
多心ケーブル5a、5bの端部(コネクタ嵌合部15a、15b)から後方(以後、コネクタ嵌合部側から他端側の長手方向に向かう方向を後方と称する)に向かって、所定範囲(図1(b)において長さLの区間)には、シース7が剥ぎ取られて、内部の被覆ケーブル17が露出する、ケーブル露出部19が形成される。
【0031】
ケーブル露出部19の後方には、シース7を保持するシース保持部9が設けられる。シース保持部9は、例えば2分割等の部材であり、図示を省略した接合部で接合されてリング状となり、シース7(多心ケーブル5a、5b)を外方から挟み込み、シース7の軸方向に対して固定される。多心ケーブル5a、5bそれぞれに設けられたシース保持部9同士は、連結部材11によって連結される。すなわち、連結部材11によって、多心ケーブル5a、5b同士がシース保持部9を介して連結される。したがって、コネクタ嵌合部近傍に対して、長手方向の応力が付与されることが防止される。
【0032】
ケーブル露出部19およびコネクタ嵌合部15a、15bは、被覆樹脂13により一体で被覆される。すなわち、被覆樹脂13によって、確実に接続部への水の侵入を防止することができる。被覆樹脂13としては、たとえばウレタン系樹脂を用いることができる。ウレタン系樹脂は強度は有さないが、防水を確保することができ、また、必要に応じて除去することも容易である。
【0033】
ここで、図2(a)に示すように、被覆ケーブル17の束の断面を円形状とし、最外周に位置する被覆ケーブル17のそれぞれの中心を結んで形成される仮想円(図中点線円)の心径をDとする。この場合に、図1(b)に示すケーブル露出部19の長さLが、2D〜4Dの長さであることが望ましい。
【0034】
次に、メタルケーブル接続構造1の構築方法(多心ケーブル5a、5bの接続方法)を説明する。まず、図3に示すように、多心ケーブル5a、5bそれぞれの端部近傍のシース7を剥ぎ取り、所定長さのケーブル露出部19を形成する。また、それぞれの被覆ケーブル17をコネクタ嵌合部15a、15bに接続する。以上の工程は、あらかじめ工場において施工することができる。このため、コネクタ嵌合部と被覆ケーブルの接続作業に熟練が不要であり、接続ミスも防止することができる。
【0035】
それぞれの多心ケーブル5a、5bを現場に運搬し、互い対向させる。この際、ケーブル露出部19の後方(ケーブル露出部19近傍)に、それぞれシース保持部9を固定する。
【0036】
次に、図4に示すように、それぞれのケーブル露出部19において、被覆ケーブル17を一括して周方向にねじる(図中矢印C方向、およびD方向)。なお、以下の図において、クロージャ3を点線で示すが、クロージャ3は最後に取り付けてもよい。
【0037】
図5は、図4におけるコネクタ嵌合部15a、15b近傍の拡大図である。通常、多心のコネクタ嵌合部は、それぞれの嵌合位置を合わせる必要がある。たとえば、図5(a)に示すように、嵌合部21aと嵌合部21bとの位置を合わせなければ、コネクタ嵌合部同士の接続ができない。
【0038】
しかしながら、シース7の部位では、多心ケーブルを周方向にねじることは極めて困難である。そこで、本発明では、図5(b)に示すように、ケーブル露出部19を形成し、シース7が無い部位で複数の被覆ケーブル17を一括して周方向にねじり、嵌合部21a、21bの位置を合わせることができる。
【0039】
ここで、前述したとおり、ケーブル露出部19の長さLは仮想円の心径Dに対して、L=2D〜4Dが望ましいが、これは、以下の理由による。断面最外周の被覆ケーブル17(以下最外周ケーブルと称する)に注目すると、最外周ケーブルが周方向にねじられた状態では、コネクタ嵌合部との接続部に引張応力が付与される。
【0040】
例えば、図6に示すように、周方向に360°ねじられた最外周ケーブルがピッチP(軸方向長さ)で螺旋状に形成されると、1ピッチあたりの周方向の長さは、心径Dとすれば、外周長に対応するためDπとなる。したがって、1ピッチ当たりの最外周ケーブル全長(螺旋長)をxとすれば、x2=P2+(Dπ)2の関係が得られる。ここで、例えば、ねじった際の軸方向直線長さ(=P)と螺旋長(x)との差から、長さの変化率Kを計算すると、K=(x−P)/Pとなる。
【0041】
したがって、K={(P2+(Dπ)2)^(0.5)−P}/P={1+π2(D/P)2}^(0.5)−1となる。たとえば、コネクタ嵌合部との接続部に過度な引張応力が付与されないように、Kを7.5%以下にするとすれば、D/Pを1/8以下(P=8D以上)にすれば良い。D/Pが1/8であれば、上述のKは約7.43%となる。たとえば、心径Dを30mmとすれば、Pを240mm(8D)とすれば良い。
【0042】
ここで、コネクタ嵌合部同士の嵌合部の位置は、両方のコネクタ嵌合部を互いに反対方向にねじれば良いため、一方のコネクタ嵌合部側は、180°の可動範囲を有すれば良い。したがって、コネクタ嵌合部を正逆それぞれ90°(すなわち1/4ピッチ)ねじることができればよい。すなわち、コネクタ嵌合部との接続部に過度な引張応力を付与しないように、前述した長さ変化率を7.5%以下にするためには、ケーブルをねじる部分の軸方向直線長さを2D以上とすればよい。すなわち、ケーブル露出部19の長さLを2D以上とすればよい。
【0043】
なお、ケーブル露出部長さが長すぎると(例えば4D以上となると)、接続部の全長が長くなるため望ましくない。したがって、L=2D〜4Dであることが望ましい。
【0044】
次に、図7に示すように、互いの嵌合部があった位置で、コネクタ嵌合部15a、15bを接続する。
【0045】
次に、図8に示すように、ケーブル露出部19およびコネクタ嵌合部15a、15bを一体で被覆するように、被覆樹脂13が設けられる。被覆樹脂13は、例えばウレタン系樹脂が用いられる。被覆樹脂13の形成は、例えば対象部位を覆うようにケース部材を設置し、ケースを型枠としてケース内に樹脂を充填して形成すれば良い。被覆樹脂13により、接続部の防水が確保される。すなわち、クロージャ3および被覆樹脂13の両方で防水が確保できる。
【0046】
最後に、シース保持部9同士を連結部材11で連結することで、メタルケーブル接続構造1が形成される。
【0047】
以上説明したように、本発明にかかるメタル接続構造1によれば、確実に防水を確保することができる。また、多心メタルケーブルを用い、あらかじめ工場等でコネクタ嵌合部が接続されるため、接続作業に熟練が不要であり、接続ミスも防止することができる。
【0048】
また、本発明に用いられる多心ケーブルは、ケーブル露出部19が形成されるため、ケーブル露出部19で被覆ケーブル17の束を一括してねじることができる。このため、コネクタ嵌合部の嵌合位置を合わせることができる。なお、Lが2Dよりも大きければ、確実にコネクタ嵌合部同士の嵌合位置合わせが可能である。
【0049】
また、シース保持部9同士が連結部材で連結されるため、軸方向の応力を連結部材で受けることができ、接続部に付与される応力を防止することができる。このため、被覆樹脂として、従来のようなエポキシ樹脂等を用いる必要がなく、被覆樹脂としての強度は不要である。
【0050】
また、ケーブル露出部をねじり、コネクタ嵌合部15a、15bを接続した状態で、ケーブル露出部およびコネクタ嵌合部を一体で被覆樹脂により被覆するため、防水が確保できるとともに、被覆樹脂としてウレタン系樹脂を用いれば、接続部の確認や補修等のために、被覆樹脂を除去することも容易である。
【0051】
次に、第2の実施形態について説明する。図9はメタルケーブル接続構造30を示す図、図10(a)は図9のF−F線断面図、図10(b)は図9のG−G線断面図、図10(c)は図9のH−H線断面図である。なお、以下の実施形態において、メタルケーブル接続構造1と同様の機能を奏する構成は、図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。メタルケーブル接続構造30は、メタルケーブル接続構造1と略同様の構成であるが、コルゲート管33を有する点で異なる。
【0052】
多心ケーブル31a、31bは、コルゲート管33の内部に被覆ケーブル17が挿通され、コルゲート管33の外周にシース7が形成される。コルゲート管33は、例えばアルミニウム合金製の波付き管である。コルゲート管33は、被覆ケーブル17の保護と、ノイズに対するシールド層として機能する。
【0053】
コルゲート管33を有するため、多心ケーブル31a、31bを周方向にねじることは極めて困難であるが、本発明では、前述の通り、ケーブル露出部19を形成するため、被覆ケーブル17の束を一括してねじることができる。なお、この場合のケーブル露出部19とは、コルゲート管33端部から、コネクタ嵌合部15a、15bまでの間を指す。
【0054】
なお、メタルケーブル接続構造30では、シース7による被覆部とケーブル露出部19との間(ケーブル露出部19の後方)にコルゲート管33が露出するコルゲート管露出部が形成される。
【0055】
図9、図10(b)に示すように、コルゲート管露出部には、それぞれコルゲート管保持部35が設けられる。コルゲート管保持部35は、シース保持部9と同様に、例えば半割り状の部材であり、コルゲート管33に対して軸方向に対して固定される。なお、コルゲート管保持部35はアルミニウム合金製等の導体である。
【0056】
コルゲート管保持部35同士は、接続部をまたいで導体である連結部材37により連結される。連結部材37は、シース保持部9を連結する連結部材11と異なり、接続部の軸方向強度を確保するものではない。したがって、強度は不要である。たとえば、金属線であれば良い。連結部材37によって、シールド層であるコルゲート管33同士が接続され、ケーブル全体のシールド特性を確保することができる。
【0057】
コルゲート管33端部(コルゲート管露出部とケーブル露出部19との境界部近傍)には、固定樹脂39が設けられる。固定樹脂39は例えばエポキシ樹脂である。固定樹脂39によって、コルゲート管33に対して、内部の被覆ケーブル17が移動することが防止される。
【0058】
また、図9、図10(c)に示すように、固定樹脂39、ケーブル露出部19およびコネクタ嵌合部15a、15bを一体で被覆するように、被覆樹脂13が設けられる。
【0059】
なお、メタルケーブル接続構造30の接続方法は、メタルケーブル接続構造1と略同様であるが、ケーブル露出部と同様に、あらかじめコルゲート管露出部を形成すればよい。また、シース保持部9と同様に、コルゲート管保持部35を設ければよい。また、被覆樹脂13を設ける前(被覆ケーブル17をねじる前)に、固定樹脂39を設け、さらに、被覆樹脂13を設けた後、連結部材11を設ければよい。以上により、メタルケーブル接続構造30が構築される。
【0060】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、コルゲート管を有する多心ケーブル31a、31bの接続部においても、あらかじめコネクタ嵌合部を接続でき、現場で容易にコネクタ嵌合部の嵌合部の位置合わせを行うことができる。
【0061】
また、コルゲート管33同士が導通するため、シールド性を確保することができる。また、コルゲート管33と被覆ケーブル17が固定樹脂39で固定され、さらに被覆樹脂13で被覆されるため、被覆ケーブル17とコルゲート管33とが確実に固定されるとともに、接続部は、容易に除去可能な例えばウレタン系樹脂を用いることができる。
【0062】
次に、第3の実施形態について説明する。図11(a)は、メタルケーブル分岐アダプタ40を示す図である。メタルケーブル分岐アダプタ40は、主に被覆ケーブル43およびコネクタ嵌合部41a、41b、41cから構成される。
【0063】
メタルケーブル分岐アダプタ40は、一方の側のコネクタ嵌合部41a(第1のコネクタ嵌合部)に接続された複数の被覆ケーブル17が、2つに分岐され、それぞれの被覆ケーブル17の他端がコネクタ嵌合部41b、41c(第2のコネクタ嵌合部)と接続される。コネクタ嵌合部41aと、コネクタ嵌合部41b、41cとの間は、被覆ケーブル43が露出し、ケーブル露出部が形成される。コネクタ嵌合部41aと、コネクタ嵌合部41b、41cとの間が、前述したケーブル露出部19に対応する。
【0064】
なお、メタルケーブル分岐アダプタ40としては、2つに分岐する例を示したが、3つ以上に分岐させてもよい。
【0065】
図11(b)は、メタルケーブル分岐アダプタ40を用いたメタルケーブル接続構造50を示す図である。メタルケーブル接続構造50は、主に多心ケーブル51a、51b、51cがメタルケーブル分岐アダプタ40により接続されたものである。
【0066】
多心ケーブル51a、51b、51cは、前述した多心ケーブル5a等と同様の構成である。多心ケーブル51aの先端(被覆ケーブル17)にはコネクタ嵌合部55aが接続される。なお、多心ケーブル51aには、ケーブル露出部19を設ける必要はない。同様に、多心ケーブル51b、51cの先端(被覆ケーブル17)にはそれぞれコネクタ嵌合部55b、55cがそれぞれ接続される。多心ケーブル51b、51cは、多心ケーブル51aに対向して配置される。
【0067】
多心ケーブル51aの外周にはシース保持部9が固定される。多心ケーブル51b、51cの外周にはシース保持部53が固定される。シース保持部53は、多心ケーブル51b、51cの外周それぞれにシース保持部9と同様の構成で固定してもよく、または、一体で、多心ケーブル51b、51cを固定してもよい。この場合にも、シース保持部53を2分割とし、多心ケーブル51b、51cを一括して挟みこめばよい。
【0068】
シース保持部53とシース保持部9とは連結部11で連結される。なお、シース保持部53が多心ケーブル51b、51cそれぞれに固定される場合には、シース保持部9は、それぞれのシース保持部53と連結される。
【0069】
多心ケーブル51aと多心ケーブル51b、51cとは、メタルケーブル分岐アダプタ40により接続される。すなわち、コネクタ嵌合部55aとコネクタ嵌合部41aとが接続され、コネクタ嵌合部55b、55cが、コネクタ嵌合部41b、41cとそれぞれ接続される。この際、それぞれのコネクタ嵌合部同士の嵌合位置を合わせる必要があるが、メタルケーブル分岐アダプタ40の分岐された被覆ケーブル43露出部分をそれぞれ一括して周方向にねじることで、コネクタ嵌合部の位置を合わせることができる。
【0070】
なお、多心ケーブル51aと多心ケーブル51b、51cに、ケーブル露出部が形成されていない場合には、メタルケーブル分岐アダプタ40側において、コネクタ嵌合部の嵌合位置を合わせる必要がある。このため、メタルケーブル分岐アダプタ40のケーブルの露出部長さL2は、前述したように、360°(正逆180°)のねじりに対応する必要がある。したがって、前述したケーブル露出部19の2倍であるL2=4D〜8D程度の長さが必要となる。
【0071】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、分岐部においても、多心ケーブル同士をコネクタ嵌合部で接続することができる。
【0072】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
例えば、メタルケーブル接続構造50においてコルゲート管を有する多心ケーブルを接続してもよい。この場合、各多心ケーブルにおいて、コルゲート管露出部を形成し、コルゲート管保持部を設け、互いのコルゲート管保持部同士を挿通させればよい。また、コルゲート管露出部を形成する場合には、コルゲート管露出部(コルゲート管)とそれぞれ対応するコネクタ嵌合部55a、55b、55cとを固定樹脂で固定すれば良い。
【符号の説明】
【0074】
1、30、50………メタルケーブル接続構造
3………クロージャ
5a、5b………多心ケーブル
7………シース
9………シース保持部
11………連結部材
13………被覆樹脂
15a、15b………コネクタ嵌合部
17………被覆ケーブル
19………ケーブル露出部
21a、21b………嵌合部
31a、31b………多心ケーブル
33………コルゲート管
35………コルゲート管保持部
37………連結部材
39………固定樹脂
40………メタルケーブル分岐アダプタ
41a、41b、41c………コネクタ嵌合部
43………被覆ケーブル
51a、51b、51c………多心ケーブル
53………シース保持部
55a、55b、55c………コネクタ嵌合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロージャ内に形成される多心メタルケーブルの接続構造であって、
複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、を具備する一対の多心メタルケーブルのそれぞれの端部近傍において、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部がそれぞれ形成され、
前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端にはそれぞれコネクタ嵌合部が設けられ、
一対の前記多心メタルケーブルが前記コネクタ嵌合部で接続されており、
それぞれの前記ケーブル露出部の後方に設けられ、前記シースを保持するシース保持部材が、互いに連結されており、
少なくとも前記ケーブル露出部および前記コネクタ嵌合部が被覆樹脂で被覆されていることを特徴とする多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項2】
前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周に位置する絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記ケーブル露出部の長さが、2D〜4Dの長さであることを特徴とする請求項1記載の多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項3】
前記多心メタルケーブルは、シース内部にコルゲート管を有し、前記複数の絶縁被覆ケーブルは、前記コルゲート管に挿通され、
それぞれの前記ケーブル露出部と前記シース保持部材が設けられる部位との間には、前記コルゲート管が露出するコルゲート管露出部が形成され、
それぞれの前記コルゲート管露出部には、前記コルゲート管を保持するコルゲート管保持部が設けられ、
それぞれの前記コルゲート管保持部が互いに導体で連結されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項4】
前記コルゲート管露出部と前記ケーブル露出部との境界近傍はエポキシ樹脂で固定されることを特徴とする請求項3記載の多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項5】
前記被覆樹脂は、ウレタン系樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項6】
多心メタルケーブルの接続方法であって、
複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端に設けられるコネクタ嵌合部と、を具備する一対の多心メタルケーブルのそれぞれの端部近傍において、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部をそれぞれ形成し、
それぞれの前記ケーブル露出部の後方に、前記シースを保持するシース保持部材を設け、
前記一対の多心メタルケーブルのそれぞれの前記コネクタ嵌合部を対向させて、
前記ケーブル露出部を多心メタルケーブルの周方向に捻り、前記コネクタ嵌合部同士の嵌合位置を合わせて、前記コネクタ嵌合部同士を接続し、
ウレタン系樹脂である被覆樹脂により、少なくとも前記ケーブル露出部および前記コネクタ嵌合部を被覆するとともに、前記シース保持部材同士を連結することを特徴とする多心メタルケーブルの接続方法。
【請求項7】
複数の絶縁被覆ケーブルと、
前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、
前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端に設けられるコネクタ嵌合部と、
を具備し、
前記コネクタ嵌合部の後方に、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部が形成され、
前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周に位置する絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記ケーブル露出部の長さが、2D〜4Dの長さであり、
前記ケーブル露出部で、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して周方向に捻ることが可能であることを特徴とする鉄道信号用多心メタルケーブル。
【請求項8】
多心メタルケーブルの分岐接続部用いられる鉄道信号用ケーブル分岐アダプタであって、
第1のコネクタ嵌合部と、
前記第1のコネクタ嵌合部に接続される、複数の絶縁被覆ケーブルと、
前記複数の絶縁被覆ケーブルが、複数に分岐され、分岐されたそれぞれの絶縁被覆ケーブルの端部には、第2のコネクタ嵌合部がそれぞれ接続され、
前記第1のコネクタ嵌合部と前記第2のコネクタ嵌合部との間の前記絶縁被覆ケーブルは露出しており、
分岐されたそれぞれの前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周の絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記絶縁被覆ケーブルが露出する長さが、4D〜8Dの長さであることを特徴とする鉄道信号用ケーブル分岐アダプタ。
【請求項1】
クロージャ内に形成される多心メタルケーブルの接続構造であって、
複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、を具備する一対の多心メタルケーブルのそれぞれの端部近傍において、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部がそれぞれ形成され、
前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端にはそれぞれコネクタ嵌合部が設けられ、
一対の前記多心メタルケーブルが前記コネクタ嵌合部で接続されており、
それぞれの前記ケーブル露出部の後方に設けられ、前記シースを保持するシース保持部材が、互いに連結されており、
少なくとも前記ケーブル露出部および前記コネクタ嵌合部が被覆樹脂で被覆されていることを特徴とする多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項2】
前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周に位置する絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記ケーブル露出部の長さが、2D〜4Dの長さであることを特徴とする請求項1記載の多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項3】
前記多心メタルケーブルは、シース内部にコルゲート管を有し、前記複数の絶縁被覆ケーブルは、前記コルゲート管に挿通され、
それぞれの前記ケーブル露出部と前記シース保持部材が設けられる部位との間には、前記コルゲート管が露出するコルゲート管露出部が形成され、
それぞれの前記コルゲート管露出部には、前記コルゲート管を保持するコルゲート管保持部が設けられ、
それぞれの前記コルゲート管保持部が互いに導体で連結されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項4】
前記コルゲート管露出部と前記ケーブル露出部との境界近傍はエポキシ樹脂で固定されることを特徴とする請求項3記載の多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項5】
前記被覆樹脂は、ウレタン系樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の多心メタルケーブルの接続構造。
【請求項6】
多心メタルケーブルの接続方法であって、
複数の絶縁被覆ケーブルと、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端に設けられるコネクタ嵌合部と、を具備する一対の多心メタルケーブルのそれぞれの端部近傍において、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部をそれぞれ形成し、
それぞれの前記ケーブル露出部の後方に、前記シースを保持するシース保持部材を設け、
前記一対の多心メタルケーブルのそれぞれの前記コネクタ嵌合部を対向させて、
前記ケーブル露出部を多心メタルケーブルの周方向に捻り、前記コネクタ嵌合部同士の嵌合位置を合わせて、前記コネクタ嵌合部同士を接続し、
ウレタン系樹脂である被覆樹脂により、少なくとも前記ケーブル露出部および前記コネクタ嵌合部を被覆するとともに、前記シース保持部材同士を連結することを特徴とする多心メタルケーブルの接続方法。
【請求項7】
複数の絶縁被覆ケーブルと、
前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して被覆するシースと、
前記複数の絶縁被覆ケーブルの先端に設けられるコネクタ嵌合部と、
を具備し、
前記コネクタ嵌合部の後方に、前記複数の絶縁被覆ケーブルが露出するケーブル露出部が形成され、
前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周に位置する絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記ケーブル露出部の長さが、2D〜4Dの長さであり、
前記ケーブル露出部で、前記複数の絶縁被覆ケーブルを一括して周方向に捻ることが可能であることを特徴とする鉄道信号用多心メタルケーブル。
【請求項8】
多心メタルケーブルの分岐接続部用いられる鉄道信号用ケーブル分岐アダプタであって、
第1のコネクタ嵌合部と、
前記第1のコネクタ嵌合部に接続される、複数の絶縁被覆ケーブルと、
前記複数の絶縁被覆ケーブルが、複数に分岐され、分岐されたそれぞれの絶縁被覆ケーブルの端部には、第2のコネクタ嵌合部がそれぞれ接続され、
前記第1のコネクタ嵌合部と前記第2のコネクタ嵌合部との間の前記絶縁被覆ケーブルは露出しており、
分岐されたそれぞれの前記複数の絶縁被覆ケーブルの束の断面を円形状とし、最外周の絶縁被覆ケーブルのそれぞれの中心を結んで形成される仮想円の心径をDとした場合に、前記絶縁被覆ケーブルが露出する長さが、4D〜8Dの長さであることを特徴とする鉄道信号用ケーブル分岐アダプタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−60755(P2012−60755A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200791(P2010−200791)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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